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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】ウエハ載置台
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240829BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240829BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240829BHJP
   C04B 35/638 20060101ALN20240829BHJP
   C04B 35/64 20060101ALN20240829BHJP
   C04B 38/06 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/302 101R
H01L21/68 P
H01L21/31 C
C04B35/638
C04B35/64
C04B38/06 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023521900
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2022039689
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 達也
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖也
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-165194(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0118716(US,A1)
【文献】特開2020-129632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/683
H01L 21/31
C04B 35/638
C04B 35/64
C04B 38/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハを支持する多数の小突起が基準面に設けられたウエハ載置部を有し、電極を内蔵するセラミックプレートと、
冷媒流路を有する冷却プレートと、
前記セラミックプレートと前記冷却プレートとを接合する接合層と、
前記基準面に設けられ、底面が前記基準面よりも低い凹溝と、
前記セラミックプレートを厚さ方向に貫通し、前記凹溝の底面に開口するプラグ配置穴と、
前記プラグ配置穴に配置され、頂面が前記凹溝の底面と同じ高さであり、外周面が前記プラグ配置穴の内周面に接合され、ガスの流通を許容する多孔質プラグと、
前記多孔質プラグにガスを供給するガス供給経路と、
を備えたウエハ載置台。
【請求項2】
前記多孔質プラグの外周面は、前記プラグ配置穴の内周面に焼結により接合される、
請求項1に記載のウエハ載置台。
【請求項3】
前記接合層の耐久温度は、前記セラミックプレートの焼結温度よりも低い、
請求項2に記載のウエハ載置台。
【請求項4】
前記凹溝の底面から前記基準面までの距離は、0.005mm以上0.5mm以下である、
請求項1~3のいずれか1項に記載のウエハ載置台。
【請求項5】
前記多孔質プラグの頂面は、多数の細孔を備えた保護蓋で覆われており、前記保護蓋の頂面は、前記小突起の頂面よりも低い位置にある、
請求項1~3のいずれか1項に記載のウエハ載置台。
【請求項6】
前記ガス供給経路は、前記冷却プレートの下面から前記接合層のうち前記多孔質プラグに面する位置に設けられた接合層貫通穴を介して前記多孔質プラグの下面に至る経路であり、
前記接合貫通穴は、前記多孔質プラグが通過不能な大きさである、
請求項1~3のいずれか1項に記載のウエハ載置台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ載置台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電極を内蔵するセラミックプレートと、冷媒流路を有する冷却プレートと、セラミックプレートと冷却プレートとを接合する接合層と、を備えたウエハ載置台が知られている。例えば、特許文献1には、セラミックプレートを貫通する貫通孔を設け、この貫通孔に多孔質プラグを焼結により接合したものが開示されている。多孔質プラグには、冷却プレートに設けられたガス供給経路からガスが供給される。こうしたウエハ載置台を製造するにあたっては、セラミックプレートの貫通孔に、多孔質プラグの前駆体となるペースト状のセラミック混合物を充填し、そのセラミック混合物を焼成して多孔質プラグを形成している。焼成後に多孔質プラグの上端がセラミックプレートの上面から突出している場合には、多孔質プラグの突出部分を研削して多孔質プラグの上端とセラミックプレートの上面とを面一(つらいち)にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-29384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、多孔質プラグの突出部分を定盤を用いて研削して多孔質プラグの上端とセラミックプレートの上面とを面一にする場合、多孔質プラグから粒子が脱落してセラミックプレートの上面を傷つけるおそれがあった。また、特許文献1では、ウエハの下面側にガスを封入する空間を設けていないが、こうした空間を設ける場合には、ブラスト加工等によりセラミックプレートの上面に多数の小突起を形成することになる。その際、多孔質プラグの上端とセラミックプレートの上面とが面一になっていると、微細なごみが多孔質プラグに入り込むという問題があった。更に、ウエハのうち多孔質プラグに対向する位置は低温になりやすいという問題もあった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、製造時にセラミックプレートや多孔質プラグに不具合が発生するのを防止すると共に、使用時にウエハの均熱性が損なわれるのを防止することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明のウエハ載置台は、
ウエハを支持する多数の小突起が基準面に設けられたウエハ載置部を有し、電極を内蔵するセラミックプレートと、
冷媒流路を有する冷却プレートと、
前記セラミックプレートと前記冷却プレートとを接合する接合層と、
前記基準面に設けられ、底面が前記基準面よりも低い凹溝と、
前記セラミックプレートを厚さ方向に貫通し、前記凹溝の底面に開口するプラグ配置穴と、
前記プラグ配置穴に配置され、頂面が前記凹溝の底面と同じ高さであり、外周面が前記プラグ配置穴の内周面に接合され、ガスの流通を許容する多孔質プラグと、
前記多孔質プラグにガスを供給するガス供給経路と、
を備えたものである。
【0007】
このウエハ載置台では、製造工程で、頂面が凹溝の底面と同じ高さである多孔質プラグがプラグ配置穴に接合されたセラミックプレートの表面(セラミックプレートの基準面より高い位置にある)を研磨することがある。その場合、多孔質プラグの頂面は基準面よりも低い位置にあるため、多孔質プラグの頂面が研磨されることはない。また、その後の製造工程で、セラミックプレートの表面に多数の小突起を形成することがある。その場合、各小突起を形成する位置をマスクすると共に凹溝内の多孔質プラグの頂面をマスクした上で、マスクされていない領域を削り取るようにすれば、多孔質プラグに微細なごみが入り込むのを防止できる。一方、ウエハ載置台の使用時には、ガス供給経路から多孔質プラグにガスが供給される。その場合、ウエハのうち多孔質プラグに対向する位置はガスの圧力が高いため他の箇所よりも低温になりやすい。しかし、ここでは多孔質プラグの頂面が基準面よりも低くなっている。そのため、多孔質プラグの頂面が基準面と同じ高さの場合と比べて、ウエハのうち多孔質プラグに対向する領域からセラミックプレートへの熱伝導が抑制される。したがって、その領域が低温になりすぎるのを防止できる。
【0008】
なお、本明細書において、「同じ」とは、完全に同じ場合のほか、実質的に同じ場合(例えば公差の範囲内の場合)も含む。
【0009】
[2]上述したウエハ載置台(前記[1]に記載のウエハ載置台)において、前記多孔質プラグの外周面は、前記プラグ配置穴の内周面に焼結により接合されていてもよい。
【0010】
[3]上述したウエハ載置台(前記[2]に記載のウエハ載置台)において、前記接合層の耐久温度は、前記セラミックプレートの焼結温度よりも低くてもよい。こうしたウエハ載置台を製造する場合、セラミックプレートのプラグ配置穴に多孔質プラグを焼結で接合した後、セラミックプレートと冷却プレートとを接合することになる。プラグ配置穴が空洞のままのセラミックプレートと冷却プレートとを接合した後、プラグ配置穴に多孔質プラグを焼結で接合すると、焼結温度が接合層の耐久温度を超えてしまうからである。
【0011】
[4]上述したウエハ載置台(前記[1]~[3]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記凹溝の底面から前記基準面までの距離は、0.005mm以上0.5mm以下としてもよい。この距離が0.5mm以下であれば、ウエハ載置台の使用時にウエハをプラズマで処理したとしても凹溝内で放電が発生するのを防止することができる。また、0.005mm以上であれば、製造時にセラミックプレートや多孔質プラグに不具合が発生するのを防止する効果が得られる。
【0012】
[5]上述したウエハ載置台(前記[1]~[4]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記多孔質プラグの頂面は、多数の細孔を備えた保護蓋で覆われていてもよく、前記保護蓋の頂面は、前記小突起の頂面よりも低い位置にあるようにしてもよい。こうすれば、多孔質プラグの寿命を長くすることができるし、保護蓋がウエハを持ち上げるのを防止することができる。
【0013】
[6]上述したウエハ載置台(前記[1]~[5]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記ガス供給経路は、前記冷却プレートの下面から前記接合層のうち前記多孔質プラグに面する位置に設けられた接合層貫通穴を介して前記多孔質プラグにガスを供給する経路であってもよく、前記接合貫通穴は、前記多孔質プラグが通過不能な大きさであってもよい。こうすれば、接合層は多孔質プラグを下方から支持することになるため、ウエハ載置台の製造時や使用時に多孔質プラグがプラグ配置穴から抜け落ちるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ウエハ載置台10の縦断面図。
図2】セラミックプレート20の平面図。
図3図1の部分拡大図。
図4】セラミックプレート20の製造工程図。
図5】ウエハ載置台10の製造工程図。
図6】別例の部分拡大図。
図7】別例の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。図1はウエハ載置台10の縦断面図(ウエハ載置台10の中心軸を含む面で切断したときの断面図)、図2はセラミックプレート20の平面図、図3図1の部分拡大図である。
【0016】
ウエハ載置台10は、ウエハWにプラズマを利用してCVDやエッチングなどを行うために用いられるものであり、セラミックプレート20と、冷却プレート30と、金属接合層40と、多孔質プラグ50とを備えている。
【0017】
セラミックプレート20は、アルミナ焼結体や窒化アルミニウム焼結体などのセラミック製の円板(例えば直径300mm、厚さ5mm)である。セラミックプレート20の上面には、ウエハ載置部21が設けられている。セラミックプレート20は、電極22を内蔵している。ウエハ載置部21には、外縁に沿ってシールバンド21aが形成され、シールバンド21aに囲まれた領域に複数の円形小突起21bが形成されている。シールバンド21a及び円形小突起21bは同じ高さであり、その高さは例えば数μm~数10μmである。電極22は、静電電極として用いられる平面状のメッシュ電極であり、直流電圧を印加可能となっている。この電極22に直流電圧が印加されるとウエハWは静電吸着力によりウエハ載置部21(具体的にはシールバンド21aの上面及び円形小突起21bの上面)に吸着固定され、直流電圧の印加を解除するとウエハWのウエハ載置部21への吸着固定が解除される。なお、ウエハ載置部21のうちシールバンド21aや円形小突起21bの設けられていない部分を、基準面21cと称する。基準面21cは水平な面である。
【0018】
基準面21cには、平面視で円形の凹溝21dが設けられている。凹溝21dの底面は、基準面21cよりも低くなっている。凹溝21dは、セラミックプレート20の複数箇所(例えば図2に示すように周方向に沿って等間隔に設けられた複数箇所)に設けられている。凹溝21dの底面から基準面21cまでの高さは、0.005mm以上0.5mm以下が好ましく、0.005mm以上0.2mm以下がより好ましく、また、高電圧を印加する装置においては0.005mm以上0.1mm以下が特に好ましい。
【0019】
プラグ配置穴24は、セラミックプレート20を上下方向(厚さ方向)に貫通する円筒状の穴であり、凹溝21dの底面に開口している。プラグ配置穴24も、凹溝21dと同様、セラミックプレート20の複数箇所(例えば図2に示すように周方向に沿って等間隔に設けられた複数箇所)に設けられている。プラグ配置穴24には、後述する多孔質プラグ50が配置されている。
【0020】
冷却プレート30は、熱伝導率の良好な円板(セラミックプレート20と同じ直径かそれよりも大きな直径の円板)である。冷却プレート30の内部には、冷媒が循環する冷媒流路32やガスを多孔質プラグ50へ供給するガス穴34が形成されている。冷媒流路32は、平面視で冷却プレート30の全面にわたって入口から出口まで一筆書きの要領で形成されている。ガス穴34は、円筒状の穴であり、プラグ配置穴24に対向する位置に設けられている。冷却プレート30の材料は、例えば、金属材料や金属とセラミックとの複合材料などが挙げられる。金属材料としては、Al、Ti、Mo又はそれらの合金などが挙げられる。金属とセラミックとの複合材料としては、金属マトリックス複合材料(メタル・マトリックス・コンポジット(MMC))やセラミックマトリックス複合材料(セラミック・マトリックス・コンポジット(CMC))などが挙げられる。こうした複合材料の具体例としては、Si,SiC及びTiを含む材料やSiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料などが挙げられる。Si,SiC及びTiを含む材料をSiSiCTiといい、SiC多孔質体にAlを含浸させた材料をAlSiCといい、SiC多孔質体にSiを含浸させた材料をSiSiCという。セラミックプレート20がアルミナプレートの場合、冷却プレート30に用いる材料としては熱膨張係数がアルミナに近いMMC(AlSiCやSiSiCTiなど)が好ましい。
【0021】
金属接合層40は、セラミックプレート20の下面と冷却プレート30の上面とを接合している。金属接合層40は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。金属接合層40は、ガス穴34に対向する位置に金属接合層40を上下方向に貫通する接合層貫通穴42を有する。図3では接合層貫通穴42の直径を多孔質プラグ50の直径よりも大きくしたが、接合層貫通穴42の直径多孔質プラグ50の直径よりも小さくして多孔質プラグ50が通過不能な大きさにしてもよい
【0022】
多孔質プラグ50は、ガスの流通を許容する円柱状のプラグであり、プラグ配置穴24に配置されている。多孔質プラグ50の頂面の高さは、凹溝21dの底面の高さと同じである。多孔質プラグ50の外周面は、プラグ配置穴24の内周面と焼結により接合されている。多孔質プラグ50の下面の高さは、セラミックプレート20の下面の高さと同じである。本実施形態では、多孔質プラグ50は、セラミック粉末を焼結することにより得られた多孔質バルク体である。セラミックとしては、例えばアルミナや窒化アルミニウムなどを用いることができる。多孔質プラグ50の気孔率は30%以上が好ましく、平均気孔径は20μm以上が好ましい。多孔質プラグ50は、例えば特許文献1に記載されている方法に準じて作製することができる。
【0023】
本実施形態では、冷却プレート30のガス穴34は外部のガス供給装置(図示せず)に接続されている。ガス供給装置からガス穴34に供給されたガスは、ウエハ載置台10のガス供給経路(ガス穴34、接合層貫通穴42及び多孔質プラグ50)を介してウエハ載置部21のウエハWの下面側に設けられた空間に封入される。ウエハWの下面側に設けられた空間は、ウエハW、シールバンド21a、円形小突起21b、基準面21c、凹溝21dの底面及び多孔質プラグ50の頂面によって囲まれた空間である。
【0024】
次に、こうして構成されたウエハ載置台10の使用例について説明する。まず、図示しないチャンバー内にウエハ載置台10を設置した状態で、ウエハWをウエハ載置部21に載置する。そして、チャンバー内を真空ポンプにより減圧して所定の真空度になるように調整し、セラミックプレート20の電極22に直流電圧をかけて静電吸着力を発生させ、ウエハWをウエハ載置部21(具体的にはシールバンド21aの上面や円形小突起21bの上面)に吸着固定する。次に、チャンバー内を所定圧力(例えば数10~数100Pa)の反応ガス雰囲気とし、この状態で、チャンバー内の天井部分に設けた図示しない上部電極とウエハ載置台10の冷却プレート30との間に高周波電圧を印加させてプラズマを発生させる。ウエハWの表面は、発生したプラズマによって処理される。冷却プレート30の冷媒流路32には、冷媒が循環される。ガス穴34には、図示しないガス供給装置からガスが導入される。ガスとしては、熱伝導ガス(例えばヘリウム等)を用いる。ガスは、ガス穴34、接合層貫通穴42及び多孔質プラグ50を通って、ウエハWの下面側に設けられた空間に供給され封入される。このバックサイドガスの存在により、ウエハWとセラミックプレート20との熱伝導が効率よく行われる。
【0025】
次に、ウエハ載置台10の製造例について図4及び図5に基づいて説明する。図4は、セラミックプレート20の製造工程図、図5はウエハ載置台10の製造工程図である。
【0026】
まず、電極22を内蔵した円板状のセラミック成形体を作製し、そのセラミック成形体を焼成してセラミック焼結体としてのセラミックプレート20を得る(図4A)。セラミック成形体は、例えばセラミック粉末に焼結助剤等を混合した原料粉末を型に入れ加圧成形することにより作製することができる。
【0027】
続いて、セラミックプレート20にプラグ配置穴24を形成し(図4B)、そのプラグ配置穴24に多孔質プラグ50の前駆体となるペースト状のセラミック混合物56を充填する(図4C)。セラミック混合物56は、セラミック粒子、焼結助剤、燃焼消失粒子などを混合したものである。燃焼消失粒子としては、例えば平均粒径がセラミック粒子の平均粒径よりも大きく、セラミック粒子が焼結する温度で燃焼して消失する有機物の粒子を用いるのが好ましい。
【0028】
続いて、セラミック混合物56をプラグ配置穴24に充填したセラミックプレート20を、セラミック混合物56のセラミック粒子が焼結可能な温度に加熱する。すると、セラミック混合物56中の燃焼消失粒子が消失すると共に、セラミック粒子同士が焼結し、更にセラミック粒子とプラグ配置穴24の内周面の粒子とが焼結する。これにより、プラグ配置穴24内に多孔質プラグ50が形成される(図4D)。多孔質プラグ50は、気孔を有するセラミック焼結体である。また、多孔質プラグ50の外周面とプラグ配置穴24の内周面とは焼結によって接合されている。
【0029】
続いて、多孔質プラグ50よりも大径である円柱形の砥石90(図4D)を用いて多孔質プラグ50及びその周囲を研削して、平面視が円形の凹溝28を形成する(図4E)。続いて、定盤92(図4E)を用いてセラミックプレート20の上面を研磨する(図4F)。研磨は、凹溝28の深さが所定の深さ(凹溝21dの深さ)となるまで行う。これにより、凹溝28は凹溝21dになる。このとき、定盤92は、多孔質プラグ50の頂面に接触することがないため、多孔質プラグ50の頂面から粒子が抜け落ちてセラミックプレート20の上面を傷つけることはない。
【0030】
続いて、予め作製しておいた冷却プレート30(冷媒流路32を内蔵すると共に複数のガス穴34を備えた冷却プレート30)の上面とセラミックプレート20の下面とをTCBによって接合して接合体84を得る(図5A)。TCBは、例えば以下のように行われる。まず、セラミックプレート20の下面と冷却プレート30の上面との間に金属接合材を挟み込んで積層体とする。このとき、セラミックプレート20のプラグ配置穴24と金属接合材に予め形成しておいた丸穴と冷却プレート30のガス穴34とが同軸になるように積層する。そして、金属接合材の固相線温度以下(例えば、固相線温度から20℃引いた温度以上固相線温度以下)の温度で積層体を加圧して接合し、その後室温に戻す。これにより、金属接合材は金属接合層40になり、金属接合材の丸穴が接合層貫通穴42になり、セラミックプレート20と冷却プレート30とを金属接合層40で接合した接合体84が得られる。このときの金属接合材としては、Al-Mg系接合材やAl-Si-Mg系接合材を使用することができる。例えば、Al-Si-Mg系接合材を用いてTCBを行う場合、真空雰囲気下で加熱した状態で積層体を加圧する。金属接合材は、厚さが100μm前後のものを用いるのが好ましい。
【0031】
続いて、セラミックプレート20のフラットな上面のうちシールバンド21aを形成する領域と円形小突起21bを形成する領域をマスクMで覆うと共に、凹溝21dの底面(多孔質プラグ50の頂面を含む)もマスクMで覆う(図5B)。この状態で、セラミックプレート20のうちマスクMで覆われていない露出領域にブラスト加工を施して、その露出領域の高さを低くする。このとき、多孔質プラグ50の頂面はマスクMで覆われているため、ブラストによって多孔質プラグ50から微細なごみが発生することはない。その後、マスクを外す。すると、シールバンド21a、円形小突起21b及び基準面21cが上面に形成されたセラミックプレート20が得られる(図5C)。以上のようにしてウエハ載置台10が得られる。
【0032】
以上詳述したウエハ載置台10では、製造工程で、頂面が凹溝28の底面と同じ高さである多孔質プラグ50がプラグ配置穴24に結合されたセラミックプレート20の表面(少なくともセラミックプレートの基準面より高い位置にある)を研磨する。その場合、多孔質プラグ50の頂面はセラミックプレート20の表面よりも低い位置にあるため、多孔質プラグ50の頂面が研磨されることはない(図4E及び図4F)。また、その後の製造工程で、セラミックプレート20の表面に多数の円形小突起21bを形成する。その場合、各円形小突起21bを形成する位置をマスクすると共に凹溝21d内の多孔質プラグ50の頂面をマスクした上で、マスクされていない領域を削り取るため、多孔質プラグ50に微細なごみが入り込むのを防止できる(図5B及び図5C)。
【0033】
一方、ウエハ載置台10の使用時には、ガス供給経路(ガス穴34等)から多孔質プラグ50にガスが供給される。その場合、ウエハWのうち多孔質プラグ50に対向する位置はガスの圧力が高いため他の箇所よりも低温になりやすい。しかし、ここでは多孔質プラグ50の頂面が基準面21cよりも低くなっている。そのため、多孔質プラグ50の頂面が基準面21cと同じ高さの場合と比べて、ウエハWのうち多孔質プラグ50に対向する領域からセラミックプレート20への熱伝導が抑制される(セラミックプレート20に比べてガスの方が熱伝導率が低いため)。したがって、その領域が低温になりすぎるのを防止できる。
【0034】
また、金属接合層40の耐久温度は、セラミックプレート20の焼結温度よりも低い。そのため、ウエハ載置台10を製造する場合、セラミックプレート20のプラグ配置穴24に多孔質プラグ50を焼結で接合した後、セラミックプレート20と冷却プレート30とを接合することになる。プラグ配置穴24が空洞のままのセラミックプレート20と冷却プレート30とを接合した後、プラグ配置穴24に多孔質プラグ50を焼結で接合すると、焼結温度が金属接合層40の耐久温度を超えてしまうからである。したがって、ウエハ載置台10を製造する最終工程で、多孔質プラグ50をセラミックプレート20に取り付けることはできない。例えば、ウエハ載置台10で多孔質プラグ50がプラグ配置穴24に配置されていないものを作製し、最後に多孔質プラグ50をプラグ配置穴24に焼結で接合することはできない。
【0035】
更に、凹溝21dの底面から基準面21cまでの距離は、0.005mm以上0.5mm以下とすることが好ましい。この距離が長すぎると、ウエハWをプラズマで処理する際に凹溝21d内でガス(例えばヘリウムガス)が電離するのに伴って生じた電子が加速して別のヘリウムに衝突することによりアーク放電が起きるおそれがあるが、この距離が0.5mm以下であれば、そうした放電が発生するのを防止することができる。また、0.005mm以上であれば、製造時にセラミックプレートや多孔質プラグに不具合が発生するのを防止する効果が得られる。
【0036】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0037】
上述した実施形態において、図6に示すように、多孔質プラグ50の頂面は、多数の細孔62を備えた電気絶縁性の保護蓋60で覆われていてもよい。この保護蓋60の頂面は、円形小突起21bの頂面よりも低い位置(例えば基準面21cと同じ高さ)にある。こうすれば、多孔質プラグ50の寿命を長くすることができるし、保護蓋60がウエハWを持ち上げるのを防止することができる。なお、図6では上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。
【0038】
上述した実施形態において、図7に示すように、ガスは、冷却プレート30のガス穴34から金属接合層40のうち多孔質プラグ50に面する位置に設けられた複数の接合層貫通小穴44を介して多孔質プラグ50に供給されてもよい。この場合も、金属接合層40は多孔質プラグ50を下方から支持している。こうすれば、ウエハ載置台10の製造時や使用時に多孔質プラグ50がプラグ配置穴24から抜け落ちるのをより確実に防止できる。なお、図7では上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。
【0039】
上述した実施形態では、セラミックプレート20のプラグ配置穴24にペースト状のセラミック混合物56を充填した後、セラミック混合物56のセラミック粒子が焼結可能な温度に加熱することにより、プラグ配置穴24内に多孔質プラグ50を形成したが、特にこれに限定されない。例えば、多孔質プラグ50を別途作製しておき、セラミックプレート20のプラグ配置穴24にその多孔質プラグ50を挿入した後、多孔質プラグ50の外周面の粒子とプラグ配置穴24の内周面の粒子とが焼結する温度で処理してもよい。このとき、多孔質プラグ50の外周面とプラグ配置穴24の内周面との間にペースト状のセラミック混合物を介在させたあと焼結してもよい。あるいは、セラミックプレート20の空のプラグ配置穴24にセラミック溶射膜を積層したりレーザ焼結膜を積層したりすることにより多孔質プラグ50を形成してもよい。
【0040】
上述した実施形態では、冷却プレート30のガス穴34を複数の多孔質プラグ50のそれぞれに対応して設けたが、特にこれに限定されない。例えば、ガス穴34を設ける代わりに、冷却プレート30と金属接合層40との界面に平面視で円環状または円弧状のガス共通経路を形成し、冷却プレート30の下面からそのガス共通経路に繋がる1本のガス導入経路を設けると共に、ガス共通経路からそれぞれの多孔質プラグ50にガスを分配するガス分配経路を設けるようにしてもよい。
【0041】
上述した実施形態において、セラミックプレート20に内蔵される電極22として、静電電極を例示したが、特にこれに限定されない。例えば、電極22に代えて又は加えて、セラミックプレート20にヒータ電極(抵抗発熱体)を内蔵してもよいし、RF電極を内蔵してもよい。
【0042】
上述した実施形態では、セラミックプレート20と冷却プレート30とを金属接合層40で接合したが、金属接合層40の代わりに樹脂接着層を用いてもよい。樹脂接着層の耐久温度は、セラミックプレート20の焼結温度よりも低い。
【0043】
上述した実施形態では、小突起として円形小突起21bを例示したが、特にこれに限定されない。例えば、小突起は平面視で多角形であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、例えばウエハを処理する装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 ウエハ載置台、20 セラミックプレート、21 ウエハ載置部、21a シールバンド、21b 円形小突起、21c 基準面、21d 凹溝、22 電極、24 プラグ配置穴、28 凹溝、30 冷却プレート、32 冷媒流路、34 ガス穴、40 金属接合層、42 接合層貫通穴、44 接合層貫通小穴、50 多孔質プラグ、56 セラミック混合物、60 保護蓋、62 細孔、80 金属接合材、84 接合体、90 砥石、92 定盤、W ウエハ。
【要約】
ウエハ載置台10は、セラミックプレート20と、冷却プレート30と、接合層40と、凹溝21dと、プラグ配置穴24と、多孔質プラグ50とを備える。セラミックプレート20は、ウエハWを支持する多数の小突起21bが基準面21cに設けられたウエハ載置部21を有し、電極22を内蔵する。冷却プレート30は、冷媒流路32を有する。接合層40は、セラミックプレート20と冷却プレート30とを接合する。凹溝21dは、基準面21cに設けられ、底面が基準面21cよりも低い。プラグ配置穴24は、セラミックプレート20を厚さ方向に貫通し、凹溝21dの底面に開口している。多孔質プラグ50は、プラグ配置穴24に配置され、頂面が凹溝21dの底面と同じ高さであり、外周面がプラグ配置穴24の内周面に接合され、ガスの流通を許容する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7