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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】車載用アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/12 20060101AFI20240829BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20240829BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H01Q1/12 Z
H01Q1/22 B
H01Q1/32 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021520718
(86)(22)【出願日】2020-05-12
(86)【国際出願番号】 JP2020018917
(87)【国際公開番号】W WO2020235388
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】P 2019096630
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100127306
【弁理士】
【氏名又は名称】野中 剛
(72)【発明者】
【氏名】鬼澤 貞晴
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0176374(US,A1)
【文献】特開2011-055496(JP,A)
【文献】特開2018-191274(JP,A)
【文献】国際公開第2016/093084(WO,A1)
【文献】特開2019-012960(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105235(WO,A1)
【文献】特開2018-137652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナエレメントと、
前記アンテナエレメントを保持するホルダと、
備え、
前記ホルダは、
前記アンテナエレメントを所定の差込方向へ差し込み可能な位置に設けられた少なくとも1つの係合部、
を有し、
前記所定の差込方向は、前記アンテナエレメントの長手方向であ
前記アンテナエレメントは、隣り合う線部の間に間隙部を有しながら所定の蛇行面に沿って蛇行するミアンダ形状を少なくとも一部に有し、
前記係合部は、前記間隙部に対応した位置にある、
載用アンテナ装置。
【請求項2】
前記線部は、長手方向が前記差込方向に沿った方向である、
請求項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項3】
前記ホルダは、前記係合部を複数有する、
請求項1または請求項2に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項4】
前記ホルダは、前記アンテナエレメントの前記差込方向への差し込みを案内する溝部、
を有する請求項1~の何れか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項5】
前記ホルダは、前記差込方向へ差し込まれた前記アンテナエレメントの差し込み先端部を保持する保持部を有する、
請求項1~の何れか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項6】
前記ホルダを支持する台座部、
を更に備え、
前記台座部は、前記ホルダに保持された前記アンテナエレメントの前記差込方向およびその反対方向への移動を抑制する抑制部を有する、
請求項1~の何れか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項7】
前記アンテナエレメントは、第1エレメントと、第2エレメントと、前記第1エレメントと前記第2エレメントとを連結する連結部と、を有し、
前記抑制部と前記連結部とが接触する、
請求項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項8】
アンテナエレメントと、
前記アンテナエレメントを保持するホルダと、
備え、
前記ホルダは、
前記アンテナエレメントを所定の差込方向へ差し込み可能な位置に設けられた少なくとも1つの係合部、
を有し、
前記アンテナエレメントは、隣り合う線部の間に間隙部を有しながら所定の蛇行面に沿って蛇行するミアンダ形状を少なくとも一部に有し、
前記係合部は、前記間隙部に対応した位置にあり、
前記係合部は、前記間隙部の間隙幅方向について、前記間隙部よりも小さい首部と前記間隙部よりも大きい頭部とを有し、
前記頭部は、前記首部よりも外側に位置する、
車載用アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のルーフに取り付けられる車載用アンテナ装置として、例えば、空気抵抗を低減するようにデザインされたケース内に設けられたアンテナホルダに、アンテナエレメントを固定して構成されたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-116048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載用アンテナ装置の組み立て作業には手間が掛かっていた。例えば、アンテナエレメントをアンテナホルダに固定する際の組み立て作業には手間が掛かっていた。例えば、アンテナエレメントとアンテナホルダとの位置関係を見極めて、その位置関係がずれないようにアンテナエレメントおよびアンテナホルダの両者を手で押さえて保持した上で、両者をネジで固定するといった作業が行われていた。
【0005】
本発明の目的の一例は、車載用アンテナ装置を組み立てる際の作業性を向上させることが可能な技術を提案すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、アンテナエレメントと、前記アンテナエレメントを保持するホルダとを、備え、前記ホルダは、前記アンテナエレメントを所定の差込方向から差し込み可能な位置に設けられた、少なくとも1つの係合部、を有する、車載用アンテナ装置である。
【0007】
本態様によれば、アンテナエレメントをホルダに差し込みさえすれば、アンテナエレメントをホルダに取り付けできる。よって、車載用アンテナ装置の組み立てに係る作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態における車載用アンテナ装置の斜視外観図。
図2】第1実施形態における車載用アンテナ装置の斜視分解図。
図3】第1実施形態における金属ベースと回路基板との固定部周りの拡大斜視図。
図4】第1アンテナエレメントの斜視外観図。
図5】第1ホルダの斜視外観図。
図6】第2ホルダに第2アンテナエレメントを取り付けた状態を示す斜視外観図。
図7】台座部の斜視外観図。
図8】第1アンテナエレメントと第1ホルダとの取り付けを説明するための状態遷移図。
図9】第1アンテナエレメントを第1ホルダに取り付けた状態の下方からみた斜視図。
図10】第1ホルダと台座部との取り付けを説明するための状態遷移図。
図11】台座部と第2ホルダとの取り付けを説明するための図。
図12】台座部と第2ホルダとの取り付け過程における、第2ホルダが有する下側端子の第2接点の挙動について説明するための図。
図13】第2実施形態における車載用アンテナ装置の斜視分解図。
図14】第3実施形態における車載用アンテナ装置の斜視分解図。
図15】第1DABアンテナエレメントを台座部に取り付け、第2DABアンテナエレメントを第3ホルダに取り付けた状態の斜視図。
図16】第3ホルダに第2DABアンテナエレメントを取り付けた状態の斜視図。
図17】第4実施形態における車載用アンテナ装置の斜視分解図。
図18】第3ホルダに第2DTVアンテナエレメントを取り付けた状態の斜視図。
図19】第1ホルダと第2ホルダとの取り付け構造の変形例を示す図。
図20】第1ホルダと第2ホルダと台座部との取り付け構造の変形例を示す図。
図21】車載用アンテナ装置の変形例を示す斜視外観図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好適な実施形態の例を説明するが、本発明を適用可能な形態は以下の実施形態に限定されない。各図において共通する方向を示すための直交三軸を示す。直交三軸は右手系とし、X軸が車載用アンテナ装置の長手方向と平行な方向を示しており、X軸正方向が車載用アンテナ装置の先端方向である。Y軸は車載用アンテナ装置の左右方向と平行な方向を示しており、Y軸正方向がX軸正方向に向かって左方向である。Z軸は車載用アンテナ装置の上下方向と平行な方向を示しており、Z軸正方向が上方向である。以下の説明において、X軸正方向を前方向、Y軸正方向を左方向、Z軸正方向を上方向として説明する。
【0010】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態における車載用アンテナ装置2の斜視外観図であり、アンテナケース4の半身を省略するなどの一部の図示を省略した図である。図2は、車載用アンテナ装置2の斜視分解図であり、アンテナケース4の半身を省略するなどの一部の図示を省略した図である。
【0011】
車載用アンテナ装置2は、車両の外面(例えば、ルーフ上)に取り付けられるアンテナ装置である。車載用アンテナ装置2は、アンテナケース4と、ベース部10と、パッド19と、回路基板20と、アンテナ部30と、ホルダ部50と、を有する。理解を容易にするために、アンテナケース4の半身の図示を省略している。
【0012】
アンテナケース4は、空力抵抗を低減するフォルムを有する上部外殻である。図1および図2では、アンテナケース4の右半分のみ図示され、アンテナケース4の左半分の図示が省略されている。アンテナケース4は、下面が開口しており、回路基板20と、アンテナ部30と、ホルダ部50とを内蔵する(収容する)空間を画成する(形成する)。
【0013】
ベース部10は、樹脂ベース12と、金属ベース14と、を有する。
【0014】
樹脂ベース12は、車載用アンテナ装置2の台座となる合成樹脂製の下部外殻である。樹脂ベース12の上面には、金属ベース14が固定される。樹脂ベース12の下面には、エラストマー、ゴム、ウレタンフォームなどの弾性部材により形成された環状シール部材13が設けられている。環状シール部材13が、車載用アンテナ装置2の取付孔が設けられた領域(樹脂ベース12と車両のルーフとの間の領域)の周囲を水密封止する。また、環状シール部材13を設けることで、アンテナケース4と、ベース部10とで画成する(形成する)空間内が水密封止される。
【0015】
金属ベース14は、樹脂ベース12の上にネジで固定され、回路基板20を支持する。金属ベース14は、例えば板金によって形成される。金属ベース14は、ダイキャスト製であってもよい。
【0016】
パッド19は、エラストマーやゴムなどの弾性材により形成された環状部材であって、アンテナケース4の下端周縁部と樹脂ベース12とに挟まれている。パッド19は、アンテナケース4の下端周縁部と車両の外面との隙間を目隠しするとともに、アンテナケース4内への水の浸入を防止する働きをする。
【0017】
回路基板20は、アンテナ部30の受信信号を増幅する増幅回路等の電気・電子部品を実装する。回路基板20と電気的に接続されたケーブルは、金属ベース14と樹脂ベース12とに設けられたケーブル孔を介して車両のルーフへと延び、車両内に引き込まれている。
【0018】
図3は、金属ベース14と回路基板20との固定部周りの拡大斜視図である。
回路基板20は、金属ベース14がクリンチされることによって固定される。具体的には、金属ベース14の外周部のほぼ四隅に、底面から立ち上がる壁部15が設けられている。壁部15の上部には前後方向の切り込みが設けられており、切り込みより上の部分に第1腕部16aが形成されている。また、壁部15の切り込みより少し下の位置に、切片が内向き(アンテナケース4からホルダ部50に向かう方向)に折り曲げられて第2腕部16bが形成されている。
【0019】
回路基板20をこれらの壁部15の内側に第2腕部16bに載せるようにして納めた後に、第1腕部16aの先端部を内側(アンテナケース4からホルダ部50に向かう方向)に曲げる。図3は、この曲げを行う前の状態を示している。この曲げを行うと、第1腕部16aの先端部は回路基板20の上部に架かり、回路基板20は第1腕部16aと第2腕部16bとの間に挟まれて、金属ベース14に保持される。すなわち、クリンチされる。この曲げを行った際に、第1腕部16aの先端部は回路基板20の上面に接触していてもよいし、第1腕部16aの先端部と回路基板20の上面との間に僅かな隙間が開いていてもよい。回路基板20は、クリンチされた部位で金属ベース14に半田付けされる。これにより、回路基板20は、金属ベース14によって安定的に保持され、且つ、グランド(電気的接地)も確保される。回路基板20と金属ベース14の固定は、クリンチおよび半田付けに限定されるものではない。例えば、金属ベース14をネジにより回路基板20に固定するとしてもよい。
【0020】
図1および図2を参照して、アンテナ部30を説明する。アンテナ部30は、AM/FM波帯の信号を受信する。例えば、アンテナ部30は、第1アンテナエレメント31と、銅線により形成されるヘリカルコイルである第2アンテナエレメント32と、を有する。第2アンテナエレメント32は、銅以外の導電性材料を用いた線状導体であってもよい。
【0021】
図4は、第1アンテナエレメント31の斜視外観図である。第1アンテナエレメント31は、例えばAM/FM波帯の信号の受信に対応した容量装荷素子であり、第2アンテナエレメント32に対地静電容量を付加する素子である。第1アンテナエレメント31は、例えば、金属板(導体板)を板金加工することにより一体形成される。金属板は、例えば、錫メッキ鋼板、亜鉛メッキ鋼板、ステンレス鋼板等である。第1アンテナエレメント31は、同形の第1エレメント311および第2エレメント312と、これら両エレメントの下端部を、前後方向の概ね後方で連結する連結部313と、を有する。
【0022】
第1エレメント311および第2エレメント312は、隣り合う線部の間に間隙部310(幅Wm)を有しながら所定の蛇行面に沿って蛇行するミアンダ形状を有する。
本実施形態では、蛇行面は、後述する第1ホルダ51(図5等参照)の主たる左右側面に沿っており、第1エレメント311と第2エレメント312とは、蛇行面が対向する。線部は、本実施形態では直線状としているが非直線状でもよく、線部の幅は前後方向(X軸方向)に一定でなくてもよい。線部の長手方向は、第1アンテナエレメント311を第1ホルダ51へ差し込む差込方向に沿っており、前後方向(X軸方向)と同じ方向となっている。線部の長手方向は、ミアンダ形状の間隙部310の長手方向と同じであるため、間隙部310の長手方向も第1アンテナエレメント311の差込方向と同じ方向となっている。第1アンテナエレメント311は、線部の前後端で折り返しながら上下方向(Z軸方向)へ蛇行している。従って、間隙部310は、前方に開口する間隙と、後方に開口する間隙とが上下方向において交互に生じている。間隙部310の幅Wmは前後方向で一定でなくてもよい。第2エレメント312は、第1エレメント311と同形状をしている。
【0023】
ミアンダ形状の部分は、第1エレメント311および第2エレメント312の全体であってもよいし、一部のみがミアンダ形状であってもよい。一部のみがミアンダ形状の場合には、その部分が、後述する係合部512に係合可能な部分として構成されていればよい。
【0024】
連結部313は、下方への垂下部に開口溝314を有し、第1エレメント311と第2エレメント312との間を渡す部位に孔部315を有する。開口溝314があることで、連結部313の垂下部はフック形状の電気的な接続点として機能し、第2アンテナエレメント32と半田付けされて電気的に接続される。
【0025】
第1アンテナエレメント31は、第1エレメント311と第2エレメント312と連結部313とを一体のまま平板から打ち抜きした後にプレス加工で折り曲げして形成してもよいし、個別に打ち抜きや切削して形成した後につなぎ合わせて形成するとしてもよい。
【0026】
図1および図2を参照して、ホルダ部50を説明する。ホルダ部50は、第1ホルダ51と、第2ホルダ52と、台座部53と、を有する。
【0027】
図5は、第1ホルダ51の斜視外観図である。第1ホルダ51は、第1アンテナエレメント31を保持する部材である。第1ホルダ51は、左右の側部それぞれにおいて、主たる側面であるエレメント係合面510と、溝部511と、係合部512と、保持部513と、係合突起部514と、を有する。なお、溝部511・係合部512・保持部513の数や配置位置関係は、図示した例に限らない。
【0028】
溝部511は、第1ホルダ51の左右側面の下部において前後方向(X軸方向)に沿って設けられた直線状の溝であって、上方と後方とに開口する。溝部511の溝幅は、第1アンテナエレメント31の第1エレメント311および第2エレメント312の下端部を差し込んでスライドガイドするのに適当なサイズ(例えば、第1アンテナエレメント31の素材となる金属板の板厚より僅かに大きなサイズ)に設定されている。溝部511の内側面は、第1アンテナエレメント31が、第1ホルダ51に差し込まれた際には、第1エレメント311および第2エレメント312の下端部が第1ホルダ51から離れるのを抑制する働きをする。
【0029】
係合部512(512a,512b,…)は、第1アンテナエレメント31の第1エレメント311および第2エレメント312のミアンダ形状の間隙部310の形成方向(本実施形態では前後に沿った方向)に沿って設けられている。
【0030】
図5の例では、係合部512は、複数個セットで設けられている。第1ホルダ51の左右それぞれのエレメント係合面510において、2つの係合部512を1セットにして(係合部512aと係合部512bの第1セット、係合部512cと係合部512dの第2セット)、開口が前方を向いた2本の間隙部310それぞれに対応づけて設けられている。左右のエレメント係合面510には同様に、それぞれ4つの係合部512が設けられている。1セット当たりの係合部512の数や、セット数は適宜設定可能である。
【0031】
係合部512を上下方向断面で見ると、付け根に当たる首部(基端部)の幅(間隙部310の間隙方向の幅)は、首部を第1アンテナエレメント31の第1エレメント311および第2エレメント312の間隙部310の幅Wm(図4参照)内に挿通できるように、幅Wmより僅かに小さいサイズに設定されている。エレメント係合面510から頭部までの最短の長さ(首部の最短の長さ)は、首部を第1エレメント311および第2エレメント312の間隙部310の幅Wm(図4参照)内に挿通できるように、第1アンテナエレメント311や第2エレメント512の板厚よりも僅かに大きいサイズに設定されている。係合部512の頭部は、首部よりも外側(第1アンテナエレメント31の第1ホルダ51に対する取り付けが完了した状態で、エレメント係合面510から第1エレメント311および第2エレメント312の蛇行面に向かう方向、すなわち、同状態で、ホルダ部50からアンテナケース4に向かう方向)にある突端部に相当する。頭部の幅(間隙部310の間隙方向の幅)は、首部の幅よりも拡幅され、間隙部310の幅Wmよりも大きいサイズに設定されている。
【0032】
本実施形態では、係合部512aや係合部512cは、エレメント係合面510の法線方向から見ると、上下方向に延びる部分とその部分の中央付近から後方向に延びる部分とを備えたT字形状をしている。しかし、係合部512aや係合部512cは、エレメント係合面510の法線方向から見て、上下方向に延びる部分のみを備えた形状をしていてもよい。
【0033】
本実施形態では、係合部512bや係合部512dは、エレメント係合面510の法線方向から見ると、上下方向に延びる部分のみを備えた形状をしている。しかし、係合部512bや係合部512dは、エレメント係合面510の法線方向から見て、上下方向に延びる部分だけでなく、その部分の中央付近から前方向に延びる部分も備えたT字形状をしていてもよい。
【0034】
上述した構成によれば、第1エレメント311および第2エレメント312が、エレメント係合面510の法線方向へ変位しようとしても、係合部512の頭部が引っ掛かるので当該変位が抑制される。変位を抑制することで、第1ホルダ51に対する第1アンテナエレメント31の確実な固定を担保して、第1アンテナエレメント311がアンテナケース4に接触することに起因する異音の発生を防止できる。
【0035】
図5の例では、係合部512aや係合部512cは、エレメント係合面510の法線方向から見ると、上下方向に延びる部分とその部分の中央付近から後方向に延びる部分とを備えたT字形状をしている。係合部512aや係合部512cが係合部512bや係合部512dよりも後方向に位置し、第1アンテナエレメント31の第1ホルダ51に対する取り付けが完了した状態で、第1エレメント311の線部の折り返し部分が係合部512aや係合部512cに近接する。エレメント係合面510の法線方向から見ると、係合部512aや係合部512cの頭部は、上下方向の2箇所と後方向の1箇所の合計3箇所で第1エレメント311と重なる。仮に、係合部512aや係合部512cが、エレメント係合面510の法線方向から見ると、上下方向に延びる部分のみを備えた形状をしていると、係合部512aや係合部512cの頭部は、上下方向の2箇所のみで第1エレメント311と重なることになる。係合部512aや係合部512cがT字形状をしていることで、上下方向に延びる部分のみを備えた形状をしている場合に比べて、第1エレメント311のエレメント係合面510の法線方向へ変位を抑制することができる。第1ホルダ51に対して第1アンテナエレメント31を確実に固定して、第1アンテナエレメント311がアンテナケース4に接触することに起因する異音の発生を防止できる。これは、第2エレメント312についても同様である。図5の例では係合部512が複数個セットで設けられていたが、係合部512が1個のみであってもよい。
【0036】
保持部513は、開口部を後方に向けた姿勢で、第1ホルダ51の前端部に適当数設けられているクリップ構造部である。具体的には、保持部513は、後方に向かって延設された腕部が、第1ホルダ51のエレメント係合面510から僅かに外方へ離れた位置(エレメント係合面510から第1アンテナエレメント31の元になる板材の板厚程度に離れた位置)に設けられている。
【0037】
保持部513は、第1アンテナエレメント31を第1ホルダ51に取り付ける際に、第1エレメント311と第2エレメント312との間隔を僅かに狭めた状態で第1エレメント311と第2エレメント312とを受け入れる。第1エレメント311と第2エレメント312との間隔が元に戻ろうとする弾性力が自然と働くようにする。第1エレメント311および第2エレメント312を受け入れると、保持部513は、延設された腕部の一部が第1エレメント311或いは第2エレメント312の外側に覆い被さる。その弾性力によって、第1エレメント311および第2エレメント312が第1ホルダ51のエレメント係合面510から離れないように付勢する。差し込まれた第1アンテナエレメント31の差し込み先端部は保持され、第1アンテナエレメント31が第1ホルダ51から離れようとするのを抑制し、安定的な保持を担保する。取り付け後の第1アンテナエレメント31がアンテナケース4に接触することに起因する異音の発生と、第1アンテナエレメント31が後方へ移動して第1ホルダから抜けることと、を防止する。
【0038】
保持部513の湾曲部の突き当たり位置を適切に設定することで、後方から差し込まれた第1アンテナエレメント31が保持部513の前端部に突き当たる。この結果、第1アンテナエレメント31の前後方向の装着位置を決める位置決め機能と、取付後に第1アンテナエレメント31が前方へズレることを防止する機能とを追加することができる。
【0039】
係合突起部514は、第1ホルダ51の前後両端部に設けられた部位であって、第1ホルダ51を台座部53に取り付けするための係合構造を有する。係合突起部514は、例えば、台座部53側に設けられた孔部に嵌入可能な突起を有する弾性爪である。
【0040】
図6は、第2ホルダ52に第2アンテナエレメント32を取り付けた状態を示す斜視外観図である。第2ホルダ52は、下面が開放状態の中空構造体であって、第2アンテナエレメント32のボビンとして機能する。具体的には、第2ホルダの外周には螺旋状に溝が掘られており、第2アンテナエレメント32はこの溝に巻き付けて取り付けられる。
【0041】
取り付けられた第2アンテナエレメント32の一端部(図6の左側の端部)は、第1アンテナエレメント31に電気的に接続され、他端部は、第2ホルダ52の下側端子520の第1接点521に取り付けられ半田付けされる。
【0042】
下側端子520は、回路基板20との接点となる第2接点522を有する。第2接点522は、下方へ湾曲され、且つ先端部が上方へ屈曲されており、全体として板バネとなって当接する付勢端子として機能する。
【0043】
図7は、台座部53の斜視外観図である。
台座部53は、第2ホルダ52の上方にて第1ホルダ51を支持する構造体である。具体的には、台座部53は、メインフレーム531と、メインフレーム531のおよそ四隅より下方に延設された脚部532と、第1ホルダ51を取り付けるための係合孔部534と、抑制部535と、を有する。
【0044】
係合孔部534は、第1ホルダ51の係合突起部514(図5参照)と1対1に対応して設けられている。係合孔部534は、前後合わせて2箇所に設けられている。
【0045】
抑制部535は、メインフレーム531の後部に設けられた上下方向の貫通孔であって、第1アンテナエレメント31の連結部313(図4参照)の垂下部を挿通可能なスロットである。連結部313が抑制部535に挿通されることで、抑制部535は、第1アンテナエレメント31が差込方向およびその反対方向へ移動することを抑制する。
【0046】
次に、車載用アンテナ装置2の組み立て、主にアンテナ部30周りの組み立てについて説明する。
【0047】
図8は、第1アンテナエレメント31と第1ホルダ51との取り付けを説明するための状態遷移図である。図8の(1)~図8の(3)の順に状態遷移する。
作業員は、先ず第1アンテナエレメント31を第1ホルダ51へ取り付ける(図8の(1)および図8の(2))。具体的には、第1アンテナエレメント31の第1エレメント311と第2エレメント312との左右間隔は、第1ホルダ51の左右幅とほぼ同じサイズに設定されている。作業員は、第1エレメント311と第2エレメント312とを僅かに狭めながら、第1エレメント311および第2エレメント312の下端前方を、溝部511内へ後方より挿入する。この挿入方向が差込方向である。そして、溝部511にガイドさせながら、第1アンテナエレメント31を第1ホルダ51の後方から前方へスライドさせることで第1ホルダ51に対する第1アンテナエレメント31の差し込みを行う。この過程で、第1エレメント311および第2エレメント312の間隙部310に係合部512の首部が挿入されることで、係合部512が間隙部310に係合する。係合部512が間隙部310に係合することで、第1アンテナエレメント31を差込方向へ案内する機能が強化される。
【0048】
差し込み作業が更に進行すると、図8の(3)に示すように、第1エレメント311と第2エレメント312の前端が保持部513内に進入する。
【0049】
差し込み作業に際しては、治具を用いる。治具により、第1アンテナエレメント31の後端部と第1ホルダ51の後端部とが前後方向に一致するまで差し込み作業が進む。第1アンテナエレメント31の後端部と第1ホルダ51の後端部とが前後方向に一致することで、第1ホルダ51に対する第1アンテナエレメント31の位置が決められ、差し込みによる取り付けが完了する。取り付け状態になっても、第1エレメント311と第2エレメント312の下端前方は溝部511の前端に突き当らず、後方側の係合部512の後端部が間隙部310の後端に当たっていない。
【0050】
取り付け状態になると、第1アンテナエレメント31は、第1ホルダ51にネジ止めせずとも、安定的に固定・支持される。具体的には、係合部512の頭部が、第1エレメント311および第2エレメント312のミアンダ形状における線部の外側(ホルダ部50からアンテナケース4に向かう方向)に被さる格好となる。係合部512の頭部は、第1エレメント311および第2エレメント312が、第1ホルダ51のエレメント係合面510から法線方向へ離れようとするのを抑制する。複数の係合部512によって、第1エレメント311および第2エレメント312が、差込方向に交差するエレメント係合面510に沿った方向に変位するのを抑制できる。第1エレメント311および第2エレメント312の下端部では、溝部511との係合によって、やはり同様の抑制効果が生じる。第1エレメント311および第2エレメント312の前端部では、保持部513との係合によって同様の抑制効果が生じる。よって、両者は安定的に固定される。
【0051】
図9に示すように、第1アンテナエレメント31を第1ホルダ51に取り付けると、連結部313の孔部315が、第1ホルダ51の下面から下方に突設された突起515と嵌合する。突起515は、第1アンテナエレメント31が第1ホルダ51に対して前後方向(X軸方向)や左右方向(Y軸方向)へ移動するのを抑制する抑制部として機能する。第1アンテナエレメント31と第1ホルダ51は、孔部315と突起515が無い場合に比べて、一層安定的に固定される。
【0052】
図10は、第1ホルダ51と台座部53との取り付けを説明するための状態遷移図である。図10の(1)~図10の(2)の順に状態遷移する。
作業員は、第1アンテナエレメント31が取り付けられた第1ホルダ51を、台座部53の上方からメインフレーム531へ載せる様にして取り付ける。具体的には、第1ホルダ51の前後にある係合突起部514を、台座部53の係合孔部534に係合させるようにして取り付けると、第1ホルダ51と台座部53とがスナップフィットで結合する。
【0053】
係合突起部514と係合孔部534との係合により、ネジ止めをしなくとも、第1ホルダ51は台座部53に対して確実に固定される。第1ホルダ51の2つの係合突起部514は2つの係合孔部534に前後で挟まれる格好になる。係合孔部534が、第1ホルダ51のズレを抑制する抑制部として機能し、ネジ止めをしなくとも、第1ホルダ51は台座部53に対して前後方向にも確実に固定されることとなる。
【0054】
第1ホルダ51を台座部53に取り付けることで、第1アンテナエレメント31の連結部313の垂下部が、台座部53の抑制部535に差し込まれる。台座部53に対する第1アンテナエレメント31の差込方向およびその反対方向への変位が抑制される。
【0055】
図11は、台座部53と第2ホルダ52との取り付けを説明するための図である。作業員は、第2アンテナエレメント32が取り付けられた第2ホルダ52を、台座部53のメインフレーム531の下面へネジ止め固定する。このネジの長さは、第1ホルダ51に達するように設定されており、このネジ止めによって、第2ホルダ52と台座部53が固定されるだけでなく、第1ホルダ51と第2ホルダ52と台座部53とが共締めされる。
作業員は、第2アンテナエレメント32の後端を、第1アンテナエレメント31の連結部313の開口溝314(図4参照)に掛け、半田付けする。
【0056】
次に、作業員は、第2ホルダ52が取り付けられた台座部53を、回路基板20が取り付けられた樹脂ベース12(図3参照)へ取り付ける。
【0057】
図12は、当該取り付け過程における、第2ホルダ52が有する下側端子520の第2接点522の挙動について説明するための図であって、第2ホルダ52と回路基板20とを抜き出して描いた図である。
【0058】
作業員が、第2ホルダ52が取り付けられた台座部53を、回路基板20の上方へ被せるようにして所定の取り付け位置に接近させていく過程で、第2接点522の折り曲げられている部位が板バネのように機能して回路基板20へ付勢されつつ接触する。作業員は、この状態で台座部53を樹脂ベース12へネジ止めし、第2接点522と回路基板20とを半田付けする。
【0059】
台座部53を樹脂ベース12へネジ止めすることで、確実な電気的接続が必要となる第2接点522と回路基板20とのネジ止めが不要となるため、ネジの削減とネジ止めに係る工数を削減できる。
第2接点522は、長手方向が左右方向を向き、第2ホルダ52の左右中心より離れた位置にある(オフセットしている)。このため、第2接点522が第2ホルダ52の左右中心に近い位置にある(オフセットしていない)場合に比べて、半田付け作業がし易くなっている。
【0060】
以上、本実施形態の車載用アンテナ装置2では、第1アンテナエレメント31を、ネジ止めすることなく、第1ホルダ51に固定することができる。作業員は、第1エレメント311と第2エレメント312とを、第1ホルダ51の溝部511に沿わせてスライドさせながら差し込むだけの容易な作業で取り付けできる。車載用アンテナ装置2の組み立てに係る作業性を向上させ、作業時間の短縮を図ることができる。
【0061】
〔第2実施形態〕
第2実施形態について説明する。以降では、主に第1実施形態との差異について述べることとし、第1実施形態と同様の構成要素については、第1実施形態と同じ符号を付与し、重複する説明は省略する。
【0062】
図13は、本実施形態における車載用アンテナ装置2Bの斜視分解図である。
車載用アンテナ装置2Bは、第1実施形態の構成に加えて、グランドプレート18と、第2回路基板22と、SXM(Sirius XM Radio)波帯の信号を受信するアンテナ部であるSXMアンテナ部33と、を備える。
【0063】
グランドプレート18は、樹脂ベース12の前部に、第2回路基板22を介してネジで固定される。
第2回路基板22は、SXMアンテナ部33で受信した信号を処理する回路を有し、SXMアンテナ部33を保持する機能も果たす。
SXMアンテナ部33は、例えば、パッチアンテナと、無給電素子と、無給電素子ホルダと、シールドカバーと、を有し、SXM波帯の信号を受信する。
【0064】
本実施形態も、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0065】
〔第3実施形態〕
第3実施形態について説明する。以降では、主に第1実施形態および第2実施形態との差異について述べることとし、第1実施形態や第2実施形態と同様の構成要素については、同じ符号を付与して重複する説明は省略する。
【0066】
図14は、本実施形態における車載用アンテナ装置2Cの斜視分解図である。
車載用アンテナ装置2Cは、第1実施形態の構成に加えて、DAB(Digital Audio Broadcast)回路基板24と、DABアンテナ部34と、第3ホルダ54と、を備える。これらが加わることに対応して、樹脂ベース12Cおよび金属ベース14Cが、それぞれ第1実施形態から変更されている。
【0067】
DAB回路基板24は、金属ベース14Cの上に取り付けられ、DABアンテナ部34が受信した信号を増幅するアンプ回路等を実装する。
【0068】
DABアンテナ部34は、DAB波帯の信号を受信する素子であって、第1DABアンテナエレメント341と、第2DABアンテナエレメント342と、を有する。
【0069】
図15は、第1DABアンテナエレメント341を台座部53に取り付け、第2DABアンテナエレメント342を第3ホルダ54に取り付けた状態の斜視図である。
【0070】
第1DABアンテナエレメント341は、断面L字形状(T字状等でもよい。)を有する金属板であって、導体板の板金加工や、導体材料の引き抜き加工や押し出し加工により形成される。第1DABアンテナエレメント341は、台座部53の前方の頂部に設けられた溝部(図15では、第1DABアンテナエレメント341が嵌まっているので見えていない。)に上方より差し込んで固定される。第1DABアンテナエレメント341の前端部には、第2DABアンテナエレメント342との接続のためのフック341fが設けられている。
【0071】
第2DABアンテナエレメント342は、銅線のヘリカルコイルであって、第3ホルダ54に巻き回された状態で台座部53に取り付けられる。第2DABアンテナエレメント342は、銅以外の導電性材料を用いた線状導体であってもよい。
【0072】
図16は、第3ホルダ54に第2DABアンテナエレメント342を取り付けた状態の斜視図である。
第3ホルダ54は、合成樹脂で形成され、第2DABアンテナエレメント342(例えば、銅線のヘリカルコイル)が巻回されることでボビンとして機能し、台座部53の前端下面に下方からネジ止めされる。
【0073】
第2DABアンテナエレメント342の一端部は、上部フック543に引っ掛けられて固定され、第3ホルダ54が台座部53に取り付けられた後に、当該一端部は第1DABアンテナエレメント341のフック341fに引っ掛けられて半田付けされる。
【0074】
第2DABアンテナエレメント342の他端部は、第3ホルダ54の下側端子540に取り付けられて半田付けされる。第3ホルダ54の下側端子540は、第1接点541と、第2接点542とを有する。第1接点541は、第2DABアンテナエレメント342の他端部(巻き付け状態における下側の端部)との接点である。第2DABアンテナエレメント342の他端部は、第1接点541に巻き付けられて半田付けされる。
【0075】
第2接点542は、第2ホルダ52の下側端子520の第2接点522(図6参照)と同様の構成を有している。第3ホルダ54を取り付けた状態の台座部53を、樹脂ベース12へ取り付けると、下側端子540の第2接点542が板バネのように機能してDAB回路基板24へ付勢されつつ接触することで、この状態で電気的な接続が確保される。第2接点542とDAB回路基板24とは半田付けされる。これにより、第2DABアンテナエレメント342とDAB回路基板24との接続部品と当該接続部品の取り付け工数とを削減できる。
【0076】
第3ホルダ54の第1接点541は前方向き、第2接点542は右方向きに延設されている。両者が直交するような位置関係で離れて配置されているので、作業者にとって、第2接点542への半田付け作業がし易くなる。
【0077】
以上、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られるDAB波帯の信号の受信機能を備えた車載用アンテナ装置2Cを実現できる。
【0078】
〔第4実施形態〕
第4実施形態について説明する。以降では、主に第1実施形態~第3実施形態との差異について述べることとし、第1実施形態~第3実施形態と同様の構成要素については、同じ符号を付与して重複する説明は省略する。
【0079】
図17は、第4実施形態における車載用アンテナ装置2Dの斜視分解図である。
車載用アンテナ装置2Dは、第3実施形態におけるDAB波帯の信号の受信機能を、DTV(Digital Television Broadcasting:デジタルテレビ放送)波帯の信号の受信機能に置き換えている。具体的には、DABアンテナ部34を、DTV波帯の信号を受信するDTVアンテナ部35に置き換え、DAB回路基板24を、DTV回路基板25に置き換えている。
【0080】
DTVアンテナ部35は、第1DTVアンテナエレメント351と、第2DTVアンテナエレメント352とを有する。第1DTVアンテナエレメント351は、第1DABアンテナエレメント341と同様にして台座部53に取り付けられる。第2DTVアンテナエレメント352は、第2DABアンテナエレメント342のようなヘリカルコイルではないので、図18に示すように、上部フック543から下側端子540へ直線状に第3ホルダ54に取り付ける。
【0081】
以上、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られるDTV波帯の信号の受信機能を備えた車載用アンテナ装置2Dを実現できる。
【0082】
〔変形例〕
幾つかの実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は上記形態に限定されるものではなく適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
【0083】
(変形例その1)
例えば、第1実施形態では、アンテナ部30にてAM/FM波帯の信号を受信するものとして説明したが、アンテナ部30の受信周波数帯の設定はこれに限らない。例えば、アンテナ部30がDAB波帯の信号を受信する構成も可能である。
【0084】
(変形例その2)
上記実施形態では、第1アンテナエレメント31の連結部313の位置は、上記の例(図4参照)に限らず適宜設定可能である。例えば、第1エレメント311と第2エレメント312の後端部を連結するように設けるとしてもよい。第1アンテナエレメント31の第1ホルダ51に対する取り付けが完了すると、連結部313が、第1アンテナエレメント31が第1ホルダ51に対して前方向へ移動するのを抑制する抑制部として機能する。
【0085】
(変形例その3)
第1ホルダ51と、第2ホルダ52と、台座部53との取り付け構造は、上記実施形態に限らず適宜変更可能である。例えば、図19および図20に示すように、第1ホルダ51の底面に第2ホルダ52をネジ止めして取り付けた後に、台座部53に取り付けてもよい。第1ホルダ51では係合突起部514(図5参照)に代えてスライダ518を設け、台座部53では係合孔部534(図7参照)に代えてガイド538を設ける。そして、第1ホルダ51を台座部53に対して、スライダ518をガイド538に挿入するようにして左方より差し込んで取り付ける。第2ホルダ52のネジ止めを上記実施形態における第2ホルダ52のネジ止めよりも先に行うので、第1ホルダ51と、第2ホルダ52と、台座部53とを取り付ける際の作業性を向上させることができる。
【0086】
(変形例その4)
第1アンテナエレメント31におけるミアンダ形状を有する部位の範囲は、適宜変更可能である。第1アンテナエレメント31の一部または全部を適宜ミアンダ形状とすることができる。第1エレメント311および第2エレメント312を、ミアンダ形状を有する部位のない平板としてもよい。第1エレメント311と第2エレメント312とが上端部で繋がって一体化した形状であってもよい。
【0087】
(変形例その5)
第1アンテナエレメント31が内側に突起を有し、第1ホルダ51がその突起に嵌合する凹部を有していてもよい。第1アンテナエレメント31の突起や第1ホルダ51の凹部が無い場合に比べて、第1アンテナエレメント31の第1ホルダ51に対する取り付けが完了した際に、第1アンテナエレメント31が第1ホルダ51に対して前後方向(X軸方向)や上下方向(Z軸方向)へ移動するのをより抑制することができる。
【0088】
(変形例その6)
また、アンテナケース4のアンテナホルダ50より前方(X軸正方向)の前方空間に設けるアンテナの種類や数は、上記実施形態に限らず適宜設定可能である。図21は、本変形例における車載用アンテナ装置2Eの斜視外観図であり、アンテナケース4の半身を省略するなどの一部の図示を省略した図である。車載用アンテナ装置2Eのように、第1パッチアンテナ61、第2パッチアンテナ62、第3パッチアンテナ63の3つのパッチアンテナを前方空間に設置する構成も可能である。
【0089】
例えば、第1パッチアンテナ61、第2パッチアンテナ62、第3パッチアンテナ63は、衛星測位システム用のアンテナとすることができる。より具体的には、第1パッチアンテナ61をGPS(Global Positioning System)用アンテナ、第2パッチアンテナ62および第3パッチアンテナ63をIRNSS(Indian Regional Navigational Satellite System)用アンテナとすることができる。IRNSS用アンテナを上下2段のパッチアンテナとすることで2周波に対応することができる。例えば、第2パッチアンテナ62および第3パッチアンテナ63の一方をIRNSSのSバンド用アンテナ、他方をIRNSSのL5バンド用アンテナとすることができる。なお、搭載するパッチアンテナとしては、GPSやIRNSSの衛星測位システムに限らず、GalileoやBeiDou、準天頂衛星(QZSS)等の他の衛星測位システムに対応するパッチアンテナでもよい。また、1つのパッチアンテナで複数の衛星測位システムや複数の周波数に対応可能なパッチアンテナを搭載することとしてもよい。
【0090】
本明細書の開示内容は、次のように概括することができる。
【0091】
本開示の態様は、アンテナエレメントと、前記アンテナエレメントを保持するホルダとを、備え、前記ホルダは、前記アンテナエレメントを所定の差込方向から差し込み可能な位置に設けられた、少なくとも1つの係合部、を有する、車載用アンテナ装置である。
【0092】
本態様によれば、アンテナエレメントをホルダに差し込みさえすれば、アンテナエレメントをホルダに取り付けできる。よって、車載用アンテナ装置の組み立てに係る作業性を向上することができる。
【0093】
前記アンテナエレメントは、隣り合う線部の間に間隙部を有しながら所定の蛇行面に沿って蛇行するミアンダ形状を少なくとも一部に有し、前記係合部は、前記間隙部に対応した位置にあってもよい。この場合、係合部にアンテナエレメントが係合するので、アンテナエレメントを固定することができる。
【0094】
前記線部は、長手方向が前記差込方向に沿った方向であってもよい。この場合、差し込み作業が容易となり、車載用アンテナ装置の組み立てに係る作業性を向上することができる。
【0095】
前記係合部は、前記間隙部の間隙幅方向について、前記間隙部よりも小さい首部と前記間隙部よりも大きい頭部とを有し、前記頭部は、前記首部よりも外側に位置してもよい。この場合、差し込み作業には支障を及ぼさずにアンテナエレメントの変位抑制を実現できる。
【0096】
前記ホルダは、前記係合部を複数有してもよい。この場合、アンテナエレメントの変位を複数箇所で抑制するので、アンテナエレメントをより確実に固定できる。
【0097】
前記ホルダは、前記アンテナエレメントの前記差込方向への差し込みを案内する溝部を有してもよい。この場合、差し込み作業が容易となる。
【0098】
前記ホルダは、前記差込方向へ差し込まれた前記アンテナエレメントの差し込み先端部を保持する保持部を有してもよい。この場合、アンテナエレメントの変位抑制の効果を高めることができる。
【0099】
前記ホルダを支持する台座部、を更に備え、前記台座部は、前記ホルダに保持された前記アンテナエレメントの前記差込方向およびその反対方向への移動を抑制する抑制部を有してもよい。この場合、アンテナエレメントをホルダに対して確実に固定することができる。
【0100】
前記アンテナエレメントは、第1エレメントと、第2エレメントと、前記第1エレメントと前記第2エレメントとを連結する連結部と、を有し、前記抑制部と前記連結部とが接触してもよい。この場合、アンテナエレメントをホルダに対して確実に固定することができる。
【符号の説明】
【0101】
2、2B、2C…車載用アンテナ装置
4…アンテナケース
10…ベース部
12、12C…樹脂ベース
14、14C…金属ベース
20…回路基板
22…第2回路基板
24…DAB回路基板
25…DTV回路基板
30…アンテナ部
31…第1アンテナエレメント
310…間隙部
311…第1エレメント
312…第2エレメント
313…連結部
32…第2アンテナエレメント
33…SXMアンテナ部
34…DABアンテナ部
35…DTVアンテナ部
50…ホルダ部
51…第1ホルダ
510…エレメント係合面
511…溝部
512…係合部
513…保持部
514…係合突起部
52…第2ホルダ
53…台座部
534…係合孔部
535…抑制部
54…第3ホルダ
61…第1パッチアンテナ
62…第2パッチアンテナ
63…第3パッチアンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21