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特許7546177カーボンブラック分散液及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】カーボンブラック分散液及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/48 20060101AFI20240829BHJP
   C09C 3/06 20060101ALI20240829BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20240829BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C09C1/48
C09C3/06
C09D17/00
C09C3/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024001446
(22)【出願日】2024-01-09
【審査請求日】2024-04-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】五関 高寛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 航平
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-049832(JP,A)
【文献】特開2011-162698(JP,A)
【文献】特開2007-086490(JP,A)
【文献】特開昭64-079279(JP,A)
【文献】特開2023-153059(JP,A)
【文献】特開2014-065859(JP,A)
【文献】特開2010-195879(JP,A)
【文献】特開2002-308995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その平均一次粒子径が5~45nmのカーボンブラック、アルカリ、及び親水性極性溶媒を含有し、
前記カーボンブラックのpHが、8.0以下であり、
前記カーボンブラック100質量部に対する、前記アルカリの含有量が、0.5~5質量部であり、
前記アルカリが、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、及びアンモニアからなる群より選択される少なくとも一種の無機アルカリ、又は、ジエタノールアミン、及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールからなる群より選択される少なくとも一種の有機アルカリであり、
前記カーボンブラックを分散させるための分散剤を含有しないカーボンブラック分散液。
【請求項2】
前記カーボンブラックの含有量が、5~15質量%である請求項1に記載のカーボンブラック分散液。
【請求項3】
前記親水性極性溶媒が、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1又は2に記載のカーボンブラック分散液。
【請求項4】
その平均一次粒子径が5~45nmのカーボンブラック、アルカリ、及び親水性極性溶媒を含有する原料混合物を分散処理して、前記カーボンブラックを分散させるための分散剤を含有しないカーボンブラック分散液を得る工程を有し、
前記カーボンブラックのpHが、8.0以下であり、
前記原料混合物中、前記カーボンブラック100質量部に対する、前記アルカリの含有量が、0.5~5質量部であり、
前記アルカリが、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、及びアンモニアからなる群より選択される少なくとも一種の無機アルカリ、又は、ジエタノールアミン、及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールからなる群より選択される少なくとも一種の有機アルカリであるカーボンブラック分散液の製造方法。
【請求項5】
前記原料混合物中、前記カーボンブラックの含有量が、5~15質量%である請求項に記載のカーボンブラック分散液の製造方法。
【請求項6】
前記親水性極性溶媒が、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群より選択される少なくとも一種である請求項4又は5に記載のカーボンブラック分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンブラック分散液及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラック等のカーボン材料は、導電性や伝熱性等の種々の特性が発揮される材料であり、幅広い分野でその特性を活かすための方法が検討されている。例えば、電気的性質、熱的性質、及びフィラーとしての性質に注目し、帯電防止剤、導電材料、プラスチック補強材、半導体、電池電極、及びディスプレーの陰極線等にカーボンブラックを用いることが検討されている。
【0003】
これらの用途には、カーボンブラックの分散性が良好であるとともに、分散性が長期間にわたって維持されるカーボンブラック分散液が必要である。但し、ナノサイズのカーボン材料は表面エネルギーが高く、強いファンデルワールス力が働いているために凝集しやすい。そこで、カーボンブラックを液媒体に安定に分散させるために、さまざまな検討がなされている。
【0004】
例えば、アルカリで中和したカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系ポリマーを分散剤として使用し、水溶性有機溶剤を含む液媒体中にカーボンブラックを分散させた顔料分散液が提案されている(特許文献1)。また、カーボンブラック、各種の界面活性剤、ポリマー系の分散剤、及び水を含む分散媒を含有する、電極の導電性結着層を形成するための分散液が提案されている(特許文献2)。さらに、カーボンブラック、二種以上の共重合体を含む分散剤、及びN-メチルピロリドン等の分散媒を含有する、電極の活物質層を形成するための分散液が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第7281013号公報
【文献】国際公開第2018/101294号
【文献】特表2022-530019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カーボンブラックを液媒体中に安定して分散させるには、通常、特許文献1~3で提案されているように、各種の界面活性剤や高分子分散剤等の分散剤が用いられる。但し、カーボンブラックを液媒体中に分散させるためのこれらの分散剤は、得られた分散液を用いて電極層やインク等の物品を製造する際に不純物となることがあった。このため、これらの分散剤の含有量を低減する、又はこれらの分散剤を使用せずにカーボンブラックを液媒体中に分散させることが求められていた。しかしながら、界面活性剤や高分子分散剤等の分散剤を実質的に用いることなくカーボンブラックを液媒体中に分散させることは困難であった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、界面活性剤や高分子分散剤等の分散剤を実質的に用いなくても、カーボンブラックの分散性に優れたカーボンブラック分散液を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、界面活性剤や高分子分散剤等の分散剤を実質的に用いなくても、カーボンブラックの分散性に優れたカーボンブラック分散液を簡便に得ることが可能なカーボンブラック分散液の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示すカーボンブラック分散液が提供される。
[1]その平均一次粒子径が5~45nmのカーボンブラック、アルカリ、及び親水性極性溶媒を含有し、前記カーボンブラックのpHが、8.0以下であり、前記カーボンブラック100質量部に対する、前記アルカリの含有量が、0.5~5質量部であり、前記カーボンブラックを分散させるための分散剤を含有しないカーボンブラック分散液。
[2]前記カーボンブラックの含有量が、5~15質量%である前記[1]に記載のカーボンブラック分散液。
[3]前記アルカリが、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、及びアンモニアからなる群より選択される少なくとも一種の無機アルカリ、又はトリエタノールアミン、ジエタノールアミン、及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールからなる群より選択される少なくとも一種の有機アルカリである前記[1]又は[2]に記載のカーボンブラック分散液。
[4]前記親水性極性溶媒が、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群より選択される少なくとも一種である前記[1]~[3]のいずれかに記載のカーボンブラック分散液。
【0009】
また、本発明によれば、以下に示すカーボンブラック分散液の製造方法が提供される。
[5]その平均一次粒子径が5~45nmのカーボンブラック、アルカリ、及び親水性極性溶媒を含有する原料混合物を分散処理して、前記カーボンブラックを分散させるための分散剤を含有しないカーボンブラック分散液を得る工程を有し、前記カーボンブラックのpHが、8.0以下であり、前記原料混合物中、前記カーボンブラック100質量部に対する、前記アルカリの含有量が、0.5~5質量部であるカーボンブラック分散液の製造方法。
[6]前記原料混合物中、前記カーボンブラックの含有量が、5~15質量%である前記[5]に記載のカーボンブラック分散液の製造方法。
[7]前記アルカリが、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、及びアンモニアからなる群より選択される少なくとも一種の無機アルカリ、又はトリエタノールアミン、ジエタノールアミン、及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールからなる群より選択される少なくとも一種の有機アルカリである前記[5]又は[6]に記載のカーボンブラック分散液の製造方法。
[8]前記親水性極性溶媒が、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群より選択される少なくとも一種である前記[5]~[7]のいずれかに記載のカーボンブラック分散液の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、界面活性剤や高分子分散剤等の分散剤を実質的に用いなくても、カーボンブラックの分散性に優れたカーボンブラック分散液を提供することができる。また、本発明によれば、界面活性剤や高分子分散剤等の分散剤を実質的に用いなくても、カーボンブラックの分散性に優れたカーボンブラック分散液を簡便に得ることが可能なカーボンブラック分散液の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<カーボンブラック分散液>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明のカーボンブラック分散液の一実施形態は、その平均一次粒子径が5~50nmのカーボンブラック、アルカリ、及び親水性極性溶媒を含有し、カーボンブラックを分散させるための分散剤を含有しないものである。カーボンブラックのpHは、8.0以下である。そして、カーボンブラック分散液中、カーボンブラック100質量部に対する、アルカリの含有量は、0.5~5質量部である。以下、本実施形態のカーボンブラック分散液の詳細について説明する。
【0012】
本実施形態のカーボンブラック分散液は、カーボンブラックを分散させるための分散剤を含有しない。「分散剤を含有しない」とは、カーボンブラックの分散に寄与する程度の量の分散剤を実質的に含有しない、ことを意味する。また、分散剤としては、各種の界面活性剤やポリマー等の高分子分散剤等を挙げることができる。
【0013】
N-メチル-2-ピロリドンやジメチルスルホキシド等の親水性極性媒体を主成分とする液媒体(分散媒体)中に、上記の分散剤を用いずにカーボンブラックを分散させようとすると、カーボンブラックが凝集しやすく、分散性の良好な分散液を得ることは困難である。これに対して、本発明者らは、水酸化ナトリウム等のアルカリをカーボンブラックに対して所定の割合となるように含有させることで、分散剤を実質的に用いなくても、カーボンブラックの分散性を向上させることが可能となることを見出し、本発明に至った。
【0014】
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、及びケッチェンブラック等を挙げることができる。カーボンブラックのストラクチャー、吸油量、及び比表面積等の物性値については特に限定されず、従来公知のカーボンブラックを用いることができる。
【0015】
カーボンブラックの平均一次粒子径は5~45nmであり、好ましくは5~40nm、さらに好ましくは5~20nmである。カーボンブラックの平均一次粒子径が上記の範囲外であると、分散性に優れたカーボンブラック分散液とすることが困難になる。本明細書におけるカーボンブラックの「平均一次粒子径」は、体積基準の粒度分布における累積50%粒子径(メジアン径(D50))を意味する。
【0016】
カーボンブラックのpHは8.0以下であり、好ましくは7.5以下、さらに好ましくは7.0以下である。カーボンブラックのpHが8.0超であると、アルカリを用いたとしても、分散性に優れたカーボンブラック分散液とすることが困難になる。
【0017】
カーボンブラックのpHは、以下に示す方法にしたがって測定される物性値である。まず、カーボンブラック1gにつき水10mgを加え、15分間煮沸したものを室温(25℃)まで冷却した後、傾斜法又は遠心分離法にて上澄み液を除去して泥状物を得る。そして、得られた泥状物にガラス電極pH計の電極を挿入し、JIS 28802にしたがって計測することができる。
【0018】
カーボンブラック分散液中のカーボンブラックの含有量は、5~15質量%であることが好ましく、5~10質量%であることがさらに好ましい。カーボンブラックの含有量が15質量%超であると、カーボンブラックの分散性がやや低下することがある。
【0019】
(アルカリ)
アルカリとしては、無機アルカリや有機アルカリを用いることができる。無機アルカリとしては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、及びアンモニア等を挙げることができる。また、有機アルカリとしては、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、トリエチルアミン、及びジメチルアミノエタノール等を挙げることができる。なお、これらのアルカリには、アルカリの水和物も含まれる。なかでも、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、及びアンモニアからなる群より選択される少なくとも一種の無機アルカリ、又はトリエタノールアミン、ジエタノールアミン、及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールからなる群より選択される少なくとも一種の有機アルカリを用いることが好ましい。
【0020】
カーボンブラック100質量部に対する、アルカリの含有量は0.5~5質量部であり、好ましくは0.8~3.0質量部、さらに好ましくは1.0~2.0質量部である。カーボンブラック100質量部に対するアルカリの含有量が上記の範囲外であると、分散性に優れたカーボンブラック分散液とすることが困難になる。
【0021】
(液媒体(分散媒体))
本実施形態のカーボンブラック分散液は、カーボンブラックを分散させる液媒体(分散媒体)として、親水性極性溶媒を含有する。なお、液媒体は、微量の水を含んでいてもよい。親水性極性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル類;ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド等のアミド類;テトラメチル尿素、ジメチル1,3-イミダゾリジノン等の尿素系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の硫黄含有溶媒;1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド等のイオン液体;等を挙げることができる。なかでも、親水性極性溶媒は、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0022】
本実施形態のカーボンブラック分散液は、カーボンブラックが粗大な凝集物を実質的に形成することなく、一次粒子の状態で良好に分散したものである。このため、本実施形態のカーボンブラック分散液は、このような特性を生かし、例えば、塗料、インク、コーティング剤、樹脂成形品材料、導電性材料、熱伝導性材料、及び帯電防止材料等の製品を製造するための材料として有用である。
【0023】
<カーボン材料分散液の製造方法>
本実施形態のカーボン材料分散液は、例えば、以下に示す方法にしたがって製造することができる。すなわち、本発明のカーボン材料分散液の製造方法の一実施形態は、その平均一次粒子径が5~50nmのカーボンブラック、アルカリ、及び親水性極性溶媒を含有する原料混合物を分散処理して、カーボンブラックを分散させるための分散剤を含有しないカーボンブラック分散液を得る工程を有する。カーボンブラックのpHは、前述の通り8.0以下である。そして、原料混合物中、カーボンブラック100質量部に対する、アルカリの含有量を、0.5~5質量部とする。なお、アルカリは、アルカリの水溶液の状態で用いることができる。このような製造方法によって、カーボンブラックの分散性に優れた本実施形態のカーボンブラック分散液を得ることができる。
【0024】
原料混合物を分散処理する際には、例えば、マグネチックスターラー撹拌、ディゾルバー撹拌、三本ロールでの混練、超音波分散、ビーズミル分散、乳化装置、ホモジナイザー等を用いた方法を用いることができる。工程の簡便さから、マグネチックスターラー、ディゾルバー、及びホモジナイザー等で撹拌した後、小粒径のビーズを共存させたメディア分散機を用いるビーズミルによって分散させることが好ましい。
【実施例
【0025】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0026】
<カーボンブラックの用意>
表1に示す種類のカーボンブラックCB1~11を用意した。
【0027】
【0028】
<カーボンブラック分散液の製造>
(実施例1)
CB1 10部、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)89.5部、及び40%水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液0.5部を混合し、ディゾルバーを使用して30分間撹拌してカーボンブラックの塊がなくなったことを確認した。その後、メディア分散機を使用し、ジルコニアビーズ(直径1.0mm)を用いて分散処理して、カーボンブラック分散液を得た。
【0029】
(実施例2~15、比較例1~17)
表2-1~2-3に示す配合としたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、カーボンブラック分散液を得た。表2-1~2-3中、「高分子分散剤」としては、商品名「BYK-2200」(ビックケミー社製)を用いた。
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
<評価>
(粘度の測定及び評価)
B型粘度計を使用して調製したカーボンブラック分散液の25℃における粘度を測定した。なお、カーボンブラックの濃度が10%超のカーボンブラック分散液については、カーボンブラックの濃度が10%となるようにNMPを添加して希釈してから粘度を測定した。そして、以下に示す評価基準にしたがってカーボンブラック分散液の粘度を評価した。結果を表3に示す。
○:粘度が100mPa・s未満であった。
×:粘度が100mPa・s以上であった。
【0034】
(分散粒子径の測定及び評価)
動的光散乱法による粒度分布測定装置を使用して、調製したカーボンブラック分散液中のカーボンブラックの分散粒子径(メジアン径;D50(nm))を測定した。結果を表3に示す。また、以下に示す評価基準にしたがってカーボンブラックの分散粒子径を評価した。結果を表3に示す。
○:分散粒子径が180nm未満であった。
△:分散粒子径が180nm以上500nm未満であった。
×:分散粒子径が500nm以上であった。
【0035】
(吸光度の測定、吸光度比の算出及び評価)
分光光度計を使用して調製したカーボンブラック分散液の25℃における吸光度(波長380nm:A380、波長780nm:A780)を測定した。なお、カーボンブラックの濃度が10%超のカーボンブラック分散液については、カーボンブラックの濃度が10%となるようにNMPを添加して希釈してから吸光度を測定した。測定結果、及び測定した値から算出した吸光度比(A380/A780)を表3に示す。そして、以下に示す評価基準にしたがってカーボンブラック分散液の吸光度比を評価した。結果を表3に示す。なお、吸光度比の値が大きいほど、カーボンブラックの分散性が良好であると判断することができる。
○:吸光度比が1.5以上であった。
×:吸光度比が1.5未満であった。
【0036】
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のカーボンブラック分散液は、例えば、塗料、インク、コーティング剤、樹脂成形品材料、導電性材料、熱伝導性材料、及び帯電防止材料等の製品を製造するための材料として有用である。
【要約】
【課題】界面活性剤や高分子分散剤等の分散剤を実質的に用いなくても、カーボンブラックの分散性に優れたカーボンブラック分散液を提供する。
【解決手段】その平均一次粒子径が5~45nmのカーボンブラック、アルカリ、及び親水性極性溶媒を含有し、カーボンブラックのpHが、8.0以下であり、カーボンブラック100質量部に対する、アルカリの含有量が、0.5~5質量部であり、カーボンブラックを分散させるための分散剤を含有しないカーボンブラック分散液である。
【選択図】なし