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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】空気清浄化陰圧装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/003 20210101AFI20240829BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20240829BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20240829BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20240829BHJP
   F24F 8/108 20210101ALI20240829BHJP
   F24F 8/80 20210101ALI20240829BHJP
   G01N 15/06 20240101ALI20240829BHJP
   G01N 15/08 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
F24F7/003
A61L9/16 F
B01D46/00 F
F24F7/06 B
F24F8/108 110
F24F8/80 115
F24F8/80 150
F24F8/80 212
F24F8/80 236
F24F8/80 250
F24F8/80 252
F24F8/80 300
G01N15/06 D
G01N15/08 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021145588
(22)【出願日】2021-09-07
(65)【公開番号】P2023038718
(43)【公開日】2023-03-17
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】安達 東彦
(72)【発明者】
【氏名】金子 健
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3103406(JP,U)
【文献】特開2019-005713(JP,A)
【文献】特開2008-064443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/003
A61L 9/16
B01D 46/00
F24F 7/06
F24F 8/108
F24F 8/80
G01N 15/06
G01N 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の微粒子を含む空気を吸い込む、筐体の前面に設けられた吸込部と、前記吸込部に吸い込まれた空気を後方に通過させて清浄化する清浄化フィルタと、を有するフィルターチャンバと、
前記清浄化フィルタを後方に通過させた空気流路方向に対して略直交方向に延在された空気流路を設けるダクトと、前記ダクトの前方壁面の長手方向略中央位置に設けられた前記ダクト内の空気を吸引させる吸引口と、を有する背面チャンバと、
前記背面チャンバから流出された空気を前方に吸引するファンと、前記ファンを回転駆動するファンモータと、前記ファンにより吸引された空気を側方より室内の外部に排出する排気口と、前記筐体の前面を開放可能とするカバーと、を有するファンチャンバと、
前記清浄化フィルタの清浄性能を測定する前記筐体外部の測定器と、前記測定器を前記筐体の前面から前記吸引口に接続可能とする接続部と、を備えたことを
特徴とする空気清浄化陰圧装置。
【請求項2】
前記吸引口の近傍における空気流を調整する整流部材を更に備え、
前記整流部材は、前記ダクトの前方壁面に設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の空気清浄化陰圧装置。
【請求項3】
前記整流部材は、前記ダクト内の空気流路方向に対して直交する面を前記吸引口の当該空気流路方向下流側に設けたL字形状である
ことを特徴とする請求項2に記載の空気清浄化陰圧装置。
【請求項4】
前記整流部材は、前記ダクト内の空気流路方向に対して直交する面に開口部を設けた
ことを特徴とする請求項3に記載の空気清浄化陰圧装置。
【請求項5】
前記整流部材は、山笠形状の部材を前記ダクト内の空気流路方向に対して傾斜させて前記吸引口の近傍に配置させた
ことを特徴とする請求項2に記載の空気清浄化陰圧装置。
【請求項6】
前記整流部材は、前記ダクト内の空気流路方向に対して直交する面を前記吸引口の当該空気流路方向上流側に設けた直立形状である
ことを特徴とする請求項2に記載の空気清浄化陰圧装置。
【請求項7】
前記清浄化フィルタは、前記吸込部を開放することにより前記筐体の前面から交換可能とする
ことを特徴とする請求項1に記載の空気清浄化陰圧装置。
【請求項8】
前記背面チャンバから、前記ファンチャンバに吸引される入口に吸引部を更に設け、
前記整流部材の形状、前記吸引部の内径、前記ファンのフィン径、前記ファンの回転数を対応付けて調整することにより前記清浄化フィルタの性能評価精度を調整可能とする
ことを特徴とする請求項2に記載の空気清浄化陰圧装置。
【請求項9】
前記背面チャンバから、前記ファンチャンバに吸引される入口に吸引部を更に設け、
前記吸引部の内径、前記ファンのフィン径、前記ファンの回転数を調整することにより前記室内の陰圧度を調整可能とする
ことを特徴とする請求項1に記載の空気清浄化陰圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の空気を清浄化しながら室内を陰圧に維持する空気清浄化陰圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汚染空気を清浄な空気とするため、汚染空気中の微粒子をHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタで捕獲し清浄化して排出するフィルターユニットが広く知られ、用いられている。主に、細菌やウィルスを捕獲して正常化する目的では医療機関や研究施設などで用いられている。特許文献1には、室内の空気を、HEPAフィルタを通すことによって清浄化して排気ファンにより外部に排気することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-178785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
病室内を陰圧にするための空気清浄化フィルターユニットの従来例の構造を図10に示す。図10は、従来例における空気清浄化フィルターユニット80の構造を示す断面図である。ファンモータ86を駆動させ、ファン85を回転させることにより、病室内の空気は吸気され、排気HEPAフィルターユニットの吸込部82から空気清浄化フィルターユニット80に導入される。吸気された空気は、HEPAフィルタ81を通過し、HEPAフィルタ81により清浄化された空気を、ファン85の回転により排気口87を通じて外部に排出される。
【0005】
また、排気HEPAフィルターユニットはHEPAフィルタの排出側にモータ交換、清掃作業等のメンテナンスが必要な部品を配置することが望ましい。HEPAフィルタの吸入側に交換等のメンテナンスが必要なファンやファンモータ等を配置した場合、HEPAフィルタで清浄化される前の空気がファンやファンモータ等を通過するため、空気中を浮遊するウィルスや細菌がファンやファンモータ等に付着する。その後、フィルターユニットのメンテナンス時に、ファンやファンモータ等に付着したウィルスや細菌から作業者が感染してしまう可能性があるため、交換等のメンテナンスが必要なファンやファンモータ等を清浄化フィルタの排出側に配置することが好ましい。
【0006】
また、HEPAフィルタ81の性能確認やHEPAフィルタ81の取り付けが問題無いことを確認する性能評価試験を行う場合、例えばフィルターユニット80の一部に性能評価試験用の測定ポート88を暫定的に取付け、その測定ポート88から微粒子を測定するパーティクルセンサに接続し測定する。図10に示す従来例では、吸込部82に対して背面側に暫定的に性能評価試験用の測定ポート88を取り付けた例を図示している。
【0007】
従って、測定ポート88が暫定的な取付け位置となるため、フィルターユニットの通常使用状態におけるフィルタの清浄化性能を精度よく評価することが不可能であった。
【0008】
また、前面の吸込部82に対して背面側を取り外し可能なカバーとすることで、HEPAフィルタ81の吹出面で測定する方法も考えられるが、その場合、ファン85を回転させると、背面側の取り外されたカバーの開口から汚染空気をフィルターユニット内に吸入してしまい、汚染空気がHEPAフィルタ81を通らないため、HEPAフィルタ81の上流側に別のファンを設けることが必要となる。
【0009】
上述のことから、フィルターユニットの通常使用状態における性能評価試験を実行可能とすると共に、更に日常的なフィルターユニットのモータ交換、フィルタ交換、清掃等メンテナンスの作業性向上を両立するフィルターユニットが望まれていた。
【0010】
本発明は、空気清浄化フィルタの性能評価試験の精度向上と、日常的なメンテナンス作業性の向上を両立し、コンパクトな構成で容易に設置可能な空気清浄化陰圧装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、空気清浄化陰圧装置の一例を挙げるならば、室内の微粒子を含む空気を吸い込む、筐体の前面に設けられた吸込部と、前記吸込部に吸い込まれた空気を後方に通過させて清浄化する清浄化フィルタと、を有するフィルターチャンバと、前記清浄化フィルタを後方に通過させた空気流路方向に対して略直交方向に延在された空気流路を設けるダクトと、前記ダクトの前方壁面の長手方向略中央位置に設けられた前記ダクト内の空気を吸引させる吸引口と、を有する背面チャンバと、前記背面チャンバから流出された空気を前方に吸引するファンと、前記ファンを回転駆動するファンモータと、前記ファンにより吸引された空気を側方に排出する排気口と、前記筐体の前面を開放可能とするカバーと、を有するファンチャンバと、前記清浄化フィルタの清浄性能を測定する前記筐体外部の測定器を、前記筐体の前面から前記吸引口に接続可能とする接続部と、を備えた構成を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、空気清浄化フィルタの性能評価試験の精度向上と、日常的なメンテナンス作業性の向上を両立し、コンパクトな構成で容易に設置可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1における空気清浄化陰圧装置100の設置状態を示す構成図である。
図2】実施例1における空気清浄化陰圧装置100の内部構造を上から見た断面図である。
図3】実施例1におけるベルマウス14を清浄化空気流D側から見た斜視図である。
図4】実施例1におけるパーティクルカウンタ60の測定原理を説明する概要図である。
図5】実施例1におけるパーティクルカウンタ60の測定結果を示すグラフである。
図6】実施例2における空気清浄化陰圧装置200の設置状態を示す構成図である。
図7】実施例3における空気清浄化陰圧装置300の設置状態を示す構成図である。
図8】実施例4における空気清浄化陰圧装置400の設置状態を示す構成図である。
図9】実施例5における空気清浄化陰圧装置500の設置状態を示す構成図である。
図10】従来例における空気清浄化フィルターユニット80の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【0015】
図面等において示す各要素の位置、大きさ、形状、範囲、個数などは、発明の理解を容易にするため、一例を表したものであり、各要素の位置、大きさ、形状、範囲、個数は本明細書および図面に開示された内容に限定されるものではない。それぞれの実施形態に合わせて適宜修正可能である。なお、以下の実施例において、同様の要素が複数配置されており、一部の要素を代表して説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、実施例1における空気清浄化陰圧装置100の設置状態を示す構成図である。図1において、陰圧室1の壁面に空気清浄化陰圧装置100が設置されている。陰圧室1は、主に病室、または細菌実験室を想定しており、後述するファンを駆動させることで室内の空気を清浄化して排出すると共に、室内を陰圧に維持し、感染拡大を防ぐための空間である。
【0017】
空気清浄化陰圧装置100は、ウィルス、細菌等が付着した塵埃を含む汚染空気流Aを装置内に取り込み、清浄化した後、清浄化空気流Bとして外部に排出する。従って、空気清浄化陰圧装置100は、空気中の塵埃を捕集することにより、陰圧室1内の空気を清浄化すると共に、陰圧に維持することで感染を防止する装置である。
【0018】
以下に、空気清浄化陰圧装置100の内部構造と動作を詳細に説明する。図2は、実施例1における空気清浄化陰圧装置100の内部構造を上から見た断面図である。空気清浄化陰圧装置100は、筐体がファンチャンバ10、フィルターチャンバ20、背面チャンバ30の3室に分離されている。図2においては、図中の上方が背面を示し、図中の下方が前面を示す配置となっている。
【0019】
フィルターチャンバ20は、前面に吸込部22、内部に清浄化フィルタ21が設けられたフィルタ室である。清浄化フィルタ21は、濾過材としてグラスファイバーを用い、濾過材の外枠をアルマイト+クリア塗装されたアルミニウム等の軽金属を用いて濾過材を保持する外枠を含む構成を有している。上述した構成は、清浄化フィルタ21の一般的な構成を示しており、この構成に捉われない。例えば、濾過材として不織布のような入手性が容易な材料を使用してもよい。フィルターチャンバ20は、前面の吸込部22から室内の空気を吸い込み、内部の清浄化フィルタ21を通過させて後方に空気を流出させる。また、吸込部22は、前方に開閉可能となっている。
背面チャンバ30は、フィルターチャンバ20の背面側に設けられ、清浄化フィルタ21を後方に通過した空気流路方向に対して略直交方向に延在された空気流路を設けるダクトを含む。図2においては、フィルターチャンバ20の背面側において、図2の右側方に空気を送り出す。
【0020】
フィルターチャンバ20の側方、背面チャンバ30の前方には、ファンチャンバ10が設けられる。ファンチャンバ10は、背面チャンバ30からの吸引口にベルマウス14、内部にファン12、ファン12を回転駆動するファンモータ11、ファンモータ11が固定されたモータ固定座15、排気口としてのダクトフランジ13、前面にカバー42を設けられた排気室である。
【0021】
ファン12は、ファンモータ11によって回転駆動される回転軸と、回転軸周りに所定形状のフィンを複数、例えば、4枚羽であれば4枚のフィンを設けた回転羽根である。ファンモータ11による回転数と、ファン12に設けられたフィン径を、後述のベルマウス14と合わせて設計することにより、陰圧条件を最適化することができる。
【0022】
図2において、汚染空気流Aは、空気清浄化陰圧装置100の吸込部22に取り込まれる。取り込まれた汚染空気流Aは、フィルターチャンバ20内の清浄化フィルタ21により清浄化され、清浄化空気流Cとして後方の背面チャンバ30に流出される。清浄化空気流Cは、清浄化フィルタ21を通過した空気流路方向に対して略直交方向に延在させた背面チャンバ30内を流れ、清浄化空気流Dのようにファン12の吸引により引き込まれて、背面チャンバ30の前方のファンチャンバ10に取り込まれる。
【0023】
ファンチャンバ10に取り込まれた清浄化空気流Dは、ファン12の回転によりベルマウス14、ダクトフランジ13を経て外部に清浄化空気流Bとして排出される。ファン12は、ファンモータ11により回転駆動され、フィルターチャンバ20、背面チャンバ30、ファンチャンバ10の空気流路を経て室内から空気を吸引することで室内の空気を清浄化し、排気口としてのダクトフランジ13から排気することで室内を陰圧に維持する。
【0024】
ベルマウス14は、ファンチャンバ10に吸引される吸引圧を調整するための吸引部である。図3は、実施例1におけるベルマウス14を清浄化空気流D側から見た斜視図である。ベルマウス14の内径と、ファン12のフィン外径と、ファン12の回転数は、適切な設計を行うことで、陰圧効率の良い空気流としてファンチャンバ10の吸引圧をファンモータの駆動電力に対してより高効率とし、室内の陰圧度調整も可能とする。
【0025】
フィルターチャンバ20、背面チャンバ30、ファンチャンバ10は、それぞれ仕切られた箱状を形成することにより、清浄化フィルタ21による清浄化前の汚染空気流が、排気前のファンチャンバ10に流出しないように仕切っており、空気清浄化装置として確実に空気清浄化機能を満たす構成となっている。更に、これら3室を組み合わせることで製造組み立て工程が簡素化される。
【0026】
清浄化フィルタ21により清浄化された空気は、背面チャンバ30に取り込まれる。背面チャンバ30内には、清浄化空気流Cがファン12の回転吸引により清浄化空気流Dへ流れる空気流路上に測定ポート40が設けられている。測定ポート40は、清浄化空気CからDへ流れる空気流路上、ダクトの前方壁面の長手方向略中央位置に設けられている吸引口である。測定ポート40の位置が、清浄化フィルタ21、またはファン12のいずれかに近すぎた場合、清浄化フィルタ21、またはファン12近傍の粉塵を検出する可能性が有り、検出精度が低下する可能性が有る。従って、測定ポート40の位置は、背面チャンバ30内の空気流路の清浄化フィルタ21とファン12の略中央位置が好ましい。
【0027】
測定ポート40には、チューブ41が接続可能となっている。チューブ41の前端部41aは、空気清浄化陰圧装置100の前面に配置されており、装置外部にパーティクルカウンタ60が接続可能となる接続部である。
【0028】
パーティクルカウンタ60は、微粒子の粒径、粒子個数等を測定可能となっており、清浄化フィルタ21の性能評価測定値を取得する測定器である。図4は、実施例1におけるパーティクルカウンタ60の測定原理を説明する概要図である。チューブ41を介して、所定の吸引力で背面チャンバ30内部の空気流をパーティクルカウンタ60内に引き込む。背面チャンバ30内部から引き込んだ空気流をノズル61により、パーティクルカウンタ60内部に吐き出し、吐き出された空気流にレーザー光源62からレーザー光を照射する。レーザー光を照射された空気流内に微粒子が含まれている場合、微粒子によってレーザー光は散乱する。レーザー光の散乱度合いを集光レンズ63で結像させ、受光素子64で検出することにより、微粒子を検出可能となる。
【0029】
図4に示す測定原理により、図5に示す測定結果が得られる。図5は、実施例1におけるパーティクルカウンタの測定結果を示すグラフである。受光素子64の検出結果の出力電圧から、図5に示すようなパルス波形が得られ、ピークの大きさが微粒子の粒径を示し、パルス数が微粒子の数を示している。図5に示すように、空気中の微粒子の粒径、個数を測定することにより、清浄化フィルタ21の性能を測定することが可能となる。ただし、パーテチィクルセンサ60は、図4図5に示すような検出原理と測定結果の構成に依存するものではない。
【0030】
このように、実施例1における空気清浄化陰圧装置100は、背面チャンバ30内の空気流を、通常使用状態における空気流路上で測定可能とすることから、清浄化フィルタ21の通常使用状態における性能評価試験を装置筐体の前面側から精度よく実行可能とする。
【0031】
また、図2において、前面に配置されたカバー42を開放することによりファン12、ファンモータ11の交換、空気清浄化陰圧装置100内の清掃等のメンテナンス作業を空気清浄化陰圧装置100の前面側から実施可能となる。上述のごとく、清浄化フィルタ21の通常使用状態における性能評価試験と、メンテナンス作業を共に装置筐体の前面側から作業可能となり、作業性が向上する。
【0032】
本実施例の空気清浄化陰圧装置は、上述のような構成により、陰圧室内のウィルスや細菌が付着した塵埃を清浄化フィルタ21で捕集することにより、陰圧室内のウィルスや細菌の量を低減し、感染力を弱める効果を奏する。それに加えて、清浄化フィルタ21により清浄化された空気を外部に排出することにより、陰圧室内のウィルスや細菌の感染を外部に拡大させない効果を奏する。
【0033】
また、図2に示すように、空気清浄化陰圧装置100は、フィルターチャンバ20と、ファンチャンバ10を並列配置し、後方に背面チャンバ30を配置させた筐体からなる。背面チャンバ30は、フィルターチャンバ20から、ファンチャンバ10へ空気流路を形成するために設けられた流路部材であり、約70~100mm程度の奥行で収まる。従って、背面チャンバ30の前方にフィルターチャンバ20と、ファンチャンバ10を配置したとしても、空気清浄化陰圧装置100を薄型でコンパクトな装置筐体として実用可能となる。また、フィルターチャンバ20、背面チャンバ30、ファンチャンバ10の3室をそれぞれ製造し、最後に3室を組み合わせた筐体とすることから、製造工程も容易となる。
【0034】
以上のことから、コンパクトな装置筐体として構成された空気清浄化陰圧装置100は、室内の壁面に容易に設置可能であり、上述のように作業性を改善したことから、例えば、一般的な病室を感染症対策室として容易に改修可能であり、更にメンテナンスも容易である。
【0035】
実施例1によれば、清浄化フィルタ21を有するフィルターチャンバ20と、後方の背面チャンバ30と、ファン12を有するファンチャンバ10からなる筐体構成で、背面チャンバの略中央部に清浄化フィルタの性能評価を実行するための測定ポート40を設け、測定ポート40に接続する接続部41aと、メンテナンス作業用のカバー42を筐体の前面に設けることにより、空気清浄化フィルタの性能評価試験の精度向上と、日常的なメンテナンス作業性の向上を両立し、コンパクトな構成で容易に設置可能な空気清浄化陰圧装置を提供する。
【0036】
更に、前述のとおり、ベルマウス14の内径、ファンのフィン径、ファンの回転数の対応関係を適切に設計することにより、ファンチャンバ10の吸引圧をファンモータの駆動電力に対してより高効率とし、室内の陰圧度調整も可能とする。従って、ファンモータの駆動電力の低減につながり、駆動電力による炭素排出量を減らし、地球温暖化を防止、持続可能な社会の実現につながる環境保全の効果も奏する。
【実施例2】
【0037】
以下に、実施例2における空気清浄化陰圧装置200に関して説明する。図6は、実施例2における空気清浄化陰圧装置200の設置状態を示す構成図である。実施例2において、実施例1と同様の構成要素は、説明を省略する。実施例1と異なる点は、測定ポート40周辺を流れる空気流方向下流側に障壁となるポートガード50を設けた構成である。
【0038】
図6において、測定ポート40から外部のパーティクルカウンタ60に空気を吸い込み、空気流を測定するが、空気流速が高過ぎて測定ポート40にうまく空気流を吸い込めない場合がある。測定ポート40周辺の空気流速が高過ぎる場合、ポートガード50を設けることで、測定ポート40周辺の空気流速を低下させ、パーティクルカウンタで精度よく測定可能となる。ポートガード50は、L字状の断面形状を有する整流部材である。
【0039】
実施例2によれば、整流部材としてのポートガード50を設けることにより、外部に設けたパーティクルカウンタ60に空気を吸い込む際の測定不具合の発生を防止し、清浄化フィルタ21の性能を測定する際の性能評価測定精度を調整可能とする。
【実施例3】
【0040】
以下に、実施例3における空気清浄化陰圧装置300に関して説明する。図7は、実施例3における空気清浄化陰圧装置300の設置状態を示す構成図である。実施例3において、実施例2において、実施例1と同様の構成要素は、説明を省略する。実施例1と異なる点は、測定ポート40周辺を流れる空気流方向下流側に障壁となるポートガード51を設けた構成である。
【0041】
図7において、測定ポート40からパーティクルカウンタ60に空気を吸い込み、空気流を測定するが、空気流速が高過ぎて測定ポート40にうまく空気流を吸い込めない場合がある。ポートガード51は、L字状の断面形状の空気流方向下流側に開口部51aを設けた整流部材である。開口部の長手方向(紙面垂直方向)位置は、測定ポートの位置を考慮して決定する。図7に示すポートガード51のごとく、開口部51aを下流側に設けることにより、測定ポート40周辺の空気流をうまく吸引すると共に、実施例2に示すポートガード50内に塵埃が蓄積することにより、通常空気流路より多くの微粒子を検出する測定精度低下を抑制できる。
【0042】
実施例3によれば、整流部材としてのポートガード51を設けることにより、外部に設けるパーティクルカウンタ60に空気を吸い込む際の測定不具合の発生を防止し、清浄化フィルタ21の性能を測定する際の性能評価測定精度を調整可能とすると共に、ポートガード内に塵埃が蓄積することによる測定精度低下を防止する。
【実施例4】
【0043】
以下に、実施例4における空気清浄化陰圧装置400に関して説明する。図8は、実施例4における空気清浄化陰圧装置400の設置状態を示す構成図である。実施例4において、実施例1と同様の構成要素は、説明を省略する。実施例1と異なる点は、測定ポート40周辺を流れる空気流を整流するポートガード52を設けた構成である。
【0044】
図8において、測定ポート40からパーティクルカウンタ60に空気を吸い込み、空気流を測定するが、空気流速が高過ぎて測定ポート40にうまく空気流を吸い込めない場合がある。ポートガード52は、図8に示すごとく、山笠形状を有する整流部材である。図8のような山笠形状にすることにより、測定ポート周辺の空気流を整流すると共に、塵埃が蓄積することにより、通常空気流路より多くの微粒子を検出する測定精度低下を抑制できる。更に、ポートガード52の上側を通る空気流を整流化し、背面チャンバ30内の圧力損失を抑制できる。
【0045】
実施例4によれば、整流部材としてのポートガード52を設けることにより、外部に設けるパーティクルカウンタ60に空気を吸い込む際の測定不具合の発生を防止し、清浄化フィルタ21の性能を測定する際の性能評価測定精度を調整可能とすると共に、背面チャンバ30内の圧力損失を抑制できる。
【実施例5】
【0046】
以下に、実施例5における空気清浄化陰圧装置500に関して説明する。図9は、実施例5における空気清浄化陰圧装置500の設置状態を示す構成図である。実施例5において、実施例1と同様の点は、説明を省略する。実施例1と異なる点は、測定ポート40周辺を流れる空気流を整流するポートガード53を設けた構成である。
【0047】
図9において、測定ポート40からパーティクルカウンタ60に空気を吸い込み、空気流を測定するが、空気流速が高過ぎて測定ポート40にうまく空気流を吸い込めない場合がある。ポートガード53は、図9に示すごとく、背面チャンバ30内の空気流が測定ポート40に直接当たらないように設けた直立形状の整流部材である。図9のような直立形状にすることにより、背面チャンバ30内に乱流を発生させ、仮に空気清浄化陰圧装置500内部でリークがあった場合、乱流により微粒子を背面チャンバ30内に拡散させることができる。微粒子を背面チャンバ30内で拡散させ、測定ポート40周辺の空気流速を低下させることでパーティクルカウンタ60の測定精度を向上する。
【0048】
実施例5によれば、整流部材としてのポートガード53を設けることにより、外部に設けるパーティクルカウンタ60に空気を吸い込む際の測定不具合の発生を防止し、仮に空気清浄化陰圧装置500内部でリークがあった場合、乱流により微粒子を背面チャンバ30内に拡散させることができる。微粒子を背面チャンバ30内で拡散させ、測定ポート40周辺の空気流速を低下させることでパーティクルカウンタ60の測定精度を向上する。
【0049】
以上、実施例2~5において、測定ポート40の周辺に設けたポートガード50~53を様々な形状とする実施形態を説明した。上述したように、ポートガード50~53の形状、ベルマウス14の内径、ファン12のフィン径、ファン12の回転数を対応付けて設計することにより、測定ポート40における空気吸引量を調整可能となり、清浄化フィルタ21の性能測定精度を最適化することが可能となる。清浄化フィルタ21の性能測定精度を最適化することにより、駆動電力、設計工数をより効率的とする空気清浄化陰圧装置を提供する。
【0050】
また、ベルマウス14の内径、ファン12のフィン径、ファン12の回転数を対応付けて調整することにより、ダクトフランジ13への排気圧を調整し、空気清浄化陰圧装置による陰圧度を最適化可能となる。
【0051】
なお、実施例1~5において、フィルターチャンバと、ファンチャンバを側方に配置する筐体構成としたが、上下に配置する筐体構成でもよい。この場合、上下に細長い筐体の形状となり、上下に細長い設置スペースの制限上、上下配置が好ましい場合に適した形態となる。
【符号の説明】
【0052】
1 :陰圧室
10 :ファンチャンバ
11 :ファンモータ
12 :ファン
13 :ダクトフランジ(排気口)
14 :ベルマウス(吸引部)
20 :フィルターチャンバ
21 :清浄化フィルタ
22 :吸込部
30 :背面チャンバ
40 :測定ポート(吸引口)
41a :チューブ前端部(接続部)
42 :カバー
50、51、52、53 :ポートガード(整流部材)
60 :パーティクルセンサ
図1
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