(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】X線を検出するための高分解能ライトバルブ検出器
(51)【国際特許分類】
G01T 1/00 20060101AFI20240829BHJP
G21K 7/00 20060101ALI20240829BHJP
H01J 29/38 20060101ALI20240829BHJP
H01J 40/16 20060101ALI20240829BHJP
H01J 37/252 20060101ALI20240829BHJP
G01N 23/046 20180101ALI20240829BHJP
【FI】
G01T1/00 B
G21K7/00
H01J29/38
H01J40/16
H01J37/252 A
G01N23/046
(21)【出願番号】P 2021523909
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(86)【国際出願番号】 US2019059916
(87)【国際公開番号】W WO2020097111
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-10-07
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515063079
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エックス-レイ・マイクロスコピー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CARL ZEISS X-RAY MICROSCOPY, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュ,シアオチャオ
(72)【発明者】
【氏名】グラフ・フォム・ハーゲン,クリストフ
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-096898(JP,A)
【文献】特開2006-248820(JP,A)
【文献】米国特許第05847499(US,A)
【文献】特開2017-133964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00-1/16
G01T 1/167-7/12
G21K 7/00
H01J 29/38
H01J 40/16-40/18
H01J 37/252-37/256
G01N 23/046
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線顕微鏡システムのための撮像システムのための検出システムであって、
直接変換光導電検出層と、空間光変調器とを含む光導電検出器と、
前記光導電検出器を読み出すための光学顕微鏡
と、
前記光学顕微鏡を介して前記空間光変調器を読み出すためのカメラとを備え、前記光導電検出器の電荷緩和時間は、前記カメラによって取得される連続フレームの時間間隔よりも短い、検出システム。
【請求項2】
前記光導電検出器はX線を検出する、請求項1に記載の検出システム。
【請求項3】
前記空間光変調器は、液晶ライトバルブである、請求項1に記載の検出システム。
【請求項4】
前記光導電検出器層は、ビスマス、鉛、タリウム、水銀、テルル、アンチモン、スズまたはセレンを備える、請求項3に記載の検出システム。
【請求項5】
前記光学顕微鏡は偏光顕微鏡である、請求項1に記載の検出システム。
【請求項6】
前記光学顕微鏡は、透過において前記光導電検出器を読み出す、請求項1に記載の検出システム。
【請求項7】
前記光学顕微鏡は、反射において前記光導電検出器を読み出す、請求項1に記載の検出システム。
【請求項8】
前記光学顕微鏡は、対物レンズとそれに続くチューブレンズとを含む、請求項1に記載の検出システム。
【請求項9】
前記光導電検出器はミラー層を備える、請求項1に記載の検出システム。
【請求項10】
分析システムであって、
ビームを生成するための供給源と、
前記ビームの中に物体を保持して回転させるための物体ステージシステムと、
請求項1から9のいずれか1項に記載の検出システムとを備える、分析システム。
【請求項11】
前記供給源はX線源である、請求項
10に記載の分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2018年11月5日に出願された米国仮出願第62/755,807号の利益を米国特許法第119条(e)に従って主張し、上記出願の全体を本明細書に引用により援用する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
X線顕微鏡検査および他の用途では、高空間分解能および高効率でのX線光子(<500keV)の検出が必要である。
【0003】
現行のX線顕微鏡の中には、薄いシンチレータ検出器と電荷結合素子(CCD)または相補型金属酸化膜半導体(CMOS)カメラとの光学顕微鏡を介した光学結合を利用するものもある。この装置構成によって高分解能撮像が可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の概要
しかし、シンチレータ-光学顕微鏡-カメラ検出システムにおける光学結合は完璧ではない。光学顕微鏡における有限の物体NAおよび光損失のために、集光効率が制限される。この結果、X線検出の検出量子効率(DQE)が低下し(いわゆる量子的落ち込み)、その直接的な結果として撮像スループットが低下する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、高バンドギャップの直接変換検出材料を利用する、X線または高エネルギ荷電粒子ビームを検出するための検出システムに関する。X線の信号、たとえば投影は、液晶(LC)ライトバルブなどの空間光変調器に記録される。次いで、ライトバルブが光学顕微鏡の外部光源によって照射される。この構成により、現行のシンチレータ-光学顕微鏡-カメラ検出システムよりも光学系における光損失が軽減される。
【0006】
また、光学顕微鏡の撮像カメラは、高性能の高価な冷却カメラである必要は無い。この結果、提案されている検出システムを低コストにすることができる。
【0007】
本検出システムは、高バンドギャップの直接変換X線検出光導電体層と、液晶(LC)ライトバルブなどの空間光変調器とで構成されるサンドイッチ構造を有する光導電X線検出器を使用する。動作時、LCライトバルブのLCフィルムは電界に曝される。次いで、X線光子は光導電体層内に電子-正孔対を生成し、したがって電界を局所的に修正する。この局所電界により、隣接するLCフィルム内に液晶の局所的な再配向が生じる。これは、たとえば偏光光学顕微鏡によって検出することができる。
【0008】
一般に、一局面によれば、本発明は、X線または荷電粒子ビーム分析システムのための検出システムを特徴とする。検出システムは、光導電検出器と、光導電検出器を読み出すための光学顕微鏡とを備える。
【0009】
現行の実施形態では、光導電検出器は、液晶電気光学光変調器および光導電検出器層を備える。この光導電検出器層は、ビスマス、鉛、タリウム、水銀、テルル、アンチモンまたはスズなどの高Z元素を含むことが好ましい。
【0010】
光学顕微鏡は、透過または反射において光導電X線検出器を読み出す偏光顕微鏡であることが好ましい。
【0011】
一般に、別の局面によれば、本発明は、光導電検出器と、光導電検出器を読み出すための光学顕微鏡とを備える、撮像システムのための検出システムを特徴とする。
【0012】
このシステムは、X線顕微鏡システムであってもよいし、巨視的なX線撮像システムであってもよい。
【0013】
他の場合では、光導電検出器は、荷電粒子ビームの荷電粒子などの粒子を検出する。
光学顕微鏡は、透過または反射において光導電検出器を読み出すことができる。
【0014】
一般に、別の局面によれば、本発明は、ビームを生成するための供給源と、ビームの中に物体を保持して回転させるための物体ステージシステムと、光導電検出器および光導電検出器を読み出すための光学顕微鏡を含む検出システムとを備える分析システムを特徴とする。
【0015】
以下、構成のさまざまな新規の詳細および部分の組み合わせを含む本発明の上記および他の特徴、ならびに他の利点を、添付の図面を参照してより特定的に記載し、特許請求の範囲の中で指摘する。本発明を具体化する特定の方法および装置は、例示として示されており、本発明を限定するものとして示されているわけではないということが理解されるであろう。本発明の原理および特徴は、本発明の範囲から逸脱することなくさまざまなおよび多数の実施形態において利用されることができる。
【0016】
添付の図面において、さまざまな図全体を通して、参照符号は同一の部分を指す。図面は、必ずしも一定の縮尺で記載されているわけではなく、その代わりに本発明の原理を示すことに強調が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係るX線画像増強管の一部を形成する光導電X線検出器の側面断面図である。
【
図2】
図1の光導電X線検出器の等価電気回路の概略図である。
【
図3A】反射において動作する、偏光光学顕微鏡構成を使用するX線検出システムを示す図である。
【
図3B】透過において動作する、偏光光学顕微鏡構成を使用するX線検出システムを示す図である。
【
図4】さまざまな光導電体の厚みについての電荷拡散長を示す図である。
【
図5】本発明を適用可能なX線顕微鏡の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好ましい実施形態の詳細な説明
ここで、本発明の例示的な実施形態が示されている添付の図面を参照して、本発明について以下でさらに十分に説明する。しかし、本発明は、多くの異なる形態で実施されてもよく、本明細書に記載されている実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完璧かつ完全であり、当業者に本発明の範囲を十分に伝えるように提供されている。
【0019】
本明細書で用いられる「および/または」という用語は、関連の列挙された項目のうちの1つ以上の任意およびすべての組み合わせを含む。さらに、単数形および冠詞「a」、「an」および「the」は、特に明記しない限り、複数形も含むことが意図されている。さらに、「含む」、「備える」、「含んでいる」および/または「備えている」という用語は、本明細書で使用されるとき、記載されている特徴、完全体、ステップ、動作、要素および/または構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、完全体、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を除外するものではない、ということが理解されるであろう。さらに、構成要素またはサブシステムを含む要素が参照され、および/または、別の要素に接続もしくは結合されるものとして示される場合、当該要素は、他の要素に直接接続もしくは結合されてもよく、または介在する要素が存在してもよい、ということが理解されるであろう。
【0020】
別の態様で定義されていない限り、ここに使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する技術の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。さらに、たとえば一般に使用されている辞書で定義されているような用語は、関連技術の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、ここに明らかにそう定義されていない限り、理想化されたまたは過度に形式的な意味で解釈されない、ということが理解されるであろう。
【0021】
図1は、光導電X線検出器12の基本的な装置構成を示す。これは、光導電検出器60の一方側に配置されたLC電気光学光変調器62などの電気光学空間光変調器を備える。
【0022】
光導電検出器60は、約5~1000μmの範囲の厚みを有する光導電体層74上に堆積された透明な導電性のインジウムスズ酸化物(ITO)電極72を含む。
【0023】
電気光学光変調器62は、液晶(LC)セル80の形態である。LCセル80は一対の配向層82、84を含む。配向層82は、スピンコーティング法を用いて光導電体層74上に堆積され得る。スペーサ86がポリイミド配向層同士の間に作用することにより、ポリイミド配向層82と84との間の均一な分離を維持し、したがってLCキャビティ88を規定する。
【0024】
ドープされたネマチック液晶材料90がLCキャビティ88を充填し、液晶材料中の気泡の形成を避けるために真空充填法によって導入され得る。ITO電極92が配向層84の上に重なり、ガラス基板94がITO電極92の上に重なる。ITO電極92およびガラス基板94は、ITO電極92と72との間に電位源V(bias)を接続しやすくするために光導電検出器層60からそれぞれ張り出している。
【0025】
LCセル80は、LCセルが一対のガラス基板とは対照的にガラス基板と光導電体層74とによって規定されること以外は、自立型LCセルと同様に構成される。
【0026】
エポキシ96がITO電極92と72との間に作用することにより、空気によって分離されているITO電極同士の間の領域を充填し、ITO電極間に電位をかけた時のLCセル80の破壊を阻止する。また、エポキシ98が電気光学光変調器58を封止することにより、光導電X線検出器12を形成する層の分離を阻止する。
【0027】
従来、大抵の場合、アモルファスセレン(a-Se)が光導電体層74として用いられてきた。
【0028】
対照的に、好ましい実施形態では、光導電体層74は、高バンドギャップおよび高電気抵抗率の両方を有する材料から作られる。高バンドギャップ光導電体の利点は、通常、高電圧バイアス下で生じる漏れ電流がはるかに小さいことである。これは検出器ノイズを低減させるのに重要である。また、それはLCライトバルブの性能を簡素化して安定化させる。それはまた、検出器システムの分析およびモデリングを簡素化する。
【0029】
本発明の一実施形態では、光導電体層74は、単結晶ビスマスシリコンオキサイドBi12SiO20(BSO)または(化学的に類似した)結晶ビスマスゲルマニウムオキサイドBi12GeO20(BGO)またはビスマスチタンオキサイドBi12TiO20(BTO)である。
【0030】
他の実施形態では、光導電体層74の高バンドギャップ材料は、メチルアンモニウム鉛ハライド(MAPbX3、X=I、BrおよびCl)、ホルムアミジニウム鉛ハライド(FAPbX3)およびセシウム鉛ハライド(CsPbX3)などの、鉛系の高バンドギャップペロブスカイト材料である。
【0031】
他の実施形態では、光導電体層74の高バンドギャップ材料は、Mercouri G. Kanatzidis, Ioannis Androulakis, Simon Johnsen, Sebastian C. PeterのMethods and compositions for the detection of X-ray and gamma-ray radiationに記載されている材料のうちの1つである。本明細書にこの引用により援用する米国特許第8,519,347号を参照されたい。
【0032】
Tao L, Daghighian HM, Levin CSのStudy of material properties important for an optical property modulation-based radiation detection method for positron emission tomography, J Med Imaging (Bellingham) 2017;4(1):011010には、BSOが放射性同位元素照射から検出可能な信号を生成できる(通常は、X線管が生成するよりもはるかに低いX線光子束を生成する)ことが示されている。しかし、この信号検出方法は、面積検出器としては実現可能ではないおよび/または実用的ではないと考えられる。代わりに、X線ライトバルブ構成が、高い空間分解能でBSO結晶によって生成される信号を抽出する実現可能で実用的なソリューションを提供すると考えられる。なお、BSO結晶を用いるライトバルブ装置は、Aubourg P, Huignard J-P, Hareng M, Mullen RのLiquid crystal light valve using bulk monocrystalline Bi12SiO20as the photoconductive material, Applied Optics 1982;21(20):3706-3712、およびBortolozzo U, Residori S, Huignard J-PのAdaptive Holography in Liquid Crystal Light-Valves, Materials 2012;5(9):1546に提案されている。しかし、これらのライトバルブ装置は光変調器としてのみ使用されており、X線検出器としては使用されていない。
【0033】
これらの光導電体を選択するメリットはいくつかある。それらはすべて、高Z材料(たとえば、ビスマスではZ=83、鉛ではZ=82)を含む。これにより、光電断面積(吸収力)がほぼZ4に比例し、光電相互作用が本願のX線エネルギ範囲(数keV~数百keVのX線である)を占め、コンプトン散乱などの他の種類の相互作用よりも望ましいため、X線吸収が向上する。また、これらの高Z材料は通常、a-Seなどの低Z材料よりも密度が高い。しかし、Z差と比較すると、この影響は相対的に軽微である。
【0034】
光導電体層74の高バンドギャップ材料のいくつかの他の例は、ZnTe、ZnSe、HgS、TlBr、HgI2、ならびに米国特許出願公開第2016/0216384号である、H. Chen, J.-S. Kim, F. JinおよびS. Trivediの"Detection of nuclear radiation via mercurous halides"におけるHg2I2、Hg2Br2およびHg2Cl2などのハロゲン化水銀材料である。
【0035】
図2は、X線ライトバルブ検出器システムの実効回路を示す。図からわかるように、光導電検出器層60は、コンデンサC
Pと、すべて並列接続されたいくつかの電流源および電荷源とによって表わすことができる。LCセル80は、コンデンサC
lcと、抵抗器R
lcと、すべて並列接続された電流源とによって表わすことができる。
【0036】
LC電気伝導率の適切な選択(小さすぎず、大きすぎず、光導電体の電気伝導率よりも大きい)により、X線放射のない定常状態では、LCセル上の電圧降下は、その薄さおよび光導電体よりも高い電気伝導率のために、低いかまたは0に近い。
【0037】
【0038】
正常動作では、前のフレームからの電荷が次のフレームに大きな影響を及ぼさないことを確実にするためにτfをτcよりも少なくとも数倍長くすべきである。基本的に、LCセル80は、この目的のために電荷リセット抵抗器およびコンデンサとして機能している。
【0039】
一般に、τfは、高速撮像では1ミリ秒(msec)未満であり、低速撮像では数秒よりも長くすることができる。また、τcは、LCセル80をドープしてその電気伝導率を高めることによって制御される。
【0040】
一般に、結晶質の光導電体は、a-Seなどの非晶質材料よりも好ましい。結晶質材料の利点は、結晶質材料の方が一般に材料特性が良好である(電気移動度が高い、電荷トラップが少ない、等)ことである。また、非晶質材料の主な利点は、安価に大面積で製造可能なことである。しかし、本明細書に記載される高分解能検出器の場合、検出器の面積は一般に小さいので、この利点はここでは本システムにとってそれほど重要ではない。
【0041】
従来、LCスペーサについては、(LCDディスプレイ業界で使用されるような)マイクロロッドスペーサを使用するものもあるが、そのようなスペーサは低分解能で大面積のLCライトバルブ用途に適している。
【0042】
提案されているX線検出システムは、高分解能で小面積のLCライトバルブ用途を対象としている。そのため、これらのマイクロロッド/マイクロスフェアは目に見える。したがって、いくつかの実施形態では、LCキャビティ88の縁にエッジスペーサ86を使用する。好ましくは、スペーサ86の厚み、したがってLCキャビティ88の厚みは、(高い空間分解能、および線量の大きなダイナミックレンジのために)10μm以下である。最良の分解能の場合、厚みは1μm以下である。これらのスペーサ86は、配向層84および導電層92の堆積の前または後に、
図1の基板94上に堆積されるかまたは別の方法で製造されることが好ましい。
【0043】
偏光反射光顕微鏡検査は、反射および/または光伝播プロセス時に偏光状態を変える構造を含む表面を検査するのに適した技術である。たとえば、この方法を用いて、鉱石試料中の構造粒子、ならびに多数の金属合金および薄膜を、LCフィルムとともに容易に検査することができる。照明波面は、光を対物レンズ内に方向付けるビームスプリッタの前に、垂直照明器内に配置される偏光子に遭遇する。直線偏光された光波は、試験片/ミラー表面上に集束され、反射されて対物レンズ内に戻る。この光は、波面の平行な束として対物レンズ開口部を出た後、偏光子に対して90度に向けられた第2の偏光子(検光子)の上に投影される。検光子を通過してチューブレンズに到達することができるのは、偏光解消された波面のみである。
【0044】
図3Aおよび
図3Bは、2つの可能な偏光光学顕微鏡ベースのX線検出システム100を示す。
【0045】
より詳細には、X線検出システム100の各々は一般に、光導電X線検出器12および偏光光学顕微鏡102を備える。光導電X線検出器12は、その変調器62においてX線102のX線投影を示す。次いで、偏光光学顕微鏡102は、偏光について変調器62に問い合わせることにより、その投影を読み出す。
【0046】
図3Aでは、入射X線または荷電粒子ビーム102が、光導電検出器60の光導電体層74において受光される。結果として生じる電荷は、光導電検出器12の変調器62内に結像する。
【0047】
同時に、外部光源130が発光する。外部光源の例としては、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード、およびフィルタ付き白熱灯が挙げられる。光は偏光子114において偏光された後、50/50ビームスプリッタ112によって反射される。光は対物レンズ113によって変調器62の上に集束される。変調器62に記録された画像は、LCセル80による偏光回転に現れる。この光は、光導電体層74と変調器62との間の反射層110によって反射される。この反射層は誘電体薄膜ミラーであってもよい。他の場合では、光導電体層74が外部光源130からの光の波長に対して反射性を有することにより、反射層110が不要になり得る。
【0048】
反射光の一部は、ビームスプリッタ112を通過して、検光子として機能する第2の偏光子118に至る。チューブレンズ116がカメラ110の上に結像する。
【0049】
図3Bでは、外部光源130およびビームスプリッタ112は光導電検出器12の上流にある。次いで、外部光が光導電検出器12を透過する。
【0050】
図3Bに示される透過バージョンは比較的単純であるが、検出器100がX線または荷電粒子ビーム源に近づくのを防止する。
図3Aに示される反射モードでは、光導電検出器層60の上に追加の誘電体ミラー110が配置される。この誘電体ミラー110は、検出光を反射して光学顕微鏡システム内に戻すことにより、LC層内の偏光変化を検出する。誘電体ミラーの特性は、装置内の電荷輸送を妨げるべきではない。このため、金属ミラーは望ましくない。
【0051】
図3Bにおける透過モードの代替的な装置構成では、検光子は、透明電極を支持するガラス基板の直後に配置されてもよい(または、ガラス基板と組み合わせられて、透明電極を有する薄い検光子を作ってもよい)。これにより、光が光学顕微鏡に入る前に、LC層内の偏光変化が光強度変化に直接変換される。この代替案の利点は、高価で入手困難な高NA偏光対物レンズを通常の高NA対物レンズに置き換えることができることである。
【0052】
例示的な図におけるレンズは、顕微鏡対物レンズに限定されない。
高分解能撮像および高検出効率を達成する1つの重要な局面は、検出処理におけるさまざまな要因を識別して整合させる方法である。検出処理の伝播に続いて、システム分解能に影響を及ぼす主な要因は、以下の通りである。
【0053】
- 光導電体材料内の光電子範囲。X線光子が吸収された後、1つまたは複数の光電子が生成され、それらはイオン化処理を受け、それらのエネルギは経路に沿って堆積される。電子範囲は短いほうが望ましく、この範囲は主に、光子電子エネルギ、密度などの光導電体特性、および他の要因によって決まる。高密度および高Z材料が生成する電子範囲は短くなる。
【0054】
【0055】
- 液晶層は、検出分解能にも影響を及ぼす。一局面は、LC層上の電界拡散であり、これは、MacDougall RD, Koprinarov I, Rowlands JAのThe x-ray light valve: A low-cost, digital radiographic imaging system-Spatial resolution, Medical Physics 2008;35(9):4216-4227に記載されている。別の局面は、液晶が弾性液体であること、および1箇所の液晶ダイレクタ場における歪みが広がることによる、ダイレクタの拡散である。これらの2つの効果の両方の長さの程度は、セルの厚みのオーダであることが示され得る。したがって、1マイクロメートル未満の薄いLC層は、検出器分解能を向上させるのに役立つが、検出器は、蓄積された電荷の変化に対する感度が低くなり、非常に薄いLCセルを製造することは困難であり得る。
【0056】
- 光学検出分解能は主に、顕微鏡対物レンズの性能パラメータによって決まる。パラメータの中で最も重要なのは開口数(NA)であり、これは他の顕微鏡検査の場合と同様である。しかし、対物レンズのNAが高くなると、焦点深度がはるかに小さくなるため、整合したLC層の厚みが必要である。つまり、最高分解能の撮像では、LC層は薄くなる。
【0057】
- カメラの画素サイズによって分解能が悪化しないようにするために、画素サイズが整合した光学カメラ(CCDまたはCMOSのいずれか)が必要である。しかし、外部光源が十分な光を提供することができるため、本願の現行のシンチレータベースのX線顕微鏡システムが必要とする高い量子効率は、一般に不要である。
【0058】
- 高いX線停止パワー印加(厚い光導電体)の場合、制限要因は通常、電荷拡散である。光導電体が十分に薄く作られた場合の高分解能撮像用途の場合、制限要因は通常、LCセルを十分に薄く作ることができ、かつLCセル感度が十分である場合は、光学分解能である。技術的制限またはLC感度要件のためにLCセルが特定の厚みでなければならない場合は、LC厚みが制限要因となり得る。
【0059】
文脈について、
図5は、X線検出システム100を適用可能なX線CT顕微鏡システム200の概略図である。
【0060】
それでもやはり、本発明は、荷電粒子分析システムおよび非顕微鏡システムに適用可能である。
【0061】
顕微鏡200は一般にX線撮像システムを含み、X線撮像システムは、多色のまたは場合によっては単色のX線ビーム102を生成するX線源システム202と、静止ビーム102の中に物体214を保持して位置決めすることにより物体214をスキャンできるようにするための物体ホルダ212を有する物体ステージシステム210とを有する。X線検出システム100は、物体214によって変調された後のビーム102を検出する。プラットフォームまたは光学テーブル207などのベースが、顕微鏡200に安定した土台を提供する。
【0062】
一般に、物体ステージシステム210は、ビーム102の中に物体214を位置決めして回転させる能力を有する。そのため、物体ステージシステム210は典型的には、x軸、y軸、およびz軸に沿って物体を非常に正確に、しかし比較的小さい移動範囲にわたって平行移動させて位置決めする高精度の3軸ステージ250を含む。これにより、物体214の関心領域をビーム102の中に配置することができる。3ステージステージ250は、物体214をビームの中でy軸を中心として回転させるシータステージ252に装着される。そしてシータステージ252はベース107に装着される。
【0063】
供給源システム102は典型的にはシンクロトロンX線放射源であり、あるいはいくつかの実施形態では「実験室用X線源」である。本明細書において使用する「実験室用X線源」は、シンクロトロンX線放射源ではない任意の適切なX線源である。実験室用X線源202はX線管であってもよく、その内部で電子が電界によって真空中で加速されて金属のターゲット片に打ち込まれ、電子が金属内で減速するにつれてX線が放出される。典型的には、そのような供給源は、使用する金属ターゲットの種類に応じて、選択されたターゲットの特性線から導き出される特定のエネルギにおける急激な強度ピークと結合された、バックグラウンドX線の連続スペクトルを生成する。さらに、X線ビームは発散し、空間コヒーレンスおよび時間コヒーレンスがない。
【0064】
一例では、供給源202は、タングステンターゲットを有する回転アノード型またはマイクロフォーカス型供給源である。モリブデン、金、白金、銀または銅を含むターゲットを使用することもできる。好ましくは、電子ビームがその背面から薄いターゲットに当たる透過構成が用いられる。ターゲットの他方側から放出されたX線はビーム102として用いられる。
【0065】
供給源202によって生成されたX線ビームは、放射の不要なエネルギまたは波長を抑制するように調整されることが好ましい。たとえば、ビーム内に存在する望ましくない波長は、たとえば、フィルタホイール260内に保持されるエネルギフィルタ(所望のX線波長範囲(帯域幅)を選択するように設計されている)を用いて、除去または減衰される。調整は、コリメータもしくはコンデンサ、および/またはゾーンプレートレンズなどのX線レンズによって提供されることが多い。
【0066】
物体214がX線ビーム102に曝されると、物体を透過したX線光子は変調されたX線ビームを形成し、このX線ビームが検出システム100によって受光される。いくつかの他の例では、ゾーンプレート対物レンズX線レンズを用いてX線検出システム100の上に結像する。
【0067】
典型的には、物体214の拡大投影画像が検出システム100の上に形成される。倍率は、供給源から物体までの距離302と供給源から検出器までの距離304との逆比に等しい。
【0068】
典型的には、X線源システム202および検出システム100はそれぞれのz軸ステージに装着される。たとえば、図示の例では、X線源システム202は供給源ステージ254を介してベース207に装着され、検出システム100は検出器ステージ256を介してベース207に装着される。実際には、供給源ステージ254および検出器ステージ256はより低精度で高移動範囲のステージであり、このステージにより、X線源システム202および検出システム100を、物体スキャン中に所定位置に(多くの場合、物体の非常に近くに)移動させ、その後、後退させることにより、物体ステージシステム210から物体を取り出すことができ、物体ステージシステム210の上に新たな物体を装填することができ、および/または物体ステージシステム210の上に物体を再位置決めすることができる。
【0069】
システム200の動作および物体214のスキャンは、画像プロセッササブシステム、コントローラサブシステムをしばしば含むコンピュータシステム224によって制御される。コンピュータシステムを用いて、検出システム100のカメラ110が検出した光学画像を読み出す。コンピュータシステム224は、その画像プロセッサの可能な支援により、スキャンを構築するための物体214の各回転角に関連付けられた検出システム100からの画像のセットを受け付ける。画像プロセッサは、CT再構成アルゴリズムを用いて投影画像同士を結合することにより、物体の3D断層撮影ボリューム情報を作成する。再構成アルゴリズムは分析的であってもよく、この場合、投影データの畳み込みまたは周波数領域フィルタリングが再構成グリッド上で逆投影と結合される。あるいは、それは反復的であってもよく、この場合、数値線形代数または最適化理論からの技法を用いて投影処理の離散化バージョンを解き、これは撮像システムの物理的特性のモデリングを含んでもよい。
【0070】
本発明は、特にその好ましい実施形態を参照して示され、説明されてきたが、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく形態および詳細のさまざまな変更を行ってもよいということが当業者によって理解されるであろう。