(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】キャニスタ用成形吸着体
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20240829BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20240829BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
F02M25/08 311D
B01J20/20 E
B01J20/28 Z
B01J20/20 F
(21)【出願番号】P 2023551363
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2022035091
(87)【国際公開番号】W WO2023054088
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2021158752
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022132289
(32)【優先日】2022-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113398
【氏名又は名称】寺崎 直
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 佳英
(72)【発明者】
【氏名】今井 大介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 由生
(72)【発明者】
【氏名】柳 棟▲ヨン▼
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-271833(JP,A)
【文献】特開平05-103979(JP,A)
【文献】特開平07-269421(JP,A)
【文献】特開平07-251067(JP,A)
【文献】特許第6568328(JP,B1)
【文献】特開平10-192704(JP,A)
【文献】特開平04-271830(JP,A)
【文献】特開平02-160045(JP,A)
【文献】特開2019-018154(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02517787(EP,A1)
【文献】国際公開第2015/099063(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0038798(US,A1)
【文献】特開昭63-078739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/20
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャニスタ用の成形吸着体であって、
前記成形吸着体は、活性炭素繊維と、粒状活性炭と、バインダーとを含む成形体であり、
前記活性炭素繊維および前記粒状活性炭の総量中、前記活性炭素繊維と前記粒状活性炭との重量割合は、前記活性炭素繊維が5~95重量部、前記粒状活性炭が95~5重量部であり、
前記成形吸着体中の前記バインダーの重量割合は、前記活性炭素繊維および前記粒状活性炭の含有量100重量部に対して0.3~20重量部であり、
前記成形吸着体の乾燥密度が、0.010~0.250g/cm
3であり、
前記活性炭素繊維の平均繊維長が、300~10000μmであり、
前記粒状活性炭の平均粒子径が、
150~3000μmである、
成形吸着体。
【請求項2】
前記成形吸着体の圧力損失は、前記活性炭素繊維および前記バインダーの二種混合物の成形体の圧力損失、および、前記粒状活性炭および前記バインダーの二種混合物の成形体の圧力損失のいずれよりも小さい、請求項1に記載の成形吸着体。
【請求項3】
前記成形吸着体の比表面積が、2500m
2/g以下である、請求項1に記載の成形吸着体。
【請求項4】
前記成形吸着体の全細孔容積が、0.50~1.20cm
3/gである、請求項1に記載の成形吸着体。
【請求項5】
前記バインダーが、繊維状バインダーである、請求項1に記載の成形吸着体。
【請求項6】
前記繊維状バインダーは、フィブリル化された繊維状バインダーである、請求項5に記載の成形吸着体。
【請求項7】
前記成形吸着体の比表面積が、2500m
2/g以下であり、
前記成形吸着体の全細孔容積が、0.50~1.20cm
3/gであり、且つ
前記バインダーが、繊維状バインダーである、
請求項1に記載の成形吸着体。
【請求項8】
前記成形吸着体の比表面積が、2500m
2/g以下であり、
前記成形吸着体の全細孔容積が、0.50~1.20cm
3/gであり、且つ
前記バインダーが、繊維状バインダーである、
請求項2に記載の成形吸着体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の成形吸着体を備えたキャニスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャニスタ用の成形吸着体に関し、詳しくは活性炭を利用したキャニスタ用の成形吸着体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、バイク(自動二輪車)やボートなど、ガソリンなどの蒸散燃料を燃焼させる内燃機関を搭載した車両では、外気温変化等に伴い燃料タンク内の圧力が変動し、燃料タンク内に充満した蒸散燃料ガスが燃料タンクから放出される。放出される蒸散燃料ガスは、PM2.5や光化学スモッグの原因物質のひとつとされており、これを大気中に放出することを防ぐために、活性炭などの吸着材を備えたキャニスタ(蒸散燃料抑止装置ともいう。)が設けられている。
【0003】
近年の環境保全意識の高まりに伴い、様々なガスの排出規制が年々強化される傾向にあるため、キャニスタについても、より高い吸着性能が求められている。また、アイドリングストップ等の普及により、自動車の吸気能力は抑制される傾向にあるため、キャニスタ内の吸着材に吸着したガソリンを脱着させにくい傾向にある。そのため、キャニスタに用いられる吸着材のさらなる高性能化が求められている。キャニスタに用いられる吸着材としては活性炭が用いられることが多く、その形状としては粒状、ペレット又はハニカム形状に成型されたものなどが提案されている(例えば、特許文献1など)。
【0004】
また、近年では、キャニスタの性能を向上させる観点から、主室と副室を設けるなどして複数の室に吸着材を収納するようになってきている(例えば、特許文献2)。
【0005】
古くからある粉状、粒状の活性炭に対して、活性炭素繊維(または繊維状活性炭)は、第三の活性炭と呼ばれる場合がある。活性炭素繊維は、広義の活性炭の中でも、外表面に直接微細孔が開口し、吸脱着速度が速い傾向を有すると言われている。しかしながら、活性炭素繊維はキャニスタに実用化されるに至っておらず、どのような特性を有する活性炭素繊維がキャニスタの実用に適しているのかは、未だ十分に研究、開発が進んでいない。
【0006】
キャニスタに好適な吸着材の1つとして、所定の特性を備えた活性炭素繊維シートが提案されている(特許文献3)。
【0007】
また、活性炭素繊維を利用した成形吸着体の機械的強度および充填密度を改善するために活性炭素繊維および耐アルカリ性を有するフィブリル化セルローズ繊維を含む活性炭素繊維成形吸着体が提案されている(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-173137号公報
【文献】特開2019-10880号公報
【文献】特許第6568328号
【文献】特開平10-5580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、活性炭素繊維をキャニスタ用の吸着材として用いることが試みられているが、キャニスタ用の吸着材としては、活性炭素繊維は未だ開発の余地がある。また、主室と副室など、吸着材を複数の収納室に充填する様な場合に、どのような吸着材を用いるべきかについてもまた、未だ開発の余地がある。
【0010】
本発明者らは、自動車キャニスタの吸着体として、活性炭素繊維を実用化することを目指し、鋭意研究を進めたところ、自動車運転時の振動等で吸着材が摩耗しないように固定する必要があることや、取扱いの容易性等の観点から、活性炭素繊維で形成されたシートが実用的に好適な一実施形態であることを見出した。しかし、従来同様に炭化および賦活化をして得た活性炭素繊維シートを、吸着材を収納する室内に、隙間を設けることなく充填すると、キャニスタの圧力損失が上昇してしまうという新たな課題に直面した。
【0011】
上記のような状況に鑑み、解決しようとする課題の1つは、活性炭素繊維を用いた吸着材であって、キャニスタ用に適しており、圧力損失が抑制された吸着材を提供することにある。
また、解決しようとする更なる課題の1つは、活性炭素繊維を用いながらも、形状が崩れにくい成形体であって、且つ、キャニスタ用の吸着材として優れた効果を発揮する成形吸着体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を進め、一つの方向性として、活性炭素繊維の成形体について検討を進めた。そして、活性炭素繊維とバインダーを用いて、キャニスタ用に求められる諸性能を有する成形体を作製することに成功した。更に、本発明者らは、活性炭素繊維と粒状活性炭という異種形態の活性炭を混合して成形することにより、活性炭素繊維または粒状活性炭のいずれか一方とバインダーとを用いた成形体よりも、更に圧力損失を低減できることを見出した。
【0013】
本開示中に提示される発明は、多面的にいくつかの態様として把握しうるところ、課題を解決するための手段として、例えば、下記のように具現化しうる態様を含む。(なお、本開示中に提示される発明のことを「本発明」ともいう。)
【0014】
〔1〕 キャニスタ用の成形吸着体であって、
前記成形吸着体は、活性炭素繊維と、粒状活性炭と、バインダーとを含む成形体であり、
前記活性炭素繊維および前記粒状活性炭の総量中、前記活性炭素繊維と前記粒状活性炭との重量割合は、前記活性炭素繊維が5~95重量部、前記粒状活性炭が95~5重量部であり、
前記成形吸着体中の前記バインダーの重量割合は、前記活性炭素繊維および前記粒状活性炭の含有量100重量部に対して0.3~20重量部である、
成形吸着体。
〔2〕 前記成形吸着体の圧力損失は、前記活性炭素繊維および前記バインダーの二種混合物の成形体の圧力損失、および、前記粒状活性炭および前記バインダーの二種混合物の成形体の圧力損失のいずれよりも小さい、上記〔1〕に記載の成形吸着体。
〔3〕 前記成形吸着体の圧力損失が、0.52kPa以下である、上記〔2〕に記載のキャニスタ用成形吸着体。
〔4〕 前記成形吸着体の圧力損失が、0.45kPa以下である、上記〔2〕に記載のキャニスタ用成形吸着体。
〔5〕 前記粒状活性炭の平均粒子径が、100~3000μmである、上記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の成形吸着体。
〔6〕 前記活性炭素繊維の平均繊維長が、300~10000μmである、上記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の成形吸着体。
〔7〕 前記成形吸着体の乾燥密度が、0.010~0.400g/cm3である、上記〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の成形吸着体。
〔8〕 前記成形吸着体の比表面積が、2500m2/g以下である、上記〔1〕~〔7〕に記載の成形吸着体。
〔9〕 前記成形吸着体の全細孔容積が、0.50~1.20cm3である、上記〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の成形吸着体。
〔10〕 前記バインダーが、繊維状バインダーである、上記〔1〕~〔9〕に記載の成形吸着体。
〔11〕 前記粒状活性炭の平均粒子径が、100~3000μmであり、
前記活性炭素繊維の平均繊維長が、300~10000μmであり、
前記成形吸着体の乾燥密度が、0.010~0.400g/cm3であり、
前記成形吸着体の比表面積が、2500m2/g以下であり、
前記成形吸着体の全細孔容積が、0.50~1.20cm3であり、且つ
前記バインダーが、繊維状バインダーである、
上記〔1〕に記載の成形吸着体。
〔12〕 前記粒状活性炭の平均粒子径が、100~3000μmであり、
前記活性炭素繊維の平均繊維長が、300~10000μmであり、
前記成形吸着体の乾燥密度が、0.010~0.400g/cm3であり、
前記成形吸着体の比表面積が、2500m2/g以下であり、
前記成形吸着体の全細孔容積が、0.50~1.20cm3であり、且つ
前記バインダーが、繊維状バインダーである、
上記〔3〕に記載の成形吸着体。
〔13〕 上記〔1〕~〔12〕のいずれか一項に記載の成形吸着体を備えたキャニスタ。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一又は複数の態様によれば、活性炭素繊維を用いた吸着材であって、キャニスタ用に適しており、圧力損失が抑制された吸着材を提供することができる。
また、本発明の一又は複数の態様によれば、活性炭素繊維を用いながらも、形状が崩れにくい成形体であって、且つ、キャニスタ用の吸着材として優れた効果を発揮する成形吸着体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、複数のシート状成形吸着体が重ね合わされて成る積層吸着体の一例と、当該積層吸着体を通過する流体の流れ方向の一例を模式的に示す図である。
【
図2】円盤状に成形された吸着体の一例を示す図である。
【
図3】円柱状に成形された吸着体の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、特許協力条約に基づく国際出願によるものであり、出願当初の言語は日本語である。本開示は、指定国および選択国へ移行の際、各国が要求する言語に翻訳されることが予定されている。本開示において、特段の記載がない限り、日本語の名詞は、本開示の全文または文脈に応じて単数または複数のいずれでもありうる。また、英語などのように、名詞について可算名詞および不可算名詞、可算名詞において単数形または複数形の区別がある言語に翻訳された際、特段の記載がない限り、本開示の全文または文脈に応じて、単数形の表示は複数の場合を含み、複数形の表示は、単数の場合を含む。
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明を理解しやすいように具体的な説明を提供しているが、本発明が以下に示す実施形態によって限定されるものではなく、各構成要素およびそれらの組み合わせは、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、下記において、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する場合がある。各図において、構成要素の形状、大きさ、および配置などは、本発明を理解しやすいように概略的に示したものであり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。各図において、同様の構成要素については同一の符号を付して示し、重複する説明を省略する場合がある。
【0019】
本開示において、特に断らない限り、数値範囲に関し、「AA~BB」という記載は、「AA以上BB以下」を示すこととする(ここで、「AA」および「BB」は任意の数値を示す)。また、下限および上限の単位は、特に断りない限り、双方共に後者(すなわち、ここでは「BB」)の直後に付された単位と同じである。また、本開示において、数値範囲の下限値および上限値の組み合わせは、好ましい数値等として例示的に記載された下限値または上限値の数値群から任意に数値の組み合わせを選択することができる。また、「Xおよび/またはY」との表現は、XおよびYの双方、またはこれらのうちのいずれか一方のことを意味する。
【0020】
本発明に関する説明において、「細孔径」との用語は、特に明示しない限り、細孔の半径ではなく、細孔の直径又は幅のことを意味する。
【0021】
1.キャニスタ用成形吸着体
本発明の一実施形態において、成形吸着体は、キャニスタに好適に用いることができる。キャニスタは、吸着材を備えており、気化した蒸散燃料を吸着材に吸着させて、大気中に放出されるのを抑止したり、エンジン作動時には、吸着材に吸着した蒸散燃料を脱着して、エンジンに供給したりする役割を担う装置である。キャニスタは、概して、揮発性の高い炭化水素を含む燃料を用いる内燃機関を備えた機械または装置、例えば内燃機関が備えられた車両および船舶などで用いられる。車両としては、例えばガソリンを燃料とする自動車などが挙げられる。船舶としては、例えばガソリンを燃料とするボートなどが挙げられる。
【0022】
本発明の一実施形態において、成形吸着体は、活性炭素繊維と、粒状活性炭と、バインダーとを含む。好ましい一実施形態としては、活性炭素繊維、粒状活性炭、およびバインダーとの混合物の成形品でありうる。また、成形吸着体の他の好ましい一実施形態としては、活性炭素繊維シートの表面に粉状活性炭を付着または保持させた複数のシートを、バインダーを用いて結合させた積層体構造体でありうる。
【0023】
本発明の一実施形態において、活性炭素繊維および粒状活性炭の総量中、活性炭素繊維と粒状活性炭との重量割合は、活性炭素繊維が5~95重量部、粒状活性炭が95~5重量部でありうる。言い換えると、成形吸着体中に含まれる活性炭素繊維および粒状活性炭の含有量100重量部当たりにつき、活性炭炭素繊維は、好ましくは5重量部以上、95重量部以下含まれ、粒状活性炭には、好ましくは5重量部以上、95重量部含まれうる。数値を具体的に特定した一例を示す。活性炭素繊維および粒状活性炭の総含有量が10gである成形吸着体を仮定した場合に、例えば、活性炭素繊維が5g(50重量部)、粒状活性炭が重量が5g(50重量部)含まれる一実施形態などがありうる。
【0024】
成形吸着体にどのような性能を求めるかによって異なるが、例えば、圧力損失を低減する観点からは、活性炭素繊維と粒状活性炭との重量割合(活性炭素繊維:粒状活性炭)との重量割合は、好ましくは95~5重量部:5~95重量部でありうる。
【0025】
活性炭素繊維および粒状活性炭の含有量について、圧力損失を低減する観点から好ましい含有量を個別に説明すると次のとおりである。
成形吸着体中における活性炭素繊維の含有量の上限は、活性炭素繊維と粒状活性炭との合計重量100重量部あたり、好ましくは95重量部以下、より好ましくは75または65重量部以下であり、更に好ましくは55または45重量部以下でありうる。また、成形吸着体中における活性炭素繊維の含有量の下限は、活性炭素繊維と粒状活性炭との合計重量100重量部あたり、好ましくは5または8重量部以上でありうる。
【0026】
他方、成形吸着体中における粒状活性炭の含有量の上限は、活性炭素繊維と粒状活性炭との合計重量100重量部あたり、好ましくは95または92重量部以下でありうる。また、成形吸着体中における粒状活性炭の含有量の下限は、活性炭素繊維と粒状活性炭との合計重量100重量部あたり、好ましくは5重量部以上、より好ましくは25または35重量部以上、更に好ましくは45または55重量部以上でありうる。
【0027】
上述のとおり、本発明の一実施形態において、成形吸着体を構成する一成分として活性炭素繊維および粒状活性炭が用いられる。活性炭素繊維および粒状活性炭の様々な実施形態については、後段にて改めて詳説する。
【0028】
本発明の一実施形態において、成形吸着体を構成する一成分としてバインダーが用いられる。使用しうるバインダーは、活性炭素繊維および活性炭の細孔を閉塞させ難いバインダーが好ましく、材料としては、例えば、ポリビニルアルコール等が挙げられる。また、バインダーの好ましい例としては、繊維状バインダーを挙げることもできる。繊維状バインダーはフィブリル化させることにより、活性炭素繊維および粒状活性炭を絡めて賦形できれば特に限定されない。合成品、天然品を問わず幅広く使用可能である。このような繊維状バインダーとしては、例えば、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維などを挙げることができる。
【0029】
本発明の一実施形態において、成形吸着体中のバインダーの含有割合は、活性炭素繊維および粒状活性炭の含有量100重量部に対して0.3~20重量部でありうる。より具体的には、次のとおりである。
上記バインダーの含有割合の下限値として好ましくは、0.3、0.5、0.8、1.0、2.0、または3.0重量部でありうる。
上記バインダーの含有割合の上限値としては、好ましくは、20、18、15、または10重量部でありうる。
数値を具体的に特定した例を示す。例えば、活性炭素繊維および粒状活性炭の総含有量が10gである成形吸着体を仮定した場合に、バインダーは0.03g~2g添加されうる。したがって、この場合、成形体中の活性炭素繊維、粒状活性炭、およびバインダーの総重量は、10.03g~10.2gとなる。
【0030】
バインダーを上記のような含有割合で配合することにより、成形吸着体の機械的強度と吸脱着性能を両立するように調製することができる。機械的強度をより高めたければバインダーの量を増やし、吸脱着性能をより重視する場合には、バインダーの量を低めに設定してよい。また、このような含有量とすることは、圧力損失の小さい成形吸着体を得るためにも好適でありうる。
【0031】
活性炭素繊維は、好ましくは、解繊された繊維の状態で混合されうる。解繊された繊維の状態で粒状活性炭やバインダーなどの成分と混合することにより、各成分が程良く絡み合い、結び付きが良好となり、成形体の機械的強度を向上させることができ、より型崩れしにくい成形体とすることができる。
【0032】
本発明の他の一実施形態として、例えば、次のような一実施形態も例示しうる。
キャニスタ用の成形吸着体であって、前記成形吸着体は、活性炭素繊維と、粒状活性炭と、バインダーとを含む成形体であり、前記成形吸着体の圧力損失は、前記活性炭素繊維および前記バインダーの二種混合物の成形体の圧力損失、および、前記粒状活性炭および前記バインダーの二種混合物の成形体の圧力損失のいずれよりも小さい、成形吸着体。
【0033】
本開示による成形吸着体は、圧力損失が低いものとすることができる。活性炭素繊維自体、いくつかある活性炭の種類中でも圧力損失の少ない方の材料である。しかし、活性炭素繊維だけでは、形状が崩れやすい傾向がある。そこで、本発明者らは、形状安定性を向上させるために、活性炭素繊維に、粒状活性炭とバインダーを混ぜて、成形加工することを考案した。当初は、成形加工することにより、形状安定性は向上するものの、圧力損失については、良い場合であっても活性炭素繊維とバインダーによる成形体と粒状活性炭とバインダーとの平均、あるいは圧力損失は大きくなってしまう可能性を予想した。しかしながら、この三種混合物の成形体は、活性炭素繊維およびバインダーの二種混合物の成形体の圧力損失、および、粒状活性炭およびバインダーの二種混合物の成形体の圧力損失のいずれよりも小さいという、予想外の成形吸着体を得ることができた。
【0034】
その作用機序は必ずしも明らかではないが、一つの推察としては、活性炭素繊維と粒状活性炭とは活性炭という点では一致するものの、形状などの物理的な特性については異質の材料であることから、異質の材料の混合状態により空隙が生じ、圧力損失を下げる方向に作用したことが考えられる。
【0035】
本発明の一実施形態において、圧力損失は、好ましくは0.05~0.52kPaでありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体の圧力損失の上限は、好ましくは0.52、0.50、0.45、または0.43kPa以下、より好ましく0.40、0.38、0.35、または0.33kPa以下、更に好ましくは0.30、0.28、または0.25kPa以下でありうる。
圧力損失は低ければ低いほど好ましいというわけではなく、本来の目的である吸着性などの観点から、圧力損失の下限は、好ましくは、0.05kPa、0.08、又は0.10kPa以上でありうる。
【0036】
本発明の更なる様々な実施形態として、さらに下記の所定の項目のうちの1つ又は任意の2つ以上の条件を満たすことにより、より好ましいキャニスタ用の成形吸着体としうる。下記の所定の項目の好ましい組み合わせは、求められる要件などに応じて所望により任意に選択することができる。
【0037】
<成形吸着体の比表面積>
本発明の一実施形態において、成形吸着体の比表面積は、好ましくは100~2500m2/g以下でありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体の比表面積の下限は、好ましくは100m2/g以上、より好ましくは200m2/g以上、更に好ましくは300、500、700、900、1000、1100、又は1200m2/g以上でありうる。
本発明の一実施形態において、一般に広い方が吸脱着性能の観点からは好ましいが、活性炭の比表面積の上限は、概ね2500、2400、2300、2200、または2100m2/g以下でありうる。
比表面積を上記のような範囲とすることによって、蒸散燃料ガスに対する吸脱着性能について、より優れた成形吸着体とすることができる。また、本発明の一実施形態において、上記のようなキャニスタに用いられる吸着材料としては広めの比表面積を維持しつつ、キャニスタでの圧力損失の低減を達成しうる。
【0038】
<成形吸着体の全細孔容積>
本発明の一実施形態において、成形吸着体の全細孔容積は、好ましくは0.50~1.20cm3/g以下でありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体の全細孔容積の下限は、好ましくは0.50cm3/g以上、より好ましくは0.55cm3/g以上、更に好ましくは0.60、0.65、0.70、又は0.75cm3/g以上でありうる。
本発明の一実施形態において、成形吸着体の全細孔容積の上限は、好ましくは1.20cm3/g以下、より好ましくは1.15cm3/g以下、更に好ましくは1.10、1.05、1.03、又は1.00cm3/g以下でありうる。
全細孔容積を上記のような範囲とすることは、吸脱着性能や圧力損失などについて優れた成形吸着体とするために好適である。
【0039】
<成形吸着体の平均細孔径(平均細孔直径)>
本発明の一実施形態において、成形吸着体の平均細孔経は、好ましくは1.50~2.50nmでありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体の平均細孔径の下限は、好ましくは1.50nm以上であり、より好ましくは1.60nm以上であり、更に好ましくは1.70nm以上である。
本発明の一実施形態において、成形吸着体の平均細孔径の上限は任意でありうるが、好ましくは2.50nm以下、より好ましくは2.20nm以下、更に好ましくは2.00または1.90nm以下でありうる。
平均細孔径を上記のような範囲とすることは、吸脱着性能や圧力損失などについて優れた成形吸着体とするために好適である。
【0040】
<成形吸着体のウルトラマイクロ孔容積:V0.7>
本開示において「ウルトラマイクロ孔」との用語は、細孔径が0.7nm以下の細孔を意味する。
本発明の一実施形態において、成形吸着体のウルトラマイクロ孔容積は、好ましくは0.05~0.30cm3/gでありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体のウルトラマイクロ孔容積の下限は、好ましくは0.05cm3/g以上、より好ましくは0.10cm3/g以上、更に好ましくは0.12、又は0.14cm3/g以上でありうる。
本発明の一実施形態において、成形吸着体のウルトラマイクロ孔容積の上限は、好ましくは0.30cm3/g以下、より好ましくは0.29cm3/g以下、更に好ましくは0.26、0.24、0.22、又は0.20cm3/g以下でありうる。
ウルトラマイクロ孔容積を上記のような範囲とすることは、吸脱着性能や圧力損失などについて優れた成形吸着体とするために好適である。
【0041】
<成形吸着体のマイクロ孔容積:V2.0>
本開示において「マイクロ孔」との用語は、細孔径が2.0nm以下の細孔を意味する。
本発明の一実施形態において、成形吸着体のマイクロ孔容積は、好ましくは0.50~1.00cm3/gでありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体のマイクロ孔容積の下限は、好ましくは0.50cm3/g以上、より好ましくは0.55、又は0.58cm3/g以上、更に好ましくは0.59、又は0.60cm3/g以上でありうる。
本発明の一実施形態において、成形吸着体のマイクロ孔容積の上限は、好ましくは1.00cm3/g以下、より好ましくは0.90cm3/g以下、更に好ましくは0.80cm3/g以下でありうる。
マイクロ孔容積を上記のような範囲とすることは、吸脱着性能や圧力損失などについて優れた成形吸着体とするために好適である。
【0042】
<細孔径が0.7nmより大きく2.0nm以下の細孔の細孔容積:V0.7-2.0>
細孔径が0.7nmより大きく2.0nm以下の細孔の細孔容積V0.7-2.0は、ウルトラマイクロ孔容積の値aとマイクロ孔容積の値bとを用い、下記式1によって求めることができる。
V0.7-2.0=b-a ・・・(式1)
【0043】
本発明の一実施形態において、成形吸着体についての、細孔径が0.7nmより大きく2.0nm以下の細孔の細孔容積V0.7-2.0は、好ましくは0.30~1.00cm3/gでありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体についての、細孔径が0.7nmより大きく2.0nm以下の細孔の細孔容積V0.7-2.0の下限は、好ましくは0.30cm3/g以上、より好ましくは0.36cm3/g以上、更に好ましくは0.38、0.40、又は0.43cm3/g以上でありうる。
本発明の一実施形態において、成形吸着体についての、細孔径が0.7nmより大きく2.0nm以下の細孔の細孔容積V0.7-2.0の上限は、好ましくは1.00cm3/g以下、より好ましくは0.90cm3/g以下、更に好ましくは、0.80、0.75、0.70、0.65、又は0.60cm3/g以下でありうる。
当該細孔容積V0.7-2.0を上記のような範囲とすることは、吸脱着性能や圧力損失などについて優れた成形吸着体とするために好適である。
【0044】
<マイクロ孔の容積に占めるウルトラマイクロ孔の容積の存在比率:R0.7/2.0>
細孔径が2.0nm以下であるマイクロ孔の細孔容積に占める、細孔径が0.7nm以下であるウルトラマイクロ孔の細孔容積の存在比率R0.7/2.0は、ウルトラマイクロ孔容積の値aとマイクロ孔容積の値bとを用い、下記式2によって求めることができる。
R0.7/2.0=a/b×100(%) ・・・(式2)
【0045】
本発明の一実施形態において、成形吸着体についての、マイクロ孔容積に占めるウルトラマイクロ孔容積の存在比率R0.7/2.0は、好ましくは15.0~60.0%でありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体についての、マイクロ孔容積に占めるウルトラマイクロ孔容積の存在比率R0.7/2.0の下限は、好ましくは15.0%以上、より好ましくは18%以上、更に好ましくは19%以上でありうる。
本発明の一実施形態において、成形吸着体についての、マイクロ孔容積に占めるウルトラマイクロ孔容積の存在比率R0.7/2.0の上限は、好ましくは60.0%以下、より好ましくは50%以下、更に好ましくは40、30、又は25%以下でありうる。
当該ウルトラマイクロ孔容積の存在比率R0.7/2.0を上記のような範囲とすることは、吸脱着性能や圧力損失などについて優れた成形吸着体とするために好適である。
【0046】
<成形吸着体の乾燥密度>
本発明の一実施形態において、成形吸着体の乾燥密度は、好ましくは0.010~0.400g/cm3でありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態である成形吸着体において、成形吸着体の乾燥密度の好ましい下限および上限は、以下のようでありうる。
成形吸着体の乾燥密度の下限は、好ましくは0.010g/cm3以上、より好ましくは0.015g/cm3以上、更に好ましくは0.020g/cm3、0.030、0.040、0.050、又は0.060g/cm3以上でありうる。
成形吸着体の乾燥密度の上限は、好ましくは0.400g/cm3以下、より好ましくは0.300g/cm3以下、更に好ましくは0.250g/cm3以下でありうる。
【0047】
乾燥密度を上記のような範囲とすることによって、キャニスタ内に収納できる吸着材の容量の範囲内において、キャニスタ用に要求される体積当たりの吸脱着性能についてより優れた成形吸着体とすることができる。また、上記の下限以上とすることにより、シート状または円盤状とした場合でも、機械的特性(例えば、強度など)が低下することを避けることができる。また、成形吸着体の乾燥密度は、炭素繊維の繊維径や、炭素繊維解繊時の攪拌力の調整による繊維長、バインダーとの混合スラリーを吸引成形する際の吸引力の加減などにより調整することができ、乾燥密度の調整は圧力損失を適正化する1つの手段となりうる。
【0048】
<成形吸着体のn-ブタン吸脱着性能>
本発明の一実施形態において、成形吸着体は、吸着材として、所定のn―ブタン吸脱着性能を有することが好ましい。n-ブタン吸脱着性能は、蒸散ガスの吸脱着性能の指標となるため、n-ブタンの吸脱着性能が優れるものは、自動車キャニスタ用途に好適である。n-ブタン吸脱着性能は、n-ブタンを十分に吸収破過させた後、所定の脱着条件下に置いたときに吸着材から脱離させた後、吸着を繰り返す際の吸着量を、成形吸着体当たりのn-ブタンの有効吸着量率として示すことができる。
【0049】
本発明の成形吸着体の好ましい一実施形態としては、下記実施例において示した測定方法に従って求められるn-ブタンの有効吸脱着量率(下記、式8参照)が、好ましくは6.00wt%以上、より好ましくは6.25wt%以上、さらに好ましくは6.50、6.75、又は7.00wt%以上でありうる。
【0050】
また、成形吸着体の好ましい一実施形態としては、下記実施例において示した測定方法に従って求められるn-ブタンの有効吸脱着率(下記、式9参照)が、好ましくは25.0%以上、より好ましくは30.0、40.0、又は50.0%以上、さらに好ましくは、60.0、70.0、又は75.0%以上でありうる。
【0051】
<成形吸着体の0ppm維持時間>
下記実施例において示した測定方法に従って求められる0ppm維持時間は、通常、長いほど好適であるが、具体的に数値を示すと、本発明の吸着成形体の好ましい一実施形態としては、好ましくは、15分または30分以上であり、より好ましくは40分以上、更に好ましくは50分、55分、60分、65分、68分、69分、または70分以上でありうる。
0ppm維持時間が長いほど、吸着材が被吸着物質を放出し始めるまでの時間が長いことを意味する。したがって、0ppm維持時間は、吸着力の強さを示す一つの指標となる。
【0052】
2.成形吸着体の形状
本発明の一実施形態において、成形吸着体の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、モールド成形でき、ガスを流通させることができる形状が好適である。具体的な形状としては、例えば、円形または多角形などの端面形状を有する柱状、円錐台、多角錐台などの錐台状、並びに、ペレット状およびハニカム状などの形状などが挙げられ、好ましくは円柱状および直方体状などが挙げられる。また、さらに円盤状、シート状、または板状の成形吸着体を、複数を積層させた積層体としてもよい。
図1~3に、いつくかの実施形態を示す。なお、図面上、長さ、厚みなどの寸法は、発明として理解容易にするために模式的に表現されており、これに限定されるわけではない。
【0053】
図1に示す積層吸着体1は、4枚の成形吸着体シート10を重ね合わせて成る積層体である。シート状の成形吸着体10は、シートの主面10aを相互に重ね合わせて形成されている。一実施形態としては、各シート10は、活性炭素繊維と粒状活性炭とバインダーとの混合物をシート状に成形加工したものでありうる。バインダーは、好ましくは繊維状バインダーでありうる。
【0054】
積層吸着体1を、キャニスタ内にどのように収納するかは任意である。好ましい一実施形態としては、蒸散ガスなどの流体Fの流れ方向に対して、シート状の成形吸着体の主面10aが直交する方向ではないように配置することが好ましく、より好ましくは、
図1に示すように、主面aが蒸散ガスなどの流体Fの流れ方向に対して略平行になるように配置しうる。主面aが蒸散ガスなどの流体Fの流れ方向に対して略平行になるように配置することにより、複数のシート状成形吸着体の側端面10bが流体Fの流れ方向に対して対面するように配置されている。このように配置することにより、圧力損失を抑制しうる。
図1において、長さが短い側端面10bが流体Fの流れ方向に対面するが、これに限定はされず、長い側端面10cが流体Fの流れ方向に対面するようにしてもよい。
【0055】
また、積層吸着体は全体として、直方体形状であっても、立方体形状であってもよい。
【0056】
図2には、本発明の他の一実施形態を示す。
図2に示す実施形態では、成形吸着体は円盤状の形状に成形されている。この円盤状の成形吸着体を重ねて円柱状にしてもよい。
【0057】
図3には、本発明の他の一実施形態を示す。
図3に示す実施形態では、成形吸着体は、円柱状の成形体として一体的に成形されている。
【0058】
また、本発明の更に別の一実施形態としては、次のような形態もありうる。活性炭素繊維シートの表面に粒状活性炭を付着または保持させたシートを用意し、各シートをバインダーを用いて貼り合わせて、積層吸着体を形成してもよい。各シートの界面付近に粒状活性炭が挟み込まれたような構造を有し、積層吸着体の全景としては、
図1の積層吸着体1と略同様でありうる。
【0059】
このように本発明の一実施形態である吸着積層体は、容易に様々な形状に加工または成形することができ、取扱い性に優れた材料である。
【0060】
3. 活性炭素繊維
本発明の一実施形態において、活性炭の1種として、活性炭素繊維が用いられる。以下、本発明におけて用いうる活性炭素繊維の実施形態について更に詳説する。キャニスタ用成形吸着体に用いうる活性炭素繊維は、さらに下記の所定の項目のうちの少なくとも1つ又は任意の2つ以上の条件を満たすことにより、より好ましい実施形態としうる。下記の所定の項目の好ましい組み合わせは、求められる要件などに応じて所望により任意に選択することができる。
【0061】
<活性炭素繊維の繊維径>
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の繊維径は、好ましくは6.0~70.0μmでありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の繊維径の下限は、好ましくは4.0μm以上、より好ましくは6.0μm以上、更に好ましくは8.0、10.0、12.0、14.0、18.0、19.0、又は20.0μm以上でありうる。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の繊維径の上限は、圧力損失の抑制という観点からは任意でありうるが、吸脱着性能とのバランスを考慮すると、例えば、70.0μm以下、好ましくは65.0または60.0μm以下、より好ましくは59.0、58.0、57.0、56.0、または55.0μm以下でありうる。
成形吸着体に用いうる活性炭素繊維の繊維径が上記の範囲であると、より圧力損失を抑制できる成形吸着体とすることができる。
【0062】
<活性炭素繊維の繊維長平均値(又は平均繊維長)>
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の繊維長平均値は、好ましくは300~10000μmでありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の繊維長平均値の下限は、好ましくは300μm以上、より好ましくは、500、600、700、800、850、又は900μm以上、更に好ましくは950μm以上でありうる。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の繊維長平均値の上限は、好ましくは10000、7500、又は5000μm以下、より好ましくは、4000、3000、2500、2000、又は1500μm以下、更に好ましくは1200μm以下でありうる。
成形吸着体に用いる活性炭素繊維の繊維長平均値が上記の範囲であると、より圧力損失を抑制できる成形吸着体とすることができる。
【0063】
<活性炭素繊維の繊維長変動係数>
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の繊維長変動係数は、好ましくは0.100~2.500でありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の繊維長変動係数の下限は、好ましくは0.100以上、より好ましくは、0.200、0.300、0.400、又は0.500以上、更に好ましくは0.600以上でありうる。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の繊維長変動係数の上限は、好ましくは2.500以下、より好ましくは、2.000、1.500、1.000、0.900、又は0.800以下、更に好ましくは0.700以下でありうる。
成形吸着体に用いうる活性炭素繊維の繊維長変動係数が上記の範囲であると、より圧力損失を抑制できる成形吸着体とすることができる。
【0064】
<活性炭素繊維の前駆体の繊度>
上記のような繊維径の活性炭素繊維を得るために、活性炭素繊維の前駆体となる繊維の繊維径(繊度として)は下記の範囲であることが好適である。すなわち、下記のような繊維を前駆体として採用することは、圧力損失を抑制できる活性炭素繊維を得るために好適であると言いうる。
本発明の一実施形態において、前駆体となる繊維の繊維径(繊度として)は、好ましくは4.0~70.0dtexでありうる。より具体的には以下のとおりである。
前駆体となる繊維の繊維径(繊度として)の下限は、好ましくは4.0dtex以上、より好ましくは5.0dtex以上、さらに好ましくは8.0、10.0、12.0、又は15.0dtex以上でありうる。
前駆体となる繊維の繊維径(繊度として)の上限は、例えば、70.0dtex以下、好ましくは65.0または60.0dtex以下、より好ましくは59.0、58.0、または57.0dtexでありうる。
【0065】
<活性炭素繊維の比表面積>
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の比表面積は、好ましくは1100~2400m2/gでありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の比表面積の下限は、好ましくは1100m2/g以上、より好ましくは1200、1300、1400、1500、又は1600m2/g以上、更に好ましくは、1700、又は1800m2/g以上でありうる。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の比表面積は、一般に広い方が吸着性能の観点からは好ましいが、キャニスタ用の吸着材の場合、比表面積の上限は、概ね2400、2300、2200、又は2100m2/g以下でありうる。
活性炭素繊維の比表面積を上記のような範囲とすることは、吸脱着性能について優れた成形吸着体とするために好適である。また、広めの比表面積を維持しつつ、圧力損失を抑制するために好適である。
【0066】
<活性炭素繊維の全細孔容積>
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の全細孔容積は、好ましくは0.50~1.20cm3/gでありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の全細孔容積の下限は、好ましくは0.50cm3/g以上、より好ましくは0.60、又は0.70cm3/g以上、更に好ましくは0.80cm3/g以上でありうる。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の全細孔容積の上限は、好ましくは1.20cm3/g以下、より好ましくは1.10cm3/g以下、更に好ましくは1.00cm3/g以下でありうる。
活性炭素繊維の全細孔容積を上記のような範囲とすることは、吸脱着性能や圧力損失などについて優れた成形吸着体とするために好適である。
【0067】
<活性炭素繊維の平均細孔径(平均細孔直径)>
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の平均細孔径は、好ましくは1.69~4.00nmでありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の平均細孔径の下限は、好ましくは1.69nm以上、より好ましくは1.70nm以上、更に好ましくは1.72、又は1.75nm以上でありうる。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の平均細孔径の上限は任意でありうるが、好ましくは4.00nm以下、より好ましくは3.50nm以下、更に好ましくは3.00nm以下でありうる。
活性炭素繊維の平均細孔径を上記のような範囲とすることは、吸脱着性能や圧力損失などについて優れた成形吸着体とするために好適である。
【0068】
<活性炭素繊維のウルトラマイクロ孔容積:V0.7>
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維のウルトラマイクロ孔容積は、好ましくは0.05~0.30cm3/gでありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維のウルトラマイクロ孔容積の下限は、好ましくは0.05cm3/g以上、より好ましくは0.08cm3/g以上、更に好ましくは0.10cm3/g以上でありうる。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維のウルトラマイクロ孔容積の上限は、好ましくは0.30cm3/g以下、より好ましくは0.25cm3/g以下、更に好ましくは0.23、0.20、0.18、又は0.15cm3/g以下でありうる。
活性炭素繊維のウルトラマイクロ孔容積を上記のような範囲とすることは、吸脱着性能や圧力損失などについて優れた成形吸着体とするために好適である。
【0069】
<活性炭素繊維のマイクロ孔容積:V2.0>
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維のマイクロ孔容積は、好ましくは0.40~1.00cm3/gでありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維のマイクロ孔容積の下限は、好ましくは0.40cm3/g以上、より好ましくは0.50、又は0.55cm3/g以上、更に好ましくは0.60、又は0.62cm3/g以上でありうる。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維のマイクロ孔容積の上限は、好ましくは1.00cm3/g以下、より好ましくは0.90cm3/g以下、更に好ましくは0.80cm3/g以下でありうる。
活性炭素繊維のマイクロ孔容積を上記のような範囲とすることは、吸脱着性能や圧力損失などについて優れた成形吸着体とするために好適である。
【0070】
<細孔径が0.7nmより大きく2.0nm以下の細孔の細孔容積:V0.7-2.0(活性炭素繊維について)>
成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の一実施形態において、細孔径が0.7nmより大きく2.0nm以下の細孔の細孔容積V0.7-2.0は、好ましくは0.20~1.20cm3/gでありうる。より具体的には以下のとおりである。
成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の一実施形態において、細孔径が0.7nmより大きく2.0nm以下の細孔の細孔容積V0.7-2.0の下限は、好ましくは0.20cm3/g以上、より好ましくは0.30、0.36、又は0.40cm3/g以上、更に好ましくは0.43、0.45、又は0.50cm3/g以上でありうる。
成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の一実施形態において、細孔径が0.7nmより大きく2.0nm以下の細孔の細孔容積V0.7-2.0の上限は、好ましくは1.20cm3/g以下、より好ましくは1.00cm3/g以下、更に好ましくは、0.90、0.80、0.75、0.70、0.65、又は0.60cm3/g以下でありうる。
活性炭素繊維の当該細孔容積V0.7-2.0を上記のような範囲とすることは、吸脱着性能や圧力損失などについて優れた成形吸着体とするために好適である。
【0071】
<マイクロ孔の容積に占めるウルトラマイクロ孔の容積の存在比率:R0.7/2.0(活性炭素繊維について)>
成形吸着体用いられる活性炭素繊維の一実施形態において、マイクロ孔容積に占めるウルトラマイクロ孔容積の存在比率R0.7/2.0は、好ましくは15.0~60.0%でありうる。より具体的には以下のとおりである。
成形吸着体用いられる活性炭素繊維の一実施形態において、マイクロ孔容積に占めるウルトラマイクロ孔容積の存在比率R0.7/2.0の下限は、好ましくは15.0%以上、より好ましくは18.0%以上、更に好ましくは19.0%以上でありうる。
成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の一実施形態において、マイクロ孔容積に占めるウルトラマイクロ孔容積の存在比率R0.7/2.0の上限は、好ましくは60.0%以下、より好ましくは50.0%以下、更に好ましくは40.0、30.0、又は25.0%以下でありうる。
活性炭素繊維の当該ウルトラマイクロ孔容積の存在比率R0.7/2.0を上記のような範囲とすることは、吸脱着性能や圧力損失などについて優れた成形吸着体とするために好適である。
【0072】
<活性炭素繊維シートの坪量(単位面積重量)>
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いる材料の1つとなる活性炭素繊維は、活性炭素繊維シートの形態で用意されうる。活性炭素繊維シートとしては、坪量が以下のような範囲であることが好適である。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の坪量は、好ましくは50.0~200g/m2でありうる。より具体的には以下のとおりである。
坪量の下限は、好ましくは50.0g/m2以上、より好ましくは60.0g/m2以上、更に好ましくは70.0又は80.0g/m2以上でありうる。
坪量の上限は、好ましくは200g/m2以下、より好ましくは150g/m2以下、更に好ましくは120、110又は100g/m2以下でありうる。
坪量を上記のような範囲とすることは、キャニスタ内に収納できる吸着材の容量の範囲内において、吸脱着性能や圧力損失などについて優れた成形吸着体とするために好適である。
【0073】
<活性炭素繊維の調湿密度(温度23℃、相対湿度50%条件下)>
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維は、所定の密度を有するものが好適でありうる。密度としては調湿密度を指標としうる。本開示において、調湿密度は、23℃、相対湿度50%条件下にて測定した場合の密度である。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の調湿密度は、好ましくは0.010~0.400g/cm3でありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の調湿密度(23℃、相対湿度50%条件下の密度)の下限は、好ましくは0.010g/cm3以上、より好ましくは0.015、0.020、又は0.030g/cm3以上、更に好ましくは0.040、又は0.050g/cm3以上でありうる。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の調湿密度の上限は、好ましくは0.400g/cm3以下、より好ましくは0.300g/cm3以下、更に好ましくは0.200、0.150、0.140、0.130、0.120、0.110、又は0.100g/cm3以下でありうる。
【0074】
成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の調湿密度を上記のような範囲とすることによって、キャニスタ用の吸着材に要求される体積当たりの吸脱着性能について、より優れた成形吸着体とすることができる。また、上記の下限以上とすることにより、機械的特性(例えば、強度など)が低下することを避けることができる。また、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の調湿密度は、炭素繊維の繊維径や、炭素繊維解繊時の攪拌力の調整による繊維長、バインダーとの混合スラリーを吸引成形する際の吸引力の加減などにより調整することができ、調湿密度の調整は圧力損失を適正化する1つの手段となりうる。
【0075】
<活性炭素繊維の水分含有量>
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維は、所定の水分含有量を有するものが好適である。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる活性炭素繊維の水分含有量(23℃、相対湿度50%の条件下)は、好ましくは1.0~30.0%でありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、23℃、相対湿度50%の条件下における水分含有量の下限は、好ましくは1.0%以上、より好ましくは2.0%以上、更に好ましくは3.0%以上でありうる。
本発明の一実施形態において、23℃、相対湿度50%の条件下における水分含有量の上限は、好ましくは30.0、又は25.0%以下、より好ましくは20.0、又は15.0%以下、さらに好ましくは10.0、又は8.0%以下でありうる。
上記の条件下における活性炭素繊維の水分含有量を上記のような範囲とすることは、吸脱着性能に優れた成形吸着体とするために好適である。
【0076】
4.粒状活性炭
本開示において、粒状活性炭とは、平均粒子径が100~3000μmの大きさの活性炭のことをいう。
【0077】
本発明の一実施形態において、活性炭の1種として、粒状活性炭が用いられる。以下、本発明において用いうる粒状活性炭の実施形態について更に詳説する。本発明の一実施形態において、キャニスタ用成形吸着体に用いうる粒状活性炭は、さらに下記の所定の項目のうちの少なくとも1つ又は任意の2つ以上の条件を満たすことにより、より好ましい実施形態としうる。下記の所定の項目の好ましい組み合わせは、求められる要件などに応じて所望により任意に選択することができる。
【0078】
<粒状活性炭の粒子径平均値>
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭の平均粒子径は、好ましくは100~3000μmでありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭の粒子径平均値の下限は、好ましくは100μm以上、より好ましくは、150、200、250、300、350、又は400μm以上、更に好ましくは450μm以上でありうる。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭の粒子径平均値の上限は、好ましくは3000μm以下、より好ましくは、2500、2000、1500、1000、又は800μm以下、更に好ましくは600μm以下でありうる。
成形吸着体に用いる粒状活性炭の粒子径平均値が上記の範囲であると、より圧力損失を抑制できる成形吸着体とすることができる。
【0079】
<粒状活性炭の粒子径変動係数>
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭の粒子径変動係数は、好ましくは0.01~2.500でありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭の粒子径変動係数の下限は、好ましくは0.01以上、より好ましくは、0.025、0.050、0.075、0.100、0.125、又は0.150以上、更に好ましくは0.175以上でありうる。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭の粒子径変動係数の上限は、好ましくは2.500以下、より好ましくは、2.000、1.500、1.000、0.800、0.600、0.500、0.400、又は0.300以下、更に好ましくは0.200以下でありうる。
成形吸着体に用いられる粒状活性炭の粒子径変動係数が上記の範囲であると、より圧力損失を抑制できる成形吸着体とすることができる。
【0080】
<粒状活性炭の比表面積>
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭の比表面積は、好ましくは1100~約2400m2/gでありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭の比表面積の下限は、好ましくは1100m2/g以上、より好ましくは1200、1300、1400、1500、又は1600m2/g以上、更に好ましくは、1700、又は1800m2/g以上でありうる。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭の比表面積は、一般に広い方が吸着性能の観点からは好ましいが、キャニスタ用の吸着材の場合、比表面積の上限は、概ね2400、2300、2200、又は2100m2/g以下でありうる。
粒状活性炭の比表面積を上記のような範囲とすることは、吸脱着性能について優れた成形吸着体とするために好適である。また、広めの比表面積を維持しつつ、圧力損失を抑制するために好適である。
【0081】
<粒状活性炭の全細孔容積>
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭の全細孔容積は、好ましくは0.50~1.20cm3/gでありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭の全細孔容積の下限は、好ましくは0.50cm3/g以上、より好ましくは0.60、又は0.70cm3/g以上、更に好ましくは0.75cm3/g以上でありうる。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭の全細孔容積の上限は、好ましくは1.20cm3/g以下、より好ましくは1.10cm3/g以下、更に好ましくは1.00cm3/g以下でありうる。
粒状活性炭の全細孔容積を上記のような範囲とすることは、吸脱着性能や圧力損失などについて優れた成形吸着体とするために好適である。
【0082】
<粒状活性炭の平均細孔径(平均細孔直径)>
本発明の一実施形態において、成形吸着体に含有される粒状活性炭の平均細孔径は、好ましくは1.69~4.00nmでありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭の平均細孔径の下限は、好ましくは1.69nm以上、より好ましくは1.70nm以上、更に好ましくは1.72、又は1.75nm以上でありうる。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭の平均細孔径の上限は任意でありうるが、好ましくは4.00nm以下、より好ましくは3.50nm以下、更に好ましくは3.00nm以下でありうる。
粒状活性炭の平均細孔径を上記のような範囲とすることは、吸脱着性能や圧力損失などについて優れた成形吸着体とするために好適である。
【0083】
<粒状活性炭のウルトラマイクロ孔容積:V0.7>
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭のウルトラマイクロ孔容積は、好ましくは0.05~0.30cm3/gでありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭のウルトラマイクロ孔容積の下限は、好ましくは0.05cm3/g以上、より好ましくは0.08cm3/g以上、更に好ましくは0.10cm3/g以上でありうる。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭のウルトラマイクロ孔容積の上限は、好ましくは0.30cm3/g以下、より好ましくは0.25cm3/g以下、更に好ましくは0.23、0.20、0.18、又は0.15cm3/g以下でありうる。
粒状活性炭のウルトラマイクロ孔容積を上記のような範囲とすることは、吸脱着性能や圧力損失などについて優れた成形吸着体とするために好適である。
【0084】
<粒状活性炭のマイクロ孔容積:V2.0>
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭のマイクロ孔容積は、好ましくは0.40~1.00cm3/gでありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭のマイクロ孔容積の下限は、好ましくは0.40cm3/g以上、より好ましくは0.50、又は0.55cm3/g以上、更に好ましくは0.60、又は0.62cm3/g以上でありうる。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭のマイクロ孔容積の上限は、好ましくは1.00cm3/g以下、より好ましくは0.90cm3/g以下、更に好ましくは0.80cm3/g以下でありうる。
粒状活性炭のマイクロ孔容積を上記のような範囲とすることは、吸脱着性能や圧力損失などについて優れた成形吸着体とするために好適である。
【0085】
<細孔径が0.7nmより大きく2.0nm以下の細孔の細孔容積:V0.7-2.0(粒状活性炭)>
成形吸着体に用いられる粒状活性炭の一実施形態において、細孔径が0.7nmより大きく2.0nm以下の細孔の細孔容積V0.7-2.0は、好ましくは0.20~1.20cm3/gでありうる。より具体的には以下のとおりである。
成形吸着体に用いられる粒状活性炭の一実施形態において、細孔径が0.7nmより大きく2.0nm以下の細孔の細孔容積V0.7-2.0の下限は、好ましくは0.20cm3/g以上、より好ましくは0.30、0.36、又は0.40cm3/g以上、更に好ましくは0.43、0.45、又は0.50cm3/g以上でありうる。
成形吸着体に用いられる粒状活性炭の一実施形態において、細孔径が0.7nmより大きく2.0nm以下の細孔の細孔容積V0.7-2.0の上限は、好ましくは1.20cm3/g以下、より好ましくは1.00cm3/g以下、更に好ましくは、0.90、0.80、0.75、0.70、0.65、又は0.60cm3/g以下でありうる。
粒状活性炭の当該細孔容積V0.7-2.0を上記のような範囲とすることは、吸脱着性能や圧力損失などについて優れた成形吸着体とするために好適である。
【0086】
<マイクロ孔の容積に占めるウルトラマイクロ孔の容積の存在比率:R0.7/2.0(粒状活性炭について)>
成形吸着体用いられる粒状活性炭の一実施形態において、マイクロ孔容積に占めるウルトラマイクロ孔容積の存在比率R0.7z/2.0は、好ましくは15.0~60.0%でありうる。より具体的には以下のとおりである。
成形吸着体用いられる粒状活性炭の一実施形態において、マイクロ孔容積に占めるウルトラマイクロ孔容積の存在比率R0.7/2.0の下限は、好ましくは15.0%以上、より好ましくは18.0%以上、更に好ましくは19.0%以上でありうる。
成形吸着体に用いられる粒状活性炭の一実施形態において、マイクロ孔容積に占めるウルトラマイクロ孔容積の存在比率R0.7/2.0の上限は、好ましくは60.0%以下、より好ましくは50.0%以下、更に好ましくは40.0、30.0、又は25.0%以下でありうる。
粒状活性炭の当該ウルトラマイクロ孔容積の存在比率R0.7/2.0を上記のような範囲とすることは、吸脱着性能や圧力損失などについて優れた成形吸着体とするために好適である。
【0087】
<粒状活性炭の調湿密度(温度23℃、相対湿度50%条件下)>
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭は、所定の密度を有するものが好適でありうる。密度としては調湿密度を指標としうる。本開示において、調湿密度は、23℃、相対湿度50%条件下にて測定した場合の密度である。
【0088】
本発明の一実施形態において、浄水用成形体に用いられる粒状活性炭の調湿密度(23℃、相対湿度50%条件下の密度)は、好ましくは0.10~0.80g/cm3でありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭の調湿密度(23℃、相対湿度50%条件下の密度)の下限は、好ましくは0.10g/cm3以上、より好ましくは、0.15、0.2、0.25、又は0.30g/cm3以上でありうる。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭の調湿密度の上限は、好ましくは0.80g/cm3以下、より好ましくは、0.70、0.60、0.55、0.50、又は0.45g/cm3以下でありうる。
上記の条件下における水分含有量を上記のような範囲とすることは、吸脱着性能や圧力損失などについて優れた成形吸着体とするために好適である。
【0089】
<粒状活性炭の水分含有量>
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭は、所定の水分含有量を有するものが好適である。
本発明の一実施形態において、成形吸着体に用いられる粒状活性炭の水分含有量(23℃、相対湿度50%の条件下)は、好ましくは1.0~30.0%でありうる。より具体的には以下のとおりである。
本発明の一実施形態において、23℃、相対湿度50%の条件下における水分含有量の下限は、好ましくは1.0%以上、より好ましくは2.0%以上、更に好ましくは3.0%以上でありうる。
本発明の一実施形態において、23℃、相対湿度50%の条件下における水分含有量の上限は、好ましくは30.0、又は25.0%以下、より好ましくは20.0、又は15.0%以下、さらに好ましくは10.0、又は8.0%以下でありうる。
上記の条件下における水分含有量を上記のような範囲とすることは、吸脱着性能や圧力損失などについて優れた成形吸着体とするために好適である。
【0090】
本発明の一実施形態において、成形吸着体は、活性炭素繊維、粒状活性炭、およびバインダー以外の他の構成成分が含まれることを排除しないが、他の構成成分の添加は、圧力損失の抑制に係る効果を、阻害しないか、又は、実質的な意義を失わない程度に留められることが好ましい。
【0091】
5.キャニスタ
本発明の成形吸着体は、自動車キャニスタに収納される吸着材として好適である。すなわち、本発明は、他の一実施形態として、自動車キャニスタも提供することができる。
【0092】
本発明の一実施形態において、自動車キャニスタは、吸着材として、上述の成形吸着体を搭載したものである。自動車キャニスタの構造については、特に制限はなく、一般的な構造のものを採用しうる。例えば、自動車キャニスタとしては、以下のような構造を有するものが挙げられる。
【0093】
筐体と、
筐体内において吸着材を収納する吸着材室と、
吸着材室とエンジンとの間をガスが移動可能に連通するための第1の開口部と、
吸着材室と燃料タンクとの間をガスが移動可能に連通するための第2の開口部と、
吸着材室または外気から所定の圧力が負荷されたときに開口し、吸着材室と外気との間をガスが移動可能に連通するための第3の開口部と、
を備えるキャニスタ。
【0094】
本発明の一実施形態において、キャニスタには、吸着材として上記本発明の成形吸着体を用いうる。上記のとおり、上記本発明の成形吸着体は圧力損失を少なくすることができるため、隙間なく充填しても、従来の活性炭素繊維シートを充填する場合などよりも圧力損失を抑制することができる。
【0095】
第1、第2、および第3の各開口部は、ガスが出たり入ったりする送出入口である。ガスの送出入口である各開口部の配置は、特に制限はないが、外気の送出入口である第3の開口部は、第1および/または第2の開口部との間でガスが移動する際に、ガスが吸着材を十分に通過する位置に配置されることが好ましい。例えば、第1および第2の開口部を、筐体の第1の側面部に設け、第3の開口部を第1の側面部の対面に位置する第2の側面部に設けるなどの実施形態を採りうる。
【0096】
吸着材室は、複数の室に分けて設けてもよい。例えば、吸着材室は、隔壁により2又はそれ以上の区画に区分けされていてもよい。隔壁としては、通気性のある多孔板などを用いうる。また、第1の筐体とは別に外付けの第2筐体を設け、第1の筐体と第2の筐体とをガス通路を介して連通するようにして、吸着材室を追加装備してもよい。このように複数の区画または筐体が設けられる場合、好ましい一実施形態として、各区画又は筐体単位で、エンジン又は燃料タンクからガスが流入する第1又は第2の開口部から、第3の開口部側へ向かって、吸着容量が順次小さくなるように、吸着材または吸着材室を配置しうる。
【0097】
具体的な一例として、本体キャニスタ(第1の筐体)とこれに対し外気の取り入れ口側に付加された第2のキャニスタ(第2の筐体)とを備えた複合キャニスタを例示しうる。このように複数の区画または筐体を設ける場合、エンジン又は燃料タンクから最初に蒸散ガスが流入する区画又は筐体を、最も収納容積が大きな本体(第1区画または第1筐体)とし、当該本体には従来の廉価な活性炭を収納させる一方、相対的に収納容積の小さい第2区画又は第2筐体以後に、本発明の低濃度の吸脱着性能に優れた成形吸着体を収納することにより、コストを抑えつつ、高性能なキャニスタとすることも可能である。
【0098】
複数の吸着材室がある場合、エンジン又は燃料タンクからみてより後段に位置する吸着材室(すなわち、外気の送出入口により近い位置に配置される吸着材室)では、前層から流入してくる蒸散燃料ガスの濃度は、より薄くなる。そのため、0.2%程度の低濃度でのn-ブタン吸着能力が高い活性炭は、エンジン又は燃料タンクからみてより後段に位置する第2区画若しくは第2筐体又はそれよりさらに後段の吸着材室に収納する吸着材として好適である。また、活性炭を外気の取り入れ口により近い吸着材室に用いる場合、本発明の成形吸着体は、パージによる有効吸脱着量が高いため、自動車を長時間停車した場合の蒸散燃料ガスのリーク量を低減することができるという点でも自動車キャニスタに用いる吸着材として好適である。
【0099】
したがって、好ましいキャニスタの一実施形態として、例えば、以下のような形態を挙げることができる。
前記キャニスタは、自動車用のキャニスタであって、吸着材を収納する、主室および副室を備え、
前記副室は、前記主室よりも、前記吸着材を収納する容積が小さく、且つ、外気へ連通する開口部により近い位置に配置されており、
上記本発明の吸着材が、前記副室に収納されている、
キャニスタ。
【0100】
上記の実施形態において、主室および副室は、それぞれ1つでも良いし、それぞれが2つ以上設けられてもよい。また、吸着材室が3つ以上ある場合には、本発明の成形吸着体は、副室の少なくとも1つの吸着材室に収納されていればよく、好ましくは、外気へ連通する開口部に最も近い副室に設けられうる。
【0101】
6.成形吸着体の製造方法
上記本発明の成形吸着体は、活性炭素繊維等を含む吸着材料を所定の形に成形することにより得ることができる。活性炭素繊維としては、例えば、上記にて好ましい指標として示した要件(比表面積や、V0.7-2.0、R0.7/2.0など)を満たすものを用いうる。
【0102】
本発明の一実施形態において、成形吸着体は、活性炭素繊維と、粒状活性炭と、バインダーを混合して成形することにより得ることができる。また、本発明の他の一実施形態として、活性炭素繊維シートの表面に粒状活性炭を付着させたものをバインダーを用いて貼り合わせるようにして積層体を形成してもよい。
【0103】
活性炭素繊維は、例えば、所定の繊維径を有する繊維を炭化、賦活化して製造することができる。炭化、賦活化は、一般的な方法を採用しうる。
以下では、前駆体シート(原料シート)を用いて、活性炭素繊維シートを製造する実施形態について例示する。
【0104】
6-1.原料シート(前駆体繊維シート)の調製
<繊維の種類>
原料シートを構成する繊維としては、例えば、セルロース系繊維、ピッチ系繊維、PAN系繊維、フェノール樹脂系繊維などが挙げられ、好ましくはセルロース系繊維が挙げられる。
【0105】
<セルロース系繊維>
セルロース系繊維とは、セルロース及び/又はその誘導体を主成分として構成される繊維である。セルロース、セルロース誘導体は、化学合成品、植物由来、再生セルロース、バクテリアが産生したセルロースなど、その由来はいずれであってもよい。セルロース系繊維として好ましくは、例えば、樹木などから得られる植物系セルロース物質で形成された繊維、および、植物系セルロース物質(綿、パルプなど)に化学処理を施して溶解させて得られる長い繊維状の再生セルロース系物質から構成された繊維などを用いうる。また、この繊維には、リグニンやヘミセルロースなどの成分が含まれていても構わない。
【0106】
セルロース系繊維(植物系セルロース物質、再生セルロース物質)の原料としては、例えば、綿(短繊維綿、中繊維綿、長繊維綿、超長綿、超・超長綿など)、麻、竹、こうぞ、みつまた、バナナ、および被嚢類などの植物性セルロース繊維;銅アンモニア法レーヨン、ビスコース法レーヨン、ポリノジックレーヨン、竹を原料とするセルロースなどの再生セルロース繊維;有機溶剤(NメチルモルフォリンNオキサイド)紡糸される精製セルロース繊維;並びに、ジアセテートやトリアセテートなどのアセテート繊維、などが挙げられる。これらの中では、入手のし易さから、キュプラアンモニウムレーヨン、ビスコース法レーヨン、精製セルロース繊維から選ばれる少なくとも一種類であることが好ましい。
【0107】
セルロース系繊維を構成する単繊維の径は、好ましくは、5~75μm、密度は1.4~1.9m3/gである。
【0108】
セルロース系繊維の形態は、特に限定されるものではなく、目的に合わせて、原糸(未加工糸)、仮撚糸、染色糸、単糸、合撚糸、カバリングヤーン等に調製したものを用いることができる。また、セルロース系繊維が2種以上の原料を含む場合には、混紡糸、混撚糸等としてもよい。さらに、セルロース系繊維として、上記した各種形態の原料を、単独でまたは2種以上組み合わせて使用してもよい。これらの中では、複合材料の成型性や機械強度の両立から無撚糸であることが好ましい。
【0109】
<繊維シート>
繊維シートは、多数の繊維を薄く広いシート状に加工したもののことをいい、織物、編み物、および不織布などが含まれる。
【0110】
セルロース系繊維を製織する方法について特に制限はなく、一般的な方法を用いることができ、また、その織地の織組織も、特に制限はなく、平織、綾織、朱子織の三原組織を用いうる。
【0111】
セルロース系繊維で形成された織物は、セルロース系繊維の経糸及び緯糸同士の隙間が、好ましくは0.1~0.8mm、より好ましくは0.2~0.6mm、さらに好ましくは0.25~0.5mmでありうる。さらに、セルロース系繊維からなる織物の目付は、好ましくは50~500g/m2、より好ましくは100~400g/m2でありうる。
【0112】
セルロース系繊維及びセルロース系繊維からなる織物を上記範囲とすることにより、この織物を加熱処理して得られる炭素繊維織物は、強度に優れたものとすることができる。
【0113】
不織布の製造方法も、特に限定されないが、例えば、適当な長さに切断された前述の繊維を原料とし乾式法または湿式法などを用いて繊維シートを得る方法や、エレクトロスピニング法などを用いて溶液から直接繊維シートを得る方法などが挙げられる。さらに不織布を得た後に繊維同士を結合させる目的でレジンボンド、サーマルボンド、スパンレース、ニードルパンチ等による処理を加えてもよい。
【0114】
6-2.触媒
製法実施形態1では、上記のようにして用意された原料シートに、触媒を保持させる。原料シートに触媒を保持させて炭化処理を行い、さらに水蒸気や二酸化炭素、空気ガス等を用いて賦活化し、多孔質の活性炭素繊維シートを得ることができる。触媒としては、例えば、リン酸系触媒、有機スルホン酸系触媒などを用いうる。
【0115】
<リン酸系触媒>
リン酸系触媒としては、例えば、リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸、ホスフィン酸等のリンのオキシ酸、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ジメチルホスホノプロパンアミド、ポリリン酸アンモニウム、ポリホスホニトリルクロライド、およびリン酸、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム塩またはトリス(1-アジリジニル)ホスフィンオキサイドと尿素、チオ尿素、メラミン、グアニン、シアナミツド、ヒドラジン、ジシアンジアミドまたはこれらのメチロール誘導体との縮合物などが挙げられ、好ましくはリン酸水素二アンモニウムが挙げられる。リン酸系触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。リン酸系触媒を水溶液として用いる場合、その濃度は、好ましくは0.05~2.0mol/L、より好ましくは0.1~1.0mol/Lでありうる。
【0116】
<有機スルホン酸系触媒>
有機スルホン酸としては、1又は複数のスルホ基を有する有機化合物を用いることができ、例えば脂肪族系、芳香族系など種々の炭素骨格にスルホ基が結合した化合物が利用可能である。有機スルホン酸系触媒としては、取扱いの観点から、低分子量のものが好ましい。
【0117】
有機スルホン酸系触媒としては、例えば、R-SO3H(式中、Rは炭素原子数1~20の直鎖/分岐鎖アルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、または、炭素原子数6~20のアリール基を表し、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基はそれぞれアルキル基、水酸基、ハロゲン基で置換されていても良い。)で表される化合物が挙げられる。有機スルホン酸系触媒としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、1-ヘキサンスルホン酸、ビニルスルホン酸、シクロヘキサンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、p-フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸などが挙げられる。このうち、好ましくは、メタンスルホン酸を用いうる。また、有機スルホン酸系触媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
【0118】
有機スルホン酸を水溶液として用いる場合、その濃度は、好ましくは0.05~2.0mol/L、より好ましくは0.1~1.0mol/Lでありうる。
【0119】
<混合触媒>
上記、リン酸系触媒および有機スルホン酸系触媒は、混合して、混合触媒として用いてもよい。混合比は適宜調整してよい。
【0120】
<触媒の保持>
原料シートに対し触媒を保持させる。ここで「保持」とは、触媒が原料シートに接触した状態を保つことを意味し、付着、吸着、含浸などの諸形態でありうる。触媒を、保持させる方法には特に制限はないが、例えば、触媒を含む水溶液に浸漬する方法、触媒を含む水溶液を原料シートに対して振りかける方法、気化した触媒蒸気に接触させる方法、触媒を含む水溶液に原料シートの繊維を混ぜて抄紙する方法などが挙げられる。
【0121】
十分に炭化させる観点から、好ましくは、触媒を含む水溶液に原料シートを浸漬し、繊維内部まで触媒を含浸させる方法を用いることができる。触媒を含む水溶液に浸漬する際の温度は特に制限されないが、室温が好ましい。浸漬時間は、好ましくは10秒~120分間、より好ましくは20秒~30分間である。浸漬により、原料シートを構成する繊維に、例えば1~150質量%、好ましくは5~60質量%の触媒が吸着する。浸漬後、原料シートを取り出して、乾燥させることが好ましい。乾燥方法としては、例えば室温で放置、乾燥機に導入する、などのいずれの方法であってもよい。乾燥は、触媒を含む水溶液から取り出した後、余分の水分が蒸発して試料重量の変化がなくなるまで行えばよい。例えば室温乾燥では、乾燥時間は0.5日以上放置すればよい。乾燥により質量変化が殆どなくなった後、触媒を保持した原料シートを炭化する工程へと進む。
【0122】
6-3.炭化処理
触媒を保持させた原料シートを用意した後、それを炭化処理する。活性炭素繊維シートを得るための炭化処理は、一般的な活性炭の炭化方法に沿って行うことができるが、好ましい実施形態として、以下のようにして行うことができる。
【0123】
炭化処理は、通常、不活性ガス雰囲気中で行う。本発明において、不活性ガス雰囲気とは、炭素が燃焼反応しにくく炭化する無酸素又は低酸素雰囲気のことを意味し、好ましくは、例えば、アルゴン、窒素などのガス雰囲気でありうる。
【0124】
触媒を保持させた原料シートは、上述の所定のガス雰囲気中で、加熱処理し、炭化させる。
【0125】
本発明の一実施形態において、炭化処理における加熱温度は、好ましくは300~1400℃でありうる。より具体的には以下のとおりである。
加熱温度の下限は、好ましくは300℃以上、より好ましくは350℃以上、さらに好ましくは400℃以上又は750℃以上でありうる。
加熱温度の上限は、好ましくは1400℃以下、より好ましくは1300℃以下、さらに好ましくは1200℃以下又は1000℃以下でありうる。
このような加熱温度設定とすることにより、繊維形態が維持された炭素繊維シートを得ることができる。加熱温度が上記の下限以下であると、炭素繊維の炭素含有量が80%以下で炭化が不十分となりやすい。
【0126】
本発明の一実施形態において、炭化処理における加熱処理時間は、昇温の時間も含めて、好ましくは10~180分でありうる。より具体的には以下のとおりである。
加熱処理時間の下限は、昇温の時間も含め、好ましくは10分以上、より好ましくは11分以上、さらに好ましくは12分、15分、20分、25分以上、より好ましくは30分以上でありうる。
加熱処理時間の上限は任意でありうるが、好ましくは180分以下、より好ましくは160分、さらに好ましくは140分以下でありうる。
原料シートに十分に触媒を含浸させ、上記の好適な加熱温度に設定し、加熱処理時間を調整することにより、細孔形成の進行程度を調整することができ、比表面積、各種細孔の容積、平均細孔直径などの多孔体としての物性を調整することができる。
加熱処理時間が上記の下限より少ないと、炭化が不十分となりやすい。
【0127】
また加熱処理としては、上記のような加熱処理(一次加熱処理という場合がある)後に、さらに所定のガス雰囲気中で、更に再加熱処理を行うこともできる。すなわち、炭化処理は、温度などの条件が異なる加熱処理を複数の段階に分けて行ってもよい。所定の条件で一次加熱処理と再加熱処理を行うことにより、物性を調整し、炭化、後の賦活化をより良好に進行させ、吸脱着性に優れた活性炭素繊維シートを得ることができる場合がある。
【0128】
6-4.賦活化処理
本発明の一実施形態において、賦活化処理としては、例えば上記加熱処理後に連続して、水蒸気や二酸化炭素を供給し適切な賦活温度で所定時間保持することで行うことができ、活性炭素繊維シートを得ることができる。
【0129】
本発明の一実施形態において、賦活化処理における加熱温度は、好ましくは300~1400℃でありうる。より具体的には以下のとおりである。
賦活温度の下限は、好ましくは300℃以上、より好ましくは350℃以上、更に好ましくは、400、500、600、700又は750℃以上でありうる。
他方、賦活温度の上限は、好ましくは1400℃以下、より好ましくは1300℃以下、さらに好ましくは1200又は1000℃以下でありうる。
なお、加熱処理後に連続して賦活処理を行う場合、加熱処理温度と同等程度に調整することが望ましい。
【0130】
賦活時間の下限は、好ましくは1分以上、より好ましくは5分以上でありうる。
賦活時間の上限は任意でありうるが、好ましくは180分以下、より好ましくは160分以下、さらに好ましくは140分以下、100分以下、50分以下、30分以下でありうる。
【0131】
6-5.成形体の作製
活性炭素繊維と粒状活性炭とバインダーを含む成形体の加工方法には、特に制限はないが、例えば、両者の混合物を用意して、それを成形加工することにより得ることできる。一実施形態としては、例えば、次のようにして成形体を作製することができる。
【0132】
<活性炭素繊維、粒状活性炭、およびバインダーを含むスラリーの調製>
予め用意した活性炭素繊維シートとバインダーを、水に混合し、ミキサーなどの攪拌手段にて解繊と分散を行って両者を混合し、両者を含むスラリー(第1のスラリー)を得ることができる。ミキサーに投入する活性炭素繊維シートは、ミキサーの規模などに応じて、適宜大きさの小片にしてから投入してもよい。
【0133】
第1のスラリーに、更に粒状活性炭を加え、スパチュラなどの攪拌手段を用いて、粒状活性炭を混合し、活性炭素繊維、粒状活性炭、およびバインダーを含むスラリー(第2のスラリー)を得ることができる。粒状活性炭を分散させる際には、粒状活性炭が砕けないように、スパチュラなどにより緩やかな攪拌を行うことが好適である。
【0134】
<成形体の形成>
上記のようにして得た、活性炭素繊維と粒状活性炭とバインダーを含む第2スラリーを、所望の形状の金型に流し込み、押圧しながら水分を脱水し、その後乾燥させて、成形された吸着体を得ることができる。
【0135】
<積層吸着体の作製>
本発明の更に別の一実施形態として、粒状活性炭を活性炭素繊維シートの間に挟持させた形態の成形吸着体は、例えば、次のようにして製造することができる。まず活性炭素繊維シートを用意する。活性炭素繊維シートどうしを貼り合わせる主面に、粒状活性炭を付着させる。例えば、粒状活性炭とバインダーを含む混合スラリーを用意して、当該混合スラリーを活性炭素繊維シートに塗布してもよいし、または、粒状活性炭の単体スラリーを先に活性炭素繊維シートに付着させた後に、バインダーの単体スラリーを塗布してもよい。
【実施例】
【0136】
以下に実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、本発明の技術的範囲が下記の実施例に限定されるものではない。
【0137】
活性炭素繊維、粒状活性炭および成形吸着体の物性および性能に関する各種項目について、下記に示す方法により、測定および評価を行った。なお、本発明を規定する各種の数値は以下の測定方法および評価方法により求めることができる。
【0138】
なお、比表面積、全細孔容積、および平均細孔直径に関する、N2吸着BET解析方法の参考規格として、JIS K 1477の吸着性能に関わる基本物性を参照した。また、ウルトラマイクロ孔容積、およびマイクロ孔容積に関しては、N2吸着GCMC(GCMC:Grand Canonical Monte Carlo method)によるシミュレーション解析法を参考規格として参照した。
【0139】
<比表面積>
測定用サンプル(活性炭素繊維シート、粒状活性炭、または成形吸着体、以下同様。)を約30mg採取し、200℃で20時間真空乾燥して秤量し、高精度ガス/蒸気吸着量測定装置BELSORP-maxII(マイクロトラック・ベル社)を使用して測定した。液体窒素の沸点(77K)における窒素ガスの吸着量を相対圧が10-8オーダー~0.990の範囲で測定し、試料の吸着等温線を作成した。この吸着等温線を、解析相対圧範囲を吸着等温線I型(ISO9277)の条件で自動的に決定したBET法により解析し、重量当たりのBET比表面積(単位:m2/g)を求め、これを比表面積(単位:m2/g)とした。
【0140】
<全細孔容積>
上記比表面積の項で得られた等温吸着線の、相対圧0.960での結果より1点法での全細孔容積(単位:cm3/g)を算出した。
【0141】
<平均細孔径(平均細孔直径)単位:nm>
次式3により算出した。
平均細孔直径=4×全細孔容積×103÷比表面積 ・・・(式3)
【0142】
<ウルトラマイクロ孔容積>
上記比表面積の項で得られた等温吸着線を、高精度ガス/蒸気吸着量測定装置BELSORP-maxII(マイクロトラック・ベル社)付属の解析ソフトBELMasterを用いて、解析設定を「スムージング(細孔分布の解析全点で前後1点を使用した移動平均処理)」、「分布関数:No-assumption」、「細孔径の定義:Solid and Fluid Def. Pore Size」、「Kernel:Slit-C-Adsorption」としたGCMC法によって解析し、得られた吸着時の細孔分布曲線の結果から、0.7nmの積算細孔容積を読み取り、ウルトラマイクロ孔容積(単位:cm3/g)とした。
【0143】
<マイクロ孔容積>
上記比表面積の項で得られた等温吸着線を、高精度ガス/蒸気吸着量測定装置BELSORP-maxII(マイクロトラック・ベル社)付属の解析ソフトBELMasterを用いて、解析設定を「スムージング(細孔分布の解析全点で前後1点を使用した移動平均処理)」、「分布関数:No-assumption」、「細孔径の定義:Solid and Fluid Def. Pore Size」、「Kernel:Slit-C-Adsorption」としたGCMC法によって解析し、得られた吸着時の細孔分布曲線の結果から、2.0nmの積算細孔容積を読み取り、マイクロ孔容積(単位:cm3/g)とした。
【0144】
<シート坪量>
測定用サンプル(活性炭素繊維シートなど)を、温度23±2℃、相対湿度50±5%の環境下で12時間以上静置し、重量と縦横の寸法からシート坪量(単位:g/m2)を求めた。
【0145】
<シート厚み>
測定用サンプル(活性炭素繊維シートなど)を、温度23±2℃、相対湿度50±5%の環境下で12時間以上静置し、デジタル小型側厚器FS-60DS(大栄科学精器製作所社)を用いて、0.3kPaの荷重をかけた際のシート厚さ(単位:mm)を測定した。
【0146】
<シート調湿密度:単位:g/cm3>
次式4により算出した。
シート密度=シート坪量÷シート厚み÷103 ・・・(式4)
【0147】
<シート水分>
測定用サンプル(活性炭素繊維シートなど)を、温度23±2℃、相対湿度50±5%の環境下で12時間以上静置後、試料を0.5~1.0g採取し、乾燥機で115±5℃3時間以上乾燥させた際の重量変化から、水分(単位:%)を求めた。
【0148】
<成形吸着体の採寸>
成形吸着体の寸法は、ノギス、定規などにより採寸して求めた。成形吸着体の乾燥重量を電子天秤で測定した。
【0149】
<成形吸着体の乾燥密度:単位:g/cm3>
次式5により算出した。
密度=成形吸着体の乾燥重量÷成形吸着体の体積 ・・・(式5)
成形吸着体の体積は、成形吸着体の採寸結果から算出した。
【0150】
<n-ブタン吸脱着性能>
米国試験材料協会規格Standard Test Method for Determination of Butane Working Capacity of Activated Carbon(ASTM D5228-16)を参考に、n-ブタンガスの濃度、流量、脱着させる空気の流量を独自に設定し、試験した。
【0151】
成形吸着体を乾燥機で115±5℃3時間以上乾燥し、冷却後に乾燥重量を測定した。空の吸着容器(断名形状が成形吸着体と同一でガスを流通可能なステンレス製枠容器)の質量を測定してから、成形吸着体を吸着容器へ充填した。
【0152】
次いで、試験管を流通装置の中に設置して、試験温度25℃で、空気で0.2%濃度に希釈したn-ブタンガス1.0L/分を試験管に流しn-ブタンを吸着させる。試験管を流通装置から取り外し、質量を測定する。この0.2%濃度n-ブタンガスの流通を、一定質量が達成されるまで、すなわち吸着量が飽和するまで繰り返した。
試験管を流通装置に再設置し、試験温度25℃で空気20.0L/分を12分間試験管に流し、n-ブタンを脱着させた。試験管を流通装置から取り外し、質量を測定した。
【0153】
<0ppm維持時間の測定>
このn-ブタンを流通した際の吸着と脱着の濃度変化を、携帯用ガス検知器コスモテクター(型番:XP-3160、メーカー:新コスモス電機株式会社)にて、6秒毎に測定した。
1回目の吸着と脱着を繰り返した後、2回目吸着の濃度変化について、定量下限(25ppm)未満の場合を0ppmとして、最初から継続して0ppmを維持した時間を0ppm維持時間(分)とした。
【0154】
この吸着と脱着の操作を計2回繰り返し、次式6、7、8、および9を用いて、1回目吸着量、有効吸脱着量、有効吸脱着量率、有効吸脱着率を算出した。
【0155】
<式6>
1回目吸着量=1回目n-ブタン吸着量
なお、各数値の単位は次のとおりである。
1回目n-ブタン吸着量(単位:g)
【0156】
<式7>
有効吸脱着量=(2回目n-ブタン吸着量+2回目n-ブタン脱着量)÷2
なお、各数値の単位は次のとおりである。
有効吸脱着量(単位:g)
2回目n-ブタン吸着量(単位:g)
2回目n-ブタン脱着量(単位:g)
【0157】
<式8>
有効吸脱着量率=有効吸脱着量÷成形吸着体乾燥重量×100
なお、各数値の単位は次のとおりである。
有効吸脱着量率(単位:wt%)
有効吸脱着量(単位:g)
成形吸着体乾燥重量(単位:g)
【0158】
<式9>
有効吸脱着率=有効吸脱着量÷1回目吸着量×100
なお、各数値の単位は次のとおりである。
有効吸脱着率(単位:%)
有効吸脱着量(単位:g)
1回目吸着量(単位:g)
【0159】
<圧力損失の測定>
実施例、参考例および比較例の各成形吸着体を用意した。成形吸着体を収納する容器として、円柱状の容器であって、一方の端面および他方の対端面がそれぞれ開口しており、端面に対して直交方向に通風可能な枠体(枠容器)を用意した。枠容器は、各端面の直径(内径)が6.2cm(すなわち、開口面の面積:30.18cm2)のものを用意した。用意した成形吸着体を、隙間が出来ないように枠容器の内側に充填し、圧力損失を測定するための試験サンプルとした。
【0160】
圧力損失は、以下のようにして測定した。上記のとおり用意した試験サンプルに60L/分の空気を流通させ、testo 510差圧計(株式会社テストー社)を用いて試験サンプル出入り口の差圧を測定した結果を、圧力損失(kPa)とした。
【0161】
<(M1)活性炭素繊維シートの作製>
レーヨン繊維(17dtex、繊維長76mm)からなる坪量400g/m2のニードルパンチ不織布に6~10%リン酸水素二アンモニウム水溶液を含浸し、絞液後、乾燥して、8~10重量%付着させた。得られた前処理不織布を窒素雰囲気中、900℃まで40分で昇温し、この温度で3分保持した。引き続きその温度で露点71℃の水蒸気を含有する窒素気流中で17分間賦活処理を行い、活性炭素繊維シートを得た。
【0162】
<(M2)活性炭素繊維の作製>
カード機を通し坪量400g/m2のウェブ状のレーヨン繊維(56dtex、繊維長102mm)に6~10%リン酸水素二アンモニウム水溶液を含浸し、絞液後、乾燥して、8~10重量%付着させた。得られた前処理繊維を窒素雰囲気中、900℃まで45分で昇温し、この温度で3分保持した。引き続きその温度で露点71℃の水蒸気を含有する窒素気流中で17分間賦活処理を行い、活性炭素繊維を得た。
【0163】
<参考例1(活性炭素繊維:粒状活性炭=100:0)>
繊維状バインダーとして、日本エクスラン工業株式会社製アクリル繊維50TWF5重量部(0.28g)を、水0.5Lとともにミキサーに入れ30秒間、解繊と分散を行い、次いで上記(M1)にて得た活性炭素繊維シート100重量部(5.60g)と水0.5Lを加え更に10秒間、解繊と分散を行い、解繊した活性炭素繊維が分散したスラリー(第1のスラリー)を得た。底部より18mmの位置で分割できる内径63mm高さ400mmの金属円筒を、吸引脱水用の多孔板を備えた漏斗に載せ、第1のスラリーを金属円筒に注入した後、底部より吸引脱水して成形した。金属円筒から、湿潤状態の成形体を内包した底部18mmを分割し、金属円筒の上下断面をパンチング板で挟み1kgの錘を載せ、成形体を高さ18mmまで押しつぶした状態にて120℃で4時間乾燥後、金属円筒を取り外し、外径62mm、高さ18mmの円盤型に成形された吸着体5.80gを得た。得られた成形吸着体は、活性炭素繊維シートより型崩れしにくいものであった。
【0164】
<参考例2(活性炭素繊維:粒状活性炭=100:0)>
参考例1で用いた繊維状バインダーを5重量部(0.28g)、参考例1で用いた活性炭素繊維シート(M1)を活性炭素繊維(M2)100重量部(5.61g)とした以外は、参考例1と同様の方法で外径62mm、高さ18mmの成形吸着体5.80gを得た。得られた成形吸着体は、活性炭素繊維より型崩れしにくいものであった。
【0165】
<実施例1(活性炭素繊維:粒状活性炭=90:10)>
参考例1で用いた繊維状バインダー5重量部(0.28g)を、水0.5Lとともにミキサーに入れ30秒間、解繊と分散を行い、参考例1にて用いた活性炭素繊維シート90重量部(5.04g)と水0.5Lを加え更に10秒間、解繊と分散を行い、第1のスラリーを得た。
【0166】
次いで、第1のスラリーに、粒状活性炭(比表面積1660m2/g、平均粒子径502μm、標準偏差89μm)10重量部(0.56g)を加えスパチュラで攪拌し、活性炭素繊維および粒状活性炭が分散した第2のスラリーを得た。第2のスラリーを実施例1と同様の方法で吸引脱水、乾燥し、外径62mm、高さ18mmの円盤型の成形吸着体5.85gを得た。得られた成形吸着体は、活性炭素繊維シートより型崩れしにくいものであった。
【0167】
<実施例2(活性炭素繊維:粒状活性炭=70:30)>
実施例1で用いた繊維状バインダーを5重量部(0.28g)、実施例1で用いた活性炭素繊維シートを70重量部(3.91g)、実施例1で用いた粒状活性炭を30重量部(1.68g)とした以外は、実施例1と同様の方法で外径62mm、高さ18mmの成形吸着体5.77gを得た。得られた成形吸着体は、活性炭素繊維シートより型崩れしにくいものであった。
【0168】
<実施例3(活性炭素繊維:粒状活性炭=60:40)>
実施例1で用いた繊維状バインダーを5重量部(0.28g)、実施例1で用いた活性炭素繊維シートを60重量部(3.37g)、実施例1で用いた粒状活性炭を40重量部(2.25g)とした以外は、実施例1と同様の方法で外径62mm、高さ18mmの成形吸着体5.80gを得た。得られた成形吸着体は、活性炭素繊維シートより型崩れしにくいものであった。
【0169】
<実施例4(活性炭素繊維:粒状活性炭=50:50)>
実施例1で用いた繊維状バインダーを5重量(0.29g)、実施例1で用いた活性炭素繊維シートを50重量部(2.88g)、実施例1で用いた粒状活性炭を50重量部(2.88g)とした以外は、実施例1と同様の方法で外径62mm、高さ18mmの成形吸着体5.99gを得た。得られた成形吸着体は、活性炭素繊維シートより型崩れしにくいものであった。
【0170】
<実施例5(活性炭素繊維:粒状活性炭=30:70)>
実施例1で用いた繊維状バインダーを5重量(0.29g)、実施例1で用いた活性炭素繊維シートを30重量部(1.71g)、実施例1で用いた粒状活性炭を70重量部(4.00g)とした以外は、実施例1と同様の方法で、第2のスラリーを得た。
【0171】
底部より18mmの位置で分割できる内径63mm高さ400mmの金属円筒を、吸引脱水用の多孔板を備えた漏斗に載せ、第2のスラリーを金属円筒に注入した後、底部より吸引脱水して成形した。金属円筒から、湿潤状態の成形体を内包した底部18mmを分割し、120℃で4時間乾燥後、金属円筒を取り外し、外径62mm、高さ16mmの成形吸着体5.89gを得た。得られた成形吸着体は、活性炭素繊維シートより型崩れしにくいものであった。
【0172】
<実施例6(活性炭素繊維:粒状活性炭=10:90)>
実施例1で用いた繊維状バインダーを5重量(0.29g)、実施例1で用いた活性炭素繊維シートを10重量部(0.58g)、実施例1で用いた粒状活性炭を90重量部(5.22g)とした以外は、実施例5と同様の方法で外径62mm、高さ10mmの成形吸着体6.00gを得た。得られた成形吸着体は、活性炭素繊維シートより型崩れしにくいものであった。
【0173】
<実施例7(活性炭素繊維:粒状活性炭=60:40)>
実施例1で用いた繊維状バインダーを5重量部(0.28g)、実施例1で用いた活性炭素繊維シートを60重量部(3.37g)、実施例1で用いた粒状活性炭を粒状活性炭(比表面積1860m2/g、平均粒子径269μm、標準偏差65μm)40重量部(2.25g)とした以外は、実施例1と同様の方法で外径62mm、高さ18mmの成形吸着体5.80gを得た。得られた成形吸着体は、活性炭素繊維シートより型崩れしにくいものであった。
【0174】
<実施例8(活性炭素繊維:粒状活性炭=90:10)>
実施例1で用いた繊維状バインダーを5重量部(0.28g)、実施例1で用いた活性炭素繊維シート(M1)を活性炭素繊維(M2)90重量部(5.04g)、実施例1で用いた粒状活性炭を10重量部(0.56g)とした以外は、実施例1と同様の方法で外径62mm、高さ18mmの成形吸着体5.80gを得た。得られた成形吸着体は、活性炭素繊維より型崩れしにくいものであった。
【0175】
<実施例9(活性炭素繊維:粒状活性炭=60:40)>
実施例1で用いた繊維状バインダーを5重量部(0.28g)、実施例1で用いた活性炭素繊維シート(M1)を活性炭素繊維(M2)60重量部(3.37g)、実施例1で用いた粒状活性炭を40重量部(2.25g)とした以外は、実施例1と同様の方法で外径62mm、高さ18mmの成形吸着体5.75gを得た。得られた成形吸着体は、活性炭素繊維より型崩れしにくいものであった。
【0176】
<実施例10(活性炭素繊維:粒状活性炭=10:90)>
実施例1で用いた繊維状バインダーを5重量部(0.28g)、実施例1で用いた活性炭素繊維シート(M1)を活性炭素繊維(M2)10重量部(0.57g)、実施例1で用いた粒状活性炭を90重量部(5.03g)とした以外は、実施例5と同様の方法で外径62mm、高さ10mmの成形吸着体5.80gを得た。得られた成形吸着体は、活性炭素繊維より型崩れしにくいものであった。
【0177】
<比較例1(活性炭素繊維:粒状活性炭=0:100)>
実施例1で用いた維状バインダー5重量部(0.32g)を、水0.5Lとともにミキサーに入れ30秒間、解繊と分散を行い、次いで実施例1で用いた粒状活性炭100重量部(6.43g)と水0.5Lを加えスパチュラで攪拌し、粒状活性炭吸着用スラリーを得た。この吸着用スラリーを実施例5と同様の方法で吸引脱水、乾燥し、外径62mm、高さ6mmの円盤型の成形吸着体6.71gを得た。
【0178】
<比較例2(活性炭素繊維:粒状活性炭=0:100)>
比較例1で用いた粒状活性炭を粒状活性炭(比表面積1860m2/g、平均粒子径269μm、標準偏差65μm)100重量部(6.30g)とした以外は、比較例1と同様の方法で外径62mm、高さ7mmの円盤型の成形吸着体6.62gを得た。
【0179】
実施例1~10用、参考例1および2用、並びに、比較例1および2用の吸着材料のそれぞれについて、上記物性項目について、上記測定方法に従って測定値を求めた。それらの結果を表1に示す。また、表2-1、表2-2、表2-3、表3-1、表3-2、および表3-3に、実施例1~10、参考例1および2、並びに比較例1および2の成形吸着体の特性をそれぞれ示す。なお、表中、「ACF」との用語は、活性炭素繊維(Activated Carbon Fiber)の略記である。
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
表3-1、表3-2、および表3-3から示されるように、活性炭素繊維と粒状活性炭を含む成形吸着体は、吸脱着性に優れており、圧力損失も低い成形吸着体が得られた。
【符号の説明】
【0188】
1 積層吸着体、 10 シート状の成形吸着体、 10a シート状成形吸着体の主面、 10b シート状成形吸着体の側端面、 10c シート状成形吸着体の側端面、 F ガスの流れ方向、 2 円盤状の成形吸着体、 3 円筒状の成形吸着体