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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】ダイアフラム、及び薬液制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 3/02 20060101AFI20240829BHJP
   F16K 7/02 20060101ALI20240829BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
F16J3/02 A
F16K7/02 A
F16J3/02 D
B32B27/30 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022167532
(22)【出願日】2022-10-19
(65)【公開番号】P2023090629
(43)【公開日】2023-06-29
【審査請求日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2021205196
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】吉田 匡輝
(72)【発明者】
【氏名】西尾 吉史
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 貴行
(72)【発明者】
【氏名】西田 成伸
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-017658(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0162177(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 3/02
F16K 7/02
B32B 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造工程で使用される薬液の流通を制御する薬液制御装置に適用され、作動気体により加圧されるダイアフラムであって、
前記薬液に耐性を有するフッ素樹脂により形成された膜部と、
前記膜部における前記作動気体により加圧される側の面に設けられ、前記膜部よりも前記作動気体を透過させにくい透過抑制層と、
を備え
前記透過抑制層における前記膜部と反対側の面には、他の層が積層されておらず、
前記膜部における前記薬液に接触する側の面には、他の層が積層されておらず、
前記透過抑制層は、前記作動気体により前記ダイアフラムが加圧されても、前記作動気体が前記ダイアフラムを透過することを抑制する、ダイアフラム。
【請求項2】
前記透過抑制層は、変形可能な両面テープにより前記膜部に貼り付けられている、請求項1に記載のダイアフラム。
【請求項3】
前記膜部と前記両面テープとの間には、前記膜部の表面を活性化させる表面処理が施されている、請求項2に記載のダイアフラム。
【請求項4】
前記透過抑制層は、ポリ塩化ビニリデン又はエチレン-ビニルアルコール共重合体により形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のダイアフラム。
【請求項5】
前記透過抑制層の厚みは、10~40[μm]である、請求項1~3のいずれか1項に記載のダイアフラム。
【請求項6】
前記透過抑制層の透過係数[N2]は、2.3×10^-10~18.7×10^-9である、請求項1~3のいずれか1項に記載のダイアフラム。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載のダイアフラムを備え、
前記ダイアフラムの変形により前記薬液の吸入及び吐出を実行するポンプとして使用される、薬液制御装置。
【請求項8】
150~300[kPa]の前記作動気体により前記ダイアフラムを加圧する、請求項に記載の薬液制御装置。
【請求項9】
前記透過抑制層の透過係数[N2]は、2.3×10^-10~18.7×10^-9である、請求項に記載の薬液制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液の流通を制御する薬液制御装置に適用されるダイアフラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フォトレジスト等の薬液を半導体ウエハに塗布する薬液供給システムに用いられるダイアフラムポンプ(薬液制御装置)がある(特許文献1参照)。特許文献1に記載のダイアフラムポンプは、ポンプハウジング内をポンプ室と作動室とに仕切るダイアフラムを備え、作動室に作動エアを供給して加圧することでダイアフラムをポンプ室側へ変形させてフォトレジストを吐出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-77712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フォトレジスト(薬液)に気泡が含まれていると、半導体ウエハに形成されるパターンに欠陥が発生する。このため、フォトレジスト中の気泡を除去する脱気処理が実行されている。しかしながら、パターンの微細化が進んだことにより、これまで問題にならなかった微小気泡がパターン欠陥の新たな原因になっている。フォトレジストに微小気泡が含まれる原因を本願発明者が詳細に調査したところ、ダイアフラムを加圧する作動エアが僅かにダイアフラムを透過して微小気泡の発生原因となることを突き止めた。
【0005】
本発明は、こうした課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、薬液制御装置に適用されて薬液に含まれる微小気泡を減少させることができるダイアフラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
半導体製造工程で使用される薬液の流通を制御する薬液制御装置に適用され、作動気体により加圧されるダイアフラムであって、
前記薬液に耐性を有するフッ素樹脂により形成された膜部と、
前記膜部における前記作動気体により加圧される側の面に設けられ、前記膜部よりも前記作動気体を透過させにくい透過抑制層と、
を備える。
【0007】
上記構成によれば、ダイアフラムは、半導体製造工程で使用される薬液の流通を制御する薬液制御装置に適用され、作動気体により加圧される。このため、ダイアフラムを加圧する作動気体が僅かにダイアフラムを透過して、薬液中に微小気泡を発生させる原因となるおそれがある。
【0008】
ダイアフラムの膜部は、前記薬液に耐性を有するフッ素樹脂により形成されている。このため、膜部が薬液により腐食することを抑制することができる。そして、前記膜部における前記作動気体により加圧される側の面には、前記膜部よりも前記作動気体を透過させにくい透過抑制層が設けられている。このため、作動気体によりダイアフラムが加圧されても、作動気体がダイアフラムを透過することを抑制することができる。したがって、薬液に含まれる微小気泡を減少させることができる。
【0009】
さらに、前記膜部における前記作動気体により加圧される側の面、すなわち膜部における薬液に接触する側の面と反対側の面に透過抑制層が設けられているため、透過抑制層が薬液により腐食することを抑制することができる。
【0010】
第2の手段では、前記透過抑制層は、両面テープにより前記膜部に貼り付けられている。こうした構成によれば、硬化性の接着剤により透過抑制層を膜部に接着する構成と比較して、変形可能な両面テープにより透過抑制層を膜部に接着しているため、膜部の変形に両面テープ及び透過抑制層を追従させやすくなる。さらに、作動気体により加圧されて膜部が変形した際に、膜部から透過抑制層に作用する力を両面テープにより緩和することができる。したがって、膜部から透過抑制層が剥がれたり、透過抑制層が損傷したりすることを抑制することができる。
【0011】
一般に、フッ素樹脂により形成された膜部の表面は不活性であり、他の部材を貼り付けることが困難である。
【0012】
この点、第3の手段では、前記膜部と前記両面テープとの間には、前記膜部の表面を活性化させる表面処理が施されている。したがって、フッ素樹脂により形成された膜部の表面を活性化させることができ、膜部と両面テープとの接着性を向上させることができる。ひいては、膜部が繰り返し変形したとしても、膜部から両面テープ及び透過抑制層が剥がれることを抑制することができる。
【0013】
第4の手段では、前記透過抑制層は、ポリ塩化ビニリデンにより形成されている。ポリ塩化ビニリデンは、気体の透過を抑制する効果が高いことが本願発明者により確認されている。このため、作動気体の圧力が高い場合であっても、作動気体がダイアフラムを透過することを抑制することができる。
【0014】
第5の手段では、前記透過抑制層の厚みは、10~40[μm]である。透過抑制層の厚みが10[μm]以上であればガスバリア性が高くなり、40[μm]以下であればダイアフラムの機能に透過抑制層が悪影響を及ぼしにくいことが、本願発明者により確認されている。
【0015】
ダイアフラムの膜部は作動気体により加圧されて変形するため、膜部に他の層が積層されると、膜部の変形に支障をきたすおそれがある。
【0016】
この点、第6の手段では、前記透過抑制層における前記膜部と反対側の面には、他の層が積層されておらず、前記膜部における前記薬液に接触する側の面には、他の層が積層されていない。このため、ダイアフラムを必要最少限の構成とすることができ、膜部以外の層が膜部の変形に支障をきたことを抑制することができる。
【0017】
一般に、薬液の吸入及び吐出を実行するポンプに適用されるダイアフラムは、面積が大きいため、ダイアフラムを透過する作動気体の量が多くなる。
【0018】
この点、第7の手段は、薬液制御装置であって、第1~第6のいずれか1つの手段のダイアフラムを備え、前記ダイアフラムの変形により前記薬液の吸入及び吐出を実行するポンプとして使用される。したがって、ポンプに適用されるダイアフラムにおいて、作動気体がダイアフラムを透過することを抑制することができる。
【0019】
作動気体の圧力が高いほど、ダイアフラムを透過する作動気体の量が多くなる。
【0020】
この点、第8の手段では、150~300[kPa]の前記作動気体により前記ダイアフラムを加圧する薬液制御装置において、作動気体がダイアフラムを透過することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ダイアフラムポンプの模式図。
図2】ダイアフラムの断面。
図3】ダイアフラムの膜部付近の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、半導体製造工程で使用されるフォトレジストを吸入及び吐出するダイアフラムポンプに具現化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
図1に示すように、ダイアフラムポンプ10(薬液制御装置)は、ポンプハウジング11,21、ダイアフラム30等を備えている。なお、図1は、ダイアフラムポンプ10の一部を表示している。
【0024】
ポンプハウジング11,21には、対向する部分にそれぞれ円形ドーム状の凹部15,25が形成されている。ポンプハウジング11,21は、円形状のダイアフラム30の周縁部32を挟持し、相互に固定されている。ポンプハウジング21と周縁部32との間は、Oリング28によりシールされている。
【0025】
ダイアフラム30は、ポンプハウジング11,21の凹部15,25により形成される内部空間を仕切っている。ダイアフラム30により仕切られた凹部15(ポンプハウジング11)側の空間は、ポンプ室16を形成している。ダイアフラム30により仕切られた凹部25(ポンプハウジング21)側の空間は、作動室26を形成している。ポンプ室16は、フォトレジスト(薬液)により満たされる空間である。作動室26は、作動エア(作動気体)により満たされる空間である。
【0026】
ポンプハウジング11には、ポンプ室16にそれぞれ連通する吸入通路12及び吐出通路13が形成されている。吸入通路12には、フォトレジストをポンプ室16(ダイアフラムポンプ10)へ流通させる配管が接続される。吐出通路13には、ダイアフラムポンプ10から吐出されたフォトレジストを供給先へ流通させる配管が接続される。
【0027】
ポンプハウジング21には、作動室26に対して作動エア(圧縮空気)を供給及び排出する給排通路22が形成されている。給排通路22には、配管を介して作動エアの供給源と負圧の発生源とが選択的に接続される。
【0028】
図2に示すように、ダイアフラム30は、円形状の膜部31、円環状の周縁部32を備えている。ダイアフラム30は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と称する)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(以下、「PFA」と称する)等、フォトレジスト(薬液)に耐性を有するフッ素樹脂により形成されている。周縁部32は、膜部31の外周に設けられている。周縁部32の厚みは、膜部31の厚みよりも厚い。例えば、膜部31の厚みは0.1~0.3[mm](望ましくは0.2[mm])であり、周縁部32の厚みは1.5~4.0[mm](望ましくは2~3.5[mm])である。
【0029】
ダイアフラムポンプ10は、以下のように動作する。図1は、ダイアフラムポンプ10がフォトレジストを吐出した吐出状態を示している。吐出状態では、給排通路22から作動室26へ作動エアが供給されてダイアフラム30が加圧され、ダイアフラム30がポンプ室16側へ変形する。これにより、ポンプ室16の内部のフォトレジストが吐出通路13から吐出される。
【0030】
その後、給排通路22から作動エアを排出し、さらに作動室26へ負圧を導入することにより、ダイアフラム30が凹部25側(作動室26側)へ変形する。これにより、吸入通路12からポンプ室16の内部へフォトレジストが吸入される。
【0031】
以後、作動室26の内部を正圧と負圧とに交互に切り替えることを繰り返すことにより、ダイアフラムポンプ10による吐出と吸入とが繰り返される。ダイアフラムポンプ10が上記のように駆動する際に、作動室26には例えば-50~300[kPa]の作動圧が印加される。なお、作動室26に、例えば-40~150[kPa]の作動圧が印加されてもよい。これらの場合に、作動室26に供給される作動エアの圧力は、例えば150~300[kPa]にすることができる。
【0032】
ここで、作動エアによりダイアフラム30が加圧されることにより、作動エアが僅かにダイアフラムを透過して微小気泡の発生原因となることを本願発明者は突き止めた。そして、作動圧が高いほど、ダイアフラム30の膜部31の面積が大きいほど、膜部31の厚みが薄いほど、ダイアフラムを透過する作動エアの量が多くなると考えられる。ダイアフラムポンプ10に適用されるダイアフラム30では、フォトレジスト(薬液)の吐出量を多くするために膜部31の面積が大きくなりやすい。
【0033】
本実施形態では、作動エアがダイアフラム30を透過することを抑制すべく、ダイアフラム30の膜部31に作動エアの透過を抑制する透過抑制層を設けている。
【0034】
図3は、ダイアフラム30の膜部31付近の拡大断面図である。
【0035】
膜部31において、フォトレジストに接触する側の面31aには、他の層が積層されていない。すなわち、膜部31の面31aがフォトレジストに直接接触する。
【0036】
膜部31において、作動エアにより加圧される側の面31bには、両面テープ41を介して透過抑制層42が設けられている。すなわち、透過抑制層42は、両面テープ41により膜部31の面31bに貼り付けられている。
【0037】
透過抑制層42は、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)により形成されている。ポリ塩化ビニリデンの窒素透過率は、PTFEの窒素透過率の1/1125以下である。ポリ塩化ビニリデンの酸素透過率は、PTFEの酸素透過率の1/690以下である。透過抑制層42の厚みは、例えば8~60[μm]であり、望ましくは10~40[μm](例えば15[μm])である。そして、透過抑制層42は、膜部31よりも作動エアを透過させにくい。
【0038】
透過抑制層42において、膜部31と反対側の面42aには、他の層が積層されていない。すなわち、透過抑制層42の面42aが作動エアに直接接触する。
【0039】
作動気体によりダイアフラムが加圧されても、作動気体がダイアフラムを透過することを抑制し、薬液に含まれる微小気泡を減少させることができるポリ塩化ビニリデンにより形成された膜部31の透過係数[N2(窒素)]([Pa・m^3/(cm^2・sec・atm)])を測定したところ、膜部31の厚みに応じて以下のとおりであった。なお、「^」はべき乗を表し、例えば2^3は2の3乗である。厚み10[μm]で12.4×10^-9、厚み15[μm]で8.5×10^-9、厚み40[μm]で4.6×10^-9であった。また、透過係数の測定方法は、日本工業規格 JIS K 7126-1:2006 プラスチック-フィルム及びシート-ガス透過度試験方法による。
【0040】
さらに、透過係数[N2]が2.3×10^-9以上18.7×10^-9以下であれば作動気体によりダイアフラムが加圧されても、作動気体がダイアフラムを透過することを抑制し、薬液に含まれる微小気泡を減少させることができる。
【0041】
両面テープ41は、フィルム状の基材と、基材の両面に付着した粘着剤(粘着層)とを備えている。基材としては、不織布、ポリエステルフィルム、PET(Poly Ethylene Terephthalate)フィルム等を採用することができる。粘着剤としては、アクリル系粘着剤、エマルジョン系粘着剤等を採用することができる。基材及び粘着剤は、可撓性(柔軟性)を有している。両面テープ41の厚みは、例えば5~300[μm]であり、望ましくは10~100[μm]である。すなわち、両面テープ41の厚みは、膜部31の厚み(例えば0.2[mm])以下であることが望ましい。
【0042】
一般に、フッ素樹脂により形成された膜部31の表面は不活性であり、他の部材を貼り付けることが困難である。そこで、膜部31と両面テープ41との間には、膜部31の表面を活性化させる表面処理が施されている(図示略)。表面処理剤は、例えば金属ナトリウム(Na)である。これにより、膜部31と両面テープ41の粘着剤との接着強度を向上させることができる。
【0043】
透過抑制層42の厚みが10~40[μm]であり、両面テープ41の厚みが10~100[μm]である場合に、透過抑制層42は作動エアの透過を十分に抑制し、且つダイアフラム30の機能に問題は生じなかった。
【0044】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0045】
・ダイアフラム30の膜部31は、フォトレジストに耐性を有するフッ素樹脂により形成されている。このため、膜部31がフォトレジストにより腐食することを抑制することができる。そして、膜部31における作動エアにより加圧される側の面31bには、膜部31よりも作動エアを透過させにくい透過抑制層42が設けられている。このため、作動エアによりダイアフラム30が加圧されても、作動エアがダイアフラム30を透過することを抑制することができる。したがって、フォトレジストに含まれる微小気泡を減少させることができる。
【0046】
・膜部31における作動エアにより加圧される側の面31b、すなわち膜部31におけるフォトレジストに接触する側の面31aと反対側の面31bに透過抑制層42が設けられているため、透過抑制層42がフォトレジストにより腐食することを抑制することができる。
【0047】
・透過抑制層42は、両面テープ41により膜部31に貼り付けられている。こうした構成によれば、硬化性の接着剤により透過抑制層42を膜部31に接着する構成と比較して、可撓性の(変形可能な)両面テープ41により透過抑制層42を膜部31に接着しているため、膜部31の変形に両面テープ41及び透過抑制層42を追従させやすくなる。さらに、作動エアにより加圧されて膜部31が変形した際に、膜部31から透過抑制層42に作用する力を両面テープ41により緩和することができる。したがって、膜部31から透過抑制層42が剥がれたり、透過抑制層42が損傷したりすることを抑制することができる。
【0048】
・膜部31と両面テープ41との間には、膜部31の表面を活性化させる表面処理が施されている。したがって、フッ素樹脂により形成された膜部31の表面を活性化させることができ、膜部31と両面テープ41との接着性を向上させることができる。ひいては、膜部31が繰り返し変形したとしても、膜部31から両面テープ41及び透過抑制層42が剥がれることを抑制することができる。
【0049】
・透過抑制層42は、ポリ塩化ビニリデンにより形成されている。ポリ塩化ビニリデンは、気体の透過を抑制する効果が高いことが本願発明者により確認されている。このため、作動エアの圧力が高い場合であっても、作動エアがダイアフラム30を透過することを抑制することができる。
【0050】
・透過抑制層42の厚みは、10~40[μm]である。透過抑制層42の厚みが10[μm]以上であれば気体遮断性(ガスバリヤ性)が高くなり、40[μm]以下であればダイアフラム30の機能に透過抑制層42が悪影響を及ぼしにくいことが、本願発明者により確認されている。
【0051】
・透過抑制層42の透過係数は、4.6×10^-9~12.4×10^-9[N2]である。こうした構成によれば、透過抑制層42のガスバリア性を十分に確保することができる。さらに、2.3×10^-9~18.7×10^-9であっても透過抑制層42のガスバリア性を十分に確保することができる。
【0052】
・透過抑制層42における膜部31と反対側の面42aには、他の層が積層されておらず、膜部31におけるフォトレジストに接触する側の面31aには、他の層が積層されていない。このため、ダイアフラム30を必要最少限の構成とすることができ、膜部31以外の層が膜部31の変形に支障をきたことを抑制することができる。
【0053】
・ダイアフラムポンプ10に適用されるダイアフラム30において、作動エアがダイアフラム30を透過することを抑制することができる。
【0054】
・150~300[kPa]の作動エアによりダイアフラム30を加圧するダイアフラムポンプ10において、作動エアがダイアフラム30を透過することを抑制することができる。
【0055】
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0056】
・作動室26に供給される作動エアの圧力は、150[kPa]よりも低くてもよいし、300[kPa]よりも高くてもよい。
【0057】
・作動室26に供給される作動エアの圧力は、150~200[kPa]であってもよい。
【0058】
・両面テープ41に代えて、単層の粘着層(粘着剤)を採用することもできる。また、接着剤により膜部31と透過抑制層42とを接着することもできる。接着剤は、柔軟性を有していることが望ましいが、液体状態から硬化する硬化性の接着剤を採用することもできる。これらの粘着層及び接着剤の厚みは、例えば5~300[μm]であり、望ましくは10~100[μm]である。すなわち、粘着層及び接着剤の厚みは、膜部31の厚み(例えば200[μm])以下であることが望ましい。
【0059】
・フォトレジストをフィルタに通過させることにより、フォトレジスト中の気泡を除去する脱気処理を実行するシステムに、ダイアフラムポンプ10を適用してもよい。
【0060】
・ダイアフラム30が適用される流体制御装置は、ダイアフラム式のバルブや、薬液の圧力を調節するダイアフラム式のレギュレータ等であってもよい。これらの流体制御装置であっても、加圧された作動エアがダイアフラムを透過することを、透過抑制層42により抑制することができる。ダイアフラム30に負圧が作用しない流体制御装置であれば、ダイアフラム30の膜部31に透過抑制層42を直接密着させるだけでもよい。その場合であっても、膜部31と透過抑制層42との間に作用する静電気力や、真空吸着力により、膜部31から透過抑制層42が剥がれることを抑制することができる。こうした構成によれば、両面テープ41を省略してダイアフラム30を構成する部材を減らすことができる。
【0061】
・透過抑制層42を、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)により形成することもできる。同じ厚みで比較した場合、EVOHの透過係数[N2]は、PVDCの透過係数[N2]の約1/10である。透過抑制層42としてEVOHを用いた場合、透過係数[N2]が2.3×10^-10以上18.7×10^-9以下であれば作動気体によりダイアフラムが加圧されても、作動気体がダイアフラムを透過することを抑制し、薬液に含まれる微小気泡を減少させることができる。なお、透過抑制層42を、他のガスバリア性フィルムにより形成することもできる。
・透過抑制層42を、Al(アルミ)やAu(金)等の金属膜により形成することもできる。金属膜は、例えば真空蒸着により形成することができる。一般に、金属膜の気体透過率は、樹脂膜の気体透過率よりも低い。
【0062】
・作動気体として、空気に限らず、窒素、酸素、Ar(アルゴン)等を採用することもできる。
【0063】
・流体制御装置が流通を制御する薬液として、フォトレジストの現像液や、洗浄液等を採用することもできる。これらの薬液であっても、フォトレジストの現像やウエハの洗浄等に及ぼす微小気泡の悪影響を、透過抑制層42により抑制することができる。
【符号の説明】
【0064】
10…ダイアフラムポンプ、30…ダイアフラム、31…膜部、31a…面、31b…面、41…両面テープ、42…透過抑制層、42a…面。
図1
図2
図3