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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】置換S-アラニナート誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 409/14 20060101AFI20240829BHJP
   A61K 31/4178 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C07D409/14 CSP
A61K31/4178
A61P7/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023550005
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 EP2022073889
(87)【国際公開番号】W WO2023031083
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】21194781.7
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】313006625
【氏名又は名称】バイエル・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ベック,ハルトムート
(72)【発明者】
【氏名】メッシュ,ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァカロプロス,アレクサンドロス
(72)【発明者】
【氏名】プファフ,ニルス
(72)【発明者】
【氏名】ツィンマーマン,ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】フォルマン,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ケルステン,エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ルヴィラン,ギョーム
(72)【発明者】
【氏名】パルティケル,カトリン
(72)【発明者】
【氏名】ブレール,アンドレアス・ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ハイトマイヤー,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ディーツェ-トーレス,ユリア
(72)【発明者】
【氏名】レーマン,ルッツ
(72)【発明者】
【氏名】ゲリッケ,ケルステン・マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ジュースマイヤー,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ベルファッカー,ラース
(72)【発明者】
【氏名】ヒリッシュ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ターシュテーゲン,アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】ブッフミューラー,アンニャ
(72)【発明者】
【氏名】ゲルデス,クリストフ
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-518381(JP,A)
【文献】特表2011-512368(JP,A)
【文献】5-Chlorothiophene-2-carboxylic Acid [(S)-2-[2-Methyl-3-(2- oxopyrrolidin-1-yl)benzenesulfonylamino]-3-(4-methylpiperazin-1- yl)-3-oxopropyl]amide (SAR107375), a Selective and Potent Orally Active Dual Thrombin and Factor Xa Inhibitor,J. Med. Chem.,2013年,56,9441-9456,DOI: 10.1021/jm4005835
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D、A61K、A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート又は該化合物の塩、該化合物の溶媒和物又は該化合物の塩の溶媒和物のうちの一つ。
【化1】
【請求項2】
下記式(I)の請求項1に記載の2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート。
【化2】
【請求項3】
前記塩が前記式(I)の化合物の生理的に許容される塩である、請求項1に記載の式(I)の化合物の塩。
【請求項4】
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート塩酸塩
及び
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-({2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]フェニル}スルホニル)-S-アラニナート硫酸塩
及び
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-({2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]フェニル}スルホニル)-S-アラニナートメタンスルホン酸塩
及び
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-({2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]フェニル}スルホニル)-S-アラニナート4-メチルベンゼン-スルホン酸塩
及び
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-({2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]フェニル}スルホニル)-S-アラニナートマレイン酸塩
及び
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-({2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]フェニル}スルホニル)-S-アラニナートリン酸塩
及び
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-({2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]フェニル}スルホニル)-S-アラニナート(2R,3R)-酒石酸塩
及び
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-({2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]フェニル}スルホニル)-S-アラニナートクエン酸塩
からなる群から選択される請求項3に記載の式(I)の化合物の生理的に許容される塩。
【請求項5】
下記式の化合物:
【化3】
を、脱水剤の存在下に下記式の化合物:
【化4】
と反応させて、式(I)の化合物を得て、
式(I)の化合物を任意に、相当する(i)溶媒及び/又は(ii)塩基若しくは酸で、それの溶媒和物、塩及び/又は塩の溶媒和物に変換する、請求項1に記載の式(I)の化合物又は該化合物の塩、該化合物の溶媒和物又は該化合物の塩の溶媒和物のうちの一つの製造方法。
【請求項6】
疾患の治療及び/又は予防のための医薬を製造するための請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項7】
血栓性若しくは血栓塞栓性障害及び/又は血栓性若しくは血栓塞栓性合併症、及び/又は炎症障害の治療及び/又は予防のための医薬を製造するための請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項8】
血栓性若しくは血栓塞栓性障害及び/又は血栓性若しくは血栓塞栓性合併症が、播種性血管内凝固症候群である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
不活性で無毒性の薬学的に好適な賦形剤と組み合わせて請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物を含む医薬。
【請求項10】
血栓性若しくは血栓塞栓性障害及び/又は血栓性若しくは血栓塞栓性合併症、及び/又は炎症障害の治療及び/又は予防のための請求項9に記載の医薬。
【請求項11】
血栓性若しくは血栓塞栓性障害及び/又は血栓性若しくは血栓塞栓性合併症が、播種性血管内凝固症候群である、請求項10に記載の医薬。
【請求項12】
医療上有効量の請求項1に記載の少なくとも一つの化合物又は請求項9に記載の医薬の投与による、非ヒト動物での血栓性若しくは血栓塞栓性障害及び/又は血栓性若しくは血栓塞栓性合併症、及び/又は炎症障害の治療及び/又は予防方法。
【請求項13】
血栓性若しくは血栓塞栓性障害及び/又は血栓性若しくは血栓塞栓性合併症が、播種性血管内凝固症候群である、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換S-アラニナート誘導体及びそれらの製造方法、さらには疾患、特に血管障害、好ましくは血栓性又は血栓塞栓性障害及び/又は血栓性又は血栓塞栓性合併症の治療及び/又は予防のための医薬を製造するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
止血は、傷害後の過度の、生命を脅かす可能性がある失血から生物を保護するための必須の機序であり、主にフィブリンと血小板の網で形成される血栓によって動脈若しくは静脈の血管壁の漏出を迅速かつ確実に塞ぐものである。内皮細胞損傷後に内皮下組織因子が血液に曝露され、活性化された血液凝固因子が次のチモーゲンをそれの活性プロテアーゼ形態に変換する複雑な酵素反応の滝状カスケードを引き起こすと、フィブリン形成が傷害部位で開始される。伝統的に、そのカスケードの初期段階は、トリガーが各種の細胞型に結合した組織因子であるか、負に荷電した表面で活性化される第XII因子であるかに応じて、外因性(又は組織因子)経路及び内因性(又は接触活性化)経路に分けられる。どちらの経路も、トロンビン生成の鍵となる酵素である第X因子の活性化レベルで収束する。最後に、トロンビンは、多くの基質の変換を介して、カスケードで生成されたシグナルを血液の凝固状態に変換する。すなわち、トロンビンはフィブリノーゲンを開裂させることで、フィブリンの網の生成をもたらし、第XIII因子を活性化して、血塊安定化に必要な第XIIIa因子に変える。さらに、トロンビンは(PAR-1活性化を介した)血小板凝集の強力なトリガーであり、血塊形成にも大きく寄与する。トロンビンは、トロンボモジュリンとの複合体においてTAFI(トロンビン活性化型線溶阻害剤)を活性化してTAFIaとすることにより、血塊の溶解を阻害する。正のフィードバックループで、第V、VIII因子、及びXI因子の活性化によりトロンビンの産生が増強され、その結果凝血反応が増幅される。反対に、トロンビン/トロンボモジュリン複合体によるタンパク質Cの活性化は、テナーゼ複合体における第VIIIa因子及びプロトロンビナーゼ複合体における第Va因子の分解をもたらし、それによってさらなるトロンビン生成が減少する。
【0003】
凝固因子は表面上の複合体として存在することが多く、例えば第Xa因子はプロトロンビナーゼ複合体で第Va因子と結合する。フィブリン血塊の形成時に、トロンビンとプロトロンビナーゼはフィブリンネットに組み込まれ結合する。これらの酵素分子は活性を維持しており、内因性抗凝固剤、たとえばアンチトロンビンIIIが接近するのは困難である。
【0004】
止血は、血塊形成と溶解の間の複雑な制御機序の影響を受ける。血管壁の漏れを覆うことは出血を防ぐために不可欠な処置であるが、アテローム性動脈硬化病変などの血管壁の障害、感染過程のような進行中の血液中の炎症プロセス、又は血流の減少によって引き起こされる過剰な血塊形成は、血管閉塞を生じる可能性があり、それは、栄養素の供給と潜在的に有害な分解生成物の除去が妨げられるため、周囲組織にとって非常に危険な事象を生じさせる。これらの血塊は、発生部位で静脈、動脈、又はリンパ管を閉塞し得るか、詰まって動かなくなるまで塞栓として血管内を移動し得る。これらの血栓の多くは、例えばアテローム性動脈硬化性プラークの破裂や深部静脈の血流欠乏など、局所的な血管障害の後に形成される。これらは、主な死因の一つである卒中、心筋梗塞又は肺塞栓症などのあらゆる血管で発生する可能性のある重度の事象を引き起こす可能性がある。他の場合には、感染過程における血球、例えば単球上の組織因子への曝露、又は例えば細胞死後の第XII因子への負に帯電した表面若しくは巨大分子への曝露により、全身的な凝固亢進状態が引き起こされ、微小血栓症が生じ、それに続いて臓器損傷が生じる可能性がある。これらの凝固亢進状態は、例えば細菌、ウィルス若しくは真菌による感染、又は外傷によって引き起こされる可能性がある。
【0005】
さらに、全身性の凝固亢進は、播種性血管内凝固障害(DIC)の文脈で消費性凝固障害を引き起こす可能性がある。血栓塞栓性合併症はさらに、微小血管障害性溶血性貧血、血液透析などの体外循環処置、心腔内、人工心臓弁やステント、移植時に発生する。
【0006】
抗凝固薬は、血栓形成を防止するために予防的に使用され、急性血栓性/塞栓性事象時にプラスミンによる既存のフィブリンの溶解を支援するために使用される。これらの化合物は血栓の生成を阻害するだけでなく、止血プロセスにも影響を与える可能性があるため、出血時間の延長が起こる可能性があり、それが強力な抗凝固効力の選択肢を制限する可能性がある。したがって、広い治療ウィンドウを有する化合物が有利である。
【発明の概要】
【0007】
急性の予防又は介入の状況では、抗凝固効力の急速な発現及び十分な制御性が望まれており、これは薬理作用の持続時間が短い化合物の非経口投与によって達成できる。したがって、主にビタミンK拮抗薬や直接経口抗凝固薬(DOAC)を含む経口投与用の抗凝固薬化合物は、薬理学的発現が遅く、薬理作用が長期であるため、治療の制御性が制限されることから、この状況では好ましくない。さらに、多くの患者にとって、経口薬の投与には困難を伴う可能性があると考えられる。このような抗凝血化合物を静脈内に適用できるようにするには、十分な溶解度が必要である。急性病治療の患者は複数の薬剤で治療されることが多いため、急性の薬剤間相互作用の可能性が低いことが望まれる。
【0008】
従来技術から知られている抗凝血薬、例えば、血液凝固を阻害又は防止するための物質は、さまざまな欠点を有している。従って、実際、血栓性/血栓塞栓性疾患の効率的な治療方法又は予防は、非常に困難であり且つ不充分であることが認められている。
【0009】
急性の状況では、内因性経路又は外因性経路を介して、凝固亢進状態が開始され得る。したがって、このような適応症では、第Xa因子とトロンビンの共通経路を標的にすることが有益である。第Xa因子阻害単独では、すでに形成された血塊中の既存のトロンビンは阻害されないが、例えばヒルジン、ビバリルジン、又はアルガトロバンによるトロンビン阻害単独では、丁度最終段階で凝固システムの滝状カスケードを停止させるのに多量の化合物が必要とされる可能性があることから、治療ウィンドウに関して不利であるものと考えられる。したがって、第Xa因子阻害によってトロンビン生成を調節し、既存のトロンビンも阻害できる化合物は、それらが例えば細菌、ウィルス及び真菌によって引き起こされる感染性疾患の過程で存在することから、凝固亢進状態の治療に興味深いものとなる可能性がある。さらに、そのような患者は、血液が凝固促進剤表面に曝露される体外システムに関連していることが多く、抗凝固療法から恩恵を受ける可能性がある。
【0010】
急性血栓塞栓性障害の治療及び予防においては、まずヘパリンが使用され、それは静脈投与又は皮下投与される。より好ましい薬物動態特性及び薬力学特性のため、最近では低分子量ヘパリンが好まれるようになってきている。しかしながら、ヘパリン療法において後述の既知の欠点が、この方法では回避できない。出血、特に脳出血及び消化管出血のリスクが高く、数日にわたる治療はヘパリン誘発性血小板減少症(HIT)発症のリスクを高める。ヘパリンは、アンチトロンビンIII(ATIII)の第Xa因子及びトロンビンへの結合を促進することにより、第Xa因子及びトロンビンを間接的に阻害し、これにより追加のATIII消費が生じる。内皮に対する保護的役割を考えると、消耗性凝固障害時には、ヘパリン誘発性のATIII枯渇増強がさらに重要である。さらに、ヘパリンは、血塊結合トロンビン及び第Xa因子の阻害にはほとんど寄与しない。
【0011】
最近、トロンビン及び第Xa因子阻害を1分子内で多様な比率で組み合わせた小分子が報告されている。これらのアプローチはイン・ビトロ及びイン・ビボで試験されており、顕著な相乗効果の可能性が実証されている。
【0012】
EP42675は、トロンビンを直接阻害するペプチド模倣部分と、第Xa因子を間接的に阻害するフォンダパリヌクス様部分を組み合わせている。しかしながら、この分子はATIIIの存在に依存する。タノギトランは別の小分子化合物であり、イン・ビトロでトロンビンと第Xa因子の両方を阻害しするが、トロンビンに対してより強力な効力を有する。タノギトランは大部分が代謝されずに腎臓から排出されるため、腎不全患者では用量の調整と綿密なモニタリングが必要となると考えられる。
【0013】
したがって、本発明の目的は、ヒト及び動物における心血管障害、特に血栓性若しくは血栓塞栓性障害及び/又は血栓性若しくは血栓塞栓性合併症の治療のための第Xa因子及びトロンビン阻害剤として作用する新規化合物を提供することであり、その化合物は広い治療ウィンドウ、良好な溶解度、及び十分な制御性を達成するための短い薬理作用を有する。
【0014】
WO2009/103440、WO2014/174102及びJ.Meneyrol et al., J. Med. Chem. 2013, 56, 9441-945では、とりわけ、第Xa因子及びトロンビンの阻害剤としての置換クロロチオフェンアミドが記載されている。J. -M. Altenburger et al., Bioorg. Med. Chem. 2004, 12, 1713-1730では、とりわけトロンビンの阻害剤としての置換スルホンアミドが記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、下記式(I)の2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート:
【化1】
並びにそれの塩、それの溶媒和物及びそれの塩の溶媒和物を提供する。
【0016】
本発明の化合物は、それらの構造に応じて、種々の立体異性体形態で、すなわち、立体配置異性体の形態で、又は、適切な場合には、立体配座異性体(エナンチオマー、及び/又は、ジアステレオマー、これは、回転異性体及びアトロプ異性体である場合も包含する)の形態で、存在することができる。従って、本発明は、エナンチオマー及びジアステレオマー、並びに、それらのそれぞれの混合物を包含する。立体異性的に均一な成分は、エナンチオマー及び/又はジアステレオマーの上記混合物から既知の方法で単離することができる。このためには、好ましくは、クロマトグラフィープロセスが使用され、特に、アキラル相又はキラル相のHPLCクロマトグラフィーが使用される。
【0017】
本発明の化合物が互変異体形態で存在し得る場合、本発明は、全ての互変異体形態を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1の赤外スペクトラムである。
図2】実施例2の赤外スペクトラムである。
図3】実施例3の赤外スペクトラムである。
図4】実施例4の赤外スペクトラムである。
図5】実施例5の赤外スペクトラムである。
図6】実施例6の赤外スペクトラムである。
図7】実施例7の赤外スペクトラムである。
図8】実施例8の赤外スペクトラムである。
図9】実施例9の赤外スペクトラムである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、本発明の化合物の適切な全ての同位体変種も包含する。本発明の化合物の同位体変種は、ここでは、本発明の化合物の中の少なくとも1個の原子が、原子番号は同じであるが通常又は主に天然で生じる原子量とは異なる原子量を有する別の原子に交換されている化合物を意味するものと理解される。本発明の化合物の中に組み入れることが可能な同位体の例は、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素の同位体、例えば、H(重水素)、H(三重水素)、13C、14C、15N、17O、18O、32P、33P、33S、34S、35S、36S、18F、36Cl、82Br、123I、124I、129I及び131Iである。本発明の化合物の特定の同位体変種、特に、1種類以上の放射性同位体がその中に組み入れられているものは、例えば、体内における活性成分の分布又は作用機序についての試験に関して、有益であり得る。特に、H同位体又は14C同位体で標識された化合物は、調製及び検出が比較的容易であるため、この目的に適している。さらに、同位体(例えば、重水素)を組み入れると、当該化合物の代謝安定性が増大する結果として、特定の治療利点(例えば、体内における半減期の延長、又は、必要とされる活性薬量の低減)がもたらされ得る;従って、本発明の化合物のそのような改変は、場合により、本発明の好ましい実施形態も構成し得る。本発明の化合物の同位体変種は、当業者には既知の調製方法によって、例えば、以下においてさらに記載されている方法及び実施例において記載されている方法によって、個々の試薬及び/又は出発化合物の対応する同位体改変を用いて、調製することができる。
【0020】
本発明に関連して、好ましいは、本発明の化合物の生理学的に許容される塩である。しかしながら、本発明は、それら自体は製薬用途には適していないが、例えば本発明の化合物の単離及び精製に関して使用することが可能な塩も、包含する。
【0021】
本発明の化合物の生理学的に許容される塩としては、鉱酸、カルボン酸及びスルホン酸の酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸及び安息香酸の塩などがある。本発明による化合物の好ましい生理的に許容される塩には、塩酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、酒石酸、リンゴ酸及びクエン酸の酸付加塩などがある。
【0022】
本発明の化合物の生理学的に許容される塩としては、さらに、慣習的な塩基の塩、例として、及び、好ましくは、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩及びカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩及びマグネシウム塩)、及び、アンモニア又は1~16個の炭素原子を有している有機アミン類(例として、及び、好ましくは、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエタノール、プロカイン、ジベンジルアミン、N-メチルモルホリン、アルギニン、リシン、エチレンジアミン、N-メチルピペリジン及びコリン)から誘導されたアンモニウム塩などがある。
【0023】
本発明に関連して、溶媒和物は、溶媒分子と配位することによって固体又は液体の状態で錯体を形成する本発明の化合物のそのような形態として説明される。水和物は、当該配位が水と成されている、溶媒和物の特定の形態である。
【0024】
本発明は、さらに、本発明の化合物のプロドラッグも包含する。用語「プロドラッグ」は、それら自体は生物学的に活性でも不活性でもよいが、体内でのそれらの滞留時間中に(例えば、代謝又は加水分解により)、本発明の化合物に変換される化合物を包含する。
【0025】
本発明に関連して、「治療(treatment)」又は「治療する(treating)」という用語には、疾患、状態、障害、傷害若しくは健康障害、又は、そのような状態及び/若しくはそのような状態の症状の発症、過程若しくは進行を、抑制すること(inhibition)、遅延させること(retardation)、確認すること(checking)、軽減させること(alleviating)、弱めること(attenuating)、限定させること(restricting)、低減させること(reducing)、抑制すること(suppressing)、防ぐこと(repelling)又は治すこと(healing)が包含される。「療法(therapy)」という用語は、本明細書中においては、「治療(treatment)」という用語と同義であると理解される。
【0026】
「予防(prevention)」、「予防(prophylaxis)」及び「防止(preclusion)」という用語は、本発明に関連しては、同義的に使用され、そして、疾患、健康状態、障害、傷害若しくは健康障害、又は、そのような状態及び/若しくはそのような状態の症状の発症若しくは進行を、患う(contracting)リスク、経験する(experiencing)リスク、患う(suffering from)リスク又は患う(having)リスクを回避すること又は低減させることを意味する。
【0027】
疾患、健康状態、障害、傷害若しくは健康障害を治療又は予防することは、部分的又は完全であり得る。
【0028】
好ましいものは、式(I)の化合物:2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナートである。
【化2】
やはり好ましいものは、式(I)の化合物2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート:
【化3】
及びそれの生理的に許容される塩である。
【0029】
やはり好ましいものは、
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート塩酸塩
及び
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-({2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]フェニル}スルホニル)-S-アラニナート硫酸塩
及び
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-({2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]フェニル}スルホニル)-S-アラニナートメタンスルホン酸塩
及び
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-({2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]フェニル}スルホニル)-S-アラニナート4-メチルベンゼン-スルホン酸塩
及び
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-({2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]フェニル}スルホニル)-S-アラニナートマレイン酸塩
及び
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-({2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]フェニル}スルホニル)-S-アラニナートリン酸塩
及び
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-({2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]フェニル}スルホニル)-S-アラニナート(2R,3R)-酒石酸塩
及び
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-({2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]フェニル}スルホニル)-S-アラニナートクエン酸塩
からなる群から選択される、式(I)の化合物の生理的に許容される塩である。
【0030】
本発明はさらに、式(I)の化合物、又はそれの塩、それの溶媒和物又はそれの塩の溶媒和物の製造方法であって、脱水剤の存在下に、下記式の化合物:
【化4】
を、下記式の化合物:
【化5】
と反応させて、式(I)の化合物を得て、
前記式(I)の化合物を任意に、相当する(i)溶媒及び/又は(ii)塩基若しくは酸によって、それの溶媒和物、塩及び/又はその塩の溶媒和物に変換する方法を提供する。
【0031】
当該反応は、一般に、不活性溶媒中で、適切な場合には、塩基の存在下で、好ましくは、大気圧下、-20℃~80℃の温度範囲で実施する。
【0032】
ここで、適切な脱水剤は、例えば、カルボジイミド類、例えば、N,N′-ジエチルカルボジイミド、N,N′-ジプロピルカルボジイミド、N,N′-ジイソプロピルカルボジイミド、N,N′-ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDCI)、N-シクロヘキシルカルボジイミド-N′-プロピルオキシメチル-ポリスチレン(PS-カルボジイミド)、又は、カルボニル化合物、例えば、カルボニルジイミダゾール、又は、1,2-オキサゾリウム化合物、例えば、2-エチル-5-フェニル-1,2-オキサゾリウム 3-スルフェート若しくは2-tert-ブチル-5-メチル-イソオキサゾリウム過塩素酸塩、又は、アシルアミノ化合物、例えば、2-エトキシ-1-エトキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン、又は、クロロギ酸イソブチル、又は、ビス-(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスホリルクロリド若しくはベンゾトリアゾリルオキシトリ(ジメチルアミノ)-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、又は、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N′,N′-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2-(2-オキソ-1-(2H)-ピリジル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TPTU)、(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)ビスジメチルアミノメチリウムフルオロボレート(TBTU)若しくはO-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N′,N′-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロ-ホスフェート(HATU)、又は、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、又は、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチル-アミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、又は、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル(Oxyma)、又は、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロホスフェート(COMU)、又は、N-[(ジメチルアミノ)(3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-b]ピリジン-3-イルオキシ)メチリデン]-N-メチルメタン-アミニウムヘキサフルオロホスフェート、又は、2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスフィナン 2,4,6-トリオキシド(T3P)、又は、これらと塩基の混合物である。エチルシアノ(ヒドロキシイミノ)アセテート(Oxyma)及び1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI)との縮合が好ましい。
【0033】
塩基は、例えば、有機塩基、例えば、トリアルキルアミン、例えば、トリエチルアミン、N-メチルモルホリン、N-メチルピペリジン、4-ジメチルアミノピリジン又はジイソプロピルエチルアミン又はピリジンなどである。好ましいものは、塩基を用いない縮合である。
【0034】
不活性溶媒は、例えば、ハロゲン化炭化水素類、例えば、ジクロロメタン若しくはトリクロロメタン、炭化水素類、例えば、ベンゼン若しくはトルエン、又は、別の溶媒、例えば、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド若しくはアセトニトリル、又は、前記溶媒の混合物である。好ましいものは、ジクロロメタン及びN,N-ジメチルホルムアミドの混合物である。
【0035】
式(II)及び(III)の化合物は公知であり、公知のプロセスによって相当する出発化合物から合成することができるか、A)実施例の部に記載の方法と類似の方法で製造することができる。
【0036】
出発化合物及び式(I)で表される化合物の製造は、以下の合成図式によって説明することができる。
【0037】
図式:
【化6】
本発明による化合物は、予測できない有用な薬理学的活性スペクトル及び良好な薬物動態特性を有する。それらは第Xa因子及びトロンビンを阻害する化合物である。従って、それらは、ヒト及び動物における疾患を治療及び/又は予防するための薬物として使用するのに適している。
【0038】
本発明は、さらに、障害、特に、血管障害、好ましくは、播種性血管内凝固症候群などの血栓性障害若しくは血栓塞栓性障害及び/又は血栓性合併症若しくは血栓塞栓性合併症、及び/又は炎症性障害を治療及び/又は予防するため本発明による化合物の使用も提供する。
【0039】
第Xa因子(FXa)及び第IIa因子(FIIa、すなわちトロンビン)は、凝固に関与する重要な酵素である。トロンビンはプロトロンビナーゼ複合体中のFXaによって直接活性化され、次にフィブリノーゲンを活性化して血栓の主要成分の一つであるフィブリンにする。
【0040】
凝固の「共通」経路の一部として、FXa及びトロンビンは、凝固の内因性及び外因性の両方の開始にとって重要な構成要素である。外因性経路では、血管外膜で発現され、血管損傷の結果として血液に曝露される組織因子(TF)を介して凝固が引き起こされる。組織因子はまた、特定のトリガー(細菌内毒素など)により単球又は活性化内皮細胞によって分泌され得る。内因性経路では、凝固系は、外来細胞(細菌など)の表面構造だけでなく、人工血管、ステント及び体外循環などの人工表面も含む、特に負に帯電した表面上で活性化される。表面では、最初に第XII因子(FXII)が第XIIa因子(FXIIa)に活性化され、それがその後、細胞表面に付着した第XI因子(FXI)を活性化して第XIa因子(FXIa)とする。外因性経路と内因性経路の両方が共通の経路に収束し、そこでFXaがプロトロンビンを活性化してトロンビンとし、それによって次に、1)下流の凝固カスケードがさらに伝播して、上記のフィブリン生成と血栓形成が生じ、2)FXIからFXIaへの活性化を介したフィードバックループ内の凝固カスケードが再び開始される。
【0041】
従って、本発明による化合物は、凝血塊の形成から生じ得る障害又は合併症を治療及び/又は予防するのに適している。
【0042】
本発明に関して、「血栓性障害若しくは血栓塞栓性障害」には、動脈及び静脈の両方の血管系で発生し、特に、とりわけ敗血症に関連して起こり得るが、微小血栓による重度の臓器損傷を生じさせ得る外科的介入、腫瘍性疾患、火傷その他の傷害によっても起こり得る播種性血管内凝固症候群(DIC)の治療及び予防のために本発明による化合物によって治療可能である障害などがある。感染症の過程では、さまざまな臓器における微小血栓症及び続発性の出血性合併症を伴う凝固系の全身性活性化(播種性血管内凝固症候群又は消費性凝固障害、以下「DIC」と称する)が発生することがある。DIC時には、損傷した内皮細胞の表面、異物の表面、又は架橋した血管外組織の表面で凝固系が大規模に活性化される。その結果、各種臓器の小血管で凝固が起こり、低酸素症とそれに続く臓器機能不全が起こる。二次的効果は、凝固因子(第X因子、プロトロンビン及びフィブリノーゲン)及び血小板の消費であり、それにより血液の凝固能が低下し、大量の出血が発生する可能性がある。さらに、血管の透過性の増加や体液やタンパク質の血管外空間への拡散に伴う内皮損傷が発生する可能性がある。
【0043】
本発明による化合物は、感染症及び/又は全身性炎症症候群(SIRS)、例えば敗血症性臓器機能不全、敗血症性臓器不全及び多臓器不全、呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺損傷(ALI)、敗血症性ショック及び/又は敗血症性臓器不全に関連して生じ得る合併症を予防又は治療するのにも適している。
【0044】
血栓塞栓性合併症はさらに、微小血管障害性溶血性貧血の場合や、例えば血液透析、ECMO(「体外膜酸素化」)、LVAD(「左心室補助機器」)及び同様の方法などの体外循環、房室瘻、人工血管及び人工心臓弁の関連で血液が異物表面と接触することによって生じる。
【0045】
さらに、本発明の化合物は、心臓の冠状動脈における障害、例えば、急性冠症候群(ACS)、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)及び非ST上昇型心筋梗塞(非STEMI)、安定狭心症、不安定狭心症、冠動脈インターベンション(例えば、血管形成術、ステント移植又は大動脈冠動脈バイパス)後の再閉塞及び再狭窄の治療及び予防に適している。
【0046】
本発明の化合物はまた、急性、間欠性若しくは持続性の心臓不整脈、例えば心房細動を有する患者での、及び電気的除細動を受けている患者での、さらに心臓弁疾患又は人工心臓弁を使用している患者での心原性血栓塞栓症、例えば脳虚血、脳卒中及び全身性血栓塞栓症及び虚血の予防及び治療にも適している。
【0047】
本発明による化合物は、脳血管動脈における障害、例えば、一過性脳虚血発作(TIA)、虚血性脳卒中、例えば、心臓塞栓性脳卒中、例えば、心房細動に起因する脳卒中、非心臓塞栓性脳卒中、例えば、ラクナ脳梗塞、大動脈若しくは小動脈の疾患に起因する脳卒中、又は、未確定の原因に起因する脳卒中、潜因性脳卒中、塞栓性脳卒中、塞栓源不明の塞栓性脳卒中、又は、脳卒中若しくはTIAをもたらす血栓性及び/又は血栓塞栓性起源の事象の治療及び/又は予防での使用に用いることもできる。
【0048】
本発明による化合物は、末梢動脈疾患をもたらす末梢動脈の障害、例えば、末梢動脈閉塞、急性下肢虚血、切断、血管形成術、ステント移植又は手術及びバイパスなどの介入後の再閉塞及び再狭窄、及び/又はステント血栓症の治療及び/又は予防にも使用することができる。
【0049】
さらに、本発明による化合物は、特に深脚静脈、腎臓静脈、網膜静脈及び/又は脳血管洞における静脈血栓症、及び/又は肺動脈塞栓を引き起こす可能性のある静脈血栓塞栓症を生じる静脈血管における障害の治療及び/又は予防にも使用することができる。
【0050】
凝固系の刺激は、さまざまな原因又は関連する障害によって発生し得る。とりわけ、外科的介入、不動、ベッドへの拘束、感染症、炎症又はがん若しくはがん治療に関連して、凝固系は高度に活性化される可能性があり、そして、血栓性合併症、特に、静脈血栓症が存在し得る。従って、本発明による化合物は、がんに罹患している患者への外科的介入の状況に関連した血栓症の予防に適している。
【0051】
本発明による化合物は、さらに、血栓性障害若しくは血栓塞栓性障害及び/又は炎症性障害及び/又は患者の血管浸透性が増加している障害(ここで、遺伝子変異は、酵素の活性の増強又は酵素前駆体のレベルの増大をもたらし、そして、これらは、酵素活性又は酵素前駆体濃度の関連する試験/測定によって確立される)の一次予防にも適している。
【0052】
本発明は、さらに、障害、特に、上記で記載した障害を、治療及び/又は予防するための本発明による化合物の使用も提供する。
【0053】
本発明は、さらに、障害、特に、上記で記載した障害を、治療及び/又は予防するための薬物を製造するための本発明による化合物の使用も提供する。
【0054】
本発明は、さらに、治療上有効量の本発明による化合物を使用して、障害、特に、上記で記載した障害を治療及び/又は予防する方法も提供する。
【0055】
本発明は、さらに、治療上有効量の本発明による化合物を使用して、障害、特に、上記で記載した障害を治療及び/又は予防する方法において使用するための本発明による化合物を提供する。
【0056】
特定の本発明は、治療上有効量の本発明による化合物を用いて、血栓性障害又は血栓塞栓性障害を治療及び/又は予防する方法で使用される本発明による化合物を提供する。
【0057】
本発明は、さらに、本発明による化合物及び1種類以上のさらなる活性化合物を含んでいる医薬を提供する。
【0058】
さらに、本発明による化合物は、生体外での凝固を防止するために、例えば、凝血塊の形成によって引き起こされる損傷から臓器移植を保護するために、及び、移植された臓器に由来する血栓塞栓から臓器レシピエントを保護するために、血液製剤及び血漿製剤を保存するために、カテーテル並びに別の医療用の補助具及び機器を清浄/前処理するために、生体内若しくは生体外で使用される医療用の補助具及び器具の合成表面をコーティングするために、又は、第Xa因子又はトロンビンを含んでいる可能性のある生体サンプルに対して、使用することもできる。
【0059】
本発明は、さらに、特に、上述の障害の治療及び/又は予防のための、本発明による化合物及び1以上の別の活性化合物を含む医薬を提供する。組み合わせに好適な活性化合物の好ましい例には、下記のものなどがある。
【0060】
・脂質低下物質、特に、HMG-CoA-(3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-コエンザイムA)レダクターゼ阻害剤、例えば、ロバスタチン(メバコル(Mevacor))、シンバスタチン(ゾコル(Zocor))、プラバスタチン(プラバコール(Pravachol))、フルバスタチン(レスコール(Lescol))及びアトルバスタチン(リピトール);
・冠血管治療剤/血管拡張剤、特に、ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害剤、例えば、カプトプリル、リシノプリル、エナラプリル、ラミプリル、シラザプリル、ベナゼプリル、ホシノプリル、キナプリル及びペリンドプリル、又は、AII(アンジオテンシンII)受容体拮抗薬、例えば、エンブサルタン(embusartan)、ロサルタン、バルサルタン、イルベサルタン、カンデサルタン、エプロサルタン及びテミサルタン(temisartan)、又は、β-アドレナリン受容体拮抗薬、例えば、カルベジロール、アルプレノロール、ビソプロロール、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、カルテオロール、メトプロロール、ナドロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロパノロール(propanolol)及びチモロール、又は、α-1-アドレナリン受容体拮抗薬、例えば、プラゾシン、ブナゾシン、ドキサゾシン及びテラゾシン、又は、利尿剤、例えば、ヒドロクロロチアジド、フロセミド、ブメタニド、ピレタニド、トラセミド、アミロライド及びジヒドララジン、又は、カルシウムチャンネル遮断薬、例えば、ベラパミル及びジルチアゼム、又は、ジヒドロピリジン誘導体、例えば、ニフェジピン(アダラート)及びニトレンジピン(バイオテンシン(Bayotensin))、又は、ニトロ製剤、例えば、5-一硝酸イソソルビド、二硝酸イソソルビド及び三硝酸グリセリン、又は、環状グアノシン一リン酸(cGMP)の増加を引き起こす物質、例えば、可溶性グアニル酸シクラーゼの刺激剤、例えばリオシグアト;
・プラスミノーゲン活性化剤(血栓溶解剤/線維素溶解剤)及び血栓溶解/線維素溶解を促進する化合物、例えば、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子の阻害剤(PAI阻害剤)又はトロンビン活性化線維素溶解阻害因子の阻害剤(TAFI阻害剤)、例えば組織プラスミノーゲン活性化剤(t-PA、例えばActilyse(登録商標)、ストレプトキナーゼ、レテプラーゼ及びウロキナーゼ又はプラスミノーゲン形成増加を引き起こすプラスミノーゲン調節物質;
・抗凝血物質(抗凝血剤)、例えば、ヘパリン(UFH)、低分子量ヘパリン(LMW)、例えば、チンザパリン、セルトパリン(certoparin)、パルナパリン、ナドロパリン、アルデパリン、エノキサパリン、レビパリン、ダルテパリン、ダナパロイド、セムロパリン(AVE5026)、アドミパリン(M118)及びEP-42675/ORG42675;
・直接トロンビン阻害剤(DTI)、例えば、プラダキサ(ダビガトラン)、アテセガトラン(atecegatran)(AZD-0837)、DP-4088、SSR-182289A、アルガトロバン、ビバリルジン及びタノギトラン(BIBT-986及びプロドラッグBIBT-1011)、ヒルジン;
・直接Xa因子阻害剤、例えば、リバロキサバン、アピキサバン、エドキサバン(DU-176b)、ベトリキサバン(PRT-54021)、R-1663、ダレキサバン(YM-150)、オタミキサバン(otamixaban)(FXV-673/RPR-130673)、レタキサバン(letaxaban)(TAK-442)、ラザキサバン(razaxaban)(DPC-906)、DX-9065a、LY-517717、タノギトラン(tanogitran)(BIBT-986、プロドラッグ:BIBT-1011)、イドラパリナックス及びフォンダパリナックス、
・血小板凝集を阻害する物質(血小板凝集阻害剤、栓球凝集阻害剤)、例えば、P2Y12拮抗薬、例えばアセチルサリチル酸(例えばアスピリンなど)、P2Y12拮抗薬、例えばチクロピジン(チクリド(Ticlid))、クロピドグレル(プラビックス)、プラスグレル、チカグレロル、カングレロル、エリノグレル、PAR-1拮抗薬、例えば、ボラパクサール、PAR-4拮抗薬、EP3拮抗薬、例えばDG041;
・血小板付着阻害薬、例えばGPVI及び/又はGPIb拮抗薬、例えばレバセプト又はカプラシズマブ(caplacizumab);
・フィブリノゲン受容体拮抗薬(糖タンパク質-IIb/IIIa拮抗薬)、例えば、アブシキシマブ、エプチフィバチド、チロフィバン、ラミフィバン(lamifiban)、レフラダフィバン(lefradafiban)及びフラダフィバン(fradafiban);
・組み換えヒト活性化タンパク質C、例えばキシグリス又は組み換えトロンボモジュリン(thrombomudulin);
・並びに、抗不整脈薬;
・コルチコステロイド類、例えばアネコルタブ、ベタメタゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロン、フルオシノロン及びフルオシノロンアセトニド;
・シクロオキシゲナーゼ阻害薬、例えば、ブロムフェナク及びネパフェナク;
・カリクレイン-キニン系の阻害薬、例えば、サフォチバント(safotibant)及びエカランチド;
・スフィンゴシン1-ホスフェートシグナル経路の阻害薬、例えば、ソネプシズマブ;
・補体-C5a受容体の阻害薬、例えば、エクリズマブ;
・5HT1a受容体の阻害薬、例えば、タンドスピロン;
・凝固因子XI又はXIaの阻害薬、例えばオソシマブ、アベラシマブ、アスンデキシアン及びミルベクシアン;
・血管収縮剤、例えばエピネフリン、ノルエピネフリン及びドーパミン;
・抗生物質、例えばピペラシリン、コンバクタム、エリスロマイシン、メトロニダゾール、シプロフロキサシン及びバンコマイシン;
・急性呼吸促迫症候群又は急性腎臓傷害の治療時の末端臓器機能を維持するための化合物。
【0061】
本発明に関する「組み合わせ」は、成分全て(いわゆる固定の組み合わせ)を含有する製剤及び互いに分かれている成分を含有する組み合わせパックだけでなく、同時若しくは順次投与される成分も意味するが、ただし、これらは同じ疾患の予防及び/又は治療に使用される。2以上の有効成分を互いに組み合わせることも同様に可能であり、それは、そうしてこれらがそれぞれ2成分又は多成分の組み合わせであることを意味する。
【0062】
本発明の化合物は、全身的及び/又は局所的に作用し得る。これに関しては、それら化合物は、好適な方法で、例えば、経口、非経口、肺、経鼻、舌下、舌、口腔、直腸、皮膚、経皮、結膜、若しくは耳経路で、又は、インプラント若しくはステントとして投与することができる。
【0063】
本発明の化合物は、それらの投与経路に適した投与形態で投与することができる。
【0064】
経口投与に適した投与形態は、従来技術に従って機能して本発明の化合物を迅速に及び/又は改変された方法で送達し、且つ、本発明の化合物を結晶質形態及び/又は非晶質にされた形態及び/又は溶解された形態で含んでいる投与形態、例えば、錠剤(素錠、又は、コーティング錠、例えば、腸溶コーティングを有しているコーティング錠、又は、不溶性であるか若しくは遅れて溶解して本発明の化合物の放出を制御するコーティングを有しているコーティング錠)、口内で急速に崩壊する錠剤、又は、フィルム剤/カシェ剤、フィルム剤/凍結乾燥剤、カプセル(例えば、硬ゼラチンカプセル、又は、軟ゼラチンカプセル)、糖衣錠、粒剤、ペレット、散剤、乳濁液、懸濁液、エアロゾル又は液剤である。
【0065】
非経口投与は、吸収段階を回避して(例えば、静脈経路、動脈経路、心臓内経路、髄腔内経路又は腰椎内経路によって)実施することができるか、吸収段階を含めて(例えば、筋肉径路、皮下経路、皮内経路、経皮経路又は腹腔内経路によって)実施することができる。非経口投与に適した投与形態としては、液剤、懸濁液、乳濁液、凍結乾燥剤又は無菌粉末剤の形態にある注射用製剤及び注入用製剤などがある。
【0066】
非経口投与が好ましい。
【0067】
その他の投与経路に関する適切な投与形態は、例えば、吸入用の剤形(これは、粉末吸入器、噴霧器を包含する)、点鼻剤、溶液剤、又は、スプレー剤;舌投与、舌下投与若しくは口腔投与のための錠剤、フィルム剤/カシェ剤、又は、カプセル、坐剤、耳用製剤若しくは眼用製剤、膣用カプセル、水性懸濁液剤(ローション、振盪混合物(shaking mixtures))、親油性懸濁液剤、軟膏剤、クリーム、経皮治療システム(例えば、貼付剤)、乳液剤、ペースト、泡剤、散粉用粉末剤、インプラント、又は、ステントである。
【0068】
本発明の化合物は、上記で記載した投与形態に変換させることができる。これは、不活性で無毒性の薬学的に適切な賦形剤と混合させることによって、自体公知の方法で実施することができる。これらの賦形剤としては、担体(例えば、微結晶性セルロース、ラクトース、マンニトール)、溶媒(例えば、液体ポリエチレングリコール)、乳化剤及び分散剤又は湿展剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシソルビタンオレエート)、結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン)、合成ポリマー及び天然ポリマー(例えば、アルブミン)、安定剤(例えば、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸)、着色剤(例えば、無機顔料、例えば、酸化鉄)、並びに、矯味及び/又は矯臭剤などがある。
【0069】
本発明は、さらに、好ましくは1以上の不活性で無毒性の薬学的に適切な賦形剤と一緒に、少なくとも一つの本発明の化合物を含んでいる医薬、及び、上記で記載した目的のためのその医薬の使用も提供する。
【0070】
非経口投与の場合、一般に、有効な結果を達成するためには24時間毎に約100mg~15gの量を投与することが有利であるということが見出されており、24時間毎に約1g~3.5gの量を投与することが非常に好ましい。
【0071】
それにもかかわらず、特に、体重、投与経路、当該活性成分に対する個々の反応、製剤の型及び投与の時間又は時間間隔に応じて、適切な場合には、上記で特定した量から逸脱することが必要であることもあり得る。
【0072】
別断の断りがない限り、以下の試験及び実施例における「%」は、重量%であり;「部」は重量部である。液体/液体溶液に関する溶媒比率、希釈率及び濃度のデータは、いずれの場合にも、体積基準である。「w/v」は、「重量/体積」を意味する。例えば、「10%w/v」は、100mLの溶液又は懸濁液が10gの物質を含んでいることを意味する。
【0073】
A)実施例
略称
【表1】
HPLC及びLC-MS方法:
方法1(分取HPLC):カラム:Chromatorex C18、10μm、205×50mm;溶離液A:水、溶離液B:アセトニトリル;3分で注入;勾配:0.0分10%B→6.0分10%B→27分95%B→38分95%B→39分10%B→40.2分10%B;流量:150mL/分;UV-検出:210nm。
【0074】
方法2(分取HPLC):カラム:RP18カラム、溶離液:アセトニトリル/水勾配+水相に0.1% TFAを添加。
【0075】
方法3(分取HPLC):カラム:Chromatorex C18、10μm、205×50mm;溶離液A:水、溶離液B:アセトニトリル;3分で注入;勾配:0.0分10%B→5.5分10%B→17.65分95%B→19.48分95%B→19.66分10%B→20.51分10%B;流量:150mL/分;UV-検出:210nm。
【0076】
方法4(分取HPLC):Chromatorex C18、10μm、250×50mm30%アセトニトリル/70%水(+0,1%TFA)→38分かけての勾配→95%アセトニトリル/5%水(+0.1%TFA)。
【0077】
方法5(分取HPLC):Chromatorex C18、10μm、125×30mm;溶離液A:水+0.1%TFA、溶離液B:アセトニトリル;3分で注入;勾配:0.0分10%B→6.0分10%B→27分95%B→38分95%B→39分10%B→40.2分10%B;流量:75mL/分;UV-検出:210nm。
【0078】
方法6(分取HPLC):Chromatorex C18、10μm、125×30mm;溶離液A:水+0.01%HCl、溶離液B:アセトニトリル;3分で注入;勾配:0.0分10%B→6.0分10%B→27分95%B→38分95%B→39分10%B→40.2分10%B;流量:75mL/分、UV-検出:210nm。
【0079】
方法7(LC/MS):システムMS:Thermo Scientific FT-MS;システムUHPLC+:Thermo Scientific UltiMate 3000;カラム:Waters、HSST3、2.1×75mm、C18 1.8μm;溶離液A:1リットル水+0.01%ギ酸;溶離液B:1リットルアセトニトリル+0.01%ギ酸;勾配:0.0分10%B→2.5分95%B→3.5分95%B;オーブン:50℃;流量:0.90mL/分;UV-検出:210nm/至適積分経路210-300nm。
【0080】
方法8(LC/MS):装置:Waters ACQUITY SQD UPLCシステム;カラム:Waters Acquity UPLC HSS T3 1.8μm 50×1mm;溶離液A:1リットル水+0.25mL99%ギ酸、溶離液B:1リットルアセトニトリル+0.25mL99%ギ酸;勾配:0.0分90%A→1.2分5%A→2.0分5%A;オーブン:50℃;流量:0.40mL/分;UV-検出:210nm。
【0081】
方法9(LC/MS):装置:Agilent MS Quad 6150;HPLC:Agilent 1290;カラム:Waters Acquity UPLC HSS T3 1.8μm50×2.1mm;溶離液A:1リットル水+0.25mL 99%ギ酸、溶離液B:1リットルアセトニトリル+0.25mL 99%ギ酸;勾配:0.0分90%A→0.3分90%A→1.7分5%A→3.0分5%A;オーブン:50℃;流量:1.20mL/分;UV-検出:205-305nm。
【0082】
方法10(キラルHPLC):カラム:Daicel Chiralpak IG、5μm、250×4.6mm;溶離液A:50%イソヘキサン、50%エタノール+1%水+0.2%TFA;流量:1.0mL/分、温度:40℃。
【0083】
方法11(キラルHPLC):カラム:Daicel Chiralcel IG、5μm、250×4.6mm;溶離液A:50%n-ヘプタン、50%エタノール+0.2%ジエチルアミン;流量:1.0mL/分、温度:60℃。
【0084】
本発明の化合物を、溶離液が添加剤(例えば、トリフルオロ酢酸、ギ酸又はアンモニア)を含んでいる上記方法によって、分取HPLCで精製する場合、本発明の化合物が十分な塩基官能性又は十分な酸官能性を含んでいれば、本発明の化合物は塩形態で(例えば、トリフルオロ酢酸塩、ギ酸塩又はアンモニウム塩として)得られる場合がある。そのような塩は、当業者に公知の各種方法によって、対応する遊離塩基又は遊離酸に変換させることができる。
【0085】
以下に記載されている本発明の合成中間体及び実施例の場合、対応する塩基又は酸の塩の形態で特定されている化合物は、一般に、それぞれの製造方法及び/又は精製プロセスによって得られた、正確な化学量論的な組成が未知の塩である。従って、より詳細に特定されていない限り、「塩酸塩」、「トリフルオロ酢酸塩」、「ナトリウム塩」、又は、「×HCl」、「×CFCOOH」、「×Na」その他の塩などの化学名及び構造式に対する付加は、そのような塩の場合、化学量論的な意味で理解されるべきではなく、その中に存在している塩形成成分に関する記述的特徴を有しているに過ぎない。
【0086】
このことは、合成中間体又は実施例又はそれらの塩が記載されている製造方法及び/又は精製プロセスによって化学量論的な組成が未知の溶媒和物(例えば、水和物)の形態(それらが定められた型である場合)で得られた場合、同様に当てはまる。
【0087】
マイクロ波:使用したマイクロ波反応器は、Biotage Initiator(商標名)又はInitiator Plus(商標名)型の「シングルモード」機器であった。
【0088】
定量イオンクロマトグラフィー(IC):外部標準によるイオンの測定;装置:Thermo Scientific ICS 5000+;キャピラリICカラム:IonPac AS11-HC及びIonPac CS16;溶離液:溶離液勾配[H][OH];検出器:伝導度検出。
【0089】
プロトン核磁気共鳴分光法( H-NMR): H-NMRスペクトルは、示されるように、400、500又は600MHzで動作するBruker Avance分光計を用いて、重水素化溶媒(DMSO-d)中で記録した。化学シフトは、内部標準としてのテトラメチルシラン(TMS)に対するppmで報告している。H NMRシグナルのカップリングパターンの説明は、シグナルの光学的外観に基づいており、必ずしも物理的に正しい解釈を反映しているわけではない。一般に、化学シフト情報はシグナルの中心を指す。多重線の場合、間隔が提供される。溶媒又は水によって不明瞭化又は部分的に不明瞭化されたシグナルは、暫定的に割り当てられているか、列記されていない。例えば、分子部分の急速な回転により、又はプロトン交換のために引き起こされる大きく広がったシグナルも同様に暫定的に割り当てられるか(広い多重線又は広い一重線と称されることが多い)、列記されていない。
【0090】
X線粉末回折(XRPD):X線回折パターンは、XRD回折計X`Pert PRO(PANalytical)を使用して室温で記録した(放射線CuKα1、波長1.5406Å)。サンプルの準備はなかった。すべてのX線反射は、分解能±0.2°での°2θ(シータ)値(ピーク最大値)として引用される。
【0091】
赤外分光法(IR):Bruker製のTensor37装置を使用するFT-IR分光光度計を使用して、IRスペクトラムを室温で記録した。分解能は2cm-1であった。
【0092】
立体異性体の混合物のNMRスペクトラムにおいて、「及び」で言及されている数字は、それらの立体異性体がそれぞれの水素原子に対して別々のシグナルを示すことを示している、すなわち、「・・・.及び・・・..(2×s、1H)」は、1個の水素原子が二つの一重線で表され、各一重線が1以上の異なる立体異性体からのものであることを意味する。
【0093】
図面の説明:
図1:実施例1の赤外スペクトラム
図2:実施例2の赤外スペクトラム
図3:実施例3の赤外スペクトラム
図4:実施例4の赤外スペクトラム
図5:実施例5の赤外スペクトラム
図6:実施例6の赤外スペクトラム
図7:実施例7の赤外スペクトラム
図8:実施例8の赤外スペクトラム
図9:実施例9の赤外スペクトラム
出発化合物
中間体1
1-[3-(ベンジルスルファニル)-2-エチルフェニル]ピロリジン-2-オン
【化7】
1-(ベンジルスルファニル)-3-ブロモ-2-エチルベンゼン(13.0g、42.3mmol;製造については、Journal of Medicinal Chemistry 2013, 56, 9441-9456、化合物40bを参照)及びピロリジン-2-オン(14.5mL、190mmol)のジオキサン(345mL)及びDMF(87mL)中溶液にアルゴン下で、DMEDA(5.5mL、50.8mmol)、ヨウ化銅(I)(9.67g、50.8mmol)及び炭酸カリウム(35.1g、254mmol)を加え、アルゴンを混合物に5分間吹き込んだ。次に、密閉オートクレーブ中、混合物を110℃で16時間攪拌し、追加の圧調節は行わなかった。冷却して室温とした後、混合物を濾過し、溶媒を減圧下に除去した。残留物を水及び酢酸エチルに取り、相を分離した。水相を酢酸エチルで3回抽出し、その後、合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、シクロヘキサン/酢酸エチル1:1)によって精製して、標題化合物の第1のバッチ(9.30g、理論値の65%、純度92%)を得た。さらなるフラッシュクロマトグラフィー(Biotage Isolera、50gシリカゲル SNAP Ultraカートリッジ、シクロヘキサン/酢酸エチル勾配)後に第2のバッチ(280mg、理論値の2%、純度99%)を得た。
【0094】
LC-MS(方法7):R=2.03分;MS(ESIpos):m/z=312[M+H]
【0095】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 7.41-7.36 (m, 3H), 7.34-7.29 (m, 2H), 7.28-7.19 (m, 2H), 7.02 (dd, 1H), 4.25 (s, 2H), 3.61 (t, 2H), 2.59-2.50 (m, 2H, 一部不明瞭), 2.40 (t, 2H), 2.16-2.05 (m, 2H), 1.01 (t, 3H)
中間体2
(3S)-1-[3-(ベンジルスルファニル)-2-メチルフェニル]-3-ヒドロキシピロリジン-2-オン
【化8】
アルゴン下に、1-(ベンジルスルファニル)-3-ブロモ-2-メチルベンゼン(4.50g、15.3mmol;製造については、WO2009/103440, p.81、中間体83を参照)を(3S)-3-ヒドロキシピロリジン-2-オン(3.10g、30.7mmol)、ヨウ化銅(I)(4.09g、21.5mmol)及び炭酸カリウム(8.48g、61.4mmol)と混合し、次にジオキサン(120mL)及びDMF(31mL)を加えた。DMEDA(2.3mL、21.5mmol)を加え、混合物を110℃で終夜攪拌した。冷却して室温とした後、混合物を、それぞれ1-(ベンジルスルファニル)-3-ブロモ-2-メチルベンゼン100mg及び1.0gから出発して同様の条件下で得られた二つの試験反応からの混合物と合わせた。合わせた混合物はセライトで濾過し、酢酸エチルで洗浄し、溶媒を減圧下に除去した。残留物を酢酸エチル及び水に溶かし、再度セライトで濾過した。相を分離し、水相を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。残留物をフラッシュ-クロマトグラフィー(Biotage Isolera、シリカカートリッジ、シクロヘキサン/酢酸エチル勾配)によって精製して、標題化合物(4.24g、理論値の65%、純度92%)を得た。収率は、合わせた実験に基づくものである。
【0096】
LC-MS(方法9):R=1.18分;MS(ESIpos):m/z=314[M+H]
【0097】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 7.38 (d, 2H), 7.34-7.29 (m, 3H), 7.27-7.23 (m, 1H), 7.21 (t, 1H), 7.05 (d, 1H), 5.65 (d, 1H), 4.33-4.25 (m, 1H), 4.23 (s, 2H), 3.59-3.54 (m, 1H), 3.54-3.48 (m, 1H), 2.45-2.38 (m, 1H), 2.05 (s, 3H), 1.98-1.89 (m, 1H).
中間体3
(3R)-1-[3-(ベンジルスルファニル)-2-メチルフェニル]-3-ヒドロキシピロリジン-2-オン
【化9】
アルゴン下に、1-(ベンジルスルファニル)-3-ブロモ-2-メチルベンゼン(3.00g、10.2mmol;製造については、WO2009/103440、p.81、中間体83を参照)を(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-2-オン(1.86g、18.4mmol)、ヨウ化銅(I)(2.73g、14.3mmol)及び炭酸カリウム(5.66g、40.9mmol)と混合し、次にジオキサン(82mL)及びDMF(21mL)を加えた。DMEDA(1.5mL、14mmol)を加え、混合物を110℃で終夜攪拌した。冷却して室温とした後、混合物を、1-(ベンジルスルファニル)-3-ブロモ-2-メチルベンゼン42mgから出発して同様の条件下で得られた試験反応からの混合物と合わせた。合わせた混合物はセライトで濾過し、酢酸エチルで洗浄し、溶媒を減圧下に除去した。残留物を酢酸エチル及び水に溶かし、再度セライトで濾過した。相を分離し、水相を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。残留物をフラッシュ-クロマトグラフィー(Biotage Isolera、シリカカートリッジ、シクロヘキサン/酢酸エチル勾配)によって精製して、標題化合物を得た(2.27g、理論値の54%、純度79%)。収率は、合わせた実験に基づくものである。
【0098】
LC-MS(方法9):R=1.18分;MS(ESIpos):m/z=314[M+H]
【0099】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 7.42 (d, 2H), 7.38-7.33 (m, 3H), 7.31-7.27 (m, 1H), 7.25 (t, 1H), 7.08 (d, 1H), 5.69 (d, 1H), 4.34-4.30 (m, 1H), 4.27 (s, 2H), 3.63-3.57 (m, 1H), 3.57-3.57 (m, 1H), 2.49-2.42 (m, 1H), 2.09 (s, 3H), 2.02-1.94 (m, 1H).
中間体4
(3S)-1-[3-(ベンジルスルファニル)-2-エチルフェニル]-3-ヒドロキシピロリジン-2-オン
【化10】
1-(ベンジルスルファニル)-3-ブロモ-2-エチルベンゼン(4.05g、13.19mmol;製造については、Journnal of Medicinal Chemistry 2013, 56,9441-9456、化合物40bを参照)及び(3S)-3-ヒドロキシ-2-ピロリジノン(4.0g、39.56mmol)のジオキサン(105mL)及びDMF(27mL)中混合物にアルゴン下で、DMEDA(1.14mL、10.55mmol)、ヨウ化銅(I)(2.01g、10.55mmol)及び炭酸カリウム(7.29g、52.75mmol)を加えた。得られた混合物を8本のマイクロ波容器に等量で小分けし、キャップを施した。これらの容器のうちの2本をマイクロ波装置中110℃で16時間加熱し、他の容器6本は加熱ブロックに置いて10℃で16時間攪拌した。冷却して室温とした後、合わせた混合物を濾過し、溶媒を除去した。残留物を酢酸エチル及び水に取り、相分離後、水相を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で1回洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。残留物をIsoluteに吸着させ、フラッシュ-クロマトグラフィー(Biotage Isolera、100gSNAP-Ultraシリカゲル、シクロヘキサン-酢酸エチル勾配)によって精製した。合わせた生成物分画を濃縮し、真空乾燥して、標題化合物を得た(2.17g、理論値の49%、純度98%)。
【0100】
LC-MS(方法8):R=0.92分;MS(ESIpos):m/z=328[M+H]
【0101】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 7.41-7.36 (m, 3H), 7.34-7.29 (m, 2H), 7.28-7.20 (m, 2H), 7.01 (dd, 1H), 5.69 (d, 1H), 4.30-4.24 (m, 3H), 3.58-3.52 (m, 1H), 3.50-3.42 (m, 1H), 2.60-2.47 (m, 2H, 一部不明瞭), 2.45-2.36 (m, 1H), 1.98-1.87 (m, 1H), 1.01 (t, 3H).
中間体5
(3R)-1-[3-(ベンジルスルファニル)-2-エチルフェニル]-3-ヒドロキシピロリジン-2-オン
【化11】
1-(ベンジルスルファニル)-3-ブロモ-2-エチルベンゼン(844mg、2.75mmol;製造については、Journnal of Medicinal Chemistry 2013, 56, 9441-9456、化合物40bを参照)にアルゴン下で、(3R)-3-ヒドロキシ-2-ピロリジノン(500mg、4.95mmol)、ヨウ化銅(I)(733mg、3.85mmol)、炭酸カリウム(1.52g、11.0mmol)、ジオキサン(22mL)、DMF(5.6mL)及びDMEDA(0.41mL、3.85mmol)を加えた。混合物を110℃で終夜攪拌した。冷却して室温とした後、混合物をセライトで濾過し、溶媒を除去した。残留物を酢酸エチル及び水に取り、セライトで再度濾過し、相分離後、水相を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で1回洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。残留物をフラッシュ-クロマトグラフィー(シリカゲル、シクロヘキサン-酢酸エチル勾配)によって精製した。合わせた生成物分画を濃縮し、真空乾燥して、標題化合物を得た(548mg、理論値の60%、純度99%)。
【0102】
LC-MS(方法7):R=1.78分;MS(ESIpos):m/z=328[M+H]
【0103】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 7.41-7.36 (m, 3H), 7.34-7.29 (m, 2H), 7.28-7.20 (m, 2H), 7.01 (d, 1H), 5.66 (d, 1H), 4.30-4.24 (m, 3H), 3.58-3.52 (m, 1H), 3.50-3.42 (m, 1H), 2.60-2.47 (m, 2H, 一部不明瞭), 2.45-2.36 (m, 1H), 1.98-1.87 (m, 1H), 1.01 (t, 3H).
中間体6
(3S)-1-[3-(ベンジルスルファニル)-2-エチルフェニル]-3-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}ピロリジン-2-オン
【化12】
(3S)-1-[3-(ベンジルスルファニル)-2-エチルフェニル]-3-ヒドロキシピロリジン-2-オン(2.17g、6.64mmol、中間体4)のDCM(19mL)及びDMF(4.8mL)中溶液に、tert-ブチルジメチルシリルクロライド(3.0g、19.93mmol)、DIPEA(2.9mL、16.61mmol)及びDMAP(16mg、0.13mmol)を加え、混合物を室温で終夜攪拌した。混合物を濃縮し、残留物をアセトニトリル及び水に取り、分取HPLC(方法1)によって精製した。合わせた生成物分画を凍結乾燥して、標題化合物を得た(2.0g、理論値の68%、純度100%)。
【0104】
LC-MS(方法7):R=2.84分;MS(ESIpos):m/z=442[M+H]
【0105】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 7.41-7.36 (m, 3H), 7.34-7.29 (m, 2H), 7.28-7.20 (m, 2H), 7.02 (d, 1H), 4.48 (t, 1H), 4.26 (s, 2H), 3.62-3.53 (m, 1H), 3.53-3.45 (m, 1H), 2.59-2.40 (m, 3H, 一部不明瞭), 2.03-1.90 (m, 1H), 1.01 (t, 3H), 0.9 (s, 9H), 0.13 (s, 3H), 0.12 (s, 3H).
中間体7
2-エチル-3-(2-オキソピロリジン-1-イル)ベンゼン-1-スルホニルクロライド
【化13】
1-[3-(ベンジルスルファニル)-2-エチルフェニル]ピロリジン-2-オン(9.30g、29.86mmol、純度については調節していない、中間体1)の酢酸(550mL)中溶液に、塩化スルフリル(9.60mL、119.4mmol)を加え、混合物を室温で1時間攪拌した。水を加え、混合物をDCMで3回抽出した。合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で3回洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。残留物をシクロヘキサンに取り、フラッシュクロマトグラフィー(Biotage Isolera One、100g SNAP Ultraシリカゲルカートリッジ、シクロヘキサン/酢酸エチル勾配)によって精製して、標題化合物を得た(5.15g、理論値の55%、純度91%)。
【0106】
LC-MS(方法7):R=1.66分;MS(ESIpos):m/z=288[M+H]
【0107】
中間体8
3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]-2-メチルベンゼン-1-スルホニルクロライド
【化14】
(3S)-1-[3-(ベンジルスルファニル)-2-メチルフェニル]-3-ヒドロキシピロリジン-2-オン(4.24g、純度92%、12.45mmol、中間体2)のDCM(73mL)及び酢酸(290mL)中溶液に、NCS(6.65g、49.8mmol)を加え、混合物を室温で1時間攪拌した。水を加え、混合物をジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で3回洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。残留物をDCMに取り、飽和塩化ナトリウム溶液で3回洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮し、残留物を真空乾燥して、標題化合物を得た(3.94g、理論値の80%、純度73%)。
【0108】
LC-MS(方法7):R=1.26分;MS(ESIpos):m/z=290[M+H]
【0109】
中間体9
3-[(3R)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]-2-メチルベンゼン-1-スルホニルクロライド
【化15】
(3R)-1-[3-(ベンジルスルファニル)-2-メチルフェニル]-3-ヒドロキシピロリジン-2-オン(2.27g、純度79%、5.72mmol、中間体3)のDCM(34mL)及び酢酸(135mL)中溶液に、NCS(3.06g、22.9mmol)を加え、混合物を室温で1時間攪拌した。水を加え、混合物をジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。残留物をDCMに取り、飽和塩化ナトリウム溶液で3回洗浄し、次に、合わせた水相をDCMで1回再抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮し、残留物を真空乾燥して、標題化合物を得た(1.90g、理論値の62%、純度54%)。
【0110】
LC-MS(方法7):R=1.26分;MS(ESIpos):m/z=290[M+H]
【0111】
中間体10
2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニルクロライド
【化16】
(3S)-1-[3-(ベンジルスルファニル)-2-エチルフェニル]-3-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}ピロリジン-2-オン(2.0g、4.53mmol、中間体6)の酢酸(120mL)中溶液に、塩化スルフリル(1.50mL、18.1mmol)を加え、混合物を室温で1時間攪拌した。混合物を水で希釈し、DCMで5回抽出し、その後、水相を塩化ナトリウムで飽和させ、DCMで再度抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで脱水し、ロータリーエバポレータによって浴温25℃で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(Biotage Isolera、100gSNAP-Ultraシリカゲル、シクロヘキサン-酢酸エチル勾配)によって二つに分けて精製した。合わせた生成物分画を浴温25℃でのロータリーエバポレータによって濃縮して、標題化合物を得た(1.11g、理論値の72%、LC-MSにより純度90%)。
【0112】
LC-MS(方法7):R=1.39分;MS(ESIpos):m/z=304[M+H]
【0113】
中間体11
2-エチル-3-[(3R)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニルクロライド
【化17】
(3R)-1-[3-(ベンジルスルファニル)-2-エチルフェニル]-3-ヒドロキシピロリジン-2-オン(545mg、1.65mmol、中間体5)のDCM(10mL)及び酢酸(39mL)中溶液にNCS(880mg、6.59mmol)を加え、混合物を室温で1時間攪拌した。次に、混合物を水で希釈し、DCMで3回抽出した。合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で3回洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、浴温25℃でのロータリーエバポレータによって濃縮した。残留物をフラッシュ-クロマトグラフィー(Biotage Isolera、SNAP-Ultraシリカゲル、シクロヘキサン-酢酸エチル勾配)によって精製した。合わせた生成物分画を浴温25℃でのロータリーエバポレータによって濃縮して、標題化合物を得た(450mg、理論値の84%、NMRにより純度93%、少量の溶媒を含有)。
【0114】
LC-MS(方法7):R=1.39分;MS(ESIpos):m/z=304[M+H]
【0115】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 7.80 (dd, 1H), 7.21-7.16 (m, 1H), 7.13 (dd, 1H), 4.27 (t, 1H), 3.63-3.57 (m, 1H), 3.55-3.46 (m, 1H), 3.02-2.87 (m, 2H), 2.46-2.38 (m, 1H), 1.97-1.89 (m, 1H), 1.05 (t, 3H).
中間体12
メチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]-2-メチルベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート
【化18】
3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]-2-メチルベンゼン-1-スルホニルクロライド(3.69g、7.39mmol、純度58%、中間体8)のDCM(91mL)中溶液にトリエチルアミン(4.1mL、29.55mmol)及びメチル-3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-S-アラニナート(2.04g、7.76mmol;製造については、Journnal of Medicinal Chemistry 2013、56、9441-9456、化合物49を参照)を加え、反応混合物を室温で1.5時間攪拌した。混合物を、3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]-2-メチルベンゼン-1-スルホニルクロライド250mg(純度94%)から出発して同様の条件下で得られた、より小規模の反応からの混合物と合わせた。合わせた混合物をDCMで希釈し、水で2回洗浄し、次に合わせた水相をDCMで再抽出した。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、脱水し、濃縮した。残留物をフラッシュ-クロマトグラフィー(シリカゲル、DCM/メタノール20:1)によって精製して、標題化合物を得た(2.25g、理論値の46%、純度87%)。収率は、合わせた実験に基づくものである。
【0116】
LC-MS(方法9):R=0.99分;MS(ESIneg):m/z=514[M-H]
【0117】
中間体13
メチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{3-[(3R)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]-2-メチルベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート
【化19】
3-[(3R)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]-2-メチルベンゼン-1-スルホニルクロライド(1.90g、純度54%、3.54mmol、中間体9)のDCM(44mL)中溶液に、トリエチルアミン(2.0mL、14.2mmol)及びメチル-3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-S-アラニナート(0.98g、3.72mmol;製造については、Journnal of Medicinal Chemistry 2013, 56, 9441-9456、化合物49を参照)を加え、反応混合物を室温で1.5時間攪拌した。混合物をDCMで希釈し、水で2回洗浄し、次に合わせた水相をDCMで再抽出した。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、脱水し、濃縮した。残留物をフラッシュ-クロマトグラフィー(シリカゲル、DCM/メタノール勾配)によって精製して、標題化合物を得た(882mg、理論値の46%、純度96%)。
【0118】
LC-MS(方法9):R=0.99分;MS(ESIneg):m/z=514[M-H]
【0119】
中間体14
リチウム(2S)-3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-2-({[2-エチル-3-(2-オキソピロリジン-1-イル)フェニル]スルホニル}アミノ)プロパノエート
【化20】
メチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-[2-エチル-3-(2-オキソピロリジン-1-イル)ベンゼン-1-スルホニル]-S-アラニナート(2.0g、3.89mmol、参考例5)のTHF(30mL)中溶液に水酸化リチウム・1水和物(816mg、19.45mmol)を加え、混合物を室温で4時間攪拌した。混合物を濃縮し、残留物を水/メタノール/アセトニトリルに取り、分取HPLC(方法3)によって精製した。合わせた生成物分画を濃縮し、残留物を真空乾燥して、標題化合物を得た(1.56g、理論値の80%、純度100%)。
【0120】
LC-MS(方法7):R=1.38分;MS(ESIpos):m/z=500[M+H]
【0121】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 8.65 (br s, 1H), 7.91 (d, 1H), 7.47 (d, 1H), 7.43 (d, 1H), 7.36 (t, 1H), 7.15 (d, 1H), 3.65 (br s, 2H), 3.57-3.48 (m, 1H), 3.38-3.27 (不明瞭, 2H), 2.98-2.88 (m, 1H), 2.88-2.80 (m, 1H), 2.42 (t, 2H), 2.17-2.08 (m, 2H), 1.08 (t, 3H).
中間体15
3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-[2-エチル-3-(2-オキソピロリジン-1-イル)ベンゼン-1-スルホニル]-S-アラニン
【化21】
メチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-[2-エチル-3-(2-オキソピロリジン-1-イル)ベンゼン-1-スルホニル]-S-アラニナート(515mg、1.00mmol、参考例5)のTHF(5mL)中溶液に1M水酸化リチウム溶液(5.0mL、5.0mmol)を加え、混合物を室温で2時間攪拌した。次に、混合物を水で希釈し、ジエチルエーテルで洗浄した。水相を1M塩酸(6mL)で処理し、ブタノールで3回抽出した。合わせたブタノール相を濃縮し、残留物をアセトニトリル/水に取り、凍結乾燥して、標題化合物を得た(482mg、理論値の90%、純度94%)。
【0122】
LC-MS(方法7):R=1.38分;MS(ESIpos):m/z=500[M+H]
【0123】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 12.84 (s, 1H), 8.68 (t, 1H), 8.44 (d, 1H), 7.85 (d, 1H), 7.55 (d, 1H), 7.41 (d, 1H), 7.32 (t, 1H), 7.17 (d, 1H), 4.00 (dd, 1H), 3.66-3.57 (br m, 2H), 3.57-3.50 (m, 1H), 3.43-3.36 (m, 1H), 2.93-2.80 (m, 2H), 2.42 (t, 2H), 2.16-2.09 (m, 2H), 1.08 (t, 3H).
中間体16
3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]-2-メチルベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニン
【化22】
メチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]-2-メチルベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート(2.25g、純度87%、3.79mmol、中間体12)のTHF(8.1mL)中溶液に水酸化リチウム水溶液(38mL、1.0M、38mmol)を加え、混合物を室温で2時間攪拌した。THFの留去後、水系混合物をpH値1に達するまで2M塩酸でゆっくり酸性とした。得られた混合物を酢酸エチルで2回抽出し、合わせた有機相を硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮し、真空乾燥して、標題化合物を得た(1.96g、理論値の97%、純度94%、NMRにより少量の溶媒を含有)。
【0124】
LC-MS(方法9):R=0.89分;MS(ESIpos):m/z=502[M+H]
【0125】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 12.84 (br s, 1H), 8.55 (t, 1H), 8.35 (d, 1H), 7.81 (d, 1H), 7.48 (d, 1H), 7.40 (d, 1H), 7.31 (t, 1H), 7.15 (d, 1H), 5.70 (d, 1H), 4.33-4.28 (m, 1H), 4.02-3.97 (m, 1H), 3.58-3.49 (m, 2H), 3.49-3.41 (m, 1H), 3.38-3.30 (m, 1H, 一部不明瞭), 2.47-2.39 (m, 1H), 2.35 (s, 3H), 1.97-1.89 (m, 1H).
中間体17
3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{3-[(3R)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]-2-メチルベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニン
【化23】
メチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{3-[(3R)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]-2-メチルベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート(882mg、1.71mmol、中間体13)のTHF(3.6mL)中溶液に、水酸化リチウム水溶液(17mL、1.0M、17mmol)を加え、混合物を室温で2時間攪拌した。THFの留去後、水系混合物を、pH値1に達するまで2M塩酸でゆっくり酸性とした。得られた混合物を酢酸エチルで2回抽出し、合わせた有機相を硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮し、真空乾燥して、標題化合物を得た(784mg、理論値の81%、純度89%、NMRにより少量の溶媒を含有)。
【0126】
LC-MS(方法9):R=0.89分;MS(ESIpos):m/z=502[M+H]
【0127】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 12.76 (br s, 1H), 8.57 (t, 1H), 8.36 (d, 1H), 7.82 (d, 1H), 7.50 (d, 1H), 7.42 (d, 1H), 7.32 (t, 1H), 7.16 (d, 1H), 5.70 (d, 1H), 4.31 (br t, 1H), 4.02-3.97 (m, 1H), 3.58-3.50 (m, 2H), 3.50-3.44 (m, 1H), 3.39-3.33 (m, 1H), 2.47-2.39 (m, 1H), 2.36 (s, 3H), 1.98-1.92 (m, 1H).
中間体18
リチウム(2S)-3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-2-[({2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]フェニル}スルホニル)アミノ]プロパノエート
【化24】
メチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート(200mg、0.38mmol、参考例6)のTHF(2.1mL)中溶液に、水酸化リチウム・1水和物(48mg、1.13mmol)及水2滴を加え、混合物を室温で1時間攪拌した。次に、混合物を濃縮し、残留物を分取HPLC(方法1)によって精製した。合わせた生成物分画を凍結乾燥して、標題化合物を得た(140mg、理論値の71%、純度100%)。
【0128】
LC-MS(方法7):R=1.23分;MS(ESIpos):m/z=516[M+H]
【0129】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 8.70-8.64 (m, 1H), 7.93 (d, 1H), 7.47-7.40 (m, 2H), 7.40-7.34 (m, 1H), 7.16 (d, 1H), 5.75 (br s, 1H), 4.28 (t, 1H), 3.65-3.57 (m, 1H), 3.56-3.47 (m, 2H), 3.38-3.20 (m, 4H, 一部不明瞭), 2.98-2.76 (m, 2H), 2.47-2.38 (m, 1H), 2.00-1.87 (m, 1H), 1.07 (t, 1H).
中間体19
3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニン
【化25】
メチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート(508mg、0.96mmol、参考例6)のTHF(2.0mL)中溶液に、水酸化リチウム水溶液(1M、9.6mL、9.6mmol)を加え、混合物を室温で2時間攪拌した。THFの留去後、水系混合物を、pH値1に達するまで1M塩酸でゆっくり酸性とした。得られた混合物を酢酸エチルで2回抽出し、合わせた有機相を硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮し、真空乾燥して、H NMRによる少量の溶媒を含む標題化合物を得た(391mg、理論値の75%、純度95%)。
【0130】
LC-MS(方法8):R=0.65分;MS(ESIpos):m/z=516[M+H]
【0131】
キラルHPLC(方法10):R=7.76分。
【0132】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 12.83 (br s, 1H), 8.60 (t, 1H), 8.40 (d, 1H), 7.86 (dd, 1H), 7.52 (d, 1H), 7.39 (dd, 1H), 7.33 (t, 1H), 7.16 (d, 1H), 5.70 (d, 1H), 4.32-4.26 (m, 1H), 4.05-4.00 (m, 1H), 3.59-3.51 (m, 2H), 3.49-3.36 (m, 2H), 2.91-2.81 (m, 2H), 2.47-2.37 (m, 1H), 1.97-1.87 (m, 1H), 1.06 (t, 3H).
中間体20
3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3R)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニン
【化26】
メチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3R)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート(620mg、純度95%、1.11mmol、参考例7)のTHF(2.4mL)中溶液に水酸化リチウム水溶液(11mL、1.0M、11mmol)を加え、混合物を室温で2時間攪拌した。THFの留去後、水系混合物を、pH値1に達するまで1M塩酸でゆっくり酸性とした。得られた混合物を酢酸エチルで2回抽出し、合わせた有機相を硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮し、真空乾燥して、標題化合物を得た(570mg、理論値の99%、純度100%、NMRにより少量の溶媒を含有)。
【0133】
LC-MS(方法7):R=1.21分;MS(ESIpos):m/z=516[M+H]
【0134】
キラルHPLC(方法10):R=6.31分。
【0135】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 12.90 (br s, 1H), 8.61 (t, 1H), 8.40 (d, 1H), 7.87 (dd, 1H), 7.54 (d, 1H), 7.40 (d, 1H), 7.33 (t, 1H), 7.17 (d, 1H), 5.71 (br s, 1H), 4.29 (br t, 1H), 4.06-3.99 (m, 1H), 3.61-3.50 (m, 2H), 3.49-3.44 (m, 1H), 3.44-3.37 (m, 1H), 2.94-2.80 (m, 2H), 2.48-2.40 (m, 1H), 1.97-1.91 (m, 1H), 1.07 (t, 3H).
参考化合物
参考例1
5-クロロ-N-[(2S)-2-({[2-メチル-3-(2-オキソピロリジン-1-イル)フェニル]スルホニル}アミノ)-3-(4-メチルピペラジン-1-イル)-3-オキソプロピル]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩
【化27】
製造については、Journnal of Medicinal Chemistry 2013, 56, 9441-9456、化合物15を参照する。
【0136】
参考例2
2-(ジメチルアミノ)エチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-{[2-メチル-3-(2-オキソピロリジン-1-イル)フェニル]スルホニル}-S-アラニナート塩酸塩
【化28】
3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-{[2-メチル-3-(2-オキソピロリジン-1-イル)フェニル]スルホニル}-S-アラニン(150mg、0.31mmol、製造については、Journnal of Medicinal Chemistry 2013, 56, 9441-9456、化合物51を参照する。)のTHF(1.5mL)中溶液に、HBTU(140mg、0.37mmol、CAS-RN94790-37-1)、DIPEA(0.16mL、0.93mmol)及び2-(ジメチルアミノ)エタノール(37μL、370μmol)を加え、混合物を室温で1時間攪拌した。次に、混合物をロータリーエバポレータによって濃縮し、残留物をアセトニトリル/水に取り、移動相にTFAを加えた分取HPLC(方法5)によって精製した。凍結乾燥後、TFA含有バッチを得た。相当する塩酸塩を生成するために、TFA含有バッチを最初にアセトニトリル/水に溶かし、得られた溶液をクロライドイオン交換樹脂(2.0gアンバーライトIRA405Cl)とともに1時間攪拌した。その後、溶液を移動相に塩化水素を加えた分取HPLC(方法6)によって精製して、標題化合物の第1のバッチ(96mg、理論値の52%、純度100%)及び標題化合物の第2のバッチ(6mg、理論値の3%、純度94%)を得た。
【0137】
LC-MS(方法7):R=0.99分;MS(ESIpos):m/z=557[M+H]
【0138】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 10.28 (br s, 1H), 8.92 (t, 1H), 8.74 (d, 1H), 7.81 (d, 1H), 7.66 (d, 1H), 7.48 (d, 1H), 7.37 (t, 1H), 7.19 (d, 1H), 4.24-4.18 (m, 1H), 4.16-4.08 (m, 2H), 3.68-5.57 (m, 3H), 3.52-3.45 (m, 1H), 3.23 (m, 2H), 2.75 (d, 3H), 2.73 (d, 3H), 2.45 (t, 2H), 2.39 (s, 3H), 2.18-2.11 (m, 2H).
IC:6.0重量%クロライド、<1重量%TFA。
【0139】
参考例3
1-メチルピペリジン-4-イル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-{[2-メチル-3-(2-オキソピロリジン-1-イル)フェニル]スルホニル}-S-アラニナート塩酸塩
【化29】
3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-{[2-メチル-3-(2-オキソピロリジン-1-イル)フェニル]スルホニル}-S-アラニン(150mg、0.31mmol、製造については、Journnal of Medicinal Chemistry 2013, 56, 9441-9456、化合物51を参照する。)のTHF(1.5mL)中溶液にTBTU(119mg、0.37mmol、CAS-RN125700-67-6)、DIPEA(0.16mL、0.93mmol)及びN-メチル-4-ピペリジノール(44μL、370μmol)を加え、混合物を室温で終夜攪拌した。次に、混合物を移動相に塩化水素を加えた分取HPLC(方法6)によって精製して、標題化合物を得た(28mg、理論値の14%、純度100%)。
【0140】
LC-MS(方法7):R=1.00分;MS(ESIpos):m/z=583[M+H]
【0141】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 10.28 (br s, 1H), 8.86 and 8.81 (2 x t, 1 H), 8.75 and 8.74 (2 x d, 1H), 7.83 and 7.81 (2 x d, 1H), 7.62及び7.58 (2 x d, 1H), 7.49-7.45 (m, 1H), 7.39-7.34 (m, 1H), 7.19-7.17 (m, 1H), 4.83-4.78 and 4.65-4.59 (2 x m, 1H), 4.14-4.08 and 4.04-3.98 (2 x m, 1H), 3.66-3.13 (3 x m, 6H, 一部不明瞭), 3.03-2.89 (m, 2H), 2.69-2.65 (m, 3H), 2.47-2.41 (m, 2H), 2.37 (s, 3H), 2.18-2.11 (m, 2H), 1.97-1.73 (2 x m, 2H), 1.67-1.50 (m, 2H).
IC:5.6重量%クロライド。
【0142】
参考例4
メチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-{[2-メチル-3-(2-オキソピロリジン-1-イル)フェニル]スルホニル}-S-アラニナート
【化30】
製造については、Journnal of Medicinal Chemistry 2013, 56, 9441-9456、化合物50を参照する。
【0143】
参考例5
メチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-[2-エチル-3-(2-オキソピロリジン-1-イル)ベンゼン-1-スルホニル]-S-アラニナート
【化31】
2-エチル-3-(2-オキソピロリジン-1-イル)ベンゼン-1-スルホニルクロライド(5.15g、17.90mmol、中間体7)のDCM(215mL)中混合物にメチル-3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-S-アラニナート塩酸塩(5.89g、19.7mmol、製造については、Journnal of Medicinal Chemistry 2013, 56, 9441-9456、化合物49を参照する。)及びトリエチルアミン(5.0mL、35.8mmol)を加え、混合物を室温で1時間攪拌した。次に、混合物を濃縮し、残留物をフラッシュクロマトグラフィー(Biotage Isolera、100gSNAP-Ultraシリカゲル、DCM/メタノール勾配)によって精製した。合わせた生成物分画を濃縮し、真空乾燥して、標題化合物の第1のバッチ(8.35g、理論値の86%、純度95%)及び標題化合物の第2のバッチ(830mg、理論値の9%、純度100%)を得た。
【0144】
LC-MS(方法8):R=0.85分;MS(ESIpos):m/z=514[M+H]
【0145】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 8.68 (t, 1H), 8.63 (d, 1H), 7.81 (dd, 1H), 7.54 (d, 1H), 7.45 (dd, 1H), 7.37 (t, 1H), 7.18 (d, 1H), 4.12-4.00 (m, 1H), 3.73-3.49 (m, 3H), 3.46-3.35 (m, 4H), 2.98-2.74 (m, 2H), 2.43 (t, 2H), 2.19-2.08 (m, 2H), 1.08 (t, 3H).
参考例6
メチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート
【化32】
2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニルクロライド(1.11g、3.66mmol、中間体10)のDCM(45mL)中混合物にメチル-3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-S-アラニナート塩酸塩(1.64g、5.50mmol、製造については、Journnal of Medicinal Chemistry 2013, 56, 9441-9456、化合物49を参照する。)及びトリエチルアミン(1.0mL、7.32mmol)を加え、混合物を室温で2時間攪拌した。混合物を濃縮し、残留物をIsoluteに吸着させ、フラッシュ-クロマトグラフィー(Biotage Isolera、50gSNAP-Ultraシリカゲル、シクロヘキサン/酢酸エチル/メタノール勾配)によって精製した。合わせた生成物分画を濃縮し、真空乾燥して、標題化合物を得た(892mg、理論値の44%、LC-MSによる純度96%)。
【0146】
LC-MS(方法7):Rt=1.42分;MS(ESIpos):m/z=530[M+H]
【0147】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 8.71-8.62 (m, 2H), 7.85-7.80 (m, 1H), 7.54 (d, 1H), 7.46-7.42 (m, 1H), 7.40-7.34 (m, 1H), 7.17 (d, 1H), 5.76-5.74 (m, 1H), 4.34-4.27 (m, 1H), 4.11-4.00 (m, 1H), 3.68-3.34 (m, 7H), 2.95-2.77 (m, 2H), 2.48-2.39 (m, 1H), 2.00-1.88 (m, 1H), 1.07 (t, 3H).
参考例7
メチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3R)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート
【化33】
2-エチル-3-[(3R)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニルクロライド(445mg、純度93%、1.36mmol、中間体11)のDCM(17mL)中混合物にトリエチルアミン(0.63mL、4.5mmol)及びメチル-3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-S-アラニナート塩酸塩(481mg、1.61mmol、製造については、Journnal of Medicinal Chemistry 2013, 56, 9441-9456、化合物49を参照する。)を加え、混合物を室温で15分間攪拌した。追加のメチル-3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-S-アラニナート塩酸塩(45mg、0.15mmol)を加え、混合物を室温でさらに10分間攪拌した。次に、水を加え、相を分離した。水相をDCMで2回抽出した。合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。残留物をフラッシュ-クロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/メタノール勾配)によって精製した。合わせた生成物分画を濃縮し、真空乾燥して、標題化合物を得た(620mg、理論値の82%、NMRによる純度95%)。
【0148】
LC-MS(方法7):R=1.40分;MS(ESIpos):m/z=530[M+H]
【0149】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 8.65 (t, 1H), 8.61 (d, 1H), 7.83 (d, 1H), 7.54 (d, 1H), 7.44 (d, 1H), 7.38 (t, 1H), 7.17 (d, 1H), 5.71 (d, 1H), 4.33-4.27 (m, 1H), 4.10-4.04 (m, 1H), 3.62-3.48 (m, 3H), 3.45-3.38 (m, 4H), 2.95-2.87 (m, 1H), 2.86-2.77 (m, 1H), 2.47-2.40 (m, 1H), 2.00-1.91 (m, 1H), 1.07 (t, 3H).
参考例8
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-{[2-メチル-3-(2-オキソピロリジン-1-イル)フェニル]スルホニル}-S-アラニナート
【化34】
3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-{[2-メチル-3-(2-オキソピロリジン-1-イル)フェニル]スルホニル}-S-アラニン(150mg、0.31mmol、製造については、Journnal of Medicinal Chemistry 2013, 56, 9441-9456、化合物51を参照する。)のTHF(3.0mL)中溶液に、HBTU(211mg、0.56mmol、CAS-RN94790-37-1)、DIPEA(108μL、0.62mmol)及び2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エタノール(117mg、0.93mmol、CAS-RN18994-70-2)を加え、混合物を室温で終夜攪拌した。次に、混合物を水/アセトニトリルに取り、分取HPLC(方法4)によって精製した。合わせた生成物分画を濃縮し、残留物を凍結乾燥した。凍結乾燥物を酢酸エチルに溶かし、溶液を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で数回洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。得られた残留物を真空乾燥して、標題化合物を得た(31mg、理論値の17%、純度100%)。
【0150】
LC-MS(方法7):R=1.08分;MS(ESIpos):m/z=594[M+H]
【0151】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 13.94 (br s, 1H), 8.65 (t, 1H), 8.59 (d, 1H), 7.75 (dd, 1H), 7.58 (d, 1H), 7.54 (d, 1H), 7.48 (d, 1H), 7.44 (dd, 1H), 7.32 (t, 1H), 7.18 (d, 1H), 4.25-4.15 (m, 2H), 4.06-3.99 (m, 1H), 3.74 (s, 3H), 3.66-3.55 (m, 2H), 3.53-3.44 (m, 1H), 3.40-3.30 (1H, 不明瞭), 3.17 (t, 2H), 2.44 (t, 2H), 2.34 (s, 3H), 2.18-2.10 (m, 2H).
参考例9
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-5-イル)エチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-[2-エチル-3-(2-オキソピロリジン-1-イル)ベンゼン-1-スルホニル]-S-アラニナート塩酸塩
【化35】
3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-[2-エチル-3-(2-オキソピロリジン-1-イル)ベンゼン-1-スルホニル]-S-アラニン(60mg、120μmol、中間体15)のTHF(2.3mL)中溶液にHBTU(82mg、216μmol、CAS-RN94790-37-1)、DIPEA(63μL、360μmol)及び2-(1-メチル-1H-イミダゾール-5-イル)エタノール(19mg、150μmol、CAS-RN802027-25-4)を加え、混合物を室温で終夜攪拌した。次に、混合物を水浴温度30℃でのロータリーエバポレータによって濃縮し、残留物をアセトニトリル/TFA/水に取り、分取HPLC(方法2)によって精製した。凍結乾燥後、TFA含有バッチを得た。相当する塩酸塩を生成させるため、TFA含有バッチをアセトニトリル/水に溶かし、その溶液を重力により塩素イオン交換器(1.0gアンバーライトIRA405 Cl樹脂、脱イオン水でコンディショニング)に10回通した。樹脂を脱イオン水/アセトンでリンスし、その溶液を凍結乾燥して、標題化合物を得た(64mg、理論値の81%、純度98%)。
【0152】
LC-MS(方法7):R=1.11分;MS(ESIpos):m/z=608[M+H]
【0153】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 14.26 (br s, 1H), 8.99 (s, 1H), 8.84 (t, 1H), 8.70 (d, 1H), 7.81 (dd, 1H), 7.60 (d, 1H), 7.45 (dd, 1H), 7.42 (s, 1H), 7.34 (t, 1H), 7.18 (d, 1H), 4.15 (t, 2H), 4.08-4.03 (m, 1H), 3.74 (s, 3H), 3.69-3.57 (m, 2H), 3.57-3.50 (m, 1H), 3.47-3.40 (m, 1H), 2.93-2.78 (m, 4H), 2.43 (t, 2H), 2.17-2.10 (m, 2H), 1.08 (t, 3H).
参考例10
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-{[2-エチル-3-(2-オキソピロリジン-1-イル)フェニル]スルホニル}-S-アラニナート塩酸塩
【化36】
3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-[2-エチル-3-(2-オキソピロリジン-1-イル)ベンゼン-1-スルホニル]-S-アラニン(350mg、0.70mmol、中間体15)のTHF(13.6mL)中溶液にHBTU(478mg、1.26mmol、CAS-RN94790-37-1)、DIPEA(0.37mL、2.10mmol)及び2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エタノール(116mg、0.88mmol、純度95%、CAS-RN18994-70-2)を加え、混合物を室温で4時間攪拌した。次に、混合物を水浴温度30℃でのロータリーエバポレータによって濃縮し、残留物をアセトニトリル/TFA/水に取り、分取HPLC(方法2)によって精製した。凍結乾燥後、TFA含有バッチを得た。相当する塩酸塩を生成させるため、TFA含有バッチをアセトニトリル/水に溶かし、その溶液を重力により塩素イオン交換器(4.67gアンバーライトIRA405 Cl樹脂、脱イオン水でコンディショニング)に10回通した。樹脂を脱イオン水/アセトンでリンスし、その溶液を凍結乾燥して、標題化合物を得た(321mg、理論値の90%、純度99%)。
【0154】
LC-MS(方法8):R=0.63分;MS(ESIpos):m/z=608[M+H]
【0155】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 14.43 (br s, 1H), 9.00-8.93 (m, 1H), 8.70 (d, 1H), 7.80 (dd, 1H), 7.70-7.66 (m, 1H), 7.58 (d, 1H), 7.53 (d, 1H), 7.44 (d, 1H), 7.32 (t, 1H), 7.18 (d, 1H), 4.28-4.20 (m, 2H), 4.08-4.03 (m, 1H), 3.76 (s, 3H), 3.70-3.57 (m, 2H), 3.54-3.47 (m, 1H), 3.46-3.39 (m, 1H), 3.23 (t, 2H), 2.91-2.83 (m, 1H), 2.83-2.74 (m, 1H), 2.42 (t, 2H), 2.17-2.09 (m, 2H), 1.06 (t, 3H).
参考例11
3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロピル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-[2-エチル-3-(2-オキソピロリジン-1-イル)ベンゼン-1-スルホニル]-S-アラニナート塩酸塩
【化37】
3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-[2-エチル-3-(2-オキソピロリジン-1-イル)ベンゼン-1-スルホニル]-S-アラニン(50.0mg、100μmol、中間体15)のTHF(1.9mL)中溶液に、HBTU(68mg、180μmol、CAS-RN94790-37-1)、DIPEA(52μL、300μmol)及び3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-1-オール(18mg、純度95%、125μmol、CAS-RN136609-58-0)を加え、混合物を室温で2時間攪拌した。次に、混合物を水浴温度30℃でのロータリーエバポレータによって濃縮し、残留物をアセトニトリル/TFA/水に取り、分取HPLC(方法2)によって精製した。凍結乾燥後、TFA含有バッチを得た。相当する塩酸塩を生成させるため、TFA含有バッチをアセトニトリル/水に溶かし、その溶液を重力により塩素イオン交換器(400mgアンバーライトIRA405 Cl樹脂、脱イオン水でコンディショニング)に10回通した。樹脂を脱イオン水/アセトンでリンスし、その溶液を凍結乾燥して、標題化合物を得た(33mg、理論値の49%、純度97%)。
【0156】
LC-MS(方法7):R=1.16分;MS(ESIpos):m/z=622[M+H]
【0157】
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 14.25 (br s, 1H), 8.92 (t, 1H), 8.74 (d, 1H), 7.84 (dd, 1H), 7.65 (d, 1H), 7.58 (d, 1H), 7.54 (d, 1H), 7.45 (dd, 1H), 7.35 (t, 1H), 7.16 (d, 1H), 4.10-4.02 (m, 1H), 3.98-3.92 (m, 2H), 3.72 (s, 3H), 3.69-3.51 (m, 3H), 3.50-3.40 (m, 1H), 2.95-2.79 (m, 4H), 2.42 (t, 2H), 2.17-2.09 (m, 2H), 1.92-1.83 (m, 2H), 1.08 (t, 3H).
参考例12
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]-2-メチルベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート塩酸塩
【化38】
3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]-2-メチルベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニン(60mg、純度94%、0.11mmol、中間体16)のTHF(2.2mL)中溶液にHBTU(77mg、0.20mmol、CAS-RN94790-37-1)、DIPEA(0.10mL、0.56mmol)及び2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エタノール(18mg、0.14mmol、CAS-RN18994-70-2)を加え、混合物を室温で終夜攪拌した。次に、混合物を水浴温度30℃でのロータリーエバポレータによって濃縮し、残留物をアセトニトリル/TFA/水に取り、分取HPLC(方法2)によって精製した。凍結乾燥後、TFA含有バッチを得た。相当する塩酸塩を生成させるため、TFA含有バッチをアセトニトリル/水に溶かし、その溶液を重力により塩素イオン交換器(400mgアンバーライトIRA405 Cl樹脂、脱イオン水でコンディショニング)に10回通した。樹脂を脱イオン水でリンスし、その溶液を凍結乾燥して、標題化合物を得た(33mg、理論値の45%、純度98%)。
【0158】
LC-MS(方法7):R=0.96分;MS(ESIpos):m/z=610[M-HCl+H]
【0159】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 14.27 (br s, 1H), 8.82 (t, 1H), 8.64 (d, 1H), 7.76 (d, 1H), 7.59 (d, 2H), 7.57 (d, 1H), 7.52 (d, 1H), 7.42 (d, 1H), 7.32 (t, 1H), 7.17 (d, 1H), 5.73 (br s, 1H), 4.32 (t, 1H), 4.29-4.17 (m, 2H), 4.06-4.01 (m, 1H), 3.76 (s, 3H), 3.57-3.44 (m, 3H), 3.41-3.35 (m, 1H), 3.20 (t, 2H), 2.47-2.38 (m, 1H), 2.34 (s, 3H), 2.02-1.91 (m, 1H).
参考例13
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{3-[(3R)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]-2-メチルベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート塩酸塩
【化39】
3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{3-[(3R)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]-2-メチルベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニン(60mg、純度89%、0.11mmol、中間体17)のTHF(2.1mL)中溶液にHBTU(73mg、0.19mmol、CAS-RN94790-37-1)、DIPEA(0.09mL、0.53mmol)及び2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エタノール(17mg、0.13mmol、CAS-RN18994-70-2)を加え、混合物を室温で終夜攪拌した。次に、混合物を水浴温度30℃でのロータリーエバポレータによって濃縮し、残留物をアセトニトリル/TFA/水に取り、分取HPLC(方法2)によって精製した。凍結乾燥後、TFA含有バッチを得た。相当する塩酸塩を生成させるため、TFA含有バッチをアセトニトリル/水に溶かし、その溶液を重力により塩素イオン交換器(600mgアンバーライトIRA405 Cl樹脂、脱イオン水でコンディショニング)に10回通した。樹脂を脱イオン水でリンスし、その溶液を凍結乾燥して、標題化合物を得た(45mg、理論値の62%、純度95%)。
【0160】
LC-MS(方法7):R=0.96分;MS(ESIpos):m/z=610[M-HCl+H]
【0161】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 14.35 (br s, 1H), 8.87 (t, 1H), 8.66 (d, 1H), 7.77 (d, 1H), 7.62 (d, 1H), 7.58 (d, 1H), 7.53 (d, 1H), 7.44 (d, 1H), 7.33 (t, 1H), 7.17 (d, 1H), 5.71 (br s, 1H), 4.32 (t, 1H), 4.26-4.17 (m, 2H), 4.09-4.03 (m, 1H), 3.76 (s, 3H), 3.58-3.46 (m, 3H), 3.43-3.38 (m, 1H), 3.21 (t, 2H), 2.48-2.40 (m, 1H), 2.33 (s, 3H), 2.02-1.93 (m, 1H).
参考例14
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3R)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート塩酸塩
【化40】
3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3R)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニン(120mg、0.23mmol、中間体20)のTHF(4.5mL)中溶液に、HBTU(159mg、0.42mmol、CAS-RN94790-37-1)、DIPEA(0.12mL、0.70mmol)及び2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エタノール(37mg、0.29mmol、CAS-RN18994-70-2)を加え、混合物を室温で終夜攪拌した。次に、混合物を水浴温度30℃でのロータリーエバポレータによって濃縮し、残留物をに取りアセトニトリル/TFA/水、によって精製した分取HPLC(方法2)。凍結乾燥後、TFA含有生成物を得た。塩酸塩を生成するため、TFA含有生成物をアセトニトリル/水に溶かし、溶液を塩素イオン交換器(1.5gアンバーライトIRA405 Cl樹脂、脱イオン水でコンディショニング)で10回溶離した。樹脂を脱イオン水でリンスし、その溶液を凍結乾燥して、標題化合物を得た(95mg、理論値の61%、純度99%)。
【0162】
LC-MS(方法7):R=1.02分;MS(ESIpos):m/z=624[M+H]
【0163】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 14.20 (s, 1H), 8.81 (br s, 1H), 8.66 (d, 1H), 7.81 (d, 1H), 7.60 (d, 1H), 7.58 (d, 1H), 7.54 (d, 1H), 7.43 (d, 1H), 7.34 (t, 1H), 7.18 (d, 1H), 4.30 (t, 1H), 4.27-4.21 (m, 2H), 4.06 (dd, 1H), 3.76 (s, 3H), 3.63-3.56 (m, 1H), 3.55-3.47 (m, 2H), 3.46-3.39 (m, 1H), 3.22 (t, 2H), 2.92-2.84 (m, 1H), 2.83-2.75 (m, 1H), 2.48-2.40 (m, 1H), 2.00-1.91 (m, 1H), 1.06 (m, 3H)。
【0164】
参考例15
3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロピル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート塩酸塩
【化41】
3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニン(60mg、0.12mmol、中間体19)のTHF(2.3mL)中溶液にHBTU(79mg、0.21mmol、CAS-RN94790-37-1)、DIPEA(0.08mL、0.47mmol)及び3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-1-オール(24.5mg、0.17mmol、CAS-RN136609-58-0)を加え、混合物を室温で2時間攪拌した。次に、混合物をアセトニトリル/TFA/水に取り、分取HPLC(方法2)によって精製した。凍結乾燥後、TFA含有バッチを得た。相当する塩酸塩を生成させるため、TFA含有バッチをに溶かしアセトニトリル/水、その溶液を重力により塩素イオン交換器(880mgアンバーライトIRA405 Cl樹脂、脱イオン水でコンディショニング)に10回通した。樹脂を脱イオン水でリンスし、その溶液を凍結乾燥して、標題化合物を得た(19mg、理論値の22%、純度90%)
LC-MS(方法9):R=0.83分;MS(ESIpos):m/z=638[M-HCl+H]
【0165】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 14.06 (br s, 1H), 8.80 (t, 1H), 8.72 (d, 1H), 7.85 (dd, 1H), 7.60-7.57 (m, 2H), 7.54 (d, 1H), 7.43 (dd, 1H), 7.37 (t, 1H), 7.16 (d, 1H), 5.75 (br s, 1H), 4.31 (t, 1H), 4.12-4.02 (m, 1H), 3.97 (t, 2H), 3.72 (s, 3H), 3.65-3.53 (m, 2H), 3.51-3.42 (m, 2H), 2.96-2.84 (m, 4H), 2.47-2.40 (m, 1H), 1.99-1.80 (m, 3H), 1.07 (t, 3H).
参考例16
3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロピル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3R)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート塩酸塩
【化42】
3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3R)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニン(60mg、0.12mmol、中間体20)のTHF(2.3mL)中溶液にHBTU(79mg、0.21mmol、CAS-RN94790-37-1)、DIPEA(0.08mL、0.47mmol)及び3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-1-オール(24.5mg、0.17mmol、CAS-RN136609-58-0)を加え、混合物を室温で2時間攪拌した。混合物をアセトニトリル/TFA/水に取り、分取HPLC(方法2)によって精製した。凍結乾燥後、TFA含有バッチを得た。相当する塩酸塩を生成させるため、TFA含有バッチをアセトニトリル/水に溶かし、その溶液をに重力により塩素イオン交換器(500mgアンバーライトIRA405 Cl樹脂、脱イオン水でコンディショニング)10回通した。樹脂を脱イオン水でリンスし、その溶液を凍結乾燥して、標題化合物を得た(43mg、理論値の49%、純度90%)。
【0166】
LC-MS(方法9):R=0.83分;MS(ESIpos):m/z=638[M-HCl+H]
【0167】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 14.10 (br s, 1H), 8.84 (br s, 1H), 8.72 (d, 1H), 7.86 (dd, 1H), 7.62-7.57 (m, 2H), 7.55 (d, 1H), 7.44 (d, 1H), 7.37 (t, 1H), 7.16 (d, 1H), 5.75 (br s, 1H), 4.31 (t, 1H), 4.11-4.02 (m, 1H), 4.00-3.91 (m, 2H), 3.72 (s, 3H), 3.63-3.40 (m, 4H), 2.96-2.77 (m, 4H), 2.47-2.40 (m, 1H), 1.99-1.82 (m, 3H), 1.07 (t, 3H).
作業例
実施例1
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート
【化43】
3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニン(2.0g、3.88mmol、中間体19)のDCM(20mL)及びDMF(4mL)中溶液に、2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エタノール(978mg、7.75mmol、CAS-RN18994-70-2)を加え、溶液を冷却して0℃とした。次に、Oxyma(661mg、4.65mmol、CAS-RN3849-21-6)を少量ずつ加え、次にEDCI(892mg、4.65mmol、CAS-RN25952-53-8)を加え、混合物を0℃で1.5時間攪拌した。混合物を氷冷水(20mL)で洗浄し、相分離後、有機相を氷冷水で3回洗浄した。3回目の洗浄時に、DCM(10mL)及び10%塩化ナトリウム水溶液(10mL)を加えて相分離を改善した。次に、有機相を硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。真空乾燥後、残留物を、塩基性シリカゲル相(Isolera、KP-NH28g、DCM/アセトン勾配9:1→1:9)を用いるフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。合わせた生成物分画を濃縮し、残留物を真空乾燥して、標題化合物を得た(1.51g、理論値の62%、純度100%)。
【0168】
LC-MS(方法7):R=1.02分;MS(ESIpos):m/z=624[M+H]
【0169】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 9.09 (t, 1H), 8.65 (d, 1H), 7.82 (dd, 1H), 7.57 (d, 1H), 7.44 (dd, 1H), 7.38 (t, 1H), 7.17 (d, 1H), 7.03 (d, 1H), 6.74 (d, 1H), 5.75 (d, 1H), 4.34-4.01 (m, 4H), 3.66-3.56 (m, 1H), 3.51 (s, 3H), 3.50-3.39 (m, 3H), 2.94-2.70 (m, 4H), 2.48-2.38 (m, 1H), 2.01-1.87 (m, 1H), 1.06 (t, 3H).
IR:図1参照。
【0170】
実施例2
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート塩酸塩
【化44】
別途合成A
3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニン(190mg、0.37mmol、中間体19)のTHF(7.2mL)中溶液に、HBTU(251mg、0.66mmol、CAS-RN94790-37-1)、DIPEA(0.19mL、1.11mmol)及び2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エタノール(93mg、0.74mmol、CAS-RN18994-70-2)を加え、混合物を室温で2時間攪拌した。次に、混合物を水浴温度30℃でのロータリーエバポレータによって濃縮し、残留物をアセトニトリル/TFA/水に取り、分取HPLC(方法2)によって精製した。凍結乾燥後、TFA含有バッチを得た。相当する塩酸塩を生成させるため、TFA含有バッチをアセトニトリル/水に溶かし、その溶液を重力により塩素イオン交換器(2.66gアンバーライトIRA405 Cl樹脂、脱イオン水でコンディショニング)に10回通した。樹脂を脱イオン水でリンスし、その溶液を凍結乾燥して、標題化合物を得た(122mg、理論値の49%、純度98%)。
【0171】
LC-MS(方法7):R=1.01分;MS(ESIpos):m/z=624[M+H]
【0172】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 14.30 (br s, 1H), 8.88 (t, 1H), 8.69 (d, 1H), 7.81 (d, 1H), 7.63 (d, 1H), 7.57 (d, 1H), 7.53 (d, 1H), 7.43 (d, 1H), 7.33 (t, 1H), 7.18 (d, 1H), 5.74 (br s, 1H), 4.30 (t, 1H), 4.29-4.19 (m, 2H), 4.05 (dd, 1H), 3.77 (s, 3H), 3.63-3.56 (m, 1H), 3.54-3.39 (m, 3H), 3.22 (t, 2H), 2.90-2.76 (m, 2H), 2.48-2.40 (m, 1H), 2.00-1.87 (m, 1H), 1.05 (t, 3H).
IC:4.6重量%クロライド、<1重量%TFA。
【0173】
別途合成B
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート(2.31g、3.70mmol、実施例1)のDCM(3.5mL)中溶液に、高攪拌及び氷浴での冷却下で、1M塩化水素/ジエチルエーテル溶液(4.07mL、4.07mmol)を滴下し、次に攪拌性を向上させるために追加のジエチルエーテル(70mL)を加えた。冷却下で10分間及び室温で15分間にわたり攪拌した後、沈澱を濾去し、ジエチルエーテル(100mL)で洗浄した。次に、短時間の超音波処理で支援しながら、沈澱を再度氷冷水(20mL)に溶かし、その溶液を凍結乾燥した。痕跡量のジエチルエーテルを除去するために、凍結乾燥を繰り返して、標題化合物を得た(2.06g、理論値の84%、純度99%)。
【0174】
LC-MS(方法7):R=0.99分;MS(ESIpos):m/z=624[M+H]
【0175】
キラルHPLC(方法11):R=9.10分。
【0176】
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 14.42 (br s, 1H), 8.98 (t, 1H), 8.75 (d, 1H), 7.80 (dd, 1H), 7.68 (d, 1H), 7.58 (d, 1H), 7.54 (d, 1H), 7.43 (d, 1H), 7.33 (t, 1H), 7.19 (d, 1H), 5.80 (br s, 1H), 4.31 (t, 1H), 4.29-4.19 (m, 2H), 4.08-4.01 (m, 1H), 3.77 (s, 3H), 3.63-3.56 (m, 1H), 3.54-3.39 (m, 3H), 3.23 (t, 2H), 2.90- 2.73 (m, 2H), 2.48-2.40 (m, 1H), 2.00-1.87 (m, 1H), 1.05 (t, 3H).
IC:4.7重量%クロライド。
【0177】
別途合成C
酢酸エチル(2.0mL)に60℃で、攪拌しながら、2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート(30mg、48.1mmol、実施例1)を加えた。溶液を冷却して室温とし、1M塩酸(50.2mg、49.22mmol)を加え、キャップを施したガラスバイアル中、その混合物を室温で2日間攪拌した。次に、キャップをパラフィルムテープに代え、針でテープに2~5個の穴を開け、混合物を室温でさらに10日間ゆっくり攪拌して、溶媒をゆっくり蒸発させた。標題化合物を固体として得た。
【0178】
LC-MS(方法7):R=1.03分;MS(ESIpos):m/z=624[M+H]
【0179】
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 14.40 (br s, 1H), 8.97 (t, 1H), 8.74 (d, 1H), 7.80 (d, 1H), 7.67 (d, 1H), 7.58 (d, 1H), 7.54 (d, 1H), 7.43 (d, 1H), 7.33 (t, 1H), 7.19 (d, 1H), 5.75 (br s, 1H), 4.31 (t, 1H), 4.28-4.19 (m, 2H), 4.08-4.00 (m, 1H), 3.77 (s, 3H), 3.63-3.56 (m, 1H), 3.54-3.39 (m, 3H), 3.23 (t, 2H), 2.90-2.74 (m, 2H), 2.48-2.41 (m, 1H), 1.98-1.92 (m, 1H), 1.05 (t, 3H).
XRPD:非晶質;IR:図2参照。
【0180】
実施例3
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-({2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]フェニル}スルホニル)-S-アラニナート硫酸塩
【化45】
酢酸エチル(2.0mL)に60℃で、攪拌しながら、2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート(30mg、48.1mmol、実施例1)を加えた。溶液を冷却して室温とし、0.5M硫酸(100.6mg、47.90mmol)を加え、その混合物を室温で2日間攪拌した。次に、キャップをパラフィルムテープに代え、針でテープに2~5個の穴を開け、混合物を室温でさらに10日間ゆっくり攪拌して、溶媒をゆっくり蒸発させた。標題化合物を固体として得た。
【0181】
LC-MS(方法7):R=1.03分;MS(ESIpos):m/z=624[M+H]
【0182】
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 13.94 (br s, 1H), 8.70 (t, 1H), 8.64 (d, 1H), 7.80 (d, 1H), 7.62-7.56 (m, 1H), 7.55 (d, 1H), 7.52 (d, 1H), 7.43 (d, 1H), 7.34 (t, 1H), 7.21-7.17 (m, 1H), 4.36-4.27 (m, 1H), 4.27-4.17 (m, 2H), 4.11-3.97 (m, 1H), 3.76 (s, 3H), 3.64-3.55 (m, 1H), 3.55-3.34 (m, 3H), 3.21 (t, 2H), 2.91-2.75 (m, 2H), 2.49-2.41 (m, 1H), 2.01-1.92 (m, 1H), 1.06 (t, 3H).
XRPD:非晶質;IR:図3参照。
【0183】
実施例4
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-({2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]フェニル}スルホニル)-S-アラニナートメタンスルホン酸塩
【化46】
酢酸エチル(2.0mL)に60℃で、攪拌しながら、2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート(30mg、48.1mmol、実施例1)を加えた。溶液を冷却して室温とし、メタンスルホン酸(4.9mg、51.0mmol)を加え、キャップを施したガラスバイアル中、その混合物を室温で2日間攪拌した。次に、キャップをパラフィルムテープに代え、針でテープに2~5個の穴を開け、混合物を室温でさらに10日間ゆっくり攪拌して、溶媒をゆっくり蒸発させた。標題化合物を固体として得た。
【0184】
LC-MS(方法7):R=1.02分;MS(ESIpos):m/z=624[M+H]
【0185】
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 13.97 (br s, 1H), 8.72 (t, 1H), 8.65 (d, 1H), 7.80 (d, 1H), 7.59 (s, 1H), 7.55 (d, 1H), 7.53 (d, 1H), 7.43 (d, 1H), 7.34 (t, 1H), 7.19 (d, 1H), 5.75 (br s, 1H), 4.31 (t, 1H), 4.27-4.18 (m, 2H), 4.09-3.98 (m, 1H), 3.76 (s, 3H), 3.63-3.57 (m, 1H), 3.55-3.36 (m, 3H), 3.21 (br t, 2H), 2.91-2.74 (m, 2H), 2.48-2.41 (m, 1H), 2.34 (s, 3H), 1.98-1.88 (m, 1H), 1.06 (t, 3H).
XRPD:非晶質;IR:図4参照。
【0186】
実施例5
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-({2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]フェニル}スルホニル)-S-アラニナート4-メチルベンゼンスルホン酸塩
【化47】
酢酸エチル(2.0mL)に60℃で、攪拌しながら、2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート(30mg、48.1mmol、実施例1)を加えた。溶液を冷却して室温とし、4-トルエンスルホン酸(9.6mg、55.7mmol)を加え、キャップを施したガラスバイアル中、その混合物を室温で2日間攪拌した。次に、キャップをパラフィルムテープに代え、針でテープに2~5個の穴を開け、混合物を室温でさらに10日間ゆっくり攪拌して、溶媒をゆっくり蒸発させた。標題化合物を固体として得た。
【0187】
LC-MS(方法7):R=1.02分;MS(ESIpos):m/z=624[M+H]及びR=0.57分、MS(ESIneg):m/z=171[M-H]
【0188】
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 13.92 (br s, 1H), 8.69 (br t, 1H), 8.64 (d, 1H), 7.80 (d, 1H), 7.60-7.56 (m, 1H), 7.55 (d, 1H), 7.52 (d, 1H), 7.48 (d, 2H), 7.43 (d, 1H), 7.36-7.31 (m, 1H), 7.21-7.16 (m, 1H), 7.11 (d, 2H), 4.35-4.28 (m, 1H), 4.27-4.17 (m, 2H), 4.07-4.00 (m, 1H), 3.76 (s, 3H), 3.63-3.56 (m, 1H), 3.54-3.36 (m, 3H), 3.20 (br t, 2H), 2.91-2.75 (m, 2H), 2.48-2.41 (m, 1H), 2.29 (s, 3H), 2.02-1.92 (m, 1H), 1.09-1.03 (m, 3H).
XRPD:非晶質;IR:図5参照。
【0189】
実施例6
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-({2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]フェニル}スルホニル)-S-アラニナートマレイン酸塩
【化48】
酢酸エチル(2.0mL)に60℃で、攪拌しながら、2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート(30mg、48.1mmol、実施例1)を加えた。溶液を冷却して室温とし、マレイン酸(5.8mg、50.0mmol)を加え、キャップを施したガラスバイアル中、その混合物を室温で2日間攪拌した。次に、キャップをパラフィルムテープに代え、針でテープに2~5個の穴を開け、混合物を室温でさらに10日間ゆっくり攪拌して、溶媒をゆっくり蒸発させた。標題化合物を固体として得た。
【0190】
LC-MS(方法7):R=1.03分;MS(ESIpos):m/z=624[M+H]
【0191】
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 8.75 (br t, 1H), 8.65 (br d, 1H), 7.80 (d, 1H), 7.52 (d, 1H), 7.50 (d, 1H), 7.45-7.40 (m, 2H), 7.38-7.32 (m, 1H), 7.19 (d, 1H), 6.07 (s, 2H), 5.76 (br s, 1H), 4.31 (t, 1H), 4.23 (br t, 2H), 4.09-3.99 (m, 1H), 3.72 (s, 3H), 3.65-3.56 (m, 1H), 3.52-3.37 (m, 3H), 3.13 (br t, 2H), 2.91-2.75 (m, 2H), 2.48-2.41 (m, 1H), 1.97-1.90 (m, 1H), 1.06 (t, 3H).
XRPD:非晶質;IR:図6参照。
【0192】
実施例7
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-({2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]フェニル}スルホニル)-S-アラニナートリン酸塩
【化49】
酢酸エチル(2.0mL)に60℃で、攪拌しながら、2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート(30mg、48.1mmol、実施例1)を加えた。溶液を冷却して室温とし、1Mリン酸(48.7mg、46.38mmol)を加え、キャップを施したガラスバイアル中、その混合物を室温で2日間攪拌した。次に、キャップをパラフィルムテープに代え、針でテープに2~5個の穴を開け、混合物を室温でさらに10日間ゆっくり攪拌して、溶媒をゆっくり蒸発させた。標題化合物を固体として得た。
【0193】
LC-MS(方法7):R=1.03分;MS(ESIpos):m/z=624[M+H]
【0194】
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 9.10 (t, 1H), 8.79-8.58 (br m, 1H), 7.82 (d, 1H), 7.57 (d, 1H), 7.47-7.40 (m, 1H), 7.40-7.35 (m, 1H), 7.17 (d, 1H), 7.08 (s, 1H), 6.82 (s, 1H), 4.30 (t, 1H), 4.25-4.11 (m, 2H), 4.09-4.04 (m, 1H), 3.65-3.57 (m, 1H), 3.54 (s, 3H), 3.51-3.37 (m, 3H), 2.93-2.77 (m, 4H), 2.47-2.39 (m, 1H), 1.97-1.90 (m, 1H), 1.06 (t, 3H).
XRPD:非晶質;IR:図7参照。
【0195】
実施例8
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-({2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]フェニル}スルホニル)-S-アラニナート(2R,3R)-酒石酸塩
【化50】
酢酸エチル(2.0mL)に60℃で、攪拌しながら、2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート(30mg、48.1mmol、実施例1)を加えた。溶液を冷却して室温とし、(2R,3R)-酒石酸(7.4mg、49.3mmol)を加え、キャップを施したガラスバイアル中、その混合物を室温で2日間攪拌した。次に、キャップをパラフィルムテープに代え、針でテープに2~5個の穴を開け、混合物を室温でさらに10日間ゆっくり攪拌して、溶媒をゆっくり蒸発させた。標題化合物を固体として得た。
【0196】
LC-MS(方法7):R=1.03分;MS(ESIpos):m/z=624[M+H]
【0197】
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 9.09 (br t, 1H), 8.67 (br s, 1H), 7.82 (d, 1H), 7.57 (d, 1H), 7.44 (d, 1H), 7.38 (t, 1H), 7.17 (d, 1H), 7.06 (s, 1H), 6.78 (s, 1H), 4.30 (t, 1H), 4.25-4.22 (m, 2H), 4.22-4.10 (m, 2H), 4.06-4.00 (m, 1H), 3.53 (s, 3H), 3.50-3.38 (m, 3H), 2.92-2.74 (m, 4H), 2.47-2.40 (m, 1H), 1.98-1.90 (m, 1H), 1.06 (t, 3H).
XRPD:非晶質;IR:図8参照。
【0198】
実施例9
2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-{[(5-クロロ-2-チエニル)カルボニル]アミノ}-N-({2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]フェニル}スルホニル)-S-アラニナート・クエン酸塩
【化51】
酢酸エチル(10.0mL)に60℃で、攪拌しながら、2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エチル3-[(5-クロロチオフェン-2-カルボニル)アミノ]-N-{2-エチル-3-[(3S)-3-ヒドロキシ-2-オキソピロリジン-1-イル]ベンゼン-1-スルホニル}-S-アラニナート(100mg、160.2mmol、実施例1)を加えた。溶液を冷却して室温とし、クエン酸(31mg、161.4mmol)の酢酸エチル(8mL)中溶液を室温で加えたところ、白色固体の沈澱が生じた。キャップを施したガラスバイアル中、その混合物を室温で5日間攪拌し、その後に沈澱を濾去し、風乾して、標題化合物を固体として得た。
【0199】
LC-MS(方法7):R=1.02分;MS(ESIpos):m/z=624[M+H]
【0200】
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ [ppm]: 9.01 (t, 1H), 8.66 (d, 1H), 7.82 (dd, 1H), 7.56 (d, 1H), 7.44 (dd, 1H), 7.37 (t, 1H), 7.17 (d, 1H), 7.15 (d, 1H), 6.91 (s, 1H), 4.30 (t, 1H), 4.25-4.11 (m, 2H), 4.07-4.01 (m, 1H), 3.65-3.58 (m, 1H), 3.57 (s, 3H), 3.50-3.40 (m, 3H), 2.92-2.79 (m, 4H), 2.70 (d, 2H), 2.61 (d, 2H), 2.48-2.40 (m, 1H), 1.98-1.90 (m, 1H), 1.06 (t, 3H).
XRPD:非晶質;IR:図9参照。
【0201】
表1:実施例1及び塩型(実施例2~9)の赤外線分光法
【表2】
B)生理的効力の評価
本発明による化合物の血栓塞栓性障害の治療への好適性を、以下のアッセイシステムで示すことができる。
【0202】
a)試験の説明(イン・ビトロ)
a.1)緩衝液中の第Xa因子阻害の測定
上記で挙げた物質の第Xa因子阻害を確認するため、第Xa因子基質の変換を用いてヒト第Xa因子の酵素活性を求める生物学的試験システムを構築する。ここで、第Xa因子は、ペプチド性基質から、蛍光的に測定されるアミノメチルクマリンを開裂させる。測定はマイクロタイタープレートで実施する。
【0203】
試験物質をジメチルスルホキシドに各種濃度で溶かし、ヒト第Xa因子(1.3mmol/LのTris緩衝液[C,C,C-トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]、100mmol/Lの塩化ナトリウム、5mmol/Lの塩化カルシウム、0.1%BSA[ウシ血清アルブミン]、pH7.4に溶かしたもの0.06nmol/L)とともに22℃で15分間インキュベートする。基質(5μmol/L Boc-Ile-Glu-Gly-Arg-AMC、Bachemから)を加える。30分間インキュベートした後、サンプルを360nmの波長で励起し、発光を460nmで測定する。試験物質を含む試験バッチの測定された発光を、試験物質を含まない対照バッチ(試験物質のジメチルスルホキシド中溶液ではなくジメチルスルホキシドのみ)の発光と比較し、濃度/活性関係から、IC50値を計算する。この試験からの代表的な活性データを下記の表2a及び2bに列記している。
【0204】
a.2)緩衝液中のトロンビン阻害の測定
上記で挙げた物質のトロンビン阻害を確認するため、トロンビン基質の変換を用いてヒトトロンビンの酵素活性を求める生物学的試験システムを構築する。ここで、トロンビンは、ペプチド基質から、蛍光的に測定されるアミノメチルクマリンを開裂させる。測定はマイクロタイタープレートで実施する。
【0205】
試験物質をジメチルスルホキシドに各種濃度で溶かし、ヒトトロンビン(50mmol/LのTris緩衝液[C,C,C-トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]、100mmol/Lの塩化ナトリウム、0.1%BSA[ウシ血清アルブミン]、pH7.4に溶かしたもの0.06nmol/L)とともに22℃で15分間インキュベートする。基質(5μmol/L Boc-Asp(OBzl)-Pro-Arg-AMC、Bachemから)を加える。30分間インキュベートした後、サンプルを360nmの波長で励起し、発光を460nmで測定する。試験物質を含む試験バッチの測定された発光を、試験物質を含まない対照バッチ(試験物質のジメチルスルホキシド中溶液ではなくジメチルスルホキシドのみ)の発光と比較し、濃度/活性関係から、IC50値を計算する。この試験からの代表的な活性データを下記の表2a及び2bに列記している。
【0206】
a.3)選択性の測定
トロンビン及び第Xa因子阻害に関する物質の選択性を示すため、第XIa因子、トリプシン、プラスミン、組織プラスミノゲン活性化因子(TPA)及び血漿カリクレインなどの他のヒトセリンプロテアーゼの阻害について、試験物質を調べる。測定は、マイクロタイタープレートで行う。第XIa因子(0.15nmol/L、Kordiaから)、トリプシン(42mU/mL、Sigmaから)、プラスミン(0.1μg/mL、Kordiaから)、TPA(1nmol/L、Kordiaから)及び血漿カリクレイン(0.2nmol/L、Loxoから)の酵素活性を測定するため、これらの酵素を溶解し(50mmol/L Tris緩衝液[C,C,C-トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]、100mmol/L塩化ナトリウム、0.1%BSA[ウシ血清アルブミン]、5mmol/L塩化カルシウム、pH7.4)、ジメチルスルホキシド中の各種濃度の試験物質と、そして、試験物質を含まないジメチルスルホキシドと、15分間インキュベートする。次いで、適当な基質(第XIa因子についてはBachemからの5μmol/LのBoc-Glu(OBzl)-Ala-Arg-AMC、トリプシンについてはBachemからの5μmol/LのBoc-Ile-Glu-Gly-Arg-AMC、プラスミンについてはBachemからの50μmol/LのMeOSuc-Ala-Phe-Lys-AMC、TPAについてはPentapharmからの5μmol/LのCH3SO2-D-Phe-Gly-Arg-AMC、及び血漿カリクレインについてはBachemからの5μmol/LのH-Pro-Phe-Arg-AMC)の添加により酵素反応を開始する。22℃で30分間のインキュベーション時間の後、蛍光を測定する(励起:360nm、発光:460nm)。試験物質を含む試験バッチの測定された発光を、試験物質を含まない対照バッチ(試験物質ジメチルスルホキシド中溶液ではなく、ジメチルスルホキシドのみ)と比較し、濃度/活性関係から、IC50値を計算する。この試験からの代表的な活性データを、下記の表2a及び2bに列記している。
【0207】
表2a:
【表3】
表2b:
【表4】
a.4)血漿サンプル中の阻害薬候補剤の第Xa因子阻害活性の測定
血漿サンプル中の第Xa因子の阻害を測定するため、血漿中に存在する第X因子を、ガラガラヘビ毒素からのプロテアーゼによって活性化する。次に、第Xa因子活性又は阻害薬候補剤によるそれの阻害を、発色性基質を加えることで測定する。
【0208】
各種濃度の被験物質をジメチルスルホキシドに溶かし、レフルダン水溶液(10μg/mL)と混和する。平底を有する透明96ウェルプレートで、クエン酸塩血漿(Octapharma)30μLを物質希釈液10μLと混和する。次に、ガラガラヘビ毒素(ラッセルクサリヘビ毒(RVV);RVV試薬:Pentapharm 121-06、最終濃度0.6mU)の塩化カルシウム緩衝水溶液中溶液(最終塩化カルシウム濃度0.05M)20μL又はRVV試薬を含まない塩化カルシウム水溶液(最終塩化カルシウム濃度0.05M)20μL(非刺激サンプルの基準として)を加える。ChromozymX基質(最終濃度1.6mmol/L、Bachem L-1565、水で希釈)20μLを加えた後、20分の期間にわたり、毎分405nmの測定フィルターを用いるSpectraFluor Readerでサンプルを測定する。最大シグナルの約70%に達した時に(約12分)、IC50値を求める。これらの試験からの代表的な活性データを、下記の表3a及び3bに列記している。
【0209】
a.5)血漿サンプル中の阻害薬候補剤のトロンビン阻害活性の測定
各種濃度の被験物質をジメチルスルホキシドに溶かし、水で希釈する。平底を有する透明96ウェルプレートで、物質希釈液20μLを、エカリン溶液(エカリン試薬、Sigma E-0504から、最終濃度20mU/バッチ)のCa緩衝液(200mM Hepes+560mM塩化ナトリウム+10mM塩化カルシウム+0.4%PEG)中溶液20μL又はCa緩衝液(非刺激対照として)20μLと混和する。さらに、蛍光性トロンビン基質(Bachem I-1120から、最終濃度50μmol/L)20μL及びクエン酸塩血漿(Octapharmaから)20μLを加え、十分に均質化する。20分の期間にわたり、毎分360nmの励起フィルター及び465nmの発光フィルターを用いてSpectraFluor Readerでプレートを測定する。最大シグナルの約70%に達した時に(約12分)、IC50値を求める。これらの試験からの代表的な活性データを、下記の表3a及び3bに列記している。
【0210】
表3a:
【表5】
表3b:
【表6】
a.6)トロンビン発生アッセイ(トロンボグラム)
トロンボグラム(Hemkerによるトロンビン発生アッセイ)に対する試験物質の効果を、ヒト血漿(Octaplas(登録商標)、Octapharmaから)においてイン・ビトロで求める。Hemkerによるトロンビン発生アッセイでは、基質I-1140(Z-Gly-Gly-Arg-AMC、Bachem)の蛍光性開裂生成物を測定することで、血漿凝固におけるトロンビンの活性を求める。Thrombinoscopeからの試薬(PPP試薬:30pM組換え組織因子、24μMリン脂質のHEPES中溶液)を用いて、凝固反応を開始する。反応は、多様な濃度の試験物質又は相当する溶媒の存在下に行う。さらに、Thrombinoscopeからのトロンビン較正物質を用い、それのアミド分解活性が、血漿サンプルにおけるトロンビン活性を計算するのに必要である。
【0211】
その試験は、製造者(Thrombinoscope BV)の説明書に従って行う。試験物質又は溶媒4μL、血漿76μL及びPPP試薬若しくはトロンビン較正物質20μLを、37℃で5分間インキュベートする。2.5mMトロンビン基質の20mM/Hepes、60mg/mL BSA、102mM塩化カルシウム20μLを加えた後、120分間の期間にわたり20秒ごとにトロンビン発生を測定する。測定は、390/460nmフィルター対及びディスペンサーを取り付けたThermo Electronからの蛍光光度計(Fluoroskan Ascent)を用いて行う。Thromboscopeソフトウェアを用い、トロンボグラムを計算し、グラフで提供する。計算するものは、次のパラメータ:遅延時間、ピークまでの時間、ピーク、ETP(内因性トロンビン生成能)及びスタート・テール(start tail)である。
【0212】
a.7)抗凝血活性の測定
試験物質の抗凝血活性を、イン・ビトロで、ヒト血漿、ウサギ血漿及びラット血漿で測定する。このためには、0.11モル濃度のクエン酸ナトリウム溶液をレシーバーとして使用して、クエン酸ナトリウム/血液の混合比1/9で、採血する。採血直後に、それを十分に混和し、約4000gで15分間遠心する。上清をピペットで取る。
【0213】
プロトロンビン時間(PT、同義語:トロンボプラスチン時間、クイック試験)を、各種濃度の試験物質又は相当する溶媒の存在下で、市販の試験キット(Boehringer MannheimからのNeoplastin(登録商標)又はInstrumentation LaboratoryからのHemoliance(登録商標) RecombiPlastin)を使用して測定する。試験化合物を、血漿と共に、37℃で、3分間インキュベートする。次いで、トロンボプラスチンの添加により凝固を開始させ、凝固が起こる時間を測定する。プロトロンビン時間を倍増させる試験物質の濃度を求める。
【0214】
トロンビン時間(TT)は、市販の試験キット(Rocheからのトロンビン試薬)を用いて、多様な濃度の試験物質又は相当する溶媒の存在下に求める。試験化合物を、37℃で3分間にわたり血漿とともにインキュベートする。次に、トロンビン試薬を加えることで凝固を開始し、凝固が起こる時間を測定する。トロンビン時間の倍増を生じる試験物質の濃度を求める。
【0215】
活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を、各種濃度の試験物質又は相当する溶媒の存在下で、市販の試験キット(PTT試薬、Rocheから)を使用して測定する。試験化合物を、血漿及びPTT試薬(セファリン、カオリン)と、37℃で3分間インキュベートする。次いで、25mM塩化カルシウムの添加により凝固を開始させ、凝固が起こる時間を測定する。APTTを倍増させる試験物質の濃度を求める。
【0216】
a.8)トロンボエラストグラフィー(トロンボエラストグラム)
トロンボエラストグラフィーは、Pentapharmからのトロンボエラストグラフィー装置ROTEM及びそれの付属品であるカップ及びピンを用いて行う。測定は、Sarstedtからのクエン酸ナトリウムモノベット(monovettes)に予め採取しておいた全血で行う。モノベット中の血液を、振盪器を用いて揺動状態に維持し、37℃で30分間前インキュベートする。
【0217】
2M塩化カルシウム水溶液原液を調製する。これを0.9%強度塩化ナトリウム水溶液で1:10希釈する。測定のため、最初に、この200mM塩化カルシウム溶液20μLをカップに入れる(塩化カルシウムの最終濃度12.5mM)。物質又は溶媒3.2μLを加える。全血300μLを加えることで測定を開始する。添加後、ピペットの先端を用いて、混合物を短時間でピペットに吸い取り、気泡が発生しないようにしながら再度吐出させる。その測定を2.5時間にわたって実施し、線維素溶解が始まったら停止する。評価のため、次のパラメータ:CT(凝固時間/[秒])、CFT(凝固塊形成時間/[秒])、MCF(最大凝固塊硬度/[mm])及びα角[°]を求める。測定点は3秒ごとに求め、y軸をMCF[mm]とし、x軸を時間[秒]としてグラフ表示する。
【0218】
a.9)進行中の凝固の阻害
試験化合物を10mMストック溶液としてDMSOに溶解し、0.018~600μMの連続希釈液をDMSOで調製する。
【0219】
白色384ウェルプレート(Lumitrac200、Greiner)に、Octaplas(Octapharm)20μL、蒸留水10μL、Pefabloc FG(DSM、24mM)10μlL及び蛍光性トロンビン基質(BACHEM、I-1560、300μM)10μLを加える。凝固を開始するために、組織因子(Instrumentation Laboratory, Recombiplastin2G、0.06%)とCaCl(40mM)の混合物10μLを添加する。基質の開裂によって生じる蛍光シグナルを、Tecan Infinite M1000 Proを使用して、37℃、励起波長340nm及び発光波長460nmで30秒ごとに20分間測定する。蛍光シグナルが倍増した後、DMSO中の化合物溶液1μLを各ウェルに添加し、測定を継続する。試験化合物が進行中の凝固を阻害できるか否かは、化合物添加後の蛍光シグナルの傾きによって決定される。
【0220】
a.10)組織因子によって開始される血小板凝集の阻害
全血を、健常な男性及び女性から静脈穿刺によって採取する。検体を、1/10体積の3.12%クエン酸三ナトリウムを含む採血管に入れ、血液を20℃で20分間にわたり140gで直ちに遠心分離して血小板豊富血漿(PRP)を得る。血小板数を調節するには、PRPを乏血小板血漿で300,000~350,000血小板/μLに希釈する。乏血小板血漿は、PRPを20℃で20分間にわたり1000gで遠心することによって得られる。Pefabloc FG(Pentapharm, Basel, Swotzerland)を脱塩水に溶解し(2mg/mL;最終濃度)、フィブリン重合を防ぐために添加する。CaCl(7mmol/L、最終濃度)の添加後、小分けサンプル(178μL)を凝集計(Apact4、DiaSys Greiner, Flacht, Germany)に直ちに入れる。サンプルに、濃度を上昇させながら試験化合物(血漿濃度0.3~10μmol/L)又はビヒクル2μLを添加し、37℃で3分間インキュベートする。10mmol/L CaCl水溶液に溶解した組織因子(RecombiPlasTin2G;Instrumentation Laboratory)20mLの添加により血小板凝集を誘発する(製造業者の説明書に従って)。個々の組織因子濃度(10mmol/L CaCl溶液で1:10~1:2500に希釈)を使用して、各実験の最小組織因子濃度を達成し、最大の凝集をもたらす。凝集を比濁法で測定し、10分間にわたって記録し、凝集応答を濃度-時間曲線の下の面積として評価する。ボルツマン検定(GraphPad Prism)を使用してIC50値を計算する。
【0221】
a.11)全血でのLPS又は熱不活化黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)誘発性凝固の阻害
1010個の熱殺菌黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)細胞(InvivoGen)を水1mLに溶かし、0.9%NaCl水溶液で希釈することによって10~10個の細胞を含む溶液を調製する。リポ多糖類(LPS、Sigma)を0.9%NaCl水溶液に溶かして、0.005mg/mL溶液を得る。
【0222】
新鮮な全血を、健常な男性と女性から静脈穿刺によって、1/10体積の3.12%クエン酸三ナトリウムを含む採血管に採取する。試験化合物のDMSO中溶液(0~20μM、最終濃度)10μl及び加熱殺菌黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)又はLPSを含むトリガー溶液10μLをクエン酸処理全血980μLに加え、穏やかに混合し、37℃で4時間インキュベートする。
【0223】
混合物150μLと0.1M塩化カルシウム溶液20μLをキュベットに加え、凝固時間の測定を開始する(Apact 4, DiaSys Greiner, Flacht, Germany)。各種濃度の対照サンプル及び化合物サンプルの凝固時間を比較して、GraphPad Prismを使用して凝固時間を2倍にするのに必要な濃度を計算する。
【0224】
a.12)トロンビン存在下での内皮層の完全性に対する影響
ヒト組換え上皮増殖因子(hEGF)、ヘパリンを含む塩基性ヒト線維芽細胞増殖因子(hFGF-B)、血管内皮増殖因子(VEGF)、アスコルビン酸、ヒドロコルチゾン、ヒト組換えインスリン様増殖因子(長鎖R3-IGF-1)、ヘパリン、GA-1000、及び2%ウシ胎仔血清(FBS)を補充した内皮細胞基礎培地-2(EBM-2)50μLを、E-Plate96(OLS Omni Life, Germany)の各ウェルに充填し、次にそれをACEA-Xcelligence RTCA装置(Agilent, USA)上に置いて、培地のバックグラウンドインピーダンスを測定する。
【0225】
凍結保存でプールされたヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC;Lonza, Germany;C2519a)を、ヒト組換え上皮増殖因子(hEGF)、ヘパリンを含む塩基性ヒト線維芽細胞増殖因子(hFGF-B)、血管内皮増殖因子(VEGF)、アスコルビン酸、ヒドロコルチゾン、ヒト組換えインスリン様増殖因子(長鎖R3-IGF-1)、ヘパリン、GA-1000及び2%ウシ胎仔血清(FBS)を補充した内皮細胞基礎培地-2(EBM-2)で増殖及び維持させる。細胞を、5%COを含む加湿空気中37℃で培養する。
【0226】
継代3で20000個の細胞を含む培地50μLを各ウェルに添加する。プレートを、Xcelligence RTCA装置のインキュベータで、37℃及び5%COで24時間維持する。次に、被験化合物のDMSO中溶液又はDMSO単独10μLを各ウェルに添加し、インピーダンスを30分間にわたって5分ごとに測定する。続いて、トロンビンの溶液(最終濃度0.1U/ml)40μLを加え、インピーダンスを5分ごとに190分間にわたり再度測定する。
【0227】
細胞接着の強さを、RTCAソフトウェアによって細胞指数として表し、Graphpad Prismを使用して、ブランク実験を行って、異なる化合物濃度間で比較する。
【0228】
b)抗血栓活性の測定(イン・ビボ)
b.1)動静脈シャント及び出血モデル(混合モデルウサギ)
体重2700~3500gの雄ウサギ(ニュージーランド白ウサギ;Crl:KBL(NZW))に2%キシラジン(Rompun, Bayer Vital)及び100mg/mLケタミン(Ketaset、Zoetis)で麻酔を施す。Christopher N. Berry et al., Br. J. Pharmacol. (1994), 113, 1209-1214によって記載の方法に従って、動静脈シャントで血栓形成を開始する。そのために、左顔面静脈と右頸動脈を切開する。10cmポリエチレン管の体外シャントを用いて、両方の血管をつなぐ。この管を、サンドペーパーで粗くして折りたたんで3cmのループとした6cmナイロン糸(直径0.14mm)を含む別の長さ4cmのポリエチレン管(PE240)に入れる。この糸は、凝固を誘発するのに必要な血栓形成表面を提供する。体外循環を15分間維持してから、シャントを取り出し、ナイロン糸を血栓とともに秤量する。ナイロン糸の風袋重量を求めてから、実験を行う。出血時間を求めるため、滅菌メスを用いて末梢耳静脈の隣で0.5cmの切開を行う。30秒ごとに、出血が止まるまで血液を濾紙で拭き取る。試験化合物を連続静脈内注入として与えてから30分後に、大腿静脈を介して動静脈シャントを開く。
【0229】
b.2)エンドトキシン血症モデルにおける有効性の判定(イン・ビボ)
b.2.1)LPS誘発エンドトキシン血症ウサギモデル
実験は、麻酔を施した雄ウサギ(ニュージーランド白ウサギ)で行う。5mg/kgの2%キシラジン(Rompun, Bayer Vital)及び40mg/kgの100mg/mLケタミン(Ketavet, Pfizer)の筋肉注射によって麻酔を導入し、その後2%キシラジン(Rompun, Bayer Vital)及び100mg/mLケタミン(Ketavet, Pfizer)を連続注入する。
【0230】
エンドトキシン血症を誘発するため、大腸菌(E.coli)(LPS 055:B5;Sigma-Aldrich;LOT 025M4040V)由来のリポ多糖100μg/kg/hを左大腿静脈から8時間連続注入する。試験化合物を、右大腿静脈を介して継続注入する。心拍数及び動脈血圧などの血行力学パラメータを継続的に測定するために、マイクロチップ圧力カテーテル(SPR-595;Millar Instruments)を左大腿動脈に埋め込む。動脈血サンプルを、1時間に1回、右大腿動脈から8時間にわたり採取する。全血検体から得られる読取パラメータには、血球数(血小板、白血球、赤血球)、凝固パラメータ(PT、aPTT)、及び回転トロンボエラストグラフィー(ROTEM)などがある。血漿を全血の一部から得て、炎症マーカー(IL-6、TNF-α)、フィブリノーゲンレベル、及び血清クレアチニンや肝酵素(ALTやASTなど)などの末端器官損傷のバイオマーカーを測定する。
【0231】
b.2.2)熱失活黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の注入によって誘発される敗血症のヒヒモデル
動物を12時間絶食させてから処置を行い、水を自由に与える。各動物は、固有のタトゥー番号によって識別される。実験前に動物の体重を計測して、麻酔薬の適切な用量と菌血症の負荷を計算する。
【0232】
動物をまず塩酸ケタミン(14~20mg/kg/IM)で鎮静させ、次いでペントバルビタールナトリウム(25mg/kg/IV)を30分ごとに投与するか、まぶた及び足指のつまみ反射をモニタリングすることによって麻酔を維持するのに必要と思われる場合に投与して麻酔する。麻酔を施した動物を継続的にモニタリングし、処置中には適切なレベルの麻酔薬及び生命維持を提供する。麻酔中、肺の沈下性鬱血を防ぐために、8~10時間の麻酔を通じて動物を左右に揺らす。静脈カテーテルを配置して、流体や薬剤へのアクセスを提供する。8~10時間の麻酔中、生理食塩水を約5ml/kg/hrの速度で注入して、麻酔の水分補給への影響を最小限に抑え、採血による血液量の損失を補う。キングビジョンビデオ喉頭鏡を使用して麻酔下で経口挿管を行って、誤嚥性肺炎を防ぎ、必要に応じて呼吸補助を可能にする。超音波によってガイドして、細菌注入用に18~20ゲージの静脈カテーテル(短線カテーテル)を上腕静脈に埋め込み、試験化合物の注入用に18~20ゲージのイントラカテーテル(長線カテーテル)を伏在静脈に埋め込む。
【0233】
低体温症を防ぐために、動物を循環水加熱パッド(37℃)上に乗せ、動物を暖かく保つためにすべての四肢を袖/靴下で覆う。
【0234】
熱失活黄色ブドウ球菌(S. aureus)(B17266ローゼンバッハ株;ATCC49496)を、1.5mL/kgの滅菌食塩水中の3×1010細菌/kgで、2時間のゆっくりとした連続注入として静脈注入する。麻酔下で、細菌負荷後T0、2、4、6、及び8時間で採血を行う。すべての実験において、24時間後及び48時間後、屠殺前にも採血を行う。留置伏在静脈カテーテル又は静脈穿刺により、5~10mLの採血を行う。血液検体を、炎症マーカー及び血液凝固マーカーの存在について分析する。
【0235】
c)試験化合物の薬物動態特性の決定
c.1)ミニブタにおける薬物動態/薬力学研究
雄又は雌のGoettingenミニブタ(Ellegard)に、20mg/kgケタミン(Ketaset, Zoetis)、8mg/kgアザペロン(Stresnil, Elanco)及び0.03mg/kgアトロピン硫酸(Atropin, B. Braun)の筋肉注射によって麻酔を施す。麻酔は、末梢耳静脈への3mg/kgケタミン及び0.5mg/kgミダゾラム(Dormicum, Cheplapharm)のボラス注射、その後の22mg/kg/hケタミン及び3.4mg/kg/hミダゾラムの持続注入によって維持する。気管チューブ(SuperSafetyClear、内径4mm、Rusch)を埋め込んで、機械換気できるようにする(Avance CS、GE Healthcare)。挿管前に、末梢耳静脈を介して0.03mg/kgのパンクロニウム(Inresa)をボラス注射して、筋弛緩を誘発する。筋肉弛緩を維持するために、0.3mg/kg/hのパンクロニウムの持続静脈注入を行う。動物の水分補給を維持するために、乳酸リンゲル液を静脈投与する。
【0236】
試験化合物を、右大腿静脈を介して最長180分間連続注入する。全血凝固(PT、aPTT)を測定するため、及び3部のアセトニトリルで沈殿させた後の薬物動態分析のために、動脈血を採取する。試験化合物の注入を停止した後、試験化合物の薬理的及び薬物動態的半減期をモニタリングするために追加の採血を行う。
【0237】
c.2)ウサギにおける薬物動態/薬力学試験
雄ウサギ(ニュージーランド白ウサギ)に5mg/kgのキシラジン(Rompun, Bayer Vital)及び40mg/kgのケタミン(Ketavet, Zoetis)の筋肉注射によって麻酔を施す。麻酔は、右末梢耳静脈を介したキシラジンとケタミンの連続静脈注入によって維持する。試験化合物を、右大腿静脈を介して最長120分間連続注入する。動脈血を頸動脈を介して採取して、凝固パラメーター(PT、aPTT)の測定、及び3部のアセトニトリルによる沈殿後の薬物動態分析に供する。試験化合物の注入を停止した後、試験化合物の薬理的及び薬物動態的半減期をモニタリングするために追加の採血を行う。
【0238】
d)安定性
d.1)加水分解安定性
試験化合物0.15mgをDMSO 0.1mL及びアセトニトリル0.4mLに溶かす。完全に溶解させるために、サンプル溶液の入ったHPLCバイアルを振盪し、超音波処理する。次いで、各緩衝液1.0mL(例えば、クエン酸緩衝液pH4、クエン酸緩衝液pH5、リン酸緩衝生理食塩水pH6.5、リン酸緩衝生理食塩水7.4)を加え、サンプルを渦攪拌する。サンプル溶液をHPLCによって分析して、37℃で、24時間の期間にわたる特定の時間における試験化合物及び最大二つの副生成物の量を測定する。t(0)値は、室温で緩衝液とともに渦攪拌した直後に採取されたサンプルから得る。ピーク面積(単位:パーセント)を定量に用いる。HPLC、LC/MS分析:出発材料について、HPLCによって純度を分析する。さらに、24時間サンプルをLC/MSによって分析する。
【0239】
HPLC条件:カラム:Nucleodur 100 C18ec 3μm 50×2mm;温度:37℃;1mL TFA/リットル水及び1mL TFA/リットルアセトニトリルの異なる勾配システム。
【0240】
クエン酸緩衝液(pH4)におけるこの試験からの代表的な加水分解安定性データを以下の表4a及び4bに示す。
【0241】
表4a:
【表7】
表4b:
【表8】
PBS緩衝液pH7.4でのこの試験からの代表的な加水分解安定性データを以下の表5a及び5bに示す。
【0242】
表5a:
【表9】
表5b:
【表10】
d.2)加水分解安定性
原薬の異なる水溶液(水、0.1M HCl、緩衝液pH10及び緩衝液pH7)(溶解度を向上させるための50%水溶液及び50%テトラヒドロフラン、アセトニトリル、メタノール又はクエン酸緩衝液中の0.25mg/mL原薬))を70℃で24時間、室温で1週間保存する。さらに、個々のクロマトグラムを比較することによって分解ピークを明確に特定するために、各ストレス溶液に対してブランク溶液を調製する。保存前後の溶液を、それ以上後処理することなく、HPLCに直接注入する。データ評価のため、各クロマトグラムを統合して互いに比較する。形成された有機不純物の量(<2%、2~5%、又は>5%)に応じて、安定性を「安定」、「わずかに不安定」、又は「不安定」という記述語で記載する。
【0243】
d.3)血漿安定性
血漿安定性サンプルの調製は、手動又はHamiltonロボットシステムによって行う。
【0244】
手動によるサンプル調製によるアッセイの説明:
試験化合物1mgをアセトニトリル/DMSO(異なる比率が可能)0.5mLに溶解する。完全に溶解させるため、HPLCバイアルを振盪し、超音波処理する。試験化合物を含むこの溶液20μLを、温度37℃に保たれた血漿1mLに添加し、混合物を直接渦攪拌する。0.17、0.5、1、1.5、2及び4時間後、室温若しくは10℃のアセトニトリル/クエン酸緩衝液pH3(80:20)又はアセトニトリル300μLを含むバイアルに化合物血漿溶液100μLを添加することによって酵素反応を停止する。混合物を5000rpmで10分間遠心する。上清をHPLCで分析して、試験化合物及び最大二つの副生成物の量を測定する。室温で血漿と渦攪拌した直後に採取された処理済みサンプルからt(0)値を得る。ピーク面積(単位:パーセント)を定量に用いる。4時間サンプルをさらに、LC/MSで分析する。
【0245】
自動サンプル調製によるアッセイの説明(Hamilton Starlet及びH-Motion-システム):
試験化合物1mgをアセトニトリル/DMSO0.5mLに手動で溶かす(異なる比率が可能)。完全に溶解させるために、HPLCバイアルを手動で振盪し、超音波処理する。次に、ロボットを介して自動ピペット操作段階を次のように実行する。試験化合物を含むこの溶液20μLを、37℃の温度に保った血漿1mLに加え、ピペットで混和する。0.17、0.5、1、1.5、2及び4時間後、10℃のアセトニトリル/クエン酸緩衝液pH3(80:20)又はアセトニトリル300μLを含むバイアルに化合物血漿溶液100μLを添加することによって酵素反応を停止する。混合物を10℃で、5000rpmにて10分間遠心分離する。上清をHPLCで分析して、試験化合物と最大二つの副生成物の量を測定する。室温で血漿と渦攪拌した直後に採取された処理済みサンプルからt(0)値を得る。ピーク面積(単位:パーセント)を定量に用いる。
【0246】
HPLC、LC/MS分析:出発材料について、HPLCによって純度を分析する。4時間サンプルをさらにLC/MSで分析する。
【0247】
HPLC条件:カラム:Nucleodur 100 C18ec 3μm 50×2mm;温度:37℃;1mL TFA/リットル水及び1mL TFA/リットルアセトニトリルの異なる勾配システム。
【0248】
この試験からの代表的なヒト血漿安定性データを以下の表6a及び6bに示す。
【0249】
表6a:
【表11】
表6b:
【表12】
d.4)血漿及び血液の安定性
血漿及び血液の安定性を、マウス、ラット、イヌ、ウサギ、ミニブタ、サル、及びヒトにおいて、公称試験濃度1000μg/Lのリチウムヘパリン添加血漿又は血液1mLを使用して、37℃で5時間調べる。0時間、0.083時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、3時間、及び5時間の時点で、小分けサンプル50μLを、二つの標準を補充したアセトニトリル+1%ギ酸150μLで沈殿させる。1300gで10分間渦攪拌及び遠心分離した後、上清の小分けサンプル50μLを、pH3の10mM酢酸アンモニウム緩衝液で1/10希釈し、LC-MS/MSによって測定する。濃度-時間プロファイルはExcelで記述し、t1/2=ln2/kを使用してそれぞれの半減期を計算する。
【0250】
d.5)過酸化安定性
原薬を、室温で24時間にわたり、過酸化条件下(溶解度を向上させるため、3%H及び50%テトラヒドロフラン、アセトニトリル、メタノール又はクエン酸緩衝液pH4を含む50%クエン酸緩衝液pH4中の0.25mg/mL原薬)で保存する。さらに、Hを含まない同じ溶液を調製し、室温で24時間保存する。さらに、それぞれのクロマトグラムを比較することによって分解ピークを明確に特定するために、各ストレス溶液についてのブランク溶液を調製する。保存後、そのH溶液を白金で反応停止して、Hがさらに反応するのを停止する。保存前後(反応停止を含む)の溶液を、それ以上処理を行わずにHPLCに直接注入する。データ評価のため、個々のクロマトグラムを統合して互いに比較する。形成された有機不純物の量(<2%、2~5%、又は>5%)に応じて、安定性を「安定」、「わずかに不安定」、又は「不安定」という記述語で記載する。
【0251】
d.6)ホルムアルデヒド安定性
原薬を、室温で24時間にわたり、過酸化条件下(溶解度を向上させるため、3%CHO及び50%テトラヒドロフラン、アセトニトリル、メタノール又はクエン酸緩衝液pH4を含む50%クエン酸緩衝液pH4中の原薬0.25mg/mL)で保存する。さらに、CHOを含まない同じ溶液を調製し、室温で24時間保存する。さらに、個々のクロマトグラムを比較することによって分解ピークを明確に特定するために、各ストレス溶液についてブランク溶液を調製する。保存前後の溶液を、それ以上の後処理をすることなく、HPLCに直接注入する。データ評価のため、個々のクロマトグラムを統合して互いに比較する。形成された有機不純物の量(<2%、2~5%、又は>5%)に応じて、安定性を「安定」、「わずかに不安定」、又は「不安定」という記述語で記載する。
【0252】
d.7.)熱安定性
原薬を、固体として90℃で1日及び1週間、60℃で1週間保存する。保存後、サンプルをテトラヒドロフランに0.25mg/mLの濃度で溶解させる。これらの溶液をHPLCに注入する。データ評価のため、個々のクロマトグラムを統合して互いに比較する。形成された有機不純物の量(<2%、2~5%、又は>5%)に応じて、安定性を「安定」、「わずかに不安定」、又は「不安定」という記述語で記載する。
【0253】
e.1.)溶解度
最大12.5mg/mLの原薬の懸濁液を、水、0.1M HCl、緩衝液pH2、緩衝液pH3、緩衝液pH4、緩衝液pH4.5、緩衝液pH5、緩衝液pH6、緩衝液pH7、緩衝液pH8、アセトニトリル及び0.9%NaCl溶液中、25℃で24時間±4時間撹拌してから、ろ過し、HPLCによって分析する、ただし、完全に溶解したサンプル(溶解度「>12500μg/mL」で示されている)は除く。
【0254】
HPLC分析のため、サンプルを溶媒で1:10及び1:100希釈して、検量線に適合させる。さらに、500μg/mL(5mg/10mL)、50μg/mL(1mg/20mL)、及び1μg/mL(50μg/mL標準0.4mL/20mL)の濃度を有する3種類の検量線用標準液を調製する。すべてのサンプル溶液及び標準溶液を、特定の順序でHPLCに注入する。サンプル中の物質ピークの総面積を検量線(外部標準)と比較することによって溶解度を求める。
【0255】
また、SST(システム適合性テスト)も標準溶液を使用して実行し、それは次の要件を満たしていなければならない。
【0256】
同じ標準の最小6回の注入が、≦2.0%の変動係数を有するものでなければならない。
【0257】
較正基準の最小4回の注入が、≦5.0%の精度を有するものでなければならない。
【0258】
非線形検量線の切片が3.0%以下でなければならない。
【0259】
計算用の検量線はゼロを通過しなければならない。
【0260】
溶解度の計算は、較正ポイント内にある最小希釈サンプルを使用して行う。
【0261】
次の緩衝液を用いる。
【表13】
物質4mgをクエン酸緩衝液pH4 50μLに溶解させることによって、原薬の溶解度を視覚的に測定する。その後、原薬を、濃度が400mg/mLに達するか懸濁液が生じるまで添加する。溶液を7日間観察して、潜在的な沈殿を検出する。7日後、溶液を10mg/mLに希釈し、安定性を調べる。
【0262】
原薬の安定性を、HPLC及びLC/MSによって調べる。外部標準を使用してアッセイ及び分解を調べる。試験には、サンプルを希釈して0.1mg/mLとし、二つの標準溶液(120μg/mL及び50μg/mL)を調製する。すべてのサンプル溶液及び標準溶液を、特定の順序でHPLCに注入する。アッセイは、物質のピークの総面積を検量線(外部標準)と比較することによって求める。分解量は、サンプルのクロマトグラム全体の面積%として報告される。さらに、サンプルをLC/MSによって測定して、分解生成物を確認する。
【0263】
e.2.)溶解度
化合物25mgを溶媒2mLに入れる。溶媒中の化合物の溶解度(12.5mg/mLより高い又は低い)に応じて、溶液又は懸濁液が形成される。この溶液又は懸濁液を25℃で24時間±4時間撹拌する。その後、溶液又は懸濁液を濾過し、残った溶液をHPLCで分析する。溶解度は、物質ピークの総面積を検量線(外部標準)と比較することによって求められる。分解量はサンプルのクロマトグラム全体の面積%として報告され、エステル加水分解の記述語として使用される。溶解度アセスメントで調べられる溶媒は、水系緩衝液(pH範囲1~8)、等張食塩水、及びアセトニトリルである。
【0264】
実施例2:実施例2の化合物440mgをクエン酸緩衝液0.5mLに入れた。得られた溶液の体積は約0.9mLであり、25℃で24時間±4時間撹拌した。その後、溶液を遠心分離し、HPLCで分析した。溶解度を物質ピークの総面積を検量線(外部標準)と比較することによって決定した。測定は三連で実施した。クエン酸緩衝液pH4中の実施例2の化合物の溶解度は>500mg/mLである。
【0265】
f)CYP阻害
試験化合物がヒトCYP1A2、CYP2C8、CYP2C9、CYP2D6及びCYP3A4を阻害する可能性は、酵素源としてプールされたヒト肝臓ミクロソーム及びそれぞれの標準基質を用いて調べる。阻害効果を試験化合物の6濃度(0.625、1.25、2.5、5、10、20μM)の試験化合物で測定し、阻害薬候補剤の非存在下での代謝産物形成の程度と比較する。最後に、IC50値を計算する。単一のCYPアイソフォームを特異的に阻害する標準阻害剤を常に含めることで、一連の実験間で結果が同等であることを確認する。アッセイ手順:6濃度の阻害薬候補剤の存在下での、フェナセチン、アモジアキン、ジクロフェナク、デキストロメトルファン、及びミダゾラムのヒト肝ミクロソームとのインキュベーション。標準的なインキュベーション混合物には、総容量200μL中に1mM NADP、1mM EDTA、5mMグルコース6-リン酸、1.5U/mLグルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ及び50mMリン酸緩衝液(pH7.4)を含ませた。試験化合物をアセトニトリルに溶かす。96ウェルプレートを37℃で適切な時間インキュベートし、それぞれの内部標準を含むアセトニトリル100μLを添加して反応を停止する。沈殿したタンパク質をウェルプレートの遠心分離(3000rpm、10分間)によって除去する。上清を合わせて、LC-MS/MS又はRapidFire-MS/MSによって分析を実行する。
【0266】
この試験からの代表的なCYP阻害データを以下の表7a及び7bに示す。
【0267】
表7a:
【表14】
表7b:
【表15】
g)CYP誘発
ヒト肝細胞を3Dで約10,000細胞/384ウェルの密度で播種し、化合物処理前に1日間培養する。細胞を、毎日培地を交換しながら、連続2日間にわたり、8濃度の1:3連続希釈で処理する。48時間の化合物処理後、細胞は溶解させ、最先端の磁気ビーズ技術によってmRNAを調製する。mRNA単離後、mRNAコートビーズからcDNAを直接転写し、qPCR用にさらに処理する。CYP相対発現レベルを、CYP3A4、CYP1A2、アクチン及びチューブリンの多重化によるTaqManプローブを介して測定する。CYP誘発をΔΔCt法に基づいて計算し、ビヒクル処理対照に対する誘発倍率として表す。
【0268】
h)肝細胞での代謝安定性
化合物を1μM及び1×10細胞/mLの低細胞数でインキュベートして線形動態を確保することによって、肝細胞の代謝安定性を確認する。インキュベーション混合物中の有機溶媒の影響を最小限とするために、それらの含有量はアセトニトリルについては最大1%に、又はDMSOについては最大0.2%に制限する。7時点で、インキュベーション混合物から、傾き値t1/2=-0.693/kからの化合物の半減期を定義するための分析用に抜き取る。イン・ビトロt1/2(単位:分)の固有クリアランス(CL′intr,hep、単位:L/h/kg)への変換を、下記方程式で計算する。
【0269】
CL′intr,hep=kV/N×倍率
CL′intr,hep:流量制限及び血中の細胞若しくはタンパク質への結合がない状態で薬剤を除去するための肝臓の固有クリアランス
V=インキュベーション体積(0.25mL)
N=ウェル当たりの肝細胞数(0.25×10細胞)
十分に撹拌されたモデルに従って下記の方程式を使用して、固有クリアランスを予測肝臓クリアランス(CL’blood,hep,ws、単位:L/h/kg)に変換する。
【0270】
CL′blood,hep,ws=Q×CL′intr,hep/(Q+CL′intr,hep
=肝血流量
CL′blood,hep,ws:十分に攪拌されたモデルに基づく肝臓クリアランスの計算。「十分に撹拌された」モデルは、肝臓が単一の十分に撹拌されたコンパートメントであり、出現した血液中の非結合薬剤の濃度が肝臓内の非結合薬剤と平衡にあると仮定する。
【0271】
Fmax値((最大可能バイオアベイラビリティ)を、次の方程式を使用して計算する。
【0272】
max十分攪拌[%]=(1-(CLblood十分攪拌/Q))×100
異なる肝細胞種を用いるイン・ビボ固有クリアランス予測のための倍率を下記に列記している。
【表16】
i)タンパク質結合
限外濾過によるタンパク質結合の測定については、孔径30kDaのフィルター膜を含むCentrifree(登録商標)マイクロパーティションシステムを使用して、血漿とタンパク質を含まない限外濾過液を分離する。濾過の駆動力は遠心分離によって加えられる。タンパク質結合試験の前に、試験化合物の限外濾過装置への吸着(回収)及び試験化合物のフィルター膜通過能力を、ある濃度で血漿及び緩衝液に溶解した試験化合物を濾過することによってチェックする。血漿に添加される有機溶媒の量は、総インキュベーション容量の1%を超えることはできない。化合物を2000μg/LのEDTAカリウム血漿中、37℃及び7%COで15分間インキュベートした後、Centrifree(登録商標)マイクロパーティションシステムを1800gで12分間遠心する。得られた濾液をアセトニトリルで沈殿させ、LC-MS/MS測定用に希釈する。未結合部分を次の方法で計算する。
【数1】
式中、
C=血漿(又は緩衝液)中総濃度
=未結合濃度(限外濾液中の濃度)
j)(イン・ビボ)薬物動態の評価
イン・ビボでの試験物質の薬物動態を評価するため、物質を適切な製剤ビヒクル(血漿、エタノール、ジメチルスルホキシド、PEG400の混合物;生理学的製剤)に溶かす。次に、試験物質を、ラット及びイヌに0.1~2mg/kg/hの低用量で10分間連続注入する。カテーテル(ラット)又は右若しくは左足の伏在大静脈(イヌ)を介して24時間までの適切な時点で血液50μLを採取し、K3-EDTA抗凝固剤及び血液検体を直接沈殿させるための内部標準を補充したアセトニトリル150μLの入った管に収集する。1300gで10分間の遠心分離後、上清50μLの小分けサンプルを、pH3の10mM酢酸アンモニウム緩衝液で1/10希釈し、LC-MS/MSによって測定する。血漿濃度-時間プロファイルの評価を、バリデーションされた薬物動態評価プログラムで行う。さらに、臓器、組織、尿の検体を取得することも可能である。
【0273】
C)医薬組成物の作業例
本発明による物質は、以下のようにして医薬製剤に変換することができる。
【0274】
静注液剤:
本発明による化合物を、生理的に許容される溶媒(例えば、等張塩化ナトリウム溶液、5%グルコース溶液及び/又は30%PEG400溶液)中に飽和溶解度未満の濃度で溶解する。溶液を濾過によって滅菌し、滅菌された発熱物質を含まない注射容器に充填する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9