(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】リーン車両
(51)【国際特許分類】
B62K 5/10 20130101AFI20240829BHJP
B62J 25/00 20200101ALI20240829BHJP
【FI】
B62K5/10
B62J25/00
(21)【出願番号】P 2021543062
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2020032675
(87)【国際公開番号】W WO2021039989
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2019158745
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】大野 孝祐
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0006498(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0035625(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0176384(US,A1)
【文献】国際公開第2017/194686(WO,A1)
【文献】特開平11-115858(JP,A)
【文献】意匠登録第1595205(JP,S)
【文献】中国特許出願公開第109693745(CN,A)
【文献】MWC-4,Yamaha Motor Co., Ltd. [online],2017年,[検索日 2020.10.07],インター ネット:<URL:https://global.yamaha-motor.com/about/design/concept/mwc4/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 5/10,
B62J 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームに支持され、運転者が着座するシートと、
前記車体フレームに支持され、運転者が足を載せる左ステップ及び右ステップと、
前記車体フレームの左に位置する左前輪と、
前記車体フレームの右に位置する右前輪と、
少なくとも一つの後輪と、
前記左前輪を前記車体フレームに対して揺動可能に支持する左揺動アームと、前記右前輪を前記車体フレームに対して揺動可能に支持する右揺動アームと、を有し、前記車体フレーム、前記左前輪及び前記右前輪を左右方向に傾斜するように支持する傾斜リンク機構と、
前記左前輪及び前記右前輪の動きを緩衝する緩衝装置と、
を備え、
左に旋回する際には前記車体フレーム、前記左前輪、前記右前輪及び前記後輪を左に傾斜し且つ右に旋回する際には前記車体フレーム、前記左前輪、前記右前輪及び前記後輪を右に傾斜するリーン車両であって、
前記車体フレームは、メイン骨格部を備え、
前記メイン骨格部において前記左ステップ及び前記右ステップの前後方向中央よりも前に位置するメイン骨格前部は、前後方向に直線的に延びるとともに、前記メイン骨格前部の車両幅方向の寸法が前記車体フレームに対する前記左揺動アームの支持部と前記車体フレームに対する前記右揺動アームの支持部との間隔よりも大きくなるように構成され、
前記車体フレームは、直立状態の前記車体フレームにおいて、リーン車両の側面視で、前記左ステップ及び前記右ステップの少なくとも一部の上面よりも下の位置で前記傾斜リンク機構の
前記左揺動アームの支持部及び前記右揺動アームの支持部の全体を支持
し、
前記メイン骨格前部の全体は、前記左ステップ及び前記右ステップの少なくとも一部の上面よりも下に位置するように構成される、
リーン車両。
【請求項2】
請求項1に記載のリーン車両において、
前記メイン骨格部は、平面視で前記左ステップと前記右ステップとの間に位置する、リーン車両。
【請求項3】
請求項2に記載のリーン車両において、
前記メイン骨格部は、運転者が前記シートに着座した状態で前記左ステップ及び前記右ステップに足を載せた時の前記運転者の両脚の間を前後方向に直線的に延びる、リーン車両。
【請求項4】
請求項1に記載のリーン車両において、
前記メイン骨格部は、リーン車両の側面視で、前記運転者が前記シートに着座した状態で足を載せる前記左ステップ及び前記右ステップの上面よりも下の位置で、前後方向に直線的に延びる、リーン車両。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載のリーン車両において、
駆動源を更に備え、
前記メイン骨格部は、前記メイン骨格前部によって前記傾斜リンク機構を支持し、前記左ステップ及び前記右ステップの前後方向の中央よりも後ろに位置するメイン骨格後部によって前記シート、前記後輪及び前記駆動源を支持する、リーン車両。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載のリーン車両において、
運転者の操作によって操舵軸を中心として回転するステアリングハンドルをさらに備え、
前記車体フレームは、前記ステアリングハンドルを回転可能に支持するハンドル支持部を備え、
前記ハンドル支持部は、前記メイン骨格部とは別部材によって構成されていて、且つ、前記メイン骨格部の上部から上方に延びている、リーン車両。
【請求項7】
請求項6に記載のリーン車両において、
前記ハンドル支持部の少なくとも一部は、前記メイン骨格前部の上部から上方に延びている、リーン車両。
【請求項8】
請求項6または7に記載のリーン車両において、
前記メイン骨格前部の上端は、前記ステアリングハンドルの下端よりも低い、リーン車両。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか一つに記載のリーン車両において、
前記傾斜リンク機構は、前記メイン骨格部及び前記ハンドル支持部に対して分離可能に構成されている、リーン車両。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一つに記載のリーン車両において、
前記メイン骨格前部の上端は、前記シートの着座面よりも低い、リーン車両。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一つに記載のリーン車両において、
前記メイン骨格前部の上端は、前記傾斜リンク機構の上端よりも低い、リーン車両。
【請求項12】
請求項6から9のいずれか一つに記載のリーン車両において、
前記ハンドル支持部の上端は、前記シートの着座面よりも高い、リーン車両。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一つに記載のリーン車両において、
前記左前輪と前記右前輪とのトレッド幅は、前記左ステップの左端と前記右ステップの右端との左右方向の距離よりも大きい、リーン車両。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一つに記載のリーン車両において、
前記左ステップは、前記シートに着座している運転者が左足を着地するための凹み部を有する、リーン車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーン車両に関する。
【背景技術】
【0002】
左に旋回する際に左に傾斜し、右に旋回する際に右に傾斜するリーン車両が知られている。このようなリーン車両として、例えば特許文献1には、車体フレームと、2つの前輪と、1つの後輪とを有する三輪傾斜車両が開示されている。2つの前輪は、左前輪及び右前輪を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リーン車両において、運転者の乗車位置、車体フレームに搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を含むリーン車両の設計自由度を高めることが望まれている。
【0005】
本発明は、運転者の乗車位置、車体フレームに搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を含むリーン車両の設計自由度を高めることができるリーン車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係るリーン車両は、車体フレームと、前記車体フレームに支持され、運転者が着座するシートと、前記車体フレームに支持され、運転者が足を載せる左ステップ及び右ステップと、前記車体フレームの左に位置する左前輪と、前記車体フレームの右に位置する右前輪と、少なくとも一つの後輪と、前記左前輪を前記車体フレームに対して揺動可能に支持する左揺動アームと、前記右前輪を前記車体フレームに対して揺動可能に支持する右揺動アームと、を有し、前記車体フレーム、前記左前輪及び前記右前輪を左右方向に傾斜するように支持する傾斜リンク機構と、前記左前輪及び前記右前輪の動きを緩衝する緩衝装置とを備え、左に旋回する際には前記車体フレーム、前記左前輪、前記右前輪及び前記後輪を左に傾斜し且つ右に旋回する際には前記車体フレーム、前記左前輪、前記右前輪及び前記後輪を右に傾斜するリーン車両である。前記車体フレームは、メイン骨格部を備える。前記メイン骨格部において前記左ステップ及び前記右ステップの前後方向中央よりも前に位置するメイン骨格前部は、前後方向に直線的に延びるとともに、前記メイン骨格前部の車両幅方向の寸法が前記車体フレームに対する前記左揺動アームの支持部と前記車体フレームに対する前記右揺動アームの支持部との間隔よりも大きくなるように構成され、且つ、リーン車両の側面視で、前記左ステップ及び前記右ステップの少なくとも一部の上面よりも下の位置で前記傾斜リンク機構の少なくとも一部を支持する。
【0007】
このように、メイン骨格前部を、前後方向に直線的に延びるとともに、前記メイン骨格前部の車両幅方向の寸法が車体フレームに対する左揺動アームの支持部と前記車体フレームに対する右揺動アームの支持部との間隔よりも大きくなるように構成し、且つ、リーン車両の側面視で、前記左ステップ及び前記右ステップの少なくとも一部の上面よりも下の位置で傾斜リンク機構の少なくとも一部を支持するように構成することにより、運転者の乗車位置、車体フレームに搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を高めることができる。よって、リーン車両の設計自由度を高めることができる。
【0008】
他の観点によれば、本発明のリーン車両は、以下の構成を含むことが好ましい。前記メイン骨格部は、平面視で前記左ステップと前記右ステップとの間に位置する。
【0009】
このように、メイン骨格部が、平面視で、左ステップと右ステップとの間に位置することにより、運転者の乗車位置、車体フレームに搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を高めることができる。よって、リーン車両の設計自由度を高めることができる。
【0010】
他の観点によれば、本発明のリーン車両は、以下の構成を含むことが好ましい。前記メイン骨格部は、運転者が前記シートに着座した状態で前記左ステップ及び前記右ステップに足を載せた時の前記運転者の両脚の間を前後方向に直線的に延びる。
【0011】
このように、メイン骨格部は、幅が狭く前後方向に直線的に延びる形状である。これにより、運転者の乗車位置、車体フレームに搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を高めることができる。よって、リーン車両の設計自由度を高めることができる。
【0012】
他の観点によれば、本発明のリーン車両は、以下の構成を含むことが好ましい。前記メイン骨格部は、リーン車両の側面視で、前記運転者が前記シートに着座した状態で足を載せる前記左ステップ及び前記右ステップの上面よりも下の位置で、前後方向に直線的に延びる。
【0013】
このように、メイン骨格部を、リーン車両の側面視で、運転者がシートに着座した状態で足を載せる左ステップ及び右ステップの上面よりも下の位置で、前後方向に直線的に延びるように構成することにより、運転者の乗車位置、車体フレームに搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を高めることができる。よって、リーン車両の設計自由度を高めることができる。
【0014】
他の観点によれば、本発明のリーン車両は、以下の構成を含むことが好ましい。前記メイン骨格部は、前記メイン骨格前部によって前記傾斜リンク機構を支持し、前記左ステップ及び前記右ステップの前後方向の中央よりも後ろに位置するメイン骨格後部によって前記シート、前記後輪及び前記駆動源を支持する。
【0015】
上述の構成では、車体フレームのメイン骨格部は、メイン骨格前部によって、前記車体フレーム、左前輪及び右前輪を左右方向に傾斜するように支持する傾斜リンク機構を支持し、メイン骨格後部によって、その他の搭載部品を支持する。これにより、運転者の乗車位置、車体フレームに搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を高めることができる。よって、リーン車両の設計自由度を高めることができる。
【0016】
他の観点によれば、本発明のリーン車両は、以下の構成を含むことが好ましい。リーン車両は、運転者の操作によって操舵軸を中心として回転するステアリングハンドルをさらに備える。前記車体フレームは、前記ステアリングハンドルを回転可能に支持するハンドル支持部を備える。前記ハンドル支持部は、前記メイン骨格部とは別部材によって構成されていて、且つ、前記メイン骨格部の上部から上方に延びている。
【0017】
このように、前記メイン骨格部とは別部材によって構成されていて且つステアリングハンドルを回転可能に支持するハンドル支持部を、幅が狭く且つ直線的に形成されたメイン骨格部の上部に、上方に延びるように設けることにより、運転者の乗車位置、車体フレームに搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を高めることができる。よって、リーン車両の設計自由度を高めることができる。
【0018】
他の観点によれば、本発明のリーン車両は、以下の構成を含むことが好ましい。前記ハンドル支持部の少なくとも一部は、前記メイン骨格前部の上部から上方に延びている。
【0019】
このように、ハンドル支持部を、幅が狭く且つ直線的に形成されたメイン骨格部の前部の上部に、上方に延びるように設けることにより、運転者の乗車位置、車体フレームに搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を高めることができる。よって、リーン車両の設計自由度を高めることができる。
【0020】
他の観点によれば、本発明のリーン車両は、以下の構成を含むことが好ましい。前記メイン骨格前部の上端は、前記ステアリングハンドルの下端よりも低い。
【0021】
このように、幅が狭く且つ直線的に形成されたメイン骨格部におけるメイン骨格前部の上端を、ステアリングハンドルの下端よりも低くすることにより、運転者の乗車位置、車体フレームに搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を高めることができる。よって、リーン車両の設計自由度を高めることができる。
【0022】
他の観点によれば、本発明のリーン車両は、以下の構成を含むことが好ましい。前記傾斜リンク機構は、前記メイン骨格部及び前記ハンドル支持部に対して分離可能に構成されている。
【0023】
このように、前記傾斜リンク機構は、前記メイン骨格部及び前記ハンドル支持部に対して分離可能に構成されていることにより、運転者の乗車位置、車体フレームに搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を高めることができる。よって、リーン車両の設計自由度を高めることができる。
【0024】
他の観点によれば、本発明のリーン車両は、以下の構成を含むことが好ましい。前記メイン骨格前部の上端は、前記シートの着座面よりも低い。
【0025】
このように、幅が狭く且つ直線的に形成されたメイン骨格部におけるメイン骨格前部の上端を、シートの着座面よりも低くすることにより、運転者の乗車位置、車体フレームに搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を高めることができる。よって、リーン車両の設計自由度を高めることができる。
【0026】
他の観点によれば、本発明のリーン車両は、以下の構成を含むことが好ましい。前記メイン骨格前部の上端は、前記傾斜リンク機構の上端よりも低い。
【0027】
このように、幅が狭く且つ直線的に形成されたメイン骨格部におけるメイン骨格前部の上端を、傾斜リンクの上端よりも低くすることにより、運転者の乗車位置、車体フレームに搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を高めることができる。よって、リーン車両の設計自由度を高めることができる。
【0028】
他の観点によれば、本発明のリーン車両は、以下の構成を含むことが好ましい。前記ハンドル支持部の上端は、前記シートの着座面よりも高い。
【0029】
このように、ハンドル支持部の上端を、シートの着座面よりも高くすることにより、運転者の乗車位置、車体フレームに搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を高めることができる。よって、リーン車両の設計自由度を高めることができる。
【0030】
他の観点によれば、本発明のリーン車両は、以下の構成を含むことが好ましい。前記左前輪と前記右前輪とのトレッド幅は、前記左ステップの左端と前記右ステップの右端との左右方向の距離よりも大きい。
【0031】
このように、左前輪と右前輪とのトレッド幅を、左ステップの左端と右ステップの右端との左右方向の距離よりも大きくすることにより、運転者の乗車位置、車体フレームに搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を高めることができる。よって、リーン車両の設計自由度を高めることができる。
【0032】
他の観点によれば、本発明のリーン車両は、以下の構成を含むことが好ましい。前記左ステップは、前記シートに着座している運転者が左足を着地するための凹み部を有する。
【0033】
これにより、運転者が左足を着地する際に、左ステップが前記左足と干渉するのを防止できる。しかも、前記左ステップに凹み部を設けることにより、前記左ステップと干渉することなく運転者が左足を着地可能な構成において、運転者の乗車位置、車体フレームに搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を高めることができる。よって、リーン車両の設計自由度を高めることができる。
【0034】
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施例のみを定義する目的で使用されるのであって、前記専門用語によって発明を制限する意図はない。
【0035】
本明細書で使用される「及び/または」は、一つまたは複数の関連して列挙された構成物のすべての組み合わせを含む。
【0036】
本明細書において、「含む、備える(including)」「含む、備える(comprising)」または「有する(having)」及びそれらの変形の使用は、記載された特徴、工程、要素、成分、及び/または、それらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/または、それらのグループのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0037】
本明細書において、「取り付けられた」、「接続された」、「結合された」、及び/または、それらの等価物は、広義の意味で使用され、“直接的及び間接的な”取り付け、接続及び結合の両方を包含する。さらに、「接続された」及び「結合された」は、物理的または機械的な接続または結合に限定されず、直接的または間接的な接続または結合を含むことができる。
【0038】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0039】
一般的に使用される辞書に定義された用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されることはない。
【0040】
本発明の説明においては、いくつもの技術および工程が開示されていると理解される。これらの各々は、個別の利益を有し、他に開示された技術の1つ以上、または、場合によっては全てと共に使用することもできる。
【0041】
したがって、明確にするために、本発明の説明では、不要に個々のステップの可能な組み合わせをすべて繰り返すことを控える。しかしながら、本明細書及び請求の範囲は、そのような組み合わせがすべて本発明の範囲内であることを理解して読まれるべきである。
【0042】
本明細書では、本発明に係るリーン車両の実施形態について説明する。
【0043】
以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な例を述べる。しかしながら、当業者は、これらの具体的な例がなくても本発明を実施できることが明らかである。
【0044】
よって、以下の開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0045】
[リーン車両]
本明細書において、リーン車両とは、傾斜姿勢で旋回する車両である。具体的には、リーン車両は、車両の左右方向において、左に旋回する際に左に傾斜し、右に旋回する際に右に傾斜する車両である。リーン車両は、一人乗りの車両であってもよいし、複数人が乗車可能な車両であってもよい。なお、リーン車両は、3輪車または4輪車など、傾斜姿勢で旋回する全ての車両を含む。
【0046】
[メイン骨格部が直線的に延びる]
本明細書において、メイン骨格部が直線的に延びるとは、メイン骨格部が前後方向に直線状に延びている場合だけでなく、メイン骨格部がリーン車両の前後方向に対して左右または上下に斜めに延びている場合や、メイン骨格部が前後方向に対して左右または上下に段状にずれて延びている場合も含む。また、メイン骨格部が直線的に延びるとは、前記メイン骨格部の一部がリーン車両の左右方向に突出する凸部や左右方向に凹んだ凹部を有する場合も含む。
【0047】
[左ステップの左端、右ステップの右端]
本明細書において、左ステップの左端とは、リーン車両の左右方向において、左ステップの最も左端に位置する部分を意味している。右ステップの右端とは、リーン車両の左右方向において、右ステップの最も右端に位置する部分を意味している。
【0048】
[左前輪と右前輪とのトレッド幅]
本明細書において、左前輪と右前輪とのトレッド幅とは、リーン車両の左右方向において、左前輪の中央と右前輪の中央との間隔を意味する。
【発明の効果】
【0049】
本発明の一実施形態によれば、運転者の乗車位置、車体フレームに搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を含むリーン車両の設計自由度を高めることができるリーン車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るリーン車両の全体構成の概略を示す左側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係るリーン車両の全体構成の概略を示す正面図である。
【
図3】
図3は、車体フレームの概略構造を示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、車体フレーム、車体カバー及び運転者の位置関係を模式的に示す平面図である。
【
図5】
図5は、車体フレームが左に傾斜した際の傾斜リンク機構を後方に見た場合の模式図である。
【
図6】
図6は、車体フレームが右に傾斜した際の傾斜リンク機構を後方に見た場合の模式図である。
【
図7】
図7は、リーン車両の左側面図と、車体フレーム、車体カバー及び運転者の位置関係を模式的に示す平面図とを並べて示した図である。
【
図8】
図8は、実施形態2に係るリーン車両の全体構成の概略を示す左側面図である。
【
図9】
図9は、実施形態2に係るリーン車両の車体フレームの概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下で、実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同一部分には同一の符号を付して、その同一部分の説明は繰り返さない。なお、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0052】
以下、図中の矢印Fは、リーン車両1,1001の前方向を示す。図中の矢印Bは、リーン車両1,1001の後方向を示す。図中の矢印Uは、リーン車両1,1001の上方向を示す。図中の矢印Dは、リーン車両1,1001の下方向を示す。図中の矢印Rは、リーン車両1,1001の右方向を示す。図中の矢印Lは、リーン車両1,1001の左方向を示す。また、リーン車両1,1001の前後方向、左右方向及び上下方向は、それぞれ、リーン車両1,1001を運転する運転者から見た場合に、リーン車両1,1001を基準とした前後方向、左右方向及び上下方向を意味する。
【0053】
各実施形態のリーン車両1,1001は、鉛直方向に対して車体フレーム21,1021を左右方向に傾斜させて旋回する。そのため、車体フレーム21が傾斜した状態を示す
図5及び
図6では、上述のリーン車両1を基準とした方向に加え、車体フレーム21を基準とした方向を以下のように定める。
【0054】
図中の矢印FUは、車体フレーム21の上方向を示す。図中の矢印FDは、車体フレーム21の下方向を示す。図中の矢印FRは、車体フレーム21の右方向を示す。図中の矢印FLは、車体フレーム21の左方向を示す。また、車体フレーム21の左右方向及び上下方向は、それぞれ、リーン車両1を運転する乗員から見た場合に、車体フレーム21を基準とした左右方向及び上下方向を意味する。
【0055】
[実施形態1]
(全体構成)
図1は、実施形態1に係るリーン車両1の全体構成の概略を示す左側面図である。
図2は、リーン車両1の全体構成の概略を示す正面図である。リーン車両1は、車両本体2と、左右一対の前輪3と、後輪4と、傾斜リンク機構5と、操舵機構6と、緩衝装置7と、パワーユニット8(駆動源)とを備えている。
【0056】
本実施形態のリーン車両1は、左に旋回する際に左に傾斜し且つ右に旋回する際に右に傾斜する車両である。すなわち、本実施形態のリーン車両1は、左に旋回する際には車両本体2及び左右一対の前輪3を左に傾斜し且つ右に旋回する際には車両本体2及び左右一対の前輪3を右に傾斜する車両である。
【0057】
図1及び
図2に示すように、車両本体2は、車体フレーム21と、リアアーム23と、車体カバー26と、シート27とを有する。
図1及び
図2において、車体フレーム21は直立状態である。以下の説明において、
図1及び
図2を参照する場合には、車体フレーム21は直立状態を前提としている。なお、車体フレーム21が直立状態とは、車体フレーム21の上下方向が鉛直方向と同じ状態を意味する。
【0058】
図1に示すように、車体フレーム21は、車体カバー26、シート27及びパワーユニット8等のリーン車両1に搭載される搭載部品を支持している。具体的には、車体フレーム21は、前部で傾斜リンク機構5を支持している。車体フレーム21は、後部でリアアーム支持部24、シート27及びパワーユニット8を支持している。
【0059】
パワーユニット8は、例えば駆動力発生源であるモータを有する。なお、パワーユニット8は、前記駆動力発生源として、エンジンを有していてもよいし、エンジン及びモータを組み合わせたハイブリッドシステムを有していてもよい。
【0060】
パワーユニット8から出力される駆動力は、駆動伝達部8aによって、後輪4に伝達される。駆動伝達部8aは、後輪4を回転可能に支持する後述のリアアーム23によって支持されている。駆動伝達部8aは、例えば、チェーン等を含む。
【0061】
図3は、車体フレーム21、左右一対の前輪3、後輪4、傾斜リンク機構5及び操舵機構6の概略構成を示す分解斜視図である。
図3に示すように、車体フレーム21は、メイン骨格部21aと、傾斜リンク機構支持部22と、リアアーム支持部24と、ハンドル支持部25と、を有する。
【0062】
メイン骨格部21aは、リーン車両1の車両本体2の骨格を構成するフレームである。メイン骨格部21aの詳しい構成は後述するが、メイン骨格部21aは、前骨格部211と、後骨格部212とを含む。前骨格部211は、メイン骨格部21aにおいて後骨格部212の前に位置する。後骨格部212は、メイン骨格部21aにおいて前骨格部211の後ろに位置する。前骨格部211及び後骨格部212は、前後方向に並んだ状態で連結されている。
【0063】
前骨格部211は、前部で傾斜リンク機構支持部22を支持している。後骨格部212は、前部でパワーユニット8及びシート27を支持し、後部でリアアーム支持部24を支持している。
【0064】
図1に示すように、シート27は、車体フレーム21の後骨格部212によって支持されている。シート27は、着座部27aと、シートバック27bとを有する。特に図示しないが、シート27の着座部27aは、後骨格部212の上部によって支持されている。着座部27aの上面は、運転者が着座する着座面27cである。
【0065】
図3に示すように、傾斜リンク機構支持部22は、前骨格部211の前端に接続されている。傾斜リンク機構支持部22は、後述の傾斜リンク機構5を支持している。傾斜リンク機構5は、左右一対の前輪3を支持している。すなわち、傾斜リンク機構支持部22は、傾斜リンク機構5を介して左右一対の前輪3を支持している。傾斜リンク機構5の詳しい構成は、後述する。傾斜リンク機構支持部22は、前骨格部211に対して分離可能である。よって、傾斜リンク機構支持部22によって支持されている傾斜リンク機構5も、メイン骨格部21aに対して分離可能である。また、傾斜リンク機構支持部22は、メイン骨格部21aに接続されている後述のハンドル支持部25に対しても分離可能である。
【0066】
図2及び
図3に示すように、左右一対の前輪3は、車体フレーム21の左に位置する左前輪31と、車体フレーム21の右に位置する右前輪32とを含む。後述する傾斜リンク機構5の左アーム機構51は、車体フレーム21に対して左前輪31を支持するように、傾斜リンク機構支持部22から左に向かって延びている。後述する傾斜リンク機構5の右アーム機構52は、車体フレーム21に対して右前輪32を支持するように、傾斜リンク機構支持部22から右に向かって延びている。
【0067】
図3に示すように、傾斜リンク機構支持部22と前骨格部211との間には、緩衝装置7を支持する緩衝装置支持部28が配置されている。この緩衝装置支持部28は、傾斜リンク機構支持部22の上部と、前骨格部211に接続されたハンドル支持部25の前下端部とに接続されている。
【0068】
緩衝装置支持部28は、緩衝装置支持本体部28aと、タワー部28bとを有する。緩衝装置支持本体部28aは、円筒状の部材であり、上下方向に延びるタワー部28bの基端部を支持する。緩衝装置支持本体部28aは、傾斜リンク機構支持部22及びハンドル支持部25の前下端部に接続されている。
【0069】
なお、緩衝装置7は、左前輪31及び右前輪32の動きを緩衝する。
図2に示すように、緩衝装置7は、左緩衝装置71と、右緩衝装置72とを含む。左緩衝装置71は、タワー部28bと傾斜リンク機構5の後述する左上アーム部材511とを接続するように設けられている。右緩衝装置72は、タワー部28bと傾斜リンク機構5の後述する右上アーム部材521とを接続するように設けられている。特に図示しないが、左緩衝装置71及び右緩衝装置72は、それぞれ、スプリング及びダンパを有する。
【0070】
左緩衝装置71は、路面から左前輪31に入力される力を緩衝するとともに、車体フレーム21に対する左前輪31の位置決めを行う。右緩衝装置72は、路面から右前輪32に入力される力を緩衝するとともに、車体フレーム21に対する右前輪32の位置決めを行う。
【0071】
図3に示すように、ハンドル支持部25は、前骨格部211の前部の上部に接続され、前骨格部211の上部から上方に延びている。これにより、運転者がリーン車両1に対して乗り降りする際に、ハンドル支持部25が運転者の乗り降りを邪魔することを防止できる。よって、運転者が、リーン車両1に対して容易に乗り降りすることができる。
図1に示すように、ハンドル支持部25の上端の高さH5は、シート27の着座面27cよりも高い。ハンドル支持部25の上端は、上下方向において、ハンドル支持部25の最も上に位置する部分である。
【0072】
なお、ハンドル支持部25の一部が、メイン骨格部21aの前骨格部211以外の部分の上部から上方に延びていてもよい。すなわち、ハンドル支持部25の少なくとも一部が、前骨格部211の上部から上方に延びていれば、ハンドル支持部25はメイン骨格部21aにどのように設けられていてもよい。本実施形態では、ハンドル支持部25は、メイン骨格部21aとは別部材によって構成されている。
【0073】
ハンドル支持部25は、前骨格部211以外の部分の上部から上方に延びていてもよい。すなわち、ハンドル支持部25は、メイン骨格部21aの上部から上方に延びていてもよい。
【0074】
ハンドル支持部25は、操舵機構6のバーハンドル61及びステアリングシャフト62を支持している。ハンドル支持部25は、操舵機構6のバーハンドル61を、シート27の着座面27cに着座した運転者が把持しやすい位置に位置付けるような高さを有する。
【0075】
操舵機構6は、バーハンドル61と、ステアリングシャフト62と、ステアリングシャフト支持部63と、図示しない操舵力伝達部とを有する。バーハンドル61は、左右方向に延びるバー部材であり、ステアリングシャフト62の上端部に接続されている。ステアリングシャフト62は、後述するようにハンドル支持部25の上部に固定されたステアリングシャフト支持部63によって回転可能に支持されている。特に図示しないが、ステアリングシャフト62は、操舵力伝達部に、バーハンドル61の回転を伝達可能に接続されている。操舵力伝達部は、左前輪31及び右前輪32に対し、ステアリングシャフト62の回転を左右方向の操舵力として伝達する。操舵力伝達部の詳しい構成については説明を省略する。
【0076】
バーハンドル61及びステアリングシャフト62によって、ステアリングハンドルSHが構成される。ステアリングシャフト62は、ステアリングシャフト支持部63によって支持されている部分であり、伝達部品によってステアリングシャフト62に接続された他の回転シャフトは含まない。ステアリングハンドルSHは、操舵軸Pを中心として回転する。
【0077】
図3に示すように、本実施形態のハンドル支持部25は、4本のハンドル支持脚部25aと、複数のハンドル支持梁部25bと、ハンドル支持天板部25cとを有する。4本のハンドル支持脚部25a及び複数のハンドル支持梁部25bは、それぞれ、一方向に長い板状のバー部材である。ハンドル支持天板部25cは、平板部材である。
【0078】
4本のハンドル支持脚部25aの上端部は、ハンドル支持天板部25cに連結されている。4本のハンドル支持脚部25aは、複数のハンドル支持梁部25bのうち一部によって左右方向に連結され、複数のハンドル支持梁部25bのうち他の一部によって前後方向に連結されている。本実施形態では、4本のハンドル支持脚部25a、複数のハンドル支持梁部25b及びハンドル支持天板部25cは、一体に形成されている。これにより、ハンドル支持部25は、板状のバー部材によって櫓状に形成されている。
【0079】
4本のハンドル支持脚部25aは、下端部が前骨格部211に固定されている。前骨格部211に対する4本のハンドル支持脚部25aの固定方法は、溶接、締結部材を用いた締結、接着等のように、前骨格部211に対してハンドル支持脚部25aを固定可能な方法であれば、どのような方法であってもよい。
【0080】
ハンドル支持天板部25c上には、操舵機構6の後述するステアリングシャフト支持部63が固定されている。バーハンドル61は、ステアリングシャフト支持部63によって回転可能に支持されたステアリングシャフト62に連結されている。ハンドル支持部25は、バーハンドル61及びステアリングシャフト62によって構成されるステアリングハンドルSHを支持している。
【0081】
リアアーム支持部24は、後骨格部212の後端に接続されている。リアアーム支持部24は、左右一対のリアアーム23の前部を回転可能に支持する。左右一対のリアアーム23は、それぞれ、リアアーム支持部24から後ろに延びている。左右一対のリアアーム23は、それらの後部で後輪4を回転可能に支持する。
【0082】
車体カバー26(カバー)は、車体フレーム21によって支持されている。
図1及び
図2に示すように、車体カバー26は、車体フレーム21を覆う車体カバー本体26aと、車体カバー本体26aの上に位置する上部カバー26bとを含む。上部カバー26bは、左右方向から見て、上に向かって突出する凸状に形成されている。これにより、上部カバー26bは、車体カバー本体26aとの間に、運転者が乗車する乗車空間を構成する。よって、リーン車両1を運転している運転者が風雨に直接さらされることがなくなるため、前記運転者の快適性を向上できる。なお、上部カバー26bは、運転者がシート27の着座面27c上に着座した状態で、運転者の頭部よりも上に位置するように形成されている。
【0083】
車体カバー本体26aは、シート27の着座面27cに着座した運転者の右部を覆う一方、運転者の左部を開放させるように、形成されている。これにより、運転者は、リーン車両1に対して左から乗降することができる。
【0084】
車体カバー本体26aの右下部には、開口部26cが形成されている。この開口部26cは、シート27の着座面27cに着座した運転者の右足が貫通して地面に着地できるように設けられている。すなわち、リーン車両1は、シート27に着座している運転者の右部を覆うように前記運転者に対して右に位置し、シート27に着座している運転者の右足が着地する際に前記右足が貫通可能な開口部26cを有する車体カバー26を備える。これにより、リーン車両1の利便性を向上することができる。しかも、上述の構成により、リーン車両1が自立機能を有する必要がなくなるため、リーン車両1の構成を簡略化することができる。
【0085】
図1及び
図4に示すように、車体カバー本体26aの前下部には、前記乗車空間に面する部分に、板状の左ステップ261及び右ステップ262が設けられている。左ステップ261は、車体カバー本体26aの左部に位置し、シート27の着座面27cに着座した運転者の左足が載置される。左ステップ261の前部は、前方且つ上方に向かって傾斜している。右ステップ262は、車体カバー本体26aの右部に位置し、シート27の着座面27cに着座した運転者の右足が載置される。右ステップ262の前部は、前方且つ上方に向かって傾斜している。
【0086】
図4は、運転者、車体フレーム21及び車体カバー26の関係を模式的に示す平面図である。
図7は、
図4を
図1と並べて示した図である。なお、
図4及び
図7では、説明のために、リーン車両1において、車体フレーム21、左前輪31、右前輪32、後輪4、傾斜リンク機構5以外の部品の図示を省略するとともに、車体カバー26の外形を1点鎖線で示す。
【0087】
左ステップ261は、リーン車両1の平面視で、メイン骨格部21aの左に位置する。右ステップ262は、リーン車両1の平面視で、メイン骨格部21aの右に位置する。すなわち、メイン骨格部21aは、左右方向において、左ステップ261と右ステップ262との間に位置する。なお、
図2、
図4及び
図7では、左ステップ261及び右ステップ262を、説明のために2点鎖線及び斜線で図示する。
【0088】
本実施形態では、左ステップ261及び右ステップ262は、車体カバー本体26aに一体に形成されている。左ステップ及び右ステップは、車体カバー本体26aとは別に設けられていてもよい。
【0089】
上述の構成により、左ステップ261及び右ステップ262は、車体カバー本体26aを介してメイン骨格部21aによって支持されている。なお、メイン骨格部21aに、左ステップ及び右ステップをそれぞれ支持するステップ支持部が設けられていてもよい。この場合、左ステップ及び右ステップは、それぞれ、ステップ支持部によってメイン骨格部21aに支持される。
【0090】
図4及び
図7に示すように、左ステップ261の左端と右ステップ262の右端との左右方向の距離WSは、左前輪31と右前輪32とのトレッド幅WHよりも小さい。すなわち、左前輪31と右前輪32とのトレッド幅WHは、左ステップ261の左端と右ステップ262の右端との左右方向の距離WSよりも大きい。これにより、運転者がリーン車両1に乗る前の足の接地位置から、シート27の着座面27cまでの左右方向の距離が小さい。これにより、運転者は、リーン車両1に対して容易に乗り降りすることができる。
【0091】
なお、左前輪31と右前輪32とのトレッド幅は、リーン車両1の左右方向において、左前輪31の中央と右前輪32の中央との間隔を意味する。
【0092】
左ステップ261の左後部には、凹み部261aが設けられている。この凹み部261aによって、運転者がリーン車両1に対して容易に乗り降りすることができる。しかも、運転者はシート27の着座面27cに着座した状態で左足を地面に着地することができる。これにより、リーン車両1の利便性を向上することができる。
【0093】
図2に示すように、車体カバー本体26aの前部には、後述の傾斜リンク機構5を駆動する図示しないリンク機構駆動モータの前を覆うフロントカバー265が設けられている。このフロントカバー265は、前記リンク機構駆動モータの前部を覆うとともにシート27の着座面27cに着座した運転者の前部を覆うように、後述するキャビンCの前部を構成する。フロントカバー265は、シート27の着座面27cに着座した運転者が左右一対の前輪3を視認可能なように、光透過部265aを有する。光透過部265aは、例えば透明な材料によって構成されている。なお、光透過部265aは、光を透過可能な材料によって構成されていれば、どのような材料によって構成されていてもよい。
【0094】
フロントカバー265は、左右一対の前輪3よりも後ろに位置する。左ステップ261及び右ステップ262は、フロントカバー265の後部に設けられている。よって、フロントカバー265により、左右一対の前輪3で跳ね上げられた水が、運転者が乗車している空間である乗車空間内に浸入するのを防止できる。
【0095】
上部カバー26b及び車体カバー本体26aのフロントカバー265によって、シート27の着座面27cに着座している運転者の前部及び上部を覆うキャビンCが構成される。キャビンCは、車体カバー本体26aのうち運転者の左部を覆う部分を含んでいてもよいし、車体カバー本体26aのうち運転者の右部を覆う部分を含んでいてもよいし、車体カバー本体26aのうち運転者の後部を覆う部分を含んでいてもよい。
【0096】
(傾斜リンク機構)
次に、傾斜リンク機構5の構成を、
図3、
図5及び
図6を用いて説明する。
図5は、車体フレーム21が左に傾斜した際の傾斜リンク機構5を後方に見た場合の模式図である。
図6は、車体フレーム21が右に傾斜した際の傾斜リンク機構5を後方に見た場合の模式図である。
【0097】
傾斜リンク機構5は、ダブルウィッシュボーン方式のリンク機構である。傾斜リンク機構5は、傾斜リンク機構支持部22に支持されている。傾斜リンク機構5は、左アーム機構51と、右アーム機構52とを有する。
【0098】
左アーム機構51は、傾斜リンク機構支持部22の左部分及び左前輪31に接続されている。後述するように、左アーム機構51は、傾斜リンク機構支持部22及び左前輪31に対してそれぞれ上下方向に回転可能である。すなわち、左アーム機構51は、傾斜リンク機構支持部22に対して左前輪31を上下方向に回転可能に支持する。
【0099】
左アーム機構51は、車体フレーム21が左に傾斜する際に傾斜リンク機構支持部22に対して上にスイングし、車体フレーム21が右に傾斜する際に傾斜リンク機構支持部22に対して下にスイングする。左アーム機構51は、左上アーム部材511と、左下アーム部材512と、左ナックル513とを有する。左上アーム部材511及び左下アーム部材512は、左揺動アームである。
【0100】
左上アーム部材511は、平板部材であり、左右方向に延びるように傾斜リンク機構支持部22と左前輪31との間に配置されている。左上アーム部材511の右端部は、傾斜リンク機構支持部22に、左上アーム部材511の右端部を中心として上下方向に回転可能に接続されている。左上アーム部材511の右端部が傾斜リンク機構支持部22に対して回転可能に接続される部分が、傾斜リンク機構支持部22に対する左上アーム部材511の支持部511aである。左上アーム部材511の左端部は、左前輪31のホイールに接続された左ナックル513に、左上アーム部材511の左端部を中心として上下方向に回転可能に接続されている。
【0101】
左下アーム部材512は、平板部材であり、左上アーム部材511の下に、左上アーム部材511に対して平行に配置されている。すなわち、左下アーム部材512も、左上アーム部材511と同様に、左右方向に延びるように傾斜リンク機構支持部22と左前輪31との間に配置されている。左下アーム部材512の右端部は、傾斜リンク機構支持部22に、左下アーム部材512の右端部を中心として上下方向に回転可能に接続されている。左下アーム部材512の右端部が傾斜リンク機構支持部22に対して回転可能に接続される部分が、傾斜リンク機構支持部22に対する左下アーム部材512の支持部512aである。左下アーム部材512の左端部は、左前輪31のホイールに接続された左ナックル513に、左下アーム部材512の左端部を中心として上下方向に回転可能に接続されている。
【0102】
以上のような左アーム機構51の構成により、車体フレーム21が左に傾斜すると、左ナックル513は、傾斜リンク機構支持部22に対して平行状態で左に傾斜する。このとき、左上アーム部材511及び左下アーム部材512は平行状態を維持する。一方、車体フレーム21が右に傾斜すると、左ナックル513は、傾斜リンク機構支持部22に対して平行状態で右に傾斜する。このとき、左上アーム部材511及び左下アーム部材512は平行状態を維持する。
【0103】
右アーム機構52は、傾斜リンク機構支持部22の右部分及び右前輪32に接続されている。後述するように、右アーム機構52は、傾斜リンク機構支持部22及び右前輪32に対してそれぞれ上下方向に回転可能である。すなわち、右アーム機構52は、傾斜リンク機構支持部22に対して右前輪32を上下方向に回転可能に支持する。
【0104】
右アーム機構52は、車体フレーム21が左に傾斜する際に傾斜リンク機構支持部22に対して下にスイングし、車体フレーム21が右に傾斜する際に傾斜リンク機構支持部22に対して上にスイングする。右アーム機構52は、右上アーム部材521と、右下アーム部材522と、右ナックル523とを有する。右上アーム部材521及び右下アーム部材522は、右揺動アームである。
【0105】
右上アーム部材521は、平板部材であり、左右方向に延びるように傾斜リンク機構支持部22と右前輪32との間に配置されている。右上アーム部材521の左端部は、傾斜リンク機構支持部22に、右上アーム部材521の左端部を中心として上下方向に回転可能に接続されている。右上アーム部材521の左端部が傾斜リンク機構支持部22に対して回転可能に接続される部分が、傾斜リンク機構支持部22に対する右上アーム部材521の支持部521aである。右上アーム部材521の右端部は、右前輪32のホイールに接続された右ナックル523に、右上アーム部材521の右端部を中心として上下方向に回転可能に接続されている。
【0106】
右下アーム部材522は、平板部材であり、右上アーム部材521の下に、右上アーム部材521に対して平行に配置されている。すなわち、右下アーム部材522も、右上アーム部材521と同様に、左右方向に延びるように傾斜リンク機構支持部22と右前輪32との間に配置されている。右下アーム部材522の左端部は、傾斜リンク機構支持部22に、右下アーム部材522の左端部を中心として上下方向に回転可能に接続されている。右下アーム部材522の左端部が傾斜リンク機構支持部22に対して回転可能に接続される部分が、傾斜リンク機構支持部22に対する右下アーム部材522の支持部522aである。右下アーム部材522の右端部は、右前輪32のホイールに接続された右ナックル523に、右下アーム部材522の右端部を中心として上下方向に回転可能に接続されている。
【0107】
以上のような右アーム機構52の構成により、車体フレーム21が左に傾斜すると、右ナックル523は、傾斜リンク機構支持部22に対して平行状態で左に傾斜する。このとき、右上アーム部材521及び右下アーム部材522は平行状態を維持する。一方、車体フレーム21が右に傾斜すると、右ナックル523は、傾斜リンク機構支持部22に対して平行状態で右に傾斜する。このとき、右上アーム部材521及び右下アーム部材522は平行状態を維持する。
【0108】
したがって、上述の構成を有する傾斜リンク機構5によって、車体フレーム21、左前輪31及び右前輪32は、左または右に傾斜することができる。
【0109】
なお、特に図示しないが、上述の傾斜リンク機構5は、リンク機構駆動モータによって、左右方向の傾斜が制御されるように構成されていてもよい。前記リンク機構駆動モータは、例えば、傾斜リンク機構支持部22よりも後ろで且つフロントカバー265の後ろに配置されている。
【0110】
(メイン骨格部)
次に、メイン骨格部21aの構成を、
図3を用いて詳細に説明する。
【0111】
メイン骨格部21aは、前後方向に延びている。すなわち、メイン骨格部21aの左右方向の幅は、メイン骨格部21aの前後方向の長さよりも小さい。メイン骨格部21aは、前骨格部211と、後骨格部212とを含む。
【0112】
前骨格部211は、後骨格部212の前に位置する。前骨格部211は前後方向に延びている。前骨格部211は、一対の前骨格側壁部211aと、前骨格底壁部211bとを有する。一対の前骨格側壁部211aは、左右方向に並んで位置し且つ前後方向に長い。前骨格底壁部211bは、一対の前骨格側壁部211aの下端部同士を接続する。一対の前骨格側壁部211a及び前骨格底壁部211bは、例えば、溶接によって接続されている。なお、一対の前骨格側壁部211a及び前骨格底壁部211bは、接着やボルト等によって接続されていてもよいし、一体に形成されていてもよい。
【0113】
一対の前骨格側壁部211aの高さ寸法は、それぞれ、前部よりも後部の方が低い。これにより、シート27の着座面27c上に着座した運転者の足元に、前骨格部211を配置することができる。よって、メイン骨格部21aをリーン車両1の下部に配置することができるため、リーン車両1の重心を低くすることができる。
【0114】
なお、本実施形態では、
図4に示すように、メイン骨格部21aにおいて、左ステップ261及び右ステップ262の前後方向中央Xより前に位置する部分が、メイン骨格前部121である。メイン骨格前部121は、前骨格部211の一部を含む。メイン骨格前部121は、前後方向に直線的に延びている。
【0115】
メイン骨格前部121は、その車両幅方向の寸法WFが傾斜リンク機構支持部22に対する左上アーム511の支持部511aと傾斜リンク機構支持部22に対する右上アーム521の支持部521aとの間隔D(
図5及び
図6参照)よりも大きくなるように構成されている。メイン骨格前部121は、その車両幅方向の寸法WFが傾斜リンク機構支持部22に対する左下アーム512の支持部512aと傾斜リンク機構支持部22に対する右下アーム522の支持部522aとの間隔D(
図5及び
図6参照)よりも大きくなるように構成されている。
【0116】
図1に示すように、メイン骨格前部121の上端は、ステアリングハンドルSHの下端よりも低い。すなわち、メイン骨格前部121の上端の高さH2は、ステアリングハンドルSHの下端の高さH1よりも小さい。これにより、運転者の乗車位置、車体フレームに搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を高めることができる。よって、リーン車両の設計自由度を高めることができる。
【0117】
なお、ステアリングハンドルSHの下端は、バーハンドル61及びステアリングシャフト62において、最も下に位置する部分である。本実施形態の場合、ステアリングハンドルSHの下端は、ステアリングシャフト62の下端である。
【0118】
メイン骨格前部121の上端は、メイン骨格前部121において、最も上に位置する部分である。本実施形態の場合、メイン骨格前部121の上端は、前骨格部211の前部である。
【0119】
メイン骨格前部121の上端は、シート27の着座面27cよりも低い。すなわち、メイン骨格前部121の上端の高さH2は、シート27の着座面27cの高さH3よりも小さい。これにより、運転者の乗車位置、車体フレームに搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を高めることができる。よって、リーン車両の設計自由度を高めることができる。上述のシートの着座面27cの高さH3は、着座面27cのうち最も低い部分の高さである。
【0120】
メイン骨格前部121の上端は、傾斜リンク機構5の上端よりも低い。すなわち、
図2に示すように、メイン骨格前部121の上端の高さH2は、傾斜リンク機構5の高さH4よりも小さい。これにより、運転者の乗車位置、車体フレームに搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を高めることができる。よって、リーン車両の設計自由度を高めることができる。傾斜リンク機構5の上端は、傾斜リンク機構5のうち最も上に位置する部分である。
【0121】
なお、本実施形態における高さとは、リーン車両1が走行する路面からの高さを意味する。
【0122】
図3に示すように、本実施形態では、一対の前骨格側壁部211aにおける前後方向中央部分の上部には、板状の補強部材213が設けられている。補強部材213は、一対の前骨格側壁部211aにおける前後方向中央部分に対し、左右方向に跨ぐように接続されている。なお、補強部材213を設けなくてもよい。補強部材213は、棒状など、他の形状でもよい。
【0123】
後骨格部212は、前骨格部211の後ろに位置する。後骨格部212は前後方向に延びている。後骨格部212は、一対の後骨格側壁部212aと、複数の後骨格梁部212bとを有する。一対の後骨格側壁部212aは、左右方向に並んで位置し且つ前後方向に長い。複数の後骨格梁部212bは、一対の後骨格側壁部212aを左右方向に接続する。
【0124】
後骨格部212の上下方向の寸法は、前骨格部211の上下方向の寸法よりも大きい。後骨格部212の左右方向の寸法は、前骨格部211の左右方向の寸法よりも小さい。
【0125】
後骨格部212は、パワーユニット8を支持する。後骨格部212は、上部でシート27を支持する。後骨格部212は、後端部で、リアアーム支持部24を支持する。
【0126】
なお、後骨格部212の後骨格側壁部212aには、開口部212cが形成されている。後骨格側壁部212aに開口部が設けられていなくてもよい。
【0127】
前骨格部211と後骨格部212とは、前後に並んだ状態で接続されている。これにより、車体フレーム21は、既述のように、前後方向に長い形状を有する。
【0128】
本実施形態では、メイン骨格部21aにおいて、左ステップ261及び右ステップ262の前後方向中央Xより後ろに位置する部分が、メイン骨格後部122である。メイン骨格後部122は、前骨格部211の後部と、後骨格部212とを含む。
【0129】
図4に示すように、メイン骨格部21aは、平面視で、車体カバー本体26aに設けられた左ステップ261と右ステップ262との間に位置する。メイン骨格部21aは、運転者がシート27に着座した状態で左ステップ261及び右ステップ262に足を載せた時の運転者の両脚の間を前後方向に直線的に延びている。また、メイン骨格部21aは、左ステップ261及び右ステップ262の前後方向中央Xより前に位置するメイン骨格前部121によって傾斜リンク機構5を支持し、左ステップ261及び右ステップ262の
前後方向中央Xより後ろに位置するメイン骨格後部122によってシート27、後輪4及びパワーユニット8を支持している。
図2に示すように、メイン骨格前部121は、リーン車両1の側面視で、左ステップ261及び右ステップ262の少なくとも一部の上面よりも下の位置で傾斜リンク機構5の少なくとも一部を支持する。
【0130】
上述の構成では、メイン骨格部21aは、幅が狭く直線的に延びる形状である。メイン骨格部21aは、メイン骨格前部121によって、車体フレーム21、左前輪31及び右前輪32を左右方向に傾斜するように支持する傾斜リンク機構5を支持し、メイン骨格後部122によって、その他の搭載部品を支持する。これにより、運転者の乗車位置、車体フレーム21に搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を高めることができる。よって、リーン車両1の設計自由度を高めることができる。
【0131】
本実施形態のメイン骨格部21aは、
図1に示すように、リーン車両1の側面視で、運転者がシート27の着座面27cに着座した状態で足を載せる左ステップ261及び右ステップ262の少なくとも一部の上面よりも下の位置で、前後方向に直線的に延びている。これにより、運転者の乗車位置、車体フレーム21に搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を高めることができる。よって、リーン車両1の設計自由度を高めることができる。
【0132】
しかも、上述のように、車体フレーム21のメイン骨格部21aを、リーン車両1の低い位置に設けることにより、上部カバー26bを有する本実施形態のリーン車両1の場合でも、運転者がリーン車両1に対して乗り降りしやすい。
【0133】
さらに、本実施形態のようにメイン骨格前部121を、その車両幅方向の寸法WFが車体フレーム21に対する左上アーム部材511の支持部511aと車体フレーム21に対する右上アーム部材521の支持部521aとの間隔Dよりも大きくなるように構成することにより、車体フレーム21において左上アーム部材511及び右上アーム部材521を支持する部分に比べて、メイン骨格前部121の剛性を高めることができる。よって、左上アーム部材511を介して左前輪31から入力される力、及び、右上アーム部材521を介して右前輪32から入力される力によって、メイン骨格前部121が変形するのを抑制できる。したがって、上述の構成により、車体フレーム21全体の剛性を高めることができる。
【0134】
同様に、メイン骨格前部121を、その車両幅方向の寸法WFが車体フレーム21に対する左下アーム部材512の支持部512aと車体フレーム21に対する右下アーム部材522の支持部522aとの間隔Dよりも大きくなるように構成することにより、車体フレーム21において左下アーム部材512及び右下アーム部材522を支持する部分に比べて、メイン骨格前部121の剛性を高めることができる。よって、左下アーム部材512を介して左前輪31から入力される力、及び、右下アーム部材522を介して右前輪32から入力される力によって、メイン骨格前部121が変形するのを抑制できる。したがって、上述の構成により、車体フレーム21全体の剛性を高めることができる。
【0135】
[実施形態2]
図8は、実施形態2に係るリーン車両1001の概略構成を示す左側面図である。
図9は、リーン車両1001の車体フレーム1021の概略構成を示す平面図である。なお、
図9では、左ステップ261及び右ステップ262を含む後述のフロア1029を2点鎖線及び斜線で示す。
【0136】
本実施形態では、車体フレーム1021の構成が、実施形態1のリーン車両1の車体フレーム21の構成とは異なる。以下では、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分についてのみ説明する。
【0137】
図9に示すように、車体フレーム1021は、メイン骨格部1021aと、傾斜リンク機構支持部22と、ハンドル支持部25とを有する。
【0138】
メイン骨格部1021aは、左ステップ261及び右ステップ262の下で前後方向に延びるパイプ状の左メインフレーム1041及び右メインフレーム1042を有する。左メインフレーム1041は、平面視でリーン車両1001の左部に位置する。右メインフレーム1042は、平面視でリーン車両1001の右部に位置する。本実施形態の左メインフレーム1041及び右メインフレーム1042は、平面視で、リーン車両1001の左右方向中央を中心として左右対称に設けられている。
【0139】
なお、本実施形態では、左ステップ261及び右ステップ262は、左メインフレーム1041及び右メインフレーム1042上に位置する板状のフロア1029によって構成されている。フロア1029の前部は、前方且つ上方に向かって傾斜している。フロア1029の後部は、平面状である。すなわち、本実施形態では、左ステップ261及び右ステップ262は、一体で形成されている。左ステップ261及び右ステップ262の上面は、フロア1029の上面である。
【0140】
図8及び
図9に示すように、左メインフレーム1041は、左メインフレーム前部1041aと、左メインフレーム後部1041cと、左メインフレーム中間部1041bとを有する。左メインフレーム前部1041a、左メインフレーム中間部1041b及び左メインフレーム後部1041cは、前後方向に並んで連結されている。
【0141】
左メインフレーム中間部1041bは、左ステップ261の下で、前後方向に延びている。左メインフレーム中間部1041bは、シート27を支持する。
【0142】
左メインフレーム前部1041aは、左メインフレーム中間部1041bの前部から前方且つ上方に向かって斜めに延びている。左メインフレーム前部1041aは、平面視で、前端部が後述する右メインフレーム前部1042aの前端部に近づくように、すなわち前端部がリーン車両1001の左右方向の中央に近づくように形成されている。左メインフレーム前部1041aの前端部は、緩衝装置支持部28を介して傾斜リンク機構支持部22に接続されている。左メインフレーム前部1041aは、後述の右メインフレーム前部1042aとともに、ハンドル支持部25を支持する。
【0143】
左メインフレーム後部1041cは、左メインフレーム中間部1041bの後端から上に延びて後ろに向かうように折曲した形状を有する。左メインフレーム後部1041cは、左メインフレーム中間部1041bと一体で形成されている。
【0144】
右メインフレーム1042は、右メインフレーム前部1042aと、右メインフレーム後部1042cと、右メインフレーム中間部1042bとを有する。右メインフレーム前部1042a、右メインフレーム中間部1042b及び右メインフレーム後部1042cは、前後方向に並んで連結されている。
【0145】
右メインフレーム中間部1042bは、右ステップ262の下で、前後方向に延びている。右メインフレーム中間部1042bは、シート27を支持する。
【0146】
右メインフレーム前部1042aは、右メインフレーム中間部1042bの前部から前方且つ上方に向かって斜めに延びている。右メインフレーム前部1042aは、平面視で、前端部が前記左メインフレーム前部1041aの前端部に近づくように、すなわち前端部がリーン車両1001の左右方向の中央に近づくように形成されている。右メインフレーム前部1042aの前端部は、緩衝装置支持部28を介して傾斜リンク機構支持部22に接続されている。右メインフレーム前部1042aは、左メインフレーム前部1041aとともに、ハンドル支持部25を支持する。
【0147】
右メインフレーム後部1042cは、右メインフレーム中間部1042bから上に延びて後ろに向かうように折曲した形状を有する。右メインフレーム後部1042cは、右メインフレーム中間部1042bと一体で形成されている。
【0148】
左メインフレーム中間部1041b及び右メインフレーム中間部1042bは、左右方向に延びる前連結部1043によって連結されている。左メインフレーム後部1041c及び右メインフレーム後部1042cは、前連結部1043よりも後ろで左右方向に延びる後連結部1044によって連結されている。これにより、メイン骨格部1021aの剛性を向上することができる。
【0149】
後連結部1044は、スイングアーム1023の前部を上下方向に回転可能に支持する。スイングアーム1023は、実施形態1のリアアームの代わりに、後輪4を回転可能に支持する。スイングアーム1023には、パワーユニット8が設けられている。
【0150】
左メインフレーム中間部1041bと右メインフレーム中間部1042bとの間には、パワーユニット8に電力を供給するバッテリ81が配置されている。なお、リーン車両1001の駆動源がエンジンを含む場合には、左メインフレーム中間部1041bと右メインフレーム中間部1042bとの間に、燃料タンクが配置される。
【0151】
このように、メイン骨格部1021aは、左ステップ261及び右ステップ262の上面よりも下の位置で、前後方向に直線的に延びている。これにより、リーン車両1001の重心を低くすることができるとともに、運転者がリーン車両1001に対して容易に乗り降りすることができる。
【0152】
上述の構成では、メイン骨格部1021aを、リーン車両1001の側面視で、運転者がシート27の着座面27cに着座した状態で足を載せる左ステップ261及び右ステップ262の上面よりも下の位置で、前後方向に直線的に延びるように構成することで、運転者の乗車位置、車体フレーム1021に搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を高めることができる。よって、リーン車両1001の設計自由度を高めることができる。
【0153】
メイン骨格部1021aにおいて、左ステップ261及び右ステップ262の前後方向中央Xより前に位置する部分が、メイン骨格前部1121である。メイン骨格前部1121は、左メインフレーム前部1041a、右メインフレーム前部1042a、左メインフレーム中間部1041bの前部及び右メインフレーム中間部1042bの前部を含む。メイン骨格部1021aにおいて、左ステップ261及び右ステップ262の前後方向中央Xより後ろに位置する部分が、メイン骨格後部1122である。メイン骨格後部1122は、左メインフレーム中間部1041bの後部、右メインフレーム中間部1042bの後部、左メインフレーム後部1041c及び右メインフレーム後部1042cを含む。メイン骨格部1021aは、メイン骨格前部1121によって傾斜リンク機構5を支持し、メイン骨格後部1122によってシート27、後輪4及びパワーユニット8を支持する。
【0154】
上述の構成では、車体フレーム1021のメイン骨格部1021aは、メイン骨格前部1121によって、車体フレーム1021、左前輪31及び右前輪32を左右方向に傾斜するように支持する傾斜リンク機構5を支持し、メイン骨格後部1122によって、その他の搭載部品を支持する。これにより、運転者の乗車位置、車体フレーム1021に搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を高めることができる。よって、リーン車両1001の設計自由度を高めることができる。
【0155】
図8に示すように、メイン骨格前部1121の上端は、ステアリングハンドルSHの下端よりも低い。すなわち、メイン骨格前部1121の上端の高さH2は、ステアリングハンドルSHの下端の高さH1よりも小さい。これにより、運転者の乗車位置、車体フレーム1021に搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を高めることができる。よって、リーン車両1001の設計自由度を高めることができる。
【0156】
なお、ステアリングハンドルSHの下端は、バーハンドル61及びステアリングシャフト62において、最も下に位置する部分である。本実施形態の場合、ステアリングハンドルSHの下端は、ステアリングシャフト62の下端である。
【0157】
メイン骨格前部1121の上端は、メイン骨格前部1121において、最も上に位置する部分である。本実施形態の場合、メイン骨格前部1121の上端は、左メインフレーム前部1041a及び右メインフレーム前部1042aの前端である。
【0158】
メイン骨格前部1121の上端は、シート27の着座面27cよりも低い。すなわち、メイン骨格前部1121の上端の高さH2は、シート27の着座面27cの高さH3よりも小さい。これにより、運転者の乗車位置、車体フレーム1021に搭載される搭載部品のレイアウトなどの自由度を高めることができる。よって、リーン車両1001の設計自由度を高めることができる。上述のシートの着座面27cの高さH3は、着座面27cのうち最も低い部分の高さである。
【0159】
なお、本実施形態における高さとは、リーン車両1001が走行する路面からの高さを意味する。
【0160】
この実施形態でも、
図9に示すように、左ステップ261の左端と右ステップ262の右端との左右方向の距離WSは、左前輪31と右前輪32とのトレッド幅WHよりも小さい。すなわち、左前輪31と右前輪32とのトレッド幅WHは、左ステップ261の左端と右ステップ262の右端との左右方向の距離WSよりも大きい。これにより、運転者がリーン車両1001に乗る前の足の接地位置から、シート27の着座面27cまでの左右方向の距離が小さい。これにより、運転者は、リーン車両1001に対して容易に乗り降りすることができる。
【0161】
なお、左前輪31と右前輪32とのトレッド幅は、リーン車両1001の左右方向において、左前輪31の中央と右前輪32の中央との間隔を意味する。
【0162】
また、この実施形態でも、
図8に示すように、メイン骨格前部1121は、リーン車両1001の側面視で、左ステップ261及び右ステップ262の少なくとも一部の上面よりも下の位置で傾斜リンク機構5の少なくとも一部を支持する。
【0163】
さらに、この本実施形態でも、
図9に示すように、メイン骨格前部1121は、その車両幅方向の寸法WFが車体フレーム1021に対する左上アーム部材511の支持部511aと車体フレーム1021に対する右上アーム部材521の支持部521aとの間隔Dよりも大きくなるように構成されている。また、メイン骨格前部1121は、その車両幅方向の寸法WFが車体フレーム1021に対する左下アーム部材512の支持部512aと車体フレーム1021に対する右下アーム部材522の支持部522aとの間隔Dよりも大きくなるように構成されている。なお、本実施形態では、メイン骨格前部1121の車両幅方向の寸法WFは、メイン骨格前部1121の前端部分の車両幅方向寸法である。
【0164】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0165】
前記実施形態1では、ハンドル支持部25は、前骨格部211に対して別体に設けられている。しかしながら、ハンドル支持部は、前骨格部と一体で設けられていてもよい。すなわち、ハンドル支持部は、メイン骨格部と一体で設けられていてもよい。
【0166】
前記実施形態1では、メイン骨格部21aは、前骨格部211と、後骨格部212とを含む。しかしながら、メイン骨格部は、前骨格部及び後骨格部以外に、パワーユニットのケーシングの少なくとも一部を含んでいてもよい。
【0167】
前記各実施形態では、傾斜リンク機構5は、左上アーム511及び右上アーム521と、左下アーム512及び右下アーム522とを有する、ダブルウィッシュボーン方式のリンク機構である。しかしながら、傾斜リンク機構は、上アーム及び下アームの一方のアームのみを有する構成であってもよい。
【0168】
前記実施形態1では、メイン骨格部21aは、前骨格部211と、後骨格部212とを含む。しかしながら、メイン骨格部は、一体で構成されていてもよいし、3つ以上の部材を前後方向に連結することにより構成されてもよい。また、メイン骨格部は、左右方向に複数の部品を連結することにより構成されてもよい。メイン骨格部は、パイプ部材を用いて構成されてもよい。
【0169】
前記実施形態1では、前骨格部211の後部は、前部よりも低い。しかしながら、前骨格部は、前後方向で同じ高さを有していてもよいし、前部が後部よりも低くてもよい。
【0170】
前記実施形態1では、後骨格部212の左右方向の寸法は、前骨格部211の左右方向の寸法よりも小さく、後骨格部212の高さは、前骨格部211の高さよりも大きい。しかしながら、後骨格部の左右方向の寸法は、前骨格部の左右方向の寸法と同じか該左右方向の寸法よりも大きくてもよい。後骨格部の高さは、前骨格部と同じ高さか前骨格部よりも小さくてもよい。
【0171】
前記実施形態1では、傾斜リンク機構支持部22において、左上アーム511の支持部511aと右上アーム521の支持部521aとは、離れた位置に位置する。傾斜リンク機構支持部22において、左下アーム512の支持部512aと右下アーム522の支持部522aとは、離れた位置に位置する。しかしながら、傾斜リンク機構支持部において、左上アームの支持部と右上アームの支持部とは、同じ位置であってもよい。傾斜リンク機構支持部において、左下アームの支持部と右下アームの支持部とは、同じ位置であってもよい。
【0172】
前記各実施形態では、メイン骨格前部121,1121の上端は、ステアリングハンドルSHの下端よりも低い。しかしながら、メイン骨格前部の上端は、ステアリングハンドルの下端と同じ高さか該下端よりも高くてもよい。
【0173】
前記各実施形態では、メイン骨格前部121,1121の上端は、シート27の着座面27cよりも低い。しかしながら、メイン骨格前部の上端は、シートの着座面と同じ高さか該着座面よりも高くてもよい。
【0174】
前記実施形態1では、メイン骨格前部121の上端は、傾斜リンク機構5の上端よりも低い。しかしながら、メイン骨格前部の上端は、傾斜リンク機構の上端と同じ高さか該上端よりも高くてもよい。
【0175】
前記各実施形態では、左前輪31と右前輪32とのトレッド幅WHは、左ステップ261の左端と右ステップ262の右端との左右方向の距離WSよりも大きい。しかしながら、左前輪と右前輪とのトレッド幅は、左ステップの左端と右ステップの右端との左右方向の距離と同じか該距離よりも小さくてもよい。
【0176】
前記各実施形態では、ハンドル支持部25は、板状のバー部材によって櫓状に形成されている。しかしながら、ハンドル支持部は、ステアリングハンドルを回転可能に支持できる構成であれば、パイプ部材によって構成されていてもよいし、板状部材によって構成されていてもよい。
【0177】
前記実施形態2では、パワーユニット8は、スイングアーム1023に設けられている。しかしながら、パワーユニットは、後輪に設けられていてもよい。この場合には、後輪に、例えばホイールインモータを設ければよい。
【0178】
前記実施形態2では、リーン車両1001の車体フレーム1021のメイン骨格部2021aは、左ステップ261及び右ステップ262の下で前後方向に延びるパイプ状の左メインフレーム1041及び右メインフレーム1042を有する。しかしながら、左メインフレーム及び右メインフレームは、平板をU字状に折り曲げた部材によって構成されていてもよい。メイン骨格部は、左メインフレーム及び右メインフレーム以外のフレームを有していてもよい。メイン骨格部の構成は、実施形態2の構成に限定されない。
【0179】
前記各実施形態では、シート27は、着座部27aと、シートバック27bとを有する。しかしながら、シートは、着座部のみを有する、いわゆる鞍乗型のシートであってもよい。
【0180】
前記各実施形態では、リーン車両の例として3輪車両を説明したが、リーン車両は、4輪車など、3輪車以外の車両であってもよい。
【符号の説明】
【0181】
1、1001 リーン車両
2 車両本体
3 前輪
4 後輪
5 傾斜リンク機構
6 操舵機構
7 緩衝装置
8 パワーユニット(駆動源)
8a 駆動伝達部
81 バッテリ
21、1021 車体フレーム
21a、1021a メイン骨格部
211 前骨格部
211a 前フレーム側壁部
211b 前フレーム底壁部
212 後骨格部
212a 後フレーム側壁部
212b 後フレーム梁部
212c 開口部
213 補強部材
22 傾斜リンク機構支持部
23 リアアーム
24 リアアーム支持部
25 ハンドル支持部
25a ハンドル支持脚部
25b ハンドル支持梁部
25c ハンドル支持天板部
26 車体カバー(カバー)
26a 車体カバー本体
26b 上部カバー
26c 開口部
261 左ステップ
261a 凹み部
262 右ステップ
265 フロントカバー
265a 光透過部
27 シート
27a 着座部
27b シートバック
27c 着座面
28 緩衝装置支持部
28a 緩衝装置支持本体部
28b タワー部
31 左前輪
32 右前輪
51 左アーム機構
511 左上アーム部材
511a 支持部
512 左下アーム部材
512a 支持部
513 左ナックル
52 右アーム機構
521 右上アーム部材
521a 支持部
522 右下アーム部材
522a 支持部
523 右ナックル
61 バーハンドル
62 ステアリングシャフト
63 ステアリングシャフト支持部
71 左緩衝装置
72 右緩衝装置
121、1121 メイン骨格前部
122、1122 メイン骨格後部
1023 スイングアーム
1029 フロア
1041 左メインフレーム
1041a 左メインフレーム前部
1041b 左メインフレーム中間部
1041c 左メインフレーム後部
1042 右メインフレーム
1042a 右メインフレーム前部
1042b 右メインフレーム中間部
1042c 右メインフレーム後部
1043 前連結部
1044 後連結部
SH ステアリングハンドル
C キャビン
P 操舵軸線
X 前後方向中央