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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】氷取出スコップ
(51)【国際特許分類】
   F25C 5/20 20180101AFI20240829BHJP
【FI】
F25C5/20 305
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020203651
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2021127905
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2020020950
(32)【優先日】2020-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】真田 智之
(72)【発明者】
【氏名】大竹 富弘
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-186391(JP,A)
【文献】特開2005-274064(JP,A)
【文献】特許第4972679(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2009/0167038(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 5/20
F25C 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
氷(14)を掬う前後方向に延在する受容部(30)と、該受容部(30)に設けられたグリップ(32)とを備える氷取出スコップにおいて、
前記受容部(30)は、前端側に近づくにつれて連続的または階的に弾性変形し易くするよう構成した
ことを特徴とする氷取出スコップ。
【請求項2】
前記受容部(30)は、前記グリップ(32)が設けられる後壁(34)と、該後壁(34)から前方に延在する受け部(36)とから構成されて、前記受け部(36)を構成する壁(38,40,42)の厚みを、前記後壁(34)の厚みより小さくするよう構成した請求項1記載の氷取出スコップ。
【請求項3】
前記グリップ(32)における受容部(30)から離間する端部に、グリップ(32)の両側方に突出すると共に、グリップ(32)の上下面の一方から他方に向かうにつれて両外側面がグリップ(32)から離間するように傾斜するテーパ形状とした突出部(44)を設けた請求項1または2記載の氷取出スコップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷を取出す氷取出スコップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
喫茶店やレストラン等の厨房では、冷凍系に接続する製氷機構により氷を連続的に製造し、得られた氷を、前記製氷機構の下方に設けた貯氷室に堆積貯留するようにした自動製氷機が好適に使用されている。そして、貯氷室内に貯留された氷の取出しには、製氷機に付属の氷取出スコップが用いられる。
【0003】
前記氷取出スコップは、氷を掬う受容部と、該受容部の後端部に設けられて後方に延在するグリップとを備えている(特許文献1参照)。そして、氷を貯氷室から取出す際に使用者は、グリップを握って受容部の前端部を、貯氷室に貯留されている氷の山に差し込んで受容部に掬って取出している。また、氷取出スコップは、グリップの端部に両側方に突出する突出部を設け、貯氷室内に設けられて前方に開口すると共に段部を有する保持部に前側から挿入した突出部を、段部に引っ掛けて垂下状態で保持させるようになっている。
【0004】
前記貯氷室内に、氷同士が隙間なく詰まった状態で貯留されたり、時間の経過と共に氷同士が氷結したりして、氷がばらけ難くなることがある。このような状態では、貯留されている氷を掬うために受容部の前端部を氷の山に差し込むのに強い力が必要となることから、従来の氷取出スコップは、受容部を形成する壁の厚みを大きくして剛性を高め、氷を掬い出す際に受容部の前端部に加わる力に耐えるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-14401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記受容部を前端部から氷の山に差し込む際に、該受容部の前端が、氷同士の間の隙間でなく氷(単体の氷や氷結した氷塊)に正面から当った場合、壁の厚みを大きくして剛性を高めた受容部は変形し難く、氷における前端が当った部位に差し込む力が直線的に加わる。そして、ばらけ難い状態の氷に前端が当った状態では、受容部の前端を更に差し込もうとしても、氷が容易に移動せずにばらけないため、氷を受容部に掬うことができなかった。そのため、氷を掬う前に、受容部の前端で氷の山を叩いて崩したり、氷結した氷の塊を砕く煩雑な作業が必要となっていた。
【0007】
ここで、前記保持部は、段部より上側の開口寸法を、前記突出部の幅寸法に対して僅かに大きい寸法に設定して小型化が図られている。これに対し、グリップに設けた前記突出部は、該グリップの上面から下面まで同じ長さだけ側方に突出しているため、縦向きにした氷取出スコップの突出部を保持部の段部より上側に挿入する際に、該突出部が幅方向にずれると保持部の前端に当って挿入し難い難点が指摘される。
【0008】
すなわち本発明は、前述した従来技術に内在する前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、氷を容易に取出すことができる氷取出スコップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1の発明に係る氷取出スコップは、
氷を掬う前後方向に延在する受容部と、該受容部に設けられたグリップとを備える氷取出スコップにおいて、
前記受容部は、前端側に近づくにつれて連続的または階的に弾性変形し易くするよう構成したことを要旨とする。
請求項1の発明によれば、氷を掬う受容部は、前端側に近づくにつれて連続的または階的に弾性変形し易くするよう構成したので、氷を掬う際に氷に前端が当った受容部が反力によって弾性変形する際の前端側での変形量を大きくすることができ、氷に作用する差し込み力の方向が大きく変化し、貯氷室内において氷同士が隙間なく詰まっていたり、氷同士が氷結して氷がばらけ難い状態においても、氷を移動してばらけさせることができ、氷を容易に掬って取出すことができる。
【0010】
請求項2の発明では、
前記受容部は、前記グリップが設けられる後壁と、該後壁から前方に延在する受け部とから構成されて、前記受け部を構成する壁の厚みを、前記後壁の厚みより小さくするよう構成したことを要旨とする。
請求項2の発明によれば、受け部の壁の厚みを後壁の厚みより小さくする簡単な構成によって、受け部を、前端側に近づくにつれて弾性変形し易くして、大きく変形する前端に当る氷を移動してばらけさせることができる。また、受け部の弾性変形を許容しつつ後部側での剛性を確保することができ、氷を受容部で掬って容易に取出すことができる。
【0011】
請求項3の発明では、
前記グリップにおける受容部から離間する端部に、グリップの両側方に突出すると共に、グリップの上下面の一方から他方に向かうにつれて両外側面がグリップから離間するように傾斜するテーパ形状とした突出部を設けたことを要旨とする。
請求項3の発明では、突出部を利用して氷取出スコップを保持部に保持させる構成では、突出部における幅の小さな側から保持部に挿入して氷取出スコップを容易に保持させることができる。また、グリップを握った際に、突出部により感じる違和感を低減することができ、使用感を良好にし得る。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る氷取出スコップによれば、貯留されている氷がばらけ難い状態であっても、氷を容易に掬って取出すことができる。また、突出部を利用して、氷取出スコップを保持部に容易に保持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例に係る氷取出スコップを示す概略斜視図である。
図2】実施例に係る氷取出スコップの平面図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4】実施例に係る氷取出スコップの前端側を示す側面図である。
図5】実施例に係る氷取出スコップの後端側を示す側面図である。
図6】実施例に係る氷取出スコップの保持部を備えた自動製氷機を示す概略斜視図である。
図7】実施例に係る氷取出スコップを保持部に保持した状態で示す自動製氷機の要部正面図である。
図8】自動製氷機の保持部を示す概略斜視図である。
図9】実施例に係る氷取出スコップにより氷を取出す際の状況を示す説明図である。
図10】実施例に係る氷取出スコップを、自動製氷機に設けた別例の保持部に収納した状態を示す説明図であって、(a)は正面図であり、(b)は(a)のB矢視図である。
図11】氷取出スコップの別実施例を示す概略斜視図である。
図12】別実施例の氷取出スコップの概略断面図である。
図13】別実施例の氷取出スコップの作用を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る氷取出スコップにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。本発明に係る氷取出スコップの実施例を説明する前に、該氷取出スコップが用いられる自動製氷機の基本的な構成について説明する。なお、本発明に係る氷取出スコップは、自動製氷機の種類や製造される氷の形状等に拘らず実施可能であり、また製氷機能を有しない、氷を貯蔵する貯氷庫の貯氷室からの氷の取出しにも用いることができる。
【実施例
【0015】
図6に示すように、自動製氷機10は、外箱と内箱との間に断熱材を充填して構成された筺体12を本体としている。この筺体12の内部には、上部に設けられた製氷機構の製氷部で製造される氷14を貯留する貯氷室16と、この貯氷室16の下方に設けられ、冷凍機構を構成する各種機器等が配設される機械室18とが画成されている。そして、筺体12の前壁には、貯氷室16から氷14を取出すための取出口12aが開設されると共に、この取出口12aを閉成可能な扉20が配設されている。また、製氷機構の下方には、製氷機構から排出された製氷水を受け入れて機外へ排出するドレンパン22が配設され、該ドレンパン22に、氷取出スコップ24を保持するための保持部26が設けられている。
【0016】
前記保持部26は、図7図8に示すように、前記ドレンパン22の前面に、左右方向に所要間隔離間して形成された2枚の保持板28,28から構成されており、両保持板28,28の間の前側に開放する開口から氷取出スコップ24を抜き差しし得ると共に垂下状態で掛止保持させ得るよう構成される。各保持板28は、上下方向の略中央部に段差部28aが形成されており、両保持板28,28間は、段差部28a,28aの下方側が狭く設定されると共に、該段差部28a,28aの上方側が広く設定されている。すなわち、氷取出スコップ24における後述するグリップ32の端部に形成した突出部44を、両保持板28,28の上方側の拡幅部分に整合させて挿入し、該突出部44を段差部28a,28aに引っ掛けることで、氷取出スコップ24を、後述する受容部30が下でグリップ32が上となる縦向き姿勢の垂下状態で保持部26に掛止保持させ得るようになっている。
【0017】
図1図5に示すように、実施例に係る氷取出スコップ24は、氷14を掬うための前後方向に延在する受容部30と、この受容部30から外方に延出するグリップ32とを備え、氷14を前記貯氷室16から取出す際には、使用者はグリップ32を握って氷14の取出し作業を行い得るよう構成される。氷取出スコップ24は、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂材料からインジェクション成形技術により成形された一体成形品である。
【0018】
図1図5に示すように、前記受容部30は、前記グリップ32が設けられる後壁34と、該後壁34から前方に延在する受け部36とから構成され、グリップ32は、後壁34から後方に延在するように設けられる。また、受け部36は、後壁34の下端縁から前方に延在する底壁38と、該底壁38における前後方向と交差する幅方向の左右両端縁に、接続部としての接続壁42を介して接続して立上がると共に後壁34の左右両端縁に接続する一対の側壁40,40とから構成され、受容部30は、これら複数の壁34,38,40,40,42,42によって、上方および前方に開放する形状に形成される。なお、接続壁42も後壁34に接続されている。底壁38は、前後方向の所定箇所に設けられた境界Sから後壁34に向けて延在する平坦な後平坦部(平坦部)38aと、該境界Sから前端に向けて延在する平坦な前平坦部(平坦部)38bとからなり、前平坦部38bは、前方に向かうにつれて上方に傾くように傾斜し、該前平坦部38bの開放端(前端)は、後壁34の高さ方向の略中間に位置している。前後の平坦部38b,38aは、全体として前端側から後端側に向かうにつれて幅寸法が大きくなるよう形成され、後平坦部38aは、当該氷取出スコップ24を仮置きする場合の載置面として機能させることができる。実施例の氷取出スコップ24では、平坦部38a,38bの幅寸法を前端側から後端側に向かうにつれて大きくして、底壁38の断面積を、後端側から前端側に向かうにつれて小さくなるよう変化させることで、底壁38の曲げ剛性を、前後方向において前端側に近づくにつれて小さくなるよう構成している。すなわち、受け部36の底壁38は、平坦部38a,38bの形状によって、前端が氷14に当って力が加わった際に、後端側から前端側に近づくにつれて連続的に上下方向(厚み方向)へ弾性変形し易くなるよう構成される。図3に、受け部36の前端が氷14に当った際に加わる力によって、該受容部30が下方に弾性変形する状態を二点鎖線で示している。なお、弾性体において、力が加わっていないときの各部位の位置が、所定の力を加えたときに変位した位置までの長さを変形量とした場合、弾性変形し易いほど該変位量が大きくなる。すなわち、実施例の受け部36の底壁38は、前端側に近づくにつれて弾性変形し易くなる(弾性変形可能な度合が小から大に変化する)よう構成することで、底壁38は、受け部36の前端が氷14に当った際に加わる力によって弾性変形した際の変形量も、前端側に近づくにつれて大きくなる。
【0019】
前記底壁38の前記平坦部38a,38bと各側壁40との接続壁42は、図4図5に示すように、外側に凸となる弧状に形成される。なお、接続壁42の曲率は、前端側から後端側に亘って同じに設定される。また、底壁38(平坦部38a,38b)における左右の側縁に接続壁42,42を介して接続される一対の側壁40,40の離間幅は、前端に向かうにつれて狭くなるよう構成される。なお、前記接続壁42は、受容部30に掬われて該接続壁42に位置する氷14を幅方向の中央側に寄せ得るように機能する。また、底壁38、接続壁42,42および両側壁40,40で構成される受け部36(受容部30)における前端部の底部は、その全体が幅方向に湾曲する略弧状に形成されている。そして、上方および前方に開放すると共に前端部の底部が略弧状に形成される受容部30を構成する接続壁42,42および側壁40,40は、前端かつ側方に行くほど変形し易くなっている。言い替えると、受容部30の前端に力が加わった際に接続壁42,42および側壁40,40が変形可能な量(前記変形量)は、前端かつ側方に行くほど大きくなるよう構成されている。
【0020】
前記受容部30は、前記貯氷室16に貯留されている氷14の山に前端から差し込んで氷14を掬う場合に、該受容部30の前端が当る氷14に作用する差し込み力の方向を、該受容部30の弾性変形によって変化させ得るように構成される。実施例では、図2図3に示すように、前記受け部36を構成する底壁38、接続壁42,42および側壁40,40の厚みを、前記後壁34の厚みより小さくすることで、受容部30における受け部36は、前後方向において、前端側に近づくにつれて弾性変形し易くするよう構成してある。この構成により、受容部30の前端が氷14に当った際に、該受容部30は、前端が当る氷14に作用する差し込み力の方向を大きく変化させるように弾性変形するよう構成される(図3の二点鎖線、図9参照)。実施例では、底壁38、接続壁42,42および側壁40,40の厚みを、前端から後端まで同じとして、前端側に近づくにつれて連続的に弾性変形し易くなるよう構成されている。なお、底壁38、接続壁42,42および両側壁40,40に接続する後壁34の厚みを、底壁38、接続壁42,42および側壁40,40の厚みより大きくすることで、受け部36の後部側での剛性を保つようになっている。底壁38、接続壁42,42および側壁40,40の厚みは、貯氷室内において氷同士が隙間なく詰まった状態で貯留されていたり、または時間の経過と共に氷同士が氷結したりして氷14がばらけ難い状態において、氷14の山に差し込もうとする受容部30の前端が当る氷14からの反力によって、受容部30が弾性変形して、該氷14に作用する差し込み力が加わる方向が変化可能な寸法に設定される。また、後壁34の厚みは、受け部36の弾性変形を許容しつつ、受容部全体の剛性を保ち得る寸法に設定される。例えば、合成樹脂製の氷取出スコップ24で、一般的な自動製氷機で製造される大ささの角氷を取出す場合では、底壁38、接続壁42,42および側壁40の厚みを2.5mmに設定すると共に、後壁34の厚みを4.0mmに設定することで、氷取出しに際して角氷に当った受容部30の弾性変形を許容すると共に、角氷を受容部30で掬い得る剛性を得ることができる。
【0021】
図2図5に示すように、前記グリップ32における受容部30から離間する端部に、幅方向の両側に突出する突出部44が設けられる。この突出部44は、グリップ32の上面側から下面側に向かうにつれて両外側面がグリップ32から離間するように傾斜するテーパ形状に形成される。具体的に、突出部44は、グリップ32の上面の幅方向両縁から下面側に向かって外側方に広がるように傾斜し、該突出部44における下面側の幅寸法は、前記ドレンパン22に設けた保持部26の段差部28a,28aに引っ掛けて保持させることができると共に、使用者の手の平に当った際に強い違和感を与えることのない寸法に設定される。そして、前記保持部26に対して氷取出スコップ24は、図6図7に示すように、前記縦向きでグリップ32の上面側をドレンパン22の前面に向けた姿勢で、突出部44を保持部26の両保持板28,28の間に挿入することで保持される。突出部44におけるグリップ32の幅方向一方への突出長さは、最も突出する部分(下面側)において、例えば、約2.5mmに設定される。なお、グリップ32には、インジェクション成形技術により成形する際のヒケ等の成形不良を防ぐための肉盗み部32aが、該グリップ32の下面側に開放するように設けられている。
【0022】
〔実施例の作用〕
次に、前述のように構成された実施例の氷取出スコップ24の作用について説明する。
前記氷取出スコップ24における受容部30は、氷取出しに際して前端が氷14に当った場合に加わる力によって弾性変形可能に構成されているので、前記貯氷室16に貯留されている氷14の山に前端から差し込んだ際に、受容部30が弾性変形して、該氷14に作用する差し込み力の方向が変化する。より具体的に説明すると、貯氷室内において氷同士が隙間なく詰まっていたり、氷同士が氷結したりして氷14がばらけ難い状態において、図9(a)に示す如く、受容部30の前端が、氷14の山における氷同士の間でなく氷14に正面から当った場合、そのまま直線的(矢印F方向)に氷取出スコップ24を差し込むと、氷14がばらけ難いために受容部30に氷14からの反力が加わり、該反力が所定の大きさになると受容部30が弾性変形する。この場合に、受け部36の底壁38、接続壁42,42および側壁40,40の厚みを後壁34の厚みより小さくする簡単な構成により、受容部30における受け部36は、前後方向において、前端側に近づくにつれての弾性変形し易くするよう構成してあるので、受け部36は、氷14に当って弾性変形する際には、弾性変形が相対的にし難い部位からし易い前端側に向かうにつれて大きく変形し、前端側の変形量は大きくなる。また、実施例の氷取出スコップ24では、前記平坦部38a,38bの幅寸法を後端側から前端側に向かうにつれて大きくする構成および前端部の底部を略弧状に形成する構成と相俟って、受け部36の前端側の変形量はより大きくなる。これにより、図9(b)に示す如く、弾性変形した受容部30によって氷14に作用する差し込み力の方向が変化(矢印F’方向)すると共に大きさも変わり、氷同士の均衡を崩して氷14を容易に動かしてばらけさすことができる。なお、図9(b)には、差し込む前の受容部30を二点鎖線で示している。すなわち、貯氷室内において氷14がばらけ難い状態で貯留されている場合であっても、受容部30の前端が当った氷14に作用する差し込み力の方向および大きさが変わることで、氷14を容易に動かしてばらけさすことができ、ばらけた氷14と氷14との間から氷取出スコップ24の受容部30を差し込み易くなり、氷14を容易に掬うことができる。従って、氷14を掬う前に、受容部30の前端部で氷14の山を叩いて崩したり、氷結した氷の塊を砕く煩雑な作業を不要として、氷14の取出し作業が容易となる。
【0023】
また、実施例の氷取出スコップ24は、前記受け部36の底壁38、接続壁42,42および両側壁40,40で構成される前端部の全体が略弧状に形成されているので、角部のあるコ字状に形成されている場合に比べて弾性変形し易くなっており、差し込み力によって氷自体を破損させる前に受容部30が弾性変形して差し込み力の方向および大きさを変えることができる。なお、前記受容部30は、受け部36の壁38,40,42の厚みより後壁34の厚みを大きくしているので、弾性変形を許容しつつ受容部全体の剛性を確保して、氷14を受容部30で掬うことができる。
【0024】
ここで、前記氷取出スコップ24を、前記ドレンパン22の保持部26に保持させる際には、前記グリップ32の上面側をドレンパン22に向けた縦向きの姿勢で、前記突出部44を両保持板28,28における段差部28a,28aより上側の拡幅部分に前側から挿入することで、図7に示すように、該突出部44が段差部28a,28aに引っ掛かって、氷取出スコップ24は垂下状態で保持される。突出部44は、上面側から下面側に向けて幅が広がるテーパ形状に形成され、その幅が狭い上面側から保持部26における拡幅部分へ挿入するので、突出部44が幅方向に若干ずれても保持板28,28に当ることなく容易に挿入することができる。すなわち、保持部26における突出部44が挿入される拡幅部分の幅を大きくすることなく突出部44を容易に挿入し得るので、該保持部26の大型化も抑えることができる。また、使用者がグリップ32を上面側から握る際に、突出部44における手の平に当る上面側の幅は小さく、かつ該突出部44の外側面は下面側に向けて幅が広がるテーパ形状に形成されているので、グリップ32を強く握ったり、長時間握ったりした場合であっても、突出部44により違和感を感じる度合を小さくすることができ、使用感を良好にし得る。なお、前記受け部36における底壁38の後平坦部38aは、該後平坦部38aを下にして氷取出スコップ24を仮置きする場合に、安定性を高めることができる。
【0025】
また、前記受容部30の幅寸法が、前端から後端まで同寸法であると、氷14を掬う際に受容部30に作用する抵抗が大きくなり、氷14の山に受容部30を差し込み難くなる。また、受容部30における前端部の幅寸法が大きいと、受容部30に掬った氷14をグラス等の小さな容器にこぼすことなく直接入れるのが難しかったり、一度に大量の氷14が滑り出して周囲に飛散したりして使い勝手が悪くなる。更に、受容部30の底壁38が、前端側から後端側まで幅寸法が同じ平坦な形状であると、掬った氷14を容器に入れる際に、受容部内で複数の氷14が並列になり易く、氷14が受容部内からスムーズに滑り出なくなる。更にまた、前記受け部36がコ字状であると、図10(a),(b)に示すように、前記貯氷室16の内壁に設けた別例の保持部46に、氷取出スコップ24を横向きにして収納する場合は、受容部内に融氷水や結露水が溜る可能性がある。なお、別例の保持部46は、上壁、下壁、側壁から構成されて、側壁を貯氷室16の内壁から離間して配設することで、前側に開放する開口が矩形状に形成されたものであって、氷取出スコップ24は、一方の側壁40を下にした横向きの姿勢で受容部30を該開口から挿入することで収納することができる。
【0026】
これに対し、実施例の氷取出スコップ24は、前記受容部30の前端部の幅寸法を、後端部の幅寸法より小さくなるようにテーパ形状としてあるので、先細り形状の受容部30を氷14の山に差し込み易くなる。また、掬った氷14を小さな容器に直接入れる際に、受容部内の氷14を前端部の幅方向中央に向けて案内することができ、氷14をこぼすことなく容器に入れることができる。また、掬った氷14を容器に少量ずつ入れることもでき、氷14を周囲に飛散させることも防ぐことができる。また、受容部30における底壁38と側壁40,40との接続壁42,42を円弧状に形成してあるので、受容部内で氷14が並列になり難く、氷14をスムーズに滑り出させることができる。更に、掬った氷14を容器に入れる際に、受容部30の幅方向両側付近の氷14を接続壁42,42によって中央部に案内して、氷14をこぼすことなく容器に適切に入れることができる。また、前記別例の保持部46に氷取出スコップ24を横向き姿勢で収納する場合に、接続壁42の傾斜によって受容部内の融氷水や結露水を排出し易くなる。
【0027】
また、前記別例の保持部46に氷取出スコップ24を収納する際には、受容部30の前端部を貯氷室16に向けて別例の保持部46に挿入するため、実施例のように受容部30の前端部の幅寸法が後端部の幅寸法より小さく設定される氷取出スコップ24は、別例の保持部46に収納する際の挿入作業が容易となる。更に、受容部30における一方の側壁40を下にして別例の保持部46に氷取出スコップ24を収納した場合は、受容部30の側壁40が後端側から前端側に向けて傾斜しているので、図10(b)に示すように、受容部30が前端側から後端側に向けて上方傾斜するように傾き、該受容部30の後端に設けられている前記グリップ32は、保持部46の前方に向かって斜め上方に延在する姿勢となり、氷取出スコップ24を別例の保持部46から取出す際にグリップ32を握り易くなる。
【0028】
〔別実施例について〕
図11図13は、別実施例に係る氷取出スコップ48を示すものであって、別実施例については、実施例の構成と異なる部分についてのみ説明する。また、実施例で説明した同一部材には、同じ符号を付すものとする。
【0029】
別実施例の氷取出スコップ48は、グリップ32に、上面側に開放する肉盗み部50が設けられている。また、別実施例の氷取出スコップ48は、受容部30の底壁38における前平坦部38bに、前後で異なる傾斜角度の傾斜部52,54が設けられている。具体的に、後平坦部38aに連なる後傾斜部52の傾斜角度は、該後傾斜部52から前端まで延在する前傾斜部54の傾斜角度より大きく設定される。前記傾斜角度は、後平坦部38aと平行な基準面に対して上方に傾く角度である。なお、別実施例の受け部36における底壁38は、前端側から後端側まで幅寸法を同じとしたが、実施例と同様に前端側から後端側に向かうにつれて幅寸法が大きくなる形状としてもよく、その構成では実施例と同様に側壁40,40の離間幅は前端側が後端側より狭くなり、受け部25は全体として先細りの形状となる。また、別実施例の突出部56は、グリップ32の上面側から下面側まで同じ長さだけ側方に突出するよう形成されているが、前記実施例と同様のテーパ形状に形成したものであってもよい。
【0030】
ここで、インジェクション成形技術により樹脂製の氷取出スコップを成形する場合、金型費を安く抑えるために、金型は単純な上下(グリップの厚み方向)に型を分割する構造とすることが求められる。この場合に、氷取出スコップのグリップは、上下どちらかに開放する肉盗み部を設けて厚肉部をなくすことで、ヒケ等の成形不良が発生しないように工夫する必要がある。しかしながら、肉盗み部を画成する壁の厚みは薄く、該壁の端面部の角部には、肉厚以上のアールは付けられないため、下面側に開放する肉盗み部を設けると、グリップを上面側から握った際に、肉盗み部を画成する壁の端面部に使用者の指が当り、強く握ると大きな違和感を感じることがあった。
【0031】
別実施例の氷取出スコップ48は、グリップ32の上面側に開放するように肉盗み部50を設け、グリップ32の下面側に、肉盗み部50を画成する壁の端面部が位置しないよう構成されている。従って、使用者がグリップ32を上面側から強く握った際に、指が当って違和感の原因となる厚みの小さな壁の端面部が下面側に存在しないので、違和感を軽減することができる。また、グリップ32を上面側から使用者が手で握った際に指が当る部分の角部に大きなアールを付けることができ、違和感をより軽減することができる。
【0032】
ここで、前記受容部30の底壁38における前平坦部38bの傾斜角度が小さいと、氷14の山に受容部30を差し込み易いものの、該受容部30に掬った氷14がこぼれ落ち易かった。これに対し、前平坦部38bの傾斜角度が大きいと、貯氷室内の氷14の山に受容部30を差し込む際の抵抗が大きくなり、貯氷室内の奥まで受容部30を差し込むことが困難となり、氷14を効率的に掬えなくなる。また、受容部30を貯氷室内の奥まで差し込んだ場合に、受容部30が氷14に埋もれてしまい、氷14を掬い出す際に受容部30を持ち上げるのに大きな力が必要となる。
【0033】
別実施例の氷取出スコップ48は、受容部30の底壁38における前平坦部38bにおいて、傾斜角度の小さな前傾斜部54を前側に設けると共に、傾斜角度の大きな後傾斜部52を後側に設けたので、受容部30を氷14の山に差し込み易くなると共に、受容部30に掬った氷14がこぼれ落ち難くなる。すなわち、氷14の山に差し込む前傾斜部54の傾斜角度が小さいので、氷14の山に差し込む際に前傾斜部54に作用する抵抗を小さくすることができ、受容部30を氷14の山に容易に差し込むことができる。また、受容部30における後平坦部側に入った氷14は、図13(a)に示すように、傾斜角度の大きな後傾斜部52で前側への移動が抑制されるので、掬った氷14が受容部30からこぼれ落ち難くなる。更に、掬った氷14を受容部30から容器に直接入れる際に、受容部30を前傾した場合に、傾斜角度の大きな後傾斜部52によって氷14の移動が抑制されるので、一度に大量の氷14が飛び出すのを防止して、容器外に氷14が飛散するのを防ぐことができる。また、受容部30を氷14の山に差し込む際に、図13(b)に示すように、後傾斜部52の外面に氷14が接触することで氷取出スコップ48が自然に浮上するので、受容部30が氷14に埋もれてしまうのを抑制することができ、軽い力で氷取出スコップ48を持ち上げて氷14を掬い出すことができる。なお、別実施例の氷取出スコップ48においても、受け部36の底壁38、接続壁42,42および側壁40,40の厚みを後壁34の厚みより小さくして、受容部30における受け部36は、前後方向において、前端側に近づくにつれて弾性変形し易くするよう構成してあるので、実施例と同様に、氷14に当って弾性変形した受容部30によって氷14に作用する差し込み力の方向が変化すると共に大きさも変わり、氷同士の均衡を崩して氷14を容易に動かしてばらけさすことができる。
【0034】
〔変更例〕
本願は、前述した実施例や別実施例の構成に限定されるものでなく、その他の構成を適宜に採用することができる。
1.実施例では、受容部の後壁の厚みと、受け部の壁の厚みとを異ならせる構成と、底壁の平坦部の幅寸法を前端側から後端側に向かうにつれて大きくする構成との両方を採用して、受容部の受け部は、前後方向において、前端側に近づくにつれて弾性変形し易くするよう構成したが、何れか一方の構成のみを採用することができる。
2.実施例や別実施例では、受容部の後壁の厚みと、受け部の壁の厚みとを異なるようにすることで、受容部は、前後方向において、前端側に近づくにつれて弾性変形し易くし、かつ氷を掬うことができる受容部の剛性を確保するよう構成したが、受け部を構成する材質と、後壁を構成する材質とを異なるようにすることで、同様の作用効果を得ることができる。
3.実施例や別実施例では、受け部の底壁、接続壁および側壁の厚みを前端から後端まで同じとして、前端側に近づくにつれて連続的に弾性変形し易くするよう構成したが、壁の厚みを所定間隔毎に変化して、段階的に弾性変形し易くなる構成を採用することができる。また、受け部の底壁、接続壁および側壁の厚みを、後端から前端に向かうにつれて連続的または段階的に小さくして、前端側に近づくにつれて弾性変形し易くする構成を採用することができる。
4.受容部の前端が氷に当った際の反力によって弾性変形する受け部の前端側の変形量を大きくする構成として、該受け部における後端側または後端側に偏った位置に、壁の厚みや材質を変える等によって、前端側より曲げ剛性の小さな変形許容部を設けて、受け部が前端側より後端側または後端側に偏った位置で弾性変形し易いようにし、前記反力によって受け部が変形許容部を基点として弾性変形することで、前端側の変形量を大きくする構成を採用することができる。
5.実施例では、グリップに設けた突出部の形状を、上面側から下面側に向かうにつれて幅が広がるテーパ形状としたが、下面側から上面側に向かうにつれて幅が広がる逆テーパ形状としてもよい。突出部を逆テーパ形状とした構成では、氷取出スコップを保持部に保持する際には、グリップの下面側を保持部に向けた姿勢で突出部を保持部の拡幅部分に挿入するようにすればよい。
【符号の説明】
【0035】
14 氷,30 受容部,32 グリップ,34 後壁,36 受け部,38 底壁(壁)
40 側壁(壁),42 接続壁(壁),44 突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13