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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/49 20160101AFI20240829BHJP
   F02M 26/46 20160101ALI20240829BHJP
   F02M 26/47 20160101ALI20240829BHJP
   F02M 26/28 20160101ALI20240829BHJP
【FI】
F02M26/49 311
F02M26/46 C
F02M26/47 B
F02M26/28
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021047008
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146177
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 謙輔
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-096143(JP,A)
【文献】特開2020-122464(JP,A)
【文献】特開2009-250099(JP,A)
【文献】特開2013-117470(JP,A)
【文献】特開2002-371829(JP,A)
【文献】国際公開第2013/080353(WO,A1)
【文献】特開2016-188583(JP,A)
【文献】特開2020-143492(JP,A)
【文献】特開平07-063122(JP,A)
【文献】特開2006-063868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/49
F02M 26/46
F02M 26/47
F02M 26/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンの動力によって駆動される油圧ポンプの吐出圧により動作する作業装置と、前記エンジンより排出される排気ガスから窒素酸化物を除去する排気ガス浄化装置とを備える作業機械において、
前記エンジンの燃焼室から排出された排気ガスの一部を前記燃焼室へ還流させる還流流路と、
前記還流流路を通過する排気ガスを冷却するクーラと、
前記還流流路から分岐した分岐流路、及び前記還流流路に合流する合流流路に接続され、前記分岐流路及び前記合流流路の間の排気ガスの差圧を検知する差圧センサと、
排気ガスに含まれる窒素酸化物の濃度を検知する濃度センサと、
前記差圧センサにより検知された差圧及び前記濃度センサにより検知された濃度に基づいて、前記クーラが閉塞しているか否かを判定するコントローラとを備え
前記差圧センサは、前記クーラより排気ガスの流れの上流側の圧力と、前記クーラより排気ガスの流れの下流側の圧力との差圧を検知するものであって、
前記コントローラは、
前記差圧センサにより検知された差圧が上限値以上で、且つ前記濃度センサにより検知された窒素酸化物の濃度が閾値以上である場合に、前記クーラが閉塞していると判定し、
前記差圧センサにより検知された差圧が前記上限値より小さい下限値未満の場合に、前記分岐流路が閉塞していると判定し、
前記差圧センサにより検知された差圧が前記上限値以上で、且つ前記濃度センサにより検知された窒素酸化物の濃度が前記閾値未満である場合に、前記合流流路が閉塞していると判定することを特徴とする作業機械。
【請求項2】
エンジンと、前記エンジンの動力によって駆動される油圧ポンプの吐出圧により動作する作業装置と、前記エンジンより排出される排気ガスから窒素酸化物を除去する排気ガス浄化装置とを備える作業機械において、
前記エンジンの燃焼室から排出された排気ガスの一部を前記燃焼室へ還流させる還流流路と、
前記還流流路を通過する排気ガスを冷却するクーラと、
前記還流流路から分岐した分岐流路、及び前記還流流路に合流する合流流路に接続され、前記分岐流路及び前記合流流路の間の排気ガスの差圧を検知する差圧センサと、
排気ガスに含まれる窒素酸化物の濃度を検知する濃度センサと、
前記差圧センサにより検知された差圧及び前記濃度センサにより検知された濃度に基づいて、前記クーラが閉塞しているか否かを判定するコントローラと
前記作業機械の動作を許容する許容位置、及ぶ前記作業機械の動作を規制する規制位置に切り替え可能な操作装置とを備え、
前記コントローラは、前記操作装置が前記規制位置である場合に、前記クーラが閉塞しているか否かを判定することを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGRシステムを搭載した作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、油圧ショベル、ダンプトラック、ホイールローダ等の作業機械には、大きなトルクを発生させることができるディーゼルエンジンが搭載されている。また、排気ガスに含まれる窒素酸化物を抑制するために、燃焼室から排出された排気ガスの一部をEGRクーラで冷却して、吸気として燃焼室に還流させるEGRシステムが知られている。
【0003】
ここで、排気ガスに含まれる煤が堆積してEGRクーラが閉塞すると、吸気として燃焼室に還流する排気ガスの割合が低下し、吸気中の酸素濃度が増加する。その結果、燃焼室における窒素酸化物の生成量が増加する。そこで、EGRクーラの前後の差圧を差圧センサで検知して、EGRクーラが閉塞したか否かを判定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/080353号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、差圧センサの検知結果は、EGRクーラそのものが閉塞した場合のみならず、EGRクーラの前後から分岐して差圧センサに接続される分岐流路が閉塞した場合にも変動する。そのため、特許文献1の方法では、EGRクーラの閉塞を誤検知する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、EGRクーラの閉塞を適切に検知することが可能な作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、エンジンと、前記エンジンの動力によって駆動される油圧ポンプの吐出圧により動作する作業装置と、前記エンジンより排出される排気ガスから窒素酸化物を除去する排気ガス浄化装置とを備える作業機械において、前記エンジンの燃焼室から排出された排気ガスの一部を前記燃焼室へ還流させる還流流路と、前記還流流路を通過する排気ガスを冷却するクーラと、前記還流流路から分岐した分岐流路、及び前記還流流路に合流する合流流路に接続され、前記分岐流路及び前記合流流路の間の排気ガスの差圧を検知する差圧センサと、排気ガスに含まれる窒素酸化物の濃度を検知する濃度センサと、前記差圧センサにより検知された差圧及び前記濃度センサにより検知された濃度に基づいて、前記クーラが閉塞しているか否かを判定するコントローラとを備え、前記差圧センサは、前記クーラより排気ガスの流れの上流側の圧力と、前記クーラより排気ガスの流れの下流側の圧力との差圧を検知するものであって、前記コントローラは、前記差圧センサにより検知された差圧が上限値以上で、且つ前記濃度センサにより検知された窒素酸化物の濃度が閾値以上である場合に、前記クーラが閉塞していると判定し、前記差圧センサにより検知された差圧が前記上限値より小さい下限値未満の場合に、前記分岐流路が閉塞していると判定し、前記差圧センサにより検知された差圧が前記上限値以上で、且つ前記濃度センサにより検知された窒素酸化物の濃度が前記閾値未満である場合に、前記合流流路が閉塞していると判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、EGRクーラの閉塞を適切に検知することができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】油圧ショベルの側面図である。
図2】第1実施形態に係る油圧ショベルの駆動回路を示す図である。
図3】油圧ショベルのハードウェア構成図である。
図4】第1実施形態に係る閉塞判定処理のフローチャートである。
図5】EGRガスの流量と窒素酸化物の濃度との関係を示す図である。
図6】第2実施形態に係る油圧ショベルの駆動回路を示す図である。
図7】第2実施形態に係る閉塞判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
本発明に係る油圧ショベル1(作業機械)の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、作業機械の具体例は油圧ショベル1に限定されず、ホイールローダ、クレーン、ダンプトラック等でもよい。また、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、油圧ショベル1に搭乗して操作するオペレータの視点を基準としている。
【0011】
図1は、油圧ショベル1の側面図である。図1に示すように、油圧ショベル1は、下部走行体2と、下部走行体2により支持された上部旋回体3とを備える。下部走行体2及び上部旋回体3は、車体の一例である。
【0012】
下部走行体2は、無限軌道帯である左右一対のクローラ8を備える。そして、走行モータ(図示省略)の駆動により、左右一対のクローラ8が独立して回転する。その結果、油圧ショベル1が走行する。但し、下部走行体2は、クローラ8に代えて、装輪式であってもよい。
【0013】
上部旋回体3は、旋回モータ(図示省略)によって旋回可能に下部走行体2に支持されている。上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム5と、旋回フレーム5の前方中央に上下方向に回動可能に取り付けられたフロント作業機4(作業装置)と、旋回フレーム5の前方左側に配置されたキャブ(運転席)7と、旋回フレーム5の後部に配置されたカウンタウェイト6とを主に備える。
【0014】
フロント作業機4は、上部旋回体3に起伏可能に支持されたブーム4aと、ブーム4aの先端に回動可能に支持されたアーム4bと、アーム4bの先端に回動可能に支持されたバケット4cと、ブーム4aを駆動させるブームシリンダ4dと、アーム4bを駆動させるアームシリンダ4eと、バケット4cを駆動させるバケットシリンダ4fとを含む。カウンタウェイト6は、フロント作業機4との重量バランスを取るためのもので、上面視円弧形状を成す重量物である。
【0015】
キャブ7には、油圧ショベル1を操作するオペレータが搭乗する内部空間が形成されている。そして、キャブ7の内部空間には、オペレータが着席するシートと、シートに着席したオペレータにより操作される操作装置が配置されている。
【0016】
操作装置は、油圧ショベル1を動作させるためのオペレータの操作を受け付ける。オペレータによって操作装置が操作されることによって、下部走行体2が走行し、上部旋回体3が旋回し、フロント作業機4が動作する。なお、操作装置の具体例としては、レバー、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル、スイッチ等が挙げられる。
【0017】
操作装置は、ゲートロックレバー7a(図3参照)を含む。ゲートロックレバー7aは、油圧アクチュエータ(走行モータ、旋回モータ、油圧シリンダ4d~4f)の動作を許容する許容位置と、油圧アクチュエータの動作を規制する規制位置とに、オペレータによって切り替え可能に構成されている。より詳細には、許容位置のゲートロックレバー7aは、油圧ポンプ20(図2参照)から油圧アクチュエータへ至る作動油の流路を開放する。一方、規制位置のゲートロックレバー7aは、油圧ポンプ20から油圧アクチュエータへ至る作動油の流路を遮断する。そして、ゲートロックレバー7aは、現在の位置を示す位置信号をコントローラ50(図3参照)に出力する。
【0018】
また、キャブ7には、モニタ7b(図3参照)が設置されている。モニタ7bは、コントローラ50の制御に従って、情報(文字、映像)を表示する。モニタ7bは、キャブ7のオペレータに情報を報知する報知装置の一例である。但し、報知装置の具体例はモニタ7bに限定されず、スピーカ、LEDランプ等でもよい。
【0019】
図2は、第1実施形態に係る油圧ショベル1の駆動回路を示す図である。図2に示すように、油圧ショベル1は、エンジン10と、油圧ポンプ20と、排気ガス浄化装置30と、インタークーラ40とを主に備える。
【0020】
エンジン10は、空気と燃料とを混合して燃焼させることによって、油圧ポンプ20を回転させる動力を発生させると共に、排気ガスを排出する。エンジン10は、例えば、軽油を燃料とするディーゼルエンジンである。また、エンジン10は、ラジエータ(図示省略)から供給される冷却水によって冷却される。
【0021】
エンジン10は、燃焼室11から排出された排気ガスの一部を冷却して、吸気として燃焼室11に還流させるEGR(Exhaust Gas Recirculation)システムを搭載している。より詳細には、エンジン10は、燃焼室11と、ターボチャージャ12と、EGRバルブ13と、EGRクーラ14と、差圧センサ15と、ガス温センサ16と、水温センサ17とを主に備える。
【0022】
また、エンジン10は、複数の流路L1、L2、L3、L4、L5、L6を有する。流路L1~L6は、空気を流通させる配管によって形成されるものである。流路L1~L6は、例えば、金属製の配管またはブロックの内部に形成された通路などを指す。
【0023】
流路L1は、燃焼室11に吸気ガスを供給する流路である。流路L2は、燃焼室11から排出される排気ガスを、ターボチャージャ12及び排気ガス浄化装置30を通じて大気に排出する流路である。
【0024】
流路L3は、ターボチャージャ12からインタークーラ40を通じて流路L1に接続される流路である。そして、流路L3は、ターボチャージャ12で圧縮された圧縮空気を、インタークーラ40を通じて流路L1に供給する。
【0025】
流路L4(還流流路)は、ターボチャージャ12より排気ガスの流れの上流側において流路L2から分岐し、EGRバルブ13及びEGRクーラ14を通じて流路L1に接続される流路である。そして、流路L4は、燃焼室11から排出されてEGRクーラ14で冷却された排気ガス(以下、「EGRガス」と表記する。)を、流路L1に供給する。すなわち、流路L1から燃焼室11に供給される吸気ガスは、流路L3を通じて供給される圧縮空気と、流路L4を通じて供給されるEGRガスとが混合されたものである。
【0026】
流路L5(分岐流路)は、EGRバルブ13より排気ガスの流れの下流側で且つEGRクーラ14より排気ガスの流れの上流側の第1位置P1において、流路L4に接続(より詳細には、流路L4から分岐)している。流路L6(合流流路)は、EGRクーラ14より排気ガスの流れの下流側の第2位置P2において、流路L4に接続(より詳細には、流路L4に合流)している。すなわち、第2位置P2は、流路L4の第1位置P1より排気ガスの流れの下流側の位置である。また、流路L5、L6の流路面積は、流路L4より小さく設定される。そして、流路L5、L6は、差圧センサ15に接続されている。
【0027】
燃焼室11は、流路L1、L2に接続されている。燃焼室11には、流路L1を通じて吸気ガスが供給され、インジェクタ11a(図3参照)を通じて燃料が供給される。そして、燃焼室11は、供給された吸気ガス及び燃料を圧縮して燃焼させることによって、出力軸を回転させると共に、排気ガスを流路L2に排出する。
【0028】
ターボチャージャ12は、燃焼室11と排気ガス浄化装置30との間の流路L2上に設けられている。ターボチャージャ12は、流路L2を通じて排出される排気ガスを用いて大気中の空気を圧縮し、圧縮空気を流路L3に供給する。ターボチャージャ12は、排気ガスによって回転するタービン12aと、タービン12aの回転によって空気を圧縮するコンプレッサ12bとで構成される。ターボチャージャ12の構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0029】
EGRバルブ13は、第1位置P1より排気ガスの流れの上流側において、流路L4に配置されている。EGRバルブ13は、コントローラ50の制御に従って、流路L4の開度を調整する電磁比例弁である。すなわち、流路L4を流れる排気ガス(換言すれば、流路L4から流路L1に供給されるEGRガス)の流量は、EGRバルブ13の開度によって調整される。
【0030】
EGRクーラ14は、EGRバルブ13より排気ガスの流れの下流側において、流路L4上に設けられている。より詳細には、EGRクーラ14は、第1位置P1より排気ガスの流れの下流側で且つ第2位置P2より排気ガスの流れの上流側において、流路L4に配置されている。EGRクーラ14は、流路L4を流れる排気ガスを冷却する。第1実施形態に係るEGRクーラ14は、流路L4を流れる排気ガスと、ラジエータ(図示省略)から供給される冷却水とを熱交換させる。すなわち、EGRクーラ14は、冷却水が流通する配管(図示省略)が流路L4に近接して配置された部分を指す。
【0031】
差圧センサ15は、流路L5、L6に接続されている。そして、第1実施形態に係る差圧センサ15は、流路L4の第1位置P1及び第2位置P2の間(換言すれば、EGRクーラ14の前後)の差圧ΔPを検知し、検知結果を示す差圧信号をコントローラ50に出力する。より詳細には、第1実施形態に係る差圧センサ15は、EGRクーラ14より排気ガスの流れの上流側の圧力と、EGRクーラ14より排気ガスの流れの下流側の圧力との差圧を検知する。
【0032】
ガス温センサ16は、EGRクーラ14(第1実施形態では、第2位置P2)より排気ガスの流れの下流側において、流路L4に配置されている。そして、ガス温センサ16は、流路L4を流れるEGRガス(すなわち、EGRクーラ14で冷却された排気ガス)の温度を検知し、検知結果を示すガス温信号をコントローラ50に出力する。
【0033】
水温センサ17は、燃焼室11の周りに形成された冷却水の流路に配置されている。そして、水温センサ17は、燃焼室11の周りを冷却した冷却水の温度を検知し、検知結果を示す水温信号をコントローラ50に出力する。
【0034】
油圧ポンプ20は、エンジン10の出力軸に接続されている。そして、油圧ポンプ20は、エンジン10が発生させる動力によって駆動する。より詳細には、油圧ポンプ20は、作動油タンク(図示省略)に貯留された作動油を、所定の吐出圧で油圧アクチュエータに供給する。
【0035】
排気ガス浄化装置30は、ターボチャージャ12より排気ガスの流れの下流側において、流路L2上に設けられている。排気ガス浄化装置30は、流路L2を流れる排気ガスから窒素酸化物(NOx)を除去して、窒素酸化物が除去された排気ガスを大気に排出する。より詳細には、排気ガス浄化装置30は、流路L2を流れる排気ガスに尿素を噴射することによって、排気ガスに含まれる窒素酸化物をアンモニアで水と窒素に分解する。排気ガス浄化装置30は、さらに、流路L2を流れる排気ガスに含まれる一酸化炭素、炭化水素を、酸化触媒で酸化して除去してもよい。
【0036】
排気ガス浄化装置30は、NOx濃度センサ31(濃度センサ)を備える。排気ガス浄化装置30は、流路L2を流れる排気ガス(排気ガス浄化装置30で窒素酸化物が除去される前の排気ガス)に含まれる窒素酸化物の濃度Cを検知し、検知結果を示す濃度信号をコントローラ50に出力する。
【0037】
インタークーラ40は、ターボチャージャ12及び燃焼室11の間の流路L3上に配置されている。インタークーラ40は、ターボチャージャ12で圧縮された圧縮空気を冷却して、流路L1に供給する。第1実施形態に係るインタークーラ40は、流路L3を流れる圧縮空気と、大気とを熱交換させる。
【0038】
図3は、油圧ショベル1のハードウェア構成図である。図3に示すように、油圧ショベル1は、エンジン10の動作を制御するエンジンコントローラ51と、油圧ショベル1のその他の構成要素(例えば、油圧ポンプ20,モニタ7b)を制御する制御用コントローラ52とを備える。なお、図3におけるエンジンコントローラ51及び制御用コントローラ52の役割分担は一例なので、本明細書ではこれらを総称して、「コントローラ50」と表記する。
【0039】
コントローラ50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を備える。コントローラ50は、ROMに格納されたプログラムコードをCPUが読み出して実行することによって、後述する処理を実現する。RAMは、CPUがプログラムを実行する際のワークエリアとして用いられる。
【0040】
但し、コントローラ50の具体的な構成はこれに限定されず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0041】
コントローラ50は、差圧センサ15から出力される差圧信号と、ガス温センサ16から出力されるガス温信号と、水温センサ17から出力される水温信号と、NOx濃度センサ21から出力される濃度信号と、ゲートロックレバー7aから出力される操作信号とを取得し、取得した各種信号に基づいてインジェクタ11a、ターボチャージャ12、EGRバルブ13、油圧ポンプ20、及びモニタ7bを制御する。
【0042】
まず、エンジン10の始動直後において、コントローラ50は、EGRバルブ13を閉塞している。そのため、エンジン10は、ターボチャージャ12から流路L3を通じて供給される圧縮空気と、インジェクタ11aから供給される燃料とを燃焼室11で燃焼させて、動力を発生させる。
【0043】
次に、コントローラ50は、エンジン10の回転が安定すると、EGRバルブ13を開く。これにより、流路L2を流れる排気ガスの一部が流路L4に流入し、EGRクーラ14で冷却されて、EGRガスとして流路L1に還流する。これにより、圧縮空気及びEGRガスが混合されて燃焼室11に供給されるので、燃焼室11内の燃焼温度が低下して、窒素酸化物の生成が抑制される。
【0044】
そして、コントローラ50は、エンジン10が駆動している間、EGRガスの供給量が予め定められた目標値に近づくように、EGRバルブ13の開度を調整する。しかしながら、燃焼室11から排出された排気ガスには、未だ窒素酸化物が含まれる。そこで、排気ガス浄化装置30によって、流路L2を流れる排気ガスから窒素酸化物が除去される。
【0045】
次に、図4及び図5を参照して、第1実施形態に係る閉塞判定処理を説明する。図4は、第1実施形態に係る閉塞判定処理のフローチャートである。図5は、EGRガスの流量と、窒素酸化物の濃度との関係を示す図である。
【0046】
コントローラ50は、エンジン10が始動している間において、所定の時間間隔毎に閉塞判定処理を繰り返し実行する。閉塞判定処理は、エンジン10に搭載されたEGRシステム内の流路の閉塞の有無を判定する処理である。より詳細には、閉塞判定処理は、EGRクーラ14または流路L5、L6が閉塞しているか否かを判定する処理である。なお、「EGRクーラ14の閉塞」とは、流路L4のEGRクーラ14を通過する部分の閉塞、換言すれば、流路L4の第1位置P1及び第2位置P2の間の閉塞を指す。
【0047】
より詳細には、流路L4を流れる排気ガスがEGRクーラ14で冷却されると、凝縮水が発生することがある。そして、排気ガスに含まれる煤を取り込んだ凝縮水が流路L4の内面に堆積すると、第1位置P1及び第2位置P2の間の流路L4の流路面積が小さくなる(以下、この状態を「閉塞」と表記する)。すなわち、閉塞とは、流路L4が完全に閉じた状態に限定されない。なお、煤を取り込んだ凝縮水は、流路L4のみならず、流路L5、L6にも堆積し得る。
【0048】
まず、コントローラ50は、予め定められた判定条件を満たすか否かを判定する(S11)。判定条件とは、例えば、エンジン10の回転数が所定の回転数を超えていること、EGRバルブ13が開いていること、ゲートロックレバー7aが規制位置に配置されていることのうち、少なくとも1つである。そして、コントローラ50は、判定条件を満たしていないと判定した場合に(S11:No)、ステップS12以降の処理を実行することなく、閉塞判定処理を終了する。
【0049】
一方、コントローラ50は、判定条件を満たすと判定した場合に(S11:Yes)、差圧センサ15によって検知された差圧ΔPと上限値Phとを比較する(S12)。第1実施形態に係る上限値Phは、EGRクーラ14が閉塞した状態で差圧センサ15によって検知される差圧ΔPの推定値である。
【0050】
なお、差圧ΔPが上限値Ph以上になるのは、EGRクーラ14が閉塞した場合だけでなく、流路L6が閉塞した場合も同様である。そのため、差圧ΔPと上限値Phとの比較だけでは、閉塞した部分を正確に判定することができない。
【0051】
そして、EGRクーラ14が閉塞すると、流路L1に還流するEGRガスの流量が減少する。その結果、図5に示すように、EGRガスの流量が減少すると、燃焼室11の燃焼温度が高くなって、排気ガス中の窒素酸化物の濃度が上昇する。これに対して、流路L6が閉塞した場合は、EGRガスの流量が変化しないので、排気ガス中の窒素酸化物の濃度は変化しない。
【0052】
そこで、コントローラ50は、差圧ΔPが上限値Ph以上の場合に(S12:Yes)、NOx濃度センサ31によって検知された窒素酸化物の濃度Cと閾値Cthとを比較する(S13)。閾値Cthは、EGRクーラ14が閉塞した状態でNOx濃度センサ31によって検知される濃度Cの推定値である。
【0053】
そして、コントローラ50は、濃度Cが閾値Cth以上の場合に(S13:Yes)、EGRクーラ14が閉塞していると判定して(S14)、判定結果をモニタ7bに表示する(S15)。一方、コントローラ50は、濃度Cが閾値Cth未満の場合に(S13:No)、流路L6が閉塞していると判定して(S16)、判定結果をモニタ7bに表示する(S15)。
【0054】
ステップS15の処理は、判定結果を出力(報知)する処理の一例である。但し、判定結果を出力する具体的な方法は、モニタ7bに情報を表示することに限定されず、LEDランプの点灯、スピーカからのガイド音声の出力、通信ネットワークを通じた外部装置への情報の送信などであってもよい。
【0055】
また、コントローラ50は、差圧ΔPが上限値Ph未満の場合に(S12:No)、差圧センサ15によって検知された差圧ΔPと下限値Plとを比較する(S17)。第1実施形態に係る下限値Plは、EGRクーラ14が閉塞していない状態(すなわち、新品のEGRシステム)で差圧センサ15によって検知される差圧ΔPの推定値である。すなわち、上限値Ph>下限値Plである。
【0056】
そして、コントローラ50は、差圧ΔPが下限値Pl未満の場合に(S17:Yes)、流路L5が閉塞していると判定して(S18)、判定結果をモニタ7bに表示する(S15)。一方、コントローラ50は、差圧ΔPが下限値Pl以上の場合に(S17:No)、EGRシステムが閉塞していないと判定して(S19)、閉塞判定処理を終了する。
【0057】
第1実施形態によれば、差圧センサ15によって検知された差圧ΔPと、NOx濃度センサ31によって検知された窒素酸化物の濃度Cとの組み合わせに基づいて、EGRシステム内の閉塞を判定する。その結果、EGRクーラ14または流路L5、L6の閉塞を適切に判定することができる。
【0058】
なお、油圧ショベル1の動作に伴う振動によって、各種センサ15、16、17、31の検知結果に誤差が生じる場合がある。そこで第1実施形態によれば、ゲートロックレバー7aが規制位置の場合にステップS12以降の処理を実行するので、誤差の少ない検知結果に基づいて、EGRシステム内の閉塞を判定することができる。
【0059】
また、上限値Ph及び下限値Plは、予め定められた固定値でもよいし、エンジン10の回転数、EGRバルブ13の開度、またはガス温センサ16によって検知されたEGRガスの温度などによって変化する値でもよい。同様に、閾値Cthは、予め定められた固定値でもよいし、エンジン10の回転数、または水温センサ17によって検知された冷却水の温度などによって変化する値でもよい。
【0060】
[第2実施形態]
次に、図6及び図7を参照して、第2実施形態に係る油圧ショベル1を説明する。図6は、第2実施形態に係る油圧ショベル1の駆動回路を示す図である。図7は、第2実施形態に係る閉塞判定処理のフローチャートである。なお、第1実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0061】
図6に示すように、第2実施形態に係る油圧ショベル1は、絞り部19をさらに備える。絞り部19は、流路L4のEGRクーラ14より排気ガスの流れの下流側に配置されている。絞り部19は、設置位置における流路L4の流路面積を絞る。絞り部19は、例えば、ベンチュリー管で構成される。なお、このベンチュリー管を絞り弁に替えて構成してもよい。
【0062】
また、第2実施形態に係る流路L5(分岐流路)は、EGRクーラ14より排気ガスの流れの下流側で且つ絞り部19より排気ガスの流れの上流側の第1位置P1において、流路L4に接続(より詳細には、流路L4から分岐)している。また、第2実施形態に係る流路L6(合流流路)は、絞り部19によって絞られた第2位置P2において、流路L4に接続(より詳細には、流路L4に合流)している。
【0063】
さらに、差圧センサ15は、流路L5、L6に接続されている。そして、第2実施形態に係る差圧センサ15は、流路L4上の位置であって配管の流路面積と同じで絞られていない第1位置P1及びベンチュリー管により流路面積が絞られた第2位置P2の間の差圧ΔPを検知し、検知結果を示す差圧信号をコントローラ50に出力する。より詳細には、第2実施形態に係る差圧センサ15は、絞り部19より排気ガスの流れの上流側の圧力と、絞り部19によって絞られた部位の圧力との差圧を検知する。そして、第2実施形態において、差圧センサ15によって検知される差圧ΔPは、EGRクーラ14または流路L6に閉塞が発生するほど小さくなり、流路L5に閉塞が発生するほど大きくなる。
【0064】
そこで図7に示すように、第2実施形態に係るコントローラ50は、図4のステップS12に代えて、差圧センサ15によって検知された差圧ΔPと下限値Plとを比較する(S22)。また、第2実施形態に係るコントローラ50は、図4のステップS17に代えて、差圧センサ15によって検知された差圧ΔPと上限値Phとを比較する(S27)。
【0065】
第2実施形態に係る下限値Plは、EGRクーラ14が閉塞した状態で差圧センサ15によって検知される差圧ΔPの推定値である。また、第2実施形態に係る上限値Phは、EGRクーラ14が閉塞していない状態(すなわち、新品のEGRシステム)で差圧センサ15によって検知される差圧ΔPの推定値である。すなわち、上限値Ph>下限値Plである。
【0066】
そして、第2実施形態に係るコントローラ50は、差圧ΔPが下限値Pl未満で且つ窒素酸化物の濃度Cが閾値Cth以上の場合に(S22:Yes&S13:Yes)、EGRクーラ14が閉塞していると判定する(S14)。一方、第2実施形態に係るコントローラ50は、差圧ΔPが下限値Pl未満で且つ窒素酸化物の濃度Cが閾値Cth未満の場合に(S22:Yes&S13:No)、流路L5が閉塞していると判定する(S16)。
【0067】
また、第2実施形態に係るコントローラ50は、差圧ΔPが上限値Ph以上の場合に(S22:No&S27:Yes)、流路L6が閉塞していると判定する(S18)。一方、第2実施形態に係るコントローラ50は、差圧ΔPが下限値Pl以上で且つ上限値Ph未満の場合に(S22:No&S27:No)、EGRシステムに閉塞が発生していないと判定する(S19)。
【0068】
第2実施形態によっても第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0069】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 フロント作業機
4a ブーム
4b アーム
4c バケット
4d ブームシリンダ
4e アームシリンダ
4f バケットシリンダ
5 旋回フレーム
6 カウンタウェイト
7 キャブ
7a ゲートロックレバー
7b モニタ
8 クローラ
10 エンジン
11 燃焼室
11a インジェクタ
12 ターボチャージャ
12a タービン
12b コンプレッサ
13 EGRバルブ
14 EGRクーラ(クーラ)
15 差圧センサ
16 ガス温センサ
17 水温センサ
19 絞り部
20 油圧ポンプ
21 NOx濃度センサ
30 排気ガス浄化装置
31 NOx濃度センサ
40 インタークーラ
50 コントローラ
51 エンジンコントローラ
52 制御用コントローラ
L5 分岐流路
L6 合流流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7