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  • 特許-フルオロオレフィンの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】フルオロオレフィンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/25 20060101AFI20240829BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20240829BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
C07C17/25
C07C21/18
C07B61/00 300
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024515152
(86)(22)【出願日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2023035831
【審査請求日】2024-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2022159262
(32)【優先日】2022-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000157119
【氏名又は名称】関東電化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】澁澤(松田) 結花
(72)【発明者】
【氏名】澁澤 幸伸
(72)【発明者】
【氏名】河合 広洋
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109012676(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109174139(CN,A)
【文献】国際公開第93/025510(WO,A1)
【文献】特公昭47-035667(JP,B1)
【文献】特開平11-140002(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0070746(US,A1)
【文献】特開平09-067281(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102887812(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/25
C07C 21/18
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属塩を含有する活性炭存在下でフッ素化アルカンを脱フッ化水素反応させることを特徴とするフルオロオレフィンの製造方法であって、
前記フルオロオレフィンが1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc)であり、前記フッ素化アルカンが1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236fa)であり、
金属塩の金属が、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属である、方法
【請求項2】
脱フッ化水素反応が、気相で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項3】
脱フッ化水素反応が、250~650℃の温度で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項4】
脱フッ化水素反応が、400~625℃の温度で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項5】
脱フッ化水素反応が、500~550℃の温度で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記活性炭の金属塩含有量が、0.5~5重量%である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
金属塩の金属がアルカリ金属である、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記活性炭の金属塩含有量が、0.5~5重量%である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
脱フッ化水素反応が、気相で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項10】
脱フッ化水素反応が、500~550℃の温度で行われる、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロオレフィンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロフルオロオレフィン(HFO)はその低いODP(オゾン層破壊係数)及びGWP(地球温暖化係数)の値のために、HCFCに対する望ましい代替物として知られている。HFOは、冷却剤、伝熱流体、消火剤、噴射剤、発泡剤、膨張剤、ガス誘導体、重合媒体又はモノマーとして有用な化合物として知られている。
【0003】
特許文献1には、ヘキサフルオロプロパンを、約200℃から500℃の温度で、随意に不活性ガスの存在下で、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、などを含む触媒と接触させるペンタフルオロプロペンの製造方法が記載されている。特許文献2には、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンをガス状態にて、活性炭と接触せしめ、脱フッ酸させることを特徴とする、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロペンの製造方法が記載されている。特許文献3には、(a)式:CCl8-x-y(式中、xは5又は6であり、yは0又は1であり、x+y≦6を満たす。)で表されるハロゲン化プロパンを装填した反応器にアルカリ金属水酸化物の供給流を導入し、(b)液相で、ハロゲン化プロパンと水性塩基とを反応させ、式:Cz-17-z(式中、zはx―1である。)で表されるハロゲン化プロペンを生成し、(c)反応器からハロゲン化プロペンの少なくとも一部を蒸気流として除去し、(a)、(b)及び(c)はすくなくとも部分的に同時に行われる、ことを含むヒドロフルオロプロペンの製造方法が記載されている。特許文献4には、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(CF3CH=CF2、HFC-1225zc)は、デヒドロフルオロ化触媒の不存在下、約700℃から約1000℃までの温度で、ほぼ大気圧の全圧において、内部表面がフッ化水素に対して抵抗性のある作製材料を含んでなる空の管状反応器中で、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(CF3CH2CF3、HFC-236fa)を熱分解することで製造できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2001-509803号公報
【文献】特開平9-67281号公報
【文献】米国特許公開2011/0269999号
【文献】特表2008-518938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び特許文献2に関して、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、などを含む触媒やヤシ殻活性炭を用いた方法では反応転化率が低いという問題がある。また、特許文献3に関して、水性塩基を用いた反応では、水性塩基と相関移動触媒を連続的に導入し、還流条件により未反応原料を反応器に戻すなど反応様式が複雑になり、しかも大規模な製造条件では多量の廃液が生成するという問題がある。また特許文献4に関して、高温条件における熱分解反応では、物性が近く蒸留精製において分離が困難な不純物が複数種、高い生成比率で合成されるという問題がある。
【0006】
そこで本発明の目的は、反応転化率及び目的物の選択率が高く、高収率で目的物が得られ、副生成物の割合が低く、廃液も生成しない、従来技術の問題点を解消したフルオロオレフィンの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のものを提供する。
[1]
金属塩を含有する活性炭存在下でフッ素化アルカンを脱フッ化水素反応させることを特徴とするフルオロオレフィンの製造方法。
[2]
前記フルオロオレフィンが、下記一般式(1):
CxHyFz (1)
(式中、x=3~5、y≧1、z≧1、y+z≦2x)
で表される、[1]に記載の方法。
[3]
前記フッ素化アルカンが、下記一般式(2):
CxHmFn (2)
(式中、x=3~5、m≧2、n≧2、m+n=2x+2)
で表される、[2]に記載の方法。
[4]
脱フッ化水素反応が、気相で行われる、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
脱フッ化水素反応が、250~650℃の温度で行われる、[4]に記載の方法。
[6]
金属塩の金属が、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属である、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、反応転化率及び目的物の選択率が高く、高収率で目的物が得られ、副生成物の割合が低く、廃液も生成しない、従来技術の問題点を解消したフルオロオレフィンの製造方法が提供される。本発明によれば、金属塩触媒を含有する活性炭を使用することで、反応温度を引き下げても高い転化率を実現できた。反応温度を引き下げられた結果、物性が近く蒸留精製において分離が困難な不純物の生成が抑制された。反応器内温度500℃程度の温度においても高転化率であった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の脱フッ化水素反応を行うための装置の一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[供給原料と生成物]
本発明の供給原料は、フッ素原子、水素原子及び炭素原子から構成されるフッ素化アルカンである。本発明では、脱フッ化水素反応によりフルオロオレフィンを生成するので、少なくとも1つの水素原子を有することが必要である。
生成物のフルオロオレフィンは、好ましくは、下記一般式(1):
CxHyFz (1)
(式中、x=3~5、y≧1、z≧1、y+z≦2xである。)
で表される。この場合、供給原料であるフッ素化アルカンは、好ましくは、下記一般式(2):
CxHmFn (2)
(式中、x=3~5、m≧2、n≧2、m+n=2x+2である。)
で表される。
【0011】
原料のフッ素化アルカンとしては、例えば、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236fa)、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236ea)、1,1,1,2,4,4,4-ヘプタフルオロブタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-2-メチルブタン、1,1,1,3,3,3-ヘプタフルオロ-2-(モノフルオロメチル)ブタン、1,1,1,2,5,5,5-ヘプタフルオロペンタン、1,1,1,3,5,5,5-ヘプタフルオロペンタン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタン、などが挙げられるが、これらは単独でも2種以上の混合物でも使用できる。
【0012】
生成物のフルオロオレフィンとしては、例えば、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc)、(E)-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン((E)-HFO-1225ye)、(Z)-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン((Z)-HFO-1225ye)、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エン、3,3,3-トリフルオロ-2-トリフルオロメチルプロパ-1-エン、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロペンタ-2-エン、1,1,4,4,4-ペンタフルオロブタ-1-エン、などが挙げられる。
【0013】
[反応触媒]
本発明では、金属塩を含有する活性炭を反応触媒に使用する。金属塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属などのハロゲン化物(特に、塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物など)、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、硝酸塩、亜硫酸塩、硫酸塩、酢酸塩、などが挙げられる。金属塩のより具体的な例としては、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、などのアルカリ金属塩、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウムなどのアルカリ土類金属塩、などが挙げられ、これらは単独でも2種以上の混合物でも使用できる。
【0014】
本発明では、上記の金属塩を含む活性炭を使用することが特徴である。活性炭触媒としては、例えば、ガス精製用、触媒・触媒担体用椰子殻炭(武田薬品工業製粒状白鷺GX、SX、CX、XRC、東洋カルゴン製PCB、太平化学産業株式会社製ヤシコール、クラレコールGG、GC)などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組みわせて使用することもできる。活性炭における金属塩の担持量は、担持触媒の全重量に対して、好ましくは、0.01~10重量%、より好ましくは、0.1~5重量%、さらにより好ましくは、0.5~1.5重量%である。酸洗浄処理などしていない活性炭には自然由来の金属塩が含まれている。この場合、金属塩の担持量(即ち、含有量)は、例えば、SEM-EDX等により決定する。SEM-EDXによる担持量の決定は、SEM-EDXを使用して試料表面を数点測定し、それらの測定値の平均値により行う。活性炭の好ましい性質としてはpHとアセトン吸着能が挙げられ、pHの好ましい範囲としては8~12であり、より好ましい範囲としては9~11であり、アセトン吸着能は好ましくは29重量%以上であり、より好ましくは35重量%以上である。活性炭の形状は、特に限定されず、粒状、粉末状、ペレット状、球状、円柱状、ハニカム状、シート状、繊維状、などいずれの形状も採用できる。活性炭の炭種は、特に限定されず、やし殻炭、石炭、木炭、などから誘導される水蒸気炭、破砕炭、造粒炭、などいずれも採用できる。活性炭としては、やし殻炭が最も好ましい。
【0015】
[反応条件]
反応温度は、好ましくは、250℃~650℃、より好ましくは、400℃~625℃、さらにより好ましくは、500℃~600℃、特に好ましくは、500℃~550℃である。反応基質と触媒(金属塩担持活性炭)との接触時間は、好ましくは、0.1~300秒、より好ましくは、5~120秒、さらにより好ましくは10~60秒である。
【0016】
[キャリアーガス]
本発明を実施するにあたり、原料ガスの希釈、反応器の乾燥、などにキャリアーガスが利用される。特に、原料、反応生成物などの物質は、キャリアーガスを流すことによって濃度を調整しながら反応装置内を移動させることができる。キャリアーガスは、これら物質と反応しないガスが選ばれる。例えば、窒素、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、など)、などが挙げられる。キャリアーガスを使用する場合、原料、反応生成物などの物質の全流量に対してキャリアーガスを、通常、0~99%、より好ましくは、0~75%、最も好ましくは、0~50%の割合で混合して使用する。
【0017】
[反応装置]
反応装置の材質としては、例えば、ステンレス、インコネル、モネル、ハステロイ、ニッケルなどの耐腐食性金属などが挙げられる。これらの中でも、ニッケルが耐腐食性の観点から好ましい。
【0018】
本発明の脱フッ化水素反応を行うための装置としては、例えば、反応温度を調節するためのヒータを備えた円筒管に種々の形状の触媒を充填し、管の一端から他端へ向けて原料ガスを流せるように構成したものが挙げられる。原料ガスを流す方向は、触媒を装填した円筒管を垂直方向に延在させた場合、上から下に向けて少しずつ均一に流すようにすることが重力を利用して少しずつ原料ガスを流せるので、好ましい。円筒管を垂直方向に延在させ、原料ガスを下から上に流す場合、円筒管の下部に粒径の大きなペレット状の触媒を配置し、円筒管の上部に粒径の小さな粉末状の触媒を配置することが、反応効率の点で望ましい。
【0019】
本発明の脱フッ化水素反応を行うための装置の具体例の概略を説明する図1において、この装置は、原料(反応基質)を収容する原料貯槽1、蒸発器4にキャリアーガス(例えば、窒素ガス)を供給するボンベ(図1では窒素ボンベ2)、原料貯槽と配管で連結され垂直に立てて設置された円筒形の触媒塔3、触媒塔の直前に設置された蒸発器4、触媒塔の下流に位置する捕集槽5から構成される。原料は、常温で液体である場合は液体のままシリンジポンプ(図示せず)にて沸点以上の温度に加熱された蒸発器4に注入され、蒸発器4で気化される。原料ガスは蒸発器4でキャリアーガス(窒素ガス)と混合され、この混合ガスが触媒塔を頂部から底部に移動する間に触媒と接触し脱フッ化水素反応が促進される。触媒塔底部を通った反応ガスは、内部に水を満たした捕集槽を通過する間に、反応生成物及び未反応の原料とフッ化水素が捕集槽に捕集され、キャリアーガスのみが反応装置の外に排出される。
【実施例
【0020】
[触媒の調製]
実施例で使用した触媒は、大阪ガスケミカル株式会社から供給されるヤシ殻ベース活性炭、粒状白鷺C2X(グレード名:C2x4/6-2)を表1に記載の金属塩を含む水溶液に浸漬して行った。触媒の担持量は、SEM-EDXを使用して測定対象物の表面の元素の濃度分布を確認した。担持量は、試料表面を3点測定し、それらの測定値の平均値により決定した。
【0021】
[実施例1~13]
表1に記載の金属塩を含有する活性炭をニッケル製の円筒型反応器(サイズ:直径2インチ、長さ1000mm)に充填し加熱乾燥後、原料である1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236fa)を円筒型反応器の上端から下端に向けてキャリアガスを使用せずに通気させ、表1に記載の温度、線速度、滞留時間にて反応させた。反応器後段にて、生成したHFを除去するための水トラップと、粗生成物ガスの脱水処理を目的としたモレキュラーシーブ(MS-3A)充填塔及びパーティクル除去用のフィルターを経て、粗生成物ガスを得た。GC分析にて粗生成物ガスの組成を確認した。その結果を表1に示す。
【0022】
[比較例1~3]
金属塩を担持しない活性炭を触媒として使用したか、触媒を使用しないで、実施例1と同様にして反応を行った。その結果を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
表1中、不純物生成比率は、ガスクロマトグラフ(GC)に注入した粗生成物全体のGC面積を100%とした場合の各不純物のGC面積比(モル比に相当)である。転化率(%)は、100%-[(反応後:粗ガス中のHFC-236faのモル数)/(反応前:導入HFC-236faのモル数)]×100%である。選択率(%)は、[(反応後:粗ガス中のHFO-1225zcのモル数/転化したHFC-236faのモル数)]×100%である。また、不純物の表示は以下の通りである。
1225yeZ:CF-CF=CHFのZ異性体
1225yeE:CF-CF=CHFのE異性体
1234zeE:CF-CH=CHFのE異性体
【0025】
表1からアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属酢酸塩、アルカリ土類金属塩化物を0.5~5重量%含む金属塩担持活性炭の存在下、500~550℃の温度で1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236fa)の脱フッ化水素反応を行うと、アルカリ金属塩を用いた場合(実施例1~9)、60%を超える転化率及び80%を超える選択率で、アルカリ土類金属塩を用いた場合(実施例10~13)、56%を超える転化率及び86%を超える選択率で、生成物:1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc)が得られた。不純物を除いた高純度のHFO-1225zcを得るという観点から、実施例1~9では、60%以上の精製後収率が達成でき、実施例10~13では、50%以上の精製後収率が達成できた。金属塩としてアルカリ土類金属塩を使用した場合、転化率はアルカリ金属塩を使用した場合よりも低いが、選択率はアルカリ金属塩を使用した場合と同程度であった。一方、金属塩を担持しない活性炭を触媒として使用した比較例1及び触媒を使用しない比較例2では、それぞれ転化率が38.5%、37.2%であった。また、触媒を使用しないが反応温度が775℃と高い場合には、73%の転化率が得られたが、生成物であるHFO-1225zcと分離が困難な不純物(1225yeZ、1225yeE、1234zeE)がそれぞれ0.1%以上生成した。これら不純物の濃度が0.1%以上生成する製造条件は、不純物を蒸留精製によって除くことができず採用することができない。
【要約】
本発明の目的は、反応転化率及び目的物の選択率が高く、高収率で目的物が得られ、副生成物の割合が低く、廃液も生成しない、従来技術の問題点を解消したフルオロオレフィンの製造方法を提供することである。金属塩を含有する活性炭存在下でフッ素化アルカンを脱フッ化水素反応させることを特徴とするフルオロオレフィンの製造方法。
図1