(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】パネルユニットを作製するための架台と方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
E04G21/16
(21)【出願番号】P 2020209500
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】添田 智美
(72)【発明者】
【氏名】鴨下 栄紀
(72)【発明者】
【氏名】日村 みのり
(72)【発明者】
【氏名】大久保 雅司
(72)【発明者】
【氏名】松本 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 隆
(72)【発明者】
【氏名】橘 秀俊
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-036575(JP,B1)
【文献】特開昭58-080064(JP,A)
【文献】特開2016-094786(JP,A)
【文献】特開2020-193482(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0283020(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14 -21/22
E04B 2/56 - 2/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパネル、
および前記複数のパネルを支持する複数の胴縁を有するパネルユニットを作製するための架台であって、
前記複数の胴縁が水平方向に配置した状態で前記パネルユニットをその上に搭載可能な回転部を有し、
前記回転部は、水平方向に延伸する回転軸を中心に回転する架台。
【請求項2】
前記回転部は、
前記複数の胴縁を支持するベースフレームと補助フレーム、および
前記ベースフレームと前記補助フレームの下に位置し、前記ベースフレームと前記補助フレームに固定され、互いに平行に配置される一対の回転ロッドを備え、
前記回転軸は、前記一対の回転ロッドの長手方向に垂直である、請求項1に記載の架台。
【請求項3】
前記ベースフレームと前記補助フレームは互いに平行に配置され、
前記回転ロッドは、前記ベースフレームと前記補助フレームに対して垂直に配置される、請求項2に記載の架台。
【請求項4】
前記ベースフレームに取り付けられ、前記ベースフレームから前記補助フレームに向かって延伸し、前記胴縁に挿入されるように構成される複数の第1の胴縁ガイドをさらに有する、請求項2に記載の架台。
【請求項5】
前記複数の第1の胴縁ガイドは、各々前記ベースフレームに沿って移動するように構成される、請求項4に記載の架台。
【請求項6】
前記複数の胴縁を支持し、前記ベースフレームと平行に配置される支持フレームをさらに備え、
前記補助フレームは前記ベースフレームと前記支持フレームの間に配置される、請求項2に記載の架台。
【請求項7】
前記支持フレームに取り付けられ、前記胴縁を挟持するように構成される一対のガイドプレートをそれぞれ備える複数の第2の胴縁ガイドをさらに有する、請求項6に記載の架台。
【請求項8】
前記複数の第2の胴縁ガイドは、前記支持フレームに固定され、
前記支持フレームは、前記支持フレームの長手方向に沿って移動するように構成される、請求項7に記載の架台。
【請求項9】
前記複数の第2の胴縁ガイドは、各々前記支持フレームに沿って移動するように構成される、請求項7に記載の架台。
【請求項10】
前記ベースフレーム、前記補助フレーム、および前記
一対の回転ロッドを支持する一対のメインフレーム、
前記一対のメインフレームを互いに連結するサイドフレーム、ならびに
前記一対のメインフレームまたは前記サイドフレームに支持され、第1の貫通孔を有する一対の回転支持アングルをさらに備え、
前記一対の回転ロッドは、それぞれ前記一対の回転支持アングルに取り付けられ、
前記回転軸は前記第1の貫通孔を通過する、請求項2に記載の架台。
【請求項11】
前記一対の回転ロッドは、それぞれ第2の貫通孔を有し、
前記一対の回転支持アングルの各々は、前記回転ロッドが回転する際に前記第2の貫通孔と前記回転軸に平行な方向で重なる第3の貫通孔を有する、請求項10に記載の架台。
【請求項12】
前記メインフレームまたは前記サイドフレームに連結され、前記回転支持アングルに対して前記補助フレーム側に位置し、前記一対の回転ロッドの回転を制限する一対のストッパアングルをさらに備える、請求項10に記載の架台。
【請求項13】
前記一対の回転ロッドは、それぞれ第4の貫通孔をさらに有し、
前記一対のストッパアングルの各々は、前記回転ロッドが回転する際に前記第4の貫通孔と前記回転軸に平行な方向で重なる第5の貫通孔を有する、請求項12に記載の架台。
【請求項14】
前記ベースフレームと前記補助フレームに直交する基準フレームをさらに備え、
前記基準フレームは、前記ベースフレームと前記補助フレームの片側に配置される、請求項2に記載の架台。
【請求項15】
複数のパネル
、および前記複数のパネルを支持する複数の胴縁を有するパネルユニットを作製するための方法であり、
前記複数の胴縁が水平方向に配置した状態で前記複数のパネルを架台の回転部の上に搭載すること、および
前記パネルユニットの端部を鉛直方向に引き上げながら、水平方向に延伸する回転軸を中心に、前記回転部に前記パネルユニットを支持したまま回転させることを含む方法。
【請求項16】
前記複数の胴縁は前記回転部の上に互いに平行に配置され、
前記複数のパネルは、前記胴縁の上に配置され、
前記回転部は、
前記複数の胴縁を支持するベースフレームと補助フレーム、および
前記ベースフレームと前記補助フレームの下に位置し、前記ベースフレームと前記補助フレームに固定され、前記回転軸に垂直に延伸する一対の回転ロッドを備え、
前記回転軸は、前記複数の胴縁の長手方向に直交し、
前記一対の回転ロッドは、前記回転軸を中心に回転するように構成される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記架台は、前記複数の胴縁を支持し、前記ベースフレームと平行に配置される支持フレームをさらに備え、
前記補助フレームは前記ベースフレームと前記支持フレームの間に配置される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の胴縁の配置は、レーザ墨出し器を用いて前記複数の胴縁と前記ベースフレームとの位置関係を調節しながら行う、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、複数の胴縁とこれらに固定される複数のパネルを有するパネルユニットを作製するための架台、およびこの架台を利用するパネルユニットの作製方法に関する。あるいは、本発明の実施形態の一つは、上記架台を利用した建築物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
倉庫などの物流施設や工場、商業ビルなどの大規模建築物は、建築物の骨格となる躯体を構築し、躯体に外壁やルーバー、建具、窓などが取り付けられて施工されることが多い。この工法では、外壁は複数のパネルユニットで構成され、各パネルユニットは、例えば躯体付近に地組架台を設置し、地組架台において複数の胴縁と複数のパネルを互いに固定することで作製される。その後パネルユニットをクレーンなどの揚重機器を利用して吊り上げ、所定の位置に移動して躯体に取り付ける(特許文献1参照)。この工法では、躯体を取り囲む外部足場を組み立てる必要がなく、作業コストや作業時間の短縮が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の一つは、パネルユニットを作製するための架台、およびこの架台を利用してパネルユニットを作製、設置するための方法を提供することを課題の一つとする。例えば、本発明の実施形態の一つは、天候などの外部環境に大きな影響を受けることなく簡便にパネルユニットを作製することを可能にする架台、およびこの架台を利用してパネルユニットを作製、設置するための方法を提供することを課題の一つとする。あるいは、本発明の実施形態の一つは、上記方法を利用して建築物を施工するための方法を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態の一つは、複数の胴縁と複数のパネルを有するパネルユニットを作製するための架台である。この架台は、パネルユニットをその上に搭載可能な回転部を有し、回転部は、水平方向に延伸する回転軸を中心に回転する。
【0006】
本発明の実施形態の一つは、複数の胴縁と複数のパネルを有するパネルユニットを作製するための方法である。この方法は、複数のパネルを回転部の上に搭載すること、およびパネルユニットの端部を鉛直方向に引き上げながら、水平方向に延伸する回転軸を中心に、回転部にパネルユニットを支持したまま回転させることを含む。
【0007】
本発明の実施形態の一つは、複数の胴縁と複数のパネルを有するパネルユニットが取り付けられた建築物を施工するための方法である。この方法は、架台の上に複数の胴縁を互いに平行に配置すること、複数のパネルを複数の胴縁の上に配置すること、複数のパネルを複数の胴縁に固定すること、複数の胴縁のうち少なくとも一つの端部を引き上げながら、パネルユニットを複数の胴縁の長手方向に直交し、水平方向に延伸する回転軸を中心に回転させること、およびパネルユニットを建築物の躯体に取り付けることを含む。上記回転軸は、複数の胴縁の下に位置してもよい。
【0008】
本発明の実施形態の一つは、ハンガープレートが取り外し可能なように一方の端部に設けられた胴縁である。ハンガープレートには貫通孔が設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態の一つである、建築物の施工方法を示す斜視図と正面図。
【
図3】本発明の実施形態の一つである胴縁の側面図と断面図。
【
図4】本発明の実施形態の一つである胴縁の端部の側面図。
【
図5】本発明の実施形態の一つである架台の平面図。
【
図6】本発明の実施形態の一つである架台の側面図。
【
図7】本発明の実施形態の一つである架台の一部の側面図と平面図。
【
図8】本発明の実施形態の一つである架台の一部の背面図。
【
図9】本発明の実施形態の一つである架台の一部の側面図と斜視図。
【
図10】本発明の実施形態の一つである架台の一部の側面図と正面図。
【
図11】本発明の実施形態の一つである架台の一部の側面図と正面図。
【
図12】本発明の実施形態の一つである架台の一部の側面図と正面図。
【
図13】本発明の実施形態の一つである架台の一部の側面図と正面図。
【
図14】本発明の実施形態の一つである架台の一部の正面図。
【
図15】本発明の実施形態の一つである架台の平面図。
【
図16】本発明の実施形態の一つである架台の平面図。
【
図17】本発明の実施形態の一つである架台の一部の平面図と背面図。
【
図18】本発明の実施形態の一つである架台の平面図。
【
図19】本発明の実施形態の一つである架台の平面図。
【
図20】本発明の実施形態の一つである架台の一部の側面図。
【
図21】本発明の実施形態の一つである架台の一部の斜視図。
【
図22】本発明の実施形態の一つである、パネルユニットの作製方法を示す平面図。
【
図23】本発明の実施形態の一つである、パネルユニットの作製方法を示す平面図。
【
図24】本発明の実施形態の一つである、パネルユニットの作製方法を示す側面図。
【
図25】本発明の実施形態の一つである、パネルユニットの作製方法を示す平面図。
【
図26】本発明の実施形態の一つである、パネルユニットの作製方法を示す側面図。
【
図27】本発明の実施形態の一つである、建築物の施工方法を示す側面図。
【
図28】本発明の実施形態の一つである、建築物の施工方法を示す斜視図。
【
図29】本発明の実施形態の一つである、建築物の施工方法を示す側面図。
【
図30】本発明の実施形態の一つである架台の側面図。
【
図31】本発明の実施形態の一つである、建築物の施工方法を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。ただし、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0011】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。符号が付された要素の一部を表記する際には、符号に小文字のアルファベットが添えられる。
【0012】
<第1実施形態>
本実施形態では、本発明の実施形態の一つに係る、パネルユニット120を作製するための胴縁124、およびパネルユニット120を作製するための架台150について説明する。
【0013】
1.建築物
パネルユニット120が用いられる建築物100の斜視図を
図1(A)に示す。建築物100の大きさやそのデザイン(すなわち立体的形状)、用途に制約はなく、建築物の100が施工される土地の面積や立地条件、建築物100の目的などに応じて適宜設計される。建築物100の外壁は、少なくとも一部が複数のパネルユニット120によって覆われる。パネルユニット120の構造については後述する。
図1(B)の正面図に示すように、建築物100は図示しない杭、あるいは基礎コンクリートに連結される基礎梁102、基礎梁102と連結される躯体104、106を有しており、躯体104、106によって建築物100の外部形状が主に決定される。各パネルユニット120は、建築物100の外側、内部のフロア、または屋上に設置される揚重機(以下、単にクレーンと呼ぶ)110によって吊り上げられ、所定の位置に搬送され、躯体104、106に取り付けられる。
【0014】
2.パネルユニット
2-1.構造
パネルユニット120の背面図と正面図をそれぞれ
図2(A)、
図2(B)に示す。
図2(A)に示される面は建築物100の内側に配置され、
図2(B)において示される面が建築物100の外側に配置される面である。これらの図に示すように、各パネルユニット120は複数の胴縁124と少なくとも一つのパネル122を備える。少なくとも一つのパネル122は複数のパネル122を含んでもよい。胴縁124はパネル122を支持する支持体として機能する。複数の胴縁124は、一方向に延伸し、その長手方向が互いに平行になるように配置される。パネル122の長手方向は胴縁124の長手方向に対して垂直であり、パネル122は胴縁124にボルトやビスによって固定される。
【0015】
パネルユニット120の大きさは任意であり、例えばその幅W(胴縁124の長手方向における、胴縁124に取り付けられたパネル122が形成する面の長さ)は一つのフロアの高さと実質的に同一でもよく、それ以下であってもよい。例えばパネルユニット120の幅Wは、一つのフロアの高さの1/4以上、1/3以上、あるいは1/2以上でもよい。同様に、パネルユニット120の長さL(胴縁124の長手方向に垂直な方向の長さ)も任意であり、例えば1m以上10m以下、2m以上6m以下、3m以上7m以下、5m以上6m以下、あるいは3m以上5m以下でもよい。
【0016】
本発明の実施形態の一つに係る建築物100の施工方法では、複数の胴縁124にパネル122を固定してパネルユニット120を形成した後、建築物100の外側、内部、または屋上に設置されるクレーン110などによって所定の場所にパネルユニット120が搬送される。胴縁124をボルトやビスなどを用いて躯体104、106に固定することにより、建築物100の外壁としてパネルユニット120が取り付けられる。後述するように、パネルユニット120は建築物100の内部、あるいはパネルユニット120を固定する場所の近くで作製することで、パネルユニット120の固定のために躯体104、106の周囲に足場を設置する必要がなくなる。その結果、足場の設置や撤去に要求される作業が不要となり、工期の短縮、作業コストの低減、安全性の向上が可能である。
【0017】
(1)パネル
パネル122は、木材、セメント、金属、ロックウールなどの鉱物繊維、ケイ酸カルシウム、石膏、樹脂などを含み、単層構造、あるいは積層構造を有するように構成される。例えばグラスウールやロックウールなどの鉱物繊維、セルロースファイバーなどの天然高分子由来の繊維、ポリウレタンやポリスチレンを含む発砲プラスチックなどの断熱材、ケイ酸カルシウム、石膏などを板状に加工し、これを一対の金属板や樹脂板、木板などで挟持した構造を採用することができる。金属板を用いる場合、金属板はアルミニウムや鉄などの金属、あるいはステンレスなどの合金などを含むことができ、その表面はアルミニウムや亜鉛を含む合金皮膜で覆われていてもよい。各パネル122の長さ(長手方向の長さ)がパネルユニット120の長さLに相当する。パネル122の幅(長手方向に垂直な長さ)は任意に決定することができ、例えば20cm以上200cm以下、60cm以上100cm以下、30cm以上150cm以下、あるいは30cm以上100cm以下の範囲から選択することができる。図示しないが、各パネル122は、長辺の一つが隣接するパネル122の一部と重なるように構成してもよい。
【0018】
(2)胴縁
胴縁124の側面図を
図3(A)に示す。
図3(B)と
図3(C)は、
図3(A)の鎖線A-A´に沿った断面の模式図である。胴縁124はパネル122を支持、固定し、パネルユニット120に構造的強度を与えてその形状を維持する機能を有する。胴縁124はアルミニウムや鉄などの金属、あるいはステンレスなどの合金、木材、あるいは樹脂を含む、直線状に延伸するフレームである。胴縁124は、一方向に延伸する板、中空管、あるいは空洞を持たないロッドでもよい。例えば胴縁124は、
図3(B)に示すように、所謂リップ付き溝形鋼でもよく、あるいは
図3(C)に示すように、断面が閉じた形状を有する角鋼管でもよい。図示しないが、胴縁124は、リップを持たない溝形鋼(平行フランジ溝形鋼)やH鋼でもよい。胴縁124の外表面の少なくとも一部は、胴縁124が延伸する方向の全体にわたって平坦であり、この平坦面124aの上にパネル122が配置される。胴縁124の長さや幅、厚さは任意であり、例えば日本工業規格(JIS)G 3350を満たすように構成してもよい。
【0019】
(3)吊治具
複数の胴縁124のうち少なくとも一つ、好ましくは二つは、本発明の実施形態の一つである、吊治具130が設けられた胴縁である。吊治具130は、胴縁124に対して取り外し可能なように、胴縁124の一方の端部に取り付けられる(
図3(A))。
図4(A)に詳細に示すように、吊治具130はハンガープレート134を有し、ハンガープレート134は胴縁124の一方の端部に着脱可能なように、図示しないボルトやねじを用いて取り付けられる。ハンガープレート134は胴縁124に直接取り付けられていてもよく、連結プレート132を介して胴縁124に取り付けられていてもよい。
【0020】
ハンガープレート134には、クレーン110でパネルユニット120を吊り上げる際に利用される貫通孔138が設けられる。任意の構成として、貫通孔138を中心として回転可能なピン136をハンガープレート134に設けてもよい(
図4(B))。この場合、ピン136に貫通孔140が設けられ、この貫通孔140を利用してクレーン110と胴縁124との連結が行われる。さらに、ハンガープレート134には貫通孔142を追加的に設けてもよい。詳細は後述するが、この貫通孔142に介錯ロープを通し、介錯ロープを介してパネルユニット120の移動や回転などを制御することが可能となる。あるいは、この貫通孔142を用い、胴縁124を安定的に架台150上に固定することができ、これによってパネル122を胴縁124に固定する際の位置ずれを防止することができる。
【0021】
3.架台
以下、パネルユニット120を作製するために用いることができる架台150について、
図5から
図17を用いて説明する。
【0022】
図5と
図6に架台150の平面図と側面図をそれぞれ示す。
図5と
図6では、参考のため、一本の胴縁124が点線で示されている。これらの図に示すように、架台150は、ベースフレーム152、補助フレーム154、および一対の回転ロッド160を基本的な構成として備える。架台150は、連結フレーム156や支持フレーム158をさらに備えてもよい。ベースフレーム152、支持フレーム158、および補助フレーム154は互いに平行に配置され、一対の回転ロッド160は、ベースフレーム152、支持フレーム158、および補助フレーム154に対して垂直に配置される。補助フレーム154は、ベースフレーム152と略平行に配置することができる。支持フレーム158を設ける場合には、補助フレーム154はベースフレーム152と支持フレーム158の間に配置される。本実施形態に係る架台150では、後述するように、ベースフレーム152、補助フレーム154、および一対の回転ロッド160が互いに固定され、架台150は回転部としてパネルユニット120を回転する機能を有する。
【0023】
架台150はさらに、ベースフレーム152、支持フレーム158、補助フレーム154、連結フレーム156、および一対の回転ロッド160を支持するための一対のメインフレーム170や、一対のメインフレーム170を互いに連結するための複数のサイドフレーム172を有することができる。ベースフレーム152、支持フレーム158、補助フレーム154、連結フレーム156、および一対の回転ロッド160などは、メインフレーム170またはメインフレーム170上に設けられる種々のアングルによって支持される。以下、一対のメインフレーム170が延伸する方向をx方向とし、これに垂直であり、サイドフレーム172が延伸する方向をy方向とする。xy平面は水平面であり、これに対する鉛直方向をz方向とする。z方向は高さを規定する方向である。
【0024】
3-1.メインフレームとサイドフレーム
メインフレーム170は互いに平行に延伸し、これらに直交するように配置されるサイドフレーム172がメインフレーム170同士を固定することによって架台150に構造的強度が与えられる。サイドフレーム172の数に制限はなく、少なくとも二つ、またはそれ以上であればよい。図示しないが、メインフレーム170も三つ以上設けてもよい。メインフレーム170とサイドフレーム172の断面形状は任意に選択され、メインフレーム170とサイドフレーム172は、それぞれ角鋼管、丸鋼管、H鋼、あるいは山形鋼などであってもよい。メインフレーム170とサイドフレーム172は溶接、あるいはボルトによって互いに固定される。
【0025】
任意の構成として、メインフレーム170には、架台150の移動を補助するためのキャスター184、架台150の位置を固定し、高さを調整するためのアジャスター182、架台150の形状をより安定化させるための一対のコンブレース180などが取り付けられてもよい。アジャスター182やキャスター184の位置は、架台150の重心や形状を考慮して適宜決定すればよい。後述するように、建築物100の施工時、パネルユニット120は架台150上で回転され、その後鉛直方向に引き上げられる。このため、アジャスター182を用いて架台150の高さを調整することで、パネルユニット120の回転に必要な空間を調整することができる。一対のコンブレース180は、一対のメインフレーム170と二つのサイドフレームの交点を対角的に結ぶように設けられ、これにより、架台150の変形が抑制される。
【0026】
3-2.アングル
メインフレーム170またはサイドフレーム172には、種々のアングルが設けられ、これらのアングルにベースフレーム152、支持フレーム158、補助フレーム154、連結フレーム156、および回転ロッド160が取り付けられる。なお、アングルとは、狭義にはL字の断面形状を有する山形鋼を指すが、本発明の実施形態においては、各種アングルの断面形状に制約はなく、山形鋼やH鋼、角鋼管、丸鋼管などもアングルとして使用することができる。また、アングルに含まれる材料にも制約はなく、鉄やアルミニウム、ステンレスなどの金属、木材、強化繊維プラスチックでもよい。
【0027】
より詳細には、メインフレーム170またはサイドフレーム172には、これらに連結される一対の回転支持アングル190、一対の対向アングル192、および一対のストッパアングル194が設けられる。これらのアングルは、好ましくはz方向に延伸する。回転支持アングル190は、回転ロッド160を支持し、さらに回転ロッド160上に固定されるベースフレーム152、補助フレーム154、および連結フレーム156を支持する。ストッパアングル194は、回転ロッド160の回転を制限するために設けられる。対向アングル192は、支持フレーム158を支持するために設けられる。任意の構成として、ハンドルアングル196をメインフレーム170またはサイドフレーム172に設け、ハンドルアングル196にハンドル174を固定してもよい。ハンドル174を設けることで、架台150の移動を容易に行うことができる。
【0028】
(1)回転支持アングルと回転ロッド
回転支持アングル190とその周辺構造の側面図を
図7(A)と
図9(A)に、平面図を
図7(B)に、背面図を
図8に示す。回転支持アングル190はメインフレーム170に直接または間接的に連結され、ベースフレーム152と補助フレーム154の間に位置するように設けられる。回転支持アングル190の上端側には、y方向、すなわち、回転ロッド160の長手方向に対して垂直な方向に貫通孔190aが設けられる(
図7(A))。一方、回転ロッド160にも貫通孔(図示しない)が設けられ、回転支持アングル190の貫通孔190aと回転ロッド160の貫通孔は、ボルト216とナット218でによって互いに連結・固定される(
図7(B)、
図8)。これにより、回転ロッド160が回転支持アングル190に取り付けられ、貫通孔190aの中心を回転軸A
Rとして回転することができる。すなわち、回転ロッド160の長手方向に垂直であり、回転ロッド160を貫通する回転軸A
Rを中心として回転ロッド160が回転する(
図9(A))。この回転軸A
Rはベースフレーム152や補助フレーム154、連結フレーム156、およびこれらのフレーム上に配置される胴縁124とx方向またはz方向で重ならず、y方向において重なる。換言すると、回転軸A
Rはこれらのフレームや胴縁124を貫通せず、フレームや胴縁124の下に位置する。回転軸A
Rは水平方向と平行でもよい。なお、図示しないが、回転支持アングル190の貫通孔190aにベアリングを配置し、回転ロッド160にy方向に延伸する軸を設けてもよい。この軸をベアリングに挿入・固定することで、回転ロッド160のより滑らかな回転が可能となる。
【0029】
回転ロッド160の長さ(x方向における長さ)は、回転ロッド160をx方向に平行に配置した際、その貫通孔(または回転軸AR)からストッパアングル194とは反対側の端部までの長さL1がその貫通孔(または回転軸AR)の高さhよりも小さくなるように調整される。作業効率を考慮すると、L1は、例えば50cm以上1.5m以下または70cm以上1.0m以下の範囲から選択すればよい。一方、回転ロッド160の貫通孔(または回転軸AR)から他の端部(回転ロッド160をx方向に平行に配置した際、ストッパアングル194側の端部)までの長さL2は、回転ロッド160が補助フレーム154と重なるように調整される。例えば距離L2は、30cm以上2m以下または50cm以上1.5m以下の範囲から選択すればよい。
【0030】
任意の構成として、
図8に示すように、回転支持アングル190と回転ロッド160の間に、低摩擦プレート220を設けてもよい。低摩擦プレート220としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレンの共重合体、またはフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレンの共重合体などのフッ化ビニリデンをモノマーの一つとして用いる共重合体などに例示される、フッ素含有高分子を含むシートまたはプレートが挙げられる。低摩擦プレート220の厚さは、例えば1mm以上20mm以下、または1mm以上10mm以下の範囲から適宜選択される。低摩擦プレート220には、ボルト216を通すための貫通孔が設けられる。低摩擦プレート220を設けることで、回転ロッド160の回転によって回転ロッド160やボルト216、回転支持アングル190の摩耗を防止または抑制することができる。
【0031】
図7(A)に示すように、回転支持アングル190には、貫通孔190aの下、すなわち、貫通孔190aが設けられる端部とは反対の端部に貫通孔190bを設けてもよい。また、回転ロッド160の一端(回転ロッド160をx方向と平行に配置した場合、ストッパアングル194とは反対側の端部)にも貫通孔160aを設けてもよい。貫通孔190bと160aは、回転ロッド160を回転させた際、y方向、すなわち回転軸A
Rに平行な方向において互いに重なるように設けることができる。このように貫通孔190b、160aを設けることで、例えばこれらの貫通孔190bと160aに固定用のピンを挿入し、回転ロッド160を固定することができる。その結果、回転ロッド160上に設けられるパネルユニット120の意図しない回転や移動を防止することができる。好ましくは、回転支持アングル190の二つの貫通孔190aと190bの中心がz方向において重なるように設ける。この配置により、長手方向が鉛直に向いた状態で回転ロッド160を固定することができる(
図9(A))。
【0032】
(2)ストッパアングル
ストッパアングル194は、x方向において回転支持アングル190と対向アングル192の間に配置され、回転ロッド160の回転を規制する機能を有する。具体的には、回転ロッド160がx方向に延伸するように配置される際、回転ロッド160と接してその回転を止めるように配置される。例えば
図9(B)に示すように、ストッパアングル194には、回転ロッド160と接するストッパー195を設けることができる。ストッパー195の構造や形状に制約はなく、少なくとも一部が回転ロッド160と接触し、回転ロッド160の回転に対して抵抗するように構成すればよい。ストッパー195を備えるストッパアングル194を設けることにより、回転ロッド160の回転範囲が規制され、回転ロッド160とメインフレーム170やサイドフレーム172との干渉や、それに起因する胴縁124の変形・破損を防止することができる。
【0033】
図9(A)に示すように、ストッパアングル194にも、その上端部に貫通孔194aを設けることができる。この場合、回転ロッド160の他端(回転ロッド160の長手をx方向に平行に配置した場合、ストッパアングル194側の端部)にも貫通孔160bを設けてもよい。貫通孔194aと貫通孔160bは、回転ロッド160を回転させた際、y方向において互いに重なるように設けることができる。このように貫通孔194aと160bを設けることで、例えばこれらの貫通孔194aと160bに図示しない固定用のピンを挿入して回転ロッド160を固定することができる。その結果、回転ロッド160上に設けられる胴縁124やパネルユニット120の意図しない回転や移動を防止することができる。好ましくは、貫通孔190aと194aを用いて回転ロッド160を固定した際、回転ロッド160がx方向に延伸するように貫通孔190aと194aを配置する。この配置を採用することで、胴縁124を水平方向に配置した状態でパネルユニット120を取り付けることができ、作業の効率や安全性が向上する。
【0034】
(3)対向アングル
一対の対向アングル192は、その上に設けられる支持フレーム158を支持する機能を有し、x方向においてストッパアングル194を回転支持アングル190とで挟むように配置される(
図6)。
【0035】
3-2.ベースフレーム
ベースフレーム152はy方向に延伸し、一対の回転ロッド160に直接または間接的に固定され、一対の回転ロッド160を横切るように配置される(
図5)。ベースフレーム152は、その上に配置される複数の胴縁124の一方の端部を支持する機能を有する。このため、その長さは、少なくともパネルユニット120の全ての胴縁124が配置できるように設計される。ベースフレーム152も角鋼管、丸鋼管、H鋼、あるいは山形鋼などであってもよい。
【0036】
図5に示すように、胴縁124の配置とパネル122の固定、およびパネルユニット120の設置の間、胴縁124が意図せずに動くことを防ぐため、胴縁124を一時的に固定するための複数の胴縁ガイド162をベースフレーム152に設けることができる。複数の胴縁ガイド162は、使用される胴縁124と同数設けられ、y方向に配列される。胴縁ガイド162の構造は任意に選択することができるが、パネル122の配置・固定時に胴縁124の位置を固定可能であり、パネルユニット120を回転させる際に胴縁124から意図せずに外れず、かつ、パネルユニット120を引き上げる際に胴縁124が容易に外れるように構成することが好ましい。このため、例えば胴縁124が溝形鋼、リップ付き溝形鋼、あるいは角鋼管である場合には、ベースフレーム152から支持フレーム158に向かって垂直に(x方向に)延伸し、胴縁124の内部に挿入可能な構成を採用することができる(
図10(A)、
図10(B))。この場合、胴縁ガイド162のyz平面における断面形状に制約はなく、胴縁124の互いに対向する二つの内壁と接するように設定すればよい。胴縁ガイド162のx方向における長さも任意であり、例えば5cm以上20cm以下、あるいは5cm以上15cm以下の範囲から適宜選択される。
【0037】
胴縁ガイド162は、ベースフレーム152に対して溶接またはボルト202とナット204を用いて直接固定されていてもよい。あるいは、胴縁ガイド162を連結プレート200に溶接固定し、連結プレート200をベースフレーム152に溶接する、または連結プレート200に設けられる貫通孔200aを利用し、ボルト202とナット204を用いて固定すればよい(
図10(A)、
図10(B))。
【0038】
あるいは、胴縁ガイド162をベースフレーム152に沿ってy方向に移動可能なように構成してもよい。この場合、
図11(A)、
図11(B)に示すように、例えばベースフレーム152にリップ付き溝形鋼を用い、その内部に対向プレート201を挿入し、連結プレート200と対向プレート201でベースフレーム152のリップを挟持するようにこれらをボルト202とナット204で固定すればよい。ボルト202を緩めることで連結プレート200と対向プレート201がベースフレーム152から自由になるため、胴縁ガイド162をy方向に移動して任意の位置に配置することができる。その結果、様々な胴縁124の配置に柔軟に対応できるよう、胴縁ガイド162を配置することができる。
【0039】
なお、ベースフレーム152は直接回転ロッド160に固定されていてもよいが、
図11(A)に示すように、中間フレーム153を介して回転ロッド160に固定されていてもよい。中間フレーム153とベースフレーム152との固定も、溶接で行ってもよく、ボルト210とナット208を用いて行ってもよい。中間フレーム153も山形鋼でもよく、あるいは角鋼管や溝形鋼、リップ付き溝形鋼でもよい。
【0040】
3-3.補助フレームと連結フレーム
ベースフレーム152と同様、補助フレーム154もy方向に延伸し、一対の回転ロッド160に固定され、一対の回転ロッド160を横切るように配置される(
図5)。補助フレーム154も、その上に配置される複数の胴縁124を支持する機能を有するため、その長さは、少なくともパネルユニット120の全ての胴縁124が配置できるように設計される。補助フレーム154の長さは、ベースフレーム152と同一でも異なってもよい。補助フレーム154も角鋼管、丸鋼管、H鋼、あるいは山形鋼などであってもよい。ベースフレーム152とともに補助フレーム154を設けて回転ロッド160に固定することで、回転ロッド160を回転してパネルユニット120を回転する際、パネルユニット120の下に配置される胴縁124のそれぞれを二か所で支持することができる。このため、パネルユニット120の回転が容易になるだけでなく、回転時に胴縁124やパネル122の撓みや変形を抑制することができる。ただし、回転ロッド160に固定されるベースフレーム152と補助フレーム154の変形を抑制できる程度の強度を回転ロッド160が有する場合には、連結フレーム156は設けなくてもよい。
【0041】
任意の構成である連結フレーム156は、ベースフレーム152と補助フレーム154を連結する。これにより、ベースフレーム152と補助フレーム154の相対的位置が安定化され、パネルユニット120の回転を安全に行うことを可能にする。したがって、連結フレーム156は、必ずしも
図5に示されるようにベースフレーム152と補助フレーム154の両端に設けられる必要は無い。また、三つ以上の連結フレーム156を設けてもよく、複数の連結フレーム156をz方向において互いに重なるように配置してもよい。あるいは、複数の連結フレーム156は互いに連結されてもよい。連結フレーム156も角鋼管、丸鋼管、H鋼、あるいは山形鋼などであってもよい。
【0042】
3-4.支持フレーム
任意の構成である支持フレーム158は、ベースフレーム152とともに、複数の胴縁124を支持するために設けられる。このため、ベースフレーム152と同様、y方向に延伸するように配置され、その長さは、少なくともパネルユニット120の全ての胴縁124が配置できるように設計される(
図5)。支持フレーム158は、対向アングル192に取り付けられる。ベースフレーム152や補助フレーム154とは異なり、支持フレーム158はパネルユニット120の回転時に移動せず、対向アングル192に取り付けられた状態を維持する。支持フレーム158も角鋼管、丸鋼管、H鋼、あるいは山形鋼などであってもよい。
【0043】
ベースフレーム152と同様、支持フレーム158にも胴縁124を一時的に固定するための複数の胴縁ガイド164を設けることができる(
図5)。複数の胴縁ガイド164は、使用される胴縁124と同数設けられ、y方向に配列される。胴縁ガイド164の構造は任意に選択することができるが、上述したように、支持フレーム158は対向アングル192に取り付けられ、パネルユニット120の回転に追従しないため、パネルユニット120の回転時に胴縁124が速やかに外れるように胴縁ガイド164を構成することが好ましい。
【0044】
例えば
図12(A)、
図12(B)に示すように、胴縁124を挟持する一対のガイドプレート164aで胴縁ガイド164を構成することができる。一対のガイドプレート164aは、これらの間隔164cが胴縁124の幅(y方向における長さ)と同一、あるいはそれ以上になるように配置される。また、ベースフレーム152に設けられる胴縁ガイド162と間隔164cがx方向で重なるよう、一対のガイドプレート164aが設けられる。このように胴縁ガイド164を構成、配置することで、複数の胴縁124を互いに平行に配置することが容易となる。
【0045】
胴縁ガイド164は、支持フレーム158に直接または間接的に固定し、支持フレーム158に対して動かないように構成してもよい。この場合、一対のガイドプレート164aにそれぞれ貫通孔164bを設け、ボルト212とナット214で固定すればよい。あるいは、胴縁ガイド164を支持フレーム158に沿って移動可能なように構成してもよい。この場合、
図13(A)、
図13(B)に示すように、例えば支持フレーム158にリップ付き溝形鋼を用い、その内部に対向プレート166を挿入し、一対のガイドプレート164aと対向プレート166で支持フレーム158のリップを挟持するように、これらをボルト212とナット214で固定すればよい。この時、一対のガイドプレート164aは互いに固定されていてもよい(
図13(B))。ボルト212を緩めることで対向プレート166をy方向に移動させることができるため、胴縁ガイド164を任意の位置に配置することができる。その結果、様々な胴縁124の配置に柔軟に対応できるように胴縁ガイド162を配置することができる。
【0046】
あるいは、胴縁ガイド164を支持フレーム158に対して動かないように固定し、支持フレーム158がy方向において移動可能なように架台150を構成してもよい。具体的には、
図14(A)に示すように、支持フレーム158を、メインフレーム170またはサイドフレーム172上に構築される対向アングル192にボルト留めによって取り付けられるように構成する。この時、
図14(B)に示すように、支持フレーム158に設けられるボルト留め用の貫通孔158aを、y方向の長さがz方向の長さよりも大きくなるように設ける。例えば、y方向の長さがz方向の長さの2倍以上10倍以下、または2倍以上5倍以下となるように貫通孔158aを設ける。これにより、対向アングル192に設けられるボルト留め用の貫通孔192aを中心に貫通孔158aと192aが重なる範囲内でy方向に沿って支持フレーム158を移動させることができ(
図14(C))、全ての胴縁ガイド164の位置を同時に調整することができる。図示しないが、対向アングル192に設けられるボルト留め用の貫通孔192aを、そのy方向の長さがz方向の長さよりも大きくなるように設けてもよい。
【0047】
胴縁124の長さが短い場合には、支持フレーム158は必ずしも設ける必要は無く、例えば
図15に示すように、胴縁124をベースフレーム152と補助フレーム154で支持するよう、架台150を構成してもよい。この場合、ベースフレーム152と補助フレーム154間の距離は、例えば胴縁124の長さの半分以上胴縁124の長さ未満とすればよい。また、補助フレーム154に胴縁ガイド164を設けてもよい。
【0048】
3-5.その他の構成
(1)ステップボード
図6に示すように、架台150には、メインフレーム170またはサイドフレーム172と重なるように一つまたは複数のステップボード178を設けてもよい。ステップボード178は、プラスチック、木材、あるいは金属製の板であり、一対のメインフレーム170と同時に重なる、あるいは隣接するサイドフレーム172と同人重なる幅または長さを有していればよい。ステップボード178はメインフレーム170またはサイドフレーム172に溶接やボルトなどで固定されていてもよく、あるいは容易に移動可能なように、これらのフレームに固定されていなくてもよい。ステップボード178は、作業者が乗った状態で破壊されない程度の強度を有していればよい。ステップボード178を設けることで、作業者はこの上に立った状態で作業でき、複数の胴縁124を容易に跨いて移動することができる。このことは作業効率の向上に寄与する。
(2)ウエイト
さらに任意の構成として、架台150は、その重心位置を安定化させるためのウエイト176を有してもよい。例えば
図5に示すように、隣接するサイドフレーム172と重なるようにウエイト176を配置することができる。後述するように、パネルユニット120は回転ロッド160をy方向に貫通する回転軸A
Rを中心に回転するため、回転時に全体の重心位置が変化する。重心位置がx方向においてベースフレーム152側へ移動すると、支持フレーム158側が浮き上がる恐れがある。このため、架台150の支持フレーム158により近い位置に(例えば支持フレーム158やハンドル174と重なるように)ウエイト176を設けることで、回転時の重心位置の変化が抑制されて架台150が安定化し、作業の安全性を確保することができる。
【0049】
(3)補助架台
長さLの大きなパネルユニット120を用いる場合、ベースフレーム152や補助フレーム154、および支持フレーム158のy方向における長さが長くなるため、ベースフレーム152や補助フレーム154、および支持フレーム158は、一対のメインフレーム170の外側の領域における長さが相対的に大きくなる。ベースフレーム152と補助フレーム154は連結フレーム156によって連結されているため、比較的高い強度を保つことができるものの、支持フレーム158にはこのような連結機構が無いため撓みやすく、このことは、パネル122の取り付けを困難にするだけでなく、パネルユニット120の変形を誘発する。
【0050】
このような場合には、
図16に示すように、一つまたは複数の補助架台230を含むように架台150を構成してもよい。補助架台230は、それぞれ支持フレーム158の端部を支持することで、複数の胴縁124を水平に支持する。具体的には、
図17(A)、
図17(B)に示すように、補助架台230は、メインフレーム232、メインフレーム上に構築されるアングル234、およびアングル234を介してメインフレーム上に設けられる上板236を備える。メインフレーム232に替わり、上板236に対向する下板を用いてもよい。また、上板236も複数のアングルなどで構成してもよい。アングル234の構成も任意であり、上板236がメインフレーム232上に固定できる構成であればよい。上板236の上面は、支持フレーム158の上面と同じ高さとなるように調整される。任意の構成として、補助架台230はハンドル238やキャスター240を有していてもよい。また、架台150と同様、補助架台230は上板236の高さを変えるための機構(アジャスターなど)を備えてもよい。
【0051】
(4)基準フレーム
さらに任意の構成として、
図18に示すように、架台150は基準フレーム186を備えてもよい。基準フレーム186は、ベースフレーム152や補助フレーム154、支持フレーム158と直交するように配置され、少なくとも二つのサイドフレーム172上に図示しないアングルを介して連結される。
図18に示した例では、基準フレーム186はベースフレーム152や補助フレーム154、支持フレーム158に対して片側に一つ設けられるが、ベースフレーム152や補助フレーム154、支持フレーム158を挟むよう、一対の基準フレーム186を設けてもよい。第3実施形態で詳細に説明するが、基準フレーム186は、胴縁124やパネル122を架台150上に配置するための基準線を提供するために設けられ、この基準線を利用することで、胴縁124やパネル122を所望の位置に正確に配置することが容易となる。
【0052】
第3実施形態で述べるように、本発明の実施形態の一つである架台150を利用することで、複数の胴縁124を安定に水平に配置した状態でパネル122を胴縁124に固定することができるため、高い作業技術を要求されることが無く、簡便にパネルユニット120を作製することができる。また、作業員に無理な態勢を強いることなくパネルユニット120を作製することができるため、作業効率が向上する。さらに、この架台150を用いることで、パネルユニット120を建築物100の内部で作製することもできるため、天候などの外部環境の影響に左右されずにパネルユニット120を建築物100に取り付けることができる。このため、建築物100の施工において天候に起因する工程遅延が発生しにくく、かつ、安全性の向上、施工性の向上、工期の短縮を図ることができる。
【0053】
(5)ジャッキ
さらに任意の構成として、架台150は、ジャッキ188を備えてもよい(
図5)。ジャッキ188の一端はサイドフレーム172またはメインフレーム170に固定される、または着脱可能なように連結することができる。好ましくは、ジャッキ188は、サイドフレーム172またはメインフレーム170に固定される一端において、y方向に延伸する軸を中心に回転するように構成する。一方、ジャッキ188の他端は胴縁124を支持するように構成されてもよく、図示しないが補助フレーム154に連結されるまたは補助フレーム154を支持するように構成されてもよい。
図5に示した例では、ジャッキ188は支持フレーム158に対して補助フレーム154の反対側に位置しているが、ジャッキ188は支持フレーム158と補助フレーム154の間に設けてもよい。ジャッキ188は機械式のジャッキでもよく、油圧式または圧縮空気式のジャッキでもよい。ジャッキ188を備えることで、パネルユニット120の回転を補助することができ、クレーン110の負担が軽減されるだけでなく、パネルユニット120の制御を容易に行うことで作業の安全性を向上させることができる。
【0054】
<第2実施形態>
本実施形態では、第1実施形態で述べた架台150と構造が異なる架台151について
図19と
図20を用いて説明する。
図19と
図20はそれぞれ架台151の上面図と側面図であり、
図21は架台151の一部の斜視図である。第1実施形態で述べた構成と同一または類似する構成については説明を割愛することがある。
【0055】
本実施形態に係る架台151が架台150と異なる点の一つは、架台151が回転ロッド160や補助フレーム154、連結フレーム156を持たず、パネルユニット120を回転させる機能を果たす回転部がベースフレーム152と蝶番198によって構成される点である。架台151では、ベースフレーム152は蝶番198に直接または間接的に連結され、蝶番198が、メインフレーム170、サイドフレーム172、またはこれらのフレーム上に構築されるアングルに直接または間接的に連結される。
図19から
図21に示した例では、蝶番198はメインフレーム170とベースフレーム152に直接連結されている。
【0056】
ベースフレーム152に対向するように、ベースフレーム152と平行に延伸する支持フレーム158が設けられ、胴縁124はベースフレーム152と支持フレーム158上に配置される。この状態で胴縁124にパネル122が固定される。架台151と同様、胴縁124を一時的に固定するための胴縁ガイド162、164をそれぞれベースフレーム152と支持フレーム158に設けてもよい。
【0057】
図21に示すように、蝶番198は回転軸A
Rを有し、この回転軸A
Rを中心に回転することで、ベースフレーム152に固定されるメインフレーム170、サイドフレーム172、またはアングルに対して相対的にかつ可逆的にベースフレーム152を回転するように配置される(
図21の点線矢印参照)。例えば
図21に示した例では、蝶番198によってベースフレーム152がメインフレーム170に対して回転軸A
Rを中心に回転するように設けられる。この回転機構により、
図20、
図21の実線矢印で示すように、胴縁124やその上に固定されるパネル122を回転軸A
Rを中心に回転させることができる。回転軸A
Rは支持フレーム158および支持フレーム158上に配置される胴縁124とx方向、y方向、z方向で重ならない。換言すると、回転軸A
Rは支持フレーム158や胴縁124を貫通せず、支持フレーム158や胴縁124の下に位置する。回転軸A
Rはベースフレーム152と重なってもよく、水平方向と平行でもよい。
【0058】
なお、ベースフレーム152を回転するための機構としては蝶番198に限られない。ベースフレーム152をその延伸方向に対して平行な方向を中心軸としてメインフレーム170またはサイドフレーム172上で回転することが可能な機構であれば、その形状や構造に依存することなく用いることができる。
【0059】
第3実施形態で述べるように、本実施形態に係る架台151を利用しても、複数の胴縁124を安定に水平に配置した状態でパネル122を胴縁124に固定することができるため、架台150が奏する様々な効果を得ることができる。
【0060】
<第3実施形態>
本実施形態では、第1実施形態で述べた架台150を利用するパネルユニット120の作製方法、およびパネルユニット120の取り付けを含む、建築物100の施工方法について説明する。第1、第2実施形態で述べた構成と同一または類似する構成については説明を割愛することがある。架台151を利用するパネルユニット120の作製方法や建築物100の施工方法も同様であるため、説明は省略する。
【0061】
1.胴縁の配置
まず、アジャスター182を用いて架台150の高さを適宜調整し、架台150を固定する。架台150は地面の上に固定してもよく、あるいは建築物100のフロアに固定してもよい。後者の場合、パネルユニット120を施工するフロアよりも下のフロアに架台150が配置、固定すればよい。
【0062】
次に、複数の胴縁124を互いに長手方向が平行になるように、架台150上に配置する(
図22)。具体的には、複数の胴縁124をベースフレーム152、補助フレーム154、および支持フレーム158上に、これらと重なるように配置する。この時、回転ロッド160は長手方向がx方向となるように配置する。好ましくは、回転ロッド160が回転しないように固定する。回転ロッド160の固定は、例えば回転ロッド160の貫通孔160bとストッパアングル194の貫通孔194aに固定用のピンを同時に挿入することで行えばよい(
図9(A)、
図9(B)参照)。なお、複数の胴縁124のうち、少なくとも一つ、好ましくは二つには、支持フレーム158側の端部に吊治具130が設けられる。例えば、
図22に示すように、吊治具130が設けられる胴縁124を二つ用い、これらの間には他の胴縁124を配置せず、吊治具130が設けられる胴縁124の両側に他の胴縁124を配置してもよい。あるいは、奇数本の胴縁124を用い、中央の胴縁124のみに吊治具130を取り付けてもよい。あるは、両端の二つの胴縁124に吊治具130を設け、他の胴縁124が吊治具130を備える胴縁124に挟まれるように複数の胴縁124を配置してもよい。
【0063】
胴縁124を配置する際、基準フレーム186からの位置を測定し、これに基づいて胴縁124を所望の位置に配置してもよい。あるいは、
図23に示すように、レーザ墨出し器250を用いて胴縁124の位置、胴縁124とベースフレーム152、補助フレーム154、若しくは支持フレーム158との角度、または隣接する胴縁124同士の角度を調節してもよい。レーザ墨出し器250はコンパクトな形状を有するため、例えば基準フレーム186と支持フレーム158の交点上に設置し、一つ目の胴縁124の位置、およびそれとベースフレーム152、補助フレーム154、または支持フレーム158との角度を調整すればよい。一つ目の胴縁124を設置する位置が決定されれば、胴縁124を一時的に固定するための胴縁ガイド162、164を配置する。なお、胴縁ガイド162、164の位置がそれぞれ固定されたベースフレーム152と支持フレーム158を用いる場合には、上述した位置や角度の調整は不要であり、胴縁124に胴縁ガイド162を差し込み、胴縁ガイド164のガイドプレート164aの間に胴縁124を配置すればよい。
【0064】
引き続き、既に設置された胴縁124(
図23における胴縁124-1)とベースフレーム152、補助フレーム154、または支持フレーム158との交点上にレーザ墨出し器250を配置し、胴縁124-1に隣接する胴縁124-2を配置する。胴縁124-2の位置や角度も胴縁124-1のそれと同様の方法で調整すればよい。その後、胴縁124-2を一時的に固定するための胴縁ガイド162、164を配置する。これを繰り返すことで、複数の胴縁124を互いに平行に、所望の間隔で配置することができる。
【0065】
胴縁ガイド162、164は、複数の胴縁124のy方向とz方向の動きやxy平面内における回転を規制することはできるものの、構造によってはx方向の動きは規制することができない場合がある。そこで、x方向における意図しない動きを防止するため、複数の胴縁124を配置した後、複数の胴縁124を胴縁ガイド164、対向アングル192、または支持フレーム158などに仮固定してもよい。例えば
図24(A)に示すように、胴縁ガイド164のガイドプレート164aに、y方向に延伸する貫通孔164dを設け、貫通孔164dを利用して胴縁ガイド164と胴縁124をボルト留めしてもよい。あるいは貫通孔164dにゴムや結束バンド、ロープなどの固定具168を通して仮固定を行ってもよい(
図24(B))。吊治具130を有する胴縁124では、吊治具130と胴縁124の間に生じる段差、あるいは貫通孔142に固定具168を掛ければよい。図示しないが、例えば対向アングル192に貫通孔を設け、この貫通孔を通る固定具168を利用して仮固定を行ってもよい。胴縁124の仮固定を行うことで、引き続くパネル122の固定の際、胴縁124の意図しないx方向の動きが抑制され、胴縁124の正確な配置を維持したままパネル122を胴縁124に固定することができる。
【0066】
2.パネルの固定
胴縁124の配置後、パネル122を胴縁124上に配置する(
図25、
図26)。パネル122の位置合わせは、例えば基準フレーム186からの距離を測定し、この距離が一定になるようパネル122を配置することで行ってもよい。あるいは、幅が固定されたスペーサを位置合わせ用の治具として用い、基準フレーム186とパネル122の間に挟むことで基準フレーム186とパネル122との間隔を決定してもよい。パネル122は、ねじやビスなどによって胴縁124に固定される。この時、隣接するパネル122間のシーリングを行ってもよい。これにより、パネルユニット120を地面やフロア上に横たえたままシーリングを行うことができるので、高所作業車やゴンドラを用いるシーリングが不要となる。また、上述したように、パネル122の設置や固定の際にステップボード178を配置することで、作業員が容易に胴縁124を跨いで移動することができるため、作業効率と安全性が向上する(
図25)。
【0067】
以上のプロセスにより、パネルユニット120を作製することができる。
【0068】
3.建築物の施工方法
上述した方法によって作製されたパネルユニット120は、引き続き回転ロッド160の回転機能を利用し、胴縁124が鉛直またはほぼ鉛直方向に配置されるよう回転される。具体的には、
図26に示すように、まず、架台150をパネルユニット120が設置される場所の近辺へ移動させる。架台150を建築物100のフロア107-1上に設けてパネルユニット120を作製した場合には、フロア107-1より上のフロア107-2または建築物100の屋上などに配置されるクレーン110による吊り上げを容易にするため、フロア107-1の端へ架台150を移動すればよい。架台150の高さをアジャスター182を用いて調整してもよい。
【0069】
次に、吊治具130のハンガープレート134に設けられる貫通孔138、あるいはピン136に設けられる貫通孔140にケーブル242を通し、クレーン110によってケーブル242を引き上げ、パネルユニット120を引き起こす(
図26、27)。クレーン110は移動式(例えばクローラークレーン、ラフテレーンクレーン)でもよく、固定式でもよい。あるいはクレーン110に替わり、固定式または移動式ウインチやホイストを使用してもよい。この時、ジャッキ188を用いてパネルユニット120の引き起こしを補助してもよい(
図27)。具体的には、ジャッキ188を伸ばし、胴縁124または補助フレーム154を支持してもよい。なお、ジャッキ188を架台150に連結せず、フロア107に設置して用いてもよい。
【0070】
ケーブル242が建築物100の一部(例えば、既に取り付けられたパネルユニット120)と干渉する場合には、これを保護するプロテクター126を設置してもよい。なお、胴縁124が仮固定されている場合には、仮固定を解除した後に引き上げを行う。また、回転ロッド160がストッパアングル194に固定されている場合には、固定を解き、回転ロッド160が回転軸ARを中心に回転可能な状態にした後に引き上げを開始する。パネルユニット120の引き起こしの際には、ハンガープレート134の貫通孔142に介錯ロープ243を通し、介錯ロープ243を介してパネルユニット120の移動や回転などを制御してもよい。これにより、パネルユニット120の引き起こし・回転作業の正確性が向上し、作業の安全性が改善される。
【0071】
パネルユニット120が引き起こされるにつれて、回転ロッド160、およびこれに固定されるベースフレーム152と補助フレーム154が回転軸ARを中心に回転する。この時、胴縁124はベースフレーム152と補助フレーム154の上に配置されており、かつ、その一端にはベースフレーム152に設けられる胴縁ガイド162が差し込まれているため、胴縁124とそれに固定されるパネル122がベースフレーム152から意図せず離隔することなく回転軸ARを中心に回転する。また、胴縁124は支持フレーム158の胴縁ガイド164から離れる。
【0072】
パネルユニット120の回転が進行し、胴縁124が鉛直またはほぼ鉛直方向になった後、回転ロッド160を回転支持アングル190に固定してもよい。例えば、回転ロッドの貫通孔160aと回転支持アングル190の貫通孔192bに固定用のピンを挿入すればよい(
図7(A)、
図9(A)参照)。
【0073】
その後、パネルユニット120をさらに上(x方向)に引き上げることで、胴縁124は胴縁ガイド162から外れ、パネルユニット120が架台150から離れる(
図29)。この状態に達すると、クレーン110を用いてパネルユニット120を自由に移動することができる。パネルユニット120は取り付けが予定されている場所へ搬送され、躯体104、106に固定される(
図1(B))。吊治具130は、パネルユニット120を躯体104、106へ取り付けたのちに取り外せばよい。以上の方法により、複数のパネルユニット120が外壁として取り付けられた建築物100を施工することができる。
【0074】
なお、パネルユニット120の作製を建築物100の一階で行う場合、通常一階のフロア107は地面よりも高い位置に設置されるため、フロア107と地面108の高さの差によってパネルユニット120を回転のための大きな空間を得ることができる。この場合には、
図30に示すように、回転軸A
Rを決定する回転支持アングル190の貫通孔190aから回転ロッド160の端部(回転ロッド160を水平に配置した際、長さL
2だけでなく長さL
1も大きくすることができる。その結果、より大きなパネルユニット120を、パネルユニット120が地面108と干渉すること無く、架台150上で回転させることができる(
図31)。あるいは、架台150の大きさ(x方向の長さ)を小さくすることができ、軽量化されたコンパクトな形状の架台150を用いてパネルユニット120の作製とその取付を行うことができる。
【0075】
図示しないが、パネルユニット120を屋外で作製してもよい。すなわち、架台150を建築物100の外部に配置してパネルユニット120を作製し、その後、屋外または建築物100の屋上若しくは内部に配置されるクレーン110を用いてパネルユニット120を引き起こしてもよい。
【0076】
上述したように、本実施形態のパネルユニット120は、胴縁124が水平に配置された状態で作製することができる。このため、複数の胴縁124を安定に架台150上に配置した状態でパネル122を胴縁124に固定することができるため、高い作業技術を要求されることが無く、簡便にパネルユニット120を作製することができる。また、作業員に無理な態勢を強いることなくパネルユニット120を作製することができるため、作業効率が向上する。
【0077】
さらに本実施形態の施工方法を適用することで、パネルユニット120を屋外だけでなく、建築物100の内部でも作製することができる。また、この施工方法を適用して建築物100の内部でパネルユニット120を作製した場合には、パネルユニット120を引き起こした際に、各パネル122の外壁面がそのまま建築物100の外側を向くため、クレーン110で吊った状態でパネルユニット120をそのまま任意の場所に設置することができる。したがって、パネルユニット120を胴縁124の長手方向を軸としてさらに回転させる必要がないため、建築物100外に十分な敷地が確保できない場合でも容易にパネルユニット120を設置することができる。
したがって、本実施形態のパネルユニット120の作製方法、建築物100の施工方法を適用して建築物100の内部でパネルユニット120を作製すると、天候などの外部環境の影響をほぼ無視することができ、天候に起因する工程遅延が生じにくい。また、クレーン110をパネルユニット120の設置場所の近傍に配置することでパネルユニット120の回転と移動ができるため、風の影響をほとんど受けず、安全性の向上、施工性の向上、工期の短縮に貢献することができる。
【0078】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0079】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
【符号の説明】
【0080】
100:建築物、102:基礎梁、104:躯体、106:躯体、107:フロア、107-1:フロア、107-2:フロア、108:地面、110:クレーン、120:パネルユニット、122:パネル、124:胴縁、124-1:胴縁、124-2:胴縁、124a:平坦面、126:プロテクター、130:吊治具、132:連結プレート、134:ハンガープレート、136:ピン、138:貫通孔、140:貫通孔、142:貫通孔、150:架台、151:架台、152:ベースフレーム、153:中間フレーム、154:補助フレーム、156:連結フレーム、158:支持フレーム、158a:貫通孔、160:回転ロッド、160a:貫通孔、160b:貫通孔、162:胴縁ガイド、164:胴縁ガイド、164a:ガイドプレート、164b:貫通孔、164c:間隔、164d:貫通孔、166:対向プレート、168:固定具、170:メインフレーム、172:サイドフレーム、174:ハンドル、176:ウエイト、178:ステップボード、180:コンブレース、182:アジャスター、184:キャスター、186:基準フレーム、188:ジャッキ、190:回転支持アングル、190a:貫通孔、190b:貫通孔、192:対向アングル、192a:貫通孔、192b:貫通孔、194:ストッパアングル、194a:貫通孔、195:ストッパー、196:ハンドルアングル、198:蝶番、200:連結プレート、200a:貫通孔、201:対向プレート、202:ボルト、204:ナット、208:ナット、210:ボルト、212:ボルト、214:ナット、216:ボルト、218:ナット、220:低摩擦プレート、230:補助架台、232:メインフレーム、234:アングル、236:上板、238:ハンドル、240:キャスター、242:ケーブル、243:介錯ロープ、250:レーザ墨出し器