(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 16/04 20090101AFI20240829BHJP
H04W 28/084 20230101ALI20240829BHJP
H04W 72/0457 20230101ALI20240829BHJP
H04W 88/08 20090101ALI20240829BHJP
【FI】
H04W16/04
H04W28/084
H04W72/0457
H04W88/08
(21)【出願番号】P 2023046887
(22)【出願日】2023-03-23
(62)【分割の表示】P 2019138894の分割
【原出願日】2019-07-29
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 晴久
(72)【発明者】
【氏名】塚本 優
(72)【発明者】
【氏名】難波 忍
(72)【発明者】
【氏名】福田 隼斗
(72)【発明者】
【氏名】寺部 滋郎
【審査官】田畑 利幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0123963(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0064031(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0085493(US,A1)
【文献】特開2016-082519(JP,A)
【文献】Samsung,"Slicing: Requirements for RAN",3GPP TSG-RAN WG2 NR_AH_2017_01 R2-1700380,[online],2017年01月06日,pages 1-4,[retrieved on 2023-02-02], <URL: https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_AHs/2017_01_NR/Docs/R2-1700380.zip>
【文献】塚本 優,5Gの多様なサービスに応じた基地局機能分割と配置を有するRANスライシングアーキテクチャ,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,Vol.118,No.208,pp.69-74,CS2018-40-CS2018-55,通信方式
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
H04L 12/50-12/66
H04L 45/00-49/9057
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスライスのそれぞれに対して、スライスごとのスケジューリングに用いられる無線リソースを割り当てる制御装置であって、
前記複数のスライスのそれぞれに対して無線リソースの仮割り当て量を予め決定する決定手段と、
各スライスに対して定められたサービス品質の目標値に基づいて、前記仮割り当て量を上限として前記複数のスライスのそれぞれに対して無線リソースを割り当てる第1割当手段と、
前記複数のスライスのうち、前記目標値が満たされることなく前記第1割当手段により割り当てられた無線リソースの量が前記上限に達した1つ以上のスライスに対して、前記目標値が満たされたスライスに対して割り当てられなかった余剰の無線リソースを配分する第2割当手段と、
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記目標値は、各スライスのSLA(サービスレベルアグリーメント)で定められていることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第1割当手段は、前記複数のスライスのそれぞれについて、予測通信容量が当該スライスに対して定められた前記目標値を満たすまで、前記仮割り当て量を上限として当該スライスに対して無線リソースを割り当てる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記予測通信容量は、スライスごとに、当該スライスに割り当てられる無線リソースの量と当該スライスについての通信品質とに基づいて求められる
ことを特徴とする請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記決定手段は、予め定められた配分率に従って、前記複数のスライスに対する前記仮割り当て量を決定する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記第1割当手段は、スライスごとに、当該スライスに割り当てる無線リソースの量を増加させる間に、当該スライスに割り当てた無線リソースの量が前記上限である前記仮割り当て量に達するか、又は、前記予測通信容量が前記目標値に達すると、当該スライスに対する無線リソースの割り当てを停止し、
前記余剰の無線リソースは、前記複数のスライスに対する前記仮割り当て量の総量から、前記第1割当手段により前記複数のスライスに対して割り当てられた無線リソースの総量を差し引いた量の無線リソースである
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の制御装置。
【請求項7】
前記第2割当手段は、前記1つ以上のスライスについて前記目標値に対する前記予測通信容量の満足度が最大化されるように、前記1つ以上のスライスに対して前記余剰の無線リソース
を配分する
ことを特徴とする請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記1つ以上のスライスにそれぞれ対応するコスト関数であって、対応するスライスについての前記目標値に対する前記予測通信容量の割合が所定値に近いほど出力値が小さくなるコスト関数を用いて、評価関数が定義され、
前記第2割当手段は、前記評価関数の出力値を最小化するように、前記1つ以上のスライスに対して前記余剰の無線リソースを配分する
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記1つ以上のスライスのそれぞれに対応する前記コスト関数に対して前記目標値に応じた重み付けが行われ、
前記評価関数は、前記1つ以上のスライスにそれぞれ対応する前記重み付けが行われたコスト関数の総和として定義される
ことを特徴とする請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記第2割当手段は、前記1つ以上のスライスのうち、予め設定された優先度が高いスライスから順に、各スライスに対して、前記予測通信容量が前記目標値を満たすように前記余剰の無線リソースから無線リソースを割り当てる
ことを特徴とする請求項6に記載の制御装置。
【請求項11】
前記第2割当手段は、前記優先度が高いスライスから順に、前記余剰の無線リソースが無くなるまで、各スライスに対して前記余剰の無線リソースからの無線リソースの割り当てを行う
ことを特徴とする請求項10に記載の制御装置。
【請求項12】
前記複数のスライスのそれぞれについての通信品質が高いほど前記優先度が高くなるように、前記複数のスライスに対する前記優先度を設定する設定手段を更に備える
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の制御装置。
【請求項13】
前記複数のスライスのそれぞれについての許容遅延が小さいほど前記優先度が高くなるように、前記複数のスライスに対する前記優先度を設定する設定手段を更に備える
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の制御装置。
【請求項14】
前記複数のスライスのそれぞれについての、過去の複数の所定期間における単位無線リソースあたりの予測通信容量の平均値に対する、直前の前記所定期間における単位無線リソースあたりの予測通信容量の比率が大きいほど、前記優先度が高くなるように、前記複数のスライスに対する前記優先度を設定する設定手段を更に備える
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の制御装置。
【請求項15】
前記複数のスライスのそれぞれについて、前記目標値に対する、前記第1割当手段による割当終了時の前記予測通信容量の比率が小さいほど、前記優先度が高くなるように、前記複数のスライスに対する前記優先度を設定する設定手段を更に備える
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の制御装置。
【請求項16】
前記第2割当手段は、前記1つ以上のスライスに対してそれぞれ定められた重みに応じて、前記1つ以上のスライスに対して前記余剰の無線リソースを配分する
ことを特徴とする請求項6に記載の制御装置。
【請求項17】
前記複数のスライスのそれぞれについて、過去の複数の所定期間における単位無線リソースあたりの予測通信容量の平均値に対する、直前の前記所定期間における前記単位無線リソースあたりの予測通信容量の比率を、当該スライスに対する前記重みとして設定する設定手段を更に備える
ことを特徴とする請求項16に記載の制御装置。
【請求項18】
前記複数のスライスのそれぞれについて、前記目標値に対する、前記第1割当手段による割当終了時の前記予測通信容量の比率の逆数を、当該スライスに対する前記重みとして設定する設定手段を更に備える
ことを特徴とする請求項16に記載の制御装置。
【請求項19】
前記第2割当手段は、前記1つ以上のスライスのそれぞれに対して
、予め定められた配分率に従って前記余剰の無線リソースの仮割り当てを行い、かつ、前記予測通信容量が前記目標値を満たすまで、当該仮割り当てが行われた無線リソースの量を上限として当該スライスに対して無線リソースを割り当てる処理を、前記余剰の無線リソースが無くなるまで繰り返す
ことを特徴とする請求項6に記載の制御装置。
【請求項20】
前記決定手段は、前記第1割当手段による割り当てに使用可能な無線リソースの総量を
、予め定められた配分率に従って各スライスに配分するように、各スライスの仮割り当て量を決定する
ことを特徴とする請求項1から19のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項21】
前記予め定められた配分率は、前記複数のスライスのそれぞれに対する前記目標値の比として定められる
ことを特徴とする請求項
5、19及び20のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項22】
前記第1割当手段は、対応するスライスを使用する無線端末ごとのSINR(信号対干渉及び雑音比)を前記通信品質として使用して、前記予測通信容量を求める
ことを特徴とする請求項4に記載の制御装置。
【請求項23】
前記目標値は、各スライスのSLA(サービスレベルアグリーメント)で定められたスループットに対応する目標値である
ことを特徴とする請求項1から22のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項24】
前記第1及び第2割当手段は、前記複数のスライスにそれぞれ対応する複数のスケジューラに対して無線リソースの割り当てを行い、
前記複数のスケジューラのそれぞれは、1つの無線ユニットによって形成される同一のセル内で、所定期間ごとに、前記第1及び第2割当手段により割り当てられた無線リソースを用いて、対応するスライスを使用する無線端末に対して無線リソースを割り当てるためのスケジューリングを行う
ことを特徴とする請求項1から23のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項25】
前記複数のスケジューラは、1つまたは複数のDU(Distributed unit)に配置され、
前記無線ユニット及び前記1つまたは複数のDUは、基地局システムを構成し、
前記無線ユニットは、前記基地局システムのアンテナサイトに配置され、
前記制御装置は、前記基地局システムと通信可能に接続される
ことを特徴とする請求項24に記載の制御装置。
【請求項26】
複数のスライスのそれぞれに対して、スライスごとのスケジューリングに用いられる無線リソースを割り当てる制御装置によって実行される制御方法であって、
前記複数のスライスのそれぞれに対して無線リソースの仮割り当て量を予め決定する決定工程と、
各スライスに対して定められたサービス品質の目標値に基づいて、前記仮割り当て量を上限として前記複数のスライスのそれぞれに対して無線リソースを割り当てる第1割当工程と、
前記複数のスライスのうち、前記目標値が満たされることなく前記第1割当工程で割り当てられた無線リソースの量が前記上限に達した1つ以上のスライスに対して、前記目標値が満たされたスライスに対して割り当てられなかった余剰の無線リソースを配分する第2割当工程と、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項27】
制御装置が備えるコンピュータに、請求項26に記載の制御方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークスライシングを適用した基地局システムのための制御装置及び制御方法、並びに当該制御装置用のプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
第5世代(5G)移動通信システムでは、サービスタイプが大容量(eMBB:enhanced Mobile BroadBand)、超低遅延(URLLC:Ultra-Reliable and Low Latency Communications)、及び多接続(mMTC:massive Machine Type Communications)の三つに大別されており、それぞれのサービス要求が異なる。このように要件が異なるサービスを経済的かつ柔軟に提供するために、ネットワークスライシングが検討されている。
【0003】
また、3GPP(登録商標) Release15として初版仕様が策定された5Gでは、DU(Distributed Unit)と称される論理ノードとCU(Central Unit)と称される論理ノードとで基地局を構成し、DUとCUとの間で基地局の機能分割を行うことが採用されている。DUには、基地局機能(下位レイヤから順にRF(Radio Frequency layer),PHY(Physical layer),MAC(Media Access Control layer),RLC(Radio Link Control layer),PDCP(Packet Data Convergence Protocol layer))のうち、下位レイヤの機能が配置され、CUには、その他の上位レイヤの機能が配置される。また、CU及びDUに加えて、RF及びPHY等の機能を有する無線ユニット(RU:Radio Unit)を設けることもできる。
【0004】
このようにDU及びCUに機能分割が行われた基地局システムに対して上述のネットワークスライシングが適用された場合、各スライス内の無線端末に対する無線リソースのスケジューリングを行うスケジューラが、スライスごとに対応するDUに配置される。1つのRUを複数のDUが共有する構成では、複数のスケジューラは、同じ基地局エリア内で共通の無線リソースを用いてスケジューリングを行うことになるため、スライス間で無線リソースのアイソレーションを実現する必要がある。また、スライスごとのスケジューリングに用いられる無線リソースを各スライス(各スケジューラ)に対して割り当てる際に、各スライスのSLA(サービスレベルアグリーメント)の満足度を高める(各スライスが提供するサービス品質を高める)ことが求められる。
【0005】
非特許文献1では、ネットワークスライシングを適用した場合に、スライス間のアイソレーションを確保するように、予め定められた配分率に基づいて、スケジューリング用の無線リソースを各スライスに配分する技術が提案されている。また、非特許文献2では、ネットワークスライシングを適用した場合に、各スライスのSLAの満足度を高めるように、スケジューリング用の無線リソースを各スライスに配分する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】A. Ksentini and N. Nikaein "Toward Enforcing Network Slicing on RAN:Flexibility and Resources Abstraction," IEEE Communications Magazine, Jun. 2017, vol. 55, issue 6, pp. 102-108.
【文献】B. Khodapanah, A. Awada, I. Viering, D. Oehmann, Meryem Simsek, and G. P. Fettweis, "Fulfillment of Service Level Agreements via Slice-Aware Radio Resource Management in 5G Networks," 2018 IEEE 87th Vehicular Technology Conference (VTC Spring), pp. 1-6, Jun. 2018.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述の従来技術では、アイソレーションを確保しながらSLAの満足度を高めるように、スケジューリング用の無線リソースを各スライスに配分する(割り当てる)ことはできていない。例えば、非特許文献2では、複数のスライスのSLAの満足度を一律に高めようとして、無線環境が悪い無線端末が存在するスライスに対して無線リソースを割り当てすぎることで、他のスライスに対して割り当てるべき無線リソースが不足する状況が生じうる。この場合、スライス間のアイソレーションが確保できなくなる。
【0008】
また、DU及びCUに機能分割が行われた基地局システムに対してネットワークスライシングが適用された場合、それぞれ異なるスライスに対応する複数のスケジューラが、それぞれ異なる場所(サイト)に配置される可能性がある。しかし、上述の従来技術は、複数のスケジューラがそれぞれ異なる場所に配置されることを想定しておらず、そのような場合には適用できない。
【0009】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。本発明は、ネットワークスライシングが適用された基地局システムにおいて、スライス間のアイソレーションを確保しながら、各スライスが提供するサービス品質を高めるように、各スライスに無線リソースの配分を行う技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様の係る制御装置は、複数のスライスのそれぞれに対して、スライスごとのスケジューリングに用いられる無線リソースを割り当てる制御装置であって、前記複数のスライスのそれぞれに対して無線リソースの仮割り当て量を予め決定する決定手段と、各スライスに対して定められたサービス品質の目標値に基づいて、前記仮割り当て量を上限として前記複数のスライスのそれぞれに対して無線リソースを割り当てる第1割当手段と、前記複数のスライスのうち、前記目標値が満たされることなく前記第1割当手段により割り当てられた無線リソースの量が前記上限に達した1つ以上のスライスに対して、前記目標値が満たされたスライスに対して割り当てられなかった余剰の無線リソースを配分する第2割当手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ネットワークスライシングが適用された基地局システムにおいて、スライス間でアイソレーションを確保しながら、各スライスが提供するサービス品質を高めるように、各スライスに無線リソースの配分を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】基地局システムにおけるCU、DU及びRUの機能構成例を示す図。
【
図4】RANコントローラのハードウェア構成例を示すブロック図。
【
図5】RANコントローラの機能構成例を示すブロック図。
【
図6】複数のスライスへの無線リソースの割り当てのタイミングの例を示す図。
【
図7】予測スループットを求めるためのAMC(Adaptive Modulation and Coding)マッピングテーブルの例を示す図。
【
図8】第1及び第2割当処理による無線リソースの割り当て結果の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。
【0014】
[第1実施形態]
<基地局の機能分割>
基地局(基地局システム)は、一般に、下位レイヤの機能から上位レイヤの機能まで複数の機能(RF,...,PDCP)を有し、これらの機能はDU及びCUに分割して配置される。
【0015】
図1は、基地局のそれぞれ異なるレイヤの複数の機能を、CU、DU及びRUに分割した構成の一例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態では、CU及びDUに加えて、RF及びPHY等の機能を有するRUを設ける。
図1の基地局(基地局システム)は、CU10、DU20、及びRU30で構成され、CU10は、コアネットワーク(5GC(5G Core)、EPC(Evolved Packet Core)等)に接続され、DU20は、CU10とRU30との間に接続される。
【0016】
DU20は、基地局の機能のうちの、無線端末に無線リソースを割り当てるためのスケジューリングを行うスケジューリング機能を少なくとも有する。CU10は、基地局の機能のうち、接続されたDU20が有する機能よりも上位レイヤの機能を有する。また、RU30は、基地局の機能のうちの、電波の送受信機能に相当するRFの機能を少なくとも有する。
【0017】
図1の構成例では、DU20は、スケジューリング機能に相当するHigh MACの機能だけでなく、RLC及びLow MACの機能も有しており、CU10は、DU20が有する機能より上位レイヤの機能である、SDAP(Service Data Adaptation Protocol layer)/RRC(Radio Resource Control layer)及びPDCPの機能を有している。また、RU30は、電波の送受信機能に相当するRFの機能だけでなく、PHYの機能も有している。なお、PHYの一部の機能のみをRU30に実装し、PHYの残りの機能をDU20に実装してもよい。
【0018】
以下では、
図1に示される機能構成を一例として用いて、本実施形態に係る基地局システムの構成及び動作、並びに当該基地局システムの制御について具体的に説明する。
【0019】
<基地局システムの構成>
図2は、サービスタイプとしてmMTC、URLLC及びeMBBに対応するスライス1~3が生成された、基地局システムの基本的な構成例を示す図である。なお、CU10及びDU20は、RAN(無線アクセスネットワーク)コントローラ40によって制御及び管理がなされ、各スライスは、RANコントローラ40によって生成される。
【0020】
基地局システムは、複数のCU10(10a,10b,10c)、複数のDU20(20a,20b,20c)、及び1つのRU30で構成されている。CU10a及びDU20aはスライス1に、CU10b及びDU20bはスライス2に、CU10c及びDU20cはスライス3に対応している。このように、複数のCU10は、それぞれ異なるスライスに対応しており、当該複数のCU10に対応する複数のDU20も同様である。なお、複数のCU10は、それぞれ1つ以上のスライスに対応していてもよい。また、複数のDU20は、それぞれ1つ以上のスライスに対応していてもよい。
【0021】
DU20は、基地局の機能のうちの無線リソースのスケジューリング機能(例えば、High MACの機能)を少なくとも有する。DU20は、それぞれ、アンテナサイトに配置されるか、又はアンテナサイトとデータセンタとの間(の地方収容局)に配置される。
【0022】
CU10は、それぞれが、DU20のうちの異なる1つのDUとコアネットワークとの間に配置され、基地局の機能のうち、接続された当該1つのDUが有する機能よりも上位レイヤの機能(例えば、SDAP/RRC及びPDCPの機能)を有する。
図2の例では、CU10a,10b,10cは、それぞれ、異なる1つのDU20a,20b,20cと接続される。
【0023】
単一のRU30は、基地局の機能のうちの電波の送受信機能(例えば、RFの機能)を少なくとも有する。RU30は、アンテナサイトに配置され、複数のDU20と接続される。これにより、複数のDU20を介して提供される複数のスライス1~3が、当該RU30によって形成される同一のセル内で提供される。
【0024】
このように、本実施形態の基地局システムは、スライス1~3のそれぞれに対応するCU10及びDU20と、複数のDU20と接続され、かつ、アンテナサイトに配置された単一のRU30とで構成されている。即ち、基地局システムは、スライスごとにRUを設けずに、複数のDU及びCUを単一のRUに対して接続する(即ち、複数のDU及びCUに対してRUを共通化する)構成を有している。これにより、単一のRUで複数のサービス(スライス)を収容可能にしている。
【0025】
本実施形態では、コアネットワーク又はRANに、RANの機能を制御する制御装置であるRANコントローラ40が設けられる。RANコントローラ40は、RAN上の基地局システムと通信可能に接続される。RANコントローラ40は、RAN上の複数のCU10(10a,10b,10c)及び複数のDU20(20a,20b,20c)に対して、サービス要件に対応したスライス1~3を設定(生成)する。なお、本実施形態においてRANコントローラ40は、複数のスライスのそれぞれに対して、スライスごとのスケジューリングに用いられる無線リソースを割り当てる制御装置の一例として機能する。
【0026】
図2の構成例では、一例として5Gのネットワーク構成を想定しており、5GC CPF(5GC Control Plane Function)60は、5Gコアネットワークの制御処理機能群である。5GC UPF(5G Core User Plane Function)50(50a,50b,50c)は、5Gコアネットワークのデータ処理機能群であり、スライスごとに設けられる。5GC UPF50aはスライス1に、5GC UPF50bはスライス2に、5GC UPF50cはスライス3に対応している。
【0027】
図2の構成例では、スライス(サービス)に応じて、対応するCU10及びDU20の配置が異なっている。CU10及びDU20の配置に依存して、基地局間連携(セル間協調)の性能、アプリケーションに与える遅延量、及びネットワークの利用効率等が異なる。このため、
図2の構成例では、スライス(サービス)ごとに適したCU10及びDU20の配置がなされている。
【0028】
スライス1(mMTCスライス)については、CU10aは、コアネットワークが配置されているデータセンタに配置され、DU20aは、アンテナサイトに配置される。これは、統計多重効果によりデータセンタのコンピューティングリソースを効率的に利用可能にするためである。
【0029】
スライス2(URLLCスライス)については、CU10bは、地方収容局に配置され、DU20bは、アンテナサイトに配置される。これにより、MEC(Multi-Access Edge Computing)を導入可能にし、低遅延化が実現される。本実施形態では、CU10bは、エッジサイトに配置された、低遅延サービスを提供するためのアプリケーションを有するエッジサーバであるEdge App(Edge Application Server)70と接続されている。なお、Edge App70が配置されるエッジサイトは、CU10bが配置される地方収容局であってもよい。
【0030】
スライス3(eMBBスライス)については、CU10c及びDU20cのいずれも、地方収容局に配置される。これにより、DU20cを、それぞれ異なるアンテナサイトに配置される複数のRU30と接続可能にしている。
図2の構成例では、DU20cが、それぞれ異なるセルを形成する複数のRU30と接続されており、接続されたRU間のセル間協調(例えば、CoMP(Coordinated Multi-Point Transmission/reception))のための処理を行う。このように、セル間協調を可能にすることで、無線通信品質を向上させることが可能である。
【0031】
図3は、本実施形態に係る基地局システムのより具体的な構成例を示す図である。DU20a,20b,20cは、それぞれ、無線リソースを無線端末に割り当てるためのスケジューリングを行うスケジューラ21a,21b,21cを含んでいる。
図3の構成例では、スライス1,2に対応するスケジューラ21a,21bはアンテナサイトに配置され、スライス3に対応するスケジューラ21cは地方収容局に収容されている。このように、スケジューラ21a,21bとスケジューラ21cとで配置場所が異なっている。
【0032】
スケジューラ21a,21b,21cがそれぞれ含まれるDU20a,20b,20cは、上述のように、共通のRU30に接続されている。スケジューラ21a,21b,21cは、共通のRU30によって形成される同一のセル内で使用可能な共通の無線リソースを用いて、対応するスライスを使用する無線端末に対してスケジューリングを行う。各スケジューラ21a,21b,21cによるスケジューリングに用いられる無線リソースは、予めRANコントローラ40から割り当てられる。
【0033】
<装置構成>
RANコントローラ40は、一例として、
図4に示されるようなハードウェア構成を有する。具体的には、RANコントローラ40は、CPU101、ROM102、RAM103、HDD等の外部記憶デバイス104、及び通信デバイス105を有する。
【0034】
RANコントローラ40では、例えばROM102、RAM103及び外部記憶デバイス104のいずれかに格納された、RANコントローラ40の各機能を実現するプログラムがCPU101によって実行される。なお、CPU101は、ASIC(特定用途向け集積回路)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)等の1つ以上のプロセッサによって置き換えられてもよい。
【0035】
通信デバイス105は、CPU101により制御下で、制御対象のCU10及びDU20等の、外部装置との通信を行うための通信インタフェースである。RANコントローラ40は、それぞれ接続先が異なる複数の通信デバイス105を有していてもよい。
【0036】
なお、RANコントローラ40は、後述する各機能を実行する専用のハードウェアを備えてもよいし、一部をハードウェアで実行し、プログラムを動作させるコンピュータでその他の部分を実行してもよい。また、全機能がコンピュータとプログラムにより実行されてもよい。
【0037】
また、CU10、DU20及びRU30も、
図4に示されるようなハードウェア構成を有していてもよい。ただし、RU30は、通信デバイス105として、各DU20との通信のための通信インタフェースの他に、無線端末との無線通信のための無線通信インタフェースも備えている。
【0038】
図5は、RANコントローラ40の機能構成例を示すブロック図である。本実施形態のRANコントローラ40は、仮割当決定部51、第1割当処理部52、第2割当処理部53、及び割当通知部54を有する。本実施形態では、CPU101による制御プログラムの実行により、CPU101上でこれらの機能部が実現されるが、各機能部を実現する専用のハードウェアが設けられてもよい。なお、
図5には、RANコントローラ40が有する機能のうち、各スケジューラ21に対する無線リソースの割り当て(複数のスライスのそれぞれに対する、スライスごとのスケジューリングに用いられる無線リソースの割り当て)に関連する機能部のみが示されており、それ以外の機能に関連する機能部は省略されている。
【0039】
仮割当決定部51は、各スライスでスケジューリングに使用される無線リソースについてのスライス間のアイソレーションのために、複数のスライスのそれぞれに対する無線リソースの仮割り当てを行う。具体的には、仮割当決定部51は、予め定められた配分率に従って、複数のスライスのそれぞれに対する無線リソースの仮割り当て(仮割り当て量)Rtmpを決定する。仮割当決定部51は、決定した仮割り当てRtmpを、第1割当処理部52へ出力する。
【0040】
第1割当処理部52は、仮割り当てRtmpを上限として、複数のスライスに対して無線リソースの割り当てを行う第1割当処理を行う。第1割当処理部52は、複数のスライスに対して決定した無線リソースの割り当てRisoを、第2割当処理部53へ出力する。
【0041】
第2割当処理部53は、第1割当処理部52による割り当てに使用可能な全無線リソースのうち、第1割当処理部52により割り当てられなかった余剰の無線リソースを、1つ以上のスライスに対して配分(再配分)する第2割当処理を行う。第2割当処理部53は、複数のスライスに対して決定した無線リソースの割り当てRを、最終的な割り当てとして出力する。
【0042】
割当通知部54は、第2割当処理部53によって決定された割り当てRに基づいて、各スライスに対応するスケジューラ21(21a,21b,21c)に対して、スケジューリングに使用可能な無線リソースの割り当てを示す通知を送信する。これにより、複数のスライスに対する無線リソースの割り当てが完了する。
【0043】
<各スライスへの無線リソースの割り当てタイミング>
本実施形態では、RANコントローラ40は、所定の時間間隔ごとに、各スケジューラ21(各スライス)に対する無線リソースの割り当て(配分)を行う。
図6は、各スケジューラに対する無線リソースの割り当てのタイミングの例を示す図である。
【0044】
ここで、本実施形態のような基地局システムのアーキテクチャでは、スケジューラが異なる場所(サイト)に配置されうる。
図2及び
図3の構成例では、スケジューラ21cは、スケジューラ21a,21bとは異なる場所に配置されている。異なるスライスに対応する複数のスケジューラが異なる場所に配置されている場合、一般にスケジューリングの最小時間単位であるTTI(送信時間間隔)ごとに、各スケジューラ(各スライス)に対する無線リソースの割り当てを更新することは難しい。
【0045】
このため、
図6に示されるように、RANコントローラ40は、TTIより長い(例えば、100TTIの)時間間隔ΔTごとに、各スケジューラに対する無線リソースの割り当て(割り当ての更新)を行う。その際、RANコントローラ40は、過去の1つ以上の所定期間(時間間隔ΔT)において得られた入力パラメータに基づいて、次の所定期間(時間間隔ΔT)における、複数スライスに対する無線リソースの割り当て(配分)を行う。なお、入力パラメータの一例は、各スライスのSLA(サービスレベルアグリーメント)で定められたスループットに対応する目標値(目標スループット)、及び各スライスを使用する無線端末ごとのSINR(信号対干渉及び雑音比)である。また、各スライスにおける平均トラヒック要求も、入力パラメータの一例である。
【0046】
<第1割当処理>
上述のように、ネットワークスライシングが適用された場合の無線リソースのスケジューリングでは、スライスが互いに影響し合わないようにする、スライス間のアイソレーションを実現する必要がある。具体的には、スケジューラ21a,21b,21cが、互いに異なる無線リソースを用いて、対応するスライスを使用する無線端末に対するスケジューリングを行う必要がある。本実施形態のRANコントローラ40は、仮割当決定部51及び第1割当処理部52により、このようなアイソレーションを確保するように、各スケジューラ21(各スライス)に対する無線リソースの割り当てを行う。以下では、RANコントローラ40によって複数のCU10及び複数のDU20に対して設定されるスライスの数をLとする。
【0047】
仮割当決定部51は、予め定められた配分率に従って、複数の(L個の)スライスのそれぞれに対する無線リソースの仮割り当て量R
tmpを決定する。R
tmpは以下のように表される。
r
tmp,sは、第1割当処理部52による割り当てに使用可能な無線リソースの総量を基準とした、スライスs(s=1,2,...,L)に対する無線リソースの配分率を表す。各スライスに対する配分率は、例えば、複数のスライスのそれぞれに対する、SLAで定められた目標スループット(後述する予測スループットの目標値)T
tgt,sの比として予め定められる。この場合、スライスに対して定められた目標スループットが高いほど、より大きな配分率が当該スライスに対して定められ、目標スループットが低いほど、より小さな配分率が当該スライスに対して定められる。
【0048】
本実施形態では、仮割当決定部51は、第1割当処理部52による割り当てに使用可能な無線リソースの総量を、予め定められた配分率に従って各スライスに配分するように、各スライスの仮割り当て量Rtmpを決定する。
【0049】
第1割当処理部52は、仮割り当てR
tmpを上限として、複数の(L個の)スライスのそれぞれに対して無線リソースの割り当てを行うことで、無線リソースの割り当てR
isoを決定する。R
isoは以下のように表される。
r
iso,sは、第1割当処理部52による割り当てに使用可能な無線リソースの総量を基準とした、スライスs(s=1,2,...,L)に対する、第1割当処理における無線リソースの配分率を表す。
【0050】
具体的には、第1割当処理部52は、スライスごとに、当該スライスに割り当てる無線リソースの量riso,sを0から徐々に増加させながら、予測通信容量(予測スループット)を求める。予測スループットは、スライスごとに、当該スライスに割り当てられる無線リソースの量と当該スライスについての通信品質とに基づいて求められる。スライスs(s=1,2,...,L)の予測スループットTsは以下のように求められる。
【0051】
まず、スライスsを使用するユーザのうち、ユーザiへの無線リソースの配分r
i
iso,sは、ラウンドロビンを用いると次式により表される。
ここで、N
sは、スライスs内のユーザ数を表す。予測スループットT
sは、シャノンの定理に基づいて、次式により求められる。
ここで、nは、第1割当処理部52による割り当てに使用可能な物理リソースブロック(PRB)の総数、Bは、1PRB(単位無線リソース)当たりの周波数帯域幅[Hz]、γ
i
sは、スライスs内のユーザiのSINRを表す。なお、上式で用いたシャノンの定理は通信路限界を求めるものであるので、実際には、
図7に示されるようなテーブルを用いて、単位周波数当たりのビットレートが求められる。
【0052】
このように、本実施形態の第1割当処理部52は、スライスsについての通信品質として、当該スライスを使用する無線端末ごとのSINRγi
sを使用して、予測スループットTsを求める。
【0053】
第1割当処理部52は、各スライスs(s=1,2,...,L)に割り当てる無線リソースの量riso,sを0から増加させていき、上述のように求められる予測スループットTsが、当該スライスに対して定められた目標値(目標スループットTtgt,s)を満たしている(Ts≧Ttgt,s)か否かを判定する。
【0054】
第1割当処理部52は、スライスsに割り当てる無線リソースの量を増加させる間に、予測スループットTsが、目標スループットTtgt,sに達すると、当該スライスに対する無線リソースの割り当てを停止する。また、第1割当処理部52は、予測スループットTsが目標スループットTtgt,sに達することなく、スライスsに割り当てた無線リソースの量riso,sが、上限である仮割り当て量rtmp,sに達した場合にも、当該スライスに対する無線リソースの割り当てを停止する。
【0055】
図8(A)は、第1割当処理部52による無線リソースの割り当て結果の例を示す図である。なお、スライス数L=4の場合を例として示している。
図8(A)の例では、スライス1及び3については、各スライスに割り当てる無線リソースのr
iso,sが上限に達する前に、予測スループットT
sが目標スループットT
tgt,sに達している(即ち、SLAが満たされている)。この場合、上限である仮割り当て量r
tmp,sまで無線リソースの割り当てが行われずに、余剰の無線リソース(r
tmp,s-r
iso,s)が生じている。この余剰の無線リソースは、第2割当処理部53による第2割当処理に使用されることで、他のスライスについてのSLAの満足度を高めるために他のスライスに対して配分(再配分)される。
【0056】
一方、
図8(A)の例では、スライス2及び4については、予測スループットT
sが目標スループットT
tgt,sに達することなく、各スライスに割り当てる無線リソースのr
iso,sが、上限である仮割り当て量r
tmp,sに達している(即ち、r
iso,s=r
tmp,s)。この場合、目標スループットが満たされることなく割り当ての上限に達したスライス2及び4に対して、スライス1及び3についての余剰の無線リソースが、第2割当処理部53による第2割当処理により更に割り当てられる。
【0057】
このように、第1割当処理部52は、スライスごとに、当該スライスに割り当てられる無線リソースの量と当該スライスについての通信品質(SINR)とに基づいて求まる予測通信容量(予測スループットTs)が、当該スライスに対して定められた目標値(目標スループットTtgt,s)を満たすまで、仮割り当て量rtmp,sを上限として当該スライスに対して無線リソースを割り当てる。これにより、第1割当処理部52は、仮割り当てRtmpに基づく無線リソースの割り当てRisoを決定し、第2割当処理部53へ出力する。
【0058】
<第2割当処理>
第2割当処理部53は、第1割当処理部52による割り当てに使用可能な全無線リソースのうち、第1割当処理部52により割り当てられなかった余剰の無線リソースを、SLAを満たすために無線リソースが不足している1つ以上のスライスに対して配分(再配分)する第2割当処理を行う。
【0059】
本実施形態では、第2割当処理部53は、複数の(L個の)スライスのうち、目標値(目標スループットT
tgt,s)が満たされることなく第1割当処理部52により割り当てられた無線リソースの量が、上限である仮割り当て量r
tmp,sに達した1つ以上のスライス(
図8の例では、スライス2及び4)に対して、目標値が満たされたスライス(
図8の例では、スライス1及び3)に対して割り当てられなかった余剰の無線リソースを配分する。
【0060】
具体的には、第2割当処理部53は、まず、次式のように、第1割当処理部52により割り当てられなかった無線リソースをリソースプールPに追加する。
なお、第1割当処理部52による第1割当処理において、各スライスに割り当てる無線リソースr
iso,sが、仮割り当て量r
tmp,sに達したスライス(
図8の例では、スライス1及び3)については、r
iso,s=r
tmp,sであるため、リソースプールPに加えられる無線リソースの量は0となる。
【0061】
ここで、リソースプールPに含まれる無線リソースを再配分するための、複数の(L個の)スライスのそれぞれに対する無線リソースの配分率R'を、次式により定義する。
r'
sは、第1割当処理部52による割り当てに使用可能な無線リソースの総量を基準とした、スライスs(s=1,2,...,L)に対する、第2割当処理における無線リソースの配分率を表す。
【0062】
第2割当処理部53は、第1割当処理において目標スループットTtgt,sが満たされなかった1つ以上のスライスについて、目標スループットTtgt,sに対する予測スループットの満足度(即ち、SLAの満足度)が最大化されるように、当該1つ以上のスライスに対して余剰の無線リソース(リソースプールPに含まれる無線リソース)を配分する。
【0063】
具体的には、第2割当処理部53は、最適化問題を解くことにより、次式のように評価関数Φ(R')を最小化するR'を求める。
ただし、以下を条件とする。
【0064】
上述の評価関数Φ(R')は、スライスs(s=1,2,...,L)に対応するコスト関数Φ
s(R')を用いて、次式により定義される。
ここで、w
sは、スライスs(s=1,2,...,L)に対して適用される重み、Φ
s(R')は、次式により定義される、各スライスに対応するコスト関数を表す。
このコスト関数は、対応するスライスsについての目標スループットT
tgt,sに対する予測スループットA
s(R')の割合が所定値(例えば、1)に近いほど出力値が小さくなる。
【0065】
上述の評価関数Φ(R')において各スライスに対応するコスト関数Φs(R')に対して適用される重みwsは、例えば、SLAで定められた目標スループットTtgt,sに応じて定められる。評価関数Φ(R')は、重みwsに応じて重み付けが行われたコスト関数Φs(R')の総和として定義されている。コスト関数Φs(R')に対する、このような重みwsに応じた重み付けにより、第2割当処理の無線リソースに割り当てにおいて、SLAの満足度の観点でスライス間で公平性を確保することが可能になる。
【0066】
上述の評価関数Φ(R')に含まれるコスト関数Φ
s(R')を定義する、スライスsの予測スループットは、次式により求められる。
この予測スループットA
s(R')は、第1割当処理において求められる予測スループットT
sと同様、
図7に示されるようなテーブルを用いて求められる。上式におけるr
sは、次式のように、スライスsに対する最終的なリソース割り当てを表す。
【0067】
ここで、第1割当処理の完了段階で、スライスsについて、SLAで定められた目標スループットTtgt,sが満たされている場合(Ts≧Ttgt,s)、即ち、SLAが満たされている場合、スライスsに対して最終的に割り当てられる無線リソースの量rsは、第1割当処理で割り当てられた量riso,sとなる(rs=riso,s)。一方、第1割当処理の完了段階で、スライスsについて、SLAで定められた目標スループットTtgt,sが満たされていない場合(Ts<Ttgt,s)、即ち、SLAが満たされていない場合、rsは、第1割当処理で割り当てられた量rtmp,sに、第2割当処理で割り当てられる量r'sを加えた量となる(rs=rtmp,s+r's)。
【0068】
第2割当処理部53は、上述の評価関数Φ(R')の出力値を最小化するように、第1割当処理において目標スループットTtgt,sが満たされなかった1つ以上のスライスに対して、リソースプールPに含まれる無線リソースを再配分する。即ち、第2割当処理部53は、評価関数Φ(R')の出力値を最小化するようにR'を決定する。これにより、各スライスs(s=1,2,...,L)に対する最終的なリソース割り当てrsが決定される。
【0069】
第2割当処理部53は、次式で表される、複数の(L個の)スライスに対する無線リソースの割り当てRを最終的な割り当てとして決定し、割当通知部54へ出力する。
【0070】
図8(B)は、第2割当処理部53による無線リソースの割り当て結果の例を示す図である。
図8(B)の例では、
図8(A)に示される、スライス1及び3についての余剰の無線リソースが、上述の第2割当処理によりスライス2及び4に対して再配分されている。即ち、第1割当処理によりSLAが満たされているスライス1及び3についての余剰の無線リソースが、残りのスライス2及び4についてのSLAの満足度を高めるように、当該スライス2及び4に再配分されている。
【0071】
以上説明したように、本実施形態のRANコントローラ40は、予め定められた配分率に従って、複数のスライスのそれぞれに対して無線リソースの仮割り当て量を決定する。RANコントローラ40は、スライスごとに、当該スライスについて求まる予測通信容量が、当該スライスに対して定められた目標値を満たすまで、仮割り当て量を上限として無線リソースを当該スライスに割り当てる。更に、RANコントローラ40は、目標値が満たされることなく、割り当てられた無線リソースの量が上限に達した1つ以上のスライスに対して、目標値が満たされたスライスに対して割り当てられなかった余剰の無線リソースを配分する。
【0072】
本実施形態によれば、RANコントローラ40は、第1割当処理において、スライスごとに決定した仮割り当て量を上限として、各スライスに対して無線リソースを割り当てる。これにより、各スライスに割り当てる無線リソースを増加させる際、仮割り当て量の範囲内では、SLAが満たされるまで(目標スループットTsが満たされるまで)スライス間で独立した無線リソースの割り当てが行われる。RANコントローラ40は、SLAを満たしたスライスに対して無線リソースの割り当てを停止し、その余剰の無線リソースを、SLAを満たしていないスライスに対して第2割当処理で更に割り当てる。このようにして、スライス間でアイソレーションを確保しながら、第2割当処理により、各スライスが提供するサービス品質を高める(即ち、SLAの満足度を高める)ように、各スライスに無線リソースの配分を行うことが可能になる。
【0073】
[第2実施形態]
第2実施形態では、第2割当処理部53による第2割当処理として、複数のスライスに対して予め設定された優先度に基づいて余剰の無線リソースの割り当て(再配分)を行う例について説明する。以下では、第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0074】
本実施形態では、第2割当処理部53による第2割当処理が第1実施形態と異なる。第2割当処理部53は、第1割当処理において目標スループット(予測通信容量の目標値)が満たされなかった1つ以上のスライスのうち、予め設定された優先度が高いスライスから順に、各スライスに対して、余剰の無線リソースから無線リソースを割り当てる。その際、第2割当処理部53は、各スライス(スライスs)の予測スループットAs(R')を求め、当該予測スループットが目標スループットTtgt,sを満たすまで、余剰の無線リソース(リソースプールP)から無線リソースを割り当てる。
【0075】
より具体的には、第2割当処理部53は、対象となるスライスのうち、優先度が高い順に、余剰の無線リソースが無くなるまで、対象となる各スライスに対して当該余剰の無線リソースからの無線リソースの割り当てを行う。例えば、
図8(A)の例では、第1実施形態と同様、スライス2及び4を対象として、第2割当処理が行われる。ここで、スライス4よりスライス2の方が、予め設定された優先度が高い場合には、スライス2に対する余剰の無線リソースの割り当ての完了後に、スライス4に対する余剰の無線リソースの割り当てが行われる。このような無線リソースの割り当て(再配分)が、余剰の無線リソースが無くなるまで行われる。
【0076】
このように、優先度に基づく第2割当処理によれば、第1実施形態の効果に加えて、優先度が高いスライスがSLAを満たす可能性をより高めながら、各スライスに無線リソースの配分を行うことが可能になる。
【0077】
上述した各スライスに対して予め設定される優先度については、以下で説明するように、種々の設定が可能である。
【0078】
●SINR(通信品質)に基づく優先度設定
第2割当処理部53は、複数のスライスのそれぞれについての通信品質が高いほど優先度が高くなるように、当該複数のスライスに対する優先度を設定しうる。この場合、例えば、直前の所定期間(時間間隔ΔT)における平均SINR(即ち、対象スライス内の全ユーザの全PRBに対するSINRの平均値)が、優先度の設定用の通信品質として用いられる。このような優先度設定に基づいて第2割当処理を行うことにより、周波数利用効率をより高めることが可能になる。
【0079】
●許容遅延に基づく優先度設定
第2割当処理部53は、複数のスライスのそれぞれについての許容遅延が小さいほど優先度が高くなるように、当該複数のスライスに対する優先度を設定しうる。このような優先度設定に基づいて第2割当処理を行うことにより、例えば、URLLCに対応するスライスのような許容遅延の小さいスライスのために必要になるキューを、より短くすることが可能になる。
【0080】
●PF(Proportional Fairness)方式による優先度設定
第2割当処理部53は、PF方式を用いて、複数のスライスに対する優先度を設定しうる。この場合、第2割当処理部53は、複数のスライスのそれぞれについての、過去の複数の所定期間(ΔT)における単位無線リソース(1PRB)あたりの予測スループット(予測通信容量)の平均値に対する、直前の所定期間(ΔT)における単位無線リソースあたりの予測スループットの比率が大きいほど、優先度が高くなるように、複数のスライスに対する優先度を設定する。
【0081】
このような優先度設定に基づいて第2割当処理を行うことにより、通信品質とスライス間の公平性とを考慮して、第2割当処理において余剰の無線リソースの割り当てを行うことが可能になる。その結果、SINRが低い無線端末が存在するスライスに対しても、余剰の無線リソースの割り当て機会を与えることが可能になる。
【0082】
●SLAの達成率に基づく優先度設定
第2割当処理部53は、目標スループット(予測通信容量の目標値)に対する、第1割当処理部52による割当終了時の予測スループットの比率(即ち、SLAの達成度)が小さいほど、優先度が高くなるように、複数のスライスに対する優先度を設定しうる。このような優先度設定に基づいて第2割当処理を行うことにより、SLAの達成度の観点で、余剰の無線リソースの割り当てについてスライス間で公平性を高めることが可能になる。
【0083】
[第3実施形態]
第3実施形態では、第2割当処理部53による第2割当処理として、複数のスライスに対してそれぞれ定められた重みに応じて余剰の無線リソースの割り当て(再配分)を行う例について説明する。以下では、第1及び第2実施形態と異なる部分について説明する。
【0084】
本実施形態では、第2割当処理部53による第2割当処理が第1及び第2実施形態と異なる。第2割当処理部53は、複数のスライスに対する重みをパラメータとして予め設定しておき、各スライスの重みの比率に応じて、第2割当処理において余剰の無線リソース(リソースプール)から無線リソースの配分を行う。具体的には、第2割当処理部53は、第1割当処理において目標スループット(予測通信容量の目標値)が満たされなかった1つ以上のスライスに対してそれぞれ定められた重みに応じて、当該1つ以上のスライスに対して余剰の無線リソースを配分する。
【0085】
このように、重みに基づく第2割当処理によれば、第1割当処理において目標スループットが満たされなかった1つ以上のスライスに対して、余剰の無線リソースを重みに応じて満遍なく配分することが可能になる。これにより、第2実施形態と異なり、優先度が高いスライスに対する割り当てによりリソースプールP内の無線リソースが無くなった場合に優先度が低いスライスに対して余剰の無線リソースは割り当てられない状況が生じることを避けることが可能になる。
【0086】
上述した各スライスに対して予め設定される重みについては、以下で説明するように、種々の設定が可能である。
【0087】
●PF方式による重み設定
第2割当処理部53は、PF方式を用いて、複数のスライスに対する重みを設定しうる。この場合、第2割当処理部53は、複数のスライスのそれぞれについて、過去の複数の所定期間(ΔT)における単位無線リソース(1PRB)あたりの予測スループット(予測通信容量)の平均値に対する、直前の所定期間(ΔT)における単位無線リソースあたりの予測スループットの比率を、当該スライスに対する重みとして設定する。
【0088】
このような重み設定に基づいて第2割当処理を行うことにより、通信品質とスライス間の公平性とを考慮して、第2割当処理において余剰の無線リソースの割り当て(配分)を行うことが可能になる。その結果、SINRが低い無線端末が存在するスライスに対しても、余剰の無線リソースの割り当て機会を与えることが可能になる。
【0089】
●SLAの達成率に基づく重み設定
第2割当処理部53は、複数のスライスのそれぞれについて、目標スループット(予測通信容量の目標値)に対する、第1割当処理部52による割当終了時の予測スループットの比率(即ち、SLAの達成度)の逆数を、当該スライスに対する重みとして設定する。
このような重み設定に基づいて第2割当処理を行うことにより、SLAの達成度の観点で、余剰の無線リソースの割り当てについてスライス間で公平性を高めることが可能になる。
【0090】
[第4実施形態]
第4実施形態では、第2割当処理部53による第2割当処理として、第1割当処理において行われた無線リソースの仮割り当て及び仮割り当てに基づく無線リソースに割り当てを、余剰の無線リソースが無くなるまで繰り返し行う例について説明する。以下では、第1乃至第3実施形態と異なる部分について説明する。
【0091】
本実施形態では、第2割当処理部53は、第1割当処理において目標スループットが満たされなかった1つ以上のスライスに対して、仮割当決定部51によって決定された仮割り当てRtmpに基づいて、リソースプールPに含まれる無線リソースの割り当てを繰り返す。
【0092】
具体的には、第2割当処理部53は、まず、当該1つ以上のスライスのそれぞれに対して、予め定められた配分率(Rtmp)に従って余剰の無線リソース(リソースプールP)の仮割り当てを行う。更に、第2割当処理部53は、各スライスに対して、予測スループットが目標スループットを満たすまで、当該仮割り当てが行われた無線リソースの量を上限として当該スライスに対して無線リソースを割り当てる。第2割当処理部53は、第1割当処理と同様の、仮割り当て量を上限とした割り当てが完了すると、その時点での余剰のリソースで再びリソースプールPを構成する。第2割当処理部53は、上述の仮割り当てと、リソースプールPに含まれる無線リソースの割り当てとを、余剰の無線リソースが無くなるまで繰り返す。
【0093】
本実施形態によれば、余剰の無線リソースが無くなるまで、仮割り当てRtmpに基づいてリソースプールPに含まれる無線リソースの配分が繰り返されることで、スライス間で無線リソースの配分の公平性を高めることが可能になる。
【0094】
[その他の実施形態]
上述の実施形態に係る無線通信装置は、コンピュータを無線通信装置として機能させるためのコンピュータプログラムにより実現することができる。当該コンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて配布が可能なもの、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【符号の説明】
【0095】
10:CU、20:DU、21:スケジューラ、30:RU、40:RANコントローラ、50:5GC UPF、60:5GC CPF、70:エッジアプリケーション、101:CPU、102:ROM、103:RAM、104:外部記憶デバイス、105:通信デバイス