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特許7546162脈動低減装置および該脈動低減装置を備える車両のブレーキ液圧制御装置
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  • 特許-脈動低減装置および該脈動低減装置を備える車両のブレーキ液圧制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】脈動低減装置および該脈動低減装置を備える車両のブレーキ液圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/00 20060101AFI20240829BHJP
   B60T 8/34 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B60T17/00 D
B60T8/34
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023523699
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 IB2022054875
(87)【国際公開番号】W WO2022249078
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2021090183
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】坂本 貴紀
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102011007178(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011078250(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 17/00
B60T 8/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールシリンダ(12)にブレーキ液圧を供給するブレーキ液圧回路(2)と、ブレーキ液圧を昇圧するポンプ(60)と、を備える車両のブレーキシステムに設けられ、該ブレーキ液圧回路(2)のブレーキ液圧の脈動を低減させる脈動低減装置(37、80)であって、
前記ブレーキ液圧回路(2)からブレーキ液圧が入力される第1室(A)と、
前記ブレーキ液圧回路(2)へブレーキ液圧を出力する第2室(B)と、
前記第1室(A)と前記第2室(B)とを接続する接続部(80a)と、
を備え、
前記接続部(80a)は、
弁座(85b)に着座して前記第1室(A)と前記第2室(B)を接続しない非接続位置と、前記弁座(85b)から離座して前記第1室(A)と前記第2室(B)を接続する接続位置と、に移動する弁体(86)と、
前記弁体(86)を前記弁座(85b)側へ付勢する付勢部材(89、90)と、
を備え、
前記付勢部材(89、90)は、第1付勢部材(89)と、該第1付勢部材(89)とは異なる第2付勢部材(90)と、を含み、
前記第1付勢部材(89)は、負荷過程と除荷過程で同じ変位であるときに、該負荷過程での復元力と該除荷過程での復元力とが異なる大きさとなるヒステリシス特性を有し、
前記第2付勢部材(90)は、前記第1付勢部材(89)と同じ変位であるときの除荷過程での復元力が、該同じ変位であるときの前記第1付勢部材(89)の除荷過程での復元力よりも大きくなる特性を有する、
脈動低減装置。
【請求項2】
前記第1付勢部材(89)は、エラストマバネにより形成される、
請求項1に記載の脈動低減装置。
【請求項3】
前記第2付勢部材(90)は、金属バネにより形成される、
請求項1又は2記載の脈動低減装置。
【請求項4】
前記第1室(A)を、前記ブレーキ液圧回路(2)からブレーキ液圧が入力される流入口(91b)を含む第1領域(A1)と、該流入口(91b)を含まない第2領域(A2)と、に仕切るとともに、該第1室(A)内を移動する移動体(83)と、
該移動体(83)を付勢する第3付勢部材(82)と、
を備える、
請求項1に記載の脈動低減装置。
【請求項5】
前記第3付勢部材(82)は、エラストマバネにより形成される、
請求項4に記載の脈動低減装置。
【請求項6】
請求項1に記載の脈動低減装置を備える車両のブレーキ液圧制御装置(50)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のブレーキ液圧回路のブレーキ液圧の脈動を低減する脈動低減装置、および該脈動低減装置を備える車両のブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両におけるブレーキシステムのブレーキ液圧を制御するブレーキ液圧制御装置として、車両のマスターシリンダとホイールシリンダの間でブレーキ液圧を接続するブレーキ液圧回路と、該ブレーキ液圧回路内のブレーキ液圧を上昇させるポンプと、該ブレーキ液圧回路内のブレーキ液圧を接続および遮断する電磁弁等を備えており、ホイールシリンダへ供給するブレーキ液圧を上昇させる必要が生じた際に、運転者による車両のブレーキペダルの操作状態に関わらず、当該ポンプを駆動制御して、ホイールシリンダへ供給するブレーキ液圧を上昇させる制御を実行する構成のものがある(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-061246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているようなブレーキ液圧制御装置では、ポンプの駆動に伴って生じるブレーキ液圧の脈動がブレーキシステムから車両のエンジンルーム等へ伝搬し、車両の運転者等(例えば、車両の運転者、同乗者、車両外の者等)に不快感や違和感を与え得る騒音が発生する虞がある。これに対して、該ブレーキ液圧制御装置は、ブレーキ液圧の変化に伴い弾性変形するダイヤフラムを有することで容積が可変な容積室を備えており、ポンプの駆動に伴うブレーキ液圧の脈動が低減され得る。しかし、近年のブレーキシステムでは、より高い回転数でポンプの駆動が制御されること等により、ブレーキ液圧の脈動が増大する虞があるため、ブレーキ液圧の脈動をさらに低減することが求められる。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、車両のブレーキ液圧回路内のブレーキ液圧の脈動を低減することができるブレーキ液圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る脈動低減装置は、ホイールシリンダ(12)にブレーキ液圧を供給するブレーキ液圧回路(2)と、ブレーキ液圧を昇圧するポンプ(60)と、を備える車両のブレーキシステムに設けられ、該ブレーキ液圧回路(2)のブレーキ液圧の脈動を低減させる脈動低減装置(37、80)であって、前記ブレーキ液圧回路(2)からブレーキ液圧が入力される第1室(A)と、前記ブレーキ液圧回路(2)へブレーキ液圧を出力する第2室(B)と、前記第1室(A)と前記第2室(B)とを接続する接続部(80a)と、を備え、前記接続部(80a)は、弁座(85b)に着座して前記第1室(A)と前記第2室(B)を接続しない非接続位置と、前記弁座(85b)から離座して前記第1室(A)と前記第2室(B)を接続する接続位置と、に移動する弁体(86)と、前記弁体(86)を前記弁座(85b)側へ付勢する付勢部材(89、90)と、を備え、前記付勢部材は、第1付勢部材(89)と、該第1付勢部材(89)とは異なる第2付勢部材(90)と、を含み、前記第1付勢部材(89)は、負荷過程と除荷過程で同じ変位であるときに、該負荷過程での復元力と該除荷過程での復元力とが異なる大きさとなるヒステリシス特性を有し、前記第2付勢部材(90)は、前記第1付勢部材(89)と同じ変位であるときの除荷過程での復元力が、該同じ変位であるときの前記第1付勢部材(89)の除荷過程での復元力よりも大きくなる特性を有する構成である。
【0007】
このような構成によれば、第1付勢部材(89)および第2付勢部材(90)により、ブレーキ液圧の変動を脈動低減装置の内部で吸収して、車両のブレーキ液圧回路内のブレーキ液圧の脈動を低減することができる
【0008】
なお、本発明は、本発明の請求項に記載された発明特定事項のみを有するものであって良いし、本発明の請求項に記載された発明特定事項とともに該発明特定事項以外の構成を有するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るブレーキシステムの構成について説明するための図である。
図2】ポンプおよび脈動低減装置について説明するための図である。
図3】脈動低減装置(ポンプ非駆動状態)について説明するための図である。
図4】脈動低減装置(ポンプ駆動状態)について説明するための図である。
図5】脈動低減装置(ポンプ駆動状態)について説明するための図である。
図6】付勢部材の変位と復元力の関係について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るブレーキ液圧制御装置および当該ブレーキ液圧制御装置を備えるブレーキシステムの実施形態の例について図面を用いて説明する。以下では、同一のまたは類似する説明を、適宜簡略化または省略する場合がある。また、各図において、同一のまたは類似する部材または部分については、符号を付することを省略するか、または同一の符号を付す場合がる。また、細かい構造について図示を適宜簡略化または省略する場合がある。
【0011】
なお、以下で説明する実施形態の構成、動作等は、一例である。本発明は、そのような構成、動作等である場合に限定されず、本発明の範囲内で適宜変更することができる。例えば、本実施形態のブレーキシステム1およびブレーキ液圧制御装置50は、車両として四輪車に搭載される構成であるが、本発明に係るブレーキ液圧制御装置および当該ブレーキ液圧制御装置を備えるブレーキシステムは、四輪車以外の他の車両、例えば、一輪車、二輪車、三輪車、トラック、バス、建設用車両等に搭載される構成であってもよい。
【0012】
[ブレーキシステム1について]
本実施形態に係るブレーキシステム1について図1および図2に基づいて説明する。ブレーキシステム1は、車両100である四輪車が備える各車輪の制動を制御するシステムである。
【0013】
図1に示すように、ブレーキシステム1は、車両に設けられるブレーキペダル16に連動して往復動するピストン(図示省略)が内蔵されているマスターシリンダ11と、四輪車の各車輪に対応して設けられて各車輪の制動力を生じあせるホイールシリンダ12と、各ホイールシリンダ12に供給されるブレーキ液圧を車両の運転者によるブレーキ操作の状態から独立して制御するブレーキ液圧制御装置50と、を備える。
【0014】
ブレーキペダル16とマスターシリンダ11のピストンとの間には、倍力装置17が介在されて設けられており、ブレーキペダル16に伝達された運転者の踏力は、倍力されてマスターシリンダ11のピストンへ伝達される。ホイールシリンダ12は、ブレーキキャリパ18に設けられている。ホイールシリンダ12のブレーキ液の液圧が増加すると、ブレーキキャリパ18のブレーキパッド19がロータ20に押し付けられて、車輪が制動される。
【0015】
ブレーキ液圧制御装置50は、マスターシリンダ11とホイールシリンダ12との間のブレーキ液圧を接続するブレーキ液の液圧回路2が形成される基体51を含む。基体51の内部に、マスターシリンダ11とホイールシリンダ12とを連通させる主流路13と、主流路13のブレーキ液を逃がす副流路14と、副流路14にブレーキ液を供給する供給流路15と、を含む液圧回路2が形成されており、当該液圧回路2には、ブレーキ液が充填されている。
【0016】
なお、本実施形態に係るブレーキシステム1は、液圧回路2として2つの系統の液圧回路2a、2bを備えている。液圧回路2aは、主流路13によって、マスターシリンダ11と車輪RL、FRのホイールシリンダ12とを連通させる液圧回路である。液圧回路2bは、主流路13によって、マスターシリンダ11と車輪FL、RRのホイールシリンダ12とを連通させる液圧回路である。これら液圧回路2a、2bは、連通するホイールシリンダ12が異なる以外、同様の構成となっている。
【0017】
副流路14の上流側端部は、主流路13の途中部13aに接続され、副流路14の下流側端部は、主流路13の途中部13bに接続されている。また、供給流路15の上流側端部は、マスターシリンダ11に連通し、供給流路15の下流側端部は、副流路14の途中部14aに接続されている。
【0018】
なお、副流路14における上流側とは、ポンプが駆動され、ブレーキ液がホイールシリンダからマスターシリンダへ還流される際のブレーキ液の流れにおける上流側のことを言い、下流側とは、そのブレーキ液の流れにおける下流側のことを言う。
【0019】
主流路13のうちの、途中部13bと途中部13aとの間の領域(途中部13bを基準とするホイールシリンダ12側の領域)には、込め弁(EV)31が設けられている。副流路14のうちの、途中部13aと途中部14aとの間の領域には、弛め弁(AV)32が設けられている。副流路14のうちの、弛め弁32と途中部14aとの間の領域には、アキュムレータ33が設けられている。込め弁31は、例えば、非通電状態で開き、通電状態で閉じる電磁弁である。弛め弁32は、例えば、非通電状態で閉じ、通電状態で開く電磁弁である。
【0020】
また、副流路14のうちの、途中部14aと途中部13bとの間の領域には、ポンプ60が設けられている。ポンプ60の吸込側は、途中部14aに連通している。ポンプ60の吐出側は、副流路14の途中部13bに連通する。詳しくは、ブレーキシステム1は、副流路14の一部である吸入流路142と吐出流路140を、ブレーキ液圧制御装置50の構成として備えている。吸入流路142は、副流路14の途中部13aとポンプ60の吸入側との間の流路を構成し、吐出流路140は、ポンプ60の吐出側と副流路14の途中部13bとの間の流路を構成するものである。
【0021】
ここで、ブレーキ液圧制御装置50は、吐出流路140上にポンプ60から吐出されたブレーキ液の脈動を減衰させる脈動低減部80を備えている。詳しくは、ポンプ60の吐出側は脈動低減部80のブレーキ液が流入する流入開口91b(図2参照)と接続され、脈動低減部80内に一時的に貯留されたブレーキ液が流出する流出開口91c(図2参照)と副流路の途中部13bが接続される。なお、以下の説明においては、ポンプの吐出側と流入開口91bとの間を構成する流路を第1吐出流路140a、流出開口91cと副流路の途中部13bとの間を構成する流路を第2吐出流路140bと呼ぶ場合がある。
【0022】
主流路13のうちの、途中部13bを基準としてマスターシリンダ11側の領域には、第1切換弁(USV)35が設けられている。供給流路15には、第2切換弁(HSV)36と、ダンパユニット37と、が設けられている。ダンパユニット37は、供給流路15のうちの、第2切換弁36と途中部13bとの間の領域に設けられている。第1切換弁35は、例えば、非通電状態で開き、通電状態で閉じる電磁弁である。第2切換弁36は、例えば、非通電状態で閉じ、通電状態で開く電磁弁である。なお、本実施例では吐出流路140と供給流路15の両方に脈動低減装置としてのダンパユニット37と脈動低減部80を備える構成が示されているが、取り付けスペースや、要求される脈動減衰特性に応じて、ダンパユニット37は設けなくても良い。
【0023】
込め弁31と弛め弁32とアキュムレータ33とポンプ60と第1切換弁35と第2切換弁36とダンパユニット37と脈動低減部80とは、主流路13、副流路14、および供給流路15を構成するための流路が内部に形成されている基体51に設けられている。各部材(込め弁31、弛め弁32、アキュムレータ33、ポンプ60、第1切換弁35、第2切換弁36、ダンパユニット37および脈動低減部80)が、1つの基体51に纏めて設けられていてもよく、また、複数の基体51に分かれて設けられていてもよい。
【0024】
少なくとも、基体51と、基体51に設けられている各部材と、制御器52と、によって、ブレーキ液圧制御装置50が構成される。ブレーキ液圧制御装置50において、込め弁31、弛め弁32、ポンプ60、第1切換弁35、および第2切換弁36の動作が制御器52によって制御されることで、ホイールシリンダ12のブレーキ液の液圧が制御される。すなわち、制御器52は、込め弁31、弛め弁32、ポンプ60、第1切換弁35、および第2切換弁36の動作を司るものである。
【0025】
制御器52は、1つであってもよく、また、複数に分かれていてもよい。また、制御器52は、基体51に取り付けられていてもよく、また、他の部材に取り付けられていてもよい。また、制御器52の一部または全ては、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0026】
制御器52は、例えば、周知の液圧制御動作(ABS制御動作、ESP制御動作等)に加えて、以下の液圧制御動作を実施する。
【0027】
込め弁31が開放され、弛め弁32が閉鎖され、第1切換弁35が開放され、且つ、第2切換弁36が閉鎖されている状態で、車両100のブレーキペダル16が操作された際に、ブレーキペダル16のポジションセンサの検出信号および液圧回路2の液圧センサの検出信号から、液圧回路2の液圧の不足または不足の可能性が検知されると、制御器52は、アクティブ増圧制御動作を開始する。
【0028】
アクティブ増圧制御動作において、制御器52は、込め弁31を開放状態のままにすることで、主流路13の途中部13bからホイールシリンダ12へのブレーキ液の流動を可能にする。また、制御器52は、弛め弁32を閉鎖状態のままにすることで、ホイールシリンダ12からアキュムレータ33へのブレーキ液の流動を制限する。また、制御器52は、第1切換弁35を閉鎖することで、マスターシリンダ11からポンプ60を介することなく主流路13の途中部13bに至る流路のブレーキ液の流動を制限する。また、制御器52は、第2切換弁36を開放することで、マスターシリンダ11からポンプ60を介して主流路13の途中部13bに至る流路のブレーキ液の流動を可能にする。また、制御器52は、ポンプ60を駆動させることで、ホイールシリンダ12のブレーキ液の液圧を上昇(増加)させる。
【0029】
液圧回路2の液圧の不足の解消または回避が検知されると、制御器52は、第1切換弁35を開放させ、第2切換弁36を閉鎖させ、且つ、ポンプ60の駆動を停止することで、アクティブ増圧制御動作を終了する。
【0030】
ここで、ポンプ60が駆動されると、ブレーキ液に生じた脈動は、副流路14および主流路13を通って、ホイールシリンダ12まで伝達される虞がある。また、この脈動はブレーキシステム1のブレーキ液圧制御装置50を収容しているエンジンルームへも伝達されて、騒音が発生する虞がある。この騒音は、運転者等に不快感を与え得る程の大きさになる虞もある。このため、ポンプ60の駆動時に発生する脈動の低減を図ることが重要である。
【0031】
そこで、本実施形態のブレーキシステム1のブレーキ液圧制御装置50では、ポンプ60から吐出されたブレーキ液は、脈動低減部80に流入するようになっている。そして、脈動低減部80に流入したブレーキ液は、該脈動低減部80において脈動が低減された後、該脈動低減部80の下流側へ流れていくこととなる。このため、本実施形態のブレーキ液圧制御装置50は、ポンプ60の駆動に伴い生じる脈動を低減することができるようになっている。
【0032】
なお、上述のアクティブ増圧制御においては、使用者がブレーキペダル16を操作し、第2切換弁36が開いた状態でポンプ60が駆動される。このため、ブレーキ液に生じた脈動が供給流路15およびマスターシリンダ11を介してブレーキペダル16に伝搬することとなって、使用者に違和感を与えてしまう。このため、本実施形態のブレーキ液圧制御装置50は、図1で示したようにダンパユニット37を備えていることが好ましい。ダンパユニット37によって、ポンプ60からブレーキペダル16へ伝搬するブレーキ液の脈動を低減することができる。
【0033】
なお、ダンパユニット37は、倍力装置17が省略されたブレーキシステム1にダンパユニット37を設ける場合には、供給流路15のうちの、上流側端部と第2切換弁36との間の領域に設けられていてもよい。このような位置にダンパユニット37を設けることにより、使用者がブレーキペダル16を踏み込んで操作した際、ブレーキ液がダンパユニット37に流れ込むことができ、ブレーキペダル16に伝わる液圧回路2内のブレーキ液の反力が低減される。したがって、使用者がブレーキペダルを操作した際、倍力装置17を備えたブレーキシステム1と同様のブレーキペダル16の操作量が得られる。このため、使用者は、倍力装置17が省略されたブレーキシステム1において、倍力装置17を備えたブレーキシステム1と同様の使用感を得ることができる。
【0034】
[ポンプ60について]
本実施形態に係るポンプ60について図2に基づいて説明する。図2は、ブレーキ液圧制御装置50の基体51にポンプ60および脈動低減部80が搭載され、かつ、ポンプ60のピストン62を駆動させる駆動軸57が取り外された状態の基体51の部分断面図である。なお、図2における二点鎖線は、駆動軸57および該駆動軸57に形成された偏心部57aを示す。
【0035】
図2に示すように、基体51には、ポンプ60のピストン62を駆動する駆動軸57が設けられる収容室59が形成されている。収容室59は、基体51の外壁に形成されている有底穴である。また、基体51には、ポンプ60を収容する収容室53が形成されている。これら収容室53は、基体51の外壁から収容室59へ貫通する段付きの貫通孔である。
【0036】
収容室53に収容されるポンプ60は、シリンダ61およびピストン62等を備えている。シリンダ61は、底部61bを有する有底円筒形状に形成されている。シリンダ61には、ピストン62の一端側が収容されている。そして、シリンダ61の内周面およびピストン62の前記一端で囲まれた空間がポンプ室63となる。このピストン62は、シリンダ61の軸方向に往復動自在となっている。また、ピストン62の他端側の端部である端部62aは、収容室59内に突出している。更に、ピストン62のシリンダ61に収納されている部分には、環状のシール部材66が取り付けられている。このシール部材66により、ピストン62の外周面とシリンダ61の内周面との間でブレーキ液の漏出が防止されている。
【0037】
また、シリンダ61には、底部61bとピストン62の間に、つまりポンプ室63にバネ67が収容されている。このバネ67により、ピストン62は、常時収容室59側に付勢されている。これにより、ピストン62の端部62aは、収容室59内の駆動軸57に形成された偏心部57aに当接している。偏心部57aは、その中心位置が駆動軸57の回転中心に対して偏心している。このため、駆動軸57が図示せぬ駆動源によって回転させられると、偏心部57aは、駆動軸57の回転中心に対して偏心回転運動することとなる。すなわち、偏心部57aが偏心回転運動することにより、該偏心部57aに端部62aが当接しているピストン62は、シリンダ61の軸方向に往復動することとなる。
【0038】
ピストン62のシリンダ61から突出している部分は、収容室53の内周面に設けられたガイド部材68によって摺動可能にガイドされている。また、収容室53には、環状のシール部材69が、ガイド部材68に隣接して取り付けられている。このシール部材69により、ピストン62の外周面からの流出が液密にシールされている。
【0039】
ピストン62には、軸方向に、シリンダ61のポンプ室63側に開口した有底穴62bが形成されている。ピストン62には、その外周面と有底穴62bとを連通する貫通孔である吸入口62cも形成されている。また、ピストン62には、有底穴62bの開口部を開閉自在に閉塞する図示せぬ吸込弁が設けられている。この吸込弁は、有底穴62bの開口部を閉塞するボール弁と、該ボール弁をシリンダ61側から付勢するバネと、を備えている。また、シリンダ61のピストン62側の端部には、ピストン62の吸入口62cの開口部を覆うように、円筒状のフィルタ70が取り付けられている。
【0040】
シリンダ61の底部61bには、ポンプ室63とシリンダ61の外部とを連通する貫通孔61cが形成されている。この貫通孔61cにおけるポンプ室63とは反対側の開口部側には、吐出弁64が設けられている。吐出弁64は、ボール弁64aと、貫通孔61cの開口端周縁に形成されてボール弁64aが着離座可能な弁座64bと、ボール弁64aを弁座64bに着座させる方向に付勢するバネ64cと、を備えている。この吐出弁64は、シリンダ61とカバー65との間に配置されている。
【0041】
詳しくは、カバー65は、例えば圧入により、シリンダ61の底部61bに取り付けられている。このカバー65には、底部61bの貫通孔61cと対向する位置に開口部を有する有底穴65aが形成されている。そして、吐出弁64のバネ64cは、有底穴65aに収容されている。また、有底穴65aの内径は、ボール弁64aの外径よりも大きくなっている。このため、ボール弁64aが弁座64bから離座した際、該ボール弁64aは有底穴65a内に移動することとなる。すなわち、シリンダ61のポンプ室63内のブレーキ液の液圧が上昇し、該ブレーキ液がボール弁64aを押す力がバネ64cの付勢力よりも大きくなった際、ボール弁64aが弁座64bから離座し、ポンプ室63とカバー65の有底穴65aとが貫通孔61cを介して連通することとなる。そして、ポンプ室63内のブレーキ液が有底穴65aに流入することとなる。カバー65には、吐出口65bとして、該カバー65の外部と有底穴65aとを連通する溝が形成されている。カバー65の有底穴65aに流入したブレーキ液は、該吐出口65bから、カバー65の外部つまりポンプ60の外部(例えば、脈動低減部80へ続く流路等)へ吐出される。
【0042】
このように構成されたポンプ60は、上述のように、基体51に形成された収容室53に収容される。具体的には、シリンダ61の外周部に形成された環状の突出部61aが収容室53の段部53aに当接された状態で、収容室53の開口部周辺がカシメられることにより、ポンプ60は基体51の収容室53内に固定される。
【0043】
ポンプ60がこのように収容室53に収容された際、ポンプ60の外周面と収容室53の内周面との間に、ポンプ60の吐出口65bと連通する空間である吐出室54が形成される。すなわち、吐出室54は、ポンプ60の吐出口65bと連通するように、ポンプ60の外周側に環状に形成された空間である。吐出室54は、後述のように、第1吐出流路140aの一部を構成するものである。
【0044】
また、ポンプ60においては、シリンダ61の環状の突出部61aとカバー65との間の空間が仕切り部71によって2つの空間に仕切られている。そして、仕切り部71よりもカバー65側の空間が吐出室54となっている。また、仕切り部71よりも突出部61a側の空間が、環状流路55となっている。なお、図3に示されるように、本実施の形態では、シリンダ61の外周面に環状に突出した突出部と、該突出部に設けられたOリングとにより、仕切り部71を構成している。しかし、シリンダ61の環状の突出部61aとカバー65との間の空間を2つの空間に仕切ることができれば、仕切り部71の構成は任意である。例えば、シリンダ61の外周面に環状に突出した突出部のみで、仕切り部71を構成してもよい。また例えば、シリンダ61の外周面に設けられたOリングのみで、仕切り部71を構成してもよい。
【0045】
なお、本実施の形態においては、ポンプ60が収容室53に収容された際、ポンプ60の外周面と収容室53の内周面との間に、ポンプ60の吸入口62cと連通する空間である環状流路56が形成される。すなわち、環状流路56は、ポンプ60の吸入口62cと連通するように、ポンプ60の外周側に環状に形成された空間である。環状流路56は、シリンダ61の環状の突出部61aとシール部材69との間に形成される。換言すると、環状流路56は、吸入口62cの開口部を覆うように設けられたフィルタ70の外周側に形成される。
【0046】
環状流路56は、基体51に形成された図示せぬ内部流路によって、図1における副流路14の途中部14aに連通している。換言すると、環状流路56は、副流路14の一部を構成するものである。ポンプ60を収容室53に収容した際、ポンプ60の吸入口62cと途中部14aとが連通している必要がある。環状流路56を有することにより、ポンプ60を収容室53に収容する際、ポンプ60の吸入口62cと途中部14aとを連通させるための位置合わせが不要となる。このため、環状流路56を有することにより、ブレーキ液圧制御装置50の組立てが容易になる。また、環状流路56を有することにより、収容室53を基体51に加工する際、副流路14の一部も加工していることとなる。このため、基体51の加工コスト、すなわちブレーキ液圧制御装置50の製造コストを削減することもできる。また、環状流路56を有することにより、ポンプ60の外周側の空間を副流路14として有効利用できるので、基体51つまりブレーキ液圧制御装置50を小型化することもできる。
【0047】
上述のように、ポンプ60の外周面側に形成された吐出室54は、吐出流路140の一部を構成する第1吐出流路140aに接続されている。収容室58は、脈動低減部80を収容する収容室であり、基体51の外壁に形成されている有底穴である。吐出室54は第1吐出流路140aを介して脈動低減部80の流入開口91bと接続されている。図においては、脈動低減部80の収容室58の軸に対して横方向からブレーキ液が流入するように構成される。そして収容室58の底部に位置する流出開口91cは第2吐出流路140bに接続されている。第2吐出流路140bは、基体51に形成された図示せぬ内部流路によって、図1における主流路13の途中部13bと連通している。
【0048】
図2に示されるようにポンプ60および脈動低減部80を基体51へ搭載した場合、ポンプ60が駆動されると、次のようにブレーキ液が流れる。
【0049】
図示せぬ駆動源によって駆動軸57が回転し、駆動軸57に形成された偏心部57aがピストン62の方へ寄っていくと、該ピストン62は、バネ67の付勢力に抗してシリンダ61側へ押圧されていく。このため、ポンプ室63の圧力が高くなってボール弁64aが弁座64bから離座して吐出弁64が開く。これにより、ポンプ室63内のブレーキ液は、貫通孔61cおよびカバー65の有底穴65aを通って、吐出口65bから吐出室54へ吐出される。
【0050】
駆動軸57が更に回転し、駆動軸57に形成された偏心部57aがピストン62の方から離れる方向に回転し始めると、ピストン62は、バネ67の付勢力により、シリンダ61から離れる方向へ移動していく。このため、ポンプ室63の圧力が低くなってボール弁64aが弁座64bに着座して吐出弁64が閉じるとともに、ピストン62の有底穴62bの開口部を開閉自在に閉塞する図示せぬ吸込弁が開く。これにより、環状流路56内のブレーキ液は、フィルタ70、吸入口62cおよび有底穴62bを通ってポンプ室63内に流入する。
【0051】
駆動軸57が更に回転し、駆動軸57に形成された偏心部57aがピストン62の方へ再び寄っていくと、前述のようにピストン62がシリンダ61側へ押圧されていき、ポンプ室63内のブレーキ液が吐出口65bから吐出室54へ吐出される。このように、ピストン62がシリンダ61の軸方向に繰り返し往復動して、図示せぬ吸込弁および吐出弁64が選択的に開閉されることで、液圧が上昇したつまり昇圧されたブレーキ液が、吐出口65bから吐出室54へ吐出されていく。このため、ポンプ60で昇圧されたブレーキ液には、脈動が発生する。この脈動を伴ったブレーキ液が、第1吐出流路140aを介して脈動低減部80に流入する。
【0052】
[脈動低減装置について]
本実施形態に係る脈動低減装置について図3図6に基づいて説明する。なお、後述する脈動低減装置の構成は、脈動低減部80に適用する例を用いて説明するが、当該構成は、ダンパユニット37および脈動低減部80の両方に適用されてもよいし、ダンパユニット37および脈動低減部80のいずれか一方にのみ適用されてもよい。また、本実施形態では、ブレーキ液圧回路2は、脈動低減装置としてダンパユニット37と脈動低減部80とを備える構成であるが、ブレーキ液圧回路2は、脈動低減装置として脈動低減部80のみを備える構成でもよい。以下、ダンパユニット37、脈動低減部80をまとめて脈動低減装置と呼ぶ場合がある。
【0053】
図3に示すように、ブレーキ液圧制御装置50の基体51には、軸線Ax1に沿って穿設された円筒状の穿孔により形成されて脈動低減部80が収容される収容室58が設けられている。収容室58は、基体51の外周側に形成された大径部58aと、該大径部58aより小径でありかつ該大径部58aより基体51の内部側に形成された中径部58bと、該中径部58bより小径でありかつ該中径部58bより基体51の内部側に形成された小径部58cと、を含む。これらの大径部58a、中径部58b、小径部58cは、軸線Ax1を共通の中心軸として穿設されている。
【0054】
また、中径部58bの側面には、前述のポンプ60により圧縮されて吐出口65bから吐出されるブレーキ液F1が流入する流入開口91bが設けられている。また、小径部58cの底面58dには、主流路13へ連通して該主流路13へ脈動低減部80からブレーキ液F2を流出させる流出開口91cが設けられている。また、基体51の外周面へ続く収容室58の開口部58eは、閉塞部材81によって閉塞されている。
【0055】
中径部58bの内部には、該中径部58bの内径とほぼ等しい外径の円盤状に形成された仕切部材85が、流入開口91bよりも小径部58c側に該中径部58bの内周面に沿って嵌め込まれている。これにより、中径部58bの内周面と、中径部58bとの大径部58aを接続する段部面と、大径部58aの内周面と、閉塞部材81の一端面と、仕切部材85の一端面とにより区画される第1室Aが形成される。該第1室Aの内周面には、ポンプ60の吐出口65bに連通する流入開口91bが設けられており、ポンプ60により昇圧されたブレーキ液圧が第1室Aに入力されるようになっている。また、小径部58cの内周面および底面と、仕切部材85の一と端面により区画される第2室Bが形成される。該第2室Bの内周面には、ブレーキ液圧回路2の主流路13に連通する流出開口91cが設けられている。
【0056】
大径部58aの内部には、該大径部58aの内径とほぼ等しい外径の円盤状に形成され、軸線Ax1方向に移動する第1移動体83と、該第1移動体83の外周面と大径部58aの内周面との間をシールするシール部材84と、該第1移動体83を中径部58b側へ付勢する第1付勢部材82と、が配置されている。そして、第1移動体83は、その外周面にシール部材84が配置されており、該シール部材84を介在させて大径部58aの内周面に沿って軸線Ax1方向へ摺動するようになっている。該シール部材84の素材として、摺動を滑らかにするために、例えば、PTFEを採用することができる。
【0057】
また、第1移動体83の外周面と大径部58aの内周面とがシール部材84によりシールされていることにより、第1室Aは、第1移動体83により2つの領域に仕切られて、中径部58bの内周面と、仕切部材85の一端面と、第1移動体83の一端面とにより区画される第1領域A1が形成され、大径部58aの内周面と、第1移動体83の一端面と、閉塞部材81の一端面により区画される第2領域A2が形成される。第1移動体83が、閉塞部材81側へ移動することで第1領域A1の容積が拡大されるとともに第2領域A2の容積が縮小される一方、該第1移動体83が、仕切部材85側へ移動することで第1領域A1の容積が縮小されるとともに第2領域A2の容積が拡大されるようになっている(図4参照)。
【0058】
流入開口91bから入力されるブレーキ液圧により第1移動体83が第1付勢部材82の付勢力に抗して移動されることにより、第1室A内でブレーキ液圧のエネルギーの一部が第1付勢部材82により消費されるので、第1室Aのブレーキ液圧の変化速度および変動幅を第1室Aに入力されるブレーキ液圧の変化速度および変動幅よりも低減することができ、脈動低減装置から出力されるブレーキ液圧の脈動を低減することができる。
【0059】
図3に示すように、仕切部材85には、中径部58b側と小径部58c側とを連通させる連通孔85aが例えば2つ形成されている。各連通孔85aの小径部58c側には、各連通孔85aに対応する第1弁体86に着座される第1弁座85bが形成されている。これら仕切部材85と、第1弁座85bと、第1弁体86と、後述するように第1弁体86を第1弁座85b側へ付勢する付勢部材(第2付勢部材89および第3付勢部材90)とにより、第1室Aと第2室Bとを接続する接続部80aが形成される。
【0060】
そして、少なくとも1つの第1弁体86が対応する第1弁座85bに着座しない接続位置に位置する状態であるときには、連通孔85aの中径部58b側と小径部58c側すなわち第1室A側と第2室B側とが接続された状態となり、第1室Aと第2室Bとでブレーキ液圧が相互に伝達されるようになっている(図4参照)。一方、すべての第1弁体86が対応する第1弁座85bに着座する非接続位置に位置する状態であるときには、すべての連通孔85aが第1弁体86により閉鎖されることとなり、第1室A側と第2室B側とが接続されない状態となって、第1室Aと第2室Bとでブレーキ液圧が伝達されないようになっている(図3参照)。
【0061】
なお、本実施形態の脈動低減部80は、仕切部材85に2つの第1弁座85bを備えるとともに当該第1弁座85bに対応する2つの第1弁体86を備える構成であるが、脈動低減部は、第1弁座および第1弁体を1つずつ備える構成でも良いし、第1弁座および第1弁体を3つずつ以上の備える構成でも良い。
【0062】
小径部58cの内部には、前述の第1弁体86と、該小径部58cの内径よりも小さい外径の円盤状に形成されており軸線Ax1方向に移動する第2移動体87と、該第2移動体87を仕切部材85側へ付勢する第2付勢部材89と、該第2移動体87に設けられる第2弁座87eに着座する第2弁体88と、該第2弁体88を第2弁座87e側へ付勢する第3付勢部材90と、が配置されている。
【0063】
第2移動体87は、円盤状に形成された本体部87aと、本体部87aの一端面側に形成されて第1弁体86を位置決めする溝状の溝部87bと、該溝部87bとは反対の一端面側に突出するように形成されて第2付勢部材89を位置決めする突出部87cと、本体部87aの一端面側から他端面側に貫通れた貫通孔87dと、を備える。また、貫通孔87dの突出部87c側の端部には、第2弁体88が着座される第2弁座87eが形成されている。
【0064】
第1弁体86は、第2移動体87の溝部87bの内部に配置されることにより、該第1弁体86と第2移動体87と位置関係が決められ、該第1弁体86が第1弁座86e着座できるようになっている。
【0065】
また、第2付勢部材89は、環形状に形成されており、該第2付勢部材89の内周面が第2移動体87の突出部87cの外周面に当接されるように配置されることにより、該第2付勢部材89と第2移動体87との位置関係が決められ、該第2付勢部材89により第2移動体87が仕切部材85側へ付勢されるとともに、該第2付勢部材89により第2移動体87を介して第1弁体86が第1弁座85b側へ付勢されるようになっている。
【0066】
また、第2弁体88は、第3付勢部材90により付勢されて、第2弁座87eに着座する。第3付勢部材90により第2弁体88が第2弁座87e側に付勢されることにより、該第2弁体88と第2移動体87を介して第1弁体86が第1弁座85b側へ第3付勢部材90により付勢されるようになっている。すなわち、第1弁体86および第2移動体87は、第2付勢部材89および第3付勢部材90により第1弁座85b側へ付勢される。
【0067】
また、第2付勢部材89は、後述するようにエラストマゴムなどの樹脂材料により形成されており、該第2付勢部材89が第2移動体87の位置決め部に密着するとともに、該第2移動体87の第2弁座87eが第2弁体88により着座された状態では、第2室Bは、これらの第2移動体87、第2付勢部材89、第2弁体88によって2つの領域B1、B2に仕切られて、小径部58cの内周面および底面と、第2付勢部材89の外周面と、第2移動体の外周面と、第2弁体88の外周面とにより区画される第3領域B1が形成され、小径部58cの底面と、第2付勢部材89の内周面と、第2移動体87の外周面と、第2弁体88の外周面とにより区画される第4領域B2が形成される。第2移動体87が、小径部58cの底面側へ移動することで第3領域B1の容積が拡大されるとともに第4領域B2の容積が縮小される一方、該第2移動体87が、仕切部材85側へ移動することで第3領域B1の容積が縮小されるとともに第4領域B2の容積が拡大されるようになっている(図4参照)。
【0068】
また、第4領域B2側に比較して第3領域B1側でのブレーキ液圧が低い状態では、第2弁体88は、第3付勢部材90により第2弁座87e側へ付勢されて着座した状態が維持されて、第3領域B1側と第4領域B2側とが接続されない状態となって、第3領域B1と第4領域B2とでブレーキ液圧が伝達されないようになっている(図3図4参照)。一方、第4領域B2側に比較して第3領域B1側でのブレーキ液圧が高い状態では、第2弁体88は、第2弁座87eから離座し、第3領域B1側と第4領域B2側とが接続された状態となって、第3領域B1と第4領域B2とでブレーキ液圧が相互に伝達されるようになっている(図5参照)。
【0069】
第1付勢部材82、第2付勢部材89は、図6に示すように、負荷過程(変位が0からs1に変化する過程)と除荷過程(変位がs1から0に変化する過程)で同じ変位sであるときに、該負荷過程での復元力pと該除荷過程での復元力pとが異なる大きさとなるヒステリシス特性R1を有する弾性体により構成され、リング状の部材として形成される。第1付勢部材82、第2付勢部材89の材料として、例えば、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、シリコン等の材料により形成されたエラストマばねを使用することができる。また、第1付勢部材82、第2付勢部材89は、1つの材料により形成されても良いし、複数の材料により形成されても良い。例えば、反発弾性率の比較的低いEPDMを反発弾性率の比較的高いシリコンにより挟むようにして構成されても良い。材料の組合せや形状によって、ブレーキ液圧のポンプ60の性能に起因して発生する固有の脈動周波数に合わせて、当該付勢部材の反発弾性率を調整することができる。
【0070】
第3付勢部材90は、図6に示すように、第2付勢部材89と同じ変位sであるときの除荷過程(変位がs2から0に変化する過程)での復元力pが、該同じ変位sであるときの第2付勢部材89の除荷過程(変位がs1から0に変化する過程)または負荷過程(変位が0からs1に変化する過程)での復元力pよりも大きくなる特性R2を有する弾性体により構成される。第3付勢部材90として、例えば、金属製のばねを使用することができる。また、第3付勢部材90は、1つの材料により形成されても良いし、複数の材料により形成されても良い。材料の組合せや形状によって、ブレーキ液圧のポンプ60の性能に起因して発生する固有の脈動周波数に合わせて、当該付勢部材の反発弾性率を調整することができる。
【0071】
次いで、本実施形態の脈動低減装置の動作について図3図5に基づいて説明する。
【0072】
図3に示すように、ポンプ60が駆動していな非駆動状態である場合、または、ポンプ60の駆動が開始された直後で該ポンプ60の吐出側のブレーキ液圧出力圧力が予め定められた第1圧力値P1を超えていない場合には、第1弁体86は、第1弁座85bに着座した状態であり、なおかつ第2弁体88は、第2弁座87eに着座した状態である。この状態では、ポンプ60の吐出側のブレーキ液圧は、第1室Aの第1領域A1までしか供給されない。
【0073】
その後、図4に示すように、ポンプ60の駆動が開始された直後から該ポンプ60の吐出側のブレーキ液圧が予め定められた第1圧力値P1まで上昇するまでの期間では、ポンプ60の吐出側のブレーキ液圧の上昇に伴い、ブレーキ液圧が第1移動体83に作用して、該第1移動体83が第1付勢部材82の付勢力に抗して移動される。この際、第1移動体83が第1付勢部材82による付勢力に抗して移動されるので、ブレーキ液圧の一部のエネルギーが消費されることとなる。また、第1移動体83の移動に伴って該第1移動体83の外周面に配置されたシール部材84の摺動抵抗によってもブレーキ液圧の一部のエネルギーが消費されることとなる。これらのエネルギー消費によって、ポンプ60の吐出側のブレーキ液圧の変動に比較して、第1領域A1内のブレーキ液圧の変動は低減される。
【0074】
そして、ポンプ60の駆動に伴って該ポンプ60の吐出側のブレーキ液圧が第1圧力値P1を超えるときに、第1弁体86および第2移動体87が第2付勢部材89および第3付勢部材90の付勢力に抗して移動されて、第1弁体86が第1弁座85bから離座し、第1室Aと第2室が接続される。この際、第1弁体86および第2移動体87が第2付勢部材89および第3付勢部材90による付勢力に抗して移動されるので、これらの付勢部材によりブレーキ液圧の一部のエネルギーが消費されることとなり、第2室Bの第3領域B1内のブレーキ液圧の変動は、第1室Aの第1領域A1内のブレーキ液圧の変動に比較して低減される。
【0075】
その後、図5示すように、ポンプ60の駆動に伴って該ポンプ60の吐出側のブレーキ液圧が更に昇圧されて、第3領域B1内のブレーキ液圧が予め定められた第1圧力値P1よりも高い第2圧力値P2を超えるときに、第2弁体88が第3付勢部材90の付勢力に抗して移動されて、該第2弁体88が第2弁座87eから離座し、第2室Bの第3領域B1と第4領域B2とが接続される。そして、ポンプ60の駆動に伴って昇圧されたブレーキ液圧が脈動低減装置からブレーキ液圧回路2へ出力される。この際、第2弁体88が第3付勢部材90による付勢力に抗して移動されるので、この第3付勢部材90によりブレーキ液圧の一部のエネルギーが消費されることとなり、第2室Bの第4領域B2内のブレーキ液圧の変動は、第2室Bの第3領域B1内のブレーキ液圧の変動に比較して低減される。したがって、脈動低減装置内で第1付勢部材82、第2付勢部材89、第3付勢部材90による各付勢力およびシール部材84による摺動抵抗によりブレーキ液圧の変動が低減されたことにより、脈動低減装置からブレーキ液圧回路2へ出力されるブレーキ液圧の脈動は、ポンプ60の吐出側のブレーキ液圧の脈動に比較して低減されている。
【0076】
第3領域B1内のブレーキ液圧が第2圧力値P2を超えた以後、再び、第2圧力値P2を下回る場合には、第2弁体88が第3付勢部材90の付勢力により移動されて第2弁座87eに着座することとなり、当該第2弁体88および第2弁座87eが逆止弁として作用し、第4領域B2内のブレーキ液圧の降下が低減される。
【0077】
その後、第3領域B1内のブレーキ液圧がさらに低下する場合には、第3付勢部材90の付勢力により第2移動体87および第1弁体86が第1弁座85b側へ移動されることとなる。この際、第2付勢部材89は、上述のよう負荷過程と除荷過程とで復元力にヒステリシスを有するので、第1弁体86による押圧力により縮んでおり、第2移動体87および第1弁体86に付勢力を作用させることができる変位に戻るまでに所定期間を要する。その後、第2付勢部材89による付勢力が第2移動体87および第1弁体86に作用し始める前に、第3領域B1内のブレーキ液圧が上昇し始めた場合には、第2移動体87および第1弁体86は第3付勢部材90による付勢力のみに抗して移動されることとなり、第2付勢部材89による付勢力が作用している場合に比較して短い期間で、第3領域B1内のブレーキ液圧が第2圧力値P2を超え得る。これにより、第4領域B2内のブレーキ液圧の降下幅を低減することができる。
【0078】
本実施形態の脈動低減装置は、以上のように、第1弁体86が第1弁座85bに着座している状態、第1弁体86が第1弁座85bから離座した状態、第2弁体88が第2弁座87eに着座している状態、第2弁体88が第2弁座87eから離座している状態に、ポンプ60の駆動に伴うブレーキ液圧の変動に応じて順次遷移して、当該ポンプ60の駆動に伴うブレーキ液圧の脈動を低減することができる。その結果、ポンプ60の駆動に伴い発生する脈動に起因する騒音を低減することができる。
【0079】
[脈動低減装置の作用効果について]
車両のブレーキシステム1は、マスターシリンダ11からホイールシリンダ12にブレーキ液圧を供給するブレーキ液圧回路2と、該ブレーキ液圧回路2内のブレーキ液圧を上昇させるポンプ60と、ブレーキ液圧を制御するブレーキ液圧制御装置50と、を備える。このような構成のブレーキシステム1では、ポンプ60の駆動に伴ってブレーキ液圧に脈動が生じる場合があり、ブレーキ液圧の脈動は、ブレーキ液圧回路2を通ってホイールシリンダ12に伝搬されたり、ポンプ60を備えるブレーキシステム1を備える車両のエンジンルーム等へ伝搬し、車両の運転者等(例えば、車両の運転者、同乗者、車両外の者等)に不快感や違和感を与え得る騒音が発生する虞がある。
【0080】
これに対して、本実施形態のブレーキシステム1のブレーキ液圧制御装置50は、ブレーキ液圧回路2内のブレーキ液圧の脈動を低減する脈動低減装置を備える。脈動低減装置は、ブレーキ液圧回路2からブレーキ液圧が入力される第1室Aと、ブレーキ液圧回路2へブレーキ液圧を出力する第2室Bと、第1室Aと第2室Bとを接続する接続部80aと、を備え、当該接続部80aは、第1弁座85bに着座して第1室Aと第2室Bを接続しない非接続位置と、第1弁座85bから離座して第1室Aと第2室Bを接続する接続位置と、に移動する第1弁体86と、該第1弁体86を第1弁座85b側へ付勢する付勢部材と、を備え、付勢部材は、第2付勢部材89と、該第2付勢部材89とは異なる第3付勢部材90と、を含み、第2付勢部材89は、負荷過程(変位が0からs1となる工程)と除荷過程(変位がs1から0となる工程)で同じ変位sであるときに、該負荷過程での復元力pと該除荷過程での復元力pとが異なる大きさとなるヒステリシス特性を有し、第3付勢部材90は、第2付勢部材89と同じ変位sであるときの除荷過程(変位がs2から0となる工程)での復元力pが、該同じ変位sであるときの第2付勢部材89の除荷過程(変位がs1から0となる工程)での復元力よりも大きくなる特性を有する構成である。
【0081】
このような構成によれば、第1室Aと第2室Bの接続部80aが第1弁体86と該第1弁体86を第1弁座85b側へ付勢する第2付勢部材89と第3付勢部材90とを備え、第2付勢部材89が、負荷過程と除荷過程で同じ変位sであるときに、該負荷過程での復元力pと該除荷過程での復元力pとが異なる大きさとなるヒステリシス特性を有し、第3付勢部材90が、第2付勢部材89と同じ変位sであるときの除荷過程での復元力pが、該同じ変位sであるときの第2付勢部材89の除荷過程での復元力pよりも大きくなる特性を有するので、第1室Aにブレーキ液圧回路2から入力される入力ブレーキ液圧が予め定められた第1圧力値P1を超える状態であり、第1室A側のブレーキ液圧が第2室B側のブレーキ液圧に比較して高いときには、第1弁体86が第2付勢部材89および第3付勢部材90により付勢される。これにより、第1弁体86は、第1室Aへ入力されるブレーキ液圧がポンプ60の駆動に伴って上昇される過程では、第2付勢部材89および第3付勢部材90による2つの付勢力に抗して移動することになる。すなわち、この工程では、第1室Aに入力されたブレーキ液圧は、そのエネルギーの一部が当該2つの付勢部材により消費されて第2室Bへ出力されるので、第2室B側で上昇するブレーキ液圧の変化速度を第1室A側で入力されるブレーキ液圧の変化速度よりも低減することができる。
【0082】
一方、第2付勢部材89が復元力pのヒステリシス特性を有するとともに第3付勢部材90の除荷過程での復元力pが同じ変位sであるときの第2付勢部材89の復元力よりも大きくなる特性を有することにより、第2付勢部材89が除荷過程において無負荷時の状態に戻る速度が、第3付勢部材90が除荷過程において無負荷時の状態に戻る速度よりも遅くなるので、第1室Aにブレーキ液圧回路2から入力される入力ブレーキ液圧が第2圧力値P2を超える状態であり、第1室A側のブレーキ液圧が第2室B側のブレーキ液圧に比較して低くなった以降は、予め定められた所定期間にわたって第1弁体86が第3付勢部材90のみにより付勢されることとなり、第1弁体86は、第1室Aのブレーキ液圧が降下していく過程において、第3付勢部材により付勢されて第1弁座85b側へ移動させられて、第1室Aのブレーキ液圧が第1圧力値P1よりも低い予め定められた第2圧力値P2まで降下することで、第1弁体86が第1弁座85bに着座されることになる。一方で、第1室Aのブレーキ液圧が第2圧力値P2まで降下する前に再び上昇し始める場合には、第1弁体86は、第3付勢部材90の付勢力のみに抗して移動することとなり、第1室Aに入力されたブレーキ液圧のエネルギーの一部が第2付勢部材89により消費されず、その分のエネルギーが第2室Bのブレーキ液圧の上昇に利用される。すなわち、この場合には、第2室B側でのブレーキ液圧の降下幅を低減することができる。したがって、上述のような構成の脈動低減装置により、ブレーキ液圧回路2へ出力される第2室B内のブレーキ液圧の変化速度および変動幅を低減することができ、車両のブレーキ液圧回路2内のブレーキ液圧の脈動を低減することができる。
【0083】
本実施形態の脈動低減装置では、第2付勢部材89は、エラストマばねであり、例えば、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、シリコン等の材料により形成される構成である。このような構成によれば、第2付勢部材89が、負荷過程と除荷過程で同じ変位であるときに、該負荷過程での復元力と該除荷過程での復元力とが異なる大きさとなるヒステリシス特性を有することができ、脈動低減装置により車両のブレーキ液圧回路2内のブレーキ液圧の脈動を低減することができる。
【0084】
また、本実施形態の脈動低減装置では、第3付勢部材90は、金属ばねである構成である。このような構成によれば、第3付勢部材90は、第2付勢部材89と同じ変位sであるときの除荷過程での復元力pが、該同じ変位sであるときの第2付勢部材89の除荷過程での復元力よりも大きくなる特性を有することができ、脈動低減装置により車両のブレーキ液圧回路2内のブレーキ液圧の脈動を低減することができる。
【0085】
また、本実施形態の脈動低減装置は、接続部80aよりも上流側の第1室Aに、軸線Ax1方向に移動する第1移動体83と、該第1移動体83を付勢する第1付勢部材82と、を備え、第1移動体83により第1室Aが2つの領域に仕切られて、第1移動体83が移動することにより、ブレーキ液圧回路2からブレーキ液圧が入力される第1領域A1の容積が変動する構成である。このような構成によれば、接続部80aよりも上流側の第1領域A1で、ブレーキ液圧回路2から入力されるブレーキ液圧の変動を低減する前処理を行うことができ、第1領域A1より下流側の接続部80aでのブレーキ液圧の脈動をさらに低減することができる。
【0086】
また、本実施形態の脈動低減装置は、接続部80aよりも上流側の第1室Aに、軸線Ax1方向に移動する第1移動体83と、該第1移動体83を付勢する第1付勢部材82と、を備え、第1付勢部材82は、エラストマばねであり、例えば、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、シリコン等の材料により形成される構成である。このような構成によれば、第1付勢部材82が、負荷過程と除荷過程で同じ変位であるときに、該負荷過程での復元力と該除荷過程での復元力とが異なる大きさとなるヒステリシス特性を有することができ、脈動低減装置により車両のブレーキ液圧回路2内のブレーキ液圧の脈動を低減することができる。
【0087】
以上、本発明の実施形態の例を説明してきたが、本発明はこの実施形態の例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0088】
1 ブレーキシステム
2 ブレーキ液圧回路
50 ブレーキ液圧制御装置
37 ダンパユニット
50 ブレーキ液圧制御装置
60 ポンプ
80 脈動低減部
81 閉塞部材
80a 接続部
82 第1付勢部材
83 第1移動体
84 シール部材
85 仕切部材
86 第1弁体
87 第2移動体
88 第2弁体
89 第2付勢部材
90 第3付勢部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6