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特許7545884燃料電池車両の制御方法、及び、燃料電池車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】燃料電池車両の制御方法、及び、燃料電池車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04746 20160101AFI20240829BHJP
   B60L 58/30 20190101ALI20240829BHJP
   B60L 58/40 20190101ALI20240829BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20240829BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20240829BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20240829BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20240829BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240829BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240829BHJP
【FI】
H01M8/04746
B60L58/30
B60L58/40
H01M8/00 A
H01M8/00 Z
H01M8/0438
H01M8/04537
H01M8/04858
H01M8/10 101
H01M8/12 101
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020207035
(22)【出願日】2020-12-14
(65)【公開番号】P2022094166
(43)【公開日】2022-06-24
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】吉永 知文
(72)【発明者】
【氏名】阿部 光高
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-051097(JP,A)
【文献】特開2005-285351(JP,A)
【文献】特開2019-179762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 - 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内部に設けられ、燃料ガスの供給源である燃料タンクと、
前記燃料タンク、及び、車両外部の少なくとも一方からの前記燃料ガスの供給を受けて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池の発電電力により充電され、車両の駆動源であるモータに電力を供給可能なバッテリと、
を備える燃料電池車両において、
前記車両外部から前記燃料ガスが供給されている状態において、前記車両外部からの前記燃料ガスの供給量が変動する場合には、前記燃料タンクからの前記燃料ガスの供給量を調整することにより、前記燃料電池への前記燃料ガスの供給量を所定量とし、
前記バッテリを所定の速度で充電させることが可能な前記燃料電池の単位時間あたりの要求出力を算出し、前記燃料電池への前記燃料ガスの供給量は、前記燃料電池を前記要求出力で動作させるために必要な前記燃料ガスの要求供給量を上回るように、制御される、
燃料電池車両の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池車両の制御方法であって、
前記燃料電池車両は、前記燃料タンクから前記燃料ガスが流入する第1供給路、前記車両外部からの前記燃料ガスが流入する第2供給路、及び、前記燃料電池へ前記燃料ガスを供給する第3供給路と接続される三方弁を、さらに備え、
前記車両外部から前記燃料ガスが供給されている状態において、前記車両外部からの前記燃料ガスの供給量が変動する場合には、前記三方弁の前記第1供給路の側の弁の開弁量を調整することにより、前記燃料電池への前記燃料ガスの供給量を所定量とする、燃料電池車両の制御方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料電池車両の制御方法であって、
前記車両外部から前記燃料ガスが供給されている状態において、前記要求供給量が、前記燃料電池の運転効率が最高となる場合における前記燃料ガスの最高運転供給量を上回るか否かを判定し、
前記要求供給量が前記最高運転供給量を上回る場合には、前記車両外部から前記燃料ガスが供給されている状態における前記燃料電池への前記燃料ガスの供給量を、前記要求供給量とし、
前記要求供給量が前記最高運転供給量を下回る場合には、前記車両外部から前記燃料ガスが供給されている状態における前記燃料電池への前記燃料ガスの供給量を、前記最高運転供給量とする、燃料電池車両の制御方法。
【請求項4】
請求項に記載の燃料電池車両の制御方法であって、
前記車両外部から前記燃料ガスが供給されている状態で、前記要求供給量が前記最高運転供給量を上回る場合において、前記車両外部からの前記燃料ガスの供給量が低下する場合には、前記車両外部からの前記燃料ガスの供給量の低下分だけ、前記燃料タンクからの前記燃料ガスの供給量を増加させる、燃料電池車両の制御方法。
【請求項5】
請求項に記載の燃料電池車両の制御方法であって、
前記車両外部から前記燃料ガスが供給されている状態で、前記要求供給量が前記最高運転供給量を下回る場合において、前記車両外部からの前記燃料ガスの供給量が低下し、前記燃料ガスの低下後の供給量が、前記要求供給量を下回る場合には、前記燃料タンクからの前記燃料ガスの供給量を増加させて、前記燃料電池への前記燃料ガスの供給量を前記最高運転供給量まで増加させる、燃料電池車両の制御方法。
【請求項6】
請求項に記載の燃料電池車両の制御方法であって、
前記車両外部から前記燃料ガスが供給されている状態で、前記要求供給量が前記最高運転供給量を下回る場合において、前記車両外部からの前記燃料ガスの供給量が低下し、前記燃料ガスの低下後の供給量が、前記要求供給量を上回る場合には、前記燃料タンクからの前記燃料ガスの供給量の増加を行わない、燃料電池車両の制御方法。
【請求項7】
車両内部に設けられ、燃料ガスの供給源である燃料タンクと、
前記燃料タンク、及び、車両外部の少なくとも一方からの前記燃料ガスの供給を受けて発電を行う燃料電池と、
を備える燃料電池車両において、
前記車両外部から前記燃料ガスが供給されている状態において、前記車両外部からの前記燃料ガスの供給量が変動する場合には、前記燃料タンクからの前記燃料ガスの供給量を調整することにより、前記燃料電池への前記燃料ガスの供給量を所定量とし、
前記燃料タンクからの前記燃料ガスの供給量の増加の可否が予め設定され、
前記燃料タンクからの前記燃料ガスの供給量の増加が許可されていない場合であって、前記車両外部から前記燃料ガスが供給されている状態において、前記車両外部からの前記燃料ガスの供給量が低下する場合には、前記燃料電池を、前記燃料ガスの低下後の供給量に応じた出力で動作させる、燃料電池車両の制御方法。
【請求項8】
車両内部に設けられ、燃料ガスの供給源である燃料タンクと、
前記燃料タンク、及び、車両外部の少なくとも一方からの前記燃料ガスの供給を受けて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池の発電電力により充電され、車両の駆動源であるモータに電力を供給可能なバッテリと、
前記燃料タンクから前記燃料ガスが流入する第1供給路、前記車両外部からの前記燃料ガスが流入する第2供給路、及び、前記燃料電池へ前記燃料ガスを供給する第3供給路に接続する三方弁と、
前記車両外部からの前記燃料ガスの供給流量を検出するセンサと、
前記三方弁を制御可能なコントローラと、を備える燃料電池車両において、
前記コントローラは、
前記車両外部から前記燃料ガスが供給されている状態において、前記センサにより取得される前記車両外部からの前記燃料ガスの供給量が変動した場合には、前記三方弁の前記第1供給路の側の開弁量を調整することで、前記燃料タンクからの前記燃料ガスの供給量を調整して、前記燃料電池への前記燃料ガスの供給量を所定量とし、
前記バッテリを所定の速度で充電させることが可能な前記燃料電池の単位時間あたりの要求出力を算出し、前記燃料電池への前記燃料ガスの供給量を、前記燃料電池を前記要求出力で動作させるために必要な前記燃料ガスの要求供給量を上回るように、制御する、
燃料電池車両。
【請求項9】
車両内部に設けられ、燃料ガスの供給源である燃料タンクと、
前記燃料タンク、及び、車両外部の少なくとも一方からの前記燃料ガスの供給を受けて発電を行う燃料電池と、
前記燃料タンクから前記燃料ガスが流入する第1供給路、前記車両外部からの前記燃料ガスが流入する第2供給路、及び、前記燃料電池へ前記燃料ガスを供給する第3供給路に接続する三方弁と、
前記車両外部からの前記燃料ガスの供給流量を検出するセンサと、
前記三方弁を制御可能なコントローラと、を備える燃料電池車両において、
前記コントローラは、前記車両外部から前記燃料ガスが供給されている状態において、前記センサにより取得される前記車両外部からの前記燃料ガスの供給量が変動した場合には、前記三方弁の前記第1供給路の側の開弁量を調整することで、前記燃料タンクからの前記燃料ガスの供給量を調整して、前記燃料電池への前記燃料ガスの供給量を所定量とし、
前記燃料タンクからの前記燃料ガスの供給量の増加の可否が予め設定され、
前記コントローラは、前記燃料タンクからの前記燃料ガスの供給量の増加が許可されていない場合であって、前記車両外部から前記燃料ガスが供給されている状態において、前記車両外部からの前記燃料ガスの供給量が低下する場合には、前記燃料電池を、前記燃料ガスの低下後の供給量に応じた出力で動作させる、燃料電池車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池車両の制御方法、及び、燃料電池車両に関する。
【背景技術】
【0002】
モータを駆動源とする電動車両として、電力源として燃料電池を備える燃料電池車両が知られている。このような燃料電池車両を用い、自宅等に駐車中に家庭用の燃料ガスを用いて燃料電池を駆動させることで、車両に搭載されたバッテリの充電や家庭への電源供給を行うことが可能となる。
【0003】
特許文献1には、家庭用電源として利用可能な燃料電池車両の例が示されている。特許文献1に示された燃料電池車両は、車両が備える燃料タンク及び車両の外部から、燃料ガスが供給可能に構成されている。そして、自宅等に駐車中においては、燃料タンク、又は、外部から供給される燃料ガスを用いて燃料電池が発電を行うことで、発電された電力が家庭用に供給可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2006/0219448号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術においては、家庭内での燃料ガスの使用等により燃料電池車両に供給される燃料ガスの流量が変動する場合には、燃料電池による発電量が変化し、その結果、所望の電力を得られないおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、外部からの燃料ガスが供給されている状態において、燃料電池による発電を安定的に行うことができる燃料電池車両の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様による燃料電池車両の制御方法によれば、車両内部に設けられ、燃料ガスの供給源である燃料タンクと、燃料タンク、及び、車両外部の少なくとも一方からの燃料ガスの供給を受けて発電を行う燃料電池と、を備える燃料電池車両において、車両外部から燃料ガスが供給されている状態において、車両外部からの燃料ガスの供給量が変動する場合には、燃料タンクからの燃料ガスの供給量を調整することにより、燃料電池への燃料ガスの供給量を所定量とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の燃料電池車両の制御方法によれば、外部からの燃料ガスが供給されている状態において、燃料電池による発電を安定的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る燃料電池車両の構成を示すブロック図である。
図2図2は、充電制御を示すフローチャートである。
図3図3は、充電制御におけるユーザ要求出力を説明するためのグラフである。
図4A図4Aは、ユーザ要求出力が最高効率出力と等しい場合における定常制御の説明図である。
図4B図4Bは、ユーザ要求出力が最高効率出力を上回る場合における定常制御の説明図である。
図4C図4Cは、ユーザ要求出力が最高効率出力を下回る場合における定常制御の説明図である。
図4D図4Dは、ユーザ要求出力が最高効率出力を上回る場合において、低圧燃料ガスの供給流量が低下した場合における変動抑制制御の説明図である。
図4E図4Eは、ユーザ要求出力が最高効率出力を下回る場合において、低圧燃料ガスの供給流量の低下量が比較的小さい場合における変動抑制制御の説明図である。
図4F図4Fは、ユーザ要求出力が最高効率出力を下回る場合において、低圧燃料ガスの供給流量の低下量が比較的大きい場合における変動抑制制御の説明図である。
図5図5は、図2のステップS5の発電制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池を備える車両の構成を示すブロック図である。
【0012】
図1に示されるように、車両100は、走行駆動源となる燃料電池1を備えている。燃料電池1はバッテリ2及びモータ3に電力を供給可能に接続されている。また、モータ3は、燃料電池1及び/またはバッテリ2からの電力供給を受けて回転駆動する。
【0013】
燃料電池1は、アノード供給路11を介して流入する燃料ガス(アノードガス)と、カソード供給路12を介して流入する空気(カソードガス)とを化学反応させることで発電を行う。そして、燃料電池1に供給されたアノードガスは、化学反応が終了した後においては、アノードオフガスとしてアノード排出路13を介して車両100外へと排出される。また、燃料電池1に供給されたカソードガスは、カソードオフガスとしてカソード排出路14を介して車両100外へと排出される。
【0014】
一例として、燃料電池1が固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)である場合には、アノードガスは天然ガス等の炭化水素燃料(例えば、メタン)であり、カソードガスが大気である。このような場合には、燃料電池1のアノード極及びカソード極において、以下の化学反応が進行する。その結果、アノードオフガスとして水が排出され、カソードオフガスとして酸素が排出される。なお、燃料電池1は、固体酸化物形燃料電池に限られず、固体高分子形燃料電池(PEM:Polymer Electrolyte Membrane)等の他の反応方式の燃料電池であってもよい。
【0015】
アノード供給路11は、高圧供給路15及び低圧供給路16から燃料ガスが供給可能に構成されている。高圧供給路15には、燃料ガスを高圧で貯蔵可能な燃料タンク4が設けられており、燃料タンク4には、燃料供給拠点などにおいて高圧供給口5から供給される燃料ガスが高圧で貯蔵される。また、低圧供給路16には、車両100が自宅等に駐車中において、自宅等において使用される炭化水素燃料が、低圧供給口6から供給される。このように、都市ガス等の炭化水素燃料は、自宅内と車両100内との双方の燃料供給源となる。なお、高圧供給口5及び低圧供給口6は、逆止弁構造を備えており、車両100内部から外部への燃料ガスの漏出が防止されている。
【0016】
高圧供給路15及び低圧供給路16から供給される燃料ガスは三方弁7へと流入する。三方弁7は、高圧供給路15及び低圧供給路16から供給された燃料ガスを混合可能に構成されおり、混合後の燃料ガスはアノード供給路11を介して燃料電池1へ供給される。三方弁7は、アノード供給路11(第3供給路に相当)、高圧供給路15(第1供給路に相当)及び低圧供給路16(第2供給路に相当)の三方向のそれぞれと連通する弁を備えている。三方弁7に設けられたこれらの弁が操作されることで、高圧供給路15及び低圧供給路16からの燃料ガスの流入比率、及び、燃料電池1への燃料ガスの供給量を制御できる。
【0017】
高圧供給路15には、燃料タンク4と三方弁7との間に調整弁8が設けられており、燃料タンク4に蓄えられた燃料ガスは調整弁8により減圧された後に三方弁7へと流入する。なお、以下においては、燃料タンク4に貯蔵され、高圧供給路15から燃料電池1に供給される燃料ガスについては、高圧燃料ガスと称し、低圧供給口6から供給され、低圧供給路16を介して燃料電池1に供給される燃料ガスについては、低圧燃料ガスと称する。
【0018】
また、カソード供給路12にはブロワ9が設けられており、ブロワ9が操作されることで燃料電池1へのカソードガスの供給流量が制御される。
【0019】
車両100の走行中においては、燃料タンク4から燃料電池1へと高圧燃料ガスが供給される。一方、車両100が自宅などに駐車中においては、自宅で使用される炭化水素燃料が、外部から低圧供給口6を介して低圧燃料ガスとして供給される。そして、低圧供給口6を介して流入された低圧燃料ガスは、低圧供給路16を介して燃料電池1に供給される。なお、駐車中においては、低圧供給路16を介して供給される低圧燃料ガスに加えて、燃料タンク4に蓄えられた高圧燃料ガスを用いて燃料電池1を発電させてもよい。
【0020】
三方弁7の上流側の低圧供給路16には流量センサ21が設けられており、流量センサ21によって外部から流入する低圧燃料ガスの流量が取得される。三方弁7の下流側には圧力センサ22が設けられており、圧力センサ22により燃料電池1に供給される燃料ガスの圧力が取得される。また、燃料電池1には、出力される電圧及び電流を取得可能な電力センサ23が設けられている。電力センサ23において取得される電圧及び電流を用いることで、燃料電池1の単位時間あたりの発電量(出力)を得ることができる。
【0021】
ここで、燃料電池1において、供給される燃料ガスの圧力(供給圧)は流量(供給量)に応じて定まり、かつ、燃料ガスの供給量と発電量とは相関がある。そのため、燃料電池1においては、電力センサ23により取得される燃料電池1の出力電力(発電量)が所望の出力となるように、圧力センサ22により取得される燃料ガスの供給圧を用いて、燃料電池1への燃料ガスの供給流量が制御される。また、燃料電池1への燃料ガスの供給口に圧力センサ22に替えて流量センサを設け、流量センサにより取得された燃料ガスの流量を用いて、燃料電池1を制御してもよい。
【0022】
コントローラ10は、流量センサ21、圧力センサ22、及び、電力センサ23による取得値、及び、バッテリ2の充電状態(SOC)に基づいて、三方弁7、調整弁8及びブロワ9を制御して、後述の燃料電池1の発電制御を行う。
【0023】
なお、コントローラ10は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RΑM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたコンピュータで構成される。コントローラ10は一つのデバイスとして構成されていても良いし、複数のブロックに分けられ、本実施形態の各処理を複数のブロックで分散処理するように構成されていても良い。また、後述の図示されるフローチャートに示される処理は、コントローラ10に記憶されたプログラムが実行されることにより行われてもよい。
【0024】
図2は、燃料電池1におけるバッテリ2の充電制御を示すフローチャートである。なお、この充電制御によれば、車両100の自宅での駐車中において、外部から低圧供給口6に低圧燃料ガスが供給されている状態で燃料電池1を発電させることにより、バッテリ2を充電する。また、ユーザの操作に応じて、バッテリ2の目標SOC、及び、充電終了時刻が設定され、コントローラ10は、充電終了時刻において目標SOCとなるように、燃料電池1への燃料ガスの供給量を制御する。さらに、ユーザの操作に応じて、燃料タンク4の高圧燃料ガスの使用可否が設定でき、コントローラ10は、高圧燃料ガスの使用が許可されている場合に、高圧燃料ガスを燃料電池1に供給する。
【0025】
ステップS1において、コントローラ10は、流量センサ21により取得される低圧燃料ガスの外部からの供給量に基づいて、外部から低圧燃料ガスが低圧供給口6を介して供給されているか否かを判定する。低圧燃料ガスの供給量が正である場合には、低圧燃料ガスが供給されていると判定し(S1:Yes)、コントローラ10は、次に、ステップS2の処理を行う。低圧燃料ガスの供給量がゼロである場合には、低圧燃料ガスが供給されていないと判定し(S1:No)、コントローラ10は、次に、ステップS6の処理を行う。
【0026】
ステップS2において、コントローラ10は、ユーザにより設定されたSOC目標値、充電終了時刻、及び、燃料タンク4の燃料ガスの使用可否の設定を読み出す。あわせて、コントローラ10は、バッテリ2の充電状態(SOC)を取得する。
【0027】
ステップS3において、コントローラ10は、ユーザ要求出力の下限値を算出する。詳細には、図3に示されるように、コントローラ10は、現在時刻から充電終了時刻までの充電時間、及び、現在のSOCからSOC目標値までのSOC増加量を求め、SOC増加量を充電時間で除することにより、単位時間あたりのSOC増加量を求める。そして、コントローラ10は、単位時間あたりのSOC増加量を得るために必要な単位時間あたりの燃料電池1の出力を、ユーザ要求出力の下限値として算出する。そして、以降の制御において、燃料電池1は、出力がユーザ要求出力を上回るように制御される。
【0028】
ステップS4において、コントローラ10は、燃料電池1の運転条件を定める。例えば、燃料電池1の内部温度等が取得され、燃料電池1の運転に必要な条件が定められる。
【0029】
ステップS5において、コントローラ10は、燃料電池1の発電制御を行う。この発電制御の詳細な説明は、後に図4A~4F、5を用いて説明する。
【0030】
ステップS6において、コントローラ10は、バッテリ2のSOCが設定された目標SOCを上回ると、充電制御を終了する。
【0031】
次に、ステップS5における発電制御について、図4A~4Eを用いて概要を説明するとともに、図5を用いて詳細な制御を説明する。
【0032】
まず、本発電制御の概要について説明する。外部から低圧燃料ガスが供給されている状態においてバッテリ2を充電するために、低圧燃料ガスが安定的に供給されることを前提とした定常制御が行われる。しかしながら、家庭等において低圧燃料ガスが供給される場合、家庭内での燃料ガスの使用等の理由により、低圧燃料ガスの供給量が変動により減少することがある。そこで、低圧燃料ガスの供給量の減少が検知された場合には、さらに、燃料電池1の出力がユーザ要求出力を上回るように変動抑制制御が行われる。
【0033】
燃料電池1においては、出力(単位時間当たりの発電量)を大きくする場合、燃料ガスの流入量を大きくする。また、燃料電池1においては、出力に応じて単位出力あたりの燃料ガスの消費量が変化する。以下では、単位出力あたりの燃料消費量が最高となる運転点を、最高効率運転点と称し、最高効率運転点における燃料電池1の出力を、最高効率出力と称するものとする。
【0034】
まず、図4A~4Cを用いて、低圧燃料ガスの供給量が安定していることを前提とした定常制御について説明する。なお、燃料電池1への燃料ガスの供給量は、燃料電池1への燃料ガスの供給圧と相関があるため、以下においては、圧力センサ22により取得される供給圧により定めらえる燃料ガスの供給流量に応じて制御が行われるものとして説明する。
【0035】
図4Aは、ユーザ要求出力が最高効率出力と等しい場合における通常制御の説明図である。この図においては、下部に、燃料電池1への燃料ガスの供給流量と出力との関係が示されており、上部に、燃料電池1の運転効率と出力との関係が示されている。
【0036】
下図においては、縦軸には、燃料電池1への燃料ガスの供給流量が示されており、横軸には、燃料電池1の出力が示されている。この図に示されるように、燃料ガスの供給流量が大きくなるほど、燃料電池1の出力が大きくなる。
【0037】
上図においては、縦軸には、燃料電池1への運転効率が示されており、横軸には、燃料電池1の出力が示されている。燃料電池1は、最高効率運転点において運転効率が最高となり、出力あたりの燃料ガスの消費量が最低となる。なお、最高効率運転点に応じた最高効率出力がし示されている。
【0038】
定常制御においては、下図において実線で左下方から中央に向かって示されるように、定常制御の開始時に、コントローラ10は、三方弁7の低圧供給路16側の弁を開弁し、その後、開弁量を大きくする。その結果、低圧燃料ガスの燃料供給量が徐々に大きくなり、燃料電池1への燃料ガスの供給流量が増加する。そして、供給流量が、最高効率出力に応じた供給流量Aとなった時点において、コントローラ10は、開弁操作を終了する。このようにすることで、定常制御において、燃料電池1の出力をユーザ要求出力とすることができる。
【0039】
なお、定常制御においては、三方弁7の高圧供給路15側の弁は閉じられている。また、三方弁7の低圧供給路16側の弁の開弁量は、定常制御において定められると、以降においては変化しない。そのため、一点鎖線で示されるように、低圧燃料ガスの供給量は定常制御により定められた最高効率運転点に応じた供給流量Aのままとなる。
【0040】
図4Bは、ユーザ要求出力が最高効率出力を上回る場合における通常制御の説明図である。
【0041】
ユーザ要求出力が最高効率出力を上回る場合には、コントローラ10は、三方弁7の低圧供給路16側の弁を操作して、燃料電池1への供給流量をユーザ要求出力に応じたBとする。供給流量Bは最高運転効率点と対応する供給流量Aよりも大きいため、燃料電池1の運転効率は最高とはならないが、燃料電池1をユーザ要求出力で動作させることができる。
【0042】
図4Cは、ユーザ要求出力が最高効率出力を下回る場合における通常制御の説明図である。
【0043】
ユーザ要求出力が最高効率出力を下回る場合には、コントローラ10は、三方弁7の低圧供給路16側の弁を操作して、低圧燃料ガスの供給流量を最高運転効率点に応じた供給流量Aとする。供給流量Aはユーザ要求出力に対応する供給流量Cよりも大きいが、供給流量Aとなることにより最高運転効率で燃料電池1を運転できる。このように燃料電池1の運転効率が高められることにより、SOC目標値となるまでに要する低圧燃料ガスの総供給量を抑制しながら、燃料電池1を、ユーザ要求出力を上回る出力で発電させることができる。
【0044】
次に、図4D~4Eを用いて、低圧燃料ガスの供給流量が低下した場合における変動抑制制御について説明する。
【0045】
図4Dは、ユーザ要求出力が最高効率出力を上回る場合において、低圧燃料ガスの供給流量が変動により低下した場合における、変動抑制制御の説明図である。
【0046】
低圧燃料ガスの流量が低下する前においては、ユーザ要求出力が最高効率出力を上回るため、図4Bに示された定常制御が行われており、ユーザ要求出力に対応する供給流量Bの低圧燃料ガスが燃料電池1に供給されている。このような状態において、低圧燃料ガスの流量が低下して供給流量がDとなる場合に、本変動抑制制御が行われる。
【0047】
まず、変動抑制制御の前段の定常制御において、三方弁7の低圧供給路16側の弁の開弁量は、ユーザ要求出力に応じて定められると以降においては変化せず、また、三方弁7の高圧供給路15側の弁は閉じられている。そして、低圧燃料ガスの供給流量が変動により供給流量Dに低下した場合において、本変動抑制制御が行われえる。
【0048】
変動抑制制御において、三方弁7における低圧供給路16側の弁は操作されず、低圧燃料ガスの供給流量は供給流量Dとなる。そして、太線で示されるように、三方弁7における高圧供給路15側の弁を操作して、高圧燃料ガスをアノード供給路11へと流入させて、燃料ガスの供給流量を大きくする。三方弁7における高圧供給路15側の弁を操作して供給流量をΔだけ大きくすることで、燃料電池1への燃料ガスの供給流量がBとなり、その結果、燃料電池1の出力が大きくなりユーザ要求出力となる。
【0049】
図4Eは、ユーザ要求出力が最高効率出力を下回る場合において、低圧燃料ガスの供給流量の低下量が比較的少ない場合における変動抑制制御の説明図である。
【0050】
低圧燃料ガスの流量が低下する前においては、ユーザ要求出力が最高効率出力を下回るため、図4Cに示された変動制御が行われており、最高効率出力に対応する供給流量Aの低圧燃料ガスが燃料電池1に供給されている。このような状態において、低圧燃料ガスの流量が低下して供給流量がEとなる場合に、本変動抑制制御が行われる。なお、低圧燃料ガスの供給流量の低下量は比較的小さく、供給流量低下後の供給流量Eと対応する燃料電池1の出力は、ユーザ要求出力を上回るものとする。
【0051】
このような場合には、低圧燃料ガスの供給流量の低下後においても、燃料電池1の出力はユーザ要求出力を上回るため、三方弁7の高圧供給路15側の弁を閉じたままとして、燃料タンク4から高圧燃料ガスの供給を行わない。その結果、燃料タンク4に貯蔵された高圧燃料ガスを用いることなく、燃料電池1を、ユーザ要求出力を上回る出力で発電することができる。
【0052】
図4Fは、ユーザ要求出力が最高効率出力を下回る場合において、低圧燃料ガスの供給流量の低下量が比較的大きい場合における変動抑制制御の説明図である。
【0053】
低圧燃料ガスの流量が低下する前においては、ユーザ要求出力が最高効率出力を下回るため、図4Cに示された変動制御が行われており、最高効率出力に対応する供給流量Aの低圧燃料ガスが燃料電池1に供給されている。このような状態において、低圧燃料ガスの流量が低下して供給流量Fとなる場合に、本変動抑制制御が行われる。なお、低圧燃料ガスの供給流量の低下量は比較的大きく、低圧燃料ガスの供給流量低下後の供給流量Fと対応する燃料電池1の出力は、ユーザ要求出力を下回るものとする。
【0054】
このような場合には、燃料電池1の出力がユーザ要求出力を上回るようにするために、コントローラ10は、三方弁7の高圧供給路15側の弁を開き、燃料タンク4から高圧燃料ガスをアノード供給路11へと流入させる。その結果、燃料ガスの供給流量はΔだけ大きくなり、ユーザ要求出力に応じたF’となる。その結果、コントローラ10は、燃料電池1をユーザ要求出力で発電させることができる。
【0055】
なお、図4D及び4Fを用いて説明された変動抑制制御においては、燃料タンク4に蓄えられた高圧燃料ガスが用いられた。しかしながら、燃料タンク4に蓄えられた高圧燃料ガスを変動抑制制御に用いるか否かについては、予めユーザが設定することができる。
【0056】
高圧燃料ガスの利用が許可されている場合には、コントローラ10は、上述の変動抑制制御を実行する。しかしながら、高圧燃料ガスの利用が許可されていない場合には、コントローラ10は、上述の変動抑制制御を実行しない。すなわち、図4Dの制御においては、燃料ガスの供給流量はDのままで、燃料電池1は流量低下後の供給流量Dに応じた出力で発電を行う。図4Fの制御においては、燃料ガスの供給流量はFのまま、燃料電池1は流量低下後の供給流量Fに応じた出力で発電を行う。
【0057】
以下では、これらの図4A~4Fに示された制御を、一連の処理で実行する充電制御について説明する。
【0058】
図5は、図2のステップS5における充電制御の詳細を示すフローチャートである。この図においては、ステップS501~S506において定常制御(図4A~4C)が行われ、ステップS507~S516においては変動抑制制御(図4D~4F)が行われる。以下、これらの制御の詳細について説明する。
【0059】
ステップS501において、コントローラ10は、三方弁7、調整弁8、及び、ブロワ9を操作して、燃料電池1へのアノードガス及びカソードガスの供給を開始する。コントローラ10は、高圧供給路15に設けられた調整弁8を閉じた状態で、三方弁7の低圧供給路16の弁を開く。その結果、燃料電池1には低圧供給口6から低圧燃料ガスが供給される。
【0060】
ステップS502において、コントローラ10は、流量センサ21、圧力センサ22、及び、電力センサ23による計測値を取得する。なお、以下においては、コントローラ10は、流量センサ21により取得される低圧燃料ガスの流量、及び、圧力センサ22により取得される圧力を参照しながら、三方弁7を操作する。その結果、電力センサ23により取得される燃料電池1の出力(単位時間あたりの電力)を、ユーザ要求出力よりも大きくなるように制御する。
【0061】
ステップS503において、コントローラ10は、燃料電池1の出力がステップS4において取得されたユーザ要求出力となるように、三方弁7の低圧供給路16の弁を操作して、発電を開始させる。なお、ユーザ要求出力となるような燃料電池1への燃料ガスの供給圧及び供給量を、要求供給圧及び要求供給量と称するものとする。また、本充電制御においては、以降において三方弁7の低圧供給路16の弁は操作されないため、外部要因がなければ、供給流量は規定圧のまま変化しない。
【0062】
ステップS504において、コントローラ10は、流量センサ21により取得される外部からの低圧燃料ガスの供給量が、要求供給量以上であるか否かを判定する。低圧燃料ガスの供給量が要求供給量以上である場合には(S504:Yes)、コントローラ10は、低圧燃料ガスの流量低下が発生していないと判断し、次に、ステップS505の処理を行う。低圧燃料ガスの供給量が要求供給量を下回る場合には(S504:No)、コントローラ10は、低圧燃料ガスの流量低下が発生したと判断し、次に、ステップS507の処理を行う。
【0063】
ステップS505において、コントローラ10は、バッテリ2のSOCがSOC目標値以上であるか否かを判定する。SOCがSOC目標値以下である場合には(S505:Yes)、コントローラ10は、バッテリ2の充電を継続させるために、次に、ステップS504の処理を行う。SOCがSOC目標値を上回る場合には(S505:No)、コントローラ10は、バッテリ2の充電をこれ以上行う必要がないと判断して、充電を停止するために、次に、ステップS506の処理を行う。
【0064】
ステップS506において、コントローラ10は、三方弁7、調整弁8、及び、ブロワ9を操作して、燃料電池1の駆動を停止させる。
【0065】
次に、ステップS507~S515に示される変動抑制制御について説明する。これらの変動抑制制御は、図4D~4Fに示された制御と対応しており、低圧燃料ガスの供給量が要求供給量を下回る場合に(S504:No)、燃料タンク4に蓄えられた高圧燃料ガスを用いて、低圧燃料ガスの流量の低下分の全部または一部が補われる。
【0066】
詳細な各ステップの説明の前に、変動抑制制御の概略について説明する。
【0067】
変動抑制制御においては、まず、最高効率出力とユーザ要求出力との比較が行われ(S507)、ユーザ要求出力が最高効率出力以上となる場合には(S507:No)、以降のステップS508~S510において、図4Dに示される変動抑制制御が行われる。
【0068】
一方、ユーザ要求出力が最高効率出力を下回る場合には(S507:Yes)、さらに、流量低下後の燃料電池1の出力とユーザ要求出力との比較が行われる(S512)。流量低下後の出力がユーザ要求出力以上となる場合には(S512:Yes)、ステップS513において、図4Eに示される変動抑制制御が行われる。流量低下後の出力がユーザ要求出力を下回る場合には(S512:No)、ステップS514~S516において、図4Fに示される変動抑制制御が行われる。
【0069】
以下では、このような変動抑制制御における各ステップの詳細な動作の説明を行う。
【0070】
ステップS507において、コントローラ10は、最高効率出力がユーザ要求出力以上となるか否かを判定する。最高効率出力がユーザ要求出力を下回る場合には(S507:No)、コントローラ10は、図4Dに示される変動抑制制御を行うために、次に、ステップS508の処理を行う。一方、最高効率出力がユーザ要求出力以上となる場合には(S507:Yes)、コントローラ10は、図4E又は図4Fに示される変動抑制制御を行うために、次に、ステップS512の処理を行う。
【0071】
まず、ステップS508~S511の図4Dに示される変動抑制制御について説明する。
【0072】
ステップS508において、コントローラ10は、ユーザの設定により高圧燃料ガスの使用が許可されているか否かについて判定する。高圧燃料ガスの使用が許可されている場合には(S508:Yes)、コントローラ10は、高圧燃料ガスを用いた変動抑制制御を行うために、次に、ステップS509の処理を行う。一方、高圧燃料ガスの利用が許可されていない場合には(S508:No)、コントローラ10は、高圧燃料ガスを用いた変動抑制制御を行わず、次に、ステップS510の処理を行う。
【0073】
ステップS509においては、コントローラ10は、三方弁7の高圧供給路15の側の弁を操作して高圧燃料ガスの供給を開始し、燃料ガスの燃料電池1への供給流量を、ユーザ要求出力に応じた供給流量Bに変更する。このようにすることで、燃料電池1の出力は変更されずに、ユーザ要求出力とすることができる。
【0074】
一方、ステップS510においては、コントローラ10は、高圧燃料ガスの供給制御を行わないため、燃料ガスの燃料電池1への供給流量は、流量低下後の供給流量Dとなる。その結果、燃料電池1の出力は、供給流量Dに応じた出力に変更される。
【0075】
そして、ステップS511においては、再度、ステップS504と同様の判定処理が行われる。コントローラ10は、流量センサ21により取得される低圧燃料ガスの供給量が、要求供給量以上であるか否かを判定し、低圧燃料ガスの供給量が要求供給量よりも小さい場合には(S511:No)、コントローラ10は、低圧燃料ガスの流量低下が継続しているため、引き続き変動抑制制御を行うべきと判断し、次に、ステップS507の処理を行う。低圧燃料ガスの供給量が要求供給量以上である場合には(S511:Yes)、コントローラ10は、低圧燃料ガスの変動に起因する流量低下が終了し、変動抑制制御に替えて定常制御を行えると判断し、次に、ステップS505の処理を行う。
【0076】
次に、ステップS512~S516の図4E又は図4Fに示される変動抑制制御について説明する。
【0077】
まず、ステップS512において、コントローラ10は、低下後の供給流量に応じた燃料電池1の出力が、ユーザ要求出力以上となるか否かについて判定する。低下後の供給流量に応じた出力が、ユーザ要求出力以上となる場合には(S512:Yes)、コントローラ10は、図4Eに示された変動抑制制御を行うために、次に、ステップS513の処理を行う。低下後の供給流量に応じた出力が、ユーザ要求出力を下回る場合には(S512:No)、コントローラ10は、図4Fに示された変動抑制制御を行うために、次に、ステップS514の処理を行う。
【0078】
ステップS513においては、高圧燃料ガスの供給制御が行われないため、燃料ガスの供給流量は、流量低下後の供給流量となる。その結果、燃料電池1の出力は、低下した供給流量に応じた出力に変更される。
【0079】
本ステップS513の処理が、ステップS512の判定処理の後に行われる場合には、図4Eに示されるように、燃料電池1の出力は、流量低下後の供給流量Eに対応する出力に変更される。また、後述のように、本ステップS513の処理が、ステップS514の判定処理の後に行われる場合には、図4Fに示されるように、燃料電池1の出力は、流量低下後の供給流量Fに対応する出力に変更される。
【0080】
一方、ステップS514においては、ステップS508と同様に、コントローラ10は、ユーザの設定により高圧燃料ガスの利用が許可されているか否かについて判定する。高圧燃料ガスの利用が許可されている場合には(S514:Yes)、コントローラ10は、高圧燃料ガスを用いた変動抑制制御を行うために、次に、ステップS515の処理を行う。一方、高圧燃料ガスの利用が許可されていない場合には(S514:No)、コントローラ10は、高圧燃料ガスを用いた変動抑制制御を行わず、出力を変更するために、次に、ステップS513の処理を行う。
【0081】
ステップS515においては、ステップS509と同様に、コントローラ10は、三方弁7の高圧供給路15の側の弁を操作して高圧燃料ガスの供給を開始する。これにより、燃料ガスの燃料電池1への供給流量は、ユーザ要求出力に応じた供給流量F’に変更される。このようにすることで、燃料電池1の出力はユーザ要求出力となる。
【0082】
ステップS516において、燃料ガスの燃料電池1への供給流量は、供給流量F’に変更されているため、燃料電池1の出力は変更されずに、ユーザ要求出力とすることができる。
【0083】
このような充電制御が行われることにより、定常制御が行われている場合に、低圧燃料ガスの流量低下が検出された場合には、変動抑制制御が行われ、燃料電池1の出力がユーザ要求出力とすることができる。
【0084】
なお、上述の実施形態においては、定常制御においては、高圧燃料ガスの供給が行われなかったが、これに限らない。定常制御において高圧燃料ガスの供給が行われてもよい。このような場合には、低圧燃料ガスの減少分を補うように、高圧燃料ガスの供給量を大きくすればよい。
【0085】
また、上述の実施形態においては、流量センサ21により測定される低圧燃料ガスの供給量を用いて、ステップS504における低圧燃料ガスの流量の低下の検出を行ったが、これに限らない。圧力センサ22、または、電力センサ23の計測値を用いて、ステップS504における低圧燃料ガスの流量の低下を検出してもよい。また、圧力センサ22を用いて変動抑制制御を行わずに、電力センサ23を用いて変動抑制制御を行ってもよい。
【0086】
また、上述の実施形態においては、燃料電池1の出力はバッテリ2の充電に用いられる例について説明したが、これに限らない。車両100の外部に供給するように構成されてもよい。そのような場合には、コントローラ10には、予め設定された外部へのユーザ要求出力に基づいて、ステップS5に示される発電制御が行われる。
【0087】
また、上述の実施形態においては、燃料タンク4に蓄えられた炭化水素が燃料電池1に供給されたが、これに限らない。車両100は、燃料タンク4に含水エタノール等の液体の炭化水素燃料を蓄え、車両100が、燃料タンク4と三方弁7との間に設けられる蒸発器、及び、燃料電池1と三方弁7との間に設けられる改質器を備えてもよい。このような場合には、燃料タンク4に蓄えられた液体の炭化水素燃料は、蒸発器において気化された後に、改質器においてアノードガス(水素)に改質されて、燃料電池1にされる。また、低圧供給口6から都市ガス等の炭化水素燃料が供給され、三方弁7において気化された高圧燃料ガスと混合されて、改質器においてアノードガスに改質される。
【0088】
なお、上記実施形態によれば、燃料タンク4からの高圧燃料ガスが供給されずに、外部から低圧燃料ガスが要求供給量だけ供給された状態で、燃料電池1の発電を開始し、車両100の外部からの燃料ガスの供給量が変動により低下する場合には(S504:No)、燃料タンク4からの燃料ガスの供給量を増加させて、燃料電池1への燃料ガスの供給量をユーザ要求出力に応じた所定量としたが、これに限らない。外部からの低圧燃料ガスに加えて燃料タンク4からの高圧燃料ガスの供給が行われている状態で、低圧燃料ガス及び高圧燃料ガスが要求供給量だけ燃料電池1に供給されていてもよい。
【0089】
このような場合に、燃料電池1が発電を開始し、低圧燃料ガスの供給量が変動により増加して所定の供給量を上回る場合には、燃料タンク4からの高圧燃料ガスの供給量を減少させて、燃料電池1への燃料ガスの供給量を所定量とする。このように、コントローラ10は、低圧燃料ガスの供給量の変動(減少又は増加)を検出した場合に、高圧燃料ガスの供給量を増加又は減少させるように調整することで、燃料電池1への燃料ガスの供給量をユーザ要求に応じた所定量とすることができる。
【0090】
また、本実施形態においては、燃料電池1により発電された電力はバッテリ2に充電されたが、これに限らない。発電された電力は、外部へ供給されて消費されてもよいし、外部(例えば家)に設けられたバッテリに充電されてもよい。
【0091】
本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0092】
本実施形態の燃料電池車両の制御方法によれば、車両100の外部から低圧燃料ガスが供給されている状態において、車両100の外部からの燃料ガスの供給量が変動する場合には(S504:No)、燃料タンク4からの燃料ガスの供給量を調整して、燃料電池1への燃料ガスの供給量を所定量とする。図5の例においては、車両外部からの燃料ガスの供給量が低下する場合には(S504:No)、燃料タンク4からの燃料ガスの供給量を増加させて、燃料電池1への燃料ガスの供給量を所定量とする(S509、S515)。
【0093】
例えば、車両100の外部において低圧燃料ガスが一時的に大量に消費されるような場合には、外部から供給される低圧燃料ガスの供給量が減少する。このような場合であっても、燃料タンク4に蓄えられる高圧燃料ガスを用いて、低圧燃料ガスの減少分が補われるため、燃料電池1における燃料ガスの供給量が増加して、ユーザ要求出力を実現することができる。
【0094】
本実施形態の燃料電池車両の制御方法によれば、車両100は、高圧ガスが通る高圧供給路15、低圧ガスが通る低圧供給路16、及び、燃料電池1にアノード供給路11と接続される三方弁7を備える。そして、車両外部からの燃料ガスの供給量が低下する場合には(S504:No)、三方弁7の高圧供給路15の側の弁の開弁量を大きくすることで、燃料タンク4からの燃料ガスの供給量を増加させて、燃料電池1への燃料ガスの供給量を増加させる(S509、S515)。このようにすることで、外部からの低圧燃料ガスの供給量が低下する場合であっても、高圧燃料ガスによりその低下分が補われるので、燃料電池1の出力を安定させることができる。
【0095】
本実施形態の燃料電池車両の制御方法によれば、定常制御、及び、変動抑制制御において、燃料電池1への燃料ガスの供給量は、燃料電池1がユーザ要求出力で動作する場合における燃料ガスの要求供給量を上回るように、制御される。図3に示されるように、外部から低圧燃料ガスが供給される状態においては、ユーザの設定に応じて燃料電池1のユーザ要求出力が定められる。
【0096】
そして、定常制御が行われる場合だけでなく、低圧燃料ガスの流量が低下するような場合における変動抑制制御が行われる場合においても、燃料電池1の出力がユーザ要求出力を上回るように制御されることで、ユーザの設定に応じた燃料電池1の発電、及び、その発電電力を用いたバッテリ2の充電を行うことができる。
【0097】
本実施形態の燃料電池車両の制御方法によれば、要求供給量が、燃料電池の運転効率が最高となる場合における前記燃料ガスの最高運転供給量を上回るか否かを判定し、要求供給量が最高運転供給量を上回る場合には、車両外部からの低圧燃料ガスの供給量を要求供給量とする(図4B:供給流量B)。このような制御により、燃料電池1の運転効率は最高とはならないが、燃料タンク4に貯蔵された高圧燃料ガスを用いることなく、燃料電池1をユーザ要求出力で動作させることができ、その結果、所望の期間で所望の電力をバッテリ2に充電させることができる。
【0098】
また、要求供給量が最高運転供給量を下回る場合には、車両外部からの低圧燃料ガスの供給量を最高運転供給量とする(図4C:供給流量A)。このような制御により、燃料タンク4に貯蔵された高圧燃料ガスが用いられない。さらに、燃料電池1の運転効率が良くなるため、SOC目標値となるまでに要する低圧燃料ガスの総供給量を抑制しながら、ユーザ要求出力を実現することができる。
【0099】
本実施形態の燃料電池車両の制御方法によれば、図4Dに示されるように、低圧燃料ガスが供給されている状態で、要求供給量が最高運転供給量を上回る場合において(S507:No)、外部からの低圧燃料ガスの供給量が低下する場合には(S504:No)、外部からの燃料ガスの供給量の低下分だけ、燃料タンク4からの燃料ガスの供給量を増加させる(S509)。このようにすることで、外部からの低圧燃料ガスの供給量が低下する場合であっても、高圧燃料ガスにより補われるので、燃料電池1の出力をユーザ要求出力とすることができる。
【0100】
本実施形態の燃料電池車両の制御方法によれば、図4Fに示されるように、低圧燃料ガスが供給されている状態で、要求供給量が最高運転供給量を下回る場合において(S507:Yes)、外部からの低圧燃料ガスの供給量が低下し、燃料ガスの低下後の供給量が、要求供給量を下回る場合には(S512:No)、燃料タンク4からの燃料ガスの供給量を増加させて、燃料電池1への燃料ガスの供給量を要求供給量とする(S515、S516)。このようにすることで、外部からの低圧燃料ガスの供給量が低下する場合であっても、高圧燃料ガスにより補われるので、燃料電池1の出力をユーザ要求出力とすることができる。
【0101】
本実施形態の燃料電池車両の制御方法によれば、図4Eに示されるように、低圧燃料ガスが供給されている状態で、要求供給量が最高運転供給量を下回る場合において(S507:Yes)、外部からの低圧燃料ガスの供給量が低下し、燃料ガスの低下後の供給量が、要求供給量を上回る場合には(S512:Yes)、燃料タンク4からの燃料ガスの供給量を変化させず、燃料電池1を低下後の燃料ガスの供給量に応じた出力とする(S513)。その結果、燃料タンク4に貯蔵された高圧燃料ガスを用いることなく、燃料電池1の出力をユーザ要求出力よりも大きくすることができる。
【0102】
本実施形態の燃料電池車両の制御方法によれば、燃料タンク4からの高圧燃料ガスの供給量の増加が許可されていない場合には(S508:No、S514:No)、車両外部から燃料ガスが供給されている状態において、車両外部からの燃料ガスの供給量が低下する場合には(S504:Yes)、燃料タンク4からの燃料ガスの供給量を増加させずに、燃料電池1を、燃料ガスの低下後の供給量に応じた出力で動作させる(S510、S513)。このようにすることで、ユーザの設定に応じて、燃料タンク4に貯蔵された高圧燃料ガスの使用を抑制することができる。
【0103】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0104】
1 燃料電池
4 燃料タンク
7 三方弁
10 コントローラ
11 アノード供給路(第3供給路)
15 高圧供給路(第1供給路)
16 低圧供給路(第2供給路)
100 車両
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5