(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】レンズ駆動装置、カメラモジュール、及びカメラ搭載装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20210101AFI20240829BHJP
G03B 5/00 20210101ALI20240829BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20240829BHJP
H02N 2/04 20060101ALI20240829BHJP
H04N 23/57 20230101ALI20240829BHJP
H04N 23/67 20230101ALI20240829BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G03B5/00 J
G03B30/00
H02N2/04
H04N23/57
H04N23/67
(21)【出願番号】P 2024018004
(22)【出願日】2024-02-08
(62)【分割の表示】P 2021519402の分割
【原出願日】2020-05-07
【審査請求日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2019089864
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019187775
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019225710
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505060288
【氏名又は名称】ミニスイス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】MINISWYS S.A.
【住所又は居所原語表記】Quai du Bas 31a, Biel / Bienne Switzerland
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊
(72)【発明者】
【氏名】板垣 洋一
(72)【発明者】
【氏名】大坂 智彦
(72)【発明者】
【氏名】石川 真弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 大介
(72)【発明者】
【氏名】ホスリ ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ローテン マキシム
(72)【発明者】
【氏名】ブルマン ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ボーム ロアン
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0222930(US,A1)
【文献】特開2006-098594(JP,A)
【文献】特開2008-152265(JP,A)
【文献】特開2010-097216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
G03B 5/00
G03B 30/00
H02N 2/04
H04N 23/57
H04N 23/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波モーター
を夫々含む
二つのAF駆動部と、
Z方向に沿って配置され前記超音波モーターに接続された動力伝達部と、
前記動力伝達部により伝達される前記AF駆動部の駆動力により移動可能なAF可動部と、を有し、
前記超音波モーターは、
前記AF可動部のX方向
及びY方向
に延びる二つの隣り合う辺に沿って配置さ
れた、
レンズ駆動装置。
【請求項2】
前記超音波モーターは板状
である、
請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記超音波モーターは、共振部を有し、前記動力伝達部は、一箇所で前記共振部に当接する、
請求項
1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
請求項1に記載のレンズ駆動装置と、
前記AF可動部に含まれるレンズと、
前記レンズにより結像された被写体像を撮像する撮像部と、を備える、
カメラモジュール。
【請求項5】
情報機器又は輸送機器であるカメラ搭載装置であって、
請求項
4に記載のカメラモジュールと、
前記カメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部と、を備える、
カメラ搭載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ駆動装置、カメラモジュール、及びカメラ搭載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スマートフォン等の携帯端末には、小型のカメラモジュールが搭載されている。このようなカメラモジュールには、被写体を撮影するときのピント合わせを自動的に行うオートフォーカス機能(以下「AF機能」と称する、AF:Auto Focus)及び撮影時に生じる振れ(振動)を光学的に補正して画像の乱れを軽減する振れ補正機能(以下「OIS機能」と称する、OIS:Optical Image Stabilization)を有するレンズ駆動装置が適用される(例えば、特許文献1)。
【0003】
AF機能及びOIS機能を有するレンズ駆動装置は、レンズ部を光軸方向に移動させるためのオートフォーカス駆動部(以下「AF駆動部」と称する)と、レンズ部を光軸方向に直交する平面内で揺動させるための振れ補正駆動部(以下「OIS駆動部」と称する)と、を備える。特許文献1では、AF駆動部及びOIS駆動部に、ボイスコイルモーター(VCM)が適用されている。
【0004】
また、近年では、複数(典型的には2つ)のレンズ駆動装置を有するカメラモジュールの実用化が進められている(いわゆるデュアルカメラ)。デュアルカメラは、焦点距離の異なる2枚の画像を同時に撮像できたり、静止画像と動画像を同時に撮像できたりするなど、利用シーンに応じて様々な可能性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-210550号公報
【文献】国際公開第2015/123787号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、VCMを利用したレンズ駆動装置は、外部磁気の影響を受けるため、高精度の動作が損なわれる虞がある。特に、レンズ駆動装置が並置されるデュアルカメラにおいては、レンズ駆動装置間で磁気干渉が生じる可能性が高い。
【0007】
一方、特許文献2には、AF駆動部及びOIS駆動部に超音波モーターを適用したレンズ駆動装置が開示されている。特許文献2に開示のレンズ駆動装置は、マグネットレスであるため外部磁気の影響を低減できるが、構造が複雑であり、小型化及び低背化を図るのが困難である。
【0008】
本発明の目的は、外部磁気の影響を低減できるとともに、小型化及び低背化を図ることができるレンズ駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るレンズ駆動装置は、
超音波モーターを夫々含む二つのAF駆動部と、
Z方向に沿って配置され前記超音波モーターに接続された動力伝達部と、
前記動力伝達部により伝達される前記AF駆動部の駆動力により移動可能なAF可動部と、を有し、
前記超音波モーターは、前記AF可動部のX方向及びY方向に延びる二つの隣り合う辺に沿って配置された、
レンズ駆動装置である。
【0010】
本発明に係るカメラモジュールは、
上記のレンズ駆動装置と、
前記AF可動部に含まれるレンズと、
前記レンズにより結像された被写体像を撮像する撮像部と、
を備える。
【0011】
本発明に係るカメラ搭載装置は、
情報機器又は輸送機器であるカメラ搭載装置であって、
上記のカメラモジュールと、
前記カメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外部磁気の影響を低減できるとともに、小型化及び低背化を図ることができるレンズ駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1A、
図1Bは、本発明の一実施の形態に係るカメラモジュールを搭載するスマートフォンを示す図である。
【
図2】
図2は、カメラモジュールの外観斜視図である。
【
図3】
図3A、
図3Bは、第1の実施の形態に係るレンズ駆動装置の外観斜視図である。
【
図4】
図4は、第1の実施の形態に係るレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【
図5】
図5は、第1の実施の形態に係るレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【
図7】
図7は、第1の実施の形態に係るOIS可動部の分解斜視図である。
【
図8】
図8は、第1の実施の形態に係るOIS可動部の分解斜視図である。
【
図9】
図9は、第1の実施の形態に係るOIS可動部の分解斜視図である。
【
図11】
図11A、
図11Bは、第1の実施の形態に係る第1ステージ、AF駆動部及びAF支持部を組み付けた状態を示す図である。
【
図13】
図13は、第2の実施の形態に係るOIS可動部の分解斜視図である。
【
図14】
図14は、第2の実施の形態に係るOIS可動部の分解斜視図である。
【
図15】
図15は、第2の実施の形態に係るOIS可動部の分解斜視図である。
【
図16】
図16A、
図16Bは、第2の実施の形態に係る第1ステージ、AF駆動部及びAF支持部を組み付けた状態を示す図である。
【
図20】
図20は、駆動パルスの形状を調整したときの駆動信号及びその結果生じる振動振幅の図である。
【
図21】
図21は、駆動パルスの存在を調整したときの駆動信号及びその結果生じる振動振幅の図である。
【
図22】
図22は、パルスデューティーサイクルに対する駆動速度の依存関係を示す図である。
【
図23】
図23は、励起周波数に対する駆動速度の依存関係を示す図である。
【
図24】
図24は、駆動ユニットの駆動方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
[第1の実施の形態]
図1A、
図1Bは、本発明の一実施の形態に係るカメラモジュールAを搭載するスマートフォンM(カメラ搭載装置の一例)を示す図である。
図1AはスマートフォンMの正面図であり、
図1BはスマートフォンMの背面図である。
【0016】
スマートフォンMは、2つの背面カメラOC1、OC2からなるデュアルカメラを有する。本実施の形態では、背面カメラOC1、OC2に、カメラモジュールAが適用されている。
カメラモジュールAは、AF機能及びOIS機能を備え、被写体を撮影するときのピント合わせを自動的に行うとともに、撮影時に生じる振れ(振動)を光学的に補正して像ぶれのない画像を撮影することができる。
【0017】
図2は、カメラモジュールAの外観斜視図である。
図3A、
図3Bは、第1の実施の形態に係るレンズ駆動装置1の外観斜視図である。
図3Bは、
図3AをZ軸周りに180°回転した状態を示す。
図2、
図3A及び
図3Bに示すように、本実施の形態では、直交座標系(X,Y,Z)を使用して説明する。後述する図においても共通の直交座標系(X,Y,Z)で示している。
【0018】
カメラモジュールAは、例えば、スマートフォンMで実際に撮影が行われる場合に、X方向が上下方向(又は左右方向)、Y方向が左右方向(又は上下方向)、Z方向が前後方向となるように搭載される。すなわち、Z方向が光軸方向であり、図中上側(+Z側)が光軸方向受光側、下側(-Z側)が光軸方向結像側である。また、Z軸に直交するX方向及びY方向を「光軸直交方向」と称し、XY面を「光軸直交面」と称する。
【0019】
図2、
図3A及び
図3Bに示すように、カメラモジュールAは、AF機能及びOIS機能を実現するレンズ駆動装置1、円筒形状のレンズバレルにレンズが収容されてなるレンズ部2、レンズ部2により結像された被写体像を撮像する撮像部(図示略)、及び全体を覆うカバー3等を備える。
【0020】
カバー3は、光軸方向から見た平面視で矩形状の有蓋四角筒体である。本実施の形態では、カバー3は、平面視で正方形状を有している。カバー3は、上面に概略円形の開口3aを有する。レンズ部2は、開口3aから外部に臨み、光軸方向における移動に伴い、カバー3の開口面よりも受光側に突出するように構成される。カバー3は、レンズ駆動装置1のOIS固定部20のベース21(
図4参照)に、例えば、接着により固定される。
【0021】
撮像部(図示略)は、レンズ駆動装置1の光軸方向結像側に配置される。撮像部(図示略)は、例えば、イメージセンサー基板及びイメージセンサー基板に実装される撮像素子を有する。撮像素子は、例えば、CCD(charge-coupled device)型イメージセンサー、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)型イメージセンサー等により構成される。撮像素子は、レンズ部2により結像された被写体像を撮像する。レンズ駆動装置1は、イメージセンサー基板(図示略)に搭載され、機械的かつ電気的に接続される。レンズ駆動装置1の駆動制御を行う制御部は、イメージセンサー基板に設けられてもよいし、カメラモジュールAが搭載されるカメラ搭載機器(本実施の形態では、スマートフォンM)に設けられてもよい。
【0022】
図4、
図5は、第1の実施の形態に係るレンズ駆動装置1の分解斜視図である。
図5は、
図4をZ軸周りに180°回転した状態を示す。
図4、
図5に示すように、本実施の形態において、レンズ駆動装置1は、OIS可動部10(第2可動部)、OIS固定部20(第2固定部)、OIS駆動部30(XY方向駆動部)及びOIS支持部40(第2支持部)を備える。なお、
図5では、配線24のベース21に埋設されている部分を点線で示している。
【0023】
OIS可動部10は、振れ補正時に光軸直交面内で揺動する部分である。OIS可動部10は、AFユニット、第2ステージ13及びボール42を含む。AFユニットは、AF可動部11(第1可動部)、第1ステージ12(第1固定部)、AF駆動部14(Z方向駆動部)及びAF支持部15(第1支持部)を有する(
図7~
図9参照)。
OIS固定部20は、OIS支持部40を介してOIS可動部10が接続される部分である。OIS固定部20は、ベース21を含む。
OIS可動部10は、OIS固定部20に対して光軸方向に離間して配置され、OIS支持部40を介してOIS固定部20と連結される。また、OIS可動部10とOIS固定部20は、四隅に設けられたOIS用付勢部材50によって、互いに近づく方向に付勢されている。
【0024】
なお、本実施の形態では、Y方向の移動に関しては、AFユニットを含むOIS可動部10の全体が可動体として移動する。一方、X方向の移動に関しては、AFユニットだけが可動体として移動する。つまり、X方向の移動に関しては、第2ステージ13は、ベース21とともにOIS固定部20を構成し、ボール42はOIS支持部40として機能する。
【0025】
ベース21は、例えば、ポリアリレート(PAR)、PARを含む複数の樹脂材料を混合したPARアロイ(例えば、PAR/PC)、又は液晶ポリマーからなる成形材料で形成された、平面視で矩形状の部材であり、中央に円形の開口21aを有する。
ベース21は、ベース21の主面を形成する第1ベース部21b、及び、四隅の一角に形成された第2ベース部21cを有し、第1ベース部21bと第2ベース部21cの間は凹んで形成されている。この凹部にセンサー基板22が配置され、第1ベース部21b、第2ベース部21c及びセンサー基板22により、面一のベース面が形成されている。
【0026】
ベース21は、第2ベース部21cの対角に位置する部分に、第2のOIS駆動部30Yが配置されるOISモーター固定部21dを有する。OISモーター固定部21dは、第1ベース部21bから光軸方向受光側に向けて突出して形成され、第2のOIS駆動部30Yを保持可能な形状を有している。
【0027】
ベース21には、端子金具23及び配線24が、例えば、インサート成形により配置される。配線24は、AF駆動部14及びOIS駆動部30への給電ラインを含む。配線24は、ベース21の四隅に形成された開口21gから露出し、OIS用付勢部材50と電気的に接続される。AF駆動部14及び第1のOIS駆動部30Xへの給電は、OIS用付勢部材50を介して行われる。端子金具23は、センサー基板22に形成された配線(図示略)と電気的に接続される。
【0028】
また、ベース21は、ボール41を収容するボール収容部21e、21fを有する。第2ベース部21cに形成されたボール収容部21eは、円形状に凹んで形成されており、第1ベース部21bに形成された3つのボール収容部21fは、Y方向に延びる矩形状に凹んで形成されている。ボール収容部21fの側面は、例えば、底面側に向けて溝幅が狭くなるようにテーパー形状に形成される。
【0029】
センサー基板22は、磁気センサー25X、25Y用の給電ライン及び信号ラインを含む配線(図示略)を有する。センサー基板22には、磁気センサー25X、25Yが実装される。磁気センサー25X、25Yは、例えば、ホール素子又はTMR(Tunnel Magneto Resistance)センサー等で構成され、センサー基板22に形成された配線(図示略)を介して、端子金具23と電気的に接続される。OIS可動部10の第1ステージ12において、磁気センサー25X、25Yに対向する位置にはマグネット16X、16Yが配置される。磁気センサー25X、25Y及びマグネット16X、16Yからなる位置検出部により、OIS可動部10のX方向及びY方向の位置が検出される。なお、マグネット16X、16Yと磁気センサー25X、25Yに代えて、フォトリフレクター等の光センサーによりOIS可動部10のX方向及びY方向の位置を検出するようにしてもよい。
【0030】
OIS用付勢部材50は、例えば、引張コイルばねで構成され、OIS可動部10とOIS固定部20を連結する。本実施の形態では、OIS用付勢部材50の一端は、ベース21の配線24に接続され、他端は、第1ステージ12の配線17に接続されている。OIS用付勢部材50は、OIS可動部10とOIS固定部20を連結したときの引張荷重を受けて、OIS可動部10とOIS固定部20が互いに近づくように作用する。すなわち、OIS可動部10は、OIS用付勢部材50によって、光軸方向に付勢された状態(ベース21に押し付けられた状態)で、XY面内で揺動可能に保持されている。これにより、OIS可動部10をがたつきのない安定した状態で保持することができる。
また、本実施の形態では、OIS用付勢部材50は、AF駆動部14及び第1のOIS駆動部30Xへの給電ラインとして機能する。
【0031】
OIS支持部40は、OIS固定部20に対して、OIS可動部10を光軸方向に離間した状態で支持する。本実施の形態では、OIS支持部40は、OIS可動部10(第1ステージ12及び第2ステージ13)とベース21の間に介在する4個のボール41を含む。ベース21のボール収容部21eに配置される1個のボール41は、ベース21と第1ステージ12の間に介在し、ボール収容部21fに配置される3個のボール41は、ベース21と第2ステージ13の間に介在する。
また、OIS支持部40は、OIS可動部10において、第1ステージ12と第2ステージ13の間に介在する3個のボール42を含む(
図7等参照)。
本実施の形態では、OIS支持部40を構成するボール41、42(計7個)の転動可能な方向を規制することにより、OIS可動部10をXY面内で精度よく揺動できるようになっている。なお、OIS支持部40を構成するボール41、42の数は、適宜変更することができる。
【0032】
OIS駆動部30は、OIS可動部10をX方向及びY方向に移動させるアクチュエーターである。具体的には、OIS駆動部30は、OIS可動部10(AFユニットのみ)をX方向に移動させる第1のOIS駆動部30X(第1のXY方向駆動部)と、OIS可動部10全体をY方向に移動させる第2のOIS駆動部30Y(第2のXY方向駆動部)とで構成される。
第1及び第2のOIS駆動部30X、30Yは、超音波モーターで構成される。第1のOIS駆動部30Xは、X方向に沿って延在するように、第1ステージ12のOISモーター固定部12fに固定される。第2のOIS駆動部30Yは、Y方向に沿って延在するように、ベース21のOISモーター固定部21dに固定される。すなわち、第1のOIS駆動部30X及び第2のOIS駆動部30Yは、互いに直交する辺に沿って配置されている。
【0033】
OIS駆動部30の構成を
図6A、
図6Bに示す。
図6Aは、OIS駆動部30の各部材を組み付けた状態を示し、
図6Bは、OIS駆動部30の各部材を分解した状態を示す。なお、
図6A、
図6Bは、第2のOIS駆動部30Yを示しているが、第1のOIS駆動部30Xの主要構成、具体的にはOIS共振部31及び電極33の形状を除く構成は同様であるので、OIS駆動部30を示す図として扱う。
【0034】
図6A、
図6Bに示すように、OIS駆動部30は、OIS共振部31、OIS圧電素子32及びOIS電極33を有する。OIS駆動部30の駆動力は、OIS動力伝達部34を介して第2ステージ13に伝達される。具体的には、第1のOIS駆動部30Xは第1のOIS動力伝達部34Xに接続され、第2のOIS駆動部30Yは第2のOIS動力伝達部34Yに接続されている。
【0035】
OIS圧電素子32は、例えば、セラミック材料で形成された板状素子であり、高周波電圧を印加することにより振動を発生する。
OIS電極33は、OIS共振部31及びOIS圧電素子32を挟持し、OIS圧電素子32に電圧を印加する。第1のOIS駆動部30XのOIS電極33は、給電プレート18と電気的に接続され、第2のOIS駆動部30YのOIS電極33は、ベース21の配線24と電気的に接続される。
【0036】
OIS共振部31は、導電性材料で形成され、OIS圧電素子32の振動に共振して、振動運動を直線運動に変換する。本実施の形態では、OIS共振部31は、OIS圧電素子32に挟持される略矩形状の胴部31a、胴部31aの上部及び下部から延在する2つのアーム部31b、胴部31aの中央部からY方向に延在する突出部31c、及び、胴部31aの中央部から突出部31cとは反対側に延在する通電部31dを有している。2つのアーム部31bは対称的な形状を有し、それぞれの自由端部がOIS動力伝達部34に当接し、OIS圧電素子32の振動に共振して対称的に変形する。第1のOIS駆動部30Xの通電部31dは、第1ステージ12の配線17と電気的に接続され、第2のOIS駆動部30Yの通電部31dは、ベース21の配線24と電気的に接続される。
【0037】
OIS共振部31の胴部31aに、厚さ方向からOIS圧電素子32が貼り合わされ、OIS電極33により挟持されることにより、これらは互いに電気的に接続される。例えば、給電経路の一方がOIS電極33に接続され、他方がOIS共振部31の通電部31dに接続されることで、OIS圧電素子32に電圧が印加され、振動が発生する。
【0038】
OIS共振部31は、少なくとも2つの共振周波数を有し、それぞれの共振周波数に対して、異なる挙動で変形する。言い換えると、OIS共振部31は、2つの共振周波数に対して異なる挙動で変形するように、全体の形状が設定されている。異なる挙動とは、OIS動力伝達部34をX方向又はY方向に前進させる挙動と、後退させる挙動である。
【0039】
OIS動力伝達部34は、一方向に延在するチャッキングガイドであり、一端がOIS駆動部30に接続され、他端が第2ステージ13に接続される。OIS動力伝達部34は、OISモーター当接部34a、ステージ固定部34c、及び連結部34bを有する。OISモーター当接部34aは、断面略U字状に形成され、OIS共振部31のアーム部31bの自由端部と当接する。ステージ固定部34cは、OIS動力伝達部34の端部に配置され、第2ステージ13のOISチャッキングガイド固定部13c(
図8等参照)に固定される。連結部34bは、OISモーター当接部34aとステージ固定部34cを連結する部分であり、ステージ固定部34cから2つに分岐して互いに平行に形成されている。
【0040】
OISモーター当接部34a間の幅は、OIS共振部31のアーム部31bの自由端部間の幅よりも広く設定される。これにより、OIS駆動部30にOIS動力伝達部34を取り付けたときに、OIS動力伝達部34が板バネとして機能し、OIS共振部31のアーム部31bを押し広げる方向に付勢力が作用する。この付勢力により、OIS共振部31のアーム部31bの自由端部間にOIS動力伝達部34が保持され、OIS共振部31からの駆動力がOIS動力伝達部34に効率よく伝達される。
【0041】
OIS駆動部30とOIS動力伝達部34は、付勢された状態で当接しているだけなので、当接部分をX方向又はY方向に大きくするだけで、レンズ駆動装置1の外形を大きくすることなく、OIS可動部10の移動距離(ストローク)を長くすることができる。
【0042】
第1のOIS駆動部30Xは、OIS可動部10(第1ステージ12)に固定され、OIS動力伝達部34Xを介して第2ステージ13と接続されており、第2のOIS駆動部30YによるY方向の振れ補正時は、OIS可動部10とともに移動する。一方、第2のOIS駆動部30Yは、OIS固定部20(ベース21)に固定され、OIS動力伝達部34Yを介して第2ステージ13と接続されており、第1のOIS駆動部30XによるX方向の振れ補正に影響を受けない。すなわち、一方のOIS駆動部30によるOIS可動部10の移動は、他方のOIS駆動部30の構造によって妨げられない。したがって、OIS可動部10のZ軸周りの回転を防止することができ、OIS可動部10をXY平面内で精度よく揺動させることができる。
【0043】
図7~
図9は、OIS可動部10の分解斜視図である。
図8は、
図7をZ軸周りに180°回転させた状態を示す。
図9は、
図7をZ軸周りに90°回転させた状態を示す下方斜視図である。
【0044】
図7~
図9に示すように、本実施の形態において、OIS可動部10は、AF可動部11、第1ステージ12、第2ステージ13、AF駆動部14及びAF支持部15等を有する。Y方向の移動に関しては、第1ステージ12及び第2ステージ13を含むOIS可動部10全体が可動体となるのに対して、X方向の移動に関しては、第2ステージ13はOIS固定部20として機能し、AFユニットだけがOIS可動部10として機能する。また、第1ステージ12は、AF固定部として機能する。
【0045】
AF可動部11は、ピント合わせ時に光軸方向に移動する部分である。AF可動部11は、第1ステージ12(AF固定部)に対して径方向に離間して配置され、AF支持部15を介して第1ステージ12と接続される。
【0046】
AF可動部11は、レンズ部2(
図2参照)を保持するレンズホルダー111及びAF用付勢部材112を有する。
レンズホルダー111は、例えば、ポリアリレート(PAR)、PARを含む複数の樹脂材料を混合したPARアロイ、液晶ポリマー等で形成される。レンズホルダー111は、筒状のレンズ収容部111aを有する。レンズ収容部111aには、レンズ部2(
図2参照)が、例えば、接着により固定される。
【0047】
レンズホルダー111は、レンズ収容部111aの上部外周縁に、上部フランジ111bを有し、下部外周縁に、下部フランジ111cを有する。本実施の形態では、レンズ駆動装置1の四隅に対応する位置に、4つの上部フランジ111bが設けられており、対向する2つの上部フランジ111bの下方に下部フランジ111cが設けられている。上部フランジ111bは、レンズホルダー111の光軸方向結像側(下側)への移動を規制する規制部として機能し、下部フランジ111cは、レンズホルダー111の光軸方向受光側(上側)への移動を規制する規制部として機能する。
【0048】
また、レンズホルダー111は、レンズ収容部111aの周面に、AF支持部15を収容するボール収容部111dを有している。本実施の形態では、ボール収容部111dは、一方の対角方向(X方向とY方向の中間方向)に関して線対称な2箇所に、他方の対角方向に関して同じ側(AF用付勢部材112が配置されている側と逆側)が開口するように設けられている。
【0049】
AF用付勢部材112は、例えば、チタン銅、ニッケル銅、ステンレス等の金属材料で形成され、レンズホルダー111の周方向に延在するように配置される。本実施の形態では、AF用付勢部材112は、例えば、金属板材を屈曲加工して形成されており、互いに直交する方向に延在する板バネ部112a及び板バネ部112aを連結する連結部112bを有している。板バネ部112aは連結部112bに関して対称的な形状を有し、板バネ部112aの端部112cは略U字状に折り返して形成されている(以下、「AFモーター当接部112c」と称する)。
AF用付勢部材112は、レンズホルダー111の上部フランジ111bと下部フランジ111cとで挟まれた空間の一方に、連結部112bが取り付けられることで、レンズホルダー111に固定される。板バネ部112aは、X方向及びY方向に沿って延在することとなる。
【0050】
第1ステージ12は、AF支持部15を介してAF可動部111を支持する部分である。第1ステージ12の光軸方向結像側には、ボール42を介して第2ステージ13が配置される。第1ステージ12は、振れ補正時にX方向及びY方向に移動し、第2ステージ13は、振れ補正時にX方向のみに移動する。
【0051】
第1ステージ12は、略矩形筒状の部材であり、例えば、液晶ポリマーで形成される。第1ステージ12は、レンズホルダー111に対応する部分に略円形状の開口12aを有する。第1ステージ12において、第2ステージ13に対応する2つの側壁は、他の側壁に比較して、第2ステージの厚み分だけ薄肉に形成されている。
【0052】
第1ステージ12は、下面に、ボール42を収容する3つのボール収容部12bと、ボール41を収容するボール収容部12cを有する。ボール収容部12bは、X方向に延びる長円形状に凹んで形成されている。また、ボール収容部12bの側面は、底面側に向けて溝幅狭くなるようにテーパー形状に形成されている。ボール収容部12cは、円形状に凹んで形成されている。ボール収容部12bは、第2ステージ13のボール収容部13aとZ方向において対向し、ボール収容部12cは、ベース21のボール収容部21eとZ方向において対向する。
【0053】
第1ステージ12は、下部の四隅において内側に突出するフランジ部12dを有する。第1ステージ12にレンズホルダー111を取り付けたとき、フランジ部12dの上方にレンズホルダー111の上部フランジ111bが位置し、対角に位置する2つのフランジ部12dの下方にレンズホルダー111の下部フランジ111cが位置する。つまり、2つのフランジ部12dは、レンズホルダー111の上部フランジ111b及び下部フランジ111cによって、レンズホルダー111の移動可能距離だけ離間した状態で挟まれる。
【0054】
第1ステージ12は、X方向及びY方向に沿う一方の側壁の内側面に、AF支持部15を固定するためのボール固定部12eを有する。第1ステージ12は、X方向に沿う一方の外側面に、第1のOIS駆動部30Xを固定するためのOISモーター固定部12fを有する。第1ステージ12において、Y方向に沿う一方の側壁の外側面は内側に凹んで形成されており、レンズ駆動装置1を組み立てたときに、第2のOIS駆動部30Yが位置する。
また、第1ステージ12において、X方向及びY方向に沿う他方の側壁の内側面には、AF駆動部14A、14Bが配置され、当該側壁の下面には、磁気センサー25X、25YとZ方向において対向するように、XY位置検知用のマグネット16X、16Yが配置される。例えば、マグネット16XはX方向に着磁され、マグネット16YはY方向に着磁される。
【0055】
第1ステージ12には、例えば、インサート成形により、配線17が埋設される。配線17は、第1ステージ12の四隅外面の切欠部分から露出しており、この部分に、OIS用付勢部材50の一端が接続される。また、第1ステージ12の上面には、配線17と電気的に接続された給電プレート18が配置される。配線17及び給電プレート18を介して、AF駆動部14及び第1のOIS駆動部30Xへの給電が行われる。
【0056】
第2ステージ13は、L字形状の部材であり、例えば、液晶ポリマーで形成される。第2ステージ13の内周面は、レンズホルダー111の外形に沿って円弧状に形成されている。第2ステージ13のY方向に沿う側壁の外側面は、第1ステージ12と同様に、内側に凹んで形成されており、レンズ駆動装置1を組み立てたときに、第2のOIS駆動部30Yが位置する。本実施の形態では、第2ステージ13をL字形状に形成するとともに、第1ステージ12において、薄肉に形成された2つの側壁の下方に第2ステージ13を配置することにより、OIS可動部10の低背化が図られている。
【0057】
第2ステージ13は、下面に、ボール41を収容する3つのボール収容部13aを有する。ボール収容部13aは、ベース21のボール収容部21fに対向する。ボール収容部13aは、Y方向に延びる長円形状に凹んで形成されている。また、ボール収容部13aの側面は、底面側に向けて溝幅が狭くなるようにテーパー形状に形成されている。
また、第2ステージ13は、上面に、ボール42を収容する3つのボール収容部13bを有する。ボール収容部13bは、第1ステージ12のボール収容部12bとZ方向において対向する。ボール収容部13bは、X方向に延びる長円形状に凹んで形成されている。ボール収容部12bの側面は、底面側に向けて溝幅が狭くなるようにテーパー形状に形成されている。
【0058】
OIS支持部40を構成する3つのボール41は、ベース21のボール収容部21fと第2ステージ13のボール収容部13aにより、多点接触で挟持される。したがって、ボール41は、安定してX方向に転動する。
また、ボール42は、第2ステージ13のボール収容部13bと第1ステージ12のボール収容部12bにより、多点接触で挟持される。したがって、ボール42は、安定してX方向に転動する。
【0059】
AF支持部15は、ボールで構成される。本実施の形態では、3つのボールがZ方向に並んで配置されている。AF支持部15は、レンズホルダー111のボール収容部111dと第1ステージ12のボール固定部12eとの間に、転動可能な状態で介在する。
【0060】
AF駆動部14は、AF可動部11をZ方向に移動させるアクチュエーターである。AF駆動部14は、第1のAF駆動部14A(第1のZ方向駆動部)及び第2のAF駆動部14B(第2のZ方向駆動部)で構成される。AF駆動部14は、OIS駆動部30と同様に、超音波モーターで構成されている。第1のAF駆動部14A及び第2のAF駆動部14Bは、それぞれ、X方向及びY方向に沿うように、第1ステージ12の内周面に固定される。
【0061】
AF駆動部14の構成を
図10A、
図10Bに示す。
図10Aは、AF駆動部14の各部材を組み付けた状態を示し、
図10Bは、AF駆動部14の各部材を分解した状態を示す。なお、
図10A、
図10Bは、第2のAF駆動部14Bを示しているが、第1のAF駆動部14Aの主要構成、具体的には電極143の形状を除く構成は同様であるので、AF駆動部14を示す図として扱う。AF駆動部14の構成は、OIS駆動部30とほぼ同様である。
【0062】
図10A、
図10Bに示すように、AF駆動部14は、AF共振部141、AF圧電素子142及びAF電極143を有する。AF駆動部14の駆動力は、AF用付勢部材112を介してレンズホルダー111に伝達される。
【0063】
AF圧電素子142は、例えば、セラミック材料で形成された板状素子であり、高周波電圧を印加することにより振動を発生する。AF共振部141の胴部141aを挟み込むように、2枚のAF圧電素子142が配置される。
AF電極143は、AF共振部141及びAF圧電素子142を挟持し、AF圧電素子142に電圧を印加する。
【0064】
AF共振部141は、導電性材料で形成され、AF圧電素子142の振動に共振して、振動運動を直線運動に変換する。本実施の形態では、AF共振部141は、AF圧電素子142に挟持される略矩形状の胴部141a、胴部141aの上部及び下部からX方向又はY方向に延在する2つのアーム部141b、胴部141aの中央部からX方向又はY方向に延在する突出部141c、及び、胴部141aの中央部から突出部141cとは反対側に延在し給電経路(第1ステージ12の配線17)と電気的に接続される通電部141dを有している。2つのアーム部141bは自由端部を除いて対称的な形状を有し、AF圧電素子142の振動に共振して対称的に変形する。2つのアーム部141bの自由端部は、一方の自由端部だけがAF用付勢部材112に当接するように、互いに異なる形状を有する。なお、AF用付勢部材112の形状を工夫するなどして、一方の自由端部だけがAF用付勢部材112に当接するように構成できれば、2つのアーム部141bの自由端部が対称的な形状を有していてもよい。
【0065】
AF共振部141の胴部141aに、厚さ方向からAF圧電素子142が貼り合わされ、AF電極143により挟持されることにより、これらは互いに電気的に接続される。給電プレート18がAF電極143に接続され、第1ステージ12の配線17がAF共振部141の通電部141dに接続されることで、AF圧電素子142に電圧が印加され、振動が発生する。
【0066】
AF共振部141は、OIS共振部31と同様に、少なくとも2つの共振周波数を有し、それぞれの共振周波数に対して、異なる挙動で変形する。言い換えると、AF共振部141は、2つの共振周波数に対して異なる挙動で変形するように、全体の形状が設定されている。
【0067】
第1のAF駆動部14A及び第2のAF駆動部14Bは、それぞれ、X方向及びY方向に沿うように、第1ステージ12の内周面に固定される。本実施の形態では、第1のAF駆動部14A及び第2のAF駆動部14Bの2つのアーム部141bのうちの一方(例えば、下側に位置するアーム部141b)の先端を、AF用付勢部材112に当接させ、AF可動部11をZ方向に移動させるようになっている。AF用付勢部材112に当接するアーム部141bを「第1のアーム部141b」、AF用付勢部材112に当接しないアーム部141bを「第2のアーム部141b」と称する。なお、AF共振部141の上下2つのアーム部141bの先端を両方ともAF用付勢部材112に当接させると、2つのアーム部141bは対称的に動作するので、スリップしてAF可動部11をZ方向に移動させることはできない。
【0068】
本実施の形態では、AF駆動部14は、第1のアーム部141bだけをAF可動部11(AF用付勢部材112)に当接させてZ方向に移動させるため、OIS駆動部30のように2つのアーム部31bを利用して駆動力を伝達する場合に比較して、伝達される駆動力は半減する。そこで、AF駆動部14を2つ設けることにより、光軸方向への移動のための駆動力が確保されている。
【0069】
AFユニットを組み立てて、AF駆動部14をAF用付勢部材112に当接させたときに、AF用付勢部材112が板バネとして機能し、AF可動部11(レンズホルダー111)はAF支持部15を介して第1ステージ12(AF固定部)に付勢されるようになっている(
図11A、
図11B参照)。
具体的には、第1及び第2のAF駆動部14A、14Bの第1のアーム部141bがAF用付勢部材112の両端部に当接することにより、レンズホルダー111が第1ステージ(AF固定部)に対して、光軸直交面内で一方向に付勢されている。実施の形態では、レンズホルダー111は、AF用付勢部材112によって押し付けられ、第1ステージ(AF固定部)に対して、X方向及びY方向の中間方向に付勢されている。
この付勢力により、AF共振部141のアーム部141bの先端にAF用付勢部材112が押し付けられ、AF共振部141からの駆動力がAF用付勢部材112に効率よく伝達される。また、AF用付勢部材112が、AF駆動部14の駆動力を伝達する機能と、AF可動部11を第1ステージ12に対して付勢する機能を兼用しているので、部品構成が簡素化される。
【0070】
また、AF支持部15は、第1及び第2のAF駆動部14A、14Bに対応して2箇所に設けられている。2箇所に設けられたAF支持部15を介して、AF可動部11が第1ステージ12に向けて付勢されるので、AF可動部11は安定した姿勢で保持される。
【0071】
AF駆動部14とAF用付勢部材112は、付勢された状態で当接しているだけなので、当接部分をZ方向に大きくするだけで、レンズ駆動装置1の低背化を損なうことなく、AF可動部11の移動距離(ストローク)を容易に長くすることができる。ただし、AF可動部11の移動距離は、AF可動部11の移動に関与しないAF共振部141の他方のアーム部141b(例えば、上側に位置するアーム部141b)にAF用付勢部材112が当接しない程度に制限される。
【0072】
また、AF共振部141の第1のアーム部141bは、金属成形品であるAF用付勢部材112に当接している。これにより、第1のアーム部141bが樹脂成形品であるレンズホルダー111に当接する場合に比較して、AF駆動部14の駆動力を効率よく伝達することができる。
【0073】
レンズ駆動装置1において、AF駆動部14に電圧を印加すると、AF圧電素子142が振動し、AF共振部141が周波数に応じた挙動で変形する。このとき、第1のAF駆動部14Aと第2のAF駆動部14Bが同じ挙動を示すように、電圧が印加される。AF駆動部14の駆動力により、AF用付勢部材112がZ方向に摺動される。これに伴い、AF可動部11がZ方向に移動し、ピント合わせが行われる。AF支持部15がボールで構成されているので、AF可動部11はZ方向にスムーズに移動することができる。
【0074】
レンズ駆動装置1において、OIS駆動部30に電圧を印加すると、OIS圧電素子32が振動し、OIS共振部31が周波数に応じた挙動で変形する。OIS駆動部30の駆動力により、OIS動力伝達部34がX方向又はY方向に摺動される。これに伴い、OIS可動部10がX方向又はY方向に移動し、振れ補正が行われる。OIS支持部40がボールで構成されているので、OIS可動部10はX方向又はY方向にスムーズに移動することができる。
【0075】
具体的には、第1のOIS駆動部30Xが駆動され、OIS動力伝達部34がX方向に移動する場合、第1のOIS駆動部30Xが配置されている第1ステージ12から第2ステージ13に動力が伝達される。このとき、第2ステージ13とベース21とで挟持されているボール41(ボール収容部21fに収容されている3個)は、X方向に転動できないの、ベース21に対する第2ステージ13のX方向の位置は維持される。一方、第1ステージ12と第2ステージ13とで挟持されているボール42は、X方向に転動できるので、第2ステージ13に対して第1ステージ12がX方向に移動する。つまり、第2ステージ13がOIS固定部20を構成し、第1ステージ12がOIS可動部10を構成する。
【0076】
また、第2のOIS駆動部30Yが駆動され、OIS動力伝達部34がY方向に移動する場合、第2のOIS駆動部30Yが配置されているベース21から第2ステージ13に動力が伝達される。このとき、第1ステージ12と第2ステージ13とで挟持されているボール42は、Y方向に転動できないので、第2ステージに対する第1ステージ12のY方向の位置は維持される。一方、第2ステージ13とベース21とで挟持されているボール41(ボール収容部21fに収容されている3個)は、Y方向に転動できるので、ベース21に対して第2ステージ13がY方向に移動する。第1ステージ12も第2ステージ13に追従してY方向に移動することになる。つまり、ベース21がOIS固定部20を構成し、第1ステージ12及び第2ステージ13を含むAFユニットがOIS可動部10を構成する。
【0077】
このようにして、OIS可動部10がXY平面内で揺動し、振れ補正が行われる。具体的には、カメラモジュールAの角度振れが相殺されるように、振れ検出部(例えばジャイロセンサー、図示略)からの角度振れを示す検出信号に基づいて、OIS駆動部30X、30Yへの通電電圧が制御される。このとき、マグネット16X、16Y及び磁気センサー25X、25Yで構成されるXY位置検出部の検出結果をフィードバックすることで、OIS可動部10の並進移動を正確に制御することができる。
【0078】
このように、実施の形態に係るレンズ駆動装置1は、第1ステージ12(第1固定部)と、第1ステージ12と離間して配置されるAF可動部11(第1可動部)と、第1ステージ12に対してAF可動部11を支持するAF支持部15(第1支持部)と、第1ステージ12に配置され、第1ステージ12に対してAF可動部11を光軸方向に移動させるAF駆動部14(Z方向駆動部)と、を備える。AF駆動部14は、AF圧電素子142及びAF共振部141を有し、振動運動を直線運動に変換する超音波モーターで構成される。AF共振部141は、AF圧電素子142に挟持される胴部141aと、胴部141aから同じ方向に延在する第1及び第2のアーム部141bと、を有する。第1及び第2のアーム部141bは、AF圧電素子の振動に共振して変形し、第1のアーム部141bだけが、AF可動部11に当接している。
【0079】
レンズ駆動装置1によれば、AF駆動部14が超音波モーターで構成されているので、外部磁気の影響を低減できるとともに、小型化及び低背化を図ることができる。したがって、スマートフォンMのように、レンズ駆動装置1を有するカメラモジュールAを近接して配置しても磁気的な影響はないので、デュアルカメラ用として極めて好適である。
【0080】
また、レンズ駆動装置1において、AF可動部11は、AF支持部15を介して第1ステージ(AF固定部)に付勢されている。これにより、AF可動部11にAF駆動部14の駆動力を効率よく伝達することができる。
【0081】
[第2の実施の形態]
図12A、
図12Bは、第2の実施の形態に係るレンズ駆動装置1Aの外観斜視図である。
図12Bは、
図12AをZ軸周りに180°回転した状態を示す。第2の実施の形態に係るレンズ駆動装置1Aは、OIS可動部10Aの構成を除いて、第1の実施の形態に係るレンズ駆動装置1とほぼ同様である。第1の実施の形態に係るレンズ駆動装置1と同一又は対応する構成要素については、同じ符号を付して説明を省略し、ここでは、OIS可動部10A(特にAF可動部51)について説明する。
【0082】
図13~
図15は、OIS可動部10の分解斜視図である。
図14は、
図13をZ軸周りに180°回転させた状態を示す。
図15は、
図13をZ軸周りに90°回転させた状態を示す下方斜視図である。
【0083】
図13~
図15に示すように、第2の実施の形態において、OIS可動部10Aは、AF可動部51、第1ステージ12、第2ステージ13、AF駆動部14及びAF支持部15等を有する。Y方向の移動に関しては、第1ステージ12及び第2ステージ13を含むOIS可動部10A全体が可動体となるのに対して、X方向の移動に関しては、第2ステージ13はOIS固定部20として機能し、AFユニットだけがOIS可動部10として機能する。また、第1ステージ12は、AF固定部として機能する。
【0084】
AF可動部51は、ピント合わせ時に光軸方向に移動する部分である。AF可動部51は、第1ステージ12(AF固定部)に対して径方向に離間して配置され、AF支持部15を介して第1ステージ12と接続される。
【0085】
AF可動部51は、レンズ部2(
図2参照)を保持するレンズホルダー511及びAF用付勢部材512を有する。
レンズホルダー511は、例えば、ポリアリレート(PAR)、PARを含む複数の樹脂材料を混合したPARアロイ、液晶ポリマー等で形成される。レンズホルダー511は、筒状のレンズ収容部511aを有する。レンズ収容部511aには、レンズ部2(
図2参照)が、例えば、接着により固定される。
【0086】
レンズホルダー511は、レンズ収容部511aの上部外周縁に、上部フランジ511bを有する。第2の実施の形態では、レンズ駆動装置1Aの四隅に対応する位置に、4つの上部フランジ511bが設けられている。上部フランジ511bは、レンズホルダー511の光軸方向結像側(下側)への移動を規制する規制部として機能する。
【0087】
4つの上部フランジ部511bのうちの1つには、Z位置検出用のマグネット16Zを収容するマグネット収容部511cが設けられている。マグネット収容部511cにマグネット16Zが配置され、センサー基板22(
図4参照)のマグネット16Zと光軸方向に対向する位置にZ位置検出用の磁気センサー(例えばホール素子、TMRセンサー等)(図示略)が配置される。なお、マグネット16Zと磁気センサー(図示略)に代えて、フォトリフレクター等の光センサーによりAF可動部51のZ方向の位置を検出するようにしてもよい。
【0088】
また、レンズホルダー511は、レンズ収容部511aの周面に、AF支持部15を収容するボール収容部511dを有している。第2の実施の形態では、ボール収容部511dは、一方の対角方向(X方向とY方向の中間方向)に関して線対称な2箇所に、他方の対角方向に関して同じ側(AF用付勢部材512が配置される側)が開口するように設けられている。
【0089】
AF用付勢部材512は、例えば、チタン銅、ニッケル銅、ステンレス等の金属材料で形成される。AF用付勢部材512は、例えば、平坦なダンベル形状の板バネで構成される。AF用付勢部材512の長手方向における両端部512aに、AF駆動部14A、14Bが当接する。また、AF用付勢部材512は、肉抜きにより、ばね定数が調整されている。
【0090】
AF用付勢部材512は、マグネット収容部511cとレンズ収容部511aとの間に形成された空間511eに配置され、スペーサー513とマグネット収容部511cにより挟持されている。AF用付勢部材512は、レンズ収容部51aに接するように延在することとなる。
【0091】
第1のAF駆動部14A及び第2のAF駆動部14Bは、それぞれ、X方向及びY方向に沿うように、第1ステージ12の内周面に固定される。第2の実施の形態では、第1のAF駆動部14A及び第2のAF駆動部14Bの2つのアーム部141bのうちの一方(例えば、上側に位置するアーム部141b)の先端を、AF用付勢部材512に当接させ、AF可動部51をZ方向に移動させるようになっている。AF用付勢部材512に当接するアーム部141bを「第1のアーム部141b」、AF用付勢部材112に当接しないアーム部141bを「第2のアーム部141b」と称する。なお、AF共振部141の上下2つのアーム部141bの先端を両方ともAF用付勢部材112に当接させると、2つのアーム部141bは対称的に動作するので、スリップしてAF可動部11をZ方向に移動させることはできない。
【0092】
第2の実施の形態では、AF駆動部14は、第1のアーム部141bだけをAF可動部11(AF用付勢部材112)に当接させてZ方向に移動させるため、OIS駆動部30のように2つのアーム部31bを利用して駆動力を伝達する場合に比較して、伝達される駆動力は半減する。そこで、AF駆動部14を2つ設けることにより、光軸方向への移動のための駆動力が確保されている。
【0093】
AFユニットを組み立てて、AF駆動部14をAF用付勢部材512に当接させたときに、AF用付勢部材512が板バネとして機能し、AF可動部51はAF支持部15を介して第1ステージ12(AF固定部)に付勢されるようになっている(
図16A、
図16B参照)。
具体的には、第1及び第2のAF駆動部14A、14Bの第1のアーム部141bがAF用付勢部材512の両端部に当接することにより、レンズホルダー111が第1ステージ(AF固定部)に対して、光軸直交面内で一方向に付勢されている。第2の実施の形態では、レンズホルダー111は、AF用付勢部材512によって引っ張られ、第1ステージ(AF固定部)に対して、X方向及びY方向の中間方向に付勢されている。
【0094】
この付勢力により、AF共振部141のアーム部141bの先端にAF用付勢部材512が押し付けられ、AF共振部141からの駆動力がAF用付勢部材512に効率よく伝達される。また、AF用付勢部材512が、AF駆動部14の駆動力を伝達する機能と、AF可動部51を第1ステージ12に対して付勢する機能を兼用しているので、部品構成が簡素化される。
【0095】
また、第2の実施の形態では、AF用付勢部材512が平坦なダンベル形状の板バネで構成されており、大きな付勢力が発揮されるので、AF可動部51の自重による沈み込みが抑制され、第1ステージ12に対するAF可動部51の姿勢が安定する。したがって、AF駆動部14の駆動力を効率よくAF可動部51に伝達することができるとともに、応答性が向上する。
【0096】
また、AF支持部15は、第1及び第2のAF駆動部14A、14Bに対応して2箇所に設けられている。2箇所に設けられたAF支持部15を介して、AF可動部11が第1ステージ12に向けて付勢されるので、AF可動部51は安定した姿勢で保持される。
【0097】
AF駆動部14とAF用付勢部材512は、付勢された状態で当接しているだけなので、当接部分をZ方向に大きくするだけで、レンズ駆動装置1Aの低背化を損なうことなく、AF可動部51の移動距離(ストローク)を容易に長くすることができる。ただし、AF可動部51の移動距離は、AF可動部51の移動に関与しないAF共振部141の他方のアーム部141b(例えば、下側に位置するアーム部141b)にAF用付勢部材512が当接しない程度に制限される。
【0098】
また、AF共振部141の第1のアーム部141bは、金属成形品であるAF用付勢部材512に当接している。これにより、第1のアーム部141bが樹脂成形品であるレンズホルダー111に当接する場合に比較して、AF駆動部14の駆動力を効率よく伝達することができる。
【0099】
このように、第2の実施の形態に係るレンズ駆動装置1Aは、第1ステージ12(第1固定部)と、第1ステージ12と離間して配置されるAF可動部51(第1可動部)と、第1ステージ12に対してAF可動部51を支持するAF支持部15(第1支持部)と、第1ステージ12に配置され、第1ステージ12に対してAF可動部51を光軸方向に移動させるAF駆動部14(Z方向駆動部)と、を備える。AF駆動部14は、AF圧電素子142及びAF共振部141を有し、振動運動を直線運動に変換する超音波モーターで構成される。AF共振部141は、AF圧電素子142に挟持される胴部141aと、胴部141aから同じ方向に延在する第1及び第2のアーム部141bと、を有する。第1及び第2のアーム部141bは、AF圧電素子142の振動に共振して変形し、第1のアーム部141bだけが、AF可動部51(AF用付勢部材512)に当接している。
【0100】
レンズ駆動装置1Aによれば、AF駆動部14が超音波モーターで構成されているので、外部磁気の影響を低減できるとともに、小型化及び低背化を図ることができる。したがって、スマートフォンMのように、レンズ駆動装置1を有するカメラモジュールAを近接して配置しても磁気的な影響はないので、デュアルカメラ用として極めて好適である。
【0101】
また、レンズ駆動装置1Aにおいて、AF可動部51は、AF支持部15を介して第1ステージ(AF固定部)に付勢されている。これにより、AF可動部51にAF駆動部14の駆動力を効率よく伝達することができる。
【0102】
[駆動ユニットの制御方法]
第1の実施の形態に係るレンズ駆動装置1及び第2の実施の形態に係るレンズ駆動装置1Aにおいて、AF駆動部14及びOIS駆動部30(駆動ユニット)は、例えば、以下のようにして制御される。以下に示す駆動ユニットにおいて、「能動素子C-1」がAF共振部141及びOIS共振部31に対応し、「受動要素C-4」がAF用付勢部材112、512及びOIS動力伝達部34に対応する。
【0103】
原則的に、これらの図では、同一又は機能的に同一の部分には同じ参照記号を提供する。
図17は、能動要素C-1を備える駆動ユニットを示す。能動要素C-1は、第1のアームC-21及び第2のアームC-22という一対のアームを有する共振器C-2(AF共振部141、OIS共振部31に対応)を備える。アームC-21、C-22及び取付部C-14は、共振器C-22の連結部C-20に接続されている。共振器C-22は、取付部C-14を介して、ベース要素などの別の部分に実装される。
【0104】
連結部C-20上に、圧電素子等の励起手段C-23(AF圧電素子142、OIS圧電素子32に対応)が配置される。励起手段C-23を駆動するための励起信号又は励起電圧を生成するように、コントローラー90が配置されている。能動要素C-1に対する受動要素C-4の位置及び/又は速度を測定するように、センサー91が配置されている。センサー91は、受動要素C-4の位置による影響を受ける磁界に基づいて、受動要素C-4の位置及び/又は速度を測定する。センサー91には、ホールセンサーを適用できる。
【0105】
励起手段C-23は、励起手段C-23の両側に配置された2つの別個の要素を備える。共振器C-22及び励起手段C-23は平坦な要素であり、互いに積み重ねられて、基準平面C-28に対して平行に延在する(
図19参照)。
【0106】
励起周波数の交流電圧によって励起されると、アームC-21、C-22は振動し、第1のアームC-21の第1の接触部C-31は、周波数に応じて、ほぼ線形の運動を実行する。線形振動は、直交成分を有することができ、全体的な運動は楕円形と見なすことができる。周波数に応じて、線形の振動(前後)運動の方向は変化する。第1の接触部C-31は、受動要素C-4の第1の接触領域C-41に繰返し接触し、能動要素C-1に対して駆動する。第2の接触部C-32及び第2の接触領域C-42についても同様である。
【0107】
線形の前後運動の方向に応じて、受動要素C-4は対応する方向に繰返し押され、受動要素C-4がどのように懸架されているかに応じて、例えば、線形及び/又は回転運動を実行する。
図17に示す実施形態では、受動要素C-4は能動要素C-1に対して回転する。
【0108】
これらの部分の特定の幾何形状、及び受動要素C-4が能動要素C-1に対して動くための配置態様を考えれば、所望の運動(回転又は線形)方向について、各振動又は各パルス及びその結果生じる押圧運動ごとに、所望の運動に対して最大のエネルギー伝達をもたらす励起周波数を判定することが可能である。パルスごとのエネルギー伝達を低減させるために、わずかに変化するが、振動運動の概略的な方向が同じに維持されるように、励起周波数をわずかに変化させることができる。これにより、第1の接触部31及び第2の接触部32がそれぞれの接触領域41、42に当接する当接角、ならびにそれらの振動の振幅が変化し、その結果、パルスごとに伝達されるエネルギーは、最適の角度に比べて減少する。このように、励起周波数のわずかな相対変化を利用して、受動要素C-4の移動速度を制御することができる。
【0109】
第1の接触部C-31と第1の接触領域C-41との間、及び第2の接触部C-32と第2の接触領域C-42との間にはそれぞれ、プリストレス力が作用する。プリストレス力は、第1のアームC-21及び第2のアームC-22の弾性によって生成される。受動要素C-4が第1の接触部C-31と第2の接触部C-32の間に配置されると、第1のアームC-21及び第2のアームC-22は、離間するように押される。
【0110】
第1のアームC-21及び第2のアームC-22は、連結部C-20から実質的に対称に延びるが、平坦な材料片から製造される場合、それらの形状、特に輪郭の細部では異なる場合がある。共振器軸C-24は、上述したアームの細部を除いて、共振器C-22、特に連結部C-20並びに第1のアームC-21と第2のアームC-22を鏡像化できる対称軸に対応する。励起手段C-23によって励起されたとき、連結部C-20及びアームC-21、C-22の運動は同じ対称軸に対して略対称である。この運動のノード、すなわち最小運動領域は、共振器軸C-24上に位置する。能動要素C-1を別の要素に実装するための取付部C-14もまた、共振器軸C-24上に位置する。
【0111】
図18A、
図18Bは、能動要素C-1の変形形態を示し、見やすいように受動要素C-4は省略されている。
図18Aは、
図17に示すような能動要素C-1を示す。
図18Bにおいて、能動要素C-1は、共振器軸C-24に対応する両方向矢印によって示されているように、特に2つのアームC-21、C-22が位置する平面内で、受動要素を直線方向に駆動するように位置する。
図18A、
図18Bにおいて、励起手段C-23は、共振器C-22の両側に取り付けられている。
【0112】
図19は、
図17に示す駆動ユニットと本質的に同じ要素を有する駆動ユニットを示す。この駆動ユニットもまた一対のアームC-21、C-22を有するが、第1のアームC-21のみが受動要素C-4に接触し、受動要素C-4を駆動する。線形運動軸C-26によって示されているように、駆動ユニットの運動は線形である。
【0113】
上記の実施形態では、受動要素C-4はアームC-21、C-22間に配置され、アームの端部の接触部C-31、C-32は互いに内向きになっている。他の実施の形態では、図示を省略するが、アームC-21、C-22は、接触部C-31、C-32が互いに離れる方へ外向きになるような形状を有する。受動要素C-4は、接触部C-31、C-32のうちの一方又は両方に外側から接触するように配置される。
【0114】
本明細書に提示する駆動方法を適用することができる駆動ユニットのさらなる実施形態は、国際公開第2006/000118号、米国特許第7,429,812号明細書、及び国際公開第2019/068708号に開示されており、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0115】
図20は、3つの駆動信号D1、D2、D3と、対応する能動要素C-1による振動の振幅A1、A2、A3とを、同じ時間軸tに沿って示している。
【0116】
第1の駆動信号D1は、パルス周期とも呼ばれる周期長Teの矩形信号であり、励起周波数feは、fe=1/Teで表される。第1の駆動信号D1の最大パルス幅はTe/2であり、すなわちパルスデューティーサイクルdpは50%である。
第1の駆動信号D1のパルスシーケンスが開始時間t0で始まると仮定すると、対応する振動の第1の振幅A1は、励起手段C-23による後続のパルスが機械エネルギーを能動要素C-1、特に共振器C-22及びそのアームC-21、C-22の振動が伝達するにつれて上昇する。複数のパルス後、振動は最大に到達し、その後、定常状態で本質的に一定となる。
振幅が活性化閾値Atを下回っている場合、アームC-21、C-22は受動要素C-4に駆動力を与えない。振幅が閾値を上回っている場合、アームC-21、C-22は受動要素C-4に駆動力を与え、受動要素C-4は能動要素C-1に対して駆動される。
【0117】
第2の駆動信号D2は、第1の駆動信号D1の振幅変調によって得られ、振幅が最大値に対して減少している。第3の駆動信号D3は、第1の駆動信号D1のパルス幅変調によって得られ、パルス幅又はパルスデューティーサイクルが最大値に対して減少している。第2の駆動信号D2及び第3の駆動信号D3のどちらの場合も、パルスごとに能動要素C-1へ伝達される機械エネルギーは、第1の駆動信号D1の場合に比較して減少する。それに対応して、第2の振幅A2及び第3の振幅A3の軌道は、第1の振幅A1よりゆっくりと立ち上がり、より低い一定値又は定常値で平らになる。活性化閾値を超えるために必要な時間は、第1の駆動信号D1の場合よりも長い。
【0118】
能動要素C-1による振動の振幅は、受動要素C-4の能動要素C-1に対する移動速度に対応する。したがって、パルスごとに能動要素C-1に与えられるエネルギーを制御することによって、駆動ユニットの速度を制御することができる。パルスごとに能動要素C-1に与えられるエネルギーは、パルスの形状に応じ、この形状は、異なるタイプの変調によって制御することができる。変調のタイプとしては、例えば、パルス振幅及び/又はパルス幅変調がよく知られている。
【0119】
パルスごとに伝達されるエネルギーをさらなる低減すると、振幅が活性化閾値Atを一切超えない又は不確実に時々しか超えない状況をもたらす可能性がある。このため、駆動ユニットの速度を速度閾値より下に低減することはできない。概して、速度閾値は振幅閾値に対応する。速度閾値は、駆動ユニットの物理特性及び電気特性に応じて、最大速度の20%~40%の領域内とすることができる。
【0120】
図22は、上記のことを、パルス幅又はパルスデューティーサイクルdpとその結果生じる速度vとの関係によって示している。パルスデューティーサイクルをその最大の50%から低減させると、速度は閾値まで低下し、閾値でゼロになる。
【0121】
より遅い速度を実現するために、駆動信号の形状は、定常状態における能動要素の振動の振幅が安全マージンによって活性化閾値を上回るように維持される。
図21に示すように、駆動ユニットは断続的に動作する。この図は、第4の駆動信号D4、対応する能動要素C-1の振動の振幅A4、及び対応する能動要素C-1に対する受動要素C-4の変位Sを、同じ時間軸tに沿って示している。時間軸は、
図20の時間軸と比較すると圧縮されている。
【0122】
第4の駆動信号D4は、ターンオン時間Tonではパルスを含み、ターンオフ時間Toffではパルスを含まない。パルスのあるシーケンスとパルスのないシーケンスは、Ton+Toffに等しいパルスブロック周期Tbで周期的に繰り返される。パルスブロック周期は、励起周期とも呼ばれる。パルスブロックが繰り返される対応する周波数fb=1/Tbは、パルスブロック周波数と呼ばれる。ターンオン時間Tonとパルスブロック周期Tbとの関係、すなわちTon/Tbは、パルスブロックデューティーサイクルdpbと呼ばれる。
【0123】
このように、ターンオン期間にのみ駆動ユニットにパルスを印加し、ターンオフ期間にはパルスを省略又は抑制することによって、駆動ユニットは、断続的に動作する。振幅が活性化閾値を超えるのに十分に長いターンオン期間中、及び対応する遅延の後、受動要素C-4は能動要素C-1に対して駆動される。ターンオフ期間中、振動が減衰する遅延の後、能動要素C-1は、プリストレス力によって受動要素C-4を定位置で保持する。変位Sは、一連のステップ及び定常期間の繰返しによって増大する。
図21に示す変位の平均勾配は、能動要素C-1に対する受動要素C-4の平均速度を表す。
【0124】
一般に、速度とは、直線軸に沿って見た能動要素C-1と受動要素C-4との間の相対運動を指す。回転駆動ユニットの場合、角速度は、能動要素C-1が受動要素C-4を駆動するときの半径で速度を割った値に対応する。
一般的なアプリケーションでは、パルスブロック周期は、5kHz~100kHz、典型的には25kHz前後のパルスブロック周波数fb=1/Tbに対応することができる。パルス自体の周波数は、50kHz~1000kHz、典型的には500kHz前後である。
その結果、最大速度は、80mm/秒前後となる。各振動周期に対するステップは、0.01~1μmの範囲内となる。能動要素C-1によって受動要素C-4に与えられる力は、最大100mN(すなわち、最大0.1N)である。励起手段C-23に印加される電圧は、3V前後である。
【0125】
駆動ユニットの位置を得る必要がある状況において、コントローラーは、速度にかかわらず、1パルス周期の位置変化である位置ステップサイズを修正する。例えば、
●駆動パルスの形状を修正し、パルスごとに伝達されるエネルギーを低減して、受動要素を駆動する機械的振動の振幅を低減することによって、修正する。
●又は、励起周波数を修正し、機械的振動を低減して振幅へのエネルギー伝達を低減し、かつ/又は機械的振動の方向、つまり受動要素C-4の運動方向に作用する駆動力への寄与を変化することによって、修正する。
【0126】
図23は、励起周波数fとその結果生じる速度vとの関係を示す。第1の周波数f1において、共振器C-22は、第1の動作モード又は第1の振動モードにあり、受動要素C-4を第1の方向に最大速度で駆動する。第2の周波数f2において、共振器C-22は、第2の動作モードにあり、第1の方向とは反対の第2の方向に、最大速度で受動要素C-4を駆動する。それぞれの振動モードにおける能動要素C-1の固有周波数に対する励起周波数の離調に対応して、それぞれf1又はf2前後にわずかなずれがある場合、それぞれの速度は減少する。
【0127】
上記の例は、矩形パルスを有する駆動信号に関連して説明されている。特に振幅及びパルス幅変調ならびにパルスの省略に関して、異なる形状のパルスでも同様の原理を適用することができる。例えば、正弦波、三角形、台形、もしくは鋸歯形のパルス、又は任意の形状のパルスでも適用することができる。
【0128】
反対方向の運動に対する最適な励起周波数f1及びf2、また、異なるモード及び方向に対する励起周波数は、概して、駆動ユニット、特に共振器C-22及び励起手段C-23の個々の機械及び電気特性に依存する。これらの特性は、摩耗及びパラメータ変動のため、温度、湿気などの環境条件に応じて、また重力方向に対する駆動ユニットの向きに応じて、経時的に変化する。それに対応して、励起周波数の最適値も変化する。最適値を判定するために、駆動ユニットを異なる周波数で動作させ、ターゲットの応答を測定し、ターゲットの応答が最適になる周波数を判定することができる。
【0129】
図24は、実施の形態に係る駆動ユニットを動作させる方法を示すフロー図である。
初期化ステップC-80において、方法が開始される。測定ステップC-81において、駆動ユニットの実際の位置、すなわち能動要素C-1及び受動要素C-4の相対位置が決定される。この位置は、回転位置であってもよいし、並進位置であってもよい。
【0130】
差分演算ステップC-82において、実際の位置と設定位置との間の差分dが計算される。差分dは、位置誤差信号によって表される。差分dの値に応じて、方法は異なる駆動モードに分岐する。駆動ユニットは、異なる閾値d1<d2<d3と、差分dの絶対値abs(d)に応じて、異なるパラメータの駆動信号によって駆動される。
●abs(d)>d3である場合(判定ステップC-83で“y”)、高速駆動モードC-84で駆動され、
● d2<abs(d)<d3である場合(判定ステップC-83で“n”、判定ステップC-85で“y”)、中速駆動モードC-86で駆動され、
● d1<abs(d)<d2である場合(判定ステップC-85で“n”、判定ステップC-87で“y”)、低速駆動モードC-88で駆動される。
いずれの場合も、前述した例における駆動信号の励起周波数、すなわちf1又はf2は、位置を補正するべき方向、すなわち差分dの符号に応じて選択される。
abs(d)<d1である場合(判定ステップC-87で“n”)、駆動ユニットは駆動されない。このとき、制動モード89において、受動要素C-4は、プリストレス力によって能動要素C-1に対して保持される。
そして、測定ステップC-81を継続することによって反復的に繰り返される。
【0131】
閾値に対する値は、駆動ユニットを設計又は注文するときに選択される。これらの値は、例えば、d1=1μm、d2=5μm、d3=10μmとすることができる。
【0132】
実施形態において、高速駆動モードC-84では、駆動信号の最大パワーに対するパルスデューティーサイクルは典型的には50%であり、最大パルスブロックデューティーサイクルは典型的には100%である。
【0133】
実施形態において、中速駆動モードC-86では、
●駆動信号のパルスデューティーサイクルは高速駆動モードC-84のパルスデューティーサイクルより低減され、かつ/又は
●駆動信号のパルスブロックデューティーサイクルは高速駆動モードC-84のパルスブロックデューティーサイクルより低減される。
実施形態では、パルスデューティーサイクル及びパルスブロックデューティーサイクルの両方が低減される。例えば、パルスデューティーサイクルは30%であり(最大の50%ではない)、パルスブロックデューティーサイクルは50%である(最大の100%ではない)。
【0134】
実施形態において、低速駆動モードC-88では、
●駆動信号のパルスデューティーサイクルは中速駆動モードC-86のパルスデューティーサイクルより低減され、かつ/又は
●駆動信号のパルスブロックデューティーサイクルは中速駆動モードC-86のパルスブロックデューティーサイクルより低減される。
実施形態では、
●高速駆動モードC-84で、駆動信号のパルスデューティーサイクルは50%、パルスブロックデューティーサイクルは100%であり、
●中速駆動モードC-86で、駆動信号のパルスデューティーサイクルは30%、パルスブロックデューティーサイクルは50%であり、
●低速駆動モードC-88で、駆動信号のパルスデューティーサイクルは20%、パルスブロックデューティーサイクルは10%である。
【0135】
他の実施形態では、速度が異なる2つの駆動モードのみが使用される。
【0136】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0137】
例えば、実施の形態では、カメラモジュールAを備えるカメラ搭載装置の一例として、カメラ付き携帯端末であるスマートフォンMを挙げて説明したが、本発明は、カメラモジュールとカメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部を有するカメラ搭載装置に適用できる。カメラ搭載装置は、情報機器及び輸送機器を含む。情報機器は、例えば、カメラ付き携帯電話機、ノート型パソコン、タブレット端末、携帯型ゲーム機、webカメラ、カメラ付き車載装置(例えば、バックモニター装置、ドライブレコーダー装置)を含む。また、輸送機器は、例えば自動車を含む。
【0138】
図25A、
図25Bは、車載用カメラモジュールVC(Vehicle Camera)を搭載するカメラ搭載装置としての自動車Vを示す図である。
図25Aは自動車Vの正面図であり、
図25Bは自動車Vの後方斜視図である。自動車Vは、車載用カメラモジュールVCとして、実施の形態で説明したカメラモジュールAを搭載する。
図25A、
図25Bに示すように、車載用カメラモジュールVCは、例えば前方に向けてフロントガラスに取り付けられたり、後方に向けてリアゲートに取り付けられたりする。この車載用カメラモジュールVCは、バックモニター用、ドライブレコーダー用、衝突回避制御用、自動運転制御用等として使用される。
【0139】
また、実施の形態では、AF駆動部14の第1のアーム部141bを、AF可動部11、51を構成するAF用付勢部材112、512に当接させているが、レンズホルダー111、512に直接当接させてもよい。ただし、樹脂成形品であるレンズホルダー111、512よりも、金属成形品であるAF用付勢部材112、512に当接させる方が、駆動力を効率よく伝達できるとともに、耐久性も向上する。
また、レンズホルダー111、512を第1ステージ12に向けて付勢する付勢部材と、AF駆動部14の第1のアーム部141bが当接する部材とを別々に設けるようにしてもよい。
【0140】
また、実施の形態では、2つのAF駆動部14A、14Bを設けているが、AF可動部11、51をZ方向に移動可能な駆動力を発揮できれば、AF駆動部14の数は1つであってもよいし、3以上であってもよい。
【0141】
また、本発明は、オートフォーカスだけでなく、ズームなど、可動部を光軸方向に移動させる場合に適用することができる。
【0142】
さらに、第2の実施の形態におけるAF用付勢部材512を用いたAF可動部51の支持構造は、AF駆動部14のように駆動源が超音波モーターで構成されている場合に限らず、超音波モーター以外の駆動源(例えば、ボイスコイルモーター(VCM))を備えるレンズ駆動装置にも適用することができる。
【0143】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0144】
2019年5月10日出願の特願2019-089864、2019年10月11日出願の特願2019-187775、及び2019年12月13日出願の特願2019-225710の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【符号の説明】
【0145】
1、1A レンズ駆動装置
10、10A OIS可動部(第2可動部)
11、51 AF可動部(第1可動部)
111、511 レンズホルダー
112、512 AF用付勢部材
12 第1ステージ(第1固定部)
13 第2ステージ
14 AF駆動部(Z方向駆動部)
141 AF共振部
142 AF圧電素子
143 AF電極
15 AF支持部(第1支持部)
20 OIS固定部(第2固定部)
21 ベース
30 OIS駆動部(XY方向駆動部)
31 OIS共振部
32 OIS圧電素子
33 OIS電極
34 OIS動力伝達部
40 OIS支持部(第2支持部)
50 OIS用付勢部材
A カメラモジュール
M スマートフォン(カメラ搭載装置)