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特許7546105マイクロニードルパッチ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】マイクロニードルパッチ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
A61M37/00 530
A61M37/00 505
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023092124
(22)【出願日】2023-06-05
【審査請求日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】112114729
(32)【優先日】2023-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】517313512
【氏名又は名称】達運精密工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】DARWIN PRECISIONS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】No.20-1, Guangfu N. Rd., Hukou Township, Hsinchu County, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ユン-ペイ
(72)【発明者】
【氏名】リン,ジェン-シュン
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-181893(JP,A)
【文献】特開2008-079919(JP,A)
【文献】特開2009-061144(JP,A)
【文献】特開2016-067618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロニードルパッチの製造方法であって、
載置台と前記載置台上に相互に間隔を空けて配置された複数のマイクロニードル構造を有する雄型を提供し、
ポリマー材料を前記雄型に分配して雌型を形成し、
生体適合性材料を前記雌型に分配して、複数のマイクロニードルが相互に間隔を空けて配置されたマイクロニードル構造層を形成し、
少なくとも1つの離型フィルムと少なくとも1つのキャリア層を、前記マイクロニードル構造層の複数のマイクロニードルが配置された面とは反対側の面に配置し、前記少なくとも1つの離型フィルムは複数の中空領域を備え、且つ各中空領域は特定の形状を有しており、前記少なくとも1つのキャリア層は、前記少なくとも1つの離型フィルム上に配置され、且つ前記複数の中空領域を覆い隠し、
前記マイクロニードル構造層と前記雌型を分離し、
各中空領域の形状に従って、前記マイクロニードル構造層を切り取ることを特徴とするマイクロニードルパッチの製造方法。
【請求項2】
前記雌型を形成する工程には、相互に間隔を空けて配置され、且つ前記マイクロニードル構造の形状に対応する複数の錐穴を形成することが更に含まれることを特徴とする請求項1に記載されたマイクロニードルパッチの製造方法
【請求項3】
前記マイクロニードル構造層を形成する工程には、第1の面及び前記第1の面に対向する第2の面を有する下地層と、前記第2の面に相互に間隔を空けて配置される複数の第1のマイクロニードルを形成することが更に含まれることを特徴とする請求項1に記載されたマイクロニードルパッチの製造方法
【請求項4】
前記少なくとも1つの離型フィルムと前記少なくとも1つのキャリア層を配置する工程には、前記下地層の前記第1の面に前記少なくとも1つの離型フィルムと前記少なくとも1つのキャリア層とを配置し、前記少なくとも1つのキャリア層と前記マイクロニードル構造層との間に接着剤層を配置して、前記少なくとも1つのキャリア層と前記マイクロニードル構造層とを接続することが更に含まれることを特徴とする請求項に記載されたマイクロニードルパッチの製造方法
【請求項5】
前記マイクロニードル構造層を切り取る工程には、前記少なくとも1つのマイクロニードルに切断工具を貫通させ、また、前記少なくとも1つのマイクロニードルを変形させて少なくとも1つの第2のマイクロニードルを形成することが更に含まれることを特徴とする請求項に記載されたマイクロニードルパッチの製造方法
【請求項6】
前記雄型は前記載置台上に単一領域を更に有し、前記複数のマイクロニードル構造は前記単一領域に配置され、前記マイクロニードルパッチの製造方法には、複数のマイクロニードルパッチを形成し、且つマイクロニードルパッチの数は中空領域の数と同じであることが更に含まれることを特徴とする請求項1に記載されたマイクロニードルパッチの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は経皮薬物送達の分野に関しであり、特にマイクロニードルパッチに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロニードルパッチ(microneedle patch,MNP)は、パッチと皮下注射の利点を組み合わせた新しい経皮薬物送達システム(transdermal drug delivery system, TDDS)である。パッチ上のマイクロニードルは非常に短く、神経に触れず、皮下注射の痛みがないだけでなく、高分子薬物を皮膚の角質層を通って容易に体内に送り込むことができる。MNP技術は、1998年に導入されて以来、美容、医薬品、ワクチン及び測定システムの分野において、既に目覚ましい発展を遂げてきており、現在は美容製品が発売され、他の3つの分野の製品の研究開発も徐々に商業化の段階に入ってきている。
【0003】
MNPの製造においては、通常、製品の設計に基づいて異なる金型を用意するため、一定のコストが必要である。また、周知の金型で作製された雌型は、その材料の特性により、製造プロセス中に金型と離型フィルムとの間の位置合わせにずれを発生させ、不良品が生じる。不良品の中には、パッチ上のマイクロニードル領域が正しい位置からずれているものがあり、これは使用者の体験やマイクロニードル投与に影響を与えてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れたマイクロニードル領域の位置精度を有するマイクロニードルパッチを提供するものである。
【0005】
本発明は、マイクロニードルパッチの生産歩留まりを改善し、マイクロニードル領域の位置が設計に合致することを保証し得る、マイクロニードルパッチの製造方法を提供するものである。
【0006】
本発明は、マイクロニードルパッチの生産歩留まりとマイクロニードル領域の位置精度を改善するために用いることが可能な金型を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が提供するマイクロニードルパッチは、マイクロニードル構造層、接着剤層及びキャリア層を含む。接着剤層は、マイクロニードル構造層とキャリア層との間に配置され、且つマイクロニードル構造層とキャリア層を接続する。マイクロニードル構造層は、第1の面と第1の面に対向する第2の面とを有し、且つ第1の面が接着剤層に向けられている下地層と複数のマイクロニードルとを含む。複数のマイクロニードルは、第2の面に相互に間隔を空けて配置され、複数の第1のマイクロニードルと、少なくとも1つの第2のマイクロニードルとを含む。少なくとも1つの第2のマイクロニードルは、マイクロニードル構造層の辺縁に位置し、且つ少なくとも1つの第2のマイクロニードルの高さは、それぞれの第1のマイクロニードルの高さよりも小さい。
【0008】
本発明が提供するマイクロニードルパッチの製造方法は、以下の工程を含む。雄型を提供し、提供された雄型は載置台と複数のマイクロニードル構造とを有し、また、複数のマイクロニードル構造は載置台上に相互に間隔を空けて配置され、ポリマー材料を雄型に分配して雌型を形成し、生体適合性材料を雌型に分配して、複数のマイクロニードルが相互に間隔を空けて配置されたマイクロニードル構造層を形成し、少なくとも1つの離型フィルムと少なくとも1つのキャリア層を、マイクロニードル構造層の複数のマイクロニードルが配置された面とは反対側の面に配置し、前記少なくとも1つの離型フィルムは複数の中空領域を備え、且つ各中空領域は特定の形状を有しており、また、少なくとも1つのキャリア層は、少なくとも1つの離型フィルム上に配置され、且つ複数の中空領域を覆い隠し、マイクロニードル構造層と雌型を分離して、各中空領域の形状に従ってマイクロニードル構造層を切り取る。
【0009】
本発明が提供する金型は、マイクロニードルパッチの製造に用いられるものであり、単一領域を有する載置台と分布密度により単一領域に配置される複数のマイクロニードル構造とを含む。
【0010】
本発明は、金型を採用し、金型の複数のマイクロニードル構造が載置台の単一領域に配置されているため、製造プロセス中に発生する金型と雌型との間の位置合わせの誤差を回避でき、マイクロニードルパッチの生産歩留まりを改善し、マイクロニードル領域の位置が設計に合致することを保証するための一助となる。本発明のマイクロニードル領域は、優れた位置精度を有しているため、使用者の体験を向上させ、正しい部位でマイクロニードル投与を行うことを保証するための一助となる。
【0011】
本発明の上記及びその他の目的、特徴及び利点をより明確かつ理解しやすくするために、以下では実施例を挙げ、添付図面に合わせて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施例におけるマイクロニードルパッチの断面図である。
図2】本発明の第2の実施例におけるマイクロニードルパッチの断面図である。
図3】本発明の第3の実施例におけるマイクロニードルパッチの断面図である。
図4】本発明の第4の実施例におけるマイクロニードルパッチの断面図である。
図5】本発明の一実施例におけるマイクロニードルパッチの製造方法の概略的なフローチャートである。
図6A】本発明の第1の実施例におけるマイクロニードルパッチの製造方法の実施図である。
図6B】本発明の第1の実施例におけるマイクロニードルパッチの製造方法の実施図である。
図6C】本発明の第1の実施例におけるマイクロニードルパッチの製造方法の実施図である。
図7】本発明の一実施例における離型フィルムとマイクロニードル構造層との位置関係の俯瞰図である。
図8】本発明の別の実施例における離型フィルムとマイクロニードル構造層との位置関係の俯瞰図である。
図9A】本発明の実施例におけるマイクロニードルの顕微鏡写真図である。
図9B】本発明の実施例におけるマイクロニードルの顕微鏡写真図である。
図9C】本発明の実施例におけるマイクロニードルの顕微鏡写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に関する前述した内容及び他の技術的内容、特徴と効果については、以下のいずれかの参照図面に関連する好ましい実施例の詳細な説明に従って、明確に示すことができる。以下の実施例で言及されている方向用語は、添付図面の方向を参照するためのものに過ぎない。従って、用いられる方向用語は、本発明を説明するためのものであり、限定するためのものではない。このほか、本明細書または特許請求の範囲で言及される「第1」、「第2」などの用語は、部材(element)の名前を命名したり、異なる実施例または範囲を区別したりするためにのみ用いられ、部材数の上限または下限を限定するために用いるわけではない。
【0014】
図1は、本発明の一実施例におけるマイクロニードルパッチの断面図である。図1に示すように、マイクロニードルパッチ10は、マイクロニードル構造層100、接着剤層300及びキャリア層500を含む。接着剤層300は、マイクロニードル構造層100とキャリア層500との間に配置され、且つマイクロニードル構造層100とキャリア層500を接続する。マイクロニードル構造層100は、第1の面111と第1の面111に対向する第2の面112を有する下地層110及び複数のマイクロニードル130を含む。第1の面111は接着剤層300に向けられており、第2の面112には複数のマイクロニードル130が配置されている。複数のマイクロニードル130は相互に間隔を空けて、第2の面112に適切な分布密度で配置されている。本発明のいくつかの実施例において、複数のマイクロニードル130は第2の面112に均等に分布しており、隣接するマイクロニードル130のピッチはほぼ等しい。隣接するマイクロニードル130のピッチは、例えば0.5~5mmの間である。
【0015】
キャリア層500の材料は、例えば織布、不織布或いはニットの合成または天然の織物、合成または天然の重合体などである。キャリア層500は、好ましい順応性と可撓性を有しており、生体表面に均一に付着するための一助となる。例えば、キャリア層500は、フィルムまたは布である。キャリア層500の材料は、防水、通気性、抗菌、防臭、美しさ、手触りなどのいくつかの機能的な要求に基づいて選択することができ、このほか市場に出回っている包帯、テープ、湿布薬などの医療消耗品を参考にすることもできる。
【0016】
特に好ましくは、マイクロニードル構造層100の複数のマイクロニードル130は下地層110と一体成形され、且つ本発明の好ましい実施例において、マイクロニードル構造層100の材料は生体適合性材料及び/または生分解性材料である。更に、マイクロニードル構造層100の材料は、溶解性及び膨潤性を有する高分子材料が好ましく、例えば以下のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。マルトース、スクロース、トレハロース、乳糖、デキストリン、マルトデキストリン、β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、デキストラン、アミロペクチン、ヒアルロン酸ナトリウム、メチルビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ラクチドcoグリコリド)、キトサン、及びそれらの組成物である。このほか、マイクロニードル構造層100には、皮膚から経皮的に(transdermal)吸収可能な薬物などの薬理活性を有する分子が含まれる。
【0017】
本発明の実施例において、マイクロニードル130は、第1のマイクロニードル131と、マイクロニードル構造層100の辺縁に位置する少なくとも1つの第2のマイクロニードル132とを更に含む。複数の第1のマイクロニードル131は、円錐形、三角錐、四角錐など形状が同じであり、相互間の高さが150~1000μmなどほぼ同じである。第2のマイクロニードル132の形状は、複数の第1のマイクロニードル131の形状と異なり、その高さh2は、通常、第1のマイクロニードル131の高さh1よりも小さく、第1のマイクロニードル131の変形構造である。本発明の実施例において、第2のマイクロニードル132は、第1のマイクロニードル131から切り取る工程によって形成される(後述)。図2に示すように、本発明の実施例は、複数の異なる形状の第2のマイクロニードル132を更に含む。
【0018】
図1図2に示すように、マイクロニードルパッチ10は、離型フィルム600を更に含む。離型フィルム600は、キャリア層500の周縁に位置し、少なくとも一部がキャリア層500の周縁に沿ってキャリア層500上に配置される。図1または図2に示される実施例では、離型フィルム600は、全部がキャリア層500の周縁に沿ってキャリア層500上に配置されるものと見なすことができるが、他の実施例では、離型フィルム600は一部がキャリア層500の外側に突出している。
【0019】
離型フィルム600は、接着剤層300により、キャリア層500と接続する。いくつかの実施例において、マイクロニードル構造層100とキャリア層500の形状は似ており、両方が円形であるが、本発明はこれに限定されない。例えば、キャリア層500が長方形、マイクロニードル構造層100が楕円形であったり、キャリア層500が正方形、マイクロニードル構造層100が円形であったりである。本発明の好ましい実施例では、図1図2に示すように、キャリア層500はマイクロニードル構造層100よりも大きく、離型フィルム600はマイクロニードル構造層100を取り囲んでいる。しかし他の実施例では、図3図4に示すように、キャリア層500とマイクロニードル構造層100の大きさがほぼ同じである。
【0020】
本発明は、図5に示すように、ステップS910~S960を含むマイクロニードルパッチの製造方法を提供するものである。ステップS910は、雄型を提供し、提供された雄型は載置台と複数のマイクロニードル構造とを有し、また、複数のマイクロニードル構造が載置台上に相互に間隔を空けて配置されることを含む。ステップS920は、ポリマー材料を雄型に分配して雌型を形成することを含む。ステップS930は、生体適合性材料を雌型に分配して、複数のマイクロニードルが、相互に間隔を空けて配置されるマイクロニードル構造層を形成することを含む。ステップS940は、少なくとも1つの離型フィルムと少なくとも1つのキャリア層を、マイクロニードル構造層の複数のマイクロニードルが配置された面とは反対側の面に配置し、前記少なくとも1つの離型フィルムは複数の中空領域を備え、且つ各中空領域は特定の形状を有しており、また、少なくとも1つのキャリア層は、少なくとも1つの離型フィルム上に配置され、且つ複数の中空領域を覆い隠すことを含む。ステップS950は、マイクロニードル構造層と雌型とを分離することを含む。ステップS960は、各中空領域の形状に従ってマイクロニードル構造層を切り取ることを含む。図6A~6Cは、ステップS910~S960の実施例である。
【0021】
ステップS910の雄型70は金型である。本発明の実施例では、雄型70の材料は限定されていないが、例えばチタン、銅、アルミ、ニッケル、タングステン、ステンレス鋼、チタン合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、銅合金などが挙げられる。本発明の好ましい実施例において、図6Aに示すように、雄型70は、載置台710上に単一領域7100を更に有する。複数のマイクロニードル構造720は、相互に間隔を空けて、単一領域7100に適切な分布密度で配置されている。本発明のいくつかの実施例では、複数のマイクロニードル構造720は、単一領域7100に均等に分布しており、隣接するマイクロニードル構造720のピッチはほぼ等しい。隣接するマイクロニードル構造720のピッチは、0.5~5mmの間である。複数のマイクロニードル構造720は、円錐形、三角錐、四角錐など形状が同じであり、相互の高さが150~1000μmなどほぼ同じである。
【0022】
ステップS920のポリマー材料800'は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリジメチルシロキサンなどである。図6Aに示すように、ステップS920は、ポリマー材料800'が単一領域71000とその上の複数のマイクロニードル構造720に分配され、雌型800に複数のテーパ穴820を形成させることを更に含む。テーパ穴8210の形状は、マイクロニードル構造7820の形状に対応している。本発明の好ましい実施例では、雌型800には更に底面領域810があり、これは雄型70の単一領域7100に対応している。複数のテーパ穴820は、相互に間隔を空けて、適切な分布密度で底面領域810に配置されている。
【0023】
ステップS930の生体適合性材料20は前述の通りである。本発明のいくつかの実施例において、ステップS930は、生体適合性材料20に皮膚から経皮的に吸収可能な薬物などの薬理活性を有する成分を添加し、マイクロニードル構造層100'に薬理活性を付与することを更に含む。図6Bに示すように、ステップS930は、生体適合性材料20を雌型800とその底面領域810に分配し、底面領域810内に複数のテーパ穴820を形成して、マイクロニードル構造層100'に下地層110と複数のマイクロニードル130を付与することを更に含む。ステップS930は、更に、下地層110に第1の面111と第1の面111に対向する第2の面112を付与する。第2の面112は、生体適合性材料20が底面領域810に分配されて形成される。複数のマイクロニードル130は、相互に間隔を空けて、第2の面112に適切な分布密度で配置される。マイクロニードル130は、皮膚から経皮的に薬物を生体内に送達するために用いられる。本発明のいくつかの実施例では、マイクロニードル130には薬物が含まれる。マイクロニードル130が皮膚の角質層を貫通した後、マイクロニードル130の高分子材料が皮内で膨潤または溶解し、薬物が徐々に放出されて体の血管内に拡散して、効果が得られる。
【0024】
ステップS930は、生体適合性材料20を乾燥させて、マイクロニードル構造層100'を形成することを更に含む。図6B~6Cに示すように、ステップS940は、少なくとも1つの離型フィルム600と少なくとも1つのキャリア層500を、下地層110の第1の面111に配置することを更に含む。少なくとも1つの離型フィルム600と少なくとも1つのキャリア層500は、第1の面111に順番に配置し、または先に組み合わせてから一緒に第1の面111に配置する。ステップS940は、少なくとも1つのキャリア層500とマイクロニードル構造層100'の間に接着剤層300を配置し、少なくとも1つのキャリア層500とマイクロニードル構造層100'を接続することを更に含む。本発明のいくつかの実施例では、先にキャリア層500上に接着剤層300を配置し、離型フィルム600と組み合わせてから、キャリア層500、接着剤層300、離型フィルム600を含む組み合わせを第1の面111に配置し、更に接着剤層300をマイクロニードル構造層100'に接着させる。
【0025】
本発明の一実施例では、図7に示されているように、ステップS940で用いられる離型フィルム600の数は1であり、一方、キャリア層500は複数である。図7は、離型フィルム600とマイクロニードル構造層100との位置関係を示している。図7に示されているように、離型フィルム600は、複数の中空領域6000を備え、各中空領域6000には特定の形状がある。例えば、図7に示されているように、中空領域6000は円形である。しかし他の実施例では、図8に示されているように、中空領域6000は耳のような形状をしている。このほか、複数の中空領域6000の形状は異なっている。中空領域6000の特定の形状は、製造されたマイクロニードルパッチ10のマイクロニードル130の配置形状(以下、マイクロニードル領域とも称する)を反映している。このほか、中空領域6000の数は、ステップS940~S960で一度に製造できるマイクロニードルパッチ10の最大数である。例えば、図7に示されているように、ステップS940~S960では、1回あたり6つのマイクロニードルパッチ10を生産でき、図8の実施例では2つであるが、これに限定されるものではない。図7図8に示されているように、中空領域6000はマイクロニードル130が配置された領域をより良くカバーする。本発明の実施例において、マイクロニードル構造層100'の下地層110上にマイクロニードル130が一面に配置されているため、ステップS940では、原則として、離型フィルム600及びその中空領域6000とマイクロニードル130との位置合わせを行う必要はない。従って、雌型800の収縮や膨張などによる中空領域6000とマイクロニードル領域との位置合わせの誤差も回避される。
【0026】
図7に示されているように、キャリア層500の数は6つであり、それぞれ6つの中空領域6000に対応している。更にキャリア層500は、中空領域6000に限定された下地層110の第1の面111に対応している。しかし、他の実施例では、キャリア層500の数は1つであってよい。例えば、離型フィルム600と同様に、矩形の一体構造になっている。その後、一体となったキャリア層500を切り取って、複数のマイクロニードルパッチ10に分割する。
【0027】
ステップS940は、マイクロニードル構造層100'に向けてキャリア層500に力Fを加え、キャリア層500とマイクロニードル構造層100'との接合を促進することを更に含む。ステップS950は、キャリア層500に接合されたマイクロニードル構造層100'を雌型800から除去することを更に含む。ステップS960は、例えば、パンチングプレス、レーザーなどの切断工具Cを用いて、マイクロニードル構造層100'を切り取り、マイクロニードル構造層100'を複数の独立したマイクロニードル構造層100に分割することを更に含む。本発明の実施例では、マイクロニードル構造層100'の下地層110上にマイクロニードル130が一面に配置されているため、切断工具によりマイクロニードル130を貫通することが容易であり、これによってマイクロニードル130を変形させる。本文では、ステップS930で形成されたマイクロニードル130を第1のマイクロニードル131と呼び、ステップS960で切断によって変形したマイクロニードル130を、第2のマイクロニードル132と呼ぶ。第2のマイクロニードル132は、一般的にマイクロニードル構造層100の辺縁に位置する。
【0028】
図9A~9Cは、マイクロニードルの多様な変形状態を示している。図9Aは、本発明の一実施例におけるマイクロニードルの顕微鏡写真図であり、マイクロニードル130の形状は四角錐である。図9Aに示されているように、正常な第1のマイクロニードル131は四角形の底面を持ち、一方変形した第2のマイクロニードル132は辺縁に位置しており、底面の完全性を失っている。図9Bは、本発明の別の実施例におけるマイクロニードルの顕微鏡写真図であって、前記マイクロニードル130の形状は円錐であり、一方変形した第2のマイクロニードル132は辺縁に位置していて、底面の完全性を失っている。図9Cに示されているように、正常な第1のマイクロニードル131は真っすぐ立っており、第2のマイクロニードル132は曲がって変形している。
【0029】
ステップS910~S960で得られる成型品において、図6Cに示されているように、離型フィルム600は、各キャリア層500の周縁に沿って配置され、一部が各キャリア層500の外側に突出している。本発明のいくつかの実施例において、マイクロニードルパッチの製造方法には、離型フィルムを切り取って複数のマイクロニードルパッチを形成すること、及び/または離型フィルムを修飾するために用いることが更に含まれる。例えば、ステップS960の後、離型フィルム600を更に切り取って、成形品を複数の独立したマイクロニードルパッチ10に分割すること、及び/または離型フィルム600の各キャリア層500の外側に突出する部分を切り取ることなどである。
【0030】
図7を参照する。図7に示されているように、キャリア層500の形状は、マイクロニードル領域とほぼ同じであり、円形であるが、これに限定されるものではない。キャリア層500の形状は、マイクロニードル領域とは異なる。本発明のいくつかの実施例において、マイクロニードルパッチの製造方法には、キャリア層を切り取ることが更に含まれる。例えば、中空領域6000またはマイクロニードル領域に基づいて、一体となったキャリア層500を切り取り、キャリア層500を複数の部分に分割し、複数のキャリア層500をそれぞれ独立したマイクロニードル構造層100と組み合わせて、複数のマイクロニードルパッチ10を形成することなどである。キャリア層500は、中空領域6000またはマイクロニードル領域と同じ形状または異なる形状で切り取る。或いは、キャリア層500を、マイクロニードル構造層100と同じ大きさまたは異なる大きさで切り取る。図8を参照すると、例えば、図8の実施例では、離型フィルム600とキャリア層500を切り取った後、2つの耳状のマイクロニードル領域を有するマイクロニードルパッチ10を形成する。前記離型フィルム600とキャリア層500は耳状に限定されるものではない。しかし図8の実施例では、2つの耳状のマイクロニードル領域を有する単一のマイクロニードルパッチ10を形成する。
【0031】
本発明の実施例における雄型780は、載置台710の単一領域7100の一面に配置されたマイクロニードル構造720によって形成され、複数のマイクロニードルパッチ10を製造するために用いることができるため、好ましくは、マイクロニードル構造720の数は、製造された複数のマイクロニードルパッチ10のマイクロニードル130の数の合計よりも多い。本発明の実施例における雄型780は、載置台710の単一領域7100の一面に配置されたマイクロニードル構造720によって形成されるため、後続の工程で、雌型800の収縮や膨張などによる中空領域6000とマイクロニードル領域との位置合わせの誤差も回避され、マイクロニードルパッチの生産歩留まりを改善し、マイクロニードル領域の位置が設計に合致することを保証するための一助となる。
【0032】
本発明は、特定の実施例において開示されたが、これらは本発明を限定するためのものではなく、当業者であれば、本発明の精神と範囲を逸脱しない範囲内で、いくらか変更または改善することができる。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって限定されるものを基準とする。
【符号の説明】
【0033】
10:マイクロニードルパッチ
100、100': マイクロニードル構造層
110:下地層
111:第1の面
112:第2の面
130:マイクロニードル
131:第1のマイクロニードル
132:第2のマイクロニードル
20:生体適合性材料
300:接着剤層
500:キャリア層
600:離型フィルム
6000:中空領域
70:雄型
710:載置台
7100:単一領域
720:マイクロニードル構造
800':ポリマー材料
800:雌型
810:底面領域
820:テーパ穴
h1、h2:高さ
F:力
C:切断工具
T:作業台
【要約】
【課題】本発明は、マイクロニードル構造層、接着剤層及びキャリア層を含むマイクロニードルパッチについてである。
【解決手段】接着剤層は、マイクロニードル構造層とキャリア層との間に配置され、マイクロニードル構造層とキャリア層を接続する。マイクロニードル構造層は、第1の面と第1の面に対向する第2の面とを有し、且つ第1の面が接着剤層に向けられている下地層及び複数のマイクロニードルを含む。複数のマイクロニードルは、第2の面に相互に間隔を空けて配置され、複数の第1のマイクロニードルと少なくとも1つの第2のマイクロニードルとを含む。少なくとも1つの第2のマイクロニードルは、マイクロニードル構造層の辺縁に位置し、且つ少なくとも1つの第2のマイクロニードルの高さは、それぞれの第1のマイクロニードルの高さよりも小さい。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9A
図9B
図9C