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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】表示装置および表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/11 20230101AFI20240829BHJP
   H10K 59/122 20230101ALI20240829BHJP
   H10K 59/35 20230101ALI20240829BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20240829BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20240829BHJP
   H10K 71/20 20230101ALI20240829BHJP
   H10K 50/115 20230101ALN20240829BHJP
   H05B 33/14 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
H10K50/11
H10K59/122
H10K59/35
H10K50/15
H10K50/16
H10K71/20
H10K50/115
H05B33/14 Z
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2023531271
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2021024872
(87)【国際公開番号】W WO2023276086
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】喜田 扇太郎
(72)【発明者】
【氏名】浅岡 康
(72)【発明者】
【氏名】安達 考洋
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0161394(US,A1)
【文献】特開2005-203215(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112864207(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/11
H10K 59/122
H10K 59/35
H10K 50/15
H10K 50/16
H10K 71/20
H10K 50/115
H05B 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光領域に位置する本体部、および非発光領域に位置するエッジ部を含んでいる機能層と、
前記非発光領域に形成され、前記発光領域側の面である内壁面を含むバンクと、を備えており、
前記エッジ部は、前記本体部の厚みより大きい厚みの部分を含む張出部を有し、前記張出部は前記バンク上に形成され、
前記バンクは、上面を含む台状に形成され、
前記バンクは、前記発光領域に対して前記内壁面の外側に位置する外壁面を含み、
前記張出部が、前記上面と前記外壁面との境界に形成されている表示装置。
【請求項2】
前記張出部の厚みの最大値は、前記本体部の厚みの2倍以上である請求項に記載の表示装置。
【請求項3】
発光領域に位置する本体部、および非発光領域に位置するエッジ部を含んでいる機能層と、
前記非発光領域に形成され、前記発光領域側の面である内壁面を含むバンクと、を備えており、
前記エッジ部は、前記本体部の厚みより大きい厚みの部分を含む張出部を有し、前記張出部は前記バンク上に形成され、
前記張出部の幅は、前記本体部の厚みより大きい表示装置。
【請求項4】
発光領域に位置する本体部、および非発光領域に位置するエッジ部を含んでいる機能層と、
前記非発光領域に形成され、前記発光領域側の面である内壁面を含むバンクと、を備えており、
前記エッジ部は、前記本体部の厚みより大きい厚みの部分を含む張出部を有し、前記張出部は前記バンク上に形成され、
前記張出部の幅は、前記張出部の厚みの最大値より大きい表示装置。
【請求項5】
発光領域に位置する本体部、および非発光領域に位置するエッジ部を含んでいる機能層と、
前記非発光領域に形成され、前記発光領域側の面である内壁面を含むバンクと、を備えており、
前記エッジ部は、前記本体部の厚みより大きい厚みの部分を含む張出部を有し、前記張出部は前記バンク上に形成され、
前記張出部が形成される面の法線方向に対する、前記張出部における前記発光領域と反対側の側壁の傾斜角度をθ1とし、
前記法線方向に対する、前記張出部における前記発光領域側の側壁の傾斜角度をθ2とすると、
θ1<θ2
を満足する表示装置。
【請求項6】
複数の前記機能層を有し、
前記機能層は、第1機能層、第2機能層、および第3機能層を含む請求項1からのいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第1機能層、前記第2機能層、および前記第3機能層は、それぞれ異なる色に発光し、赤色、緑色、又は青色のいずれかに発光する発光層である請求項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記第3機能層の前記張出部は、前記第1機能層の端部および前記第2機能層の端部の少なくとも一方に対して重なっている請求項またはに記載の表示装置。
【請求項9】
前記第3機能層の前記張出部は、隣り合う前記第1機能層の端部と前記第2機能層の端部とに亘って重なる請求項に記載の表示装置。
【請求項10】
前記第2機能層の前記張出部が、前記第2機能層と隣り合う前記第1機能層の端部に対して重なる請求項からのいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項11】
発光領域に位置する本体部、および非発光領域に位置するエッジ部を含んでいる機能層と、
前記非発光領域に形成され、前記発光領域側の面である内壁面を含むバンクと、を備えており、
前記エッジ部は、前記本体部の厚みより大きい厚みの部分を含む張出部を有し、前記張出部は前記バンク上に形成され、
複数の前記機能層を有し、
前記機能層はキャリア輸送層であり、
前記複数の機能層は画素ごとに形成されている表示装置。
【請求項12】
前記複数の機能層はライン状に形成されている請求項から11のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項13】
前記機能層は、連続的に形成されている請求項から11のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項14】
発光領域に位置する本体部、および非発光領域に位置するエッジ部を含んでいる機能層を形成する工程を含んでおり、
前記機能層を形成する工程では、前記エッジ部に対して、前記本体部の厚みより大きい厚みの部分を含む張出部を形成し、
前記機能層を形成する工程の前に、前記非発光領域に、前記発光領域側の面である内壁面を含むバンクを形成する工程を含んでおり、
前記張出部は、前記バンクに対して形成され、
前記バンクは、上面をさらに含む台状の部材であり、
前記張出部を、前記上面に対して形成し、
前記バンクは、前記発光領域に対して前記内壁面の外側に位置する外壁面を含んでおり、
前記張出部を、前記上面と前記外壁面との境界に形成する表示装置の製造方法。
【請求項15】
前記張出部の厚みの最大値は、前記本体部の厚みの2倍以上である請求項14に記載の表示装置の製造方法。
【請求項16】
前記機能層を形成する工程は、
フォトレジストを形成する工程と、
前記フォトレジストを露光及び現像してテンプレートを形成する工程と、
前記機能層を塗布する工程と、
前記テンプレートをリフトオフして前記機能層を所定の領域に形成する工程と、を含む請求項14または15に記載の表示装置の製造方法。
【請求項17】
前記テンプレートは、順テーパー型、逆テーパー型、または鉤型に形成され、
前記張出部は、前記順テーパー型の前記テンプレートの転写形状、前記逆テーパー型の前記テンプレートの転写形状、または前記鉤型の前記テンプレートの転写形状を含んでいる請求項16に記載の表示装置の製造方法。
【請求項18】
前記張出部の幅は、前記本体部の厚みより大きい請求項14から17のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項19】
前記張出部の幅は、前記張出部の厚みの最大値より大きい請求項14から18のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項20】
発光領域に位置する本体部、および非発光領域に位置するエッジ部を含んでいる機能層を形成する工程を含んでおり、
前記機能層を形成する工程では、前記エッジ部に対して、前記本体部の厚みより大きい厚みの部分を含む張出部を形成し、
前記張出部が形成される面の法線方向に対する、前記張出部における前記発光領域と反対側の側壁の傾斜角度をθ1とし、
前記法線方向に対する、前記張出部における前記発光領域側の側壁の傾斜角度をθ2とすると、
θ1<θ2
を満足する表示装置の製造方法。
【請求項21】
複数の前記機能層が形成され、
前記複数の機能層として、複数の発光層を個別に形成する請求項14から20のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項22】
複数の前記機能層が形成され、
前記複数の機能層として、複数のキャリア輸送層を個別に形成する請求項14から20のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項23】
発光領域に位置する本体部、および非発光領域に位置するエッジ部を含んでいる機能層を形成する工程を含んでおり、
前記機能層を形成する工程では、前記エッジ部に対して、前記本体部の厚みより大きい厚みの部分を含む張出部を形成し、
前記機能層は、発光層および前記発光層上に形成されるキャリア輸送層の両方を含み、
さらに複数の前記機能層が形成され、
前記発光層および前記キャリア輸送層を、共通のテンプレートを用いて形成する表示装置の製造方法。
【請求項24】
複数の前記機能層が形成され、
前記複数の機能層として、第1機能層、第2機能層、および第3機能層をこの順に形成し、
前記第3機能層に形成した前記張出部を、前記第1機能層の端部および前記第2機能層の端部の少なくとも一方に対して重ねる請求項21から23のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項25】
前記第1機能層、前記第2機能層、および前記第3機能層は、それぞれ異なる色に発光し、赤色、緑色、又は青色のいずれかに発光する発光層である請求項24に記載の表示装置の製造方法。
【請求項26】
隣り合う前記第1機能層の端部と前記第2機能層の端部とに亘って重なる、前記張出部を有する前記第3機能層を形成する請求項24または25に記載の表示装置の製造方法。
【請求項27】
前記第2機能層に形成した前記張出部を、前記第2機能層と隣り合う前記第1機能層の端部に対して重ねる請求項24または25に記載の表示装置の製造方法。
【請求項28】
前記複数の機能層として、第1機能層、第2機能層、および第3機能層をこの順に形成し、
前記第1機能層に形成した前記エッジ部と、前記第3機能層に形成した前記エッジ部とを重ねる請求項21から23のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項29】
前記複数の機能層は、ライン状に繋がって形成される請求項21から28のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項30】
前記機能層を連続的に形成する請求項21から28のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置および表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の製造方法の一例として、特許文献1および2に開示されている技術が挙げられる。当該表示装置の一例として、OLED(有機発光ダイオード)表示装置およびQLED(量子ドット発光ダイオード)表示装置が挙げられる。特許文献1および2においては、湿式塗布法等を用いて有機材料インキを塗布して、発光層(機能層)を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2011-60435号公報
【文献】日本国特開2011-60518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、表示装置の機能層を形成する方法として、リフトオフが注目されている。リフトオフとは、以下の(工程A)~(工程C)を含む方法である。
【0005】
(工程A)ある材料(それ自体にパターニング性が有っても無くてもよい)で基板上に、テンプレートと呼ばれる型を形成する。
【0006】
(工程B)工程Aの後、テンプレートの一部または全部の上から、パターニングしたい材料(すなわち、機能層の材料)を成膜する。
【0007】
(工程C)工程Bの後、テンプレートの一部または全部を除去すると共に、パターニングしたい材料の膜から、不要部分を除去して必要部分を残留させる。
【0008】
リフトオフによって機能層を形成することにより、湿式塗布法等によって機能層を形成することに比べて、高精細の機能層を容易に形成することができる。
【0009】
また、湿式塗布法等によって機能層を形成する場合、発光領域の外側に位置するバンクが通常撥液性であるため、機能層のエッジ部と、バンクとの密着性が不十分になりやすい。リフトオフによって機能層を形成する場合、発光領域の外側に位置するバンクを撥液性とする必要が無いため、機能層のエッジ部と、バンクとを十分に密着させることが可能となる。
【0010】
一方で、機能層の一例としての発光層の厚みは通常40nm以下であり、機能層の別の例としてのキャリア輸送層の厚みは通常80nm以下であるため、機能層は非常に薄い。従って、リフトオフによって機能層を形成する場合であっても、機能層のエッジ部が欠けたり、機能層のエッジ部を起点に機能層が剥がれたりするおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る表示装置は、発光領域に位置する本体部、および非発光領域に位置するエッジ部を含んでいる機能層と、前記非発光領域に形成され、前記発光領域側の面である内壁面を含むバンクと、を備えており、前記エッジ部は、前記本体部の厚みより大きい厚みの部分を含む張出部を有し、前記張出部は前記バンク上に形成されている。
【0012】
本発明の一態様に係る表示装置の製造方法は、発光領域に位置する本体部、および非発光領域に位置するエッジ部を含んでいる機能層を形成する工程を含んでおり、前記機能層を形成する工程では、前記エッジ部に対して、前記本体部の厚みより大きい厚みの部分を含む張出部を形成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、機能層の欠けや剥がれのおそれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態1に係る発光素子および表示装置の製造方法を示す図である。
図2】本発明の実施形態1に係る発光素子および表示装置の製造方法を示す図である。
図3】本発明の実施形態1に係る発光素子および表示装置の製造方法を示す図である。
図4】比較例に係る発光層のエッジ部と、本発明の実施形態1に係るエッジ部とを対比する図である。
図5】張出部の形状と、第5工程にて張出部と接触するフォトレジストの形状との組み合わせの一例を示す図である。
図6】本発明の実施形態1に係る発光層におけるエッジ部周辺の構造と、インクジェット法により形成した発光層の構造とを対比する図である。
図7】張出部の別の例を示す図である。
図8】張出部の構成例を示す図である。
図9】張出部の構成例を示す図である。
図10】張出部の構成例を示す図である。
図11】張出部の構成例を示す図である。
図12】本発明の実施形態2に係る発光素子および表示装置ならびにそれらの製造方法を示す図である。
図13】本発明の実施形態2の変形例に係る発光素子および表示装置ならびにそれらの製造方法を示す図である。
図14】張出部の変形例を示す図である。
図15】本発明の実施形態3に係る表示装置およびその製造方法を示す図である。
図16】本発明の実施形態4に係る表示装置およびその製造方法を示す図である。
図17】本発明の実施形態4の第1変形例に係る表示装置およびその製造方法を示す図である。
図18】本発明の実施形態4の第2変形例に係る表示装置およびその製造方法を示す図である。
図19】本発明の実施形態5に係る表示装置における複数の発光素子の配置例を示す図である。
図20】本発明の実施形態5に係る表示装置における複数の発光素子の配置例を示す図である。
図21】本発明の実施形態5に係る表示装置における複数の発光素子の配置例を示す図である。
図22】本発明の実施形態5に係る表示装置における複数の発光素子の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、先に説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない場合がある。
【0016】
〔実施形態1〕
図1図3は、本実施形態に係る発光素子101および表示装置201の製造方法を示す図である。本実施形態に係る発光素子101および表示装置201の製造方法は、第1工程~第9工程に大別される。第1工程~第3工程を図1に、第4工程~第6工程を図2に、第7工程~第9工程を図3に、それぞれ示している。各実施形態に係る各発光素子は、その一例を、対応する図面において破線で囲んで示しているが、これは一解釈例に過ぎず、図示の構成要素から軽微な過不足がある発光素子を排除するものではない。
【0017】
第1工程においては、第1電極2が形成された基板1に対して、エッジカバー3を形成する。エッジカバー3は、第1電極2の端部を覆うように形成する。エッジカバー3は、島状に複数形成されている構成であってもよい。エッジカバー3は、第1電極2におけるエッジカバー3の非形成部分からその上方を、発光領域4と規定する。一方、発光領域4以外の領域は非発光領域であり、エッジカバー3は非発光領域の少なくとも一部に形成される。
【0018】
第2工程においては、第1電極2の上およびエッジカバー3の上に対して、第1キャリア輸送層5を形成する。第1電極2がアノードである場合、第1キャリア輸送層5は、発光層8に対して正孔を輸送する正孔輸送層である。第1電極2がカソードである場合、第1キャリア輸送層5は、発光層8に対して電子を輸送する電子輸送層である。第1キャリア輸送層5を形成する方法の一例として、塗布法および蒸着法が挙げられる。
【0019】
正孔輸送層の材料の一例として、NiO、MgNiO、MoO(xは任意の正の数)、CuI、CuSCN、CuO、CoO、Cr、TiO、CuAlS、PEDOT:PSS、TFB、p-TPD、PVK、およびTAPCが挙げられる。電子輸送層の材料の一例として、ZnO、ZnS、ZrO、LiZnO、MgZnO、AlZnO、およびTiOが挙げられる。さらに、正孔輸送層(感光性)の材料の一例として、OTPD、QUPD、およびX-F6-TAPCが挙げられる。正孔輸送層および電子輸送層の各々は例えば、MgZnOとZnOとの積層構造、およびPEDOT:PSSとTFBとの積層構造のような、積層構造であっても良い。第1キャリア輸送層5の厚みは例えば、80nm以下である。
【0020】
ここで、バンク6を定義する。バンク6は、エッジカバー3と、発光層8を形成する時点でエッジカバー3の上層に形成された部材と、によって構成された壁状の部材である。発光層8を形成する時点でエッジカバー3の上層に形成された部材は、エッジカバー3の表面に対して直接載っていてもよいし、自身とエッジカバー3の表面との間に別の部材が介在した状態で、エッジカバー3の表面に対して(間接的に)載っていてもよい。また、発光層8を形成する時点でエッジカバー3の上層に形成された部材が無い場合、バンク6はエッジカバー3からなる。図1図3において、バンク6は、エッジカバー3と、第1キャリア輸送層5におけるエッジカバー3に対して載っている部分と、からなる壁状の部材と定義される。
【0021】
バンク6は台状である。換言すれば、バンク6は、内壁面6a、上面6b、および外壁面6cを有している。内壁面6aは発光領域4側の面、外壁面6cは発光領域4と反対側の面である。内壁面6aは、そのほぼ全てが発光領域4の外側に形成されるが、前述した発光層8を形成する時点でエッジカバー3の上層に形成された部材の形状次第では、内壁面6aのごく一部が発光領域4の内側に形成され得る。以上から、バンク6は、発光領域4の外側に内壁面6aの少なくとも一部を有しており、発光領域4に対して内壁面6aの外側に上面6bを有しており、発光領域4に対して内壁面6aおよび上面6bの外側に外壁面6cを有していることが分かる。内壁面6aおよび外壁面6cにおける内外の概念に基づく議論を行わない場合、内壁面6aは、単に壁面と解釈することができる。第2工程以前の工程にてこのようなバンク6を形成することが、発光領域4の外側に内壁面6aの少なくとも一部を形成する工程に相当する。
【0022】
第3工程においては、第1キャリア輸送層5の上に対して、フォトレジスト7を形成する。第3工程はフォトレジスト7を形成する工程である。フォトレジスト7の材料の一例として、アクリル系材料、ノボラック系材料、ゴム系材料、スチレン系材料、およびエポキシ系材料が挙げられる。
【0023】
第4工程においては、フォトレジスト7の一部を露光し、フォトレジスト7を現像し、フォトレジスト7の一部を除去する。第4工程はフォトレジスト7を露光及び現像してテンプレートを形成する工程である。具体的に、第1電極2の上、内壁面6aの上、および上面6bの一部(内壁面6aと上面6bとの境界から一定のエリア)の上から、フォトレジスト7を除去する。フォトレジスト7の現像に必要な現像液の一例として、KOHおよびNaOH等の無機アルカリ、TMAH等の有機アルカリ、PGME、PGMEA、Acetone、NMP、DMSO、IPA、ならびにEtOHが挙げられる。
【0024】
第5工程および第6工程においては、第4工程後に残ったフォトレジスト7をテンプレートとして、発光層8を形成する。発光層8は、機能層の一例である。
【0025】
第5工程においては、第4工程にてフォトレジスト7が除去された部分においては第1キャリア輸送層5の上、それ以外においてはフォトレジスト7の上に対して、発光層8を形成する。第5工程は、機能層としての発光層8を塗布する工程である。工程の名称として「塗布する工程」としているが、塗布法による塗布に限らず、機能層を蒸着法等による塗布によって形成する技術も含まれる。
【0026】
発光層8は、OLED表示装置の発光層であってもよいし、QLED表示装置の発光層であってもよい。QLED表示装置の発光層は、量子ドットを含んでいるが、この量子ドットの構造の一例として、コア構造、コア/シェル構造、およびコア/第1シェル/第2シェル構造が挙げられる。シェルは、コアの周囲に設けられていてもよい。第1シェルおよび第2シェルは、コアからこの順に、コアの周囲に設けられていてもよい。コア/シェル構造においては、シェルの元素の比率を連続的に変化させてもよい。
【0027】
コアの一例は、以下のとおりである。
【0028】
一元系:SiおよびC
二元系:CdSe、CdS、CdTe、InP、GaP、InN、ZnSe、ZnS、およびZnTe
三元系:CdSeTe、GaInP、およびZnSeTe
四元系:AIGS
シェル(第1シェルおよび第2シェルを含む)の一例は、以下のとおりである。
【0029】
二元系:CdS、CdTe、CdSe、ZnS、ZnSe、およびZnTe
三元系:CdSSe、CdTeSe、CdSTe、ZnSSe、ZnSTe、ZnTeSe、およびAIP
第6工程においては、フォトレジスト7における第4工程にて除去されなかった分を、除去する。第6工程は、テンプレートとしてのフォトレジスト7をリフトオフして、機能層としての発光層8を所定の領域に形成する工程である。「所定の領域」とは、例えば図2の第6工程の図に示されるように、非発光領域の一部と発光領域4とを含む。フォトレジスト7における第4工程にて除去されなかった分の除去は、露光および現像によって行ってもよいし、溶媒によって行ってもよい。
【0030】
本実施形態において、リフトオフとは、以下の(工程a)~(工程c)を含む方法であると定義することができる。
【0031】
(工程a)フォトレジスト7で基板1等の上に、テンプレートと呼ばれる型を形成する。
【0032】
(工程b)工程aの後、テンプレートの一部または全部の上から、パターニングしたい材料(すなわち、発光層8の材料)を成膜する。
【0033】
(工程c)工程bの後、テンプレートの一部または全部を除去すると共に、パターニングしたい材料の膜から、不要部分を除去して必要部分を残留させる。
【0034】
第6工程を経て形成された発光層8は、本体部8aと、エッジ部8bとを含んでいる。本体部8aは、第1電極2の上方であって、エッジカバー3の上方でない部分に相当する。換言すれば、本体部8aは、発光領域4に位置する。エッジ部8bは、発光領域4に対して内壁面6aの外側に位置する部分に相当する。そして、発光層8において、エッジ部8bの厚みの最大値である厚みTbは、本体部8aの厚みTaより大きい。厚みTaは例えば、40nm以下である。厚みTb(張出部8cの厚みの最大値)は、厚みTaの2倍以上であることが好ましい。
【0035】
以上の第3工程から第6工程が、機能層としての発光層8を形成する工程である。
【0036】
なお、層(膜)の厚みとは、その層(膜)が形成されている面の法線方向における、その層(膜)のサイズを意味する。
【0037】
第7工程においては、第3工程~第6工程と同様の要領で、別の発光層8を形成する。第8工程においては、第3工程~第6工程と同様の要領で、さらに別の発光層8を形成する。第9工程においては、各発光層8の上に、第2キャリア輸送層9および第2電極10を、この順に形成する。第2電極10がアノードである場合、第2キャリア輸送層9は正孔輸送層である。第2電極10がカソードである場合、第2キャリア輸送層9は電子輸送層である。第2キャリア輸送層9および/または第2電極10は、2つ以上の発光層8に対して一括に形成されていてもよい。第3工程~第8工程によれば、複数の発光層8を個別に形成して、複数の発光層8を塗り分けする。
【0038】
なお、図3に示すように、1つの発光層8毎に発光素子101が構成されており、発光素子101を複数備えているものが表示装置201である。表示装置201の製造方法においては、発光素子101の製造方法によって製造された発光素子101の発光層8を含む、複数の発光層8を形成するとも言えるし、発光素子101の製造方法によって、複数の発光素子101を形成するとも言える。
【0039】
図4は、比較例に係る発光層11のエッジ部11bと、本実施形態に係るエッジ部8bとを対比する図である。
【0040】
エッジ部11bにおいては、厚みTbが、厚みTa以下である。この場合、エッジ部11bが欠けたり(図4の符号12参照)、エッジ部11bを起点に発光層11が剥がれたり(図4の符号13参照)するおそれがある。また、発光層11の欠けたまたは剥がれた部分が予期せぬ場所に再付着する(図4の符号14参照)おそれもある。
【0041】
エッジ部8bにおいては、厚みTbが、厚みTaより大きい。このため、発光層8の欠けや剥がれのおそれを低減することができる。
【0042】
図5は、張出部8cの形状と、第5工程にて張出部8cと接触するフォトレジスト7の形状との組み合わせの一例を示す図である。
【0043】
厚みTaより大きい厚みTbを実現するために、エッジ部8bに対して、エッジ部8bの最厚部(すなわち、その厚みが、本体部8aの厚みより大きい厚みTbの部分)を含む張出部8cを形成することが有効である。張出部8cは、本体部8aより厚く形成した厚膜部であってもよいし、本体部8aとほぼ同じ厚みのエッジ部8bの端部を吹返した構造であってもよい。
【0044】
第5工程にて張出部8cと接触するフォトレジスト7の形状として、順テーパー型、逆テーパー型、および鉤型が挙げられる。順テーパー型は、フォトレジスト7における張出部8cとの接触面である面7aにおける高い位置ほど発光領域4から遠いテーパー形状を含んでいる。逆テーパー型は、面7aにおける高い位置ほど発光領域4に近いテーパー形状を含んでいる。鉤型は、面7aが、ある高さにて、発光領域4方向に折れ曲がった形状を含んでいる。
【0045】
図5には、順テーパー型のフォトレジスト7の転写形状、逆テーパー型のフォトレジスト7の転写形状、または鉤型のフォトレジスト7の転写形状を含んでいる、エッジ部8bの形状例を列挙している。具体的に、図5には、エッジ部8bが含んでいることが好ましい張出部8cとしての、各張出部8c1~8c9を示している。各張出部8c1~8c3は、順テーパー型のフォトレジスト7の転写形状を含んでいる。各張出部8c4~8c6は、逆テーパー型のフォトレジスト7の転写形状を含んでいる。各張出部8c7~8c9は、鉤型のフォトレジスト7の転写形状を含んでいる。
【0046】
張出部8cは、各張出部8c2および8c5のように、丸みを帯びた部分を含んでいる形状であってもよい。張出部8cは、各張出部8c3および8c6のように、その先端が鋭角であってもよい。張出部8cは、張出部8c9のように、折り返しを含んでいる形状であってもよい。
【0047】
なお、発光層8の材料がフォトレジスト7に対して濡れやすいことが好ましい。このために、フォトレジスト7側でできる工夫として、フォトレジスト7の表面張力を小さくする、フォトレジスト7の材料に撥液材料を含めない、フォトレジスト7の表面に対して親液処理(エキシマ・プラズマ処理等)を施す、等が考えられる。一方、発光層8側でできる工夫として、発光層8の材料に、溶媒(低表面張力に分散した量子ドット、アルコール系)、または界面活性剤等を混合すること、等が考えられる。
【0048】
エッジ部8bの張出部8cを、バンク6に対して形成する。これにより、リークを防止することが可能となる。
【0049】
エッジ部8bの張出部8cを、上面6bに対して形成する。これにより、発光層8の膜厚不良および断線等が生じるおそれを低減することができる。
【0050】
図6は、発光層8におけるエッジ部8b周辺の構造と、インクジェット法により形成した発光層15の構造とを対比する図である。
【0051】
図6によれば、エッジ部8bには第5工程におけるフォトレジスト7の転写形状が残る一方、発光層15にはこのような形状は残らない。
【0052】
図6によれば、バンク6上に発光層が乗り上げる等の塗りムラに関して、バンク6に対する発光層8の塗りムラより、バンク6に対する発光層15の塗りムラのほうが大きくなりやすい。
【0053】
図7は、張出部8cの別の例としての、各張出部8ca~8cfを示す図である。
【0054】
張出部8cのサイズが大きいほうが、また、張出部8cのできるだけ多くの部分が厚いほうが、発光層8の欠けや剥がれのおそれを低減する効果は顕著になる。
【0055】
各張出部8caおよび8cbは、順テーパー型のフォトレジスト7の転写形状に対応する、発光層8の材料の凸部(液だまり)と解釈することができる。各張出部8caおよび8cbのサイズは、面7aの傾きが急峻であるほど大きくなる。各張出部8caおよび8cbのサイズは、フォトレジスト7に対する発光層8の材料の濡れ性、発光層8の材料の粘度および乾きやすさ、ならびにフォトレジスト7の表面張力等にも依存する。
【0056】
各張出部8ccおよび8cdは、逆テーパー型のフォトレジスト7の転写形状に対応する、発光層8の材料の凸部(液だまり)と解釈することができる。各張出部8ccおよび8cdのサイズは、面7aの傾きが急峻であるほど小さくなる。各張出部8ccおよび8cdのサイズは、フォトレジスト7に対する発光層8の材料の濡れ性、発光層8の材料の粘度および乾きやすさ、ならびにフォトレジスト7の表面張力等にも依存する。
【0057】
各張出部8ceおよび8cfは、鉤型のフォトレジスト7の転写形状に対応する、発光層8の材料の凸部(液だまり)と解釈することができる。面7aにおける発光領域4方向への折れ曲がり位置が低いほど、換言すれば、フォトレジスト7の傘部7bの下端が低いほうが、各張出部8ceおよび8cfの全体を厚く形成することができる。
【0058】
図8は、張出部16の構成例を示す図である。張出部16は、張出部8cの中でも、エッジ部8bにおける本体部8aより厚く形成された厚膜部である。
【0059】
図8においては、張出部16の幅を幅Wとする。また、張出部16の厚みの最大値は厚みTbであり、本体部8aの厚みは厚みTaである。なお、張出部16の幅とは、張出部16が形成されている面に沿った、張出部16のサイズを意味する。
【0060】
エッジ部8bは、本体部8aより厚く形成された(すなわち、Ta<Tbの関係を満足する)張出部16を含んでおり、張出部16の幅Wは、本体部8aの厚みTaより大きいことが好ましい。
【0061】
また、張出部16の幅Wは、厚みTbより大きいことが好ましい。これにより、張出部16への張出部16が剥がれる方向に働く応力が緩和される、または張出部16の当該応力に対する耐久力が強くなるため、張出部16が剥がれにくくなる。また、張出部16の上層が張出部16自体の形状の影響を受けにくくなる。例えば、張出部16に外力が加わったときに、張出部16のみが発光層8から離脱することを抑制することができる。さらに、これにより、発光層8の上層を形成する際の平坦性を維持することができるため、断線等が生じるおそれを低減することができる。
【0062】
図9は、張出部17の構成例を示す図である。張出部17は、張出部8cの中でも、エッジ部8bにおける本体部8aより厚く形成された厚膜部である。
【0063】
エッジ部8bは、本体部8aより厚く形成された張出部17を含んでいる。図9は、発光素子101の断面視に対応する。張出部17が形成される面の法線方向Nに対する、張出部17における発光領域4と反対側の側壁17bの傾斜角度をθ1とし、法線方向Nに対する、張出部17における発光領域4側の側壁17aの傾斜角度をθ2とすると、
θ1<θ2
を満足することが好ましい。これにより、張出部17が発光層8の剥がれの起点になるおそれを低減することができる。なお、θ1およびθ2は、角度が大きいほど張出部17の上端のサイズを小さくするような角度(0°以上90°未満)を想定している。
【0064】
なお、図10および図11にそれぞれ示すように、張出部16において厚みTbは幅Wより大きくてもよいし、張出部17においてθ2≦θ1であってもよい。
【0065】
発光素子101の製造方法は、発光領域4の外側に壁面(内壁面6a)の少なくとも一部を有しているバンク6と、発光領域4に位置する本体部8aと、発光領域4に対して壁面の外側に位置するエッジ部8bとを含んでいる、少なくとも1つの機能層(発光層8)とを備えている発光素子101の製造方法であって、エッジ部8bの厚みの最大値である厚みTbを、本体部8aの厚みTaより大きくする方法であると解釈することができる。
【0066】
表示装置201の製造方法は、前記発光素子101の製造方法により、発光素子101を複数形成する方法であると解釈することができる。
【0067】
〔実施形態2〕
図12は、本実施形態に係る発光素子102aおよび表示装置202aならびにそれらの製造方法を示す図である。図13は、本実施形態の変形例に係る発光素子102bおよび表示装置202bならびにそれらの製造方法を示す図である。複数の発光領域4を有する表示装置では、例えば各発光領域4が異なる画素に含まれる。図12及び図13では、第2キャリア輸送層9によって平坦化されているように示されているが、第2キャリア輸送層9は下層の形状を反映する形で形成されていても良い。
【0068】
図12に示す表示装置202aは、複数の発光素子102aを備えており、複数の発光素子102aの発光層8のエッジ部8bが互いに重なっている。これにより、特に下方のエッジ部8bを含む発光層8の欠けや剥がれのおそれを低減することができる。図12には、2つの発光層8のエッジ部8bが互いに重なっている例を示している。
【0069】
図13に示す表示装置202bは、複数の発光素子102bを備えており、複数の発光素子102bの発光層8のエッジ部8bが互いに重なっている。これにより、特に下方のエッジ部8bを含む発光層8の欠けや剥がれのおそれを低減することができる。図13には、2つの発光層8のエッジ部8bが互いに重なっている例に加え、3つの発光層8のエッジ部8bが互いに重なっている例を示している。
【0070】
第3工程~第6工程(図1および図2参照)で形成する発光層8を発光層(第1機能層)8xとし、第7工程(図3参照)で形成する発光層8を発光層(第2機能層)8yとし、第8工程(図3参照)で形成する発光層8を発光層(第3機能層)8zとする。このとき、各表示装置202aおよび202bは、発光層8xのエッジ部8bに対して発光層8yのエッジ部8bを重ねる、発光層8xのエッジ部8bに対して発光層8zのエッジ部8bを重ねる、および発光層8yのエッジ部8bに対して発光層8zのエッジ部8bを重ねる、という3つの工程の組み合わせにより製造することができる。ここでは、発光層8xに形成したエッジ部8bと、発光層8zに形成したエッジ部8bとを重ねる工程を含んでいる。
【0071】
なお、発光層8x~8zの一例として、赤色を発光する赤色発光層、緑色を発光する緑色発光層、および青色を発光する青色発光層が挙げられる。発光層8x~8zのいずれが赤色発光層であるか、発光層8x~8zのいずれが緑色発光層であるか、および発光層8x~8zのいずれが青色発光層であるかは任意である。
【0072】
なお、図12に示すように、1つの発光層8毎に発光素子102aが構成されており、発光素子102aを複数備えているものが表示装置202aである。また、図13に示すように、1つの発光層8毎に発光素子102bが構成されており、発光素子102bを複数備えているものが表示装置202bである。
【0073】
図13に関し、張出部8cが発光層8x~8zで異なるところに形成されていてもよいが、同一でも良い。これにより、よりはがれにくくなる。発光層8yと発光層8zの間のバンク6上には、発光層8xが形成されなくてもよい。発光層8yと発光層8zの間のバンク6上に発光層8xが形成されると、バンク6上の膜厚が大きくなり、バンク6上の発光やリークを抑制できる。
【0074】
図14は、張出部8cの変形例を示す図である。
【0075】
図14によれば、張出部8cを、上面6bと外壁面6cとの境界6dに形成してもよい。これにより、境界6dの周辺でエッジ部8bが切れることに起因して、リークが発生して発光効率が低下するおそれを低減することができる。
【0076】
〔実施形態3〕
図15は、本実施形態に係る表示装置203およびその製造方法を示す図である。なお、図15においては、図示を簡潔にするために、第1キャリア輸送層5より上層の図示を省略している。
【0077】
図15においては、第1キャリア輸送層5が、機能層の一例である。すなわち、第1キャリア輸送層5は、発光領域4に位置する本体部5aと、発光領域4に対して内壁面6aの外側に位置するエッジ部5bとを含んでいる。エッジ部5bの厚みの最大値である厚みTBは、本体部5aの厚みTAより大きい。エッジ部5bは、本体部5aの厚みTAより大きい厚みTBの部分を含む張出部5cを有している。
【0078】
また、図15においては、1つの発光素子103単位で、第1キャリア輸送層5を形成することで、複数の第1キャリア輸送層5を個別に形成している。これにより、発光素子103毎に適した、第1キャリア輸送層5を形成することができるため、高発光効率の発光素子103および表示装置203を製造することができる。
【0079】
また、発光層8および第1キャリア輸送層5の両方を機能層とし、これらを、共通のテンプレートを用いて形成してもよい。具体的には、第4工程(図2参照)にて残ったフォトレジスト7をテンプレートとして、発光層8に加え、第1キャリア輸送層5を形成してもよい。これにより、テンプレートを形成する回数を減らすことができるため、発光素子ひいては表示装置の製造工数を削減することが可能である。
【0080】
本実施形態は、第1キャリア輸送層5の替わりに、第2キャリア輸送層9に適用してもよい。本実施形態は、第1キャリア輸送層5および第2キャリア輸送層9の両方に適用してもよい。
【0081】
〔実施形態4〕
図16は、本実施形態に係る表示装置204aおよびその製造方法を示す図である。図17は、本実施形態の第1変形例に係る表示装置204bおよびその製造方法を示す図である。図18は、本実施形態の第2変形例に係る表示装置204cおよびその製造方法を示す図である。
【0082】
図16に示すように、複数の機能層として、発光層(第1機能層)8x、発光層(第2機能層)8y、および発光層(第3機能層)8zをこの順に形成し、発光層8zに形成した張出部8cを、発光層8xの端部および発光層8yの端部の少なくとも一方に対して重ねてもよい。図16においては、2つの張出部8cを、それぞれ、発光層8xの端部および発光層8yの端部に対して重ねているが、1つの張出部8cを、発光層8xの端部および/または発光層8yの端部に対して重ねてもよい。これにより、複数の発光層8の上に形成される各層の膜厚のムラを低減することができる。
【0083】
図17に示すように、隣り合う発光層8xの端部と発光層8yの端部とに亘って重なる、張出部8cを有する発光層8zを形成してもよい。この張出部8cを、発光層8xの端部および発光層8yの端部に対して重ねれば、発光層8zの張出部8cの下の、発光層8xおよび8yの欠けや剥がれのおそれを低減することができる。
【0084】
図18に示すように、発光層8yに形成した張出部8cを、発光層8yと隣り合う発光層8xの端部に対して重ねてもよい。これにより、発光層8yの欠けや剥がれのおそれを低減することができる。
【0085】
本実施形態においては、発光層8zのエッジ部8bがそれまでの端部を覆い、エッジ部8bが厚膜化してもよく、これにより、上層の電荷輸送層以降の膜厚不良が低減できる。また、上記の発光層8xと発光層8yの間に発光層8zを残してもよく、これにより、上記で覆ったところがはがれにくくなる。また、上記の発光層8y以降での実施であってもよい。
【0086】
図16においては、発光層8zのみ厚膜化することで、上層の電荷輸送層等が膜厚ムラなく塗布・形成できる。図17においては、発光層8zのみ厚膜化および発光層8xと発光層8yの間の各端部を発光層8zで覆い、エッジ部8bが厚いため、上記に加え、欠けの発生が抑制される。図18においては、図17の発光層8y版と解釈することができ、上記に加え、発光層8yの欠けの発生が抑制される。
【0087】
〔実施形態5〕
図19図22は、本実施形態に係る表示装置205における複数の発光素子の配置例を示す図である。
【0088】
表示装置205は、複数の発光層として、赤色を発光する赤色発光層18R、緑色を発光する緑色発光層18G、および青色を発光する青色発光層18Bを含んでいる。
【0089】
図19に示すように、赤色発光層18R、緑色発光層18G、および青色発光層18Bは、残す場所が孤立、またはその重なり(重なるのが同一色のみ、異色のみ、双方どちらも可)であってもよい。
【0090】
図20に示すように、赤色発光層18R、緑色発光層18G、および青色発光層18Bは、ライン状(横同士で重なっていてもよい)であってもよい。この場合、1つの機能層の面積が広くなるため、機能層の剥がれが生じにくくなる。
【0091】
図21に示すように、赤色発光層18R、緑色発光層18G、および青色発光層18Bは、連続パターン(例えば一色目形成時に発光層が形成されない部分は孤立でも連続でも良い。また、上記の重なりは同一色のみ、異色のみ、双方でも良い)であってもよい。これにより、積層されている部分が多く、また連続しているため、より剥がれが発生しにくい。また、画素間に発光層が積層され、抵抗が高くなるため、画素間からのリークを抑制できる。
【0092】
複数の赤色発光層18Rを連続的に形成してもよい。これにより、物として一連なりの赤色発光層18Rの面積が広くなるため、赤色発光層18Rの剥がれが生じにくくなる。複数の緑色発光層18G、および複数の青色発光層18Bについても同様である。
【0093】
その他、図22に示す各種パターン等の、種々の配置が挙げられる。
【0094】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る表示装置は、発光領域に位置する本体部、および非発光領域に位置するエッジ部を含んでいる機能層と、前記非発光領域に形成され、前記発光領域側の面である内壁面を含むバンクと、を備えており、前記エッジ部は、前記本体部の厚みより大きい厚みの部分を含む張出部を有し、前記張出部は前記バンク上に形成されている。
【0095】
本発明の態様2に係る表示装置は、前記態様1において、前記バンクは上面を含む台状に形成されている。
【0096】
本発明の態様3に係る表示装置は、前記態様2において、前記バンクは、前記発光領域に対して前記内壁面の外側に位置する外壁面を含み、前記張出部が、前記上面と前記外壁面との境界に形成されている。
【0097】
本発明の態様4に係る表示装置は、前記態様1から3のいずれかにおいて、前記張出部の厚みの最大値は、前記本体部の厚みの2倍以上である。
【0098】
本発明の態様5に係る表示装置は、前記態様1から4のいずれかにおいて、前記張出部の幅は、前記本体部の厚みより大きい。
【0099】
本発明の態様6に係る表示装置は、前記態様1から5のいずれかにおいて、前記張出部の幅は、前記張出部の厚みの最大値より大きい。
【0100】
本発明の態様7に係る表示装置は、前記態様1から6のいずれかにおいて、前記張出部が形成される面の法線方向に対する、前記張出部における前記発光領域と反対側の側壁の傾斜角度をθ1とし、前記法線方向に対する、前記張出部における前記発光領域側の側壁の傾斜角度をθ2とすると、θ1<θ2を満足する。
【0101】
本発明の態様8に係る表示装置は、前記態様1から7のいずれかにおいて、複数の前記機能層を有し、前記機能層は、第1機能層、第2機能層、および第3機能層を含む。
【0102】
本発明の態様9に係る表示装置は、前記態様8において、前記第1機能層、前記第2機能層、および前記第3機能層は、それぞれ異なる色に発光し、赤色、緑色、又は青色のいずれかに発光する発光層である。
【0103】
本発明の態様10に係る表示装置は、前記態様8または9において、前記第3機能層の前記張出部は、前記第1機能層の端部および前記第2機能層の端部の少なくとも一方に対して重なっている。
【0104】
本発明の態様11に係る表示装置は、前記態様10において、前記第3機能層の前記張出部は、隣り合う前記第1機能層の端部と前記第2機能層の端部とに亘って重なる。
【0105】
本発明の態様12に係る表示装置は、前記態様8から11のいずれかにおいて、前記第2機能層の前記張出部が、前記第2機能層と隣り合う前記第1機能層の端部に対して重なる。
【0106】
本発明の態様13に係る表示装置は、前記態様1から7のいずれかにおいて、複数の前記機能層を有し、前記機能層はキャリア輸送層であり、前記複数の機能層は画素ごとに形成されている。
【0107】
本発明の態様14に係る表示装置は、前記態様8から13のいずれかにおいて、前記複数の機能層はライン状に形成されている。
【0108】
本発明の態様15に係る表示装置は、前記態様8から13のいずれかにおいて、前記機能層は、連続的に形成されている。
【0109】
本発明の態様16に係る表示装置の製造方法は、発光領域に位置する本体部、および非発光領域に位置するエッジ部を含んでいる機能層を形成する工程を含んでおり、前記機能層を形成する工程では、前記エッジ部に対して、前記本体部の厚みより大きい厚みの部分を含む張出部を形成する。
【0110】
本発明の態様17に係る表示装置の製造方法は、前記態様16において、前記機能層を形成する工程の前に、前記非発光領域に、前記発光領域側の面である内壁面を含むバンクを形成する工程を含んでおり、前記張出部は、前記バンクに対して形成される。
【0111】
本発明の態様18に係る表示装置の製造方法は、前記態様17において、前記バンクは、上面をさらに含む台状の部材であり、前記張出部を、前記上面に対して形成する。
【0112】
本発明の態様19に係る表示装置の製造方法は、前記態様18において、前記バンクは、前記発光領域に対して前記内壁面の外側に位置する外壁面を含んでおり、前記張出部を、前記上面と前記外壁面との境界に形成する。
【0113】
本発明の態様20に係る表示装置の製造方法は、前記態様16から19のいずれかにおいて、前記張出部の厚みの最大値は、前記本体部の厚みの2倍以上である。
【0114】
本発明の態様21に係る表示装置の製造方法は、前記態様16から20のいずれかにおいて、前記機能層を形成する工程は、フォトレジストを形成する工程と、前記フォトレジストを露光及び現像してテンプレートを形成する工程と、前記機能層を塗布する工程と、前記テンプレートをリフトオフして前記機能層を所定の領域に形成する工程と、を含む。
【0115】
本発明の態様22に係る表示装置の製造方法は、前記態様21において、前記テンプレートは、順テーパー型、逆テーパー型、または鉤型に形成され、前記張出部は、前記順テーパー型の前記テンプレートの転写形状、前記逆テーパー型の前記テンプレートの転写形状、または前記鉤型の前記テンプレートの転写形状を含んでいる。
【0116】
本発明の態様23に係る表示装置の製造方法は、前記態様16から22のいずれかにおいて、前記張出部の幅は、前記本体部の厚みより大きい。
【0117】
本発明の態様24に係る表示装置の製造方法は、前記態様16から23のいずれかにおいて、前記張出部の幅は、前記張出部の厚みの最大値より大きい。
【0118】
本発明の態様25に係る表示装置の製造方法は、前記態様16から24のいずれかにおいて、前記張出部が形成される面の法線方向に対する、前記張出部における前記発光領域と反対側の側壁の傾斜角度をθ1とし、前記法線方向に対する、前記張出部における前記発光領域側の側壁の傾斜角度をθ2とすると、θ1<θ2を満足する。
【0119】
本発明の態様26に係る表示装置の製造方法は、前記態様16から25のいずれかにおいて、複数の前記機能層が形成され、前記複数の機能層として、複数の発光層を個別に形成する。
【0120】
本発明の態様27に係る表示装置の製造方法は、前記態様16から25のいずれかにおいて、複数の前記機能層が形成され、前記複数の機能層として、複数のキャリア輸送層を個別に形成する。
【0121】
本発明の態様28に係る表示装置の製造方法は、前記態様16から24のいずれかにおいて、前記機能層は、発光層および前記発光層上に形成されるキャリア輸送層の両方を含み、さらに複数の前記機能層が形成され、前記発光層および前記キャリア輸送層を、共通のテンプレートを用いて形成する。
【0122】
本発明の態様29に係る表示装置の製造方法は、前記態様26から28のいずれかにおいて、複数の前記機能層が形成され、前記複数の機能層として、第1機能層、第2機能層、および第3機能層をこの順に形成し、前記第3機能層に形成した前記張出部を、前記第1機能層の端部および前記第2機能層の端部の少なくとも一方に対して重ねる。
【0123】
本発明の態様30に係る表示装置の製造方法は、前記態様29において、前記第1機能層、前記第2機能層、および前記第3機能層は、それぞれ異なる色に発光し、赤色、緑色、又は青色のいずれかに発光する発光層である。
【0124】
本発明の態様31に係る表示装置の製造方法は、前記態様29または30において、隣り合う前記第1機能層の端部と前記第2機能層の端部とに亘って重なる、前記張出部を有する前記第3機能層を形成する。
【0125】
本発明の態様32に係る表示装置の製造方法は、前記態様29または30において、前記第2機能層に形成した前記張出部を、前記第2機能層と隣り合う前記第1機能層の端部に対して重ねる。
【0126】
本発明の態様33に係る表示装置の製造方法は、前記態様26から28のいずれかにおいて、前記複数の機能層として、第1機能層、第2機能層、および第3機能層をこの順に形成し、前記第1機能層に形成した前記エッジ部と、前記第3機能層に形成した前記エッジ部とを重ねる。
【0127】
本発明の態様34に係る表示装置の製造方法は、前記態様26から33のいずれかにおいて、前記複数の機能層は、ライン状に繋がって形成される。
【0128】
本発明の態様35に係る表示装置の製造方法は、前記態様26から33のいずれかにおいて、前記機能層を連続的に形成する。
【0129】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0130】
4 発光領域
5 第1キャリア輸送層(キャリア輸送層、機能層)
5a 本体部
5b エッジ部
5c 張出部
6 バンク
6a 内壁面
6b 上面
6c 外壁面
6d 境界
7 フォトレジスト(テンプレート)
8、8x、8y、8z 発光層(機能層)
8a 本体部
8b エッジ部
8c、8c1~8c9、8ca~8cf、16、17 張出部
9 第2キャリア輸送層
10 第2電極
17a、17b 側壁
18R 赤色発光層(機能層)
18G 緑色発光層(機能層)
18B 青色発光層(機能層)
101、102a、102b、103 発光素子
201、202a、202b、203、204a~204c、205 表示装置
Ta、TA 本体部の厚み
Tb、TB エッジ部の厚みの最大値、張出部の厚みの最大値
N 法線方向
W 張出部の幅
θ1、θ2 角度
図1
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