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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】吸熱防炎材及びリチウム電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   C09K 21/10 20060101AFI20240829BHJP
   C09K 21/04 20060101ALI20240829BHJP
   H01M 50/202 20210101ALI20240829BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240829BHJP
   H01M 50/207 20210101ALI20240829BHJP
   H01M 50/271 20210101ALI20240829BHJP
   H01M 50/296 20210101ALI20240829BHJP
   H01M 50/50 20210101ALI20240829BHJP
【FI】
C09K21/10
C09K21/04
H01M50/202 401F
H01M50/204 401F
H01M50/207
H01M50/202 501Z
H01M50/271 S
H01M50/296
H01M50/50 101
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023101843
(22)【出願日】2023-06-21
(65)【公開番号】P2024002958
(43)【公開日】2024-01-11
【審査請求日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】63/354,695
(32)【優先日】2022-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523238140
【氏名又は名称】恆越▲ルー▼能實業有限公司
【氏名又は名称原語表記】Maxim Nature Green Energy Solutions, Ltd.
(73)【特許権者】
【識別番号】523238151
【氏名又は名称】嘉盈▲リー▼源股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】LiWatt X Incorporation
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】王 筱菁
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106159121(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110311138(CN,A)
【文献】特開平09-019990(JP,A)
【文献】特開2002-105336(JP,A)
【文献】特開2009-99322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K21/00-21/14
H01M50/20-50/298
H01M50/50-50/598
A62C2/00-99/00
A62D1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルビツール酸及びリン酸二水素アンモニウムを含む、吸熱防炎材。
【請求項2】
前記バルビツール酸は、前記吸熱防炎材の少なくとも1重量%を占める、請求項1に記載の吸熱防炎材。
【請求項3】
前記バルビツール酸前記リン酸二水素アンモニウムに対する重量比は、99:1~1:99である、請求項に記載の吸熱防炎材。
【請求項4】
筐体と、
前記筐体上に設けられ、前記筐体と共に収容空間を構成するカバーと、
前記収容空間内に設けられた少なくとも1つのリチウム電池セルと、
前記収容空間に充填された、バルビツール酸を含む吸熱防炎材とを含む、リチウム電池モジュール。
【請求項5】
前記筐体と前記カバーのうちの少なくとも1つは、注入孔を有する、請求項に記載のリチウム電池モジュール。
【請求項6】
前記注入孔が封止される、請求項に記載のリチウム電池モジュール。
【請求項7】
前記吸熱防炎材は電気絶縁材料であり、前記筐体と前記カバーのうちの少なくとも1つは正極接点を備え、前記筐体と前記カバーのうちの少なくとも1つは負極接点を備え、前記リチウム電池セルの正極は前記正極接点に接続され、前記リチウム電池セルの負極は前記負極接点に接続される、請求項に記載のリチウム電池モジュール。
【請求項8】
前記吸熱防炎材は、液状、粉末状、乳化状、又はコロイド状である、請求項に記載のリチウム電池モジュール。
【請求項9】
前記リチウム電池セルは固体電解質界面(SEI)を含み、前記リチウム電池モジュールが短絡して温度上昇した後の最高温度は、前記リチウム電池セルに含まれる前記固体電解質界面の熱分解又は熱劣化の最低温度よりも低い、請求項に記載のリチウム電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸熱防炎材及び電池モジュールに関するものであり、特に、吸熱防炎材及びリチウム電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池モジュール又はリチウム電池セルは、益々広範に応用されるようになっている。更に、製品の応用性に基づいて、リチウム電池モジュール又はリチウム電池セルの容量が増加している。
【0003】
リチウム電池モジュール又はリチウム電池セルが不適切に使用された場合、又は外部保護回路(例えば、バッテリー管理システム(BMS))が故障した場合、又は外部損傷がリチウム電池モジュール又はリチウム電池セルの構造を変化させたとき、リチウム電池モジュール又はリチウム電池セルの内部短絡現象を起こしやすい。このため、単一のリチウム電池又はリチウム電池の一群が発火して爆発し、他のリチウム電池にも広がって大規模な発火及び爆発の危険が生じ、人命及び財産の安全を脅かす可能性が高い。
【0004】
更に、リチウム電池モジュール又はリチウム電池セルは、対応する電力エネルギーを有している。大量のエネルギーが瞬間的に放出されると、一般的な消火設備では引き起こされた火を適宜消火及び/又は鎮火することは難しく、また、降温及び/又は吸熱のために大量の水資源を消費する必要がある。このため、人命及び財産が危険にさらされた場合、制御不能な結果及び損失を引き起こす。
【0005】
上記に基づき、リチウム電池モジュール又はリチウム電池セルの安全性は非常に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、吸熱防炎材、及び比較的安全なリチウム電池モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの実施形態において、本発明は、バルビツール酸、バルビツール酸誘導体、又はこれらの組合せを含む吸熱防炎材を提供する。
【0008】
1つの実施形態において、本発明は、筐体と、カバーと、少なくとも1つのリチウム電池セルと、吸熱防炎材とを含むリチウム電池モジュールを提供する。カバーは筐体を覆う。筐体とカバーは収容空間を形成する。リチウム電池セルは収容空間内に設けられる。吸熱防炎材が収容空間に充填される。
【発明の効果】
【0009】
上記に基づき、本発明のリチウム電池モジュールの製造方法において、吸熱防炎材をリチウム電池セルが配置された収容空間に直接充填することにより、リチウム電池モジュールの製造方法を比較的単純化することが可能となる、及び/又は、本発明のリチウム電池モジュールのリチウム電池セルが吸熱防炎材により覆われることで、リチウム電池モジュールは比較的安全となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
添付図面は、本発明の更なる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれてその一部を構成する。図面は、本発明の例示的な実施形態を表しており、説明と併せて本発明の原理を説明する役割を果たす。
図1A】本発明の1つの実施形態によるリチウム電池モジュールの部分的な製造方法の部分フロー図である。
図1B】本発明の第1の実施形態によるリチウム電池モジュールの部分的な製造方法の部分斜視図である。
図1C】本発明の第1の実施形態によるリチウム電池モジュールの部分的な製造方法の部分斜視図である。
図2】本発明の第2の実施形態によるリチウム電池モジュールの部分斜視図である。
図3】本発明の第3の実施形態によるリチウム電池モジュールの部分斜視図である。
図4】本発明の第4の実施形態によるリチウム電池モジュールの部分斜視図である。
図5】本発明の第5の実施形態によるリチウム電池モジュールの部分斜視図である。
図6】本発明の第6の実施形態によるリチウム電池モジュールの部分斜視図である。
図7】本発明の第7の実施形態によるリチウム電池モジュールの部分斜視図である。
図8】本発明の[実施例5]の試験結果のチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、物体又は材料について、ここで用いられる「耐火」、「消火」又は「防炎」又は「難燃」とは、その物体又は材料(フィルム、層、ブロック、及び他の構造を含むがこれらに限定されない)は、標準試験方法の難燃性基準に合格することができることを意味する。例えば、アメリカ保険業者安全試験所(UL)が発行するUL94 プラスチック可燃性規格(機器及び家電製品の部品用プラスチック材料の可燃性試験)を例に挙げると、その程度は少なくともHBレベルであり、V1レベルが好ましく、5VAレベルがより好ましい。
【0012】
[リチウム電池モジュールの部分的な製造方法]
図1Aは、本発明の1つの実施形態によるリチウム電池モジュールの部分的な製造方法の部分フロー図である。
【0013】
以下に、リチウム電池モジュールの部分的な製造方法を説明する。加えて、説明の便宜上、以下のリチウム電池モジュールの製造方法の説明において、対応する図面符号は例示として図1B図1Cを参照することによって理解することができる。リチウム電池モジュールの部分的な製造方法は図1B図1Cに示すものに限定されないことに注意されたい。同様に、図1Cに示すリチウム電池モジュールについて、図1Aに示すフロー図は例示的な部分的プロセスであり得る。
【0014】
図1Aを参照し、ステップS10にて、少なくとも1つのリチウム電池セル(例えば、後述するリチウム電池セル131、後述するリチウム電池セル432、又はこれに類似のリチウム電池セルであるが、これに限定されない)を提供する。本発明は、一般的なリチウム電池セルの標準を満たす限り、リチウム電池セルの形状を限定しない。例えば、リチウム電池セルは、方形タンク型電池セル、柱状電池セル、パウチ型電池セル、又は円筒型電池セルであってよく、例えば、126090型電池セル、18650型電池セル、又は類似のものである。1つの実施形態において、複数のリチウム電池セルが存在してよい。複数のリチウム電池セルは、直列又は並列に接続されてよい。単一のリチウム電池セルであるか、直列の複数のリチウム電池セルであるか、複数のリチウム電池セルであるかに関わらず全て、例えばIEC61960標準、IEC62619標準、VDE-AR-E2510-50標準、CNS15391-2標準、UL1642標準であるがこれらに限定されない、対応するリチウム電池セル標準に準拠しなければならない。
【0015】
図1Aを参照し、ステップS20で、リチウム電池セルは筐体(例えば、後述する筐体110、後述する筐体310、後述する筐体410、後述する筐体510、又はこれに類似の筐体であるが、これに限定されない)に設けられる。本発明は、そこに配置すべき対応する物体(例えば、リチウム電池セル)に適する、及び/又は、対応する材料(例えば、後述する吸熱防炎材)を注入するのに適する限り、筐体の形状を限定しない。
【0016】
1つの実施形態において、筐体は一般的な防火標準を満たしてよい。1つの実施形態において、筐体の材料は、金属(例えば、アルミニウムめっき殻体)、金属合金(例えば、アルミニウム-シリコン合金被覆筐体)、又はポリマー(例えば、ベークライト)を含んでよい。
【0017】
1つの実施形態において、筐体は注入孔(例えば、後述する注入孔150であるが、これに限定されない)を有してよい。
【0018】
1つの実施形態において、筐体上には電極接点(例えば、正極接点及び/又は負極接点)が存在してよい。上述した筐体上の電極接点は、適切な導体(例えば、導線接続及び/又は回路接続)によりリチウム電池セルの対応する電極(例えば、正極電極又は負極電極)に電気接続されてよい。
【0019】
図1Aを参照し、ステップS30で、カバー(例えば、後述するカバー120、後述するカバー320、後述するカバー420、後述するカバー520、後述するカバー620、又はこれに類似のリチウム電池セルであるが、これに限定されない)が、リチウム電池セルを備えた筐体上に配置される。本発明は、筐体を覆うのに適する限り、カバーの形状を限定しない。
【0020】
1つの実施形態において、カバーは一般的な防火標準を満たしてよい。1つの実施形態において、カバーの材料は筐体の材料と同一であるか類似であってよい。
【0021】
1つの実施形態において、カバーは注入孔(例えば、後述する注入孔150であるが、これに限定されない)を有してよい。
【0022】
1つの実施形態において、カバー上に電極接点(例えば、正極接点及び/又は負極接点)が存在してよい。上述したカバー上の電極接点は、適切な導体(例えば、導線接続及び/又は回路接続)によりリチウム電池セルの対応する電極(例えば、正極電極又は負極電極)に電気接続されてよい。
【0023】
図1Aを参照し、ステップS40で、吸熱防炎材(例えば、吸熱防炎材140、又は類似の吸熱防炎材であるが、これに限定されない)が注入孔からカバーに覆われた筐体内に注入される。
【0024】
1つの実施形態において、吸熱防炎材は、絶縁性で非導電性の液体、コロイド、又は粉末状固体を含んでよい。
【0025】
1つの実施形態において、吸熱防炎材は、適切な吸熱流体、適切な難燃剤および/又は適切な難燃剤を含んでよい。
【0026】
1つの実施形態において、吸熱防炎材はエーテル化合物を含んでよい。該エーテル化合物は、エチルパーフルオロブチルエーテル(CAS番号:163702-05-4)、エチルノナフルオロイソブチルエーテル(CAS番号:163702-06-5)、又はこれらの組合せを含んでよいが、これに限定されない。
【0027】
1つの実施形態において、吸熱防炎材は有機リン化合物を含んでよい。該有機リン化合物は、2-カルボキシエチル(フェニル)ホスフィン酸(CAS番号:14657-64-8)、6-オキシド-6H-ジベンゾ[c,e][1,2]オキサホスホリン-6-イル)メチル]ブタン二酸(CAS番号:63562-33-4)、[(6-オキシド-6H-ジベンズ[c,e][1,2]オキサホスホリン-6-イル)メチル]ブタン二酸ビス(2-ヒドロキシエチル)エステル(CAS番号:63562-34-5)、10-ベンジルメチル-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(CAS番号:113504-81-7)、6,6’-(1-フェニルエタン-1,2-ジイル)ビス(6H-ジベンゾ[c,e][1,2]オキサホスフィニン)6,6’-ジオキシド(CAS番号:1631149-46-6)、又はこれらの組合せを含んでよいが、これに限定されない。
【0028】
1つの実施形態において、吸熱防炎材は有機臭素化合物を含んでよい。該有機臭素化合物は、2,3-ジブロモ-2-プロペン-1-オール、ジブロモメタン、1,2-ジブロモエタン、1,2-ジブロモエチレン、1,4-ジブロモブタン、1,5-ジブロモペンタン、又はこれらの組合せを含んでよいが、これに限定されない。
【0029】
1つの実施形態において、吸熱防炎材はバルビツル酸又はバルビツル酸誘導体(例えば、バルビツレート、又はバルビツル酸の炭素原子に結合している水素原子の1つがメチル、エチル、又は同位体によって置換されている、又はその塩)を含んでよい。燃焼過程において、バルビツル酸又はバルビツル酸誘導体(バルビツル酸/その誘導体、と呼称する場合がある)は、燃焼過程でフリーラジカルの濃度又は量を減少させることのできるフリーラジカルスカベンジャー(FRS)として用いられてよい。このため、燃焼を遅くするか止めることができる。1つの実施形態において、バルビツル酸又はバルビツル酸誘導体は、加熱及び/又は燃焼された後に水と二酸化炭素を生成することができ、水は周囲温度を下げることができ(これは冷却又は吸熱と見なされてよい)、二酸化炭素は燃焼を減らすことができる(これは消火又は防炎又は防炎と見なされてよい)。このため、バルビツル酸又はバルビツル酸誘導体は吸熱防炎材として適する。
【0030】
1つの実施形態において、リチウム電池モジュール内部で予期しない短絡が生じて(リチウム電池セルの損傷又は短絡、内部回路の損傷又は短絡を含むが、これに限定されない)、大量の電力エネルギーが熱エネルギーに変換されたとしても、バルビツル酸/その誘導体が吸熱防炎材として用いられた場合、リチウム電池モジュールが短絡して加熱された後の最高温度を低下させることができる。1つの実施形態において、バルビツル酸/その誘導体が吸熱防炎材として用いられた場合、リチウム電池モジュールが短絡して加熱された後の最高温度は、一般的なリチウム電池セルに用いられる固体電解質界面(SEI)の熱分解又は熱劣化の最低温度よりも低い。固体電解質界面(SEI)は、層(例えば、パッシベーション層)であってよい。一般的なリチウム電池セルに用いられる固体電解質界面(SEI)の熱分解又は熱劣化の最低温度は、約100℃である。つまり、バルビツル酸/その誘導体を用いない場合と比較し、バルビツル酸/その誘導体は少なくともリチウム電池モジュールが短絡して加熱された後の最高温度を低下させることができ、少なくとも吸熱材料と見なすことができる。
【0031】
1つの実施形態において、吸熱防炎材の総重量に基づき、バルビツル酸/その誘導体の重量は吸熱防炎材全体の少なくとも1重量%を占める。即ち、バルビツル酸、バルビツル酸誘導体、又はこれらの組合せは、吸熱防炎材の少なくとも1wt%を占める。
【0032】
1つの実施形態において、吸熱防炎材はリン酸二水素アンモニウム(ADP)を含んでよい。燃焼過程において、リン酸二水素アンモニウムはリン酸とアンモニアを分解するため熱を吸収し、五酸化リンを生成するため複数のステップにおいて反応し続ける可能性がある。前述の各ステップは吸熱反応であり、水蒸気を発生させることができ、これは冷却又は吸熱効果を発揮することができる。
【0033】
1つの実施形態において、吸熱防炎材は、リン酸二水素アンモニウムとバルビツル酸/その誘導体とを含んでよい。1つの実施形態において、バルビツル酸/その誘導体のリン酸二水素アンモニウムに対する重量比は、約99:1~約1:99であってよい。1つの実施形態において、バルビツル酸/その誘導体のリン酸二水素アンモニウムに対する重量比は、約4:1であってよい。
【0034】
1つの実施形態において、バルビツル酸、バルビツル酸誘導体、リン酸二水素アンモニウム、又はこれらの組合せは、粉末吸熱防炎材と呼ばれてよい。
【0035】
1つの実施形態において、吸熱防炎材はリン酸トリエチル(TEP)を含んでよい。リン酸トリエチルの沸点は約215℃であり、リン酸トリエチルの引火点は約115℃である。リン酸トリエチルは水と混和することができる。1つの実施形態において、バルビツル酸/その誘導体は、リン酸トリエチル及びリン酸二水素アンモニウムと組み合わせて調製されてよく、液体吸熱防炎材として用いられてよい。上述した吸熱防炎材は、スプレーガンで噴霧された場合に着火又は燃焼現象を起こさず、吸熱効果を有する。加えて、上述した液体吸熱防炎材は、フッ素化溶剤、臭素化溶剤、ジメチルスルホキシド(DMSO)を更に含んでよく、更には水を含まなくてよい。
【0036】
1つの実施形態において、液体吸熱防炎材は、リン酸トリエチル、水、バルビツル酸/その誘導体、リン酸二水素アンモニウムを含んでよく、バルビツル酸/その誘導体のリン酸トリエチルに対する重量比は約99:1~約1:99であってよい、又は、バルビツル酸/その誘導体のリン酸二水素アンモニウムに対する重量比は約99:1~約1:99であってよい。上述した重量比の範囲内で、各成分の比はバッテリにより発せられる熱の量及び/又は対応する安全係数に応じて調整されてよい。1つの実施形態において、リン酸トリエチル、水、バルビツル酸/その誘導体、リン酸二水素アンモニウムの重量比は、約1:4:4:1であってよい。
【0037】
1つの実施形態において、液体吸熱防炎材は分散剤を更に含んでよい。分散剤は、より良好な熱吸収効果、冷却効果、及び/又は吸熱効果を得られるよう、液体吸熱防炎材の成分の分散性を向上させることができる。1つの実施形態において、分散剤は、アンモニウム塩を含有するアクリルポリマーを含んでよい。1つの実施形態において、分散剤は、Taiwan Hopax Chemicals Mfg.Co.,Ltdが商品名CA-A48で製造する分散剤を含んでよい。
【0038】
1つの実施形態において、上述した液体吸熱防炎材は、分散剤を添加した後に乳化され、バルビツル酸/その誘導体の含有量を更に増加させ、次いでベーマイトや、ポリウレタン(PU)発泡材料と無機材料とを結合させて形成される複合材料が添加されてよい。このようにして、形成されたコロイド状又は乳化した吸熱防炎材は、より優れた熱吸収、熱伝導、吸熱及び防炎、及び/又は難燃性能を有することができる。
【0039】
1つの実施形態において、吸熱防炎材は、リン酸トリエチル、分散剤、不燃性溶剤(例えば、水、フッ素系溶剤、臭素系溶剤、ジメチルスルホン等)、バルビツル酸/その誘導体、リン酸二水素アンモニウム、N-ドデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホン酸塩(CAS番号14933-08-5)を含んでよい。N-ドデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホン酸塩は、両性イオン界面活性剤に含まれてよく、Taiwan Hopax Chemicals Mfg.Co.,Ltdにより商品名SB-10で製造されている。
【0040】
1つの実施形態において、コロイド状又は乳化した吸熱防炎材は、リン酸トリエチル、分散剤、不燃性溶剤、バルビツル酸/その誘導体、リン酸二水素アンモニウム、N-ドデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホン酸塩を含んでよく、バルビツル酸/その誘導体のリン酸トリエチルに対する重量比は約99:1~約1:99であってよい、又は、バルビツル酸/その誘導体のリン酸二水素アンモニウムに対する重量比は約99:1~約1:99であってよい。上述した重量比の範囲内で、各成分の比はバッテリにより発せられる熱の量及び/又は対応する安全係数に応じて調整されてよい。1つの実施形態において、リン酸トリエチル、分散剤、不燃性溶剤、バルビツル酸/その誘導体、リン酸二水素アンモニウムの重量比は、約2:0.3:1.5:5.5:0.7であってよい。
【0041】
1つの実施形態において、コロイド状又は乳化した吸熱防炎材は、リン酸トリエチル、分散剤、不燃性溶剤、バルビツル酸/その誘導体、リン酸二水素アンモニウム、N-ドデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホン酸塩、ポリウレタン(PU)発泡材と無機材料とを結合させて形成された複合材料、及びベーマイトを含んでよく、そのうち、バルビツル酸/その誘導体のリン酸トリエチルに対する重量比は約99:1~約1:99であってよい、又は、バルビツル酸/その誘導体のリン酸二水素アンモニウムに対する重量比は約99:1~約1:99であってよい。上述した重量比の範囲内で、各成分の比はバッテリにより発せられる熱量及び/又は対応する安全係数に応じて調整されてよい。
【0042】
1つの実施形態において、リン酸トリエチル、分散剤、不燃性溶剤、バルビツル酸/その誘導体、リン酸二水素アンモニウム、N-ドデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホン酸塩、ポリウレタン(PU)発泡材と無機材料とを結合させて形成された複合材料、及びベーマイトの重量比は、約2:0.3:1.5:5:0.5:0.2:0.2:0.3であってよい。
【0043】
1つの実施形態において、リチウム電池セルが配置された筐体がカバーにより覆われた後で、且つリチウム電池セルの対応する電極がカバー又は筐体上の対応する電極接点に電気接続された後で、且つ吸熱防炎材が注入孔からカバーに覆われた筐体内に注入される前に、リチウム電池セルはカバー又は筐体上の対応する電極接点を用いて適切に試験されてよい。試験項目には、外部短絡試験、衝撃試験、落下試験、過充電試験(例えば、電圧過充電又は電流過充電)、強制放電試験、内部短絡試験、過熱試験を含んでよいが、これらに限定されない。このようにして、前述した試験に合格しなかった場合、吸熱防炎材が注入される前に、少なくとも適切な修復ステップ又は確認ステップが実行されてよい。例えば、修復された又は適用性を有すると確認された後に、吸熱防炎材を注入するステップが実行されてよい。もう1つの例として、修復できない又は適用性を有すると確認できない場合、その中間製品は廃棄されるか、対応するリチウム電池セル、筐体、又はカバーが再利用のためリサイクルされてよい。
【0044】
図1Aを参照し、ステップS50で注入孔が封止される。
【0045】
1つの実施形態において、吸熱防炎材を注入するための注入孔は、注入孔に耐熱・耐火接着剤(例えば、アクリル接着剤又はエポキシ樹脂であるが、これに限定されない)を充填して硬化させることにより封止されてよい。
【0046】
1つの実施形態において、吸熱防炎材が注入孔を通じて筐体内に注入された後、及び/又は、注入孔を封止した後、耐火フィルム、耐火フィルム、又は防炎フィルムが、筐体及び/又はカバーの外側に、スプレー、コーティング、湿潤及び/又は他の適切な方法によって形成されてよい。1つの実施形態において、前述した防火フィルム、前述した耐火フィルム、前述した防炎フィルムは、注入孔を少なくとも部分的に覆ってよい。
【0047】
1つの実施形態において、前述した吸熱防炎材はリチウム電池モジュールに応用されてよいが、吸熱防炎材は他に応用されることもできる。
【0048】
1つの実施形態において、注入孔に充填される及び/又は注入孔を覆う物の材質は、筐体の材質やカバーの材質とは異なってよく、同一の圧力下で、注入孔に充填される及び/又は注入孔を覆う物は、筐体又はカバーが損傷する前に注入孔から剥離及び/又は分離しやすい。このため、リチウム電池モジュールの応用において、注入孔は、対応する圧抜き孔(例えば、筐体とカバーとによって形成される収容空間内のガス圧力を減圧するためのもの)と呼称されてもよい。
【0049】
上記プロセスの後、1つの実施形態のリチウム電池モジュールの製造は実質的に完了する。
【0050】
[リチウム電池モジュールの安全性試験]
本発明の1つの実施形態のリチウム電池モジュールは、一般的な安全性標準を満たすことを確認するため、要件に応じた様々な試験が行われてよい。試験項目には、外部短絡試験、衝撃試験、振動試験、高度モード試験、強制放電試験、落下試験(例えば、1.2メートル落下試験)、温度試験、過充電試験又は衝撃試験を含んでよいが、これらに限定されない。試験標準には、UL2054、IEC61960、及び/又はGB/T18287を含んでよいが、これらに限定されない。
【0051】
試験は、リチウム電池モジュール全体に対して実行されてよい。例えば、対応する電気試験は、正極接点及び負極接点を通じてリチウム電池モジュール全体で電気試験を行うものであってよい。
【0052】
[リチウム電池モジュールの概略的構造及び外観]
図1Cは、本発明の第1の実施形態によるリチウム電池モジュールの部分斜視図である。
【0053】
図1Cを参照し、リチウム電池モジュール100は、筐体110と、カバー120と、少なくとも1つのリチウム電池セル131と、吸熱防炎材140とを含む。カバー120は筐体110上に設けられる。筐体110とカバー120は収容空間Sを構成する。リチウム電池セル131は収容空間S内に設けられる。吸熱防炎材140は収容空間S内に充填される。
【0054】
本実施形態において、リチウム電池モジュール100は複数のリチウム電池セル131を含んでよい。1つの実施形態において、リチウム電池セル131はパウチ型電池セルであってよい。
【0055】
1つの実施形態において、正極接点E1と負極接点E2がカバー120上に設けられる。
【0056】
1つの実施形態において、注入孔150がカバー120に設けられる。
【0057】
図2は、本発明の第2の実施形態によるリチウム電池モジュールの部分斜視図である。本実施形態のリチウム電池モジュール200の製造方法は、前述した実施形態のリチウム電池モジュール100の製造方法に類似し、同一又は類似のコンポーネントは同一又は類似の符号で表され、類似の機能、材料、又は形態を有し、それらの説明は省略する。
【0058】
図2を参照し、リチウム電池モジュール200は、筐体110と、カバー120と、少なくとも1つのリチウム電池セル131と、吸熱防炎材140とを含む。カバー120は筐体110上に設けられる。筐体110とカバー120は収容空間Sを構成する。リチウム電池セル131は収容空間S内に設けられる。吸熱防炎材140は収容空間S内に充填される。
【0059】
本実施形態において、リチウム電池モジュール200は単一のリチウム電池セル131を含んでよい。
【0060】
図3は、本発明の第3の実施形態によるリチウム電池モジュールの部分斜視図である。本実施形態のリチウム電池モジュール300の製造方法は、前述した実施形態のリチウム電池モジュール100の製造方法に類似し、同一又は類似のコンポーネントは同一又は類似の符号で表され、類似の機能、材料、又は形態を有し、それらの説明は省略する。
【0061】
図3を参照し、リチウム電池モジュール300は、筐体310と、カバー320と、少なくとも1つのリチウム電池セル131と、吸熱防炎材140とを含む。カバー320は筐体310上に設けられる。筐体310とカバー320は収容空間Sを構成する。リチウム電池セル131は収容空間S内に設けられる。吸熱防炎材140は収容空間S内に充填される。
【0062】
本実施形態において、リチウム電池モジュール300は単一のリチウム電池セル131を含んでよい。
【0063】
本実施形態において、正極接点E1と負極接点E2のうちの一方はカバー320上に設けられ、正極接点E1と負極接点E2のうちの他方は筐体310上に設けられる。例えば、正極接点E1はカバー320上に設けられ、負極接点E2は筐体310上に設けられる。図示しない1つの実施形態において、負極接点E2がカバー320上に設けられ、正極接点E1が筐体310上に設けられてよい。
【0064】
本実施形態において、注入孔150はカバー320に設けられる。
【0065】
図4は、本発明の第4の実施形態によるリチウム電池モジュールの部分斜視図である。本実施形態のリチウム電池モジュール400の製造方法は、前述した実施形態のリチウム電池モジュール100の製造方法に類似し、同一又は類似のコンポーネントは同一又は類似の符号で表され、類似の機能、材料、又は形態を有し、それらの説明は省略する。
【0066】
図4を参照し、リチウム電池モジュール400は、筐体410と、カバー420と、少なくとも1つのリチウム電池セル432と、吸熱防炎材140とを含む。カバー420は筐体410上に設けられる。筐体410とカバー420は収容空間Sを構成する。リチウム電池セル432は収容空間S内に設けられる。吸熱防炎材140は収容空間S内に充填される。
【0067】
本実施形態において、リチウム電池モジュール400は単一のリチウム電池セル432を含んでよい。1つの実施形態において、リチウム電池セル432は円筒型電池セルであってよい。
【0068】
本実施形態において、正極接点E1と負極接点E2はカバー420上に設けられる。
【0069】
本実施形態において、注入孔150はカバー420に設けられる。
【0070】
図5は、本発明の第5の実施形態によるリチウム電池モジュールの部分斜視図である。
本実施形態のリチウム電池モジュール500の製造方法は、前述した実施形態のリチウム電池モジュール100の製造方法に類似し、同一又は類似のコンポーネントは同一又は類似の符号で表され、類似の機能、材料、又は形態を有し、それらの説明は省略する。
【0071】
図5を参照し、リチウム電池モジュール500は、筐体510と、カバー520と、少なくとも1つのリチウム電池セル432と、吸熱防炎材140とを含む。カバー520は筐体510上に設けられる。筐体510とカバー520は収容空間Sを構成する。リチウム電池セル432は収容空間S内に設けられる。吸熱防炎材140は収容空間S内に充填される。
【0072】
本実施形態において、リチウム電池モジュール500は複数のリチウム電池セル432を含んでよい。
【0073】
本実施形態において、正極接点E1と負極接点E2のうちの一方はカバー520上に設けられ、正極接点E1と負極接点E2のうちの他方は筐体510上に設けられる。例えば、正極接点E1はカバー520上に設けられ、負極接点E2は筐体510上に設けられる。図示しない1つの実施形態において、負極接点E2がカバー520上に設けられ、正極接点E1が筐体510上に設けられてよい。
【0074】
本実施形態において、注入孔150はカバー520に設けられる。
【0075】
図6は、本発明の第6の実施形態によるリチウム電池モジュールの部分斜視図である。本実施形態のリチウム電池モジュール600の製造方法は、前述した実施形態のリチウム電池モジュール100の製造方法に類似し、同一又は類似のコンポーネントは同一又は類似の符号で表され、類似の機能、材料、又は形態を有し、それらの説明は省略する。
【0076】
図6を参照し、リチウム電池モジュール600は、筐体610と、カバー620と、少なくとも1つのリチウム電池セル432と、吸熱防炎材140とを含む。カバー620は筐体610上に設けられる。筐体610とカバー620は収容空間Sを構成する。リチウム電池セル432は収容空間S内に設けられる。吸熱防炎材140は収容空間S内に充填される。
【0077】
本実施形態において、リチウム電池モジュール600は複数のリチウム電池セル432を含んでよい。
【0078】
本実施形態において、正極接点E1と負極接点E2はカバー620上に設けられる。
【0079】
本実施形態において、注入孔150はカバー620に設けられる。
【0080】
図7は、本発明の第7の実施形態によるリチウム電池モジュールの部分斜視図である。本実施形態のリチウム電池モジュール700の製造方法は、前述した実施形態のリチウム電池モジュール100の製造方法に類似し、同一又は類似のコンポーネントは同一又は類似の符号で表され、類似の機能、材料、又は形態を有し、それらの説明は省略する。
【0081】
図7を参照し、リチウム電池モジュール700は、筐体710と、カバー720と、少なくとも1つのリチウム電池セル732と、吸熱防炎材(直接示していないが、前述した吸熱防炎材140と同一又は類似)とを含む。カバー720は筐体710上に設けられる。筐体710とカバー720は収容空間Sを構成する。リチウム電池セル732は収容空間S内に設けられる。吸熱防炎材は収容空間S内に充填される。
【0082】
本実施形態において、注入孔150はカバー720に設けられる。吸熱防炎材は、注入孔150からカバー720に覆われた筐体710に注入されてよい。
【0083】
本実施形態において、カバー720は圧抜き孔760を有してよい。必要であれば、圧抜き孔760は筐体710とカバー720とにより形成された収容空間Sにおけるガス圧を減少させることができる。加えて、本発明は圧抜き孔760と同一又は類似である圧抜き孔の数や位置を限定しない。
【0084】
本実施形態において、カバー720はガス抜き弁770を備えてよい。必要であれば、ガス抜き弁770は筐体710とカバー720とにより形成された収容空間Sにおいて生成されたガスを外部へ放出することができる。加えて、本発明はガス抜き弁770と同一又は類似であるガス抜き弁の数や位置を限定しない。
【0085】
1つの実施形態において、ガス抜き弁770は、防爆弁、通気弁、ガス抜き溝、又はフィン型圧抜き孔を含んでよいが、本発明はこれに限定されない。1つの実施形態において、ガス抜き溝の外形は円錐形と同一又は類似であってよいが、本発明はこれに限定されない。1つの実施形態において、フィン型圧抜き孔は、外側に複数のフィン型カバー、内側に対応するメッシュバリアを備えてよい。
【0086】
本実施形態において、リチウム電池モジュール700は、カバー720上に設けられた電子装置780を更に含んでよい。電子装置780は、保護回路モジュール(PCM)又はバッテリー管理システム(BMS)を含んでよい。加えて、本発明は電子装置780と同一又は類似である電子装置の数や位置を限定しない。
【0087】
[実施例と比較例]
以下に、本発明を具体的に説明するための実施例と比較例を提供するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0088】
加えて、実施例と比較例を第三者の非営利で公平な機関(例えば、工業技術研究院(ITRI))による標準試験方法に従い、標準環境で試験、記録した。
【0089】
[吸熱防炎材有無での充填試験]
実際の試験比較を、吸熱防炎材を充填した実施例1、2、3と吸熱防炎材を充填していない比較例1で行った。
【0090】
[比較例1]
2つの市販の容量5Ahのリチウム-コバルト電池セルを取得して、これらを並列に接続し、次いでリチウム電池モジュールを模擬するために並列接続された電池セルを筐体内に配置した。加えて、筐体内には吸熱防炎材なしとした。
【0091】
[実施例1]
前述した比較例1と同一又は類似の方法を実行し、2つの市販の容量5Ahのリチウム-コバルト電池セルを取得して、これらを並列に接続し、次いでリチウム電池モジュールを模擬するために並列接続された電池セルを筐体内に配置した。加えて、21グラムの粉末吸熱防炎材を筐体内に充填した。実施例1で用いた粉末吸熱防炎材は、バルビツル酸/その誘導体である。
【0092】
[実施例2]
前述した比較例1と同一又は類似の方法を実行し、2つの市販の容量5Ahのリチウム-コバルト電池セルを取得して、これらを並列に接続し、次いでリチウム電池モジュールを模擬するために並列接続された電池セルを筐体内に配置した。加えて、27グラムの液状吸熱防炎材を筐体内に充填した。実施例2で用いた液状吸熱防炎材は、リン酸トリエチル、水、バルビツル酸/その誘導体、リン酸二水素アンモニウムであり、重量比は約1:4:4:1である。
【0093】
[実施例3]
前述した比較例1と同一又は類似の方法を実行し、2つの市販の容量5Ahのリチウム-コバルト電池セルを取得して、これらを並列に接続し、次いでリチウム電池モジュールを模擬するために並列接続された電池セルを筐体内に配置した。加えて、29グラムの乳化吸熱防炎材を筐体内に充填した。実施例3で用いた液状吸熱防炎材は、リン酸トリエチル、分散剤、水、バルビツル酸/その誘導体、リン酸二水素アンモニウムであり、重量比は約2:0.3:1.5:5.5:0.7である。
【0094】
[比較例1、実施例1、実施例2、実施例3の比較]
比較例1、実施例1、実施例2、実施例3を一般的に用いられている針刺し試験により試験した。
【0095】
比較例1は出火して煙を放った。温度プローブで測定した最高温度は210℃であり、筐体全体と電池セルが燃焼して損傷した。
【0096】
実施例1、実施例2、実施例3は出火も煙もなかった。温度プローブで測定した最高温度は100℃であり、筐体全体及び電池セルの外観には明らかな焼損はなく、電池セルが僅かに膨らんだのみであった。
【0097】
[過充電後の初歩試験]
実施例4(吸熱防炎材を充填)と比較例4(吸熱防炎材なし)で実際の使用状況を模擬した:バッテリを過充電し、その後に比較のために実際に試験した。最初にバッテリを過充電する1つの目的は、より高い電力エネルギーを有することを確認するためである。
【0098】
[比較例4]
前述した比較例1と同一又は類似の方法を実行し、2つの市販の容量5Ahのリチウム-コバルト電池セルを取得して、これらを並列に接続し、次いでリチウム電池モジュールを模擬するために並列接続された電池セルを筐体内に配置した。加えて、筐体内には吸熱防炎材なしとした。
【0099】
比較例4のリチウム電池モジュールを過充電させ、次いで比較例4のリチウム電池モジュールを一般的に用いられている針刺し試験により試験した。
【0100】
[実施例4]
前述した比較例1と同一又は類似の方法を実行し、2つの市販の容量5Ahのリチウム-コバルト電池セルを取得して、これらを並列に接続し、次いでリチウム電池モジュールを模擬するために並列接続された電池セルを筐体内に配置した。加えて、粉末吸熱防炎材を筐体内に充填した。実施例4で用いた粉末吸熱防炎材は、バルビツル酸/その誘導体とリン酸二水素アンモニウムである。
【0101】
実施例4のリチウム電池モジュールを過充電させ、次いで実施例4のリチウム電池モジュールを一般的に用いられている針刺し試験により試験した。
【0102】
針を電池モジュールに突き刺した後、電池モジュールの出力電圧は短絡効果により明らかに低下する。更に、短絡効果により、熱エネルギーが電池モジュール内で急速に生成される。熱エネルギーは外部へ散逸されるため、電池モジュールの内部(例えば、リチウム電池セル)及び電池モジュールの外部(例えば、筐体の表面)の対応する温度上昇を測定する。
【0103】
[比較例4と実施例4の比較]
比較例4の構造は実施例4の構造に類似しており、差異は、比較例4が吸熱防炎材を有さず、実施例4が吸熱防炎材を有する点にある。このため、位置のばらつきを少なくするために、後述する温度測定において、比較例4と実施例4の温度比較測定を同一又は類似の対応位置で行う。
【0104】
針を電池モジュールに突き刺した後、電池モジュールの内部(例えば、リチウム電池セル)の1つ以上の対応位置で温度を測定した。比較例4で測定された最高温度は実施例4で測定した最高温度よりも約100℃以上高かった。
【0105】
針を電池モジュールに突き刺した後、電池モジュールの外部(例えば、筐体の外面)の1つ以上の対応位置で温度を測定した。比較例4で測定された最高温度は実施例4で測定した最高温度よりも約80℃以上高かった。
【0106】
針を電池モジュールに突き刺した瞬間を0秒として起算し、実施例4において最高温度を測定した時点をM秒、比較例4において最高温度を測定した時点をN秒とすると、MとNは、M-N≧30(例えば、M引くNは30以上)の関係を有する。
【0107】
[過充電後の詳細な試験]
実施例5(吸熱防炎材を充填)と比較例5(吸熱防炎材なし)で実際の使用状況を模擬した:バッテリを過充電し、その後に比較のために実際に試験して温度を測定した(例えば、図8に示す時間-温度曲線)。最初にバッテリを過充電する1つの目的は、比較的高い電力エネルギーを有することを確認するためである。
【0108】
[比較例5]
前述した比較例1と同一又は類似の方法を実行し、2つの市販の容量5Ahのリチウム-コバルト電池セルを取得して、これらを並列に接続し、次いでリチウム電池モジュールを模擬するために並列接続された電池セルを筐体内に配置した。加えて、筐体内には吸熱防炎材なしとした。
【0109】
比較例5を一般的に用いられている針刺し試験により試験した。
【0110】
針を電池モジュールに突き刺した後、熱エネルギーが電池モジュール内で急速に生成された。更に、短絡した電池モジュールは、即座に出火して煙を発した。電池モジュールの外部のとある位置(例えば、筐体の外面)で測定された最高温度は350℃を超えた。更に、針刺し試験の後に、外部及び内部検査を実行した。筐体と電池セルの両方が燃焼して明らかに破壊された。
【0111】
[実施例5]
前述した比較例1と同一又は類似の方法を実行し、2つの市販の容量5Ahのリチウム-コバルト電池セルを取得して、これらを並列に接続し、次いでリチウム電池モジュールを模擬するために並列接続された電池セルを筐体内に配置した。加えて、筐体内に粉末吸熱防炎材を充填した。実施例5で用いた粉末吸熱防炎材は、バルビツル酸/その誘導体とリン酸二水素アンモニウムである。リチウム電池モジュールの外観は、図1B又は図1Cに示したものに類似してよい。
【0112】
実施例5を一般的に用いられている針刺し試験により試験した。
【0113】
加えて、針刺し試験の間に、リチウム電池モジュールの出力電圧、電池モジュールのほぼ中央の突き刺し箇所の温度、電池モジュールの長さ方向の両側(一方側が正極接点及び負極接点を含む)の温度、電池モジュールの幅方向の両側の温度を測定した。針刺し試験の間、針をほぼ電池モジュールの中央に約第87秒で突き刺した。
【0114】
試験結果を図8に示す。図8において、「電圧」曲線は各時点(横軸の単位:秒)での電池モジュールの出力電圧(縦軸の単位:ボルト)に対応する。「Tc」曲線は、電池モジュールのほぼ中央の突き刺し箇所での各時点(横軸の単位:秒)での温度に対応する。「T1」曲線は、電池モジュールの長さ方向における正極接点及び負極接点付近での各時点(横軸の単位:秒)での温度に対応する。「T2」曲線は、電池モジュールの長さ方向における正極接点及び負極接点から遠い場所での各時点(横軸の単位:秒)での温度に対応する。「Ta」曲線は、電池モジュールの幅方向における電池モジュールの一方側での各時点(横軸の単位:秒)での温度(縦軸の単位:℃)に対応する。「Tb」曲線は、電池モジュールの幅方向における電池モジュールの他方側での各時点(横軸の単位:秒)での温度(縦軸の単位:℃)に対応する。
【0115】
図8に示すように、針が電池モジュールに突き刺された後、短絡効果により電池モジュールの出力電圧は大幅に減少する(4.17Vから0.223V)。更に、短絡効果により、熱エネルギーが電池モジュール内部で急速に生成される。ただし、本発明の1つの実施形態による吸熱防炎材を有すると、燃焼現象を軽減及び/又は回避し(例えば、外観における火と煙がない)、吸熱及び/又は冷却効果を奏することが可能である(例えば、電池モジュールの外面の最高温度がどの時点でも100℃を超えない)。
【0116】
更に、針刺し試験の後に外部及び内部検査を実行した。筐体と電池セルの両方が燃焼して明らかに破壊されており、電池セルのみが僅かに膨張していた(膨張率は約65%~90%であった)。
【0117】
まとめると、本発明のリチウム電池モジュールの製造方法において、吸熱防炎材をリチウム電池セルが配置された収容空間に直接充填することによりリチウム電池モジュールの製造方法を比較的単純化することが可能となる、及び/又は、本発明のリチウム電池モジュールのリチウム電池セルが吸熱防炎材により覆われることで、リチウム電池モジュールは比較的安全となる。
【0118】
当業者にとって、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、開示された実施形態に対して様々な改変及び変形を行うことができることは明らかであろう。上記を考慮し、本発明は、特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にある限り、改変及び変形を包含することを意図している。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の吸熱防炎材は、リチウム電池モジュールに適用することができる。本発明の吸熱防炎材は更に、他の応用に用いることもできる。例えば、吸熱防炎材は、合理的な応用に応じて、回路板と組み合わせて又は回路板と統合して適切に適用することができる。本発明のリチウム電池モジュールは、電気エネルギー貯蔵応用として用いられることができる。
【符号の説明】
【0120】
S10、S20、S30、S40、S50:ステップ
100、200、300、400、500、600、700:リチウム電池モジュール
110、310、410、510、610、710:筐体
120、320、420、520、620、720:カバー
131、432、732:リチウム電池セル
140:吸熱防炎材
150、750:注入孔
760:圧抜き孔
770:ガス抜き弁
780:電子装置
E1:正極接点
E2:負極接点
S:収容空間
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8