IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小松製作所の特許一覧

<>
  • 特許-バルブシステム 図1
  • 特許-バルブシステム 図2
  • 特許-バルブシステム 図3
  • 特許-バルブシステム 図4
  • 特許-バルブシステム 図5
  • 特許-バルブシステム 図6
  • 特許-バルブシステム 図7
  • 特許-バルブシステム 図8
  • 特許-バルブシステム 図9
  • 特許-バルブシステム 図10
  • 特許-バルブシステム 図11
  • 特許-バルブシステム 図12
  • 特許-バルブシステム 図13
  • 特許-バルブシステム 図14
  • 特許-バルブシステム 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】バルブシステム
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/02 20060101AFI20240829BHJP
   B62D 5/065 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B62D6/02 A
B62D5/065 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023135505
(22)【出願日】2023-08-23
(62)【分割の表示】P 2019180490の分割
【原出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2023164454
(43)【公開日】2023-11-10
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】竹中 唯太
(72)【発明者】
【氏名】寺西 雄一
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0166124(US,A1)
【文献】国際公開第2017/073617(WO,A1)
【文献】特開2007-008453(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106697044(CN,A)
【文献】米国特許第09248854(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/02
B62D 5/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械のステアリング操作を行うための作動油の流量を調整するバルブと、
入力される操作指令に対応する目標流量に基づき、前記作動油の指令流量を示す、前記バルブへの指令信号を決定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、ステアリングが動作している方向の反対方向に前記作業機械を動作させるような反転操作指令を受信した場合、前記指令流量の変化量を大きく前記反転操作指令の大きさに応じて前記指令流量の変化量を制御する、
バルブシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記反転操作指令を受信した場合、ステアリングが動作しない状態になるようにステアリングを戻すときと比べて、前記指令流量の変化量を大きくする、
請求項1に記載のバルブシステム。
【請求項3】
作業機械のステアリング操作を行うための作動油の流量を調整するバルブと、
入力される操作指令に対応する目標流量に基づき、前記作動油の指令流量を示す、前記バルブへの指令信号を決定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、ステアリングが動作している方向の反対方向に前記作業機械を動作させるような反転操作指令を受信した場合、前記指令流量の変化量を大きくし、
前記制御部は、前記目標流量による前記ステアリングの動作方向と前記指令流量による前記ステリングの動作方向に基づいて、前記反転操作指令か否かを判定する、
ルブシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
アーティキュレート式の作業機械として、フロントフレームとリアフレームに亘って配置された油圧アクチュエータに供給する油の流量を制御することによって、ステアリング角が変更される構成が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に示す作業機械では、入力されるパイロット圧に応じて油圧アクチュエータに供給する油の流量を調整するステアリング弁と、ステアリング弁に供給するパイロット圧を調整するパイロット弁が設けられている。
【0004】
オペレータが、例えばジョイスティックレバーを操作することによって、パイロット弁の開度が調整されステアリング弁に入力されるパイロット圧が調整される。調整されたパイロット圧に応じてステアリング弁から油圧アクチュエータに供給される油の流量が変更され、ステアリング角が変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第9248854号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フロントフレームが左右の一方向に回動しているときに中立位置を超えてジョイスティックレバーを反対方向に操作する反転動作が行われた場合、中立位置においてステアリングシリンダへの作動油の入出力が急停止する。このため、大きな重量を持つフロントフレームが急停止することになり、車体が大きく振動することになる。
【0007】
本開示は、反転動作時の振動を抑制しながら、操作指令に合わせた制御を可能にするバルブシステム、作業機械、バルブの制御方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本態様にかかるバルブシステムは、バルブと、制御部と、を備える。バルブは、作業機械のステアリング操作を行うための作動油の流量を調整する。制御部は、入力される操作指令に対応する目標流量と、目標流量の変化量とに基づき、作動油の指令流量を決定するバルブへの指令信号を決定する。制御部は、ステアリングが動作している方向の反対方向に作業機械を動作させるような反転操作指令を受信した場合、反転操作指令の大きさに応じて変化量を制御する。
【0009】
本態様にかかるバルブの制御方法は、作業機械のステアリング操作を行うための作動油の流量を調整するバルブの制御方法であって、決定ステップと、送信ステップと、制御ステップと、を備える。決定ステップは、入力される操作指令に対応する目標流量と、目標流量の変化量とに基づき、作動油の指令流量を決定するバルブへの指令信号を決定する。送信ステップは、バルブに指令信号を送信する。制御ステップは、ステアリングが動作している方向の反対方向に作業機械を動作させるような反転操作指令を受信した場合、反転操作指令の大きさに応じて変化量を制御する。
【0010】
本態様にかかるプログラムは、作業機械のステアリング操作を行うための作動油の流量を調整するバルブの制御方法の、決定ステップと、送信ステップと、制御ステップと、をコンピュータに実行させるプログラムである。決定ステップは、入力される操作指令に対応する目標流量と、目標流量の変化量とに基づき、作動油の指令流量を決定するバルブへの指令信号を決定する。送信ステップは、バルブに指令信号を送信する。制御ステップは、ステアリングが動作している方向の反対方向に作業機械を動作させるような反転操作指令を受信した場合、反転操作指令の大きさに応じて変化量を制御する。
本態様にかかる記録媒体は、作業機械のステアリング操作を行うための作動油の流量を調整するバルブの制御方法の、決定ステップと、送信ステップと、制御ステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した、コンピュータにより読み取り可能な記録媒体である。決定ステップは、入力される操作指令に対応する目標流量と、目標流量の変化量とに基づき、作動油の指令流量を決定するバルブへの指令信号を決定する。送信ステップは、バルブに指令信号を送信する。制御ステップは、ステアリングが動作している方向の反対方向に作業機械を動作させるような反転操作指令を受信した場合、反転操作指令の大きさに応じて変化量を制御する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、反転動作時の振動を抑制しながら、操作指令に合わせた制御を可能にするバルブシステム、作業機械、バルブの制御方法、およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示にかかる実施の形態1のホイールローダを示す側面図。
図2図1のキャブ近傍を示す側面図。
図3図1のバルブシステムを示す構成図である。
図4図3のコントローラの構成を示すブロック図。
図5】(a)レバー角度―目標流量テーブルを示す図、(b)目標流量の変化量に対する指令流量の変化量の制限値のテーブルを示す図。
図6図4のコントローラの制限値決定部の構成を示すブロック図。
図7】目標流量と指令流量の時間変化の一例を示す図。
図8】(a)~(c)反転動作を説明するための模式図。
図9】反転動作時に制限値を変更しない場合の指令流量のグラフを示す図。
図10】反転動作時に制限値を大きく変更した場合の指令流量のグラフを示す図
図11】反転動作時に中立位置を超えた量に応じて制限値を変更した場合の指令流量のグラフを示す図。
図12】本開示にかかる実施の形態1のホイールローダの制御動作を示すフロー図。
図13】本開示にかかる実施の形態2のホイールローダの指令流量の変化のグラフを示す図。
図14】本開示にかかる実施の形態2の制限値決定部の構成を示すブロック図。
図15】本開示にかかる実施の形態の変形例におけるバルブシステムの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示にかかる作業機械の一例としてのホイールローダについて図面を参照しながら以下に説明する。
(実施の形態1)
以下に、本発明にかかる実施の形態1のホイールローダ1について説明する。
【0014】
<構成>
(ホイールローダの構成の概要)
図1は、本実施の形態のホイールローダ1の構成を示す模式図である。本実施の形態のホイールローダ1は、車体フレーム2と、作業機3と、一対のフロントタイヤ4、キャブ5、エンジンルーム6、一対のリアタイヤ7、バルブシステム8(図3参照)、ステアリングシリンダ9a、9b(油圧アクチュエータの一例)(図3参照)と、を備えている。
【0015】
なお、以下の説明において、「前」、「後」、「右」、「左」、「上」、及び「下」とは運転席から前方を見た状態を基準とする方向を示す。また、「車幅方向」と「左右方向」は同義である。図1では、前後方向をXで示し、前方向を示すときはXf、後方向を示すときはXbで示す。また、後述する図面において、左右方向をYで示し、右方向を示すときはYr、左方向を示すときはYlで示す。
【0016】
ホイールローダ1は、作業機3を用いて土砂積み込み作業などを行う。
【0017】
車体フレーム2は、いわゆるアーティキュレート式であり、フロントフレーム11とリアフレーム12と、連結軸部13(アーティキュレート機構の一例)と、を有している。フロントフレーム11は、リアフレーム12の前方に配置されている。連結軸部13は、車幅方向の中央に設けられており、フロントフレーム11とリアフレーム12を互いに揺動可能に連結する。一対のフロントタイヤ4は、フロントフレーム11の左右に取り付けられている。また、一対のリアタイヤ7は、リアフレーム12の左右に取り付けられている。
【0018】
作業機3は、図示しない作業機ポンプからの作動油によって駆動される。作業機3は、ブーム14と、バケット15と、リフトシリンダ16と、バケットシリンダ17と、を有する。ブーム14は、フロントフレーム11に装着されている。バケット15は、ブーム14の先端に取り付けられている。
【0019】
リフトシリンダ16およびバケットシリンダ17は、油圧シリンダである。リフトシリンダ16の一端はフロントフレーム11に取り付けられており、リフトシリンダ16の他端はブーム14に取り付けられている。リフトシリンダ16の伸縮により、ブーム14が上下に揺動する。バケットシリンダ17の一端はフロントフレーム11に取り付けられており、バケットシリンダ17の他端はベルクランク18を介してバケット15に取り付けられている。バケットシリンダ17が伸縮することによって、バケット15が上下に揺動する。
【0020】
キャブ5は、リアフレーム12上に載置されており、内部には、ステアリング操作のためのジョイスティックレバー41(操作部材の一例)(後述する図2参照)、作業機3を操作するためのレバー、各種の表示装置等が配置されている。エンジンルーム6は、キャブ5の後側であってリアフレーム12上に配置されており、エンジンが収納されている。
【0021】
図2は、キャブ5の部分側面図である。キャブ5には、運転席19が設けられており、運転席の側方にコンソールボックス20が配置されている。コンソールボックス20の上側にはアームレスト20aが配置されている。コンソールボックス20の前先端部から上方に向かってジョイスティックレバー41が配置されている。
【0022】
図3は、バルブシステム8を示す構成図である。バルブシステム8は、ステアリングシリンダ9a、9bに供給する油の流量を変更することによって、フロントフレーム11のリアフレーム12に対する車体フレーム角度を変更し、ホイールローダ1の進行方向を変更する。
【0023】
一対のステアリングシリンダ9a、9bは、油圧によって駆動される。一対のステアリングシリンダ9a、9bは、連結軸部13を挟んで車幅方向の左右側に並んで配置されている。ステアリングシリンダ9aは、連結軸部13の左側に配置されている。ステアリングシリンダ9bは、連結軸部13の右側に配置されている。ステアリングシリンダ9a、9bは、それぞれの一端がフロントフレーム11に取り付けられており、それぞれの他端が、リアフレーム12に取り付けられている。
【0024】
バルブシステム8からの油圧によりステアリングシリンダ9aが伸長し、ステアリングシリンダ9bが収縮すると、実際の車体フレーム角度θs_realが変化し車両は右に曲がる。また、バルブシステム8からの油圧によりステアリングシリンダ9aが収縮し、ステアリングシリンダ9bが伸長すると、実際の車体フレーム角度θs_realが変化し車両は左に曲がる。なお、本実施の形態では、フロントフレーム11とリアフレーム12が前後方向に沿って配置されている場合の実際の車体フレーム角度θs_realをゼロとし、右側を正の値、左側を負の値とする。
【0025】
(バルブシステム8)
バルブシステム8は、油圧回路21と、レバーユニット22と、コントローラ23(制御部の一例)と、車速センサ24と、を有している。
【0026】
油圧回路21は、ステアリングシリンダ9a、9bの駆動出力を調整する。レバーユニット22は、ジョイスティックレバー41等を有し、オペレータによって油圧バルブ31の目標流量が入力される。目標流量Ftは、油圧バルブ31からステアリングシリンダ9a、9bに供給する作動油の流量の目標値である。
【0027】
コントローラ23は、レバーユニット22に入力された目標流量に基づいて、油圧回路21にステアリングシリンダ9a、9bの駆動出力を調整する指示を行う。車速センサ24は、ホイールローダ1の車速Vを検出して検出信号V_detectとしてコントローラ23に送信する。
【0028】
なお、図3では、電気に基づいた信号の伝達について点線で示し、油圧に基づいた伝達について実線で示す。また、センサによる検出については二点鎖線で示す。
【0029】
(油圧回路21)
油圧回路21は、ステアリングシリンダ9a、9bに供給する油の流量を調整する。油圧回路21は、油圧バルブ31と、メインポンプ32と、電磁パイロットバルブ33(バルブの一例)と、パイロットポンプ34と、を有する。
【0030】
油圧バルブ31は、入力されるパイロット圧に応じてステアリングシリンダ9a、9bに供給される油の流量を調整する流量調整弁である。油圧バルブ31には、例えばスプール弁が用いられる。メインポンプ32は、ステアリングシリンダ9a、9bを作動する作動油を油圧バルブ31に供給する。
【0031】
油圧バルブ31は、左ステアリング位置、中立位置、および右ステアリング位置に移動可能な弁体(図示せず。例えば、スプール)を有する。油圧バルブ31において弁体が左ステアリング位置に配置されている場合、ステアリングシリンダ9aが収縮し、ステアリングシリンダ9bが伸長して、実際の車体フレーム角度θs_realが小さくなり車体は左に曲がる。
【0032】
油圧バルブ31において弁体が右ステアリング位置に配置されている場合、ステアリングシリンダ9bが収縮し、ステアリングシリンダ9aが伸長して、実際の車体フレーム角度θs_realが大きくなり車体は右に曲がる。油圧バルブ31において弁体が中立位置P1に配置されている場合は、実際の車体フレーム角度θs_realは変化しない。
【0033】
電磁パイロットバルブ33は、コントローラ23からの指令に応じて油圧バルブ31に供給するパイロット油圧の流量または圧力を調整する流量調整弁である。パイロットポンプ34は、油圧バルブ31を作動させる作動油を電磁パイロットバルブ33に供給する。電磁パイロットバルブ33は、例えばスプールバルブ等であって、コントローラ23からの指令に従って制御される。
【0034】
電磁パイロットバルブ33は、左パイロット位置、中立位置P1、および右パイロット位置に移動可能な弁体(図示せず、例えばスプール)を有する。電磁パイロットバルブ33において弁体が左パイロット位置に配置されている場合、油圧バルブ31は左ステアリング位置の状態をとる。電磁パイロットバルブ33において弁体が右パイロット位置に配置されている場合、油圧バルブ31は右ステアリング位置の状態をとる。電磁パイロットバルブ33において弁体が中立位置P1に配置されている場合、油圧バルブ31は中立位置P1の状態をとる。中立位置P1は、第1の所定閾値および第2の所定閾値の一例に相当する。
【0035】
コントローラ23からの指令流量Fcに応じて電磁パイロットバルブ33からのパイロット圧またはパイロット流量が制御されることにより、油圧バルブ31が制御されてステアリングシリンダ9a、9bが制御される。指令流量Fcは、油圧バルブ31からステアリングシリンダ9a、9bに供給する作動油の流量の指令値である。
【0036】
ジョイスティックレバー41の操作によって、電磁パイロットバルブ33の弁体が中立位置P1から右パイロット位置に移動していくに従って油圧バルブ31の弁体を右ステアリング位置に移動させる流量が大きくなり、右パイロット位置において右方向にステアリングを移動させる流量が100%の状態となる。また、ジョイスティックレバー41の操作によって、電磁パイロットバルブ33の弁体が中立位置P1から左パイロット位置に移動していくに従って油圧バルブ31の弁体を左ステアリング位置に移動させる流量が大きくなり、左パイロット位置において左方向にステアリングを移動させる流量が100%の状態となる。なお、右方向にステアリングを移動させる流量をプラスの値で示し、左方向にステアリングを移動させる流量をマイナスの値で示す。
【0037】
(レバーユニット22)
レバーユニット22は、図3に示すように、ジョイスティックレバー41と、支持部42と、レバー角度センサ43と、を有する。
【0038】
支持部42は、コンソールボックス20のフレーム20fに固定されている。支持部42は、コンソールボックス20のフレームの一部であってもよい。
【0039】
ジョイスティックレバー41は、支持部42に対して回動可能に配置されている。ジョイスティックレバー41は、例えば、その基端部に貫通孔が形成され、軸42aが貫通孔に挿入されることにより、支持部42に対して回動可能に構成される。
【0040】
ジョイスティックレバー41が中央位置のとき、電磁パイロットバルブ33の弁体が中立位置P1に配置される。ジョイスティックレバー41を中央位置から右方向に移動させると、電磁パイロットバルブ33の弁体が右パイロット位置側に移動され、中央位置から左方向に移動させると、電磁パイロットバルブ33の弁体が左パイロット位置側に移動される。
【0041】
ジョイスティックレバー41を中央位置から操作角度θi_real移動させると、レバー角度センサ43によって操作角度が検出され、検出角度θi_detect(操作指令の一例)としてコントローラ23に出力される。
【0042】
(コントローラ23)
コントローラ23は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリおよびRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含むメインメモリおよびストレージを含む。コントローラ23は、記録媒体の一例であるストレージに記憶されているプログラムを読み出してメインメモリに展開し、プログラムに従って所定の処理を実行する。なお、プログラムは、ネットワークを介して各コントローラに配信されてもよい。
【0043】
図4は、コントローラ23の構成を示すブロック図である。
【0044】
コントローラ23は、目標流量算出部51と、第1演算部52と、変化流量制限部53と、第2演算部54と、制限値決定部55と、を有する。
【0045】
ここで、目標流量算出部51は、レバー角度センサ43によって検出された検出角度θi_detectから、予め記憶されているレバー角度―目標流量テーブルT1を用いて油圧バルブ31から吐出する作動油の目標流量Ftを決定する。図5(a)は、レバー角度―目標流量テーブルT1を示す図である。レバー角度―目標流量テーブルT1は、レバー角度に対して目標流量が決められているテーブルである。図5(a)に示すレバー角度―目標流量テーブルT1では、レバー角度θi_detectに対して目標流量が設定されている。レバー角度θi_detectが所定角度θ1から所定角度θ2まで角度が大きくなるに従って一定の傾きで目標流量も大きくなる。レバー角度θi_detectが所定角度θ2から所定角度θ3まで角度が大きくなるに従って、角度θ1~θ2までよりも急な傾きで目標流量も大きくなる。角度θ3からは角度が大きくなっても目標流量は一定となっている。なお、図5(a)では、中立位置P1から一方の方向(例えば右方向)へのジョイスティックレバー41の角度変化および流量変化をプラスの値で示しており、反対方向へのジョイスティックレバー41の角度変化および流量変化は、マイナスの値で示している。
【0046】
第1演算部52は、目標流量Ftから1ステップ前の指令流量Fcの差分を求め、目標流量の変化量Ft_changeを算出する。
【0047】
変化流量制限部53は、目標流量変化量Ft_changeから、予め記憶されている制限値テーブルT2若しくは制限値決定部55で決定される制限値を用いて、指令流量Fcの変化量Fc_changeの制限値を求める。図5(b)は、制限値テーブルT2を示す図である。図5(b)に示す制限値テーブルT2では、目標流量変化量Ft_changeに基づいて電磁パイロットバルブ33に送信する指令流量Fcの変化量Fc_changeに制限値が設定されている。目標流量の変化量が大きくなるに従って制限値も大きくなるように設定されている。また、目標流量の変化量Ft_changeが所定量f1に達すると、それ以上目標流量の変化量が大きくなっても指令流量Fcの変化量Fc_changeは大きくならず一定値となる。左右のうち一方(例えば、右)のパイロット位置への弁体の移動による流量の変化をプラスの値で表し、他方(例えば、左)のパイロット位置への弁体の移動による流量の変化をマイナスの値で表す。また、一方のパイロット位置への弁体の移動の際の制限値をプラスの値で表し、他方のパイロット位置への弁体の移動の際の制限値をマイナスの値で表す。
【0048】
この制限値は、指令流量Fcの変化量Fc_changeに設定される制限である。このように指令流量Fcの変化量Fc_changeに制限値を設けることにより、ジョイスティックレバー41を急に操作したとしても、油圧バルブ31内の弁体が急に動作することを防ぎ、振動の発生を抑制できる。
【0049】
第2演算部54は、変化流量制限部53で決定された指令流量の変化量Fc_changeに1ステップ前の指令流量Fc´を足し合わせて、今回の指令流量Fcを算出する。
【0050】
制限値決定部55は、目標流量Ft、目標流量の変化量Ft_change、1ステップ前の指令流量Fc´、および車速V_detectに基づいて、変化流量制限部53で用いられる制限値を決定する。なお、車速V_detectが速いときには、速いステアリング動作が好ましいため、制限値を大きく設定する方がよい。制限値決定部55の詳細については後述する。
【0051】
(制限値決定部55)
図6は、制限値決定部55を示すブロック図である。
【0052】
制限値決定部55は、増加減少判定部61と、決定部62と、反転時制限値変更部63と、を有している。
【0053】
(増加減少判定部61)
増加減少判定部61は、流量が増加方向であるか減少方向であるかを判定する。増加減少判定部61は、第3演算部71と、判定部72と、を有する。第3演算部71は、目標流量変化量Ft_changeと1ステップ前の指令流量Fc´の積を演算する。
【0054】
例えば、右方向に流量が増加する場合をプラスの値、左方向に流量が増加する場合をマイナスの値とし、中央位置をゼロと設定している。これにより、判定部72は、第3演算部71で算出される積がプラスの場合は、流量が増加すると判定でき、積がマイナスの値の場合は、流量が減少するときと判定できる。例えば、右方向への流量が増加する場合は、プラスの値の流量からの変化量がプラスの値となるため、積がプラスの値となる。左方向への流量が増加する場合は、マイナスの値の流量からの変化量がマイナスの値となるため、積がプラスの値となる。また、右方向への流量が減少する場合は、プラスの値の流量からの変化量がマイナスの値となるため、積がマイナスの値となる。左方向への流量が減少する場合は、マイナスの値の流量からの変化量がプラスの値となるため、積がマイナスの値となる。
【0055】
(決定部62)
決定部62は、判定部72からの流量増加または流量減少の判定に基づいて、車速V_detectと増加制限値テーブルT3から決定された制限値と、車速Vと減少制限値テーブルT4から決定された制限値のいずれの制限値を用いるかを決定する。
【0056】
決定部62は、増加制限値算出部73と、減少制限値算出部74と、選択部75と、を有する。
【0057】
増加制限値算出部73は、予め設定されている増加制限値テーブルT3に基づいて、流量が増加するときの流量の変化量の制限値を算出する。
【0058】
減少制限値算出部74は、予め設定されている減少制限値テーブルT4に基づいて、流量が減少するときの流量の変化量の制限値を算出する。例えば、流量を増加させるときの制限値を、流量を減少させるときの制限値よりも大きくすることができ、ステアリングの動作速度が減速するときは比較的遅く減速させ、加速するときは比較的速く加速させることができる。
【0059】
選択部75は、判定部72からの流量増加または流量減少の判定に基づいて、増加制限値算出部73で算出された制限値もしくは減少制限値算出部74で算出された制限値を選択する。すなわち、選択部75は、判定部72よって流量増加と判定された場合には、増加制限値算出部73で算出された制限値を選択し、判定部72よって流量減少と判定された場合には、減少制限値算出部74で算出された制限値を選択する。
【0060】
ここで、後述する反転動作が行われておらず、増加制限値算出部73もしくは減少制限値算出部74で算出された制限値が用いられた場合の制御の一例を示す。
【0061】
図7は、目標流量Ftと指令流量Fcの時間変化の一例を示す図である。図7では、後述する反転動作が行われていない場合を示す。図7には、目標流量FtのグラフG1が点線で示され、指令流量FcのグラフG2が実線で示されている。
【0062】
図7に示す目標流量FtのグラフG1(点線)では、ジョイスティックレバー41を中立位置P1(ゼロ)から右方向に100%動かした後に中立位置P1に戻す操作が行われている。G1では、時刻t1にジョイスティックレバー41が右方向に操作され、時刻t2にジョイスティックレバー41が流量100%の位置に達し、時刻t3にジョイスティックレバー41を中立位置P1に移動し始め、時刻t4にジョイスティックレバー41が中立位置P1に戻されている。
【0063】
時刻t1~t5の間では、目標流量が指令流量より大きく、制御流量の絶対値が増加する方向に変化するため、増加制限値算出部73によって求められた制限値が選択部75によって選択される。これによって流量の変化量(ここでは増加量)に制限が設けられ、グラフG2の時刻t1~t5に示すように、目標流量の時刻t2よりも遅い時刻t5に流量100%の右パイロット位置となるように弁体(スプール)の動作が制御される。
【0064】
また、時刻t3~t6の間では、目標流量が指令流量より小さく、制御流量の絶対値が減少する方向に変化するため、減少制限値算出部74によって求められた制限値が選択部75によって選択される。これによって流量の変化量(ここでは減少量)に制限が設けられ、グラフG2の時刻t3~t6に示すように、目標流量の時刻t4よりも遅い時刻t6に流量0%の中立位置P1となるように弁体(スプール)の動作が制御される。
【0065】
(反転動作)
上述した反転時制限値変更部63は、反転動作時に制限値の変更を行うが、はじめに反転動作について説明を行う。
【0066】
図8(a)~(c)は、反転動作を説明する模式図である。図8(a)~(c)では、上段にジョイスティックレバー41の動きを示し、下段にリアフレーム12に対するフロントフレーム11の動きを示す。図8(a)は、ジョイスティックレバー41が中立位置P1に配置され、リアフレーム12に対してフロントフレーム11が前後方向に配置されている状態を示す。この図8(a)の状態から図8(b)に示すようにジョイスティックレバー41を右方向Yrに移動させると電磁パイロットバルブ33の弁体が右パイロット位置に移動し、フロントフレーム11がリアフレーム12に対して右方向(ステアリング方向の一例)に回動する。このようなフロントフレーム11の回動中に、図8(c)に示すように中立位置P1を超えてジョイスティックレバー41を左方向Ylに操作することを反転動作(反転操作ともいう)という。このジョイスティックレバー41に入力が反転操作指令の一例に対応する。
【0067】
(反転動作時の制限値の変更)
次に、反転動作における制限値の変更について説明する。
【0068】
はじめに、説明を分り易くするために反転動作時に制限値を変更しない場合について説明する。
【0069】
図9には、目標流量FtのグラフG1が点線で示され、指令流量FcのグラフG2が実線で示されている。
【0070】
図9に示す目標流量FtのグラフG1(点線)では、ジョイスティックレバー41を中立位置P1(ゼロ)から右方向に100%動かした後に、左方向に100%動かし、その後に中立位置P1に戻す操作が行われている。
【0071】
目標流量FtのグラフG1では、時刻t1にジョイスティックレバー41が右方向に操作され、時刻t2にジョイスティックレバー41が流量100%の位置に達し、時刻t3にジョイスティックレバー41を左方向に移動し始め、時刻t4にジョイスティックレバー41が中立位置P1を通過し、時刻t5に左方向における流量100%の位置に達している。その後、時刻t6にジョイスティックレバー41を中立位置P1に戻し始め、時刻t7にジョイスティックレバー41が中立位置P1に戻されている。
【0072】
時刻t1~t8の間では、指令流量の絶対値が増加する方向に変化するため、増加制限値算出部73によって求められた制限値が選択部75によって選択される。これによって流量の変化量(ここでは増加量)に制限が設けられ、グラフG2の時刻t1~t8に示すように、目標流量の時刻t2よりも遅い時刻t8に流量100%の右パイロット位置となるように弁体(スプール)の動作が制御される。
【0073】
また、時刻t3~t9の間では、指令流量の絶対値が減少する方向に変化するため、減少制限値算出部74によって求められた制限値が選択部75によって選択される。これによって流量の変化量(ここでは減少量)に制限が設けられ、グラフG2の時刻t3~t9に示すように、目標流量の時刻t4よりも遅い時刻t9に流量0%の中立位置P1となるように弁体(スプール)の動作が制御される。
【0074】
ここで、時刻t4~t9において目標流量Ftが左方向への流量であり、時刻t4~t9において指令流量Fcは右方向への流量であるため、フロントフレーム11が右方向に動作しているが、ジョイスティックレバー41を左方向に動かす反転動作となる。
【0075】
そして、時刻t5よりも遅い時刻t9から、フロントフレーム11はリアフレーム12に対して左方向に回動し始める。このように、中立位置P1を超えてジョイスティックレバー41を左方向に操作した時刻t4からδt遅れて時刻t9からフロントフレーム11が左方向に回動し始めることになる。このδtを反転遅れ時間という。
【0076】
なお、時刻t9~t6の間では、指令流量の絶対値が増加する方向に変化するため、増加制限値算出部73によって求められた制限値が選択部75によって選択される。これによって流量の変化量(ここでは増加量)に制限が設けられ、グラフG2の時刻t9~t6に示すように、目標流量の時刻t5よりも遅い時刻t6に流量100%の左パイロット位置となるように弁体(スプール)の動作が制御される。
【0077】
時刻t6~t10の間では、指令流量の絶対値が減少する方向に変化するため、減少制限値算出部74によって求められた制限値が選択部75によって選択される。これによって流量の変化量(ここでは減少量)に制限が設けられ、グラフG2の時刻t6~t10に示すように、目標流量の時刻t7よりも遅い時刻t10に流量0%の中立位置P1となるように弁体(スプール)の動作が制御される。
【0078】
図9に示す反転動作の際の反転遅れ時間が長くなると、ジョイスティックレバー41の操作方向とは反対方向にフロントフレーム11が回動する時間が長くなるため、オペレータに違和感が生じる。
【0079】
そのため、本実施の形態のホイールローダ1では、図10に示すように、反転動作の際に流量が減少する方向への指令流量Fcの変化量の制限値を大きくすることによって、反転動作遅れ時間を短くしている。図10では、時刻t4でジョイスティックレバー41が中立位置P1を超え、1ステップ前の指令流量Fc´と目標流量Ftの正負が異なるため反転動作と判定される。そこで、時刻t4から指令流量Fcがゼロに達するt9までの間の制限値が大きく設定されることにより、流量の変化量を大きくでき、反転動作の遅れ時間δtを短くすることができる。なお、時刻t9からは制限値の変更が停止され制限値が元に戻される。
【0080】
なお、反転動作遅れ時間を短くするほど、反転動作において車体の振動が大きくなるが、本実施の形態では、制限値を適切に設定することにより、振動を抑制しながら反転動作遅れ時間も短縮することができる。
【0081】
一方、図10に示すように反転動作時に流量減少方向の変化量の制限値を大きくした場合、反対方向(図10の例では左方向)への操作量が大きくても小さくても一律に反転遅れ時間が同様に短縮されることになる。このため、反転動作時の反対方向への操作量が極めて少ない場合にも大きい場合と同様に反転時の振動が生じることになり、オペレータに違和感が生じる。
【0082】
そのため、本実施の形態のホイールローダ1では、反転動作時に反対方向への操作量が大きい場合には比較的速く指令流量Fcを0(ゼロ)まで減らし、反対方向への操作量が少ない場合には比較的遅く指令流量Fcを0(ゼロ)まで減らすように制御が行われる。
【0083】
図11は、反転動作時の反対方向への操作量に基づいて指令流量Fcの変化量の制限値を変化させたグラフを示す図である。
【0084】
グラフG1a(点線)は、ジョイスティックレバー41を中立位置P1(ゼロ)から右方向に100%動かした後に、中立位置P1に戻す操作した状態を示す。グラフG1b(点線)は、ジョイスティックレバー41を中立位置P1(ゼロ)から右方向に流量100%の位置まで操作した後に、中立位置P1を超えて左方向に流量約-50%の位置まで操作した状態を示す。グラフG1c(点線)は、ジョイスティックレバー41を中立位置P1(ゼロ)から右方向に流量100%の位置まで操作した後に、中立位置P1を超えて左方向に流量-100%の位置まで操作した状態を示す。
【0085】
グラフG1aの操作の際の指令流量Fcの変化のグラフがG2a(実線)で示され、グラフG1bの操作の際の指令流量Fcの変化のグラフがG2b(実線)で示され、グラフG1cの操作の際の指令流量Fcの変化のグラフがG2c(実線)で示されている。
【0086】
グラフG1aに示す操作の場合には反転動作が行われていないため、図7の説明と同様に、指令流量FcのグラフG2aは右方向に流量100%の位置から減少時の所定の制限値で変化量が制限されて流量が0(ゼロ)となる。
【0087】
グラフG2bでは、反転動作と判定される時刻t4から流量が0(ゼロ)になる時刻t6までの反転遅れ時間が時間δbtとして示される。グラフG2cでは、反転動作と判定される時刻t4から流量が0(ゼロ)になる時刻t5までの反転遅れ時間が時間δctとして示される。
【0088】
グラフG2bでは、左方向に流量約50%の位置まで操作しているため、左方向に流量100%の位置まで操作しているグラフG2cに比べて、変化量の制限値が小さく、反転遅れ時間δbtが、グラフG2cの反転遅れ時間δctよりも遅くなっている。図11では、グラフG2bにおける反転遅れ時間がδbtで示され、グラフG2cにおける反転遅れ時間がδctで示されている。
【0089】
図11に示すような反転動作における流量減少時の変化量の制限値を変更する反転時制限値変更部63について、以下に説明する。
【0090】
(反転時制限値変更部63)
反転時制限値変更部63は、図6に示すように、反転判定部76と、算出部77と、値選択部78と、変更値反映演算部79と、を有する。
【0091】
反転判定部76は、第4演算部81と、判定部82と、を有する。第4演算部81は、1ステップ前の指令流量Fc´と目標流量Ftの積を演算する。判定部82は、積が0(ゼロ)よりも大きい場合は、反転動作ではないと判定する。また、判定部82は、積が0(ゼロ)よりも小さい場合は、反転動作であると判定する。指令流量Fc´が右ステアリング位置への流量である場合、指令流量Fc´の値はプラスとなり、反転動作が行われる場合には目標流量Ftが左ステアリング位置への流量であるため、目標流量Ftの値はマイナスとなる。そのため、積が0(ゼロ)よりも小さくなる。また、指令流量Fcが左ステアリング位置への流量である場合、指令流量Fcの値はマイナスとなり、反転動作が行われる場合には目標流量Ftが右ステアリング位置への流量であるため、目標流量Ftの値はプラスとなる。そのため、積が0(ゼロ)よりも小さくなる。一方、反転動作でない場合には、指令流量Fc´と目標流量Ftは正負が同じとなるため、積が0(ゼロ)よりも大きくなる。
【0092】
このように、反転判定部76によって、ホイールローダ1の反転動作の判定が行われる。
【0093】
算出部77は、第5演算部83と、第6演算部84と、第7演算部85と、を有する。
【0094】
第5演算部83は、目標流量Ftの絶対値を算出する。第6演算部84は、目標流量Ftの絶対値と予め設定されている変更定数Aを積算する。第7演算部85は、積算した値|Ft|×Aと、予め設定されている定常値1を足し合し、反転動作中の制限値の変更値(1+|Ft|×A)を算出する。
【0095】
値選択部78は、反転判定部76の判定結果に基づいて、定常値1若しくは算出された変更値を選択する。値選択部78は、反転判定部76が反転動作していないと判定した場合には、定常値1を選択し、反転判定部76が反転動作をしていると判定した場合には、変更値(1+|Ft|×A)を選択する。
【0096】
変更値反映演算部79は、減少制限値算出部74によって算出された制限値に、値選択部78によって選択された定常値1若しくは変更値(1+|Ft|×A)を積算する。これによって、減少制限値算出部74によって算出された制限値を変更することができる。
【0097】
反転動作ではないと判定された場合には、減少制限値算出部74で算出された制限値に定常値1が積算されるため、制限値が変更されない。一方、反転動作と判定された場合には、減少制限値算出部74で算出された制限値に変更値(1+|Ft|×A)が積算されるため、制限値が変更される。これによって、反転動作の間、制限値を変更することが可能となる。
【0098】
例えば、反転動作を行っていない図11に示すグラフG1aの目標流量に対する指令流量Fcのグラフの場合、値選択部78によって定常値1が選択される。これにより、変更値反映演算部79によって、定常値である1が減少制限値算出部74によって算出された制限値に掛けられるため、制限値は変更されず予め設定されている制限値が用いられる。
【0099】
例えば、グラフG2cの場合には、右方向に流量100%の状態からジョイスティックレバー41を操作し、左方向に流量-100%の状態に操作が行われる。時刻t4を過ぎると、目標流量はマイナスの値となるが、指令流量Fcはプラスの値のままであるため、第4演算部81による積がマイナスの値となり、判定部82によって反転動作であると判定される。第5演算部83によって、-100%から100の値が算出される。ここで、Aの値を例えば0.01とすると、第6演算部84によって、100×0.01が演算され、1の値が算出される。次に、第7演算部85によって定常値1と第6演算部84で算出された1が足し合わされ、変更値2が算出される。反転動作中であるため、値選択部78において2が選択され、変更値反映演算部79によって、減少制限値算出部74で算出された制限値に2が掛けられ、制限値の値が2倍となる。このように、反転動作時に流量を-100%まで操作した場合には、制限値が2倍の大きさとなり、反転動作でない流量減少時(図11のグラフG2a)よりも流量減少時の変化量を2倍にすることができる。
【0100】
また、例えば、グラフG2bの場合には、右方向に流量100%の状態からジョイスティックレバー41を操作し、左方向に流量-50%の状態に操作が行われる。時刻t4を過ぎると、目標流量はマイナスの値となるが、指令流量Fcはプラスの値のままであるため、第4演算部81による積がマイナスの値となり、判定部82によって反転動作であると判定される。第5演算部83によって、-50%から50の値が算出される。ここで、Aの値を例えば0.01とすると、第6演算部84によって、50×0.01が演算され、0.5の値が算出される。次に、第7演算部85によって定常値1と第6演算部84で算出された0.5が足し合わされ、変更値1.5が算出される。反転動作中であるため、値選択部78において1.5が選択され、変更値反映演算部79によって、減少制限値算出部74で算出された制限値に1.5が掛けられ、制限値の値が1.5倍となる。このように、反転動作時に流量を-50%まで操作した場合には、制限値が1.5倍の大きさとなり、反転動作でない流量減少時(図11のグラフG2a)よりも流量減少時の変化量を1.5倍にすることができる。
【0101】
なお、本実施の形態では、コントローラ23の1ステップごとに目標流量Ftを算出しているため、目標流量の変化に従って制限値も変化する。すなわち、グラフG2cにおいて、目標流量Ftが流量0を超えて左方向に流量-100%の状態になるまでの間、制限値は1ステップごとに演算される。
【0102】
また、図11では、フロントフレーム11が右方向に移動している際にジョイスティックレバー41を左方向に移動させた際の反転動作(右から左への反転という)について記載したが、フロントフレーム11が左方向に移動している際にジョイスティックレバー41を右方向に移動させた際の反転動作(左から右への反転という)も同様である。
【0103】
<動作>
次に、本開示のホイールローダ1の動作について説明する。図12は、ホイールローダ1の動作を示すフロー図である。
【0104】
はじめに、ステップS10において、コントローラ23は、レバー角度センサ43で検出されたレバー角度θi_detectを取得する。
【0105】
次に、ステップS11において、コントローラ23の目標流量算出部51が、レバー角度―目標流量テーブルT1を用いて目標流量Ftを算出する。
【0106】
次に、ステップS12において、1ステップ前の指令流量Fc´と車速Vに基づいて、増加制限値算出部73が増加制限値テーブルT3を用いて増加時の制限値を算出する。また、1ステップ前の指令流量Fc´と車速Vに基づいて、減少制限値算出部74が減少制限値テーブルT4を用いて減少時の制限値を算出する。ステップS12は、決定ステップの一例に相当する。
【0107】
次に、ステップS13において、反転判定部76が、目標流量Ftと1ステップ前の指令流量Fc´に基づいて、ホイールローダ1が反転動作であるか否かを判定する。
【0108】
ステップS13において反転動作と判定された場合、ステップS14において値選択部78が変更値を選択する。変更値は、第5演算部83、第6演算部84および第7演算部85によって演算された値であり、(1+|Ft|×A)である。
【0109】
ステップS13において反転動作と判定されなかった場合、ステップS15において値選択部78は定常値(図6では1)を選択する。
【0110】
次に、ステップS16において、変更値反映演算部79が、定常値もしくは変更値のうち選択された値を、ステップS12で算出した減少演算値に反映する。
【0111】
次に、ステップS17において、上述したように増加減少判定部61が、目標流量Ftが1ステップ前の指令流量Fc´から増加しているか減少しているかを判定する。
【0112】
ステップS17において、流量が増加していると判定された場合、ステップS18において、選択部75が増加時の制限値を選択する。
【0113】
一方ステップS17において、流量が減少していると判定された場合、ステップS19において、選択部75が減少時の制限値を選択する。
【0114】
次に、ステップS20において、変化流量制限部53が、選択された制限値に基づいて指令流量の変化量Fc_changeを算出し、算出した指令流量の変化量Fc_changeと1ステップ前の指令流量Fc´を第2演算部54が足し合わすことにより、指令流量Fcが算出される。ステップS13~S20は、制御ステップの一例に相当する。
【0115】
次に、ステップS21において、コントローラ23から指令流量Fcが電磁パイロットバルブ33に送信される。指令流量Fcに基づいて電磁パイロットバルブ33のスプールが移動し、油圧バルブ31が操作される、油圧バルブ31のスプールの移動によってステアリングシリンダ9a、9bに供給される作動油の量が変化しステアリング操作が行われる。ステップS21は、送信ステップの一例に相当する。
【0116】
(実施の形態2)
上記実施の形態1では、反転判定部76は、反転動作の判定を1ステップ前の指令流量Fc´と目標流量Ftの積がプラスの値かマイナスの値かによって反転動作であるか否かを判定している。これは、フロントフレーム11が一方向に回動しているときに、ジョイスティックレバー41の操作が中立位置P1を超えたときに反転動作と判定されることであり、中立位置P1(図11の流量がゼロの位置)を第1の所定閾値の一例として反転動作を判定している。
【0117】
また、反転動作ではないと判定された場合には、定常値1が選択され、減少制限値算出部74で算出された値がそのまま用いられるため、制限値の変更が停止され制限値が元に戻される第2の所定閾値の一例も中立位置P1(図11の流量がゼロの位置)となる。
【0118】
対して、本実施の形態2では、反転動作の判定の第1の所定閾値が中立位置P1に限らなくても良く、さらに制限値の変更を停止して制限値を元に戻す第2の所定閾値も中立位置P1に限らなくてもよい。
【0119】
図13は、反転動作の判定の第1の所定閾値をBとし、制限値の変更を停止して制限値を元に戻す際の第2の所定閾値をCとしたグラフを示す図である。図13では、一例として閾値Bをプラスの値とし、閾値Cをプラスの値とする。この場合、反転動作と判定される時刻がt4´となっており、図11の時刻t4よりも速くなっている。また、図13には、グラフG2bにおいて制限値の変更を停止して制限値を元に戻す時刻がt6´として示され、グラフG2bでは、時刻t6´を境にして制限値が値選択部178による反転なしの制限値に戻されてから、増加制限値算出部73で算出された増加時の制限値になる。また、グラフG2cにおいて制限値の変更を停止して制限値を元に戻す時刻がt5´として示され、グラフG2cでは、時刻t5´を境にして制限値が値選択部178による反転なしの制限値に戻されてから、増加制限値算出部73で算出された増加時の制限値になる。なお、図13では、フロントフレーム11が右方向に移動している際にジョイスティックレバー41を左方向に移動させた際の反転動作(右から左への反転という)について記載したが、フロントフレーム11が左方向に移動している際にジョイスティックレバー41を右方向に移動させた際の反転動作(左から右への反転という)の場合、閾値B、Cはマイナスの値となる。
【0120】
本実施の形態2のホイールローダ1では、閾値B、Cを設定可能であるため、実施の形態1の制限値決定部55とは異なる制限値決定部155を備えている。
【0121】
図14は、本実施の形態2の制限値決定部155を示す図である。制限値決定部155は、実施の形態1の制限値決定部55と比べて、実施の形態1と異なる反転時制限値変更部163を有している。
【0122】
本実施の形態2の反転時制限値変更部163は、反転判定部176と、算出部177と、値選択部178と、を有する。
【0123】
反転判定部176は、反動動作が行われているか否かを判定する。反転判定部176は、1ステップ前の指令流量Fc´>C、かつ目標流量Ft<Bのとき右から左への反転動作と判定できる。これにより、右から左への反転動作において、閾値Bを超えてジョイスティックレバー41が操作されたことを判定でき、制限値を変更することができる。また、右から左への反転中にFc´<C若しくはFt>Bに達すると反転中ではないと判定する。Fc´<Cにより、右から左への反転動作において、指令流量Fcが閾値Cに達したことを判定でき、制限値の変更を停止して制限値を元に戻すことができる。また、Ft>Bによりジョイスティックレバー41を閾値Bよりも右側に戻し、反転動作が終了したことを判定できる。
【0124】
なお、反転判定部176は、1ステップ前の指令流量Fc´<-C、かつ目標流量Ft>-Bのとき左から右への反転動作と判定できる。これにより、左から右への反転動作において、閾値Bを超えてジョイスティックレバー41が操作されたことを判定でき、制限値を変更することができる。また、左から右への反転動作中にFc´>-C若しくはFt<-Bに達すると反転中ではないと判定する。Fc´>-Cにより、左から右への反転動作において、指令流量Fcが閾値Cに達したことを判定でき、制限値の変更を停止して制限値を元に戻すことができる。また、Ft<-Bによりジョイスティックレバー41を閾値Bよりも左側に戻し、反転動作が終了したことを判定できる。
【0125】
算出部177は、第7演算部181と、第8演算部182と、第9演算部183と、を有する。これら第7演算部181と、第8演算部182と、第9演算部183は、右から左への反転の際の変更値を演算する。第7演算部181は、閾値Bから目標流量Ftの差分を算出し、第8演算部182は、その差分に変更定数Aを積算する。第9演算部183は、積算した結果に定常値1を足し、右から左の反転動作時の変更値を求めることができる。これによって目標流量Ftが閾値Bよりも小さい側に超えた差分が大きいほど変更値の値が大きくなるため、変更値反映演算部79の演算により制限値を大きくすることができる。
【0126】
なお、図示していないが、左から右への反転動作時の変更値は、目標流量Ftと閾値Bを足し、足した結果に変更定数Aを積算し、積算した結果に定常値1を足すことによって求めることができる。
【0127】
値選択部178は、反転判定部176による反転なし、右から左への反転、および右から左への反転のいずれかの判定に従って、定常値1、右から左への反転動作時の変更値、および左から右への反転動作時の変更値のいずれかを選択する。選択された定常値1もしくは変更値が変更値反映演算部79によって減少時の制限値に反映される。
【0128】
<特徴>
(1)
本実施の形態にかかるバルブシステム8は、電磁パイロットバルブ33(バルブの一例)と、コントローラ23(制御部の一例)と、を備える。電磁パイロットバルブ33は、ホイールローダ1(作業機械の一例)のステアリング操作を行うための作動油の流量を調整する。コントローラ23は、入力される操作指令に対応する目標流量Ftと、目標流量Ftの変化量Ft_changeとに基づき、作動油の指令流量Fcを決定する電磁パイロットバルブ33への指令信号を決定する。コントローラ23は、ステアリングが動作している方向の反対方向にホイールローダ1を動作させるような反転操作指令を受信した場合、反転操作指令の大きさに応じて変化量を制御する。
【0129】
このように反転操作指令の大きさに応じて流量の変化量を制御することができるため、反転動作時の急な作動油の入出力の停止を緩和することができ、車体の振動を抑制することができる。
【0130】
また、例えば、流量の変化量を制限するように制御した場合、ジョイスティックレバー41の操作に対してステアリング動作が遅れることになるが、反転操作指令の大きさに応じて変化量を制御することができる。例えば、反転操作指令が大きく反対方向にジョイスティックレバー41を大きく操作した場合、オペレータは多少振動が生じてもステアリング方向を速く変更したいと考えられるため、流量の変化量を大きくすることによってステアリング方向の変更を速くできオペレータの意図に応じたホイールローダ1の動作を実現することができる。また、例えば、反転操作指令が小さく反対方向に少しだけジョイスティックレバー41を操作した場合、ステアリング方向を速く変更する意図がオペレータにはないと考えられるため、流量の変化量を小さくすることによってステアリング方向の変更を遅くしオペレータの意図に応じたホイールローダ1の動作を実現することができる。
【0131】
(2)
本実施の形態にかかるバルブシステム8では、コントローラ23(制御部の一例)は、反転操作指令が大きいとき、変化量を大きくする。
これにより、反転操作指令が大きいほど、ステアリング動作の速度を速くすることができる。
【0132】
(3)
本実施の形態にかかるバルブシステム8では、コントローラ23(制御部の一例)は、指令流量を、変化量に対する制限値と目標流量Ftとに基づいて決定する。コントローラ23は、反転操作指令を受信した場合、目標流量Ftと中立位置P1または閾値B(第1の所定閾値の一例)との差に応じて制限値を変化させる、
【0133】
このように流量変化に制限をかけているため、反転動作時の急な作動油の入出力の停止を緩和することができ、車体の振動を抑制することができる。
【0134】
また、制限値を設けているため、ジョイスティックレバー41の操作に対してステアリング動作が遅れることになるが、本実施の形態では、目標流量Ftと第1の所定閾値との差に応じて、制限値を変化させることができる。例えば、第1の所定閾値を超えて反対方向に操作部材を大きく操作した場合、オペレータは多少振動が生じてもステアリング方向を速く変更したいと考えられるため、制限値を大きくすることによってステアリング方向の変更を速くできオペレータの意図に応じたホイールローダ1の動作を実現することができる。また、例えば、第1の所定閾値を超えて反対方向に少しだけジョイスティックレバー41を操作した場合、ステアリング方向を速く変更する意図がオペレータにはないと考えられるため、制限値を小さくすることによってステアリング方向の変更を遅くしオペレータの意図に応じたホイールローダ1の動作を実現することができる。
【0135】
(4)
本実施の形態にかかるバルブシステム8では、コントローラ23は、指令流量Fcが中立位置P1または閾値C(第2の所定閾値の一例)に達すると、制限値の変化を停止し、予め設定された流量の変化量の制限値に戻す。
【0136】
これにより、反転動作が終了すると、制限値の変化を停止して元の制限値に戻すことが可能となる。
【0137】
(5)
本実施の形態にかかるバルブシステム8は、目標流量Ftを入力可能なジョイスティックレバー41を更に備える。第1の所定閾値は、ジョイスティックレバー41の中立位置P1である。
【0138】
これにより、目標流量Ftが中立位置P1から超えた程度に応じて流量の変化量の制限値を変化させることができる。
【0139】
(6)
本実施の形態にかかるバルブシステム8は、目標流量Ftを入力可能なジョイスティックレバー41を更に備える。第2の所定閾値は、中立位置P1である。
【0140】
これにより、目標流量Ftが中立位置P1に達すると、制限値の変化を停止して元の制限値に戻すことが可能となる。
【0141】
(7)
本実施の形態にかかるバルブシステム8では、コントローラ23は、目標流量Ftと中立位置P1または閾値Bとの差が大きい程、制限値が大きくなるように変化させる。
【0142】
これにより、目標流量Ftが第1の所定閾値から超えるほど、ステアリング動作の速度を速くすることができる。
【0143】
(8)
本実施の形態にかかるバルブシステム8では、流量の減少時と増加時において、制限値が異なっている。
【0144】
これによって、例えば、流量を増加させるときの制限値を、流量を減少させるときの制限値よりも大きくすることができ、ステアリングの動作速度を比較的速く加速させることができる。
【0145】
(9)
本実施の形態にかかるバルブシステム8は、目標流量Ftを入力可能なジョイスティックレバー41を更に備える。コントローラ23は、ジョイスティックレバー41の中央位置からの角度に基づいて目標流量を求める。
【0146】
これによって、ジョイスティックレバー41を中立位置P1から移動させた量分、ステアリング操作される速度制御において、反転動作時における車体の振動を抑制し、オペレータの意図に応じた作業機械の動作を実現することができる。
【0147】
(10)
本実施の形態にかかるバルブシステム8では、ジョイスティックレバー41の中立位置P1は、中央位置である。
【0148】
このように、速度制御においてジョイスティックレバー41の中立位置P1は、操作部材の左右の中央位置に設けられている。
【0149】
(11)
本実施の形態にかかるホイールローダ1(作業機械の一例)は、フロントフレーム11と、リアフレーム12と、連結軸部13(アーティキュレート機構の一例)と、バルブシステム8と、ステアリングシリンダ9a、9b(油圧アクチュエータの一例)と、を備える。連結軸部13は、リアフレーム12に対してフロントフレーム11を回動可能に連結する。ステアリングシリンダ9a、9bは、バルブシステム8から供給された作動油で動作し連結軸部13を駆動する。
【0150】
これにより、ホイールローダ1において、反転動作時における車体の振動を抑制し、オペレータの意図に応じたホイールローダ1の動作を実現することができる。
【0151】
(12)
本実施の形態のバルブの制御方法は、ホイールローダ1のステアリング操作を行うための作動油の流量を調整するバルブの制御方法であって、ステップS12(決定ステップの一例)と、ステップS21(送信ステップの一例)と、ステップS13~S20(制御ステップの一例)と、を備える。ステップS12は、入力される操作指令に対応する目標流量Ftと、目標流量Ftの変化量Ft_changeとに基づき、作動油の指令流量Fcを決定する電磁パイロットバルブ33(バルブの一例)への指令信号を決定する。ステップS21は電磁パイロットバルブ33に指令流量Fcに関する信号を送信する。ステップS13~S20は、ステアリングが動作している方向の反対方向にホイールローダ1を動作させるような反転操作指令を受信した場合、反転操作指令の大きさに応じて変化量を制御する。
【0152】
このように反転操作指令の大きさに応じて流量の変化量を制御することができるため、反転動作時の急な作動油の入出力の停止を緩和することができ、車体の振動を抑制することができる。
【0153】
また、例えば、流量の変化量を制限するように制御した場合、ジョイスティックレバー41の操作に対してステアリング動作が遅れることになるが、反転操作指令の大きさに応じて変化量を制御することができる。例えば、反転操作指令が大きく反対方向にジョイスティックレバー41を大きく操作した場合、オペレータは多少振動が生じてもステアリング方向を速く変更したいと考えられるため、流量の変化量を大きくすることによってステアリング方向の変更を速くできオペレータの意図に応じたホイールローダ1の動作を実現することができる。また、例えば、反転操作指令が小さく反対方向に少しだけジョイスティックレバー41を操作した場合、ステアリング方向を速く変更する意図がオペレータにはないと考えられるため、流量の変化量を小さくすることによってステアリング方向の変更を遅くしオペレータの意図に応じたホイールローダ1の動作を実現することができる。
【0154】
<他の実施形態>
以上、本開示の一実施の形態について説明したが、本開示は上記実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0155】
(A)
上記実施の形態では、ジョイスティックレバー41を中立位置P1から移動させた量分、ステアリング操作される速度制御において説明したが、操作部材の操作角と作業機械のステアリング角が対応する位置制御においても上記実施の形態を適用できる。
【0156】
上記実施の形態では、検出角度θi_detectに基づいて、目標流量を算出しているが、ジョイスティックレバー41の操作角とホイールローダ1のステアリング角との偏差に基づいて目標流量を算出すればよい。
【0157】
この場合、図15に示すバルブシステム108に示すように、ステアリング角度θs_realを検出する車体フレーム角度センサ125が設けられている。車体フレーム角度センサ125によって検出されたステアリング角度θs_detectが、コントローラ23に入力される。コントローラ23では、ステアリング角度θs_detectと検出角度θi_detectとの偏差角を演算し、偏差角に基づいて目標流量が算出される。
【0158】
これによって、ジョイスティックレバー41の操作角と作業機械のステアリング角が対応する位置制御において、反転動作時における車体の振動を抑制し、オペレータの意図に応じた作業機械の動作を実現することができる。
【0159】
また、ジョイスティックレバー41の中立位置P1は、偏差がゼロの位置である。このように、中立位置P1が決められるため位置制御において操作部材の中立位置P1は、特定の位置ではなくステアリング角に応じて変化する。
【0160】
(B)
上記実施の形態では、目標流量Ftと1ステップ前の指令流量Fc´に基づいて、反転動作であるか否かの判定を行っていたが、これに限らなくても良く、例えばジョイスティックレバー41の操作角度とステアリング角に基づいて、反転動作であるか否かを判定してもよい。
【0161】
(C)
上記実施の形態では、コントローラ23は1ステップ前の指令流量Fc´を用いているが、1ステップ前に限られるものではない。
【0162】
(D)
上記実施の形態では、電磁パイロットバルブ33から入力されるパイロット圧に応じて油圧バルブ31からステアリングシリンダ9a、9bに供給される油の供給量が制御されるように構成されていたが、油圧バルブ31を介さずに電磁パイロットバルブ33からの油が直接ステアリングシリンダ9a、9bに供給される構成であってもよい。すなわち、電磁パイロットバルブ33に代えて電磁メインバルブが用いられてもよい。
【0163】
(E)
上記実施の形態では、ジョイスティックレバー41のみ記載していたが、ステアリングホイールが設けられていてもよい。ステアリングホイールの回動による信号はコントローラ23に入力され、その回動に基づいて電磁パイロットバルブ33が操作される。
(F)
上記実施の形態のホイールローダ1はオペレータが搭乗して操作してもよいし、無人で操作されてもよい。
【0164】
(G)
上記実施の形態では、電磁パイロットバルブ33の制御方法として、図12に示すフローチャートに従って、実施する例を挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
【0165】
例えば、図12に示すフローチャートに従って実施される電磁パイロットバルブ33の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムとして、本発明を実現しても良い。
【0166】
また、プログラムの一つの利用形態は、コンピュータにより読取可能な、ROM等の記録媒体に記録され、コンピュータと協働して動作する態様であってもよい。
【0167】
またプログラムの一つの利用形態は、インターネット等の伝送媒体、光・電波・音波などの伝送媒体中を伝送し、コンピュータにより読みとられ、コンピュータと協働して動作する態様であってもよい。
【0168】
また、上述したコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアに限らずファームウェアや、OS、更に周辺機器を含むものであってもよい。
【0169】
なお、以上説明したように、電磁パイロットバルブ33の制御方法はソフトウェア的に実現してもよいし、ハードウェア的に実現しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明のバルブシステムは、反転動作時の振動を抑制しながら、操作指令に合わせた制御を可能にする効果を有し、作業機械の一例であるホイールローダ等に有用である。
【符号の説明】
【0171】
1 :ホイールローダ
8 :バルブシステム
23 :コントローラ
33 :電磁パイロットバルブ
34 :パイロットポンプ
41 :ジョイスティックレバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15