(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】漏油検出材
(51)【国際特許分類】
G01M 3/16 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
G01M3/16 C
(21)【出願番号】P 2023140007
(22)【出願日】2023-08-30
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000232922
【氏名又は名称】日油技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】弁理士法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小園 直輝
(72)【発明者】
【氏名】西村 勇介
【審査官】川野 汐音
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-012085(JP,A)
【文献】特開2005-156195(JP,A)
【文献】特開平02-216426(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2015-0052609(KR,A)
【文献】特開2005-114567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00-3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の色が着色された吸油性を有する着色層と、前記着色層の上面の少なくとも一部に接して設けられ、白色粒子又は白色粉末が透明樹脂層に含有され又は付された吸油性を有する白色層と、前記白色層の上面を覆うように設けられた透明な疎水性樹脂から成る保護層と、前記着色層の下面側に設けられ、吸油性と保油性とを有し、撥水性を有する材料で形成され又は撥水処理が施されている吸油層とを備える漏油検出材であって、
前記着色層と前記白色層とに水の浸透を防止するように、前記着色層及び前記白色層とが前記保護層と前記吸油層とに挟み込まれ
、且つ漏油検出対象である屈折率が1.40~1.55の油と前記白色粒子又は前記白色粉末との屈折率差が0.1以下であり、
前記吸油層の少なくとも一部の面に漏油又は漏油と水とが接したとき、前記漏油のみが前記吸油層に吸油されて前記着色層及び前記白色層に浸透し、前記白色層が透明状態乃至半透明状態となって、前記着色層の色相が前記保護層を介して目視できることを特徴とする漏油検出材。
【請求項2】
前記吸油層の周面の一部が、前記漏油又は漏油と水とが直接接触するように露出面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の漏油検出材。
【請求項3】
前記吸油層が、疎水性の合成樹脂繊維から成り、撥水性を呈する布帛であることを特徴とする請求項1に記載の漏油検出材。
【請求項4】
前記吸油層と前記着色層とが、親油性の第1疎水性粘着層を介して接合され、前記着色層及び前記白色層とが前記保護層と前記第1疎水性粘着層とに挟み込まれていることを特徴とする請求項1に記載の漏油検出材。
【請求項5】
前記保護層と前記白色層とが、透明な第2疎水性粘着層を介して接合されており、前記白色層と前記着色層とが前記第2疎水性粘着層と前記吸油層とに挟み込まれていることを特徴とする請求項1に記載の漏油検出材。
【請求項6】
前記着色層が黒、紺、赤、橙、青、緑、茶、及び紫から選ばれるいずれかの色であることを特徴とする請求項1に記載の漏油検出材。
【請求項7】
前記着色層及び/又は前記白色層が、文字、記号、及び/又は図形の形状に形付けられており、又は前記着色層が、文字、記号、及び/又は図形の形状に印刷されていることを特徴とする請求項1に記載の漏油検出材。
【請求項8】
前記白色粒子又は白色粉末の粒径が20μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の漏油検出材。
【請求項9】
前記白色粒子又は白色粉末が、有機化合物、プラスチック粉末、金属塩、ガラスビーズ及びガラスフィラーから選ばれたものである請求項1に記載の漏油検出材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油漏れを確実に検出でき且つ油漏れの油を一時的に保持できる漏油検出材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油が貯蔵されるタンクや容器の溶接個所、油配管の接手等の油漏れは、定期検査等でタンクや容器が空のとき、油配管に油が流れていないときは、空のタンクや容器、油配管に窒素ガスを所定圧まで封入し、窒素ガスの圧力低下割合を観察して漏れの有無を検査していた。しかし、油が貯蔵されているタンクや容器、油が流れている油配管での油漏れは、視覚で検出せざるを得ないが、少量の油漏れは視覚では検出されないおそれがある。また、油漏れの油が地面に滴下すると土壌汚染となることがある。
【0003】
このように油が貯蔵されているタンクや容器、油が流れている油配管から油漏れを検出可能な検出材として、下記特許文献1には、透水性と油を吸収して保持する油保持性とを有する合成樹脂製であって、厚さが200μm以上の不織布で形成され、前記不織布が着色されている着色層と、前記着色層の一面側に積層され、前記着色層が水で濡れたとき不透明であり、前記着色層が前記油で濡れたとき透明となって、前記着色層の色相が透視できるように、屈折率を1.5~1.6とする白色粉末が透明樹脂に分散された厚さが少なくとも150μmの白色層とを有する漏油検出材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記漏油検出材によれば、油が貯蔵されているタンクや容器、油が流れている油配管から油漏れを検出できる。
しかしながら、この漏油検出材は、雨水等の水に濡れても白色層が若干透明化し、漏油と誤認するおそれがある。また、水濡れした漏油検出材は白色層が十分に乾燥しなければ、漏油が白色層に十分浸透せず、白色層の透明化が不十分となって、漏油を確実に検出できないことが判明した。更に、白色層の白色粉末の屈折率が1.5~1.6であることから、屈折率1.4のシリコーン油では白色層が十分に透明化せず、シリコーン油の漏油が検出し難いことも判明した。
【0006】
本発明は、雨水等の水に濡れても、漏油と誤認するおそれがなく、濡れた状態でも漏油を確実に検出でき、且つシリコーン油等の屈折率が1.5未満の油でも漏油が検出可能である漏油検出材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するためになされた漏油検出材は、所定の色が着色された吸油性を有する着色層と、前記着色層の上面の少なくとも一部に接して設けられ、白色粒子又は白色粉末が透明樹脂層に含有され又は付された吸油性を有する白色層と、前記白色層の上面を覆うように設けられた透明な疎水性樹脂から成る保護層と、前記着色層の下面側に設けられ、吸油性と保油性とを有し、撥水性を有する材料で形成され又は撥水処理が施されている吸油層とを備える漏油検出材であって、前記着色層と前記白色層とに水の浸透を防止するように、前記着色層及び前記白色層とが前記保護層と前記吸油層とに挟み込まれ、且つ漏油検出対象である屈折率が1.40~1.55の油と前記白色粒子又は前記白色粉末との屈折率差が0.1以下であり、前記吸油層の少なくとも一部の面に漏油又は漏油と水とが接したとき、前記漏油のみが前記吸油層に吸油されて前記着色層及び前記白色層に浸透し、前記白色層が透明状態乃至半透明状態となって、前記着色層の色相が前記保護層を介して目視できることを特徴とするものである。
【0008】
前記吸油層の周面の一部が、前記漏油又は漏油と水とが直接接触するように露出面に形成されていることにより、漏油を迅速に検出でき好ましい。
【0009】
前記吸油層が、疎水性の合成樹脂繊維から成り、撥水性を呈する布帛であることにより、保油性を高めることができ好ましい。
【0010】
前記吸油層と前記着色層とが、親油性の第1疎水性粘着層を介して接合され、前記着色層及び前記白色層とが前記保護層と前記第1疎水性粘着層とに挟み込まれていることにより、吸油層と着色層とを隙間なく確実に接合できる。
【0011】
前記保護層と前記白色層とが、透明な第2疎水性粘着層を介して接合されており、前記白色層と前記着色層とが前記第2疎水性粘着層と前記吸油層とに挟み込まれていることにより、白色層と着色層との側面及び白色層の上面を確実に第2疎水性粘着層により被覆でき好ましい。
【0012】
前記着色層が黒、紺、赤、橙、青、緑、茶、及び紫から選ばれるいずれかの色であることが、白色層の白色との違いが明瞭となるので好ましい。
【0013】
前記着色層及び/又は前記白色層が、文字、記号、及び/又は図形の形状に形付けられており、又は前記着色層が、文字、記号、及び/又は図形の形状に印刷されていると、これら形状を漏油の際に表示又は非表示にすることができるので、好ましい。
【0014】
前記白色粒子又は白色粉末の粒径が20μm以下であることが好ましい。
【0015】
前記白色粒子又は白色粉末が、有機化合物、プラスチック粉末、金属塩、ガラスビーズ及びガラスフィラーから選ばれたものが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、漏油検出材の白色層及び着色層が、透明な疎水性樹脂から成る保護層と、吸油性と保油性とを有し、撥水性を有する材料で形成され又は撥水処理が施されている吸油層とに覆われて防水されており、漏油検出材が雨水等の水で濡れても、水は吸油層、白色層及び着色層に浸透せず、白色層が水で濡れて透明化することによる誤認を防止できる。更に、吸油層も撥水性を有するから、雨水等の水を吸水することがなく、漏油検出材が水で濡れていても、漏油を検出できる。この吸油層は保油性を有しており、着色層及び白色層に浸透する漏油を保持でき、確実に漏油を検知できる。
また、白色層の白色粒子又は白色粉末は、漏油検出対象の油の屈折率との関係で最適なものを選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明を適用する漏油検出材の一例の正面図及び断面図である。
【
図2】
図1の漏油検出材の吸油層に漏油が吸油されたときの漏油検出材の正面図である。
【
図3】本発明を適用する漏油検出材の他の例の断面図である。
【
図4】本発明を適用する漏油検出材の他の例の断面図である。
【
図5】本発明を適用する漏油検出材の他の例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を適用する漏油検出材の一例の正面図を
図1(a)に示し、そのX-X断面での断面図を
図1(b)に示す。
図1に示す漏油検出材10は、
図1(a)に示すように矩形状であって、所定の色が着色された矩形状の着色層16と、着色層16と略同一大きさの矩形状であって、着色層16の上面に密着して設けられた白色層14と、着色層16及び白色層14よりも大形であって、白色層14の上面を覆うように設けられた保護層12と、着色層16の下面に第1疎水性粘着層20を介して接合された吸油層18と、吸油層18の下面を覆うように離型紙用粘着層22を介して接合された離型紙24とを備えており、白色層14と着色層16とは、保護層18と第1疎水性粘着層20とに挟み込まれている。
【0019】
着色層16は、吸油性を有する材料、例えば紙、不織布、織物等の布帛、多孔質セメント、多孔質セラミックス、多孔質金属等の多孔質無機材、発泡プラスチック、インキ塗膜を挙げることができる。これらの材料には、所定の色の着色が施されている。着色は、日光等に対して退色し難く耐光性に優れた顔料や染料又はその混合物のような着色剤により着色がなされていることが好ましく、目視や画像センサ等で認識しやすい白とコントラストが明瞭な色相、中でも黒、紺、赤、橙、青、緑、茶、紫のいずれかの有彩色が一層好ましい。黒や紺は、明度の変化となり易いことに起因して影と見間違える恐れがあるため、彩度の変化が生じ危険色でもある赤が、実用的であってなお一層好ましい。
着色は、吸油性を有する材料を構成する素材に着色されていてもよく、所定形状に成形した材料に着色してもよい。着色層16の厚さは1~150μmとすることが好ましい。
【0020】
着色層16の上面には、着色層16と略同一大きさの矩形状の白色層14が着色層16の上面に密着して設けられている。白色層14には、白色粒子又は白色粉末が吸油性の透明樹脂層に含有されている。白色層14は、漏油が浸透したとき、透明状態乃至半透明状態となる。この現象は、浸透した漏油を通過してきた光が白色粉末又は白色粒子との境界で大きく屈曲されることなく白色層14を通過できるからである。
【0021】
このような白色粉末又は白色粒子としては、脂肪酸誘導体、アルコール誘導体、エーテル誘導体、アルデヒド誘導体、ケトン誘導体、アミン誘導体、アミド誘導体、ニトリル誘導体、炭化水素誘導体、チオール誘導体、スルフィド誘導体等の有機化合物粉末又は粒子、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、アクリロニトリル・スチレン、ポリメチルメタアクリル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタラート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン等のプスチック粉末又は粒子、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属塩、水酸化アルミニウム、タルク等の金属塩粉末又は粒子、ガラスビーズ、ガラスフィラーを挙げることができる。
【0022】
このような白色粉末又は白色粒子は、漏油検出対象の油との屈折率差が0.1以下となるように選択することが好ましい。漏油検出対象の油は、石油等の鉱物、動物、植物からとれる疎水性で且つ水に浮き常温で液体のものであって、屈折率が1.40~1.55の油、例えば絶縁油、灯油、軽油、重油、亜麻仁油、パラフィン油、シリコーン油、作動油である。このような油を漏油検出対象とした場合、白色粉末又は白色粒子としては、ステアリン酸(屈折率1.43)、タルク(屈折率1.54)、尿素樹脂粉末(屈折率1.57)、炭酸カルシウム(屈折率1.50~1.64)、水酸化アルミニウム(屈折率1.57)、炭酸マグネシウム(屈折率1.52~1.53)、ガラスビーズ(屈折率1.52~1.57)、ガラスフィラー(屈折率1.50~1.58)が好ましい。
これらの白色粉末又は白色粒子は、単体或いは2~3種類を混合して用いてもよい。白色粉末又は白色粒子の粒径は、20μm以下が好ましく、特に10μm以下では、光の散乱効果が高まり白色層14の白色度が高くなり好ましい。尚、白色粉末又は白色粒子の粒径はグラインドメータで測定した。
【0023】
図1に示す白色層14は、白色粉末又は白色粒子が、吸油性の透明樹脂層に分散されて白色層14を形成している。透明樹脂としては、親油性の透明樹脂であって、例えばセルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、合成ゴム系樹脂を挙げることができる。特に、セルロース系樹脂(例えば、エチルセルロース)やポリエステル系樹脂が好ましい。白色粉末又は白色粒子の透明樹脂に対する配合量は、透明樹脂に対して質量比で0.5~15倍とすることが好ましい。
【0024】
このような白色層14の厚さは1μm以上とすることにより、白色層14を充分に不透明とすることができ好ましい。白色層14の上限は漏油検出材10の柔軟性との関係から260μm以下とすることが好ましい。
尚、白色層14は、所定厚さの親油性の透明樹脂層の両面又は片面に、接着層を介して又は直接白色粉末又は白色粒子を付したものでもよい。
【0025】
保護層12は、着色層16及び白色層14よりも大形であって、白色層14の上面及び着色層16及び白色層14の側面が保護層12で覆われている。保護層12は、透明な疎水性樹脂で形成されている。透明な疎水性樹脂としては、セルロース、セルロース誘導体、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリスチレン、塩酸ゴム、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリブテン、ポリビニルブチラール、ポリエチレンオキサイド、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ヒドロキシエチルセルロース、ポリイミドを挙げることができる。
【0026】
着色層16は、その下面が第1疎水性粘着層20を介して吸油層18が接合されている。吸油層18は、着色層16及び白色層14よりも大形であり、吸油性と保油性とを有し、撥水性を有する材料で形成又は撥水性処理が施されている。
吸油層18としては、疎水性の合成樹脂繊維から成り、撥水性を呈する不織布や織物等の布帛は、吸油した油を繊維間に保持できる保油性を有しており、好適に用いることができる。疎水性の合成樹脂繊維としては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維を挙げることができる。合繊樹脂繊維としてのナイロン繊維や天然繊維、アセテート等の半合成繊維も用いることができるが、親水性を有しているので繊維又は布帛に撥水処理を施すことにより用いることができる。撥水処理剤としては、シリコーン系撥水剤とフッ素系撥水剤とが知られているが、フッ素系処理剤は撥水性と撥油性とを併有するから、シリコーン系撥水剤を好適に用いることができる。
このような吸油層18としては、高密度ポリエチレン不織布(旭・デュポンフラッシュスパンプロダクツ社製のタイベック1056DR(商品名)、坪量54g/m2)を好適に用いることができる。
【0027】
図1に示す漏油検出材10では、着色層16の下面と吸油層18の上面とを、親油性の第1疎水性粘着層20を介して接合している。第1疎水性粘着層20は、親油性であるから、吸油層18に吸油された油は着色層16に浸透することができる。このような第1疎水性粘着層20を形成する粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリビニール系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、及びこれらの複合粘着剤を挙げることができる。
【0028】
漏油検出材10の吸油層18の少なくとも一部、例えば
図1(b)に示すように吸油層18の側面が露出面に形成されていると、漏油が吸油層18に直接接触することができ、迅速に漏油が吸油層18に吸油され、着色層16及び白色層14に漏油が浸透でき好ましい。
図1に示す漏油検出材10は、吸油層18の下面が、離型紙用粘着層22を介して離型紙24により覆われている。離型紙24を剥離することにより、離型紙用粘着層22を介してフランジ等の漏油検出対象物に漏油検出材10を貼着できる。離型紙用粘着層22も、親油性で且つ疎水性の粘着剤で形成することにより、離型紙用粘着層22から漏油を吸油層18内に浸透することができる。
尚、離型紙用粘着層22も、第1疎水性粘着層20と同一の親油性で且つ疎水性の粘着剤、具体的にはゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリビニール系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、及びこれらの複合粘着剤で形成されていることが好ましい。
【0029】
図1に示す漏油検出材10は、吸油層18の一面に、親油性の第1疎水性粘着層20を形成し,吸油層18の他面に離型用粘着層22を形成した後、第1疎水性粘着層20に着色層16と白色層14とを積層し、次いで、白色層14の上面及び着色層16と白色層14との側面を透明な保護層12で覆う。その後、離型紙用粘着層22に離型紙24を貼着することにより得ることができる。
【0030】
図1に示す漏油検出材10は、漏油検出対象のフランジ等の所定箇所に、離型紙24を剥離して露出した離型紙用粘着層22を押し付けることにより貼り付けることができる。貼り付けた漏油検出材10に水や漏油が接触してない状態では、
図1(a)に示すように保護層12からは白色層14の白色のみが視認でき、着色層16の色相は視認できない。白色層14に分散された白色粒子又は白色粉末と、白色粒子又は白色粉末を囲む微小空間の空気との屈折率差が大きく、白色層14を透過してきた光が白色粒子又は白色粉末と微小空間との境界で大きく屈曲されて分散されるからと推測される。
【0031】
一方、貼り付けた漏油検出材10に漏油が接触したとき、第1疎水性粘着層20及び吸油層18が親油性であり、且つ吸油層18の側面の露出面等から漏油が吸油層18及び第1疎水性粘着層20を浸透して着色層16及び白色層14にも浸透する。白色層14に漏油が浸透したとき、白色層14は透明又は半透明となって、
図2に示すように着色層16の色相が視認できる。白色層14に毛細管現象等により浸透し白色粒子又は白色粉末を囲む微小空間を満たした漏油と白色粒子又は白色粉末との屈折率差は、空気と白色粒子又は白色粉末との屈折率差よりも小さく、白色層14を透過してきた光が白色粒子又は白色粉末と微小空間内の漏油との境界で大きく屈曲されることなく透過できるからと推察される。このことからも白色粉末又は白色粒子は、漏油検出対象の油との屈折率差が0.1以下となるように選択することが好ましい。
【0032】
また、貼り付けた漏油検出材10に雨水等の水が接触しても、保護層12、第1疎水性粘着層20及び吸油層18が疎水性乃至撥水性であるため、これらに囲まれている着色層16と白色層14とには水は浸透することができず、着色層16と白色層14とに水が浸透することによる変色を回避できる。また、保護層12、第1疎水性粘着層20及び吸油層18にも水が浸透しておらず、漏油検出材10の表面が濡れている状態であっても、漏油が吸油層18の側面の露出面に接触したとき、直ちに吸油層18内に漏油を吸油し、白色層14を透明又は半透明化して、保護層12から着色層16の色相を視認できる。
尚、吸油層18の側面の露出面に漏油と水とが同時に接触しても、吸油層18には漏油のみが選択的に吸油される。
【0033】
図1に示す漏油検出材10をフランジ等に張り付けている離型紙用粘着層22の下面側から漏油があった場合でも、疎水性で且つ親油性の接着剤で離型紙用粘着層22を形成することにより、離型紙用粘着層22を介して吸油層18に漏油が吸油される。このように吸油層18に吸油された漏油は吸油層18内に保油されるから、フランジ等からの漏油が直ちに地面等に流出することを防止できる。
【0034】
図1及び
図2に示す漏油検出材10は、着色層16と白色層14とが吸油層18に第1疎水性粘着層20を介して接合され、保護層12により白色層14の上面、白色層14及び着色層16の側面が覆われているが、
図3に示すように、保護層12の一面に白色層14及び着色層16が直接載置され、白色層14の上面、白色層14及び着色層16の側面に親油性の第2疎水性粘着層26を介して保護層12が接合されていてもよい。第2疎水性粘着層26は、疎水性の粘着剤で形成されていることが好ましく、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリビニール系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、及びこれらの複合粘着剤を挙げることができる。
【0035】
また、
図4に示すように、保護層12の一面に白色層14及び着色層16が直接載置され、白色層14の上面、白色層14及び着色層16の側面が保護層12に直接覆われていてもよい。更に、
図1及び
図2に示す漏油検出材10は、着色層16及び白色層14が矩形状であったが、
図5に示すように、円形状であってもよい。漏油検出材10が漏油に接触しない状態では、
図5(a)に示すように白色層14により着色層16の色相は保護層12から視認できないが、漏油検出材10が漏油に接触したとき、
図5(b)に示すように、白色層14は透明又は半透明となって着色層16の色相を保護層12から視認できる。
尚、白色層14及び着色層16の形状は、矩形状、円形状等の各種形状他に、文字や記号等任意の形状とすることができる。例えば、白色層14自体を、漏油を示す文字例えば『oil』という文字形状にして文字が漏油によって浮き上がって表示できるようにしたり、逆に非表示となるデザインにしたりすることができ、又は着色層16を文字や記号等の形状にして表示又は非表示にしたりすることができる。
例えば、着色層16自体を、漏油を示す文字形状とした場合を例に説明すると、漏油がないときは白色層14により隠れているため文字形状が現れず、漏油したときは白色層14が透明又は半透明となって着色層16の文字形状が現れて保護層12から浮き上がったように視認でき表示されるようになる。一方、白色層14自体を、漏油を示す文字形状とした場合を例に説明すると、漏油がないときは白色層14により白色層14の文字形状でない部分で着色層16が見えつつ文字形状で着色層16を隠しているため文字形状として視認できるように現れているが、漏油したときは白色層14が透明又は半透明となって着色層16を隠さなくなるため文字形状が視認できなくなって表示されていないように見える。
【0036】
図1~
図5に示す漏油検出材10によれば、フランジ等の漏油のおそれの場所に簡単に貼着でき、漏油のみ或いは水と漏油とが含有される水・漏油混合液が漏油検出材10に接触したときのみ、漏油があることを確実に検出できる。また、漏油を一時的に吸油層18内に保油でき、直ちに漏油が地面等に流出することを防止できる。
【実施例1】
【0037】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
図1に示す漏油検出材10を作製した。先ず、白色粉末としてのステアリン酸(屈折率1.43)30質量部と、透明なエチルセルロース樹脂5質量部と、キシレン65質量部とを混練した白インクを作製した。この白インクを、着色層16としての黒色に着色された上質紙の一面側にコーターアプリケーターを用いて塗布厚150μmで塗布した後に乾燥して白色層14を形成した。次いで、着色層16の一面側に白色層14が形成された基材を、40mm×40mmの正方形に断裁加工した。
また、吸油層18としてのポリエチレン製の不織布(旭・デュポンフラッシュスパンプロダクツ社製のタイベック1056DR(商品名)、坪量54g/m
2)の両面に油を透過するアクリル系粘着剤を貼着して第1疎水性粘着層20と離型紙用粘着層22を形成し、50mm×50mmの正方形に断裁加工した。
裁断加工した第1疎水性粘着層20の中央部に、裁断加工した着色層16を白色層14が上面となるように貼着した。更に、白色層14の上面及び白色層14及び着色層16の側面が被覆されるように、保護層12として50mm×50mmの透明なポリエチレンテレフタレート製フィルムを貼着した。
その後、離型紙用粘着層22に50mm×50mmの離型紙24を貼着して、
図1に示す漏油検出材10を得た。得られた漏油検出材10は、不透明な白色層14により保護層12から着色層16の色相は視認できない。
【0039】
(比較例1)
特許第6609085号公報に記載された実施例1に従って、Aタイプの白色インクを作製した。白色粉末としてタルク(屈折率1.54)18質量部と透明樹脂溶液である8%エチルセルロース含有メジウム25質量部とを混錬してAタイプの白色インクを作製した。この白色インクを、着色層としての黒色に着色されたポリプロピレン製の不織布の一面側にコーターアプリケーターを用いて塗布厚200μmで塗布した後に乾燥し、更にその上面にフッ素樹脂コート剤を塗布した後に乾燥して透明な保護層を形成した。着色層の他面側に粘着層としてアクリル系粘着剤を貼付し、50mm×50mmに断裁加工して、漏油検出材を得た。作製した漏油検出材は、不透明な白色層により保護層から着色層の色相は視認できない。
【0040】
(実施例2)
実施例1で得た漏油検出材10及び比較例1で得た漏油検出材の各々をアルミニウム板に貼着し、試験体を作製した。この試験体の保護層から透視できる白色層の色濃度を測定した。この試験体を水(屈折率1.33)又はシリコーン油(屈折率1.44)又は作動油(屈折率1.5)が入ったトレイに2時間浸漬した後、保護層から透視できる白色層の色濃度を測定した。色濃度は濃度計(商品名x-rite 504、エックスライト社製)を用いて、濃淡のビジュアル濃度を測定した。また、着色層自体の色濃度を測定した。測定結果を下表1に記載する。
【0041】
【0042】
表1から明らかなように、実施例1の漏油検出材は、濡れ前の白色層の色濃度と、水濡れ後の白色層の色濃度に違いがなく、水濡れによる影響を受けなかった。また、シリコーン油の濡れ後の白色層の色濃度と、作動油の濡れ後の白色層の色濃度は、大きく上昇し、シリコーン油、作動油でも明瞭に変色したため、油濡れを視認することができた。
一方、比較例1の漏油検出材は、濡れ前の白色層の色濃度と比べて、水濡れ後の白色層の色濃度は値が上昇し、油濡れと誤認しやすい状態となった。また、シリコーン油の濡れ後の白色層の色濃度は、着色層自体の色濃度と比べて、値が小さく、むしろ水濡れ後の白色層の色濃度に近いため、油濡れかどうかが判別し難い結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の漏油検出材によれば、雨水のみでは変色せず、水の屈折率に近い屈折率のシリコーン油でも確実に漏油を検出でき、各種油のタンクや配管のフランジ等からの漏油を検出できる。
【符号の説明】
【0044】
10:漏油検出材、12:保護層、14:白色層、16:着色層、18:吸油層、20:第1疎水性粘着層、22:離型紙用粘着層、24:離型紙、26:第2疎水性粘着層
【要約】
【課題】雨水等の水に濡れても、漏油と誤認する恐れがなく、濡れた状態でも漏油を確実に検出でき、且つ屈折率が1.5未満の油でも漏油が検出可能な漏油検出材を提供する。
【解決手段】吸油性を有する着色層16と、着色層16の上面に接して設けられ、白色粉末が含有された吸油性を有する白色層14と、白色層14の上面を覆って設けられた透明な疎水性樹脂から成る保護層12と、着色層16の下面側に設けられ、吸油性と保油性とを有し、撥水性を有する吸油層18とを備える漏油検出材10であって、着色層16と白色層14とに水の浸透を防止するように、着色層16及び白色層14とが保護層12と吸油層18とに挟み込まれており、吸油層18に漏油又は漏油・水が接したとき、前記漏油のみが吸油層18に吸油されて着色層16及び白色層14に浸透し、白色層14が透明状態乃至半透明状態となって、着色層16の色相が保護層12を介して目視できる。
【選択図】
図1