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特許7546066機械的方式による生体組織を構成している組織及び細胞分離方法。
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  • 特許-機械的方式による生体組織を構成している組織及び細胞分離方法。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】機械的方式による生体組織を構成している組織及び細胞分離方法。
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0775 20100101AFI20240829BHJP
【FI】
C12N5/0775
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022558469
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(86)【国際出願番号】 KR2021003108
(87)【国際公開番号】W WO2021194143
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0037420
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0027205
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522189056
【氏名又は名称】イ ジュン ソク
【氏名又は名称原語表記】LEE, Jung Seok
【住所又は居所原語表記】(Heukseok Park Apt., Daeyeon-dong)No. 501, 5, UN pyeonghwa-ro 29beon-gil Nam-Gu Busan 48504 Repiblic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュン ソク
(72)【発明者】
【氏名】シーオーピーシーユー ハシム エレイ
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3218433(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0026586(KR,A)
【文献】特開2019-033691(JP,A)
【文献】特開2012-080821(JP,A)
【文献】特表2007-509601(JP,A)
【文献】特表2012-505658(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0093105(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N,C12M
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪組織を準備するステップと、
前記脂肪組織を希釈液で希釈して脂肪組織混合液を製造するステップと、
前記脂肪組織混合液で脂肪組織と脂肪組織を構成している組織及び細胞を微細化するステップと、
微細化された脂肪組織混合液で脂肪組織と脂肪組織を構成している組織及び細胞を分離するステップと、
を含み、 前記脂肪組織混合液を製造するステップは、前記希釈液の希釈比率に応じて回収された組織及び細胞の単位体積当たり細胞数及び細胞密度を調節し、
前記脂肪組織と脂肪組織を構成している組織及び細胞を微細化するステップは、前記脂肪組織混合液を順次的に、前後に反復的に、又は、この2つの方式により貫通孔の表面、内部、又はこの2つに突出した鋭いエッジを含む複数のスクリーン貫通孔を通過するように移動させ、
前記貫通孔の表面、内部、又はこの2つに突出した鋭いエッジを有するスクリーンを通過する前記脂肪組織と脂肪組織を構成している組織及び細胞を破れ、引っかき、及び分解のうち少なくとも1つ以上の工程を使用し、10μm~4,000μmの大きさで微細化する、機械的方法による組織及び細胞分離方法。
【請求項2】
前記希釈液は、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、エタノール、生理食塩水、乳酸リンゲル液、リンゲル液、均衡電解質溶液、PRP(platelet-rich plasma)、PPP(platelet-poor plasma)、PRPとPPPの混合液及び静脈注射溶液からなる群より選択された少なくとも1つ以上を含む、請求項1に記載の機械的方式による組織及び細胞分離方法。
【請求項3】
前記脂肪組織混合液のうち前記脂肪組織対前記希釈液の希釈比率は、1:99~99:1(v/v)である、請求項1に記載の機械的方式による組織及び細胞分離方法。
【請求項4】
前記希釈液は、前記脂肪組織混合液のうち25%(体積)~75%(体積)である、請求項1に記載の機械的方式による組織及び細胞分離方法。
【請求項5】
前記複数のスクリーンは、異なるか又は同じ大きさの貫通孔を含み、
前記複数のスクリーンは、異なるか又は同じ形態の貫通孔を含む、請求項1に記載の機械的方式による組織及び細胞分離方法。
【請求項6】
前記複数のスクリーンは、貫通孔の大きさの順に配列される、請求項1に記載の機械的方式による組織及び細胞分離方法。
【請求項7】
前記脂肪組織と脂肪組織を構成している組織及び細胞を微細化するステップは、互いに異なる大きさを有する複数の貫通孔を有する複数のスクリーンを内部に装着したハウジング、及び前記ハウジングの両面に注射機を連結した連結口を含む装置を使用する、請求項1に記載の機械的方式による組織及び細胞分離方法。
【請求項8】
前記微細化された脂肪組織混合液で脂肪組織と脂肪組織を構成している組織及び細胞を分離するステップは、遠心分離、振動法、及びフィルタリングのうち少なくとも1つを用いて大きさと比重に応じて分離される、請求項1に記載の機械的方式による組織及び細胞分離方法。
【請求項9】
前記微細化された脂肪組織混合液で脂肪組織と脂肪組織を構成している組織及び細胞を分離するステップは、脂肪組織を構成している組織と幹細胞を含む間質細胞を分離する、請求項1に記載の機械的方式による組織及び細胞分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的方式により生体組織を構成している様々な組織及び細胞を分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体組織は、再生治療及び美容目的にして使用できる様々な組織、細胞、物質が含まれており、これを分離するための様々な方法が利用されている。特に、脂肪組織は、一般に酵素を用いて組織を分解し遠心分離を行う方法が幅広く使用されているが、適切な医療用酵素がなく、使用される酵素に毒性があって酵素を用いて分解された脂肪組織から取得された物質の安全性に対する論議が行われている。ここで、酵素を使用することなく、脂肪組織から再生治療及び美容目的にして使用できる物質を取得するための様々な試みがある。例えば、アメリカ公開出願は、濾過方法及び装置(FILTRATION METHOD AND APPARATUS)を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記言及した問題点を解決するために、生体組織の微細化工程以前に希釈のような前処理工程を行い、希釈による物理的、化学的、及び電気-機械的な効果によって生体組織、特に脂肪組織(adipose tissue)において有用な組織及び細胞及び間質細胞(stromal cell)、即ち、脂肪組織由来の幹細胞が含まれている細胞の分離工程の効率を向上させ得る、機械的方式による組織及び細胞の分離方法に関する。
【0004】
しかし、本発明が解決しようとする課題は、以上で言及したものなどに制限されず、言及されない更なる課題は、下記の記載によって当該の分野当業者に明確に理解できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態により、脂肪組織を準備するステップと、前記脂肪組織を希釈液で希釈して脂肪組織混合液を製造するステップと、前記脂肪組織混合液で脂肪組織と脂肪組織を構成している組織及び細胞を微細化するステップと、微細化された脂肪組織混合液で脂肪組織と脂肪組織を構成している組織及び細胞を分離するステップとを含む機械的方式による組織及び細胞分離方法に関する。
【0006】
本発明の一実施形態に係る前記希釈液は、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、エタノール、生理食塩水、乳酸リンゲル液、リンゲル液、均衡電解質溶液、PRP(platelet-rich plasma)、PPP(platelet-poor plasma)、PRPとPPPの混合液及び静脈注射溶液からなる群より選択された少なくとも1つ以上を含むことができる。
【0007】
本発明の一実施形態により、前記脂肪組織混合液のうち前記脂肪組織対前記希釈液の希釈比率は、1:99~99:1(v/v)であってもよい。
【0008】
本発明の一実施形態により、前記希釈液は、前記脂肪組織混合液のうち25%(体積)~75%(体積)であってもよい。
【0009】
本発明の一実施形態により、前記脂肪組織混合液を製造するステップは、前記希釈液の希釈比率に応じて回収された組織及び細胞の単位体積当たり細胞数及び細胞密度を調節することができる。
【0010】
本発明の一実施形態により、前記脂肪組織と脂肪組織を構成している組織及び細胞を微細化するステップは、カッティング、破れ、引っかき、分解、及び分離のうち少なくとも1つ以上の工程を使用することができる。
【0011】
本発明の一実施形態により、前記脂肪組織と脂肪組織を構成している組織及び細胞を微細化するステップは、10μm~4,000μmの大きさで微細化することができる。
【0012】
本発明の一実施形態により、前記脂肪組織と脂肪組織を構成している組織及び細胞を微細化するステップは、前記脂肪組織混合液を順次的に、前後に反復的に、又は、この2つの方式により複数のスクリーン貫通孔を通過するように移動させることができる。
【0013】
本発明の一実施形態により、前記複数のスクリーンは、異なるか又は同じ大きさの貫通孔を含み、前記複数のスクリーンは、異なるか又は同じ形態の貫通孔を含むことができる。
【0014】
本発明の一実施形態により、前記複数のスクリーンは、それぞれ10μm~4,000μmの大きさの貫通孔を含むことができる。
【0015】
本発明の一実施形態により、前記複数のスクリーンは、貫通孔の大きさの順に配列され、前記貫通孔の表面、内部、又はこの2つに突出した鋭いエッジを含むことができる。
【0016】
本発明の一実施形態により、前記脂肪組織と脂肪組織を構成している組織及び細胞を微細化するステップは、互いに異なる大きさを有する複数の貫通孔を有する複数のスクリーンを内部に装着したハウジング、及び前記ハウジングの両面に注射機を連結した連結口を含む装置を使用することができる。
【0017】
本発明の一実施形態により、前記微細化された脂肪組織混合液で脂肪組織と脂肪組織を構成している組織及び細胞を分離するステップは、遠心分離、振動法、及びフィルタリングのうち少なくとも1つを用いて大きさと比重に応じて分離されることができる。
【0018】
本発明の一実施形態により、前記微細化された脂肪組織混合液で脂肪組織と脂肪組織を構成している組織及び細胞を分離するステップは、脂肪組織を構成している組織と幹細胞を含む間質細胞を分離することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、機械的方式により脂肪組織を構成している様々な組織及び細胞を分離する工程で機械的微細化の手続きを行う前に、生理食塩水、乳酸リンゲル液、リンゲル液、均衡を保った電解質溶液、PRP(platelet-rich plasma)、PPP(platelet-poor plasma)、PRPとPPPの混合液又は静脈注射方式で投与可能な溶液などにより脂肪組織を希釈する希釈工程を行い、このような事前希釈方式は、希釈による物理的、化学的、及び電気-機械的な効果のよりもさらに多くの脂肪組織を構成している様々な細胞、及び脂肪組織由来の間質細胞、即ち、幹細胞が豊かに含まれている細胞を分離し、分離工程の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態により、本発明による分離方法の工程フローチャートを例示的に示した図である。
図2】本発明の一実施形態により、本発明の方法に使用される装置の正断面図を例示的に示した図である。
図3】本発明の一実施形態により、図2に示す装置の一部構造の切断斜視図を例示的に示した図である。
図4】本発明の一実施形態により、本発明の方法に使用される装置のスクリーンを例示的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の説明において、関連する公知機能又は構成に対する具体的な説明が本発明の要旨を不要に曖昧にすると判断される場合、その詳細な説明は省略する。また、本明細書で使用される用語は、本発明の好適な実施形態を適切に表現するために使用された用語として、これはユーザ、運用者の意図又は本発明が属する分野の慣例などによって変わり得る。従って、本用語に対する定義は、本明細書の全般にわたった内容に基づいて記載されなければならない。各図面に提示された同じ参照符号は同じ部材を示す。
【0022】
明細書の全体において、いずれかの部材が他の部材「上に」位置しているとするとき、これはいずれかの部材が異なる部材に接している場合のみならず、2つの部材の間に更なる部材が存在する場合も含む。
【0023】
明細書の全体において、いずれかの部分がいずれかの構成要素を「含む」とすれば、これは他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことをを意味する。
【0024】
以下、本発明の機械的な方式による組織及び細胞を分離方法について実施形態及び図面を参照して具体的に説明する。しかし、本発明がこのような実施形態及び図面に制限されることはない。
【0025】
本発明は、機械的方式による組織を構成している様々な組織及び細胞を分離方法に関し、本発明の一実施形態に係る前記分離方法は、脂肪組織を準備するステップS1と、脂肪組織を希釈するステップS2と、脂肪組織を微細化するステップS3、及び脂肪組織及び脂肪組織を構成している様々な組織及び細胞を分離するステップS4を含む。
【0026】
本発明の一実施形態により、脂肪組織を準備するステップS1は、脂肪組織で幹細胞を含んで脂肪組織を構成している組織及び細胞を分離するための脂肪組織サンプルを準備することで、動物(魚類、哺乳類など)などで由来した脂肪組織を収集し、脂肪組織を構成している組織及び細胞分離に利用できる濃縮された脂肪組織を準備してもよい。例えば、脂肪吸引(liposuction)、脂肪組織切除(excision)などの希望する方式で脂肪組織を収集し、脂肪吸引物(lipoaspirate)又は脂肪組織を濃縮するために、デカント(decanting)又は遠心分離法(centrifugation)により分離した脂肪組織の最上層(oil)及び下層に位置する不純物を除去することができる。前記デカントは、脂肪組織が血液や水よりも軽くて吸引容器をじっと立てておけば、数分後に脂肪組織は上方に浮び上がり、その後、脂肪組織の下方にある水分や血液を分離する方法である。
【0027】
本発明の一実施形態により、脂肪組織を希釈するステップS2は、前記脂肪組織を希釈液で希釈して脂肪組織混合液を製造するステップであり、脂肪組織の微細化工程、分離工程のような加工処理、即ち、機械的に処理する前に濃縮された脂肪組織を最終的に回収(又は、分離)する組織及び細胞混合液の量及び密度に応じて、様々なプロトコル/方法による希釈工程を行うことができる。例えば、前記希釈液の希釈比率に応じて、分離工程に使用される脂肪組織又は最終的に回収する組織及び細胞混合液の単位体積当たり細胞数及び細胞密度を調節し、脂肪組織を構成している様々な組織、細胞、及び間質細胞(Stromal cell)の分離される量を増加させることができる。
【0028】
本発明の一例として、前記希釈液は、静脈注入ルート(intravenous route)に適用され得る溶液であってもよく、例えば、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、エタノール、生理食塩水(saline)、乳酸リンゲル液(ringer lactate)、リンゲル液(ringer)、均衡電解質溶液(balanced electrolyte)又は溶液(solution)、PRP(platelet-rich plasma)、PPP(platelet-poor plasma)、PRPとPPPの混合液、静脈注射溶液からなる群より選択された少なくとも1つ以上を含んでもよい。即ち、機械的方式により、脂肪組織から脂肪組織を構成している様々な組織及び細胞を分離及び取得する工程において、任意の静脈注入ルートにより適用される生理食塩水、リンゲル乳酸、リンゲル、均衡電解質溶液、PRP(platelet-rich plasma)、PPP(platelet-poor plasma)、PRPとPPPの混合液、又は、溶液を用いて脂肪組織を希釈する事前希釈(predilution)は、希釈による物理的、化学的、及び/又は電気機械的な効果により脂肪組織及び脂肪組織を構成している様々な組織及び細胞の分離を増加させ、脂肪組織を構成している様々な組織及び細胞分離工程の効率を向上させることができる。
【0029】
本発明の一例として、前記希釈液は、前記脂肪組織混合液のうち、前記脂肪組織対前記希釈液の希釈比率は、1:99~99:1(v/v);20:80~80:20(v/v)、又は、50:50~20:80(v/v)であり、好ましくは、前記希釈液は、前記脂肪組織混合液のうち25%(体積)~75%(体積)であってもよい。これは、微細化工程及び分離工程に使用される装置及びシステムのボリュームにより適切に調節し、回収された細胞及び組織の希釈液に含まれている細胞数及び/又は細胞密度を調節することができる。例えば、任意の静脈注入溶液など50%の希釈液及び50%の脂肪組織を使用することで、機械的な処理以前に希釈が行われ、次の工程が行われる。より具体的に、10ccの注射機又は容器に5ccの脂肪組織及び5ccの希釈液が使用されたり、20ccの注射機又は容器に10ccの脂肪組織及び10ccの希釈液が使用されてもよい。
【0030】
本発明の一実施形態により、脂肪組織を微細化するステップS3は、前記希釈された脂肪組織混合液で脂肪組織と脂肪組織を構成している多様な組織及び細胞を微細化するステップであり、カッティング、破れ、引っかき、分解、及び分離のうち少なくとも1つ以上の工程を用いて微細化することができる。
【0031】
本発明の一例として、脂肪組織を微細化するステップS3は、脂肪組織混合液で脂肪組織、脂肪細胞、幹細胞を含む間質細胞、生体物質などを10μm~4,000μmの大きさで均一に微細化することができる。
【0032】
本発明の一例として、脂肪組織を微細化するステップS3は、前記脂肪組織混合液を複数のスクリーンが内蔵されたシステム又は装置を用いて微細化してもよい。
【0033】
例えば、前記複数のスクリーンは、異なるか又は同じ大きさの貫通孔を含み、異なるか又は同じ形態の貫通孔を含んでもよい。これは、様々な大きさの脂肪細胞及び間質細胞を微細化することで、分離工程の効率を向上させることができる。
【0034】
例えば、前記複数のスクリーンは、それぞれ単一又は複数の貫通孔を含んでもよい。
【0035】
例えば、前記複数のスクリーンは、それぞれ10μm~4,000μmの大きさの貫通孔を含み、前記貫通孔は、球状、楕円形、多角形、及び格子状のうち少なくとも1つ以上を含んでもよい。前記の大きさは、貫通孔の直径、長さなどを意味する。
【0036】
例えば、前記貫通孔の表面、内部の又はこの2つに突出した鋭いエッジを含み、これは図4に示すように、鋭いエッジを含むブレード状に突出されてもよい。
【0037】
例えば、前記複数のスクリーンは、システム又は装置内で貫通孔の大きさに応じて順次配列され、貫通孔が大きい順、又は、貫通孔が小さい順に配列されてもよい。
【0038】
例えば、前記脂肪組織混合液は、前記複数のスクリーンが配列されたシステム又は装置内に投入され、入口から出口に移動して順次的、前後に反復的、又は、この2つの方式で複数のスクリーンの貫通孔を通過して微細化することができる。
【0039】
例えば、前記複数のスクリーンが配列されたシステム又は装置内に脂肪組織を貫通孔を通過するように移動させる反復回数は、約3~30回であってもよい。例えば、大きい微細気孔を有するスクリーンから相対的に小さい気孔を有するスクリーン、又は、逆の順に反復してもよい。
【0040】
本発明の一例として、希釈された脂肪組織から脂肪組織を構成している組織及び細胞を取得する微細化工程が行われる複数のスクリーンを装着した装置は、図1を参照して示された生体組織微細化システム1を使用することができる。生体組織微細化システム1は、第1シリンジC1、第2シリンジC2、第2カバー160、第1カバー150、ハウジング110、第2ロッカー192、及び第1ロッカー191を含む。生体組織微細化システム1は、鋭いエッジを有するブレード状に突出部を有する様々な大きさの貫通孔を有する複数のスクリーンを含むディスク120が装着されたハウジング110で両側の接続部との間に装着され、ハウジング110の両側にある接続部にそれぞれ接続されている第1シリンジC1及び第2シリンジC2を含む。第1シリンジC1及び第2シリンジC2は、それぞれ希釈された脂肪組織混合物(BT)を収容するように構成された第1容器及び第2容器を形成し、内部に圧力を印加して脂肪組織(BT)をスクリーン120に向かって加圧するように構成された第1プッシュロッドを含んでもよい。2つのシリンジC1、C2のプランジャをそれぞれ加圧し、ハウジング110を介して希釈された脂肪組織をスクリーンを通過するように繰り返し移動させれば、様々な大きさを有する均質の微細化された脂肪組織を取得し、これを用いて様々な大きさの均質化された微細脂肪と、その他の脂肪組織を構成している組織及び細胞を機械的に分離することができる。
【0041】
例えば、前記複数のスクリーンは、10μm~4000μmの大きさの貫通孔を有し、ブレード状にブレードが貫通孔の中央に向かって突出した形状の貫通孔を含み、2000μm~3000μm、1000μm~2000μm、500μm~1000μm、及び250μm~500μmの大きさの微細孔を有するスクリーンの順に配列されてもよい。
【0042】
例えば、前記複数のスクリーンは、微細化システム1において、複数のスクリーンを含むディスク120は、プレート121及び複数のスクリーン122a、122b、122c、122d、122eを含む。プレート121は、第1マウント111に固定されてもよい。プレート121は、第1中心開口1211を含む。即ち、脂肪組織を微細化するように構成された複数の貫通孔をそれぞれ含む複数のスクリーン122a、122b、122c、122d、122eのうち第1スクリーン122aを選択し、選択された第1スクリーン122aで脂肪組織を微細化した後、複数のスクリーン122a、122b、122c、122d、122eのうち第2スクリーン122bを選択し、選択された第2スクリーン122bで脂肪組織を微細化するように構成することができる。ここで、複数のスクリーン122a、122b、122c、122d、122eの選択及び順序は、ユーザに応じて決定され得るため、前記で説明したスクリーンの選択及び順序に拘束されることはない。
【0043】
図4を参照すると、本発明の一実施形態により複数のスクリーンを装着した装置において、前記スクリーンの構成を例示的に示したものであり、図4において、スクリーン220は、プレート221及び貫通孔222を含むことができる。貫通孔222は、プレート221の複数の角によって規定されてもよい。例えば、スクリーン220は、貫通孔222の第1側に形成された第1線型部223a、貫通孔222の第1側に形成されて貫通孔222の中心に向かって第1方向T1に突出する第1突出部224a、貫通孔222の第2側に形成された第2線型部223b、及び貫通孔222の第2側に形成されて貫通孔222の中心に向かって第2方向T2に突出する第2突出部224bを含む。第1突出部224a及び第2突出部224bは、スクリーン220に対して傾斜するように配向され、スクリーン220を通過する脂肪組織を掻いたり破ったりするように構成してもよい。第1方向T1に突出する第1突出部224aの第1延長線L1、及び第2方向T2に突出する第2突出部224bの第2延長線L2は互いにズレる位置にあってもよい。即ち、第1延長線L1及び第2延長線L2は、相互平行しなくても接しなくてもよい。第1突出部224a及び第2突出部224bは、第1カバー150及び第2カバー160のいずれか1つのカバーに向かうように第1突出部224aの方向T1及び第2突出部224bの方向T2が設定され得る。
【0044】
本発明の一実施形態により、脂肪組織及び脂肪組織を構成している様々な組織及び細胞を分離するステップS4は、前記脂肪組織混合液で微細脂肪と脂肪組織を構成している様々な組織及び細胞を分離するステップであり、遠心分離、デカント、振動法(vibration)、フィルタリングなどを使用することができる。
【0045】
本発明の一例として、遠心分離、振動法、及びフィルタリングのうち少なくとも1つを用いて、比重及び/又は大きさに応じて分離し、希望する脂肪組織及び細胞を分離することができる。一例として、前記微細化工程を経た脂肪組織混合液を遠心分離により分離工程した後、4つの層(トリグリセリド(triglyceride)層;脂肪組織、脂肪組織と希釈液+体液の境界層で細胞が集約された間質細胞の集約(aggregate)層;及び希釈液、体液、幹細胞を含む間質細胞溶液層)に分離されれば、i)そのうちの最下層の幹細胞を有する間質細胞溶液層及びその真上の細胞が集約された層を注射機から回収することができる。前記2つの層は、互いに混合されて適用(治療)のために準備され得る。ii)溶液のみを希望する場合、幹細胞ないし間質細胞溶液(希釈液+体液+間質細胞)層に呼ばれる最下溶液層が使用されてもよい。iii)ジェル状の最終産物のみを希望する場合、最下層(間質細胞溶液層)から2番目の層である細胞集約層(aggregate)が回収され、この層は粘性が高いことからジェルとして用いてもよい。又は、この層は、一般の脂肪組織と直接的に混合されて使用されてもよい。又は、この層は、取得された後に希望する希釈液に希釈して使用されてもよい。
【0046】
異なる例として、最終産物の最上層であるトリグリセリド(triglyceride)層を除去することで、上部の脂肪組織が下部の全体的な間質分化(分化)(stromal differentiation)層、即ち、脂肪組織層以下の全ての層を示す間質細胞集約層、希釈液、体液、及び間質細胞を含む間質細胞溶液層と混合されてもよく、混合物は、細胞濃縮(cell-enriched)脂肪組織の移植(graft)として使用されてもよい。
【0047】
以下、実施形態に通じて本発明をより詳細に説明するが、下記の実施形態は単に説明の目的のためのものであり、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0048】
実施形態
【0049】
人体において、脂肪吸引方式により収集した脂肪組織から不純物を除去し、遠心分離してから濃縮された脂肪組織を準備した。前記濃縮された脂肪組織は、表1及び表2により、希釈工程を経て図2に示す装置で400μm~4、000μmの大きさの貫通孔を有する複数のスクリーンを用いて30回繰り返し微細化した。微細化工程の前に、希釈工程及び希釈比率に応じて間質細胞(有核細胞)の数及び密度を分析して表1及び表2に示した。微細化工程の前に希釈工程が行われていない対照群対比有核細胞数の比率を示した。
【0050】
表1及び表2に示すように、希釈液を用いて微細化工程の前に希釈する場合、間質細胞(有核細胞)の細胞数及び密度が増加し、機械的な分離工程を介して脂肪組織で間質細胞(有核細胞)の分離量が増加することが確認できる。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
上述したように実施形態がたとえ限定された実施形態と図面によって説明されたが、当技術分野で通常の知識を有する者であれば、前記記載から様々な修正及び変形が可能である。例えば、説明された技術が説明された方法とは異なる順に実行されたり及び/又は説明された構成要素が説明された方法とは異なる形態に結合又は組み合せわされたり、他の構成要素又は均等物によって代替、置換されても、適切な結果を達成することができる。従って、本発明の範囲は、開示された実施形態に限定されて定められるものではなく、特許請求の範囲及び特許請求の範囲と均等なものなどによって定められるものである。
図1
図2
図3
図4