(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】留め具供給機構用アラインメント工具
(51)【国際特許分類】
B23P 19/04 20060101AFI20240829BHJP
B23P 19/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B23P19/04 F
B23P19/00 304E
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023070054
(22)【出願日】2023-04-21
(62)【分割の表示】P 2018144901の分割
【原出願日】2018-08-01
【審査請求日】2023-05-19
(32)【優先日】2017-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】キア ミリアム ズィヴァリ
(72)【発明者】
【氏名】ザカリー デイヴィッド タラス
(72)【発明者】
【氏名】デレク ジョン ディーンズ
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-108425(JP,A)
【文献】特開2017-047516(JP,A)
【文献】特開平05-337856(JP,A)
【文献】特開2017-112307(JP,A)
【文献】特開平06-170660(JP,A)
【文献】特開2017-13201(JP,A)
【文献】特開2016-36856(JP,A)
【文献】米国特許第04604024(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットのチャンバに留め具を供給するために、中心軸周りに回転する複数のアームを有する留め具供給機構と、
前記複数のアームのうちの1つのアーム
の遠位端に対して滑り嵌合されるように構成されたアラインメント工具と、を含み、前記アラインメント工具は、前記1つのアームから延出するとともに、前記チャンバの内径と一致する外径を有するチャンバ嵌入部を含んで
おり、
前記一つのアームの遠位端が前記チャンバに対して位置ずれしている場合において、前記アライメント工具を前記チャンバに挿入することにより、前記一つのアームの遠位端が変位して、前記チャンバに対してアライメントするように構成されている、装置。
【請求項2】
前記1つのアームは、把持具を有しており、前記アラインメント工具は、前記把持具が嵌入する切欠き部を有している、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記切欠き部は、当該切欠き部の境界面を規定するバックストップを有する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記アラインメント工具は、所定量を超えて前記1つのアームに対して滑り移動するのを防止するよう寸法設定された嵌合部をさらに有している、請求項1~3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記アラインメント工具は、前記チャンバの直径より小さい直径を有する先端部をさらに有している、請求項1~4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記先端部は、オジーブを含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記アラインメント工具は、前記チャンバの内径よりも大きい外径を有するリップをさらに含んでおり、当該リップは、前記アラインメント工具が所定量を超えて前記チャンバ内に挿入されるのを防止する、請求項1~6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記チャンバ嵌入部に対する前記複数のアームの位置は調整可能である、請求項1~7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
留め具供給機構からロボットのチャンバに留め具を供給するにあたり実施される方法であって、
アラインメント工具を、前記留め具供給機構のアーム
の遠位端に滑り嵌合させ、
前記一つのアームの遠位端が前記チャンバに対して位置ずれしている場合において、前記アラインメント工具が前記アームの前記遠位端に滑り嵌合された状態にて、前記チャンバ内へと前記アラインメント工具を摺動させることにより、前記アーム
の前記遠位端が
前記チャンバに対してアライメントされるまで前記アーム
の前記遠位端の位置を変更
する、方法。
【請求項10】
前記チャンバ内へと前記アラインメント工具を摺動させることにより、前記アラインメント工具の中心軸を前記チャンバの中心軸とアラインメントさせる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アラインメント工具を滑り嵌合させるために、前記アーム上の把持部を前記アラインメント工具の切欠き部に挿入する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記アラインメント工具の摺動後に、前記留め具供給機構の部品を調整して、前記アームの位置を維持する、請求項9~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記留め具供給機構を動作させて留め具を前記チャンバに装填することをさらに含む、請求項9~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記アラインメント工具を滑り嵌合させることは、前記留め具供給機構における前記アームの背後に設けた保護部材が前記アラインメント工具のさらなる滑り移動を防止するまで行われる、請求項9~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記アラインメント工具を前記チャンバ内への摺動は、前記アラインメント工具の先細り状となる先端部により案内される、請求項9~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記チャンバ内へと前記アラインメント工具を摺動させることは、前記アラインメント工具のリップが前記アラインメント工具の前記チャンバ内へのさらなる摺動挿入を防止するまで行われる、請求項9~15のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボット工学の分野に関し、特に、自動ロボット用のアラインメント工具に関する。
【背景技術】
【0002】
製造作業に使用されるロボットは、製品の所望の箇所に作業を行えるよう、注意深く配置及び配向される。例えば、製品に留め具を取り付けるロボットは、一貫して正確に留め具を留めることができるよう調整される。
【0003】
高度な製造環境では、複数のロボットを協同させて製品を製造することも珍しくない。しかしながら、複数のロボットを使用すると、ロボットを調整するプロセスが必然的に複雑になる。例えば、より多くの数のロボットを調整しなければならなくなる。また、いくつかのロボットを、他のロボットの調整に基づいて調整する場合もあり、調整作業が多段階プロセスにならざるを得ない。
【0004】
従って、上述した問題のうちの少なくともいくつか及びその他の問題を考慮に入れた方法及び装置を提供することが望まれる。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に記載の実施形態は、対応するロボットに対する供給機構のアラインメントを実現するアラインメント工具を提供する。これらのアラインメント工具は、例えば、留め具供給機構のアームと締結ロボットのチャンバとのアラインメントを確実なものとする。本明細書に記載のアラインメント工具は、チャンバとの軸アラインメントを実現し、これによって、チャンバ内での動作中の衝突又は干渉の可能性を低減することができる。
【0006】
一実施形態は、留め具供給機構を、留め具を受け取る締結装置のチャンバとアラインメントするアラインメント工具を含む装置である。当該アラインメント工具は、前記チャンバの直径より小さい直径を有する先端部と、前記先端部の端から長手方向に延びるとともに、前記チャンバの前記直径と一致する直径を有するチャンバ嵌入部と、前記チャンバの前記直径を超えて前記チャンバから径方向に突出するリップと、前記リップから前記長手方向に延びる嵌合部と、を含む。
【0007】
さらなる実施形態は、方法である。当該方法は、アラインメント工具の嵌合部を、留め具供給機構のアーム上に配置し、前記留め具供給機構の位置を規制する前記留め具供給機構の部品を緩め、前記アラインメント工具のリップがチャンバ内への前記アラインメント工具のさらなる挿入を防止するまで、前記チャンバ内へと前記アラインメント工具を摺動させる。当該方法は、さらに、前記留め具供給機構の前記部品を調節することにより、前記アラインメント中に決められた前記アームの位置を維持する。
【0008】
さらなる実施形態は、留め具供給機構を含むシステムである。前記留め具供給機構は、締結装置のチャンバに留め具を供給するために中心軸周りに回転する複数のアームと、前記中心軸周りの前記アームの回転を駆動するアクチュエータと、前記チャンバに供給されつつある留め具を保持するために各アームから延びる把持具とを含む。当該システムは、前記留め具供給機構を、留め具を受け取る締結装置のチャンバとアラインメントするアラインメント工具を含む。当該アラインメント工具は、前記チャンバの直径より小さい直径を有する先端部と、前記先端部の第2端から長手方向に延びるとともに、前記チャンバの前記直径と一致する直径を有するチャンバ嵌入部と、前記チャンバの前記直径を超えて前
記チャンバから径方向に突出するリップと、前記チャンバから前記長手方向に延びる嵌合部と、を含む。
【0009】
他の例示的な実施形態(例えば、前述の実施形態に関連する方法及びコンピュータ可読媒体)が、以下に説明されうる。上述した特徴、機能、利点は、様々な実施形態によって個別に達成することができ、あるいは、さらに他の実施形態と組み合わせてもよく、そのさらなる詳細は、以下の記載及び図面を参照することによって明らかになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
次に、本開示のいくつかの実施形態を、単なる例示として、添付図面を参照しつつ説明する。全ての図面において、同じ参照数字は、同じ要素又は同じ種類の要素を示している。
【0011】
【
図1】例示的な実施形態におけるアラインメント工具の斜視図である。
【
図7】例示的な実施形態における、ロボットと協働する留め具供給機構の背面図である。
【
図8】例示的な実施形態における、アラインメント工具が取り付けられた留め具供給機構の正面図である。
【
図9-10】例示的な実施形態における、留め具供給機構に取り付けられたアラインメント工具の側面図である。
【
図11】例示的な実施形態における、アラインメント工具を用いてアラインメントを行うための方法を示すフローチャートである。
【
図12】例示的な実施形態における、アラインメント工具を用いるシステムのブロック図である。
【
図13】例示的な実施形態における、航空機の製造及び保守方法を示すフロー図である。
【
図14】例示的な実施形態における航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面及び以下の記載は、本開示の特定の例示的な実施形態を説明するものである。したがって、当業者であれば、本明細書に明確に記載あるいは図示していないものの、本開示の原理を具体化するとともに本開示の範囲内に含まれる様々な変形を、創出することができるであろう。また、本明細書で説明されているいずれの実施例も、本開示の原理に対する理解を助けることを意図するものであり、これらの具体的に説明された実施例又は条件に限定的なものではない。従って、本開示は、以下に説明する特定の実施形態又は実施例に限定されるものではなく、請求の範囲及びその均等範囲のみによって限定される。
【0013】
図1~
図6は、例示的な実施形態におけるアラインメント工具100の図である。アラインメント工具100は、留め具供給機構を、ロボットなどの締結装置とアラインメントするよう動作可能な任意のシステム、装置、又は部品を含む。具体的には、アラインメント工具100は、ロボットに留め具を提供する留め具供給機構に配置することができる。アラインメント工具100を留め具供給機構に配置して、当該アラインメント工具を用いて、留め具供給機構を、留め具を受け取るロボットのシリンダと物理的にアラインメントすることができる。これにより、留め具供給機構は、留め具をロボットに適切に供給することができる。
【0014】
図1に示した本実施形態において、アラインメント工具100は、チャンバに挿入される先端部110と、先端部110に続いてチャンバ(例えば
図7のチャンバ776)に挿入されるチャンバ嵌入部120とを含む。アラインメント工具100は、さらに、リップ(lip)130及び嵌合部140を含む。リップ130は、中心軸150に対して、径方
向外方に延びている。嵌合部140は、切欠き部142を規定しており、当該切欠き部は、留め具供給機構のアームの一部に嵌合する。
【0015】
図2は、
図1のアラインメント工具100の側面図である。
図2に示すように、先端部110は、第1端217を規定する先端216、円錐部214、及び、曲線211に沿うオジーブ(ogive)212を含みうる。先端部110は、長手方向Lに沿って先端216
からの距離が増大するにつれて(例えばXが減少するにつれて)、直径が大きくなっている。曲線211は、チャンバ嵌入部120の直径よりも大きい半径の円弧を形成しうる。
図2にさらに示すように、チャンバ嵌入部120は直径Dを有し、先端部110は長さL1を有し、チャンバ嵌入部は長さL2を有し、嵌合部140は長さL3を有し、リップ130は厚みTを有する。チャンバ嵌入部120は、先端部110の第2端213に接続している。切欠き部142も見えている。本実施形態において、切欠き部142は、長さL4にわたって延びており、リップ130を貫通してチャンバ嵌入部120内まで連続している。
【0016】
図3及び
図4は、其々、
図1のアラインメント工具100の正面図及び背面図である。
図3は、リップ130の端部330を示しており、ここで、リップ130は切欠き部142によって除去されている。
図4は、バックストップ420を示しており、これは、切欠き部142の境界面を規定するものである。
図4は、さらに、嵌合部140の端部440ならびに切込み410も示している。切込み410は、切欠き部142の付加的な部分であり、アラインメント工具100が取り付けられるアームの部品に対応しうる部分である。例えば、切込み410は、
図8の留め具供給機構800の止めねじ(図示せず)の位置に対応する溝を規定する。
【0017】
図5及び
図6は、其々、
図1のアラインメント工具100の底面図及び上面図である。
図5~
図6は、上述した様々な部分も示している。アラインメント工具100は、プラスチック、ゴム、シリコーンなどの任意の適当な材料によって作製することができる。多くの実施形態において、アラインメント工具100は、アラインメントされるロボット及び/又は留め具供給機構よりも柔らかい材料(例えば工具鋼よりも柔らかい材料)によって形成される。これにより、アラインメント工具100は、取り付け対象の部品を壊したり傷つけたりすることがない。
【0018】
図7~
図9は、アラインメント工具100が使用される環境を示している。具体的には、
図7は、留め具供給機構700の背面図であり、当該留め具供給機構は、回転して、ロボット750が使用するための留め具をチャンバ776に供給するものである。本実施形態では、留め具供給機構700は、遠位部730を有する複数のアーム710を含む。留め具供給機構700は、アクチュエータ720によって付与される力を受けて、中心軸722周りに回転する。すなわち、アクチュエータ720が、アーム710の回転を駆動する。本実施形態に関し、
図7の留め具供給機構700が、現状では、X軸(紙面に対して前進/後退するように、図の平面に対して垂直である)、Y軸、及びZ軸に沿って、ロボット750の本体760に設けられたチャンバ776に対して、(
図7のΔY及びΔZによって示すように)位置ずれしていると仮定する。具体的には、遠位部730の中心軸732が、チャンバ776の中心軸785と揃っていないと仮定する。このことは、留め具供給機構700が、ロボット750のチャンバ776に、所望されるように効率よく留め具を供給できないかもしれないことを意味する。残りのチャンバ771~775は、セン
サや制御システムなどの、ロボット750の他の部品を収容しうる。各チャンバは、内径D2を有しており、これは、アラインメント工具100のチャンバ嵌入部120の外径D(
図5に示す)と一致しうる。
【0019】
アラインメントを行うためには、
図8に示すように、留め具供給機構700のアーム710の遠位部730に、アラインメント工具100を配置する。例えば、アラインメント工具100を、遠位部730に被せるように滑り嵌合させる。留め具供給機構700が調節可能な状態で、アラインメント工具100を用いて、遠位部730をチャンバ776の中心に位置させることができる。
図8は、把持具820も示しており、これらは、供給プロセス中に留め具を保持するために用いられる。把持具820は、各アーム710から(すなわちX軸に沿って)延びており、
図7のチャンバ776への供給中の留め具を保持する。把持具820は、アラインメント工具100によって覆われており、アラインメント工具100が遠位部730を覆う際は常に、把持具820は切欠き部142内に嵌入する。保護部材810も図示されている。当該保護部材は、留め具供給機構700の作業者が怪我をする可能性を減らすために、例えば留め具供給機構700の後方に配置される。
【0020】
図9は、留め具供給機構700に取り付けられたアラインメント工具100の側面図である。
図9に示すように、L4は、遠位部730上へのアラインメント工具100の滑り移動の長さに対応している。嵌合部140と保護部材810との物理的な干渉により、さらなる滑り移動は防止される。チャンバ内への挿入の際には、先端部110の曲率によって、アラインメント工具は、チャンバ776内に滑り移動することができる。長さL1+L2は、チャンバ776内へのアラインメント工具100の所望の挿入深さに対応しており、従って、工具100は、所定量以上チャンバ776内に挿入されないようになっている。リップ130は、Dを超えて方向Zに延びており、従って、チャンバ776より幅が広い。従って、リップ130は、アラインメント工具100が方向Xに沿ってチャンバ776内にさらに挿入されるのを防止する。
図10に示すように、アラインメント工具100が距離L1+L2にわたって完全に挿入されると、チャンバ嵌入部120が、チャンバ776内を埋めるとともに、リップ130によってさらなる挿入が阻止される。チャンバ嵌入部120は、チャンバ776の内径D2に一致する直径Dを有している。例えば、いくつかの実施形態において、滑り嵌合を容易にするため、D2をDよりも若干大きく(すなわち、1/10インチ又は1/100インチ大きく)してもよい。このようにして、完全に挿入されると、アラインメント工具100は、中心軸732、150、785がすべて揃うように、遠位部730をチャンバ776とアラインメントする。
【0021】
アラインメント工具100の動作の例示的な詳細を、
図11を参照して説明する。
図11は、例示的な実施形態における、アラインメント工具を用いてアラインメントを行うための方法1100を示すフローチャートである。方法1100の工程を、
図1のアラインメント工具100に言及して説明するが、当業者であればわかるように、方法1100は、他のシステムにおいても実施することができる。また、同図に記載のフローチャートの工程が、すべてを含んでいるものとは限らず、図示しない他の工程も含まれうる。また、同図に記載の工程を、別の順序で行うこともできる。
【0022】
まず、アラインメント工具100を入手する(例えば、寸法L1、L2、L3、L4、D、Tが異なる複数のアラインメント工具の中からアラインメント工具100を選択することによって入手する)(工程1102)。アラインメント工具100の嵌合部140を、留め具供給機構700のアーム710の遠位部730に配置する(工程1104)。留め具供給機構700における、アーム710の位置を規制する部品を緩めて、X、Y及び/又はZ軸に沿って留め具供給機構700の位置を変更できる状態とする(工程1106)。これは、例えば、以下に述べる
図12の止めねじ1215を緩めることによって行うことができる。
【0023】
アラインメント工具100のリップ130がチャンバ776内へのアラインメント工具100のさらなる挿入を防止する状態となるまでアラインメント工具100をチャンバ776内に摺動させることによって、アラインメント工具100の中心軸150を、締結装置750(例えばロボット)のチャンバ776の中心軸785とアラインメントする(工程1108)。留め具供給機構700の部品を(例えば
図12の止めねじ1215を締めることによって)さらに調節することにより、アラインメント中に決められたアーム710の位置を維持する(工程1110)。このようにして、留め具供給機構700は、チャンバ776に留め具を供給するために調整される。
【0024】
さらなる実施形態において、先端部110、チャンバ嵌入部120、リップ130、及び、嵌合部140を取り外し可能とすることにより、様々な寸法の部品同士を嵌め合わせて、カスタマイズされたアラインメント工具を形成できるようにしてもよい。すなわち、直径及び/又は長さの異なる複数のチャンバ嵌入部や、其々異なる留め具供給機構に対応する様々な切欠き部を規定する複数の嵌合部などを設けてもよい。これは、広範囲の種類のチャンバ及び/又は留め具供給機構にアラインメント工具を用いるのに役立つ。
【実施例】
【0025】
以下の実施例において、ロボットと協働して動作する留め具供給機構のためのアラインメント工具に関連させて、追加のプロセス、システム、及び方法を説明する。
【0026】
図12は、例示的な実施形態における締結システム1200のブロック図である。本実施形態において、締結システム1200は、留め具供給機構1210、アラインメント工具1220、及び、製品に留め具を取り付けるロボット1290を含む。留め具供給機構1210は、アクチュエータ1212を含み、アクチュエータは、留め具供給中にアーム1214を回転させる。アーム1214は、遠位部1216を含み、また、グリッパー(grippers)1217(例えば爪のような把持具)も含む。調節部品1218(例えば、レール、止めねじなどの組み合わせ)は、アクチュエータ1212のX、Y、及び/又はZ位置の調節を行う。アクチュエータ1212の位置を変更することによって、調節部品1218は、チャンバ1292に対する遠位部1216の位置を変更する。従って、調節部品1218は、個々のアーム1214の相対位置を調節するわけではない。保護部材1219も示されている。
【0027】
アラインメント工具1220は、先端部1230を含み、先端部は、先端1232、円錐部1234、及び、オジーブ1236を含む。一方、チャンバ嵌入部1240は、端部1242を含み、リップ1250は、端部1252を含む。端部1242及び端部1252は、切欠き部1262によって規定されている。嵌合部1260も示されており、当該嵌合部に切欠き部1262が形成されている。アラインメント工具1220は、ロボット1290のチャンバ1292内に挿入されるように寸法設定されている。
【0028】
より具体的に図面を参照しつつ、本開示の実施形態を、
図13に示すように航空機の製造及び保守方法1300に関連させ、
図14に示すように航空機1302に関連させて説明することができる。生産開始前において、例示的な方法1300は、航空機1302の仕様決定及び設計1304と、材料調達1306とを含む。生産中には、航空機1302の部品及び小組立品の製造1308、並びに、システムインテグレーション1310が行われる。その後、航空機1302は、認可及び納品1312の工程を経て、使用1314に入る。顧客による使用中は、航空機1302は、定例の整備及び保守1316のスケジュールに組み込まれる。(これは、改良、再構成、改修なども含みうる。)本明細書において具現化されたシステム及び方法は、製造及び保守方法1300における1つ又は複数の任意の適当な段階(例えば仕様決定及び設計1304、材料調達1306、部品及び小
組立品の製造1308、システムインテグレーション1310、認可及び納品1312、使用1314、整備及び保守1316)、及び/又は、航空機1302の任意の適当なコンポーネント(例えば機体1318、システム1320、内装1322、推進系1324、電気系1326、油圧系1328、環境系1330)において、採用することができる。
【0029】
方法1300の各工程は、システムインテグレーター、第三者、及び/又はオペレーター(例えば顧客)によって実行または実施することができる。本明細書において、システムインテグレーターは、航空機メーカー及び主要システム下請業者をいくつ含んでいてもよいが、これに限定されない。第三者は、売主、下請業者、及び供給業者をいくつ含んでいてもよいが、これに限定されない。オペレーターは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス組織などであってもよい。
【0030】
図14に示すように、例示的な方法1300により製造された航空機1302は、複数のシステム1320及び内装1322を有する機体318を含みうる。高水準システム1320の例としては、推進系1324、電気系1326、油圧系1328、及び、環境系1330のうちの1つ又は複数が挙げられる。また、その他のシステムをいくつ含んでもよい。航空宇宙産業に用いる場合を例として説明したが、本発明の原理は、自動車産業などの他の産業に適用してもよい。
【0031】
上述したように、本明細書において具現化した装置及び方法は、製造及び保守方法1300における1つ又は複数の任意の適当な段階において採用することができる。例えば、製造段階1308に対応する部品又は小組立品は、航空機1302の使用中に製造される部品又は小組立品と同様の方法で製造することができる。また、1つ又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、又は、それらの組み合わせを、例えば、製造段階1308及び1310で用いることにより、実質的に、航空機1302の組み立て速度を速めたりコストを削減したりすることもできる。同様に、1つ又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、又は、それらの組み合わせを、航空機1302の使用中に、例えば、限定するものではないが、整備及び保守1316に用いてもよい。例えば、本明細書で説明した技術及びシステムを、工程1306、1308、1310、1314、及び/又は、1316で用いてもよいし、機体1318及び/又は内装1322に用いてもよい。これらの技術及びシステムを、例えば推進系1324、電気系1326、油圧計1328、及び/又は環境系1330を含むシステム1320に用いることもできる。
【0032】
一実施形態において、ロボット750は、機体1318の部品に留め具を取り付けたりして、部品及び小組立品の製造1308に用いられる。当該部品は、次に、例えば、システムインテグレーション1310において航空機に組み込まれ、その後、摩耗によって当該部品が使用不可能になるまで、使用段階1314において用いられる。次に、整備及び保守段階1316において、当該部品は、廃棄され、新たに製造された部品と交換される。本発明の工具及び方法を、新たな部品を製造するために、部品及び小組立品の製造段階1308で採用することができる。
【0033】
図示あるいは本明細書に記載した様々な制御要素(例えば電気又は電子部品)は、いずれも、ハードウェア、ソフトウェアを実現するプロセッサ、ファームウェアを実現するプロセッサ、又はこれらの何らかの組み合わせとして、実現することができる。例えば、ある要素は、専用ハードウェアとして実現することができる。専用ハードウェア要素は、「プロセッサ」、「コントローラ」、又は、他の同様の用語で称されうる。プロセッサによって実現される場合、機能は、単一の専用プロセッサ、単一の共有プロセッサ、又は、いくつかを共有可能な複数の個別プロセッサによって、実現することができる。更に、「プロセッサ」又は「コントローラ」という用語の明示的な使用は、ソフトウェアを実行可能
なハードウェアのみを指すと解釈されるべきではなく、限定することなくデジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウェア、ネットワークプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)若しくは他の回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ソフトウェア保存用の読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、不揮発性記憶装置、論理回路、又は、他の物理的なハードウェア部品若しくはモジュールを暗黙的に含みうる。
【0034】
また、制御要素は、当該要素の機能を実行するための、プロセッサ又はコンピュータによって実行可能な命令として、実現することができる。命令の例をいくつか挙げると、ソフトウェア、プログラムコード、及び、ファームウェアがある。命令は、プロセッサにより実行されると稼働して、当該プロセッサに対して要素の機能を果たすように指示する。命令は、プロセッサによる読み取りが可能な記憶装置に保存することができる。記憶装置の例としては、デジタル若しくはソリッドステートメモリ、磁気ディスクや磁気テープなどの磁気記憶媒体、ハードドライブ、又は、光学的に読み取り可能なデジタルデータ記憶媒体などが挙げられる。
【0035】
本発明は、以下の付記においても言及されるが、これらの付記は請求の範囲と混同されるべきではない。
【0036】
A1. 留め具供給機構(700)を、留め具を受け取る締結装置(750)のチャンバ(776)とアラインメントするアラインメント工具(100)を含むアラインメント装置であって、前記アラインメント工具は、
前記チャンバの直径(D2)より小さい直径を有する先端部(110)と、
前記先端部の端(213)から長手方向(L)に延びるとともに、前記チャンバの前記直径と一致する直径(D)を有するチャンバ嵌入部(120)と、
前記チャンバの前記直径を超えて前記チャンバから径方向に突出するリップ(130)と、
前記リップから前記長手方向に延びる嵌合部(140)と、を含む、アラインメント装置。
【0037】
A2. 前記先端部は、前記先端部の第1端(217)からの距離が増大するにつれて、曲線(211)に倣って前記長手方向に沿って直径が大きくなり、
前記リップは、前記先端部が前記チャンバ内に所定量以上進入することを防止し、
前記嵌合部には、前記留め具供給機構のアーム(710)と係合する切欠き部(142)が形成されている、付記A1に記載の装置。
【0038】
A3. 前記嵌合部に形成された前記切欠き部は、前記留め具供給機構の前記アームにおける止めねじの位置に対応する溝(410)を備えている、付記A2に記載の装置。
【0039】
A4. 前記先端部は、円弧状の曲線に倣って直径が大きくなる、付記A2に記載の装置。
【0040】
A5. 前記曲線は、前記チャンバ嵌入部の前記直径よりも大きい半径の円弧を形成する、付記A2に記載の装置。
【0041】
A6. 前記先端部は、オジーブ(1236)を含む、付記A2に記載の装置。
【0042】
A7. 前記チャンバ嵌入部は、前記リップから取り外し可能であり、
前記嵌合部は、前記リップから取り外し可能である、付記A1に記載の装置。
【0043】
A8. 其々異なる直径及びこれに対応する先端部を有する複数のチャンバ嵌入部と、
留め具供給機構の異なるアームと係合する異なる切欠き部を其々有する複数の嵌合部と、を含む、付記A7に記載の装置。
【0044】
本発明のさらなる側面によれば、以下が提供される。
【0045】
B1. アラインメント工具の嵌合部を、留め具供給機構のアーム上に配置し(1104)、
前記留め具供給機構の位置を規制する前記留め具供給機構の部品を緩め(1106)、
前記アラインメント工具のリップがチャンバ内への前記アラインメント工具のさらなる挿入を防止するまで、前記チャンバ内へと前記アラインメント工具を摺動させ(1108)、
前記留め具供給機構の前記部品を調節することにより、前記アラインメント中に決められた前記アームの位置を維持する(1110)、アラインメント方法。
【0046】
B2. 前記アラインメント工具を入手することをさらに含み、
前記チャンバ内へと前記アラインメント工具を摺動することにより、前記アラインメント工具の中心軸を前記チャンバの中心軸とアラインメントする、付記B1に記載の方法。
【0047】
B3. 前記位置は、前記アームの回転中心となるアクチュエータの位置を規定する、付記B1に記載の方法。
【0048】
B4. 前記アラインメント工具を前記チャンバ内へと摺動させるに際し、
前記チャンバの直径より小さい直径を有する先端部を前記チャンバ内へと摺動させ、前記先端部は、前記先端部の第1端からの距離が増大するにつれて、曲線に倣って長手方向に沿って直径が大きくなっており、
前記先端部の第2端から前記長手方向に延びるとともに、前記チャンバの前記直径と一致する直径を有するチャンバ嵌入部を摺動させる、付記B1に記載の方法。
【0049】
B5. 前記嵌合部を前記アーム上に配置するに際し、前記嵌合部に形成された切欠き部に前記アームを摺動させる、付記B1に記載の方法。
【0050】
B6. 前記リップは、前記チャンバの直径を超えて径方向に延びることによって、前記アラインメント工具のさらなる挿入を防止する、付記B1に記載の方法。
【0051】
B7. 前記部品を調節するに際し、前記留め具供給機構における1つ又は複数の止めねじを締める、付記B1に記載の方法。
【0052】
本発明のさらなる側面によれば、以下が提供される。
【0053】
C1. 留め具供給機構(700)を含むアラインメントシステムであって、前記留め具供給機構は、
留め具を受け取る締結装置(750)のチャンバ(776)に留め具を供給するために、中心軸(722)周りに回転する複数のアーム(710)と、
前記中心軸周りの前記アームの回転を駆動するアクチュエータ(720)と、
前記チャンバに供給されつつある留め具を保持するために各アームから延びる把持具(820)と、を含み、
前記アラインメントシステムは、前記留め具供給機構を前記締結装置の前記チャンバとアラインメントするアラインメント工具(100)をさらに含み、前記アラインメント工具は、
前記チャンバの直径(D2)より小さい直径を有する先端部(110)と、
前記先端部の端(213)から長手方向(L)に延びるとともに、前記チャンバの前記直径と一致する直径(D)を有するチャンバ嵌入部(120)と、
前記チャンバの前記直径を超えて前記チャンバから径方向に突出するリップ(130)と、
前記チャンバから前記長手方向に延びる嵌合部(140)と、を含む、アラインメントシステム。
【0054】
C2. 前記先端部は、前記先端部の第1端からの距離が増大するにつれて、曲線(211)に倣って前記長手方向に沿って直径が大きくなり、
前記リップは、前記先端部が前記チャンバ内に所定量以上進入することを防止し、
前記嵌合部には、前記留め具供給機構のアーム(710)と係合する切欠き部(142)が形成されている、付記C1に記載のシステム。
【0055】
C3. 前記先端部は、円弧状の曲線に倣って直径が大きくなる、付記C2に記載のシステム。
【0056】
C4. 前記曲線は、前記チャンバ嵌入部の前記直径よりも大きい半径の円弧を形成する、付記C3に記載のシステム。
【0057】
C5. 前記先端部は、オジーブ(1236)を含む、付記C1に記載のシステム。
【0058】
C6. 前記チャンバ嵌入部は、前記リップから取り外し可能であり、
前記嵌合部は、前記リップから取り外し可能である、付記C1に記載のシステム。
【0059】
C7. 其々異なる直径及びこれに対応する先端部を有する複数のチャンバ嵌入部と、
留め具供給機構の異なるアームと係合する異なる切欠き部を其々有する複数の嵌合部と、を含む、付記C6に記載のシステム。
【0060】
C8. 前記嵌合部に形成された切欠き部(142)が、前記留め具供給機構の前記アームにおける止めねじの位置に対応する溝(410)を備えている、付記C1に記載のシステム。
【0061】
本明細書において特定の実施形態を説明したが、本開示の範囲は、これらの特定の実施形態に限定されるものではない。本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲及びその均等範囲によって規定される。