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  • 特許-換気口端末部材、及び、建物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】換気口端末部材、及び、建物
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/04 20060101AFI20240829BHJP
   F24F 13/24 20060101ALI20240829BHJP
   E04H 1/02 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
F24F7/04 B
F24F13/24
E04H1/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020205804
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022092852
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(73)【特許権者】
【識別番号】500398614
【氏名又は名称】株式会社メルコエアテック
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】黒木 拓
(72)【発明者】
【氏名】大脇 雅直
(72)【発明者】
【氏名】水野 徳人
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐介
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-106251(JP,A)
【文献】特開2019-090591(JP,A)
【文献】特開2020-106246(JP,A)
【文献】特開2020-038031(JP,A)
【文献】特開2011-190971(JP,A)
【文献】特開2011-058735(JP,A)
【文献】特開2007-003141(JP,A)
【文献】特開2005-180781(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0472620(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/04
F24F 13/24
E04H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁に形成された換気孔に取付けられる換気口端末部材であって、
建物の外壁面より建物の外側に突出するフード部と、フード部の天板部に連結された弾性支持体と、弾性支持体に連結されてフード部の天板部の上方に位置するように設けられた水滴受板とを備え、
フード部の天板部の剛性が、フード部の天板部以外の板部の剛性よりも大きくなるように構成され、
フード部の天板部は、ばね機能部と、ダンパー機能部とを備え、
ばね機能部は、フード部の天板により構成され、
ダンパー機能部は、フード部の天板よりも剛性が大きい板により構成され、
弾性支持体は、板ばねにより構成され、
ダンパー機能部を構成する板の上側板面とばね機能部を構成するフード部の天板の下側板面とが接触し、かつ、当該天板の上側板面と弾性支持体を構成する板ばねの下側板面とが接触するように、当該弾性支持体とばね機能部とダンパー機能部とが連結手段により連結され、
連結手段は、弾性支持体とばね機能部とダンパー機能部とに形成された各ボルト挿通孔と、各ボルト挿通孔に貫通させたボルトと、各ボルト挿通孔に貫通させたボルトの先端側に締結されたナットとを備えて構成されたことを特徴とする換気口端末部材。
【請求項2】
弾性支持体を構成する板ばねの上面と当該弾性支持体を構成する板ばねの上面より上方に突出するボルトの先端側に締結されたナットとの間には、平座金及びばね座金が設置されたことを特徴とする請求項1に記載の換気口端末部材。
【請求項3】
ダンパー機能部は、上側板面がフード部の天板の下側板面と接触するように連結手段で連結された平板により構成されたことを特徴とする請求項に記載の換気口端末部材。
【請求項4】
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載された換気口端末部材のフード部及び水滴受板が外壁面よりも外側に突出するように当該換気口端末部材が外壁に設けられた建物であって、
建物の上下階の外壁に設けられた各換気口端末部材の各水滴受板の表面が、垂直線上に位置されたことを特徴とする建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フード部の天板の上に弾性支持体を介して水滴受板が設けられた構造を備えた換気口端末部材等に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅、ホテル、事務所ビル等の建物においては、換気設備の設置が義務付けられている。当該換気設備としては、居室に換気口が設置されて、居室の外壁にベントキャップ等と呼称される換気口端末部材が設置されることが多い。
当該換気口端末部材は、フード部が外壁面よりも外側に突出するように建物の上下階の外壁の換気孔にそれぞれ取付けられ、上下階の各換気口端末部材が、垂直線上に位置されることが多い。
当該建物においては、降雨等の後に、上階の換気口端末部材から水滴が落下して下階の換気口端末部材のフード部の天板の上に衝突した際に、水滴落下衝突音が生じ、当該水滴落下衝突音が固体伝播音として居室内に伝播する。
当該水滴落下衝突音の低下対策を施した換気口端末部材としては、例えば、フード部の天板の上に弾性支持体を介して水滴受板が設けられた構造のものが知られている(特許文献1参照)。
特許文献1に開示された換気口端末部材では、フード部の天板の上に弾性支持体を介して水滴受板が設けられた構造であるため、弾性支持体のばねによる減衰効果によって水滴落下衝突時における低周波数帯域の音を低減させる効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5258712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された換気口端末部材では、水滴受板への水滴落下衝突時においてフード部に伝搬してきた振動に起因する音を低減させる効果が十分ではないという課題があった。
本願発明は、水滴受板への水滴落下衝突時においてフード部に伝搬してきた振動に対するダンピング効果を向上できて、水滴受板の表面に対する水滴落下衝突時における水滴落下衝突音の低減効果に優れた換気口端末部材等を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る換気口端末部材は、建物の外壁に形成された換気孔に取付けられる換気口端末部材であって、建物の外壁面より建物の外側に突出するフード部と、フード部の天板部に連結された弾性支持体と、弾性支持体に連結されてフード部の天板部の上方に位置するように設けられた水滴受板とを備え、フード部の天板部の剛性が、フード部の天板部以外の板部の剛性よりも大きくなるように構成され、フード部の天板部は、ばね機能部と、ダンパー機能部とを備え、ばね機能部は、フード部の天板により構成され、ダンパー機能部は、フード部の天板よりも剛性が大きい板により構成され、弾性支持体は、板ばねにより構成され、ダンパー機能部を構成する板の上側板面とばね機能部を構成するフード部の天板の下側板面とが接触し、かつ、当該天板の上側板面と弾性支持体を構成する板ばねの下側板面とが接触するように、当該弾性支持体とばね機能部とダンパー機能部とが連結手段により連結され、連結手段は、弾性支持体とばね機能部とダンパー機能部とに形成された各ボルト挿通孔と、各ボルト挿通孔に貫通させたボルトと、各ボルト挿通孔に貫通させたボルトの先端側に締結されたナットとを備えて構成されたことを特徴とする。
また、弾性支持体を構成する板ばねの上面と当該弾性支持体を構成する板ばねの上面より上方に突出するボルトの先端側に締結されたナットとの間には、平座金及びばね座金が設置されたことを特徴とする。
また、ダンパー機能部は、上側板面がフード部の天板の下側板面と接触するように連結手段で連結された平板により構成されたことを特徴とする。
以上のような本発明に係る換気口端末部材によれば、フード部の天板部が、ばね機能部を構成するフード部の天板とダンパー機能部を構成する板とで構成されたことによって、水滴受板への水滴落下衝突時においてフード部に伝搬してきた振動に対するダンピング効果を向上できて、水滴受板の表面に対する水滴落下衝突時における水滴落下衝突音の低減効果に優れた換気口端末部材が得られる。
また、本発明に係る建物は、上述した換気口端末部材のフード部及び水滴受板が外壁面よりも外側に突出するように当該換気口端末部材が外壁に設けられた建物であって、建物の上下階の外壁に設けられた各換気口端末部材の各水滴受板の表面が、垂直線上に位置されたことを特徴とするので、換気口端末部材の水滴受板の表面に対する水滴落下衝突時における水滴落下衝突音の低減効果に優れた建物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】換気口端末部材を前側から見た斜視図。
図2】換気口端末部材を後側から見た斜視図。
図3】換気口端末部材の分解斜視図。
図4】換気口端末部材の水滴受板ユニット及びフード部の天板部を示す断面図。
図5】建物の上下階の外壁に取付けられた上の換気口端末部材から下の換気口端末部材に水滴が落下する状態を示す図。
図6】ダンパー機能部を構成する板の有無及び当該板の板厚の違いによる検証実験結果を示す図であり、(a)は数値表、(b),(c)はグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1乃至図5に示すように、実施形態に係る換気口端末部材1は、建物90の外壁91に建物90の内外に連通するように形成された換気孔92に挿入される筒部2(図5参照)と、建物90の外壁面93より建物90の外側に突出するフード部3(図5参照)と、フード部3の天板部6に連結された弾性支持体4と、弾性支持体4に連結されてフード部3の天板部6の上方に位置するように設けられた水滴受板5とを備えた構成とした。
フード部3の天板部6は、ばね機能部7と、ダンパー機能部8とを備え、剛性が、フード部3の天板部6以外の板部の剛性よりも大きくなるように構成した。
具体的には、実施形態に係る換気口端末部材1は、ばね機能部7がフード部3の天板32により構成され、ダンパー機能部8がフード部3の天板32よりも剛性が大きい板80により構成され、弾性支持体4が板ばね60により構成され、図4に示すように、ダンパー機能部8を構成する板80の上側板面80aとばね機能部7を構成するフード部3の天板32の下側板面32bとが接触し、かつ、当該天板32の上側板面32aと弾性支持体4を構成する板ばね60の下側板面62bとが接触するように、当該弾性支持体4としての板ばね60とばね機能部7としての天板32とダンパー機能部8としての板80とが連結手段40により連結された構成とした。
つまり、フード部3の天板部6が、ばね機能部7を構成するフード部3の天板32とフード部3の天板32よりも剛性が大きいダンパー機能部8を構成する板80とで構成されたことによって、フード部3の天板部6の剛性が、フード部3の天板部6以外の後述する前板31、左側板33、右側板34、後板35等の板部の剛性よりも大きくなるように構成した。
また、ダンパー機能部8を構成する板80は、上側板面80aがフード部3の天板32の下側板面32bと接触するように連結手段40で連結された平板により構成したとともに、当該板80の上側板面80aが接触する天板32の下側板面32bは平面に形成された構成とした。
当該換気口端末部材1の筒部2、フード部3、弾性支持体4、水滴受板5、ダンパー機能部8を構成する板80は、例えばステンレス等の金属板により形成される。
尚、本明細書においては、換気口端末部材1の上、下、左、右、前、後は、図1図2に示した方向と定義して説明する。
【0008】
図1乃至図3に示すように、フード部3は、例えば、四角形状の前板31と、ばね機能部7を構成する天板(上板)32と、ダンパー機能部8を構成する板80と、左側板33と、右側板34と、後板35と、を備えた直方体函状に形成されており、下部が開口された室外側通風孔36に形成されて、かつ、後板35を形成する四角形状の板の中央側が開口された室内側通風孔37に形成され、当該室内側通風孔37の孔縁側に筒部2の一端開口縁側が接続されている。即ち、筒部2が、フード部3の後板35に接続されて当該後板35の後方に延長するように設けられた構成となっている。筒部2は、例えば、円筒部に形成される。
即ち、フード部3は、換気口端末部材1が換気孔92に取付けられることによって、下部の室外側通風孔36、及び、室内側通風孔37を介して、建物90の内側から建物90の外側に、又は、建物90の外側から建物90の内側に空気を流通させることが可能な構成となっている。
また、室外側通風孔36、及び、室内側通風孔37のうち、少なくとも、一方の通風孔は、防虫対策等のためにメッシュ孔やガラリ等により形成されている。
【0009】
換言すれば、フード部3は、四角形状の前板31と、前板31の板面と対向する板面を備えた後板35と、前板31の四角形の上辺と後板35の四角形の上辺とを繋ぐ天板32と、フード部3の天板32の下側板面32bと接触するように天板32及び弾性支持体4と連結手段40によって連結されたダンパー機能部8を構成する板80と、前板31の四角形の上辺の一端より下方に延長する四角形の左辺と後板35の四角形の上辺の一端より下方に延長する左辺とを繋ぐ左側板33と、前板31の四角形の上辺の他端より下方に延長する四角形の右辺と後板35の四角形の上辺の他端より下方に延長する右辺とを繋ぐ右側板34とで構成され、そして、フード部3の天板部6が、ばね機能部7を構成する天板32とダンパー機能部8を構成する板80とで構成される。
当該換気口端末部材1が換気孔92に取付けられた場合、これら前板31と天板部6と左側板33と右側板34と後板35とで囲まれた空間が、下部の室外側通風孔36を介して室外と連通し、かつ、後板35の室内側通風孔37を介して室内と連通するように構成されている。
【0010】
即ち、換気口端末部材1は、筒部2が筒部2の他端側から建物90の外壁91に形成された換気孔92に挿入されて、フード部3の後板35の後面の周辺部より後方に突出する囲み枠のように形成された設置枠35Aの後端縁35aが建物90の外壁面93に近接し、かつ、天板32が上方、左側板33が左側、右側板34が右側に位置された状態となるように設置される。
尚、筒部2の外周面には、例えば図外の板ばねが設けられており、当該筒部2が換気孔92内に押し込まれて当該板ばねが換気孔92の内面にばね弾性によって押し付けられることによって、換気口端末部材1が換気孔92に固定され、当該固定された状態で、フード部3の設置枠35Aの後端縁35aと外壁面93との隙間にシーリング材等の隙間充填剤が充填されることにより、換気口端末部材1が換気孔92に取付けられる(図5参照)。
【0011】
フード部3の天板32の上に弾性支持体4を介して設けられた水滴受板5は、フード部3の天板32の上方を覆うように配置された板材により構成される。
水滴受板5は、例えば、フード部3の天板32の長方形よりも一回り小さい長方形状の平板により形成されて板面がフード部3の天板32の板面と所定の間隔を隔てて平行又は略平行に対向するように配置された平板部51と、当該平板部51を構成する左右に長い長方形板の前後の側縁より傾斜して下るように形成された前後の傾斜板部52,52と、当該平板部51を構成する左右に長い長方形板の左右の側縁より傾斜して下るように形成された左右の傾斜板部53,53とを備える。
平板部51の前側縁より延長するように設けられた前側の傾斜板部52の傾斜面はフード部3の天板32の前側の側縁に近付くように下る傾斜面に形成され、平板部51の後側縁より延長するように設けられた後側の傾斜板部52の傾斜面はフード部3の天板32の後側の側縁に近付くように下る傾斜面に形成される。
平板部51の左側縁より延長するように設けられた左側の傾斜板部53の傾斜面はフード部3の天板32の左側の側縁に近付くように下る傾斜面に形成され、平板部51の右側縁より延長するように設けられた右側の傾斜板部53の傾斜面はフード部3の天板32の右側の側縁に近付くように下る傾斜面に形成される(図4参照)。
即ち、平板部51の表面51a、つまり、水滴受板5の表面51aを形成する板面に水滴が落下した場合に、当該水滴が傾斜板部52又は傾斜板部53の傾斜面を介して下方に流下するように構成されている。
そして、水滴受板5は、平板部51の表面51aを構成する左右に長い長方形の中心5Cが、フード部3の天板32の板面と直交して当該天板32の表面を構成する左右に長い長方形の中心を通過する垂直線V上に位置されるように、弾性支持体4を介してフード部3の天板32の上に設けられる。
【0012】
弾性支持体4は、板ばね60により構成されたものを使用した。
当該板ばね60は、図3図4に示すように、天板32における上側板面32aの中央側に連結される中央板部62と、中央板部62の左右両方の端部からそれぞれ天板32の上側板面32aと直交して水滴受板5の平板部51に近づく方向に延長する左右の立ち上がり板部63,63と、左右の立ち上がり板部63,63の上端からそれぞれ互いに反対方向に上がって傾斜するように延長する左右の傾斜板部64,64と、各傾斜板部64,64の上端からそれぞれ互いに反対方向に延長して水滴受板5の平板部51の下側板面51bの左右両端側に連結される左右両方の端板部61,61とを備えた形状のものを用いた。
【0013】
即ち、板ばね60は、中央側の中央板部62がフード部3の天板32の上側板面32aの中央側に連結されて、かつ、左右両方の端部側の端板部61,61が水滴受板5の平板部51の下側板面51bの左右両端側に連結された板材により構成され、貫通孔Xは、例えば、板ばね60の中央板部62と端板部61との間の部分において、板ばね60の延長方向(左右方向)及び前後幅方向に延長する矩形状の孔により構成されている。
具体的には、図3に示すように、貫通孔Xは、板ばね60の延長方向に沿って左の立ち上がり板部63及び傾斜板部64の全域に亘って延長する左の貫通孔Xと、板ばね60の延長方向に沿って右の立ち上がり板部63及び傾斜板部64の全域に亘って延長する右の貫通孔Xとにより構成される。
また、左の貫通孔X及び右の貫通孔Xは、立ち上がり板部63及び傾斜板部64の前後幅方向の中央側に設けられる。換言すれば、左の貫通孔X及び右の貫通孔Xの前後に位置される立ち上がり板部63及び傾斜板部64の前後方向の板幅は等しくなるように形成されている。
【0014】
例えば図3図4に示すように、水滴受板5の平板部51の左右両端側、弾性支持体4を形成する板ばね60の中央板部62及び左右の端板部61,61、フード部3の天板32の中央側及びダンパー機能部8を構成する板80の中央側には、ボルト41を通すためのボルト挿通孔45が形成されている。
【0015】
即ち、実施形態に係る換気口端末部材1は、図3に示すように、弾性支持体4を、貫通孔Xが形成された板ばね60により構成し、当該板ばね60の中央板部62の中心と天板32の上側板面32aの中心とを一致させた状態で当該中央板部62と天板32と当該天板32の下側板面32bに設置されたダンパー機能部8を構成する板80とが1組以上の連結手段40により連結されたとともに(図4参照)、当該天板32と板80とで構成された天板部6に連結された板ばね60の中央板部62よりも上方に位置された板ばね60の左右両方の端板部61,61と水滴受板5の平板部51の左右両端側とが連結手段40により連結された構成とした(図4参照)。
【0016】
図3に示すように、例えば、弾性支持体4を構成する板ばね60の左右の両端側の端板部61,61の上側板面61a,61aに水滴受板5の平板部51を配置する。
そして、左端側の端板部61、水滴受板5の平板部51の左端側に形成された各ボルト挿通孔45,45の中心を一致させるとともに、右端側の端板部61、水滴受板5の平板部51の右端側に形成された各ボルト挿通孔45,45の中心を一致させた後に、左側の各ボルト挿通孔45,45、及び、右側の各ボルト挿通孔45,45に、上方からそれぞれボルト41を貫通させ、当該各ボルト41,41の下端側(ボルト先端側)にそれぞれナット42を締結する。
以上により、弾性支持体4と水滴受板5とが連結手段40により連結された水滴受板ユニットが構成される(図4参照)。
そして、当該水滴受板ユニットにおける弾性支持体4の中央側の中央板部62、フード部3の天板部6(天板32及び板80)に形成された各ボルト挿通孔45,45…の中心を一致させた後に、これら各ボルト挿通孔45,45…に、下方からそれぞれボルト41を貫通させ、当該各ボルト41,41の上端側(ボルト先端側)にそれぞれナット42を締結する。
以上により、フード部3の天板部6の上に弾性支持体4を介して支持された水滴受板5を備えた実施形態1の換気口端末部材1が構成されることになる。
尚、連結手段40は、ボルト挿通孔45、ボルト41及びナット42により構成すればよいが、図4に示すように、中央板部62の上面とナット42との間、端板部61の下面とナット42との間には、例えば、平座金43及びばね座金44が設置されることが好ましい。
【0017】
そして、図5に示すように、上下階の外壁91,91に、フード部3及び水滴受板5が外壁面93より外側に突出するように実施形態1の各換気口端末部材1,1が設けられ、各換気口端末部材1,1の各水滴受板5,5の平板部51,51の表面51a,51aの中心5C,5Cが、垂直線V上に位置された建物90が構成される。
当該建物90においては、上階に取付けられた換気口端末部材1のフード部3の板面を伝って下方に流れてくる水Wが下階に取付けられた換気口端末部材1の水滴受板5の平板部51の表面51aに落下する。
【0018】
本発明の換気口端末部材1の水滴落下衝突音低減効果を確認するための実験を以下のように行った。
【0019】
・実験方法
換気口端末部材の各試験体A~F(図6参照)を製作し、これら換気口端末部材の各試験体A~Fの水滴受板5の上面(平板部51の表面51a)に水滴が落下する状況を模擬した実験を簡易無響室内で行った。
実験設備は以下のとおりである。
足場の下部に内径900mm角の箱(内部をグラスウールで吸音処理した箱)を設置し、箱の正面中央の位置の外側に換気口端末部材の試験体を設置するとともに、内側にレジスター(内側換気口)を設置した。レジスターは樹脂製のプッシュタイプとし、実験時は「開」の状態とした。
共同住宅の一般的な階高を想定し、換気口端末部材の水滴受板の上面に高さ3mの位置からスポイトを使って水滴を落下させた。
水滴落下衝突音の測定は、マイクロホンを箱内部の中心の位置に設置し、水滴落下衝突音の1/3オクターブバンド中心周波数音圧レベルを測定した。各試験体の水滴受板の上面への水滴の落下回数は、1試験体に対し50回とし、外部からの影響の小さい40回のデータの平均値を測定値とした。
【0020】
以下のような試験体A,B,C,D,E,Fを用いて実験を行った。
(1)試験体A,B,C(筒部の開口径φ=150mm)
・試験体A=板80を備えない構成の換気口端末部材
・試験体B=板厚1.5mmの板80を備えた構成の換気口端末部材
・試験体C=板厚1.2mmの板80を備えた構成の換気口端末部材
(2)試験体D,E,F(筒部の開口径φ=100mm)
・試験体D=板80を備えない構成の換気口端末部材
・試験体E=板厚1.5mmの板80を備えた構成の換気口端末部材
・試験体F=板厚1.2mmの板80を備えた構成の換気口端末部材
【0021】
尚、実験に用いた換気口端末部材の試験体A,B,C,D,E,Fの諸元は、以下の通りである。
・換気口端末部材の筒部、フード部、水滴受板、弾性支持体の材質=ステンレス鋼SUS304。
(1)試験体A,B,C
・フード部の左右幅寸法=200mm、フード部の上下高さ寸法=200mm、フード部の前後幅寸法=93mm。
・筒部の開口径寸法=150mm、筒部の前後幅寸法=47mm。
・水滴受板の前後幅寸法=86mm、水滴受板の平板部の前後幅寸法(短辺寸法)=75mm、水滴受板の平板部の左右幅幅寸法(長辺寸法)=200mm、水滴受板の板厚寸法=1.5mm。
・弾性支持体としての板ばねの左右幅寸法=164mm、板ばねの前後幅寸法=50mm、板ばねの中央板部の左右幅寸法=90mm、板ばねの中央板部から端板部までの高さ寸法=10mm。
・板80の左右長寸法=184mm、板80の前後長寸法=55mm。
(2)試験体D,E,F
・フード部の左右幅寸法=150mm、フード部の上下高さ寸法=150mm、フード部の前後幅寸法=73mm。
・筒部の開口径寸法=100mm、筒部の前後幅寸法=47mm。
・水滴受板の前後幅寸法=67mm、水滴受板の平板部の前後幅寸法(短辺寸法)=57mm、水滴受板の平板部の左右幅幅寸法(長辺寸法)=150mm、水滴受板の板厚寸法=1.5mm。
・弾性支持体としての板ばねの左右幅寸法=124mm、板ばねの前後幅寸法=40mm、板ばねの中央板部の左右幅寸法=50mm、板ばねの中央板部から端板部までの高さ寸法=10mm。
・板80の左右長寸法=134mm、板80の前後長寸法=38mm。
【0022】
試験体A,B,C,D,E,Fによる実験結果、即ち、フード部の大きさの違い、ダンパー機能部8を構成する板80の有無、板80の板厚の違いによる検証実験結果を図6(a)~(c)に示す。
実験結果から明らかなように、ダンパー機能部8を構成する板80を備えた試験体B,C,E,Fでは、ダンパー機能部8を構成する板80を備えない試験体A,Dと比べて、特に中高周波数帯域において、水滴受板の表面に対する水滴落下衝突時の音圧レベルが低下しており、水滴落下衝突音の低減効果に優れた換気口端末部材となることがわかった。
【0023】
特に、筒部の開口径が大きい場合(φ150mm)は、フード部の大きさ、ひいては、フード部の天板の大きさも大きくなるため、フード部の天板の剛性が小さくなる。従って、筒部の開口径が大きくて、ダンパー機能部8を構成する板80を備えない構成の試験体Aによれば、天板が振動しやすくなって、水滴受板の表面に対する水滴落下衝突時における中高周波数帯域の音圧レベルが高くなる傾向が見られる。
一方、筒部の開口径が大きくても、特に、板厚1.5mmの板80を備えた構成の試験体Bによれば、試験体Aと比べて、630Hz~1kHzの帯域の音圧レベルが顕著に低くなっており、水滴落下衝突音の低減効果に優れた換気口端末部材となることが判明した。
また、筒部の開口径が大きくて厚さ1.2mmの板80を備えた構成の試験体Cであっても、試験体Aと比べて、特に630Hz帯域の音圧レベルが顕著に低くなっており、水滴落下衝突音の低減効果に優れた換気口端末部材となることがわかった。
【0024】
また、筒部の開口径が小さい場合(φ100mm)でも、板80を備えた構成の試験体E,Fによれば、板80を備えない構成の試験体Dと比べて、400Hz~800Hzの帯域の音圧レベルが低くなっており、水滴落下衝突音の低減効果に優れた換気口端末部材となることがわかった。
【0025】
以上のように、実験結果からは、特に、筒部の開口径が大きくてフード部の天板の剛性が小さくなる換気口端末部材において、板80を備えた構成の換気口端末部材とすることが好ましいことが判明した。
【0026】
尚、フード部を構成する板として、板厚を厚くした剛性の大きい板を用いた構成として、弾性支持体4をばね機能部として機能させた構成とした場合、フード部の材料コストが増えるとともに、換気口端末部材が重くなるので、商品としての軽量化が図れず、好ましくない。
そこで、本発明の実施形態によれば、フード部3を構成する板として、板厚の薄い板を用いた構成として、フード部3の材料コストを減らすことができるとともに、換気口端末部材1の軽量化が図れ、かつ、フード部3の天板32をばね機能部として機能させて、当該天板32よりも剛性が大きくて当該天板32の下側板面32bに接触するように設けられた板80をダンパー機能部として機能させた構成としたことによって、水滴受板5への水滴落下衝突時においてフード部3に伝搬してきた振動に対するダンピング効果を向上できて、水滴受板5の表面51aに対する水滴落下衝突時における水滴落下衝突音の低減効果に優れた換気口端末部材1を得ることできるようにした。
【0027】
実施形態に係る換気口端末部材1によれば、水滴受板5の表面51aに対する水滴落下衝突時における水滴落下衝突音の低減効果に優れた換気口端末部材1を提供できる。
また、実施形態に係る換気口端末部材1を備えた建物によれば、換気口端末部材1の水滴受板5の表面51aに対する水滴落下衝突時における水滴落下衝突音の低減効果に優れた建物を提供できる。
【0028】
尚、本発明の換気口端末部材においては、フード部の天板部は、フード部の天板に上下方向の凹凸を形成した構成としてもよい。この場合、フード部の天板に形成された凸部(リブ)における頂部横板の上側板面に弾性支持体を連結した構成とすることにより、当該凸部(リブ)の頂部横板がばね機能部として機能するとともに、当該凸部(リブ)の頂部横板とフード部の天板に形成された凹部の底部横板との間の縦板(壁板)及び凹部の底部横板とがダンパー機能部として機能するフード部の天板部が構成されるので、水滴受板の表面に対する水滴落下衝突時における水滴落下衝突音の低減効果に優れた換気口端末部材を提供できる。
【0029】
また、本発明の換気口端末部材においては、フード部の天板部は、ばね機能部として機能させるフード部の天板を平板により形成するとともに、当該平板により形成された天板の下側板面と接触するように設けられてダンパー機能部として機能する板として、平板以外の例えば、波板、凹凸板等の板を用いても構わない。
【0030】
また、本発明の換気口端末部材は、フード部の天板部を、フード部の天板部以外の板部の板厚よりも板厚の厚い天板で構成することにより、フード部の天板部の剛性が、フード部の天板部以外の板部の剛性よりも大きくなるように構成された換気口端末部材であってもよい。
当該換気口端末部材であっても、フード部の天板部を構成する板厚の厚い天板がダンパー機能部として機能するとともに、弾性支持体がばね機能部として機能するので、水滴受板への水滴落下衝突時においてフード部に伝搬してきた振動に対するダンピング効果を向上できて、水滴受板の表面に対する水滴落下衝突時における水滴落下衝突音の低減効果に優れた換気口端末部材を得ることができる。
【0031】
また、本発明においては、換気口端末部材1の全体形状は丸形でもよい。
また、換気口端末部材1のフード部3の天板32や水滴受板5の形状は矩形でなくてもよい。
また、換気口端末部材1は、開口部が、フード部3の下部のみでなく、フード部3の側面、正面に設けられた構成であってもよい。また、開口部にネットが張られた構成のものであってもよい。
また、換気口端末部材1は、筒部2を備えずに、外壁に直接取り付けられる構成のものであってもよい。
【0032】
また、弾性支持体4(板ばね60)の貫通孔Xは、弾性支持体4におけるフード部3の天板32及び水滴受板5と接していない部分に、例えば、弾性支持体4の中心を基準として、前後左右に均等に設けられていればよく、個数、形状等は、特に限定されない。
例えば、貫通孔Xは、板状の弾性支持体4の延長方向に沿って延長する複数の長孔(スリット)が板状の弾性支持体4の板幅方向に沿って所定間隔を隔てて並ぶように形成された構成、あるいは、板状の弾性支持体4の板幅方向に沿って延長する複数の長孔(スリット)が板状の弾性支持体4の延長方向に沿って所定間隔を隔てて並ぶように形成された構成、あるいは、円孔や矩形孔等の複数の個別孔が板状の弾性支持体4の延長方向に沿って所定間隔を隔てて並ぶように形成された構成、円孔や矩形孔等の複数の個別孔が板状の弾性支持体4にパンチングメタルのようにランダムに形成された構成等であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 換気口端末部材、3 フード部、4 弾性支持体、5 水滴受板、
6 フード部の天板部、7 ばね機能部、8 ダンパー機能部、
32 フード部の天板(ばね機能部)、60 板ばね(弾性支持体)、
80 板(ダンパー機能部)、90 建物、91 外壁、
92 換気孔、93 外壁面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6