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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】自律移動ロボット
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/243 20240101AFI20240829BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240829BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240829BHJP
【FI】
G05D1/243
G05D1/43
G06T7/00 300Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022571488
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2021047260
(87)【国際公開番号】W WO2022138624
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2020216979
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】北野 斉
(72)【発明者】
【氏名】臼井 翼
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-143324(JP,A)
【文献】特開2019-185556(JP,A)
【文献】特表2020-501423(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0074249(US,A1)
【文献】国際公開第2008/129875(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/243
G05D 1/43
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動経路に沿って配置された標識を、搭載した撮像部で読み取り、前記標識に誘導されて移動する自律移動ロボットであって、
前記標識の登録位置に基づいて、前記撮像部が撮像した撮像画像の一部に第1の走査範囲を設定し、前記第1の走査範囲の中から前記標識を探索する限定範囲探索モードを有する算出部を備え
前記算出部は、前記限定範囲探索モードにて前記標識が検出できない場合、前記撮像画像の全体に第2の走査範囲を設定し、前記第2の走査範囲の中から前記標識を探索する全体範囲探索モードに切り替えて前記標識を探索する、自律移動ロボット。
【請求項2】
前記算出部は、前記限定範囲探索モードまたは前記全体範囲探索モードにて前記標識が検出できた場合、前記標識を追跡する第3の走査範囲を設定し、前記第3の走査範囲の中から前記標識を探索するトラッキングモードに切り替えて前記標識を探索する、請求項1に記載の自律移動ロボット。
【請求項3】
前記算出部は、前記トラッキングモードにて前記標識が検出できなくなった場合、前記標識が検出できた最後の前記第3の走査範囲と同一範囲の第4の走査範囲を設定し、前記第4の走査範囲の中から前記標識の再探索を複数回行う再探索モードに切り替えて前記標識を探索する、請求項2に記載の自律移動ロボット。
【請求項4】
前記再探索モードのときには、移動を停止する、請求項3に記載の自律移動ロボット。
【請求項5】
前記算出部は、前記再探索モードにて前記標識が検出できない場合、前記全体範囲探索モードに切り替えて前記標識を探索する、請求項3または4に記載の自律移動ロボット。
【請求項6】
前記標識は、前記移動経路に沿って複数配置されており、
前記標識の登録位置は、前記複数の標識のそれぞれに対応して設定されており、
前記算出部は、前記自律移動ロボットを誘導する前記標識を切り替えるごとに、当該標識に対応した登録位置に前記標識の登録位置を切り替えて、前記限定範囲探索モードによる前記標識の探索を行う、請求項1~5のいずれか一項に記載の自律移動ロボット。
【請求項7】
前記算出部は、前記標識を検出した場合、当該標識の検出位置を、次回探索する前記標識の登録位置として更新する、請求項1~6のいずれか一項に記載の自律移動ロボット。
【請求項8】
移動経路に沿って配置された標識を、搭載した撮像部で読み取り、前記標識に誘導されて移動する自律移動ロボットであって、
前記標識の登録位置に基づいて、前記撮像部が撮像した撮像画像の一部に第1の走査範囲を設定し、前記第1の走査範囲の中から前記標識を探索する限定範囲探索モードを有する算出部を備え、
前記算出部は、前記標識を検出した場合、当該標識の検出位置を、次回探索する前記標識の登録位置として更新する、自律移動ロボット。
【請求項9】
前記算出部は、前記限定範囲探索モードにおいて、更新した前記標識の登録位置に基づき前記標識を探索する場合、前記第1の走査範囲を、前回の前記限定範囲探索モードによる第1の走査範囲よりも小さく設定する、請求項7または8に記載の自律移動ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律移動ロボットに関するものである。
本願は、2020年12月25日に、日本に出願された特願2020-216979号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、自動配車システムが開示されている。この自動配車システムは、車両の走行可能な経路上に配置され、走行動作を指示する走行動作指示情報が供給され当該走行動作指示情報を表示する複数の標識と、前記複数の標識の中から対向する標識の走行動作指示情報を抽出し、抽出された標識の走行動作指示情報に基づいて自車の走行を制御するとともに前記経路上を走行可能な自律走行車と、を有する。
【0003】
自律走行車は、進行方向前方にある標識までの距離を測る測距手段と、前記測距手段から供給される距離に応じて略一定の大きさの標識の画像を取得する撮像手段とを備え、前記撮像手段で取得された画像から前記標識の走行動作指示情報を抽出する。具体的に、自律走行車は、撮像手段で取得した画像に対して、標識の外枠をテンプレートとした濃淡テンプレートマッチング処理を実施し、標識の中心位置を計算して標識の抽出処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-184521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、上記のような自律移動ロボットが、搭載したカメラなどで標識を検出する場合、カメラが撮像した撮像画像の全体から標識を探索する画像処理をしていた。しかし、カメラの画角が広いと、撮像画像に標識に似た外乱が増加し、標識の検出確度が低下する問題があった。また、撮像画像の情報量が多いと、画像処理時間が増加する問題もあった。
【0006】
本発明は、標識の検出確度を向上でき、また標識の検出にかかる画像処理時間を減少できる自律移動ロボットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る自律移動ロボットは、移動経路に沿って配置された標識を、搭載した撮像部で読み取り、前記標識に誘導されて移動する自律移動ロボットであって、前記標識の登録位置に基づいて、前記撮像部が撮像した撮像画像の一部に第1の走査範囲を設定し、前記第1の走査範囲の中から前記標識を探索する限定範囲探索モードを有する算出部を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、自律移動ロボットにおいて標識の検出確度を向上し、また画像処理時間を減少できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態における自律移動ロボットが移動する様子を上方から視た模式図である。
図2】本発明の第1実施形態における自律移動ロボットの構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態におけるサインポスト検出部が読み取るサインポストの被検出部の一例を示す正面図である。
図4】本発明の第1実施形態における限定範囲探索モードを説明する説明図である。
図5】本発明の第1実施形態におけるユーザ入力を含む自律移動ロボットの経路作成及び運用を示すフロー図である。
図6】本発明の第1実施形態における自律移動ロボットの内部の画像処理を示すフロー図である。
図7】本発明の第2実施形態におけるユーザ入力を含む自律移動ロボットの経路作成及び運用を示すフロー図である。
図8】本発明の第2実施形態における自律移動ロボットの内部の画像処理を示すフロー図である。
図9】本発明の第2実施形態における自律移動ロボットの内部の画像処理を示すフロー図である。
図10】本発明の第3実施形態における自律移動ロボットの内部の画像処理を示すフロー図である。
図11】本発明の第3実施形態における自律移動ロボットの内部の画像処理を示すフロー図である。
図12】本発明の第3実施形態における自律移動ロボットが移動する様子を上方から視た模式図である。
図13】本発明の第3実施形態における自律移動ロボットが移動する様子を上方から視た模式図である。
図14】本発明の第3実施形態における自律移動ロボットが移動する様子を上方から視た模式図である。
図15】本発明の第3実施形態における自律移動ロボットが移動する様子を上方から視た模式図である。
図16】本発明の第3実施形態における自律移動ロボットが移動する様子を上方から視た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における自律移動ロボット1が移動する様子を上方から視た模式図である。
図1に示すように、自律移動ロボット1は、移動経路10に沿って配置された複数のサインポストSPを、ロボット本体20に搭載した撮像部26で順に読み取りながら移動する。つまり、自律移動ロボット1は、複数のサインポストSPに誘導されて移動経路10を移動する。
【0012】
ここで「サインポスト」とは、サイン(標識)を有して、移動経路10あるいは移動経路10近傍の所定の場所に置かれた構造体を言う。サインは、その構造体の識別情報(ターゲットID)を含む。本実施形態のサインは、後述する図3に示すように、光を反射可能な第一セル(C11、C13…)と、光を反射不能な第二セル(C12、C21…)とが、二次元平面上に配置された被検出部Cである。なお、サインは、1次元コード(バーコード)や、その他の2次元コードなどであっても構わない。
【0013】
図2は、本発明の第1実施形態における自律移動ロボット1の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、自律移動ロボット1は、サインポスト検出部21と、駆動部22と、制御部23と、通信部24と、を備えている。
【0014】
サインポスト検出部21は、照射部25と、2つの撮像部26と、算出部27と、を有する。また、駆動部22は、モータ制御部28と、2つのモータ29と、左右の駆動輪20L,20Rと、を有する。なお、サインポスト検出部21及び駆動部22の構成は、あくまで一例であって、他の構成であっても構わない。
【0015】
照射部25は、自律移動ロボット1の進行方向の前面の中央位置に取り付けられ、例えば、赤外LED光を前方に照射する。赤外LED光は、工場内などの暗所や可視光の強い場所等に好適である。なお、照射部25は、赤外LED光以外の検出光を照射する構成であっても構わない。
【0016】
2つの撮像部26は、サインポスト検出部21の左右に配置されている。2つの撮像部26は、例えば、赤外線フィルタを組み合わせたカメラが用いられ、サインポストSPで反射された反射光(赤外LED光)を撮像する。
【0017】
算出部27は、2つの撮像部26から送信された撮像画像に基づき、2値化処理を行うことで白黒からなる2値化画像データを形成し、さらに2値化された画像データを用いて三角測量(2つの撮像部26の撮像画像の差分を用いた三角測量)による演算を行うことで、自律移動ロボット1に対してサインポストSPがどの様な距離(距離Z)と方向(角度θ)に位置するのかを算出する。
【0018】
なお、算出部27は、撮像画像に複数のサインポストSPが含まれる場合、サインポストSPの識別情報(ターゲットID)を検出して目標とするサインポストSPを選択し、目標とするサインポストSPまでの距離Zと角度θとを算出する。
【0019】
駆動輪20Lは、自律移動ロボット1の進行方向に対して左側に設けられている。駆動輪20Rは、自律移動ロボット1の進行方向に対して右側に設けられている。なお、自律移動ロボット1は、自律移動ロボット1の姿勢を安定させるために、駆動輪20L,20R以外の車輪を有していてもよい。
モータ29は、モータ制御部28の制御に応じて、左右の駆動輪20L,20Rを回転させる。
【0020】
モータ制御部28は、制御部23から入力される角速度指令値に基づいて、左右のモータ29に対して電力を供給する。左右のモータ29がモータ制御部28から供給される電力に応じた角速度で回転することにより、自律移動ロボット1が前進または後進する。また、左右のモータ29の角速度に差を生じさせることにより、自律移動ロボット1の進行方向が変更される。
【0021】
制御部23は、サインポスト検出部21によってサインポストSPから読み取った情報に基づいて、駆動部22を制御する。
【0022】
図1に示す移動例では、自律移動ロボット1は、移動経路10の左側から一定の距離を保って移動する。自律移動ロボット1は、移動経路10の左側から一定の距離を保つためにサインポストSPに対する距離Xrefを決定すると共に、検出したサインポストSPまでの距離Zと角度θとを取得し、距離Zと角度θとが予め定められた条件を満たす進行方向を算出する。
【0023】
角度θは、自律移動ロボット1の進行方向と、検出されたサインポストSPの方向とが成す角である。自律移動ロボット1は、サインポストSPと目標経路との距離がXrefとなるように進行する。自律移動ロボット1は、誘導されるサインポストSP(例えばサインポストSP1)までの距離Zが予め定められた閾値より近くなると、目標を次のサインポストSP(例えばサインポストSP2)に切り替えて移動する。
【0024】
図3は、本発明の第1実施形態におけるサインポスト検出部21が読み取るサインポストSPの被検出部Cの一例を示す正面図である。
図3に示すように、サインポストSPは、赤外LED光を反射可能な第一セル(C11、C13…)と、赤外LED光を反射不能な第二セル(C12、C21…)とが、二次元平面上に配置された被検出部Cを備えている。
【0025】
本実施形態の被検出部Cは、3行×3列の行列状のパターンからなる。具体的には、被検出部Cは、1行1列目の第一セルC11と、1行2列目の第二セルC12と、1行3列目の第一セルC13と、2行1列目の第二セルC21と、2行2列目の第一セルC22と、2行3列目の第二セルC23と、3行1列目の第一セルC31と、3行2列目の第二セルC32と、3行3列目の第一セルC33と、を備える。
【0026】
第一セルC11、C13、C22、C31、C33は、例えば、アルミニウム箔や酸化チタンの薄膜等の赤外LED光の反射率が高い材料によって形成されている。第二セルC12、C21、C23、C32は、例えば、赤外カットフィルムや偏光フィルム、赤外線吸収材、黒色フェルト等の赤外LED光の反射率が低い材料によって形成されている。
【0027】
算出部27は、被検出部Cに対して第1走査SC1及び第2走査SC2をすることで、サインポストSPを検出する。第1走査SC1では、例えば、1行目の「白、黒、白」で配置された第一セルC11、第二セルC12、及び第一セルC13を検出する。第2走査SC2では、例えば、1列目の「白、黒、白」で配置された第一セルC11、第二セルC21、及び第一セルC31を検出する。
【0028】
白を「1」、黒を「0(ゼロ)」とするバイナリーコードで表現すると「白、黒、白」は「1、0、1」と示すことができ、算出部27は、第1走査SC1による「1、0、1」と、第2走査SC2による「1、0、1」の読み取りが成功したとき、サインポストSPを検出する。
【0029】
算出部27は、被検出部Cの残りのセル(2行2列目の第一セルC22と、2行3列目の第二セルC23と、3行2列目の第二セルC32と、3行3列目の第一セルC33)からサインポストSPの識別情報(ターゲットID)を読み取る。図3に示す例では、4ビットの情報で、算出部27にサインポストSPの識別情報を読み取らせることができる。
【0030】
図2に戻り、通信部24は、図示しない上位システムと通信を行う。上位システムは、撮像部26が撮像した撮像画像100(図1参照)から、サインポストSPを探索する走査範囲101を設定するための、サインポストSPの登録位置情報を有している。図1に示すように、サインポストSPの登録位置(x1~x3,y1~y3)は、サインポストSP1~SP3ごとに設定されている。
【0031】
上位システムにおいては、例えば、ユーザ入力によりサインポストSPごとに撮像画像100上のサインポストSPの登録位置(x,y)を登録可能な経路作成ソフトを有するとよい。なお、自律移動ロボット1に対して直接、サインポストSPごとに撮像画像上のサインポストSPの登録位置(x,y)を登録可能な構成にしても構わない。本実施形態では、上位システムがサインポストSPの登録位置情報を自律移動ロボット1に提供する。
【0032】
制御部23は、通信部24を介して上位システムからサインポストSPの登録位置情報を受信する。そして、算出部27は、制御部23を通じて得た当該サインポストSPの登録位置情報に基づいて、撮像部26が撮像した撮像画像100の一部に走査範囲101(第1の走査範囲)を設定し、当該走査範囲101の中からサインポストSPを探索する。以下、この算出部27の限定範囲探索モードについて、図4を参照して説明する。
【0033】
図4は、本発明の第1実施形態における限定範囲探索モードを説明する説明図である。
図4に示すように、限定範囲探索モードでは、撮像画像100の全体に走査範囲101を設定するのではなく、撮像画像100の一部に走査範囲101(第1の走査範囲)を設定し、その限られた範囲の中でサインポストSPを探索する。これにより、撮像画像100の走査範囲101以外の部分(図4においてドットパターンで示す部分)における、サインポストSPに似た外乱が排除され、また、走査範囲101以外の部分のサインポストSPの探索及び画像処理が不要になる。
【0034】
走査範囲101は、サインポストSPの登録位置(x,y)を中心に、座標(x±α,y±β)で規定される範囲に設定される。なお、撮像画像100においては、撮像画像100の左上角が座標(0,0)とされ、撮像画像100の横方向がX座標とされて右側が+、撮像画像100の縦方向がY座標とされて下側が+となっている。αとβの絶対値は、同一であっても異なっていてもよい。本実施形態のように撮像画像100(つまり撮像部26の画角)が上下方向より左右方向が大きい場合、|α|>|β|のように設定するとよい。
【0035】
走査範囲101は、撮像画像100の全体より小さい範囲である。例えば、走査範囲101は、撮像画像100の全体を1としたときに1/2以下の範囲であってもよい。また、走査範囲101は、好ましくは、撮像画像100の全体を1としたときに1/4以下の範囲であってもよい。また、走査範囲101は、より好ましくは、撮像画像100の全体を1としたときに1/8以下の範囲であってもよい。なお、走査範囲101の下限は、自律移動ロボット1が、目標を次のサインポストSPに切り替える直前のサインポストSPの大きさ(現在誘導されているサインポストSPに最も近づいたときの撮像画像100上の当該サインポストSPの大きさ)であってもよいが、この限りではない。
【0036】
限定範囲探索モードでは、座標(x-α,y-β)から座標(x+α,y-β)に向かって第1走査SC1を行い、徐々に第1走査SC1のラインを下側にずらして、サインポストSPを探索する。第1走査SC1によるサインポストSP「1、0、1」の読み取りが成功したら、次に、当該読み取りが成功した最初の「1」のX座標の中間位置において、Y座標の(y-β)から(y+β)まで縦方向に第2走査SC2を行う。
【0037】
第1走査SC1によるサインポストSP「1、0、1」の読み取りが成功し、第2走査SC2によるサインポストSP「1、0、1」の読み取りが成功したときに、サインポストSPが検出される。算出部27は、この検出したサインポストSPの外枠から当該サインポストSPの中心位置である検出位置(Sx,Sy)を取得する。このサインポストSPの検出位置(Sx,Sy)は、後述するトラッキング処理などに使用される。
【0038】
算出部27は、上述した限定範囲探索モードの他に、撮像画像100の全体に走査範囲101(第2の走査範囲)を設定し、サインポストSPを探索する全体範囲探索モードを有している。そして、算出部27は、限定範囲探索モードにてサインポストSPが検出できない場合、全体範囲探索モードに切り替えてサインポストSPを探索する。
【0039】
以下、図5及び図6を参照して、上述した自律移動ロボット1の運用及び内部の画像処理の流れについて具体的に説明する。
図5は、本発明の第1実施形態におけるユーザ入力を含む自律移動ロボット1の経路作成及び運用を示すフロー図である。図6は、本発明の第1実施形態における自律移動ロボット1の内部の画像処理を示すフロー図である。
【0040】
自律移動ロボット1を運用する際には、先ず、サインポストSPを設置する。サインポストSPを設置した場合、若しくは、サインポストSPが既設のものでその設置位置を変更した場合(図5に示すステップS1が「YES」の場合)、上位システムの経路作成ソフトを使って、サインポストSPごとに撮像画像100上のサインポストSPの登録位置(x,y)をユーザ入力する(ステップS2)。
【0041】
ステップS1で「NO」の場合、若しくは、上述したステップS2の次は、自律移動ロボット1の運転(走行)を開始する(ステップS3)。自律移動ロボット1は、後述する図6に示すように、サインポストSPの登録位置(x,y)に基づいて走査範囲101を設定し、サインポストSPの探索などを行う(ステップS4)。
【0042】
その後、自律移動ロボット1が目標地に到着するなどして、自律移動ロボット1の運転(走行)が終了したら(ステップS5)、自律移動ロボット1の移動経路10を再調整するか否かを判断する(ステップS6)。自律移動ロボット1の移動経路10を再調整しない場合、ステップS3に戻り、自律移動ロボット1の運転(走行)を再開する(ステップS3)。なお、自律移動ロボット1の運転(走行)をやめる場合は、フローを終了する。
【0043】
一方、自律移動ロボット1の移動経路10を再調整する場合、ステップS1に戻り、ステップS2において、再び上位システムの経路作成ソフトを使って、サインポストSPごとに撮像画像100上のサインポストSPの登録位置(x,y)をユーザ入力する。以降の流れは、同じであるため割愛する。
【0044】
次に、ステップS4における自律移動ロボット1の内部の画像処理について、図6を参照して説明する。以下説明する自律移動ロボット1の内部の画像処理は、撮像部26が撮像する撮像画像100の1フレーム(1枚)ごとに実行する。なお、以下の説明では、特に断りが無い限り、自律移動ロボット1の走行制御に関する計算は制御部23が行い、自律移動ロボット1の画像処理に関する計算は算出部27が行う。
先ず、算出部27は、通信部24及び制御部23を介して、上位システムから、サインポストSPの走査指令(ターゲットID等)と当該サインポストSPの登録位置(x,y)を受け取る(ステップS21)。
【0045】
次に、算出部27は、走査指令を受けたターゲットIDを含むサインポストSPが前回のフレームで検出済みか否かを判断する(ステップS22)。当該サインポストSPが前回のフレームで検出済みで無い場合(ステップS22が「No」の場合)、サインポストSPの登録位置(x,y)に基づいて走査範囲(x±α,y±β)を設定する(ステップS23)。そして、上述した図4に示す限定範囲探索モードにて、サインポストSPを探索する(ステップS24)。
【0046】
限定範囲探索モードにて、走査指令を受けたターゲットIDを含むサインポストSPの検出に失敗した場合(ステップS25が「No」の場合)、撮像画像100の全体に走査範囲101を設定し、走査範囲101の中からサインポストSPを探索する全体範囲探索モードにてサインポストSPを探索する(ステップS26)。
【0047】
上述した限定範囲探索モードあるいは全体範囲探索モードにて、走査指令を受けたターゲットIDを含むサインポストSPの検出に成功した場合(ステップS25が「Yes」の場合、若しくは、ステップS26の次)は、次のフレームでステップS22が「Yes」となり、ステップS27~S28のトラッキング処理(トラッキングモード)に移行する。
【0048】
このトラッキング処理では、前回のフレームで検出済みのサインポストSPの検出位置(Sx,Sy)およびトラッキングパラメータ(上述したαないしβに相当するパラメータ)に基づき、走査範囲101を設定する(ステップS27)。そして、当該走査範囲101の中からサインポストSPを探索する探索処理を実行する(ステップS28)。なお、トラッキング処理では、上述した限定範囲探索モードの走査範囲101よりも小さい走査範囲101(第3の走査範囲)に設定するトラッキングパラメータを設定してもよい。また、トラッキングパラメータは、1つの値ではなく、前回検出したサインポストSPのスタートバー(「1、0、1」)の長さから設定するなど可変にすることで、近づいて大きく写るサインポストSPも検出できる走査範囲となる。
【0049】
トラッキング処理は、自律移動ロボット1から目標となるサインポストSPまでの距離Zが予め定められた閾値まで近づき、目標を次のサインポストSPに切り替えるまで繰り返される。目標を次のサインポストSPに切り替えるタイミングになると、ステップS21にて、上位システムから次のサインポストSPの走査指令(ターゲットID等)とサインポストSPの登録位置(x,y)が送信され、自律移動ロボット1は、再び限定範囲探索モードあるいは全体範囲探索モードにて、走査指令を受けたターゲットIDを含むサインポストSPを探索することとなる。以降の流れは、同じであるため割愛する。
【0050】
このように、上述した第1実施形態によれば、移動経路10に沿って配置されたサインポストSPを、搭載した撮像部26で読み取りながら、サインポストSPに誘導されて移動する自律移動ロボット1であって、サインポストSPの登録位置に基づいて、撮像部26が撮像した撮像画像100の一部に走査範囲101(第1の走査範囲)を設定し、走査範囲101の中からサインポストSPを探索する限定範囲探索モードを有する算出部27を備える。この構成によれば、図4に示すように、撮像画像100の走査範囲101以外の部分(ドットパターンで示す部分)における、サインポストSPに似た外乱が排除され、また、走査範囲101以外の部分のサインポストSPの探索及び画像処理が不要になる。したがって、自律移動ロボット1においてサインポストSPの検出確度を向上し、また画像処理時間を減少できる。
【0051】
また、第1実施形態によれば、算出部27は、限定範囲探索モードにてサインポストSPが検出できない場合、撮像画像100の全体に走査範囲101(第2の走査範囲)を設定し、走査範囲101の中からサインポストSPを探索する全体範囲探索モードに切り替えてサインポストSPを探索する。この構成によれば、仮にサインポストSPの登録位置がミスマッチで限定範囲探索モードにてサインポストSPを検出できなかった場合であっても、全体範囲探索モードにてサインポストSPを検出することができる。
【0052】
また、第1実施形態によれば、サインポストSPの登録位置は、複数のサインポストSPのそれぞれに対応して設定されており、算出部27は、自律移動ロボット1を誘導するサインポストSPを切り替えるごとに、当該サインポストSPに対応した登録位置にサインポストSPの登録位置を切り替えて、限定範囲探索モードによるサインポストSPの探索を行う。この構成によれば、図1に示すように、例えば移動経路10に対するサインポストSPの設置位置にバラツキがある場合であっても、限定範囲探索モードにて個別に最適な走査範囲101を設定し、目標となるサインポストSPを正確且つ短時間で検出できるようになる。
【0053】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0054】
図7は、本発明の第2実施形態におけるユーザ入力を含む自律移動ロボット1の経路作成及び運用を示すフロー図である。図8及び図9は、本発明の第2実施形態における自律移動ロボット1の内部の画像処理を示すフロー図である。なお、図8及び図9に示す丸中数字の1~3は、図8及び図9に示す両フローの繋がりを示している。
これらの図に示すように、第2実施形態の自律移動ロボット1は、学習機能を有し、前回検出したサインポストSPの検出位置を、次回探索するサインポストSPの登録位置として更新し、サインポストSPの探索及び画像処理を最適化している。
【0055】
第2実施形態では、先ず、図7に示すように、上位システムの経路作成ソフトを使って、サインポストSPごとに撮像画像100上のサインポストSPの登録位置(x,y)をユーザ入力する(ステップS31)。ここでユーザ入力したサインポストSPの登録位置(x,y)は、初期値であり、後述する学習によって更新されていく。
【0056】
次に、自律移動ロボット1の運転(走行)を開始する(ステップS32)。自律移動ロボット1は、サインポストSPの登録位置(x,y)に基づいて走査範囲101を設定し、サインポストSPを探索する(ステップS33)。この処理は初回のみであり、以後、サインポストSPの検出位置(Sx,Sy)に基づき、自動で登録位置(x,y)を更新し、サインポストSPを探索する。
【0057】
自律移動ロボット1が目標地に到着するなどしたら、自律移動ロボット1の運転(走行)が終了する(ステップS34)。その後、サインポストSPの設置位置が多少変更されるなどして移動経路10が再調整される場合(ステップS35)、第2実施形態では上述した第1実施形態と異なり、ステップS31のユーザ入力に戻らない。代わりにステップS32に戻り、自律移動ロボット1の運転(走行)を再開することで、自動でサインポストSPの登録位置(x,y)を更新させる(ステップS33)。
【0058】
次に、ステップS33における自律移動ロボット1の内部の画像処理について、図8及び図9を参照して説明する。以下説明する自律移動ロボット1の内部の画像処理は、撮像部26が撮像する撮像画像100の1フレーム(1枚)ごとに実行する。なお、以下の説明でも、特に断りが無い限り、自律移動ロボット1の走行制御に関する計算は制御部23が行い、自律移動ロボット1の画像処理に関する計算は算出部27が行う。
図8に示すように、先ず、算出部27は、通信部24及び制御部23を介して、上位システムから、サインポストSPの走査指令(ターゲットID等)と当該サインポストSPの登録位置(x,y)を受け取る(ステップS41)。
【0059】
次に、算出部27は、走査指令を受けたターゲットIDを含むサインポストSPが前回のフレームで検出済みか否かを判断する(ステップS42)。当該サインポストSPが前回のフレームで検出済みで無い場合(ステップS42が「No」の場合)、図9に示すように、過去走行による学習位置データ(Sx,Sy)が在るか否かを判断する(ステップS47)。
【0060】
過去走行による学習位置データ(Sx,Sy)が存在しない場合(ステップS47が「No」の場合)、上述した第1実施形態と同様に、サインポストSPの登録位置(x,y)に基づいて走査範囲(x±α,y±β)を設定し(ステップS49)、限定範囲探索モードにてサインポストSPを探索する(ステップS50)。
【0061】
一方、過去走行による学習位置データ(Sx,Sy)が存在する場合(ステップS47が「Yes」の場合)、記憶された学習位置データ(Sx,Sy)に基づいて走査範囲(Sx±α,Sy±β)を設定し(ステップS48)、限定範囲探索モードにてサインポストSPを探索する(ステップS50)。
【0062】
上記いずれかの限定範囲探索モードにて、走査指令を受けたターゲットIDを含むサインポストSPの検出に成功した場合(ステップS51が「Yes」の場合)、図8のステップS46に移行し、サインポストSPの検出位置(Sx,Sy)を学習位置データ(Sx,Sy)として保存し、次回探索で使用するサインポストSPの登録位置(x,y)を更新する。
【0063】
一方、限定範囲探索モードにて、走査指令を受けたターゲットIDを含むサインポストSPの検出に失敗した場合(図9に示すステップS51が「No」の場合)、撮像画像100の全体に走査範囲101を設定し、全体範囲探索モードにてサインポストSPを探索する(ステップS52)。
【0064】
全体範囲探索モードにてサインポストSPを探索した場合、図8のステップS45に移行し、走査指令を受けたターゲットIDを含むサインポストSPの検出に成功したか否かを判断する。走査指令を受けたターゲットIDを含むサインポストSPの検出に成功した場合(図8に示すステップS45が「Yes」の場合)、サインポストSPの検出位置(Sx,Sy)を学習位置データ(Sx,Sy)として保存し、次回探索で使用するサインポストSPの登録位置(x,y)を更新する(ステップS46)。
【0065】
一方、全体範囲探索モードにて、走査指令を受けたターゲットIDを含むサインポストSPの検出に失敗した場合(図9に示すステップS45が「No」の場合)、サインポストSPの検出位置(Sx,Sy)を学習位置データ(Sx,Sy)として保存せずに終了する。以降の流れは、同じであるため割愛する。
【0066】
このように、上述した第2実施形態によれば、算出部27は、サインポストSPを検出した場合、当該サインポストSPの検出位置(Sx,Sy)を、次回探索するサインポストSPの登録位置(x,y)として更新する。この構成によれば、サインポストSPの設置位置を調整するごとに、サインポストSPの登録位置(x,y)をユーザ入力する必要がなく、自動でサインポストSPの探索及び画像処理を最適化することができる。
【0067】
また、上述した第2実施形態において、算出部27は、限定範囲探索モードにおいて、更新したサインポストSPの登録位置(学習位置データ(Sx,Sy))に基づきサインポストSPを探索する場合、走査範囲101を、前回の限定範囲探索モードによる走査範囲101よりも小さく設定してもよい。学習機能によって、サインポストSPの走査範囲101が前回よりも最適化されることで、走査範囲101を小さく(例えばα及びβを一割小さく)してもサインポストSPの検出できる確率が向上している。したがって、限定範囲探索モードの走査範囲101を前回探索よりも小さくでき、それにより画像処理時間を減少させることが可能となる。なお、走査範囲101を小さくした結果、サインポストSPの検出に失敗した場合、走査範囲101を前回探索時の大きさ(例えばα及びβを元の値)に戻してもよい。
【0068】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0069】
図10及び図11は、本発明の第3実施形態における自律移動ロボット1の内部の画像処理を示すフロー図である。なお、図10及び図11に示す丸中数字の4は、図10及び図11に示す両フローの繋がりを示している。図12図16は、本発明の第3実施形態における自律移動ロボット1が移動する様子を上方から視た模式図である。
第3実施形態の自律移動ロボット1は、上述したステップS27~S28のトラッキング処理中(以下、トラッキングモードという)に、例えば図14に示すように、通行人200等によってサインポストSPが遮られた場合であっても、処理を中止することなくトラッキングモードを継続できるようにプログラムされている。
【0070】
以下説明する自律移動ロボット1の内部の画像処理は、撮像部26が撮像する撮像画像100の1フレーム(1枚)ごとに実行する。なお、以下の説明でも、特に断りが無い限り、自律移動ロボット1の走行制御に関する計算は制御部23が行い、自律移動ロボット1の画像処理に関する計算は算出部27が行う。
図10に示すように、先ず、算出部27は、通信部24及び制御部23を介して、上位システムから、サインポストSPの走査指令(ターゲットID等)と当該サインポストSPの登録位置(x,y)を受け取る(ステップS60)。
【0071】
次に、算出部27は、走査指令を受けたターゲットIDを含むサインポストSPが前回のフレームまで1度でも検出済みか否かを判断する(ステップS61)。つまり、算出部27は、上述した限定範囲探索モードまたは全体範囲探索モードにて、走査指令を受けたターゲットIDを含むサインポストSPが検出できたか否かを判断する。
【0072】
当該サインポストSPが前回のフレームまで1度も検出済みで無い場合(ステップS61が「No」の場合)、サインポストSPの登録位置(x,y)に基づいて、図12に示すように、第1の走査範囲101Aを設定する(ステップS62)。第1の走査範囲101Aとは、上述した限定範囲探索モードの走査範囲である。つまり、算出部27は、先ず限定範囲探索モードでサインポストSPを探索し、失敗すれば全体範囲探索モードに切り替えてサインポストSPを探索する。
【0073】
一方、当該サインポストSPが前回のフレームまで1度でも検出済みである場合(ステップS61が「Yes」の場合)、前回のフレームにて当該サインポストSPの検出に成功したか否かを判断する(ステップS63)。前回のフレームにて当該サインポストSPの検出に成功した場合(ステップS63が「Yes」の場合)、サインポストSPの前回検出位置(Sx,Sy)及びトラッキングパラメータ(前回検出したサインポストSPの大きさ等)に基づいて、図13に示すように、第3の走査範囲101Cを設定する(ステップS64)。
【0074】
第3の走査範囲101Cとは、上述したトラッキングモードの走査範囲である。つまり、算出部27は、限定範囲探索モードまたは全体範囲探索モードにてサインポストSPが検出できた場合、サインポストSPを追跡する第3の走査範囲101Cを設定し、第3の走査範囲101Cの中からサインポストSPを探索するトラッキングモードに切り替えてサインポストSPを探索する。なお、ここまでのフローは、上述した実施形態と同様である。
【0075】
一方、前回のフレームにて当該サインポストSPの検出に失敗した場合(ステップS63が「No」の場合)、つまり、図14に示すように、サインポストSPが通行人200等によって遮られ、トラッキングモード中にサインポストSPが検出不可となる状況になった場合、ステップS65に移行する。ステップS65において、算出部27は、後述する第4の走査範囲101Dでの再探索回数のカウントが閾値aを超えるか否かを判断する。
【0076】
第4の走査範囲101Dでの再探索回数のカウントが閾値aを超えていない場合(ステップS63が「No」の場合)、ステップS67に移行し、図15に示すように、第4の走査範囲101Dを設定する。つまり、算出部27は、トラッキングモードにてサインポストSPが検出できなくなった場合、プログラムを終了することなく、サインポストSPが検出できた最後の第3の走査範囲101Cと同一範囲の第4の走査範囲101Dを設定し、第4の走査範囲101Dの中からサインポストSPの再探索を行う再探索モードに切り替えてサインポストSPを探索する。
【0077】
なお、再探索モードのとき(つまり、トラッキングモードにてサインポストSPが検出できなくなったとき)には、図15に示すように、自律移動ロボット1の移動を停止する。これにより、自律移動ロボット1が安全にサインポストSPを再探索できる。
【0078】
図11に示すように、第4の走査範囲101DでのターゲットID探索処理(ステップS68)の結果、走査指令を受けたターゲットIDを含むサインポストSPの検出が成功した場合(ステップS69が「Yes」の場合)、再探索回数のカウントをリセットする(ステップS70)。再探索回数のカウントがリセットされると、次回フレームにて、上述した図10に示すステップS63が「Yes」(前回フレームが検出成功)となり、トラッキングモード(ステップS64)に戻って自律移動ロボット1の移動及び当該サインポストSPの追跡が再開される。
【0079】
一方で、図11に示すように、第4の走査範囲101Dでの当該サインポストSPの検出が失敗した場合(ステップS69が「No」の場合)、再探索回数をカウントアップ(+1)する(ステップS71)。この再探索回数のカウントアップ数は、次回フレームにおいて、上述したステップS65にて使用される。なお、ステップS65の再探索回数のカウントが閾値aを超えていない場合(ステップS63が「No」の場合)とは、例えば、図14に示す通行人200がまだサインポストSPの前を通過していない状況である。
【0080】
閾値aは、例えば、10フレームに設定されている。閾値aは、通常の歩行速度の通行人200がサインポストSPを通過する平均時間以上のフレーム数に調整するとよい。この閾値aを超えない範囲で、当該サインポストSPの検出に成功した場合、再探索回数のカウントがリセット(ステップS70)され、上述したトラッキングモード(ステップS64)に戻って自律移動ロボット1の移動及び当該サインポストSPの追跡が再開される。
【0081】
一方、再探索回数のカウントが閾値aを超えてしまった場合(ステップS63が「Yes」の場合)、ステップS66に移行し、図16に示すように、第2の走査範囲101Bを設定すると共に、再探索回数のカウントをリセットする。第2の走査範囲101Bとは、上述した全体範囲探索モードの走査範囲である。つまり、算出部27は、再探索モードでサインポストSPを再探索し、失敗すれば全体範囲探索モードに切り替えてサインポストSPを再探索する。
【0082】
この第2の走査範囲101BでサインポストSPの検出が成功した場合、次回フレームにて、上述したステップS63が「Yes」(前回フレームが検出成功)となり、トラッキングモード(ステップS64)に戻って自律移動ロボット1の移動及び当該サインポストSPの追跡が再開される。
【0083】
このように、上述した第3実施形態によれば、算出部27は、限定範囲探索モードまたは全体範囲探索モードにてサインポストSP(見始め時のサインポストSP)が検出できた場合、サインポストSPを追跡する第3の走査範囲101Cを設定し、第3の走査範囲101Cの中からサインポストSPを探索するトラッキングモードに切り替えてサインポストSPを探索する。
【0084】
第1及び第2実施形態の限定範囲探索モード(検出に失敗すれば全体範囲探索モード)は、サインポストSPの見始め時のみに適用していた。その理由としては、サインポストSPの見始めから、サインポストSPを検出して自律移動ロボット1が走行したあと、撮像画像100内でのサインポストSPの位置は変化し、自律移動ロボット1がサインポストSPに近づくにつれて大きさもより大きく変化していくためである。つまり、あらかじめ登録した登録位置に基づく限定範囲探索モードの第1の走査範囲101Aは、継続して使用できなくなる。したがって、見始め時に登録位置による第1の走査範囲101Aで探索を行い、サインポストSPの検出に成功すれば、以降はトラッキングモードに切り替えて、サインポストSPを追跡することで、自律移動ロボット1の走行終了まで、終始、限定した範囲でのサインポストSPの検出処理が可能となる。
【0085】
また、上述した第3実施形態において、算出部27は、トラッキングモードにてサインポストSPが検出できなくなった場合、サインポストSPが検出できた最後の第3の走査範囲101Cと同一範囲の第4の走査範囲101Dを設定し、第4の走査範囲101Dの中からサインポストSPの再探索を複数回行う再探索モードに切り替えてサインポストSPを探索する。この構成によれば、実際運用時の例外、例えば、通行人200等によってサインポストSPが遮られ、サインポストSPが検出不可となるとき、通行人200等が移動し、再度サインポストSPを見える状況となったときまで再探索を繰り返すことで、トラッキングモードを継続できる。つまり、サインポストSPが遮られ、検出失敗となった直前の第3の走査範囲101Cと同じ第4の走査範囲101Dで再探索をすることで、サインポストSPの見始め時に限らず、終始、限定範囲での探索が実現できる。
【0086】
また、上述した第3実施形態において、再探索モードのときには、移動を停止する。この構成によれば、サインポストSPを見失ったときでも自律移動ロボット1が安全にサインポストSPを再探索できる。
【0087】
また、上述した第3実施形態において、算出部27は、再探索モードにてサインポストSPが検出できない場合、全体範囲探索モードに切り替えてサインポストSPを探索する。この構成によれば、再度サインポストSPが見える状況となったとき、仮に再探索モードにてサインポストSPを検出できなかった場合であっても、全体範囲探索モードにてサインポストSPを検出し、トラッキングモードを再開することができる。
【0088】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0089】
例えば、上記実施形態では、自律移動ロボット1が車両である構成について説明したが、自律移動ロボット1は通称ドローンと呼ばれる飛行体などであっても構わない。
また、例えば、上記実施形態では、移動経路10に沿って複数のサインポストSPが配置される構成について説明したが、サインポストSPは1つだけ配置される構成であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0090】
上記した自律移動ロボットによれば、標識の検出確度を向上し、また画像処理時間を減少できる。
【符号の説明】
【0091】
1…自律移動ロボット、10…移動経路、20…ロボット本体、20L…駆動輪、20R…駆動輪、21…サインポスト検出部、22…駆動部、23…制御部、24…通信部、25…照射部、26…撮像部、27…算出部、28…モータ制御部、29…モータ、100…撮像画像、101…走査範囲、C…被検出部、SP…サインポスト(標識)
図1
図2
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