IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-水中翼船の消火システム 図1
  • 特許-水中翼船の消火システム 図2
  • 特許-水中翼船の消火システム 図3
  • 特許-水中翼船の消火システム 図4
  • 特許-水中翼船の消火システム 図5
  • 特許-水中翼船の消火システム 図6
  • 特許-水中翼船の消火システム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】水中翼船の消火システム
(51)【国際特許分類】
   A62C 3/10 20060101AFI20240829BHJP
   B63B 1/24 20200101ALI20240829BHJP
   B63H 21/30 20060101ALI20240829BHJP
   B63J 99/00 20090101ALI20240829BHJP
【FI】
A62C3/10
B63B1/24
B63H21/30 Z
B63J99/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021041295
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022141127
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2024-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】泊 将光
(72)【発明者】
【氏名】古賀 大志
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-269651(JP,A)
【文献】特表平9-506269(JP,A)
【文献】特開2001-233280(JP,A)
【文献】特開2011-88540(JP,A)
【文献】特開昭54-49790(JP,A)
【文献】実開平6-25100(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 3/10
B63B 1/24
B63H 21/30
B63J 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中翼船の消火システムであって、
ハロゲン化物消火剤を貯蔵する容器と、
前記ハロゲン化物消火剤を放出する放出部と、
前記ハロゲン化物消火剤が流通するように前記容器と前記放出部とを接続する配管とを備え、
前記放出部は、消火対象を収容し、前記水中翼船の客室よりも後方に位置する防護室に配置され、
前記容器は、前記防護室とは別の部屋であって前記客室よりも後方に位置する保管室に配置されている水中翼船の消火システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水中翼船の消火システムにおいて、
前記防護室は、ガスタービンエンジン及び発電機の少なくとも一方を前記消火対象として収容する水中翼船の消火システム。
【請求項3】
請求項2に記載の水中翼船の消火システムにおいて、
前記防護室は、前記ガスタービンエンジンを収容するエンジン室と、前記発電機を収容する発電機室とを含んでいる水中翼船の消火システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の水中翼船の消火システムにおいて、
前記保管室は、前記ガスタービンエンジン及び前記発電機以外の機械を収容する水中翼船の消火システム。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載の水中翼船の消火システムにおいて、
前記防護室は、前記水中翼船の左右両側にそれぞれ設けられている水中翼船の消火システム。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1つに記載の水中翼船の消火システムにおいて、
前記防護室と前記保管室とは、互いに隣接している水中翼船の消火システム。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1つに記載の水中翼船の消火システムにおいて、
前記防護室は、第1防護室及び第2防護室とを含み、
前記放出部は、前記第1防護室に配置された第1放出部と、前記第2防護室に配置された第2放出部とを含み、
前記容器は、前記第1放出部へ前記ハロゲン化物消火剤を供給する第1容器と、前記第2放出部へ前記ハロゲン化物消火剤を供給する第2容器とを含み、
前記第1容器の接続先は、前記第1放出部と前記第2放出部とで切替可能に構成され、
前記第2容器の接続先は、前記第2放出部と前記第1放出部とで切替可能に構成されている水中翼船の消火システム。
【請求項8】
請求項7に記載の水中翼船の消火システムにおいて、
前記防護室は、前記水中翼船の左右両側にそれぞれ設けられ、ガスタービンエンジンをそれぞれ収容する左エンジン室及び右エンジン室を含み、
前記第1防護室は、前記左エンジン室であり、
前記第2防護室は、前記右エンジン室である水中翼船の消火システム。
【請求項9】
請求項7に記載の水中翼船の消火システムにおいて、
前記防護室は、前記水中翼船の左右両側にそれぞれ設けられ、発電機をそれぞれ収容する左発電機室及び右発電機室を含み、
前記第1防護室は、前記左発電機室であり、
前記第2防護室は、前記右発電機室である水中翼船の消火システム。
【請求項10】
水中翼船の消火システムであって、
ハロゲン化物消火剤を貯蔵する容器と、
消火対象を収容する防護室に配置され、前記ハロゲン化物消火剤を放出する放出部と、
前記ハロゲン化物消火剤が流通するように前記容器と前記放出部とを接続する配管とを備え、
前記防護室は、第1防護室及び第2防護室とを含み、
前記放出部は、前記第1防護室に配置された第1放出部と、前記第2防護室に配置された第2放出部とを含み、
前記容器は、前記第1放出部へ前記ハロゲン化物消火剤を供給する第1容器と、前記第2放出部へ前記ハロゲン化物消火剤を供給する第2容器とを含み、
前記第1容器の接続先は、前記第1放出部と前記第2放出部とで切替可能に構成され、
前記第2容器の接続先は、前記第2放出部と前記第1放出部とで切替可能に構成されている水中翼船の消火システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、水中翼船の消火システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、消火システムを備えた水中翼船が知られている。例えば、特許文献1に開示された消火システムは、海水によって消火を行う。この消火システムは、海水ポンプによって船体の底部から海水を取水して、パイプを介して海水を消火の対象箇所へ供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平6-25100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述のような海水を使った消火システムでは、消火剤としての海水を水中翼船が運搬する必要がなく、洋上で海水を調達できる。そのような利点がある反面、水を使って消火を行うと、各種機器が冠水してしまう。エンジン等の機器は、冠水してしまうと、再利用が難しくなる。
【0005】
機器の冠水を回避するために水以外の消火剤を採用すると、消火剤を貯蔵する容器等を水中翼船に搭載する必要がある。当然ながら、水中翼船は、積載物の重量が小さい方が好ましい。また、水中翼船は、スペースも限られている。
【0006】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水中翼船の消火システムを小型且つ軽量に構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示された技術は、水中翼船の消火システムは、ハロゲン化物消火剤を貯蔵する容器と、前記ハロゲン化物消火剤を放出する放出部と、前記ハロゲン化物消火剤が流通するように前記容器と前記放出部とを接続する配管とを備え、前記放出部は、消火対象を収容し、前記水中翼船の客室よりも後方に位置する防護室に配置され、前記容器は、前記防護室とは別の部屋であって前記客室よりも後方に位置する保管室に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
前記水中翼船の消火システムによれば、消火システムを小型且つ軽量に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、右前方から見た水中翼船の斜視図である。
図2図2は、左後方から見た水中翼船の斜視図である。
図3図3は、水中翼船の前後のストラット及びフォイルの斜視図である。
図4図4は、船体の前後方向に延びる鉛直面で船体を切断した船体の概略的な断面図である。
図5図5は、図4のV-V線における船体の概略的な断面図である。
図6図6は、図4のVI-VI線における船体の概略的な断面図である。
図7図7は、消火システムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、右前方から見た水中翼船1の斜視図である。図2は、左後方から見た水中翼船1の斜視図である。図3は、水中翼船1の前後のストラット及びフォイルの斜視図である。
【0011】
水中翼船1は、船体2と、1本の前部ストラット3と、前部ストラット3に設けられた前部フォイル4と、3本の後部ストラット5と、後部ストラット5に設けられた後部フォイル6と、2基のジェットポンプ11と、2基のガスタービンエンジン12と、2基の発電機13(図5参照)とを備えている。尚、前部ストラット3、前部フォイル4及び後部フォイル6等の個数は、これに限定されない。
【0012】
以下、水中翼船1の進行方向の前方を「前」及び後方を「後」として前後方向を設定する。水中翼船1の進行方向の前方を向いて右側を「右」及び左側を「左」として左右方向を設定する。水中翼船1の高さ方向を上下方向に設定する。
【0013】
前部ストラット3は、船体2の前部であって左右方向の中央に設けられている。前部ストラット3の上端部は、船体2の底に連結されている。前部ストラット3は、前後方向に回転するように(即ち、左右方向に延びる軸回りに回転するように)船体2に設けられている。具体的には、前部ストラット3は、船体2の底から下方へ延びる第1状態と船体2の底から前方へ延びる第2状態との間で前後方向に回転するように構成されている。さらに、前部ストラット3は、その軸心を中心に回転可能に船体2に設けられている。つまり、前部ストラット3は、船体2から下方へ延びた状態において左右に回転することができる。以下、特に断りがない限り、前部ストラット3等の構成を説明する際には、前部ストラット3は第1状態にあるものとする。
【0014】
前部フォイル4は、前部ストラット3の下端部からそれぞれ左右に延びている。前部フォイル4の後端部には、複数のフラップ41が設けられている。
【0015】
3本の後部ストラット5は、船体2の後部において左右方向に並んで設けられている。後部ストラット5の上端部は、船体2の底に連結されている。後部ストラット5は、前後方向に回転するように(即ち、左右方向に延びる軸回りに回転するように)船体2に設けられている。具体的には、後部ストラット5は、船体2の底から下方へ延びる第1状態と船体2の底から後方へ延びる第2状態との間で前後方向に回転するように構成されている。以下、3本の後部ストラット5を区別する場合には、左側から順に、左後部ストラット5、中央後部ストラット5、右後部ストラット5と称する。
【0016】
後部フォイル6は、3本の後部ストラット5の下端部に設けられている。具体的には、左後部ストラット5の下端部と中央後部ストラット5の下端部とを連結するように後部フォイル6が左右に延び、右後部ストラット5の下端部と中央後部ストラット5の下端部とを連結するように後部フォイル6が左右に延びている。後部フォイル6の後端部には、複数のフラップ61が設けられている。
【0017】
1基のジェットポンプ11と1基のガスタービンエンジン12とが1組となり、ガスタービンエンジン12がジェットポンプ11を駆動する。つまり、水中翼船1は、2組のジェットポンプ11及びガスタービンエンジン12を備えている。
【0018】
2基のジェットポンプ11は、船体2の後部且つ底部において左右に配置されている。中央後部ストラット5の下端部には、前方に開口する給水口51が設けられている。中央後部ストラット5の上端部は、二股に分岐し、それぞれ2基のジェットポンプ11に接続されている。中央後部ストラット5の内部には、給水路が形成されている。給水口51は、給水路の上流端である。給水路の下流端は、ジェットポンプ11に接続されている。つまり、水は、給水口51から中央後部ストラット5の内部に流入し、給水路を流れ、2基のジェットポンプ11にそれぞれ流入する。ジェットポンプ11は、軸流ウォータジェットポンプである。ジェットポンプ11は、後方へ水を噴射し、水中翼船1を前方へ推進させる。
【0019】
2基のガスタービンエンジン12は、船体2の後部の左右にそれぞれ配置されている。各ガスタービンエンジン12は、ギヤボックス12a内の減速ギヤ(図示省略)を介して、ジェットポンプ11に連結されている。
【0020】
図4は、前後方向に延びる鉛直面で船体2を切断した場合の船体2の概略的な断面図である。図5は、図4のV-V線における船体2の概略的な断面図である。図6は、図4のVI-VI線における船体2の概略的な断面図である。船体2には、操縦室21と、客室22と、エンジン室23と、発電機室24と、油圧機械室25とが設けられている。船体2は、第1甲板2Aと、第1甲板2Aよりも上方の第2甲板2Bとを有している。客室22は、下部客室22aと上部客室22bとを含み、二階建てに形成されている。下部客室22aは、第1甲板2Aと同じ高さに配置され、上部客室22bは、第2甲板2Bと同じ高さに配置されている。
【0021】
上部客室22bの前方に操縦室21が配置されている。下部客室22aの後方に、エンジン室23、発電機室24及び油圧機械室25が配置されている。油圧機械室25及び発電機室24は、第1甲板2Aよりも高く且つ第2甲板2Bよりも低い床の上に配置されている。エンジン室23は、該床の下に配置されている。
【0022】
発電機室24は、左発電機室24L及び右発電機室24Rを含んでいる。左発電機室24L及び右発電機室24Rは、下部客室22aの後方において、下部客室22aから後方へ離れて配置されている。左発電機室24Lは、船体2の左右方向中央よりも左側に配置されている。右発電機室24Rは、船体2の左右方向中央よりも右側に配置されている。つまり、左発電機室24L及び右発電機室24Rは、左右に並び且つ、左右に互いに離れて配置されている。尚、各発電機室24を区別しない場合には、「発電機室24」と総称し、各発電機室24を区別する場合には、数字の符号「24」の後に「L」又は「R」のアルファベットの符号を付して表現する。図4,5,7においては、発電機室24がアルファベットの符号付きで表されている。
【0023】
左発電機室24Lと右発電機室24Rとの容積は、略同じである。各発電機室24は、密閉空間に区画されている。各発電機室24は、発電機13を収容している。発電機13は、内燃機関によって駆動される発電機であり、例えば、ディーゼル発電機である。
【0024】
油圧機械室25は、下部客室22aの後方において、下部客室22aに隣接して配置されている。詳しくは、油圧機械室25は、前後方向における下部客室22aと2つの発電機室24との間、及び、左右方向における2つの発電機室24の間に形成されている。油圧機械室25は、平面視で略T字状に形成されている。つまり、油圧機械室25は、下部客室22a及び2つの発電機室24に隣接している。油圧機械室25は、油圧ポンプ等の油圧機械(図示省略)を収容している。油圧機械室25は、ガスタービンエンジン12及び発電機13以外の機械を収容する部屋の一例である。
【0025】
エンジン室23は、左エンジン室23L及び右エンジン室23Rを含んでいる。左エンジン室23L及び右エンジン室23Rは、下部客室22aの後方において、下部客室22aに隣接して配置されている。左エンジン室23L及び右エンジン室23Rは、左右に並び且つ、左右に互いに離れて配置されている。左エンジン室23L及び右エンジン室23Rは、発電機室24及び油圧機械室25の下方において、発電機室24及び油圧機械室25に隣接して配置されている。尚、各エンジン室23を区別しない場合には、「エンジン室23」と総称し、各エンジン室23を区別する場合には、数字の符号「23」の後に「L」又は「R」のアルファベットの符号を付して表現する。図4,6,7においては、エンジン室23がアルファベットの符号付きで表されている。
【0026】
左エンジン室23Lと右エンジン室23Rとの容積は、略同じである。各エンジン室23の容積は、発電機室24の容積よりも大きい。各エンジン室23は、密閉空間に区画されている。各エンジン室23は、ガスタービンエンジン12を収容している。
【0027】
図7は、消火システム100の構成を示す概略図である。水中翼船1は、消火システム100を備えている。消火システム100は、ハロゲン化物消火剤(単に、「消火剤」とも称する)を貯蔵する容器71と、ハロゲン化物消火剤を放出する放出部72と、ハロゲン化物消火剤が流通するように容器71と放出部72とを接続する配管73とを備えている。消火システム100は、消火剤の放出を実行させる第1操作部81及び第2操作部82をさらに備えている。第1操作部81及び第2操作部82は、乗組員によって操作される。第1操作部81は、電気的に、消火剤の放出を実行させる。第2操作部82は、非電気的に、即ち機械的に、消火剤の放出を実行させる。
【0028】
放出部72は、消火対象を収容する、船体2の防護室に配置されている。例えば、消火対象は、燃料油を使用する機械である。ガスタービンエンジン12及び発電機13は、消火対象の例である。この例では、防護室は、ガスタービンエンジン12を収容するエンジン室23と、発電機13を収容する発電機室24とを含んでいる。
【0029】
すなわち、放出部72は、エンジン室23及び発電機室24のそれぞれに配置されている。詳しくは、放出部72は、左エンジン用放出部72Leと右エンジン用放出部72Reと左発電機用放出部72Lgと右発電機用放出部72Rgとを含んでいる。左エンジン用放出部72Leは、左エンジン室23Lに配置され、左エンジン室23L内に消火剤を放出する。右エンジン用放出部72Reは、右エンジン室23Rに配置され、右エンジン室23R内に消火剤を放出する。左発電機用放出部72Lgは、左発電機室24Lに配置され、左発電機室24L内に消火剤を放出する。右発電機用放出部72Rgは、右発電機室24Rに配置され、右発電機室24R内に消火剤を放出する。尚、各放出部72を区別しない場合には、「放出部72」と総称し、各放出部72を区別する場合には、数字の符号「72」の後に「Le」等のアルファベットの符号を付して表現する。図4~7においては、全ての放出部72がアルファベットの符号付きで表されている。
【0030】
容器71は、油圧機械室25に配置されている。各容器71には、主対象となる放出部72と副対象となる放出部72とが割り当てられている。つまり、各容器71は、主対象の放出部72と副対象の放出部72とのいずれかへ選択的に消火剤を放出する。油圧機械室25は、保管室の一例である。
【0031】
詳しくは、容器71は、左エンジン用放出部72Leを主対象とする2つの左エンジン用容器71Leと、右エンジン用放出部72Reを主対象とする2つの右エンジン用容器71Reと、左発電機用放出部72Lgを主対象とする1つの左発電機用容器71Lgと、右発電機用放出部72Rgを主対象とする1つの右発電機用容器71Rgとを含んでいる。それに加えて、左エンジン用容器71Leには、右エンジン用放出部72Reが副対象として割り当てられている。右エンジン用容器71Reには、左エンジン用放出部72Leが副対象として割り当てられている。左発電機用容器71Lgには、右発電機用放出部72Rgが副対象として割り当てられている。右発電機用容器71Rgには、左発電機用放出部72Lgが副対象として割り当てられている。尚、各容器71を区別しない場合には、「容器71」と総称し、各容器71を区別する場合には、数字の符号「71」の後に「Le」等のアルファベットの符号を付して表現する。図7においては、全ての容器71がアルファベットの符号付きで表されている。
【0032】
容器71に貯蔵されるハロゲン化物消火剤は、例えば、CFCFC(0)CF(CF(FK-5-1-12)、CHF(HFC-23)、CFCHFCF(HFC-227ea)、CFBr(ハロン1301)、CFBrCl(ハロン1211)、CBr(ハロン2402)、CHFBr(FM-100)等である。
【0033】
左エンジン用容器71Le、右エンジン用容器71Re、左発電機用容器71Lg及び右発電機用容器71Rgのそれぞれの消火剤の貯蔵量(即ち、容量)は、互いに略等しい。この例では、各エンジン室23の容積は、発電機室24の容積よりも大きいので、左発電機用容器71Lg及び右発電機用容器71Rgのそれぞれの個数が1つであるのに対し、左エンジン用容器71Le及び右エンジン用容器71Reのそれぞれの個数は2つである。
【0034】
各容器71には、第1弁開放装置74a及び第2弁開放装置74bが設けられている。第1弁開放装置74a及び第2弁開放装置74bはそれぞれ、対応する放出部72に配管73を介して接続されている。
【0035】
第1弁開放装置74aは、弁(図示省略)を有し、弁を開放することによって消火剤を容器71から放出させる。第1弁開放装置74aは、弁を動作させるソレノイドを含んでいる。第1弁開放装置74aには、第1操作部81からの信号線がリレーボックス83を介して接続されている。第1弁開放装置74aは、第1操作部81からの信号を受けて、ソレノイドによって弁を開放する。
【0036】
第2弁開放装置74bは、基本的には、第1弁開放装置74aと同じ構成を有し、第1弁開放装置74aと同じ機能を発揮する。第1弁開放装置74aと異なる構成としては、第2弁開放装置74bには、圧力作動装置74cが設けられている。圧力作動装置74cは、ガス圧によって作動して、第2弁開放装置74bの弁を動作させるアクチュエータである。圧力作動装置74cは、第2操作部82からの高圧ガスを受けて、弁を開放する。つまり、第2弁開放装置74bの弁は、ソレノイドによる駆動と圧力作動装置74cによる駆動との2通りの方法で開放される。
【0037】
第1弁開放装置74aは、主対象の放出部72に配管73を介して接続されている。一方、第2弁開放装置74bは、副対象の放出部72に配管73を介して接続されている。具体的には、左エンジン用容器71Leでは、第1弁開放装置74aが左エンジン用放出部72Leに接続され、第2弁開放装置74bが右エンジン用放出部72Reに接続されている。右エンジン用容器71Reでは、第1弁開放装置74aが右エンジン用放出部72Reに接続され、第2弁開放装置74bが左エンジン用放出部72Leに接続されている。左発電機用容器71Lgでは、第1弁開放装置74aが左発電機用放出部72Lgに接続され、第2弁開放装置74bが右発電機用放出部72Rgに接続されている。右発電機用容器71Rgでは、第1弁開放装置74aが右発電機用放出部72Rgに接続され、第2弁開放装置74bが左発電機用放出部72Lgに接続されている。
【0038】
以下、容器71と放出部72とを接続する配管73について詳しく説明する。配管73は、第1配管73a、第2配管73b、第3配管73c、第4配管73d、第5配管73e、第6配管73f、第7配管73g及び第8配管73hを含んでいる。尚、各配管73を区別する場合には、このように数字の符号「73」の後に「a」等のアルファベットの符号を付して表現する。しかし、各配管73を区別しない場合には、単に「配管73」と総称する。図7においては、全ての配管73がアルファベットの符号付きで表されている。
【0039】
左エンジン用容器71Leの第1弁開放装置74aは、第1配管73aを介して左エンジン用放出部72Leに接続されている。2つの左エンジン用容器71Leの第1弁開放装置74aから延びる第1配管73aは、途中で合流して合流管となって左エンジン用放出部72Leに接続されている。
【0040】
右エンジン用容器71Reの第1弁開放装置74aは、第3配管73cを介して右エンジン用放出部72Reに接続されている。2つの右エンジン用容器71Reの第1弁開放装置74aから延びる第3配管73cは、途中で合流して合流管となって右エンジン用放出部72Reに接続されている。
【0041】
左エンジン用容器71Leの第2弁開放装置74bは、第2配管73b及び第3配管73cを介して右エンジン用放出部72Reに接続されている。2つの左エンジン用容器71Leの第2弁開放装置74bから延びる第2配管73bは、途中で合流して合流管となって、第3配管73cの合流管に接続されている。第2配管73bの合流管と第3配管73cの合流管との合流部分よりも上流側において、第2配管73bの合流管及び第3配管73cの合流管のそれぞれに逆止弁75が設けられている。逆止弁75は、容器71から放出部72へ向かう流れを許容し、その逆の流れを阻止する。以下の逆止弁75においても、許容する流れの向き及び阻止する流れの向きは同様である。
【0042】
右エンジン用容器71Reの第2弁開放装置74bは、第4配管73d及び第1配管73aを介して左エンジン用放出部72Leに接続されている。2つの右エンジン用容器71Reの第2弁開放装置74bから延びる第4配管73dは、途中で合流して合流管となって、第1配管73aの合流管に接続されている。第4配管73dの合流管と第1配管73aの合流管との合流部分よりも上流側において、第4配管73dの合流管及び第1配管73aの合流管のそれぞれに逆止弁75が設けられている。
【0043】
左発電機用容器71Lgの第1弁開放装置74aは、第5配管73eを介して左発電機用放出部72Lgに接続されている。
【0044】
右発電機用容器71Rgの第1弁開放装置74aは、第7配管73gを介して右発電機用放出部72Rgに接続されている。
【0045】
左発電機用容器71Lgの第2弁開放装置74bは、第6配管73f及び第7配管73gを介して右発電機用放出部72Rgに接続されている。第6配管73fは、第7配管73gに合流している。第6配管73fと第7配管73gとの合流部分よりも上流側において、第6配管73f及び第7配管73gのそれぞれに逆止弁75が設けられている。
【0046】
右発電機用容器71Rgの第2弁開放装置74bは、第8配管73h及び第5配管73eを介して左発電機用放出部72Lgに接続されている。第8配管73hは、第5配管73eに合流している。第8配管73hと第5配管73eとの合流部分よりも上流側において、第8配管73h及び第5配管73eのそれぞれに逆止弁75が設けられている。
【0047】
続いて、第1操作部81及び第2操作部82について説明する。
【0048】
第1操作部81は、操縦室21に配置されている。第1操作部81は、乗組員によって操作される複数の放出スイッチ81aを有している。各放出スイッチ81aは、いずれかの放出部72に対応している。放出スイッチ81aが押下操作されると、その放出スイッチ81aに対応する放出部72から消火剤を放出するための電気信号が第1操作部81から出力される。第1操作部81から出力された電気信号は、リレーボックス83に入力される。リレーボックス83は、電気信号を対応する容器71の第1弁開放装置74a又は第2弁開放装置74bへ出力する。電気信号を受信した第1弁開放装置74a又は第2弁開放装置74bは、弁を開放させ、容器71内の消火剤を対応する放出部72へ放出する。消火剤は、放出部72から、対応する部屋へ放出される。
【0049】
各放出スイッチ81aは、2回操作されることができる。各放出スイッチ81aは、1回目の操作によって放出部72からの一次放出を実行させ、2回目の操作によって放出部72からの二次放出を実行させる。放出部72からの一次放出は、該放出部72を主対象とする容器71からの消火剤を使って行われる。放出部72からの二次放出は、該放出部72を副対象とする容器71からの消火剤を使って行われる。つまり、いずれかの放出部72に対応する放出スイッチ81aの1回目の押下げが行われると、第1操作部81は、該放出部72を主対象とする容器71の第1弁開放装置74aへ電気信号を出力する。その後、放出スイッチ81aの2回目の押下が行われると、第1操作部81は、該放出部72を副対象とする容器71の第2弁開放装置74bへ電気信号を出力する。
【0050】
例えば、左エンジン用放出部72Leに対応する放出スイッチ81aの1回目の押下げが行われると、第1操作部81は、2つの左エンジン用容器71Leのそれぞれの第1弁開放装置74aへ電気信号を出力する。これにより、2つの左エンジン用容器71Leから左エンジン用放出部72Leへ消火剤が供給され、消火剤が左エンジン用放出部72Leから放出される。その後、左エンジン用放出部72Leに対応する放出スイッチ81aの2回目の押下げが行われると、第1操作部81は、2つの右エンジン用容器71Reのそれぞれの第2弁開放装置74bへ電気信号を出力する。これにより、2つの右エンジン用容器71Reから左エンジン用放出部72Leへ消火剤が供給され、消火剤が左エンジン用放出部72Leから放出される。
【0051】
第2操作部82は、下部客室22aに配置されている。第2操作部82は、複数の選択弁82aと、高圧ガスを貯蔵する蓄圧ボトル82bとを有している。第2操作部82は、非電気的に、即ち機械的に、消火剤の放出を実行させる。ここで、「非電気的」及び「機械的」とは、電気を必要としないことを意味する。
【0052】
蓄圧ボトル82bは、配管84を介して圧力作動装置74cと接続されている。配管84は、蓄圧ボトル82bと2つの左エンジン用容器71Leのそれぞれの圧力作動装置74cとを接続する第1配管84aと、蓄圧ボトル82bと2つの右エンジン用容器71Reのそれぞれの圧力作動装置74cとを接続する第2配管84bと、蓄圧ボトル82bと左発電機用容器71Lgの圧力作動装置74cとを接続する第3配管84cと、蓄圧ボトル82bと右発電機用容器71Rgの圧力作動装置74cとを接続する第4配管84dとを含んでいる。尚、各配管84を区別する場合には、このように数字の符号「84」の後に「a」等のアルファベットの符号を付して表現する。しかし、各配管84を区別しない場合には、単に「配管84」と総称する。図7においては、全ての配管84がアルファベットの符号付きで表されている。
【0053】
選択弁82aは、第1配管84a、第2配管84b、第3配管84c及び第4配管84dのそれぞれに配置されている。選択弁82aは、各配管84における流体の流通及び遮断を切り替える。選択弁82aは、乗組員又は乗客によって手動で操作される弁である。各選択弁82aは、いずれかの放出部72に対応している。選択弁82aが開通操作されると、その選択弁82aに対応する放出部72を副対象とする容器71の圧力作動装置74cへ、蓄圧ボトル82bから高圧ガスが供給される。高圧ガスが供給された圧力作動装置74cは、第2弁開放装置74bの弁を開放させる。これにより、容器71から放出部72へ消火剤が供給され、消火剤が放出部72から放出される。
【0054】
例えば、右エンジン用放出部72Reに対応する選択弁82aが開通操作されると、蓄圧ボトル82bから2つの左エンジン用容器71Leのそれぞれの圧力作動装置74cへ第1配管84aを介して高圧ガスが供給される。これにより、2つの左エンジン用容器71Leから右エンジン用放出部72Reへ消火剤が供給され、消火剤が右エンジン用放出部72Reから放出される。
【0055】
このように構成された消火システム100においては、エンジン室23又は発電機室24において火災が発生すると、火災報知器(図示省略)によって少なくとも操縦室21の乗組員へ火災が報知される。火災報知器は、エンジン室23及び発電機室24のそれぞれに配置されている。乗組員は、まずは第1操作部81を操作することによって消火活動を行う。例えば、右エンジン室23Rにおいて火災が発生している場合には、乗組員は、右エンジン用放出部72Reに対応する放出スイッチ81aを押下げる。これにより、2つの右エンジン用容器71Reから右エンジン用放出部72Reへ消火剤が供給され、消火剤が右エンジン用放出部72Reから放出される(一次放出)。右エンジン用容器71Reが消火剤を放出し切ると、消火剤の放出が終了する。尚、容器71の消火剤の残量は、第1操作部81に表示されている。乗組員は、その表示によって、消火剤の放出の終了を確認することができる。
【0056】
鎮火された場合には火災報知器による警報が停止する。消火剤の放出が終了しても火災報知器による警報が解除されない場合には、乗組員は、未鎮火であると判断して、二次放出を実行する。具体的には、乗組員は、右エンジン用放出部72Reに対応する放出スイッチ81aの2回目の押下げを実行する。これにより、2つの左エンジン用容器71Leから右エンジン用放出部72Reへ消火剤が供給され、消火剤が右エンジン用放出部72Reから放出される(二次放出)。
【0057】
また、放出スイッチ81aが操作されても放出部72から消火剤が放出されない場合には、乗組員は、下部客室22aの第2操作部82を操作する。乗組員は、右エンジン用放出部72Reに対応する選択弁82aを開通操作する。これにより、2つの左エンジン用容器71Leから右エンジン用放出部72Reへ消火剤が供給され、消火剤が右エンジン用放出部72Reから放出される。第1操作部81による操作が不能又は不調の場合であっても、消火剤を放出させることができる。
【0058】
消火システム100は、ハロゲン化物消火剤を採用しているため、消火後のガスタービンエンジン12、発電機13及びそれらに関連する機器の冠水を回避し、ガスタービンエンジン12及び発電機13等の再利用の可能性を残すことができる。
【0059】
また、冠水の回避の観点からは二酸化炭素を消火剤として採用することも考えられる。しかしながら、二酸化炭素消火設備は、二酸化炭素を貯蔵する容器等を専用の密閉空間に収容しておく必要がある等の制約がある。水中翼船1においてはスペースが限られているため、二酸化炭素消火設備のためのスペースを確保することが難しい。それに対し、消火システム100はハロゲン化物消火剤を採用しているため、ハロゲン化物消火剤を貯蔵する容器71を収容するための専用の区画が必須ではない。この例では、容器71は、油圧機械室25に配置されている。油圧機械室25は、容器1の専用の部屋ではなく、油圧機械等を収容するための部屋である。このように、船体2における空いたスペースを有効に活用して、容器71を配置することができる。
【0060】
それに加えて、消火システム100の防護室であるエンジン室23及び発電機室24は、客室22の後方に位置すると共に、容器71が配置された油圧機械室25も客室22の後方に位置している。つまり、エンジン室23及び発電機室24と油圧機械室25とは比較的接近している。そのため、容器71と、エンジン室23及び発電機室24のそれぞれに配置された放出部72とを接続する配管73を短くすることができる。配管73を短くすることによって、配管73の重量を低減することができる。また、配管73が短いため、消火剤が容器71から放出されてから放出部72に到達するまでの時間が短くなる。つまり、エンジン室23及び発電機室24へ消火剤を迅速に放出することができる。
【0061】
さらに、消火システム100は、左エンジン用放出部72Leに消火剤を供給する左エンジン用容器71Leと右エンジン用放出部72Reに消火剤を供給する右エンジン用容器71Reとを備え、左エンジン用容器71Leは、右エンジン用放出部72Reにも消火剤を供給できるように構成され、右エンジン用容器71Reは、左エンジン用放出部72Leにも消火剤を供給できるように構成されている。つまり、各エンジン室23の放出部72には、該放出部72を主対象とする容器71と該放出部72を副対象とする容器71との2種類の容器71が割り当てられている。これにより、各エンジン室23の放出部72において一次放出と二次放出との2回の消火剤の放出を実行できたり、一方の容器71からの消火剤の放出が不能又は不調の場合に他方の容器71からの消火剤の放出を実行できたりする。
【0062】
同様に、消火システム100は、左発電機用放出部72Lgに消火剤を供給する左発電機用容器71Lgと右発電機用放出部72Rgに消火剤を供給する右発電機用容器71Rgとを備え、左発電機用容器71Lgは、右発電機用放出部72Rgにも消火剤を供給できるように構成され、右発電機用容器71Rgは、左発電機用放出部72Lgにも消火剤を供給できるように構成されている。つまり、各発電機室24の放出部72には、該放出部72を主対象とする容器71と該放出部72を副対象とする容器71との2種類の容器71が割り当てられている。これにより、各発電機室24の放出部72において一次放出と二次放出との2回の消火剤の放出を実行できたり、一方の容器71からの消火剤の放出が不能又は不調の場合に他方の容器71からの消火剤の放出を実行できたりする。
【0063】
また、消火システム100は、第1操作部81に加えて、第2操作部82を備えていることによって、第1操作部81による消火剤の放出の実行が不能又は不調の場合に第2操作部82によって消火剤の放出を実行させることができる。例えば、電気系統の不具合によって第1操作部81が機能しない場合であっても、第2操作部82は、電気が不要なので、消火剤の放出を実行させることができる。さらには、第2操作部82は、第2弁開放装置74bを動作させる。そのため、第1弁開放装置74aに不具合(電気系統の不具合か否かにかかわらず)が生じた場合であっても、第2弁開放装置74bを動作させて、消火剤の放出を実行させることができる。あるいは、操縦室21にアクセスできない場合に、乗組員は下部客室22aに配置された第2操作部82を操作することによって、消火剤の放出を実行させることができる。
【0064】
以上のように、消火システム100は、ハロゲン化物消火剤を貯蔵する容器71と、ハロゲン化物消火剤を放出する放出部72と、ハロゲン化物消火剤が流通するように容器71と放出部72とを接続する配管73とを備え、放出部72は、消火対象を収容し、水中翼船1の客室22よりも後方に位置する防護室に配置され、容器71は、防護室とは別の部屋であって客室22よりも後方に位置する油圧機械室25(保管室)に配置されている。
【0065】
この構成によれば、ハロゲン化物消火剤が採用されているので、消火対象の冠水が回避される。さらに、ハロゲン化物消火剤を貯蔵する容器71は、二酸化炭素消火剤と異なり、専用の密閉区画で管理することが必須ではないので、水中翼船1内のスペースを有効に活用して配置することができる。それに加えて、放出部72が配置される防護室、及び、容器71が配置される油圧機械室25は、客室22よりも後方に位置するので、容器71と放出部72とが比較的接近して配置される。これにより、容器71と放出部72とを接続する配管73を短くすることができる。その結果、消火システム100をコンパクトに配置することができると共に、消火システム100を軽量化することができる。さらに、配管73が短いので、容器71に貯蔵された消火剤を放出部72から迅速に放出することができる。
【0066】
また、防護室は、ガスタービンエンジン12及び発電機13の少なくとも一方を消火対象として収容する。
【0067】
この構成によれば、ガスタービンエンジン12及び発電機13の少なくとも一方が、ハロゲン化物消火剤の消火対象であり、消火時の冠水が回避される。
【0068】
さらに、防護室は、ガスタービンエンジン12を収容するエンジン室23と、発電機13を収容する発電機室24とを含んでいる。
【0069】
この構成によれば、放出部72は、エンジン室23及び発電機室24のそれぞれに配置される。さらに、エンジン室23及び発電機室24の2種類の防護室が設けられた構成であっても、2種類の防護室は両方とも、客室22の後方に位置するので、容器71が配置される油圧機械室25の比較的近くに位置する。これにより、容器71とエンジン室23及び発電機室24のそれぞれの放出部72とを接続する配管73を短くすることができる。
【0070】
保管室は、ガスタービンエンジン12及び発電機13以外の機械を収容し、例えば、油圧機械室25である。
【0071】
この構成によれば、容器71は、容器71のための専用の部屋ではなく、ガスタービンエンジン12及び発電機13以外の機械を収容する部屋に該機械と一緒に収容される。つまり、該機械を収容する部屋における空いたスペースを活用して、容器71が収容される。このように、容器71のための専用の部屋を用意する必要がないため、水中翼船1の省スペース化を図ることができる。
【0072】
また、防護室は、水中翼船1の左右両側にそれぞれ設けられている。
【0073】
この構成によれば、防護室が水中翼船1の左右両側にそれぞれ設けられた構成であっても、左右の防護室は両方とも、客室22の後方に位置するので、容器71が配置される油圧機械室25の比較的近くに位置する。これにより、容器71と放出部72とを接続する配管73を短くすることができる。
【0074】
さらに、防護室と油圧機械室25とは、互いに隣接している。
【0075】
この構成によれば、防護室と油圧機械室25とが互いに隣接しているので、容器71と放出部72とを接続する配管73をより一層短くすることができる。
【0076】
また、防護室は、第1防護室及び第2防護室とを含み、放出部72は、第1防護室に配置された第1放出部と、第2防護室に配置された第2放出部とを含み、容器71は、第1放出部へハロゲン化物消火剤を供給する第1容器と、第2放出部へハロゲン化物消火剤を供給する第2容器とを含み、第1容器の接続先は、第1放出部と第2放出部とで切替可能に構成され、第2容器の接続先は、第2放出部と第1放出部とで切替可能に構成されている。
【0077】
換言すると、水中翼船1の消火システム100は、ハロゲン化物消火剤を貯蔵する容器71と、消火対象を収容する防護室に配置され、ハロゲン化物消火剤を放出する放出部72と、ハロゲン化物消火剤が流通するように容器71と放出部72とを接続する配管73とを備え、防護室は、第1防護室及び第2防護室とを含み、放出部72は、第1防護室に配置された第1放出部と、第2防護室に配置された第2放出部とを含み、容器71は、第1放出部へハロゲン化物消火剤を供給する第1容器と、第2放出部へハロゲン化物消火剤を供給する第2容器とを含み、第1容器の接続先は、第1放出部と第2放出部とで切替可能に構成され、第2容器の接続先は、第2放出部と第1放出部とで切替可能に構成されている。
【0078】
この構成によれば、第1防護室に対応する第1放出部及び第1容器が設けられる一方、第2防護室に対応する第2放出部及び第2容器が設けられる。ここで、第1容器は、第1放出部に消火剤を供給するだけでなく、第2放出部にも消火剤を供給することができる。第2容器は、第2放出部に消火剤を供給するだけでなく、第1放出部にも消火剤を供給することができる。水中翼船1で局所的に火災が発生した場合、例えば、第1防護室で火災が発生し、第2防護室で火災が発生していない場合には、第1容器から第1放出部へ消火剤を供給して消火を行うだけでなく、第2容器から第1放出部へ消火剤を供給して消火を行うこともできる。これにより、消火剤の1回の放出で鎮火できない場合等に、消火剤の2回目の放出を実行することができる。あるいは、第1容器から第1放出部への消火剤の供給に不具合が発生した場合であっても、第2容器から第1放出部へ消火剤を供給することができる。第2放出部へ第1容器及び第2容器から消火剤を供給する場合においても、同様である。このように、消火システム100を冗長化させることができる。
【0079】
例えば、防護室は、水中翼船1の左右両側にそれぞれ設けられ、ガスタービンエンジン12をそれぞれ収容する左エンジン室23L及び右エンジン室23Rを含み、第1防護室は、左エンジン室23Lであり、第2防護室は、右エンジン室23Rである。
【0080】
この構成によれば、左エンジン室23Lに左エンジン用放出部72Leが配置され、右エンジン室23Rに右エンジン用放出部72Reが配置される。また、左エンジン用放出部72Leに消火剤を供給する左エンジン用容器71Leと、右エンジン用放出部72Reに消火剤を供給する右エンジン用容器71Reとが設けられている。左エンジン用容器71Leは、右エンジン用放出部72Reへも消火剤を予備的に供給することができる。右エンジン用容器71Reは、左エンジン用放出部72Leへも消火剤を予備的に供給することができる。
【0081】
また、防護室は、水中翼船1の左右両側にそれぞれ設けられ、発電機13をそれぞれ収容する左発電機室24L及び右発電機室24Rを含み、第1防護室は、左発電機室24Lであり、第2防護室は、右発電機室24Rである。
【0082】
この構成によれば、左発電機室24Lに左発電機用放出部72Lgが配置され、右発電機室24Rに右発電機用放出部72Rgが配置される。また、左発電機用放出部72Lgに消火剤を供給する左発電機用容器71Lgと、右発電機用放出部72Rgに消火剤を供給する右発電機用容器71Rgとが設けられている。左発電機用容器71Lgは、右発電機用放出部72Rgへも消火剤を予備的に供給することができる。右発電機用容器71Rgは、左発電機用放出部72Lgへも消火剤を予備的に供給することができる。
【0083】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0084】
例えば、水中翼船1の構成は、前述の構成に限定されない。水中翼船1は、全没型に限定されず、半没型であってもよい。
【0085】
客室22は、下部客室22aと上部客室22bとの二階建て構造でなくてもよい。
【0086】
消火対象は、燃料油を使用する機械に限定されない。消火対象は、燃料油を使用しない電源装置等であってもよい。同様に、防護室は、ガスタービンエンジン12を収容するエンジン室23又は発電機13を収容する発電機室24に限定されない。
【0087】
容器71が配置される保管室は、油圧機械室25に限定されない。保管室は、消火対象を収容する部屋以外の部屋であればよい。また、保管室は、容器71を配置するためだけの専用の部屋であってもよい。ただし、省スペース化の観点からは、船体2において補機類等を収容する部屋のうち空いたスペースに容器71が配置されることが好ましい。
【0088】
防護室及び保管室は位置する「客室よりも後方」とは、船体2において、客室の後端よりも後方の位置を意味する。前述の例のように二階建ての客室の場合には、「客室よりも後方」とは、下部客室22aの後端を区画する壁及び上部客室22bの後端を区画する壁のいずれかよりも後方の位置を意味する。例えば、下部客室22の後端を区画する壁よりも直ぐ後方の領域が、上部客室22bの下方に位置する場合もあり得る。しかしながら、この領域は、下部客室22の後端を区画する壁よりも後方に位置するので、「客室よりも後方」に該当する。
【0089】
防護室が第1防護室と第2防護室とを含み、第1防護室に対応する第1放出部及び第1容器が設けられる一方、第2防護室に対応する第2放出部及び第2容器が設けられた構成において、第1防護室は、エンジン室23であり、第2防護室は、発電機室24であってもよい。例えば、左エンジン室23Lが第1防護室であり、左発電機室24Lが第2防護室であってもよい。左エンジン用容器71Leは、主対象としての左エンジン用放出部72Leと副対象としての左発電機用放出部72Lgとに接続され、左発電機用容器71Lgは、主対象としての左発電機用放出部72Lgと副対象としての左エンジン用放出部72Leとに接続されていてもよい。
【0090】
各放出部72に接続される容器71の個数は、前述の個数に限定されない。各容器71の容量、及び、放出部72が配置された部屋の容積等に応じて、各放出部72に接続される容器71の個数は、変更され得る。
【0091】
エンジン室23及び発電機室24の各部屋に配置された放出部72の個数は、1個に限定されず、2個以上であってもよい。
【0092】
第1操作部81及び第2操作部82は、必須ではない。消火システム100は、第2操作部82を備えておらず、第1操作部81だけを備えていてもよい。あるいは、消火システム100は、第1操作部81を備えず、第2操作部82だけを備えていてもよい。その場合には、蓄圧ボトル82bは、各容器71の第1弁開放装置74aにも、選択弁82aが設けられた配管84を介して接続される。乗組員は選択弁82aを選択的に開放させることによって、所望の容器71の第1弁開放装置74a又は第2弁開放装置74bから消火剤を放出させることができる。
【0093】
第1操作部81及び第2操作部82が設けられた構成においては、第1操作部81からの信号線は、各容器71の第1弁開放装置74aにだけに接続され、各容器71の第2弁開放装置74bには第1操作部81からの信号線が接続されず、各容器71の第2弁開放装置74bは、圧力作動装置74cのみによって開放されてもよい。
【0094】
第1操作部81は、4種類の放出部72のそれぞれに対応する4個の放出スイッチ81aを有しているが、これに限られるものではない。第1操作部81は、4種類の抄出部72の一次放出と二次放出のそれぞれに対応する8個の放出スイッチを有していてもよい。
【0095】
また、一次放出後に鎮火したか否かは、火災報知器による警報の有無以外の方法で判断されてもよい。例えば、操縦室21には、エンジン室23及び発電機室24のそれぞれの映像を表示するモニタが設けられ、乗組員は、モニタを介して消火剤の放出及び火災の状況を確認してもよい。乗組員は、未鎮火であることをモニタを介して確認した場合に、二次放出を実行し得る。
【符号の説明】
【0096】
100 消火システム
1 水中翼船
12 ガスタービンエンジン(消火対象)
13 発電機(消火対象)
22 客室
23L 左エンジン室(防護室)
23R 右エンジン室(防護室)
24L 左発電機室(防護室)
24R 右発電機室(防護室)
25 油圧機械室(保管室)
71Le 左エンジン用容器
71Re 右エンジン用容器
71Lg 左発電機用容器
71Rg 右発電機用容器
72Le 左エンジン用放出部
72Re 右エンジン用放出部
72Lg 左発電機用放出部
72Rg 右発電機用放出部
73a 第1配管
73b 第2配管
73c 第3配管
73d 第4配管
73e 第5配管
73f 第6配管
73g 第7配管
73h 第8配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7