(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】5-ヘテロアリール-1H-ピラゾール-3-アミン誘導体からなる医薬
(51)【国際特許分類】
A61K 31/497 20060101AFI20240829BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240829BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20240829BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20240829BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20240829BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240829BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240829BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240829BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240829BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240829BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240829BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240829BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240829BHJP
C07D 413/14 20060101ALI20240829BHJP
C07D 401/14 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
A61K31/497
A61K9/127
A61K31/506
A61K31/5377
A61K31/7068
A61K39/395 T
A61K45/00
A61K47/24
A61K47/28
A61K47/32
A61K47/34
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 111
A61P43/00 121
C07D413/14
C07D401/14
(21)【出願番号】P 2023087014
(22)【出願日】2023-05-26
【審査請求日】2024-02-29
(31)【優先権主張番号】P 2022087171
(32)【優先日】2022-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002912
【氏名又は名称】住友ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(72)【発明者】
【氏名】上岡 正児
(72)【発明者】
【氏名】坂 仁志
(72)【発明者】
【氏名】松岡 誠
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 亘
(72)【発明者】
【氏名】島田 尚明
(72)【発明者】
【氏名】林 健人
(72)【発明者】
【氏名】楳原 宏紀
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特許第7082256(JP,B2)
【文献】特表2012-512249(JP,A)
【文献】特表2019-509990(JP,A)
【文献】特表2018-528172(JP,A)
【文献】特表2017-508787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
C07D
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化合物から選択される化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬:
5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル、
5-({5-[3-(3-アミノプロポキシ)-5-メトキシピリジン-4-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル、又は
5-({5-[4-(3-アミノプロポキシ)-2-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル。
【請求項2】
以下の化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有する、請求項1に記載の医薬:
5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル。
【請求項3】
以下の化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有する、請求項1に記載の医薬:
5-({5-[3-(3-アミノプロポキシ)-5-メトキシピリジン-4-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル。
【請求項4】
以下の化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有する、請求項1に記載の医薬:
5-({5-[4-(3-アミノプロポキシ)-2-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬を内封したリポソームを含有する医薬組成物。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬であって、該医薬はそれを内封したリポソームに含まれる医薬。
【請求項8】
前記リポソームが、リン脂質をさらに含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記リポソームが、
(1)請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬、及び
(2)リン脂質、
を含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記リン脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、大豆レシチン、卵黄レシチン、水素添加卵黄レシチン、及び水素添加大豆レシチンからなる群より選択される一種又はそれらの二種以上の組み合わせ物である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記リポソームが、さらにステロール類を含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記ステロール類が、コレステロールである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記リポソームが、さらにポリマー修飾脂質を含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記ポリマー修飾脂質のポリマー部分が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、メトキシポリビニルアルコール、メトキシポリビニルピロリドン、エトキシポリエチレングリコール、エトキシポリプロピレングリコール、エトキシポリビニルアルコール、エトキシポリビニルピロリドン、プロポキシポリエチレングリコール、プロポキシポリプロピレングリコール、プロポキシポリビニルアルコール、又はプロポキシポリビニルピロリドンである、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
ポリマー修飾脂質の脂質部分が、ホスファチジルエタノールアミン又はジアシルグリセロールである、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記リポソームが、さらに、無機酸、無機酸塩、有機酸、有機酸塩、糖類、緩衝剤、酸化防止剤、及びポリマー類からなる群から選択される添加物を含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬を有効成分として含有する、癌の治療剤及び/又は予防剤。
【請求項18】
前記癌が、扁平上皮がん、メラノーマ、急性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、真性多血症、悪性リンパ腫、形質細胞腫瘍、多発性骨髄腫、脳腫瘍、頭頸部がん、頭頸部扁平上皮癌、食道がん、甲状腺がん、肺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、胸腺腫・胸腺がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、胃がん、胆のう・胆管がん、肝がん、肝細胞がん、膵がん、結腸がん、直腸がん、MSI-high大腸がん、肛門がん、消化管間質腫瘍、絨毛上皮がん、子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん、白金製剤抵抗性卵巣がん、PARP阻害剤抵抗性卵巣がん、膀胱がん、尿路上皮がん、腎がん、腎細胞がん、前立腺がん、睾丸腫瘍、精巣胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、ウイルムス腫瘍、悪性黒色腫、神経芽細胞腫、骨肉種、ユーイング肉腫、軟骨肉腫、軟部肉腫、又は皮膚がんからなる群から選択される少なくとも一種の癌である、請求項1
7に記載の治療剤及び/又は予防剤。
【請求項19】
前記癌が、頭頚部がん、扁平上皮がん、非小細胞肺がん、肛門がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、卵巣がん、白金製剤抵抗性卵巣がん、又は子宮体がんからなる群から選択される少なくとも一種の癌である、請求項1
7に記載の治療剤及び/又は予防剤。
【請求項20】
癌の治療及び/又は予防に使用するための、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項21】
前記癌が、扁平上皮がん、メラノーマ、急性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、真性多血症、悪性リンパ腫、形質細胞腫瘍、多発性骨髄腫、脳腫瘍、頭頸部がん、頭頸部扁平上皮癌、食道がん、甲状腺がん、肺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、胸腺腫・胸腺がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、胃がん、胆のう・胆管がん、肝がん、肝細胞がん、膵がん、結腸がん、直腸がん、MSI-high大腸がん、肛門がん、消化管間質腫瘍、絨毛上皮がん、子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん、白金製剤抵抗性卵巣がん、PARP阻害剤抵抗性卵巣がん、膀胱がん、尿路上皮がん、腎がん、腎細胞がん、前立腺がん、睾丸腫瘍、精巣胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、ウイルムス腫瘍、悪性黒色腫、神経芽細胞腫、骨肉種、ユーイング肉腫、軟骨肉腫、軟部肉腫、又は皮膚がんからなる群から選択される少なくとも一種の癌である、請求項
20に記載の医薬。
【請求項22】
併用薬物又はその製薬学的に許容される塩と併用して、がんを治療するための、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬であって、当該併用薬物が、ホルモン療法剤、化学療法剤、免疫療法剤ならびに細胞増殖因子およびその受容体作用を阻害する薬剤からなる群から選択される少なくとも1種以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項23】
併用薬物又はその製薬学的に許容される塩と併用して、がんを治療するための、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬であって、当該併用薬物が、
フルオロウラシル、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、ガロシタビン、エミテフール、カペシタビン、シタラビン、塩酸ドキソルビシン、ゲムシタビン、メソトレキセート、ペメトレキセド、エトポシド、イリノテカン、トポテカン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、電離放射線、ベバシズマブ、リポソーム化ドキソルビシン、ルカパリブ、オラパリブ、ニラパリブ、トラベクテジン、パゾパニブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、イピリムマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ、ラロトレクチニブ、エントレクチニブ、ナブパクリタキセル、エルロチニブ、リポソーム化イリノテカン、ロイコボリン、セツキシマブ、エリブリン、イホスファミド、ダカルバジンからなる群から選択される少なくとも1種以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項24】
併用薬物又はその製薬学的に許容される塩と併用して、がんを治療するための、(a)請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬であって、(b)当該併用薬物が、ホルモン療法剤、化学療法剤、免疫療法剤ならびに細胞増殖因子およびその受容体作用を阻害する薬剤からなる群から選択される少なくとも1種以上であり、
(1)(a)が(b)と同時に投与される、
(2)(a)が (b)の投与後に投与される、又は
(3)(b)が (a)の投与後に投与されること、を特徴とする、
請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項25】
前記併用薬物(b)が、化学療法剤又は免疫療法剤である、
請求項2
4に記載の医薬。
【請求項26】
前記併用薬物(b)が、ゲムシタビンである、
請求項2
4に記載の医薬。
【請求項27】
前記(a)
医薬が、前記(b)ゲムシタビンと同時に投与される請求項2
6に記載の医薬。
【請求項28】
前記(a)
医薬が、前記(b)ゲムシタビンの投与後約24~48時間以内に投与される請求項2
6に記載の医薬。
【請求項29】
前記(b)ゲムシタビンが、前記(a)
医薬の投与後約24~48時間以内に投与される請求項2
6に記載の医薬。
【請求項30】
前記併用薬物(b)が、抗PD-1抗体である、
請求項2
4に記載の医薬。
【請求項31】
前記(a)
医薬が、前記(b)抗PD-1抗体と同時に投与される請求項3
0に記載の医薬。
【請求項32】
前記(b)抗PD-1抗体が、前記(a)
医薬の投与後約72~96時間以内に投与される、請求項3
0に記載の医薬。
【請求項33】
前記(a)
医薬が、前記(b)抗PD-1抗体の投与後約72~96時間以内に投与される請求項3
0に記載の医薬。
【請求項34】
併用薬物と組み合わせてなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬を含む医薬組成物であって、当該併用薬物が、ホルモン療法剤、化学療法剤、免疫療法剤ならびに細胞増殖因子およびその受容体作用を阻害する薬剤からなる群から選択される少なくとも1種以上である、医薬組成物。
【請求項35】
併用薬物と組み合わせてなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬を含む医薬組成物であって、当該併用薬物が、
フルオロウラシル、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、ガロシタビン、エミテフール、カペシタビン、シタラビン、塩酸ドキソルビシン、ゲムシタビン、メソトレキセート、ペメトレキセド、エトポシド、イリノテカン、トポテカン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、電離放射線、ベバシズマブ、リポソーム化ドキソルビシン、ルカパリブ、オラパリブ、ニラパリブ、トラベクテジン、パゾパニブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、イピリムマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ、ラロトレクチニブ、エントレクチニブ、ナブパクリタキセル、エルロチニブ、リポソーム化イリノテカン、ロイコボリン、セツキシマブ、エリブリン、イホスファミド、ダカルバジンからなる群から選択される少なくとも1種以上である、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、Checkpoint Kinase 1(CHK1)を阻害し、デオキシリボ核酸(DNA)複製、染色体分離又は細胞分裂における不具合を特徴とする癌を治療又は予防する医薬として有用な5-ヘテロアリール-1H-ピラゾール-3-アミン誘導体及びその製薬学的に許容される塩、これらを含有する医薬組成物、並びにこれらを含有するリポソーム、又はこれら組成物若しくはリポソームを含有するCHK1が関与する病態の治療剤若しくは予防剤に関する。
【背景技術】
【0002】
CHK1は、細胞周期におけるDNA損傷のチェックポイントシグナル伝達経路において、ATRの下流にあるセリン/トレオニンタンパク質キナーゼである。哺乳類細胞では、CHK1は電離放射線などにより引き起こされるDNA損傷、又はがん細胞などにおける過剰な細胞増殖やゲノム不安定性に起因するDNA複製ストレスに応答して、ATR依存的にリン酸化される(非特許文献1~5)。CHK1を活性化するこのリン酸化により、CHK1はCDC25Aをリン酸化し、CDC25AによるサイクリンE/CDK2の脱リン酸化が阻害され、S期からの進行が停止する。また、CHK1は、CDC25Cをリン酸化して、CDC25CによるサイクリンB/CDK1の脱リン酸化を阻害し、G2M期からの進行を停止させる。いずれの場合も、CDK活性の制御が細胞周期の停止を誘導して、DNA損傷存在下での細胞分裂を妨げることで、DNA損傷の修復を促す。CHK1阻害は、がん細胞において、細胞周期におけるDNA損傷のチェックポイント機能を抑制することで、DNA損傷存在下においてDNA修復不全や制御不能なDNA合成などを引き起こし、その結果、DNA断片化、replication catastrophe、及び細胞死を誘導する(特許文献1~2)。
【0003】
CHK1の種々の阻害剤(特許文献1~3)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2010/077758号
【文献】国際公開第2012/064548号
【文献】国際公開第2017/132928号
【非特許文献】
【0005】
【文献】Dai Y and Grant S, Clin Cancer Res, 16(2):376-383 (2010)
【文献】Benada J and Macurek L, Biomolecules, 5:1912-1937 (2015)
【文献】King C, Mol Cancer Ther, 14(9):2004-2013 (2015)
【文献】Dent P, Expert Opinion on Investigational drugs, 28(12):1095-1100 (2019)
【文献】Evangelisti G. et al, Expert Opinion on Investigational Drugs, 29(8):779-792 (2020)
【文献】David H. et al. J Clin Oncol, 34:1764-1771 (2016)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、CHK1阻害に基づく抗がん作用を発揮する化合物を提供する。好ましくは、CHK1阻害活性を抑制する化合物濃度とhERG電流を抑制する化合物濃度に乖離幅を有する化合物、肝毒性等の重篤な副作用を引き起こすMBIに基づくCYP阻害を示さない化合物、CHK1阻害活性を抑制する化合物濃度と血球系細胞への毒性を引き起こす化合物濃度に乖離幅を有する化合物、及び/又は、リポソームに内封され、リポソームから徐放的に放出される化合物を提供する。すなわち、副作用を低減しつつ治療効果の高い抗腫瘍剤を提供する。
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記式(1)で表される化合物又はその製薬学的に許容される塩(以下、「本開示の化合物」と称することもある。)が、CHK1に対して強い阻害作用を有することにより、優れた抗腫瘍作用を示すことを見出し、本開示を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本開示は、以下の通りである。
【0009】
〔項1〕
【化7】
[式中、
R
1は、水素原子、置換されていてもよいC
1-6アルキル、置換されていてもよいC
3-10シクロアルキル、置換されていてもよい3~10員の飽和複素環基、置換されていてもよいC
6-10アリール、又は置換されていてもよい5~12員のヘテロアリールを表し、
R
2は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、カルボキシル、スルホン酸、リン酸、-OR
3、-SR
3、-COR
4、-CO
2R
4、-CONR
5R
6、-SO
2R
4、-SO
2NR
5R
6、-OCOR
4、-OCO
2R
4、-OCONR
5R
6、-NR
5R
6、-NR
7COR
4、-NR
7CO
2R
4、-NR
7CONR
5R
6、-NR
7SO
2R
4、-NR
7SO
2NR
5R
6、置換されていてもよいC
1-6アルキル、置換されていてもよいC
2-6アルケニル、置換されていてもよいC
2-6アルキニル、置換されていてもよいC
3-10シクロアルキル、置換されていてもよい3~10員の飽和複素環基、置換されていてもよいC
6-10アリール、又は置換されていてもよい5~12員のヘテロアリールを表し、
R
3は、水素原子又はC
1-6アルキルを表し、
R
4は、C
1-6アルキルを表し、
R
5、R
6及びR
7は、それぞれ独立して、水素原子、又はC
1-6アルキルを表し、ここにおいて、同一の窒素原子と結合するR
5及びR
6が共にC
1-6アルキルのとき、これらはそれぞれが結合する窒素原子と一緒になって、3~8員の含窒素飽和複素環を形成していてもよく、
X、Y及びZは、それぞれ独立して、CR
8又は窒素原子を表し、ここにおいて、X、Y及びZは同時にCR
8ではなく、
R
8は、複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、カルボキシル、スルホン酸、リン酸、-OR
9、-SR
9、-COR
10、-CO
2R
10、-CONR
11R
12、-SO
2R
10、-SO
2NR
11R
12、-OCOR
10、-OCO
2R
10、-OCONR
11R
12、-NR
11R
12、-NR
13COR
10、-NR
13CO
2R
10、-NR
13CONR
11R
12、-NR
13SO
2R
10、-NR
13SO
2NR
11R
12、置換されていてもよいC
1-6アルキル、置換されていてもよいC
2-6アルケニル、置換されていてもよいC
2-6アルキニル、置換されていてもよいC
3-10シクロアルキル、置換されていてもよい3~10員の飽和複素環基、置換されていてもよいC
6-10アリール、又は置換されていてもよい5~12員のヘテロアリールを表し、
R
9は、水素原子又はC
1-6アルキルを表し、
R
10は、C
1-6アルキルを表し、
R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立して、水素原子又はC
1-6アルキルを表し、ここにおいて、同一の窒素原子と結合するR
11及びR
12が共にC
1-6アルキルのとき、これらはそれぞれが結合する窒素原子と一緒になって、3~8員の含窒素飽和複素環を形成していてもよく、
Lは、単結合又は置換されていてもよいC
1-6アルキレンを表し、
Vは、単結合、置換されていてもよいC
3-10シクロアルキレン又は置換されていてもよい3~10員の二価飽和複素環基を表し、
Wは、単結合又は置換されていてもよいC
1-6アルキレンを表し、
Qは、水素原子又はNHR
14を表し、
R
14は、水素原子、置換されていてもよいC
1-6アルキル、置換されていてもよいC
3-10シクロアルキル、又は置換されていてもよい3~10員の飽和複素環基を表す]で表される、
化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項2〕
R
1、R
2、R
8、R
14、L、V、及びWにおける置換されていてもよいC
1-6アルキル、置換されていてもよいC
2-6アルケニル、置換されていてもよいC
2-6アルキニル、置換されていてもよいC
3-10シクロアルキル、置換されていてもよい3~10員の飽和複素環基、置換されていてもよいC
6-10アリール、置換されていてもよい5~12員のヘテロアリール、置換されていてもよいC
1-6アルキレン、置換されていてもよいC
3-10シクロアルキレン、又は置換されていてもよい3~10員の二価飽和複素環基が、それぞれ独立して
(1)ハロゲン原子、
(2)水酸基、
(3)C
6-10アリール、
(4)5~12員のヘテロアリール、
(5)C
1-6アルキル、
(6)C
2-6アルケニル、
(7)C
2-6アルキニル、
(8)C
1-6アルコキシ、
(9)C
1-6アルキルチオ
(10)C
3-10シクロアルキル、
(11)3~10員の飽和複素環基、
(12)カルボキシル、
(13)-COR
15、
(14)-CO
2R
15、
(15)-CONR
16R
17、
(16)-NR
16R
17、
(17)-NR
18COR
15、
(18)-NR
18CO
2R
15、
(19)-NR
18SO
2R
15、
(20)-NR
18CONR
16R
17、
(21)-NR
18SO
2NR
16R
17、
(22)-SO
2R
15、
(23)-SO
2NR
16R
17、
(24)-OCOR
15、
(25)-OCO
2R
15、
(26)-OCONR
16R
17、
(27)スルホン酸、
(28)リン酸、
(29)シアノ、及び
(30)ニトロ
からなる群から選択される同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよく、
ここにおいて、前記(3)C
6-10アリール、(4)5~12員のヘテロアリール、(5)C
1-6アルキル、(6)C
2-6アルケニル、(7)C
2-6アルキニル、(8)C
1-6アルコキシ、(9)C
1-6アルキルチオ、(9)C
3-10シクロアルキル及び(10)3~10員の飽和複素環基に示す基が、
(a)ハロゲン原子、
(b)水酸基、
(c)C
6-10アリール、
(d)5~12員のヘテロアリール、
(e)C
1-6アルキル、
(f)C
2-6アルケニル、
(g)C
2-6アルキニル、
(h)C
1-6アルコキシ、
(i)C
3-10シクロアルキル、
(j)3~10員の飽和複素環基、
(k)カルボキシル、
(l)-COR
15、
(m)-CO
2R
15、
(n)-CONR
16R
17、
(o)-NR
16R
17、
(p)-NR
18COR
15、
(q)-NR
18SO
2R
15、
(r)-SO
2R
15、
(s)-SO
2NR
16R
17、
(t)スルホン酸、
(u)リン酸、
(v)シアノ、及び
(w)ニトロ
からなる群から選択される同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよく、
R
15が、複数ある場合はそれぞれ独立して、C
1-6アルキルであり、
R
16及びR
17が、それぞれ独立して、水素原子又はC
1-6アルキルであり、R
16又はR
17が複数ある場合は、R
16又はR
17のそれぞれは同一でも異なってもよく、ここにおいて、同一の窒素原子と結合するR
16及びR
17が共にC
1-6アルキルのとき、これらはそれぞれが結合する窒素原子と一緒になって、3~8員の含窒素飽和複素環を形成していてもよく、
R
18が、水素原子又はC
1-6アルキルである、
項1に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項3〕
R
1、R
2、R
8、R
14、L、V、及びWにおける置換されていてもよいC
1-6アルキル、置換されていてもよいC
2-6アルケニル、置換されていてもよいC
2-6アルキニル、置換されていてもよいC
3-10シクロアルキル、置換されていてもよい3~10員の飽和複素環基、置換されていてもよいC
6-10アリール、置換されていてもよい5~12員のヘテロアリール、置換されていてもよいC
1-6アルキレン、置換されていてもよいC
3-10シクロアルキレン、又は置換されていてもよい3~10員の二価飽和複素環基が、それぞれ独立して
(1)ハロゲン原子、
(2)水酸基、
(3)C
6-10アリール、
(4)5~12員のヘテロアリール、
(5)ハロゲン原子、及び水酸基からなる群から選択される1~3の置換基で置換されていてもよいC
1-6アルキル、
(6)C
2-6アルケニル、
(7)C
2-6アルキニル、
(8)C
1-6アルコキシ、
(9)C
3-10シクロアルキル、
(10)3~10員の飽和複素環基、
(11)カルボキシル、
(12)-COR
15、
(13)-CO
2R
15、
(14)-CONR
16R
17、
(15)-NR
16R
17、
(16)-SO
2R
15、
(17)-SO
2NR
16R
17、
(18)スルホン酸、
(19)リン酸、
(20)シアノ、及び
(21)ニトロ
からなる群から選択される同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよく、
R
15が、複数ある場合はそれぞれ独立して、C
1-6アルキルであり、
R
16及びR
17が、それぞれ独立して、水素原子又はC
1-6アルキルを表し、R
16又はR
17が複数ある場合は、R
16又はR
17のそれぞれは同一でも異なってもよく、ここにおいて、同一の窒素原子と結合するR
16及びR
17が共にC
1-6アルキルのとき、これらはそれぞれが結合する窒素原子と一緒になって、3~8員の含窒素飽和複素環を形成していてもよい、
項1~2のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項4〕
R
1、R
2、R
8、L、V、及びWにおける置換されていてもよいC
1-6アルキル、置換されていてもよいC
2-6アルケニル、置換されていてもよいC
2-6アルキニル、置換されていてもよいC
3-10シクロアルキル、置換されていてもよい3~10員の飽和複素環基、置換されていてもよいC
6-10アリール、置換されていてもよい5~12員のヘテロアリール、置換されていてもよいC
1-6アルキレン、置換されていてもよいC
3-10シクロアルキレン、又は置換されていてもよい3~10員の二価飽和複素環基が、それぞれ独立して
(1)ハロゲン原子、
(2)水酸基、
(3)フェニル、
(4)5~6員のヘテロアリール、
(5)ハロゲン原子、及び水酸基からなる群から選択される1~3の置換基で置換されていてもよいC
1-6アルキル、
(6)C
1-6アルコキシ、
(7)C
3-7シクロアルキル、
(8)3~7員の飽和複素環基、
(9)-COR
15、
(10)-CO
2R
15、
(11)-CONR
16R
17、
(12)-NR
16R
17、
(13)-SO
2R
15、
(14)-SO
2NR
16R
17、及び
(15)シアノ
からなる群から選択される同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよく、
R
15が、複数ある場合はそれぞれ独立して、C
1-6アルキルであり、
R
16及びR
17が、それぞれ独立して、水素原子又はC
1-6アルキルであり、R
16又はR
17が複数ある場合は、R
16又はR
17のそれぞれは同一でも異なってもよく、ここにおいて、同一の窒素原子と結合するR
16及びR
17が共にC
1-6アルキルのとき、これらはそれぞれが結合する窒素原子と一緒になって、3~8員の含窒素飽和複素環を形成していてもよい、
項1~3のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項5〕
R
1が、水素原子、又は1~3個のフッ素原子で置換されていてもよいC
1-6アルキルである、
項1~4のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項6〕
R
1が、1~3個のフッ素原子で置換されていてもよいメチル基、又はエチル基である、
項1~4のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項7〕
R
1が、1~3個のフッ素原子で置換されていてもよいメチル基である、
項1~4のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項8〕
R
1が、メチル基である、
項1~4のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項9〕
R
2が、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、-OR
3、C
1-6アルキル、C
3-10シクロアルキル、又は3~10員の飽和複素環基である、
項1~8のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項10〕
R
2が、ハロゲン原子、シアノ、又は1~3個のハロゲン原子で置換されていてもよいC
1-6アルキルである、
項1~8のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項11〕
R
2が、シアノである、
項1~8のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項12〕
R
8が、複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、-OR
9、-CO
2R
10、-CONR
11R
12、-NR
11R
12、-NR
13COR
10、C
1-6アルキル(該アルキルは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、フェニル、5~6員のヘテロアリール、C
1-6アルコキシ、C
3-7シクロアルキル、3~7員の飽和複素環基、-CONR
16R
17、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、C
3-10シクロアルキル(該シクロアルキルは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、フェニル、5~6員のヘテロアリール、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、C
3-7シクロアルキル、3~7員の飽和複素環基、-CONR
16R
17、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、3~10員の飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、フェニル、5~6員のヘテロアリール、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、C
3-7シクロアルキル、3~7員の飽和複素環基、-CONR
16R
17、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、フェニル(該フェニルは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、フェニル、5~6員のヘテロアリール、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、C
3-7シクロアルキル、3~7員の飽和複素環基、-CONR
16R
17、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、又は5~6員のヘテロアリール(該ヘテロアリールは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、フェニル、5~6員のヘテロアリール、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、C
3-7シクロアルキル、3~7員の飽和複素環基、-CONR
16R
17、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)である、
項1~11のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項13〕
R
8が、複数ある場合はそれぞれ独立して、
水素原子、
ハロゲン原子
-OR
9、
C
1-6アルキル(該アルキルは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、
C
3-7シクロアルキル(該シクロアルキルは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、
3~7員の飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、
フェニル(該フェニルは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、又は
5~6員のヘテロアリール(該ヘテロアリールは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)である、
項1~11のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項14〕
R
8が、複数ある場合はそれぞれ独立して、
水素原子、
フッ素原子、
塩素原子、
臭素原子、
C
1-6アルキル(該アルキルは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~2個の置換基で置換されていてもよい)、又は
5~6員のヘテロアリール(該ヘテロアリールは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~2個の置換基で置換されていてもよい)である、
項1~11のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項15〕
Lが、
単結合、又は
C
1-6アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)である、項1~14のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項16〕
Vが、
単結合、
C
3-10シクロアルキレン(該シクロアルキレンは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、又は
3~10員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、水酸基、1~2個の水酸基又はフッ素原子で置換されていてもよいC
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)である、
項1~15のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項17〕
Wが、
単結合、又は
C
1-6アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)である、
項1~16のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項18〕
R
14が、
水素原子、
C
1-6アルキル(該アルキルは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、
C
3-10シクロアルキル(該シクロアルキルは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、又は
3~10員の飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)である、
項1~17のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項19〕
R
1が、
1~3個のフッ素原子で置換されていてもよいC
1-6アルキルであり、
R
2が、
ハロゲン原子、
シアノ、又は
1~3個のフッ素原子で置換されていてもよいC
1-6アルキルであり、
X、Y及びZが、それぞれ独立して、CR
8又は窒素原子であり、ここにおいて、X、Y及びZは同時にCR
8ではなく、
R
8が、複数ある場合はそれぞれ独立して、
水素原子、
フッ素原子、
塩素原子、
臭素原子、
C
1-6アルキル(該アルキルは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~2個の置換基で置換されていてもよい)、又は
5~6員のヘテロアリール(該ヘテロアリールは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~2個の置換基で置換されていてもよい)であり
Lが、
単結合、又は
C
1-6アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)であり、
Vが、
単結合、
C
3-10シクロアルキレン(該シクロアルキレンは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、又は
3~10員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、水酸基、1~2個の水酸基又はフッ素原子で置換されていてもよいC
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)であり、
Wが、
単結合、又は
C
1-6アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)であり、
Qが、水素原子、又はNHR
14であり、
R
14が、
水素原子、
C
1-6アルキル(該アルキルは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、
C
3-10シクロアルキル(該シクロアルキルは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、又は
3~10員の飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)であり、
R
16及びR
17が、それぞれ独立して、水素原子、又はC
1-6アルキルであり、R
16又はR
17が複数ある場合は、R
16又はR
17のそれぞれは同一でも異なってもよく、ここにおいて、同一の窒素原子と結合するR
16及びR
17がともにC
1-6アルキルのとき、これらはそれぞれが結合する窒素原子と一緒になって、3~8員の含窒素飽和複素環を形成していてもよい、
項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項20〕
式(1)が、下記式(2):
【化8】
[式中、
X、Y及びZは、それぞれ独立して、CR
8又は窒素原子を表し、ここにおいて、X、Y及びZは同時にCR
8ではなく、
R
8は、複数ある場合はそれぞれ独立して、
水素原子、
フッ素原子、
塩素原子、
臭素原子、
C
1-6アルキル(該アルキルは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~2個の置換基で置換されていてもよい)、又は
5~6員のヘテロアリール(該ヘテロアリールは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~2個の置換基で置換されていてもよい)を表し、
Lは、
単結合、又は
C
1-6アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)を表し、
Vは、
単結合、
C
3-10シクロアルキレン(該シクロアルキレンは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、又は
3~10員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、水酸基、1~2個の水酸基又はフッ素原子で置換されていてもよいC
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)を表し、
Wは、
単結合、又は
C
1-6アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)を表し、
Qは、水素原子、又はNHR
14を表し、
R
14は、
水素原子、
C
1-6アルキル(該アルキルは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、
C
3-10シクロアルキル(該シクロアルキルは、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、又は
3~10員の飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、水酸基、C
1-3アルキル、C
1-3アルコキシ、-NR
16R
17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)を表し、
R
16及びR
17は、それぞれ独立して、水素原子、又はC
1-6アルキルを表し、R
16又はR
17が複数ある場合は、R
16又はR
17のそれぞれは同一でも異なってもよく、ここにおいて、同一の窒素原子と結合するR
16及びR
17がともにC
1-6アルキルのとき、これらはそれぞれが結合する窒素原子と一緒になって、3~8員の含窒素飽和複素環を形成していてもよい]で表される、
項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項21〕
X、Y及びZのうちの1つまたは2つは、窒素原子を表す、項1~20のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項22〕
Xが、窒素原子であり、
Y及びZが、CR
8である、
項1~21のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項23〕
Yが、窒素原子であり、
X及びZが、CR
8である、
項1~21のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項24〕
Zが、窒素原子であり、
X及びYが、CR
8である、
項1~21のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項25〕
R
8は、複数ある場合はそれぞれ独立して、
水素原子、
フッ素原子、
塩素原子、
臭素原子、又は
C
1-6アルキル(該アルキルは、フッ素原子、水酸基、及びC
1-3アルコキシからなる群から選択される同一又は異なる1~2個の置換基で置換されていてもよい)である、
項1~24のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項26〕
R
8が、複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はC
1-3アルキルである、
項1~24のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項27〕
Lが、単結合、又は
C
1-6アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子、水酸基、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~2個の置換基で置換されていてもよい)である、
項1~26のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項28〕
Lが、
単結合、又は
C
1-6アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子、水酸基、及びシアノからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)である、
項1~26のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項29〕
Lが、
単結合、又は
1個の水酸基又はフッ素原子で置換されていてもよいC
1-6アルキレンである、
項1~26のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項30〕
Vが、
単結合、
C
3-7シクロアルキレン(該シクロアルキレンは、フッ素原子、水酸基、1~2個の水酸基で置換されていてもよいC
1-3アルキル、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~2個の置換基で置換されていてもよい)、又は
3~7員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、水酸基、1~2個の水酸基又はフッ素原子で置換されていてもよいC
1-3アルキル、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~2個の置換基で置換されていてもよい)である、
項1~29のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項31〕
Vが、
単結合、
C
3-7シクロアルキレン(該シクロアルキレンは、フッ素原子、水酸基、1~2個の水酸基で置換されていてもよいC
1-3アルキル、及びシアノからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)、又は
3~7員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、水酸基、1~2個の水酸基又はフッ素原子で置換されていてもよいC
1-3アルキル、及びシアノからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)である、
項1~29のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項32〕
Vが、
単結合、
C
3-7シクロアルキレン(該シクロアルキレンは、水酸基、及びC
1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)、又は
3~7員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、水酸基、及び1~2個の水酸基又はフッ素原子で置換されていてもよいC
1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)である、
項1~29のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項33〕
Wが、
単結合、又は
C
1-6アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子、水酸基、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~2個の置換基で置換されていてもよい)である、
項1~32のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項34〕
Wが、
単結合、又は
C
1-3アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子、水酸基、及びシアノからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)である、
項1~32のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項35〕
Wが、
単結合、又は
1個の水酸基で置換されていてもよいC
1-3アルキレンである、
項1~32のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項36〕
R
14が、
水素原子、又は
C
1-6アルキル(該アルキルは、フッ素原子、水酸基、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~2個の置換基で置換されていてもよい)である、
項1~35のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項37〕
R
14が、
水素原子、又は
C
1-3アルキル(該アルキルは、フッ素原子、水酸基、及びシアノからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)である、
項1~35のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項38〕
Qが、
水素原子、
NH
2、又は
NHMeである、
項1~37のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項39〕
式(1)が、下記式(3):
【化9】
[式中、
R
8a及びR
8bは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はC
1-3アルキルを表し、
Lは、単結合、又は1個の水酸基で置換されていてもよいC
1-6アルキレンを表し、
Vは、
単結合、
C
3-7シクロアルキレン(該シクロアルキレンは、水酸基、及びC
1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)、又は
3~7員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、シアノ、水酸基、及びC
1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)を表し、
Wは、
単結合、又は
1個の水酸基で置換されていてもよいC
1-3アルキレンを表し、
Qは、水素原子又はNH
2である]で表される
項1に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項40〕
R
8a及びR
8bが、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子である、
項39に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項41〕
R
8a及びR
8bが、それぞれ独立して、水素原子、又は塩素原子である、
項39に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項42〕
Lが、C
1-3アルキレンである、
項39~41のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項43〕
Vが、単結合である、
項39~42のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項44〕
Vが、C
3-7シクロアルキレンである、
項39~42のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項45〕
Wが、単結合である、
項39~44のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項46〕
Wが、C
1-3アルキレンである、
項36~44のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項47〕
Qが、NH
2である、
項36~46のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項48〕
式(1)が、下記式(4):
【化10】
[式中、
R
8b及びR
8cは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はC
1-3アルキルを表し、
Lは、
単結合、又は
C
1-6アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子、水酸基、及びシアノからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)を表し、
Vは、
単結合、
C
3-7シクロアルキレン(該シクロアルキレンは、水酸基、及びC
1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)、又は
3~7員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、シアノ、水酸基、及び1~3個の水酸基及びフッ素原子で置換されていてもよいC
1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)を表し、
Wは、
単結合、又は
1個の水酸基で置換されていてもよいC
1-3アルキレンを表し、
Qは、水素原子、NH
2、又はNHMeである]で表される
項1に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項49〕
R
8b及びR
8cが、水素原子である、
項48に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項50〕
Lが、
単結合、又は
1個の水酸基又はフッ素原子で置換されていてもよいC
1-6アルキレンである、
項48又は49のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項51〕
Lが、1個の水酸基又はフッ素原子で置換されていてもよいC
1-4アルキレンである、
項48又は49のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項52〕
Lが、単結合である、
項48又は49のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項53〕
Vが、
単結合、
C
3-7シクロアルキレン、又は
3~7員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、水酸基及びC
1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)である、
項48~52のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項54〕
Wが、
単結合、又は
C
1-3アルキレンである、
項48~53のいずれか一項に記載の化合物、またはその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項55〕
Wが、単結合である、
項48~53のいずれか一項に記載の化合物、またはその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項56〕
Wが、C
1-3アルキレンである、
項48~53のいずれか一項に記載の化合物、またはその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項57〕
Qが、水素原子である、
項48~56のいずれか一項に記載の化合物、またはその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項58〕
Qが、NH
2である、
項48~56のいずれか一項に記載の化合物、またはその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項59〕
Qが、NHMeである、
項48~56のいずれか一項に記載の化合物、またはその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項60〕
式(1)が、下記式(5):
【化11】
[式中、
R
8a及びR
8cは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はC
1-3アルキルを表し、
Lは、単結合、又は1個の水酸基で置換されていてもよいC
1-6アルキレンを表し、
Vは、
単結合、
C
3-7シクロアルキレン(該シクロアルキレンは、水酸基、及びC
1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)、又は
3~7員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、シアノ、水酸基、及び1個の水酸基で置換されていてもよいC
1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)を表し、
Wは、
単結合、又は
1個の水酸基で置換されていてもよいC
1-3アルキレンを表し、
Qは、水素原子、又はNH
2である]で表される
項1に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項61〕
R
8a及びR
8cが、水素原子である、
項60に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項62〕
Lが、1個の水酸基で置換されていてもよいC
1-6アルキレンである、
項60又は61のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項63〕
Vが、
単結合、
C
3-7シクロアルキレン又は
3~7員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、水酸基、及び1個の水酸基で置換されていてもよいC
1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)である、
項60~62のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項64〕
Vが、単結合である、
項60~62のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項65〕
Vが、C
3-7シクロアルキレンである、
項60~62のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項66〕
Vが、3~7員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、水酸基、及びC
1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)である、
項60~62のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項67〕
Wが、
単結合、又は
C
1-3アルキレンである、
項60~66のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項68〕
Wが、単結合である、
項60~66のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項69〕
Wが、C
1-3アルキレンである、
項60~66のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項70〕
Qが、水素原子である、
項60~69のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項71〕
Qが、NH
2である、
項60~69のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項72〕
式(1)が、下記式(6):
【化12】
[式中、
R
8aは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はC
1-3アルキルを表し、
Lは、
単結合、又は
C
1-6アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子、水酸基、及びシアノからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)を表し、
Vは、
単結合、
C
3-7シクロアルキレン(該シクロアルキレンは、水酸基、及びC
1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)、又は
3~7員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、シアノ、水酸基及び1~3個のフッ素原子で置換されていてもよいC
1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)を表し、
Wは、
単結合、又は
1個の水酸基で置換されていてもよいC
1-3アルキレンを表し、
Qは、水素原子、NH
2、又はNHMeである]で表される
項1に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項73〕
R
8aが、水素原子である、
項72に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項74〕
Lが、C
1-4アルキレンである、
項72又は73のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項75〕
Vが、
単結合、又は
C
3-7シクロアルキレンである、
項72~74のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項76〕
Vが、単結合である、
項72~74のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項77〕
Vが、C
3-7シクロアルキレンである、
項72~74のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項78〕
Wが、
単結合、又は、
C
1-3アルキレンである、
項72~77のいずれか一項に記載の化合物、またはその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項79〕
Wが、単結合である、
項72~77のいずれか一項に記載の化合物、またはその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項80〕
Wが、C
1-3アルキレンである、
項72~77のいずれか一項に記載の化合物、またはその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項81〕
Qが、NH
2である、
項72~80のいずれか一項に記載の化合物、またはその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
〔項82〕
以下の化合物から選択される、化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有する、項1に記載の医薬:5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル(実施例1)、
5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-6-クロロ-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル(実施例2)、
5-({5-[3-(3-アミノプロポキシ)-5-メトキシピリジン-4-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル(実施例3)、
5-({5-[4-(3-アミノプロポキシ)-2-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル(実施例4)、
5-[(5-{3-[(3-フルオロアゼチジン-3-イル)メトキシ]-5-メトキシピリジン-4-イル}-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル(実施例5)、
5-[(5-{2-メトキシ-4-[(3-メチルアゼチジン-3-イル)メトキシ]ピリジン-3-イル}-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル(実施例6)、
5-[(5-{4-[(3-ヒドロキシアゼチジン-3-イル)メトキシ]-2-メトキシピリジン-3-イル}-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル(実施例7)、
5-{[5-(4-{[3-(ヒドロキシメチル)アゼチジン-3-イル]メトキシ}-2-メトキシピリジン-3-イル)-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ}ピラジン-2-カルボニトリル(実施例8)、
5-[(5-{3-[(3R)-3-アミノブトキシ]-5-メトキシピリジン-4-イル}-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル(実施例9)、
5-[(5-{3-[(3S)-3-アミノブトキシ]-5-メトキシピリジン-4-イル}-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル(実施例10)、
5-{[5-(3-{[1-(アミノメチル)シクロプロピル]メトキシ}-5-メトキシピリジン-4-イル)-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ}ピラジン-2-カルボニトリル(実施例11)、
5-[(5-{3-メトキシ-5-[(モルホリン-2-イル)メトキシ]ピリジン-4-イル}-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル(実施例12)、
5-[(5-{3-メトキシ-5-[(モルホリン-2-イル)メトキシ]ピリジン-4-イル}-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル(実施例13)、
5-[(5-{3-[(2S)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロポキシ]-5-メトキシピリジン-4-イル}-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル(実施例14)、
N-{5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}-5-クロロピラジン-2-アミン(実施例15)、
N-{5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}-5-(トリフルオロメチル)ピラジン-2-アミン(実施例16)、
5-({5-[4-(3-アミノプロポキシ)-6-メトキシピリミジン-5-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル(実施例17)、5-({5-[3-(アゼチジン-3-イル)メトキシ-5-メトキシピリジン-4-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル(実施例18)、
5-{[5-(3-{[(1R,3S)-3-アミノシクロヘキシル]オキシ}-5-メトキシピリジン-4-イル)-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ}ピラジン-2-カルボニトリル(実施例19)、
(S)-5-[(5-{3-[(3-フルオロピロリジン-3-イル)メトキシ]-5-メトキシピリジン-4-イル}-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル(実施例20)、
(S)-5-[(5-{3-メトキシ-[5-(ピロリジン-3-イル)メトキシ]ピリジン-4-イル}-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル(実施例21)、
(R)-5-[(5-{3-[(3-フルオロピロリジン-3-イル)メトキシ]-5-メトキシピリジン-4-イル}-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル(実施例22)、
5-{[5-(4-{[1-(アミノメチル)シクロプロピル]メトキシ}-6-メトキシピリミジン--イル)-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ}ピラジン-2-カルボニトリル(実施例23)、
5-({5-[3-(3-アミノプロポキシ)-5-(フルオロメトキシ)ピリジン-4-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル(実施例24)、
5-[(5-{3-メトキシ-5-[(3-メチルアゼチジン-3-イル)メトキシ]ピリジン-4-イル}-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル(実施例25)、
5-{[5-(3-{[3-(ジフルオロメチル)アゼチジン-3-イル]メトキシ}-5-メトキシピリジン-4-イル)-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ}ピラジン-2-カルボニトリル(実施例26)、
5-[(5-{3-[(2S)-3-アミノ-2-メチルプロポキシ]-5-メトキシピリジン-4-イル}-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル(実施例27)、
5-[(5-{3-[(2R)-3-アミノ-2-メチルプロポキシ]-5-メトキシピリジン-4-イル}-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル(実施例28)、
5-[(5-{3-[(2S)-3-アミノ-2-フルオロプロポキシ]-5-メトキシピリジン-4-イル}-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル(実施例29)、
5-[(5-{3-[(2R)-3-アミノ-2-フルオロプロポキシ]-5-メトキシピリジン-4-イル}-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル(実施例30)、
5-[(5-{3-メトキシ-5-[3-(メチルアミノ)プロポキシ]ピリジン-4-イル}-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル(実施例31)、
5-{[5-(3-{[(1R,3R)-3-アミノシクロペンチル]オキシ}-5-メトキシピリジン-4-イル)-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ}ピラジン-2-カルボニトリル(実施例32)、
5-[(5-{3-[(1R)-1-(アゼチジン-3-イル)エトキシ]-5-メトキシピリジン-4-イル}-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル(実施例33)、
5-[(5-{3-[(1R)-1-(3-ヒドロキシアゼチジン-3-イル)エトキシ]-5-メトキシピリジン-4-イル}-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル(実施例34)、
5-{[5-(3-メトキシ-5-{[(1R,3R)-3-(メチルアミノ)シクロペンチル]オキシ}ピリジン-4-イル)-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ}ピラジン-2-カルボニトリル(実施例35)、
5-{[5-(3-{[(1R,2S,4S,5S)-4-アミノビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2-イル]オキシ}-5-メトキシピリジン-4-イル)-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ}ピラジン-2-カルボニトリル(実施例36)、
5-{[5-(2-{[1-(アミノメチル)シクロプロピル]メトキシ}-4-メトキシピリジン-3-イル)-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ}ピラジン-2-カルボニトリル(実施例37)、
5-{[5-(4-{[1-(アミノメチル)シクロプロピル]メトキシ}-2-メトキシピリジン-3-イル)-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ}ピラジン-2-カルボニトリル(実施例38)。
〔項83〕
以下の化合物から選択される、化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有する、項1に記載の医薬:5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル(実施例1)、
5-({5-[3-(3-アミノプロポキシ)-5-メトキシピリジン-4-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル(実施例3)、
5-({5-[4-(3-アミノプロポキシ)-2-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル(実施例4)。
〔項84〕
以下の化合物から選択される、化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有する、項1に記載の医薬:5-({5-[4-(3-アミノプロポキシ)-2-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル(実施例4)。
〔項85〕
以下の化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有する、項1に記載の医薬:
5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル(実施例1)。
〔項86〕
以下の化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有する、項1に記載の医薬:
5-({5-[3-(3-アミノプロポキシ)-5-メトキシピリジン-4-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル(実施例3)。
〔項87〕
項1~86のいずれか一項に記載の医薬を有効成分として含有する医薬組成物。
〔項88〕
項1~86のいずれか一項に記載の医薬、プレキサセルチブ、又はその製薬学的に許容される塩を内封したリポソームを含有する医薬組成物。
〔項89〕
項1~86のいずれか一項に記載の医薬を内封したリポソームを含有する医薬組成物。
〔項90〕
項1~86のいずれか一項に記載の医薬であって、該医薬はそれを内封したリポソームに含まれる医薬。
〔項91〕
前記リポソームが、リン脂質をさらに含む、項88又は89に記載の医薬組成物又は項90に記載の医薬。
〔項92〕
前記リポソームが、
(1)項1~86のいずれか一項に記載の医薬、及び
(2)リン脂質、
を含む、項88~91のいずれか一項に記載の医薬組成物又は医薬。
〔項93〕
前記リン脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、大豆レシチン、卵黄レシチン、水素添加卵黄レシチン、及び水素添加大豆レシチンからなる群より選択される一種又はそれらの二種以上の組み合わせ物である、項91又は92に記載の医薬組成物又は医薬。
〔項94〕
前記リポソームが、さらにステロール類を含む、項88~93のいずれか一項に記載の医薬組成物又は医薬。
〔項95〕
前記ステロール類が、コレステロールである、項94に記載の医薬組成物又は医薬。
〔項96〕
前記リポソームが、さらにポリマー修飾脂質を含む、項88~95のいずれか一項に記載の医薬組成物又は医薬。
〔項97〕
前記ポリマー修飾脂質のポリマー部分が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、メトキシポリビニルアルコール、メトキシポリビニルピロリドン、エトキシポリエチレングリコール、エトキシポリプロピレングリコール、エトキシポリビニルアルコール、エトキシポリビニルピロリドン、プロポキシポリエチレングリコール、プロポキシポリプロピレングリコール、プロポキシポリビニルアルコール、又はプロポキシポリビニルピロリドンである、項96に記載の医薬組成物又は医薬。
〔項98〕
ポリマー修飾脂質の脂質部分が、ホスファチジルエタノールアミン又はジアシルグリセロールである、項96又は97に記載の医薬組成物又は医薬。
〔項99〕
前記ポリマー修飾脂質が、ポリマー部分としてポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、メトキシポリビニルアルコール、メトキシポリビニルピロリドン、エトキシポリエチレングリコール、エトキシポリプロピレングリコール、エトキシポリビニルアルコール、エトキシポリビニルピロリドン、プロポキシポリエチレングリコール、プロポキシポリプロピレングリコール、プロポキシポリビニルアルコール、又はプロポキシポリビニルピロリドンを含み、脂質部分としてホスファチジルエタノールアミン又はジアシルグリセロールを含む、項96又は97に記載の医薬組成物又は医薬。
〔項100〕
前記リポソームが、
(1)項1~86のいずれか一項に記載の医薬、
(2)40~70モル%のリン脂質、
(3)30~50モル%のコレステロール、及び
(4)1~10モル%のポリマー修飾脂質、
を含む、項89~91のいずれか一項に記載の医薬組成物又は医薬。
〔項101〕
前記リポソームが、さらに、無機酸、無機酸塩、有機酸、有機酸塩、糖類、緩衝剤、酸化防止剤、及びポリマー類からなる群から選択される添加物を含む、項89~100のいずれか一項に記載の医薬組成物又は医薬。
〔項102〕
項1~86のいずれか一項に記載の医薬を有効成分として含有する、癌の治療剤及び/又は予防剤。
〔項103〕
前記癌が、扁平上皮がん、メラノーマ、急性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、真性多血症、悪性リンパ腫、形質細胞腫瘍、多発性骨髄腫、脳腫瘍、頭頸部がん、頭頸部扁平上皮癌、食道がん、甲状腺がん、肺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、胸腺腫・胸腺がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、胃がん、胆のう・胆管がん、肝がん、肝細胞がん、膵がん、結腸がん、直腸がん、MSI-high大腸がん、肛門がん、消化管間質腫瘍、絨毛上皮がん、子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん、白金製剤抵抗性卵巣がん、PARP阻害剤抵抗性卵巣がん、膀胱がん、尿路上皮がん、腎がん、腎細胞がん、前立腺がん、睾丸腫瘍、精巣胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、ウイルムス腫瘍、悪性黒色腫、神経芽細胞腫、骨肉種、ユーイング肉腫、軟骨肉腫、軟部肉腫、又は皮膚がんからなる群から選択される少なくとも一種の癌である、項102に記載の治療剤及び/又は予防剤。
〔項104〕
前記癌が、頭頚部がん、扁平上皮がん、非小細胞肺がん、肛門がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、卵巣がん、白金製剤抵抗性卵巣がん、又は子宮体がんからなる群から選択される少なくとも一種の癌である、項102に記載の治療剤及び/又は予防剤。
〔項105〕
治療及び/又は予防が必要な患者に、治療及び/又は予防上の有効量の項1~86のいずれか一項に記載の医薬、或いは項87~101に記載の医薬組成物又は医薬、或いは項102~104に記載の治療剤及び/又は予防剤を投与することを含む、癌の治療及び/又は予防するための方法。
〔項106〕
前記癌が、扁平上皮がん、メラノーマ、急性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、真性多血症、悪性リンパ腫、形質細胞腫瘍、多発性骨髄腫、脳腫瘍、頭頸部がん、頭頸部扁平上皮癌、食道がん、甲状腺がん、肺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、胸腺腫・胸腺がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、胃がん、胆のう・胆管がん、肝がん、肝細胞がん、膵がん、結腸がん、直腸がん、MSI-high大腸がん、肛門がん、消化管間質腫瘍、絨毛上皮がん、子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん、白金製剤抵抗性卵巣がん、PARP阻害剤抵抗性卵巣がん、膀胱がん、尿路上皮がん、腎がん、腎細胞がん、前立腺がん、睾丸腫瘍、精巣胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、ウイルムス腫瘍、悪性黒色腫、神経芽細胞腫、骨肉種、ユーイング肉腫、軟骨肉腫、軟部肉腫、又は皮膚がんからなる群から選択される少なくとも一種の癌である、項105に記載の治療及び/又は予防するための方法。
〔項107〕
癌の治療剤及び/又は予防剤を製造するための、項1~86のいずれか一項に記載の医薬、或いは項87~101に記載の医薬組成物又は医薬、或いは項102~104に記載の治療剤及び/又は予防剤の使用。
〔項108〕
前記癌が、扁平上皮がん、メラノーマ、急性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、真性多血症、悪性リンパ腫、形質細胞腫瘍、多発性骨髄腫、脳腫瘍、頭頸部がん、頭頸部扁平上皮癌、食道がん、甲状腺がん、肺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、胸腺腫・胸腺がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、胃がん、胆のう・胆管がん、肝がん、肝細胞がん、膵がん、結腸がん、直腸がん、MSI-high大腸がん、肛門がん、消化管間質腫瘍、絨毛上皮がん、子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん、白金製剤抵抗性卵巣がん、PARP阻害剤抵抗性卵巣がん、膀胱がん、尿路上皮がん、腎がん、腎細胞がん、前立腺がん、睾丸腫瘍、精巣胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、ウイルムス腫瘍、悪性黒色腫、神経芽細胞腫、骨肉種、ユーイング肉腫、軟骨肉腫、軟部肉腫、又は皮膚がんからなる群から選択される少なくとも一種の癌である、項1~86のいずれか一項に記載の医薬、或いは医薬組成物、或いは治療剤及び/又は予防剤の使用。
〔項109〕
癌の治療及び/又は予防に使用するための、項1~86のいずれか一項に記載の医薬、或いは項87~101に記載の医薬組成物又は医薬、或いは項102~104に記載の治療剤及び/又は予防剤。
〔項110〕
前記癌が、扁平上皮がん、メラノーマ、急性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、真性多血症、悪性リンパ腫、形質細胞腫瘍、多発性骨髄腫、脳腫瘍、頭頸部がん、頭頸部扁平上皮癌、食道がん、甲状腺がん、肺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、胸腺腫・胸腺がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、胃がん、胆のう・胆管がん、肝がん、肝細胞がん、膵がん、結腸がん、直腸がん、MSI-high大腸がん、肛門がん、消化管間質腫瘍、絨毛上皮がん、子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん、白金製剤抵抗性卵巣がん、PARP阻害剤抵抗性卵巣がん、膀胱がん、尿路上皮がん、腎がん、腎細胞がん、前立腺がん、睾丸腫瘍、精巣胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、ウイルムス腫瘍、悪性黒色腫、神経芽細胞腫、骨肉種、ユーイング肉腫、軟骨肉腫、軟部肉腫、又は皮膚がんからなる群から選択される少なくとも一種の癌である、項1~86のいずれか一項に記載の医薬、或いは医薬組成物、或いは治療剤及び/又は予防剤。
〔項111〕
併用薬物又はその製薬学的に許容される塩と併用して、がんを治療するための、項1~86のいずれか一項に記載の医薬であって、当該併用薬物が、ホルモン療法剤、化学療法剤、免疫療法剤ならびに細胞増殖因子およびその受容体作用を阻害する薬剤からなる群から選択される少なくとも1種以上である、項1~86のいずれか一項に記載の医薬。
〔項112〕
併用薬物又はその製薬学的に許容される塩と併用して、がんを治療するための、項1~86のいずれか一項に記載の医薬であって、当該併用薬物が、5-FU系薬剤、シタラビン、塩酸ドキソルビシン、ゲムシタビン、メソトレキセート、ペメトレキセド、エトポシド、イリノテカン、トポテカン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、電離放射線、ベバシズマブ、リポソーム化ドキソルビシン、ルカパリブ、オラパリブ、ニラパリブ、トラベクテジン、パゾパニブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、イピリムマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ、ラロトレクチニブ、エントレクチニブ、ナブパクリタキセル、エルロチニブ、リポソーム化イリノテカン、ロイコボリン、セツキシマブ、エリブリン、イホスファミド、ダカルバジンからなる群から選択される少なくとも1種以上である、項1~86のいずれか一項に記載の医薬。
〔項113〕
併用薬物又はその製薬学的に許容される塩と併用して、がんを治療するための、項1~86のいずれか一項に記載の医薬であって、当該併用薬物が、5-FU系薬剤、イリノテカン、ゲムシタビン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、電離放射線、ルカパリブ、オラパリブ、ニラパリブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブからなる群から選択される少なくとも1種以上である、項1~86のいずれか一項に記載の医薬。
〔項114〕
併用薬物又はその製薬学的に許容される塩と併用して、がんを治療するための、(a)項1~86のいずれか一項に記載の医薬であって、(b)当該併用薬物が、ホルモン療法剤、化学療法剤、免疫療法剤ならびに細胞増殖因子およびその受容体作用を阻害する薬剤からなる群から選択される少なくとも1種以上であり、
(1)(a)が(b)と同時に投与される、
(2)(a)が (b)の投与後に投与される、又は
(3)(b)が (a)の投与後に投与されること、を特徴とする、
項1~86のいずれか一項に記載の医薬。
〔項115〕
前記併用薬物(b)が、化学療法剤又は免疫療法剤である、
項114に記載の医薬。
〔項116〕
前記併用薬物(b)が、ゲムシタビンである、
項114又は115に記載の医薬。
〔項117〕
前記(a)医薬が、前記(b)ゲムシタビンと同時に投与される項116に記載の医薬。
〔項118〕
前記(a)医薬が、前記(b)ゲムシタビンの投与後約24~48時間以内に投与される項116に記載の医薬。
〔項119〕
前記(b)ゲムシタビンが、前記(a)化合物、又はその製薬学的に許容される塩、或いはリポソームの投与後約24~48時間以内に投与される項116に記載の医薬。
〔項120〕
前記併用薬物(b)が、抗PD-1抗体である、
項114又は115に記載の医薬。
〔項121〕
前記(a)化合物、又はその製薬学的に許容される塩、或いはリポソームが、前記(b)抗PD-1抗体と同時に投与される項120に記載の医薬。
〔項122〕
前記(b)抗PD-1抗体が、前記(a)化合物、又はその製薬学的に許容される塩、或いはリポソームの投与後約72~96時間以内に投与される、項120に記載の医薬。
〔項123〕
前記(a)化合物、又はその製薬学的に許容される塩、或いはリポソームが、前記(b)抗PD-1抗体の投与後約72~96時間以内に投与される項116に記載の医薬。
〔項124〕
併用薬物と組み合わせてなる、項1~86のいずれか一項に記載の医薬を含む医薬組成物、或いは項87~101のいずれか一項に記載の医薬組成物又は医薬であって、当該併用薬物が、ホルモン療法剤、化学療法剤、免疫療法剤ならびに細胞増殖因子およびその受容体作用を阻害する薬剤からなる群から選択される少なくとも1種以上である、医薬組成物。
〔項125〕
併用薬物と組み合わせてなる、項1~86のいずれか一項に記載の医薬医薬を含む医薬組成物、或いは項87~101のいずれか一項に記載の医薬組成物又は医薬であって、当該併用薬物が、5-FU系薬剤、シタラビン、塩酸ドキソルビシン、ゲムシタビン、メソトレキセート、ペメトレキセド、エトポシド、イリノテカン、トポテカン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、電離放射線、ベバシズマブ、リポソーム化ドキソルビシン、ルカパリブ、オラパリブ、ニラパリブ、トラベクテジン、パゾパニブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、イピリムマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ、ラロトレクチニブ、エントレクチニブ、ナブパクリタキセル、エルロチニブ、リポソーム化イリノテカン、ロイコボリン、セツキシマブ、エリブリン、イホスファミド、ダカルバジンからなる群から選択される少なくとも1種以上である、医薬組成物。
〔項126〕
併用薬物と組み合わせてなる、項1~86のいずれか一項に記載の医薬を含む医薬組成物、或いは項87~101のいずれか一項に記載の医薬組成物又は医薬であって、当該併用薬物が、5-FU系薬剤、イリノテカン、ゲムシタビン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、電離放射線、ルカパリブ、オラパリブ、ニラパリブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブからなる群から選択される少なくとも1種以上である、医薬組成物。
〔項127〕
X線粉末回折において、7.2°±0.2°、及び8.8°±0.2°に回折角(2θ°)ピークを有する、形態Iの結晶形態の5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル 塩酸塩。
〔項128〕
X線粉末回折において、7.2°±0.2°、8.8°±0.2°、9.8°±0.2°、10.2°±0.2°、10.7°±0.2°、16.7°±0.2°、18.5°±0.2°、26.2°±0.2°、及び27.0°±0.2°および26.4°±0.2°から選択される4つ以上の回折角(2θ°)ピークを有する、形態Iの結晶形態の5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル 塩酸塩。
〔項129〕
X線粉末回折において、6.8°±0.2°、及び13.0°±0.2°に回折角(2θ°)ピークを有する、形態IIの結晶形態の5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル リン酸塩。
〔項130〕
X線粉末回折において、6.8°±0.2°、7.5°±0.2°、11.7°±0.2°、11.9°±0.2°、13.0°±0.2°、16.4°±0.2°、19.3°±0.2°、20.4°±0.2°、22.7°±0.2°、及び24.3°±0.2°から選択される4つ以上の回折角(2θ°)ピークを有する、形態IIの結晶形態の5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル リン酸塩。
〔項131〕
X線粉末回折において、6.0°±0.2°、及び17.0°±0.2°に回折角(2θ°)ピークを有する、形態IIIの結晶形態の5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル トシル酸塩。
〔項132〕
X線粉末回折において、6.0°±0.2°、9.0°±0.2°、12.1°±0.2°、14.4°±0.2°、16.2°±0.2°、17.0°±0.2°、22.8°±0.2°、及び26.3°±0.2°から選択される4つ以上の回折角(2θ°)ピークを有する、形態IIIの結晶形態の5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル トシル酸塩。
〔項133〕
X線粉末回折において、9.3°±0.2°、及び10.2°±0.2°に回折角(2θ°)ピークを有する、形態IVの結晶形態の5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル。
〔項134〕
X線粉末回折において、9.3°±0.2°、10.2°±0.2°、10.7°±0.2°、13.6°±0.2°、16.7°±0.2°、17.1°±0.2°、17.8°±0.2°、18.6°±0.2°、26.1°±0.2°及び26.4°±0.2°から選択される4つ以上の回折角(2θ°)ピークを有する、形態IVの結晶形態の5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル。
〔項135〕
X線粉末回折において、7.9°±0.2°、及び8.7°±0.2°に回折角(2θ°)ピークを有する、形態Vの結晶形態の5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル。
〔項136〕
X線粉末回折において、7.9°±0.2°、8.7°±0.2°、12.2°±0.2°、13.1°±0.2°、15.9°±0.2°、17.6°±0.2°、19.9°±0.2°、21.9°±0.2°、22.8°±0.2°、及び26.6°±0.2°から選択される4つ以上の回折角(2θ°)ピークを有する、形態Vの結晶形態の5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル。
〔項137〕
X線粉末回折において、5.3°±0.2°、及び5.7°±0.2°に回折角(2θ°)ピークを有する、形態VIの結晶形態の5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル。
〔項138〕
X線粉末回折において、5.3°±0.2°、5.7°±0.2°、7.0°±0.2°、7.3°±0.2°、7.8°±0.2°、8.4°±0.2°、9.3°±0.2°、10.5°±0.2°、11.5°±0.2°、及び14.1°±0.2°から選択される4つ以上の回折角(2θ°)ピークを有する、形態VIの結晶形態の5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル。
〔項139〕
X線粉末回折において、8.2°±0.2°、及び27.0°±0.2°に回折角(2θ°)ピークを有する、形態VIIの結晶形態の5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル 塩酸塩。
〔項140〕
X線粉末回折において、7.0°±0.2°、8.2°±0.2°、9.7°±0.2°、11.5°±0.2°、14.0°±0.2°、14.6°±0.2°、16.3°±0.2°、18.0°±0.2°、19.8°±0.2°、21.2°±0.2°、21.5°±0.2°、24.1°±0.2°、及び27.0°±0.2°から選択される4つ以上の回折角(2θ°)ピークを有する、形態VIIの結晶形態の5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル 塩酸塩。
【発明の効果】
【0010】
本開示により、5-ヘテロアリール-1H-ピラゾール-3-アミン誘導体又はその製薬学的に許容される塩を含むCHK1阻害剤が提供される。本開示の化合物は、優れたCHK1阻害活性と高い安全性とを併せ持つ。リポソームに内封され、リポソームから徐放的に放出されることで、持続的にがんに作用し、強力な抗腫瘍効果を示す。本開示の化合物は、CHK1が関与する疾患に対する治療薬として有用であり、具体的には、膵がん、卵巣がん、骨肉種、ユーイング肉腫、軟骨肉腫、又は軟部肉腫等の患者に適用可能である。
【0011】
本開示は、卵巣がん患者に対するPhase2試験において薬理作用を示されているものの中でも、5-フェニル-1H-ピラゾール-3-アミン誘導体であるプレキサセルチブ(Prexasertib)に比べ、非臨床試験より推察される72時間の持続的な曝露による薬効の最大化は達成されなかったのに対して、本開示の化合物またはその塩は、これをさらに改善し得ることが明らかになった。また単回投与では、高い最高血中濃度に起因する副作用が生じるプレキサセルチブに比べ、本開示の化合物または塩はこのような副作用はなかった。三日間の連続投与では、長時間における薬物曝露に由来する副作用が見られたのに対して本開示の化合物または塩ではこのような副作用は見られなかった(非特許文献3、非特許文献6)。加えて本願発明者らは、プレキサセルチブが、肝毒性のリスクを有することを新たに見出し、本願発明の化合物は、当該肝毒性のリスクが低減されている。以上から、本開示の化合物は、優れたCHK1阻害活性と高い安全性とを併せ持つ。
【0012】
特に、式(3)で表される、特定の位置に窒素原子を有するピリジン環を有する化合物は、高い抗腫瘍活性と、安全性を併せ持つとともに、同時に優れた薬物動態を有する特徴を有する。
【0013】
特に、式(3)に含まれる、実施例1の化合物はプレキサセルチブと比較し、高いCHK1阻害活性を示し、強力な細胞増殖抑制効果を有するとともに、高い安全性を併せ持つ特徴を有する。さらに実施例1の化合物は、良好な薬物動態を示すとともに、リポソームに効率よく封入される特徴を有する。実施例1の化合物のリポソーム製剤は、優れた抗腫瘍効果を有することともに、高い安全性を有し、既存の抗がん剤と併用することにより、さらに格別な抗腫瘍効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例39の化合物の形態Iの粉末X線回折パターンを示す。横軸は回折角2θ(°)、縦軸はカウント数を示す(以下、
図2~
図6について同様である)。
【
図2】実施例40の化合物の形態IIの粉末X線回折パターンを示す。
【
図3】実施例41の化合物の形態IIIの粉末X線回折パターンを示す。
【
図4】実施例42の化合物の形態IVの粉末X線回折パターンを示す。
【
図5】実施例43の化合物の形態Vの粉末X線回折パターンを示す。
【
図6】実施例44の化合物の形態VIの粉末X線回折パターンを示す。
【
図6A】実施例45の化合物の形態VIIの粉末X線回折パターンを示す。
【
図7】
図7は、試験例11の試験A、プレキサセルチブの溶液製剤又はリポソーム製剤についてのES-2担がんマウスを用いた腫瘍PD応答作用を示す図である。PD応答は、ウエスタンブロッティングによりγH2AXおよびTubulinの発現量を検出し、各バンド強度をImageJソフトウェアによって定量化し、γH2AXの発現量をTubulinの発現量によって相対値を算出することにより評価した。縦軸はγH2AXの相対値を示す。
【
図8】
図8は、試験例11の試験B、プレキサセルチブの溶液製剤又は実施例1のリポソーム製剤についてのES-2担がんマウスを用いた腫瘍PD応答作用を示す図である。PD応答は、ウエスタンブロッティングによりγH2AXおよびTubulinの発現量を検出し、各バンド強度をImageJソフトウェアによって定量化し、γH2AXの発現量をTubulinの発現量によって相対値を算出することにより評価した。縦軸はγH2AXの相対値を示す。
【
図9】
図9は、試験例11の試験C、実施例1のリポソーム製剤についてのES-2担がんマウスを用いた腫瘍PD応答作用を示す図である。PD応答は、ウエスタンブロッティングによりγH2AXおよびTubulinの発現量を検出し、各バンド強度をImageJソフトウェアによって定量化し、γH2AXの発現量をTubulinの発現量によって相対値を算出することにより評価した。縦軸はγH2AXの相対値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示につき、さらに詳しく説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語及び科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0016】
本明細書における用語について、以下に説明する。
【0017】
本明細書において、「置換されていてもよい」で定義される基における置換基の数は、置換可能であれば特に制限はない。また、特に指示した場合を除き、各々の基の説明はその基が他の基の一部分又は置換基である場合にも該当する。
【0018】
「ハロゲン原子」とは、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子等が挙げられる。好ましくはフッ素原子、又は塩素原子である。
【0019】
「C1-6アルキル」とは、炭素原子数が1~6のアルキルを意味し、「C6アルキル」とは、炭素原子数が6のアルキルを意味する。他の数字の場合も同様である。
【0020】
「C1-6アルキル」とは、炭素原子数が1~6の直鎖状又は分枝鎖状の飽和炭化水素基を意味する。C1-6アルキルとして、好ましくは「C1-4アルキル」が挙げられ、より好ましくは「C1-3アルキル」が挙げられる。「C1-3アルキル」の具体例としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル等が挙げられる。「C1-4アルキル」の具体例としては、例えば、前記「C1-3アルキル」の具体例として挙げたものに加え、ブチル、1,1-ジメチルエチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル等が挙げられる。「C1-6アルキル」の具体例としては、例えば、前記「C1-4アルキル」の具体例として挙げたものに加え、ペンチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、4-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-メチルペンチル、1-メチルペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
【0021】
「C2-6アルケニル」とは、炭素原子数2~6個を有し、1~3個の二重結合を含む直鎖状又は分枝鎖状の不飽和炭化水素基を意味する。「C2-6アルケニル」として好ましくは、「C2-4アルケニル」が挙げられる。「C2-4アルケニル」の具体例として、例えば、ビニル、プロペニル、メチルプロペニル、ブテニル等が挙げられる。「C2-6アルケニル」の具体例として、例えば、前記「C2-4アルケニル」の具体例として挙げたものに加え、ペンテニル、ヘキセニル等が挙げられる。
【0022】
「C2-6アルキニル」とは、炭素原子数2~6個を有し、三重結合を1個含む直鎖状又は分枝鎖状の不飽和炭化水素基を意味する。「C2-6アルキニル」として、好ましくは「C2-4アルキニル」が挙げられる。「C2-4アルキニル」の具体例としては、例えば、プロピニル、メチルプロピニル、ブチニル等が挙げられる。「C2-6アルキニル」の具体例として、例えば、前記「C2-4アルキニル」の具体例として挙げたものに加え、メチルブチニル、ペンチニル、ヘキシニル等が挙げられる。
【0023】
「C1-6アルコキシ」とは「C1-6アルキルオキシ」のことであり、「C1-6アルキル」部分は、前記「C1-6アルキル」と同義である。「C1-6アルコキシ」としては、好ましくは「C1-4アルコキシ」が挙げられ、より好ましくは「C1-3アルコキシ」が挙げられる。「C1-3アルコキシ」の具体例としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、1-メチルエトキシ等が挙げられる。「C1-4アルコキシ」の具体例としては、例えば、前記「C1-3アルコキシ」の具体例として挙げたものに加え、ブトキシ、1,1-ジメチルエトキシ、1-メチルプロポキシ、2-メチルプロポキシ等が挙げられる。「C1-6アルコキシ」の具体例としては、例えば、前記「C1-4アルコキシ」の具体例として挙げたものに加え、ペンチロキシ、1,1-ジメチルプロポキシ、1,2-ジメチルプロポキシ、1-メチルブトキシ、2-メチルブトキシ、4-メチルペンチロキシ、3-メチルペンチロキシ、2-メチルペンチロキシ、1-メチルペンチロキシ、ヘキシロキシ等が挙げられる。
【0024】
「C1-6アルキルチオ」の「C1-6アルキル」部分は、前記「C1-6アルキル」と同義である。「C1-6アルキルチオ」としては、好ましくは「C1-4アルキルチオ」が挙げられ、より好ましくは「C1-3アルキルチオ」が挙げられる。「C1-3アルキルチオ」の具体例としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、1-メチルエチルチオ等が挙げられる。「C1-4アルキルチオ」の具体例としては、例えば、前記「C1-3アルキルチオ」の具体例として挙げたものに加え、ブチルチオ、1,1-ジメチルエチルチオ、1-メチルプロピルチオ、2-メチルプロピルチオ等が挙げられる。「C1-6アルキルチオ」の具体例としては、例えば、前記「C1-4アルキルチオ」の具体例として挙げたものに加え、ペンチルチオ、1,1-ジメチルプロピルチオ、1,2-ジメチルプロピルチオ、1-メチルブチルチオ、2-メチルブチルチオ、4-メチルペンチルチオ、3-メチルペンチルチオ、2-メチルペンチルチオ、1-メチルペンチルチオ、ヘキシルチオ等が挙げられる。
【0025】
「C1-6アルキレン」とは、炭素原子数1~6個を有し、直鎖状又は分枝鎖状の2価の飽和炭化水素基を意味する。「C1-6アルキレン」として、好ましくは「C1-4アルキレン」が挙げられ、より好ましくは「C1-3アルキレン」が挙げられる。「C1-3アルキレン」の具体例としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン等が挙げられる。「C1-4アルキレン」の具体例としては、例えば、前記「C1-3アルキレン」の具体例として挙げたものに加え、ブチレン、1,1-ジメチルエチレン、1,2-ジメチルエチレン、1-メチルトリメチレン、2-メチルトリメチレン等が挙げられる。「C1-6アルキレン」の具体例としては、例えば、前記「C1-4アルキレン」の具体例として挙げたものに加え、ペンチレン、1,1-ジメチルトリメチレン、1,2-ジメチルトリメチレン、1-メチルブチレン、2-メチルブチレン、1-メチルペンチレン、2-メチルペンチレン、3-メチルペンチレン、ヘキシレン等が挙げられる。
【0026】
「C3-10シクロアルキル」とは、炭素原子数3~10の環状の飽和炭化水素基を意味し、一部不飽和結合を有するもの及び架橋された構造のものも含まれる。「C3-10シクロアルキル」として、好ましくは「C3-7シクロアルキル」が挙げられる。「C3-7シクロアルキル」の具体例としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等が挙げられる。「C3-10シクロアルキル」の具体例としては、例えば、前記「C3-7シクロアルキル」の具体例として挙げたものに加え、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、アダマンチル等が挙げられる。
【0027】
また、「C
3-10シクロアルキル」には、前記C
3-10シクロアルキルと芳香族炭化水素環とが縮環した二環式のものも包含される。当該縮環した化合物の具体例としては、例えば、下記で表される構造等が挙げられる。
【化13】
【0028】
上記架橋された構造の具体例としては、例えば、下記で表される構造等が挙げられる。
【化14】
【0029】
「C3-10シクロアルキレン」とは、炭素原子数3~10の環状の2価の飽和炭化水素基を意味し、一部不飽和結合を有するもの及び架橋された構造のものも含まれる。「C3-10シクロアルキレン」として、好ましくは「C3-7シクロアルキレン」が挙げられる。「C3-7シクロアルキレン」の具体例としては、例えば、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン等が挙げられる。「C3-10シクロアルキル」の具体例としては、例えば、前記「C3-7シクロアルキル」の具体例として挙げたものに加え、シクロオクチレン、シクロノニレン、シクロデシレン、アダマンチレン等が挙げられる。
【0030】
上記架橋された構造の具体例としては、例えば、下記で表される構造等が挙げられる。
【化15】
【0031】
「3~10員の飽和炭素環」とは、炭素原子数3~10の環状の飽和炭化水素を意味する。「3~10員の飽和炭素環」として、好ましくは「4~6員の飽和炭素環」が挙げられる。「4~6員の飽和炭素環」の具体例としては、例えば、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等が挙げられる。「3~10員の飽和炭素環」の具体例としては、例えば、前記「4~6員の飽和炭素環」の具体例として挙げたものに加え、シクロプロパン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン等が挙げられる。
【0032】
「3~10員の飽和複素環基」とは、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から独立して選択される1~2個の原子と、2~9個の炭素原子とで構成される1価の飽和複素環基を意味し、一部不飽和結合を有するもの及び架橋された構造のものも含まれる。環を構成する原子は、-C(O)-、-S(O)-、-SO2-のように酸化されたものを含んでもよい。「3~10員の飽和複素環基」として、好ましくは、「4~7員の単環式の飽和複素環基」が挙げられる。「4~7員の単環式の飽和複素環基」の具体例としては、例えば、オキセタニル、アゼチジニル、テトラヒドロフリル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジオキソチオモルホリニル、ヘキサメチレンイミニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、オキソイミダゾリジニル、ジオキソイミダゾリジニル、オキソオキサゾリジニル、ジオキソオキサゾリジニル、ジオキソチアゾリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、等が挙げられる。「3~10員の飽和複素環基」としては、例えば、前記「4~7員の単環式の飽和複素環基」の具体例として挙げたものに加え、オキシラニル、アジリジニル等が挙げられる。
また、「3~10員の飽和複素環基」には、前記3~10員の飽和複素環基と6員の芳香族炭化水素環又は6員の芳香族複素環とが縮合環を形成した二環式のものも含まれる。縮合環を形成している6員の芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環等が挙げられる。縮合環を形成している6員の芳香族複素環としては、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン等が挙げられる。縮合環を形成している二環式の「3~10員の飽和複素環基」の具体例としては、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロプリニル、ジヒドロチアゾロピリミジニル、ジヒドロベンゾジオキサニル、イソインドリル、インダゾリル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロナフチリジニル等が挙げられる。
【0033】
「3~8員の含窒素飽和複素環」とは、1個の窒素原子と2~7個の炭素原子とで構成される飽和複素環を意味する。「3~8員の含窒素飽和複素環」として、好ましくは「4~6員の含窒素飽和複素環」が挙げられる。「4~6員の含窒素飽和複素環」の具体例としては、例えば、アゼチジン環、ピロリジン環、ピペリジン環等が挙げられる。「3~8員の含窒素飽和複素環」の具体例としては、例えば、前記「4~6員の含窒素飽和複素環」の具体例として挙げたものに加え、アジリジン環、アゼパン環、アゾカン環等が挙げられる。
【0034】
「3~10員の二価飽和複素環基」とは、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から独立して選択される1~2個の原子と、2~9個の炭素原子とで構成される2価の飽和複素環基を意味し、一部不飽和結合を有するもの及び架橋された構造のものも含まれる。環を構成する原子は、-C(O)-、-S(O)-、-SO2-のように酸化されたものを含んでもよい。「3~10員の飽和複素環基」として、好ましくは、「4~7員の単環式の飽和複素環基」が挙げられる。「4~7員の単環式の飽和複素環基」の具体例としては、例えば、オキセタニレン、アゼチジニレン、テトラヒドロフリレン、ピロリジニレン、イミダゾリジニレン、ピペリジニレン、モルホリニレン、チオモルホリニレン、ジオキソチオモルホリニレン、ヘキサメチレンイミニレン、オキサゾリジニレン、チアゾリジニレン、オキソイミダゾリジニレン、ジオキソイミダゾリジニレン、オキソオキサゾリジニレン、ジオキソオキサゾリジニレン、ジオキソチアゾリジニレン、テトラヒドロフラニレン、テトラヒドロピラニレン等が挙げられる。「3~10員の飽和複素環基」としては、例えば、前記「4~7員の単環式の飽和複素環基」の具体例として挙げたものに加え、オキシラニレン、アジリジニレン等が挙げられる。
【0035】
また、「3~10員の飽和複素環基」には、前記3~10員の飽和複素環基と6員の芳香族炭化水素環又は6員の芳香族複素環とが縮合環を形成した二環式のものも含まれる。縮合環を形成している6員の芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環等が挙げられる。縮合環を形成している6員の芳香族複素環としては、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン等が挙げられる。縮合環を形成している二環式の「3~10員の飽和複素環基」の具体例としては、ジヒドロインドリレン、ジヒドロイソインドリレン、ジヒドロプリニレン、ジヒドロチアゾロピリミジニレン、ジヒドロベンゾジオキサニレン、イソインドリレン、インダゾリレン、テトラヒドロキノリニレン、テトラヒドロイソキノリニレン、テトラヒドロナフチリジニレン等が挙げられる。
【0036】
「C
6-10アリール」は、炭素原子数が6~10の芳香族炭化水素環基を意味する。「C
6-10アリール」の具体例としては、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル等が挙げられる。好ましくは、フェニルが挙げられる。
また、「C
6-10アリール」には、前記C
6-10アリールとC
4-6シクロアルキル又は5~6員の飽和複素環とが縮合環を形成した二環式のものも含まれる。縮合環を形成している二環式の「C
6-10アリール」の具体例としては、例えば、下記で表される基等が挙げられる。
【化16】
【0037】
「芳香族炭化水素環」とは、上記「C6-10アリール」の環部分を意味する。
【0038】
「5~12員のヘテロアリール」とは、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から独立して選択される1~4個の原子を含む、単環式の5~7員の芳香族複素環の環状基、又は二環式の8~12員の芳香族複素環の環状基を意味する。好ましくは、「5~7員の単環式のヘテロアリール」である。より好ましくは、ピリジル、ピリミジニル、キノリル、又はイソキノリルである。さらに好ましくは、ピリジルである。「5~7員の単環式のヘテロアリール」の具体例としては、例えば、ピリジル、ピリダジニル、イソチアゾリル、ピロリル、フリル、チエニル、チアゾリル、イミダゾリル、ピリミジニル、チアジアゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピラジニル、トリアジニル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル等が挙げられる。「5~12員のヘテロアリール」の具体例としては、前記「5~7員の単環式のヘテロアリール」の具体例として挙げたものに加え、インドリル、インダゾリル、クロメニル、キノリル、イソキノリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイミダゾリル等が挙げられる。
【0039】
「芳香族複素環」とは、上記「5~12員のヘテロアリール」の環部分を意味する。
【0040】
「がん」および「腫瘍」は、本開示においては同義で、共に悪性腫瘍を意味し、癌、肉腫及び血液悪性腫瘍を包含する。「がん」または「腫瘍」の具体例としては、例えば、急性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、真性多血症、悪性リンパ腫、形質細胞腫瘍、多発性骨髄腫、脳腫瘍、頭頸部がん、食道がん、甲状腺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、胸腺腫・胸腺がん、乳がん、胃がん、胆のう・胆管がん、肝がん、肝細胞がん、膵がん、結腸がん、直腸がん、肛門がん、消化管間質腫瘍、絨毛上皮がん、子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん、膀胱がん、尿路上皮がん、腎がん、腎細胞がん、前立腺がん、睾丸腫瘍、精巣胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、ウイルムス腫瘍、悪性黒色腫、神経芽細胞腫、骨肉種、ユーイング肉腫、軟骨肉腫、軟部肉腫、又は皮膚がん等が挙げられる。
【0041】
プレキサセルチブとは、下記の構造を有する化合物である。
【化17】
【0042】
式(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)で表される本開示の化合物において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R8a、R8b,R8c、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16,R17、R18、X、Y、Z、L、V、W,Q及びYの好ましいものは以下のとおりであるが、本開示の技術的範囲は下記に挙げる化合物の範囲に限定されるものではない。
【0043】
R1の好ましい態様としては、1~3個のフッ素原子で置換されていてもよいC1-6アルキルが挙げられる。
R1のより好ましい態様としては、1~3個のフッ素原子で置換されていてもよいメチル基、又はエチル基が挙げられる。
R1のさらに好ましい態様としては、1~3個のフッ素原子で置換されていてもよいメチル基が挙げられる。
R1のさらにより好ましい態様としては、メチル基が挙げられる。
【0044】
R2の好ましい態様としては、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、-OR3、1~3個のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、又は3~10員の飽和複素環基が挙げられる。
R2のより好ましい態様としては、水素原子、ハロゲン原子、シアノ又は1~3個のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキルが挙げられる。
R2のさらに好ましい態様としては、ハロゲン原子、シアノ又は1~3個のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキルが挙げられる。
R2のさらにより好ましい態様としては、シアノが挙げられる。
【0045】
R3の好ましい態様としては、水素原子、又はC1-6アルキルが挙げられる。
R3のより好ましい態様としては、C1-6アルキルが挙げられる。
R3のさらに好ましい態様としては、C1-3アルキルが挙げられる。
R3のさらにより好ましい態様としては、メチル基が挙げられる。
【0046】
R4の好ましい態様としては、C1-3アルキルが挙げられる。
R4のより好ましい態様としては、メチル基が挙げられる。
【0047】
R5、R6及びR7の好ましい態様としては、水素原子、又はC1-6アルキルが挙げられる。
R5、R6及びR7のより好ましい態様としては、C1-6アルキルが挙げられる。
R5、R6及びR7のさらに好ましい態様としては、C1-3アルキルが挙げられる。
R5、R6及びR7のさらにより好ましい態様としては、メチル基が挙げられる。
【0048】
R8の好ましい態様としては、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、C1-6アルキル(該アルキルは、フッ素原子、水酸基、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~2個の置換基で置換されていてもよい)、又は5~6員のヘテロアリール(該ヘテロアリールは、フッ素原子、水酸基、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~2個の置換基で置換されていてもよい)が挙げられる。
R8のより好ましい態様としては、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、C1-6アルキル(該アルキルは、フッ素原子、水酸基、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~2個の置換基で置換されていてもよい)が挙げられる。
R8のさらに好ましい態様としては、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はC1-3アルキルが挙げられる。
R8のさらにより好ましい態様としては、水素原子、又は塩素原子が挙げられる。
【0049】
R8a、R8b及びR8cの好ましい態様としては、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられる。
R8a、R8b及びR8cのより好ましい態様としては、水素原子、塩素原子が挙げられる。
R8a、R8b及びR8cのさらに好ましい態様としては、水素原子が挙げられる。
【0050】
R9の好ましい態様としては、水素原子、又はC1-6アルキルが挙げられる。
R9のより好ましい態様としては、C1-3アルキルが挙げられる。
R9のさらに好ましい態様としては、メチル基が挙げられる。
【0051】
R10の好ましい態様としては、C1-3アルキルが挙げられる。
R10のさらに好ましい態様としては、メチル基が挙げられる。
【0052】
R11、R12及びR13の好ましい態様としては、水素原子、又はC1-6アルキルが挙げられる。
R11、R12及びR13のより好ましい態様としては、C1-3アルキルが挙げられる。
R11、R12及びR13のさらに好ましい態様としては、メチル基が挙げられる。
【0053】
R14の好ましい態様としては、水素原子、C1-6アルキル(該アルキルは、フッ素原子、水酸基、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、C3-10シクロアルキル(該シクロアルキレンは、フッ素原子、水酸基、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、又は3~10員の飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、水酸基、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)が挙げられる。
R14のより好ましい態様としては、水素原子、C1-6アルキル(該アルキルは、フッ素原子、水酸基、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)が挙げられる。
R14のさらに好ましい態様としては、水素原子、又はC1-3アルキル(該アルキルは、フッ素原子、水酸基、及びシアノからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)が挙げられる。
R14のさらにより好ましい態様としては、水素原子、又はメチル基が挙げられる。
【0054】
R15の好ましい態様としては、C1-6アルキルが挙げられる。
R15のより好ましい態様としては、C1-3アルキルが挙げられる。
R15のさらに好ましい態様としては、メチル基が挙げられる。
【0055】
R16及びR17の好ましい態様としては、水素原子、又はC1-6アルキルが挙げられる。
R16及びR17のより好ましい態様としては、C1-6アルキルが挙げられる。
R16及びR17のさらに好ましい態様としては、C1-3アルキルが挙げられる。
R16及びR17のさらにより好ましい態様としては、メチル基が挙げられる。
【0056】
R18の好ましい態様としては、水素原子、又はC1-6アルキルが挙げられる。
R18のより好ましい態様としては、C1-6アルキルが挙げられる。
R18のさらに好ましい態様としては、C1-3アルキルが挙げられる。
R18のさらにより好ましい態様としては、メチル基が挙げられる。
【0057】
X、Y及びZの好ましい態様としては、CR8、又は窒素原子が挙げられる。本開示において、本開示の化合物または製薬学的に許容される塩についていう場合、X、Y及びZは同時にCR8ではない。
X、Y及びZの別の好ましい態様としては、X、Y及びZのうちの1つまたは2つが、窒素原子を表すことが挙げられる。
X、Y及びZの別の好ましい態様としては、XがCR8、Y及びZが窒素原子が挙げられる。
X、Y及びZのさらに別の好ましい態様としては、YがCR8、X及びZが窒素原子が挙げられる。
X、Y及びZのさらに異なる好ましい態様としては、ZがCR8、X及びYが窒素原子が挙げられる。
【0058】
Lの好ましい態様としては、単結合、又はC1-6アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子、水酸基、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)が挙げられる。
Lのより好ましい態様としては、単結合、又はC1-6アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子、水酸基、及びシアノからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)が挙げられる。
Lのさらに好ましい態様としては、単結合、又はC1-6アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子及び水酸基からなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)が挙げられる。
Lのさらにより好ましい態様としては、単結合、又は1個の水酸基で置換されていてもよいC1-6アルキレンが挙げられる。
【0059】
Vの好ましい態様としては、単結合、C3-10シクロアルキレン(該シクロアルキレンは、フッ素原子、水酸基、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、又は3~10員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、水酸基、1~2個の水酸基又はフッ素原子で置換されていてもよいC1-3アルキル、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)が挙げられる。
Vのより好ましい態様としては、単結合、C3-7シクロアルキレン(該シクロアルキレンは、フッ素原子、水酸基、1~2個の水酸基で置換されていてもよいC1-3アルキル、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~2個の置換基で置換されていてもよい)、又は3~7員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、水酸基、1~2個の水酸基又はフッ素原子で置換されていてもよいC1-3アルキル、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~2個の置換基で置換されていてもよい)が挙げられる。
Vのさらに好ましい態様としては、単結合、C3-7シクロアルキレン(該シクロアルキレンは、フッ素原子、水酸基及び1~2個の水酸基又はフッ素原子で置換されていてもよいC1-3アルキルからなる群から選択される同一又は異なる1~2個の置換基で置換されていてもよい)、又は3~7員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、水酸基及び1~2個の水酸基で置換されていてもよいC1-3アルキルからなる群から選択される同一又は異なる1~2個の置換基で置換されていてもよい)が挙げられる。
Vのさらにより好ましい態様としては、単結合、C3-7シクロアルキレン(該シクロアルキレンは、水酸基、及びC1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)、又は3~7員の二価飽和複素環基(該3~7員の飽和複素環基は、フッ素原子、シアノ、水酸基、及びC1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)が挙げられる。
【0060】
Wの好ましい態様としては、単結合、又はC1-6アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子、水酸基、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)が挙げられる。
Wのより好ましい態様としては、単結合、又はC1-3アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子、水酸基、及びシアノからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)が挙げられる。
Wのさらに好ましい態様としては、単結合、又はC1-3アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子及び水酸基からなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)が挙げられる。
Wのさらにより好ましい態様としては、単結合、又は1個の水酸基で置換されていてもよいC1-3アルキレンが挙げられる。
【0061】
Qの好ましい態様としては、水素原子、又はNHR14が挙げられる。
Qのより好ましい態様としては、水素原子、NH2、又はNHMeが挙げられる。
Qのさらに好ましい態様としては、水素原子、又はNH2が挙げられる。
Qのさらにより好ましい態様としては、水素原子が挙げられる。
Qの別のさらにより好ましい態様としては、NH2が挙げられる。
【0062】
式(1)で表される化合物の1つの態様としては、以下の(A)が挙げられる。
(A)
R1が、1~3個のフッ素原子で置換されていてもよいメチル基、又はエチル基であり、
R2が、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、-OR3、1~3個のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、又は3~10員の飽和複素環基であり、
R3が、水素原子、又はC1-6アルキルであり、
X、Y及びZが、それぞれ独立して、CR8又は窒素原子を表し、ここにおいて、X、Y及びZは同時にCR8ではなく、
R8が、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、C1-6アルキル(該アルキルは、フッ素原子、水酸基、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~2個の置換基で置換されていてもよい)、又は5~6員のヘテロアリール(該ヘテロアリールは、フッ素原子、水酸基、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~2個の置換基で置換されていてもよい)であり、
Lが、単結合、又はC1-6アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子、水酸基、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)であり、
Vが、単結合、C3-10シクロアルキレン(該シクロアルキレンは、フッ素原子、水酸基、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、又は3~10員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、水酸基、1~2個の水酸基又はフッ素原子で置換されていてもよいC1-3アルキル、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)であり、
Wが、単結合、又はC1-6アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子、水酸基、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)であり、
Qが、水素原子、又はNHR14であり、
R14が、水素原子、C1-6アルキル(該アルキルは、フッ素原子、水酸基、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、C3-10シクロアルキル(該シクロアルキレンは、フッ素原子、水酸基、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、又は3~10員の飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、水酸基、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)であり、
R16及びR17が、水素原子、又はC1-6アルキルである、
化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0063】
式(1)で表される化合物の1つの態様としては、以下の(B)が挙げられる。
(B)
R1が、1~3個のフッ素原子で置換されていてもよいメチル基であり、
R2が、ハロゲン原子、シアノ、又は1~3個のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキルであり、
X、Y及びZが、それぞれ独立して、CR8又は窒素原子を表し、ここにおいて、X、Y及びZは同時にCR8ではなく、
R8が、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はC1-3アルキルであり、
Lが、単結合、又はC1-6アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子、水酸基、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)であり、
Vが、単結合、C3-10シクロアルキレン(該シクロアルキレンは、フッ素原子、水酸基、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、又は3~10員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、水酸基、1~2個の水酸基又はフッ素原子で置換されていてもよいC1-3アルキル、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)であり、
Wが、単結合、又はC1-6アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子、水酸基、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)であり、
Qが、水素原子、又はNHR14であり、
R14が、水素原子、C1-6アルキル(該アルキルは、フッ素原子、水酸基、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、C3-10シクロアルキル(該シクロアルキレンは、フッ素原子、水酸基、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、又は3~10員の飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、水酸基、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)であり、
R16及びR17が、水素原子、又はC1-6アルキルである、
化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0064】
式(1)で表される化合物の1つの態様としては、以下の(C)が挙げられる。
(C)
R1が、メチル基、フルオロメチル基であり、
R2が、塩素原子、シアノ、トリフルオロメチル基であり、
X、Y及びZが、それぞれ独立して、CR8又は窒素原子を表し、ここにおいて、X、Y及びZは同時にCR8ではなく、
R8が、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はC1-3アルキルであり、
Lが、単結合、又はC1-6アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子、水酸基、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)であり、
Vが、単結合、C3-10シクロアルキレン(該シクロアルキレンは、フッ素原子、水酸基、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)、又は3~10員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、水酸基、1~2個の水酸基又はフッ素原子で置換されていてもよいC1-3アルキル、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)であり、
Wが、単結合、又はC1-6アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子、水酸基、C1-3アルコキシ、-NR16R17、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい)であり、
Qが、水素原子、又はNHR14であり、
R14が、水素原子、又はC1-3アルキル(該アルキルは、フッ素原子、水酸基、及びシアノからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)であり、
R16及びR17が、水素原子、又はC1-6アルキルである、化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0065】
式(1)で表される化合物の1つの態様としては、以下の(D)が挙げられる。
(D)
R1が、メチル基であり、
R2が、シアノであり、
X、Y及びZが、それぞれ独立して、CR8又は窒素原子を表し、ここにおいて、X、Y及びZは同時にCR8ではなく、
R8が、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はC1-3アルキルであり、
Lが、単結合、又はC1-6アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子、水酸基、及びシアノからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)であり、
Vが、単結合、C3-7シクロアルキレン(該シクロアルキレンは、フッ素原子、水酸基、1~2個の水酸基で置換されていてもよいC1-3アルキル、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~2個の置換基で置換されていてもよい)、又は3~7員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、水酸基、1~2個の水酸基又はフッ素原子で置換されていてもよいC1-3アルキル、及びシアノからなる群から選択される同一又は異なる1~2個の置換基で置換されていてもよい)であり、
Wが、単結合、又はC1-3アルキレン(該アルキレンは、フッ素原子、水酸基、及びシアノからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)であり、
Qが、水素原子、NH2、又はNHMeである、
化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0066】
式(1)又は(2)で表される化合物の1つの態様としては、以下の(E)が挙げられる。
(E)
X、Y及びZが、それぞれ独立して、CR8又は窒素原子を表し、ここにおいて、X、Y及びZは同時にCR8ではなく、
R8が、水素原子、又は塩素原子であり、
Lが、単結合、又は1個の水酸基又はフッ素原子で置換されていてもよいC1-6アルキレンであり、
Vが、単結合、C3-7シクロアルキレン(該シクロアルキレンは、水酸基、及びC1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)、又は3~7員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、シアノ、水酸基、及び1~2個の水酸基又はフッ素原子で置換されていてもよいC1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)であり、
Wが、単結合、又は1個の水酸基で置換されていてもよいC1-3アルキレンであり、
Qが、水素原子、NH2、又はNHMeである、
化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0067】
式(3)で表される化合物の1つの態様としては、以下の(F)が挙げられる。
(F)
R8a及びR8bが、それぞれ独立して、水素原子、又は塩素原子であり、
Lが、単結合、又は1個の水酸基で置換されていてもよいC1-3アルキレンであり、
Vが、単結合、C3-7シクロアルキレン(該シクロアルキレンは、水酸基、及びC1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)、又は3~7員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、シアノ、水酸基、及びC1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)であり、
Wが、単結合又は1個の水酸基で置換されていてもよいC1-3アルキレンであり、
Qが、水素原子又はNH2である、
化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0068】
式(3)で表される化合物の1つの態様としては、以下の(G)が挙げられる。
(G)
R8a及びR8bが、それぞれ独立して、水素原子、又は塩素原子であり、
Lが、1個の水酸基で置換されていてもよいC1-3アルキレンであり、
Vが、単結合であり、
Wが、単結合、又は1個の水酸基で置換されていてもよいC1-3アルキレンであり、
Qが、NH2である、
化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0069】
式(3)で表される化合物の1つの態様としては、以下の(H)が挙げられる。
(H)
R8a及びR8bが、それぞれ独立して、水素原子であり、
Lが、1個の水酸基で置換されていてもよいC1-3アルキレンであり、
Vが、C3-7シクロアルキレンであり、
Wが、1個の水酸基で置換されていてもよいC1-3アルキレンであり、
Qが、NH2である、
化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0070】
式(4)で表される化合物の1つの態様としては、以下の(I)が挙げられる。
(I)
R8b及びR8cが、水素原子であり、
Lが、単結合、又は1個の水酸基又はフッ素原子で置換されていてもよいC1-3アルキレンであり、
Vが、単結合、C3-7シクロアルキレン(該シクロアルキレンは、水酸基、及びC1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)、又は3~7員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、シアノ、水酸基、及び1~3個の水酸基又はフッ素原子で置換されていてもよいC1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)であり、
Wが、単結合又は1個の水酸基で置換されていてもよいC1-3アルキレンであり、
Qが、水素原子、NH2、又はNHMeである、
化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0071】
式(4)で表される化合物の1つの態様としては、以下の(J)が挙げられる。
(J)
R8b及びR8cが、それぞれ独立して、水素原子であり、
Lが、1個の水酸基又はフッ素原子で置換されていてもよいC1-3アルキレンであり、
Vが、3~7員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、シアノ、水酸基、及び1~3個の水酸基及びフッ素原子で置換されていてもよいC1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)であり、
Wが、単結合であり、
Qが、水素原子である、
化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0072】
式(4)で表される化合物の1つの態様としては、以下の(K)が挙げられる。
(K)
R8b及びR8cが、それぞれ独立して、水素原子であり、
Lが、1個の水酸基又はフッ素原子で置換されていてもよいC1-3アルキレンであり、
Vが、C3-7シクロアルキレン(該シクロアルキレンは、水酸基、及びC1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)であり、
Wが、1個の水酸基で置換されていてもよいC1-3アルキレンであり、
Qが、NH2である、
化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0073】
式(4)で表される化合物の1つの態様としては、以下の(L)が挙げられる。
(L)
R8b及びR8cが、それぞれ独立して、水素原子であり、
Lが、単結合であり、
Vが、C3-7シクロアルキレン(該シクロアルキレンは、水酸基、及びC1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)であり、
Wが、単結合であり、
Qが、NH2、又はNHMeである、
化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0074】
式(4)で表される化合物の1つの態様としては、以下の(M)が挙げられる。
(M)
R8b及びR8cが、それぞれ独立して、水素原子であり、
Lが、1個の水酸基又はフッ素原子で置換されていてもよいC1-3アルキレンであり、
Vが、単結合であり、
Wが、単結合、又は1個の水酸基で置換されていてもよいC1-3アルキレンであり、
Qが、NH2、又はNHMeである、
化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0075】
式(5)で表される化合物の1つの態様としては、以下の(N)が挙げられる。
(N)
R8a及びR8cが、それぞれ独立して、水素原子であり、
Lが、単結合、又は1個の水酸基で置換されていてもよいC1-3アルキレンであり、
Vが、単結合、C3-7シクロアルキレン(該シクロアルキレンは、水酸基、及びC1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)、又は3~7員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、フッ素原子、シアノ、水酸基、及び1~2個の水酸基で置換されていてもよいC1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)であり、
Wが、単結合、又は1個の水酸基で置換されていてもよいC1-3アルキレンであり、
Qが、水素原子、又はNH2である、
化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0076】
式(5)で表される化合物の1つの態様としては、以下の(O)が挙げられる。
(O)
R8a及びR8cは、それぞれ独立して、水素原子であり、
Lが、1個の水酸基で置換されていてもよいC1-3アルキレンであり、
Vが、3~7員の二価飽和複素環基(該飽和複素環基は、水酸基、及び1個の水酸基で置換されていてもよいC1-3アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)であり、
Wが、単結合であり、
Qが、水素原子である、
化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0077】
式(5)で表される化合物の1つの態様としては、以下の(P)が挙げられる。
(P)
R8a及びR8cは、それぞれ独立して、水素原子であり、
Lが、1個の水酸基で置換されていてもよいC1-3アルキレンであり、
Vが、単結合であり、
Wが、単結合、又は1個の水酸基で置換されていてもよいC1-3アルキレンであり、
Qが、NH2である、
化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0078】
式(5)で表される化合物の1つの態様としては、以下の(Q)が挙げられる。
(Q)
R8aが、それぞれ独立して、水素原子であり、
Lが、1個の水酸基で置換されていてもよいC1-3アルキレンであり、
Vが、C3-7シクロアルキレンであり、
Wが、1個の水酸基で置換されていてもよいC1-3アルキレンであり、
Qが、NH2である、
化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0079】
式(6)で表される化合物の1つの態様としては、以下の(R)が挙げられる。
(R)
R8aが、水素原子であり、
Lが、C1-3アルキレンであり、
Vが、単結合、又はC3-7シクロアルキレンであり、
Wが、単結合、又はC1-3アルキレンであり、
Qが、NH2である、
化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0080】
本発明のさらなる態様としては、5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル塩酸塩であって、2θで表して、少なくとも7.2°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶形態(形態I)が挙げられる。
【0081】
本発明のさらなる態様としては、5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル 塩酸塩であって、2θで表して、少なくとも8.8°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶形態(形態I)が挙げられる。
【0082】
本発明のさらなる態様としては、5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル 塩酸塩であって、2θで表して、少なくとも7.2°±0.2°、及び8.8°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶形態(形態I)が挙げられる。
【0083】
本発明のさらなる態様としては、形態Iの結晶形態の5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル 塩酸塩であって、2θで表して、7.2°±0.2°、8.8°±0.2°、9.8°±0.2°、10.2°±0.2°、10.7°±0.2°、16.7°±0.2°、18.5°±0.2°、26.2°±0.2°、及び27.0°±0.2°および26.4°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有するものが挙げられる。これら10個のピークから選択される4つまたは5つを有することで、当該結晶は特定される。
【0084】
本発明のさらなる態様としては、5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル リン酸塩であって、2θで表して、少なくとも6.8°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶形態(形態II)が挙げられる。
【0085】
本発明のさらなる態様としては、5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル リン酸塩であって、2θで表して、少なくとも13.0°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶形態(形態II)が挙げられる。
【0086】
本発明のさらなる態様としては、5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル リン酸塩であって、2θで表して、少なくとも6.8°±0.2°、及び13.0°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶形態(形態II)が挙げられる。
【0087】
本発明のさらなる態様としては、形態IIの結晶形態の5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル リン酸塩であって、2θで表して、6.8°±0.2°、7.5°±0.2°、11.7°±0.2°、11.9°±0.2°、13.0°±0.2°、16.4°±0.2°、19.3°±0.2°、20.4°±0.2°、22.7°±0.2°、及び24.3°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有するものが挙げられる。これら10個のピークから選択される4つまたは5つを有することで、当該結晶は特定される。
【0088】
本発明のさらなる態様としては、5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル トシル酸塩であって、2θで表して、少なくとも6.0°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶形態(形態III)が挙げられる。
【0089】
本発明のさらなる態様としては、5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリルのトシル酸塩であって、2θで表して、少なくとも17.0°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶形態(形態III)が挙げられる。
【0090】
本発明のさらなる態様としては、5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル トシル酸塩であって、2θで表して、少なくとも6.0°±0.2°、及び17.0°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶形態(形態III)が挙げられる。
【0091】
本発明のさらなる態様としては、形態IIIの結晶形態の5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル トシル酸塩であって、2θで表して、6.0°±0.2°、9.0°±0.2°、12.1°±0.2°、14.4°±0.2°、16.2°±0.2°、17.0°±0.2°、22.8°±0.2°、及び26.3°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有するものが挙げられる。これら10個のピークから選択される4つまたは5つを有することで、当該結晶は特定される。
【0092】
本発明のさらなる態様としては、5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリルであって、2θで表して、少なくとも9.3°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶形態(形態IV)が挙げられる。
【0093】
本発明のさらなる態様としては、5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリルであって、2θで表して、少なくとも10.2°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶形態(形態IV)が挙げられる。
【0094】
本発明のさらなる態様としては、5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリルであって、2θで表して、少なくとも9.3°±0.2°、及び10.2°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶形態(形態IV)が挙げられる。
【0095】
本発明のさらなる態様としては、形態IVの結晶形態の5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリルであって、2θで表して、9.3°±0.2°、10.2°±0.2°、10.7°±0.2°、13.6°±0.2°、16.7°±0.2°、17.1°±0.2°、17.8°±0.2°、18.6°±0.2°、26.1°±0.2°及び26.4°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有するものが挙げられる。これら10個のピークから選択される4つまたは5つを有することで、当該結晶は特定される。
【0096】
本発明のさらなる態様としては、5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリルであって、2θで表して、少なくとも7.9°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶形態(形態V)が挙げられる。
【0097】
本発明のさらなる態様としては、5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリルであって、2θで表して、少なくとも8.7°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶形態(形態V)が挙げられる。
【0098】
本発明のさらなる態様としては、5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリルであって、2θで表して、少なくとも7.9°±0.2°、及び8.7°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶形態(形態V)が挙げられる。
【0099】
本発明のさらなる態様としては、形態Vの結晶形態の5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリルであって、2θで表して、7.9°±0.2°、8.7°±0.2°、12.2°±0.2°、13.1°±0.2°、15.9°±0.2°、17.6°±0.2°、19.9°±0.2°、21.9°±0.2°、22.8°±0.2°、及び26.6°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有するものが挙げられる。これら10個のピークから選択される4つまたは5つを有することで、当該結晶は特定される。
【0100】
本発明のさらなる態様としては、5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリルであって、2θで表して、少なくとも5.3°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶形態(形態VI)が挙げられる。
【0101】
本発明のさらなる態様としては、5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリルであって、2θで表して、少なくとも5.7°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶形態(形態VI)が挙げられる。
【0102】
本発明のさらなる態様としては、5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリルであって、2θで表して、少なくとも5.3°±0.2°、及び5.7°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶形態(形態VI)が挙げられる。
【0103】
本発明のさらなる態様としては、形態VIの結晶形態の5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリルであって、2θで表して、5.3°±0.2°、5.7°±0.2°、7.0°±0.2°、7.3°±0.2°、7.8°±0.2°、8.4°±0.2°、9.3°±0.2°、10.5°±0.2°、11.5°±0.2°、及び14.1°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有するものが挙げられる。これら10個のピークから選択される4つまたは5つを有することで、当該結晶は特定される。
【0104】
本発明のさらなる態様としては、5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル 塩酸塩であって、2θで表して、少なくとも8.2°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶形態(形態VII)が挙げられる。
【0105】
本発明のさらなる態様としては、5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル 塩酸塩であって、2θで表して、少なくとも27.0°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶形態(形態VII)が挙げられる。
【0106】
本発明のさらなる態様としては、5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル 塩酸塩であって、2θで表して、少なくとも8.2°±0.2°、及び27.0°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶形態(形態VII)が挙げられる。
【0107】
本発明のさらなる態様としては、形態VIIの結晶形態の5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル 塩酸塩であって、2θで表して、7.0°±0.2°、8.2°±0.2°、9.7°±0.2°、11.5°±0.2°、14.0°±0.2°、14.6°±0.2°、16.3°±0.2°、18.0°±0.2°、19.8°±0.2°、21.2°±0.2°、21.5°±0.2°、24.1°±0.2°及び27.0°±0.2°に特徴的なピークを有する粉末X線回折パターンを有するものが挙げられる。これら13個のピークから選択される4つまたは5つを有することで、当該結晶は特定される。
【0108】
本開示の化合物を投与する場合、その使用量は、症状、年齢、投与方法等によって異なるが、例えば、静脈内注射の場合には、成人に対して、1日当たり、下限として、0.01mg(好ましくは0.1mg)、上限として、1000mg(好ましくは100mg)を、1回または数回に分けて、症状に応じて投与することにより効果が期待される。その投与スケジュールとしては、例えば単回投与、1日1回3日間連日投与、又は1日2回1週間連続投与、等を挙げることができる。さらに上記記載の各投与方法を、約1日間~約60日間の間隔をあけて繰り返すこともできる。
【0109】
本開示の化合物は、非経口投与又は経口投与により投与しうるが、好ましくは非経口的方法、より好ましくは静脈内注射により投与される。また、本開示の化合物は、医薬的に許容されるキャリア、例えばリポソームとして製剤化し投与されることが好ましい。
【0110】
本開示の化合物を内封するリポソームは、少なくとも1種以上のリン脂質を含む。リン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリンなどが挙げられる。
【0111】
リン脂質における脂肪酸残基は特に限定されないが、例えば、炭素数14~18の飽和または不飽和の脂肪酸残基が挙げられ、具体的には、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等の脂肪酸由来のアシル基が挙げられる。また、卵黄レシチン、大豆レシチン等の天然物由来のリン脂質、およびその不飽和脂肪酸残基に水素添加した水素添加卵黄レシチン、水素添加大豆レシチン(水素添加大豆リン脂質、または水素添加大豆ホスファチジルコリンともいう)等を用いることもできる。
【0112】
リポソーム膜成分全体に対するリン脂質の配合量(モル分率)は特に限定されないが、好ましくは30~80%が挙げられ、より好ましくは40~70%が挙げられる。
【0113】
本開示の化合物を内封するリポソームは、ステロール類を含むことができる。ステロール類としては、コレステロール、β-シトステロ-ル、スチグマステロ-ル,カンペステロ-ル、ブラシカステロ-ル、エルゴステロ-ル、及びフコステロ-ル等が挙げられる。ステロール類として、好ましくはコレステロールが挙げられる。リポソーム膜成分全体に対するステロール類の配合量(モル分率)は特に限定されないが、好ましくは0~60%が挙げられ、より好ましくは10~50%が挙げられ、さらに好ましくは30~50%が挙げられる。
【0114】
本開示の化合物を内封するリポソームは、in vivoにおける滞留性を向上させるために、ポリマー修飾脂質を含むことができる。リポソーム膜成分全体に対するポリマー修飾脂質の配合量(モル分率)は特に限定されないが、好ましくは0~20%が挙げられ、より好ましくは1~10%が挙げられる。ポリマー修飾脂質のポリマー部分としては、好ましくは親水性ポリマーが挙げられ、より好ましくは脂質と結合していないポリマーの末端がアルコキシ化されている親水性ポリマーが挙げられる。ポリマー修飾脂質のポリマー部分としては、具体的には、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、メトキシポリビニルアルコール、メトキシポリビニルピロリドン、エトキシポリエチレングリコール、エトキシポリプロピレングリコール、エトキシポリビニルアルコール、エトキシポリビニルピロリドン、プロポキシポリエチレングリコール、プロポキシポリプロピレングリコール、プロポキシポリビニルアルコール、及びプロポキシポリビニルピロリドンが挙げられる。ポリマー修飾脂質のポリマー部分として、好ましくはポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、エトキシポリプロピレングリコール、プロポキシポリエチレングリコール、及びプロポキシポリプロピレングリコールが挙げられる。ポリマー修飾脂質のポリマー部分として、より好ましくはポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、エトキシポリプロピレングリコール、及びプロポキシポリエチレングリコールが挙げられる。ポリマー修飾脂質のポリマー部分として、更により好ましくはポリエチレングリコール、及びメトキシポリエチレングリコールが挙げられる。ポリマー修飾脂質のポリマー部分として、最も好ましくはメトキシポリエチレングリコールが挙げられる。ポリマー修飾脂質のポリマー部分の分子量は特に限定されないが、例えば、100~10000ダルトンが挙げられ、好ましくは1000~7000ダルトンが挙げられ、より好ましくは1500~5000ダルトンが挙げられ、最も好ましくは1500~3000ダルトンが挙げられる。
【0115】
ポリマー修飾脂質の脂質部分としては、具体的には特に限定されないが、例えば、ホスファチジルエタノールアミン、及びジアシルグリセロールが挙げられる。ポリマー修飾脂質の脂質部分として好ましくは、炭素数14~18の飽和または不飽和の脂肪酸残基を有するホスファチジルエタノールアミン、及び炭素数14~18の飽和または不飽和の脂肪酸残基を有するジアシルグリセロールが挙げられ、より好ましくは炭素数14~18の飽和脂肪酸残基を有するホスファチジルエタノールアミン、及び炭素数14~18の飽和脂肪酸残基を有するジアシルグリセロールが挙げられ、更に好ましくは、パルミトイル基またはステアロイル基を有するホスファチジルエタノールアミン、及びパルミトイル基またはステアロイル基を有するジアシルグリセロールが挙げられる。ポリマー修飾脂質の脂質部分として最も好ましくは、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンが挙げられる。
【0116】
本開示の化合物を内封するリポソームは、医薬的に許容される添加物を含むことができる。添加物として、例えば、無機酸、無機酸塩、有機酸、有機酸塩、糖類、緩衝剤、抗酸化剤、及びポリマー類が挙げられる。
【0117】
無機酸としては、例えば、リン酸、塩酸、及び硫酸が挙げられる。
【0118】
無機酸塩としては、例えば、リン酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム、及び硫酸マグネシウムが挙げられる。
【0119】
有機酸としては、例えば、クエン酸、酢酸、コハク酸、及び酒石酸が挙げられる。
【0120】
有機酸塩としては、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、及び酒石酸ナトリウムが挙げられる。
【0121】
糖類としては、例えば、グルコース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、及びトレハロースが挙げられる。
【0122】
緩衝剤としては、例えば、L-アルギニン、L-ヒスチジン、トロメタモール(トリスヒドロキシメチルアミノメタン、Tris)及びそれらの塩が挙げられる。
【0123】
抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、L-システイン、チオグリコール酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、及びトコフェロールが挙げられる。
【0124】
ポリマー類としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられる。
【0125】
以下に、式(1)で表される本開示の化合物の製造方法について、例を挙げて説明するが、本開示の化合物の製造法は、これらに限定されるものではない。下記の製造法で用いられる化合物は、反応に支障を来たさない限り、塩を形成していてもよい。
【0126】
本開示の化合物は、公知化合物を出発原料として、例えば以下の製造法A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、M、N、O、P、Q及びRの方法、若しくはそれらに準じた方法又は当業者に周知の合成方法を適宜組み合わせて製造することができる。式(a2)以外の本開示の化合物も、これらに準じた方法又は当業者に周知の合成方法を適宜組み合わせて製造することができる。
【0127】
製造法A
式(a2)で表される本開示の化合物は、例えば、次の方法により製造することができる。
【化18】
[式中、R
1、R
2、R
14、X、Y、Z、L、V及びWは項1の記載と同義であり、P
1はアミノの保護基を意味する。P
1としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載のアミノの保護基等が挙げられる。]
【0128】
[工程1]
化合物(a2)は、下記の製造法により得られる化合物(a1)の保護基P1を除去することにより製造することができる。本工程は、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載されている方法等に準じて行うことができる。
【0129】
製造法B
式(a1)で表される本開示の化合物は、例えば、次の方法により製造することができる。
【化19】
[式中、R
1、R
2、R
14、X、Y、Z、L、V及びWは項1の記載と同義であり、P
1はアミノの保護基を意味し、P
2はフェノールの保護基を意味する。P
1としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載のアミノの保護基等が挙げられ、P
2としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載のフェノールの保護基等が挙げられる。]
【0130】
化合物(b3)は、市販品として入手可能である。
【0131】
[工程1]
化合物(b2)は、下記の製造法により得られる化合物(b1)の保護基P2を除去することにより製造することができる。本工程は、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載されている方法等に準じて行うことができる。
【0132】
[工程2]
化合物(a1)は、適当な溶媒中、光延試薬の存在下、化合物(b2)と化合物(b3)との光延反応により製造することができる。
【0133】
光延試薬としては、例えば、アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)、アゾジカルボン酸イソプロピル(DIAD)、N,N,N’,N’-テトライソプロピルアゾジカルボキサミド(TIPA)、1,1’-(アゾジカルボニル)ジピぺリジン(ADDP)、N,N,N’,N’-テトラメチルアゾジカルボキサミド(TMAD)およびトリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等が挙げられ、シアノメチレントリメチルホスホラン(CMMP)、シアノメチレントリブチルホスホラン(CMBP)も用いることが可能である。
【0134】
溶媒中としては、本工程の反応条件下で反応しない溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、アニソール、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン系溶媒;又はそれらの混合溶媒等が挙げられる。溶媒として、好ましくはトルエン、ベンゼン、THF、1,4-ジオキサンおよびこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0135】
反応時間は、通常、5分~72時間であり、好ましくは12時間~24時間である。
【0136】
反応温度は、通常、0℃~100℃であり、好ましくは0℃~50℃である。
【0137】
製造法C
式(b1)で表される本開示の化合物は、例えば、次の方法により製造することができる。
【化20】
[式中、R
1、R
2、X、Y及びZは項1の記載と同義であり、P
2はフェノールの保護基を意味する。P
2としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載のフェノールの保護基等が挙げられる。]
【0138】
[工程1]
化合物(c2)は、化合物(c1)を、適当な酸存在下又は非存在下で、適当な溶媒中、ヒドラジン一水和物と反応させることにより製造することができる。
【0139】
酸としては、酢酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、塩酸、硫酸、カンファスルホン酸等が挙げられる。酸として、好ましくは酢酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0140】
溶媒としては、本工程の反応条件下で反応しない溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、アニソール、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶媒;又はそれらの混合物が挙げられる。溶媒として、好ましくは1,4-ジオキサン、トルエン、エタノール等が挙げられる。
【0141】
反応時間は、通常、5分~72時間であり、好ましくは12時間~24時間である。
【0142】
反応温度は、通常、0℃~200℃であり、好ましくは50℃~100℃である。
【0143】
[工程2]
化合物(b1)は、化合物(c2)を、適当な塩基存在下で、適当な溶媒中、5-クロロピラジン誘導体と反応させることにより製造することができる。化合物(b1)は、化合物(c2)を、適当なパラジウム触媒、配位子及び塩基存在下で、適当な溶媒中、5-クロロピラジン誘導体と反応させることによっても製造することができる。
【0144】
塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ピコリン、N-メチルモルホリン(NMM)、N-エチルモルホリン等の有機塩基類、又は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基類が挙げられる。塩基として、好ましくはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-エチルモルホリン、炭酸カリウム、炭酸セシウム等が挙げられる。
【0145】
パラジウム触媒としては、例えば、塩化パラジウム、酢酸パラジウム等の塩、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)クロロホルム付加物等の0価パラジウム錯体等が挙げられる。
【0146】
配位子としては、例えば、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(キサントホス)、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(BINAP)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(SPhos)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(XPhos)等のホスフィン配位子等が挙げられる。配位子として、好ましくは4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(キサントホス)が挙げられる。
【0147】
溶媒としては、本工程の反応条件下で反応しない溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、アニソール、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン系溶媒;又はこれらの混合物が挙げられる。溶媒として、好ましくはテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、トルエン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0148】
反応時間は、通常、5分~48時間であり、好ましくは1時間~6時間である。
【0149】
反応温度は、通常、0℃~200℃であり、好ましくは50℃~100℃である。
【0150】
製造法D
式(c1)で表される本開示の化合物は、例えば、次の方法により製造することができる。
【0151】
【化21】
[式中、R
1、X、Y及びZは項1の記載と同義であり、P
2はフェノールの保護基を意味する。P
2としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載のフェノールの保護基等が挙げられる。]
【0152】
[工程1]
化合物(c1)は、化合物(d1)を、適当な塩基存在下で、適当な溶媒中、アセトニトリルと反応させることにより製造することができる。
【0153】
塩基としては、無機塩基が使用可能である。無機塩基としては、水素化ナトリウム等の水素化物、フッ化カリウム等のハロゲン化アルカリ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸アルカリ、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド等のアルカリアルコキシド、n-ブチルリチウム、メチルリチウム、イソプロピルマグネシウムブロミド等のアルカリ金属が挙げられる。塩基として、好ましくはナトリウムエトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド、n-ブチルリチウム等が挙げられる。
【0154】
溶媒としては、本工程の反応条件下で反応しない溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、アニソール、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶媒;又はそれらの混合物が挙げられる。溶媒として、好ましくはテトラヒドロフラン、トルエン等が挙げられる。
【0155】
反応時間は、通常、5分~72時間であり、好ましくは12時間~24時間である。
反応温度は、通常、0℃~200℃であり、好ましくは50℃~100℃である。
【0156】
製造法E
式(b1)で表される本開示の化合物は、例えば、次の方法により製造することができる。
【化22】
[式中、R
1、R
2、X、Y及びZは項1の記載と同義であり、P
2はフェノールの保護基を意味する。P
2としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載のフェノールの保護基等が挙げられる。]
【0157】
[工程1]
化合物(e2)は、化合物(e1)を、適当な塩基存在下で、適当な溶媒中、二硫化炭素とヨードメタンと反応させることにより製造することができる。
【0158】
塩基としては、無機塩基が使用可能である。無機塩基としては、水素化ナトリウム等の水素化物、フッ化カリウム等のハロゲン化アルカリ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸アルカリ、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド等のアルカリアルコキシド、n-ブチルリチウム、メチルリチウム、イソプロピルマグネシウムブロミド等のアルカリ金属が挙げられる。塩基として、好ましくは水素化ナトリウム、カリウムtert-ブトキシド等が挙げられる。
【0159】
溶媒としては、本工程の反応条件下で反応しない溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、アニソール、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶媒;又はそれらの混合物が挙げられる。溶媒として、好ましくはテトラヒドロフラン、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0160】
反応時間は、通常、5分~72時間であり、好ましくは30分~2時間である。
【0161】
反応温度は、通常、-78℃~200℃であり、好ましくは0℃~25℃である。
【0162】
[工程2]
化合物(e3)は、化合物(e2)を、適当な塩基存在下で、適当な溶媒中、5-アミノピラジン誘導体と反応させることにより製造することができる。
【0163】
塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ピコリン、N-メチルモルホリン(NMM)、N-エチルモルホリン等の有機塩基類、又は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基類が挙げられる。塩基として、好ましくはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等が挙げられる。
【0164】
溶媒としては、本工程の反応条件下で反応しない溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、アニソール、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン系溶媒;又はこれらの混合物が挙げられる。溶媒として、好ましくはテトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0165】
反応時間は、通常、5分~48時間であり、好ましくは2時間~8時間である。
【0166】
反応温度は、通常、0℃~200℃であり、好ましくは50℃~100℃である。
【0167】
[工程3]
化合物(b1)は、化合物(e3)を、適当な酸存在下又は非存在下で、適当な溶媒中、ヒドラジン一水和物と反応させることにより製造することができる。
【0168】
酸としては、酢酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、塩酸、硫酸、カンファスルホン酸等が挙げられる。酸として、好ましくは酢酸が挙げられる。
【0169】
溶媒としては、本工程の反応条件下で反応しない溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、アニソール、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶媒;又はそれらの混合物が挙げられる。溶媒として、好ましくは1,4-ジオキサン、エタノール等が挙げられる。
【0170】
反応時間は、通常、5分~72時間であり、好ましくは12時間~24時間である。
【0171】
反応温度は、通常、0℃~200℃であり、好ましくは50℃~100℃である。
【0172】
製造法F
式(c1)で表される本開示の化合物は、例えば、次の方法により製造することができる。
【化23】
[式中、R
1、X、Y及びZは項1の記載と同義であり、P
2はフェノールの保護基を意味する。P
2としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載のフェノールの保護基等が挙げられる。]
【0173】
[工程1]
化合物(f1)は、化合物(e1)を、適当な溶媒中、ジメチルホルムアミドジメチルアセタールと反応させることにより製造することができる。
【0174】
溶媒としては、本工程の反応条件下で反応しない溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、アニソール、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン系溶媒;又はこれらの混合物が挙げられる。溶媒として、好ましくはN,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0175】
反応時間は、通常、5分~48時間であり、好ましくは24時間~48時間である。
【0176】
反応温度は、通常、0℃~200℃であり、好ましくは60℃~120℃である。
【0177】
[工程2]
化合物(f2)は、化合物(f1)を、適当な溶媒中、ヒドロキシアミン塩酸塩と反応させることにより製造することができる。
【0178】
溶媒としては、本工程の反応条件下で反応しない溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、アニソール、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶媒;又はこれらの混合物が挙げられる。溶媒として、好ましくはエタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
【0179】
反応時間は、通常、5分~48時間であり、好ましくは6時間~12時間である。
【0180】
反応温度は、通常、0℃~200℃であり、好ましくは40℃~80℃である。
【0181】
[工程3]
化合物(c1)は、化合物(f2)を、適当な溶媒中、塩基と反応させることにより製造することができる。
【0182】
塩基としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基類が挙げられる。塩基として、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0183】
溶媒としては、本工程の反応条件下で反応しない溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、アニソール、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン系溶媒;水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のプロトン系溶媒;又はこれらの混合物が挙げられる。溶媒として、好ましくは水、エタノールの混合溶媒等が挙げられる。
【0184】
反応時間は、通常、5分~48時間であり、好ましくは1時間~6時間である。
【0185】
反応温度は、通常、0℃~200℃であり、好ましくは20℃~50℃である。
【0186】
製造法G
式(a1)で表される本開示の化合物は、例えば、次の方法により製造することができる。
【化24】
[式中、R
1、R
2、R
14、X、Y、Z、L、V及びWは項1の記載と同義であり、P
1はアミノの保護基をを意味する。P
1としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載のアミノの保護基等が挙げられる。]
【0187】
[工程1]
化合物(g2)は、製造法Cの工程1に記載の方法又はそれに準じた方法により、下記の製造法により得られる化合物(g1)より製造することができる。
【0188】
[工程2]
化合物(a1)は、製造法Cの工程2に記載の方法又はそれに準じた方法により、化合物(g2)より製造することができる。
【0189】
製造法H
式(a1)で表される化合物は、例えば、次の方法によって製造することができる。
【化25】
[式中、R
1、R
2、R
14、X、Y、Z、L、V及びWは項1の記載と同義であり、P
1はアミノの保護基をを意味する。P
1としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載のアミノの保護基等が挙げられる。]
【0190】
[工程1]
化合物(h2)は、製造法Eの工程1に記載の方法又はそれに準じた方法により、下記の製造法により得られる化合物(h1)より製造することができる。
【0191】
[工程2]
化合物(h3)は、製造法Eの工程2に記載の方法又はそれに準じた方法により、化合物(h2)より製造することができる。
[工程3]
化合物(a1)は、製造法Eの工程3に記載の方法又はそれに準じた方法により、化合物(h3)より製造することができる。
【0192】
製造法I
式(g1)で表される化合物は、例えば、次の方法によって製造することができる。
【化26】
[式中、R
1、R
14、X、Y、Z、L、V及びWは項1の記載と同義であり、P
1はアミノの保護基をを意味する。P
1としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載のアミノの保護基等が挙げられる。]
【0193】
[工程1]
化合物(i1)は、製造法Fの工程1に記載の方法又はそれに準じた方法により、下記の製造法により得られる化合物(h1)より製造することができる。
【0194】
[工程2]
化合物(i2)は、製造法Fの工程2に記載の方法又はそれに準じた方法により、化合物(i1)より製造することができる。
【0195】
[工程3]
化合物(g1)は、製造法Fの工程3に記載の方法又はそれに準じた方法により、化合物(i2)より製造することができる。
【0196】
製造法J
式(g1)で表される化合物は、例えば、次の方法によっても製造することができる。
【化27】
[式中、R
1、R
14、X、Y、Z、L、V及びWは項1の記載と同義であり、P
1はアミノの保護基をを意味する。P
1としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載のアミノの保護基等が挙げられる。]
【0197】
[工程1]
化合物(g1)は、製造法Dの工程1に記載の方法又はそれに準じた方法により、下記の製造法により得られる化合物(j1)より製造することができる。
【0198】
製造法K
式(d1)で表される本開示の化合物は、例えば、次の方法により製造することができる。
【化28】
[式中、R
1、X、Y及びZは項1の記載と同義であり、P
2はフェノールの保護基をを意味する。P
2としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載のフェノールの保護基等が挙げられる。]
【0199】
化合物(k1)は、市販品として入手可能である。
【0200】
[工程1]
化合物(d1)は、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載されている方法により、化合物(k1)より製造することができる。
【0201】
製造法L
式(e1)で表される本開示の化合物は、例えば、次の方法により製造することができる。
【化29】
[式中、R
1、X、Y及びZは項1の記載と同義であり、P
2はフェノールの保護基を意味する。P
2としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載のフェノールの保護基等が挙げられる。]
【0202】
化合物(l1)は、市販品として入手可能である。
【0203】
[工程1]
化合物(e1)は、製造法Kの工程1に記載の方法又はそれに準じた方法により、化合物(l1)より製造することができる。
【0204】
製造法M
式(j1)で表される本開示の化合物は、例えば、次の方法により製造することができる。
【化30】
[式中、R
1、R
14、X、Y、Z、L、V及びWは項1の記載と同義であり、P
1はアミノの保護基を意味する。P
1としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載のアミノの保護基等が挙げられる。]
【0205】
化合物(k1)及び化合物(b3)は、市販品として入手可能である。
【0206】
[工程1]
化合物(j1)は、製造法Bの工程2に記載の方法又はそれに準じた方法により、化合物(k1)と化合物(b3)より製造することができる。
【0207】
製造法N
式(j1)で表される本開示の化合物は、例えば、次の方法により製造することができる。
【化31】
[式中、R
1、R
14、X、Y、Z、L、V及びWは項1の記載と同義であり、P
1はアミノの保護基を意味し、LGは脱離基を意味する。P
1としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載のアミノの保護基等が挙げられる。
LGとしては、例えば、ハロゲン、メタンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホン酸オキシ、トリフルオロメタンスルホン酸オキシ等が挙げられる。]
【0208】
化合物(k1)及び化合物(n1)は、市販品として入手可能である。
【0209】
[工程1]
化合物(j1)は、化合物(k1)と化合物(n1)を、適当な塩基の存在下又は非存在下、適当な溶媒中で反応させることにより製造することができる。
【0210】
塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、1.5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、ピコリン、N-メチルモルホリン(NMM)等の有機塩基類、又は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基類が挙げられる。塩基として、好ましくはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0211】
溶媒としては、本工程の反応条件下で反応しない溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、tert-ブタノール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、アニソール、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒;アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン系溶媒;又はこれらの混合物が挙げられる。溶媒として、好ましくは2-プロパノール、テトラヒドロフラン、トルエン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0212】
反応温度は、通常、-80℃~加熱還流下であり、好ましくは25℃~90℃である。
【0213】
反応時間は、通常、30分~48時間であり、好ましくは6~12時間である。
【0214】
製造法O
式(h1)で表される本開示の化合物は、例えば、次の方法により製造することができる。
【化32】
[式中、R
1、R
14、X、Y、Z、L、V及びWは項1の記載と同義であり、P
1はアミノの保護基を意味する。P
1としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載のアミノの保護基等が挙げられる。]
【0215】
化合物(l1)及び化合物(b3)は、市販品として入手可能である。
【0216】
[工程1]
化合物(h1)は、製造法Bの工程2に記載の方法又はそれに準じた方法により、化合物(l1)と化合物(b3)より製造することができる。
【0217】
製造法P
式(h1)で表される本開示の化合物は、例えば、次の方法により製造することができる。
【化33】
[式中、R
1、R
14、X、Y、Z、L、V及びWは項1の記載と同義であり、P
1はアミノの保護基を意味し、LGは脱離基を意味する。P
1としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載のアミノの保護基等が挙げられる。
LGとしては、例えば、ハロゲン、メタンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホン酸オキシ、トリフルオロメタンスルホン酸オキシ等が挙げられる。]
【0218】
化合物(l1)及び化合物(n1)は、市販品として入手可能である。
【0219】
[工程1]
化合物(h1)は、製造法Bの工程2に記載の方法又はそれに準じた方法により、化合物(l1)と化合物(n1)より製造することができる。
【0220】
製造法Q
式(h1)で表される本開示の化合物は、例えば、次の方法により製造することができる。
【化34】
[式中、R
1、R
14、X、Y、Z、L、V及びWは項1の記載と同義であり、P
1はアミノの保護基を意味し、LGは脱離基を意味する。P
1としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載のアミノの保護基等が挙げられる。
LGとしては、例えば、ハロゲン、メタンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホン酸オキシ、トリフルオロメタンスルホン酸オキシ等が挙げられる。]
【0221】
化合物(q1)、化合物(q2)及び化合物(b3)は、市販品として入手可能である。
【0222】
[工程1]
化合物(q3)は、製造法Nの工程1に記載の方法又はそれに準じた方法により、化合物(q1)と化合物(q2)より製造することができる。
【0223】
[工程2]
化合物(q4)は、化合物(q3)とアセトアルデヒドを、適当な塩基の存在下、適当な溶媒中で反応させることにより製造することができる。
【0224】
塩基としては、例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムテトラメチルピペリジド、リチウムヘキサメチルジシラジド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジド、イソプロピルマグネシウムクロリド-塩化リチウム錯体等が挙げられる。
【0225】
溶媒としては、本工程の反応条件下で反応しない溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、アニソール、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン系溶媒;又はこれらの混合物が挙げられる。溶媒として、好ましくはテトラヒドロフランが挙げられる。
【0226】
反応温度は、通常、-80℃~加熱還流下であり、好ましくは-80℃~25℃である。
【0227】
反応時間は、通常、30分~48時間であり、好ましくは6~12時間である。
【0228】
[工程3]
化合物(q5)は、化合物(q4)と適当な酸化剤を、適当な塩基の存在下または非存在下、適当な溶媒中で反応させることにより製造することができる。
【0229】
酸化剤としては、例えば、二酸化マンガン、Dess-Martin試薬、ジメチルスルホキシド-塩化オキサリル、ジメチルスルホキシド-トリフルオロ酢酸無水物、三酸化硫黄-ピリジン錯体、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシラジカル-次亜塩素酸ナトリウム等が挙げられる。
塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、1.5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、ピコリン、N-メチルモルホリン(NMM)等の有機塩基類、又は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基類が挙げられる。
【0230】
溶媒としては、本工程の反応条件下で反応しない溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、アニソール、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒;アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン系溶媒;又はこれらの混合物が挙げられる。溶媒として、好ましくは塩化メチレン、テトラヒドロフラン、トルエン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0231】
反応温度は、通常、-80℃~加熱還流下であり、好ましくは-80℃~25℃である。
反応時間は、通常、30分~48時間であり、好ましくは6~12時間である。
【0232】
[工程4]
化合物(h1)は、製造法Bの工程2に記載の方法又はそれに準じた方法により、化合物(q5)と化合物(b3)より製造することができる。
【0233】
製造法R
式(i2)で表される本開示の化合物は、例えば、次の方法により製造することができる。
【化35】
[式中、R
1、R
14、X、Y、Z、L、V及びWは項1の記載と同義であり、P
1はアミノの保護基を意味し、LGは脱離基を意味する。P
1としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載のアミノの保護基等が挙げられる。
LGとしては、例えば、ハロゲン、メタンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホン酸オキシ、トリフルオロメタンスルホン酸オキシ等が挙げられる。]
【0234】
化合物(l1)及び化合物(b3)は、市販品として入手可能である。
【0235】
[工程1]
化合物(r1)は、製造法Fの工程1に記載の方法又はそれに準じた方法により、化合物(l1)より製造することができる。
【0236】
[工程2]
化合物(r2)は、製造法Fの工程2に記載の方法又はそれに準じた方法により、化合物(r1)より製造することができる。
【0237】
[工程3]
化合物(r3)は、化合物(r2)と適当なハロゲン化剤またはスルホニル化剤を、適当な塩基の存在下または非存在下、適当な溶媒中または無溶媒で反応させることにより製造することができる。
【0238】
ハロゲン化剤またはスルホニル化剤としては、例えば、塩化チオニル、オキシ塩化リン、塩化オキザリル、三臭化リン、塩化メタンスルホニル、N-フェニルビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)、トリフルオロメタンスルホン酸無水物等が挙げられる。
【0239】
塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、1.5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、ピコリン、N-メチルモルホリン(NMM)等の有機塩基類、又は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基類が挙げられる。
【0240】
溶媒としては、本工程の反応条件下で反応しない溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、アニソール、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒;アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン系溶媒;又はこれらの混合物が挙げられる。溶媒として、好ましくは塩化メチレン、テトラヒドロフラン、トルエン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0241】
反応温度は、通常、-80℃~加熱還流下であり、好ましくは0℃~加熱還流下である。
【0242】
反応時間は、通常、30分~48時間であり、好ましくは30分~12時間である。
【0243】
[工程4]
化合物(i2)は、適当な塩基の存在下、化合物(r3)と化合物(b3)を、適当な溶媒中で、適当なパラジウム源と配位子が触媒する反応により製造することができる。
【0244】
塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、ピコリン、N-メチルモルホリン(NMM)等の有機塩基類、又は炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基類が挙げられる。塩基として、好ましくはジイソプロピルエチルアミン、炭酸セシウム等が挙げられる。
【0245】
パラジウム源として、塩化パラジウム、酢酸パラジウム等の塩、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)クロロホルム付加物等の0価パラジウム錯体が挙げられる。
配位子として、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(キサントホス)、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(BINAP)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(SPhos)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(XPhos)等のホスフィン配位子が挙げられる。配位子として、好ましくは4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(キサントホス)
が挙げられる。
【0246】
溶媒としては、本工程の反応条件下で反応しない溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、アニソール、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒;アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン系溶媒;又はこれらの混合物が挙げられる。溶媒として、好ましくはテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、トルエン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0247】
反応温度は、通常、0℃~加熱還流下であり、好ましくは50℃~加熱還流下である。反応時間は、通常、5分~72時間であり、好ましくは2~12時間である。
【0248】
上記で説明した製造法において、出発原料又は中間体の製造法を記載しなかったものは、市販品として入手可能であるか、又は市販化合物から当業者に公知の方法若しくはそれらに準じた方法によって合成することができる。
【0249】
上記で説明した製造法の各反応において、具体的に保護基の使用を明示した場合以外でも、必要に応じて保護基を用いることができる。例えば、反応点以外の何れかの官能基が説明した反応条件下で変化する、又は説明した方法を実施するのに保護基が無い状態では不適切な場合、反応点以外を必要に応じて保護し、反応終了後又は一連の反応を行った後に脱保護することにより目的化合物を得ることができる。
【0250】
保護基としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)等に記載されている保護基等を用いることができる。アミノの保護基の具体例としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、アセチル、ベンジル等が挙げられる。また、水酸基の保護基の具体例としては、例えば、トリメチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル等のトリアルキルシリル、アセチル、ベンジル等が挙げられる。
【0251】
保護基の導入及び脱離は、有機合成化学で常用される方法(例えば、前述のProtective Groups in Organic Synthesis参照)又はそれらに準じた方法で行うことができる。
【0252】
本明細書中では、保護基、縮合剤等は、この技術分野において慣用されているIUPAC-IUB(生化学命名委員会)による略号で表わすこともある。なお、本明細書中で用いる化合物名は、必ずしもIUPAC命名法に従うものではない。
【0253】
上記で説明した製造方法における中間体又は目的化合物は、その官能基を適宜変換すること(例えば、必要に応じて官能基の保護、脱保護を行い、アミノ、水酸基、カルボニル、ハロゲン等を足がかりに種々の変換をおこなうこと)によって、本開示に含まれる別の化合物へ導く事もできる。官能基の変換は、通常行われる一般的方法(例えば、Comprehensive Organic Transformations,R.C.Larock,John Wiley & Sons Inc.(1999)等を参照)によって行うことができる。
【0254】
上記で説明した製造方法における中間体及び目的化合物は、有機合成化学で常用される精製方法(例えば、中和、濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶、各種クロマトグラフィー等)により単離精製することができる。また、中間体においては、特に精製することなく次の反応に用いることも可能である。
【0255】
「製薬学的に許容される塩」としては、酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。例えば、酸付加塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、又はクエン酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、para-トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。また、塩基付加塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、アルミニウム塩等の無機塩基塩、又はトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6-ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン]、tert-ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N-ジベンジルエチルアミン等の有機塩基塩が挙げられる。さらに、「製薬学的に許容される塩」としては、アルギニン、リジン、オルニチン、アスパラギン酸、又はグルタミン酸等の塩基性アミノ酸又は酸性アミノ酸とのアミノ酸塩も挙げられる。
【0256】
出発原料及び中間体の好適な塩並びに医薬品原料として許容しうる塩は、慣用の無毒性塩である。これらとしては、例えば、有機酸塩(例えば酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、蟻酸塩、トルエンスルホン酸塩等)及び無機酸塩(例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、燐酸塩等)のような酸付加塩、アミノ酸(例えばアルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等)との塩、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等)等の金属塩、アンモニウム塩、有機塩基塩(例えばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩等)等の他、当業者が適宜選択することができる。
【0257】
本開示において、式(1)~(5)で表される化合物のいずれか1つ又は2つ以上の1Hを2H(D)に変換した重水素変換体も、式(1)~(5)で表される化合物に包含される。
【0258】
本開示には、式(1)~(5)で表される化合物又はその製薬学的に許容される塩が含まれる。また、本開示の化合物は、水和物及び/又は各種溶媒との溶媒和物(エタノール和物等)の形で存在することもあるので、これらの水和物及び/又は溶媒和物も本開示の化合物に含まれる。
【0259】
さらに、本開示の化合物には、光学活性中心に基づく光学異性体、分子内回転の束縛により生じた軸性又は面性キラリティーに基づくアトロプ異性体、その他の立体異性体、互変異性体、幾何異性体等の存在可能な全ての異性体、及びあらゆる様態の結晶形のもの、さらにこれらの混合物も含まれる。
【0260】
特に、光学異性体やアトロプ異性体は、ラセミ体として、又は光学活性の出発原料や中間体が用いられた場合には光学活性体として、それぞれ得ることができる。また、必要であれば、前記製造法の適切な段階で、対応する原料、中間体又は最終品のラセミ体を、光学活性カラムを用いた方法、分別結晶化法等の公知の分離方法によって、物理的に又は化学的にそれらの光学対掌体に分割することができる。これらの分割方法としては、例えば、ラセミ体を光学活性分割剤と反応させ、2種のジアステレオマーを合成し、物理的性質が異なることを利用し、分別結晶化等の方法によって分割するジアステレオマー法等が挙げられる。
【0261】
本開示の化合物の製薬学的に許容される塩を取得したいときは、式(1)~(5)で表される化合物が製薬学的に許容される塩の形で得られる場合には、そのまま精製すればよく、また、遊離の形で得られる場合には、適当な有機溶媒に溶解又は懸濁させ、酸又は塩基を加えて通常の方法により塩を形成させればよい。
【0262】
本開示の化合物を内封するリポソームは、例えば、下記の方法により製造することができる。
【0263】
[工程1]
リン脂質、コレステロール等の膜構成成分をクロロホルム等の有機溶媒に溶解し、フラスコ内で有機溶媒を留去することによりフラスコ内壁に脂質混合物の薄膜を形成させる。上記の代わりに、t-ブチルアルコール等に溶解後、凍結乾燥することで凍結乾燥物として脂質混合物を得ることでもよい。また、リン脂質、コレステロール等の膜構成成分を有機溶媒に溶解後、瞬間真空乾燥装置CRUX(ホソカワミクロン株式会社製)を用いて粉末化した脂質混合物を得ることもでき、Presome(登録商標)の名称で日本精化株式会社から入手することができる。
【0264】
[工程2]
工程1で得られた脂質混合物に硫酸アンモニウム水溶液等の内水相溶液を加え、分散することにより、粗リポソーム分散液を得る。
【0265】
[工程3]
エクストルーダーを用いて、工程2で得られた粗リポソーム分散液をフィルターに通過させることにより、所望の粒子径にする。又は、工程2で得られた粗リポソーム分散液を高圧ホモジナイザーを用いて高圧でノズルから吐出させることにより所望の粒子径にする。リポソームの粒子径は特に限定されないが、例えば、10nm~200nm、好ましくは30nm~150nm、より好ましくは40nm~140nm、さらに好ましくは50~120nm、最も好ましくは60~100nmである。リポソームの粒子径は、動的光散乱法により測定される平均値であり、例えば、Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments)を用いて測定することができる。
【0266】
[工程4]
工程3で得られたリポソーム液を、ゲルろ過、透析、タンジェンシャルフローフィルトレーション又は超遠心等により外水相を置換する。
【0267】
[工程5]
工程4で得られた外水相を置換したリポソーム液を、内封したい化合物とともにインキュベーションすることにより、化合物をリポソームに内封する。
【0268】
[工程6]
得た化合物を内封したリポソームを、ゲルろ過、透析、タンジェンシャルフローフィルトレーション又は超遠心等を行うことにより、内封されていない化合物を除去する。なお、工程5で所望の内封率が得られた場合には、工程6を省略することができる。
【0269】
本開示の化合物は、その効果の増強を目的として、他の薬物と併用して用いることができる。具体的には、本開示の化合物は、ホルモン療法剤、化学療法剤、免疫療法剤または細胞増殖因子ならびにその受容体作用を阻害する薬剤等の薬物と併用して用いることができる。以下、本開示の化合物と併用し得る薬物を併用薬物と略記する。
【0270】
本開示の化合物は単剤として使用しても優れた抗癌作用を示すが、さらに前記併用薬物の一つまたは幾つかと併用(多剤併用)することによって、その効果をより一層増強または患者のQOLを改善させることができる。
【0271】
「ホルモン療法剤」としては、例えば、ホスフェストロール、ジエチルスチルベストロール、クロロトリアニセン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、酢酸クロルマジノン、酢酸シプロテロン、ダナゾール、ジエノゲスト、アソプリスニル、アリルエストレノール、ゲストリノン、ノメゲストール、タデナン、メパルトリシン、ラロキシフェン、オルメロキシフェン、レボルメロキシフェン、抗エストロゲン(例えば、クエン酸タモキシフェン、クエン酸トレミフェン等)、ピル製剤、メピチオスタン、テストロラクトン、アミノグルテチイミド、LH-RH誘導体(LH-RHアゴニスト(例えば、酢酸ゴセレリン、ブセレリン、リュープロレリンなど)、LH-RHアンタゴニスト)、ドロロキシフェン、エピチオスタノール、スルホン酸エチニルエストラジオール、アロマターゼ阻害薬(例えば、塩酸ファドロゾール、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ボロゾール、フォルメスタンなど)、抗アンドロゲン(例えば、フルタミド、エンザルタミド、アパルタミド、ビカルタミド、ニルタミドなど)、副腎皮質ホルモン系薬剤(例えば、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロンなど)、アンドロゲン合成阻害薬(例えば、アビラテロンなど)、レチノイド、及びレチノイドの代謝を遅らせる薬剤(例えば、リアロゾールなど)などが挙げられる。
【0272】
「化学療法剤」としては、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗癌性抗生物質、植物由来抗癌剤、分子標的治療剤、免疫調節剤、その他の化学療法剤などが用いられる。代表的な例を次に記載する。
【0273】
「アルキル化剤」としては、例えば、ナイトロジェンマスタード、塩酸ナイトロジェンマスタード-N-オキシド、クロラムブチル、シクロフォスファミド、イホスファミド、チオテパ、カルボコン、トシル酸インプロスルファン、ブスルファン、塩酸ニムスチン、ミトブロニトール、メルファラン、ダカルバジン、ラニムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、トリエチレンメラミン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾジン、ピポブロマン、エトグルシド、カルボプラチン、シスプラチン、ミボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、アルトレタミン、アンバムスチン、塩酸ジブロスピジウム、フォテムスチン、プレドニムスチン、プミテパ、リボムスチン、テモゾロミド、トレオスルファン、トロフォスファミド、ジノスタチンスチマラマー、アドゼレシン、システムスチン、ビゼレシン、トラベクテジン及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0274】
「代謝拮抗剤」としては、例えば、メルカプトプリン、6-メルカプトプリンリボシド、チオイノシン、メトトレキサート、ペメトレキセド、エオシタビン、シタラビン、シタラビンオクフォスファート、塩酸アンシタビン、5-FU系薬剤(例えば、フルオロウラシル、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、ガロシタビン、エミテフール、カペシタビンなど)、アミノプテリン、ネルザラビン、ロイコポリンカルシウム、タブロイド、ブトシン、フォリネイトカルシウム、レボフォリネイトカルシウム、クラドリビン、エミテフール、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシカルパミド、ペントスタチン、ピリトレキシム、イドキシウリジン、ミトグアゾン、チアゾフリン、アンバムスチン、ベンダムスチン、及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0275】
「抗癌性抗生物質」としては、例えば、アクチノマイシンD、アクチノマイシンC、マイトマイシンC、クロモマイシンA3、塩酸ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、塩酸アクラルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸エピルビシン、ネオカルチノスタチン、ミスラマイシン、ザルコマイシン、カルチノフィリン、ミトタン、塩酸ゾルビシン、塩酸ミトキサントロン、塩酸イダルビシン、エリブリン、及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0276】
「植物由来抗癌剤」としては、例えば、エトポシド、リン酸エトポシド、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンデシン、テニポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、DJ-927、ビノレルビン、イリノテカン、トポテカン、及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0277】
「分子標的治療剤」としては、例えば、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ソラフェニブ、ダサチニブ、スニチニブ、ニロチニブ、ラパチニブ、パゾパニブ、ルキソリチニブ、クリゾチニブ、ベムラフェニブ、バンデタニブ、ポナチニブ、カボザンチニブ、トファシチニブ、レゴラフェニブ、ボスチニブ、アキシチニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、ニンテダニブ、イデラリシブ、セリチニブ、レンバチニブ、パルボシクリブ、アレクチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、リボシクリブ、アベマシクリブ、ブリガチニブ、ネラチニブ、コパンリシブ、コビメチニブ、イブルチニブ、アカラブルチニブ、エンコラフェニブ、ビニメチニブ、バリシチニブ、フォスタマチニブ、ロルラチニブ、エルダフィチニブ、エントレクチニブ、ダコミチニブ、シロリムス、エベロリムス、テムシロリムス、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、ベネトクラックス、アザシチジン、デシタビン、ボリノスタット、パノビノスタット、ロミデプシン、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、ラロトレクチニブ及びイキサゾミブなどが挙げられる。
【0278】
「免疫調節剤」としては、例えば、レナリドミド及びポマリドミドなどが挙げられる。
【0279】
「その他の化学療法剤」としては、例えば、ソブゾキサンなどが挙げられる。
【0280】
「免疫療法剤(BRM)」としては、例えば、ピシバニール、クレスチン、シゾフィラン、レンチナン、ウベニメクス、インターフェロン、インターロイキン、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポイエチン、リンホトキシン、BCGワクチン、コリネバクテリウムパルブム、レバミゾール、ポリサッカライドK、プロコダゾール、抗CTLA4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、Toll-like Receptors作動薬(例えば、TLR7作動薬、TLR8作動薬、TLR9作動薬など)が挙げられる。
【0281】
細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤における細胞増殖因子としては、細胞増殖を促進する物質であれば、どのようなものでもよく、通常、分子量が20,000以下のペプチドで、受容体との結合により低濃度で作用が発揮される因子があげられる。具体的には、EGF(epidermal growth factor)またはそれと実質的に同一の活性を有する物質(例えば、TGFalphaなど)、インスリンまたはそれと実質的に同一の活性を有する物質(例えば、インスリン、IGF(insulin-like growth factor)-1、IGF-2など)、FGF(fibroblast growth factor)またはそれと実質的に同一のアッセイを有する物質(例えば、酸性FGF、塩基性FGF、KGK(keratinocyte growth factor)、FGF-10など)、及び、その他の細胞増殖因子(例えば、CSF(colony stimukating factor)、EPO(erythropoietin)、IL-2(interleukin-2)、NGF(nerve growth factor)、PDGF(platelet-derived growth factor)、TGF-beta(transforming growth factor beta)、HGF(hepatocyte growth factor)、VEGF(vascular endothelial growth factor)、へレグリン、アンジオポエチンなど)が挙げられる。
【0282】
本開示の化合物、及び併用薬物の投与期間は限定されず、これらを投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。また、本開示の化合物と併用薬物の合剤としてもよい。併用薬物の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、本開示の化合物と併用薬物の配合比は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状、組み合わせなどにより適宜選択することができる。例えば投与対象がヒトである場合、本開示の化合物1重量部に対し、併用薬物を0.01~100重量部用いればよい。また、その副作用抑制の目的として、制吐剤、睡眠導入剤、抗痙攣薬などの薬剤(併用薬物)と組み合わせて用いることができる。
【0283】
本明細書において「又は」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値の範囲内」として明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
【0284】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0285】
以上、本開示を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本開示を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0286】
以下に本開示を、参考例、実施例及び試験例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0287】
本明細書において、以下の略語を使用することがある。
Ts:p-トルエンスルホニル
THF:テトラヒドロフラン
TFA:トリフルオロ酢酸
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
MeCN:アセトニトリル
Me:メチル
Boc:tert-ブトキシカルボニル
Dess-Martin試薬:デス-マーチンペルヨージナン(1,1,1-トリアセト
キシ-1,1-ジヒドロ-1,2-ベンゾヨードキソール-3-(1H)-オン)
【0288】
化合物同定に用いたNMR(Nuclear Magnetic Resonance)データは、日本電子株式会社のJNM-ECS400型 核磁気共鳴装置(400MHz)により取得した。
NMRに用いられる記号としては、sは一重線、dは二重線、ddは二重線の二重線、tは三重線、tdは三重線の二重線、qは四重線、mは多重線、brは幅広い、brsは幅広い一重線、brmは幅広い多重線及びJは結合定数を意味する。
【0289】
化合物同定に用いたLC/MS(Liquid Chromatography-Mass Spectrometry)分析条件は以下の通りである。観察された質量分析の値[MS(m/z)]の中で、モノアイソトピック質量(主同位体のみからなる精密質量)に対応する値を[M+H]+、[M-H]-あるいは[M+2H]2+等で示し、保持時間をRt(分)で示す。
【0290】
測定条件A
検出機器:ACQUITY(登録商標)SQ detector(Waters社)
HPLC:ACQUITY UPLC(登録商標)system
Column:Waters ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18(1.7μm,2.1mm×30mm)
Solvent:A液:0.06%ギ酸/H2O,B液:0.06%ギ酸/MeCN
Gradient condition:0.0-1.3min Linear gradient from B 2% to 96%
Flow rate:0.8mL/min
UV:220nm and 254nm
Column temperature:40℃
【0291】
測定条件B
検出機器:APCI 6120 Quadrupole LC/MS(Agilent Technologies社)
HPLC:Agilent Technologies 1260 Infinity(登録商標)system
Column:Agilent Technologies(登録商標)ZORBAX SB-C18(1.8μm,2.1mm×50mm)
Solvent:A液:0.1%ギ酸/H2O,B液:MeCN
Gradient condition:0.0-5.0min Linear gradient from B 5% to 90%
Flow rate:0.6mL/min
UV:210nm, 254nm, and 280nm
Column temperature:40℃
【0292】
測定条件C
検出機器:Shimadzu LCMS-2020
Column:L-column-2 ODS(4.6mm×35mm)
Gradient condition:MeCN/H2O/HCO2H=10/90/0.1→100/0/0.1(0-2min)、100/0/0.1(2-4min)
Flow rate:2mL/min
Column temperature:40℃
【0293】
参考例1:
tert-ブチル 3-{[(4-アセチル-5-メトキシピリジン-3-イル)オキシ]メチル}-3-フルオロアゼチジン-1-カルボキシレート
【化36】
【0294】
tert-ブチル 3-{[(4-アセチル-5-メトキシピリジン-3-イル)オキシ]メチル}-3-フルオロアゼチジン-1-カルボキシレート(参考例1)の製造
1-(3-ヒドロキシ-5-メトキシ-4-ピリジニル)エタノン(1.00g)のTHF(50.0mL)溶液にtert-ブチル 3-フルオロ-3-(ヒドロキシメチル)アゼチジン-1-カルボキシレート(1.85g)、トリフェニルホスフィン(3.15g)を室温で加え、0℃に冷却した。アゾジカルボン酸ジイソプロピル(2.5mL)を加え、0℃で12時間攪拌した。反応液に飽和食塩水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、参考例1(720mg)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 355.2/Rt(分)0.886(測定条件A)
【0295】
参考例2:
tert-ブチル 3-{[(3-アセチル-2-メトキシピリジン-4-イル)オキシ]メチル}-3-(ヒドロキシメチル)アゼチジン-1-カルボキシレート
【化37】
【0296】
a)tert-ブチル 3-(ヒドロキシメチル)-3-{[(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)オキシ]メチル}アゼチジン-1-カルボキシレートの製造
tert-ブチル 3,3-ビス(ヒドロキシメチル)アゼチジン-1-カルボキシレート(1.50g)の塩化メチレン(20.0mL)溶液に、ピリジン(5.60mL)、トリメチルアミン塩酸塩(0.13g)、para-トルエンスルホニルクロリド(1.45g)を0℃で加え、室温で12時間攪拌した。飽和食塩水を反応液に加えクエンチした後、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去することで、表題化合物(2.30g)を得た。得られた残渣は、精製を行わず、次の反応に用いた。
LC-MS;[M+H]+ 372.1/Rt(分)0.928(測定条件A)
【0297】
b)tert-ブチル 3-{[(3-アセチル-2-メトキシピリジン-4-イル)オキシ]メチル}-3-(ヒドロキシメチル)アゼチジン-1-カルボキシレート(参考例2)の製造
tert-ブチル 3-(ヒドロキシメチル)-3-{[(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)オキシ]メチル}アゼチジン-1-カルボキシレート(2.30g)のDMF(10.0mL)溶液に1-(4-ヒドロキシ-2-メトキシ-3-ピリジニル)エタノン(1.00g)、炭酸セシウム(7.80g)を加え、室温で12時間攪拌した。反応液に飽和食塩水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、参考例2(1.01g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 367.3/Rt(分)0.796(測定条件A)
【0298】
参考例3:
tert-ブチル (3-{[3-(3-アミノ-1H-ピラゾール-5-イル)-4-メトキシピリジン-2-イル]オキシ}プロピル)カルバメート
【化38】
【0299】
a)tert-ブチル {3-[(3-アセチル-4-メトキシピリジン-2-イル)オキシ]プロピル}カルバメートの製造
1-(2-ヒドロキシ-4-メトキシピリジン-3-イル)エタノン(2.00g)のDMF(40.0mL)溶液に炭酸セシウム(7.80g)、3-(Boc-アミノ)プロピルブロミド(4.27g)を0℃で加え、室温で12時間攪拌した。反応液に飽和食塩水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、表題化合物(2.25g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 325.2/Rt(分)0.959(測定条件A)
1H-NMR (CDCl3) δ: 8.06 (1H, d, J = 6.0 Hz), 6.55 (1H, d, J = 6.0 Hz), 4.97 (1H, brs), 4.40 (2H, t, J = 6.4 Hz), 3.86 (3H, s), 3.27-3.24 (2H, m), 2.49 (3H, s), 1.96-1.90 (2H, m), 1.44 (9H, s).
【0300】
b)tert-ブチル [3-({3-[(2E)-3-(ジメチルアミノ)プロピ-2-エンイル]-4-メトキシピリジン-2-イル}オキシ)プロピル]カルバメートの製造
tert-ブチル {3-[(3-アセチル-4-メトキシピリジン-2-イル)オキシ]プロピル}カルバメート(2.25g)のDMF(10.0mL)溶液にN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(10.0mL)を加え、115℃で24時間攪拌した。放冷後、反応液の溶媒を減圧留去することで、表題化合物(4.30g)を粗生成物として得た。
LC-MS;[M+H]+ 380.3/Rt(分)0.722(測定条件A)
【0301】
c)tert-ブチル (3-{[4-メトキシ-3-(1,2-オキサゾール-5-イル)ピリジン-2-イル]オキシ}プロピル)カルバメートの製造
tert-ブチル [3-({3-[(2E)-3-(ジメチルアミノ)プロピ-2-エンイル]-4-メトキシピリジン-2-イル}オキシ)プロピル]カルバメート(4.30g)のエタノール(30.0mL)溶液にヒドロキシアミン塩酸塩(5.49g)を加え、65℃で2時間攪拌した。放冷後、反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に加えクエンチした。得られた水溶液を酢酸エチルで2回抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濾去し溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、表題化合物(1.63g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 350.2/Rt(分)0.722(測定条件A)
1H-NMR (CDCl3) δ: 8.32 (1H, d, J = 1.6 Hz), 8.12 (1H, d, J = 6.0 Hz), 6.64 (1H, d, J = 6.0 Hz), 6.59 (1H, d, J = 1.6 Hz), 4.87 (1H, brs), 4.45 (2H, t, J = 6.4 Hz), 3.92 (3H, s), 3.28-3.24 (2H, m), 1.99-1.93 (2H, m), 1.44 (9H, s).
【0302】
d)tert-ブチル (3-{[3-(シアノアセチル)-4-メトキシピリジン-2-イル]オキシ}プロピル)カルバメートの製造
tert-ブチル (3-{[4-メトキシ-3-(1,2-オキサゾール-5-イル)ピリジン-2-イル]オキシ}プロピル)カルバメート(1.63g)のエタノール(20.0mL)と水(5.00mL)との混合溶液に水酸化カリウム(0.29g)を加え、室温で5時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣を飽和食塩水に加えクエンチした。得られた水溶液を酢酸エチルで2回抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濾去し溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、表題化合物(1.50g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 350.2/Rt(分)0.872(測定条件A)
1H-NMR (CDCl3) δ: 8.14 (1H, d, J = 6.0 Hz), 6.59 (1H, d, J = 6.0 Hz), 4.94 (1H, brs), 4.44 (2H, t, J = 6.0 Hz), 3.92 (3H, s), 3.29-3.23 (2H, m), 1.99-1.93 (2H, m), 1.43 (9H, s).
【0303】
e)tert-ブチル (3-{[3-(3-アミノ-1H-ピラゾール-5-イル)-4-メトキシピリジン-2-イル]オキシ}プロピル)カルバメート(参考例3)の製造
tert-ブチル (3-{[3-(シアノアセチル)-4-メトキシピリジン-2-イル]オキシ}プロピル)カルバメート(1.99g)のエタノール(20.0mL)溶液に酢酸(3.28mL)、ヒドラジン一水和物(2.78mL)を0℃で加え、90℃で24時間攪拌した。放冷後、反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に加えクエンチした。得られた水溶液をクロロホルムで2回抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濾去し溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)により精製することで、参考例3(1.60g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 364.0/Rt(分)0.684(測定条件A)
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 11.61-10.91 (1H, brs), 8.01 (1H, d, J = 12.0 Hz), 6.93-6.89 (1H, m), 6.84 (1H, d, J = 6.0 Hz), 5.93 (1H, brs), 4.50 (1H, brs), 4.32 (2H, t, J = 6.4 Hz), 3.89 (3H, s), 3.09-3.04 (2H, m), 1.86-1.79 (2H, m), 1.37 (9H, s).
【0304】
参考例4:
tert-ブチル (3-{[3-(3-アミノ-1H-ピラゾール-5-イル)-6-クロロ-4-メトキシピリジン-2-イル]オキシ}プロピル)カルバメート
【化39】
【0305】
a)1-{6-クロロ-4-メトキシ-2-[(4-メトキシフェニル)メトキシ]ピリジン-3-イル}エタン-1-オールの製造
2-クロロ-4-メトキシ-6-[(4-メトキシベンジル)オキシ]ピリジン(10.0g)のTHF(100mL)溶液を-78℃に冷却した。2.8mol/Lのn-ブチルリチウム(15.3mL)を加え、-78℃で3時間攪拌した。アセトアミド(6.30mL)を加え、-78℃で6時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に加えクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、表題化合物(4.25g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 324.2/Rt(分)1.118(測定条件A)
1H-NMR (CDCl3) δ: 7.36 (2H, d, J = 8.8 Hz), 6.89 (2H, d, J = 8.8 Hz), 6.55 (1H, s), 5.32 (2H, s), 5.16-5.11 (1H, m), 3.85 (3H, s), 3.80 (3H, s), 3.30 (1H, s), 1.41 (3H, d, J = 6.8 Hz).
13C-NMR (CDCl3) δ: 165.2, 159.6, 147.6, 130.1, 128.6, 114.1, 112.6, 101.8, 68.7, 62.9, 56.3, 55.4, 23.1.
【0306】
b)1-{6-クロロ-4-メトキシ-2-[(4-メトキシフェニル)メトキシ]ピリジン-3-イル}エタン-1-オンの製造
1-{6-クロロ-4-メトキシ-2-[(4-メトキシフェニル)メトキシ]ピリジン-3-イル}エタン-1-オール(3.15g)の塩化メチレン(100mL)溶液にDess-Martin試薬(6.19g)を加え、室温で12時間攪拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に加えクエンチした。得られた水溶液を酢酸エチルで2回抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濾去し溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、表題化合物(2.50g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 322.2/Rt(分)1.081(測定条件A)
【0307】
c)1-(6-クロロ-2-ヒドロキシ-4-メトキシピリジン-3-イル)エタン-1-オンの製造
1-{6-クロロ-4-メトキシ-2-[(4-メトキシフェニル)メトキシ]ピリジン-3-イル}エタン-1-オン(2.50g)の塩化メチレン(30.0mL)溶液にTFA(6.00mL)を加え、室温で2時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、残渣をアミンシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)にて精製し表題化合物(2.00g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 202.1/Rt(分)0.773(測定条件A)
【0308】
d)tert-ブチル {3-[(3-アセチル-6-クロロ-4-メトキシピリジン-2-イル)オキシ]プロピル}カルバメートの製造
1-(6-クロロ-2-ヒドロキシ-4-メトキシピリジン-3-イル)エタン-1-オン(3.00g)のDMF(50.0mL)溶液に炭酸セシウム(9.70g)、3-(Boc-アミノ)プロピルブロミド(5.63g)を0℃で加え、室温で12時間攪拌した。反応液に飽和食塩水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、表題化合物(1.01g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 359.3/Rt(分)1.123(測定条件A)
【0309】
e)tert-ブチル [3-({6-クロロ-3-[(2E)-3-(ジメチルアミノ)プロピ-2-エンイル]-4-メトキシピリジン-2-イル}オキシ)プロピル]カルバメートの製造
tert-ブチル {3-[(3-アセチル-6-クロロ-4-メトキシピリジン-2-イル)オキシ]プロピル}カルバメート(840mg)のDMF(10.0mL)溶液にN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(3.00mL)を加え、115℃で24時間攪拌した。放冷後、反応液の溶媒を減圧留去することで、表題化合物(0.97g)を粗生成物として得た。
LC-MS;[M+H]+ 414.4/Rt(分)0.944(測定条件A)
【0310】
f)tert-ブチル (3-{[6-クロロ-4-メトキシ-3-(1,2-オキサゾール-5-イル)ピリジン-2-イル]オキシ}プロピル)カルバメートの製造
tert-ブチル [3-({6-クロロ-3-[(2E)-3-(ジメチルアミノ)プロピ-2-エンイル]-4-メトキシピリジン-2-イル}オキシ)プロピル]カルバメート(0.97g)のエタノール(30.0mL)溶液にヒドロキシアミン塩酸塩(1.70g)を加え、65℃で2時間攪拌した。放冷後、反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に加えクエンチした。得られた水溶液を酢酸エチルで2回抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濾去し溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、表題化合物(677mg)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 384.3/Rt(分)1.132(測定条件A)
【0311】
g)tert-ブチル (3-{[6-クロロ-3-(シアノアセチル)-4-メトキシピリジン-2-イル]オキシ}プロピル)カルバメートの製造
tert-ブチル (3-{[6-クロロ-4-メトキシ-3-(1,2-オキサゾール-5-イル)ピリジン-2-イル]オキシ}プロピル)カルバメート(677mg)のエタノール(20.0mL)と水(5.00mL)との混合溶液に水酸化カリウム(100mg)を加え、室温で2時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣を飽和食塩水に加えクエンチした。得られた水溶液を酢酸エチルで2回抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濾去し溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、表題化合物(470mg)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 384.3/Rt(分)1.064(測定条件A)
【0312】
h)tert-ブチル (3-{[3-(3-アミノ-1H-ピラゾール-5-イル)-6-クロロ-4-メトキシピリジン-2-イル]オキシ}プロピル)カルバメート(参考例4)の製造
tert-ブチル (3-{[6-クロロ-3-(シアノアセチル)-4-メトキシピリジン-2-イル]オキシ}プロピル)カルバメート(470mg)のエタノール(20.0mL)溶液に酢酸(0.71mL)、ヒドラジン一水和物(0.77mL)を0℃で加え、90℃で24時間攪拌した。放冷後、反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に加えクエンチした。得られた水溶液をクロロホルムで2回抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濾去し溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)により精製することで、参考例4(350mg)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 398.3/Rt(分)0.911(測定条件A)
【0313】
参考例5:
1-(4-ヒドロキシ-6-メトキシピリミジン-5-イル)エタン-1-オン
【化40】
【0314】
a)1-(4-ヒドロキシ-6-メトキシピリミジン-5-イル)エタン-1-オンの製造
1-(4,6-ジメトキシピリミジン-5-イル)エタン-1-オン(2.00g)のジクロロメタン(30.0mL)溶液に三臭化ホウ素のジクロロメタン溶液(1.0mol/L,54.9mL)を-60℃で加え、-50℃以下で3時間攪拌した。反応液に飽和食塩水を加えてクエンチした後、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール/クロロホルム)により精製することで、表題化合物(220mg)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 169.1/Rt(分)0.367(測定条件A)
1H-NMR (CDCl3) δ: 14.31 (1H, brs), 8.36 (1H, s), 4.10 (3H, s), 2.65
(3H, s).
【0315】
参考例6:
tert-ブチル (3-{[4-アセチル-5-(フルオロメトキシ)ピリジン-3-イル]オキシ}プロピル)カーバメート
【化41】
【0316】
a)3-フルオロ-5-(フルオロメトキシ)ピリジンの製造
5-フルオロピリジン-3-オール(1.00g)のDMF(30.0mL)溶液に炭酸セシウム(4.32g)、フルオロメチル 4-メチルベンゼンスルホネート(2.17g)を室温で加え、80℃で8時間加熱攪拌した。反応液に水を加え、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、表題化合物(538mg)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 146.0/Rt(分)0.574(測定条件A)
【0317】
b)1-[3-フルオロ-5-(フロオロメトキシ)ピリジン-4-イル]エタン-1-オールの製造
N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.687mL)のTHF(15mL)溶液を-78℃に冷却し、n-ブチルリチウム(1.58moL/L、3.05mL)を加え0℃で15分間攪拌した。反応液を再度-78℃に冷却し、3-フルオロ-5-(フルオロメトキシ)ピリジン(538mg)を加え、1時間攪拌した後、アセトアルデヒド(0.419mL)を加えた。反応液を室温まで徐々に昇温し、終夜攪拌した後、反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、表題化合物(475mg)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 190.1/Rt(分)0.494(測定条件A)
1H-NMR (CDCl3) δ:8.30 (1H, d, J = 1.8 Hz),8.26 (1H, s), 5.85 (1H, dd, J = 6.7,3.1 Hz), 5.71 (1H,dd, J = 7.2, 3.2 Hz),5.31-5.22 (1H, m), 2.60 (1H, dd, J = 9.8, 1.8 Hz), 1.59(3H, d, J = 6.7 Hz).
【0318】
c)1-[3-フルオロ-5-(フロオロメトキシ)ピリジン-4-イル]エタン-1-オンの製造
1-[3-フルオロ-5-(フロオロメトキシ)ピリジン-4-イル]エタン-1-オール(475mg)のジクロロメタン(10.0mL)溶液を氷冷し、デス-マーチン試薬(1.60g)を加え、室温で終夜攪拌した。反応液にチオ硫酸ナトリウム水溶液及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濾去し溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、表題化合物(407mg)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 188.0/Rt(分)0.618(測定条件A)
【0319】
d)tert-ブチル (3-{[4-アセチル-5-(フルオロメトキシ)ピリジン-3-イル]オキシ}プロピル)カーバメートの製造
1-[3-フルオロ-5-(フロオロメトキシ)ピリジン-4-イル]エタン-1-オン(407mg)と炭酸セシウム(1.42g)のDMF(10.0mL)溶液にtert-ブチル (3-ヒドロキシプロピル)カーバメート(762mg)を加え、80℃で8時間加熱攪拌した。反応液に水を加え、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、表題化合物(67mg)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 343.2/Rt(分)0.832(測定条件A)
1H-NMR (CDCl3) δ:8.22 (1H, d, J = 1.8 Hz),8.16 (1H, s), 5.68 (2H, d, J = 53.6 Hz), 4.70 (1H, brs), 4.15 (2H, t, J = 6.1Hz), 3.32-3.21 (2H, m), 2.50 (3H, s), 2.00-1.93 (2H,m), 1.41 (9H, s).
【0320】
参考例7:
tert-ブチル (3-{[4-メトキシ-3-(1,2-オキサゾール-5-イル)ピリジン-2-イル]オキシ}プロピル)カルバメート
【化42】
【0321】
a)(2E)-3-(ジメチルアミノ)-1-(2-ヒドロキシ-4-メトキシピリジン-3-イル)プロピ-2-エン-1-オンの製造
1-(2-ヒドロキシ-4-メトキシピリジン-3-イル)エタノン(2.50g)とトルエン(6.23ml)の混合物にtert-ブトキシビス(ジメチルアミノ)メタン
(5.21g)を加え、55℃で6時間加熱攪拌した。放冷後、トルエン(18.6ml)を滴下し、生じた結晶を濾過で集め、トルエンで洗浄した。結晶を真空乾燥して表題化合物(2.87g)を得た。濾液を減圧濃縮し、エタノール/トルエン混合溶媒から析出させた結晶をエタノール/トルエン混合溶媒で洗浄、真空乾燥して表題化合物の2番晶(0.20g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 223.1/Rt(分)1.564
1H-NMR (DMSO-D6)δ: 11.25 (1H, brs), 7.39 (1H, d, J = 6.7 Hz), 7.11 (1H, br s),6.21 (1H, d, J =7.9 Hz), 5.00(1H, d, J = 11.0 Hz), 3.73 (3H, s), 3.00 (3H, br s), 2.75 (3H, brs).
【0322】
b)4-メトキシ-3-(1,2-オキサゾール-5-イル)ピリジン-2-オールの製造
(2E)-3-(ジメチルアミノ)-1-(2-ヒドロキシ-4-メトキシピリジン-3-イル)プロピ-2-エン-1-オン(2.50g)とエタノール(37.5ml)の混合物にヒドロキシアミン塩酸塩(1.56g)を加え、室温で16時間攪拌した。反応混合物に水(37.5ml)を加え、28.5gになるまで減圧濃縮した後さらに水(9.0ml)を加え、0℃で攪拌した。生じた結晶を濾過で集め、冷水で洗浄し、真空乾燥することで表題化合物(1.53g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 193.1/Rt(分)0.928
1H-NMR(DMSO-D6) δ: 11.83 (1H, br s), 8.51 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.61 (1H, d, J=7.3Hz), 6.83 (1H, d, J = 1.8 Hz), 6.38 (1H, d, J = 7.3 Hz), 3.93 (3H, s).
【0323】
c)4-メトキシ-3-(1,2-オキサゾール-5-イル)ピリジン-2-イル トリフルオロメタンスルホネートの製造
4-メトキシ-3-(1,2-オキサゾール-5-イル)ピリジン-2-オール(1.23g)とピリジン(6.1ml)の混合物に0℃でトリフルオロメタンスルホン酸無水物(2.16g)を滴下した。反応混合物を昇温し、室温で16時間攪拌した。反応混合物を0℃に冷却し、水(16ml)を滴下し、0℃で1.5時間攪拌した。生じた結晶を濾過で集め、水/ピリジン混合溶媒、ついで水で洗浄し、真空乾燥することで表題化合物(1.91g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 325.0/Rt(分)4.781
1H-NMR (CDCl3) δ:8.37 (1H, d, J = 1.8 Hz), 8.32 (1H, d, J = 6.1 Hz), 7.01(1H, d, J = 6.1 Hz),6,67 (1H, d, J = 1.8 Hz), 4.00 (3H, s).
【0324】
d)tert-ブチル (3-{[4-メトキシ-3-(1,2-オキサゾール-5-イル)ピリジン-2-イル]オキシ}プロピル)カルバメートの製造
4-メトキシ-3-(1,2-オキサゾール-5-イル)ピリジン-2-イル トリフルオロメタンスルホネート(50mg)とtert-ブチル(3-ヒドロキシプロピル)カーバメート(54mg)、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(18mg)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)クロロホルム付加物(16mg)、トルエン(1.5ml)の混合物に、ジイソプロピルエチルアミン(72mg)を加え、100℃で4時間加熱攪拌した。反応混合物を放冷後、不溶物をセライトで濾去し、酢酸エチルで洗浄した。濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、表題化合物(30mg)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 350.2/Rt(分)4.647
【0325】
参考例8~41:
対応する原料化合物を用いて、参考例1~7に記載の方法と同様の方法により、下記表に示す参考例8~41の化合物を得た。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【0326】
参考例42:
tert-ブチル {3-[(3-{3-[(5-シアノピラジン-2-イル)アミノ]-1H-ピラゾール-5-イル}-4-メトキシピリジン-2-イル)オキシ]プロピル}カルバメート
【化43】
【0327】
tert-ブチル (3-{[3-(3-アミノ-1H-ピラゾール-5-イル)-4-メトキシピリジン-2-イル]オキシ}プロピル)カルバメート(600mg)のDMSO(10.0mL)溶液に4-エチルモルホリン(1.00mL)、5-クロロピラジン-2-カルボニトリル(461mg)を室温で加え、80℃で12時間攪拌した。反応液に飽和食塩水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、表題化合物(1.01g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 467.3/Rt(分)0.885(測定条件A)
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.4 (1H, s), 10.7 (1H, s), 8.61 (1H, s), 8.50 (1H, brs), 8.07 (1H, d, J = 5.2 Hz), 7.06 (1H, brs), 6.90 (1H, d, J = 6.0 Hz), 4.34 (2H, t, J = 6.4 Hz), 3.93 (3H, s), 3.14-3.08 (2H, m), 1.87-1.84 (2H, m), 1.35 (9H, s).
【0328】
参考例43~78:
対応する原料化合物を用いて参考例42に記載の方法と同様の方法により、下記表に示す参考例43~78の化合物を得た。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【表2-11】
【表2-12】
【0329】
参考例79:
tert-ブチル {3-[(3-{3-[(5-クロロピラジン-2-イル)アミノ]-1H-ピラゾール-5-イル}-4-メトキシピリジン-2-イル)オキシ]プロピル}カルバメート
【化44】
【0330】
tert-ブチル (3-{[3-(3-アミノ-1H-ピラゾール-5-イル)-4-メトキシピリジン-2-イル]オキシ}プロピル)カルバメート(60mg)の1,4-ジオキサン(825μL)溶液に2,5-ジクロロピラジン(32.9μL)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)(15.1mg)、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(19.1mg)、炭酸セシウム(108mg)を室温で加え、マイクロ波照射下、150℃で2時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、表題化合物を得た。
LC-MS;[M+H]+ 476.3/Rt(分)0.969(測定条件A)
【0331】
実施例1:
5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル
【化45】
【0332】
参考例42で得られたtert-ブチル {3-[(3-{3-[(5-シアノピラジン-2-イル)アミノ]-1H-ピラゾール-5-イル}-4-メトキシピリジン-2-イル)オキシ]プロピル}カルバメート(200mg)の塩化メチレン(20.0mL)溶液に、TFA(2.00mL)を室温で加え、室温下1時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、残渣をアミンシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール)にて精製し実施例1(112mg)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 367.2/Rt(分)0.671(測定条件A)
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 8.65 (1H, s), 8.50 (1H, brs), 8.06 (1H, d, J = 6.4 Hz), 7.04 (1H, brs), 6.89 (1H, d, J = 6.4 Hz), 4.41 (2H, t, J = 6.0 Hz), 3.92 (3H, s), 2.75 (1H, t, J = 6.8 Hz), 1.85-1.76 (2H, m).
【0333】
実施例2~38:
対応する原料化合物を用いて、実施例1と同様の方法にて、下記表に示す実施例2~38の化合物を得た。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【表3-8】
【表3-9】
【表3-10】
【表3-11】
【表3-12】
【表3-13】
【表3-14】
【0334】
実施例39~45の粉末X線回折測定は、以下に示す条件で測定した。得られた回折パターン(XRDスペクトル)を
図1~
図6Aに示す。実施例39~41は、実施例1の化合物の各種の塩の結晶であり、実施例42~45は、実施例1の化合物の結晶多形である。
【0335】
結晶形の特定にあたっては、
図1~
図6Aの回折図に示される各結晶の特徴的回折ピークを元に判断すればよい。
【0336】
図1~
図6Aの回折パターンから特定した主要回折ピークおよび特徴的回折ピークを、それぞれ以下に挙げる。なお、以下の実施例に記載した回折角2θ(°)における回折ピーク値は、測定機器により、もしくは測定条件等により、多少の測定誤差が生じることがある。具体的には、測定誤差は±0.2、好ましくは±0.1の範囲内であってもよい。
【0337】
粉末X線回折測定法(実施例39-44):
検出機器:スペクトリス Power X-ray diffractionsystemEmpyrian
X線管球:CuKα(波長:1.54オングストローム)
管電圧:45kV
管電流:40mA
測定範囲:4~40度(2θ)
ステップ幅:0.013度
積算時間:100秒/ステップ
粉末X線回折測定法(実施例45):
検出機器:Bruker AXS D8 ADVANCE
X線管球:CuKα(波長:1.54オングストローム)
管電圧:40kV
管電流:40mA
測定範囲:4~40度(2θ)
ステップ幅:0.015度
【0338】
実施例39 :
5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル 塩酸塩
【0339】
実施例1の化合物(30.0mg)にメタノール(0.6mL)を加え、さらに5~10%(W/V)塩酸-メタノール溶液(60μL)を加えて設定温度60℃で2時間攪拌し
た。放冷後、一終夜静置し、析出した固体をろ取し、乾燥することにより表題化合物を結晶(形態I)として得た。
[形態I]粉末X線回折パターンは
図1に示す。
主要回折 ピーク:2θ(°)=7.2、8.8、9.8、10.2、10.7、16.7、18.5、26.2、27.0
特徴的回折 ピーク:2θ(°)=7.2、8.8、9.8、10.2、10.7
【0340】
実施例40:
5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル リン酸塩
【0341】
実施例1の化合物(30.0mg)に13.4mg/mLリン酸-メタノール溶液(1200μL)を加え、設定温度60℃で4時間攪拌した。放冷後、一終夜静置し、析出した固体をろ取し、乾燥することにより表題化合物を結晶(形態II)として得た。
[形態II]粉末X線回折パターンは
図2に示す。
主要回折ピーク:2θ(°)=6.8、7.5、11.7、11.9、13.0、16.4、19.3、20.4、22.7、24.3
特徴的回折ピーク:2θ(°)=6.8、7.5、11.7、11.9、13.0
【0342】
実施例41:
5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル トシル酸塩
【0343】
実施例1の化合物(30.0mg)にメタノール(0.6mL)を加え、さらに26.0mg/mLトシル酸-メタノール溶液(0.6mL)を加え、設定温度60℃で2時間攪拌した。放冷後、一終夜静置し、析出した固体をろ取し、乾燥することにより表題化合物を結晶(形態III)として得た。
[形態III]粉末X線回折パターンは
図3に示す。
主要回折ピーク:2θ(°)=6.0、9.0、12.1、14.4、16.2、17.0、22.8、26.3
特徴的回折ピーク:2θ(°)=6.0、9.0、12.1、14.4、16.2、17.0
【0344】
実施例42:
5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル
【0345】
[形態IV]粉末X線回折パターンは
図4に示す。
実施例1により、表題化合物を結晶(形態IV)として得た。
主要回折ピーク:2θ(°)=9.3、10.2、10.7、13.6、16.7、17.1、17.8、18.6、26.1、26.4
特徴的回折ピーク:2θ(°)=9.3、10.2、10.7、16.7、26.1、26.4
【0346】
実施例43:
5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル
【0347】
[形態V]粉末X線回折パターンは
図5に示す。
実施例1の化合物(5mg)のテトラヒドロフラン/水(10/1、0.5mL)溶液を加えて設定温度105℃で1時間加熱した。放冷後、密封して4日間静置した後、開封して3日間静置し、溶媒を留去した。析出した固体を表題化合物を結晶(形態V)として得た。
主要回折ピーク:2θ(°)=7.9、8.7、12.2、13.1、15.9、17.6、19.9、21.9、22.8、26.6
特徴的回折ピーク:2θ(°)=7.9、8.7、12.2、13.1、15.9、26.6
【0348】
実施例44:
5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル
【0349】
[形態VI]粉末X線回折パターンは
図6に示す。
実施例1の化合物(5mg)のアセトン/水(10/1、0.5mL)溶液を加えて設定温度105℃で1時間加熱した。放冷後、密封して4日間静置した後、開封して3日間静置し、溶媒を留去した。析出した固体を表題化合物を結晶(形態VI)として得た。主要回折ピーク:2θ(°)=5.3、5.7、7.0、7.3、7.8、8.4、9.3、10.5、11.5、14.1
特徴的回折ピーク:2θ(°)=5.3、5.7、7.0、7.3、8.4、9.3
【0350】
実施例45:
5-({5-[2-(3-アミノプロポキシ)-4-メトキシピリジン-3-イル]-1H-ピラゾール-3-イル}アミノ)ピラジン-2-カルボニトリル 塩酸塩
【0351】
[形態VII]粉末X線回折パターンは
図6Aに示す。
実施例1の化合物(36mg)を水(6mL)溶液に懸濁させ、1mol/L塩酸を徐々に加えてpH6.5に調整した。室温にて1時間静置した後、析出した表題化合物を結晶(形態VII)として得た。主要回折ピーク:2θ(°)=7.0、8.2、9.7、11.5、14.0、14.6、16.3、18.0、19.8、21.2、21.5、24.1、27.0
特徴的回折ピーク:2θ(°)=8.2、14.6、21.2、21.5、24.1、27.0
【0352】
試験例
試験例1:CHK1阻害活性試験
IMAP TR-FRET Screening Express Kit(R8160)をMolecular Device社から入手した。CHK1キナーゼ(02-117、カルナバイオ社)、FAM標識CHK1tide(R7185、Molecular Device社)、ATPをそれぞれ終濃度4μg/mL、2μM、20μMとなるようにアッセイバッファーで希釈した。FAM-PKAtide(R7255、Molecular Device社)、FAM-Phospho-PKAtide(R7304、Molecular Device社)を希釈後混和し、0から100%のリン酸化レベルのcalibration standard系列を作成した。384well plateに0.4%DMSO溶液で溶解させた化合物を5μL添加し、CHK1、CHK1tide、ATPを5μLずつ添加した化合物検討群と、standardを20μLずつ添加したstandard群を作成し、30℃で3時間キナーゼ反応させた。その後、Binding Reagent(80% Buffer A、20% Buffer B、1:600 Binding Reagent、1:400 Tb-Donor)を60μL添加し、室温2時間で結合反応させた。SpectraMax Paradigm(Molecular Device社)を用い、340nm励起時の520nm、490nmの蛍光強度を取得した。standardを用いCHK1tideのリン酸化レベルを算出し、DMSO処理群をリン酸化レベル100%とし、キナーゼ活性を下に示す計算式を用いて求め、キナーゼ活性が50%を示す評価化合物の濃度に相当するIC50値を算出した。
【0353】
キナーゼ阻害(%)=100-A/B×100
A:評価化合物存在下におけるシグナル
B:ネガティブコントロール(DMSO処理群)におけるシグナル
【0354】
実施例で得られた化合物及びMedChemExpress社から購入したプレキサセルチブ(以下の試験例においても入手先は同じ)について、試験例1に示す試験を行った。各被験物質に関する試験結果のIC
50値(nM)について下表に示す。
【表4-1】
【表4-2】
【0355】
上表に表すように、実施例1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、17、18、19、20、21、22、24、26、28、30及び37の化合物は、プレキサセルチブよりも強いCHK1活性の抑制効果を示した。中でも、実施例1及び8の化合物は、特に強力にCHK1活性を抑制する格別な効果を有する。
【0356】
試験例2:細胞増殖抑制実験
ES-2細胞をアメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)より入手した。本細胞は、10%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン含有McCoy’s 5a培地にて、37℃、5%CO2存在下で培養した。
384ウェルプレートに1ウェルあたり500個の細胞を播種して、DMSOの終濃度が0.1%となるように評価化合物を添加し、2日間培養した。培養終了後、CellTiter-Glo(登録商標)3D Reagent (Promega、G968B)を用いて、細胞生存率を計算した。生存率曲線より、細胞増殖の抑制率が50%を示す評価化合物の濃度に相当するIC50値を算出した。なお、ES-2細胞は、シスプラチン耐性を示すことが知られている。
【0357】
実施例で得られた化合物及びプレキサセルチブについて、試験例2に示す試験を行った。各被験物質の50%細胞増殖を抑制する濃度(IC
50値;nM)について下表に示す。なお、以下の表には、本開示の代表的な化合物の細胞増殖抑制試験の結果を、I、II、III、IV、Vの格付けをもとに列挙する(1000nM<I、1000nM>II>300nM、300nM>III>100nM、100nM>IV>30nM、30nM>V)。
【表5】
【0358】
上表に表すように、実施例1、3、4、5、6、11、15、17、19、20、21、22、23、25、26、27、28、29、30、31、32、33、35、36、37及び38の化合物は、プレキサセルチブと同等の良好な細胞増殖抑制効果を示した。
【0359】
試験例3:hERG電流阻害試験
培養したhERG(human Ether-a-go-go Related Gene)遺伝子安定発現CHO細胞株細胞に、被験物質が0.27~100μMとなるように添加した。電位刺激下におけるhERG電流をQube384(Sophion Bioscience社)を用いて測定し、各被験物質が50%hERG電流を抑制する濃度(IC50値;μM)を算出した。
【0360】
実施例で得られた化合物及びプレキサセルチブについて、試験例3に示す試験を行った。また、各実施例の化合物において、試験例3で得られたhERGのIC
50を、試験例1で得られたCHK1阻害のIC
50で割った値を、hERG/CHK1として算出した。結果について下表に示す。
【表6-1】
【表6-2】
【0361】
上表に表すように、実施例1、3、4、7~10、14、24、32及び34の化合物は、CHK1阻害のIC50とhERGのIC50とに50000倍以上の乖離幅を有することが示された。中でも、実施例1、3、7、8、14及び24の化合物は、CHK1阻害のIC50とhERGのIC50とに100000倍以上の乖離幅を有することが示された。
これら6化合物は、プレキサセルチブよりも18倍以上の乖離幅を示し、高い安全性を有する異質な効果を有する。
【0362】
試験例4:CYP3A4 MBI及び酵素不活性化クリアランス評価
チトクロームP450(以下CYP)は薬物代謝に関わる最も重要な酵素群で、薬物動態学的な相互作用の多くはこれらCYP活性の阻害に基づく。CYPには複数の分子種が存在し、特にCYP3A4はCYPによる酸化反応では医薬品の代謝に関与する割合が最も大きく、また、肝臓に存在するCYPのうちの大部分を占める。
【0363】
CYP阻害様式には「可逆的阻害」と「不可逆的阻害(mechanism-based inhibition:MBI)」の大きく2種類があり、特にMBIに基づくCYP阻害は薬物相互作用のみならず重篤な副作用(肝毒性等)を引き起こす可能性が知られている(Curr Opin Drug Discov Devel. 2010 January, 13(1), 66-77,Therapeutics and Clinical Risk Management, 2005,1(1), 3-13)。
【0364】
本実施例化合物及びプレキサセルチブを用いて、CYP3A4のMBI及び酵素不活性化クリアランスを評価した。
【0365】
酵素源としてヒト肝ミクロソーム、基質はミダゾラム又はテストステロンを用い、CYP3A4に対する試験化合物の阻害効果ならびに阻害様式を評価した。37℃、30分の代謝反応後の試験化合物添加群(4濃度)の基質由来代謝生成物と非添加群の基質由来代謝生成物をLC-MS/MSにて測定し、その比から阻害率を計算した。また、濃度プロットからIC50値を算出した。試験化合物にMBI作用が認められる場合、NADPH(補因子)存在下でのプレインキュベーション後に基質を添加し反応を開始することにより、IC50が低下することが知られていることから(Xenobiotica,2009,39(2),99-112)、プレインキュベーションによるIC50値の変動が2倍以上の場合、MBI作用ありと判定した。
【0366】
MBI作用が認められた場合は、kinact(最大酵素不活性化速度定数)及びKI(最大酵素不活性化速度の50%の速度をもたらす阻害薬の濃度)を非線形最小二乗法により算出した。さらに、Drug Metabolism and Disposition,2011,39(7),1247-1254に記載の方法に準じ、酵素不活性化クリアランスを算出した(CLint = kinact/KI(ml/min/mmol)×CYP contents(pmol/mg protein))。
【0367】
各実施例化合物及びプレキサセルチブのCYP3A4へのMBI作用の指標となるプレインキュベーションによるIC
50値の変動倍率及び酵素不活性化クリアランスを下表に示す。
【表7-1】
【表7-2】
【0368】
本願発明者らは、新たに、プレキサセルチブがMBIに基づくCYP3A4を阻害することで、肝毒性等の重篤な副作用を引き起こすリスクがあることを見出した。
【0369】
上表に表すように、プレキサセルチブは、MBIに基づくCYP3A4の阻害を示すにもかかわらず、実施例1、2、4、6~8、14、29~31、34、37及び38の化合物は、MBIに基づくCYP3A4の阻害を示さないことが明らかとなった。本結果は、実施例1、2、4、6~8、14、29~31、34、37及び38の化合物は、薬物相互作用のみならず、肝毒性等の重篤な副作用を引き起こすリスクが低減された高い安全性を有するという異質な効果を有する。なかでも、式(3)で示される化合物は、特に高い安全性を示し、異質な効果を有する。
【0370】
試験例5.ヒト骨髄細胞コロニー形成試験(血液毒性評価試験)
ヒト骨髄CD34陽性造血幹細胞をロンザ株式会社より入手した。本凍結細胞は、Methocult Express培地と、10%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン含有RPMI1640培地を9:1で混合した培地にて融解させ、6ウェルプレートに1ウェルあたり5000個の細胞を播種して、37℃、5%CO2存在下で一晩培養した。DMSOの終濃度が0.1%、100nMとなるように評価化合物を添加し、48時間培養した。細胞を回収し、PBSで洗浄した。12ウェルプレートに1/6量の細胞を播種して、37℃、5%CO2存在下で約2週間培養した。培養終了後、Thiazolyl blue tetrazolium bromide(MTT)を用いてコロニー形成数を計算した。
【0371】
実施例で得られた代表化合物及びプレキサセルチブについて、試験例5に示す試験を行った。結果について下表に示す。
【表8】
【0372】
上表に表すように、100nMのプレキサセルチブは、ヒト骨髄細胞コロニー形成に対して抑制効果を示すにもかかわらず、100nMの実施例1は、ヒト骨髄細胞コロニー形成に対して抑制効果を示さないことが明らかとなった。この結果より、実施例1の化合物は血液毒性について高い安全性を有する異質な効果を有する。
【0373】
試験例6.リポソーム内封試験
代表的な実施例化合物及びプレキサセルチブについて、リポソームへの内封試験を実施した。
【0374】
水素添加大豆ホスファチジルコリン(COATSOME NC-21E、日油株式会社製)6.48g、コレステロール(Sigma社製)2.32g及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミン-メトキシポリエチレングリコール2000(SUNBRIGHT DSPE-020CN、日油株式会社製)2.06gを65℃に加温したt-ブチルアルコール560mLに溶解した。この溶液をドライアイス・アセトン浴により凍結させた後、減圧留去によりt-ブチルアルコールを除去し、脂質混合物を得た。
【0375】
上記脂質混合物に250mM硫酸アンモニウム溶液200mLを添加して65℃に加温し、ホモジナイザー(ULTRA-TURRAX、IKA社製)で分散して粗リポソーム分散液を得た。さらに、粗リポソーム分散液を高圧ホモジナイザー(Nano-Mizer NM2、吉田機械興業製)で100MPaの圧力で分散し、平均粒子径(Z-average)約80nmのリポソームを得た。透析カセット(Slide-A-Lyzer G2 Dialysis Cassettes 20K MWCO、Thermo Scientific社製)を用いて、リポソーム外水相を10mM L-ヒスチジン緩衝液/10%スクロース溶液(pH6.5)に置換することで、空リポソーム液を得た。0.22μmメンブランフィルターにてろ過し、10mM L-ヒスチジン緩衝液/10%スクロース溶液(pH6.5)を加え、総脂質濃度が75mM(75μmol/mL)又は50mM(50μmol/mL)となるよう調整した。なお、調製量は適宜増減した。
【0376】
被験化合物2~3mgを秤取し、総脂質濃度50mMの空リポソーム液1mLを加え、1mol/L塩酸又は1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH5.5~7に調整し、65℃の水浴で10~30分間加温した後氷冷した。不溶物がある場合は、15,000×gで5分間遠心して除去した。
【0377】
リポソーム内封率は次のようにして算出した。
リポソーム液100μLを限外ろ過フィルター(Amicon Ultra、100K、0.5mL、メルク社製)にとり、4℃、15,000×gで10分間遠心した。限外ろ過後のろ液中の化合物濃度をHPLCで測定し、未内封化合物濃度とした。
リポソーム液をトリフルオロ酢酸/水/メタノール混液(0.1/25/75)で希釈し、5℃で10分以上静置した。15,000×gで5分間遠心して不溶物を除去し、上清の化合物濃度をHPLCで測定し、リポソーム液中の化合物濃度とした。
下式により内封率及び内封効率を算出した。
内封率(%)=(リポソーム液中の化合物濃度-未内封化合物濃度)×100/リポソーム液中の化合物濃度
内封効率(%)=(リポソーム液中の化合物濃度-未内封化合物濃度)×100/化合物導入時濃度
【0378】
HPLCの測定条件は下記の通りである。
HPLC条件
カラム:Acquity UPLC BEH C18,1.7μm,50x2.1mm
カラム温度:40℃
移動相:A:0.1% トリフルオロ酢酸含有水
B:アセトニトリル
A/B(min):95/5(0)→0/100(3.5)→0/100(4)→95/5(4.01)→95/5(5)
流速:0.8mL/min
検出:紫外可視検出器 測定波長 254nm
注入量:3μL又は5μL
【0379】
【0380】
プレキサセルチブ、実施例1、3、4、5、及び6は、80%以上の高い内封効率を達成できることが確認された。なお、実施例4のリポソーム封入操作において、1mol/L塩酸を加えてpH調整した際に、液粘度の著しい上昇がみられた。この粘度上昇は、大きなスケールでリポソーム製造を行う際の課題となる可能性がある。一方、実施例1、3、5、及び6では、リポソーム封入操作中に、粘度の上昇は認められなかった。従って、式(3)及び(4)で示される化合物は、特に良好なリポソーム封入操作性を示した。
【0381】
試験例6A.実施例1のリポソーム内封試験
実施例1の化合物について、リポソームへの内封試験を実施した。
【0382】
Presome ACD-1(水素添加大豆ホスファチジルコリン、コレステロール及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミン-メトキシポリエチレングリコール2000からなる質量比がそれぞれ3:1:1である予備調製混合物、日本精化株式会社製)11.08gを秤取し、250mM硫酸アンモニウム溶液200mLを添加して65℃に加温し、ホモジナイザー(ULTRA-TURRAX、IKA社製)で分散して粗リポソーム分散液を得た。さらに、粗リポソーム分散液を高圧ホモジナイザー(Nano-Mizer NM2、吉田機械興業製)で100MPaの圧力で分散し、平均粒子径(Z-average)80nmのリポソームを得た。透析カセット(Slide-A-Lyzer G2 Dialysis Cassettes 20K MWCO、Thermo Scientific社製)を用いて、リポソーム外水相を10mM L-ヒスチジン緩衝液/10%スクロース溶液(pH6.5)に置換し、0.22μmメンブランフィルターにてろ過することで、総脂質濃度75mM(75μmol/mL)の空リポソーム液を得た。
【0383】
実施例1の化合物を秤取し、10mM L-ヒスチジン緩衝液/10%スクロース溶液(pH6.5)約0.4mL、0.1mol/L塩酸約0.1mL、及び上記空リポソーム液1mLを加え、1mol/L塩酸を加えてpH6~6.5に調整し、65℃の水浴で30分間加温した後氷冷した。その後、0.22μmメンブランフィルターにてろ過した。
【0384】
リポソーム内封率は次のようにして算出した。
未内封化合物濃度:リポソーム液100μLに4%リン酸水溶液100μLを加えた液につき、化合物濃度をHPLCで測定した。HPLCの測定条件は下記の通りである。
HPLC条件
カラム:MonoSelect nPEC (GL Sciences Inc.)
カラム温度:30℃
移動相:A:0.1% トリフルオロ酢酸含有水
B:アセトニトリル
A/B(min):95/5(0)→95/5(1)→70/30(6)→70/30(7)→95/5(7.01)→95/5(10)
流速:1mL/min
検出:紫外可視検出器 測定波長 254nm
注入量:2μL
【0385】
リポソーム液中の化合物濃度:リポソーム液をトリフルオロ酢酸/水/メタノール混液(0.1/25/75)で希釈し、5℃で10分以上静置した。15,000×gで5分間遠心して不溶物を除去し、上清の化合物濃度をHPLCで測定した。HPLCの測定条件は下記の通りである。
HPLC条件
カラム:Acquity UPLC BEH C18,1.7μm,50x2.1mm
カラム温度:40℃
移動相:A:0.1% トリフルオロ酢酸含有水
B:アセトニトリル
A/B(min):95/5(0)→0/100(3.5)→0/100(4)→95/5(4.01)→95/5(5)
流速:0.8mL/min
検出:紫外可視検出器 測定波長 254nm
注入量:5μL
【0386】
下式により内封率及び内封効率を算出した。
内封率(%)=(リポソーム液中の化合物濃度-未内封化合物濃度)×100/リポソーム液中の化合物濃度
内封効率(%)=(リポソーム液中の化合物濃度-未内封化合物濃度)×100/化合物導入時濃度
【0387】
【0388】
実施例1は、90%以上の高いリポソーム内封効率を達成できることが確認された。
【0389】
試験例6B.実施例1のリポソーム内封試験
実施例1の化合物について、リポソームへの内封試験を実施した。
【0390】
Presome ACD-1(水素添加大豆ホスファチジルコリン、コレステロール及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミン-メトキシポリエチレングリコール2000からなる質量比がそれぞれ3:1:1である予備調製混合物、日本精化株式会社製)11.08gを秤取し、250mM硫酸アンモニウム溶液200mLを添加して65℃に加温し、ホモジナイザー(ULTRA-TURRAX、IKA社製)で分散して粗リポソーム分散液を得た。さらに、粗リポソーム分散液を高圧ホモジナイザー(Nano-Mizer NM2、吉田機械興業製)で100MPaの圧力で分散し、平均粒子径(Z-average)81nmのリポソームを得た。透析カセット(Slide-A-Lyzer G2 Dialysis Cassettes 20K MWCO、Thermo Scientific社製)を用いて、リポソーム外水相を10mM L-ヒスチジン緩衝液/9.4%スクロース溶液(pH6.5)に置換し、0.22μmメンブランフィルターにてろ過することで、総脂質濃度53.1mg/mLの空リポソーム液を得た。
【0391】
実施例1の化合物120mgを秤取し、10mM L-ヒスチジン緩衝液/9.4%スクロース溶液(pH6.5)18.3mL、1mol/L塩酸0.3mL、及び上記空リポソーム液41.7mLを加え、1mol/L塩酸または1mol/L水酸化ナトリウムでpH6.5となるように調整した。この液を50℃の水浴で30分間加温した後氷冷し、0.22μmメンブランフィルターにてろ過した。実施例1のリポソーム液中の化合物濃度は2.00mg/mL、内封率98.0%、平均粒子径(Z-average)は84nmであった。
【0392】
リポソーム内封率は次のようにして算出した。
未内封化合物濃度:リポソーム液100μL、4%リン酸水溶液100μL及び生理食塩水300μLを混合し、100,000×gで60分間遠心して不溶物を除去し、上清の化合物濃度をHPLCで測定した。
リポソーム液中の化合物濃度:リポソーム液をトリフルオロ酢酸/水/メタノール混液(0.1/25/75)で希釈し、5℃で10分以上静置した。15,000×gで5分間遠心して不溶物を除去し、上清の化合物濃度をHPLCで測定した。
HPLCの測定条件は下記の通りである。
HPLC条件
カラム:Acquity UPLC BEH C18,1.7μm,50x2.1mm
カラム温度:40℃
移動相:A:0.1% トリフルオロ酢酸含有水
B:アセトニトリル
A/B(min):95/5(0)→0/100(3.5)→0/100(4)→95/5(4.01)→95/5(5)
流速:0.8mL/min
検出:紫外可視検出器 測定波長 254nm
注入量:5μL
【0393】
下式により内封率を算出した。
内封率(%)=(リポソーム液中の化合物濃度-未内封化合物濃度)×100/リポソーム液中の化合物濃度
【0394】
実施例1の化合物を内封したリポソームを5℃で保存し、化合物濃度、内封率、及び平均粒子径の変化を確認した。表11に示すように、実施例1を内封したリポソームは、化合物濃度、内封率及び平均粒子径に大きな変化は認められず、保存安定性に優れていることが明らかとなった。
【0395】
【0396】
試験例7.薬物動態試験
プレキサセルチブの溶液製剤、実施例1、3、6及びプレキサセルチブのリポソーム製剤について、マウス静脈内投与を行い、血液中における被験物質の濃度測定を行った。
【0397】
溶液製剤には、10mMグリシン/5%マンニトール溶液(pH2)又は、20%sulfobutylether-β-cyclodextrinを含有する10mMグリシン/5%マンニトール溶液(pH2)に溶解後、0.22μmメンブランフィルターにてろ過したものを使用した。
【0398】
リポソーム製剤は、試験例6と同様の方法により被験化合物を内封したリポソームを調製し、ゲルろ過カラムPD-10(GEヘルスケア社製)を用いてリポソーム外水相を10mM L-ヒスチジン緩衝液/10%スクロース溶液(pH6.5)に置換後、0.22μmメンブランフィルターにてろ過し、10mM L-ヒスチジン緩衝液/10%スクロース溶液(pH6.5)を加えて濃度を調整したものを使用した。
【0399】
<投与試験>
溶液製剤もしくはリポソーム製剤を7週齢、雌のBALB/cマウスに静脈内瞬時投与し、無麻酔下にて頚静脈より投与後72時間まで経時的に血液を採取した。採血直後の血液に4倍量のメタノールを加えたものを遠心分離し、得られた上清中の被験化合物濃度をLC-MS/MSにて定量した。
【0400】
LC-MS/MSの測定条件は下記の通りである。
HPLC:Prominence システム(島津製作所)
MS/MS:4000 QTRAP(SCIEX)
カラム:Cadenza CD-C18,3μm,50×2mm(インタクト株式会社)カラム温度:40℃
移動相:A:0.1%ギ酸含有水
B:0.1%ギ酸含有アセトニトリル
A/B(min):90/10(0)→10/90(2.5)→10/90(3.5)→90/10(3.6)→90/10(5.0)
流速:0.4mL/min
検出:ESI(positive mode)
注入量:0.1~5μL
【0401】
試験結果を下表に示す。表中、「mean」は平均を、「S.D.」は標準偏差をそれぞれ意味する。投与後0時間から投与後72時間までの、血漿中被験化合物濃度について、表12、13、14、15及び16に示す。
【0402】
【0403】
【0404】
【0405】
【0406】
【0407】
実施例1、3、6及びプレキサセルチブのリポソーム製剤に関するAUCについては、投与後0時間から血漿中被験化合物濃度を定量できた時点(t)までについて、AUCを台形法にて算出し、表17に示す。
【表17】
【0408】
以上の結果より、リポソーム製剤化した実施例1及び実施例3の内封リポソームを静脈内投与すると、それぞれ高い血中滞留性が確認された。本結果は、プレキサセルチブの非臨床試験で報告された薬効の最大化に重要な72時間の持続的な曝露の達成を示した。従って、実施例1及び実施例3は、優れた薬物動態プロファイルを有し、抗がん剤として極めて有用である。式(3)で示される化合物の特徴である、ピリジン環上の窒素原子が特定の位置に存在していることが重要であることが示された。
【0409】
試験例8.ES-2を細胞移植した担がんマウスを用いた薬効評価試験
プレキサセルチブ、プレキサセルチブを内封したリポソーム製剤及び実施例1を内封したリポソーム製剤を用いて、抗腫瘍作用を評価した。
【0410】
プレキサセルチブの溶液製剤には、プレキサセルチブを20%sulfobutylether-β-cyclodextrinを含有する10mMグリシン/5%マンニトール溶液(pH2)に溶解後、0.22μmメンブランフィルターにてろ過したものを使用した。
【0411】
リポソーム製剤は、試験例6と同様の方法で調製した。被験化合物を秤取し、化合物濃度2mg/mLとなるように総脂質濃度50mMの空リポソーム液を加え、1mol/L塩酸を加えてpH6~7に調整した。又は、被験化合物に10mM L-ヒスチジン緩衝液/10%スクロース溶液(pH6.5)及び塩酸を加えて化合物を溶解又は分散し、化合物濃度2mg/mLとなるように総脂質濃度75mMの空リポソーム液を加え、pH6~7に調整した。この液を65℃の水浴で10~30分間加温した後氷冷した。5℃の冷蔵庫で一晩以上静置した後、0.22μmメンブランフィルターにてろ過した。試験例6に記載の方法により算出したリポソーム内封率は99%以上であった。
【0412】
4~7週齢のBALB/c-nu/nuマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌性、日本チャールス・リバー)にES-2細胞(ATCC)を1×106cells/mouseとなるように腹側部周辺に皮内移植した。移植5~14日後にES-2細胞の生着を確認した後、溶液製剤を30mg/kg又はリポソーム製剤を3mg/kg、7.5mg/kg、20mg/kgの用量で1週間に1回静脈投与、又は1日に2回3日連続皮下投与(1週間に合計6回投与)した。投与開始から経時的に腫瘍容積を測定し、化合物投与による腫瘍容積の縮小作用を評価する。腫瘍容積は電子ノギス(Mitutoyo)にて計測した腫瘍の短径、長径を用いて、次式にて算出した。
【0413】
腫瘍容積[mm3] = 0.5×(短径[mm])2×長径[mm]
【0414】
溶媒のみを投与した対照投与群と、本開示の化合物投与群とを比較し、以下の式でT/Cを算出し、抗腫瘍効果を評価した。また、溶液製剤またはリポソーム製剤投与による投与終了時の完全腫瘍退縮(CR)個体率を記載した。対照投与群は試験例6と同様の方法により調製した空リポソーム液を使用した。
【0415】
T/C(%)=(本開示の化合物投与群の投与終了時の腫瘍容積-本開示の化合物投与群の投与開始時の腫瘍容積)/(対照投与群の投与終了時の腫瘍容積-対照投与群の投与開始時の腫瘍容積)×100
【0416】
表18に、被験化合物の各投与量、投与期間における、ES-2を細胞移植した担がんマウス対するT/C(%)およびCR個体率を示す。
【表18】
【0417】
担がんマウスを用いた薬効評価試験において、リポソーム製剤化された実施例1は、いずれの投与量においても、リポソーム製剤化されたプレキサセルチブと同様に優れた抗腫瘍効果を示すことが明らかとなった。これらのリポソーム製剤は、20mg/kgの投与量を用いた評価試験において、溶液製剤化されたプレキサセルチブでは達成できない腫瘍退縮を達成している。本試験結果より、実施例1は、優れた抗腫瘍効果を示す有望な化合物であり、格別な効果を有する。
【0418】
試験例9.ES-2を細胞移植した担がんマウスを用いた好中球数の測定
4~7週齢のBALB/c-nu/nuマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌性、日本チャールス・リバー)にES-2細胞(ATCC)を1×106cells/mouseとなるように腹側部周辺に皮内移植した。移植5~14日後にES-2細胞の生着を確認した後、プレキサセルチブを内封したリポソーム製剤及び実施例1を内封したリポソーム製剤を各用量で単回静脈投与した。投与から72時間後に血液を採取し、好中球数の測定をおこなった。本試験の比較には試験例6と同様の方法により調製した空リポソーム液を使用した。
【0419】
空リポソーム液を投与した対照投与群とリポソーム製剤化された実施例1及びリポソーム製剤化されたプレキサセルチブをそれぞれ投与した投与群とを比較し、以下の式で好中球の残存率を算出し、それぞれの製剤についての安全性を評価した。
【0420】
好中球の残存率(%)=(投与群の投与72時間後の好中球数)/(対照投与群の投与72時間後の好中球数)×100
【0421】
表19に、ES-2を細胞移植した担がんマウス対する好中球の残存率を示す。
【0422】
【0423】
リポソーム製剤化された実施例1は、リポソーム製剤化されたプレキサセルチブと同じ投与量で同等の抗腫瘍効果を示す。リポソーム製剤化されたプレキサセルチブは、最小有効量である3mg/kgにおいて、好中球の残存率が15%であり、抗腫瘍効果と血液毒性とが同時に観測されている。一方で、リポソーム製剤化された実施例1は、最小有効量である3mg/kgでは、好中球の残存率が61%であり、血液毒性の副作用が低減されている。さらに、リポソーム製剤化された実施例1は、試験例8で示したように、腫瘍退縮が観測される20mg/kgの投与量においても、リポソーム製剤化されたプレキサセルチブを7.5mg/kg投与した場合よりも、高い好中球の残存率を示している。以上より、実施例1は、プレキサセルチブよりも高い安全性と有効性を併せ持つ優れた化合物であり格別な効果を有する。また、実施例1のリポソーム製剤も、同様に、高い安全性と有効性を併せ持つ優れた化合物であり格別な効果を有する。
【0424】
試験例10.ヒト骨髄細胞Myeloid系分化誘導試験(血液毒性評価試験)
ヒト骨髄CD34陽性造血幹細胞をロンザ株式会社より入手した。本凍結細胞は、1%ウシ胎児血清含有IMDM培地にて融解させ、Complete hemaTox(登録商標)Myeloid Mediumにて懸濁し、96ウェルプレートに1ウェルあたり1000個の細胞を播種した。DMSOの終濃度が0.1%、3nMとなるように評価化合物を添加し、37℃、5%CO2存在下で7日間培養した。培養終了後、1ウェルあたり半分量の細胞懸濁液を回収し、CellTiter-Glo(登録商標)3D Reagent(Promega、G968B)を用いて発光値を測定し、以下の式で細胞生存比率を計算した。
【0425】
細胞生存比率(%)=(評価化合物の7日後の発光測定値)/(対照群の7日後の発光測定値)×100
【0426】
実施例で得られた代表化合物及びプレキサセルチブについて、試験例10に示す試験を行った。結果について下表に示す。
【表20】
【0427】
上表に表すように、3nMのプレキサセルチブは、ヒト骨髄細胞から分化誘導したMyeloid系細胞に対して抑制効果を示すにもかかわらず、3nMの実施例1は、ヒト骨髄細胞から分化誘導したMyeloid系細胞に対して抑制効果を示さないことが明らかとなった。この結果より、プレキサセルチブと比較し、実施例1は血液毒性について高い安全性を有する化合物であり、格別かつ異質な効果を有する。
【0428】
試験例11.ES-2を細胞移植した担がんマウスを用いた腫瘍PD試験
プレキサセルチブ、プレキサセルチブを内封したリポソーム製剤及び実施例1を内封したリポソーム製剤を用いて、腫瘍における薬力学的(Pharmaco Dynamics:PD)応答作用を評価した。
【0429】
プレキサセルチブの溶液製剤には、プレキサセルチブを20%sulfobutylether-β-cyclodextrinを含有する10mMグリシン/5%マンニトール溶液(pH2)に溶解後、0.22μmメンブランフィルターにてろ過したものを使用した。
【0430】
リポソーム製剤は、試験例6と同様の方法で調製した。被験化合物を秤取し、化合物濃度2mg/mLとなるように総脂質濃度50mMの空リポソーム液を加え、1mol/L塩酸を加えてpH6~7に調整した。又は、被験化合物に10mM L-ヒスチジン緩衝液/10%スクロース溶液(pH6.5)及び塩酸を加えて化合物を溶解又は分散し、化合物濃度2mg/mLとなるように総脂質濃度75mMの空リポソーム液を加え、pH6~7に調整した。この液を65℃の水浴で10~30分間加温した後氷冷した。5℃の冷蔵庫で一晩以上静置した後、0.22μmメンブランフィルターにてろ過した。試験例6に記載の方法により算出したリポソーム内封率は99%以上であった。
【0431】
4~7週齢のBALB/c-nu/nuマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌性、日本チャールス・リバー)に卵巣がんES-2細胞(ATCC)を1×106cells/mouseとなるように腹側部周辺に皮内移植した。移植5~14日後にES-2細胞の生着を確認した後、試験ごとに以下の条件で投与した:
試験A:溶液製剤を30mg/kg又はリポソーム製剤を7.5mg/kg、3mg/kg、1mg/kg、0.3mg/kgの用量で単回静脈投与した。 試験B:溶液製剤を30mg/kg又はリポソーム製剤を7.5mg/kg、3mg/kg、1mg/kg、0.3mg/kgの用量で単回静脈投与した。 試験C:リポソーム製剤を20mg/kg、7.5mg/kg、3mg/kg、1mg/kg、0.3mg/kgの用量で単回静脈投与した。投与後は1日後、3日後、あるいは6日後に腫瘍を回収し、化合物投与による腫瘍のPD応答を評価した。
【0432】
腫瘍におけるPD応答作用はウエスタンブロッティングにより評価した。抗抗γH2AX抗体(05-636、Merck社)及び抗Tubulin抗体(3873、Cell Signaling Technology社)により検出した各バンド強度をImageJソフトウェアにて算出した。
【0433】
溶媒のみを投与した対照投与群と、本開示の化合物投与群とを比較し、以下の式で各バンド強度の相対値を算出し、腫瘍におけるPD応答作用を評価した。対照投与群は試験例6と同様の方法により調製した空リポソーム液を使用した。
【0434】
γH2AXの強度={(本開示の化合物投与群の腫瘍におけるγH2AXのバンド強度)/(本開示の化合物投与群の腫瘍におけるTubulinのバンド強度)}/{(対照投与群の腫瘍におけるγH2AXのバンド強度/対照投与群の腫瘍におけるTubulinのバンド強度)}×100
【0435】
図7-9に、被験化合物の各投与量、投与期間における、ES-2を細胞移植した担がんマウス対するγH2AXの強度を示す。
【0436】
以上の結果より、試験例11試験Aで示したように、リポソーム製剤化したプレキサセルチブを投与すると、投与3日後、7.5mg/kgの投与量において強いPD応答作用が確認され、溶液製剤化されたプレキサセルチブでは達成できないPD応答作用を達成した。試験例11試験Bで示したように、リポソーム製剤化した実施例1を投与すると、投与1日後、7.5mg/kgの投与量において強いPD応答作用が確認され、溶液製剤化されたプレキサセルチブでは達成できないPD応答作用を達成した。試験例11試験Cで示したように、リポソーム製剤化した実施例1を投与すると、投与3日後および投与6日後、7.5mg/kgおよび20mg/kgの投与量において強いPD応答作用が確認された。これらのリポソーム製剤は、試験例7に示すように、プレキサセルチブの非臨床試験で報告された薬効の最大化に重要な72時間の持続的な曝露の達成を示した。従って、実施例1は、優れた薬物動態的及び薬力学的プロファイルを有し、抗がん剤として極めて有用である。
【0437】
試験例12.ES-2を細胞移植した腹膜播種担がんマウスを用いた薬効評価試験
プレキサセルチブ、プレキサセルチブを内封したリポソーム製剤及び実施例1を内封したリポソーム製剤を用いて、抗腫瘍作用を評価した。
【0438】
プレキサセルチブの溶液製剤には、プレキサセルチブを20%sulfobutylether-β-cyclodextrinを含有する10mMグリシン/5%マンニトール溶液(pH2)に溶解後、0.22μmメンブランフィルターにてろ過したものを使用した。
【0439】
プレキサセルチブを内封したリポソーム製剤は、以下の通り調製した。
Presome ACD-1(日本精化株式会社製)11.08g及び250mM硫酸アンモニウム溶液200mLを混合し、ホモジナイザー(ULTRA-TURRAX、IKA社製)で分散して粗リポソーム分散液を得た。さらに、粗リポソーム分散液を高圧ホモジナイザー(Nano-Mizer NM2、吉田機械興業製)で100MPaの圧力で分散し、平均粒子径(Z-average)80nmのリポソームを得た。透析カセット(Slide-A-Lyzer G2 Dialysis Cassettes 20K MWCO、Thermo Scientific社製)を用いて、リポソーム外水相を10mM L-ヒスチジン緩衝液/10%スクロース溶液(pH6.5)に置換し、0.22μmメンブランフィルターにてろ過することで、総脂質濃度75mMの空リポソーム液を得た。プレキサセルチブ60mg、10mM L-ヒスチジン緩衝液/9.4%スクロース溶液(pH6.5)10mL、上記空リポソーム液20mLを加え、pH6.5に調整した。この液を50℃の水浴で30分間加温した後氷冷し、0.22μmメンブランフィルターにてろ過した。リポソーム液中のプレキサセルチブ濃度は1.97mg/mL、内封率98%であった。
【0440】
リポソーム液中の化合物濃度及び内封率は次のようにして算出した。
未内封化合物濃度:リポソーム液100μL、4%リン酸水溶液100μL及び生理食塩水300μLを混合し、100,000×gで60分間遠心して不溶物を除去し、上清の化合物濃度をHPLCで測定した。
【0441】
リポソーム液中の化合物濃度:リポソーム液をトリフルオロ酢酸/水/メタノール混液(0.1/25/75)で希釈し、4℃、15,000×gで10分間遠心して不溶物を除去し、上清の化合物濃度をHPLCで測定した。
HPLCの測定条件は下記の通りである。
HPLC条件
カラム:Acquity UPLC BEH C18,1.7μm,50x2.1mm
カラム温度:40℃
移動相:A:0.1% トリフルオロ酢酸含有水
B:アセトニトリル
A/B(min):90/10(0)→70/30(3)→0/100(3.5)→0/100(4)→90/10(4.01)→90/10(5)
流速:0.8mL/min
検出:紫外可視検出器 測定波長 254nm
注入量:5μL
下式により内封率を算出した。
内封率(%)=(リポソーム液中の化合物濃度-未内封化合物濃度)×100/リポソーム液中の化合物濃度
【0442】
実施例1を内封したリポソーム製剤は、以下の通り調製した。
Presome ACD-1(日本精化株式会社製)11.08g及び250mM硫酸アンモニウム溶液200mLを混合し、ホモジナイザー(ULTRA-TURRAX、IKA社製)で分散して粗リポソーム分散液を得た。さらに、粗リポソーム分散液を高圧ホモジナイザー(Nano-Mizer NM2、吉田機械興業製)で100MPaの圧力で分散し、平均粒子径(Z-average)81nmのリポソームを得た。透析カセット(Slide-A-Lyzer G2 Dialysis Cassettes 20K MWCO、Thermo Scientific社製)を用いて、リポソーム外水相を10mM L-ヒスチジン緩衝液/9.4%スクロース溶液(pH6.5)に置換し、0.22μmメンブランフィルターにてろ過することで、総脂質濃度53.1mg/mLの空リポソーム液を得た。実施例1の化合物80mg、10mM L-ヒスチジン緩衝液/9.4%スクロース溶液(pH6.5)12.2mL、上記空リポソーム液27.8mLを加え、pH6.5に調整した。この液を50℃の水浴で30分間加温した後氷冷し、0.22μmメンブランフィルターにてろ過した。実施例1のリポソーム液中の化合物濃度は1.99mg/mL、内封率97%であった。
【0443】
リポソーム内封率は次のようにして算出した。
未内封化合物濃度:リポソーム液100μLに4%リン酸水溶液100μLを加えた液につき、化合物濃度をHPLCで測定した。HPLCの測定条件は下記の通りである。
HPLC条件
カラム:MonoSelect nPEC (GL Sciences Inc.)
カラム温度:30℃
移動相:A:0.1% トリフルオロ酢酸含有水
B:アセトニトリル
A/B(min):95/5(0)→95/5(1)→70/30(6)→70/30(7)→95/5(7.01)→95/5(10)
流速:1mL/min
検出:紫外可視検出器 測定波長 254nm
注入量:2μL
リポソーム液中の化合物濃度:リポソーム液をトリフルオロ酢酸/水/メタノール混液(0.1/25/75)で希釈し、4℃、15,000×gで10分間遠心して不溶物を除去し、上清の化合物濃度をHPLCで測定した。HPLCの測定条件は下記の通りである。
HPLC条件
カラム:Acquity UPLC BEH C18,1.7μm,50x2.1mm
カラム温度:40℃
移動相:A:0.1% トリフルオロ酢酸含有水
B:アセトニトリル
A/B(min):95/5(0)→0/100(3.5)→0/100(4)→95/5(4.01)→95/5(5)
流速:0.8mL/min
検出:紫外可視検出器 測定波長 254nm
注入量:5μL
下式により内封率を算出した。
内封率(%)=(リポソーム液中の化合物濃度-未内封化合物濃度)×100/リポソーム液中の化合物濃度
【0444】
5週齢のBALB/c-nu/nuマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌性、日本チャールス・リバー)に卵巣がんES-2細胞(ATCC)にLuciferaseを発現させた細胞株を1×106cells/mouseとなるように腹腔内に移植した。移植5~14日後にIVIS Imaging System(PerkinElmer社)によりES-2細胞の生着を確認した後、溶液製剤を30mg/kg又はリポソーム製剤を4.5mg/kg、20mg/kgの用量で1週間に1回静脈投与した。投与開始から経時的にLuciferaseによる発光を測定し、化合物投与による腫瘍の縮小作用を評価する。Luciferaseによる発光から推測される腫瘍の大きさ、全身症状及び体重推移をもとにマウスを観察し、重篤な所見がなく健康状態を示したマウスについての生存期間を測定した。
【0445】
溶媒のみを投与した対照投与群と、本開示の化合物投与群の生存期間中央値を算出し、抗腫瘍効果を評価した。対照投与群には空リポソーム液を使用した。
【0446】
表21に、被験化合物の各投与量、投与期間における、ES-2を細胞移植した腹膜播種担がんマウス対する生存期間中央値を示す。
【表21】
【0447】
腹膜播種担がんマウスを用いた薬効評価試験において、リポソーム製剤化された実施例1は、20mg/kgの投与量において、リポソーム製剤化されたプレキサセルチブと同様に優れた抗腫瘍効果を示すことが明らかとなった。これらのリポソーム製剤は、20mg/kgの投与量を用いた評価試験において、溶液製剤化されたプレキサセルチブでは達成できない生存期間の延長を達成している。本試験結果より、実施例1は、優れた抗腫瘍効果を示す有望な化合物であり、格別な効果を有する。
【0448】
試験例13.ES-2を細胞移植した卵巣同所担がんマウスを用いた薬効評価試験
プレキサセルチブ、プレキサセルチブを内封したリポソーム製剤及び実施例1を内封したリポソーム製剤を用いて、抗腫瘍作用を評価した。
【0449】
プレキサセルチブの溶液製剤には、プレキサセルチブを20%sulfobutylether-β-cyclodextrinを含有する10mMグリシン/5%マンニトール溶液(pH2)に溶解後、0.22μmメンブランフィルターにてろ過したものを使用した。
【0450】
プレキサセルチブを内封したリポソーム製剤は、以下の通り調製した。
Presome ACD-1(日本精化株式会社製)11.08g及び250mM硫酸アンモニウム溶液200mLを混合し、ホモジナイザー(ULTRA-TURRAX、IKA社製)で分散して粗リポソーム分散液を得た。さらに、粗リポソーム分散液を高圧ホモジナイザー(Nano-Mizer NM2、吉田機械興業製)で100MPaの圧力で分散し、平均粒子径(Z-average)80nmのリポソームを得た。透析カセット(Slide-A-Lyzer G2 Dialysis Cassettes 20K MWCO、Thermo Scientific社製)を用いて、リポソーム外水相を10mM L-ヒスチジン緩衝液/10%スクロース溶液(pH6.5)に置換し、0.22μmメンブランフィルターにてろ過することで、総脂質濃度75mMの空リポソーム液を得た。プレキサセルチブ60mg、10mM L-ヒスチジン緩衝液/9.4%スクロース溶液(pH6.5)10mL、上記空リポソーム液20mLを加え、pH6.5に調整した。この液を50℃の水浴で30分間加温した後氷冷し、0.22μmメンブランフィルターにてろ過した。リポソーム液中のプレキサセルチブ濃度は1.97mg/mL、内封率98%であった。
【0451】
リポソーム液中の化合物濃度及び内封率は次のようにして算出した。
未内封化合物濃度:リポソーム液100μL、4%リン酸水溶液100μL及び生理食塩水300μLを混合し、100,000×gで60分間遠心して不溶物を除去し、上清の化合物濃度をHPLCで測定した。
【0452】
リポソーム液中の化合物濃度:リポソーム液をトリフルオロ酢酸/水/メタノール混液(0.1/25/75)で希釈し、4℃、15,000×gで10分間遠心して不溶物を除去し、上清の化合物濃度をHPLCで測定した。
HPLCの測定条件は下記の通りである。
HPLC条件
カラム:Acquity UPLC BEH C18,1.7μm,50x2.1mm
カラム温度:40℃
移動相:A:0.1% トリフルオロ酢酸含有水
B:アセトニトリル
A/B(min):90/10(0)→70/30(3)→0/100(3.5)→0/100(4)→90/10(4.01)→90/10(5)
流速:0.8mL/min
検出:紫外可視検出器 測定波長 254nm
注入量:5μL
下式により内封率を算出した。
内封率(%)=(リポソーム液中の化合物濃度-未内封化合物濃度)×100/リポソーム液中の化合物濃度
【0453】
実施例1を内封したリポソーム製剤は、以下の通り調製した。
Presome ACD-1(日本精化株式会社製)11.08g及び250mM硫酸アンモニウム溶液200mLを混合し、ホモジナイザー(ULTRA-TURRAX、IKA社製)で分散して粗リポソーム分散液を得た。さらに、粗リポソーム分散液を高圧ホモジナイザー(Nano-Mizer NM2、吉田機械興業製)で100MPaの圧力で分散し、平均粒子径(Z-average)81nmのリポソームを得た。透析カセット(Slide-A-Lyzer G2 Dialysis Cassettes 20K MWCO、Thermo Scientific社製)を用いて、リポソーム外水相を10mM L-ヒスチジン緩衝液/9.4%スクロース溶液(pH6.5)に置換し、0.22μmメンブランフィルターにてろ過することで、総脂質濃度53.1mg/mLの空リポソーム液を得た。実施例1の化合物80mg、10mM L-ヒスチジン緩衝液/9.4%スクロース溶液(pH6.5)12.2mL、上記空リポソーム液27.8mLを加え、pH6.5に調整した。この液を50℃の水浴で30分間加温した後氷冷し、0.22μmメンブランフィルターにてろ過した。実施例1のリポソーム液中の化合物濃度は1.99mg/mL、内封率97%であった。
【0454】
リポソーム内封率は次のようにして算出した。
未内封化合物濃度:リポソーム液100μLに4%リン酸水溶液100μLを加えた液につき、化合物濃度をHPLCで測定した。HPLCの測定条件は下記の通りである。
HPLC条件
カラム:MonoSelect nPEC (GL Sciences Inc.)
カラム温度:30℃
移動相:A:0.1% トリフルオロ酢酸含有水
B:アセトニトリル
A/B(min):95/5(0)→95/5(1)→70/30(6)→70/30(7)→95/5(7.01)→95/5(10)
流速:1mL/min
検出:紫外可視検出器 測定波長 254nm
注入量:2μL
リポソーム液中の化合物濃度:リポソーム液をトリフルオロ酢酸/水/メタノール混液(0.1/25/75)で希釈し、4℃、15,000×gで10分間遠心して不溶物を除去し、上清の化合物濃度をHPLCで測定した。HPLCの測定条件は下記の通りである。
HPLC条件
カラム:Acquity UPLC BEH C18,1.7μm,50x2.1mm
カラム温度:40℃
移動相:A:0.1% トリフルオロ酢酸含有水
B:アセトニトリル
A/B(min):95/5(0)→0/100(3.5)→0/100(4)→95/5(4.01)→95/5(5)
流速:0.8mL/min
検出:紫外可視検出器 測定波長 254nm
注入量:5μL
下式により内封率を算出した。
内封率(%)=(リポソーム液中の化合物濃度-未内封化合物濃度)×100/リポソーム液中の化合物濃度
【0455】
5週齢のBALB/c-nu/nuマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌性、日本チャールス・リバー)に卵巣がんES-2細胞(ATCC)にLuciferaseを発現させた細胞株を1×106cells/mouseとなるように右側卵巣内に移植した。移植5~14日後にIVIS Imaging System(PerkinElmer社)によりES-2細胞の生着を確認した後、溶液製剤を30mg/kg又はリポソーム製剤を4.5mg/kg、20mg/kgの用量で1週間に1回静脈投与した。投与開始から経時的にLuciferaseによる発光を測定し、化合物投与による腫瘍の縮小作用を評価する。Luciferaseによる発光から推測される腫瘍の大きさ、全身症状及び体重推移をもとにマウスを観察し、重篤な所見がなく健康状態を示したマウスについての生存期間を測定した。
【0456】
溶媒のみを投与した対照投与群と、本開示の化合物投与群の生存期間中央値を算出し、抗腫瘍効果を評価した。対照投与群には空リポソーム液を使用した。
【0457】
表22に、被験化合物の各投与量、投与期間における、ES-2を細胞移植した卵巣同所担がんマウス対する生存期間中央値を示す。
【表22】
【0458】
卵巣同所担がんマウスを用いた薬効評価試験において、リポソーム製剤化された実施例1は、20mg/kgの投与量において、リポソーム製剤化されたプレキサセルチブと同様に優れた抗腫瘍効果を示すことが明らかとなった。これらのリポソーム製剤は、20mg/kgの投与量を用いた評価試験において、溶液製剤化されたプレキサセルチブでは達成できない生存期間の延長を達成している。本試験結果より、実施例1は、優れた抗腫瘍効果を示す有望な化合物であり、格別な効果を有する。
【0459】
試験例14.各種がん細胞を細胞移植した担がんマウスを用いた薬効評価試験
実施例1を内封したリポソーム製剤を用いて、抗腫瘍作用を評価した。
【0460】
実施例1を内封したリポソーム製剤は、試験例12で用いたもの又は以下の方法で調製したものを用いた。
【0461】
Presome ACD-1(日本精化株式会社製)138.4gを秤取し、250mM硫酸アンモニウム溶液2437gを添加して、ホモジナイザー(CLEARMIX、M TECHNIQUE社製)で分散し、真空脱気により脱泡して粗リポソーム分散液を得た。さらに、粗リポソーム分散液を高圧ホモジナイザー(Microfluidizer M-110 EH-30、Microfluidics社製)で14500Psiの圧力で分散し、平均粒子径(Z-average)73nmのリポソームを得た。Pelliconカセット(Pellicon 2 Mini 300kD 0.1m2、メルク社製)を5枚装着したTangential Flow Filtrationシステムを用いて、リポソーム外水相を10mM L-ヒスチジン緩衝液/9.4%スクロース溶液(pH6.5)に置換し、0.2μmメンブランフィルターにてろ過することで、総脂質濃度58.2mg/mLの空リポソーム液を得た。実施例1の化合物3.0gを秤取し、10mM L-ヒスチジン緩衝液/9.4%スクロース溶液(pH6.5)562g及び上記空リポソーム液980gを加え、pH6.5となるように調整した。45℃で60分間加温した後冷却した。Pelliconカセット(Pellicon 2 Mini 300kD 0.1m2、メルク社製)を5枚装着したTangential Flow Filtrationシステムを用いて、リポソーム外水相を10mM L-ヒスチジン緩衝液/9.4%スクロース溶液(pH6.5)に置換し、0.2μmメンブランフィルターにてろ過した。この液をガラスバイアルに50mLずつ分注し、打栓、巻締めした。実施例1のリポソーム液中の化合物濃度は1.98mg/mL、内封率97%であった。
【0462】
リポソーム液中の化合物濃度及び内封率は次のようにして算出した。
未内封化合物濃度:リポソーム液100μL、4%リン酸水溶液100μL及び生理食塩水300μLを混合し、100,000×gで60分間遠心して不溶物を除去し、上清の化合物濃度をHPLCで測定した。
【0463】
リポソーム液中の化合物濃度:リポソーム液をトリフルオロ酢酸/水/メタノール混液(0.1/25/75)で希釈し、4℃、15,000×gで10分間遠心して不溶物を除去し、上清の化合物濃度をHPLCで測定した。
HPLCの測定条件は下記の通りである。
HPLC条件
カラム:Acquity UPLC BEH C18,1.7μm,50x2.1mm
カラム温度:40℃
移動相:A:0.1% トリフルオロ酢酸含有水
B:アセトニトリル
A/B(min):95/5(0)→60/40(3)→0/100(3.5)→0/100(4)→95/5(4.01)→95/5(5)
流速:0.8mL/min
検出:紫外可視検出器 測定波長 254nm
注入量:5μL
下式により内封率を算出した。
内封率(%)=(リポソーム液中の化合物濃度-未内封化合物濃度)×100/リポソーム液中の化合物濃度
又は
Presome ACD-1(日本精化株式会社製)11.08g及び250mM硫酸アンモニウム溶液200mLを混合し、ホモジナイザー(ULTRA-TURRAX、IKA社製)で分散して粗リポソーム分散液を得た。さらに、粗リポソーム分散液を高圧ホモジナイザー(Nano-Mizer NM2、吉田機械興業製)で100MPaの圧力で分散し、平均粒子径(Z-average)81nmのリポソームを得た。透析カセット(Slide-A-Lyzer G2 Dialysis Cassettes 20K MWCO、Thermo Scientific社製)を用いて、リポソーム外水相を10mM L-ヒスチジン緩衝液/9.4%スクロース溶液(pH6.5)に置換し、0.22μmメンブランフィルターにてろ過することで、総脂質濃度53.1mg/mLの空リポソーム液を得た。実施例1の化合物60mg、10mM L-ヒスチジン緩衝液/9.4%スクロース溶液(pH6.5)9.16mL、上記空リポソーム液20.8mLを加え、pH6.5に調整した。この液を50℃の水浴で30分間加温した後氷冷し、0.22μmメンブランフィルターにてろ過した。実施例1のリポソーム液中の化合物濃度は2.08mg/mL、内封率98%であった。
【0464】
リポソーム液中の化合物濃度及び内封率は次のようにして算出した。
未内封化合物濃度:リポソーム液100μL、4%リン酸水溶液100μL及び生理食塩水300μLを混合し、100,000×gで60分間遠心して不溶物を除去し、上清の化合物濃度をHPLCで測定した。
【0465】
リポソーム液中の化合物濃度:リポソーム液をトリフルオロ酢酸/水/メタノール混液(0.1/25/75)で希釈し、4℃、15,000×gで10分間遠心して不溶物を除去し、上清の化合物濃度をHPLCで測定した。
HPLCの測定条件は下記の通りである。
HPLC条件
カラム:Acquity UPLC BEH C18,1.7μm,50x2.1mm
カラム温度:40℃
移動相:A:0.1% トリフルオロ酢酸含有水
B:アセトニトリル
A/B(min):95/5(0)→0/100(3.5)→0/100(4)→95/5(4.01)→95/5(5)
流速:0.8mL/min
検出:紫外可視検出器 測定波長 254nm
注入量:5μL
下式により内封率を算出した。
内封率(%)=(リポソーム液中の化合物濃度-未内封化合物濃度)×100/リポソーム液中の化合物濃度。
【0466】
4~7週齢のBALB/c-nu/nuマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌性、日本チャールス・リバー)又はNODSCIDマウス(NOD.CB17-Prkdcscid/J、雌性、日本チャールス・リバー)に卵巣がんSKOV-3細胞(ATCC)又は肉腫SJCRH30細胞(ATCC)又は肉腫HT-1080細胞(ATCC)又は膵がんAsPC-1細胞(ATCC)又は膵がんBxPC-3細胞(ATCC)又は肺がんCalu-6細胞(ATCC)又は卵巣がんOV5304細胞(CrownBioscience社)を5×105cells/mouse又は1×106cells/mouse又は3×106cells/mouse又は5×106cells/mouse又は8mm3~27mm3腫瘍塊/mouseとなるように腹側部周辺に皮内移植した。移植5~27日後に各種がん細胞の生着を確認した後、リポソーム製剤を4.5mg/kg又は10mg/kg又は20mg/kgの用量で1週間に1回静脈投与をした。投与開始から経時的に腫瘍容積を測定し、化合物投与による腫瘍容積の縮小作用を評価する。腫瘍容積は電子ノギス(Mitutoyo)にて計測した腫瘍の短径、長径を用いて、次式にて算出した。なお、BxPC-3細胞は、ゲムシタビン耐性を示し、OV5304は、PARP阻害剤耐性を示すことが知られている。
【0467】
腫瘍容積[mm3] = 0.5×(短径[mm])2×長径[mm]
【0468】
溶媒のみを投与した対照投与群と、本開示の化合物投与群とを比較し、以下の式でT/Cを算出し、抗腫瘍効果を評価した。対照投与群には空リポソーム液を使用した。
【0469】
T/C(%)=(本開示の化合物投与群の投与終了時の腫瘍容積-本開示の化合物投与群の投与開始時の腫瘍容積)/(対照投与群の投与終了時の腫瘍容積-対照投与群の投与開始時の腫瘍容積)×100
【0470】
表23に、被験化合物の各投与量、投与期間における、各種がん細胞を細胞移植した担がんマウス対するT/C(%)を示す。
【表23】
【0471】
担がんマウスを用いた併用薬効評価試験において、リポソーム製剤化された実施例1は、種々のがん細胞株に対して、優れた抗腫瘍効果を示すことが明らかとなった。本試験結果より、実施例1は、優れた抗腫瘍効果を示す有望な化合物であり、格別な効果を有する。
【0472】
試験例14A.各種がん細胞を細胞移植した担がんマウスを用いた薬効評価試験
実施例1を内封したリポソーム製剤を用いて、抗腫瘍作用を評価した。
【0473】
実施例1を内封したリポソーム製剤は、以下の通り調製した。
Presome ACD-1(日本精化株式会社製)498.2gを秤取し、250mM硫酸アンモニウム溶液8772gを添加して、ホモジナイザー(CLEARMIX、M TECHNIQUE社製)で分散し、真空脱気により脱泡して粗リポソーム分散液を得た。さらに、粗リポソーム分散液を高圧ホモジナイザー(Microfluidizer M-110 EH-30、Microfluidics社製)で14500Psiの圧力で分散し、平均粒子径(Z-average)73nmのリポソームを得た。Pelliconカセット(Pellicon 2 Mini 300kD 0.1m2、メルク社製)を5枚装着したTangential Flow Filtrationシステムを用いて、リポソーム外水相を注射用水に置換したのち、10mM L-ヒスチジン/9.4%スクロース溶液となるようにL-ヒスチジン及びスクロースを添加し、1mol/L塩酸を用いてpH6.5に調整後、0.2μmメンブランフィルターにてろ過することで、総脂質濃度50.2mg/mLの空リポソーム液を得た。
【0474】
実施例1の化合物10.0gを秤取し、10mM L-ヒスチジン緩衝液/9.4%スクロース溶液(pH6.5)1354g、1mol/L塩酸27g、及び上記空リポソーム液3786gを加え、1mol/L塩酸でpH6.5となるように調整した。45℃で60分間加温した後冷却し、pH6.5となるように調整し、0.2μmメンブランフィルターにてろ過した。この液をガラスバイアルに50mLずつ分注し、打栓、巻締めした。リポソーム液中の実施例1の化合物濃度は2.01mg/mL、内封率は97.5%、平均粒子径(Z-average)は74nmであった。
【0475】
リポソーム液中の化合物濃度及び内封率は次のようにして算出した。
未内封化合物濃度:リポソーム液100μL、4%リン酸水溶液100μL及び生理食塩水300μLを混合し、100,000×gで60分間遠心して不溶物を除去し、上清の化合物濃度をHPLCで測定した。
【0476】
リポソーム液中の化合物濃度:リポソーム液をトリフルオロ酢酸/水/メタノール混液(0.1/25/75)で希釈し、4℃、15,000×gで10分間遠心して不溶物を除去し、上清の化合物濃度をHPLCで測定した。
HPLCの測定条件は下記の通りである。
HPLC条件
カラム:Acquity UPLC BEH C18,1.7μm,50x2.1mm
カラム温度:40℃
移動相:A:0.1% トリフルオロ酢酸含有水
B:アセトニトリル
A/B(min):95/5(0)→60/40(3)→0/100(3.5)→0/100(4)→95/5(4.01)→95/5(5)
流速:0.8mL/min
検出:紫外可視検出器 測定波長 254nm
注入量:5μL
下式により内封率を算出した。
内封率(%)=(リポソーム液中の化合物濃度-未内封化合物濃度)×100/リポソーム液中の化合物濃度
【0477】
4~7週齢のBALB/c-nu/nuマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌性、日本チャールス・リバー)にA2780細胞(ECACC)又はHCC1806細胞(ATCC)又はAn3CA細胞(ATCC)又はDetroit562細胞(ATCC)又はFaDu細胞(ATCC)又はNCI-H460細胞(ATCC)を1x106cells/mouse又は2x106cells/mouse又は1.2x106cells/mouse又は1x106cells/mouse又は3x106cells/mouse又は3x106cells/mouseとなるように腹側部周辺に皮内移植した。移植5~27日後に各種がん細胞の生着を確認した後、リポソーム製剤を20mg/kgの用量で1週間に1回静脈投与をした。投与開始から経時的に腫瘍容積を測定し、化合物投与による腫瘍容積の縮小作用を評価する。腫瘍容積は電子ノギス(Mitutoyo)にて計測した腫瘍の短径、長径を用いて、次式にて算出した。なお、BxPC-3細胞は、ゲムシタビン耐性を示し、OV5304は、PARP阻害剤耐性を示すことが知られている。
【0478】
腫瘍容積[mm3] = 0.5×(短径[mm])2×長径[mm]
【0479】
溶媒のみを投与した対照投与群と、本開示の化合物投与群とを比較し、以下の式でT/Cを算出し、抗腫瘍効果を評価した。対照投与群には空リポソーム液を使用した。
【0480】
T/C(%)=(本開示の化合物投与群の投与終了時の腫瘍容積-本開示の化合物投与群の投与開始時の腫瘍容積)/(対照投与群の投与終了時の腫瘍容積-対照投与群の投与開始時の腫瘍容積)×100
【0481】
表23Aに、被験化合物の各投与量、投与期間における、各種がん細胞を細胞移植した担がんマウス対するT/C(%)を示す。
【表23A】
【0482】
試験例15.PA-1を細胞移植した担がんマウスを用いた併用薬効評価試験 実施例1を内封したリポソーム製剤及びシスプラチンを用いて、抗腫瘍作用を評価した。
【0483】
シスプラチン(ランダ注50mg/100mL、日本化薬社)を使用した。
【0484】
実施例1を内封したリポソーム製剤は、以下の通り調製した。
【0485】
Presome ACD-1(日本精化株式会社製)138.4gを秤取し、250mM硫酸アンモニウム溶液2437gを添加して、ホモジナイザー(CLEARMIX、M TECHNIQUE社製)で分散し、真空脱気により脱泡して粗リポソーム分散液を得た。さらに、粗リポソーム分散液を高圧ホモジナイザー(Microfluidizer M-110 EH-30、Microfluidics社製)で14500Psiの圧力で分散し、平均粒子径(Z-average)73nmのリポソームを得た。Pelliconカセット(Pellicon 2 Mini 300kD 0.1m2、メルク社製)を5枚装着したTangential Flow Filtrationシステムを用いて、リポソーム外水相を10mM L-ヒスチジン緩衝液/9.4%スクロース溶液(pH6.5)に置換し、0.2μmメンブランフィルターにてろ過することで、総脂質濃度58.2mg/mLの空リポソーム液を得た。実施例1の化合物3.0gを秤取し、10mM L-ヒスチジン緩衝液/9.4%スクロース溶液(pH6.5)562g及び上記空リポソーム液980gを加え、pH6.5となるように調整した。45℃で60分間加温した後冷却した。Pelliconカセット(Pellicon 2 Mini 300kD 0.1m2、メルク社製)を5枚装着したTangential Flow Filtrationシステムを用いて、リポソーム外水相を10mM L-ヒスチジン緩衝液/9.4%スクロース溶液(pH6.5)に置換し、0.2μmメンブランフィルターにてろ過した。この液をガラスバイアルに50mLずつ分注し、打栓、巻締めした。実施例1のリポソーム液中の化合物濃度は1.98mg/mL、内封率97%であった。
【0486】
リポソーム液中の化合物濃度及び内封率は次のようにして算出した。
未内封化合物濃度:リポソーム液100μL、4%リン酸水溶液100μL及び生理食塩水300μLを混合し、100,000×gで60分間遠心して不溶物を除去し、上清の化合物濃度をHPLCで測定した。
【0487】
リポソーム液中の化合物濃度:リポソーム液をトリフルオロ酢酸/水/メタノール混液(0.1/25/75)で希釈し、4℃、15,000×gで10分間遠心して不溶物を除去し、上清の化合物濃度をHPLCで測定した。
HPLCの測定条件は下記の通りである。
HPLC条件
カラム:Acquity UPLC BEH C18,1.7μm,50x2.1mm
カラム温度:40℃
移動相:A:0.1% トリフルオロ酢酸含有水
B:アセトニトリル
A/B(min):95/5(0)→60/40(3)→0/100(3.5)→0/100(4)→95/5(4.01)→95/5(5)
流速:0.8mL/min
検出:紫外可視検出器 測定波長 254nm
注入量:5μL
下式により内封率を算出した。
内封率(%)=(リポソーム液中の化合物濃度-未内封化合物濃度)×100/リポソーム液中の化合物濃度
【0488】
4~7週齢のBALB/c-nu/nuマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌性、日本チャールス・リバー)に卵巣がんPA-1細胞(ATCC)を5×106cells/mouseとなるように腹側部周辺に皮内移植した。移植5~14日後にPA-1細胞の生着を確認した後、リポソーム製剤を20mg/kg又はシスプラチンを2.5mg/kg又はこれらの併用の用量で1週間に1回静脈投与、又は1週間に2回腹腔投与、又はこれらの併用投与をした。投与開始から経時的に腫瘍容積を測定し、化合物投与による腫瘍容積の縮小作用を評価する。腫瘍容積は電子ノギス(Mitutoyo)にて計測した腫瘍の短径、長径を用いて、次式にて算出した。
【0489】
腫瘍容積[mm3] = 0.5×(短径[mm])2×長径[mm]
【0490】
溶媒のみを投与した対照投与群と、本開示の化合物投与群とを比較し、以下の式でT/Cを算出し、抗腫瘍効果を評価した。また、リポソーム製剤又はシスプラチン又は併用投与による投与終了時の完全腫瘍退縮(CR)個体率を記載した。対照投与群には空リポソーム液を使用した。
【0491】
T/C(%)=(本開示の化合物投与群の投与終了時の腫瘍容積-本開示の化合物投与群の投与開始時の腫瘍容積)/(対照投与群の投与終了時の腫瘍容積-対照投与群の投与開始時の腫瘍容積)×100
【0492】
表24に、被験化合物の各投与量、投与期間における、PA-1を細胞移植した担がんマウス対するT/C(%)およびCR個体率を示す。
【表24】
【0493】
担がんマウスを用いた併用薬効評価試験において、リポソーム製剤化された実施例1は、シスプラチンとの併用において優れた抗腫瘍効果を示すことが明らかとなった。本試験結果より、実施例1は、優れた抗腫瘍効果を示す有望な化合物であり、格別な効果を有する。
【0494】
試験例16.ES-2を細胞移植した担がんマウスを用いた併用薬効評価試験
実施例1を内封したリポソーム製剤及びゲムシタビンを用いて、抗腫瘍作用を評価した。
【0495】
ゲムシタビン(ジェムザール注射用200mg、日本イーライリリー社)は、生理食塩水(大塚生食注、大塚製薬工場社)に溶解させたものを使用した。
【0496】
リポソーム製剤は、試験例6と同様の方法で調製した。被験化合物を秤取し、化合物濃度2mg/mLとなるように総脂質濃度50mMの空リポソーム液を加え、1mol/L塩酸を加えてpH6~7に調整した。又は、被験化合物に10mM L-ヒスチジン緩衝液/10%スクロース溶液(pH6.5)及び塩酸を加えて化合物を溶解又は分散し、化合物濃度2mg/mLとなるように総脂質濃度75mMの空リポソーム液を加え、pH6~7に調整した。この液を65℃の水浴で10~30分間加温した後氷冷した。5℃の冷蔵庫で一晩以上静置した後、0.22μmメンブランフィルターにてろ過した。試験例6に記載の方法により算出したリポソーム内封率は99%以上であった。
【0497】
4~7週齢のBALB/c-nu/nuマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌性、日本チャールス・リバー)に卵巣がんES-2細胞(ATCC)を1×106cells/mouseとなるように腹側部周辺に皮内移植した。移植5~14日後にES-2細胞の生着を確認した後、リポソーム製剤を4.5mg/kg又はゲムシタビンを30mg/kg又はこれらの併用の用量で1週間に1回静脈投与、又は1週間に2回腹腔投与、又はこれらの併用投与をした。投与開始から経時的に腫瘍容積を測定し、化合物投与による腫瘍容積の縮小作用を評価する。腫瘍容積は電子ノギス(Mitutoyo)にて計測した腫瘍の短径、長径を用いて、次式にて算出した。
【0498】
腫瘍容積[mm3] = 0.5×(短径[mm])2×長径[mm]
【0499】
溶媒のみを投与した対照投与群と、本開示の化合物投与群とを比較し、以下の式でT/Cを算出し、抗腫瘍効果を評価した。また、リポソーム製剤又はゲムシタビン又は併用投与による投与終了時の完全腫瘍退縮(CR)個体率を記載した。対照投与群は試験例6と同様の方法により調製した空リポソーム液を使用した。
【0500】
T/C(%)=(本開示の化合物投与群の投与終了時の腫瘍容積-本開示の化合物投与群の投与開始時の腫瘍容積)/(対照投与群の投与終了時の腫瘍容積-対照投与群の投与開始時の腫瘍容積)×100
【0501】
表25に、被験化合物の各投与量、投与期間における、ES-2を細胞移植した担がんマウス対するT/C(%)およびCR個体率を示す。
【表25】
【0502】
担がんマウスを用いた併用薬効評価試験において、リポソーム製剤化された実施例1は、ゲムシタビンとの併用において優れた抗腫瘍効果を示すことが明らかとなった。本試験結果より、実施例1は、優れた抗腫瘍効果を示す有望な化合物であり、格別な効果を有する。
【0503】
試験例17.ES-2を細胞移植した担がんマウスを用いた好中球数の測定
実施例1を内封したリポソーム製剤及びゲムシタビンを用いて、好中球数の測定を行った。
【0504】
ゲムシタビン(ジェムザール注射用200mg、日本イーライリリー社)は、生理食塩水(大塚生食注、大塚製薬工場社)に溶解させたものを使用した。
【0505】
リポソーム製剤は、試験例6と同様の方法で調製した。被験化合物を秤取し、化合物濃度2mg/mLとなるように総脂質濃度50mMの空リポソーム液を加え、1mol/L塩酸を加えてpH6~7に調整した。又は、被験化合物に10mM L-ヒスチジン緩衝液/10%スクロース溶液(pH6.5)及び塩酸を加えて化合物を溶解又は分散し、化合物濃度2mg/mLとなるように総脂質濃度75mMの空リポソーム液を加え、pH6~7に調整した。この液を65℃の水浴で10~30分間加温した後氷冷した。5℃の冷蔵庫で一晩以上静置した後、0.22μmメンブランフィルターにてろ過した。試験例6に記載の方法により算出したリポソーム内封率は99%以上であった。
【0506】
4~7週齢のBALB/c-nu/nuマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌性、日本チャールス・リバー)に卵巣がんES-2細胞(ATCC)を1×106cells/mouseとなるように腹側部周辺に皮内移植した。移植5~14日後にES-2細胞の生着を確認した後、リポソーム製剤を4.5mg/kg又はゲムシタビンを30mg/kg又はこれらの併用の用量で1週間に1回静脈投与、又は1週間に2回腹腔投与、又はこれらの併用投与をした。最終投与から96時間後に血液を採取し、好中球数の測定をおこなった。本試験の比較には試験例6と同様の方法により調製した空リポソーム液を使用した。
【0507】
空リポソーム液を投与した対照投与群とリポソーム製剤化された実施例1及びゲムシタビン及び併用をそれぞれ投与した投与群とを比較し、以下の式で好中球の残存率を算出し、それぞれの製剤についての安全性を評価した。
【0508】
好中球の残存率(%)=(投与群の投与96時間後の好中球数)/(対照投与群の投与96時間後の好中球数)×100
【0509】
表26に、ES-2を細胞移植した担がんマウス対する好中球の残存率を示す。
【0510】
【0511】
リポソーム製剤化された実施例1は、4.5mg/kgにおいて、好中球の残存率が87%であり、試験例17で示したように、抗腫瘍効果を示すとともに、血液毒性の副作用を示さない。さらに、リポソーム製剤化された実施例1は、試験例17で示したように、腫瘍退縮が観測されるゲムシタビンとの併用投与において、ゲムシタビンによる血液毒性の副作用を悪化させることなく、高い好中球の残存率を示している。以上より、リポソーム製剤化された実施例1は、高い安全性と有効性を併せ持つ優れた化合物であり格別な効果を有する。
【0512】
試験例18.ES-2を細胞移植した担がんマウスを用いた併用投与順序に関する薬効評価試験
実施例1を内封したリポソーム製剤及びゲムシタビンを用いて、抗腫瘍作用を評価した。
【0513】
ゲムシタビン(ジェムザール注射用200mg、日本イーライリリー社)は、生理食塩水(大塚生食注、大塚製薬工場社)に溶解させたものを使用した。
【0514】
実施例1を内封したリポソーム製剤は、以下の通り調製した。
Presome ACD-1(日本精化株式会社製)11.08g及び250mM硫酸アンモニウム溶液200mLを混合し、ホモジナイザー(ULTRA-TURRAX、IKA社製)で分散して粗リポソーム分散液を得た。さらに、粗リポソーム分散液を高圧ホモジナイザー(Nano-Mizer NM2、吉田機械興業製)で100MPaの圧力で分散し、平均粒子径(Z-average)81nmのリポソームを得た。透析カセット(Slide-A-Lyzer G2 Dialysis Cassettes 20K MWCO、Thermo Scientific社製)を用いて、リポソーム外水相を10mM L-ヒスチジン緩衝液/9.4%スクロース溶液(pH6.5)に置換し、0.22μmメンブランフィルターにてろ過することで、総脂質濃度53.1mg/mLの空リポソーム液を得た。実施例1の化合物60mg、10mM L-ヒスチジン緩衝液/9.4%スクロース溶液(pH6.5)9.16mL、上記空リポソーム液20.8mLを加え、pH6.5に調整した。この液を50℃の水浴で30分間加温した後氷冷し、0.22μmメンブランフィルターにてろ過した。実施例1のリポソーム液中の化合物濃度は2.08mg/mL、内封率98%であった。
【0515】
リポソーム液中の化合物濃度及び内封率は次のようにして算出した。
未内封化合物濃度:リポソーム液100μL、4%リン酸水溶液100μL及び生理食塩水300μLを混合し、100,000×gで60分間遠心して不溶物を除去し、上清の化合物濃度をHPLCで測定した。
【0516】
リポソーム液中の化合物濃度:リポソーム液をトリフルオロ酢酸/水/メタノール混液(0.1/25/75)で希釈し、4℃、15,000×gで10分間遠心して不溶物を除去し、上清の化合物濃度をHPLCで測定した。
HPLCの測定条件は下記の通りである。
HPLC条件
カラム:Acquity UPLC BEH C18,1.7μm,50x2.1mm
カラム温度:40℃
移動相:A:0.1% トリフルオロ酢酸含有水
B:アセトニトリル
A/B(min):95/5(0)→0/100(3.5)→0/100(4)→95/5(4.01)→95/5(5)
流速:0.8mL/min
検出:紫外可視検出器 測定波長 254nm
注入量:5μL
下式により内封率を算出した。
内封率(%)=(リポソーム液中の化合物濃度-未内封化合物濃度)×100/リポソーム液中の化合物濃度
【0517】
4~7週齢のBALB/c-nu/nuマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj、雌性、日本チャールス・リバー)に卵巣がんES-2細胞(ATCC)を1×106cells/mouseとなるように腹側部周辺に皮内移植した。移植5~14日後にES-2細胞の生着を確認した後、リポソーム製剤を4.5mg/kg及びゲムシタビンを30mg/kgの用量で単回静脈投与及び単回腹腔投与をした。投与開始から経時的に腫瘍容積を測定し、化合物投与による腫瘍容積の縮小作用を評価する。腫瘍容積は電子ノギス(Mitutoyo)にて計測した腫瘍の短径、長径を用いて、次式にて算出した。
【0518】
腫瘍容積[mm3] = 0.5×(短径[mm])2×長径[mm]
【0519】
溶媒のみを投与した対照投与群と、本開示の化合物投与群とを比較し、以下の式でT/Cを算出し、抗腫瘍効果を評価した。また、リポソーム製剤又はゲムシタビン又は併用投与による投与終了時の完全腫瘍退縮(CR)個体率を記載した。対照投与群には空リポソーム液を使用した。
【0520】
T/C(%)=(本開示の化合物投与群の投与終了時の腫瘍容積-本開示の化合物投与群の投与開始時の腫瘍容積)/(対照投与群の投与終了時の腫瘍容積-対照投与群の投与開始時の腫瘍容積)×100
【0521】
表27に、被験化合物の各投与量、投与期間における、ES-2を細胞移植した担がんマウス対するT/C(%)およびCR個体率を示す。
【表27】
【0522】
担がんマウスを用いた併用薬効評価試験において、リポソーム製剤化された実施例1は、ゲムシタビンとの併用において優れた抗腫瘍効果を示すことが明らかとなった。試験例18で示したように、リポソーム製剤化された実施例1及びゲムシタビンの併用による抗腫瘍効果は、ゲムシタビン投与の翌日に実施例1のリポソーム製剤投与をおこなう投与順序が最も効果が強く、次いで同時投与或いは実施例1のリポソーム製剤投与の翌日にゲムシタビン投与をおこなう投与順序が効果が強いことが示された。本試験結果より、実施例1は、優れた抗腫瘍効果を示す有望な化合物であり、格別な効果を有する。
【0523】
試験例19.MC38を細胞移植した担がんマウスを用いた併用薬効評価試験
実施例1を内封したリポソーム製剤及び抗PD-1抗体を用いて、抗腫瘍作用を評価した。
【0524】
抗PD-1抗体(114116、Biolegend社)は、PBS(Invitrogen社)で希釈したものを使用した。
【0525】
リポソーム製剤は、試験例6と同様の方法で調製した。被験化合物を秤取し、化合物濃度2mg/mLとなるように総脂質濃度50mMの空リポソーム液を加え、1mol/L塩酸を加えてpH6~7に調整した。又は、被験化合物に10mM L-ヒスチジン緩衝液/10%スクロース溶液(pH6.5)及び塩酸を加えて化合物を溶解又は分散し、化合物濃度2mg/mLとなるように総脂質濃度75mMの空リポソーム液を加え、pH6~7に調整した。この液を65℃の水浴で10~30分間加温した後氷冷した。5℃の冷蔵庫で一晩以上静置した後、0.22μmメンブランフィルターにてろ過した。試験例6に記載の方法により算出したリポソーム内封率は99%以上であった。
【0526】
4~7週齢のc57BL/6Jマウス(C57BL/6J、雌性、日本チャールス・リバー)にマウス大腸がんMC38細胞(Kerafast社)を5×105cells/mouseとなるように腹側部周辺に皮内移植した。移植5~14日後にMC38細胞の生着を確認した後、リポソーム製剤を10mg/kg又は抗PD-1抗体を200μg/head又はこれらの併用の用量で1週間に1回静脈投与、又は1週間に2回腹腔投与、又はこれらの併用投与をした。投与開始から経時的に腫瘍容積を測定し、化合物投与による腫瘍容積の縮小作用を評価する。腫瘍容積は電子ノギス(Mitutoyo)にて計測した腫瘍の短径、長径を用いて、次式にて算出した。
【0527】
腫瘍容積[mm3] = 0.5×(短径[mm])2×長径[mm]
【0528】
溶媒のみを投与した対照投与群と、本開示の化合物投与群とを比較し、以下の式でT/Cを算出し、抗腫瘍効果を評価した。また、リポソーム製剤又は抗PD-1抗体又は併用投与による投与終了時の完全腫瘍退縮(CR)個体率を記載した。対照投与群は試験例6と同様の方法により調製した空リポソーム液を使用した。
【0529】
T/C(%)=(本開示の化合物投与群の投与終了時の腫瘍容積-本開示の化合物投与群の投与開始時の腫瘍容積)/(対照投与群の投与終了時の腫瘍容積-対照投与群の投与開始時の腫瘍容積)×100
【0530】
表28に、被験化合物の各投与量、投与期間における、MC38を細胞移植した担がんマウス対するT/C(%)およびCR個体率を示す。
【表28】
【0531】
担がんマウスを用いた併用薬効評価試験において、リポソーム製剤化された実施例1は、リポソーム製剤化された実施例1及び抗PD-1抗体との併用において優れた抗腫瘍効果を示すことが明らかとなった。試験例19で示したように、MC38を細胞移植した担がんマウスは抗PD-1抗体が抗腫瘍効果を示すモデルである。本試験結果より、実施例1は、抗PD-1抗体が抗腫瘍効果を示すモデルに対して優れた抗腫瘍効果を示す有望な化合物であり、格別な効果を有する。
【0532】
試験例20.EMT6を細胞移植した担がんマウスを用いた併用薬効評価試験
実施例1を内封したリポソーム製剤及び抗PD-1抗体を用いて、抗腫瘍作用を評価した。
【0533】
抗PD-1抗体(114116、Biolegend社)は、PBS(Invitrogen社)で希釈したものを使用した。
【0534】
実施例1を内封したリポソーム製剤は、以下の通り調製した。
Presome ACD-1(日本精化株式会社製)11.08g及び250mM硫酸アンモニウム溶液200mLを混合し、ホモジナイザー(ULTRA-TURRAX、IKA社製)で分散して粗リポソーム分散液を得た。さらに、粗リポソーム分散液を高圧ホモジナイザー(Nano-Mizer NM2、吉田機械興業製)で100MPaの圧力で分散し、平均粒子径(Z-average)81nmのリポソームを得た。透析カセット(Slide-A-Lyzer G2 Dialysis Cassettes 20K MWCO、Thermo Scientific社製)を用いて、リポソーム外水相を10mM L-ヒスチジン緩衝液/9.4%スクロース溶液(pH6.5)に置換し、0.22μmメンブランフィルターにてろ過することで、総脂質濃度53.1mg/mLの空リポソーム液を得た。実施例1の化合物60mg、10mM L-ヒスチジン緩衝液/9.4%スクロース溶液(pH6.5)9.16mL、上記空リポソーム液20.8mLを加え、pH6.5に調整した。この液を50℃の水浴で30分間加温した後氷冷し、0.22μmメンブランフィルターにてろ過した。実施例1のリポソーム液中の化合物濃度は2.08mg/mL、内封率98%であった。
【0535】
リポソーム液中の化合物濃度及び内封率は次のようにして算出した。
未内封化合物濃度:リポソーム液100μL、4%リン酸水溶液100μL及び生理食塩水300μLを混合し、100,000×gで60分間遠心して不溶物を除去し、上清の化合物濃度をHPLCで測定した。
【0536】
リポソーム液中の化合物濃度:リポソーム液をトリフルオロ酢酸/水/メタノール混液(0.1/25/75)で希釈し、4℃、15,000×gで10分間遠心して不溶物を除去し、上清の化合物濃度をHPLCで測定した。
HPLCの測定条件は下記の通りである。
HPLC条件
カラム:Acquity UPLC BEH C18,1.7μm,50x2.1mm
カラム温度:40℃
移動相:A:0.1% トリフルオロ酢酸含有水
B:アセトニトリル
A/B(min):95/5(0)→0/100(3.5)→0/100(4)→95/5(4.01)→95/5(5)
流速:0.8mL/min
検出:紫外可視検出器 測定波長 254nm
注入量:5μL
下式により内封率を算出した。
内封率(%)=(リポソーム液中の化合物濃度-未内封化合物濃度)×100/リポソーム液中の化合物濃度
【0537】
4~7週齢のBALB/cマウス(BALB/cAnNCrlCrlj、雌性、日本チャールス・リバー)にマウス乳がんEMT6細胞(ATCC)を5×105cells/mouseとなるように腹側部周辺に皮内移植した。移植5~14日後にEMT6細胞の生着を確認した後、リポソーム製剤を10mg/kg又は抗PD-1抗体を200μg/head又はこれらの併用の用量で1週間に1回静脈投与、又は1週間に2回腹腔投与、又はこれらの併用投与をした。投与開始から経時的に腫瘍容積を測定し、化合物投与による腫瘍容積の縮小作用を評価する。腫瘍容積は電子ノギス(Mitutoyo)にて計測した腫瘍の短径、長径を用いて、次式にて算出した。
【0538】
腫瘍容積[mm3] = 0.5×(短径[mm])2×長径[mm]
【0539】
溶媒のみを投与した対照投与群と、本開示の化合物投与群とを比較し、以下の式でT/Cを算出し、抗腫瘍効果を評価した。また、リポソーム製剤又は抗PD-1抗体又は併用投与による投与終了時の完全腫瘍退縮(CR)個体率を記載した。対照投与群には空リポソーム液を使用した。
【0540】
T/C(%)=(本開示の化合物投与群の投与終了時の腫瘍容積-本開示の化合物投与群の投与開始時の腫瘍容積)/(対照投与群の投与終了時の腫瘍容積-対照投与群の投与開始時の腫瘍容積)×100
【0541】
表29に、被験化合物の各投与量、投与期間における、EMT6を細胞移植した担がんマウス対するT/C(%)およびCR個体率を示す。
【表29】
【0542】
担がんマウスを用いた併用薬効評価試験において、リポソーム製剤化された実施例1は、リポソーム製剤化された実施例1及び抗PD-1抗体との併用において優れた抗腫瘍効果を示すことが明らかとなった。試験例20で示したように、EMT6を細胞移植した担がんマウスは抗PD-1抗体が抗腫瘍効果を示さないモデルである。本試験結果より、実施例1は、抗PD-1抗体が抗腫瘍効果を示さないモデルに対してリポソーム製剤化された実施例1及び抗PD-1抗体との併用において優れた抗腫瘍効果を示す有望な化合物であり、格別な効果を有する。
【0543】
試験例21.EMT6を細胞移植した担がんマウスを用いた併用投与順序に関する薬効評価試験
実施例1を内封したリポソーム製剤及び抗PD-1抗体を用いて、抗腫瘍作用を評価した。
【0544】
抗PD-1抗体(114116、Biolegend社)は、PBS(Invitrogen社)で希釈したものを使用した。
【0545】
実施例1を内封したリポソーム製剤は、以下の通り調製した。
Presome ACD-1(日本精化株式会社製)498.2gを秤取し、250mM硫酸アンモニウム溶液8772gを添加して、ホモジナイザー(CLEARMIX、M TECHNIQUE社製)で分散し、真空脱気により脱泡して粗リポソーム分散液を得た。さらに、粗リポソーム分散液を高圧ホモジナイザー(Microfluidizer M-110 EH-30、Microfluidics社製)で14500Psiの圧力で分散し、平均粒子径(Z-average)73nmのリポソームを得た。Pelliconカセット(Pellicon 2 Mini 300kD 0.1m2、メルク社製)を5枚装着したTangential Flow Filtrationシステムを用いて、リポソーム外水相を注射用水に置換したのち、10mM L-ヒスチジン/9.4%スクロース溶液となるようにL-ヒスチジン及びスクロースを添加し、1mol/L塩酸を用いてpH6.5に調整後、0.2μmメンブランフィルターにてろ過することで、総脂質濃度50.2mg/mLの空リポソーム液を得た。
【0546】
実施例1の化合物10.0gを秤取し、10mM L-ヒスチジン緩衝液/9.4%スクロース溶液(pH6.5)1354g、1mol/L塩酸27g、及び上記空リポソーム液3786gを加え、1mol/L塩酸でpH6.5となるように調整した。45℃で60分間加温した後冷却し、pH6.5となるように調整し、0.2μmメンブランフィルターにてろ過した。この液をガラスバイアルに50mLずつ分注し、打栓、巻締めした。リポソーム液中の実施例1の化合物濃度は2.01mg/mL、内封率は97.5%、平均粒子径(Z-average)は74nmであった。
【0547】
リポソーム液中の化合物濃度及び内封率は次のようにして算出した。
未内封化合物濃度:リポソーム液100μL、4%リン酸水溶液100μL及び生理食塩水300μLを混合し、100,000×gで60分間遠心して不溶物を除去し、上清の化合物濃度をHPLCで測定した。
リポソーム液中の化合物濃度:リポソーム液をトリフルオロ酢酸/水/メタノール混液(0.1/25/75)で希釈し、4℃、15,000×gで10分間遠心して不溶物を除去し、上清の化合物濃度をHPLCで測定した。
HPLCの測定条件は下記の通りである。
HPLC条件
カラム:Acquity UPLC BEH C18,1.7μm,50x2.1mm
カラム温度:40℃
移動相:A:0.1% トリフルオロ酢酸含有水
B:アセトニトリル
A/B(min):95/5(0)→60/40(3)→0/100(3.5)→0/100(4)→95/5(4.01)→95/5(5)
流速:0.8mL/min
検出:紫外可視検出器 測定波長 254nm
注入量:5μL
下式により内封率を算出した。
内封率(%)=(リポソーム液中の化合物濃度-未内封化合物濃度)×100/リポソーム液中の化合物濃度
【0548】
5週齢のBALB/cマウス(BALB/cAnNCrlCrlj、雌性、日本チャールス・リバー)にマウス乳がんEMT6細胞(ATCC)を5×105cells/mouseとなるように腹側部周辺に皮内移植した。移植5日後にEMT6細胞の生着を確認した後、リポソーム製剤を6mg/kg及び抗PD-1抗体を200μg/headの用量で1週間に1回静脈投与及び1週間に1回腹腔投与した。投与開始から経時的に腫瘍容積を測定し、化合物投与による腫瘍容積の縮小作用を評価する。腫瘍容積は電子ノギス(Mitutoyo)にて計測した腫瘍の短径、長径を用いて、次式にて算出した。
【0549】
腫瘍容積[mm3] = 0.5×(短径[mm])2×長径[mm]
【0550】
溶媒のみを投与した対照投与群と、本開示の化合物投与群とを比較し、以下の式でT/Cを算出し、抗腫瘍効果を評価した。また、リポソーム製剤及び抗PD-1抗体による投与終了時の完全腫瘍退縮(CR)個体率を記載した。対照投与群には空リポソーム液を使用した。
【0551】
T/C(%)=(本開示の化合物投与群の投与終了時の腫瘍容積-本開示の化合物投与群の投与開始時の腫瘍容積)/(対照投与群の投与終了時の腫瘍容積-対照投与群の投与開始時の腫瘍容積)×100
【0552】
表30に、被験化合物の各投与量、投与期間における、EMT6を細胞移植した担がんマウス対するT/C(%)およびCR個体率を示す。
【表30】
【0553】
担がんマウスを用いた併用薬効評価試験において、リポソーム製剤化された実施例1は、抗PD-1抗体との併用において優れた抗腫瘍効果を示すことが明らかとなった。試験例21で示したように、リポソーム製剤化された実施例1及び抗PD-1抗体の併用による抗腫瘍効果は、同時投与が最も強く、次いで実施例1のリポソーム製剤投与の後に抗PD-1抗体投与をおこなう併用順序が強いことが示された。本試験結果より、実施例1は、優れた抗腫瘍効果を示す有望な化合物であり、格別な効果を有する。
【0554】
試験例22.キナーゼ選択性試験
HotSpot Full Panel Kinase profiling(Reaction Biology社)により、プレキサセルチブ、実施例1及び実施例3の370の野生型キナーゼに対する選択性を評価した。
【0555】
緩衝液:20mM HEPES,pH7.5,10mM MgCl2,2mM MnCl2(必要に応じて),1mM EGTA,0.02% Brij35,0.02mg/mL BSA,0.1mM Na3VO4,2mM DTT,1% DMSO
ATP濃度:10μM
反応時間:2時間
2時間でのATP変換率:5~20%
化合物濃度:100nM
【0556】
表31~表33に、プレキサセルチブ、実施例1及び実施例3について、370の野生型キナーゼのうち、100nMにおいて残存活性が25%未満であったキナーゼについて、キナーゼの名称と100nMにおける残存活性(%)を示す。
【表31】
【表32】
【表33】
【0557】
上表に表すように、実施例1及び3の化合物は、プレキサセルチブよりも高いCHK1選択性を示した。中でも、実施例1は、特に選択的にCHK1活性を阻害する格別な効果を有することから、非選択的なキナーゼ阻害による毒性の発現を回避しつつ、CHK1阻害による優れた抗腫瘍効果を示した。
【0558】
試験例23.CHK1/CHK2選択性試験
被験物質はdimethylsulfoxide(DMSO)に溶解し、さらにDMSOにて希釈して試験濃度の100倍濃度の溶液を調製した。その溶液をさらにアッセイバッファーにて25倍希釈して被験物質溶液とした。陽性対照物質もこれと同様にして陽性対照物質溶液を調製した。4倍濃度被験物質溶液をアッセイバッファー(20mM HEPES,0.01% Triton X-100,1mM DTT,pH7.5)にて調製した。4倍濃度基質/ATP/金属溶液をキットバッファー(20mM HEPES,0.01% Triton X-100,5mM DTT,pH7.5)にて調製した。2倍濃度キナーゼ溶液をアッセイバッファーにて調製した。5μLの4倍濃度被験物質溶液、5μLの4倍濃度基質/ATP/金属溶液および10μLの2倍濃度キナーゼ溶液をポリプロピレン製384ウェルプレートのウェル内で混合し、室温にて1時間反応させた。70μLのTermination Buffer(QuickScout Screening Assist MSA;Carna Biosciences)を添加して反応を停止させた。反応溶液中の基質ペプチドとリン酸化ペプチドをLabChipTM system(Perkin Elmer)にて分離、定量した。キナーゼ反応は基質ペプチドピーク高さ(S)とリン酸化ペプチドピーク高さ(P)から計算される生成物比(P/(P+S))にて評価した。全ての反応コンポーネントを含むコントロールウェルの平均シグナルを0% Inhibition、バックグランドウェル(酵素非添加)の平均シグナルを100% Inhibitionとし、各被験物質試験ウェルの平均シグナルから阻害率を計算した。IC50値は被験物質濃度と阻害率によるプロットを非線形最小二乗法により4パラメータのロジスティック曲線に近似させて求めた。
【0559】
表34に、プレキサセルチブ及び実施例1について、CHK1及びCHK2に対するIC
50値を示す。
【表34】
【0560】
上表に表すように、実施例1の化合物は、プレキサセルチブと比較して高いCHK1選択性を示した。このことから、実施例1はCHK2阻害による毒性の発現を回避しつつ、CHK1阻害による優れた抗腫瘍効果を示した。
【0561】
試験例1~13の結果から、本願発明の化合物は、高いCHK1阻害活性を示し(試験例1)、高いがん細胞増殖抑制効果を示した(試験例2)。さらに、本願発明化合物は、心毒性やのリスクが低い特徴を有するとともに(試験例3)、リポソームに効率よく内封される特徴を有する(試験例6、6A、6B)。
【0562】
本発明者らは、プレキサセルチブが肝毒性の懸念を有する課題を新たに見出し、特に式(3)で表される化合物(特定の位置に窒素原子を有するピリジン誘導体)は、当該課題を克服し、高い安全性を有していることを見出した(試験例4)。加えて、特に式(3)で表される化合物は、優れた薬物動態を有する(試験例7)。
【0563】
式(3)に含まれる代表化合物である実施例1の化合物は、プレキサセルチブに比べて、5倍以上高いCHK1阻害活性を有し(試験例1)、強力な細胞増殖抑制効果を示す格別な効果を有する(試験例2)。加えて、実施例1の化合物は、プレキサセルチブと比較し、極めて心毒性が低く(試験例3)。プレキサセルチブの新たな課題である肝毒性の懸念を示さず(試験例4)、血液毒性のリスクがプレキサセルチブと比較し、大幅に軽減されている異質な効果を有することを見出した(試験例5、及び試験例10)。さらに、実施例1の化合物は、良好な薬物動態を示し(試験例7)、リポソームに効率よく封入され、良好なリポソーム封入操作性を示す(試験例6、6A、6B)。
【0564】
さらに、リポソーム製剤化された実施例1の化合物は、in vitro及びin vivoにおいて優れた抗腫瘍効果を示す格別な効果を有するとともに、同時に高い安全性を有する異質な効果を有する(試験例8、試験例9、試験例11~試験例14)。既存の抗がん剤と、実施例1の化合物を併用することにより極めて優れた抗腫瘍効果と高い安全性を併せ持つ特徴を有する(試験例15~試験例21)。また、実施例1の化合物は、プレキサセルチブに比べて、選択的にCHK1を阻害する格別な効果を有することから、非選択的なキナーゼ阻害による毒性の発現を回避しつつ、CHK1阻害による優れた抗腫瘍効果を示す(試験例22~試験例23)。
【0565】
以上より、実施例1の化合物は、プレキサセルチブと比較し、高い有効性を有する格別な効果を有するとともに、同時に高い安全性を示す異質な効果を併せ持つため、予測できない効果を有する。さらに、実施例1のリポソーム製剤は、優れた血中滞留性、抗腫瘍効果、高い安全性を併せ持つ優れた薬剤であり、予期せぬ効果を有する。
【0566】
本開示は、CHK1阻害剤に関するものであり、副作用を低減しつつ治療効果の高い抗腫瘍剤に関するものである。本発明者らは鋭意検討を行った結果、式(1)で示される化合物が、CHK1に対して強い阻害作用を有し、優れた抗腫瘍作用を見出した。なかでも、式(3)で表される特定の位置に窒素原子を有するピリジン環を有する一連の化合物が、格別かつ異質な効果を示すことを確認し、本願発明を完成させた。
【0567】
具体的には、本発明者らは、実施例1~38に係る化合物を創製し、一連の化合物が極めて高いCHK1阻害活性を示し(試験例1)、高いがん細胞毒性を示すとともに(試験例2)。hERG阻害が弱いことから高い安全性を併せ持つ異質な効果を有する(試験例3)。さらに、本願発明者らはプレキサセルチブが肝毒性の懸念を有する課題を見出し、本願発明化合物は当該課題を克服する異質な効果を見出した(試験例4)。なかでも、実施例1等に代表される「特定の置換位置に窒素原子が存在するピリジン環を有する式(3)で示される化合物」は、極めて格別かつ異質な効果を有していた。
【0568】
式(3)で代表される実施例1等の化合物は、プレキサセルチブとは異なりヒト骨髄細胞コロニー形成を抑制せず血液毒性について高い安全性を示し(試験例5)、リポソーム内封効率が極めて高く、良好なリポソーム封入操作性を示し(試験例6、6A、6B)、リポソーム製剤化により高い血中滞留性を示した(試験例7)。当該リポソーム製剤は、担がんモデルにてプレキサセルチブでは達成できない腫瘍退縮効果を有するにも関わらず(試験例8)、極めて高い安全性を有する(試験例9、10)。実施例1は、そのもので優れた薬物動態的及び薬力学的プロファイルを有し(試験例11)、そのリポソーム製剤は、プレキサセルチブでは達成できない生存期間の延長効果を示し(試験例12、13)、各種がんに対して幅広く有効性を示した(試験例14及び14A)。リポソーム製剤化された実施例1と各種抗がん剤(シスプラチン、ゲムシタビンまたはPD-1抗体)とを併用したところ格別な効果を示した(試験例15-21)。また、実施例1の化合物は、プレキサセルチブに比べて、選択的にCHK1活性を抑制する格別な効果を有することから、非選択的なキナーゼ阻害による毒性の発現を回避しつつ、CHK1阻害による優れた抗腫瘍効果を示す(試験例22~23)。
【0569】
以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、本開示は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本願は、日本国出願である特願2022-87171(2022年5月27日出願)に対して優先権を主張するものであり、その内容はその全体が本明細書において参考として援用される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0570】
本開示の化合物は、Checkpoint Kinase 1(CHK1)を強力に阻害する。これらのリポソーム製剤は、その徐放性効果により、持続的な薬物曝露を達成することで、CHK1の阻害作用に基づく強力な抗腫瘍効果を示す。したがって、本開示の化合物及びその製薬学的に許容される塩、これらを含有する医薬組成物、並びにこれらを含有するリポソーム製剤は、CHK1が関与する病態の治療剤若しくは予防剤として有用である。