(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】視機能検査装置、眼鏡レンズ提示システム、視機能検査方法、眼鏡レンズの提示方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/06 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
A61B3/06
(21)【出願番号】P 2022572013
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2021043584
(87)【国際公開番号】W WO2022137990
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2020211755
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】300035870
【氏名又は名称】株式会社ニコン・エシロール
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】門馬 司
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-130581(JP,A)
【文献】特開2015-211719(JP,A)
【文献】特開2007-068925(JP,A)
【文献】特開2008-093131(JP,A)
【文献】特開2019-209047(JP,A)
【文献】国際公開第2019/155025(WO,A1)
【文献】FACCHIN, Alessio et al.,The Glare Effect Test and the Impact of Age on Luminosity Thresholds,frontiers in Psychology,2017年06月30日,Vol.8, No.1132,pp.1-5,<PMID: 28713326>,<DOI: 10.3389/fpsyg.2017.01132>
【文献】SUZUKI, Yuta et al.,Colorful glares: Effects of colors on brightness illusions measured with pupillometry,Acta Psychologica,2019年,Vol.198, Article 102882
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレア錯視に基づく視標に対して被験者が感じた眩しさについての回答を示す回答情報を取得する回答情報取得部と、
前記回答情報取得部が取得した前記回答情報に基づいて、前記被験者が感じる眩しさについての指標
であって前記被験者の当該眩しさに対する感度を示す指標を算出する眩しさ指標算出部と、
を備える視機能検査装置。
【請求項2】
前記視標を含む画像であるグレア錯視画像を提示するグレア錯視画像提示部と、
前記グレア錯視画像提示部が提示する前記グレア錯視画像に対しての前記回答を入力する操作を受け付ける回答入力操作受付部と、
をさらに備え、
前記回答情報取得部は、前記回答入力操作受付部が受け付けた前記操作によって入力された前記回答を、前記回答情報として取得する
請求項1に記載の視機能検査装置。
【請求項3】
前記グレア錯視画像を生成するためのパラメータであって、前記グレア錯視画像に含まれる中心領域についてのパラメータである中心領域パラメータと、前記グレア錯視画像に含まれる誘導領域についてのパラメータである誘導領域パラメータと、を取得するパラメータ取得部と、
前記パラメータ取得部が取得した前記中心領域パラメータと前記誘導領域パラメータとに基づいて前記グレア錯視画像を生成するグレア錯視画像生成部と、
をさらに備える請求項2に記載の視機能検査装置。
【請求項4】
前記回答情報取得部は、グレア錯視を引き起こす程度が互いに異なる複数の前記視標が所定の順序で提示された場合に、複数の前記視標それぞれに対して前記被験者が感じた眩しさについての複数の回答を示す前記回答情報を取得し、
前記指標算出部は、前記回答情報取得部が取得した前記回答情報に基づいて、前記指標を算出する
請求項2または請求項3に記載の視機能検査装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の視機能検査装置と、
眼鏡レンズ提示装置と、
を備え、
前記眼鏡レンズ提示装置は、
前記視機能検査装置が算出した前記指標に基づいて前記被験者に適した眼鏡レンズを決定する眼鏡レンズ決定部と、
前記眼鏡レンズ決定部が決定した前記眼鏡レンズについての情報を提示する眼鏡レンズ情報提示部と、
を備える
眼鏡レンズ提示システム。
【請求項6】
前記眼鏡レンズ提示装置は、
前記眼鏡レンズ決定部が決定した前記眼鏡レンズについての情報に基づいて、前記眼鏡レンズを前記被験者が装用した場合に見える前記視標を含むグレア錯視画像である眼鏡装用時画像を生成する眼鏡装用時画像生成部と、
前記眼鏡装用時画像生成部が生成した前記眼鏡装用時画像を提示する眼鏡装用時画像提示部と、
をさらに備える
請求項5に記載の眼鏡レンズ提示システム。
【請求項7】
グレア錯視に基づく視標に対して被験者が感じた眩しさについての回答を示す回答情報を取得することと、
取得した前記回答情報に基づいて、前記被験者が感じる眩しさについての指標
であって前記被験者の当該眩しさに対する感度を示す指標を算出することと、
を有する視機能検査方法。
【請求項8】
グレア錯視に基づく視標に対して被験者が感じた眩しさについての回答を示す回答情報を取得することと、
取得した前記回答情報に基づいて、前記被験者が感じる眩しさについての指標
であって前記被験者の当該眩しさに対する感度を示す指標を算出することと、
算出した前記指標に基づいて前記被験者に適した眼鏡レンズを決定することと、
決定した前記眼鏡レンズについての情報を提示することと、
を
コンピュータが実行する眼鏡レンズの提示方法。
【請求項9】
コンピュータに、
グレア錯視に基づく視標に対して被験者が感じた眩しさについての回答を示す回答情報を取得する回答情報取得ステップと、
前記回答情報取得ステップにおいて取得された前記回答情報に基づいて、前記被験者が感じる眩しさについての指標
であって前記被験者の当該眩しさに対する感度を示す指標を算出する眩しさ指標算出ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視機能検査装置、眼鏡レンズ提示システム、視機能検査方法、眼鏡レンズの提示方法、及びプログラムに関する。
本願は、2020年12月21日に、日本に出願された特願2020-211755号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
被験者に適した眼鏡レンズを提供するために、被験者の眩しさに対する感度を検査できることが求められている。例えば、被験者が感じる光源の眩しさを評価する評価装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本発明の一態様は、グレア錯視に基づく視標に対して被験者が感じた眩しさについての回答を示す回答情報を取得する回答情報取得部と、前記回答情報取得部が取得した前記回答情報に基づいて、前記被験者が感じる眩しさについての指標であって前記被験者の当該眩しさに対する感度を示す指標を算出する眩しさ指標算出部と、を備える視機能検査装置である。
【0005】
本発明の一態様は、上記の視機能検査装置と、眼鏡レンズ提示装置と、を備え、前記眼鏡レンズ提示装置は、前記視機能検査装置が算出した前記指標に基づいて前記被験者に適した眼鏡レンズを決定する眼鏡レンズ決定部と、前記眼鏡レンズ決定部が決定した前記眼鏡レンズについての情報を提示する眼鏡レンズ情報提示部と、を備える眼鏡レンズ提示システムである。
【0007】
本発明の一態様は、グレア錯視に基づく視標に対して被験者が感じた眩しさについての回答を示す回答情報を取得することと、取得した前記回答情報に基づいて、前記被験者が感じる眩しさについての指標であって前記被験者の当該眩しさに対する感度を示す指標を算出することと、を有する視機能検査方法である。
【0008】
本発明の一態様は、グレア錯視に基づく視標に対して被験者が感じた眩しさについての回答を示す回答情報を取得することと、取得した前記回答情報に基づいて、前記被験者が感じる眩しさについての指標であって前記被験者の当該眩しさに対する感度を示す指標を算出することと、算出した前記指標に基づいて前記被験者に適した眼鏡レンズを決定することと、決定した前記眼鏡レンズについての情報を提示することと、をコンピュータが実行する眼鏡レンズの提示方法である。
【0009】
本発明の一態様は、コンピュータに、グレア錯視に基づく視標に対して被験者が感じた眩しさについての回答を示す回答情報を取得する回答情報取得ステップと、前記回答情報取得ステップにおいて取得された前記回答情報に基づいて、前記被験者が感じる眩しさについての指標であって前記被験者の当該眩しさに対する感度を示す指標を算出する眩しさ指標算出ステップと、を実行させるためのプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る視機能検査システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係るグレア錯視を生じさせるパターンの一例を示す図である。
【
図3】第1の実施形態に係る視機能検査装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】第1の実施形態に係る視機能検査システムの機能構成の一例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態に係るグレア視標の一例を示す図である。
【
図6】第1の実施形態に係るグレア錯視画像を作成するためのパラメータの一例を示す図である。
【
図7】第1の実施形態に係るグレア錯視画像を作成するために用いたパラメータの一例を示す図である。
【
図8】第1の実施形態に係る二重上下法の概要の一例を示す図である。
【
図9】第1の実施形態に係る二重上下法における試行数と提示されるグレア視標の中心領域の輝度値との関係の一例を示す図である。
【
図10】第1の実施形態に係る二重上下法に用いるグレア錯視画像の各領域の輝度値の一例を示す図である。
【
図11】第1の実施形態に係るグレア錯視画像の別の一例を示す図である。
【
図12】第1の実施形態に係る二重上下法に用いるグレア錯視画像の各領域の輝度値の一例を示す図である。
【
図13】第1の実施形態に係る二重上下法に用いる他のグレア錯視画像について各領域の輝度値の一例を示す。
【
図14】第1の実施形態に係るマグネチュード推定法の概要の一例を示す図である。
【
図15】第1の実施形態に係るマグネチュード推定法による検査結果の一例を示す図である。
【
図16】第1の実施形態に係るマグネチュード推定法による検査結果に基づいてグレア視標の中心領域の輝度の相対値に対する平均評価値をプロットしたグラフの一例を示す図である。
【
図17】第1の実施形態に係るマグネチュード推定法による検査結果に基づいてグレア視標の中心領域の輝度の相対値に対する平均評価値をプロットしたグラフを両対数でプロットした場合のグラフの一例を示す図である。
【
図18】第1の実施形態に係る指標算出処理の一例を示す図である。
【
図19】第1の実施形態の変形例に係る視機能検査システムの機構構成の一例を示す図である。
【
図20】第2の実施形態に係る視機能検査システムの機能構成の一例を示す図である。
【
図21】第3の実施形態に係る視機能検査システムの機能構成の一例を示す図である。
【
図22】第4の実施形態に係る視機能検査システムの機能構成の一例を示す図である。
【
図23】第4の実施形態に係る眼鏡装用時画像の一例を示す図である。
【
図24】第4の実施形態に係る透過率カットの割合を様々に変えた場合の眼鏡装用時画像に含まれるグレア視標の平均輝度の一例を示す図である。
【
図25】第4の実施形態に係る透過率カットの割合を様々に変えた場合の眼鏡装用時画像に含まれるグレア視標の平均輝度の一例を示す図である。
【
図26】第5の実施形態に係る視機能検査システム1gの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら第1の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本実施形態に係る視機能検査システム1の構成の一例を示す図である。視機能検査システム1は、被験者T1の視機能として、被験者T1の眩しさに対する感度を検査するためのシステムである。視機能検査システム1は、グレア錯視を用いて被験者T1の眩しさに対する感度を検査する。グレア錯視とは、光を知覚する人間における心理的な錯視現象の一種である。
【0012】
ここで
図2を参照し、グレア錯視について説明する。
図2は、本実施形態に係るグレア錯視を生じさせるパターンの一例を示す図である。
図2では、白色の試験紙において、白色部分R11が輝度勾配をもった長方形によって囲われている。当該長方形は、白色部分R11から遠い周辺から白色部分R11に近い中心に向かって輝度が増加する勾配をもつ。白色部分R11の輝度と背景R12の輝度とは、互いに同じである。白色部分R11は、上述した輝度勾配をもつ長方形の断片によって囲われることによって、背景R12に比べて心理的に明るく知覚され、白色部分R11が発光しているような印象が作り出される。グレア錯視とは、このような錯視現象をいう。
【0013】
グレア錯視は、輝度勾配をもつ領域(周辺領域という)によって囲われた領域(中心領域という)を凝視することによって生じる。グレア錯視においては、周辺領域の輝度勾配が発光の印象を誘導すると考えられている。そのため、周辺領域の輝度勾配を変えることにより、中心領域の発光の印象の程度を変えることができる。
【0014】
視機能検査システム1は、視機能検査装置2と、表示装置3と、入力装置4とを備える。表示装置3は、グレア錯視画像A1を表示する。グレア錯視画像A1は、グレア視標G1を含む画像である。グレア視標G1とは、グレア錯視に基づく視標である。被検者は、入力装置4を操作することによって、表示装置3に表示されるグレア錯視画像A1を注視した場合に眩しいと感じたか否かについての回答を視機能検査装置2に入力する。視機能検査装置2は、当該回答に基づいて被験者T1が感じる眩しさについての指標を算出する。
また、視機能検査装置2は、入力されたパラメータA4に基づいてグレア錯視画像A1を生成する機能を備える。
グレア錯視画像A1及びパラメータA4の詳細は、後述する。
【0015】
視機能検査装置2は、一例として、パーソナルコンピュータ(Personal Computer:PC)である。視機能検査装置2は、一例として、眼鏡店や眼科などに備えられる。
表示装置3は、例えば、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL:Electroluminescence)ディスプレイなどである。表示装置3は、液晶ディスプレイなどバックライトを必要とする表示装置以外に、自発光型の表示装置や、投影型の表示装置であってもよい。
入力装置4は、一例として、マウスである。入力装置4は、キーボード、ボタンスイッチであってもよい。
【0016】
なお、入力装置4は、表示装置3と一体となって構成されるタッチパネルであってもよい。
なお、視機能検査装置2は、スマートフォンやタブレット端末などであってもよい。視機能検査装置2が、スマートフォンやタブレット端末である場合、表示装置3及び入力装置4は、タッチパネルとして視機能検査装置2と一体となって備えられる。表示装置3は、ヘッドマウントディスプレイであってもよい。
【0017】
図3は、本実施形態に係る視機能検査装置2のハードウェア構成の一例を示す図である。視機能検査装置2は、制御装置5と、演算装置6と、記憶装置7とを備える。
制御装置5は、記憶装置7からプログラムを読み込み、読み込んだプログラムに従って各種の制御を実行する。演算装置6は、各種の演算を行う。制御装置5と、演算装置6とは、CPU(Central Processing Unit)を構成する。
【0018】
記憶装置7は、主記憶装置と、補助記憶装置とによって構成される。主記憶装置は、プログラムやデータを一時的に格納する。主記憶装置は、いわゆるメモリであり、揮発性の記憶装置である。補助記憶装置は、大容量かつ不揮発性の記憶装置である。補助記憶装置は、磁気ハードディスク装置やフラッシュメモリなどの半導体記憶装置等の記憶装置や、CDやDVDなどの光記憶装置を用いて構成される。
【0019】
出力装置8は、各種の情報を出力する。出力装置8は、
図1に示した表示装置3を含む。出力装置8は、プリンターを含んでもよい。プリンターは、例えば、レーザープリンター、インクジェットプリンター、熱転写方式プリンター等の方式を使ったプリンターである。プリンターは、カラー印刷、白黒印刷のうちいずれか1以上を行う。
【0020】
次に
図4を参照し、視機能検査システム1の機能構成について説明する。
図4は、本実施形態に係る視機能検査システム1の機能構成の一例を示す図である。視機能検査装置2は、制御部20と、記憶部21とを備える。制御部20は、グレア錯視画像提示部200と、操作受付部201と、回答情報取得部202と、眩しさ指標算出部203と、提示部204とを備える。制御部20は、
図3に示した制御装置5及び演算装置6によって実現される。制御部20が備える各機能部は、制御装置5が記憶部21からプログラムを読み込んで処理を実行することにより実現される。
【0021】
グレア錯視画像提示部200は、グレア錯視画像A1を提示する。ここでグレア錯視画像提示部200は、グレア錯視画像A1を表示装置3に表示させることによって、グレア錯視画像A1を被験者T1に提示する。
【0022】
操作受付部201は、入力装置4から各種の操作を受け付ける。操作受付部201が受け付ける各種の操作には、被験者T1が入力装置4から回答を入力する操作が含まれる。ここで被験者T1が入力する回答とは、グレア錯視画像提示部200が提示するグレア錯視画像A1に対しての被験者T1が感じた眩しさについての回答である。
【0023】
回答情報取得部202は、操作受付部201が受け付けた操作によって入力された被験者T1による回答を、回答情報A2として取得する。回答情報A2とは、グレア視標G1に対して被験者T1が感じた眩しさについての回答を示す情報である。
【0024】
眩しさ指標算出部203は、回答情報取得部202が取得した回答情報A2に基づいて、眩しさ指標A3を算出する。眩しさ指標A3とは、被験者T1が感じる眩しさについての指標である。
提示部204は、眩しさ指標算出部203が算出した眩しさ指標A3を提示する。提示部204は、例えば、眩しさ指標A3を表示装置3に表示させることによって、眩しさ指標A3を提示する。
【0025】
記憶部21は、各種の情報を記憶する。記憶部21が記憶する各種の情報には、グレア錯視画像情報210が含まれる。グレア錯視画像情報210は、グレア錯視画像A1を示す情報である。記憶部21は、
図3に示した記憶装置7に含まれる補助記憶装置によって実現される。
【0026】
[グレア錯視画像]
ここで
図5を参照し、グレア視標G1について説明する。
図5は、本実施形態に係るグレア視標G12の一例を示す図である。
図5では、グレア視標G12は、グレア錯視画像A1の一例であるグレア錯視画像P2に含まれている。本実施形態では、グレア錯視画像A1は予め生成されて、記憶部21に記憶されている。
【0027】
グレア錯視画像P2は、一例として、グレースケール画像である。グレア錯視画像P2は、長方形の画像である。グレア錯視画像P2では、背景R23にグレア視標G1が描かれている。グレア視標G1は、中心領域R21と、誘導領域R22とからなる。したがって、グレア錯視画像P2は、中心領域R21と、誘導領域R22と、背景R23とからなる。グレア錯視画像P2では、中心領域R21は、グレア錯視画像P2の中央に位置する円形の領域である。
【0028】
グレア錯視画像P2では、中心領域R21は、所定の輝度において表示される。誘導領域R22は、2つの円からなる同心円同士によって囲われた形状であって、誘導領域R22では、同心円の内側の円が中心領域R21の輪郭と一致している。
グレア錯視画像P2では、誘導領域R22は、外側から内側へ向かって輝度が増加する輝度勾配を有する。誘導領域R22は、最も内側の部分において最大輝度を有し、当該最大輝度は、中心領域R21の輝度に等しい。誘導領域R22は、最も外側の部分において最小輝度をもち、当該最小輝度は、背景R23の輝度に等しい。
背景R23は、グレア錯視画像P2のうち中心領域R21及び誘導領域R22を除いた残りの部分である。背景R23は、中心領域R21の輝度よりも低い所定の輝度において表示される。
【0029】
なお、本実施形態では、
図5に示すグレア錯視画像P2のように、グレア錯視画像A1がグレースケール画像である場合の一例について説明するが、これに限られない。グレア錯視画像A1は、いずれの色を用いて作成、及びまたは表示されてもよい。
その場合、例えば、RGB色空間で考えると、RGB値の各値(R、G、B)が、中心領域、及び背景それぞれにおいてある一定の値をとる。一方、誘導領域においては、RGB値の各値(R、G、B)のうちいずれか1以上が、ある勾配をもって変化する。
また、例えば、HSV色空間で考えると、S(彩度)とH(明度)に関して、中心領域、及び背景それぞれにおいてある一定の値をとり、中心領域のS(彩度)、H(明度)のうち少なくとも一方の値が、背景よりも高い。誘導領域においては、ある勾配をもって各値(S,H)が変化する。H(色相)は、色の種類に対応し、いずれの値であってもよい。なお、HSV色空間で考えると、グレースケール画像の場合は、H(明度)のみが変化する。
【0030】
被験者T1は、眩しさに対する感度の検査において、中心領域R21を注視する。中心領域R21と誘導領域R22とは、誘導領域R22の輝度が最大である部分において互いに接している。これによって、被験者T1が心理的に知覚する中心領域R21の輝度量を、実際の輝度量以上に増進させることが可能である。例えば、当該増進の量をマグネチュード推定法により測定することによって、グレア錯視によって、中心領域は、参照した白色よりも20%から35%ほど明るく知覚させることが明らかにされている。
【0031】
誘導領域が有する輝度勾配の色合、形状によって、グレア効果に差が出る。輝度の輝度勾配は、例えば、ガウス関数の正の部分に従う勾配である。輝度の輝度勾配は、リニアに変化させてから、ガンマ補正による変換を行って変化させてもよい。誘導領域が有する輝度勾配によって、中心領域の発光現象の度合いを変えることができる。また、生成したグレア視標に対して、ストリークを放射線状に配置することによって、より強い発光現象を中心領域に起こさせることが可能である。また、誘導領域の最大輝度、及び最小輝度を変化させることや、誘導領域の大きさや形状を変化させることによって、中心領域の発光現象を変化させることも可能である。
【0032】
図6に、グレア錯視画像A1を作成するためのパラメータの一例を示す。
図6に示すパラメータは、一例として、オープンソースのコンピュータビジョン向けライブラリOpenCVを使用して、グレア錯視画像A1を作成する場合に用いられるパラメータである。中心領域R21は、半径、中心座標、及び輝度によって指定される。輝度は、例えば、ヘキサコードによるRGB値を用いて指定される。誘導領域R22は、半径、最高輝度、最低輝度、輝度勾配によって指定される。背景R23は、画面の解像度、輝度によって指定される。
【0033】
グレア錯視画像P2は、グレースケールに基づいて作成した画像である。円形の中心領域R21の直径は、26.288mm(53ピクセル)である。同心円の形状である誘導領域R22の内側の円の直径は、26.288mm(53ピクセル)である。背景R23の外形は、ディスプレイの最大表示範囲と等しい。グレア錯視画像P2を解像度1920×1080の21.5インチのディスプレイに表示した場合、背景R23は、水平方向の長さが476.6mmであり垂直方向の長さが268.1mmである長方形として表示される。
図7に、グレア錯視画像P2を作成するために用いたパラメータを示す。
図7に示すパラメータは、
図6に示したパラメータと同様に、OpenCVを使用してグレア錯視画像A1を作成する場合に用いられるパラメータである
【0034】
[検査方法]
次に
図8から
図12を参照し、視機能検査システム1を用いた被験者T1の眩しさに対する感度の検査方法について説明する。検査方法は、外界からの刺激に対する人間の感じ方、感覚量の数値化を行うことで、実験心理学から様々な検査方法が提案されている。視機能検査システム1による検査方法では、それらの検査方法のなかから、いずれの検査方法が用いられてもよい。
【0035】
本実施形態では、一例として、二重上下法によって絶対閾を求める検査方法について説明する。
図8は、本実施形態に係る二重上下法の概要の一例を示す図である。ここでの絶対閾は、被験者T1が眩しさを感じるか否かについての境であり、眩しさを感じ始める心理量に相当する。本実施形態では、眩しさを感じ始める心理量に相当する絶対閾に対する物理量を算出する。
【0036】
本実施形態の検査方法では、被験者T1は、表示装置3と被験者T1の眼との距離が1.5mになるよう椅子に座る。表示装置3には、固視点画像P51が提示される。固視点画像P51には固視点が提示されている。固視点画像P51に提示される固視点の位置を、被験者T1の眼の高さと一致するように調節する。被験者T1は、表示装置3に提示されるグレア視標G1を注視し、眩しさを感じたか、感じないかを判断する。被験者T1は、眩しさを感じた場合に手に握っているボタンスイッチ(入力装置4の一例)を押すことによって回答する。
【0037】
視機能検査装置2は、まず初めに、ブランクが表示されるブランク画像P52を30秒間提示する。その後、視機能検査装置2は、グレア視標を含むグレア錯視画像P53を1.8秒間提示する。グレア視標の提示後、ブランク画像P54が30秒間提示される。被験者T1は、ブランク画像P54が提示されている30秒の間に、眩しさを感じたか否かについて回答する。30秒が経過すると、視機能検査装置2は、グレア視標を含むグレア錯視画像P55を1.8秒間提示する。ここでグレア錯視画像P55に含まれるグレア視標G1の中心領域の輝度値と、先に提示されたグレア錯視画像P53の中心領域の輝度値とは異なる。
【0038】
本実施形態の検査方法である二重上下法では、複数のグレア錯視画像A1を中心領域の輝度値を変化させながら、グレア錯視画像とブランク画像とを交互に被験者T1に提示する。複数のグレア錯視画像A1には、提示される順に中心領域の輝度値が増加する上昇系列と、提示される順に中心領域の輝度値が減少する下降系列とが含まれる。二重上下法では、提示されるグレア錯視画像A1について、上昇系列に含まれるグレア錯視画像A1と、下降系列に含まれるグレア錯視画像A1とが交互に提示される。つまり、二重上下法では、上昇系列と下降系列とが並行して提示される。本実施形態では、上昇系列と下降系列とのそれぞれについて、グレア視標の中心領域の輝度値は15段階で変化する。
図8に示すグレア錯視画像P53は、下降系列のうち中心領域の輝度値が最大であるグレア錯視画像A1であり、グレア錯視画像P55は、上昇系列のうち中心領域の輝度値が最小であるグレア錯視画像A1である。
【0039】
図9は、本実施形態に係る二重上下法における試行数と、提示されるグレア視標の中心領域の輝度値との関係の一例を示す図である。
図9では、上昇系列の輝度値を試行数毎に示すグラフである上昇系列輝度値グラフSQ1が、下降系列の輝度値を試行数毎に示すグラフである下降系列輝度値グラフSQ2がそれぞれ示されている。
【0040】
上昇系列に含まれるグレア錯視画像A1について被験者T1が眩しいと感じたと回答した場合、上昇系列においては、当該グレア錯視画像A1から中心領域の輝度値を1段階ずつ低くしたグレア錯視画像A1が次回以降の上昇系列の提示時にそれぞれ提示される。次回以降の上昇系列において、被験者T1が眩しくないと感じたと回答した場合、上昇系列においては、中心領域の輝度値を1段階ずつ高くしたグレア錯視画像A1が次回以降の上昇系列の提示時にそれぞれ提示される。以降、眩しいと感じたと回答した場合には輝度値を低くし、眩しくないと感じたと回答した場合には輝度値を高くするようにして、上昇系列に含まれるグレア錯視画像A1は提示される。
下降系列に含まれるグレア錯視画像A1についても、上昇系列と同様に、眩しいと感じたと回答した場合には輝度値を低くし、眩しくないと感じたと回答した場合には輝度値を高くするようにして順に提示される。
【0041】
上述したように、上昇系列と下降系列とが交互に提示されてゆくと、上昇系列と下降系列との中心領域の輝度値の差は、試行数とともに小さくなってゆく。
図9において試行数が「9」から「15」の範囲に示されるように、最終的には、眩しいと感じたとの回答と、眩しくないと感じたとの回答とが繰り返されるようになる。本実施形態では、回答が繰り返されるようになってから、7回目の試行数「15」において、検査を終了した。
【0042】
回答が繰り返される範囲における上昇系列と下降系列とのそれぞれの中心領域の輝度値の平均値が、絶対閾として算出される。算出された絶対閾から、被験者T1の眩しさに対する感度としてグレアに対する感度が確かめられる。後述する実験心理学の実験において用いられるマグネチュード推定法によれば、物理量と心理量の関係を1つの式で表すことができる。算出された絶対閾は心理量に相当し、当該絶対閾からマグネチュード推定法によって、物理量を推定することによって、被験者T1にとって適切なレンズを提案することができる。
なお、算出された絶対閾は、上述した眩しさ指標A3の一例である。
【0043】
図10に二重上下法に用いるグレア錯視画像P2の各領域の輝度値の一例を示す。上述したように本実施形態では、上昇系列と下降系列とのそれぞれについて、グレア視標の中心領域の輝度値は15段階で変化する。指標番号「15a」から視標番号「1a」までのグレア視標が、この順に上昇系列を構成する。指標番号「1a」から視標番号「15a」までのグレア視標が、この順に下降系列を構成する。
図10に示すように、誘導領域の最大輝度は、中心領域の輝度値と等しく、視標番号とともに変化する。最小輝度は視標番号について一定である。背景の輝度値は、誘導領域の最小輝度と同じある。視標平均は、中心領域R21と誘導領域R22との輝度値の平均である。なお、輝度値の単位はcd/m2である。
【0044】
二重上下法に用いるグレア錯視画像A1は、
図5に示したグレア錯視画像P2に限らない。
図11は、本実施形態に係るグレア錯視画像A1の別の一例を示す図である。
図11では、グレア錯視画像A1としてグレア錯視画像P3が示されている。グレア錯視画像P3は、グレア錯視画像P2と同様に、中心領域R31と、誘導領域R32と、背景R33とからなる。中心領域R31と、誘導領域R32とは、グレア視標G13を形成する。グレア錯視画像P3は、グレア錯視画像P2のようなグレア錯視画像A1において、中心領域R31から動径方向に伸びるグラデーションをもった光跡R34(ストリーク)が追加されている。グレア錯視画像P3では、60度ずつ異なる方向に伸びる6本の光跡R34を含む。
【0045】
図12は、本実施形態に係る二重上下法に用いるグレア錯視画像P3の各領域の輝度値の一例を示す図である。視標の平均輝度は、グレア錯視画像P2のようなグレア錯視画像A1を用いた場合の
図10に示す視標の平均輝度に比べて、若干高くなっている。
【0046】
図13に、本実施形態に係る二重上下法に用いる他のグレア錯視画像について各領域の輝度値の一例を示す。
図13に示す例では、誘導領域は、外側の境界に向かうのに伴い輝度が低くなる輝度勾配を有する。
図13に示す例では、
図10及び
図12に示した例に比べて、誘導領域の輝度値の最小値が、最大値の半分の値となっており、輝度勾配が緩やかに変化している。
【0047】
ここで
図14を参照し、二重上下法以外の検査方法の一例として、マグネチュード推定法について説明する。
図14は、本実施形態に係るマグネチュード推定法の概要の一例を示す図である。マグネチュード推定法では、物理量と心理量とは下記の式(1)で示すことができる。
【0048】
【0049】
式(1)において、心理量Jとは、被験者T1に刺激が加えられた場合の被験者T1の回答に基づく数値である。物理量Iとは、当該刺激を示す物理量である。
マグネチュード推定法では、物理量と心理量とが式(1)によって示されるため、未知の条件での被験者の眩しさに対する心理量を推測することが機械学習等を利用することで可能である。マグネチュード推定法とは、ひとつの基準視標を定め、当該基準視標と比較してその感覚的大きさを数値によって直接的に推定させる方法である。
【0050】
本実施形態では、心理量Jは、検査の最初に表示される基準グレア視標の明るさを100とした場合に、ブランク画像の後に表示される視標の明るさが何倍、あるいは何分の1に見えるかについての被験者T1の回答に基づいて評価される主観的な評価値である。物理量Iとは、当該視標の明るさを輝度計で測定した場合の輝度(cd/m2)である。
【0051】
測定では、二重上下法の場合と同様に、被験者T1は、表示装置3と被験者T1の眼との距離が1.0mになるよう椅子に座る。固視点画像P51に提示される固視点の位置を、被験者T1の眼の高さと一致するように調節する。被験者T1の課題は、初めに提示された基準グレア視標に対して、2番目に提示させたグレア視標の明るさが何倍、あるいは何分の1に見えるかを回答するものである。被験者T1は、例えば、マウスを操作することによって回答する。
【0052】
まず初めに、固視点画像P61を、3000ミリ秒間提示した後、基準グレア視標を含む基準グレア錯視画像P62を1000ミリ秒間提示する、その後、300ミリ秒のブランク画像P63を提示した後、比較視標を含む比較グレア錯視画像P64を300ミリ秒間提示した。比較視標を提示後にマスク刺激としてランダムドット画面P65を30秒間提示し、残像の制御を行う。ランダムドット画面P65が提示されている間に、被験者T1は、基準グレア視標を100とした場合の比較視標の明るさを回答する。
【0053】
使用するグレア視標は、
図10に示した15段階のグレア視標をそれぞれ含む15枚のグレア錯視画像P2使用した。指標番号「12a」のグレア錯視画像P2に含まれるグレア視標G1を基準視標をとした。比較視標は、15段階のグレア視標がランダムな順番で提示される。提示される順番をランダムにすることによって、被験者T1に次に提示する比較視標を予測されないようにしている。
測定の精度をより高めるために、15段階のグレア視標を使用した検査を1ブロックとして複数回繰り返して行うことが好ましい。その場合、心理量Jは、各物理量に対する心理量Jの平均値となる。なお、心理量Jは、眩しさ指標A3の一例である。
【0054】
図15は、本実施形態に係るマグネチュード推定法による検査結果の一例を示す図である。輝度とは、各視標番号のグレア視標の中心領域の輝度を示す。基準視標は、視標番号「15a」のグレア視標G1である。視標番号毎の相対値は、視標番号「15a」のグレア視標G1の中心領域の輝度を100とした場合のそれぞれの視標番号のグレア視標の中心領域の輝度の相対値である。被験者T1の平均評価値は、試行数を4回として各グレア視標に対して、被験者T1が回答した明るさの試行数についての平均値である。
【0055】
視機能検査装置2では、
図15に示すようなマグネチュード推定法による検査結果と、所定の分析プログラムとに基づいて、上述した式(1)における定数k、及びべき数pを算出する。当該算出の処理は、主に眩しさ指標算出部203によって実行される。定数k、及びべき数pが算出されれば、被験者T1の心理量と物理量の関係が式(1)のように表すことができる。
【0056】
ここで眩しさ指標算出部203が定数k、及びべき数pを算出するアルゴリズムの一例について説明する。
図16は、
図15に示したマグネチュード推定法による検査結果に基づいて、グレア視標の中心領域の輝度の相対値に対する平均評価値をプロットしたグラフを示す。
図17は、当該グラフを両対数でプロットした場合のグラフを示す。
図17に示すグラフの各点に対して、累乗近位曲線を追加して、その曲線を示す関数を回帰分析によって求めると、式(2)によって示される関数となる。
【0057】
【0058】
心理量Jが平均評価値に対応し、物理量Iがグレア視標の中心領域の輝度の相対値に対応する。なお、回帰分析の決定係数は0.94であり、
図17に示すように、輝度の相対値と平均評価値との間には強い相関があることがわかる。式(2)に基づいて、実際の測定では用いなかったグレア視標に対する心理量を推定することができる。
【0059】
[視機能検査装置の指標算出処理]
次に
図18を参照し、視機能検査装置2が眩しさ指標A3を算出する処理である指標算出処理について説明する。
図18は、本実施形態に係る指標算出処理の一例を示す図である。
【0060】
ステップS10:グレア錯視画像提示部200は、グレア錯視画像A1を提示する。ここでグレア錯視画像提示部200は、グレア錯視画像A1を表示装置3に表示させることによって、グレア錯視画像A1を被験者T1に提示する。ここで、検査方法に応じて、グレア錯視画像提示部200は、グレア錯視画像A1を所定の時間だけ、表示装置3に表示させる。
【0061】
なお、グレア錯視画像提示部200は、検査方法に応じて、グレア錯視画像A1を提示する前後の時期において、
図8に示したようなブランク画像を所定の時間だけ表示装置3に表示させる。また、グレア錯視画像提示部200は、グレア錯視画像A1を始めに提示する前には、
図8に示したような固視点画像を提示する。
【0062】
ステップS20:操作受付部201は、被験者T1が入力装置4から回答を入力する操作を受け付ける。当該回答は、グレア錯視画像提示部200が提示するグレア錯視画像A1に対しての被験者T1が感じた眩しさについての回答である。当該回答は、検査方法に応じた回答である。例えば検査方法が二重上下法である場合、当該回答は、被験者T1が表示装置3に表示されるグレア錯視画像A1に対して眩しいと感じたか否かの回答である。
【0063】
なお、ステップS10において、複数のグレア視標G1の全体が提示された後に、被験者T1は、提示されたグレア視標G1のなかから眩しいと感じたグレア視標G1を含むグレア錯視画像A1の番号を回答してもよい。
操作受付部201は、受け付けた回答を、回答情報A2として回答情報取得部202に供給する。
【0064】
ステップS30:回答情報取得部202は、操作受付部201が受け付けた操作によって入力された被験者T1による回答を、回答情報A2として取得する。回答情報取得部202は、取得した回答情報A2を眩しさ指標算出部203に供給する。
【0065】
ここで操作受付部201が受け付けた操作によって入力された被験者T1による回答とは、グレア錯視を引き起こす程度が互いに異なる複数のグレア視標G1が所定の順序で提示された場合に、複数のグレア視標G1それぞれに対して被験者T1が感じた眩しさについての複数の回答である。したがって、回答情報取得部202は、当該複数の回答を示す回答情報A2を取得する。ここで複数のグレア視標G1が提示される所定の順序は、二重上下法の場合のように、視標の輝度の順であってもよいし、マグネチュード推定法の場合のように、ランダムであってもよい。
【0066】
ステップS40:グレア錯視画像提示部200は、終了条件が満たされたか否かを判定する。ここで終了条件は、グレア錯視画像A1の提示を終了するための条件である。終了条件は、検査方法に応じた条件である。例えば検査方法が二重上下法である場合、終了条件は、眩しいと感じたとの回答と、眩しくないと感じたとの回答とが繰り返されるようになってから、試行数が所定の回数(例えば、7回)となることである。
【0067】
グレア錯視画像提示部200は、終了条件が満たされたと判定する場合(ステップS40;YES)、眩しさ指標算出部203に終了条件が満たされたことを示す信号を出力し、眩しさ指標算出部203は、ステップ50の処理を実行する。一方、グレア錯視画像提示部200は、終了条件が満たされていないと判定する場合(ステップS40;NO)、再度ステップ10の処理を実行する。
【0068】
ステップS50:眩しさ指標算出部203は、回答情報取得部202が取得した回答情報A2に基づいて、眩しさ指標A3を算出する。眩しさ指標算出部203は、検査方法に応じて眩しさ指標A3を算出する。例えば検査方法が二重上下法である場合、眩しさ指標算出部203は、回答が繰り返される範囲における上昇系列と下降系列とのそれぞれの中心領域の輝度値の平均値を算出することによって、眩しさ指標A3として絶対閾を算出する。眩しさ指標算出部203は、上述した式(1)に基づいて、測定された心理量から物理量を算出し、当該物理量を眩しさ指標A3としてもよい。
眩しさ指標算出部203は、算出した眩しさ指標A3を提示部204に供給する。
【0069】
ステップS60:提示部204は、眩しさ指標算出部203が算出した眩しさ指標A3を出力する。提示部204は、例えば、表示装置3に眩しさ指標A3を出力する。表示装置3は、提示部204から出力された眩しさ指標A3を表示する。被験者T1、眼鏡店の店員、または眼科医は、表示装置3に表示される眩しさ指標A3に基づいて、被験者T1に提供する眼鏡のレンズとして、被験者T1の眩しさに対する感度に応じたレンズを選択することができる。なお、提示部204は、眩しさ指標A3を外部のデータベースに出力してもよい。
以上で、視機能検査装置2は、指標算出処理を終了する。
【0070】
以上に説明したように、本実施形態に係る視機能検査装置2は、回答情報取得部202と、眩しさ指標算出部203とを備える。
回答情報取得部202は、グレア錯視に基づく視標(本実施形態において、グレア視標G1)に対して被験者T1が感じた眩しさについての回答を示す回答情報A2を取得する。
眩しさ指標算出部203は、回答情報取得部202が取得した回答情報A2に基づいて、被験者T1が感じる眩しさについての指標(本実施形態において、眩しさ指標A3)を算出する。
【0071】
この構成により、本実施形態に係る視機能検査装置2は、グレア錯視に基づく視標に対して被験者T1が感じた眩しさについての回答に基づいて、被験者T1が感じる眩しさについての指標を算出することができるため、被験者T1の眩しさに対する感度を検査できる。
【0072】
ここで本実施形態に係る視機能検査装置2では、被験者T1の眩しさに対する感度の検査に、グレア錯視に基づく視標を用いているため、実際に所定の以上の輝度を有する指標を用いる必要がない。この点、ノート型のPC、スマートフォン、タブレット端末などの小さな画面に、実施に所定の以上の輝度を有する指標を表示しようとすると、十分な輝度を実現できない場合がある。一方、本実施形態に係る視機能検査装置2では、グレア視標G1が表示される画面が小さな画面であっても、グレア錯視に基づいて被験者T1に対して実際以上に眩しさを感じさせることができる。
【0073】
また、本実施形態に係る視機能検査装置2では、グレア錯視画像提示部200と、回答入力操作受付部(本実施形態において、操作受付部201)とをさらに備える。
グレア錯視画像提示部200は、視標(本実施形態において、グレア視標G1)を含む画像であるグレア錯視画像A1を提示する。
回答入力操作受付部(本実施形態において、操作受付部201)は、グレア錯視画像提示部200が提示するグレア錯視画像A1に対しての被験者T1が感じた眩しさについての回答を入力する操作を受け付ける。
ここで回答情報取得部202は、回答入力操作受付部(本実施形態において、操作受付部201)が受け付けた操作によって入力された被験者T1が感じた眩しさについての回答を、回答情報A2として取得する。
【0074】
この構成により、本実施形態に係る視機能検査装置2では、グレア視標G1を画像として提示でき、被験者T1が感じた眩しさについての回答を入力する操作を受け付けることができるため、検査を円滑に行うことができる。
【0075】
また、本実施形態に係る視機能検査装置2では、回答情報取得部202は、グレア錯視を引き起こす程度が互いに異なる複数の視標(本実施形態において、グレア視標G1)が所定の順序で提示された場合に、複数の視標(本実施形態において、グレア視標G1)それぞれに対して被験者T1が感じた眩しさについての複数の回答を示す回答情報A2を取得する。また、眩しさ指標算出部203は、回答情報取得部202が取得した回答情報A2に基づいて、指標(本実施形態において、眩しさ指標A3)を算出する。
【0076】
この構成により、本実施形態に係る視機能検査装置2は、グレア錯視を引き起こす程度が互いに異なる複数の視標それぞれに対して被験者T1が感じた眩しさについての複数の回答に基づいて、被験者T1が感じる眩しさについての指標を算出できるため、複数の視標を用いない場合に比べて、算出される指標の精度を高めることができる。
【0077】
なお、本実施形態においては、グレア錯視を引き起こす程度が互いに異なる複数の視標が提示される場合の一例について説明したが、これに限られない。1つのグレア視標G1が提示されてもよいし、1種類のグレア視標G1が複数回提示されてもよい。
【0078】
(第1の実施形態の変形例)
本実施形態では、視機能検査システム1において、視機能検査装置2、及び表示装置3が眼鏡店や眼科などに備えられて、被験者T1の視機能の検査が行われる場合の一例について説明したが、これに限られない。グレア錯視画像A1の提示は眼鏡店や眼科などに備えられる端末装置によって行い、グレア錯視画像A1の保存、眩しさ指標A3の算出処理にはそれぞれ、クラウド上の記録装置や中央処理装置(CPU)が用いられてもよい。
本変形例に係る視機能検査システムを、視機能検査システム1aという。なお、上述した第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して、同一の構成及び動作についてはその説明を省略する場合がある。
【0079】
図19は、本変形例に係る視機能検査システム1aの機構構成の一例を示す図である。本変形例に係る視機能検査システム1aは、提示装置2aと、視機能検査装置2bと、表示装置3と、入力装置4とを備える。視機能検査システム1aでは、上述した視機能検査装置2が備える機能部は、提示装置2aと視機能検査装置2bとに分けて備えられる。
【0080】
提示装置2aは、一例として、PCである。提示装置2aは、一例として、眼鏡店や眼科などに備えられる。提示装置2aは、スマートフォンやタブレット端末などであってもよい。提示装置2aが、スマートフォンやタブレット端末である場合、表示装置3及び入力装置4は、タッチパネルとして提示装置2aと一体となって備えられる。また提示装置2aは、ヘッドマウントディスプレイであってもよい。
【0081】
提示装置2aは、制御部20aと、記憶部21aと、通信部22aとを備える。
制御部20aは、グレア錯視画像提示部200と、操作受付部201と、提示部204とを備える。ここでグレア錯視画像提示部200は、クラウド上に備えらえるデータベース21cからグレア錯視画像A1を取得して、取得したグレア錯視画像A1を表示装置3に表示させる。提示部204は、視機能検査装置2bによって算出された眩しさ指標A3を表示装置3に出力する。
【0082】
記憶部21aは、各種の情報を記憶する。記憶部21aには、グレア錯視画像A1は記憶されていなくてよい。
通信部22aは、無線ネットワークを介して、各種の情報の送信及び受信を行う。通信部22aは、無線ネットワークを介して通信を行うための通信インターフェース(I/F)を備える。提示装置2aは、通信部22aを介して、視機能検査装置2b及びデータベース21cと通信を行う。
【0083】
視機能検査装置2bは、制御部20bと、記憶部21bと、通信部22bとを備える。
制御部20bは、回答情報取得部202と、眩しさ指標算出部203とを備える。回答情報取得部202は、提示装置2aに備えられる操作受付部201から回答情報A2を取得する。眩しさ指標算出部203は、算出した眩しさ指標A3を提示装置2aに備えられる提示部204に出力する。
【0084】
記憶部21bは、各種の情報を記憶する。
通信部22bは、無線ネットワークを介して、各種の情報の送信及び受信を行う。通信部22aは、無線ネットワークを介して通信を行うための通信インターフェース(I/F)を備える。視機能検査装置2bは、通信部22aを介して提示装置2aと通信を行う。
【0085】
データベース21cは、グレア錯視画像情報210を記憶するためのデータベースである。データベース21cは、提示装置2aからの要求に応じて、提示装置2aにグレア錯視画像A1を供給する。
【0086】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第2の実施形態について詳しく説明する。
上記第1の実施形態では、視機能検査システム1では、グレア錯視画像A1が予め生成されて記憶部に記憶されている場合について説明をした。本実施形態では、視機能検査システムが、入力されたパラメータに基づいてグレア錯視画像A1を生成する場合について説明をする。なお、上述した第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して、同一の構成及び動作についてはその説明を省略する場合がある。
本実施形態に係る視機能検査システムを視機能検査システム1dといい、視機能検査装置を視機能検査装置2dという。
【0087】
図20は、本実施形態に係る視機能検査システム1dの機能構成の一例を示す図である。視機能検査装置2dは、制御部20dと、記憶部21とを備える。
制御部20dは、グレア錯視画像提示部200と、操作受付部201dと、回答情報取得部202と、眩しさ指標算出部203と、提示部204と、パラメータ取得部205dと、グレア錯視画像生成部206dとを備える。
【0088】
操作受付部201dは、入力装置4dから各種の操作を受け付ける。操作受付部201dが受け付ける各種の操作には、グレア錯視画像A1を作成するためのパラメータを入力する操作が含まれる。
【0089】
パラメータ取得部205dは、操作受付部201でから入力装置4dに入力されたパラメータA4を取得する。パラメータA4は、グレア錯視画像A1を生成するためのパラメータである。パラメータA4は、中心領域パラメータA41と、誘導領域パラメータA42とを含む。中心領域パラメータA41は、グレア錯視画像A1に含まれる中心領域についてのパラメータである。誘導領域パラメータA42は、グレア錯視画像A1に含まれる誘導領域についてのパラメータである。パラメータA4の具体例は、上述した
図6に示すパラメータである。
【0090】
グレア錯視画像生成部206dは、パラメータ取得部205dが取得したパラメータA4に基づいてグレア錯視画像A1を生成する。
【0091】
なお、本実施形態に係るグレア錯視画像A1には、同心円状に中心領域R21と誘導領域R22とが配置されている場合の一例について説明したが、これに限られない。例えば、中心領域の形状は、多角形でも、楕円でも構わない。また、グレア錯視画像A1では、誘導領域は、中心領域の周囲を囲むように配置されているが、誘導領域は、中心領域の外周部の全てを囲む必要はなく、中心領域の外周部の一部を囲ってもよい。
【0092】
本実施形態に係るグレア錯視画像A1では、中心領域及び誘導領域はそれぞれグレースケールの画像である場合の一例について説明したが、これに限られない。中心領域及び誘導領域は、白黒以外の色を有していてもよい。
【0093】
誘導領域の輝度勾配に関しては、表示装置3のディスプレイのガンマ調整の値を考慮する必要がある。ガンマ値を下げることによって、グレア視標G1の平均輝度を下げることができる。ガンマ値を上げることによって、グレア視標G1の平均輝度を上げることができる。
誘導領域の輝度勾配は、中心領域に向かって、輝度が高くなる勾配であっても、輝度が低くなる勾配のいずれであってもよい。なお、輝度が高くなる勾配の方が、輝度が低くなる勾配に比べてグレア錯視の効果は大きい。
【0094】
背景に関しても本実施形態に係るグレア錯視画像A1の背景以外のものであってもよい。背景についてはいずれの背景であってもよいが、画面全体の平均輝度を下げるには、背景の輝度は小さい方が好ましい。
【0095】
以上に説明したように、本実施形態に係る視機能検査装置2dは、パラメータ取得部205dと、グレア錯視画像生成部206dとを備える。
パラメータ取得部205dは、グレア錯視画像A1を生成するためのパラメータであって、グレア錯視画像A1に含まれる中心領域R21についてのパラメータである中心領域パラメータA41と、グレア錯視画像A1に含まれる誘導領域R22についてのパラメータである誘導領域パラメータA42と、を取得する。
グレア錯視画像生成部206dは、パラメータ取得部205dが取得した中心領域パラメータA41と誘導領域パラメータA42とに基づいてグレア錯視画像A1を生成する。
【0096】
この構成により、本実施形態に係る視機能検査装置2dは、グレア錯視画像A1を生成できるため、予めグレア錯視画像A1を用意する手間とコストを省くことができる。
【0097】
(第3の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第3の実施形態について詳しく説明する。
上記第1の実施形態では、視機能検査システムは、眩しさ指標A3を算出する場合について説明をした。本実施形態では、視機能検査システムが、算出した眩しさ指標A3に基づいて被験者T1に適した眼鏡レンズを決定する場合について説明をする。なお、上述した第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して、同一の構成及び動作についてはその説明を省略する場合がある。
本実施形態に係る視機能検査システム1を視機能検査システム1eという。
【0098】
図21は、本実施形態に係る視機能検査システム1eの機能構成の一例を示す図である。視機能検査システム1eは、視機能検査装置2と、表示装置3と、入力装置4と、眼鏡レンズ提示装置9eとを備える。なお、眼鏡レンズ提示装置9eは、視機能検査装置2と一体となって備えられてもよい。つまり、眼鏡レンズ提示装置9eが備える各機能部が視機能検査装置2に備えられてもよい。
【0099】
眼鏡レンズ提示装置9eは、一例として、PCである。眼鏡レンズ提示装置9eは、視機能検査装置2とともに眼鏡店や眼科などに備えられる。眼鏡レンズ提示装置9eは、制御部90eと、記憶部91eとを備える。
【0100】
制御部90eは、眼鏡レンズ決定部900eと、眼鏡レンズ情報提示部901eとを備える。
眼鏡レンズ決定部900eは、視機能検査装置2が算出した眩しさ指標A3に基づいて被験者T1に適した眼鏡レンズLを決定する。ここで眼鏡レンズ決定部900eは、眼鏡レンズL1についてのパラメータを被験者T1に適した値に決定してもよいし、予め用意された複数の眼鏡レンズLのなかから被験者T1に適した眼鏡レンズLを選択してもよい。
【0101】
眼鏡レンズ情報提示部901eは、眼鏡レンズ決定部900eが決定した眼鏡レンズLについての情報を提示する。眼鏡レンズ決定部900eが決定した眼鏡レンズLについての情報を、眼鏡レンズ情報A5という。眼鏡レンズ情報提示部901eは、例えば、眼鏡レンズ情報A5を表示装置3に出力する。表示装置3は、眼鏡レンズ情報提示部901eから出力される眼鏡レンズ情報A5が示す眼鏡レンズLについての情報を表示する。
【0102】
眼鏡レンズ決定部900eは、例えば、次のように被験者T1に適した眼鏡レンズLを決定する。上述した物理量と心理量の関係を表す式(1)、及び式(3)によって示される背景輝度と光源輝度の関係式に基づいて、被験者T1が、ある環境において、ある輝度を有する光源を観察した場合での眩しさに対する感度(グレア感)を推定することが可能である。
【0103】
【0104】
被験者T1の目の特性に合わせた眼鏡を作成するにあたり、被験者T1の生活スタイルについての情報を更に得ることによって、被験者T1がどのような環境において眼鏡を装用するかがわかる。被験者T1が、ある環境において、ある輝度を有する光源を観察した場合での眩しさに対する感度(グレア感)を推定することによって、被験者T1により適切な眼鏡を作成することが可能である。
【0105】
例えば、上記の検査の結果、被験者T1がグレアを感じやすいと判定された場合に、野外での仕事に適した眼鏡を作成する場合、より目に入る光をコントロールするのに必要なレンズ及び、眼鏡フレームが検討できる。
別の例として、上記の検査の結果、被験者T1がグレアを感じやすいと判定された場合に、夜間自動車の運転するために、よりよい視界を提供するための眼鏡が必要であるとする。そのような場合、夜間での視野を確保でき、かつ対向車のヘッドランプに対するグレアを避けられるような眼鏡が必要であると考えられる。そのような眼鏡として、特定波長をより吸収可能な色材を入れたレンズを提案することが考えられる。
【0106】
例えば、環境と、環境における背景輝度の情報とが対応づけられたテーブルである環境背景輝度情報が記憶部91eに予め記憶される。眼鏡レンズ決定部900eは、被験者T1の生活スタイルについての情報から被験者T1がどのような環境において眼鏡を装用するかを判定する。眼鏡レンズ決定部900eは、視機能検査装置2が算出した眩しさ指標A3と、判定した環境と、環境背景輝度情報とに基づいて、被験者T1が、判定した環境においてある輝度を有する光源を観察した場合での眩しさに対する感度(グレア感)を推定する。眼鏡レンズ決定部900eは、推定した眩しさに対する感度(グレア感)に基づいて、被験者T1に適した眼鏡レンズLを決定する。
【0107】
以上に説明したように、本実施形態に係る視機能検査システム1eは、視機能検査装置2と、眼鏡レンズ提示装置9eと、を備える。
眼鏡レンズ提示装置9eは、眼鏡レンズ決定部900eと、眼鏡レンズ情報提示部901eと、を備える。
眼鏡レンズ決定部900eは、視機能検査装置2が算出した指標(本実施形態において、眩しさ指標A3)に基づいて被験者T1に適した眼鏡レンズLを決定する。
眼鏡レンズ情報提示部901eは、眼鏡レンズ決定部900eが決定した眼鏡レンズLについての情報(本実施形態において、眼鏡レンズ情報A5)を提示する。
【0108】
この構成により、本実施形態に係る視機能検査システム1eでは、被験者T1の眩しさに対する感度に基づいて被験者T1に適した眼鏡レンズLを決定できるため、当該感度に基づいて被験者T1に適した眼鏡レンズLを提示することができる。
【0109】
(第4の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第4の実施形態について詳しく説明する。
上記第3の実施形態では、視機能検査システムが、算出した眩しさ指標A3に基づいて被験者T1に適した眼鏡レンズを決定する場合について説明をした。本実施形態では、視機能検査システムが、被験者T1が眼鏡レンズを装用した場合のグレア視標G1の見え方をシミュレートする場合について説明をする。なお、上述した第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して、同一の構成及び動作についてはその説明を省略する場合がある。
本実施形態に係る視機能検査システムを視機能検査システム1fという。
【0110】
図22は、本実施形態に係る視機能検査システム1fの機能構成の一例を示す図である。視機能検査システム1fは、視機能検査装置2と、表示装置3と、入力装置4と、眼鏡レンズ提示装置9fとを備える。なお、眼鏡レンズ提示装置9fは、視機能検査装置2と一体となって備えられてもよい。つまり、眼鏡レンズ提示装置9fが備える各機能部が視機能検査装置2に備えられてもよい。
【0111】
眼鏡レンズ提示装置9fは、制御部90fと、記憶部91eとを備える。制御部90fは、眼鏡レンズ決定部900eと、眼鏡レンズ情報提示部901eと、眼鏡装用時画像生成部902fと、眼鏡装用時画像提示部903fとを備える。なお、眼鏡装用時画像生成部902fと、眼鏡装用時画像提示部903fとは、視機能検査システム1fにおいて、眼鏡レンズ提示装置9fとは別に備えられてもよい。例えば、眼鏡装用時画像生成部902fと、眼鏡装用時画像提示部903fとが、視機能検査装置2に備えられてもよいし、視機能検査装置2または眼鏡レンズ提示装置9f以外の端末装置に備えられてもよい。
【0112】
眼鏡装用時画像生成部902fは、眼鏡レンズ決定部900eが決定した眼鏡レンズLについての眼鏡レンズ情報A5に基づいて、眼鏡装用時画像A6を生成する。眼鏡装用時画像A6とは、眼鏡レンズLを被験者T1が装用した場合に見えるグレア視標G1を含むグレア錯視画像である。
【0113】
眼鏡装用時画像提示部903fは、眼鏡装用時画像生成部902fが生成した眼鏡装用時画像A6を提示する。眼鏡装用時画像提示部903fは、例えば、表示装置3に眼鏡装用時画像A6を表示させることによって、眼鏡装用時画像A6を提示する。眼鏡装用時画像提示部903fは、一例として、眼鏡装用時画像A6と、グレア錯視画像A1とを並べて表示装置3に表示させる。
【0114】
ここで
図23を参照し、眼鏡装用時画像提示部903fによって提示される眼鏡装用時画像A6について説明する。
図23は、本実施形態に係る眼鏡装用時画像A6の一例を示す図である。
図23(A)には、眼鏡装用時画像A6と並べて表示されるグレア錯視画像A1の一例として、グレア錯視画像P71が示されている。
図23(B)には、眼鏡装用時画像A6の一例として、眼鏡装用時画像P72が示されている。
【0115】
眼鏡装用時画像提示部903fは、眩しさ指標算出部203によって算出される眩しさ指標A3に基づいて、眼鏡装用時画像A6と並べて表示されるグレア錯視画像A1を選択する。眼鏡装用時画像提示部903fは、例えば、上述した二重上下法によって算出された絶対閾の値と近い輝度の中心領域を有するグレア錯視画像A1を、視機能検査装置2の記憶部21に記憶されるグレア錯視画像情報210に含まれるグレア錯視画像A1のなかから選択する。眼鏡装用時画像提示部903fは、選択したグレア錯視画像A1を視機能検査装置2から取得する。
【0116】
本実施形態では、眼鏡装用時画像A6は、パラメータとして透過率カットの割合を含む。眼鏡装用時画像生成部902fは、被験者T1の生活スタイルや生活習慣に基づいて判定されるレンズカラー濃度と同じ透過率カットをかけた場合のグレア視標G1の見え方に基づいて眼鏡装用時画像A6を生成する。ここで被験者T1の生活スタイルや生活習慣に基づいて判定されるレンズカラー濃度は、第3の実施形態において被験者T1に適した眼鏡レンズLが決定されたのと同様にして、視機能検査装置2が算出した眩しさ指標A3と、判定された環境と、環境背景輝度情報とに基づいて、決定される。
【0117】
眼鏡装用時画像提示部903fは、透過率カットの割合を変更しながら、複数の眼鏡装用時画像A6を逐次提示する。眼鏡装用時画像提示部903fが複数の眼鏡装用時画像A6を逐次提示する過程においては、表示装置3及び被験者T1の周囲の明るさは一定であることが好ましい。
被験者T1は、表示装置3に表示されるグレア錯視画像P71と眼鏡装用時画像P72とを見比べることによって、購入する眼鏡レンズがどの程度眩しさを軽減できるかについて確認できる。
【0118】
図24及び
図25に、透過率カットの割合を様々に変えた場合の眼鏡装用時画像A6に含まれるグレア視標G1の平均輝度を示す。
図24及び
図25では、
図10に示した指標番号「1a」から「15a」までのグレア錯視画像A1について、透過率カットの処理を行った眼鏡装用時画像A6に含まれるグレア視標G1の平均輝度が示されている。ここで透過率カットの割合は、15、25、35、75、85パーセントの5通りである。なお、グレア視標G1の平均輝度は、中心領域と、誘導領域との平均の輝度である。
【0119】
例えば、二重上下法によって測定された絶対閾の値と近い眼鏡装用時画像A6が、指標番号「6a」の眼鏡装用時画像A6とする。この場合、被験者T1は、指標番号「6a-15」、「6a-25」、「6a-35」、「6a-50」、「6a-75」、及び「6a-85」の眼鏡装用時画像A6を見ることによって、視標の眩しさと視認性について確認ができる。
【0120】
以上に説明したように、本実施形態に係る視機能検査システム1fでは、眼鏡レンズ提示装置9fは、眼鏡装用時画像生成部902fと、眼鏡装用時画像提示部903fとを備える。
眼鏡装用時画像生成部902fは、眼鏡レンズ決定部900eが決定した眼鏡レンズLについての情報(本実施形態において、眼鏡レンズ情報A5)に基づいて、眼鏡レンズLを被験者T1が装用した場合に見える視標(本実施形態において、グレア視標G1)を含むグレア錯視画像である眼鏡装用時画像A6を生成する。
眼鏡装用時画像提示部903fは、眼鏡装用時画像生成部902fが生成した眼鏡装用時画像A6を提示する。
【0121】
この構成により、本実施形態に係る視機能検査システム1fでは、眼鏡装用時画像A6を被験者T1が見ることによって、被験者T1は、眼鏡レンズLを装用した場合にどの程度眩しさが軽減できるかをシミュレートすることができる。視機能検査システム1fでは、眼鏡レンズLを装用した場合の見え方のシミュレーションを通して、被験者T1の生活スタイルと生活環境において必要なレンズの色、及び透過率カットについて決定することが可能である。被験者T1は、当該シミュレーションを通して、購入予定の眼鏡レンズの仕様について検証することができる。
【0122】
(第5の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第5の実施形態について詳しく説明する。
上述した各実施形態においては、視機能検査装置がグレア錯視画像提示部を備え、グレア視標G1がグレア錯視画像A1に含まれて提示される場合の一例について説明したが、これに限られない。本実施形態では、グレア視標G1は、グレア視標G1が印刷された印刷物として提示される場合について説明をする。なお、上述した各実施形態と同一の構成については同一の符号を付して、同一の構成及び動作についてはその説明を省略する場合がある。
本実施形態に係る視機能検査システムを視機能検査システム1gという。
【0123】
図26は、本実施形態に係る視機能検査システム1gの構成の一例を示す図である。視機能検査システム1gは、視機能検査装置2gと、入力装置4gとを備える。
冊子B1は、グレア錯視を引き起こす程度が互いに異なる複数のグレア視標G1がそれぞれ印刷された複数の印刷物を含む。
【0124】
冊子B1は、例えば、眼鏡店や眼科から事前に被験者T1の元へ送付される。なお、眼鏡店や眼科において、担当者が冊子B1を被験者T1に見せてもよい。被験者T1は、冊子B1に含まれる複数の印刷物を捲りながら、それらの印刷物それぞれに印刷されたグレア視標G1を注視する。被験者T1は、印刷されたグレア視標G1に対して被験者T1が感じた眩しさについての回答を、入力装置4gから入力する。例えば、被験者T1は、複数のグレア視標G1のそれぞれに対して感じた眩しさについての回答を入力装置4gから逐次入力する。当該回答は、眩しいか否かを示すものであってもよいし、眩しいと感じたグレア視標G1の番号を示すものであってもよい。
【0125】
入力装置4gは、例えば、スマートフォンやタブレット端末である。入力装置4は、視機能検査装置2gと通信を行う。
視機能検査装置2gが備える機能は、例えば、上述した
図19の視機能検査装置2bが備える機能と同様である。回答情報取得部202は、入力装置4gから送信される回答情報A2を取得する。視機能検査装置2gは、眩しさ指標算出部203によって算出された眩しさ指標A3を入力装置4gに出力する。
【0126】
以上に説明したように、本実施形態に係る複数の印刷物(本実施形態において、冊子B1)には、グレア錯視に基づく視標であって、グレア錯視を引き起こす程度が互いに異なる複数の視標(本実施形態において、グレア視標G1)がそれぞれ印刷されている。
本実施形態に係る複数の印刷物(本実施形態において、冊子B1)を用いることによって、被験者T1がPCの操作が苦手な場合や、被験者T1がPCを利用できる環境にない場合であっても、被験者T1は冊子B1を捲って、眩しさに対する感度を検査することができる。
【0127】
なお、上述した実施形態における視機能検査装置2、2b、2d、2g、提示装置2a、眼鏡レンズ提示装置9e、9fの一部、例えば、グレア錯視画像提示部200、操作受付部201、回答情報取得部202、眩しさ指標算出部203、提示部204、パラメータ取得部205d、グレア錯視画像生成部206d、眼鏡レンズ決定部900e、眼鏡レンズ情報提示部901e、眼鏡装用時画像生成部902f、及び眼鏡装用時画像提示部903fをコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、視機能検査装置2、2b、2d、2g、提示装置2a、眼鏡レンズ提示装置9e、9fに内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
また、上述した実施形態における視機能検査装置2、2b、2d、2g、提示装置2a、眼鏡レンズ提示装置9e、9fの一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい視機能検査装置2、2b、2d、2g、提示装置2a、眼鏡レンズ提示装置9e、9fの各機能ブロックは個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【0128】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0129】
1、1a、1d、1e、1f…視機能検査システム、2、2b、2d…視機能検査装置、202…回答情報取得部、203…眩しさ指標算出部、G1…グレア視標、A1…グレア錯視画像、A2…回答情報、A3…眩しさ指標、T1…被験者