(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】粘度指数向上剤組成物及び潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 145/14 20060101AFI20240829BHJP
C10M 149/06 20060101ALI20240829BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20240829BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20240829BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20240829BHJP
C10N 40/06 20060101ALN20240829BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
C10M145/14
C10M149/06 ZAB
C10N30:00 Z
C10N30:02
C10N40:04
C10N40:06
C10N40:08
(21)【出願番号】P 2021528236
(86)(22)【出願日】2020-06-15
(86)【国際出願番号】 JP2020023470
(87)【国際公開番号】W WO2020262088
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2019118197
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亮太
(72)【発明者】
【氏名】山下 弘記
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和徳
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/129732(WO,A1)
【文献】特開2008-179792(JP,A)
【文献】特開2014-224243(JP,A)
【文献】特開2007-262239(JP,A)
【文献】特開2002-302687(JP,A)
【文献】特開2013-185006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるポリオレフィン系単量体(a)を構成単量体として含む共重合体(A)と、炭素数12~15の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c)及び炭素数16~20の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d)を構成単量体として含む共重合体(B)と、基油とを含む粘度指数向上剤組成物(C)であって、前記共重合体(A)の重量平均分子量と前記共重合体(B)の重量平均分子量との比率{(A)/(B)}が2~55であり、粘度指数向上剤組成物(C)を構成する前記共重合体(A)と前記共重合体(B)の重量比率(A/B)が5~100であり、前記共重合体(A)が、さらに下記一般式(2)で示される単量体(b)及び炭素数12~15の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c)の少なくとも一方を構成単量体として含み、前記共重合体(A)が、構成単量体として前記共重合体(A)の重量に基づいて炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(e)を40~70重量%含有し、前記共重合体(A)の重量平均分子量が150,000~1,200,000である粘度指数向上剤組成物。
【化1】
[R
1は水素原子又はメチル基;-X
1-は-O-、-O(AO)
m-又は-NH-で表される基であって、Aは炭素数2~4のアルキレン基であり、mは1~10の整数であり、mが2以上の場合のAは同一でも異なっていてもよい;R
2はイソブチレン基及び/又は1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基;pは0又は1の数を表す。]
【化2】
[R
3は水素原子又はメチル基;-X
2-は-O-又は-NH-で表される基;R
4は炭素数2~4のアルキレン基;R
5は炭素数1~8のアルキル基;qは1~20の整数であり、qが2以上の場合のR
4は同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記共重合体(A)が、前記単量体(b)を構成単量体として含む共重合体である請求項1に記載の粘度指数向上剤組成物。
【請求項3】
一般式(1)におけるイソブチレン基及び/又は1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体が、炭化水素重合体の構成単位の合計モル数に基づき、イソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計が30モル%以上である重合体である請求項1又は2に記載の粘度指数向上剤組成物。
【請求項4】
前記共重合体(A)が、前記単量体(b)を構成単量体として含み、前記共重合体(A)が、構成単量体として共重合体(A)の重量に基づいて前記単量体(a)を1~50重量%、前記単量体(b)を1~
40重量%、及び単量体(a)と単量体(b)の合計を10重量%以上含有する共重合体である請求項2又は3に記載の粘度指数向上剤組成物。
【請求項5】
前記共重合体(B)は、構成単量体として前記単量体(a)の含有量が、共重合体(B)の重量に基づいて1重量%未満である共重合体である請求項1~4のいずれか1項に記載の粘度指数向上剤組成物。
【請求項6】
前記共重合体(A)が、前記単量体(b)を構成単量体として含み、前記共重合体(A)が、構成単量体として共重合体(A)の重量に基づいて前記単量体(a)を5~40重量%、前記単量体(b)を5~40重量%、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(e)を40~70重量%含有する共重合体である請求項1~5のいずれかに記載の粘度指数向上剤組成物。
【請求項7】
前記共重合体(B)が、構成単量体として共重合体(B)の重量に基づいて前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c)を50~98重量%、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d)を2~50重量%含有する共重合体である請求項1~6のいずれかに記載の粘度指数向上剤組成物。
【請求項8】
前記共重合体(B)の重量平均分子量が20,000~100,000である請求項1~7のいずれかに記載の粘度指数向上剤組成物。
【請求項9】
前記基油の100℃における動粘度が1~15mm
2/sであり、かつ、前記基油の粘度指数が100以上である請求項1~8のいずれかに記載の粘度指数向上剤組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の粘度指数向上剤組成物と、清浄剤、分散剤、酸化防止剤、油性向上剤、流動点降下剤、摩擦摩耗調整剤、極圧剤、消泡剤、抗乳化剤、金属不活性剤及び腐食防止剤からなる群から選ばれる1種以上の添加剤とを含有してなる潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘度指数向上剤組成物及び潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CO2排出量低減及び石油資源保護等の実現のために、自動車の省燃費化がより一層要求されている。省燃費化の一つとして、エンジン油の低粘度化による粘性抵抗の低減が挙げられる。しかし、低粘度化すると液漏れや焼付きといった問題が生じてくる。また、寒冷地では低温始動性が求められる。米国SAEのエンジン油用粘度規格(SAEJ300)における0W-20グレードは、高温高剪断下での粘度(HTHS粘度)として、150℃HTHS粘度(ASTM D4683又はD5481)が2.6mPa・s以上と規定されている。また、同グレードは、寒冷地での始動性保証のために-40℃下の低温粘度が60,000mPa・s以下及び降伏応力無きこと(ASTM D4684)と規定されている。省燃費化については、上記規格を満たした上で、80℃又は100℃の実効温度域でのHTHS粘度がより低いエンジン油が求められる。
そこで潤滑油に粘度指数向上剤を添加して粘度特性を改善する方法が広く行われている。そのような粘度指数向上剤としては、メタクリル酸エステル共重合体(特許文献1~4)、オレフィン共重合体(特許文献5)及びマクロモノマー共重合体(特許文献6)等が知られている。
しかしながら、上記の粘度指数向上剤は、エンジン油組成物に添加した場合の100℃HTHS粘度の低減が未だ充分でなく、剪断による粘度低減を受けやすく、また、低温での粘度が上昇するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2732187号公報
【文献】特許第2941392号公報
【文献】特開平7-62372号公報
【文献】特開2004-307551号公報
【文献】特開2005-200454号公報
【文献】特表2008-546894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、100℃HTHS粘度が低く、剪断安定性及び低温粘度に優れる粘度指数向上剤組成物及び潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、下記一般式(1)で示されるポリオレフィン系単量体(a)を構成単量体として含む共重合体(A)と、炭素数12~15の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c)及び炭素数16~20の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d)を構成単量体として含む共重合体(B)と、基油とを含む粘度指数向上剤組成物(C)であって、前記共重合体(A)の重量平均分子量と前記共重合体(B)の重量平均分子量との比率{(A)/(B)}が2~55であり、粘度指数向上剤組成物(C)を構成する前記共重合体(A)と前記共重合体(B)の重量比率(A/B)が5~100である粘度指数向上剤組成物;該粘度指数向上剤組成物と、清浄剤、分散剤、酸化防止剤、油性向上剤、流動点降下剤、摩擦摩耗調整剤、極圧剤、消泡剤、抗乳化剤、金属不活性剤及び腐食防止剤からなる群から選ばれる1種以上の添加剤とを含有してなる潤滑油組成物である。
【0006】
【0007】
[R1は水素原子又はメチル基;-X1-は-O-、-O(AO)m-又は-NH-で表される基であって、Aは炭素数2~4のアルキレン基であり、mは1~10の整数であり、mが2以上の場合のAは同一でも異なっていてもよい;R2はイソブチレン基及び/又は1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基;pは0又は1の数を表す。]
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、100℃HTHS粘度が低く、剪断安定性及び低温粘度に優れる粘度指数向上剤組成物及び潤滑油組成物を提供することができる。本発明の粘度指数向上剤組成物及び潤滑油組成物は、エンジンの実効温度(100℃)でのHTHS粘度が低く、使用時の剪断による粘度低下が少なく、かつ低温時の粘度を上昇させにくいという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、下記一般式(1)で示されるポリオレフィン系単量体(a)を構成単量体として含む共重合体(A)と、炭素数12~15の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c)及び炭素数16~20の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d)を構成単量体として含む共重合体(B)と、基油とを含む粘度指数向上剤組成物(C)であって、前記共重合体(A)の重量平均分子量と前記共重合体(B)の重量平均分子量との比率{(A)/(B)}が2~55であり、粘度指数向上剤組成物(C)を構成する前記共重合体(A)と前記共重合体(B)の重量比率(A/B)が5~100である粘度指数向上剤組成物である。
本発明においては、1分子中に、構成単量体として単量体(a)並びに(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c)及び(d)を全て有する共重合体を1種類含有するのではなく、単量体(a)を構成単量体として含む共重合体(A)と(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c)及び(d)を構成単量体として含む共重合体(B)との2種類の共重合体について、重量平均分子量の比率{(A)/(B)}が特定の範囲であるものを、特定の重量比率(A/B)で用いることにより、100℃HTHS粘度(高温高剪断粘度)が低く、剪断安定性に優れ、かつ低温時の粘度が上昇しにくく低温粘度に優れる潤滑油組成物を得ることができることを見いだしたものである。
【0010】
【0011】
一般式(1)中、R1は水素原子又はメチル基;-X1-は-O-、-O(AO)m-又は-NH-で表される基であって、Aは炭素数2~4のアルキレン基であり、mは1~10の整数であり、mが2以上の場合のAは同一でも異なっていてもよい;R2はイソブチレン基及び/又は1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基;pは0又は1の数を表す。
【0012】
<共重合体(A)>
本発明の粘度指数向上剤組成物(C)は、上記一般式(1)で示されるポリオレフィン系単量体(a)(単量体(a)ともいう)を構成単量体として含む共重合体(A)を含有する。
共重合体(A)を構成する単量体(a)は上記一般式(1)で表される。
一般式(1)におけるR1は、水素原子又はメチル基である。これらのうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、メチル基である。
【0013】
一般式(1)における-X1-は、-O-、-O(AO)m-又はNH-で表される基である。
Aは炭素数2~4のアルキレン基であり、エチレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基等が挙げられる。Aは好ましくはエチレン基である。AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、エチレンオキシ基、1,2-又は1,3-プロピレンオキシ基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレンオキシ基等が挙げられる。
mはアルキレンオキサイドの付加モル数であり、1~10の整数であり、粘度指数向上効果の観点から好ましくは1~4の整数、より好ましくは1~2の整数である。
mが2以上の場合のAは同一でも異なっていてもよく、(AO)m部分の結合形式はランダム状でもブロック状でもよい。
-X1-のうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、-O-又は-O(AO)m-で表される基であり、より好ましくは-O-又は-O(CH2CH2O)1-で表される基である。
【0014】
pは0又は1の数である。
【0015】
一般式(1)におけるR2はイソブチレン基及び/又は1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基である。なお、一般式(1)における炭化水素重合体は、炭素数が20よりも大きいものを意味する。
イソブチレン基は、-CH2C(CH3)2-又は-C(CH3)2CH2-で表される基であり、1,2-ブチレン基は、-CH2CH(CH2CH3)-又は-CH(CH2CH3)CH2-で表される基である。
イソブチレン基及び/又は1,2-ブチレン基を構成単位とする炭化水素重合体としては、構成単量体(不飽和炭化水素(x))としてイソブテン及び1-ブテンを用いた重合体、並びに1,3-ブタジエンを重合した1,2-付加物の二重結合を水素化した重合体等が挙げられる。
また、炭化水素重合体は、イソブテン、1-ブテン及び1,3-ブタジエンに加え、不飽和炭化水素(x)として以下の(1)~(3)の1種以上を構成単量体としてもよい。
(1)脂肪族不飽和炭化水素[炭素数2~36のオレフィン(例えばエチレン、プロピレン、2-ブテン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、トリアコセン及びヘキサトリアコセン等)及び炭素数4~36のジエン(例えば、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン及び1,7-オクタジエン等)等]
(2)脂環式不飽和炭化水素[例えばシクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、インデン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等]
(3)芳香族基含有不飽和炭化水素(例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン及びトリビニルベンゼン等)
これらによって構成される炭化水素重合体は、ブロック重合体でもランダム重合体であってもよい。また炭化水素重合体が、二重結合を有する場合には、水素添加により、二重結合の一部又は全部を水素化したものであってもよい。一態様において、R2における炭化水素重合体は、構成単量体として炭素数4の単量体のみを用いた炭化水素重合体であってよく、炭素数4の単量体は、イソブテン、1-ブテン及び1,3-ブタジエンからなる群より選択される少なくとも1種であってよい。
【0016】
単量体(a)の重量平均分子量(以下Mwと略記する)及び数平均分子量(以下Mnと略記する)は以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略記する)によって測定することができる。
<単量体(a)のMwおよびMnの測定条件>
装置 :「HLC-8320GPC」[東ソー(株)製]
カラム :「TSKgel GMHXL」[東ソー(株)製]2本
「TSKgel Multipore HXL-M」[東ソー(株)製] 1本
測定温度 :40℃
試料溶液 :試料濃度0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:10.0μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TS 基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)
12点(分子量:589、1,050、2,630、9,100、19,500、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,110,000、4,480,000)[東ソー(株)製]
【0017】
単量体(a)のMnは好ましくは800~10,000であり、より好ましくは1,000~9,000であり、さらに好ましくは1,200~8,500である。単量体(a)のMnが800以上であると粘度指数向上効果が良好である傾向があり、10,000以下であると長期間使用時の剪断安定性が良好である傾向がある。
【0018】
単量体(a)は、炭化水素重合体の片末端に水酸基を導入して得られた片末端に水酸基を含有する重合体(Y)と、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応、または(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸アルキル(好ましくは炭素数1~4)エステルとのエステル交換反応により得ることができる。なお、「(メタ)アクリル」は、「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
【0019】
重合体(Y)は、潤滑油への溶解性の観点から、特定範囲の溶解パラメータ(SP値と略記することがある)を有するものが好ましい。重合体(Y)のSP値の範囲は、好ましくは7.0~9.0(cal/cm3)1/2であり、より好ましくは7.3~8.5(cal/cm3)1/2である。
なお、本発明におけるSP値は、Fedors法(Polymer Engineering and Science,February,1974,Vol.14、No.2 P.147~154)に記載の方法で算出される値である。
重合体(Y)のSP値は、使用する単量体のSP値、モル分率を適宜調整することにより所望の範囲にすることができる。
【0020】
片末端に水酸基を含有する重合体(Y)の具体例としては、以下の(Y1)~(Y4)が挙げられる。
アルキレンオキサイド付加物(Y1);不飽和炭化水素(x)をイオン重合触媒(ナトリウム触媒等)存在下に重合して得られた炭化水素重合体に、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等)を付加して得られたもの等(この場合、単量体(a)は、一般式(1)において、-X1-が-(AO)m-であり、p=0である化合物)。
ヒドロホウ素化物(Y2);片末端に二重結合を有する不飽和炭化水素(x)の炭化水素重合体のヒドロホウ素化反応物(例えば米国特許第4,316,973号明細書に記載のもの)等(この場合、単量体(a)は、一般式(1)において、-X1-が-O-であり、p=0である化合物)。
無水マレイン酸-エン-アミノアルコール付加物(Y3);片末端に二重結合を有する不飽和炭化水素(x)の炭化水素重合体と無水マレイン酸とのエン反応で得られた反応物を、アミノアルコールでイミド化して得られたもの等(この場合、単量体(a)は、一般式(1)において、-X1-が-O-であり、p=1である化合物)。
ヒドロホルミル-水素化物(Y4);片末端に二重結合を有する不飽和炭化水素(x)の炭化水素重合体をヒドロホルミル化し、次いで水素化反応して得られたもの(例えば特開昭63-175096号公報に記載のもの)等(この場合、単量体(a)は、一般式(1)において、-X1-が-O-であり、p=0である化合物)。
これらの片末端に水酸基を含有する重合体(Y)のうち、HTHS粘度及び粘度指数向上効果の観点から、好ましいのはアルキレンオキサイド付加物(Y1)、ヒドロホウ素化物(Y2)及び無水マレイン酸-エン-アミノアルコール付加物(Y3)であり、より好ましいのはアルキレンオキサイド付加物(Y1)である。
【0021】
一般式(1)中のR2を構成する全単量体のうちブタジエンの比率(イソブチレン基及び/又は1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体において、全構成単量体中の1,3-ブタジエンの重量割合)は、粘度指数向上効果の観点から、50重量%以上が好ましく、より好ましくは75重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
【0022】
一般式(1)におけるイソブチレン基及び/又は1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体において、イソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量は、粘度指数向上効果及び剪断安定性の観点から、炭化水素重合体の構成単位の合計モル数に基づいて、30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましく、さらに好ましくは50モル%以上である。
炭化水素重合体におけるイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量の比率を上げる方法として、例えば、下記の方法などを採用することができる。上記のアルキレンオキサイド付加物(Y1)の場合は、例えば1,3-ブタジエンを用いたアニオン重合において、反応温度を1,3-ブタジエンの沸点(-4.4℃)以下とし、且つ、重合開始剤の投入量を1,3-ブタジエンに対して少なくすることにより、炭化水素重合体中のイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量の比率を上げることができる。上記のヒドロホウ素化物(Y2)、無水マレイン酸-エン-アミノアルコール付加物(Y3)及びヒドロホルミル-水素化物(Y4)の場合は片末端に二重結合を有する炭化水素重合体の重合度を大きくすることで、上記比率を上げることができる。
【0023】
一般式(1)におけるイソブチレン基及び/又は1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体におけるイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量は、13C-NMRによって測定することができる。具体的には、例えば、単量体として炭素数4のもののみを用いた場合、炭化水素重合体を13C-NMRにより分析し、下記数式(1)を用いて計算し、炭化水素重合体の構成単位の合計モル数に基づくイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計のモル%を決定することができる。13C-NMRにおいて、イソブチレン基のメチル基に由来するピークが30~32ppmの積分値(積分値A)、1,2-ブチレン基の分岐メチレン基(-CH2CH(CH2CH3)-又は-CH(CH2CH3)CH2-)に由来するピークが26~27ppmの積分値(積分値B)に現れる。炭化水素重合体の構成単位の合計モル数に基づくイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計のモル%は、上記ピークの積分値と、炭化水素重合体の全炭素のピークに関する積分値(積分値C)から求めることができる。
イソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量(モル%)=100×{(積分値A)×2+(積分値B)×4}/(積分値C) (1)
【0024】
R2における炭化水素重合体が構成単量体にブタジエン、又は、ブタジエン及び1-ブテンを含む場合、一般式(1)中のR2の一部または全部を構成するブタジエン、又は、ブタジエン及び1-ブテン由来の構造において、1,2-付加体と1,4-付加体のモル比(1,2-付加体/1,4-付加体)は粘度指数向上効果および低温粘度の観点から、好ましくは5/95~95/5、より好ましくは20/80~80/20、さらに好ましくは30/70~70/30である。
【0025】
R2における炭化水素重合体が構成単量体にブタジエン、又は、ブタジエン及び1-ブテンを含む場合、一般式(1)中のR2の一部または全部を構成するブタジエン、又は、ブタジエン及び1-ブテン由来の構造における1,2-付加体/1,4-付加体のモル比は1H-NMRや13C-NMR、ラマン分光法などで測定することができる。
【0026】
本発明における共重合体(A)は、HTHS粘度、剪断安定性及び低温粘度の観点から、下記一般式(2)で表される単量体(b)を構成単量体として含む共重合体であることが好ましい。
【化3】
【0027】
[R3は水素原子又はメチル基;-X2-は-O-又は-NH-で表される基;R4は炭素数2~4のアルキレン基;R5は炭素数1~8のアルキル基;qは1~20の整数であり、qが2以上の場合のR4は同一でも異なっていてもよい。]
【0028】
一般式(2)におけるR3は、水素原子又はメチル基である。これらのうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、メチル基である。
【0029】
一般式(2)における-X2-は、-O-又は-NH-で表される基である。これらのうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは-O-で表される基である。
【0030】
一般式(2)におけるR4は、炭素数2~4のアルキレン基である。炭素数2~4のアルキレン基としては、エチレン基、イソプロピレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、イソブチレン基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基等が挙げられる。
【0031】
一般式(2)におけるqは1~20の整数であり、粘度指数向上効果及び低温粘度の観点から、好ましくは1~5の整数であり、より好ましくは1~2の整数である。
qが2以上の場合のR4Oは同一でも異なっていてもよく、(R4O)q部分の結合形式はランダム状でもブロック状でもよい。
【0032】
一般式(2)におけるR5は、炭素数1~8のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-ペンチル基及びn-オクチル基が挙げられる。
炭素数1~8のアルキル基のうち、粘度指数の観点から好ましいのは、炭素数1~7のアルキル基であり、より好ましいのは炭素数1~6のアルキル基、更に好ましいのは炭素数1~5のアルキル基、特に好ましいのは炭素数2又は4のアルキル基である。
【0033】
単量体(b)の具体例としては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンチルオキシエチル(メタ)アクリレート、ヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、ヘプチルオキシエチル(メタ)アクリレート、オクチルオキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、プロポキシプロピル(メタ)アクリレート、ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンチルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ヘキシルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ヘプチルオキシプロピル(メタ)アクリレート、オクチルオキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、プロポキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシブチル(メタ)アクリレート、ペンチルオキシブチル(メタ)アクリレート、ヘキシルオキシブチル(メタ)アクリレート、ヘプチルオキシブチル(メタ)アクリレート、オクチルオキシブチル(メタ)アクリレート、及び炭素数1~8のアルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドからなる群から選ばれる少なくとも1種を2~20モル付加したものと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。
単量体(b)のうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、エトキシエチル(メタ)アクリレート及びブトキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0034】
共重合体(A)を構成する単量体(a)の重量割合は、粘度指数向上効果及び剪断安定性の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、好ましくは1~50重量%であり、より好ましくは5~40重量%、さらに好ましいのは10~35重量%である。
共重合体(A)の重量に基づいて、単量体(a)の重量割合が1重量%以上であると、溶解性と長期使用安定性が良好である傾向にあり、単量体(a)の重量割合が50重量%以下であると、粘度指数向上効果に優れる傾向がある。
共重合体(A)において、共重合体(A)の構成単量体のうち単量体(b)の重量割合は、粘度指数向上効果の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、1~80重量%が好ましく、より好ましくは3~60重量%、さらに好ましくは、5~60重量%、特に好ましくは5~40重量%である。
共重合体(A)において、単量体(a)と(b)との合計重量割合は、粘度指数向上効果及び剪断安定性の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、10重量%以上であることが好ましく、より好ましくは15~70重量%、さらに好ましくは20~60重量%である。
【0035】
本発明における共重合体(A)は、単量体(a)及び単量体(b)以外に、単量体(b)を除く炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(e)(以下、単量体(e)ともいう)を構成単量体として含む共重合体であることが、粘度指数向上効果の観点から好ましい。炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(e)としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル及び(メタ)アクリル酸ブチル等が挙げられる。
単量体(e)のうち好ましいのは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル及び(メタ)アクリル酸ブチルであり、より好ましいのは(メタ)アクリル酸エチル及び(メタ)アクリル酸ブチルである。
【0036】
共重合体(A)において、共重合体(A)の構成単量体のうち単量体(e)の重量割合は、HTHS粘度及び粘度指数向上効果の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、1~90重量%が好ましく、より好ましくは30~85重量%であり、さらに好ましくは40~80重量%である。
【0037】
本発明における共重合体(A)は、単量体(a)、(b)、および(e)に加え、更に窒素原子含有単量体(f)、水酸基含有単量体(g)、リン原子含有単量体(h)及び芳香環含有ビニル単量体(i)からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体を構成単量体として含有してもよい。窒素原子含有単量体(f)(単量体(f)ともいう)としては、単量体(a)、単量体(b)及び単量体(e)を除く、以下の単量体(f1)~(f4)が挙げられる。
【0038】
アミド基含有単量体(f1):
(メタ)アクリルアミド、モノアルキル(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が1つ結合したもの;例えばN-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN-n-又はイソブチル(メタ)アクリルアミド等]、N-(N’-モノアルキルアミノアルキル)(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN-(N’-メチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’-エチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’-イソプロピルアミノ-n-ブチル)(メタ)アクリルアミド及びN-(N’-n-又はイソブチルアミノ-n-ブチル)(メタ)アクリルアミド等]、ジアルキル(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が2つ結合したもの;例えばN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等]、N-(N’,N’-ジアルキルアミノアルキル)(メタ)アクリルアミド[アミノアルキル基の窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド及びN-(N’,N’-ジ-n-ブチルアミノブチル)(メタ)アクリルアミド等];N-ビニルカルボン酸アミド[N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-n-又はイソプロピオン酸アミド及びN-ビニルヒドロキシアセトアミド等]等が挙げられる。
【0039】
ニトロ基含有単量体(f2):
4-ニトロスチレン等が挙げられる。
【0040】
1~3級アミノ基含有単量体(f3):
1級アミノ基含有単量体{炭素数3~6のアルケニルアミン[(メタ)アリルアミン及びクロチルアミン等]、アミノアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレート[アミノエチル(メタ)アクリレート等]};2級アミノ基含有単量体{モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1~6のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、炭素数6~12のジアルケニルアミン[ジ(メタ)アリルアミン等]};3級アミノ基含有単量体{ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1~6のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、窒素原子を有する脂環式(メタ)アクリレート[モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]、芳香族系単量体[N-(N’,N’-ジフェニルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノスチレン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン、N-ビニルピロール、N-ビニルピロリドン及びN-ビニルチオピロリドン等]}、及びこれらの塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩又は低級アルキル(炭素数1~8)モノカルボン酸(酢酸及びプロピオン酸等)塩等が挙げられる。
【0041】
ニトリル基含有単量体(f4):
(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0042】
窒素原子含有単量体(f)のうち好ましいのは、アミド基含有単量体(f1)及び1~3級アミノ基含有単量体(f3)であり、より好ましいのは、N-(N’,N’-ジフェニルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートである。
【0043】
水酸基含有単量体(g)(単量体(g)ともいう):
水酸基含有芳香族単量体(p-ヒドロキシスチレン等)、ヒドロキシアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレート[2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等]、モノ-又はビス-ヒドロキシアルキル(炭素数1~4)置換(メタ)アクリルアミド[N,N-ビス(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等]、ビニルアルコール、炭素数3~12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1-オクテノール及び1-ウンデセノール等]、炭素数4~12のアルケンモノオール又はアルケンジオール[1-ブテン-3-オール、2-ブテン-1-オール及び2-ブテン-1,4-ジオール等]、ヒドロキシアルキル(炭素数1~6)アルケニル(炭素数3~10)エーテル(2-ヒドロキシエチルプロペニルエーテル等)、多価(3~8価)アルコール(グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリン、糖類及び蔗糖等)のアルケニル(炭素数3~10)エーテル又は(メタ)アクリレート[蔗糖(メタ)アリルエーテル等]等;
ポリオキシアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2~4、重合度2~50)、ポリオキシアルキレンポリオール[上記3~8価のアルコールのポリオキシアルキレンエーテル(アルキレン基の炭素数2~4、重合度2~100)]、ポリオキシアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンポリオールのアルキル(炭素数1~4)エーテルのモノ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコール(Mn:100~300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(Mn:130~500)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(Mn:110~310)(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物(2~30モル)(メタ)アクリレート及びモノ(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレン(Mn:150~230)ソルビタン等]等;が挙げられる。
【0044】
リン原子含有単量体(h)(単量体(h)ともいう)としては、以下の単量体(h1)~(h2)が挙げられる。
【0045】
リン酸エステル基含有単量体(h1):
(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)リン酸エステル[(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート及び(メタ)アクリロイロキシイソプロピルホスフェート]及びリン酸アルケニルエステル[リン酸ビニル、リン酸アリル、リン酸プロペニル、リン酸イソプロペニル、リン酸ブテニル、リン酸ペンテニル、リン酸オクテニル、リン酸デセニル及びリン酸ドデセニル等]等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイロキシ」は、「アクリロイロキシ及び/又はメタクリロイロキシ」を意味する。
【0046】
ホスホノ基含有単量体(h2):
(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)ホスホン酸[(メタ)アクリロイロキシエチルホスホン酸等]及びアルケニル(炭素数2~12)ホスホン酸[ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸及びオクテニルホスホン酸等]等が挙げられる。
【0047】
リン原子含有単量体(h)のうち好ましいのはリン酸エステル基含有単量体(h1)であり、より好ましいのは(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)リン酸エステルであり、さらに好ましいのは(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェートである。
【0048】
芳香環含有ビニル単量体(i)(単量体(i)ともいう):
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、4-エチルスチレン、4-イソプロピルスチレン、4-ブチルスチレン、4-フェニルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ベンジルスチレン、4-クロチルベンゼン、インデン及び2-ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0049】
芳香環含有ビニル単量体(i)のうち好ましいのは、スチレン及びα-メチルスチレンであり、より好ましいのはスチレンである。
【0050】
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(f)の重量割合は、HTHS粘度及び低温粘度の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、0~15重量%が好ましく、より好ましくは1~10重量%である。
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(g)の重量割合は、HTHS粘度及び低温粘度の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、0~15重量%が好ましく、より好ましくは1~10重量%である。
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(h)の重量割合は、HTHS粘度及び低温粘度の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、0~15重量%が好ましく、より好ましくは1~10重量%である。
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(i)の重量割合は、HTHS粘度及び低温粘度の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、0~15重量%が好ましく、より好ましくは1~10重量%である。
【0051】
共重合体(A)は、単量体(a)、(b)及び(e)~(i)に加え、更に不飽和基を2つ以上有する単量体(j)(単量体(j)ともいう)を構成単量体として含有してもよい。
【0052】
不飽和基を2つ以上有する単量体(j)としては、例えば、ジビニルベンゼン、炭素数4~12のアルカジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,6-ヘプタジエン及び1,7-オクタジエン等)、(ジ)シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン、リモネン、エチレンジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキサイドグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、国際公開第01/009242号に記載の、Mnが500以上の不飽和カルボン酸とグリコールとのエステル及び不飽和アルコールとカルボン酸のエステルなどが挙げられる。
【0053】
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(j)の重量割合は、HTHS粘度及び低温粘度の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、0~15重量%が好ましく、より好ましくは1~10重量%である。
【0054】
共重合体(A)は、単量体(a)、(b)及び(e)~(j)に加え、以下の単量体(k)~(n)及び後述する単量体(o)の1種以上を構成単量体として含有してもよい。
【0055】
ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン類(k)(単量体(k)ともいう):
炭素数2~12の飽和脂肪酸のビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル及びオクタン酸ビニル等)、炭素数1~12のアルキル、アリール又はアルコキシアルキルビニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ビニル-2-メトキシエチルエーテル及びビニル-2-ブトキシエチルエーテル等)及び炭素数1~8のアルキル又はアリールビニルケトン(メチルビニルケトン、エチルビニルケトン及びフェニルビニルケトン等)等が挙げられる。
【0056】
エポキシ基含有単量体(l)(単量体(l)ともいう):
グリシジル(メタ)アクリレート及びグリシジル(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【0057】
ハロゲン元素含有単量体(m)(単量体(m)ともいう):
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリル及びハロゲン化スチレン(ジクロロスチレン等)等が挙げられる。
【0058】
不飽和ポリカルボン酸のエステル(n)(単量体(n)ともいう):
不飽和ポリカルボン酸のアルキル、シクロアルキル又はアラルキルエステル[不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸及びイタコン酸等)の炭素数1~8のアルキルジエステル(ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルマレエート及びジオクチルマレエート)]等が挙げられる。
【0059】
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(k)の重量割合は、粘度指数向上効果及び低温粘度の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、0~10重量%が好ましく、より好ましくは1~5重量%である。
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(l)の重量割合は、粘度指数向上効果及び低温粘度の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、0~10重量%が好ましく、さらに好ましくは1~5重量%である。
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(m)の重量割合は、粘度指数向上効果及び低温粘度の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、0~10重量%が好ましく、より好ましくは1~5重量%である。
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(n)の重量割合は、粘度指数向上効果及び低温粘度の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、0~10重量%が好ましく、より好ましくは1~5重量%である。
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(o)の重量割合は、粘度指数向上効果及び低温粘度の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、0~50重量%が好ましく、より好ましくは1~30重量%である。
【0060】
共重合体(A)は、後述する単量体(c)又は単量体(d)のいずれか一方を構成単量体として含有しても良い。単量体(c)及び単量体(d)として好ましいものは、後述する共重合体(B)における単量体(c)及び単量体(d)と同様である。
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(c)の重量割合は、粘度指数向上効果及び低温粘度の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、0~30重量%が好ましく、より好ましくは1~20重量%である。
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(d)の重量割合は、粘度指数向上効果及び低温粘度の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、0~30重量%が好ましく、より好ましくは1~20重量%である。
【0061】
共重合体(A)のMwは、好ましくは150,000~1,200,000であり、より好ましくは200,000~1,000,000、さらに好ましくは300,000~800,000、特に好ましくは350,000~700,000である。共重合体(A)のMwが150,000以上であると粘度温度特性の向上効果や粘度指数向上効果が良好である傾向がある。また粘度指数向上剤組成物の添加量が少なくても粘度温度特性の向上効果、粘度指数向上効果等が得られることから、コスト面でも有利である。共重合体(A)のMwが1,200,000以下であると、共重合体(A)の基油への溶解性が高く、また、粘度指数向上剤組成物及びこれを含有する潤滑油組成物の剪断安定性が良好である傾向がある。
【0062】
共重合体(A)のMnは、好ましくは10,000以上であり、より好ましくは30,000以上であり、さらに好ましくは50,000以上であり、特に好ましくは100,000以上である。また、共重合体(A)のMnは、好ましくは400,000以下であり、より好ましくは350,000以下であり、さらに好ましくは300,000以下であり、特に好ましくは250,000以下である。一態様において、共重合体(A)のMnは、10,000~400,000が好ましく、30,000~350,000がより好ましく、50,000~300,000がさらに好ましく、100,000~250,000が特に好ましい。
Mnが10,000以上であると粘度温度特性の向上効果や粘度指数向上効果が良好である傾向がある。また粘度指数向上剤組成物の添加量が少なくても粘度温度特性の向上効果、粘度指数向上効果等が得られることから、コスト面でも有利である。Mnが400,000以下であると共重合体(A)の基油への溶解性が高く、また、粘度指数向上剤組成物及びこれを含有する潤滑油組成物の剪断安定性が良好である傾向がある。
【0063】
共重合体(A)のMw/Mnは、剪断安定性の観点から、1.0~5.0が好ましく、より好ましくは1.5~4.5である。
なお、共重合体(A)のMw、Mn及びMw/Mnは、単量体(a)のMw及びMnの測定条件と同様の測定条件で測定することができる。
【0064】
共重合体(A)は、公知の製造方法によって得ることができ、具体的には前記の単量体を溶剤中で重合触媒存在下に溶液重合することにより得る方法が挙げられる。単量体(a)~(o)はいずれも、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
溶剤としては、トルエン、キシレン、炭素数9~10のアルキルベンゼン、メチルエチルケトン、鉱物油、合成油等及びこれらの混合物が挙げられる。
重合触媒としては、アゾ系触媒(2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等)、過酸化物系触媒(ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイド及びラウリルパーオキサイド等)及びレドックス系触媒(ベンゾイルパーオキサイドと3級アミンの混合物等)が挙げられる。更に分子量調整のために必要により、公知の連鎖移動剤(炭素数2~20のアルキルメルカプタン等)を使用することもできる。
重合温度は、好ましくは25~140℃であり、より好ましくは50~120℃である。また、上記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合又は懸濁重合により共重合体(A)を得ることができる。
共重合体(A)の重合形態としては、ランダム付加重合体又は交互共重合体のいずれでもよく、また、グラフト共重合体又はブロック共重合体のいずれでもよい。
【0065】
共重合体(A)の溶解パラメータ(SP値)は、基油への溶解性の観点から、7.0~10.0(cal/cm3)1/2が好ましく、より好ましくは9.0~9.5(cal/cm3)1/2である。
共重合体のSP値は、用いる単量体の種類及び量によって調整することができる。具体的には、SP値の高い単量体を多く用いることによってSP値は大きくなり、SP値の低い単量体を多く用いることによって小さくすることができる。
【0066】
<共重合体(B)>
本発明の粘度指数向上剤組成物(C)は、炭素数12~15の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c)(単量体(c)ともいう)及び炭素数16~20の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d)(単量体(d)ともいう)を構成単量体として含む共重合体(B)を含有する。
共重合体(B)は、低温粘度の観点から、構成単量体として前記単量体(a)の含有量が、共重合体(B)の重量を基準として、1重量%未満であることが好ましく、より好ましくは0重量%(単量体(a)を構成単量体として含まないこと)である。
【0067】
単量体(c)及び単量体(d)において、分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル{炭素数12~15の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c1)(以下、単量体(c1)ともいう)及び炭素数16~20の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d1)(以下、単量体(d1)ともいう)}としては、下記一般式(3)で表されるものが含まれる。
【0068】
【0069】
単量体(c1)が一般式(3)で表される単量体の場合、一般式(3)中、R6は水素原子又はメチル基;-X3-は-O-で表される基;R7Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基;R8及びR9はそれぞれ独立に炭素数1~12の直鎖アルキル基であり、R8及びR9の合計炭素数は10~13;rは0~20の整数であり、rが2以上の場合のR7Oは同一でも異なっていてもよい。
単量体(d1)が一般式(3)で表される単量体の場合、一般式(3)中、R6は水素原子又はメチル基;-X3-は-O-で表される基;R7Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基;R8及びR9はそれぞれ独立に炭素数1~17の直鎖アルキル基であり、R8及びR9の合計炭素数は14~18;rは0~20の整数であり、rが2以上の場合のR7Oは同一でも異なっていてもよい。
【0070】
単量体(c1)及び単量体(d1)において、一般式(3)におけるR6は、水素原子又はメチル基である。これらのうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、メチル基である。
【0071】
単量体(c1)及び単量体(d1)において、一般式(3)における-X3-は、-O-で表される基である。-X3-が、-O-で表される基であると、粘度指数向上効果の観点から好ましい。
【0072】
単量体(c1)及び単量体(d1)において、一般式(3)におけるR7は、炭素数2~4のアルキレン基である。炭素数2~4のアルキレン基としては、エチレン基、イソプロピレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、イソブチレン基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基が挙げられる。
【0073】
単量体(c1)及び単量体(d1)において、一般式(3)におけるrは0~20の整数であり、粘度指数向上効果の観点から、好ましくは0~5の整数であり、より好ましくは0~2の整数である。
rが2以上の場合は、R7Oは同一でも異なっていてもよく、(R7O)r部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
【0074】
単量体(c1)において、一般式(3)におけるR8及びR9は、それぞれ独立に、炭素数1~12の直鎖アルキル基である。炭素数1~12の直鎖アルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘプチル基、n-ヘキシル基、n-ペンチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基及びn-ドデシル基等が挙げられる。
単量体(d1)において、一般式(3)におけるR8及びR9は、それぞれ独立に、炭素数1~17の直鎖アルキル基である。炭素数1~17の直鎖アルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘプチル基、n-ヘキシル基、n-ペンチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基及びn-テトラデシル基等が挙げられる。
【0075】
単量体(c1)において、一般式(3)におけるR8及びR9としては、炭素数1~12の直鎖アルキル基のうち、粘度指数の観点から好ましいのは、炭素数1~10の直鎖アルキル基である。
単量体(d1)において、一般式(3)におけるR8及びR9としては、炭素数1~17の直鎖アルキル基のうち、粘度指数の観点から好ましいのは、炭素数4~10の直鎖アルキル基である。
【0076】
炭素数12~15の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c)として具体的には、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-トリデシル、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル、(メタ)アクリル酸n-ペンタデシル、(メタ)アクリル酸2-メチルウンデシル、(メタ)アクリル酸2-メチルドデシル、(メタ)アクリル酸2-メチルトリデシル、(メタ)アクリル酸2-メチルテトラデシル、(メタ)アクリル酸2-ブチルオクチル、(メタ)アクリル酸2-ヘキシルヘプチル、(メタ)アクリル酸2-ブチルノニル及びエチレングリコールモノ-2-ブチルデシルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエステル等が挙げられる。
これらのうち、低温粘度の観点から、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-トリデシル、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル、(メタ)アクリル酸n-ペンタデシル、(メタ)アクリル酸2-メチルウンデシル、(メタ)アクリル酸2-メチルドデシル、(メタ)アクリル酸2-メチルトリデシル及び(メタ)アクリル酸2-メチルテトラデシルが好ましい。
【0077】
炭素数16~20の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d)として具体的には、(メタ)アクリル酸n-ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル、(メタ)アクリル酸n-ノナデシル、(メタ)アクリル酸n-イコシル、(メタ)アクリル酸2-オクチルデシル、(メタ)アクリル酸2-オクチルドデシル、エチレングリコールモノ-2-オクチルドデシルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエステル及びN-2-オクチルデシル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
これらのうち、低温粘度の観点から、(メタ)アクリル酸n-ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプタデシル及び(メタ)アクリル酸n-オクタデシルが好ましい。
【0078】
共重合体(B)において、共重合体(B)の構成単量体のうち炭素数12~15の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c)の重量割合は、共重合体(B)の重量に基づいて、低温粘度の観点から、50~98重量%が好ましく、より好ましくは60~85重量%である。
共重合体(B)において、共重合体(B)の構成単量体のうち炭素数16~20の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d)の重量割合は、共重合体(B)の重量に基づいて、低温粘度の観点から、2~50重量%が好ましく、より好ましくは15~40重量%である。
【0079】
本発明における共重合体(B)は単量体(c)及び単量体(d)に加え、更に上記単量体(e)~(n)の1種以上を構成単量体としてもよい。更に、炭素数21~36の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(o)(単量体(o)ともいう)を構成単量体として含有してもよい。
単量体(o)において、炭素数21~36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、上記一般式(3)において、R8及びR9がそれぞれ独立に炭素数4~24の直鎖アルキル基でありR8及びR9の合計炭素数は19~34であるものが含まれる。
単量体(o)が一般式(3)で表される場合、一般式(3)におけるR8及びR9は、それぞれ独立に、炭素数5~14の直鎖アルキル基であることが好ましい。炭素数5~14の直鎖アルキル基として、具体的には、n-ヘプチル基、n-ヘキシル基、n-ペンチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基、n-エイコシル基及びn-テトラコシル基等が挙げられる。
【0080】
炭素数21~36の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(o)として具体的には、(メタ)アクリル酸n-テトラコシル、(メタ)アクリル酸n-トリアコンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキサトリアコンチル、(メタ)アクリル酸2-デシルテトラデシル、(メタ)アクリル酸2-ドデシルヘキサデシル、(メタ)アクリル酸2-テトラデシルオクタデシル、(メタ)アクリル酸2-ドデシルペンタデシル、(メタ)アクリル酸2-テトラデシルヘプタデシル、(メタ)アクリル酸2-ヘキサデシルヘプタデシル、(メタ)アクリル酸2-ヘプタデシルイコシル、(メタ)アクリル酸2-ヘキサデシルドコシル、(メタ)アクリル酸2-エイコシルドコシル、(メタ)アクリル酸2-テトラコシルヘキサコシル等が挙げられる。中でも、メタクリル酸2-デシルテトラデシル(メタクリル酸2-n-デシルテトラデシル)、メタクリル酸2-ドデシルヘキサデシル(メタクリル酸2-n-ドデシルヘキサデシル)等が好ましい。
【0081】
共重合体(B)において、(B)の構成単量体のうち単量体(e)の重量割合は、低温粘度及び基油への溶解性の観点から、共重合体(B)の重量に基づいて、0~20重量%が好ましく、より好ましくは1~15重量%である。
共重合体(B)において、(B)の構成単量体のうち単量体(f)の重量割合は、低温粘度及び基油への溶解性の観点から、共重合体(B)の重量に基づいて、0~15重量%が好ましく、より好ましくは1~10重量%である。
共重合体(B)において、(B)の構成単量体のうち単量体(g)の重量割合は、低温粘度及び基油への溶解性の観点から、共重合体(B)の重量に基づいて、0~15重量%が好ましく、より好ましくは1~10重量%である。
共重合体(B)において、(B)の構成単量体のうち単量体(h)の重量割合は、低温粘度及び基油への溶解性の観点から、共重合体(B)の重量に基づいて、0~15重量%が好ましく、より好ましくは1~10重量%である。
共重合体(B)において、(B)の構成単量体のうち単量体(i)の重量割合は、低温粘度及び基油への溶解性の観点から、共重合体(B)の重量に基づいて、0~15重量%が好ましく、より好ましくは1~10重量%である。
共重合体(B)において、(B)の構成単量体のうち単量体(j)の重量割合は、低温粘度及び基油への溶解性の観点から、共重合体(B)の重量に基づいて、0~15重量%が好ましく、より好ましくは1~10重量%である。
共重合体(B)において、(B)の構成単量体のうち単量体(k)の重量割合は、低温粘度及び基油への溶解性の観点から、共重合体(B)の重量に基づいて、0~15重量%が好ましく、より好ましくは1~10重量%である。
共重合体(B)において、(B)の構成単量体のうち単量体(l)の重量割合は、低温粘度及び基油への溶解性の観点から、共重合体(B)の重量に基づいて、0~15重量%が好ましく、より好ましくは1~10重量%である。
共重合体(B)において、(B)の構成単量体のうち単量体(m)の重量割合は、低温粘度及び基油への溶解性の観点から、共重合体(B)の重量に基づいて、0~15重量%が好ましく、より好ましくは1~10重量%である。
共重合体(B)において、(B)の構成単量体のうち単量体(n)の重量割合は、低温粘度及び基油への溶解性の観点から、共重合体(B)の重量に基づいて、0~15重量%が好ましく、より好ましくは1~10重量%である。
共重合体(B)において、(B)の構成単量体のうち単量体(o)の重量割合は、低温粘度の観点から、共重合体(B)の重量に基づいて、0~30重量%が好ましく、より好ましくは1~20重量%である。
【0082】
共重合体(B)のMwは、好ましくは20,000~100,000であり、より好ましくは30,000~90,000、さらに好ましくは40,000~80,000である。共重合体(B)のMwが20,000以上であると粘度温度特性の向上効果や粘度指数向上効果が良好である傾向がある。また粘度指数向上剤組成物の添加量が少なくても粘度温度特性の向上効果、粘度指数向上効果等が得られることから、コスト面でも有利である。共重合体(B)のMwが100,000以下であると粘度指数向上剤組成物及びこれを含有する潤滑油組成物の剪断安定性が良好である傾向がある。
【0083】
共重合体(B)のMnは、好ましくは2,000以上であり、より好ましくは4,000以上であり、さらに好ましくは8,000以上である。また、共重合体(B)のMnは、好ましくは70,000以下であり、より好ましくは50,000以下であり、さらに好ましくは30,000以下である。
共重合体(B)のMnが2,000以上であると粘度温度特性の向上効果や粘度指数向上効果が良好である傾向がある。また粘度指数向上剤組成物の添加量が少なくても粘度温度特性の向上効果、粘度指数向上効果等が得られることから、コスト面でも有利である。共重合体(B)のMnが70,000以下であると粘度指数向上剤組成物及びこれを含有する潤滑油組成物の剪断安定性が良好である傾向がある。一態様において、共重合体(B)のMnは、好ましくは2,000~70,000、より好ましくは4,000~50,000、さらに好ましくは8,000~30,000である。
【0084】
共重合体(B)のMw/Mnは、低温粘度の観点から、1.0~4.0が好ましく、より好ましくは1.5~3.0である。
なお、共重合体(B)のMw、Mn及びMw/Mnは、単量体(a)のMw及びMnの測定条件と同様の測定条件で測定することができる。
【0085】
共重合体(B)の溶解パラメータ(SP値)は、基油への溶解性の観点から、7.0~10.0(cal/cm3)1/2が好ましく、より好ましくは8.5~9.0(cal/cm3)1/2である。
【0086】
本発明の粘度指数向上剤組成物(C)を構成する前記共重合体(A)のMwと前記共重合体(B)のMwとの比率{(A)/(B)}は、2~55である。HTHS粘度、粘度指数向上効果、剪断安定性及び低温粘度の観点から、共重合体(A)のMwと前記共重合体(B)のMwとの比率{(A)/(B)}は、5~50が好ましく、より好ましくは6~35である。
【0087】
本発明の粘度指数向上剤組成物(C)を構成する前記共重合体(A)と前記共重合体(B)との重量比率(A/B)は、5~100であり、HTHS粘度及び粘度指数向上効果、低温粘度の観点から、10~80が好ましく、より好ましくは12~50である。
上記重量比率(A/B)が5以上であることで、HTHS粘度及び粘度指数が良好となる。重量比率(A/B)が100以下であることで、低温粘度が良好となる。
【0088】
本発明の粘度指数向上剤組成物中の共重合体(A)の含有量は、HTHS粘度及び粘度指数向上効果、低温粘度の観点から、粘度指数向上剤組成物の重量に基づいて、15~40重量%が好ましい。
本発明の粘度指数向上剤組成物中の共重合体(B)の含有量は、HTHS粘度及び粘度指数向上効果、低温粘度の観点から、粘度指数向上剤組成物の重量に基づいて0.1~8.0重量%が好ましく、0.15~8.0重量%がより好ましい。
【0089】
本発明の粘度指数向上剤組成物(C)は、共重合体(A)、共重合体(B)及び基油を含有してなる。基油は、API分類のグループI~IVの基油、GTL基油及び合成系潤滑油基油(エステル系合成基油)からなる群から選ばれる1種以上の基油が挙げられる。これらのうち好ましいのはグループIIIの鉱物油およびGTL基油である。基油の100℃における動粘度(JIS K 2283で測定したもの)は、粘度指数および低温流動性の観点から好ましくは1~15mm2/sであり、より好ましくは2~5mm2/sである。
【0090】
基油の粘度指数(JIS K 2283で測定したもの)は、潤滑油組成物の粘度指数および低温流動性の観点から、好ましくは100以上である。
【0091】
基油の曇り点(JIS K 2269で測定したもの)は、好ましくは-5℃以下であり、より好ましくは-15℃以下である。基油の曇り点がこの範囲内であると潤滑油組成物の低温粘度が良好となる傾向がある。
本発明の粘度指数向上剤組成物(C)の製造方法は特に限定されず、例えば、共重合体(A)、共重合体(B)及び基油を混合することによって製造することができる。
【0092】
本発明の潤滑油組成物は、本発明の粘度指数向上剤組成物(C)と、清浄剤、分散剤、酸化防止剤、油性向上剤、流動点降下剤、摩擦摩耗調整剤、極圧剤、消泡剤、抗乳化剤、金属不活性剤及び腐食防止剤からなる群から選ばれる1種以上の添加剤とを含有してなる。
本発明の潤滑油組成物は、HTHS粘度及び粘度指数向上効果、低温粘度の観点から、共重合体(A)を潤滑油組成物合計の重量に基づいて0.5~7.0重量%となるように含有することが好ましい。
本発明の潤滑油組成物は、HTHS粘度及び粘度指数向上効果、低温粘度の観点から、共重合体(B)を潤滑油組成物合計の重量に基づいて0.01~0.7重量%となるように含有することが好ましい。
【0093】
本発明の潤滑油組成物は、添加剤を1種以上含有する。添加剤としては、以下のものが挙げられる。
(1)清浄剤:
塩基性、過塩基性又は中性の金属塩[スルフォネート(石油スルフォネート、アルキルベンゼンスルフォネート及びアルキルナフタレンスルフォネート等)の過塩基性又はアルカリ土類金属塩等]、サリシレート類、フェネート類、ナフテネート類、カーボネート類、フォスフォネート類及びこれらの混合物;
(2)分散剤:
コハク酸イミド類(ビス-又はモノ-ポリブテニルコハク酸イミド類)、マンニッヒ縮合物及びボレート類等;
(3)酸化防止剤:
ヒンダードフェノール類及び芳香族2級アミン類等;
(4)油性向上剤:
長鎖脂肪酸及びそれらのエステル(オレイン酸及びオレイン酸エステル等)、長鎖アミン及びそれらのアミド(オレイルアミン及びオレイルアミド等)等;
(5)流動点降下剤
ポリアルキルメタクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等;
(6)摩擦摩耗調整剤:
モリブデン系及び亜鉛系化合物(モリブデンジチオフォスフェート、モリブデンジチオカーバメート及びジンクジアルキルジチオフォスフェート等)等;
(7)極圧剤:
硫黄系化合物(モノ又はジスルフィド、スルフォキシド及び硫黄フォスファイド化合物)、フォスファイド化合物及び塩素系化合物(塩素化パラフィン等)等;
(8)消泡剤:
シリコン油、金属石けん、脂肪酸エステル及びフォスフェート化合物等;
(9)抗乳化剤:
4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩等)、硫酸化油及びフォスフェート(ポリオキシエチレン含有非イオン性界面活性剤のフォスフェート等)、炭化水素系溶剤(トルエン、キシレン、エチルベンゼン)等;
(10)金属不活性剤
窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾール等)、窒素原子含有キレート化合物(N,N’-ジサリチデン-1,2-ジアミノプロパン等)、窒素・硫黄原子含有化合物(2-(n-ドデシルチオ)ベンズイミダゾール等)等;
(11)腐食防止剤:
窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾール及び1,3,4-チオジアゾリル-2,5-ビスジアルキルジチオカーバメート等)等。
【0094】
これらの添加剤は1種だけ添加してもよいし、必要に応じて2つ以上の添加剤を添加することもできる。またこれらの添加剤を配合したものを性能添加剤、またはパッケージ添加剤と呼ぶこともあり、それを添加してもよい。
これらの添加剤のそれぞれの含有量は潤滑油組成物全量を基準として0.1~15重量%であることが好ましい。また各添加剤を合計した含有量は潤滑油組成物全量を基準として0.1~30重量%が好ましく、より好ましくは0.3~20重量%である。
【0095】
本発明の潤滑油組成物は、ギヤ油(デファレンシャル油及び工業用ギヤ油等)、MTF、変速機油[ATF、DCTF及びbelt-CVTF等]、トラクション油(トロイダル-CVTF等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油及び工業用作動油等)及びエンジン油(ガソリン用及びディーゼル用)などに好適に用いられる
【実施例】
【0096】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0097】
炭化水素重合体の構成単位中のイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量のモル%は、重合体を13C-NMRにより分析し、上記の方法で上記数式(1)を用いて求めた。
炭化水素重合体中の1,2-付加体/1,4-付加体のモル比(ブタジエン由来の構造におけるモル比)は、重合体を13C-NMRにより分析し、上記数式(1)に使用した積分値Bの値及び積分値Cの値から、下記数式(2)により求めた。
1,2-付加体/1,4-付加体のモル比={100×積分値B×2/積分値C}/{100-(100×積分値B×2/積分値C)} (2)
【0098】
水酸基価はJIS K 0070で測定した。酸価はJIS K 2501で測定した。
結晶化温度は、JIS K 7121で測定した。
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、GPCにより上記の方法で測定した。
【0099】
基油の粘度指数は、JIS K 2283の方法で測定した。
基油の動粘度(100℃)は、JIS K 2283で測定した。
【0100】
<製造例1>
温度調節装置及び撹拌機を備えたSUS製耐圧反応容器に、脱気及び脱水したヘキサンを400重量部、テトラヒドロフラン1重量部、1,3-ブタジエン75重量部、n-ブチルリチウム2重量部を仕込んだ後、重合温度を70℃とし重合させた。
重合率がほぼ100%となった後、エチレンオキサイド2重量部を加え、50℃で3時間反応させた。反応を停止させるために水50重量部と1N-塩酸水溶液25重量部を加えて80℃で1時間撹拌した。反応溶液の有機相を分液ロートにて回収し、70℃に昇温後、10~20Torrの減圧下で溶媒を2時間かけて除去した。
得られた片末端水酸基含有のポリブタジエンを、温度調節装置、攪拌機、水素導入管を備えた反応容器に移し入れ、テトラヒドロフラン150重量部を加えて均一に溶解させた。そこにパラジウム炭素10重量部とテトラヒドロフラン50重量部をあらかじめ混合した懸濁液を注ぎ入れた後、水素導入管より30mL/分の流量で液中に水素を供給しながら、室温で8時間反応させた。その後ろ過にてパラジウム炭素を取り除き、得られたろ液を70℃に昇温して10~20Torrの減圧下でテトラヒドロフランを除去して水素化ポリブタジエン(炭化水素重合体)の片末端水酸基含有重合体(Y1-1)(イソブチレン基及び1,2-ブチレン基の合計量;45モル%、1,2-付加体/1,4-付加体(モル比);45/55、水酸基価;8.0mgKOH/g、結晶化温度;-60℃以下)を得た。水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(Y1-1)245重量部、メタクリル酸245重量部、スルホン酸基担持無機多孔体(酸価45mgKOH/g、粒径240μm)98重量部を投入し、120℃にてエステル化を行った。次いで、スルホン酸基担持無機多孔体をろ過にて取り除き、反応液を減圧下(0.027~0.040MPa)にて余分なメタクリル酸を除去し、単量体(a-1)を得た。得られた単量体(a-1)のMnは7,000であった。上記のイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量(45モル%)は、重合体(Y1-1)中の水素化ポリブタジエン(炭化水素重合体)の構成単位の合計モル数(100モル%)に基づく、イソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計モル数の比率(モル%)である。
【0101】
<製造例2>
温度調節装置及び撹拌機を備えたSUS製耐圧反応容器に、脱気及び脱水したヘキサンを400重量部、テトラヒドロフラン1重量部、n-ブチルリチウム0.4重量部を仕込んだ後、-40℃まで冷却した。ここに-40℃で液化させた1,3-ブタジエン75重量部を加え、重合温度を-40℃とし重合させた。
重合率がほぼ100%となった後、エチレンオキサイド2重量部を加え、50℃まで昇温し、3時間反応させた。反応を停止させるために水50重量部と1N-塩酸水溶液25重量部を加えて80℃で1時間撹拌した。反応溶液の有機相を分液ロートにて回収し、70℃に昇温後、10~20Torrの減圧下で溶媒を2時間かけて除去した。
得られた片末端水酸基含有のポリブタジエンを、温度調節装置、攪拌機、水素導入管を備えた反応容器に移し入れ、テトラヒドロフラン150重量部を加えて均一に溶解させた。そこにパラジウム炭素10重量部とテトラヒドロフラン50重量部をあらかじめ混合した懸濁液を注ぎ入れた後、水素導入管より30mL/分の流量で液中に水素を供給しながら、室温で8時間反応させた。その後ろ過にてパラジウム炭素を取り除き、得られたろ液を70℃に昇温して10~20Torrの減圧下でテトラヒドロフランを除去して水素化ポリブタジエン(炭化水素重合体)の片末端水酸基含有重合体(Y1-2)(イソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量;65モル%、1,2-付加体/1,4-付加体(モル比);65/35、水酸基価;8.6mgKOH/g、結晶化温度;-60℃以下)を得た。上記のイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量(65モル%)は、重合体(Y1-2)中の水素化ポリブタジエン(炭化水素重合体)の構成単位の合計モル数(100モル%)に基づく、イソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計モル数の比率(モル%)である。
水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(Y1-2)245重量部、メタクリル酸245重量部、スルホン酸基担持無機多孔体(酸価45mgKOH/g、粒径240μm)98重量部を投入し、120℃にてエステル化を行った。次いで、スルホン酸基担持無機多孔体をろ過にて取り除き、反応液を減圧下(0.027~0.040MPa)にて余分なメタクリル酸を除去し、単量体(a-2)を得た。得られた単量体の(a-2)のMnは6,500であった。
【0102】
<製造例3>
温度調節装置、バキューム撹拌翼、窒素流入口及び流出口を備えた反応容器に、末端不飽和基含有ポリブテン[商品名;「日油ポリブテン10N」、日油(株)製、Mn:1,000]280重量部、テトラヒドロフラン-ボロン・テトラヒドロフラン1mol/L溶液[富士フイルム和光純薬(株)製]400重量部、テトラヒドロフラン400重量部を投入し、25℃で4時間ヒドロホウ素化を行った。次いで水50重量部、3N-NaOH水溶液50容量部、30重量%過酸化水素50容量部を投入して酸化した。分液ロートにて上澄み液を回収し、50℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027~0.040MPa)テトラヒドロフランを2時間かけて除去し、水酸基含有重合体(Y2-1)(イソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量;100モル%、水酸基価;51mgKOH/g、結晶化温度;-60℃以下)を得た。上記のイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量(100モル%)は、水酸基含有重合体(Y2-1)の構成単位の合計モル数(100モル%)に基づく、イソブチレン基と1,2-ブチレン基の合計モル数の比率(モル%)である。
水酸基含有重合体(Y2-1)245重量部、メタクリル酸245重量部、スルホン酸基担持無機多孔体(酸価45mgKOH/g、粒径240μm)98重量部を投入し、120℃にてエステル化を行った。次いで、スルホン酸基担持無機多孔体をろ過にて取り除き、反応液を減圧下(0.027~0.040MPa)にて余分なメタクリル酸を除去し、単量体(a-3)を得た。得られた単量体(a-3)のMnは1060であった。
【0103】
<製造例4>
温度調節装置及び撹拌機を備えたSUS製耐圧反応容器に、末端不飽和基含有ポリブテン[商品名;「日油ポリブテン200N」、日油(株)製、Mn:2,650]530重量部及び無水マレイン酸[富士フイルム和光純薬(株)製]25重量部を投入し、撹拌下220℃に昇温後、同温度で4時間エン反応を行った。次いで25℃まで冷却し、2-アミノエタノール20重量部を投入して、撹拌下130℃に昇温後、同温度で4時間イミド化反応を行った。120~130℃で減圧下(0.027~0.040MPa)未反応の無水マレイン酸及び2-アミノアルコールを2時間かけて除去し、水酸基含有重合体(Y3-1)を得た。水酸基含有重合体(Y3-1)は、炭化水素重合体部分の構成単位の合計モル数に基づく、イソブチレン及び1,2-ブチレンの合計量が100モル%であった。また、水酸基含有重合体(Y3-1)は、Mnが3,000、水酸基価が18.7mgKOH/g、結晶化温度が-60℃以下であった。
水酸基含有重合体(Y3-1)245重量部、メタクリル酸245重量部、スルホン酸基担持無機多孔体(酸価45mgKOH/g、粒径240μm)98重量部を投入し、120℃にてエステル化を行った。次いで、スルホン酸基担持無機多孔体をろ過にて取り除き、反応液を減圧下(0.027~0.040MPa)にて余分なメタクリル酸を除去し、単量体(a-4)を得た。得られた単量体(a-4)のMnは2710であった。上記のイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量は、水酸基含有重合体(Y3-1)の2-アミノエタノール由来の構成単位を除いた炭化水素重合体部分の構成単位の合計モル数(100モル%)に基づく、イソブチレン基と1,2-ブチレン基の合計モル数の割合(モル%)である。
【0104】
<製造例5~24:共重合体(A)の製造>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、基油A(SP値:8.3(cal/cm3)1/2、100℃の動粘度:4.2mm2/s、粘度指数:128)375重量部、表1に記載の単量体配合物125重量部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)を表1に記載の量投入し、窒素置換(気相酸素濃度100ppm)を行った後、密閉下、撹拌しながら76℃に昇温し、同温度で4時間重合反応を行った。120~130℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027~0.040MPa)未反応の単量体を2時間かけて除去し、基油中に25重量%の共重合体(A1)~(A20)を含む共重合体組成物(1)~(20)をそれぞれ得た。得られた共重合体組成物(1)~(20)中の共重合体のSP値を上記の方法で算出し、共重合体のMw及びMw/Mnを上記の方法で測定した。また、共重合体(A)の基油溶解性を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0105】
<製造例25~29:共重合体(B)の製造>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、窒素吹き込み管及び減圧装置を備えた反応容器に、基油A(SP値:8.3(cal/cm3)1/2、100℃の動粘度:4.2mm2/s、粘度指数:128)75重量部を投入し、別のガラス製ビーカーに、表2に記載の単量体配合物325重量部、連鎖移動剤としてのドデシルメルカプタン、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)を表2に記載の量投入し、20℃で撹拌、混合して単量体溶液を調製し、滴下ロートに投入した。
反応容器の気相部の窒素置換(気相酸素濃度:100ppm以下)を行った後、密閉下系内温度を70~85℃に保ちながら、2時間かけて単量体溶液を滴下し、滴下終了から2時間、85℃で熟成した後、120~130℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027~0.040MPa)未反応の単量体を2時間かけて除去し、基油中に65重量%の共重合体(B1)~(B5)を含有する共重合体組成物(21)~(25)をそれぞれ得た。得られた共重合体組成物(21)~(25)中の共重合体(B)のSP値を上記の方法で算出し、共重合体(B)のMw及びMw/Mnを上記の方法で測定した。また、共重合体(B)の基油溶解性を以下の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0106】
<共重合体(A)及び(B)の基油溶解性の評価方法>
共重合体組成物(1)~(25)の外観を目視で観察し、以下の評価基準で基油溶解性を評価した。
[評価基準]
○:外観が均一であり、共重合体の不溶解物がない
×:外観が不均一であり、共重合体の不溶解物が認められる
【0107】
【0108】
【0109】
表1及び表2に記載の単量体(a)~(h)及び(o)は、以下に記載した通りである。
(a-1):製造例1で得た水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(Y1-1)のメタクリル酸エステル化物
(a-2):製造例2で得た水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(Y1-2)のメタクリル酸エステル化物
(a-3):製造例3で得た水酸基含有重合体(Y2-1)のメタクリル酸エステル化物
(a-4):製造例4で得た水酸基含有重合体(Y3-1)のメタクリル酸エステル化物
(b-1):エトキシエチルメタクリレート
(b-2):ブトキシエチルメタクリレート
(c-1):メタクリル酸n-ドデシル
(c-2):メタクリル酸2-メチルウンデシル
(c-3):メタクリル酸n-トリデシル
(c-4):メタクリル酸2-メチルドデシル
(c-5):メタクリル酸n-テトラデシル
(c-6):メタクリル酸2-メチルトリデシル
(c-7):メタクリル酸n-ペンタデシル
(c-8):メタクリル酸2-メチルテトラデシル
(d-1):メタクリル酸n-ヘキサデシル
(d-2):メタクリル酸n-オクタデシル
(e-1):メタクリル酸メチル
(e-2):メタクリル酸ブチル
(f-1):N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート
(g-1):2-ヒドロキシエチルメタクリレート
(h-1):メタクリロイロキシエチルホスフェート
(o-1):メタクリル酸2-n-デシルテトラデシル
(o-2):メタクリル酸2-n-ドデシルヘキサデシル
【0110】
以下の実施例及び比較例において、「部」は特に断らない場合は「重量部」を意味する。
【0111】
<実施例1~22、比較例1~5:0W-16評価(SAE J300 エンジン油規格)>
(1)粘度指数向上剤組成物の製造
撹拌装置を備えたステンレス製容器に、表3~4の記載に従って、共重合体組成物(1)~(25)及び基油A(SP値:8.3(cal/cm3)1/2、100℃の動粘度:4.2mm2/s、粘度指数:128)を配合し、粘度指数向上剤組成物(1)~(22)(実施例1~22)及び粘度指数向上剤組成物(1’)~(5’)(比較例1~5)を得た。なお、表3~4中、「粘度指数向上剤組成物中の配合量」に記載の共重合体(A)及び(B)の配合量は、基油で希釈された共重合体組成物の量ではなく、粘度指数向上剤組成物中に含まれる共重合体(A)又は(B)の量で表した。また、共重合体(A16)は基油溶解性が低いことから使用しなかった。
(2)潤滑油組成物の製造
基油A(SP値:8.3(cal/cm3)1/2、100℃の動粘度:4.2mm2/s、粘度指数:128)90部とパッケージ添加剤(Infineum P5741)10部を投入し、粘度指数向上剤組成物を添加した後の潤滑油組成物の150℃のHTHS粘度が2.30±0.05(mm2/s)になるように粘度指数向上剤組成物(1)~(22)又は(1’)~(5’)を添加し、粘度指数向上剤組成物を含有する潤滑油組成物(V1)~(V22)及び(W1)~(W5)を得た。潤滑油組成物の150℃のHTHS粘度は、ASTM D 4683の方法により測定した、潤滑油組成物中の共重合体(A)及び(B)の合計含有量(重量%)は表3~4に記載の通りである。
潤滑油組成物(V1)~(V22)及び(W1)~(W5)のHTHS粘度(100℃)、粘度指数、剪断安定性及び低温粘度(-40℃)を以下の方法で測定した。結果を表3~4に示す。
【0112】
<潤滑油組成物のHTHS粘度の測定方法>
ASTM D 4683の方法により、100℃で測定した。HTHS粘度の数値が小さいほど100℃でのHTHS粘度低下効果が優れることを意味する。なお、この評価では、HTHS粘度低下効果は、HTHS粘度(100℃)が4.55mPa・sを超えると悪く(×)、4.55mPa・s以下であると良好(○)であり、4.45mPa・s以下であるとさらに良好(◎)であり、4.35mPa・s以下であると特に良好(◎◎)であると評価した。
【0113】
<潤滑油組成物の粘度指数の計算方法>
JIS K 2283の方法で40℃と100℃の動粘度を測定し、JIS K 2283の方法で粘度指数を計算した。粘度指数の数値が大きいほど粘度指数向上効果が高いことを意味する。なお、この評価では、粘度指数向上効果は、粘度指数が170未満であると悪く(×)、170以上であると良好(○)であり、200以上であるとさらに良好(◎)であり、230以上であると特に良好(◎◎)であると評価した。
【0114】
<潤滑油組成物の剪断安定性の測定方法及び計算方法>
JPI-5S-29-2006に従い評価を行った。数値が小さいほど剪断安定性が高いことを意味する。なお、この評価では、剪断安定性は、14%を超えると悪く(×)、14%以下であると良好(○)であり、10%以下であるとさらに良好(◎)であり、5%以下であると特に良好(◎◎)であると評価した。
【0115】
<潤滑油組成物の低温粘度の測定方法>
JPI-5S-42-2004の方法で-40℃での粘度を測定した。数値が小さいほど低温粘度に優れることを意味する。なお、この評価では、低温粘度は、-40℃での粘度が、32000mPa・sを超えると悪く(×)、32000mPa・s以下であると良好(○)であり、25000mPa・s以下であるとさらに良好(◎)であり、20000mPa・s以下であると特に良好(◎◎)であると評価した。
【0116】
【0117】
【0118】
表3~4の結果から明らかなように、共重合体(A)のMwと共重合体(B)のMwとの比率{(A)/(B)}が2~55であり、共重合体(A)と(B)との重量比率(A/B)が5~100である本発明の粘度指数向上剤組成物を含有してなる潤滑油組成物は、評価結果に×がなく、剪断安定性に優れ、HTHS粘度が低く、粘度指数が高く、低温粘度が低く、優れることがわかる。特に、同じ共重合体(A)及び(B)を用いて、共重合体(A)と(B)との重量比率(A/B)が異なる実施例5及び12~14と比較例1及び2とを比較すると、重量比率(A/B)が5~100である実施例は粘度指数が極めて高く、低温粘度も極めて低く、優れていることがわかる。また、単量体は同じであるもののMwが異なる共重合体(A)及び(B)を用いた実施例8、18及び19と比較例3との比較、実施例16、20及び21と比較例4~5とを比較すると、実施例はHTHS粘度が極めて低く、低温粘度も極めて低く、比較例より優れていることがわかる。特に、Mwの比率{(A)/(B)}が2付近のものである実施例8と比較例3との比較、実施例21と比較例5との比較から、Mwの比率{(A)/(B)}を2以上とすることで、潤滑油組成物中の共重合体(A)及び(B)の合計含有量が少なくても、極めて優れた性能を発揮することがわかる。同様に、Mwの比率{(A)/(B)}が55付近の実施例16と比較例4との比較から、Mwの比率{(A)/(B)}を55以下とすることで、潤滑油組成物中の共重合体(A)及び(B)の合計含有量が少なくても、極めて優れた性能を発揮することがわかる。特に、共重合体(A)のMwと共重合体(B)のMwとの比率{(A)/(B)}が5.0~33であり、かつ共重合体(A)と(B)との重量比率(A/B)が12~38である実施例1~7、10~11、14~15、17、20及び22は、全ての評価において◎以上であり、剪断安定性、HTHS粘度、粘度指数及び低温粘度がバランスよく優れていることがわかる。
【0119】
<実施例23~44、比較例6~10:0W-20評価(SAE J300 エンジン油規格)>
(1)粘度指数向上剤組成物の製造
実施例1~22で得られた粘度指数向上剤組成物(1)~(22)、比較例1~5で得られた粘度指数向上剤組成物(1’)~(5’)を用いた。
(2)潤滑油組成物の製造
基油A(SP値:8.3(cal/cm3)1/2、100℃の動粘度:4.2mm2/s、粘度指数:128)90部とパッケージ添加剤(Infineum P5741)10部を投入し、粘度指数向上剤組成物を添加した後の潤滑油組成物の150℃のHTHS粘度が2.60±0.05(mm2/s)になるように、粘度指数向上剤組成物(1)~(22)又は(1’)~(5’)を添加し、粘度指数向上剤組成物を含有する潤滑油組成物(V23)~(V44)及び(W6)~(W10)を得た。潤滑油組成物中の共重合体(A)及び(B)の合計含有量(重量%)は表5~6に記載の通りである。
潤滑油組成物(V23)~(V44)及び(W6)~(W10)のHTHS粘度(100℃)、粘度指数、剪断安定性及び低温粘度(-40℃)を以下の方法で測定した。結果を表5~6に示す。
【0120】
<潤滑油組成物のHTHS粘度の測定方法>
HTHS粘度は、ASTM D 4683の方法により、100℃で測定した。HTHS粘度の数値が小さいほど100℃でのHTHS粘度が優れることを意味する。なお、この評価では、HTHS粘度低下効果は、HTHS粘度(100℃)が4.70mPa・sを超えると悪く(×)、4.70mPa・s以下であると良好(○)であり、4.60mPa・s以下であるとさらに良好(◎)であり、4.50mPa・s以下であると特に良好(◎◎)であると評価した。
【0121】
<潤滑油組成物の粘度指数の計算方法>
JIS K 2283の方法で40℃と100℃の動粘度を測定し、JIS K 2283の方法で粘度指数を計算した。粘度指数の数値が大きいほど粘度指数向上効果が高いことを意味する。なお、この評価では、粘度指数向上効果は、粘度指数が195未満であると悪く(×)、195以上であると良好(○)であり、230以上であるとさらに良好(◎)であり、260以上であると特に良好(◎◎)であると評価した。
【0122】
<潤滑油組成物の剪断安定性の測定方法及び計算方法>
JPI-5S-29-2006に従い評価を行った。数値が小さいほど剪断安定性が高いことを意味する。なお、この評価では、剪断安定性は、18%を超えると悪く(×)、18%以下であると良好(○)であり、13%以下であるとさらに良好(◎)であり、8%以下であると特に良好(◎◎)であると評価した。
【0123】
<潤滑油組成物の低温粘度の測定方法>
JPI-5S-42-2004の方法で-40℃での粘度を測定した。数値が小さいほど低温での粘度が低く、低温粘度に優れることを意味する。なお、この評価では、低温粘度は、-40℃での粘度が、37000mPa・sを超えると悪く(×)、37000mPa・s以下であると良好(○)であり、32000mPa・s以下であるとさらに良好(◎)であり、27000mPa・s以下であると特に良好(◎◎)であると評価した。
【0124】
【0125】
【0126】
表5~6の結果から明らかなように、共重合体(A)のMwと共重合体(B)のMwとの比率{(A)/(B)}が2~55であり、共重合体(A)と(B)との重量比率(A/B)が5~100である本発明の粘度指数向上剤組成物を含有してなる潤滑油組成物は、評価結果に×がなく、剪断安定性に優れ、HTHS粘度が低く、粘度指数が高く、低温粘度が低く、優れることがわかる。特に、同じ共重合体(A)及び(B)を用いて、共重合体(A)と(B)との重量比率(A/B)が異なる実施例27及び34~36と比較例6及び7とを比較すると、重量比率(A/B)が5~100である実施例は粘度指数が極めて高く、低温粘度も極めて低く、優れていることがわかる。また、単量体は同じであるもののMwが異なる共重合体(A)及び(B)を用いた実施例30、40及び41と比較例8との比較、実施例38、42及び43と比較例9~10とを比較すると、実施例はHTHS粘度が極めて低く、低温粘度も極めて低く、比較例より優れていることがわかる。特に、Mwの比率{(A)/(B)}が2付近のものである実施例30と比較例8との比較、実施例43と比較例10との比較から、Mwの比率{(A)/(B)}を2以上とすることで、潤滑油組成物中の共重合体(A)及び(B)の合計含有量が少なくても、極めて優れた性能を発揮することがわかる。同様に、Mwの比率{(A)/(B)}が55付近の実施例38と比較例9との比較から、Mwの比率{(A)/(B)}を55以下とすることで、潤滑油組成物中の共重合体(A)及び(B)の合計含有量が少なくても、極めて優れた性能を発揮することがわかる。特に、共重合体(A)のMwと共重合体(B)のMwとの比率{(A)/(B)}が5.0~33であり、かつ共重合体(A)と(B)との重量比率(A/B)が12~38である実施例23~29、32~33、36~37、39、42及び44は、全ての評価において◎以上であり、剪断安定性、HTHS粘度、粘度指数及び低温粘度がバランスよく優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の粘度指数向上剤組成物を含有してなる潤滑油組成物は、ギヤ油(デファレンシャル油及び工業用ギヤ油等)、MTF、変速機油[ATF、DCTF及びbelt-CVTF等]、トラクション油(トロイダル-CVTF等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油及び工業用作動油等)等として好適である。