(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】外筒組立体、シリンジおよび薬液投与具
(51)【国際特許分類】
A61M 5/42 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
A61M5/42 500
(21)【出願番号】P 2022509348
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2021003899
(87)【国際公開番号】W WO2021192638
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2020054805
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003111
【氏名又は名称】あいそう弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 二三也
(72)【発明者】
【氏名】竹本 昌史
【審査官】黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102004025651(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0013602(US,A1)
【文献】特表2018-502670(JP,A)
【文献】国際公開第2004/021886(WO,A1)
【文献】特表2016-537089(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0203137(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒本体部と、前記外筒本体部の先端部に設けられた針固定部とを備える外筒と、先端に穿刺用針先を有し、前記外筒の前記針固定部に基端部が固定された注射針とを有する針付シリンジ用外筒と、前記針付シリンジ用外筒の先端部に装着された筒状の保護部材とを備える外筒組立体であって、
前記保護部材は、前記針付シリンジ用外筒の前記穿刺用針先を含む先端側部分を突出可能に被包するものであり、前記外筒組立体は、前記注射針の前記穿刺用針先よりも先端側に位置し、かつ、先端方向に向かって突出する皮膚当接用突起を備え
、
さらに、前記外筒組立体は、先端に前記皮膚当接用突起を有し、前記外筒組立体に離脱可能に取り付けられた皮膚当接部材を備え、前記皮膚当接部材の前記皮膚当接用突起は、前記穿刺用針先の前方、かつ、ほぼ前記注射針の中心軸の延長線上に位置していることを特徴とする外筒組立体。
【請求項2】
前記外筒組立体は、前記皮膚当接部材の基端部に形成され、前記針付シリンジ用外筒の前記保護部材に対する相対的な移動を規制するストッパ部を備えている請求項
1に記載の外筒組立体。
【請求項3】
外筒本体部と、前記外筒本体部の先端部に設けられた針固定部とを備える外筒と、先端に穿刺用針先を有し、前記外筒の前記針固定部に基端部が固定された注射針とを有する針付シリンジ用外筒と、前記針付シリンジ用外筒の先端部に装着された筒状の保護部材とを備える外筒組立体であって、
前記保護部材は、前記針付シリンジ用外筒の前記穿刺用針先を含む先端側部分を突出可能に被包するものであり、前記外筒組立体は、前記注射針の前記穿刺用針先よりも先端側に位置し、かつ、先端方向に向かって突出する皮膚当接用突起を備え
、
さらに、前記外筒組立体は、先端に前記皮膚当接用突起を有し、前記外筒組立体に離脱可能に取り付けられた皮膚当接部材と、前記皮膚当接部材の基端部に形成され、前記針付シリンジ用外筒の前記保護部材に対する相対的な移動を規制するストッパ部とを備えていることを特徴とする外筒組立体。
【請求項4】
前記皮膚当接部材は、前記針付シリンジ用外筒または前記保護部材に離脱可能に取り付けられている請求項
1ないし3のいずれかに記載の外筒組立体。
【請求項5】
前記外筒組立体は、前記保護部材を前記針付シリンジ用外筒に対して相対的に先端方向に向かって付勢する付勢部材を備えている請求項1ないし
4のいずれかに記載の外筒組立体。
【請求項6】
外筒本体部と、前記外筒本体部の先端部に設けられた針固定部とを備える外筒と、先端に穿刺用針先を有し、前記外筒の前記針固定部に基端部が固定された注射針とを有する針付シリンジ用外筒と、前記注射針の穿刺用針先をシールするように前記外筒に装着されたシールキャップとを備える外筒組立体であって、
前記外筒組立体は、前記注射針の前記穿刺用針先よりも先端側に位置し、かつ、先端方向に向かって突出する皮膚当接用突起を備える当接部材を備え、前記当接部材は、前記外筒より離脱可能もしくは前記当接部材における前記皮膚当接用突起が前記外筒の基端方向もしくは側方に回動可能となって
おり、前記当接部材の前記皮膚当接用突起は、前記穿刺用針先の前方、かつ、ほぼ前記注射針の中心軸の延長線上に位置していることを特徴とする外筒組立体。
【請求項7】
請求項1ないし
6のいずれかに記載の外筒組立体と、前記外筒組立体の前記針付シリンジ用外筒内に収納され、かつ前記針付シリンジ用外筒内を液密状態にて摺動可能なガスケットと、前記ガスケットを押圧するためのプランジャーとからなるシリンジ。
【請求項8】
請求項1ないし
6のいずれかに記載の外筒組立体と、前記外筒組立体の前記針付シリンジ用外筒内に収納され、かつ前記針付シリンジ用外筒内を液密状態にて摺動可能なガスケットと、前記ガスケットを押圧するためのプランジャーと、前記針付シリンジ用外筒内に充填された医療用液体とを備える薬液投与具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外筒組立体、シリンジおよび薬液投与具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液状の薬剤(薬液)を定量分与するために、注射器が用いられている。この種の注射器としては、例えば、糖尿病の治療のための液状薬剤であるインスリンの注入用のインスリン注入器がある。
糖尿病患者の中には、毎日繰り返し、一日数回、注射器を自ら操作してインスリンの投与を行う必要がある者がおり、この薬液投与(自己注射)時の注射針の穿刺による痛みが大きな問題となっている。
【0003】
これに対し、針の穿刺時に患者が受ける痛みを軽減するために、種々の技術が開示されている。例えば、針の形態について、医療関係者が使用する注射針よりも細い針を使用することが知られており、特許文献1(特開2002-159576)や特許文献2(特開2002-291884)には、外径が先端で細く先端から基端に向かって太くされ、内径もそれに応じて変化させた針も開示されている。また、特許文献3(特開2005-087519)には、痛みを軽減しつつ薬液の注入量を確保するために比較的細い針を複数設けた薬液注入装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-159576号公報(US2002-052580A1、US2005-096603A1)
【文献】特開2002-291884号公報(US2004-078008A1)
【文献】特開2005-087519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、自己注射を行う患者の中には、注射針の穿刺による痛みを少しでも軽減するために、予め穿刺部位(腕部や腹部、臀部等)の複数箇所に注射針を浅く穿刺し、比較的痛みの少ない箇所を探る患者がいることが判明した。しかし、このような「試し刺し」により、針先端に血液や組織液が付着する可能性があり、衛生上の問題が生じる恐れがある。
そこで、本発明は、注射針を直接穿刺することなく、比較的痛みの少ない穿刺箇所を探ること(所謂「試し刺し」)が可能で、より衛生的な外筒組立体、シリンジおよび薬液投与具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
外筒本体部と、前記外筒本体部の先端部に設けられた針固定部とを備える外筒と、先端に穿刺用針先を有し、前記外筒の前記針固定部に基端部が固定された注射針とを有する針付シリンジ用外筒と、前記針付シリンジ用外筒の先端部に装着された筒状の保護部材とを備える外筒組立体であって、
前記保護部材は、前記針付シリンジ用外筒の前記穿刺用針先を含む先端側部分を突出可能に被包するものであり、前記外筒組立体は、前記注射針の前記穿刺用針先よりも先端側に位置し、かつ、先端方向に向かって突出する皮膚当接用突起を備え、
さらに、前記外筒組立体は、先端に前記皮膚当接用突起を有し、前記外筒組立体に離脱可能に取り付けられた皮膚当接部材を備え、前記皮膚当接部材の前記皮膚当接用突起は、前記穿刺用針先の前方、かつ、ほぼ前記注射針の中心軸の延長線上に位置している外筒組立体。
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
外筒本体部と、前記外筒本体部の先端部に設けられた針固定部とを備える外筒と、先端に穿刺用針先を有し、前記外筒の前記針固定部に基端部が固定された注射針とを有する針付シリンジ用外筒と、前記針付シリンジ用外筒の先端部に装着された筒状の保護部材とを備える外筒組立体であって、
前記保護部材は、前記針付シリンジ用外筒の前記穿刺用針先を含む先端側部分を突出可能に被包するものであり、前記外筒組立体は、前記注射針の前記穿刺用針先よりも先端側に位置し、かつ、先端方向に向かって突出する皮膚当接用突起を備え、
さらに、前記外筒組立体は、先端に前記皮膚当接用突起を有し、前記外筒組立体に離脱可能に取り付けられた皮膚当接部材と、前記皮膚当接部材の基端部に形成され、前記針付シリンジ用外筒の前記保護部材に対する相対的な移動を規制するストッパ部とを備えている外筒組立体。
【0007】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
外筒本体部と、前記外筒本体部の先端部に設けられた針固定部とを備える外筒と、先端に穿刺用針先を有し、前記外筒の前記針固定部に基端部が固定された注射針とを有する針付シリンジ用外筒と、前記注射針の穿刺用針先をシールするように前記外筒に装着されたシールキャップとを備える外筒組立体であって、
前記外筒組立体は、前記注射針の前記穿刺用針先よりも先端側に位置し、かつ、先端方向に向かって突出する皮膚当接用突起を備える当接部材を備え、前記当接部材は、前記外筒より離脱可能もしくは前記当接部材における前記皮膚当接用突起が前記外筒の基端方向もしくは側方に回動可能となっており、前記当接部材の前記皮膚当接用突起は、前記穿刺用針先の前方、かつ、ほぼ前記注射針の中心軸の延長線上に位置している外筒組立体。
【0008】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
上記の外筒組立体と、前記外筒組立体の前記針付シリンジ用外筒内に収納され、かつ前記針付シリンジ用外筒内を液密状態にて摺動可能なガスケットと、前記ガスケットを押圧するためのプランジャーとからなるシリンジ。
【0009】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
上記の外筒組立体と、前記外筒組立体の前記針付シリンジ用外筒内に収納され、かつ前記針付シリンジ用外筒内を液密状態にて摺動可能なガスケットと、前記ガスケットを押圧するためのプランジャーと、前記針付シリンジ用外筒内に充填された医療用液体とを備える薬液投与具。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の薬液投与具の実施例を示す正面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示される薬液投与具の正面断面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示される薬液投与具の使用方法を説明するための説明図である。
【
図7】
図7は、
図1に示される薬液投与具の使用方法を説明するための説明図である。
【
図8】
図8は、本発明の薬液投与具の他の実施例を示す正面説明図である。
【
図9】
図9は、
図8に示される薬液投与具の正面断面説明図である。
【
図12】
図12は、第1案内路について説明するための、
図10におけるF方向視説明図である。
【
図13】
図13は、第2案内路について説明するための、
図10におけるG方向視説明図である。
【
図14】
図14は、本発明の薬液投与具の他の実施例を示す正面説明図である。
【
図15】
図15は、本発明の薬液投与具の他の実施例を示す正面説明図である。
【
図16】
図16は、本発明の薬液投与具の他の実施例を示す正面説明図である。
【
図17】
図17は、本発明の薬液投与具の他の実施例を示す正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の外筒組立体、ならびにそれを備えるシリンジ、および薬液投与具を図面に示した実施例を用いて説明する。なお、本実施例においては、
図1における上側(上方向)を先端側(先端方向)とし、
図1における下側(下方向)を基端側(基端方向)とし、
図1における上下方向を軸方向として説明する。
本発明の外筒組立体3は、外筒本体部33と、外筒本体部33の先端部に設けられた針固定部34とを備える外筒31と、先端に穿刺用針先35を有し、外筒31の針固定部34に基端部が固定された注射針32とを有する針付シリンジ用外筒30と、針付シリンジ用外筒30の先端部に装着された筒状の保護部材40とを備える。保護部材40は、針付シリンジ用外筒30の穿刺用針先35を含む先端側部分を突出可能に被包するものであり、外筒組立体3は、注射針32の穿刺用針先35よりも先端側に位置し、かつ、先端方向に向かって突出する皮膚当接用突起41を備える。
【0012】
本発明の薬液投与具1は、上記の外筒組立体3と、外筒組立体3の針付シリンジ用外筒30内に収納され、かつ針付シリンジ用外筒30内を液密状態にて摺動可能なガスケット21と、ガスケット21を押圧するためのプランジャー22と、針付シリンジ用外筒30内に充填された医療用液体11とを備える。
【0013】
また、本発明のシリンジ2は、上記の外筒組立体3と、外筒組立体3の針付シリンジ用外筒30内に収納され、かつ針付シリンジ用外筒30内を液密状態にて摺動可能なガスケット21と、ガスケット21を押圧するためのプランジャー22とからなる。
【0014】
図1および
図2に示されるように、針付シリンジ用外筒30の外筒31は、外筒本体部33と、外筒本体部33の先端部に設けられた針固定部34と、外筒本体部33の基端に設けられた外方(軸方向に直交する方向)に突出するフランジ36とを備える。
【0015】
外筒本体部33は、透明もしくは半透明の略筒状の部分である。また、針固定部34は、外筒本体部33の先端部(この実施例では、外筒本体部33の先端に形成された先端方向に向かって縮径する肩部)から、先端方向に突出するとともに、外筒本体部33よりも小径の中空筒状となっている。また、針固定部34は、
図2および
図3(一部の構成を除いて示す)に示されるように、先端に設けられた環状頭部37と、環状頭部37の基端に設けられ、基端方向に向かって縮径する短いテーパ状縮径部38と、テーパ状縮径部38の基端部と外筒本体部33の先端部とを連結する連結部39とを有する。テーパ状縮径部38により、環状頭部37と連結部39との間に環状凹部が形成されている。
【0016】
環状頭部37には、先端面から基端側に向かって窪んだ凹所と、凹所内に位置し、先端側に頂点を有する中空の円錐状部とが形成されている。なお、環状頭部37は、凹所および円錐状部を省略した中空の円柱形状(円筒形状)でもよい。
環状凹部(縮径部)は、テーパ状でなく、環状頭部37の基端と連結部39との間に段差が形成されるように、単に縮径した形状であってもよい。
連結部39の外面には、外筒31の軸方向に延びる複数の溝が形成されている。連結部39は注射針32の固定強度を高める機能も有しているが、連結部39を省略しても固定強度が得られる場合は、環状凹部(テーパ状縮径部38)の基端部と外筒本体部33の先端部とが直接連結されていてもよい。
【0017】
外筒31の形成材料としては、ガラスやプラスチックを用いることができるが、プラスチックを用いることが好ましく、プラスチックとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマーのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で透明性に優れ、薬剤に対する影響がなく、耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマーのような樹脂が好ましい。
【0018】
注射針32は、先端に穿刺用針先35を有する中空状のものが用いられる。注射針32の基端部は、針固定部34の中空部内に挿入されかつ固定されるとともに、注射針32の内部は、外筒31(外筒本体部33)の内部空間と連通している。注射針32の形成材料としては、金属が一般的である。金属としては、ステンレス鋼が好適である。
【0019】
この実施例の針付シリンジ用外筒30では、外筒31に注射針32が離脱不能に固定されている。外筒31に注射針32を離脱不能に固定する方法としては、例えば、注射針32を、予め成形した外筒31の針固定部34の中空部内に挿入し、接着剤、熱溶着等により針固定部34に固定してもよい。また、外筒31に注射針32を直接インサート成形することで固定してもよい。インサート成形の場合、外筒31を成形することで、針固定部34は、注射針32が挿入された筒状(中空状)となり、注射針32は、その基端部が針固定部34の中空部内に挿入されかつ固定されたものとなる。
【0020】
さらには、外筒31に、注射針32を熱可塑性樹脂製筒状部材を用いて、融着(例えば、熱融着、超音波融着、レーザ融着、誘導加熱融着)することにより固定したものであってもよい。この場合、外筒31としては、熱可塑性樹脂製筒状部材を収納可能な内腔部を有する中空状先端部を有するものが用いられる。熱可塑性樹脂製筒状部材としては、注射針の基端部を収納可能な連通孔を有するものが用いられる。そして、注射針の基端部が挿入された熱可塑性樹脂製筒状部材を、外筒の中空状先端部に挿入し、熱可塑性樹脂製筒状部材を直接もしくは間接的に加熱溶融させることにより、注射針は、熱可塑性樹脂製筒状部材を介して、外筒に固定される。
【0021】
本実施例の注射針32は、先端から基端まで略同一の外径および内径にて延びる肉薄のストレート注射針である。しかし、このようなものに限定されるものではなく、例えば、穿刺抵抗を低くするため(穿刺時に患者に与える苦痛を少なくするため)、穿刺用針先35を含む先端側部分(穿刺時に刺入される部)の外径が、基端側部分の外径よりも小さいテーパ部保有注射針を用いてもよい。また、注射針の剛性を高め、穿刺時の曲がり等を抑制するため、基端側部分の外形が、穿刺用針先35を含む先端側部分の外径よりも大きいテーパ部保有注射針を用いてもよい。そのようなテーパ部保有注射針としては、注射針の先端から基端までの間の一部がテーパ部となっているものでもよく、先端から基端まで全長に亘ってテーパ部となっているものでもよい。
【0022】
針付シリンジ用外筒30の先端部には筒状の保護部材40が装着されている。
図2に示されるように、保護部材40は、内形(内径)が、針付シリンジ用外筒30(外筒31の外筒本体部33)の先端側部分よりも大きくされた略円筒形状であり、針付シリンジ用外筒30の穿刺用針先35を含む先端側部分を被包するのに十分な軸方向長さを有している。
保護部材40は、略円筒形状の側壁部42の先端に、径方向内側に突出する先端環状壁部43が形成されており、側壁部42の内周面と先端環状壁部43の基端側面との間に、段部44が形成されている。先端環状壁部43の内周面により、穿刺時に注射針32が突出(外部に露出)可能な先端開口が形成されている。
【0023】
外筒組立体3は、保護部材40を針付シリンジ用外筒30に対して相対的に先端方向に向かって付勢する付勢部材45を備えている。外筒組立体3においては、付勢部材45は、保護部材40と、針付シリンジ用外筒30の先端に取り付けられた後述するカラー部材46との間に配置されている。付勢部材45としては、コイルばねが用いられている。
【0024】
図2および
図3に示されるように、カラー部材46は、針付シリンジ用外筒30(外筒31)の針固定部34の周囲に回転自在かつ軸方向移動不可に取り付けられる。カラー部材46は、先端側に設けられた小径部47と、基端側に設けられた大径部48とを有する。小径部47の外周面と大径部48の先端側面との間に、段部49が形成されている。カラー部材46(小径部47および大径部48)の内側には、針固定部34を挿入して装着するための取付孔50が設けられている。
【0025】
取付孔50の内面は、
図3に詳細に示されるように、先端方向に向かって徐々に狭まるテーパ状に形成されている。取付孔50の先端部には、径方向内側に突出する係合凸部51が設けられている。係合凸部51は、カラー部材46の針付シリンジ用外筒30への取付状態で、針固定部34の環状凹部(テーパ状縮径部38)と係合する。これにより、カラー部材46は、針固定部34(針付シリンジ用外筒30)に対して軸方向移動不可とされている。
なお、小径部47には、カラー部材46の針付シリンジ用外筒30(針固定部34)への取り付けを容易にするために、軸方向に延びる複数の切欠(スリット)が形成されていてもよい。
【0026】
外筒組立体3において、付勢部材(コイルばね)45は、基端部がカラー部材46の段部49に当接(望ましくは、固定)され、先端部が保護部材40の段部44に当接(望ましくは、固定)されている。これにより、付勢部材45は、針付シリンジ用外筒30に軸方向移動不可に取り付けられたカラー部材46と、保護部材40とを、互いに離間させる方向に付勢する。言い換えれば、付勢部材45は、保護部材40を針付シリンジ用外筒30に対して相対的に先端方向に向かって付勢する。
【0027】
なお、本実施例においては、付勢部材45は、カラー部材46および保護部材40と固定されており、付勢部材45の付勢力により、保護部材40が、針付シリンジ用外筒30から離脱しないようにされている。これに加えて、保護部材40の針付シリンジ用外筒30からの離脱を阻止するために、例えば、保護部材40と針付シリンジ用外筒30との間に、保護部材40の先端方向への相対移動量を規制する係合機構等を設けてもよい。
【0028】
本実施例の外筒組立体3においては、保護部材40の先端に皮膚当接用突起41が形成されている。より詳細には、
図2、
図4および
図5に示されるように、外筒組立体3においては、保護部材40は、円筒形状であり、皮膚当接用突起41は、保護部材40の先端面(先端環状壁部43の先端側面)において周方向に複数(ここでは、8つ)形成されている。
この実施例において、皮膚当接用突起41の数としては、2~10個が好ましく、特に、3~8個が好ましい。また、複数の皮膚当接用突起41は、保護部材40の中心軸に対して。等角度となるように設けられていることが好ましい。皮膚当接用突起41の突出高としては、0.1~0.6mmが好ましく、特に、0.3~0.5mmが好ましい。
【0029】
各皮膚当接用突起41は、それぞれ、先端方向に向かって凸となるように突出する円錐形状とされている。なお、皮膚当接用突起41の形状としては円錐に限られず、例えば、三角錐や四角錐等の多角錐形状や、針形状とされていてもよい。皮膚当接用突起41は、患者の皮膚に当接することにより、所定の刺激(痛み)を生じるものとされていることが望ましい。皮膚当接用突起41は、ある程度の力で皮膚に当接させても、皮膚に損傷を与えないものであることが好ましい。
【0030】
薬液投与具1(シリンジ2)において、針付シリンジ用外筒30内に収納されたガスケット21は、弾性を有するゴムや合成樹脂からなる。ガスケット21は、
図2に示されるように、ほぼ同一外径にて延びる略筒状の本体部と、本体部の外面に設けられた複数の環状リブとを備え、環状リブの外側面が、針付シリンジ用外筒30(外筒本体部33)の内面に液密に接触し、液密状態にて摺動可能である。
【0031】
ガスケット21の形成材料としては、弾性を有するゴム(例えば、ブチルゴム、ラテックスゴム、シリコーンゴムなど)、合成樹脂(例えば、SBSエラストマー、SEBSエラストマー等のスチレン系エラストマー、エチレン-αオレフィン共重合体エラストマー等のオレフィン系エラストマーなど)等を使用することが好ましい。
【0032】
ガスケット21を押圧するためのプランジャー22は、硬質もしくは半硬質樹脂からなる。この実施例では、
図2に示されるように、プランジャー22は、先端に設けられた小円板状のガスケット押圧部と、基端に設けられた円板状の押圧操作部と、断面十字状でガスケット押圧部と押圧操作部の間を針付シリンジ用外筒30の軸方向に延びる軸部とを備えている。なお、軸部は、柱状シャフトであってもよい。柱状シャフトとしては、棒状、円柱状、多角柱状、円筒状、多角筒状などであってもよい。プランジャー22は、先端部(ガスケット押圧部)において、ガスケット21と連結されている。
【0033】
プランジャー22の構成材料としては、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の硬質もしくは半硬質樹脂を用いることが好ましい。
【0034】
薬液投与具1において、
図2に示されるように、外筒31(外筒本体部33)の内部空間と連通された注射針32の先端は、シールキャップ12により封止されており、針付シリンジ用外筒30内に収納された医療用液体11の漏出が防止されるとともに、意図しない穿刺用針先35の露出が防止されている。
【0035】
シールキャップ12の形成材料としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等の合成ゴム、オレフィン系エラストマーやスチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー等の弾性材料が好ましい。
【0036】
シールキャップ12は、上述のような弾性材料により形成されたものとなっており、先端側部分が中実とされるとともに、基端側部分が中空とされ、基端開口が形成されている。
シールキャップ12の先端部分は、保護部材40(先端環状壁部43)の先端開口から突出しており、かつ、先端部は拡径されており、保護部材40の先端面に当接している。薬液投与具1において、針付シリンジ用外筒30にシールキャップ12が装着された際には、穿刺用針先35がシールキャップ12の中実部分に刺入し、シールされる。また、シールキャップ12の基端部(基端開口)は、針固定部34の環状頭部37に、弾性変形した状態(環状頭部37の外形に合せて基端開口が拡がった状態)で嵌合する。これにより、シールキャップ12の基端開口の内面が、針固定部34の環状頭部37の外面と密着した状態となり、針付シリンジ用外筒30からのシールキャップ12の不本意な離脱が阻止される。
なお、シールキャップとしては、注射針の針先に損傷を与えることなく、封止でき、かつ離脱可能なものであれば、どのようなものであってもよい。
【0037】
薬液投与具1においては、
図2に示されるように、針付シリンジ用外筒30内(シールキャップ12とガスケット21間に形成された空間内)に医療用液体11が収納(充填)されている。
【0038】
針付シリンジ用外筒30に充填される医療用液体11(液状の薬剤)としては、種々のものが用いられ得るが、例えば、蛋白製剤、抗体製剤、ヒアルロン酸、インスリン等の、少量、かつ自己注射が必要な医療用液体が、好適に用いられる。また、そのような医療用液体を備える薬液投与具の例としては、糖尿病患者用のインスリンペン、食品及び虫刺されアレルギー患者用のエピネフリン、及び戦場で化学的及び/又は生物学的毒素に曝される恐れがある兵士用の解毒剤が挙げられる。
【0039】
このような薬液投与具1の使用方法(使用時の態様)について、
図6および
図7を用いて、説明する。
【0040】
先ず、薬液投与具1からシールキャップ12を取り外す。使用者は、保護部材40(先端環状壁部43)の先端開口から突出しているシールキャップ12の先端部(拡径部)を摘まんで先端方向に引き抜くことにより、シールキャップ12を取り外すことができる。シールキャップ12を取り外した状態においては、針付シリンジ用外筒30の穿刺用針先35を含む先端側部分は、付勢部材45により先端方向に付勢された保護部材40によって、穿刺用針先35を含む注射針32が外部に露出しないように、被包されている。
【0041】
次いで、使用者は、
図6に示されるように、保護部材40の先端面に形成された複数の皮膚当接用突起41を用いて穿刺箇所を模索する。シールキャップ12が取り外された薬液投与具1(外筒組立体3)においては、保護部材40の先端面に形成された複数の皮膚当接用突起41が、注射針32の穿刺用針先35よりも先端側に位置し、かつ、先端方向に向かって突出している。そのため、使用者は、皮膚当接用突起41を穿刺部位(腕部や腹部、臀部等)100の複数箇所に押し当てることにより、比較的痛みの少ない部位(低痛覚部位)を探ること(所謂「試し刺し」)ができる。なお、試し刺しを行う際は、保護部材40を持って行うことが望ましい。保護部材40の基端から露出している外筒31部分を持って試し刺しを行う際は、付勢部材45の付勢力に抗して、針付シリンジ用外筒30が保護部材40に対して先端方向に移動することで、穿刺用針先35が保護部材40の先端(先端開口)から突出(露出)しないように注意する必要がある。
【0042】
本実施例においては、皮膚当接用突起41が、保護部材40の先端面において、周方向に複数形成されている。より詳細には、複数の皮膚当接用突起41が、保護部材40(先端環状壁部43)の円環状の先端面において、軸方向先端側から見て、注射針32(穿刺用針先35)を中心とした同心円周上に、等間隔に形成されている。そのため、所望の低痛覚部位を精度よく探ることができ、実際の穿刺箇所(後述する操作によって、実際に穿刺用針先35が穿刺される箇所)との誤差を少なくすることができる。また、予め、穿刺箇所の周辺の一定の範囲に、複数の皮膚当接用突起41の当接による刺激を与えておくことで、実際の穿刺の際の痛みを軽減(痛みを感じ難く)する効果もある。
【0043】
次いで、
図7に示されるように、針付シリンジ用外筒30を先端方向に(穿刺箇所に向かって)移動し、所望の穿刺箇所(見つけた低痛覚部位)に注射針32(穿刺用針先35)を穿刺する。好ましくは、穿刺箇所を決定した状態で、保護部材40を位置固定に保持し、針付シリンジ用外筒30を先端方向に移動させることにより、注射針32の穿刺用針先35を穿刺部位(皮膚)に到達させ、さらに押し込むことで注射針32を穿刺部位に穿刺する。その後、プランジャー22を操作して、医療用液体11を体内に投与(注射)する。
【0044】
医療用液体11の投与後、薬液投与具1を穿刺箇所から除去する。このとき、保護部材40が、付勢部材45の付勢力により先端方向に移動し、再び、穿刺用針先35を含む注射針32が外部に露出しないように、針付シリンジ用外筒30の先端側部分を被包する。そのため、穿刺後に穿刺用針先35が外部に露出することが阻止され、より衛生的である。
【0045】
本実施例の外筒組立体3は、針付シリンジ用外筒30と、針付シリンジ用外筒30の先端部(針固定部34)に装着され、針付シリンジ用外筒30の穿刺用針先35を含む先端側部分を突出可能に被包する保護部材40とを備え、さらに、注射針32の穿刺用針先35よりも先端側に位置し、かつ、先端方向に向かって突出する皮膚当接用突起41を備える。そのため、保護部材40によって穿刺用針先35が覆われた状態(穿刺用針先35が外部に露出しない状態)で、皮膚当接用突起41によって、注射針32を直接穿刺することなく、比較的痛みの少ない低痛覚部位を探ること(所謂「試し刺し」)ができるため、衛生的である。
【0046】
図8ないし
図13には、本発明の薬液投与具の別の実施例が示されている。なお、薬液投与具10(シリンジ20)においては、特に記載のない限り、上述した薬液投与具1(シリンジ2)と略同様の構成については、同一の名称および/または符号を用いることにより、詳細な説明を省略する。
【0047】
本実施例の外筒組立体6は、先端に皮膚当接用突起91を有し、外筒組立体6に離脱可能に取り付けられた皮膚当接部材90を備える。ここでは、皮膚当接部材90は、保護部材70に離脱可能に取り付けられている。
【0048】
皮膚当接部材90は、針付シリンジ用外筒30および保護部材70とは別個に形成されている。皮膚当接部材90の形成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー等の硬質もしくは半硬質樹脂からなる樹脂製線材、ステンレスなどの弾性金属線材を用いることが好ましい。なお、皮膚当接部材90は、可撓性を有することが好ましい。シールキャップの離脱が容易となる。
【0049】
皮膚当接部材90は、取付部92において、保護部材70に離脱可能に取り付けられている。取付部92は略円筒状で、かつ周方向の一部(後述する先端側延出部93が連結されている部分と対向する部分)が切り欠かれた形状となっている(
図10参照。なお、
図10においては、シールキャップ12の図示を省略する。)。取付部92は、周方向において弾性変形(一時的な拡径)可能となっており、保護部材70の先端部分に離脱可能に取り付けられている。
【0050】
図10に示されるように、皮膚当接部材90の皮膚当接用突起91は、穿刺用針先35の前方、かつ、ほぼ注射針32の中心軸の延長線上に位置している。具体的には、皮膚当接部材90は、取付部92の先端側部分から先端方向に向かって延びる先端側延出部93を備える。先端側延出部93は屈曲部94を介して、ほぼ注射針32の中心軸の延長線上に延び、その先端に皮膚当接用突起91を有する。皮膚当接用突起91は、先端方向に向かって凸となるように突出する略四角錐形状とされており、患者の皮膚に当接することにより、所定の刺激(痛み)を生じるものとされている。
また、
図8および
図9に示されるように、先端側延出部93は、屈曲部94に至るまでは、所定の長さに亘り、取付部92との連結部分から軸方向に平行に先端方向に向かって延びており、これにより、保護部材70の先端方向において、シールキャップ12を取り外すための空間(スペース)が確保されている。
【0051】
本実施例の外筒組立体6は、皮膚当接部材90の基端部に形成され、針付シリンジ用外筒30の保護部材70に対する相対的な移動を規制するストッパ部95を備えている。具体的には、皮膚当接部材90は、取付部92の基端側部分から基端方向に向かって延びる基端側延出部96を備える。基端側延出部96は、その基端部(延出方向先端部)が、屈曲部を介して、保護部材70(後述する内側筒部71の第1案内路72)の内部に進入されており、後述するカラー部材74の第1突起75との当接により、ストッパ部95として機能する。
【0052】
本実施例のカラー部材74は、針付シリンジ用外筒30(外筒31)の針固定部34の周囲に回転自在かつ軸方向移動不可に取付けられており、
図9に示されるように、大径部48に、互いに対向する径方向外方に突出する一対の第1突起75および第2突起76が形成されている。第1突起75および第2突起76は、それぞれ、後述する保護部材70(内側筒部71)に形成される第1案内路72および第2案内路73内に配置される。
【0053】
本実施例の保護部材70は、内側筒部71と外側筒部77とを備える。内側筒部71と外側筒部77とは、互いに軸方向および周方向(回転方向)に相対移動(回転)不可に固定されている。
【0054】
内側筒部71の側壁部78には、
図9、
図12および
図13に示されるように、所定の形状を有する第1案内路72および第2案内路73が形成されている。第1案内路72および第2案内路73は内側筒部71を径方向(厚さ方向)に貫通するように形成されている。第1案内路72および第2案内路73内には、それぞれ、カラー部材74の第1突起75および第2突起76が配置される。第1案内路72および第2案内路73は、針付シリンジ用外筒30の保護部材70に対する相対的な移動に伴い、カラー部材74に設けられた第1突起75および第2突起76を案内する(カラー部材74の回転動作を規定する)。第1案内路72と第2案内路73は、互いに異なる形状に形成されており、それぞれの果たす作用が異なっている。
【0055】
図12および
図13を用いて、第1案内路72および第2案内路73における第1突起75および第2突起76の動き、ならびにそれらの機能について、簡単に説明する。なお、
図12および
図13において破線にて示されるように、第1突起75および第2突起76は、側面視で、保護部材70に対する移動方向(回転方向)と反対側(
図12および
図13中で、右側)に頂点を有する略三角形状に形成されている。
【0056】
穿刺前(シールキャップ12が取り外される前、または針付シリンジ用外筒30が保護部材70に対して相対的に先端方向に向かって移動される前)において、第1突起75は第1案内路72の初期位置部80にあり、第2突起76は第2案内路73の初期位置部81にある。
【0057】
穿刺の際、保護部材70に対する針付シリンジ用外筒30の先端方向への移動に伴い、第1突起75および第2突起76は、それぞれ、
図12および
図13中の矢印X1,X2に示されるように、第1案内路72および第2案内路73内を穿刺位置部82,83に向かって移動する。このとき、第1突起75および第2突起76は、主として、第2突起76が第2案内路73に沿って移動することにより、案内される。言い換えれば、カラー部材74の回転方向の位置は、第2案内路73により案内される第2突起76の位置によって規定される。
第1案内路72には、初期位置部80と穿刺位置部82との間に、第1弾性片86が設けられている。第1突起75は、第1案内路72内を初期位置部80から穿刺位置部82へ移動する過程で、第1弾性片86に接触し、第1弾性片を一時的に弾性変形させた後、第1突起75と第1弾性片86との接触が解除される。これにより、使用者は、クリック音と感触で薬液投与具10の状態を知ることができる。
【0058】
穿刺後、保護部材70は、付勢部材45の付勢力により先端方向に移動する。保護部材70に対する針付シリンジ用外筒30の基端方向への移動に伴い、第1突起75および第2突起76は、それぞれ、
図12および
図13中の矢印Y1,Y2に示されるように、第1案内路72および第2案内路73内を穿刺位置部82,83からロック位置部84,85に向かって移動する。ここでは、第1突起75および第2突起76は、主として、第1突起75が、第1案内路72に設けられた第2弾性片87の傾斜面88に沿って移動することにより、ロック位置部84,85へ案内される。
第1突起75は、第1案内路72内を穿刺位置部82からロック位置部84へ移動する過程で、第2弾性片87に接触し、第2弾性片87を一時的に弾性変形させた後、第1突起75と第2弾性片87との接触が解除される。これにより、使用者は、クリック音と感触で薬液投与具10の状態を知ることができる。
【0059】
第1突起75および第2突起76が、ロック位置部84,85に到達した後、針付シリンジ用外筒30を、保護部材70に対して先端方向に移動させようとした場合、第1突起75および第2突起76が、第1案内路72および第2案内路73にそれぞれ形成された、基端方向に露出するロック面101,102に当接し、針付シリンジ用外筒30の移動が規制される。これにより、穿刺後の注射針32の露出がより確実に阻止されることとなる。
【0060】
本実施例の外筒組立体6においては、
図9および
図12に示されるように、皮膚当接部材90の基端部に形成されたストッパ部95が、第1案内路72の初期位置部80に配置された第1突起75の直上(
図12中、クロスハッチ部)に配置される。そのため、第1案内路72の初期位置部80に配置された第1突起75の移動が、ストッパ部95により規制されることとなり、第1突起75が形成されたカラー部材74と軸方向移動不可とされている針付シリンジ用外筒30の保護部材70に対する相対的な移動を規制することができ、穿刺前に意図せずに第1突起75および第2突起76がロック位置部84,85に移動すること、ならびに針付シリンジ用外筒30が先端方向に移動すること(穿刺用針先35が外部に露出すること)を阻止できる。
【0061】
保護部材70の外側筒部77は、内側筒部71に軸方向および周方向(回転方向)に相対移動(回転)不可に固定されている。外側筒部77は内側筒部71よりも大径の略円筒形状とされ、内側筒部71に形成された第1案内路72および第2案内路73が外部に露出しないように、内側筒部71を外側から覆っている。これにより、第1案内路72および第2案内路73の破損や、それらを通じて薬液投与具10内に異物が侵入すること等が防止され、薬液投与具10の安全性が高められる。なお、外側筒部77の側壁部には、皮膚当接部材90のストッパ部95が進入可能な孔79が形成されている。
【0062】
このような薬液投与具10の使用方法(使用時の態様)について、以下に説明する。なお、上述した薬液投与具1と同様の態様については、その説明を省略する。
先ず、保護部材70に皮膚当接部材90が取り付けられた薬液投与具10からシールキャップ12を取り外す。このとき、皮膚当接部材90の先端側延出部93に形成された屈曲部94により保護部材70の先端方向に所定の空間が形成されているため、使用者は、シールキャップ12を容易に取り外すことができる。
【0063】
次いで、使用者は、皮膚当接部材90の先端に形成された皮膚当接用突起91を用いて低痛点部位を模索する(試し刺し)。このとき、保護部材70を持って試し刺しを行うのが好ましいが、保護部材70の基端から露出している外筒31部分を持って試し刺しを行った場合でも、皮膚当接部材90に形成されたストッパ部95によって、針付シリンジ用外筒30の保護部材70に対する相対的な移動が規制されているため、意図せずに付勢部材45の付勢力に抗して、針付シリンジ用外筒30が保護部材70に対して先端方向に移動して、穿刺用針先35が保護部材70の先端(内側筒部71の先端環状壁部43の先端開口)から突出(露出)することが防止される。
【0064】
本実施例においては、皮膚当接用突起91が、穿刺用針先35の前方、かつ、ほぼ注射針32の中心軸の延長線上に位置している。そのため、所望の穿刺箇所をより精度よく探ることができる。
【0065】
そして、穿刺前に、保護部材70に取り付けられた皮膚当接部材90を取り外す(離脱させる)。このとき、針付シリンジ用外筒30を、できるだけ軸方向に直交する方向において移動させないことが望ましい。
【0066】
次いで、針付シリンジ用外筒30を先端方向に移動し、所望の(試し刺しにより決定した低痛点部位)穿刺箇所に注射針32(穿刺用針先35)を穿刺する。薬液投与具10においては、上述した第1突起75と第1弾性片86との接触ないし接触解除により、針付シリンジ用外筒30の移動状態(移動開始ないし穿刺完了)が把握できる。その後、プランジャー22を操作して、医療用液体11を体内に投与(注射)する。
【0067】
医療用液体11の投与後、薬液投与具10を穿刺箇所から除去する。このとき、保護部材70が、付勢部材45の付勢力により先端方向に移動し、再び、穿刺用針先35を含む注射針32が外部に露出しないように、針付シリンジ用外筒30の先端側部分を被包する。そのため、穿刺後に穿刺用針先35が外部に露出することが阻止され、より衛生的である。薬液投与具10においては、上述した第1突起75および第2突起76と、ロック面101,102との当接により、より確実に穿刺後の注射針32の露出を阻止できる。また、上述した第1突起75と第2弾性片87との接触ないし接触解除により、針付シリンジ用外筒30の移動状態(ロック機構の発動)が把握できる。
【0068】
図14に示される外筒組立体6a(薬液投与具10a、シリンジ20a)のように、皮膚当接部材90aを、針付シリンジ用外筒30に取り付けてもよい。取付部92aを保護部材70の基端部近傍に取り付けることで、上述したストッパ部(基端側延出部)を設けなくても、針付シリンジ用外筒30の保護部材70に対する相対的な移動を規制することができる。また、皮膚当接部材90aの大型化を抑制するために、先端側延出部93aにおいて、屈曲部94aを保護部材70の先端近傍に設けてもよい。この場合、皮膚当接部材90aを、薬液投与具からシールキャップ(
図14においては図示せず)を取り外した後に、針付シリンジ用外筒30に取り付けるようにしてもよい。
【0069】
図15に示される外筒組立体6b(薬液投与具10b、シリンジ20b)のように、取付部92bと皮膚当接用突起91bを有する先端側延出部93bとの連結部近傍に脆弱部103を設け、試し刺し後であって穿刺前に、脆弱部103において取付部92bと先端側延出部93bとを分離するようにしてもよい。この場合、皮膚当接用突起91bを有する先端側延出部93bが、外筒組立体6bにおいて、保護部材70に離脱可能に取り付けられた皮膚当接部材を構成する。なお、取付部92bとストッパ部(
図15においては図示せず)を有する基端側延出部96bとの連結部近傍に脆弱部104を設け、試し刺し後であって穿刺前に、脆弱部104において取付部92bと基端側延出部96bとを分離するようにして、ストッパ機構を解除するようにしてもよい。
【0070】
本発明の外筒組立体としては、下記のようなものであってもよい。
この実施例の外筒組立体は、外筒本体部33の先端部に設けられた針固定部34とを備える外筒31と、先端に穿刺用針先35を有し、外筒31の針固定部34に基端部が固定された注射針32とを有する針付シリンジ用外筒30と、注射針32の穿刺用針先35をシールするように外筒に装着されたシールキャップ12aとを備える。
【0071】
外筒組立体は、注射針32の穿刺用針先35よりも先端側に位置し、かつ、先端方向に向かって突出する皮膚当接用突起を備える当接部材を備える。当接部材は、外筒31より離脱可能もしくは当接部材における皮膚当接用突起形成部が外筒31の基端方向もしくは側方に回動可能となっている。
図16および
図17に示されるように、皮膚当接部材90c,90dの皮膚当接用突起91c,91dは、穿刺用針先35の前方、かつ、ほぼ注射針32の中心軸の延長線上に位置している。
【0072】
図16に示す実施例の外筒組立体6cでは、当接部材90cは、外筒31より離脱可能となっている。具体的には、外筒組立体6cでは、皮膚当接部材90cは、取付部92cにより、針付シリンジ用外筒30の外筒本体33の先端部の外面に着脱可能に装着されている。取付部92cは、側部開口を有し、断面C字状の弾性変形可能部材が用いられている。取付部92cには、外筒組立体(当接部材を備えない)を先端方向より挿入可能となっている。このため、外筒組立体(当接部材を備えない)を、取付部92cより抜去可能である。
【0073】
図17に示す実施例の外筒組立体6dでは、当接部材90dにおける皮膚当接用突起形成部93dが、外筒31の側方に回動可能となっている。なお、当接部材における皮膚当接用突起形成部が外筒31の基端方向に回動可能であってもよい。
図17に示されるように、皮膚当接部材90dの皮膚当接用突起91dは、穿刺用針先35の前方、かつ、ほぼ注射針32の中心軸の延長線上に位置している。
【0074】
図17に示す実施例の外筒組立体6dでは、皮膚当接部材90dは、取付部92dにより、針付シリンジ用外筒30の外筒本体33の先端部の外面に装着されている。取付部92dは、側部開口を有し、断面C字状の弾性変形可能部材が用いられている。取付部92dには、外筒組立体(当接部材を備えない)を先端方向より挿入可能となっている。
【0075】
そして、当接部材90dの皮膚当接用突起形成部93dは、下端に球状部を備えている。取付部92dは、側面に皮膚当接用突起形成部93dの進入用スリットを備えている。このため、皮膚当接用突起形成部93dは、
図17に示すように、球状部を軸として、側面方向に回動可能となっている。
【0076】
この実施例の外筒組立体6dでは、例えば、皮膚当接用突起形成部93dを外筒31の側方に回動させて、シールキャップ12aを離脱後、皮膚当接用突起形成部93dを再度回動して、
図17の状態に戻し、皮膚当接用突起91dを用いて低痛覚部位を探し、再度、皮膚当接用突起形成部93dを外筒31の側方に回動させた後、探した低痛覚部位に、穿刺用針先35を穿刺することができる。
【0077】
そして、上述の外筒組立体6c、6dを用いて、薬液投与具、プレフィルドシリンジを作成することができる。薬液投与具は、上記の外筒組立体6cまたは6dと、外筒組立体の針付シリンジ用外筒30内に収納され、かつ針付シリンジ用外筒30内を液密状態にて摺動可能なガスケットと、ガスケットを押圧するためのプランジャーとを備えるものとなる。また、プレフィルドシリンジは、さらに、針付シリンジ用外筒30内に充填された医療用液体を備えるものとなる。
この実施例においても、外筒と、注射針、ガスケット、プランジャー、シールキャップ、医療用液体としては、上述したものが使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の外筒組立体は、以下のものである。
(1) 外筒本体部と、前記外筒本体部の先端部に設けられた針固定部とを備える外筒と、先端に穿刺用針先を有し、前記外筒の前記針固定部に基端部が固定された注射針とを有する針付シリンジ用外筒と、前記針付シリンジ用外筒の先端部に装着された筒状の保護部材とを備える外筒組立体であって、
前記保護部材は、前記針付シリンジ用外筒の前記穿刺用針先を含む先端側部分を突出可能に被包するものであり、前記外筒組立体は、前記注射針の前記穿刺用針先よりも先端側に位置し、かつ、先端方向に向かって突出する皮膚当接用突起を備える外筒組立体。
【0079】
本発明の外筒組立体は、針付シリンジ用外筒と、針付シリンジ用外筒の先端部に装着され、針付シリンジ用外筒の穿刺用針先を含む先端側部分を突出可能に被包する保護部材とを備え、さらに、注射針の穿刺用針先よりも先端側に位置し、かつ、先端方向に向かって突出する皮膚当接用突起を備える。
そのため、保護部材によって穿刺用針先が覆われた状態(穿刺用針先が外部に露出しない状態)で、皮膚当接用突起によって、注射針を直接穿刺することなく、比較的痛みの少ない穿刺箇所を探ること(所謂「試し刺し」)ができるため、衛生的である。
【0080】
また、上記の実施態様は、以下のものであってもよい。
(2) 前記皮膚当接用突起は、前記保護部材の先端に形成されている上記(1)に記載の外筒組立体。
(3) 前記保護部材は、円筒形状であり、前記皮膚当接用突起は、前記保護部材の先端面において周方向に複数形成されている上記(1)または(2)に記載の外筒組立体。
(4) 前記外筒組立体は、先端に前記皮膚当接用突起を有し、前記外筒組立体に離脱可能に取り付けられた皮膚当接部材を備える上記(1)に記載の外筒組立体。
(5) 前記皮膚当接部材は、前記針付シリンジ用外筒または前記保護部材に離脱可能に取り付けられている上記(4)に記載の外筒組立体。
(6) 前記皮膚当接部材の前記皮膚当接用突起は、前記穿刺用針先の前方、かつ、ほぼ前記注射針の中心軸の延長線上に位置している上記(4)または(5)に記載の外筒組立体。
(7) 前記外筒組立体は、前記皮膚当接部材の基端部に形成され、前記針付シリンジ用外筒の前記保護部材に対する相対的な移動を規制するストッパ部を備えている上記(4)ないし(6)のいずれかに記載の外筒組立体。
(8) 前記外筒組立体は、前記保護部材を前記針付シリンジ用外筒に対して相対的に先端方向に向かって付勢する付勢部材を備えている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の外筒組立体。
【0081】
また、本発明の外筒組立体は、以下のものである。
(9) 外筒本体部と、前記外筒本体部の先端部に設けられた針固定部とを備える外筒と、先端に穿刺用針先を有し、前記外筒の前記針固定部に基端部が固定された注射針とを有する針付シリンジ用外筒と、前記注射針の穿刺用針先をシールするように前記外筒に装着されたシールキャップとを備える外筒組立体であって、
前記外筒組立体は、前記注射針の前記穿刺用針先よりも先端側に位置し、かつ、先端方向に向かって突出する皮膚当接用突起を備える当接部材を備え、前記当接部材は、前記外筒より離脱可能もしくは前記当接部材における前記皮膚当接用突起が前記外筒の基端方向もしくは側方に回動可能となっている外筒組立体。
【0082】
本発明のシリンジは、以下のものである。
(10) 上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の外筒組立体と、前記外筒組立体の前記針付シリンジ用外筒内に収納され、かつ前記針付シリンジ用外筒内を液密状態にて摺動可能なガスケットと、前記ガスケットを押圧するためのプランジャーとからなるシリンジ。
【0083】
本発明のシリンジは、針付シリンジ用外筒と、針付シリンジ用外筒の先端部に装着され、針付シリンジ用外筒の穿刺用針先を含む先端側部分を突出可能に被包する保護部材とを備え、さらに、注射針の穿刺用針先よりも先端側に位置し、かつ、先端方向に向かって突出する皮膚当接用突起を備える。
そのため、保護部材によって穿刺用針先が覆われた状態(穿刺用針先が外部に露出しない状態)で、皮膚当接用突起によって、注射針を直接穿刺することなく、比較的痛みの少ない穿刺箇所を探ること(所謂「試し刺し」)ができるため、衛生的である。
【0084】
本発明の薬液投与具は、以下のものである。
(11) 上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の外筒組立体と、前記外筒組立体の前記針付シリンジ用外筒内に収納され、かつ前記針付シリンジ用外筒内を液密状態にて摺動可能なガスケットと、前記ガスケットを押圧するためのプランジャーと、前記針付シリンジ用外筒内に充填された医療用液体とを備える薬液投与具。
【0085】
本発明の薬液投与具は、針付シリンジ用外筒と、針付シリンジ用外筒の先端部に装着され、針付シリンジ用外筒の穿刺用針先を含む先端側部分を突出可能に被包する保護部材とを備え、さらに、注射針の穿刺用針先よりも先端側に位置し、かつ、先端方向に向かって突出する皮膚当接用突起を備える。
そのため、保護部材によって穿刺用針先が覆われた状態(穿刺用針先が外部に露出しない状態)で、皮膚当接用突起によって、注射針を直接穿刺することなく、比較的痛みの少ない穿刺箇所を探ること(所謂「試し刺し」)ができるため、衛生的である。