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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 41/12 20060101AFI20240829BHJP
   B60K 13/02 20060101ALI20240829BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A01D41/12 H
B60K13/02 A
B60K13/04 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023074713
(22)【出願日】2023-04-28
(62)【分割の表示】P 2018114187の分割
【原出願日】2018-06-15
(65)【公開番号】P2023095931
(43)【公開日】2023-07-06
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猶原 康裕
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-023495(JP,A)
【文献】特開2017-074026(JP,A)
【文献】特開2016-131547(JP,A)
【文献】特開2017-012038(JP,A)
【文献】特開2016-029895(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0231963(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/12
B60K 13/02
B60K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦部の後方に設けられたグレンタンクと、
前記グレンタンクと左右方向一方側に隣接して設けられた脱穀装置と、
前記操縦部の後方で且つ左右方向一方側に配置されたプレクリーナと、
前記グレンタンクと前記脱穀装置との間に設けられ、平面視で前記プレクリーナと重複する位置に配置された排気ガス浄化装置と、
前記排気ガス浄化装置に被せられるカバー部材と、を備え、
前記カバー部材の少なくとも一部は前記プレクリーナと前記排気ガス浄化装置の間に配置されるコンバイン。
【請求項2】
前記排気ガス浄化装置と前記プレクリーナは前記操縦部の左後方に配置される請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記カバー部材は、少なくとも前記排気ガス浄化装置の前方および上方に位置する請求項1又は2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記カバー部材に開口を設ける請求項1~3のいずれか1項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化装置が備えられたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたコンバインでは、キャビンの後方右側にプレクリーナが配置されるとともに、そのキャビンの後方左側に排気ガス浄化装置が配置されている。そのため、清掃などのメンテナンスを行う際に、これらに対して同時にアクセスすることが難しく、途中で作業姿勢の変更を強いられるなど、効率的に作業を行うことができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-123050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、キャビンの後方部位におけるメンテナンス性を向上できるようにしたコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るコンバインは、キャビンの後方に設けられたグレンタンクと、前記グレンタンクと左右方向一方側に隣接して設けられた脱穀装置と、前記キャビンの後方で且つ左右方向一方側に配置されたプレクリーナと、前記グレンタンクと前記脱穀装置との間に設けられ、前記プレクリーナの下方に配置された排気ガス浄化装置と、を備える。かかる構成によれば、プレクリーナ及び排気ガス浄化装置の双方がキャビンの後方で且つ左右方向一方側に配置され、しかも上下に配置されているため、それらに同時にアクセスすることが容易になる。その結果、作業姿勢を変更することなく効率的に作業を行うことができ、キャビンの後方部位におけるメンテナンス性が向上する。
【0006】
前記キャビンに設けられた空調装置に外気を導入するための外気導入口と、前記外気導入口に取り付けられた捕集フィルターと、を備え、前記外気導入口が、前記キャビンの左右方向一方側の壁部に形成されていることが好ましい。かかる構成によれば、プレクリーナと排気ガス浄化装置に加えて、外気導入口に取り付けられた捕集フィルターにも容易にアクセスできるため、メンテナンス性が更に向上する。
【0007】
前記排気ガス浄化装置に被せられるカバー部材を備え、前記カバー部材が、前記排気ガス浄化装置の前方側に設けられた第1開口と、前記排気ガス浄化装置の左右方向一方側に設けられた第2開口とを有し、前記第1開口が前記第2開口よりも小さく形成されていることが好ましい。開口が設けられたカバー部材を被せることにより、塵埃から保護しつつ、排気ガス浄化装置の過熱を抑制できる。作業者は、通常、排気ガス浄化装置に対して前方側(即ち、キャビン側)からアクセスし、左右方向一方側(即ち、脱穀装置側)からはアクセスしないため、第1開口を第2開口よりも小さく形成することで、安全性と通気性の両立を図ることができる。
【0008】
前記グレンタンクと前記脱穀装置との間に配置された揚穀装置が、連結部材を介して前記脱穀装置に連結されており、前記排気ガス浄化装置を通過した排気ガスを機外へ案内するテールパイプの後端部が前記連結部材に支持されていることが好ましい。これにより、脱穀装置の振動がテールパイプに直接的に伝達されないため、テールパイプを強固に支持できる。また、揚穀装置で直接的に支持するのではなく、連結部材でテールパイプを支持することにより、その支持に用いる固定具が、揚穀装置に内蔵されたコンベアなどに干渉する心配がない。
【0009】
前記グレンタンクの後部に、左右方向一方側に向けて膨出した膨出部が形成されており、前記排気ガス浄化装置を通過した排気ガスを機外へ案内するテールパイプの後端が、前記グレンタンクと前記脱穀装置との間に配置された揚穀装置の後端よりも後方に配置され、且つ、前記膨出部の最膨出部位よりも前方に配置されていることが好ましい。これにより、グレンタンクの容量を向上させつつ、排気ガス浄化装置を通過した排気ガスが揚穀装置に吹き付けられることを防ぐうえで都合がよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】コンバインの左側面図
図2】コンバインの右側面図
図3】コンバインの平面図
図4】キャビンの右後方斜視図
図5】脱穀装置と選別装置とを示す縦断面図
図6】プレクリーナ及び排気ガス浄化装置の周辺を示す平面図
図7】プレクリーナ及び排気ガス浄化装置の周辺を示す斜視図
図8】排気ガス浄化装置の左前方斜視図
図9】排気ガス浄化装置の右後方斜視図
図10】排気ガス浄化装置の左後方斜視図
図11】コンバインの伝動構造の一部を示す模式図
図12】エンジンの周辺を示す右前方斜視図
図13】エンジンの周辺を示す右後方斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るコンバインの一例について説明する。
【0012】
[コンバインの全体構造]
まずは、コンバインの全体構造について簡単に説明する。図1~3は、それぞれ、本実施形態のコンバイン100の左側面、右側面、及び平面を示す。図中には、コンバイン100の前後方向、左右方向、及び、上下方向を矢印で示している。コンバイン100は、走行装置1と、刈取装置2と、脱穀装置3と、選別装置4と、貯留装置5と、動力装置6とを備える。
【0013】
走行装置1は、機体フレーム10の下方に設けられている。走行装置1は、トランスミッション11と、左右一対に設けられたクローラ装置12とを有する。トランスミッション11は、機体フレーム10に搭載された動力装置6の動力をクローラ装置12に伝達する。クローラ装置12は、コンバイン100を前後方向に走行させたり、コンバイン100を左右方向に旋回させたりする。
【0014】
刈取装置2は、走行装置1の前方に設けられている。刈取装置2は、リール21と、カッター(刈刃)22と、オーガ(横送りスクリュー)23と、搬送コンベア24とを有する。リール21は、回転することによって圃場の穀稈をカッター22へ案内する。カッター22は、リール21によって案内された穀稈を切断する。オーガ23は、カッター22によって切断された穀稈を所定の位置(搬送コンベア24の穀稈供給口)に集合させる。搬送コンベア24は、オーガ23によって集合させた穀稈を脱穀装置3のフロントロータ33(図5参照)まで搬送する。
【0015】
脱穀装置3は、刈取装置2の後方であって、左右方向一方側(本実施形態では左側)に配置されている。脱穀装置3は、扱胴31と、その扱胴31の下方に設けられた受網32とを有する。扱胴31は、扱室30(図5参照)に収容されている。扱胴31は、回転することによって穀稈を脱穀しながら後方へ搬送する。受網32は、扱胴31によって搬送される穀稈を支持するとともに、脱穀処理物を選別装置4へ落下させる。扱胴31の下方には、穀粒搬送用のスクリューコンベアである一番コンベア143と二番コンベア144(図5参照)とが設けられている。これらは、いずれも脱穀処理物を水平方向(左右方向)に搬送する。
【0016】
選別装置4は、脱穀装置3の下方に設けられている。選別装置4は、前後方向に揺動することにより、受網32から漏下した脱穀処理物を揺動選別する揺動選別装置41を有する。揺動選別装置41で選別された穀粒は、一番コンベア143によって搬送された後、バケット式の揚穀装置7によって上方へ持ち上げられ、グレンタンク51の投入口153に投入される。また、選別装置4は、揺動選別装置41に向けて風を送る送風装置42を有する。送風装置42は、脱穀処理物に含まれる藁屑などの夾雑物を吹き飛ばす。藁屑などの夾雑物は、選別装置4の後方に設けられた排稈口45から外部へ排出される。
【0017】
貯留装置5は、刈取装置2の後方であって、左右方向他方側(本実施形態では右側)に配置されている。貯留装置5は、脱穀装置3と左右方向に隣接して設けられている。貯留装置5は、穀粒を貯留するためのグレンタンク51を備える。グレンタンク51は、選別装置4から一番コンベア143及び揚穀装置7を介して搬送されてきた穀粒を貯留する。揚穀装置7は、脱穀装置3とグレンタンク51との間に配置されている。グレンタンク51は、その後端部の縦軸芯51p周りで機体フレーム10に対して回動可能に支持されている。グレンタンク51内の穀粒を排出する際には、排出オーガ52が用いられる。排出オーガ52は、上下左右方向に回動自在に構成されており、穀粒を任意の場所に排出できる。
【0018】
動力装置6は、運転部13の下方で且つ貯留装置5の前方に設けられている。動力装置6は、エンジン61で構成されている。本実施形態のエンジン61は、ディーゼルエンジンであり、燃料を燃焼させて得た熱エネルギーを運動エネルギーに変換する。より具体的に説明すると、エンジン61は、燃料を燃焼させて得た熱エネルギーを、走行装置1など各部を駆動する動力に変換する。動力装置6は、エンジン61と、電気によって動力を発生させる電動モータとの双方を備えていてもよい。
【0019】
運転部13は、グレンタンク51の前方で機体フレーム10の右側前部に設けられている。運転部13はキャビン14で覆われており、そのキャビン14の後方にグレンタンク51が設けられている。図面には現れていないが、キャビン14の内部には、オペレータが着席する運転座席や、その運転座席の前方に配置された操向ハンドルが設置され、それらの周囲に変速レバーやクラッチレバー、スイッチ類など種々の操作具が配置されている。図4に示すように、運転部13の下部にはエンジン61が配置されている。
【0020】
エンジン61には、エンジン61に供給する空気を濾過しながら吸気するプレクリーナ62と、その吸気した空気中の不純物を除去するエアクリーナ63が接続されている。プレクリーナ62及びエアクリーナ63は、共にエンジン61の上方に位置する。プレクリーナ62はエアクリーナ63よりも、キャビン14の後方で且つ左右方向一方側に配置されている。また、エアクリーナ63は、エンジン61とキャビン14の後部との間に形成された間隙に、左右方向他方側に偏倚して設けられている。プレクリーナ62とエアクリーナ63とは、吸気管69を介して接続されている。吸気管69の上端は、プレクリーナ62の下部に設けられた開口に連結され、吸気管69の下端は、エアクリーナ63の後部であって上記左右方向一方側に設けられた開口に連結されている。
【0021】
[脱穀装置]
次に、脱穀装置3について説明する。図5に示すように、脱穀装置3は、扱室30と、扱胴31と、受網32と、フロントロータ33とを有する。扱室30は、受網32及び機枠300などによって区画形成されている。機枠300には、扱胴31の上方に配置された上部カバー301と、扱胴31の前方に配置された前壁部材302と、扱胴31の後方に配置された後壁部材303とが取り付けられている。搬送コンベア24で搬送されてきた穀稈は、フロントロータ33によって扱室30内へ送り込まれる。フロントロータ33は、穀稈を搬送するだけでなく、予備的な脱穀(プレ脱穀)を行う機能も有する。
【0022】
扱胴31は、前後方向に沿って延びた扱胴軸311と、掻き込みスクリュー312と、ツースバー(扱歯支持部材)313とを有する。扱胴31は、扱胴軸311を中心に回転する。扱胴軸311は、前壁部材302及び後壁部材303によって回転自在に支持されている。扱胴軸311にはエンジン61からの回転動力が伝達される。扱胴軸311は、直線状に形成された構造体であり、掻き込みスクリュー312と複数のツースバー313とを支持する。
【0023】
掻き込みスクリュー312は、扱胴31の前部に配置されている。掻き込みスクリュー312は、螺旋状のインペラ(掻き込み羽根)312bが着脱可能に形成された構造体である。掻き込みスクリュー312は、フロントロータ33によって送り込まれてきた穀稈を掻き込む。つまり、掻き込みスクリュー312は、回転することにより、フロントロータ33によって送り込まれてきた穀稈を取り込んで後方へ送り出す。掻き込みスクリュー312は、螺旋状のインペラ312bが形成された構造に限られず、複数のブレードが形成された構造でも構わない。
【0024】
掻き込みスクリュー312の後方には、扱胴軸311を中心として複数のツースバー313が配置されている。ツースバー313は、複数の扱歯313tが所定の間隔を設けて互いに平行に配置された構造体である。ツースバー313は、掻き込みスクリュー312が送り出した穀稈を脱穀する。つまり、ツースバー313は、回転することにより、掻き込みスクリュー312が送り出した穀稈を揉み込み、また打撃して脱穀物を落とす。ツースバー313は、複数の扱歯313tを有する構造に限られず、螺旋状のブレードを有する構造でもよい。本実施形態では、複数のツースバー313と、各ツースバー313同士に亘って設けられる複数の板部材314とにより、扱胴31の内部空間と扱胴31の外部空間とを隔てて全体として円筒状をなす回転体を構成しているが、これに代えて、円筒形状の回転体に複数の扱歯313tを備えた構造としてもよい。
【0025】
受網32は、扱胴31の下側外周面に沿って設けられ、前後方向から見て略U字状に形成されている。本実施形態では、複数のツースバー313によって構成される回転体の下方を覆うように、受網32が配置されている。受網32は、ツースバー313によって揉み込まれる穀稈を支持する。受網32は、主に網体321によって構成されている。網体321は、所定の間隔で平行にワイヤを張り巡らせてなる構造体である。受網32は、網体321の隙間を通じて、扱胴31により脱穀処理された脱穀処理物を漏下させる。受網32から漏下しなかった穀稈は、受網32の後端部から排稈として排出される。
【0026】
揚穀装置7は、キャビン14の後方であって、脱穀装置3とグレンタンク51との間に配置されている。即ち、揚穀装置7は、脱穀装置3の右側に配置され、グレンタンク51の左側に配置されている。揚穀装置7は、脱穀装置3で処理された脱穀処理物(一番処理物)をグレンタンク51に搬送する。図1のように、揚穀装置7は、バケットコンベア71と、そのバケットコンベア71を内部に収容する揚穀ケース72とを備える。バケットコンベア71は、上下方向に間隔を設けて配置された一対のスプロケット711,712と、それらの間に巻回された無端状のチェーン713と、チェーン713に取り付けられた複数のバケット714とを有する。
【0027】
[選別装置]
次に、選別装置4について説明する。図5に示すように、選別装置4は、揺動選別装置41と、送風装置42とを備える。揺動選別装置41は、脱穀処理物を篩いにかけることによって穀粒を選別する。送風装置42は、脱穀処理物に含まれる藁屑などの夾雑物を吹き飛ばすことによって穀粒を選別する。
【0028】
揺動選別装置41は、フィードパン411と、チャフシーブ412と、ストローラック413とを有する。フィードパン411の後方下部にはチャフシーブ412が配置され、そのチャフシーブ412の後方にストローラック413が配置されている。フィードパン411は、広く平らに形成された構造体である。フィードパン411は、受網32から落下してきた脱穀処理物を受け止める。フィードパン411は、前後に揺動することにより、フィードパン411上の脱穀処理物を均しながら後方に移動させる。このとき、脱穀処理物は、斜めに取り付けられたフィン411fによって左右方向にも満遍なく広げられる。
【0029】
チャフシーブ412は、所定の間隔を設けて相互に平行に並べられた複数のシーブプレート412pを有する。複数のシーブプレート412pは、左右方向に沿って延在しつつ前後方向に並設されている。シーブプレート412pの角度は、脱穀処理物の量に応じて調整可能である。チャフシーブ412は、前後に揺動することにより、フィードパン411から送られてきた脱穀処理物を篩いにかけ、混入している夾雑物を浮き上がらせて穀粒と分離する。チャフシーブ412で選別された脱穀処理物(穀粒のみとなっている「一番処理物」)は、篩い網416を通った後に、第一流穀板431で案内されて一番樋43に落下し、一番コンベア143へ送られる。チャフシーブ412上に残った脱穀処理物は、後方に移動してストローラック413へ送られる。
【0030】
ストローラック413は、所定の間隔を設けて相互に平行に並べられた複数のラックプレート413pを有する。ストローラック413は、前後に揺動することにより、チャフシーブ412から送られてきた脱穀処理物を篩いにかけ、混入している比較的大きな夾雑物を支持して穀粒と分離する。ストローラック413で選別された脱穀処理物(穀粒と少数の小さな夾雑物となっている「二番処理物」)は、第二流穀板441で案内されて二番樋44に落下し、二番コンベア144で送られて選別装置4の前端側に還元搬送され、再度の選別処理に供される。ストローラック413上に残った脱穀処理物は、後方に移動して外部へ排出される。
【0031】
送風装置42は、揺動選別装置41の前部下方に配置され、揺動選別装置41に向かって選別風を供給する。送風装置42は、ファン421と、ファンケース422とを有する。本実施形態では、フィードパン411の下方にファン421が配置され、そのファン421を覆うようにファンケース422が配置されている。ファン421は、所定の角度で取り付けられた複数のファンプレート421pを有する。ファン421は、回転して風を送り出すことにより、チャフシーブ412及びストローラック413に載った夾雑物や、それらから落下した夾雑物を吹き飛ばす。ファンケース422は、板材を折り曲げて形成された構造体である。ファンケース422は、ファン421を覆うとともに、そのファン421が送り出した風を所定の方向へ案内する。
【0032】
[キャビンの後方部位]
上述のように、本実施形態のコンバイン100は、キャビン14の後方に設けられたグレンタンク51と、そのグレンタンク51と左右方向一方側(本実施形態では左側)に隣接して設けられた脱穀装置3と、キャビン14の後方で且つ左右方向一方側に配置されたプレクリーナ62とを備える。更に、このコンバイン100は、図6,7に示すように、グレンタンク51と脱穀装置3との間に設けられ、プレクリーナ62の下方に配置された排気ガス浄化装置9を備える。排気ガス浄化装置9は、エンジン61から排出された排気ガス中の粒子状物質を除去するフィルターであり、DPF(Diesel Particulate Filter)とも呼ばれる。なお、排気ガス浄化装置9は、DPFに代えて、或いはDPFに加えて、SCR(Selective Catalytic Reduction)が含まれた構成でもよい。排気ガス浄化装置9にDPFとSCRの両者が含まれる場合は、それらを共に前後方向に向けた姿勢で左右に並列させて、或いは上下に並列させて、或いは前後に直列させて配置することができる。
【0033】
キャビン14の左窓15は、ヒンジ15aを介して上下に回動自在に支持されている。作業者は、左窓15を開いて運転部13から後方へ身を乗り出すことにより、キャビン14の後方部位に対して清掃などのメンテナンスを行うことができる。プレクリーナ62及び排気ガス浄化装置9の双方がキャビン14の後方で且つ左右方向一方側(即ち、左側)に配置され、しかも上下に配置されているため、それらに同時にアクセスすることが容易である。それ故、作業姿勢を変更せずに効率的に作業を行うことができ、キャビン14の後方部位におけるメンテナンス性が向上する。本実施形態では、図6のようにプレクリーナ62の真下に排気ガス浄化装置9が配置され、それらが平面視で重複した位置関係にあるため、メンテナンス性の向上効果が大きい。
【0034】
本実施形態のコンバイン100は、キャビン14に設けられた空調装置16に外気を導入するための外気導入口16wと、その外気導入口16wに取り付けられた捕集フィルター16fとを備える(図7参照)。外気導入口16wは、キャビン14の左右方向一方側の壁部14Lに形成され、更に言えば、その壁部14Lの後部を構成する傾斜面14aに形成されている。プレクリーナ62や排気ガス浄化装置9と同じ左側に外気導入口16wが設けられているので、その外気導入口16wに取り付けられた捕集フィルター16fにも容易にアクセスでき、メンテナンス性が更に向上する。本実施形態では、外気導入口16wに対向してプレクリーナ62が配置されているため、メンテナンス性の向上効果が大きい。
【0035】
空調装置16は、キャビン14の上部外面を構成するアウタールーフ14rの下方に設置されている。捕集フィルター16fは、外気導入口16wを通じて導入される外気に含まれた塵埃を捕集するための網部材であり、例えばパンチングメタルにより構成される。外気導入口16wの外側には、図4に示すような導入量制御板16pが被せられる(図7では、導入量制御板16pを取り外した状態を示している)。導入量制御板16pは、上下に隙間が設けられるようにして壁部14L(の傾斜面14a)に取り付けられる。このため、上下の隙間を通じて外気の流入が可能となり、外気導入口16wの面積を大きくしながらも、捕集フィルター16fの目詰まりを抑制できる。
【0036】
図8に示すように、排気ガス浄化装置9にはカバー部材90を被せており、塵埃から排気ガス浄化装置9を守っている。しかし、その反面、排気ガス浄化装置9の過熱が懸念されるため、カバー部材90の側方に開口を設けて通気性を確保している。本実施形態では、カバー部材90が、排気ガス浄化装置9の前方側(即ち、キャビン14側)に設けられた第1開口91と、排気ガス浄化装置9の左右方向一方側(即ち、脱穀装置3側)に設けられた第2開口92とを有し、前者が後者よりも小さく形成されている。作業者は、通常、排気ガス浄化装置9に対してキャビン14側からアクセスし、脱穀装置3側からはアクセスしないため、これによって安全性と通気性の両立を図ることができる。
【0037】
カバー部材90は、排気ガス浄化装置9の上方に配置される上面部90uと、前方に配置される前方側面部90fと、右側に配置される右方側面部90r(図6参照)とを有し、その前方側面部90fに対して多数の第1開口91が形成されている。図8では、前方側面部90fの一部の領域にのみ第1開口91が形成されているが、実際には前方側面部90fの略全域に形成されている。第1開口91は、人の手や指が入らない程度の大きさを持つ小穴であることが好ましい。
【0038】
また、図9に示すように、カバー部材90は、排気ガス浄化装置9の左右方向他方側(即ち、グレンタンク51側)に設けられた第3開口93を有する。第3開口93は、第2開口92よりも小さく形成されている。これにより、グレンタンク51を横外方に向けて縦軸芯51p周りで回動し、脱穀装置3の右側を開放してメンテナンス作業を行う場合の安全性が高められる。第3開口93は、カバー部材90の右方側面部90rに多数形成されている。図9では、右方側面部90rの一部の領域にのみ第3開口93が形成されているが、実際には右方側面部90rの略全域に形成されている。第3開口93は、人の手や指が入らない程度の大きさを持つ小穴であることが好ましい。
【0039】
カバー部材90は、排気ガス浄化装置9の左側に配置される側面を有しておらず、排気ガス浄化装置9の左側は第2開口92を介して全体的に開放されている。これにより通気性を目一杯に高めて、放熱が効率的に行われるようにしている。同様の理由により、カバー部材90は、排気ガス浄化装置9の後方に配置される側面を有しておらず、排気ガス浄化装置9の後方は全体的に開放されている(図9、10参照)。但し、これに限られず、例えば、排気ガス浄化装置9の左側にもカバー部材90の側面を配置し、その側面に第1開口91よりも大きい第2開口を形成することも可能である。
【0040】
排気ガス浄化装置9は、その排気ガス浄化装置9を通過した排気ガスを機外へ案内するテールパイプ94を有する。図10に示すように、テールパイプ94の後端部94bは、左側に傾斜した姿勢で支持され、脱穀装置3の上方に向けて排気ガスを案内するように構成されている。これにより、排出オーガ52との上下方向の間隔を確保しつつ、揚穀装置7に排気ガスを吹き付けないようにできる。グレンタンク51と脱穀装置3との間に配置された揚穀装置7は、連結部材78を介して脱穀装置3に連結されており、テールパイプ94の後端部94bは連結部材78に支持されている。更に言えば、テールパイプ94の後端部94bは、支持部材95を介して連結部材78に支持されている。
【0041】
連結部材78は、その左右方向一方側(即ち、左側)において脱穀装置3にボルト78bで固定され、その左右方向他方側(即ち、右側)において揚穀ケース72に溶接されている。テールパイプ94の後端部94bが連結部材78で支持されているため、扱胴31の回転に伴う脱穀装置3の大きな振動がテールパイプ94に直接的に伝達されず、テールパイプ94を強固に支持できる。また、揚穀装置7で直接的に支持するのではなく、連結部材78でテールパイプ94を支持することにより、その支持に用いる固定具(例えば、ボルトやナット)が揚穀ケース72内のバケットコンベア71に干渉する心配がない。
【0042】
図6のように、グレンタンク51の後部には、左右方向一方側に向けて膨出した膨出部51sが形成されている。図示の都合上、図10では膨出部51sを透過させて描いている。膨出部51sは、揚穀装置7の後方に配置されている。また、テールパイプ94の後端94eは、揚穀装置7の後端7eよりも後方に配置され、且つ、膨出部51sの最膨出部位51eよりも前方に配置されている。かかる構成によれば、グレンタンク51の容量を向上させつつ、排気ガス浄化装置9を通過した排気ガスが揚穀装置7に吹き付けられることを防ぐうえで都合がよい。
【0043】
[動力伝動機構]
図11~13に示すように、コンバイン100は、空調装置16のコンプレッサ17の駆動軸17aにエンジン61からの回転動力を伝達する動力伝動機構170を備える。動力伝動機構170は、伝動ベルト170bを介して回転動力を伝達するベルト伝動機構である。伝動ベルト170bは、エンジン61の出力軸61aとコンプレッサ17の駆動軸17aとに亘って架け渡されている。テンションローラ171は、伝動ベルト170bのテンションを維持する。出力軸61aの上方には、ベルト64bを介して回転動力が伝達される冷却ファン64が配置されている。
【0044】
このコンバイン100は、更に、グレンタンク51の下部コンベア軸53にエンジン61からの回転動力を伝達する動力伝動機構510を備える。動力伝動機構510は、伝動ベルト510bを介して回転動力を伝達するベルト伝動機構である。伝動ベルト510bは、エンジン61の出力軸61aとグレン入力軸511とに亘って架け渡されている。エンジン61からの回転動力は、出力軸61aから伝動ベルト510bを介してグレン入力軸511に伝達された後、ベベルギア機構512を介して下部コンベア軸53に伝達される。下部コンベア軸53は、グレンタンク51内の穀粒を水平方向に搬送する横送りオーガ57の駆動軸である。
【0045】
下部コンベア軸53の後端部には、ベベルギア機構513を介して縦コンベア軸54の下端部が連動連結されている。そして、その縦コンベア軸54の上端部には、チェーン伝動機構514、ベベルギア機構515、チェーン伝動機構516及びベベルギア機構517を介して、横コンベア軸55の後端部が連動連結されている。縦コンベア軸54は、グレンタンク51内の穀粒を上方へ搬送する縦送りオーガ58の駆動軸であり、横コンベア軸55は排出オーガ52の駆動軸である。
【0046】
図12,13に示すように、コンプレッサ17は、エンジン61の後方で左右方向に延びたエンジン横フレーム65によって支持されている。コンプレッサ17は、その上部と下部とで支持されており、コンプレッサ17の上部は、エンジン横フレーム65に溶接された上部固定部材66に固定され、コンプレッサ17の下部は、エンジン横フレーム65に溶接された下部固定部材67に固定されている。また、テンションローラ171を支持するアーム172の後端部172aは、スプリング173及びブラケット174を介して上部固定部材66に支持され、アーム172の回動支点172bは下部固定部材67に支持されている。
【0047】
エンジン61の出力軸61aとグレン入力軸511との間には、グレンクラッチ56が設けられている。運転部13には、グレンクラッチ56の切り替え操作を行うためのグレンクラッチレバー18が設けられている(図3参照)。グレンクラッチ56は、伝動ベルト510bに作用するテンションプーリ561と、そのテンションプーリ561を支持するアーム562とを有する。アーム562の後端部562aには、グレンクラッチレバー18に繋がったワイヤ18wがスプリング563を介して連結されている。アーム562の回動支点562bは、エンジン61の右後方で上下方向に延びたエンジン縦フレーム68によって支持されている。
【0048】
動力伝動機構170と動力伝動機構510とは、同一の出力軸61aから回転動力を取り出しており、伝動ベルト170bが架け渡されるプーリ170pは、伝動ベルト510bが架け渡されるプーリ510pの外側(機体の右側)に配置されている。そのため、排出オーガ52を駆動してグレンタンク51内の穀粒を排出する際に、伝動ベルト510bが切れるなどのトラブルを生じた場合であっても、ベルト部品の交換を簡便に行うことができる。
【0049】
本実施形態では普通型コンバインの例を示したが、これに限られず、本発明は自脱型コンバインであってもよい。
【0050】
本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しな
い範囲内で種々の改良変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
3 脱穀装置
7 揚穀装置
9 排気ガス浄化装置
13 運転部
14 キャビン
16 空調装置
16f 捕集フィルター
16w 外気導入口
51 グレンタンク
51e 最膨出部位
51s 膨出部
61 エンジン
62 プレクリーナ
78 連結部材
90 カバー部材
91 第1開口
92 第2開口
93 第3開口
94 テールパイプ
94b 後端部
100 コンバイン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13