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特許7545970LCP-1陽性がんを標的としたマイクロRNAベースの治療
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】LCP-1陽性がんを標的としたマイクロRNAベースの治療
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240829BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20240829BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240829BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240829BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20240829BHJP
   A61K 35/51 20150101ALI20240829BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N5/0775
C12N15/113 110Z
A61K35/12
A61K35/28
A61K35/51
A61K31/7105
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021531187
(86)(22)【出願日】2019-08-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 EP2019071341
(87)【国際公開番号】W WO2020030750
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-08-01
(31)【優先権主張番号】18020374.7
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521058519
【氏名又は名称】テラミール エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(72)【発明者】
【氏名】プロコピ,マリアンナ
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/166600(WO,A1)
【文献】Stem Cell Rev. and Rep.,2017年,Vol. 13,pp.226-243
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
miRNAのパネルが充填されている細胞外小胞(EV)、または、miRNAのパネルをコードする核酸が充填されている細胞外小胞(EV)であって、該miRNAのパネルは内因性miRNAであるmiR-16-5p、miR-23a-5p、miR-125b-5p、miR-145-5p、miR-146a-3p、miR-181c-5p、miR-218-5p、miR-495-3p、let-7b-5pおよび外因性miRNAであるmiR-885-5pを含み、該外因性miRNAは、過剰発現してLCP-1の発現を阻害するものであって、該外因性miRNAは、合成premiR、成熟miR、antimiR、またはdenovo誘導miRであり、該EVは、臍帯、ワルトン膠様質、血液、または臍帯血から得られた間葉系幹細胞に由来する、細胞外小胞(EV)。
【請求項2】
該パネルは、miR-30a-5p、miR-30b-5p、miR-30c-5p、miR-30d-5p、miR-30e-5p、miR-194-5p、miR-302a-3p、miR-302a-5p、miR-335-3p、miR-335-5p、miR-367-3p、およびmiR-373-3pからなる群から選択される1以上のmiRNAをさらに含む、請求項1に記載のEV。
【請求項3】
該パネルは、miR-16-5p、miR-23a-5p、miR-125b-5p、miR-145-5p、miR-146a-3p、miR-181c-5p、miR-218-5p、miR-495-3p、let-7b-5p、miR-30a-5p、miR-30b-5p、miR-30c-5p、miR-30d-5p、miR-30e-5p、miR-194-5p、miR-302a-3p、miR-302a-5p、miR-335-3p、miR-335-5p、miR-367-3p、miR-373-3p、およびmiR-885-5pを含む、請求項1または2に記載のEV。
【請求項4】
EVは、10 nm~500 nmのサイズ範囲で産生される、請求項1~のいずれか1に記載のEV。
【請求項5】
EVは30 nm~300nmのサイズ範囲で産生される、請求項1~のいずれか1に記載のEV。
【請求項6】
EVは、P-セレクチン、インテグリンベータ-1、血管細胞接着タンパク質1、アネキシン、腫瘍感受性遺伝子101タンパク質、Hsp70結合タンパク質、CD9、CD29、CD63、CD73、CD81、およびCD90を含む細胞内および細胞膜タンパク質で特徴づけられる、請求項1~のいずれか1に記載のEV。
【請求項7】
miRNA配列は、(i)トランスフェクションまたはdenovo誘導による親幹細胞でのアップレギュレーションに続いて、EVに事前に充填される、および/または(ii)直接導入、化学的挿入および/またはエレクトロポレーションによってすでに形成されたEVに充填される、請求項1~のいずれか1に記載のEV。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1に記載のEVを含む、LCP-1陽性がんの治療剤。
【請求項9】
miRNAを充填したEVの1以上のmiRNAが、患者の診断プロフィールに基づいて、がんの種類と病期に応じて選択される、miR-30a-5p、miR-30b-5p、miR-30c-5p、miR-30d-5p、miR-30e-5p、miR-194-5p、miR-302a-3p、miR-302a-5p、miR-335-3p、miR-335-5p、miR-367-3p、miR-373-3p、およびmiR-885-5pからなる群から選択される、請求項に記載の治療剤。
【請求項10】
LCP-1陽性がん細胞は、タンパク質アルゴノート2、癌原遺伝子c-Akt、アネキシンA3、アミロイドベータA4タンパク質、アポトーシス制御因子Bcl-2、Bcl-2関連転写因子1、Bcl-2様タンパク質2、バキュロウイルスIAPリピート含有タンパク質 5、骨形態形成タンパク質1、癌感受性候補7、G1/S特異的サイクリンD1、CD44抗原、カドヘリン2、カドヘリン11、サイクリン依存性キナーゼ2、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤p27、CCAAT/エンハンサー結合タンパク質アルファ、チトクロムc酸化酵素サブユニット2、カテニンベータ1、C-X-Cケモカイン受容体タイプ4、Dickkopf関連タンパク質1、上皮成長因子受容体、脂肪酸シンターゼ、高移動度グループタンパク質HMGI-C、インスリン様成長因子1受容体、インスリン様成長因子2 mRNA結合タンパク質2、転写因子AP-1、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼキナーゼキナーゼ4、誘導骨髄白血病細胞分化タンパク質Mcl-1、DNA複製ライセンス因子MCM5、E3ユビキチンタンパク質リガーゼMdm2、72 kDaタイプIVコラゲナーゼ、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9、転移関連タンパク質MTA3、ムチン13、核因子NFκB p105サブユニット、ホスファチジルイノシトール-4,5-二リン酸3-キナーゼ触媒サブユニットアルファアイソフォーム、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子表面受容体、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー11、Ras GTPase活性化タンパク質1、ラウンドアバウトホモログ1、スリットホモログ2タンパク質、ジンクフィンガータンパク質SNAI2、マザーズアゲンストデカペンタプレジックホモログ3、ジンクフィンガータンパク質SNAI1、転写因子SOX-2-OT、転写因子Sp1、TGFベータ受容体タイプ2、トランスフォーミング増殖因子ベータ1、血管内皮増殖因子A、および癌原遺伝子Wnt-1からなる群から選択される1以上のタンパク質を正常細胞の発現量に対し過剰発現する、請求項またはに記載の治療剤。
【請求項11】
LCP-1陽性がんは、乳がん、皮膚黒色腫、ぶどう膜黒色腫、神経膠腫、頭頸部がん、口腔がん、甲状腺がん、肺がん、肝臓がん、膵臓がん、胃がん、結腸直腸がん、膀胱がん、尿路上皮がん、腎がん、腎臓がん、骨がん、前立腺がん、精巣がん、子宮頸がん、卵巣がん、子宮内膜がん、ならびに、請求項10に記載の1以上タンパク質を正常細胞の発現量に対し過剰発現するその他の種類のがんからなる群から選択される、請求項10のいずれか1に記載の治療剤。
【請求項12】
LCP-1陽性がんは、乳がん、結腸直腸がん、前立腺がん、または卵巣がんである、請求項11のいずれか1に記載の治療剤。
【請求項13】
組織、リキッドバイオプシーまたは生体液中の、LCP-1陽性腫瘍、LCP-1リン酸化状態、miR-885-5p陰性腫瘍、miR-885-5p発現、およびmiRNAおよび請求項11に記載のタンパク質の組み合わせの発現のいずれか1以上を選択するように設計された診断キットを介して投与の対象が選択される、請求項12のいずれか1に記載の治療剤。
【請求項14】
液体または固体の形で、経口、筋肉内、または静脈内のいずれかでがん患者に局所投与または全身投与されるものである、請求項13のいずれか1に記載の治療剤。
【請求項15】
主要な治療アプローチとして、または化学療法、放射線療法、もしくは他の生物学的療法を含む他の療法と組み合わせて、予防的または治療的に投与されるものである、請求項14のいずれか1に記載の治療剤。
【請求項16】
脳内の腫瘍部位を含む腫瘍部位に移動するものである、請求項15のいずれか1に記載の治療剤。
【請求項17】
腫瘍部位が原発性腫瘍部位または転移性腫瘍部位である、請求項16に記載の治療剤。
【請求項18】
がん細胞の細胞膜と融合して、標的細胞の細胞質に治療用miRNAを放出するものである、請求項17のいずれか1に記載の治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はmiRNAを使用する新規技術およびLCP-1陽性がんにおける腫瘍性タンパク質の活性を標的にしてダウンレギュレートするそれらの能力に関する。本発明の技術は、がんの開始(initiation)、成長、攻撃性(aggressiveness)および転移に関連する遺伝子およびタンパク質のグループ(LCP1/LCP-1を含む)の発現に影響を及ぼす生物学的小胞または合成小胞へのカプセル化された特定のmiRNA阻害剤配列を送達することを予定する。
【背景技術】
【0002】
がんは、細胞階層と多くの異なる表現型を伴う異種性の疾患であり、腫瘍の増殖と転移に高い能力を持つ。転移段階への進行は、効果的ながん治療への最も深刻な挑戦を提供し、ほとんどのがん関連死の原因となる。浸潤-転移カスケードは、転移部位微小環境における、周囲の細胞外マトリックスを介したがん細胞の拡散、循環および最初の播種における生存、それに続く拡大(コロニー形成)を含む多段階の細胞プロセスである。これらの工程は、細胞骨格の調節によって促進されるがん細胞の高い運動性を必要とする。最近の研究では、特にインテグリン分子に結合して調節する能力のため、細胞骨格結合タンパク質が腫瘍転移において重要な役割を演じることが指摘されている。したがって、このような分子は、腫瘍細胞の転移特性を阻害するための有望な標的である。特に、いくつかのがんは、アクチン再編成タンパク質LCP-1 (L-Plastin, Plastin-2, lymphocyte cytosolicprotein 1 (L-プラスチン、プラスチン-2、リンパ球細胞質ゾルタンパク質1))を発現するものであり、該タンパク質は、通常、白血球特異的であり、非造血細胞には存在しない(非特許文献1)。このタンパク質は最近、腎臓、結腸、乳がんなどのさまざまな形態のがんを早期に検出するためのバイオマーカーとして特定された(非特許文献2)。LCP-1は、70 kDaであり、Ca2+を調節するアクチン結合タンパク質であり、適応免疫系と自然免疫系の両方で重要な役割を果たす(非特許文献3)。アクチン結合タンパク質のプラスチンファミリーは、組織特異的な発現を示す3つのアイソフォームからなる。それらは類似した分子配列を示し、C末端に2つの連続したアクチン結合ドメインを含み、それぞれが2つのカルポニン相同性(CH)ドメインからなる。この構造により、LCP-1はアクチンフィラメントの組織化を非常に緊密なバンドルに導くことができる(非特許文献4)。LCP-1の機能は、自然免疫系および適応免疫系の細胞にとって重要である。 LCP-1は免疫シナプス形成に重要であることが実証された。LCP-1は免疫シナプス形成に重要であり(非特許文献5)、顆粒球(非特許文献6)とT細胞(非特許文献7)の両方のインテグリン依存性接着および遊走を調節することが実証された。また、腫瘍細胞の運動性に役割を果たす可能性があることも示唆されている。LCP-1のアクチンバンドル活性は、カルシウム濃度の増加がアクチンバンドルの形成を阻害するため、カルシウム依存性であることが知られている。Ser5のリン酸化は、インビトロにおけるLCP-1のアクチンバンドル活性を増加させ、アクチン集合部位への標的化を促進することも示された。LCP-1のリン酸化による調節は、免疫応答の結果として、また移動を引き起こすシグナルへの応答として説明される(非特許文献8~10)。
【0003】
ヒトがん細胞におけるLCP-1発現およびリン酸化の潜在的な予後関連性に加えて、LCP-1はがん治療の有望な標的となる。腫瘍細胞におけるLCP-1の発現および/またはリン酸化の低下は、腫瘍細胞の攻撃性、遊走および浸潤を妨害し、したがって転移を低下させる可能性がある。がんの進行度を阻害するために研究されてきた治療ツールは、LCP1プロモーターによってドライブされる組換えアデノウイルスベクター、およびメリチン(非特許文献11)などのLCP-1ブロッキングペプチドに基づいている。アデノウイルスベクターの主な欠点の1つは、ウイルスに細胞特異的リガンドを結合するエンベロープがないため、細胞特異的標的化を達成するのが難しいことであり、一方、複製能力のあるウイルスが発生する可能性や、特に反復投与が行われた場合に患者に炎症反応を引き起こす可能性など、安全上の重要な懸念もある。加えて、メリチンなどのLCP-1ブロッキングペプチドは、溶血特性が強く、正常細胞に対して毒性があるため、直接的な臨床応用には適していない(非特許文献11)。したがって、本発明の目的は、LCP-1の阻害を成功させ、標的とするための新規技術の開発である。同時に、関連するタンパク質のグループ(タンパク質パネル、表1)は、がん治療の追加の新規標的を表し、したがって、カスタマイズされた標的がん治療を開発するために、LCP-1とともに本発明で利用される。
【0004】
表1. 関連するタンパク質、遺伝子、およびmiRNAの選択されたパネル
【表1】
【0005】
RNAベースのアプローチは、がん治療の次の主要なクラスと見なされる。 拡大し続ける細胞経路およびプロセスにおけるRNAの役割に関連する遺伝学の進歩は、RNAが以前はDNAおよびタンパク質にのみ起因していた遺伝的および調節的特性の多くを有することを示す。現在の研究は、主に治療用タンパク質の発現を促進する修飾mRNAと、がん細胞において遺伝子をサイレンシングまたは増幅できるRNAiバリアント(siRNAやmiRNAなど)に焦点を当てている。
【0006】
小さな(22ヌクレオチド長以下)クラスの非コードRNAであるmiRNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)に結合し、内因性の翻訳後遺伝子調節因子として機能する(非特許文献12)。miRNAとmRNAの相互作用は非常に複雑で、現在完全には理解されていない。しかしながら、ヒトのタンパク質をコードする遺伝子の約3分の1はmiRNAによって制御されており、タンパク質発現に対するそれらの並外れた影響を強調する。知られていることは、少なくとも哺乳類では、miRNAは不完全な相補性を介してそれらの標的遺伝子に結合することである(非特許文献13)。miRNAを介した遺伝子抑制にはいくつかの作用機序が提案されている。タンパク質合成は、翻訳開始、デアデニレーションによるmRNA分解、またはまれにmRNA切断の阻害によって抑制される場合がある。miRNAは膨大な数の遺伝子および経路を調節するため、失われたmiRNAを細胞内で再発現させると、劇的な効果が得られる。miRNAの再発現とダウンレギュレーションの両方が抗腫瘍効果を有することが示されている一方で、腫瘍抑制因子miRNAを再発現させると複数のがん遺伝子をダウンレギュレートすることができる。がんでダウンレギュレートされる組織特異的miRNAの生理学的レベルへの再発現は、がん細胞の脱分化を誘発する可能性がある。
【0007】
RNA治療の成功は、臨床試験の初期の失敗が示しているように、がん細胞内の分子標的への効果的かつ安全な送達にかかっている。このように、がん治療における潜在能力を最大限に発揮するためには、新しい革新的な薬物送達技術が必要である。miRNAの全身送達には、独自の制限がある。非結合RNAのサイズは7~20 kDaであり、サイズが50 kDa未満の分子は腎臓でろ過され、循環から除去される(排泄される)ことがよく知られている。他の多くの薬物とは異なり、miRNAは細胞内に自由に拡散せず、不安定になる傾向があるため、細胞に入ると分解される可能性がある。このように、効果的な治療戦略は、腫瘍部位への効率的な送達と、同様に重要な、標的細胞への機能的配列の挿入の成功を確実にする必要がある。加えて、全身送達の主な障害は、オリゴヌクレオチドベースの治療が、患者のIFN産生を増加させることにより、凝集、肝臓毒性、免疫応答の刺激などの副作用を誘発する可能性があることである。
【0008】
インビボでのmiRNAの送達に対する現在のアプローチには、抗miRNAオリゴヌクレオチド、antagomiR、ロックド核酸(LNA)、miRNAスポンジ、ベクターベースのシステム、リポソーム、およびナノ粒子が含まれる。それぞれのアプローチには利点があるが、重大な欠点もある。粒子ベースのアプローチの場合、主な制限には、標的細胞による非効率的なエンドサイトーシスおよび非効率的なエンドソーム放出が含まれる。ウイルスシステムを使用してmiRNAを再導入すると、挿入型遺伝子変異、がん遺伝子の活性化、および強力な免疫応答のリスクが常に存在するため、独自の潜在的な危険が伴う。リポソーム送達システムの場合、腫瘍を標的とし、それらの治療ペイロードをインビボで送達することの非効率性は、最初のmiRNAベースの治療法の初期の臨床試験で実証されたように、重大な合併症および副作用をもたらした。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Lin CS et al., J Biol Chem.1993;268(4):2781-2792.
【文献】Lommel MJ et al., FASEB J. 2016;30(3):1218-1233.
【文献】Shinomiya H., Int J Cell Biol.2012;2012:213492.
【文献】Samstag Y et al., J Leukoc Biol.2003;73(1):30-48.
【文献】Wabnitz GH etal,. Eur J Immunol.2007;37(3):649-662.
【文献】Wang J etal., J Biol Chem. 2001;276(17):14474-14481.
【文献】Freeley M et al., J Immunol.2012;188(12):6357-6370.
【文献】Janji B et al., J Cell Sci. 2006;119(Pt9):1947-1960.
【文献】Wabnitz GH et al., Eur J Immunol.2010;40(9):2437-2449.
【文献】Pazdrak K et al., J Immunol. 2011;186(11):6485-6496.
【文献】Ishida H et al., Sci Rep. 2017;7:40662.
【文献】Cai X et al., RNA. 2004;10(12):1957-1966.
【文献】Baek D et al., Nature. 2008;455(7209):64-71.
【文献】Gupta GP et al., Cell. 2006;127(4):679-695.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、走化性因子および幹細胞起源のタンパク質(表2)を含む生物学的または合成起源の担体(サイズ30~300 nm)にカプセル化されたmiRNA配列(miR-885-5pを含む)の特定の組み合わせを送達することを予定する。EVmiRTM図1)と名付けられた提案されたコンストラクトはLCP-1陽性のがんにおけるがんの開始、成長、攻撃性、および転移に関連する遺伝子およびタンパク質のグループ(LCP1/LCP-1を含む)の作用に影響を及ぼす(表1)。
【0011】
表2. 設計されたEVmiRTMコンストラクトの主要構成要素。
【表2】
【0012】
配列miR-885-5pを含むパネルから選択された特定のmiRNAに基づく治療システムであり、これは細胞外小胞(extracellularvesicles)を含む生物学的、合成的、または化学的製剤内に充填(load)される。このコンストラクトは、LCP-1陽性のがんにおけるがんの開始、成長、攻撃性、および転移の可能性に関連する特定のグループの腫瘍性タンパク質(LCP-1を含む)の発現を標的とし、調節する。成功した送達システムは、生物学的または合成起源の幹細胞関連特性を備えた狭いサイズ範囲(直径30~300 nm)である。これらの小胞は、特定の治療用miRNA配列の標的担体として機能し、投与されると、腫瘍部位に移動して融合し、治療充填物(therapeutic load)をがん細胞に直接送達する。
【0013】
課題:現在市場にある抗がん剤は、腫瘍の完全な根絶とヒト患者のがん疾患の効果的な治療をまだ達成していない。これは主に、複雑ながんの成長と転移のプロセスをブロックすることが困難であるため(治療効率)、ならびに腫瘍部位への治療薬の送達が不十分であるため(腫瘍標的化)である。この効果的な治療選択の欠如は、複数のがん細胞プロセスに介入できるがん治療の標的化送達のための新規アプローチのための新たな機会への扉を開く。転移の発生は、がんの最も深刻な臨床的結果を引き起こし、がん関連死亡の90%以上の原因となっている(非特許文献14)。がんの成長と転移のプロセスは複雑であり、それらを調節する分子メカニズムの理解は依然として限定的である。腫瘍学分野における主要な標的の発見は、黒色腫、神経膠芽腫、卵巣癌、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、および前立腺癌などの幅広い種類のがんとの闘いのための新たな道を開くものである。腫瘍細胞の遊走と転移には、アクチン細胞骨格の動的な再編成が必要である。興味深いことに、LCP-1は、アクチンフィラメントの組織化に関与し、多くの種類の血液細胞でも異常に発現している。上皮がんにおけるこのタンパク質の発現の増加は、循環系を介した転移経路を活性化し、他のシグネチャー(signature)遺伝子との組み合わせで遠隔部位への転移を可能にすることを我々は確認した(遺伝子パネル、表1)。同様に、転移だけでなく、LCP-1に関連する原発腫瘍の開始と成長においても役割を果たす腫瘍タンパク質の増え続けるリストの特定は、腫瘍学分野で、疾患の複数の段階を標的とすることができる新規ながん治療薬を設計および開発するための豊富な機会を開く。
【課題を解決するための手段】
【0014】
解決策:腫瘍細胞の開始、移動、および転移には、細胞骨格の動的な再編成と重要な発がん経路の活性化が必要である。興味深いことに、LCP-1タンパク質(もともとは白血球特異的タンパク質として記述されていた)は、いくつかの悪性腫瘍で異常に発現し、表1(タンパク質パネル)に記載されているものなど、他のいくつかのがん関連タンパク質と相互作用する。したがって、我々は関連するmiRNAのパネルを開発し(miRNAパネル、表1)、そして、それを利用して、それぞれの遺伝子(遺伝子パネル、表1を参照)を標的とすることにより、上記のがん関連タンパク質の発現を妨げる可能性のある治療用miRNAのカスタムの組み合わせを設計した。
【0015】
本発明において、治療用miRNAは、細胞外小胞(EV)に基づく新しい送達システムを介して腫瘍に投与されるが、miRNAのパネルは、他の腫瘍標的担体システム(ナノ粒子またはリポソームベースのシステムなど)でも送達できる。 このように、本明細書に記載のカスタムmiRNAの組み合わせの投与は、miRNAまたはmiRNAをコードする核酸がその標的に到達することを可能にする任意の許容可能な方法によって達成することができる。本発明の特別な態様において、EVは、治療用miRNAを腫瘍部位やがん細胞内に送達するように特別に設計されている。EVmiRTM複合体は、LCP-1の直接的な阻害剤として作用する特定のmiRNA配列を含む幹細胞起源の設計された細胞外小胞(EV)である。また、EVmiRTMは、LCP-1経路に直接関与し、主に固形腫瘍でアップレギュレートされる別のグループの腫瘍性タンパク質の発現を標的にして操作するように設計されている(タンパク質パネル、表1)。EVmiRTM複合体は、幹細胞が腫瘍部位に選択的に帰巣する(home)ことおよび悪性細胞を標的とすることを可能にする膜受容体を保持し、このことにより、健康な細胞の標的化を回避するため、理想的な送達媒体である。EVは、特定のケモカイン受容体を介して固形腫瘍に帰巣して生着し、腫瘍細胞膜に融合し、およびmiRNAを標的がん細胞に直接組み込むため、従来の治療法に関連する副作用を最小限に抑えながら治療効果を発揮する。EVmiRTM複合体は、単一遺伝子を標的とするアプローチと比較した場合、悪性細胞内の複数の分子を標的とし、サイトカインシグナル伝達阻害を介して免疫抑制を誘導する能力により、予防および治療の可能性を高め、このアプローチを再発がん疾患の治療戦略の構成要素として特に適したものとする。
【0016】
本発明では、EVmiRTMまたは他の適切な小胞内にカプセル化されたmiRNAの組み合わせのインビトロおよびインビボの両方での送達を介して、がん関連タンパク質LCP-1(および表1の腫瘍性タンパク質)を標的とする。
【0017】
我々は、天然に存在し、合成的に過剰発現したmiRNAのグループ(合成premiR、成熟miR、antimiR、または積極的にde novo誘導したmiRのいずれかを使用)を含む新規な細胞性のEVmiRTM複合体を構築した。EVは、原形質膜から形成され、細胞質成分、細胞表面タンパク質、および親細胞の原形質膜に由来する生物活性リン脂質が豊富な、直径30~300nmのサイズのインタクトな小胞である(表2参照)。このカスタマイズされた複合体は、腫瘍環境で特に見られ、腫瘍の成長や転移の進行などのがんプロセスをブロックできるLCP-1およびその他のがん関連タンパク質(表1)の発現を直接標的とする。設計されたEVなどの細胞粒子に関連するmiRNAは、ヌクレアーゼ分解から保護されており、レシピエント細胞の遺伝子発現を予防的または治療的に変化させるために、さまざまな細胞に導入できることがわかった。
ある態様において、パネルは、幹細胞由来の天然に存在するmiRNAと(1つまたは複数の)合成的に過剰発現したmiRNAが含まれてよいものであって、該合成的に過剰発現したmiRNAは、合成premiR、成熟miR、antimiR、またはde novo誘導miRである。
【0018】
本発明は、適切な患者の選択だけでなく、診断、予後、治療、およびモニタリングの構成要素を含む、より広範な個別化された医療戦略の一部として予防的および治療的に適用される。本発明の利点は、以前の選択肢よりも高い選択性と低い毒性を備えた改良された医薬品であり、多元的となる。毒性作用が治療を中断する必要がないという事実により、許容されない毒性を治療するコストが削減され、積極的な治療の完了時間が大幅に短縮される。最適化された患者の選択は、腫瘍の分子プロファイリングと患者の反応変数に基づいて行われ、より効率的な薬物使用への道を開き、死亡率と罹患率の低下につながる。この目的のため、LCP-1およびその他の腫瘍性タンパク質標的のレベルをアッセイし、ならびに組織および/またはリキッドバイオプシーにおけるmiRNAのパネルの発現をモニタリングするためのコンパニオン診断キットが開発された。このように、標的がん治療のためのEVmiRTMアプローチは、標的腫瘍タンパク質および関連するmiRNA配列を発現する腫瘍の臨床試料でキットを利用することによって検証された。
【発明の効果】
【0019】
利点: 過去20年間で、腫瘍学の分野では、標的療法(がんの発生に役割を果たすことが示されている遺伝子、タンパク質、およびシグナル伝達経路を選択的に標的とするために開発された薬剤治療)の概念に基づいた新たなクラスの薬剤の導入が見られた。いくつかの標的療法は、広範囲のがんで有効性を示しており、分子生物学の新たな知識、化学および分子合成の進歩、およびハイスループットスクリーニング法(「オミクス」革命)によって推進され、さらに多くが継続的に導入されている。市場にある、または開発中の新しい続出する治療薬の中で、血管新生阻害剤、免疫療法剤(モノクローナル抗体、サイトカイン、がんワクチン)、キナーゼシグナル伝達阻害剤、遺伝子(DNAまたはRNAベース)療法が最も有望であるようにみえる。RNA(mRNAおよびRNAi)ベースのアプローチは、異常なRNA調節ががんの発生に重要な細胞経路およびプロセスの範囲にますます関係付けられているため、ここ数年かなりの関心を集めている。
【0020】
したがって、ターゲットを絞ったRNAベースの治療法の市場はまだ始まったばかりであり、開発の非常に初期の段階にある。多くの細胞メカニズムにおけるRNAの重要な役割を解明する上での最近の飛躍的進歩により、mRNAおよびRNAi配列を臨床的に承認された治療法に組み込むための新規アプローチの出現が促進された。これらの技術は、体自身の自然なプロセスを利用して、有益なタンパク質またはサイレンス遺伝子の発現を促進し、がん細胞内の特定のタンパク質を排除することを目的としており、特異性と有効性が大幅に改善されたより安全ながん治療薬の開発につながる。標的となるがんの種類と場所に応じて、治療薬の送達には、健康な組織への毒性を最小限に抑え、腫瘍部位での有効な治療濃度を最大化するために、ナノカプセル、ナノ粒子、リポソーム、PEG化小胞などの新規輸送技術の開発がしばしば必要になる。
【0021】
本発明はがんの標的化されたRNAベースの治療法として重要な利点を提供する:
・ 標的化送達は、RNA治療の主要な課題であり続けている。我々のインビボ研究では、間葉系幹細胞が選択的に腫瘍に移動できることを示し(ホーミング)、したがって、EVmiRTM複合体は、腫瘍部位へのmiRNAの標的化送達を可能にする必要な膜受容体を組み込んでいる。このアプローチの類のない特異性は、健康な細胞の標的化を回避し、潜在的な副作用を最小限にすることにより、腫瘍に対する有効性の向上につながる。
・ 効果的なmiRNAベースの治療に対する重要な障害は、安定性と標的組織への送達の成功の要件である。他の多くの薬物とは異なり、miRNAは細胞内に自由に拡散しない。したがって、miRNAは、望ましい効果を達成するために特別な送達アプローチを必要とする。我々はEVmiRTM複合体が標的がん細胞と融合し、治療用miRNAをレシピエント細胞に組み込むことができることを実証した。
・ EVは、がんの発生に関与する複数の経路に影響を与えることが示されている治療用量のmiRNAを送達できる。発がん性miRNAの減少または欠失、および腫瘍抑制miRNAの増幅または過剰発現の両方を通じて、がん細胞における遺伝子発現を調節する特定のmiRNAがすでに同定されている。したがって、単一の遺伝子を標的とする以前のアプローチと比較して、miRNAアプローチは、がん細胞内の複数の分子を標的とする機会を提供する可能性があり、したがって、単一のアプローチで腫瘍減少のための複数の手段を提供する。
・ 以前のRNA療法とは異なり、EVmiRTM複合体は、治療用miRNA配列が露出されていないため、自然免疫応答を誘発しない。代わりに、これらのEVは(サイトカイン阻害を介して)免疫抑制を誘発することが示されており、これにより、特に再発する場合に、標的化送達アプローチがより効果的になる。
【0022】
本発明は、悪性腫瘍の治療への将来の臨床研究における重要な商業化および応用の可能性を伴う、新しい臨床がん治療法となる。本発明は、腫瘍の病理に関する新たな知識を生み出すことにより、治療のカスタマイズおよび個人化を可能にし、患者のための市場性のある製品およびサービスの急速な開発およびがん治療分野の変革につながるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】EVmiRTMコンストラクトのグラフィック表現。EVmiRTMは、細胞膜由来の脂質二重層、膜タンパク質、CD、トランスポーターなどで構成される。それらは、天然に存在するmiRNAと、LCP-1タンパク質の発現を直接標的とするmiR-885-5pなどの患者特異的miRNAも含む。また、140 nmのサイズの走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して分析されたEVmiRTMの顕微鏡写真もここに示される。
図2】EVmiRTMコンストラクトのmiRNAローディング法の検証。 3つの異なる過剰発現アプローチ(方法A、B、およびC)を使用して、EVでのmiR-885-5pの発現レベルを(リアルタイムPCRを使用して)評価。
図3】タンパク質LCP-1の発現レベルの評価。LCP-1の濃度は、定量的ウエスタンブロットアッセイを使用して、miR-885-5pを充填したEVmiRTMによる治療の前後に、さまざまな対照およびがん細胞株で試験された。
図4】乳がん細胞MDA-MB-231の細胞増殖アッセイ。EVmiR、対照としての既知の細胞毒性因子としてのGSI阻害剤およびDMSO、および内部標準としてのPBS/通常の馴化培地の存在下でのMDA-MB-231乳がんの細胞増殖アッセイ(LC:低濃度、MC:中濃度、HC:高濃度)。 4日間と7日間の細胞治療。
図5】EVmiRで処理したMDA-MB-231細胞のインビトロ実験により、標的細胞の膜損傷、細胞収縮、および小疱形成によって証明されるように、それらの内在化および生物学的効果の誘導が確認された(治療の2日目、5日目および7日目などの様々な時点で)。比較のために、処理なしまたはDMSO処理ありの対照細胞を示す。
図6】インビボ全身体内分布アッセイ。図6A 標識されたEVmiR(DiD染色)および合成DiD染色粒子は対照マウスに投与された。標識されたEVmiR(DiD染色)は、腫瘍GFP標識された担腫瘍マウスに投与された。図6Aは、EVmiRと腫瘍部位との共局在を示す。蛍光は破線で囲まれている。図6B 動物は、社内で開発された蛍光イメージングシステムを使用して、インビボ体内分布についてさまざまな時点で試験された。EVmiR(蛍光は破線で囲まれている)と腫瘍部位(腫瘍は左側のパネルで破線で囲まれている)の共局在は、さまざまな時点で明らかだった。
図7】小さな画像はEVmiRの走査型電子顕微鏡写真を示し、大きな画像はMDA-MB-231乳がん細胞株に対するEVmiRの攻撃を示す。EVmiRは腫瘍細胞と共局在し、膜取り込みメカニズムを介してその内容物を充填する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この実施形態では、LCP-1陽性がんにおける腫瘍の成長および転移を低減するために、合わせて22個のmiRNAが使用される。幹細胞由来のmiRNA(9個のmiRは天然に存在する)は、がん細胞の標的化ならびに腫瘍の成長、浸潤、および増殖の減少に関与する治療カクテルに常に存在するように割り当てられている。一方、13個のmiRNA(合成またはdenovo誘導)は、選択した患者の診断プロフィールに応じて、選択的または全体として使用され得る。miRNAカクテルは、主にEVmiRTM複合体によって投与されるが、この製剤に限定されない。本技術の製造および使用の例を以下に示す。
【0025】
EV産生:本実施形態は、以下を含むEVmiRTM複合体を用いて、LCP-1、ならびに表1(タンパク質パネル)の他の腫瘍性タンパク質のいずれかに対して陽性であるがんを治療する方法を提供する:
a) 標的となる腫瘍性タンパク質を下方制御できる特定のmiRNA(表1に記載)
b) EVが腫瘍の成長および転移の部位を標的とし、そこに帰巣することを可能にする特定の細胞膜タンパク質(表2に記載)
【0026】
EV(サイズ範囲30~300 nm)は、臍帯、臍帯血、ワルトン膠様質、血液、または骨髄から供給される幹細胞または前駆細胞から産生される(幹細胞は間葉系由来の場合もある)。幹細胞培養物はストレス条件にさらされて、EV(エキソソームおよび微小胞を含む直径300 nm未満の分泌膜媒体)の形成をもたらし、これらが収集され、精製され、濃縮される。EVは、親細胞の原形質膜に由来する細胞質構成成分、細胞表面タンパク質、および生理活性リン脂質、例えば、P-セレクチン、インテグリンベータ-1、血管細胞接着タンパク質1アネキシン、腫瘍感受性遺伝子101タンパク質およびHsp70結合タンパク質1であり、これらはCD9+、CD29+、CD63+、CD73+、CD81+、CD90+、CD31-、CD34-および CD45-で特徴づけられる、に富んでいる。幹細胞/前駆細胞/間葉系幹細胞由来のEVは、miR-16-5p、miR-23a-5p、miR-125b-5p、miR-145-5p、miR-146a-3p、miR-181c-5p、miR-218-5p、miR-495-3p、let-7b-5p(表3)などの内因性miRNAにも富んでおり、通常は過少発現されているか、または親細胞に存在しない追加のmiRNAを使用して、カスタム設計/製造することができる(表4)。我々はこれらのEVを利用して、過剰発現したmiR-885-5p配列を含むさまざまなmiRNAを運ぶ新規な細胞EV-miRNA複合体(EVmiRTM)を構築した。この複合体は、腫瘍環境で特異的に発現するがん関連タンパク質LCP-1を直接標的とし、腫瘍の成長や転移の進行などのLCP-1依存性のがんプロセスをブロックするようにカスタマイズできる。同様に、EVmiRTMベースのアプローチは、追加の腫瘍性タンパク質(表1参照)を標的とするようにさらにカスタマイズでき、本発明が可能な限り広範囲のがんタイプを標的にして治療できることを確実にする。
【0027】
特定のmiRNAの充填によりEVを最適化: 特定のmiRNA(例えば、miR-885-5pおよび表1から選択されるその他のもの)を充填したEVは、標的配列の過剰発現が誘導された後に生成される。個々のmiRNAまたはそれらの標的転写物の発現を遺伝的に撹乱させることは、細胞質からP-bodyへの双方向miRNAの再配置を促進し、EVへのmiRNA局在化(sorting)を制御する。幹細胞由来のEVに所望のmiRNA配列を効果的に充填するために、いくつかの方法を採用した。これについては、以下で説明する(ここでは、例としてmiR-885-5pを使用するが、これに限定されない)。
【0028】
同様に、我々独自のEVmiRTM複合体には、治療用miRNA阻害戦略との関連で、特定のがんの種類でアップレギュレートされるmiRNAを阻害/ブロックするために、特定のantagomiRを充填できる。特定のantagomiRは、目的の標的配列の阻害配列(「アンタゴニスト」)として充填でき、特定のがんの発がん性miRNAを阻害するためにEVを介して送達できる。
【0029】
方法 A. (充填前アプローチ): miR-885-5pの過剰発現は、以下を使用して親細胞で誘導された過剰発現によって実行されてよい:i)内因性の成熟miR-885-5pを模倣するpre-miR-885-5pまたは合成miR-885-5pによる親幹細胞のトランスフェクション、ii)EVへのmiR-885-5pの充填を指示できるSUMO化hnRNPA2B1、iii)再設計されたエキソモチーフを含むmiR-885-5p(図2)。この方法は、表4から選択される他の特定のmiRNA配列を使用したEVの充填前に適用できる。
【0030】
方法B.(充填後アプローチ): 親細胞からの産生後EVに直接miRNAを充填する。特定のmiRNA(例えば、これに限定されないがmiR-885-5p)を充填したEVを産生するために使用される別の方法は、化学的挿入および/またはエレクトロポレーションおよび/またはソノポレーションを介してEV内の合成miR-885-5pおよび他の特定のmiRNA(表4から選択)を直接導入によるものである(図2)。
【0031】
方法C.(De novo誘導):我々はケモカインリガンドCXCL7が、親細胞に適用された場合、miR-885-5pのde novo誘導に関与していることも確認した。これは、幹細胞由来のEVでネイティブmiR-885-5pの発現を誘導するための代替方法として使用できる(図2)。
【0032】
方法D.(空/再充填EV):EVの内因性miRNAを空にし(超音波処理、サポニン透過処理などを介して)、空になったEVを特定のmiRNAとのインキュベートを介して再充填することは、カスタマイズされたEVmiRTM複合体を産生するために利用できるもう1つの方法である(図2)。
【0033】
例として、本発明では、LCP1、CDK2、MCM5、WNT/CTNNB1、CASC7/AGO2が、インビトロでの、試験された一連のがん細胞株(CaCo2、RKO、HT-29、MDA-MB-231、MCF-7、SKOV3、EFO-21、LNCaPおよびTHP-1)における、およびインビボでの乳がんおよび結腸がんの同所性マウスモデルにおける、miR-885-5pの明確な標的であることを示す。我々は、さらに、幹細胞由来のEVを使用して、局所投与および全身投与の両方に適用できるmiRNA送達の新規なシステムを開発した。本発明では、LCP-1タンパク質がmiR-885-5pの明確な標的であることを示す。インビトロ比較オミクス研究では、miR-885-5p発現の変化がLCP-1陽性細胞のタンパク質レベルを調節できることを示す。メカニズムのリンクを確立するために、miR-885-5pの発現レベルは、miR-885-5p阻害剤および前駆体で一連のがん細胞株にトランスフェクトすることによって変更された。阻害配列であるanti-miR-885-5pは、内因性miRNAに特異的に結合して阻害するように設計された、化学的に修飾された一本鎖核酸である。 Pre-miR-885-5pは、内因性の成熟miR-885-5pを模倣する。 miR-885-5pの過剰発現(pre-miRを使用)および阻害(anti-miRを使用)は、リアルタイムqPCRおよび定量的ウエスタンブロットによって検証された。このデータは、miR-885-5pの過剰発現が内因性LCP-1のノックダウンにつながる一方で、miR-885-5pの前駆体miRNAでのがん細胞へのトランスフェクションが遊走および転移の能力の低下につながることを示す。このように、miR-885-5pのアップレギュレーションは、LCP-1の発現を阻害し、腫瘍細胞の増殖および転移能を阻害することによって細胞機能を変化させる。
【0034】
本発明は、患者のLCP-1陽性がんの治療(の方法)で使用するための、本明細書で教示されるmiRNAのパネル、または本明細書で教示されるEVを提供する。
【0035】
特に記載のない限り、「対象」または「患者」は互換的に使用され、動物、好ましくは温血動物、より好ましくは脊椎動物、さらにより好ましくは哺乳動物、さらにより好ましくは霊長類を指し、具体的にはヒト患者および非ヒト哺乳動物および霊長類を含む。好ましくは対象はヒト対象である。
【0036】
用語「哺乳動物」は、ヒト、飼育動物および家畜、動物園の動物、スポーツ動物、ペットの動物、コンパニオンアニマル、および実験動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、犬、猫、モルモット、牛、乳牛、羊、馬、ブタおよび霊長類、例えば、サルおよび類人猿を含むがこれらに限定されず、このように分類される任意の動物を含む。特に好ましくは、性別およびそのすべての年齢カテゴリの両方を含む、ヒト対象である。
【0037】
関連する態様では、そのような治療を必要とする患者のLCP-1陽性がんを治療する方法を提供し、本明細書で教示されるmiRNAのパネルまたは本明細書で教示されるEVの治療有効量を患者に投与することを含む。
【0038】
関連する態様では、患者におけるLCP-1陽性がんの治療のための薬剤の製造のために、本明細書で教示されるmiRNAのパネルまたは本明細書で教示されるEVの使用を提供する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「治療を必要とする対象」などの語句は、所与の状態、特にLCP-1陽性がんの治療から利益を得るであろう対象を含む。そのような対象には、前記状態と診断された対象、前記状態を発症する傾向のある対象、および/または上記の状態が予防されるべき対象が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0040】
「治療する」または「治療」という用語は、例えば、すでに発症したLCP-1陽性がんの治療などのすでに発症した疾患または状態の治療的治療、ならびに予防的または予防措置の両方を包含するものであって、その目的は、LCP-1陽性がんの発生、発症、および進行を防ぐなどの望ましくない苦痛の発生を防ぐか、その可能性を減らすことである。有益なまたは望ましい臨床結果には、1つまたは複数の症状または1つまたは複数の生物学的マーカーの軽減、疾患の程度の減少、疾患の安定した(すなわち、悪化しない)状態、疾患の進行の遅延または緩徐化、病状の改善または緩和等を含んでよいがこれらに限定されない。また、「治療」は、治療を受けていない場合に予想される生存と比較して生存を延長することを意味してもよい。
【0041】
「予防的に有効な量」という用語は、研究者、獣医、医師または他の臨床医によって求められているように、対象において障害の発症を阻害または遅延させる活性化合物または医薬品の量を指す。本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、研究者、獣医、医師または他の臨床医によって求められる、これにはとりわけ、治療されている疾患または状態の症状の緩和が含まれ得るものであり、対象において生物学的または医学的応答を誘発する活性化合物または医薬品の量を指す。本明細書で教示されるように、EVの治療的および予防的に有効な用量を決定するための方法が当技術分野で知られている。
【0042】
並行して、標的とされる特定のがんに応じて、EVmiRTM複合体における外因性miRNA配列のカスタマイズされた処方を可能にするコンパニオン診断キットを我々は開発した。独自のパネルは、液体(血液、尿、エクソソームなど)および組織生検におけるmiRNAレベルを測定/定量化できるだけでなく、少なくとも5つの腫瘍性タンパク質のセット(たとえば、標的とされる特定のがんの種類でアップレギュレートされることが知られている5つの腫瘍性タンパク質のセット(表1から選択され、LCP-1を含む))の発現レベルも評価することができる。コンパニオン診断キットを使用すると、内因性および/または外因性のmiRNAのパネルに基づいて、患者の試料のmiRNAプロファイリングを分析できる。miRNAがダウンレギュレートされていることが判明した場合、これらのmiRNAをEV、例えば、EVmiRアプローチに含めることができる。
【0043】
したがって、一態様は、miRNAのパネルの発現レベルを決定するための手段を含む部品のキットに関し、患者、好ましくはヒトの対象からの試料中の miR-30a-5p、miR-30b-5p、miR-30c-5p、miR-30d-5p、miR-30e-5p、miR-194-5p、miR-302a-3p、miR-302a-5p、miR-335-3p、miR-335-5p、miR-367-3p、miR-373-3p、およびmiR-885-5pを含む。特定の態様において、キットは、miR-30a-5p、miR-30b-5p、miR-30c-5p、miR-30d-5p、miR-30e-5p、miR-194-5p、miR-302a-3p、miR-302a-5p、miR-335-3p、miR-335-5p、miR-367-3p、miR-373-3p、およびmiR-885-5pに特異的に結合できるプライマーが含まれる。そのようなキットは、有利には、試料中のmiRNAレベルを決定する(例えば、定量化する)ことを可能にし、それにより、miRNA配列(特に、標的とされる特定のがんに応じて、本明細書で教示されるEVにおける外因性miRNA配列)のカスタマイズされた処方を可能にする。
【0044】
特定の態様において、miRNAまたはmiRNAのパネルの発現レベルは、リアルタイム/定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)、RNAシーケンシング(例えば、次世代シーケンシング)、miRNAマイクロアレイ、および/またはマルチプレックスmiRNAプロファイリングアッセイによって決定できる。
【0045】
特定の態様において、部品のキットには、miRNAのパネルの発現レベルを決定するための手段が含まれ、患者、好ましくはヒトの対象からの試料中のmiR-16-5p、miR-23a-5p、miR-125b-5p、miR-145-5p、miR-146a-3p、miR-181c-5p、miR-218-5p、miR-495-3p、let-7b-5p、miR-30a-5p、miR-30b-5p、miR-30c-5p、miR-30d-5p、miR-30e-5p、miR-194-5p、miR-302a-3p、miR-302a-5p、miR-335-3p、miR-335-5p、miR-367-3p、miR-373-3p、およびmiR-885-5pを含む。特定の態様において、キットは、miR-16-5p、miR-23a-5p、miR-125b-5p、miR-145-5p、miR-146a-3p、miR-181c-5p、miR-218-5p、miR-495-3p、let-7b-5p、miR-30a-5p、miR-30b-5p、miR-30c-5p、miR-30d-5p、miR-30e-5p、miR-194-5p、miR-302a-3p、miR-302a-5p、miR-335-3p、miR-335-5p、miR-367-3p、miR-373-3p、およびmiR-885-5pに特異的に結合することができるプライマーを含む。
【0046】
特定の態様において、部品のキットは、一連の腫瘍性タンパク質の発現レベルを決定するための手段を含み、該腫瘍性タンパク質は、タンパク質アルゴノート2、癌原遺伝子c-Akt、アネキシンA3、アミロイドベータA4タンパク質、アポトーシス制御因子Bcl-2、Bcl-2関連転写因子1、Bcl-2様タンパク質2、バキュロウイルスIAPリピート含有タンパク質 5、骨形態形成タンパク質1、癌感受性候補7、G1/S特異的サイクリンD1、CD44抗原、カドヘリン2、カドヘリン11、サイクリン依存性キナーゼ2、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤p27、CCAAT/エンハンサー結合タンパク質アルファ、チトクロムc酸化酵素サブユニット2、カテニンベータ1、C-X-Cケモカイン受容体タイプ4、Dickkopf関連タンパク質1、上皮成長因子受容体、脂肪酸シンターゼ、高移動度グループタンパク質HMGI-C、インスリン様成長因子1受容体、インスリン様成長因子2 mRNA結合タンパク質2、転写因子AP-1、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼキナーゼキナーゼ4、誘導骨髄白血病細胞分化タンパク質Mcl-1、DNA複製ライセンス因子MCM5、E3ユビキチンタンパク質リガーゼMdm2、72 kDaタイプIVコラゲナーゼ、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9、転移関連タンパク質MTA3、ムチン13、核因子NFκB p105サブユニット、ホスファチジルイノシトール-4,5-二リン酸3-キナーゼ触媒サブユニットアルファアイソフォーム、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子表面受容体、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー11、Ras GTPase活性化タンパク質1、ラウンドアバウトホモログ1、スリットホモログ2タンパク質、ジンクフィンガータンパク質SNAI2、マザーズアゲンストデカペンタプレジックホモログ3、ジンクフィンガータンパク質SNAI1、転写因子SOX-2-OT、転写因子Sp1、TGFベータ受容体タイプ2、トランスフォーミング増殖因子ベータ1、血管内皮増殖因子A、および癌原遺伝子Wnt-1からなる群から選択される。例えば、部品のキットは、LCP-1を含む表1から選択される5つの腫瘍性タンパク質のセットの発現レベルを決定するための手段を含み得る。
【0047】
本明細書で使用される「試料」または「生物学的試料」という用語は、対象から得られた任意の生物学的標本を含む。
【0048】
試料は、生検、リキッドバイオプシー(血液、尿、唾液、その他の体液)および組織試料、組織ホモジネートなどを含んでよい。試料は、これに限定されるものではないが、穿刺吸引および細胞溶解物も含んでよい。好ましくは、試料は生検、組織試料、穿刺吸引であり、より好ましくは、試料は生検である。好ましくは、試料は、対象からの前記試料の除去または単離を可能にする、外科的方法または低侵襲的方法によって容易に入手可能である。
【0049】
さらなる態様は、本明細書に規定される、対象由来試料におけるmiRNA(パネルに記載)の発現レベルを決定するための、好ましくは、患者への投与に適した、本明細書で教示されるEVを調製するための、キットの使用に関する。miRNAの発現レベルに応じて、miRNAのパネルおよび/またはEVを患者の治療用にカスタマイズしてもよい。
【0050】
表3.設計されたEVmiRTMに含まれる内因性miRNAとその標的遺伝子/タンパク質
【表3】
【0051】
表4.設計されたEVmiRTMで過剰発現した外因性miRNAとその標的遺伝子/タンパク質
【表4】
【0052】
本出願はまた、以下に陳述されるような態様および実施形態を提供する:
1. 特定のmiRNA配列(miR-885-5pを含む)の投与を介してLCP-1陽性のがん患者を治療する方法。miRNA配列は、がんの成長と転移に関連しているがん関連タンパク質に影響を与えることがわかっている特定のmiRNA配列(EVmiRTM複合体を含む)が充填されているか、または過剰発現している送達媒体に埋め込まれていてよい。
2. miRNAパネルが、miR-16-5p、miR-23a-5p、miR-125b-5p、miR-145-5p、miR-146a-3p、miR-181c-5p、miR-218-5p、miR-495-3p、let-7b-5p、miR-30a-5p、miR-30b-5p、miR-30c-5p、miR-30d-5p、miR-30e-5p、miR-194-5p、miR-302a-3p、miR-302a-5p、miR-335-3p、miR-335-5p、miR-367-3p、miR-373-3p、miR-885-5p(表1のmiRNAパネル参照) に対応する、陳述1に記載の方法。
3. 送達媒体は、臍帯の幹細胞(ワルトン膠様質細胞を含む)、血液、臍帯血、または骨髄に由来する細胞外小胞(EV)または微小胞であり、および、該幹細胞は間葉系由来または前駆細胞由来であってよい、陳述1に記載の方法。
4. EVは、狭いサイズ範囲(30~300 nm)の幹細胞から産生され、特定の細胞内および細胞膜タンパク質(P-セレクチン、インテグリンベータ-1、血管細胞接着タンパク質1、アネキシン、腫瘍感受性遺伝子101タンパク質、Hsp70結合タンパク質1、CD9、CD29、CD63、CD73、CD81、CD90を含む)によって、および特定の内因性miRNA配列(表2参照)によって特徴付けられる、陳述3に記載の方法。
5. EVは、がん疾患を標的とした特定のmiRNA配列(表3および表4参照)が充填されている、陳述1に記載の方法。
6. 特定のmiRNA配列は、患者の診断プロフィール(表3および表4参照)に基づくがんの種類と病期に応じて、miR-16-5p、miR-23a-5p、miR-125b-5p、miR-145-5p、miR-146a-3p、miR-181c-5p、miR-218-5p、miR-495-3p、let-7b-5p、miR-30a-5p、miR-30b-5p、miR-30c-5p、miR-30d-5p、miR-30e-5p、miR-194-5p、miR-302a-3p、miR-302a-5p、miR-335-3p、miR-335-5p、miR-367-3p、miR-373-3pおよびmiR-885-5pを含むパネルから選択される、陳述2に記載の方法。
7. 特定のmiRNA配列は、(i)トランスフェクションまたはdenovo誘導による親幹細胞での特異的なアップレギュレーションに続いて、EVに事前に充填されるか、または(ii)直接導入/化学的挿入/エレクトロポレーションによってすでに形成されたEVに充填される(方法のセクション参照)、陳述1に記載の方法。
8. 標的とされ、がん細胞で過剰発現される特定のタンパク質は、タンパク質アルゴノート2、癌原遺伝子c-Akt、アネキシンA3、アミロイドベータA4タンパク質、アポトーシス制御因子Bcl-2、Bcl-2関連転写因子1、Bcl-2様タンパク質2、バキュロウイルスIAPリピート含有タンパク質 5、骨形態形成タンパク質1、癌感受性候補7、G1/S特異的サイクリンD1、CD44抗原、カドヘリン2、カドヘリン11、サイクリン依存性キナーゼ2、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤p27、CCAAT/エンハンサー結合タンパク質アルファ、チトクロムc酸化酵素サブユニット2、カテニンベータ1、C-X-Cケモカイン受容体タイプ4、Dickkopf関連タンパク質1、上皮成長因子受容体、脂肪酸シンターゼ、高移動度グループタンパク質HMGI-C、インスリン様成長因子1受容体、インスリン様成長因子2 mRNA結合タンパク質2、転写因子AP-1、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼキナーゼキナーゼ4、誘導骨髄白血病細胞分化タンパク質Mcl-1、DNA複製ライセンス因子MCM5、E3ユビキチンタンパク質リガーゼMdm2、72 kDaタイプIVコラゲナーゼ、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9、転移関連タンパク質MTA3、ムチン13、核因子NFκB p105サブユニット、ホスファチジルイノシトール-4,5-二リン酸3-キナーゼ触媒サブユニットアルファアイソフォーム、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子表面受容体、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー11、Ras GTPase活性化タンパク質1、ラウンドアバウトホモログ1、スリットホモログ2タンパク質、ジンクフィンガータンパク質SNAI2、マザーズアゲンストデカペンタプレジックホモログ3、ジンクフィンガータンパク質SNAI1、転写因子SOX-2-OT、転写因子Sp1、TGFベータ受容体タイプ2、トランスフォーミング増殖因子ベータ1、血管内皮増殖因子A、癌原遺伝子Wnt-1(表2参照)であるが、個々のmiRNAには複数の標的があるためこれらに限定されるものではない、陳述1に記載の方法。
9. 対象となるがんの種類は、LCP-1を過剰発現することが示されている種類と、陳述8で定義されているタンパク質パネルのメンバーであり、および、がんの種類、例えば、皮膚黒色腫、ぶどう膜黒色腫、神経膠腫、乳がん、頭頸部がん、口腔がん、甲状腺がん、肺がん、肝臓がん、膵臓がん、胃がん、結腸直腸がん、膀胱がん、尿路上皮がん、腎がん(renal cancer)、腎臓がん(kidney cancer)、骨がん、前立腺がん、精巣がん、子宮頸がん、卵巣がん、および子宮内膜がん、ならびに、上記陳述8で定義されている腫瘍性タンパク質を過剰発現するその他の種類のがんを含む、陳述1に記載の方法。
10. がん患者は、組織およびリキッドバイオプシーおよび生体液における、LCP-1陽性および/またはLCP-1リン酸化状態、miR-885-5p陰性腫瘍、およびmiR-885-5p発現、ならびに、上記陳述6および8に記載のmiRNAとタンパク質の組み合わせを選択するように設計された特定の診断キットを介するmiRNAを充填したEVの投与の対象に選択される、陳述1に記載の方法。
11. miRNAを充填したEVは、液体または固体の形で経口、筋肉内または静脈内のいずれかでがん患者に局所投与または全身投与される、陳述1に記載の方法。
12. miRNAを充填したEVは、主要な治療アプローチとして、または他の療法(例えば、化学療法、放射線療法、および他の生物学的療法など)と組み合わせて、予防的または治療的に投与することができる、陳述1に記載の方法。
13. miRNAを充填したEVは、(血液脳関門を通過することにより)脳内の部位を含む腫瘍部位(原発性および転移性の両方)に移動する、陳述1に記載の方法。
14. miRNAを充填したEVは、がん細胞の細胞膜と融合し、標的細胞の細胞質に治療用miRNAを放出する、陳述1に記載の方法。
15. 幹細胞および/または間葉系幹細胞に由来する細胞外小胞は、他の生物学的小胞または合成小胞および物質(リポソーム、コラーゲン、PEGおよびナノ/マイクロ粒子など)に置き換えられ/代替され/包まれ、および、腫瘍内のLCP-1タンパク質を標的とする特定のmiRNA配列(miR-885-5pを含む)が充填されている、陳述1に記載の方法。
16. miRNAのパネルは、miR-16-5p、miR-23a-5p、miR-125b-5p、miR-145-5p、miR-146a-3p、miR-181c-5p、miR-218-5p、miR-495-3p、およびlet-7b-5pを含み、および、miR-30a-5p、miR-30b-5p、miR-30c-5p、miR-30d-5p、miR-30e-5p、miR-194-5p、miR-302a-3p、miR-302a-5p、miR-335-3p、miR-335-5p、miR-367-3p、miR-373-3p、およびmiR-885-5pからなる群から選択される1以上のmiRNAをさらに含む。
17. 該パネルは、miR-16-5p、miR-23a-5p、miR-125b-5p、miR-145-5p、miR-146a-3p、miR-181c-5p、miR-218-5p、miR-495-3p、let-7b-5p、およびmiR-885-5pを含む、陳述16に記載のパネル。
18. 該パネルは、miR-16-5p、miR-23a-5p、miR-125b-5p、miR-145-5p、miR-146a-3p、miR-181c-5p、miR-218-5p、miR-495-3p、let-7b-5p、miR-30a-5p、miR-30b-5p、miR-30c-5p、miR-30d-5p、miR-30e-5p、miR-194-5p、miR-302a-3p、miR-302a-5p、miR-335-3p、miR-335-5p、miR-367-3p、miR-373-3p、およびmiR-885-5pを含む、陳述16または17に記載のパネル。
19. 該パネルは、天然に存在するmiRNAおよび合成的に過剰発現したmiRNAを含むものであって、該合成的に過剰発現したmiRNAは、合成premiR、成熟miR、antimiR、またはde novo誘導miRである、陳述16~18のいずれか1に記載のパネル。
20. 該パネルは、細胞外小胞(EV)内、または他の生物学的小胞または合成小胞内、またはリポソーム、コラーゲン、PEG、ナノ粒子またはマイクロ粒子などの物質内に埋め込まれる、陳述16~19のいずれか1に記載のパネル。
21. 陳述16~19のいずれか1に記載のmiRNAのパネルが充填されている細胞外小胞(EV)、または、陳述16~19のいずれか1に記載のmiRNAのパネルをコードする核酸が充填されている細胞外小胞(EV)。
22. EVは、臍帯、ワルトン膠様質、血液、臍帯血、または骨髄に由来する幹細胞に由来するものであって、該幹細胞は間葉系または前駆細胞に由来する、陳述21に記載の細胞外小胞(EV)。
23. EVは10 nm~500 nmまたは30 nm~300nmのサイズ範囲で産生される、陳述21または22に記載のEV。
24. EV は、P-セレクチン、インテグリンベータ-1、血管細胞接着タンパク質1、アネキシン、腫瘍感受性遺伝子101タンパク質、Hsp70結合タンパク質1、CD9、CD29、CD63、CD73、CD81、およびCD90を含む細胞内および細胞膜タンパク質で特徴づけられる、陳述21~23のいずれか1に記載のEV。
25. miRNA配列は、(i)トランスフェクションまたはde novo誘導による親幹細胞でのアップレギュレーションに続いて、EVに事前に充填される、および/または(ii)直接導入、化学的挿入および/またはエレクトロポレーションによってすでに形成されたEVに充填される、陳述21~24のいずれか1に記載のEV。
26. LCP-1陽性がん患者を治療する方法で使用するための、陳述16~20のいずれか1に記載のパネル、または、陳述21~25のいずれか1に記載のEV。
27. 1以上のmiRNAが、患者の診断プロフィールに基づいて、がんの種類と病期に応じて選択される、miR-30a-5p、miR-30b-5p、miR-30c-5p、miR-30d-5p、miR-30e-5p、miR-194-5p、miR-302a-3p、miR-302a-5p、miR-335-3p、miR-335-5p、miR-367-3p、miR-373-3p、およびmiR-885-5pからなる群から選択される、陳述26に記載のパネルまたはEV。
28. LCP-1陽性がん細胞は、タンパク質アルゴノート2、癌原遺伝子c-Akt、アネキシンA3、アミロイドベータA4タンパク質、アポトーシス制御因子Bcl-2、Bcl-2関連転写因子1、Bcl-2様タンパク質2、バキュロウイルスIAPリピート含有タンパク質 5、骨形態形成タンパク質1、癌感受性候補7、G1/S特異的サイクリンD1、CD44抗原、カドヘリン2、カドヘリン11、サイクリン依存性キナーゼ2、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤p27、CCAAT/エンハンサー結合タンパク質アルファ、チトクロムc酸化酵素サブユニット2、カテニンベータ1、C-X-Cケモカイン受容体タイプ4、Dickkopf関連タンパク質1、上皮成長因子受容体、脂肪酸シンターゼ、高移動度グループタンパク質HMGI-C、インスリン様成長因子1受容体、インスリン様成長因子2 mRNA結合タンパク質2、転写因子AP-1、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼキナーゼキナーゼ4、誘導骨髄白血病細胞分化タンパク質Mcl-1、DNA複製ライセンス因子MCM5、E3ユビキチンタンパク質リガーゼMdm2、72 kDaタイプIVコラゲナーゼ、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9、転移関連タンパク質MTA3、ムチン13、核因子NFκB p105サブユニット、ホスファチジルイノシトール-4,5-二リン酸3-キナーゼ触媒サブユニットアルファアイソフォーム、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子表面受容体、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー11、Ras GTPase活性化タンパク質1、ラウンドアバウトホモログ1、スリットホモログ2タンパク質、ジンクフィンガータンパク質SNAI2、マザーズアゲンストデカペンタプレジックホモログ3、ジンクフィンガータンパク質SNAI1、転写因子SOX-2-OT、転写因子Sp1、TGFベータ受容体タイプ2、トランスフォーミング増殖因子ベータ1、血管内皮増殖因子A、および癌原遺伝子Wnt-1からなる群から選択される1以上のタンパク質を過剰発現する、陳述26または27に記載のパネルまたはEV。
29. LCP-1陽性がんは、乳がん、皮膚黒色腫、ぶどう膜黒色腫、神経膠腫、頭頸部がん、口腔がん、甲状腺がん、肺がん、肝臓がん、膵臓がん、胃がん、結腸直腸がん、膀胱がん、尿路上皮がん、腎がん、腎臓がん、骨がん、前立腺がん、精巣がん、子宮頸がん、卵巣がん、子宮内膜がん、ならびに、陳述28に記載の1以上の腫瘍性タンパク質を過剰発現するその他の種類のがんからなる群から選択される、陳述26~28のいずれか1に記載のパネルまたはEV。
30. がん患者は、組織、リキッドバイオプシーまたは生体液中の、1以上のLCP-1陽性腫瘍、LCP-1リン酸化状態、miR-885-5p陰性腫瘍、miR-885-5p発現、およびmiRNAおよび陳述28に記載のタンパク質の組み合わせの発現を選択するように設計された特定の診断キットを介するmiRNAを充填したEVの投与の対象に選択される、陳述26~29のいずれか1に記載のパネルまたはEV。
31. miRNAを充填したEVは、液体または固体の形で、経口、筋肉内、または静脈内のいずれかでがん患者に局所投与または全身投与される、陳述26~30のいずれか1に記載のパネルまたはEV。
32. miRNAを充填したEVは、主要な治療アプローチとして、または他の療法(例えば、化学療法、放射線療法、または他の生物学的療法など)と組み合わせて、予防的または治療的に投与することができる、陳述26~31のいずれか1に記載のパネルまたはEV。
33. miRNAを充填したEVは、例えば脳内の部位のような腫瘍部位に移動する、陳述26~32のいずれか1に記載のパネルまたはEV。
34. 腫瘍部位が原発性腫瘍部位または転移性腫瘍部位である、陳述33に記載のパネルまたはEV。
35. miRNAを充填したEVは、がん細胞の細胞膜と融合し、標的細胞の細胞質に治療用miRNAを放出する、陳述26~34のいずれか1に記載のパネルまたはEV
36. 患者由来の試料における、miR-30a-5p、miR-30b-5p、miR-30c-5p、miR-30d-5p、miR-30e-5p、miR-194-5p、miR-302a-3p、miR-302a-5p、miR-335-3p、miR-335-5p、miR-367-3p、miR-373-3p、およびmiR-885-5pを含むmiRNAのパネルの発現レベルを決定するための手段を含む部品のキット。
37. 部品のキットが、患者由来の試料における、miR-16-5p、miR-23a-5p、miR-125b-5p、miR-145-5p、miR-146a-3p、miR-181c-5p、miR-218-5p、miR-495-3p、let-7b-5p、miR-30a-5p、miR-30b-5p、miR-30c-5p、miR-30d-5p、miR-30e-5p、miR-194-5p、miR-302a-3p、miR-302a-5p、miR-335-3p、miR-335-5p、miR-367-3p、miR-373-3p、およびmiR-885-5pを含むmiRNAのパネルの発現レベルを決定するための手段を含む、陳述36に記載の部品のキット。
38. 患者由来の試料におけるmiRNAの発現レベルを決定するための陳述36または37に記載の部品のキットの使用、好ましくは、患者に投与するための陳述21~25のいずれか1に記載のEVを調製するための陳述36または37に記載の部品のキットの使用。
【実施例
【0053】
EVを介したmiRNA療法に応答するがん細胞の反応を評価するためのインビトロ研究:乳がん (MDA-MB-231およびMCF-7)、結腸がん (RKO、HT-29、CACO2)および卵巣がん (SKOV3、EFO-21)、 前立腺がん (LNCaP)および急性単球性白血病(THP-1) の細胞株は、外因性の治療用miR-885-5p(およびmiRNAの内因性パネル、表2を参照)を含むEVに曝露された。治療への反応は、細胞形態、増殖、遊走、遺伝子発現およびアポトーシスアッセイによって評価された(図3および図4)。インビトロ実験では、幹細胞由来のEVがさまざまながん細胞株によって内部移行し、標的細胞の膜損傷、細胞収縮、および小疱形成によって証明されるように生物学的効果を誘発することが確認された(図5)。顕著に、EVがアポトーシスを誘発し、細胞増殖を阻害し、および腫瘍の成長および転移を用量/時間依存的に減弱するという証拠があった。がん細胞におけるEVのアポトーシス促進および抗遊走効果は、細胞培養に導入する前のEVのRNase処理によってほぼ完全に取り消された。さまざまなサイズでのEVの範囲が、インビトロおよびインビボで試験され(図6)、そして、サイズに依存するEVの動態および体内分布の実験的およびモデリング調査(SECおよびTRPSを用いた粒子分析)を通じた最大の送達効率を達成するためのインシリコで試験された。異なる時点での腫瘍部位でのEVmiRとがん細胞の共局在を示す(図6Aおよび6B)。このように、EVmiRはインビボでがん細胞を特異的に標的にして攻撃することができた。
【0054】
図7は、左側の挿入図にEVmiRの走査型電子顕微鏡写真を示す。大きな画像は、EVmiRがMDA-MB-231細胞株を攻撃していることを示す。EVmiRは腫瘍細胞と共局在し、膜取り込みメカニズムを介してその内容物を充填することが示されている。
【0055】
EVmiRTMベースの治療に対する反応を評価するためのインビボがんモデル:本発明では、我々は原発性腫瘍と転移性腫瘍の両方でLCP1を標的とし、抑制する新しいmiRNAベースの治療薬を開発した。転移性乳がん(乳房から脳への遠隔転移)と結腸直腸がんのインビボ研究では、我々は循環中の蛍光標識EVをモニターおよび定量化し、健康なマウスと担がんマウスの両方の細胞および臓器への体内分布および取り込みを画像化することができた。我々は、治療用EVmiRTM複合体が、脳を含む(すなわち、EVは血液脳関門を通過することができる)原発性および転移性の両方の腫瘍増殖部位に蓄積することを発見した。次に、我々は、特定の治療用miRNA(表から選択)を含む設計されたEVを担がんマウスに投与することにより、および、インビボイメージング技術を使用してリアルタイムでそれらをモニタリングすることにより、動物のがんモデルにおけるEVmiRTMシステムの治療の可能性を調査した。インビボイメージングによる腫瘍負荷の評価は、未治療のマウスと比較して、EVmiRTMで治療されたマウスにおける経時的な腫瘍増殖および転移負荷の減少を示した。また、我々は測定可能な治療結果を生み出すために必要な投与計画、およびEVmiRTM複合体が到達できる最大の組織/腫瘍の深さも特定した。前立腺がんのマウスモデルを利用して、LCP-1の発現の減少が転移を阻害する一方で、LCP-1の発現とリン酸化の増加が原発腫瘍の転移を刺激することをさらに実証した。
【0056】
治療薬の作用機序(シグナル伝達経路の構築):プロテオミクス、組織プロファイリング、およびmiRNAオミクスなどの最先端技術が、経路およびEVmiRTM複合体の抗がん効果を可能にするメカニズムを特定するために、細胞、EV、および腫瘍部位から外植された組織に対して実行された。カスタムマルチプレックスアッセイは、Ser5および他の関連標的でのLCP-1タンパク質のリン酸化活性を測定することにより、治療薬の影響を受けるシグナル伝達経路を解明するために採用された。最先端の経路最適化アルゴリズムによるデータの正規化と分析を利用して、治療用EVmiRTM複合体の作用機序を特定した。さらに、AFM研究は、EV 含有miR-885-5p miRNAによるLCP-1タンパク質のダウンレギュレーション後の転移性がん細胞の機械的特性を特徴づけるために実施され、細胞の可塑性とがん細胞の高い転移能との関連を示した。
【0057】
miRNAベースの治療に対する腫瘍反応のモデリング:また、我々は革新的な患者特異的マルチスケール計算モデルを利用して、分析と予測により、より効率的なEVmiRTMベースの治療送達システムの設計を可能にした:1)幹細胞(間葉系またはその他)に由来するEVの血管沈着、2)EVを介したmiRNA治療に対する腫瘍の反応。これは、複雑な腫瘍微小環境を標的とした送達システムを開発する課題が複雑であり、ほとんどの場合、効率的な浸透と治療作用を妨げるため、治療戦略の不可欠な部分である。
【0058】
本明細書では、本発明の特定の実施形態/実施例を記載するが、本発明は、以下の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲および精神の範囲内である変形および修正を包含することを理解されたい。
【0059】
参考文献
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【0060】
配列表
hsa-miR-16-5p: UAGCAGCACGUAAAUAUUGGCG (配列番号1)
hsa-miR-23a-5p (別名 hsa-miR-23a*): GGGGUUCCUGGGGAUGGGAUUU(配列番号2)
hsa-miR-30a-5p (別名 hsa-miR-30a): UGUAAACAUCCUCGACUGGAAG(配列番号3)
hsa-miR-30b-5p (別名 hsa-miR-30b): UGUAAACAUCCUACACUCAGCU(配列番号4)
hsa-miR-30c-5p (別名 hsa-miR-30c):UGUAAACAUCCUACACUCUCAGC (配列番号5)
hsa-miR-30d-5p (別名 hsa-miR-30d): UGUAAACAUCCCCGACUGGAAG(配列番号6)
hsa-miR-30e-5p (別名 hsa-miR-30e): UGUAAACAUCCUUGACUGGAAG(配列番号7)
hsa-miR-125b-5p (別名 hsa-miR-125b):UCCCUGAGACCCUAACUUGUGA (配列番号8)
hsa-miR-145-5p (別名 hsa-miR-145):GUCCAGUUUUCCCAGGAAUCCCU (配列番号9)
hsa-miR-146a-3p (別名 hsa-miR-146*):CCUCUGAAAUUCAGUUCUUCAG (配列番号10)
hsa-miR-181c-5p (別名hsa-miR-181c):AACAUUCAACCUGUCGGUGAGU (配列番号11)
hsa-miR-194-5p (別名hsa-miR-194): UGUAACAGCAACUCCAUGUGGA(配列番号12)
hsa-miR-218-5p (別名hsa-miR-218): UUGUGCUUGAUCUAACCAUGU (配列番号13)
hsa-miR-302a-3p (別名hsa-miR-302a/hsa-miR-302):UAAGUGCUUCCAUGUUUUGGUGA (配列番号14)
hsa-miR-302a-5p (別名hsa-miR-302a*):ACUUAAACGUGGAUGUACUUGCU (配列番号15)
hsa-miR-335-3p (別名hsa-miR-335*): UUUUUCAUUAUUGCUCCUGACC(配列番号16)
hsa-miR-335-5p (別名hsa-miR-335): UCAAGAGCAAUAACGAAAAAUGU(配列番号17)
hsa-miR-367-3p (別名hsa-miR-367): AAUUGCACUUUAGCAAUGGUGA(配列番号18)
hsa-miR-373-3p (別名hsa-miR-373): GAAGUGCUUCGAUUUUGGGGUGU(配列番号19)
hsa-miR-495-3p (別名hsa-miR-495): AAACAAACAUGGUGCACUUCUU(配列番号20)
hsa-miR-885-5p: UCCAUUACACUACCCUGCCUCU (配列番号21)
hsa-let-7b-5p (別名hsa-let-7b): UGAGGUAGUAGGUUGUGUGGUU (配列番号22)
【0061】
図面の用語
EV Components EV構成要素
Tetraspanins テトラスパニン
Lipids 脂質
phosphatidylserine ホスファチジルセリン
Cholesterol コレステロール
Sphingolipids スフィンゴ脂質
Cell adhesion 細胞接着
Integrins インテグリン
P-selectin P-セレクチン
Intracellular Trafficking 細胞内輸送
Annexin アネキシン
GTPases GTPアーゼ
Biogenesis Factors 新生因子
Chaperones シャペロン
histones ヒストン
EV micrograph EV顕微鏡写真
Transporters トランスポーター
Overexpression of miR-885-5p in EVs EVにおけるmiR-885-5pの過剰発現
Values 値
Control 対照
Method 方法
LCP-1 Expression LCP-1発現
Relative Expression 相対発現
Cell kill potency 細胞死効力
Days 日
LC of GSI GSIのLC
HC of GSI GSIのHC
Controls 対照
Day 日
Control mouse model 対照マウスモデル
Synthetic particles 合成粒子
1h post injection 注射後1時間
Tumor-bearing mouse model 担腫瘍マウスモデル
CHANNEL チャネル
Tumor 腫瘍
Background バックグラウンド
10min post injection 注射後10分
60min post injection 注射後60分
Quanta 素量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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