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特許7546081流体密封型ブラインドファスナー及び締結方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】流体密封型ブラインドファスナー及び締結方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 37/04 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
F16B37/04 U
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022575191
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 US2021037614
(87)【国際公開番号】W WO2021257694
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】63/039,772
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516343516
【氏名又は名称】ハウメット エアロスペース インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Howmet Aerospace Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘイロック,ルーク エル.
(72)【発明者】
【氏名】ボールズ,トッド エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,ジュンジエ
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-170645(JP,A)
【文献】特表2007-500831(JP,A)
【文献】特開2018-013151(JP,A)
【文献】特開平06-074220(JP,A)
【文献】特開2007-064412(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0206011(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03556875(EP,A1)
【文献】特表2017-515078(JP,A)
【文献】特表2015-517069(JP,A)
【文献】特開2015-135184(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0186522(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 13/04
F16B 19/10
F16B 23/00-43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラインドファスナーであって、
スリーブであり、
第一内面を含む第一スリーブ端部と、
第二内面を含む第二スリーブ端部と、
前記第一スリーブ端部から前記第二スリーブ端部へと延びる長尺部分と、を含み、
ここで、前記第一内面と前記第二内面とは、前記第一スリーブ端部から、前記第二スリーブ端部に向けて又は前記第二スリーブ端部へと、前記スリーブ内を延びるスリーブキャビティの領域を規定している、スリーブと、
前記スリーブキャビティによって少なくとも部分的に受領されるように構成されたピンであり、
トルクを受領するように構成された第一ピン端部と、
第二ピン端部と、
前記第一ピン端部から前記第二ピン端部へと延びるシャンクであり、ネジ山を含み、前記ネジ山は、前記スリーブの前記第二内面上にネジ山を形成するように構成されている、シャンクと、を含むピンと、
を含んでおり、
前記ブラインドファスナーの設置後の前記第二内面と前記シャンクのネジ山との間の係合長さは、前記シャンクのネジ山の小径の5倍以下であ
前記第二内面は、少なくとも部分的なネジ山付き領域と、実質的に円滑な領域と、を含み、前記少なくとも部分的なネジ山付き領域は、前記実質的に円滑な領域と、前記第一スリーブ端部と、の中間に位置している、ブラインドファスナー。
【請求項2】
前記第一ピン端部は、ヘッド部分を含み、前記ヘッド部分は、実質的に平坦な側面、リブ、スプライン、凹所、ローレット、耳たぶ、穴、凹型ソケット、及び、タブ、の少なくとも一つを含む、請求項1に記載のブラインドファスナー。
【請求項3】
前記第一ピン端部は、前記ピンが所定距離を超えて前記スリーブキャビティ内を移動することを阻止するように構成されたフランジ部分を含む、請求項1に記載のブラインドファスナー。
【請求項4】
前記スリーブは、前記第一内面と前記第二内面との中間に位置した第三内面を含み、前記第三内面は、テーパー形状とされている、請求項1に記載のブラインドファスナー。
【請求項5】
前記第三内面は、前記ブラインドファスナーの長手方向軸線に対して、1度~6度の範囲の角度でテーパー形状とされている、請求項4に記載のブラインドファスナー。
【請求項6】
前記スリーブキャビティの直径は、前記第二スリーブ端部へと向けて、軸線方向において、前記スリーブの長さに沿って減少している、請求項1に記載のブラインドファスナー。
【請求項7】
前記第二内面の内径は、前記第一内面の内径よりも小さく、さらに、前記シャンクの前記ネジ山の主要直径よりも小さい、請求項1に記載のブラインドファスナー。
【請求項8】
前記第二内面は、実質的に管状である、請求項1に記載のブラインドファスナー。
【請求項9】
前記スリーブの前記長尺部分は、前記第二ピン端部が前記第二内面上にネジ山を形成するとともに前記長尺部分を圧縮することに応答して、膨出形状へと変形するように構成されている、請求項1に記載のブラインドファスナー。
【請求項10】
前記ピンは、前記第一ピン端部と前記第二ピン端部との中間に位置したブレークネック溝を含み、前記ブレークネック溝は、前記ブラインドファスナーの設置時に破断するように構成されている、請求項1に記載のブラインドファスナー。
【請求項11】
前記ピンは、第一硬度を有した第一材料を含み、前記スリーブは、第二硬度を有した第二材料を含み、前記第二硬度は、前記第一硬度よりも小さい、請求項1に記載のブラインドファスナー。
【請求項12】
前記第二内面上にネジ山を形成する時には、前記ピンと前記スリーブとの間に、流体密封シールが形成される、請求項1に記載のブラインドファスナー。
【請求項13】
前記第二スリーブ端部は、閉塞されている、請求項1に記載のブラインドファスナー。
【請求項14】
前記第一スリーブ端部は、前記スリーブが所定距離を超えて構造体の穴を通して移動することを阻止するように構成されたスリーブフランジ部分を含む、請求項1に記載のブラインドファスナー。
【請求項15】
前記第一スリーブ端部は、トルクを受領するように構成されている、請求項1に記載のブラインドファスナー。
【請求項16】
前記ブラインドファスナーは、航空宇宙用の部品又は構成要素、自動車用の部品又は構成要素、輸送用の部品又は構成要素、及び、建築や建設用の部品又は構成要素、の少なくとも一つとして構成された構造体の、穴内へと設置されるように構成されている、請求項1に記載のブラインドファスナー。
【請求項17】
前記シャンクの前記ネジ山の主要直径は、0.06インチ~4インチ(0.1524cm~10.16cm)の範囲である、請求項1に記載のブラインドファスナー。
【請求項18】
締結するための方法であって、
ブラインドファスナーを、
スリーブであり、
第一内面を含む第一スリーブ端部と、
第二内面を含む第二スリーブ端部と、
前記第一スリーブ端部から前記第二スリーブ端部へと延びる長尺部分と、を含み、
ここで、前記第一内面と前記第二内面とは、前記第一スリーブ端部から、前記第二スリーブ端部に向けて又は前記第二スリーブ端部へと、前記スリーブ内を延びるスリーブキャビティの領域を規定している、スリーブと、
前記スリーブキャビティによって少なくとも部分的に受領されるように構成されたピンであり、
第一ピン端部と、
第二ピン端部と、
前記第一ピン端部から前記第二ピン端部へと延びるシャンクであり、ネジ山を含むシャンクと、を含むピンと、を含むものとしたときに、前記ブラインドファスナーの前記スリーブの前記第二スリーブ端部を、構造体の穴内へと挿入することと、
前記スリーブの前記第二内面に対して、前記ピンの前記シャンクの前記ネジ山を強制的に接触させ、これにより、前記第二内面を変形させて、前記第二内面上にネジ山を形成し、前記ブラインドファスナーの設置後の前記第二内面と前記シャンクのネジ山との間の係合長さは、前記シャンクのネジ山の小径の5倍以下である、ことと、
前記スリーブの前記長尺部分を変形させて、前記長尺部分上に膨出部分を形成することと、を含んでおり
前記第二内面は、少なくとも部分的なネジ山付き領域と、実質的に円滑な領域と、を含み、前記少なくとも部分的なネジ山付き領域は、前記実質的に円滑な領域と、前記第一スリーブ端部と、の中間に位置している、方法。
【請求項19】
前記第一ピン端部に対して回転駆動力を印加することにより、前記スリーブの前記第二内面に対して前記ピンの前記シャンクの前記ネジ山を強制的に接触させることを、さらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ブラインドファスナーは、前記スリーブと前記ピンとからなる2部材型ブラインドファスナーである、請求項1に記載のブラインドファスナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月16日付けで出願された「FLUID TIGHT BLIND FASTENERS AND METHODS FOR FASTENING」と題する米国仮出願シリアル番号第63/039,772号明細書の優先権を主張するものであり、この仮出願の内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、ブラインドファスナー、及び、ブラインドファスナーを使用した締結方法、に関する。より詳細には、本開示は、流体密封型ブラインドファスナー、及び、関連した設置方法、に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば航空機の機体及び貯蔵タンクなどの大型の流体密封型構造体は、作業者が構造体の両側から協力して、ナット及びボルトなどの、2部材型の機械的ファスナーを設置するというプロセスで、組み立てることができる。このような構造体の組立は、構造体の片側に対して物理的な及び/又は視覚的なアクセスが制限されている場合には、問題となり得る。
【0004】
例えばブラインドリベット又はブラインドボルトなどの典型的なブラインドファスナーは、構造体の片側から操作可能ではあるけれども、制御されたクランプ力を、及び/又は、流体の漏洩に対しての効果的なシールを、提供しないことがある。補助的なシーラントの使用は、あるいは、別個の変形可能なシーリング部材の使用は、典型的なブラインドファスナーの設置に関するコスト及び複雑さを増大させ得る。ブラインドファスナーの一例は、米国特許第10,006,478号明細書に記載されている。他のファスナーは、例えば、米国特許第7,033,120号明細書、米国特許第6,868,757号明細書、米国特許第8,777,533号明細書、米国特許第8,979,553号明細書、及び、米国特許第9,669,457号明細書、に記載されている。所望のクランプ力を付与するものであり、また、設置後に流体密封型であり、さらに、製造に関して費用対効果の高い、密封型ブラインドファスナーを設計することは、課題を提起し得る。
【発明の概要】
【0005】
本開示による一つの非限定的な態様は、スリーブとピンとを含むブラインドファスナーを提供する。スリーブは、第一内面を含む第一スリーブ端部と、第二内面を含む第二スリーブ端部と、第一スリーブ端部から第二スリーブ端部へと延びる長尺部分と、を含む。第一内面と第二内面とは、第一スリーブ端部から、第二スリーブ端部に向けて又は第二スリーブ端部へと、スリーブ内を延びるスリーブキャビティの領域を規定している。ピンは、スリーブキャビティによって少なくとも部分的に受領されるように構成されている。ピンは、トルクを受領するように構成された第一ピン端部と、第二ピン端部と、第一ピン端部から第二ピン端部へと延びるシャンクと、を含む。シャンクは、ネジ山を含み、ネジ山は、スリーブの第二内面上にネジ山を形成するように構成されている。
【0006】
本開示による別の非限定的な態様は、締結するための方法を提供する。方法は、ブラインドファスナーのスリーブの第二スリーブ端部を、構造体の穴内へと挿入することを、含む。ブラインドファスナーは、スリーブと、ピンと、を含む。スリーブは、第一内面を含む第一スリーブ端部と、第二内面を含む第二スリーブ端部と、第一スリーブ端部から第二スリーブ端部へと延びる長尺部分と、を含む。第一内面と第二内面とは、第一スリーブ端部から、第二スリーブ端部に向けて又は第二スリーブ端部へと、スリーブ内を延びるスリーブキャビティの領域を規定している。ピンは、スリーブキャビティによって少なくとも部分的に受領されるように構成されている。ピンは、第一ピン端部と、第二ピン端部と、第一ピン端部から第二ピン端部へと延びるシャンクと、を含み、シャンクは、ネジ山を含む。方法は、ピンの一部をスリーブ内に配置することと、スリーブの第二内面に対してピンのシャンクのネジ山を強制的に接触させ、これにより、第二内面を変形させて第二内面上にネジ山を形成することと、を含む。
【0007】
本明細書において開示して説明する発明が、本要約で要約した態様に限定されないことは、理解されよう。本明細書による様々な非限定的かつ非網羅的な態様に関する以下の詳細な説明を考慮することにより、読者は、上記の詳細と、他の詳細とを、理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
実施例に関する特徴点及び利点は、並びにそれらを達成する態様は、添付図面と併せて以下の説明を参照することにより、より明瞭となり、実施例は、より良好に理解されるであろう。
【0009】
図1図1は、本開示によるブラインドファスナーの非限定的な実施形態に関しての、部分断面を含む正面図であり、スリーブの第二内面上にネジ山を形成する前の状態を示している。
【0010】
図2図2は、図1の領域2に関する詳細図である。
【0011】
図3図3は、図1のブラインドファスナーに関しての、部分断面を含む正面図であり、ピン上のネジ山によってスリーブの第二内面上に形成されたネジ山の少なくとも一部を有した状態で、構造体に部分的に設置された様子を示している。
【0012】
図4図4は、図3における領域4に関する詳細図である。
【0013】
図5図5は、図3のブラインドファスナーに関しての、部分断面を含む正面図であり、スリーブの第二内面上に形成されたネジ山と、スリーブの長尺部分に形成された膨出部分と、を有した状態で、構造体に設置された様子を示している。
【0014】
図6図6は、図5の領域6に関する詳細図である。
【0015】
図7図7は、本開示によるブラインドファスナーの非限定的な実施形態に関しての、部分断面を含む正面図であり、第二スリーブ端部を完全に貫通して延びていないスリーブキャビティを有しており、スリーブの第二内面上に形成されたネジ山と、スリーブの長尺部分に形成された膨出部分と、を有した状態で、構造体に設置された様子を示している。
【0016】
図8図8は、本開示によるブラインドファスナーの非限定的な実施形態に関しての、部分断面を含む正面図であり、スリーブの第二内面上に形成されたネジ山と、スリーブの長尺部分上に形成された二つの膨出部分と、を有した状態で、構造体に設置された様子を示している。
【0017】
図9図9は、本開示による締結のための方法に関する非限定的な実施形態を示すフローチャートである。
【0018】
図10図10は、本開示によるブラインドファスナーのスリーブの非限定的な実施形態に関する斜視図であり、タブを有している様子を示している。
【0019】
図11図11は、本開示によるブラインドファスナーのスリーブの非限定的な実施形態に関する斜視図であり、タブを有している様子を示している。
【0020】
対応する参照符号は、複数の図面にわたって、対応する構成要素を示している。本明細書に記載する例示は、一態様における特定の非限定的な実施形態を例示するものであり、そのような例示は、いかなる態様においても、添付の特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
開示する装置及び方法に関して、構造、機能、及び使用に関する全体的な理解を提供するために、様々な実施例について、本明細書において説明して例示している。本明細書において説明して例示する様々な実施例は、非限定的かつ非網羅的である。よって、本発明は、本明細書において開示する様々な非限定的なかつ非網羅的な実施例に関する説明によって限定されるものではない。むしろ、本発明は、特許請求の範囲によってのみ規定される。様々な実施例に関連して例示及び/又は説明する特徴点及び特性は、他の実施例における特徴点及び特性と組み合わされてもよい。そのような改変及び変形は、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。このように、特許請求の範囲は、本開示に明示的に又は実質的に記載された、又は他の態様で明示的に又は実質的に支持された、任意の特徴点又は特性を記載するように、補正されてもよい。さらに、出願人は、従来技術に存在し得る特徴点又は特性を肯定的に放棄するために、特許請求の範囲を補正する権利を留保する。本開示において開示して説明する様々な非限定的な実施形態は、本明細書において様々に説明するような特徴点及び特性を、含むことができる、又はそのような特徴点及び特性から構成することができる、又はそのような特徴点及び特性から実質的に構成することができる。
【0022】
本明細書における「様々な実施形態」、「いくつかの実施形態」、「一実施形態」、「実施形態」、「非限定的な実施形態」、又は同種の表現、に対してのあらゆる言及は、実施例に関連して説明する特定の特徴点、構造、又は特性が少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味している。よって、本明細書における「様々な実施形態では」、「いくつかの実施形態では」、「一実施形態では」、「実施形態では」、「非限定的な実施形態では」、又は同種の表現、の出現は、必ずしも同じ非限定的な実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の記載された、特徴点、構造、又は特性は、一つ又は複数の非限定的な実施形態では、任意の適切な態様で組み合わされてもよい。よって、一つの非限定的な実施形態に関連して例示又は説明する特定の特徴点、構造、又は特性は、全体的に又は部分的に、制限なく一つ又は複数の他の非限定的な実施形態における特徴点、構造、又は特性と組み合わされてもよい。そのような改変及び変形は、非限定的な実施形態の範囲内に含まれることが意図されている。
【0023】
本明細書で使用した際には、「中間」とは、参照された構成要素が二つの構成要素の間に配置されているものの、必ずしもそれら構成要素と接触していないことを意味する。したがって、本明細書において他のことが記載されていない限り、第一構成要素と第二構成要素との「中間」に位置した構成要素は、第一構成要素及び/又は第二構成要素に対して隣接していても隣接していなくてもよく、また、第一構成要素及び/又は第二構成要素に対して接触していても接触していなくてもよく、他の構成要素が、中間に位置した構成要素と、第一構成要素及び/又は第二要素と、の間に配置されていてもよい。
【0024】
本開示によるブラインドファスナーの実施形態は、所望のクランプ力を付与することができ、また、設置後に流体密封型であることができ、さらに、製造に関する費用対効果が高いものとすることができる。例えば、図1は、本開示によるブラインドファスナー100の非限定的な実施形態を示している。ブラインドファスナー100は、構造体(例えば、図3及び図5に関して図示して説明するような構造体)の穴内へと設置されるように構成することができる。ブラインドファスナー100は、図1に示すように、少なくとも二つの構成要素を含むことができる、例えば、スリーブ102と、ピン120と、を含むことができる。他の非限定的な実施形態(図示せず)では、本開示によるブラインドファスナーは、三つ以上の構成要素を含むことができる。様々な非限定的な実施形態では、ブラインドファスナー100は、例えばスリーブ102とピン120とを含む2部材型アセンブリから構成することができる。特定の非限定的な実施形態では、ブラインドファスナー100は、例えば、構造用のブラインドリベット、構造用のブラインドボルト、又は構造用のブラインドスタッド、などの構造用のブラインドファスナーとすることができる。
【0025】
再び図1を参照すると、ブラインドファスナー100のスリーブ102は、第一スリーブ端部104と、第二スリーブ端部106と、第一スリーブ端部104と第二スリーブ端部106との中間に位置した長尺部分108と、を含むことができる。長尺部分108は、スリーブ102及び/又はブラインドファスナー100の長手方向軸線Alを規定することができる。スリーブ102は、ブラインドファスナー100が構造体に設置された時に、第二スリーブ端部106が、ブラインドファスナー100が内部に設置される構造体を超えて延びるような、サイズで構成することができる。
【0026】
第一スリーブ端部104は、第一内面112を含み、第二スリーブ端部106は、第二内面114を含む。特定の非限定的な実施形態では、第三内面116が、第一内面112と第二内面114との中間に位置している。第一内面112と、第二内面114と、存在する場合には第三内面116とは、第一スリーブ端部104から第二スリーブ端部106へと長尺部分108を通して延びるスリーブキャビティ110を、規定することができる。スリーブキャビティ110は、図1に示すように、スリーブ102を完全に貫通して延びてもよく、あるいは、図7に示すように、スリーブキャビティ110がスリーブ102を完全に貫通して延びないよう、第二スリーブ端部106が閉塞されてもよい。
【0027】
様々な非限定的な実施形態では、第一スリーブ端部104は、スリーブ102が所定距離を超えて構造体の穴を通して移動することを阻止するように構成された(例えば、本明細書の図3及び図5に関して説明するように)フランジ部分118を含むことができる。ブラインドファスナー100の特定の用途に応じて、フランジ部分118は、構造体の表面と面一となるように構成することができる、あるいは、フランジ部分118は、構造体の表面から突出することができる。様々な実施形態では、フランジ部分118は、ピン120のフランジ部分138を収容するための内部円滑穴を含むことができる。様々な非限定的な実施形態では、スリーブ102のフランジ部分118は、内部皿穴を有することができ、ピン120のフランジ部分138は、フランジ部分118の内部皿穴に対して相補的な全体的に円錐形の形状を含むことができる。
【0028】
特定の実施形態では、第一スリーブ端部104は、第一スリーブ端部104に対して強制的に接触することによってスリーブ102を把持することができて、長手方向軸線Alまわりに回転駆動し得るよう及び/又は回転を阻止し得るよう、トルクを受領するように構成することができる。例えば、第一スリーブ端部104は、実質的に平坦な側面、リブ、スプライン、凹所、ローレット、耳たぶ、穴、凹型ソケット、タブ、又は同様の構造的特徴物、の少なくとも一つを含むことができる。特定の非限定的な実施形態では、図10及び図11に示すように、スリーブ102の第一スリーブ端部104は、タブ1054を含むことができる。様々な非限定的な実施形態では、スリーブ102は、スリーブ102に対しての軸線方向力の印加によって回転を阻止することができ、これにより、スリーブ102と、スリーブが内部に設置される構造体と、の間に摩擦力を生成することができる。特定の非限定的な実施形態では、図10及び図11に示すように、スリーブ102は、トルクに対して反応するための複数の内部凹所1056を有して構成することができ、各凹所1056は、設置時に凹所が構造体と係合することができてスリーブ102の回転を阻止し得るよう、後向きに傾斜され得るとともに、スリーブ102のフランジ部分118の外面1058上へと全体的に円形の構成で配置されることができる。
【0029】
再び図1を参照すると、様々な非限定的な実施形態では、ブラインドファスナー100のピン120は、第一ピン端部128と、第二ピン端部130と、シャンク122と、を含むことができ、スリーブ102に対して相補的であるように構成することができる。シャンク122を含めて、ピン120は、スリーブ102のスリーブキャビティ110内へと少なくとも部分的に受領されるのに適した形状を有することができる。様々な非限定的な実施形態では、シャンク122は、全体的に円筒形状を有している。シャンク122は、第一ピン端部128と第二ピン端部130との中間に位置しており、スリーブキャビティ110内へと挿入され得るように、そして、スリーブキャビティ110を通して少なくとも部分的に延びる得るように、寸法決めすることができる。シャンク122がスリーブキャビティ110内へと挿入された時には、第一ピン端部128は、第一スリーブ端部104に隣接して配置されることができ、第二ピン端部130は、第二スリーブ端部106に隣接して配置されることができる。
【0030】
様々な非限定的な実施形態では、第一ピン端部分128は、トルクを受領するように構成することができる。例えば、第一ピン端部分128は、ヘッド部分136に対して強制的に接触してピン120に対して回転駆動力を印加することにより、ピン120を長手方向軸線Alまわりに回転駆動し得るよう、トルクを受領するように構成されたヘッド部分136を含むことができる。様々な非限定的な実施形態では、ヘッド部分136は、実質的に平坦な側面、リブ、スプライン、凹所、ローレット、耳たぶ、穴、凹型ソケット、タブ、又は同様の構造的特徴物、の少なくとも一つを含むことができる。例えば、ヘッド部分136は、正方形のヘッド部分、六角形のヘッド部分、ローレット付きヘッド部分、スプライン付きヘッド部分、及び凹型ソケット付きヘッド部分、のうちの一つを含むことができる。図1に示すように、ヘッド部分136は、スプライン付きヘッド部分である。様々な非限定的な実施形態では、適切なブラインドファスナー設置ツールを使用することにより、ヘッド部分136に対して係合することができ、ピン120に対して回転駆動(例えば、捩り)力を印加し得るのと同時に、軸線方向力(例えば、直交方向の力)を印加することができ、これにより、スリーブ102に対しての係合を維持することができる。ブラインドファスナー設置ツールは、ピン120の回転駆動時にスリーブ102を静止状態に保持するように構成することができる。様々な非限定的な実施形態では、ブラインドファスナー設置ツールは、スリーブ102に形成された凹所に対して強制的に接触することにより、スリーブ102の全体的に円滑な上面に対して強制的に接触してその上面を変形させ、ブラインドファスナー設置ツールがスリーブ102の回転を阻止するよう、設置プロセスと同時に凹所を形成するように構成することができる。
【0031】
様々な非限定的な実施形態では、図1に示すように、第一ピン端部128は、フランジ部分138と、ヘッド部分136とフランジ部分138との中間に位置したブレークネック溝140と、を含むことができる。フランジ部分138は、ピン120が所定距離を超えてスリーブキャビティ110内へと移動することを阻止するように構成することができる。ブレークネック溝140は、ヘッド部分136に対して印加された捩り剪断力に応答して破断するように構成することができる。
【0032】
シャンク122は、ネジ山126を含み、様々な非限定的な実施形態では、任意選択的に、後述するように、第一シャンク領域132をさらに含む。様々な非限定的な実施形態では、第一シャンク領域132は、ネジ山126と第一ピン端部128との中間に位置することができる。特定の非限定的な実施形態では、第一シャンク領域132は、実質的に円筒形状を有することができる。ネジ山126は、右ネジ又は左ネジとすることができる。ネジ山126は、例えば、正方形ネジ山、台形ネジ山、バットレスネジ、別のネジ山タイプ、又は、ネジ山タイプどうしの組合せ、とすることができる。様々な非限定的な実施形態では、ネジ山126は、例えば、TAPTITE(登録商標)ファスナー(ロードアイランド州ミドルタウン所在のREMINC社から入手可能)のネジ山、又は他のネジ山形成ネジ山タイプなどの、ネジ山形成ネジ山とすることができる。ネジ山形成ネジ山は、スリーブ102の第二内面114に対して係合し、その第二内面上にネジ山を形成することができる。ネジ山126は、スリーブ102が膨張したとしてもその膨張を最小限に抑えつつ第二内面114上にネジ山を形成するために、ネジ山ストリッピングトルクに関して適切な形成トルクを受領することができ、これにより、流体密封シールを形成することができる。
【0033】
様々な非限定的な実施形態では、スリーブ102は、全体的に管形状とすることができる。例えば、第一内面112と、第二内面114と、存在する場合には第三内面116とは、実質的に管状かつ円筒状とすることができる。特定の非限定的な実施形態では、第一内面112は、第一内径φ1を有することができ、第二内面114は、第二内径φ2を有することができる。第一内径φ1は、第二内径φ2よりも小さなものとすることができる。様々な非限定的な実施形態では、第二内径φ2は、ネジ山126の主要直径φ3以上であり、第一内径φ1は、主要直径φ3よりも大きなものとすることができる。特定の非限定的な実施形態では、第二内径φ2は、ネジ山126の主要直径φ3よりも小さなものとすることができ、第一内径φ1は、主要直径φ3よりも大きなものとすることができる。このようにして、ネジ山126は、第一スリーブ端部104を容易に通過することができ、ブラインドファスナー100の組立を容易なものとし、これとともに、ファスナーを設置するために、ネジ山126を、第二内面114に対して強制的に係合することができる。様々な非限定的な実施形態では、ネジ山126の主要直径φ3は、0.06インチ~4インチ(0.1524cm~10.16cm)の範囲とすることができる。本明細書で使用した際には、「主要直径」とは、ネジ山126のネジ山頂に対してちょうど接触する仮想的な同軸円筒の直径を指す。
【0034】
図1において円で囲んだ領域2を示している図2を参照すると、第二内面114は、実質的に管状かつ円滑なものとすることができる。すなわち、第二内面114は、ネジ山が無いものであってもよい(例えば、ピン120との係合前の時点では、スリーブ102の製造時には、第二内面114上には一切のネジ山が形成されていない)。特定の非限定的な実施形態では、第二内面114は、ピン120のネジ山126との位置合わせ及び/又は係合を容易にするための少なくとも部分的なネジ山付き領域(図示せず)と、ピン120のネジ山126による変形を受けることができてネジ山が形成され得る実質的に円滑な領域(例えば、ネジ山を有していない領域であるものの、製造プロセスからのマイクロテクスチャを含んでもよい領域)と、を含むことができる。少なくとも部分的なネジ山付き領域は、実質的に円滑な領域と、第一スリーブ端部104と、の中間に位置することができる。特定の非限定的な実施形態では、ピン120は、スリーブ102のキャビティ110内に配置することができ、ピン120は、第二内面114に少なくとも部分的なネジ山付き領域を形成することができる。ピン120のフランジ部分138がスリーブ102のフランジ部分118に対して強制的に接触した時点で、少なくとも部分的なネジ山付き領域の形成は、停止することができる。その後、フランジ部分138とフランジ部分118とを組み合わせて機械加工することができ、これにより、これらが互いに面一であることを確保することができる。
【0035】
ブラインドファスナー100の設置後における、第二内面114とネジ山126との間における係合長さは、設置されたブラインドファスナー100の所望の流体密封性と所望の機械的強度とを達成しつつブラインドファスナー100の重量を低減するようなサイズとすることができる。係合長さは、第二内面114と、スリーブ102の全長と、ネジ山126の長さと、シャンク122の全長と、に関するサイズを決定することにより、構成することができる。様々な非限定的な実施形態では、係合長さは、ネジ山126の小径の5倍未満とすることができ、例えば、ネジ山126の小径の4倍未満、ネジ山126の小径の2倍未満、ネジ山126の小径の1.1倍未満、又は、ネジ山126の小径未満、とすることができる。特定の非限定的な実施形態では、係合長さは、ネジ山126の小径の少なくとも0.5倍とすることができる、あるいは、少なくともネジ山の小径とすることができる。特定の非限定的な実施形態では、係合長さは、ネジ山126の小径の0.5倍~5倍の範囲とすることができる。他の係合長さは、例えば、ブラインドファスナー100の設置時にスリーブ102上に二つ以上の膨出部分が形成される場合には、望ましいものであり得る。
【0036】
再び図1を参照すると、存在する場合には、第三内面116は、第一内面112と第二内面114との中間に位置することができる。様々な非限定的な実施形態では、第三内面116は、テーパー付き内面である、及び/又は、スリーブ102は、可変の壁厚さを有してもよい。内表面のテーパーのために、及び/又は、可変の壁厚さのために、スリーブキャビティ110の直径は、第二スリーブ端部106へと向けて、軸線方向の長さに沿って、減少することができる。特定の非限定的な実施形態では、図2を参照すると、第三内面116は、0度~6度よりも大きな範囲の角度αで、例えば、ブラインドファスナー100の長手方向軸線Alに対して1度~6度の範囲の角度αで、又はブラインドファスナー100の長手方向軸線Alに対して2度~4度の範囲の角度αで、第二スリーブ端部106へと向けて、テーパー形状を形成している。
【0037】
再び図1を参照すると、スリーブ102の長尺部分108は、第二ピン端部130が第二内面114上にネジ山を形成する際にスリーブ102に対して付与される力に応答して変形を受け、一つの膨出部分又は少なくとも二つの膨出部分を形成するように、構成することができる。例えば、テーパー面、可変の壁厚さ、又は他の特徴点は、スリーブ102上へと膨出部分の形成を開始するための、応力が増大したポイント(例えば、設置時に構造体によって支持されない最も薄い壁厚さ)とすることができ、これにより、形成された膨出部分は、構造体に対して圧縮力を印加する。特定の非限定的な実施形態では、ネジ山が第二内面114上に形成されている際に所望の位置に膨出部分を形成するために、スリーブ102は、機能的な歪み勾配を有して形成することができる。
【0038】
ブラインドファスナー100は、用途に応じて要求されるサイズとすることができる。例えば、ネジ山126の主要直径は、0.06インチ~4インチ(0.1524cm~10.16cm)の範囲とすることができる。様々な非限定的な実施形態では、ブラインドファスナー100は、ANSIネジサイズで4インチ直径~1インチ直径(10.16cm直径~2.54cm直径)の範囲内のサイズを有することができる。ブラインドファスナー100は、構造体の様々な厚さに対応するように構成することができる。例えば、スリーブ102の全長は、構造体の穴内へと設置された時に、第二スリーブ端部106が構造体のブラインドサイドを超えて延びるようなサイズとすることができる。ピン120は、同様に、スリーブ102のサイズに基づいたサイズとすることができる。
【0039】
再び図1を参照すると、ピン120のシャンク122は、ピン120及び/又はブラインドファスナー100の長手方向軸線A1を規定することができる。シャンク122は、シャンク122をスリーブ102に対して保持するために、スリーブ102に対して係合するように構成することができる。シャンク122とスリーブ102との間の係合時には、ピン120の長手方向軸線Alと、スリーブ102の長手方向軸線とは、ブラインドファスナー100の長手方向軸線Alに沿って、実質的に位置合わせすることができる。
【0040】
スリーブ102のスリーブキャビティ110は、ピン120のシャンク122を少なくとも部分的に内部に受領するように構成することができる。例えば、スリーブキャビティ110は、ピン120のシャンク122を少なくとも部分的に受領するのに適した形状を有することができる。第二内面114を含めて、スリーブ102は、シャンク122のネジ山126に対しての強制的な接触に応答して、少なくとも部分的に変形を受けるように構成することができる。例えば、スリーブキャビティ110内への、シャンク122の導入時には及び/又は導入後には、第二内面114の少なくとも一部は、ネジ山126に対しての強制的な接触に応答して、少なくとも部分的に変形を受けることができる(例えば、面上に形成されたネジ山を有することができる)。
【0041】
第二内面114の継続的な変形は、第一スリーブ端部104と第二スリーブ端部106との間の距離を減少させることができ、これにより、スリーブ102の長尺部分108を変形させることができ、長尺部分上に膨出部分を形成することができる(図3及び図5に関して説明するように)。長尺部分108の変形は、膨出部分と第一スリーブ端部104との間において、構造体に対して圧縮力を生成することができ、ブラインドファスナー100を、構造体の穴内へと固定することができる。様々な実施例では、第二内面114の継続的な変形は、構造体の、スリーブ102のフランジ部分118に対向した面に対して、形成された膨出部分を締め付けることができ、これにより、構造体に対して膨出部分を固定することができ、実質的に一貫した均一なクランプ力(例えば、予荷重)を発現させることができる。構造体に対しての、膨出部分のクランプは、ブラインドファスナーと構造体との間に、流体密封シールを提供することができる。
【0042】
様々な非限定的な実施形態では、ピン120は、構造体へのブラインドファスナー100の設置時にピン120からヘッド部分136の全部又は一部を分離するために破断するように構成されたブレークネック溝140(例えば、壊れやすい部分)を含んでもよい。例えば、所望のトルクが達成された後には、ブレークネック溝140は、破断することができる。所望のトルクは、ブラインドファスナー100上に所望の設置力を発現させるために要望されるトルクに、対応することができる。特定の他の非限定的な実施形態では、ピン120は、ブレークネック溝を含まないものの、ピン120のヘッド部分136がブラインドファスナー100の設置時に破断するよう、一つ又は複数の他の特徴物を含むように構成される。様々な非限定的な実施形態では、ピン120は、ブラインドファスナー100の設置時に破断するように構成されたブレークネック溝又は他の特徴物を含んでおらず、ヘッド部分136は、設置後もそのままである。よって、様々な非限定的な実施形態によれば、本開示による複数部材型ファスナーは、ブレークネック溝又は他の特徴物を破断することなく構造体に設置されてもよい、あるいは、ファスナーは、構造体へのファスナーの設置時に破断するブレークネック溝又は他の特徴物を含んでもよい。
【0043】
ブラインドファスナー100は、金属、金属合金、複合材料、又は、他の適切な材料、の少なくとも一つを含むことができる。例えば、様々な非限定的な実施形態では、ブラインドファスナー100は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金、鉄、鉄合金、及び、カーボンファイバ複合材料、の少なくとも一つを含むことができる。ピン120は、第一硬度を有した第一材料を含むことができ、スリーブ102は、第二硬度を有した第二材料を含むことができる。様々な実施形態では、第二硬度は、ネジ山126が、存在するとしてもねじ山126の最小限の変形でもって、スリーブ102の第二内面114を変形させ得るよう、第一硬度よりも小さなものとすることができる。例えば、様々な実施形態では、スリーブ102は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、又は銅合金(例えば、真鍮、青銅)を含むことができ、ピン120は、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金、鉄、又は鉄合金(例えば、鋼、ステンレス鋼)を含むことができる。特定の非限定的な実施形態では、ピン120は、構造体へのブラインドファスナーの設置と同時に、スリーブ102の第二内面114上にネジ山を形成することができ、これにより、ピン120とスリーブ102とを共に効果的にシールする残留圧縮応力を形成する。
【0044】
図3及び図5に示す非限定的な実施形態に示すように、ブラインドファスナー100は、構造体344の穴346内に設置することができる。図示のように、穴346は、第一サイド358(例えば、アクセス可能なサイド)から第二サイド360(例えば、ブラインドサイド)へと、構造体344を貫通して延びることができる。構造体344は、例えば、金属、金属合金、複合材料、又は、他の適切な材料、の少なくとも一つを含むことができる。例えば、特定の非限定的な実施形態では、構造体344は、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金、鉄、鉄合金、及び、カーボンファイバ複合材料、の一つ又は複数を含むことができる。様々な非限定的な実施形態では、ブラインドファスナー100が内部に設置される構造体344は、アルミニウムを含む、及び/又は、例えば7075アルミニウム合金などのアルミニウム合金を含む。様々な実施形態では、本開示によるファスナーが内部に設置され得る構造体は、航空宇宙用の部品又は構造体、自動車用の部品又は構造体、輸送用の部品又は構造体、建築や建設用の部品又は構造体、あるいは、他の部品又は構造体、として構成することができる。
【0045】
特定の非限定的な実施形態では、構造体344は、材料からなる単一層、又は、材料からなる二つ以上の層、を含むことができる。例えば、図3及び図5に示すように、構造体344は、同じ材料であってもよい又は異なる材料であってもよい第一層344a及び第二層344bを含むことができる。第一層344aは、ブラインドファスナー100が取り付けられた時には、第二層344bとヘッド部分136との中間に位置することができる。
【0046】
追加的に、様々な非限定的な実施形態では、第二スリーブ端部106は、穴346に対してのスリーブ102の位置合わせを容易とするサイズで構成することができ、これにより、第二スリーブ端部106は、穴346内へとそして穴346を通して容易に移動することができる。様々な非限定的な実施形態では、フランジ部分118は、スリーブ102が所定距離を超えて穴346内へと移動することを阻止するようなサイズで構成することができる。
【0047】
図3から理解し得るように、スリーブ102の第二スリーブ端部106は、穴346の第一サイド358に対して位置合わせして配置され、その後、第二スリーブ端部106が構造体344の第二サイド360を超えて延びるようにして、穴346を通して挿入された。第二ピン端部130は、スリーブ102のスリーブキャビティ110内へと挿入され、第二内面114に対して強制的に接触され、これにより、図4に詳細に示すように、第二内面114上に少なくとも部分的にネジ山を形成する。図3に示す構成では、長尺部分108は、まだ変形を受けていない。
【0048】
図3及び図5をさらに参照すると、ブラインドファスナーの分野における当業者であれば理解されるように、ブラインドファスナー設置ツールの、ジョー、チャック、ビット、又は他の特徴物は、ピン120のヘッド部分136を強制的に係合することができる。係合時には、ブラインドファスナー設置ツールは、ピン120に対して軸線方向力を印加することができ、第二内面114へと向けてピン120を付勢し、さらに、構造体344へと向けてスリーブ102を付勢する。ブラインドファスナー設置ツールは、また、ピン120のヘッド部分136に対して、長手方向軸線A1まわりの回転駆動力を印加することができる。回転駆動力が印加された際には、ピン120のシャンク122のネジ山126は、第二内面114を変形させることができ、これにより、第二内面114上に、対応するネジ山350を形成する。ピン120がこのように駆動された際には、同じ又は異なるブラインドファスナー設置ツールを、スリーブ102に対して係合させることができ、ピン120の回転駆動につれてスリーブ102が長手方向軸線A1まわりに回転することを阻止することができる。
【0049】
図5を参照すると、ネジ山350が形成されつつ、ピン120が継続して回転駆動された際には、第二スリーブ端部106は、充分な力が得られるまで第一スリーブ端部104へと向けて付勢され、これにより、長尺部分108が変形を受けることで(例えば、座屈)、構造体344の第二サイド360に隣接して長尺部分108上に膨出部分352が形成される。長尺部分108の変形は、膨出部分352と第一スリーブ端部104とによって構造体344に対してクランプ力を印加することができ、これにより、ブラインドファスナー100を構造体344の少なくとも一部に対して固定することができる。このようにして、例えば、構造体344の第一層344a及び第二層344bが一緒に固定され、第一流体密封シール(例えば、液密シール、気密シール、又はそれらの組合せ)を、スリーブ102と構造体344の間に形成することができる。様々な非限定的な実施形態では、長尺部分108は、少なくとも二つの膨出部分を形成するように変形させることができる。例えば、図8に示すように、長尺部分108が変形を受けることで、膨出部分852a及び膨出部分852bが形成されている。
【0050】
図5及び図6に示す構成では、シャンク122のネジ山126は、第二内面112を変形させ、ネジ山350を形成している。第二内面114上に形成されたネジ山350は、ピン120のネジ山126に対して幾何学的に一致することができる。この変形(例えば、塑性変形)に対する反力は、ピン120のネジ山126に対して作用する均一な圧力とすることができ、第二流体密封シールを形成し、これにより、流体がスリーブ102のスリーブキャビティ110を通して漏洩することを防止することができる。この均一な圧力は、また、ブラインドファスナー100の振動誘発性の緩みに対する抵抗性を提供することができる。
【0051】
追加的に、図5に示すように、構造体344の第一層344aと第二層344bとの間に存在し得るあらゆる隙間が減少し、ピン120は、ブラインドファスナー設置ツールがピン120に対して印加した力の結果として、構造体344内への設置後には、ブレークネック溝140のところで破断されている。代替的には、ピン120は、構造体344への設置後に破断されなくてもよい(図示せず)。
【0052】
例えば図3及び図5に示すような設置プロセスは、構造体内へのブラインドファスナー100の設置と同時に、スリーブ102の第二内面114上にネジ山350を形成することができる。特定の非限定的な実施形態では、第二内面114のネジ山350は、ブラインドファスナー100の組立時に少なくとも部分的に形成することができ、これにより、ピン120及びスリーブ102が互いにロックされることで、構造体内へのブラインドファスナー100の設置を容易とすることができる。その後、部分的に形成されたネジ山350の形成は、構造体344内へのブラインドファスナー100の設置と同時に、完了させることができる。様々な非限定的な実施形態では、スリーブ102及びピン120は、別の手段によって互いにロックされる、あるいは、互いにロックされずに、ネジ山350は、設置プロセス時にのみ形成される。
【0053】
本開示によるブラインドファスナーの実施形態は、構造体を締結するための方法において使用することができる。図9は、そのような方法の非限定的な実施形態に関するステップを示している。図9に示す方法は、スリーブ102の第二スリーブ端部106が構造体344の第二サイドを超えて延びるようにして、本開示によるブラインドファスナー100の第二スリーブ端部106を、構造体344の穴346内へと挿入すること(ステップ902において)を、含むことができる。第二スリーブ端部106を構造体344内へと挿入した後に、ピン120のネジ山126を、ピン120のヘッド部分136に対して軸線方向力を印加することによって、スリーブ102の第二内面114に対して強制的に接触させることができる、及び/又は、ピン120のヘッド部分136に回転駆動力を印加することによってピン120を回転駆動することができる(ステップ904において)。ピン120のネジ山126は、スリーブ102の第二内面114を変形させることができ、これにより、第二内面114上にネジ山を形成することができる(ステップ906において)。その後、スリーブ102の長尺部分108を、膨出部分を形成するように変形させることができ、これにより、ピン120とスリーブ102との間に、及び/又は、スリーブ102と構造体344との間に、流体密封シールを形成することができる(ステップ908において)。特定の非限定的な実施形態では、第二内面114上のネジ山と、スリーブ102の長尺部分108上の膨出部分とは、同時に形成することができる。様々な非限定的な実施形態では、ピン120上のブレークネック溝140を破断することによって、ヘッド部分136を除去することができる(ステップ910において)。
【0054】
本開示による実施形態の様々な態様は、以下の番号付きの条項に列挙された態様を含むが、これらに限定されるものではない。
条項1.
ブラインドファスナーであって、
スリーブであり、
第一内面を含む第一スリーブ端部と、
第二内面を含む第二スリーブ端部と、
第一スリーブ端部から第二スリーブ端部へと延びる長尺部分と、を含み、
ここで、第一内面と第二内面とは、第一スリーブ端部から、第二スリーブ端部に向けて又は第二スリーブ端部へと、スリーブ内を延びるスリーブキャビティの領域を規定している、スリーブと、
スリーブキャビティによって少なくとも部分的に受領されるように構成されたピンであり、
トルクを受領するように構成された第一ピン端部と、
第二ピン端部と、
第一ピン端部から第二ピン端部へと延びるシャンクであり、ネジ山を含み、ネジ山は、スリーブの第二内面上にネジ山を形成するように構成されている、シャンクと、を含むピンと、を含む、ブラインドファスナー。
条項2.
第一ピン端部は、ヘッド部分を含み、ヘッド部分は、実質的に平坦な側面、リブ、スプライン、凹所、ローレット、耳たぶ、穴、凹型ソケット、及び、タブ、の少なくとも一つを含む、条項1に記載のブラインドファスナー。
条項3.
第一ピン端部は、ピンが所定距離を超えてスリーブキャビティ内を移動することを阻止するように構成されたフランジ部分を含む、条項1又は2に記載のブラインドファスナー。
条項4.
スリーブは、第一内面と第二内面との中間に位置した第三内面を含み、第三内面は、テーパー形状とされている、条項1~3のいずれか一項に記載のブラインドファスナー。
条項5.
第三内面は、ブラインドファスナーの長手方向軸線に対して、0度~6度よりも大きな範囲の角度でテーパー形状とされている、条項4に記載のブラインドファスナー。
条項6.
スリーブキャビティの直径は、第二スリーブ端部へと向けて、軸線方向において、スリーブの長さに沿って減少している、条項1~5のいずれか一項に記載のブラインドファスナー。
条項7.
第二内面の内径は、第一内面の内径よりも小さく、さらに、シャンクのネジ山の主要直径よりも小さい、条項1~6のいずれか一項に記載のブラインドファスナー。
条項8.
第二内面は、実質的に管状である、条項1~7のいずれか一項に記載のブラインドファスナー。
条項9.
第二内面は、少なくとも部分的なネジ山付き領域と、実質的に円滑な領域と、を含み、少なくとも部分的なネジ山付き領域は、実質的に円滑な領域と、第一スリーブ端部と、の中間に位置している、条項1~8のいずれか一項に記載のブラインドファスナー。
条項10.
スリーブの長尺部分は、第二ピン端部が第二内面上にネジ山を形成するとともに長尺部分を圧縮することに応答して、膨出形状へと変形するように構成されている、条項1~9のいずれか一項に記載のブラインドファスナー。
条項11.
ピンは、第一ピン端部と第二ピン端部との中間に位置したブレークネック溝を含み、ブレークネック溝は、ブラインドファスナーの設置時に破断するように構成されている、条項1~10のいずれか一項に記載のブラインドファスナー。
条項12.
ピンは、第一硬度を有した第一材料を含み、スリーブは、第二硬度を有した第二材料を含み、第二硬度は、第一硬度よりも小さい、条項1~11のいずれか一項に記載のブラインドファスナー。
条項13.
第二内面にネジ山を形成した後には、ピンとスリーブとの間に、流体密封シールが形成される、条項1~12のいずれか一項に記載のブラインドファスナー。
条項14.
第二スリーブ端部は、閉塞されている、条項1~13のいずれか一項に記載のブラインドファスナー。
条項15.
第一スリーブ端部は、スリーブが所定距離を超えて構造体の穴を通して移動することを阻止するように構成されたスリーブフランジ部分を含む、条項1~14のいずれか一項に記載のブラインドファスナー。
条項16.
第一スリーブ端部は、トルクを受領するように構成されている、条項1~15のいずれか一項に記載のブラインドファスナー。
条項17.
ブラインドファスナーは、構造体の穴内へと設置されるように構成され、構造体は、航空宇宙用の部品又は構成要素、自動車用の部品又は構成要素、輸送用の部品又は構成要素、及び、建築や建設用の部品又は構成要素、の少なくとも一つとして構成されている、条項1~16のいずれか一項に記載のブラインドファスナー。
条項18.
シャンクのネジ山の主要直径は、0.06インチ~4インチ(0.1524cm~10.16cm)の範囲である、条項1~17のいずれか一項に記載のブラインドファスナー。
条項19.
条項1~18のいずれか一項に記載のブラインドファスナーを含む構造体であって、構造体は、航空宇宙用の部品又は構成要素、自動車用の部品又は構成要素、輸送用の部品又は構成要素、及び、建築や建設用の部品又は構成要素、の少なくとも一つとして構成されている、構造体。
条項20.
締結するための方法であって、
条項1~18のいずれか一項に記載されたブラインドファスナーのスリーブの第二スリーブ端部を、構造体の穴内へと挿入することと、
スリーブの第二内面に対して、ピンのシャンクのネジ山を強制的に接触させ、これにより、第二内面を変形させて、第二内面上にネジ山を形成することと、
スリーブの長尺部分を変形させて、長尺部分上に膨出部分を形成することと、を含む、方法。
条項21.
締結するための方法であって、
ブラインドファスナーを、
スリーブであり、
第一内面を含む第一スリーブ端部と、
第二内面を含む第二スリーブ端部と、
第一スリーブ端部から第二スリーブ端部へと延びる長尺部分と、を含み、
ここで、第一内面と第二内面とは、第一スリーブ端部から、第二スリーブ端部に向けて又は第二スリーブ端部へと、スリーブ内を延びるスリーブキャビティの領域を規定している、スリーブと、
スリーブキャビティによって少なくとも部分的に受領されるように構成されたピンであり、
第一ピン端部と、
第二ピン端部と、
第一ピン端部から第二ピン端部へと延びるシャンクであり、ネジ山を含むシャンクと、を含むピンと、を含むものとしたときに、ブラインドファスナーのスリーブの第二スリーブ端部を、構造体の穴内へと挿入することと、
スリーブの第二内面に対して、ピンのシャンクのネジ山を強制的に接触させ、これにより、第二内面を変形させて、第二内面上にネジ山を形成することと、
スリーブの長尺部分を変形させて、長尺部分上に膨出部分を形成することと、を含む、方法。
条項22.
第一ピン端部に対して回転駆動力を印加することにより、第二内面に対してシャンクのネジ山を強制的に接触させることを、さらに含む、条項21に記載の方法。
【0055】
本開示では、他のことが明記されない限り、すべての数値パラメータは、すべての場合において、「約」という用語によって前置きされて改変されるものとして理解されるべきであり、数値パラメータは、パラメータの数値を決定するために使用される基礎となる測定技術に関しての、固有の変動特性を有している。少なくとも、そして均等論の適用を特許請求の範囲に限定しようとするものではなく、本明細書に記載された各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の桁数を考慮して、通常の丸め技術を適用することによって、解釈されるべきである。
【0056】
また、本明細書に記載された任意の数値範囲は、記載した範囲内に包含されるすべての部分範囲を含む。例えば、「1~10」という範囲は、記載された1という最小値と、記載された10という最大値と、の間の(及びそれらを含む)すべての部分範囲を含む、すなわち、1以上の最小値と10以下の最大値とを有したすべての部分範囲を含む。本明細書に記載された任意の最大数値限定は、そこに包含されるすべてのより小さな数値限定を含むことを意図しており、本開示に記載された最小数値限定は、そこに包含されるすべてのより大きな数値限定を含むことを意図している。したがって、出願人は、明示的に記載された範囲内に包含される任意の部分範囲を明示的に記載するために、特許請求の範囲を含めた本開示を補正する権利を留保する。すべてのそのような範囲は、本質的に本開示に記載されている。
【0057】
本明細書で使用した際には、「一つの(a)」、「一つの(an)」、及び「その(the)」という文法的冠詞は、特定の実例において「少なくとも一つの」又は「一つ又は複数の」が明確に使用されている場合であっても、他のことが記載されていない限り、「少なくとも一つの」又は「一つ又は複数の」を含むことを意図している。よって、上記の文法的冠詞は、本明細書では、特定の識別された構成要素の一つ又は二つ以上(すなわち、「少なくとも一つ」)を指すために使用される。さらに、文脈から他の意味に解釈すべき場合を除いて、単数形名詞の使用は、複数形を含み、複数形名詞の使用は、単数形を含む。
【0058】
当業者であれば、本明細書で説明した、ブラインドファスナー、ブラインド締結システム、構造体、方法、操作/作用、及び対象物、並びにそれらに付随する説明が、概念を明確にするために例示として使用されていること、そして、様々な構成的改変が想定されていることを、認識するであろう。その結果、本明細書で使用した際には、記載した特定の実施例/実施形態は、及び付随する説明は、それらのより一般的な分類の代表であることを意図している。一般に、任意の特定の実施例を使用することは、その分類の代表であることを意図しており、特定の構成要素、デバイス、装置、動作/作用、及び対象物が含有されていないことを、限定として解釈されるべきではない。本開示は、本開示の様々な態様及び/又はその潜在的な用途を例示する目的で、様々な特定の態様に関する説明を提供するけれども、当業者であれば、変形及び改変が行われることは、理解されよう。したがって、本明細書で説明する一つ又は複数の発明は、少なくともそれらが請求されているのと同じくらいに広範であること、そして、本明細書で提供する特定の例示的な態様によってより狭く規定されないことは、理解されるべきである。
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