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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】タッチパッド及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/0354 20130101AFI20240829BHJP
   H01H 13/14 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
G06F3/0354 450
H01H13/14 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023123099
(22)【出願日】2023-07-28
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊田 君夫
(72)【発明者】
【氏名】窪田 和幸
【審査官】三田村 陽平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-123205(JP,A)
【文献】特開2015-079400(JP,A)
【文献】特開2017-027684(JP,A)
【文献】特開2013-008123(JP,A)
【文献】特開2009-199537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/033- 3/039
G06F 3/03
G06F 3/041- 3/047
H01H 13/00 -13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパッドであって、
人手による接触位置を認識可能なセンサボードと、
前記センサボードが固定されたハウジングと、
前記ハウジングを昇降可能な状態で支持するベース部材と、
前記センサボードが押されて前記ハウジングが前記ベース部材に向かって移動した際に押圧されるスイッチと、
を備え、
前記ベース部材と前記ハウジングとの間には、前記ハウジングを前記ベース部材に向かう方向に変位可能な状態で回動可能に支持する第1及び第2のピボット軸部が設けられ、
前記第1及び第2のピボット軸部は、前記センサボードの一縁部から反対側の他縁部に向かう方向で相互間に前記スイッチを跨ぐ位置に配置され、
前記センサボードの前記スイッチよりも前記第1のピボット軸部側にある領域が押された際には、前記第2のピボット軸部が回動軸となって前記ハウジングが回動して前記スイッチが押圧されて第1の荷重を発生し、
前記センサボードの前記スイッチよりも前記第2のピボット軸部側にある領域が押された際には、前記第1のピボット軸部が回動軸となって前記ハウジングが回動して前記スイッチが押圧され、前記第1の荷重よりも大きい第2の荷重を発生する
ことを特徴とするタッチパッド。
【請求項2】
請求項1に記載のタッチパッドであって、
少なくとも前記センサボードの前記スイッチと上下にオーバーラップする領域が押された際には、前記第1及び第2のピボット軸部がいずれも回動軸として作用せずに、前記ハウジングが前記ベース部材に向かって変位して前記スイッチが押圧され、前記第1及び前記第2の荷重よりも大きい第3の荷重を発生する
ことを特徴とするタッチパッド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタッチパッドであって、
前記一縁部から反対側の他縁部に向かう方向を基準として、前記スイッチと前記第1のピボット軸部との間の距離が、前記スイッチと前記第2のピボット軸部との間の距離よりも大きい
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載のタッチパッドであって、
前記ベース部材に対して前記ハウジングを相対的に離隔する方向に向かって付勢する第1及び第2の弾性部材を備え、
前記第1及び第2の弾性部材は、前記センサボードの一縁部から反対側の他縁部に向かう方向で相互間に前記スイッチを跨ぐ位置であって、前記第1及び第2のピボット軸部の間となる配置されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
電子機器であって、
筐体と、
前記筐体に支持されたタッチパッドと、
を備え、
前記タッチパッドは、
人手による接触位置を認識可能なセンサボードと、
前記センサボードが固定されたハウジングと、
前記筐体に支持され、前記ハウジングを昇降可能な状態で支持するベース部材と、
前記センサボードが押されて前記ハウジングが前記ベース部材に向かって移動した際に押圧されるスイッチと、
を備え、
前記タッチパッドは、前記ベース部材と前記ハウジングとの間に設けられ、前記ハウジングを前記ベース部材に向かう方向に変位可能な状態で回動可能に支持する第1及び第2のピボット軸部を有し、
前記第1及び第2のピボット軸部は、前記センサボードの一縁部から反対側の他縁部に向かう方向で相互間に前記スイッチを跨ぐ位置に配置され、
前記センサボードの前記スイッチよりも前記第1のピボット軸部側にある領域が押された際には、前記第2のピボット軸部が回動軸となって前記ハウジングが回動して前記スイッチが押圧されて第1の荷重を発生し、
前記センサボードの前記スイッチよりも前記第2のピボット軸部側にある領域が押された際には、前記第1のピボット軸部が回動軸となって前記ハウジングが回動して前記スイッチが押圧され、前記第1の荷重よりも大きい第2の荷重を発生する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項5に記載の電子機器であって、
前記一縁部から反対側の他縁部に向かう方向を基準として、前記第1のピボット軸部は前記他縁部よりも前記一縁部に近い位置に配置され、前記第2のピボット軸部は前記一縁部よりも前記他縁部に近い位置に配置されており、
さらに、
前記筐体に支持され、前記センサボードの前記一縁部と隣接するキーボードと、
前記キーボードに設けられ、人手によるポインティング操作を行うポインティングスティックと、
を備え、
前記スイッチよりも前記第1のピボット軸部側にある領域には、前記ポインティングスティックと関連付けられた機能が割り当てられている
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパッド及び該タッチパッドを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばノート型PCは、キーボードの他、マウスの代替となるタッチパッドを備える。タッチパッドは、指先でのタッチ操作を受けてディスプレイ装置に表示されたカーソルを移動させるポインティングデバイスの一種である。タッチパッドは、一般的に筐体上面における手前側でキーボードに隣接して設けられる。
【0003】
このようなタッチパッドを備えた入力装置に関し、本出願人は特許文献1において、タッチ操作及び押下操作を可能とした構成を提案している。この構成では、タッチパッドの操作面に複数の疑似的なボタン領域が設定されており、各ボタン領域をタッチしながらタッチパッドを押下操作することで各ボタン領域に対応した入力操作を行うことができる。このタッチパッドは上面で人手の接触を検出するセンサボードと、該センサボードを押し下げることで押圧されるスイッチを備えており、スイッチの押圧によってクリック感が得られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-060306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のタッチパッドは、キーボードに隣接する縁に沿って回動軸を設け、これを中心にセンサボードが回動して押下操作を受け付ける。ところが、この構成では、センサボードの手前側は適度に上下動幅が確保されるものの、軸に近い奥側はほとんど上下動せず、良好なクリック感が得られずユーザに違和感を与え得る。
【0006】
また特許文献1の電子機器は、キーボードの略中央にポインティングスティックを備える。タッチパッドはポインティングスティックと併設される場合、キーボード寄りの位置にはポインティングスティックと関連付けられたボタン領域が設定されることがある。例えばこのボタン領域はマウスの3ボタンと対応する。ここで、タッチパッドの通常の領域は人差し指等での操作が想定される。一方、上記のボタン領域はポインティングスティックとの同時操作のために親指での操作が想定され、十分な力を入れて操作することが難しい場合がある。
【0007】
このようにタッチパッドは特定の領域を他の領域と異なる機能を発揮させたい要求があり、例えばマウスの3ボタン機能を割り当てる場合、或いは所定のアプリケーションのランチャー機能を割り当てる場合等がある。その場合に、従来は当該特定の領域での押下操作の荷重について考慮されておらず、操作感のさらなる向上が望まれている。
【0008】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、操作性を高めることができるタッチパッド及び該タッチパッドを備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様に係るタッチパッドは、人手による接触位置を認識可能なセンサボードと、前記センサボードが固定されたハウジングと、前記ハウジングを昇降可能な状態で支持するベース部材と、前記センサボードが押されて前記ハウジングが前記ベース部材に向かって移動した際に押圧されるスイッチと、を備え、前記ベース部材と前記ハウジングとの間には、前記ハウジングを前記ベース部材に向かう方向に変位可能な状態で回動可能に支持する第1及び第2のピボット軸部が設けられ、前記第1及び第2のピボット軸部は、前記センサボードの一縁部から反対側の他縁部に向かう方向で相互間に前記スイッチを跨ぐ位置に配置され、前記センサボードの前記スイッチよりも前記第1のピボット軸部側にある領域が押された際には、前記第2のピボット軸部が回動軸となって前記ハウジングが回動して前記スイッチが押圧されて第1の荷重を発生し、前記センサボードの前記スイッチよりも前記第2のピボット軸部側にある領域が押された際には、前記第1のピボット軸部が回動軸となって前記ハウジングが回動して前記スイッチが押圧され、前記第1の荷重よりも大きい第2の荷重を発生する。
【0010】
本発明の第2態様に係る電子機器は、筐体と、前記筐体に支持されたタッチパッドと、を備え、前記タッチパッドは、人手による接触位置を認識可能なセンサボードと、前記センサボードが固定されたハウジングと、前記筐体に支持され、前記ハウジングを昇降可能な状態で支持するベース部材と、前記センサボードが押されて前記ハウジングが前記ベース部材に向かって移動した際に押圧されるスイッチと、を備え、前記タッチパッドは、前記ベース部材と前記ハウジングとの間に設けられ、前記ハウジングを前記ベース部材に向かう方向に変位可能な状態で回動可能に支持する第1及び第2のピボット軸部を有し、前記第1及び第2のピボット軸部は、前記センサボードの一縁部から反対側の他縁部に向かう方向で相互間に前記スイッチを跨ぐ位置に配置され、前記センサボードの前記スイッチよりも前記第1のピボット軸部側にある領域が押された際には、前記第2のピボット軸部が回動軸となって前記ハウジングが回動して前記スイッチが押圧されて第1の荷重を発生し、前記センサボードの前記スイッチよりも前記第2のピボット軸部側にある領域が押された際には、前記第1のピボット軸部が回動軸となって前記ハウジングが回動して前記スイッチが押圧され、前記第1の荷重よりも大きい第2の荷重を発生する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記態様によれば、操作性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした平面図である。
図2図2は、タッチパッドの分解斜視図である。
図3図3は、タッチパッドの平面図である。
図4図4は、タッチパッドの底面図である。
図5A図5Aは、タッチパッドのY2側に設置されるピボット軸部36及びその周辺部をZ1側から見た分解斜視図である。
図5B図5Bは、図5Aに示すピボット軸部及びその周辺部をZ2側から見た斜視図である。
図6A図6Aは、タッチパッドのY1側に設置されるピボット軸部及びその周辺部をZ1側から見た分解斜視図である。
図6B図6Bは、図6Aに示すピボット軸部及びその周辺部をZ2側から見た斜視図である。
図7A図7Aは、タッチパッドの模式的な側面断面図である。
図7B図7Bは、図7Aに示す状態から所定の位置が押下操作された際の動作を示す側面断面図である。
図7C図7Cは、図7Aに示す状態から所定の位置が押下操作された際の動作を示す側面断面図である。
図7D図7Dは、図7Aに示す状態から所定の位置が押下操作された際の動作を示す側面断面図である。
図8図8は、センサボードのY方向での各位置が押下操作された際にタッチパッドが発生する荷重の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るタッチパッドについて、このタッチパッドを備える電子機器との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、一実施形態に係る電子機器10の蓋体11を筐体12から開いた状態で上から見下ろした平面図である。本実施形態では、蓋体11と筐体12とをヒンジ14によって相対的に回動可能に連結したクラムシェル型のノート型PCである。筐体12には、一実施形態に係るタッチパッド15が備えられている。タッチパッド15の適用対象となる電子機器はノート型PCに限られない。電子機器は、例えばノート型PC、デスクトップ型PC又はタブレット型PC等に対して外付けされる単体のキーボード装置でもよい。タッチパッド15はノート型PC等の電子機器に対して外付けされる単独のタッチパッド装置として用いることもできる。
【0015】
蓋体11は扁平な箱体である。蓋体11はディスプレイ16を搭載している。ディスプレイ16は、例えば有機ELや液晶である。蓋体11は筐体12の後端部(Y2側端部)にヒンジ14で連結されている。
【0016】
筐体12は扁平な箱体である。筐体12の内部には、CPU等を実装したマザーボード、ストレージ、メモリ、バッテリー等の各種電子部品が収納されている。筐体12の上面12aには、タッチパッド15及びキーボード18が前後に並んでいる。
【0017】
キーボード18の略中央にはポインティングスティック20が設けられている。ポインティングスティック20は、ディスプレイ16に表示されるカーソルを傾動方向に移動させるポインティングデバイスの一種である。ポインティングスティック20は、小さい円柱形状であってキーボード18の略中央、例えばGキー、Hキー及びBキーの中間に設けられている。ポインティングスティック20は、主に人差し指又は中指で傾動操作を行うことによってカーソルを移動させる。ポインティングスティック20でカーソルを操作する際のポイント指定のクリックについては、主に親指でタッチパッド15を押下操作する。
【0018】
次に、タッチパッド15について説明する。
【0019】
以下、タッチパッド15について電子機器10に搭載された状態での使用形態を基準として、幅方向(左右方向)をそれぞれX1,X2方向、奥行方向(前後方向)をそれぞれY1,Y2方向、厚み方向(上下方向)をそれぞれZ1,Z2方向と呼んで説明する。X1,X2方向をまとめてX方向と呼ぶこともあり、Y1,Y2方向及びZ1,Z2方向についても同様にY方向、Z方向と呼ぶことがある。
【0020】
タッチパッド15は、筐体12の上面12aにおけるキーボード18のY1側のパームレスト領域の略中央に設けられている。タッチパッド15はキーボード18と前後に隣接している。タッチパッド15のX方向の中心はポインティングスティック20と略一致している。タッチパッド15はX方向に横長の矩形であり、Y方向の幅はパームレスト領域の略全幅を占めている。
【0021】
タッチパッド15は、人手(指先及びペン先等を含む)によってカーソルを移動させるポインティング操作を行うポインティングデバイスである。タッチパッド15は、表面のセンサボード22を押し下げることにより内部のスイッチ30が切り替わってクリック感が得られるようになっている(図7A図7D参照)。センサボード22は人手の接触位置を認識可能である。タッチパッド15は、センサボード22が押し下げられたときの人手の位置により、いわゆる右クリック及び左クリック等の処理が可能である。タッチパッド15はソフトウェア処理によりタップ、ダブルタップ、二本指タップ、ピンチ等の各操作にも対応可能である。
【0022】
図2は、タッチパッド15の分解斜視図である。図3は、タッチパッド15の平面図である。図4は、タッチパッド15の底面図である。
【0023】
図2図4に示すように、タッチパッド15は、Z1側からZ2側に向かって順に、センサボード22と、ハウジング24と、ベース部材26とを備える。
【0024】
センサボード22は、筐体12の上面12aに臨むように配置され、ユーザの入力操作を受けると共にその操作を検出する。センサボード22は、基板22aのZ1側表面にパッドプレート22bを積層した構造である。基板22aは静電容量式等のセンシング機能を有し、タッチパッド15に対する各種入力操作を検出可能である。パッドプレート22bは例えばガラスプレートであり、その表面がタッチパッド15の操作面15aとなる。パッドプレート22bは、例えば接着剤、粘着剤、又は両面粘着テープ等の接着部材28で基板22aの表面に固定される。
【0025】
基板22aのZ2側表面(下面22a1)の略中央にはスイッチ30が取り付けられている(図7Aも参照)。スイッチ30は薄く小型のものを用いることが好ましく、本実施形態ではメタルドームスイッチと呼ばれるドーム形状のスイッチを用いている。スイッチ30は押圧することによりオン・オフが切り替わると共に適度なクリック感が得られる。本実施形態のスイッチ30はノーマルオープンタイプである。
【0026】
図3に示すように、センサボード22の操作面15aには複数の領域R1~R5が割り当てられている。領域R1~R5は、操作面15a上でのそれぞれの範囲が座標で定義されたものであり、視認できるものではない。領域R1~R5は、後述するように一般的なマウスでの各クリックが割り当てられ、領域R1~R5のいずれかをタッチした状態でセンサボード22を押下操作すると、その割り当てられた処理や表示が行われる。
【0027】
領域R1~R3は、キーボード18に隣接する操作面15aのY2側縁部(縁部15b)に沿ってX方向に延びた帯状の領域であり、X方向に並んでいる。領域R1~R3はボタン領域である。ボタン領域R1~R3はポインティングスティック20と関係付けられた機能が割り当てられており、例えばマウスの3ボタンの機能が割り当てられている。左右のやや幅広のボタン領域R1,R2はそれぞれ左クリックと右クリックに対応する。中央の幅狭のボタン領域R3はスクロールに対応し、Webページや文書を任意の方向にスクロールするためのものである。ボタン領域R1~R3はポインティングスティック20と組み合わせて主に親指で操作される。ボタン領域R1~R3は、操作面15aにプリントされた直線やドット等からなるマーク32によって明示され、他の領域R4,R5と区分けされている。
【0028】
領域R4は、ボタン領域R1~R3とは反対側、つまり操作面15aのY1側縁部(縁部15c)に沿ってX方向に延びた帯状の領域である。領域R4はクリック領域である。クリック領域R4はマウスの左クリックが割り当てられている。クリック領域R4はそのX2側端部を含む所定範囲にマウスの右クリックをさらに割り当てることもできる。ボタン領域R1~R3とクリック領域R4との間に挟まれた広い領域R5は領域R4と同様な機能が割り当てられたクリック領域である。
【0029】
図2図4に示すように、ハウジング24は、樹脂で形成されたプレート状部材である。ハウジング24は、センサボード22を支持する。ハウジング24のZ1側表面(上面24a)は、上記した接着部材28と同様な接着部材34を用いて基板22aの下面22a1に固定される。これによりハウジング24はセンサボード22と一体化された積層体を構成する。
【0030】
ハウジング24は、ベース部材26に対してY方向に所定の隙間を有して昇降可能な状態で支持される。より具体的にはハウジング24はベース部材26に対して相対的に回動可能に且つ全体としてZ方向に変位可能に支持されている。従ってハウジング24に固定されたセンサボード22もベース部材26に対して回動可能に且つ変位可能に支持されていることになる。ハウジング24は、Y方向に並ぶ2つのピボット軸部36,37による2軸ピボット構造によってベース部材26に対して回動及び変位する。ピボット軸部36,37の構成は後述する。
【0031】
ハウジング24は、スイッチ30とY方向にオーバーラップする略中央に押圧部24bを有する。押圧部24bは、Z1方向に突出した円形の突起を含む。押圧部24bは、蛇行する左右の板ばね24b1を介してハウジング24を構成するプレートに両持ち状態で弾性変位可能に支持されている。押圧部24bは、板ばね24b1により、全体としてハウジング24の下面24cよりも多少Z2側に下った位置で配置される。板ばね24b1のZ2側表面はベース部材26のZ1側表面(上面26a)に当接する(図7A参照)。これによりセンサボード22が押下操作されてベース部材26に向かって回動又は変位すると、ハウジング24がベース部材26に接近することに伴って押圧部24bがZ1方向に弾性変位し、スイッチ30を押圧する。
【0032】
ハウジング24は、さらに各所に切欠き形状、突起、及び孔部等が設けられる。例えば平面視略V字状に形成された一対のラッチ38aは、ベース部材26の上面26aに切り起こされた略L字状のフック38bにそれぞれ係合される。ラッチ38a及びフック38bは、ハウジング24のベース部材26からのZ1側への移動の上限を規定し、同時に抜け止めするものである。例えば孔部39aは、ベース部材26の孔部39bとZ方向に連通し、基板22aの下面22a1に実装されたコネクタ40を挿通させる。コネクタ40は所定の配線を用いて筐体12内のマザーボード等に接続される。
【0033】
図2中の参照符号41は、ハウジング24とベース部材26との間に介在するスタビライザである。スタビライザ41は、例えばステンレス製の細棒の両端部を屈曲させた部材である。スタビライザ41は、センサボード22及びハウジング24の左右幅方向での力を安定化させ、そのねじれや傾きを抑制する安定器である。図2中の参照符号42は、基板22aの下面22a1に固定される補強材である。補強材42は、例えばステンレス製の細い角棒である。補強材42は、センサボード22の押下操作時のねじれや撓みを抑制する。
【0034】
図2図4に示すように、ベース部材26は、ステンレス等の金属で形成されたプレート状部材である。ベース部材26は、その上面26a側でハウジング24を昇降可能に支持する。ベース部材26はタッチパッド15を筐体12に取り付けるブラケットでもある。ベース部材26は、Y方向に沿う左右縁部とY2側でX方向に沿う縁部のそれぞれに取付孔が形成された取付片26bを有する。取付片26bは筐体12に対して取付孔を用いて適宜ねじ止めされる。なお、ベース部材26は、上記したフック38b及び孔部39bの他、各所に切欠き形状、切り起こし、及び孔部等が設けられる。
【0035】
次に、ハウジング24をベース部材26に対して回動及び変位させるための構成を説明する。
【0036】
図5Aは、タッチパッド15のY2側に設置されるピボット軸部36及びその周辺部をZ1側から見た分解斜視図である。図5Bは、図5Aに示すピボット軸部36及びその周辺部をZ2側から見た斜視図である。図6Aは、タッチパッド15のY1側に設置されるピボット軸部37及びその周辺部をZ1側から見た分解斜視図である。図6Bは、図6Aに示すピボット軸部37及びその周辺部をZ2側から見た斜視図である。図7Aは、タッチパッド15の模式的な側面断面図である。
【0037】
図2図7Aに示すように、本実施形態のタッチパッド15は、ハウジング24をベース部材26に向かう方向に変位可能な状態で回動可能に支持する2つのピボット軸部36,37を備える。ピボット軸部36はタッチパッド15のX方向での両縁部に左右一対設けられ、これによりX方向に延びた回動軸を構成する。ピボット軸部37もタッチパッド15のX方向での両縁部に左右一対設けられ、これによりX方向に延びた回動軸を構成する。ピボット軸部36,37は、それぞれX方向に長尺な構造とし、例えばタッチパッド15のX方向中央を含む位置にそれぞれ1つ設けられてもよい。
【0038】
ピボット軸部36,37は、センサボード22のY2側の縁部15bから反対側(Y1側)の縁部15cに向かうY方向で、相互間にスイッチ30を跨ぐ位置に配置される。Y方向を基準として、一方のピボット軸部36はスイッチ30よりも縁部15b寄りに配置される。他方のピボット軸部37はスイッチ30よりも縁部15c寄りに配置される。
【0039】
図2図5A図5B及び図7Aに示すように、一方のピボット(第1のピボット軸部)軸部36は、シャフト36aと、軸受部36bとで構成される。
【0040】
シャフト36aは、ハウジング24のY方向に沿う左右の縁部からそれぞれ外側に突出している。つまりX1側のピボット軸部36のシャフト36aはX1方向に突出し、X2側のピボット軸部36のシャフト36aはX2方向に突出している。シャフト36aは例えば断面略矩形状を成している。シャフト36aは、先端にY2側に向かって突出する突部が設けられ、この突部のZ1側表面(上面)が軸受部36bに対する接触面36a1となる。Z方向で接触面36a1の反対側の面の角は面取りされている。シャフト36aは断面円形状等でもよい。接触面36a1はY2側に突出していてもよい。
【0041】
軸受部36bは、ベース部材26のY方向に沿う縁部からそれぞれZ1側に切り起こした立壁の上端を内側に屈曲させたXY方向に沿う板片で形成されている。つまりX1側のピボット軸部36の軸受部36bはX2方向を向くように屈曲し、X2側のピボット軸部36の軸受部36bはX1方向を向くように屈曲している。軸受部36bはZ2側表面(下面)がシャフト36aに対する支持面36b1となる。
【0042】
このようなピボット軸部36は、シャフト36aが軸受部36bに対して下から係止され、接触面36a1が支持面36b1に当接する。これによりピボット軸部36は、シャフト36aが軸受部36bに対して回動可能に且つZ2方向に変位可能に支持される。つまりハウジング24及びセンサボード22は、ベース部材26に対してピボット軸部36によって相対的に回動可能に且つZ2方向に変位可能に支持される。
【0043】
図2図6A図6B及び図7Aに示すように、他方のピボット軸部(第2のピボット軸部)37は、シャフト37aと、軸受部37bとで構成される。
【0044】
シャフト37aは、ハウジング24のY方向に沿う左右の縁部からそれぞれ外側に突出している。つまりX1側のピボット軸部37のシャフト37aはX1方向に突出し、X2側のピボット軸部37のシャフト37aはX2方向に突出している。シャフト37aはZ1側表面の角部にR形状を有し、断面略かこぼこ形状(semicylindrical shape)を成している。シャフト37aは、Y方向両端にこのようなR形状が形成されたZ1側表面(上面)が軸受部37bに対する接触面37a1となる。シャフト37aは断面円形状等でもよい。
【0045】
軸受部37bは、ベース部材26のY方向に沿う縁部にそれぞれX方向に多少の幅を持つ立壁をZ1側に切り起こし、その上端をY1方向に屈曲させたXY方向に沿う板片で形成されている。つまりX1,X2側のピボット軸部37の軸受部37bは、いずれもY1方向を向くように屈曲している。軸受部37bはZ2側表面(下面)がシャフト37aに対する支持面37b1となる。
【0046】
このようなピボット軸部37は、シャフト37aが軸受部37bに対して下から係止され、接触面37a1が支持面37b1に当接する。これによりピボット軸部37は、シャフト37aが軸受部37bに対して回動可能に且つZ2方向に変位可能に支持される。つまりハウジング24及びセンサボード22は、ベース部材26に対してピボット軸部37によっても相対的に回動可能に且つZ2方向に変位可能に支持される。ピボット軸部37はピボット軸部36と同一又は同様な構成としてもよい。逆に、ピボット軸部36をピボット軸部37と同一又は同様な構成としてもよい。
【0047】
以上より、センサボード22及びハウジング24はベース部材26に対してY方向でスイッチ30を跨ぐように配置される2軸のピボット軸部36,37をそれぞれ回動軸とする回動(傾動)動作が可能である(図7B及び図7C参照)。さらにセンサボード22及びハウジング24はベース部材26に対してピボット軸部36,37をいずれも回動軸として作用させず、全体としてZ方向に沿って平行移動する変位動作も可能である(図7C参照)。
【0048】
図2及び図7Aに示すように、本実施形態のタッチパッド15は、さらにハウジング24(又はセンサボード22)とベース部材26との間に2種類の弾性部材44,45をそれぞれ一対ずつ設けている。弾性部材44,45は後述する領域R1~R5での押下操作時の荷重を調整するための補助部品であり、その設置数や配置は適宜変更可能である。弾性部材44,45はこのような荷重の調整が不要である場合は一方又は両方を省略してもよい。
【0049】
弾性部材44は、例えばY方向に沿って延びる帯板状の板ばねであり、ベース部材26の上面26aの左右縁部付近にそれぞれ設けられる。弾性部材44は、Y1側端部が上面26aに固定され、斜め上方に延びた先のY2側端部がハウジング24の下面24cに当接する。弾性部材45は、例えばX方向に沿って延びる帯板状の板ばねであり、上面26aのY1側縁部付近で左右に並ぶように設けられる。弾性部材45は、X方向で上面26aの中央に近い側の端部がベース部材26の上面26aに固定され、斜め上方に延びた先の端部がハウジング24の下面24cに当接する。これにより弾性部材44,45は、それぞれ所望の荷重でベース部材26に対してハウジング24を相対的に離隔するZ1方向に向かって常時付勢する。弾性部材44,45は例えばハウジング24に形成された孔部を通してベース部材26とセンサボード22との間を付勢してもよい。
【0050】
次に、センサボード22に対する押下操作を行った際の動作及び作用効果を説明する。
【0051】
図7Bは、図7Aに示す状態(無負荷状態)から領域R1~R3に含まれる所定の位置P1が押下操作された際の動作を示す側面断面図である。図7Cは、図7Aに示す状態から領域R4に含まれる所定の位置P2が押下操作された際の動作を示す側面断面図である。図7Dは、図7Aに示す状態から領域R5に含まれる所定の位置P3が押下操作された際の動作を示す側面断面図である。図8は、センサボード22のY方向での各位置が押下操作された際にタッチパッド15が発生する荷重(人手に対するタッチパッド15からの反力)の一例を示すグラフである。
【0052】
図8において、横軸はセンサボード22のY方向での押下位置(mm)を示す。本実施形態のセンサボード22のY方向の寸法は、例えば70mmである。そこで、図8の横軸は、センサボード22のY2側の縁部15bを0mmとし、ここから70mm離れたY1側の縁部15cまでの距離を示す。縦軸は横軸に示す各位置でセンサボード22を押下操作した際にタッチパッド15が発生する荷重、つまり各位置でのスイッチ30のオン操作に必要な操作荷重(gf)を示す。
【0053】
図8中のD0~D4は、図3及び図7A中のD0~D4と対応しており、縁部15bから縁部15cに向かうY方向での各領域R1~R5毎の直線距離を示す。つまり距離D0~D1は領域R1~R3のY方向距離を示し、距離D1~D2は領域R1からスイッチ30までのY方向距離を示し、距離D2~D3はスイッチ30から領域R4までのY方向距離を示し、距離D3~D4は領域R4のY方向距離を示す。図8に示すように、本実施形態では、例えば領域R1~R3のY方向距離D0~D1が15mm程度、縁部15bからスイッチ30までのY方向距離D0~D2が40mm程度、縁部15bから領域R4までのY方向距離D0~D3が55mm程度、縁部15bから縁部15cまでのY方向距離D0~D4が70mmとなっている。
【0054】
また本実施形態では、例えば図7Aに示す縁部15b(D0)側のピボット軸部36の軸心からスイッチ30までのY方向距離Daを35mm程度となっている。他方のピボット軸部37の軸心からスイッチ30までのY方向距離Dbを20mm程度となっている。上記した各寸法及び後述する各寸法は一例であり、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0055】
先ず、図7Aに示す無負荷状態、つまりセンサボード22が押下操作されていない状態では、センサボード22及びハウジング24は、スイッチ30からの反力及び弾性部材44,45の付勢力によって最もZ1方向に上昇した位置にある。
【0056】
本実施形態では、スイッチ30のオン操作に必要な荷重、つまりメタルドームスイッチで構成されるスイッチ30が潰れる荷重は例えば180gf(約1.765N)である。弾性部材44の弾性力は2個合計で例えば16gf(約0.157N)である。弾性部材45の弾性力は2個合計で例えば88gf(約0.863N)である。上記した各荷重及び後述する各荷重は一例であり、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0057】
次に、図7Aに示す状態からボタン領域R1~R3を押下操作した動作について説明する。
【0058】
ここでは、図7Bに示すように、縁部15b(D0)から距離d0の位置P1を例えば親指である指F1で押下操作する場合を説明する。位置P1は、スイッチ30よりもピボット軸部36側(Y2側)であって、ここではボタン領域R1~R3に含まれる位置にある。この場合は、Y1側のピボット軸部37が回動軸となってセンサボード22及びハウジング24が回動してスイッチ30が押圧される。この際、Y2側のピボット軸部36はシャフト36aが軸受部36bからZ2方向に離れ、センサボード22の縁部15bがZ2側に下がる。つまり接触面36a1が支持面36b1から離隔し、相互間に隙間が形成される。本実施形態では、距離d0は例えば7mmである。また回動軸となるピボット軸部37の軸心から位置P1までの距離d1は例えば50mmである。
【0059】
その結果、タッチパッド15は、ボタン領域R1~R3に含まれる位置P1が押下操作された際に例えば荷重66gf(約0.647N)を発生する。このように本実施形態のタッチパッド15は、位置P1を押下操作する際、スイッチ30を押圧するために必要な荷重が例えば66gfとなっている。図8にも示されるように、ボタン領域R1~R3及びその付近の各位置での発生荷重は、ポインティングスティック20を人差し指や中指で操作しながら親指で操作することを考慮すると、例えば50gf~120gf(約0.490N~1.177N)の範囲に設定することが好ましい。
【0060】
次に、図7Aに示す状態からクリック領域R4を押下操作した動作について説明する。
【0061】
ここでは、図7Cに示すように、縁部15c(D4)から距離d10の位置P2を例えば人差し指である指F2で押下操作する場合を説明する。位置P2は、スイッチ30よりもピボット軸部37側(Y1側)であって、ここではクリック領域R4に含まれる位置にある。この場合は、Y2側のピボット軸部36が回動軸となってセンサボード22及びハウジング24が回動してスイッチ30が押圧される。この際、Y1側のピボット軸部37はシャフト37aが軸受部37bからZ2方向に離れ、センサボード22の縁部15cがZ2側に下がる。つまり接触面37a1が支持面37b1から離隔し、相互間に隙間が形成される。本実施形態では、距離d10は例えば5mmである。また回動軸となるピボット軸部36の軸心から位置P2までの距離d11は例えば60mmである。
【0062】
その結果、タッチパッド15は、クリック領域R4に含まれる位置P2が押下操作された際に例えば荷重150gf(約1.471N)を発生する。このように本実施形態のタッチパッド15は、位置P2を押下操作する際、スイッチ30を押圧するために必要な荷重が例えば150gfとなっている。図8にも示されるように、クリック領域R4及びその付近の各位置での発生荷重は、人差し指等で操作することを考慮すると、例えば140gf~190gf(約1.373N~1.863N)の範囲に設定することが好ましい。
【0063】
次に、図7Aに示す状態からスイッチ30の直上を押下操作した場合について説明する。
【0064】
ここでは、図7Dに示すように、スイッチ30の中心とZ方向にオーバーラップし、領域R5に含まれる位置P3を例えば人差し指である指F2で押下操作する場合を説明する。この場合は、2つのピボット軸部36,37がいずれも回動軸として作用せず、センサボード22及びハウジング24がZ2方向に略平行に変位してスイッチ30が押圧される。この際、各ピボット軸部36,37は、いずれもシャフト36a,37aが軸受部36b,37bからZ2方向に離れる。つまり接触面36a1,37a1が支持面36b1,37b1から離隔し、相互間に隙間が形成される。
【0065】
その結果、タッチパッド15は、位置P3が押下操作された際に例えば荷重184gf(約1.084N)を発生する。このように本実施形態のタッチパッド15は、位置P3を押下操作する際、スイッチ30を押圧するために必要な荷重が184gfとなっている。図8にも示されるように、クリック領域R5の各位置での発生荷重は、スイッチ30が潰れる荷重及び弾性部材44,45の弾性力を直接的に受けるため、例えば80gf~240gf(約0.785N~2.354N)の範囲になっている。従って、図8に示されるように、領域R5は、例えばD2とD3の間で生じるピーク荷重(240gf程度)を境界として、これよりもピボット軸部36側が押圧された場合は領域R1~R3よりも大きな荷重を発生し、ピボット軸部37側が押圧された場合は領域R4よりも大きな荷重を発生しする。
【0066】
以上のように、本実施形態のタッチパッド15は、ハウジング24をベース部材26に向かうZ方向に変位可能な状態で回動可能に支持する2つのピボット軸部36,37を有する。これらピボット軸部36,37は、センサボード22の縁部15bから縁部15cに向かうY方向で相互間にスイッチ30を跨ぐ位置に配置されている。そして、センサボード22のスイッチ30よりもピボット軸部36側にある領域、例えば領域R1~R3が押された際には、反対側のピボット軸部37が回動軸となってハウジング24が回動してスイッチ30が押圧されて第1の荷重(例えば66gf)を発生する。一方、センサボード22のスイッチ30よりもピボット軸部37側にある領域、例えば領域R4が押された際には、反対側のピボット軸部36が回動軸となってハウジング24が回動してスイッチ30が押圧され、第1の荷重よりも大きい第2の荷重(例えば150gf)を発生する。
【0067】
このように本実施形態のタッチパッド15及びこれを備える電子機器10は、タッチパッド15の一方向に沿う方向での操作位置により、回動軸として作用するピボット軸部が切り替わると共に発生荷重が変化する。これによりタッチパッド15は、例えば縁部15bに近い領域R1~R3の押下操作の荷重を、反対側の縁部15cに近い領域R4の押下操作の荷重よりも小さくできる。その結果、タッチパッド15は、例えばポインティングスティック20と協働させるために軽い荷重での押下操作が望まれる領域R1~R3の操作荷重を軽減できる。一方で、反対側の領域R4では適度な操作荷重を発生でき、操作性が向上する。タッチパッド15は、その用途によっては縁部15b側の領域R1~R3での操作荷重を縁部15c側の領域R4での操作荷重よりも大きく構成しても勿論よい。
【0068】
特に、ノート型PCである電子機器10は、ユーザが手のひらを接触するパームレストと並ぶ位置にタッチパッド15がある。このため、キーボード18の操作時には、センサボード22の手前側(Y1側)の領域R4は意図せずに手のひら等で押下する可能性がある。この点、当該タッチパッド15はこの領域R4及びその周辺での操作荷重が適度に重いことで、上記のような意図しない誤操作の発生を抑制できる。一方でタッチパッド15は誤操作の可能性が低い奥側(Y2側)の領域R1~R3の操作荷重を軽くしたことで、上記のように例えば親指でも容易に押下操作できる。
【0069】
タッチパッド15は、ポインティングスティック20と併設されない構成であっても有効である。すなわち誤操作の可能性が低い奥側(Y2側)の領域R1~R3は、例えば所定のアプリケーションのランチャー機能を割り当てることも有効である。そうすると、例えばキーボード18を操作しながら、親指による軽い操作荷重で所望のアプリケーションを起動できる。勿論、タッチパッド15におけるピボット軸部36,37の並び方向及び荷重変化の方向はY方向に限られず、その設置姿勢や用途に沿って構成すればよい。例えばピボット軸部36,37及び荷重変化はX方向に沿ったものでもよい。
【0070】
本実施形態のタッチパッド15は、少なくともセンサボード22のスイッチ30と上下にオーバーラップする領域、例えば位置P3及びその近傍である領域R5が押された際には、各ピボット軸部36,37がいずれも回動軸として作用しない。この場合、センサボード22及びハウジング24はベース部材26に向かってZ2方向に変位してスイッチ30が押圧される。この操作では、上記した第1及び第2の荷重よりも大きい第3の荷重(例えば184gf)を発生する。すなわち、例えばセンサボード22の中央付近にある領域R5は、各縁部15b,15cに近い領域R1~R4と比べて押下操作の使用頻度が少ないことが想定される。そこで、領域R5での操作荷重が他の領域R1~R4の操作荷重よりもさらに大きいことで、意図しない誤操作の発生を一層抑制でき、操作性が一層向上する。
【0071】
本実施形態のタッチパッド15は、縁部15bから反対側の縁部15cに向かうY方向を基準として、スイッチ30とピボット軸部36との間の距離Daが、スイッチ30とピボット軸部37との間の距離Dbよりも大きい(図7A参照)。そうすると、操作荷重を軽くしたいピボット軸部36近傍の領域R1~R3を押下した際、ここからスイッチ30までの距離Daが大きいことで、てこの原理によって生じる大きなモーメント力が得られる。一方、適度に操作荷重を重くしたいピボット軸部37近傍の領域R4を押下した際、ここからスイッチ30までの距離DbがDaより小さいことで、得られるモーメント力が領域R1~R3を押下したときより小さくなる。つまりタッチパッド15は、ピボット軸部36,37とスイッチ30の位置関係を調整するだけで、各領域R1~R4を押下した際の操作荷重を容易に変化させることができる。その結果、例えば弾性部材44,45の弾性力を軽減して部品の小型化を図ることができ、また弾性部材44,45自体を省略することも可能となる。
【0072】
タッチパッド15において弾性部材44,45は、Y方向で相互間にスイッチ30を跨ぐ位置であって、ピボット軸部36,37の間となる配置されている。これにより弾性部材44,45は、ピボット軸部36,37の一方が回動軸として作用するように切り替わった際、それぞれの押下操作位置に応じた弾性力で安定してセンサボード22に対して荷重を付与することができる。その結果、タッチパッド15は各ピボット軸部36,37が回動軸として作用する際の操作荷重の調整が一層容易となる。
【0073】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0074】
上記ではシャフト36a,37aを板片の軸受部36b,37bで支持する構成のピボット軸部36,37を例示したが、ピボット軸部36,37の構成はこれに限られない。例えば軸受部36b,37bはZ方向に延びた長孔で形成し、ここにシャフト36a,37aを摺動可能に且つ回転可能に挿入した構成等、各種構成を取り得る。またピボット軸部36,37はシャフト36a,37aをベース部材26に設け、軸受部36b,37bをハウジング24に設けた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 電子機器
12 筐体
15 タッチパッド
18 キーボード
20 ポインティングスティック
22 センサボード
24 ハウジング
26 ベース部材
30 スイッチ
36,37 ピボット軸部
44,45 弾性部材
【要約】
【課題】操作性を高めることができるタッチパッド及び該タッチパッドを備える電子機器を提供する。
【解決手段】タッチパッドは、ベース部材とハウジングとの間に、ハウジングをベース部材に向かう方向に変位可能な状態で回動可能に支持する第1及び第2のピボット軸部が設けられる。第1及び第2のピボット軸部は、センサボードの一縁部から反対側の他縁部に向かう方向で相互間にスイッチを跨ぐ位置に配置される。タッチパッドは、センサボードのスイッチよりも第1のピボット軸部側にある領域が押された際には第2のピボット軸部が回動軸となってハウジングが回動してスイッチが押圧されて第1の荷重を発生し、スイッチよりも第2のピボット軸部側にある領域が押された際には第1のピボット軸部が回動軸となってハウジングが回動してスイッチが押圧され、第1の荷重よりも大きい第2の荷重を発生する。
【選択図】図7A
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8