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  • 特許-ニオブ酸リチウム分散液 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】ニオブ酸リチウム分散液
(51)【国際特許分類】
   C01G 33/00 20060101AFI20240829BHJP
   C09D 1/00 20060101ALI20240829BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240829BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240829BHJP
【FI】
C01G33/00 A
C09D1/00
H01M4/36 C
H01M4/505
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024522333
(86)(22)【出願日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 JP2023038265
【審査請求日】2024-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2022171729
(32)【優先日】2022-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094536
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 隆二
(74)【代理人】
【識別番号】100129805
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100189315
【弁理士】
【氏名又は名称】杉原 誉胤
(72)【発明者】
【氏名】関(佐藤) 理子
(72)【発明者】
【氏名】三浦 高史
(72)【発明者】
【氏名】荒川 泰輝
(72)【発明者】
【氏名】元野 隆二
(72)【発明者】
【氏名】原 周平
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/138539(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/003833(WO,A1)
【文献】特開2018-104242(JP,A)
【文献】国際公開第2021/201127(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 33/00
C09D 1/00
H01M 4/36
H01M 4/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムとニオブのモル比Li/Nbが0.8以上2.0以下であるニオブ酸リチウムと、アンモニアとを含むニオブ酸リチウム分散液であって、
波長400nm~760nm領域の光透過度の最大値が65%以上であることを特徴とするニオブ酸リチウム分散液。
【請求項2】
前記ニオブ酸リチウム分散液中に過酸化水素が含まれないことを特徴とする請求項1に記載のニオブ酸リチウム分散液。
【請求項3】
前記ニオブ酸リチウム分散液が、水分散液であることを特徴とする請求項1、又は2に記載のニオブ酸リチウム分散液。
【請求項4】
前記ニオブ酸リチウム分散液中のニオブ含有量がNb換算で0.1質量%以上30質量%であることを特徴とする請求項1、又は2に記載のニオブ酸リチウム分散液。
【請求項5】
請求項1、又は2に記載のニオブ酸リチウム分散液中のニオブ酸リチウムを含有することを特徴とするニオブ酸リチウム粉末。
【請求項6】
請求項1、又は2に記載のニオブ酸リチウム分散液中のニオブ酸リチウムを含有することを特徴とするニオブ酸リチウム膜。
【請求項7】
請求項1、又は2に記載のニオブ酸リチウム分散液を含有することを特徴とするコーティング剤。
【請求項8】
請求項5に記載のニオブ酸リチウム粉末を含有することを特徴とするコーティング剤。
【請求項9】
請求項1、又は2に記載の前記ニオブ酸リチウム分散液に含まれるニオブ酸リチウムでその表面が被覆されていることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【請求項10】
請求項9に記載された前記正極活物質が被覆した正極を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【請求項11】
請求項1、又は2に記載の前記ニオブ酸リチウム分散液の製造方法であって、
ニオブを含有する酸性ニオブ溶液を、アンモニア水に添加することにより、前記ニオブを含有する沈殿物スラリーを得る工程と、
前記ニオブを含有する沈殿スラリーと水酸化リチウムと、純水とを混合した混合物を撹拌しながら20℃~100℃で保持し、ニオブ酸リチウム分散液を得る工程と、
を有することを特徴とするニオブ酸リチウム分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニオブ酸リチウム分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
ニオブ酸リチウムは、その単結晶が非線形光学材料や圧電体材料として利用され、その溶液は、リチウムイオン二次電池の正極活物質粒子の表面を被覆させることにより、リチウムイオン二次電池の正極と電解質との間で生じる界面抵抗を低減させる技術が、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されたニオブ酸リチウムの前駆体水溶液は、保存安定性向上のために、過酸化水素水が添加されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-66570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、過酸化水素水が添加されたニオブ酸リチウムの前駆体水溶液は、次のような留意点が特許文献1に開示されている。過酸化水素水の含有量がニオブ1molに対して、0.1mol未満であると、生成したニオブのポリ酸が水酸化物イオンと反応して分解する点、またニオブ酸リチウムの前駆体水溶液中にフリーの過酸化水素が0.01質量%未満では、当該前駆体水溶液の安定性を保つのが困難である点、さらにニオブ酸リチウムの前駆体水溶液中に過酸化水素が存在することにより、可溶化したニオブ酸の一部が不安定なペルオキソ錯体を形成するおそれがある点が開示されている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて、極性溶媒、とりわけ水への分散性が高く、水に対する溶解性が良好で、且つ保存安定性に優れたニオブ酸リチウム分散液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明のニオブ酸リチウム分散液は、リチウムとニオブのモル比Li/Nbが0.8以上2.0以下であるニオブ酸リチウムと、アンモニアとを含むニオブ酸リチウム分散液であって、波長400nm~760nm領域の光透過度の最大値が65%以上であることを特徴とする。
本発明のニオブ酸リチウム分散液は、ニオブ酸リチウム分散液中のニオブ酸リチウム(LiNbO)が、リチウムとニオブのモル比Li/Nbが0.8以上2.0以下であると、当該分散液からの沈殿物の析出発生を抑制できるなど分散液の安定性が向上する。また、ニオブ酸リチウム分散液中のリチウムとニオブのモル比Li/Nbが0.9以上1.5以下であるとより好ましく、0.9以上1.2以下であるとさらに好ましい。
【0007】
ここで、本発明のニオブ酸リチウム分散液中のニオブ酸リチウムは、ニオブ酸とリチウムとがイオン結合した状態のイオンとして分散液中に存在するものと推測する。本発明のニオブ酸リチウム分散液には、陰イオンとして水酸化物イオンは存在する一方、フッ化物イオンおよび塩化物イオンなどのハロゲン化物イオンはほとんど存在せず、リチウムは陽イオンとして存在すると考えられるため、ニオブはNbO のような陰イオンか、複数のニオブ原子と酸素原子とが結合したポリオキソメタレート(ポリ酸)イオンとして存在していると考えられる。
【0008】
また、本発明のニオブ酸リチウム分散液は、ニオブ酸リチウムの他に、アンモニアも含まれる。後述する本発明のニオブ酸リチウム分散液の製造方法で詳しく説明するが、当該製造工程において、酸性のニオブ分散液をアンモニア水に添加する逆中和法により、ニオブを含有する沈殿スラリーである含水ニオブ酸アンモニウムケーキを生成した後、本発明のニオブ酸リチウム分散液が生成されることから、リチウムイオンと置換されたアンモニウムイオンを含むアンモニアが陽イオンとして当該分散液中に存在すると考えられる。
【0009】
当該分散液中に存在するアンモニア含有量の測定方法は、当該分散液に水酸化ナトリウムを加えてアンモニアを蒸留分離し、イオンメータによりアンモニア含有量を定量する方法、ガス化した試料中のN分を熱伝導度計で定量する方法、ケルダール法、ガスクロマトグラフィー(GC)、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)、イオンクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー(LC)、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)などが挙げられる。特に、イオンメータによるアンモニア含有量を定量する方法が好ましい。
【0010】
本発明のニオブ酸リチウム分散液に含まれるアンモニアイオンを含むアンモニアのアンモニア含有量は、0.001質量%以上25質量%以下であると好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であるとより好ましく、1質量%以上8質量%以下であるとさらに好ましい。
【0011】
また、本発明のニオブ酸リチウム分散液は、波長400nm~760nm領域の光透過度の最大値が65%以上であると、分散度が高く液中成分の均一性が優れる点で好ましい。当該波長400nm~760nm領域の光透過度の最大値が、70%以上であるとより好ましく、80%以上であるとさらに好ましく、90%以上であると特に好ましく、100%であると最も好ましい。
【0012】
また、本発明のニオブ酸リチウム分散液は、波長400nm、600nm、750nmの何れか1つ以上の波長における光透過度が65%以上であると好ましく、70%以上であるとより好ましく、80%以上であるとさらに好ましく、90%以上であると特に好ましく、100%であると最も好ましい。当該波長400nm、600nm、750nmの何れか1つ以上の波長における光透過度が70%以上であってもよく、72%以上であってもよく、74%以上であってもよく、76%以上であってもよく、78%以上であってもよく、80%以上であってもよく、90%以上であってもよく、95%以上であってもよく、97%以上であってもよく、98%以上であってもよく、99%以上であってもよく、100%以上であってもよい。
【0013】
さらに、本発明のニオブ酸リチウム分散液は、波長400nm~760nm領域の光透過度が65%以上であると好ましく、70%以上であるとより好ましく、80%以上であるとさらに好ましく、90%以上であると特に好ましく、100%であると最も好ましい。当該波長400nm~760nm領域の光透過度が70%以上であってもよく、72%以上であってもよく、74%以上であってもよく、76%以上であってもよく、78%以上であってもよく、80%以上であってもよく、90%以上であってもよく、95%以上であってもよく、97%以上であってもよく、98%以上であってもよく、99%以上であってもよく、100%以上であってもよい。
【0014】
なお、測定誤差等により、上述した光透過度の測定値が100%を超える場合があるが、理論上限値は100%であるため、当該測定値が100%超の場合、100%とみなす。このように、本発明のニオブ酸リチウム分散液の波長400nm~760nm領域の光透過度の最大値が65%以上である状態の液を、本発明の「ニオブ酸リチウム分散液」とする。また、本明細書において、特段の説明がない限り、「光透過度」は、生成された直後に液温25℃に調整した本発明のニオブ酸リチウム分散液の「初期光透過度」、及び室温25℃に設定した恒温器内で、本発明のニオブ酸リチウム分散液が生成された日から1カ月静置した後のニオブ酸リチウム分散液の「経時光透過度」の両方を含むものである。また、本発明のニオブ酸リチウム分散液の「光透過度」は、「初期光透過度」と「経時光透過度」との経時変動幅が小さければ、本発明のニオブ酸リチウム分散液が生成された日から1カ月以上静置した後のニオブ酸リチウム分散液の光透過度は、「経時光透過度」との経時変動幅も小さいと推察される。
【0015】
ここで、上述した光透過度は、本発明のニオブ酸リチウム分散液について、以下の透過度測定条件に従って、分光光度計を用いて測定する。
【0016】
=光透過度測定条件=
・測定装置:紫外可視近赤外分光光度計UH4150形(株式会社日立ハイテクサイエンス製)
・測定モード:波長スキャン
・データモード:%T(透過)
・測定波長範囲:200nm~2000nm
・スキャンスピード:600nm/min
・サンプリング間隔:2nm
【0017】
なお、本発明における「分散液」とは、溶質が溶媒中に単分子の状態で分散又は混合しているものに限られず、複数の分子が分子間の相互作用により引き合った集合体、例えば(1)多量体分子、(2)溶媒和分子、(3)分子クラスター、(4)コロイド粒子などが溶媒に分散しているものも含まれる。
【0018】
また、本発明のニオブ酸リチウム分散液は、前記ニオブ酸リチウム分散液中に過酸化水素が含まれないことが好ましい。
一般的に、酸化ニオブがポリ酸イオンとして分散液中に存在している場合、水酸化物イオンと反応し分解することを抑制するため、過酸化水素を添加し、安定性を向上させているが、本発明のニオブ酸リチウム分散液は、当該分散液中にアンモニアが存在していることにより、過酸化水素が存在していない状態であっても、長期安定性を確保することができる。
【0019】
分散液中の過酸化水素の検出方法は、例えば標準添加法を用いて、過酸化水素の標準液との吸光度の相対強度を測定することにより、当該分散液中に過酸化水素が含まれていないことを確認することができる。具体的には、既知含有量、例えば1質量%過酸化水素を含む標準液と、過酸化水素が無添加の標準液とにおけるそれぞれの紫外可視吸収スペクトルから、ペルオキソ錯体形成に伴う吸光度の変化が観測される波長領域を見出し、その波長領域における過酸化水素が無添加の標準液と過酸化水素含有量が不明な試料との吸光度の差が1%未満であれば、過酸化水素含有量が不明な試料に過酸化水素が実質的に含まれていないことを確認することができる。当該分散液中に過酸化水素が含まれている場合、過酸化水素はニオブのポリ酸と反応し、ペルオキソ錯体を形成することから、上述したように過酸化水素が無添加の標準液の吸光度の差を確認することにより、分散液中に過酸化水素が含まれていないことを確認できる。また、上述した標準添加法以外にも、例えば市販の過酸化水素測定キットを用いて、当該分散液に過酸化水素と呈色反応する試薬を加え、その発色を測定する方法や、当該分散液に過酸化水素と蛍光反応する試薬を加え、その発光を測定することによって、当該分散液中の過酸化水素を定性分析及び定量分析を行ってもよい。
【0020】
また、本発明のニオブ酸リチウム分散液は、前記ニオブ酸リチウム分散液が、水分散液であることが好ましい。
本発明のニオブ酸リチウム分散液中のニオブ酸リチウムは、水への分散性が高く、水に対する溶解性が良好であるため、溶媒として純水を用いることができる。溶媒としては、有機溶媒を用いてもよい。有機溶媒としては、アルコール溶媒、ケトン溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、芳香族炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素類溶媒等が挙げられ、これら有機溶媒と純水とを混合した溶媒であってもよい。また、アルコール溶媒としては、炭素数5以下のアルコール(メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール)や、アセトンや、高沸点溶媒などが挙げられる。上述した溶媒と水は相溶することが好ましい。また、本発明のニオブ酸リチウム分散液は、安定性を阻害しない範囲で、任意の割合で1種以上の溶媒を含むことができる。
【0021】
高沸点溶媒として、多価アルコール系溶媒や、グリコール系溶媒が挙げられる。多価アルコール系溶媒とは、グリセリン(沸点:290℃)、1,6-ヘキサンジオール(沸点:250℃)、1,7-ヘプタンジオール(沸点:259℃)などが挙げられる。また、グリコール系溶媒とは、エチレングリコール(沸点:197.3℃)、プロピレングリコール(沸点:188.2℃)、ジエチレングリコール(沸点:244.3℃)、トリエチレングリコール(沸点:287.4℃)、オリゴエチレングリコール(沸点:287℃~460℃)、ポリエチレングリコール(PEG)(沸点:460℃以上)、ポリエチレングリコール(PEG)-ポリプロピレングリコール(PPG)コポリマー(沸点:460℃以上)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(沸点:260℃)、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル(沸点:260℃以上)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(沸点:321℃以上)、その他アニオン性フッ素系界面活性剤(沸点:180℃以上)、両性フッ素系界面活性剤(沸点:180℃以上)、ノニオン性フッ素系界面活性剤(沸点:180℃以上)、アミンオキシド(沸点:180℃以上)などが挙げられる。上述した沸点は、1気圧における沸点である。
【0022】
さらに、上述した本発明のニオブ酸リチウム分散液の溶媒は、樹脂成分等のバインダーを含むものであってもよい。本発明のニオブ酸リチウム分散液の溶媒が、樹脂成分等のバインダーを含むものであると、本発明のニオブ酸リチウム分散液を用いて、形成されたニオブ酸リチウム膜の成膜性を向上させることができる。ここで、バインダーとして用いられる樹脂成分は、例えばアクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、グリコール系樹脂、セルロース系樹脂、及びそれらの混合樹脂、共重合樹脂が挙げられる。
【0023】
また、本発明のニオブ酸リチウム分散液は、前記ニオブ酸リチウム分散液中のニオブ含有量がNb換算で0.1質量%以上30質量%以下であることを特徴とする。
ニオブ酸リチウム分散液中のニオブ含有量がNb換算で0.1質量%以上30質量%以下であると、ニオブ酸リチウム分散液の実用性及び安定性を両立する点で好ましく、また1~25質量%であるとより好ましく、3~21質量%であるとよりさらに好ましく、5~20質量%であると特に好ましい。本発明のニオブ酸リチウム分散液中のニオブ含有量はNb換算で5質量%以上10質量%以下であってもよい。
【0024】
ここで、ニオブ酸リチウム分散液中のニオブ含有量は、当該分散液を必要に応じて希塩酸で適度に希釈し、ICP発光分析(アジレント・テクノロジー社製:AG-5110)を用いて、JIS K0116:2014に準拠し、酸化ニオブ(Nb)換算のNb質量分率を測定して算出する。本発明のニオブ酸リチウム分散液中のニオブ含有量をNb換算で示すことによりニオブの複数の酸化物状態をまとめて求めることができる。また、本発明のニオブ酸リチウム分散液中のリチウム含有量をLi換算のLi質量分率を測定して算出する。本発明のニオブ酸リチウム分散液中のニオブ(mol)とリチウム(mol)を特定することにより、本発明のニオブ酸リチウム分散液に含まれるニオブ酸リチウムのリチウム(Li)とニオブ(Nb)とのモル比Li/Nbを特定することができる。
【0025】
さらに、本発明のニオブ酸リチウム分散液中のニオブ含有量を、Nb換算で示すこともできる。上述したニオブ含有量をNb換算で示すと、以下の通りである。当該ニオブ酸リチウム分散液中のニオブ含有量が、Nb換算で0.1質量%以上21.0質量%以下であると、ニオブ酸リチウム分散液の実用性及び安定性を両立する点で好ましく、またNb換算で0.7質量%以上17.5質量%以下であるとより好ましく、Nb換算で2.1質量%以上14.7質量%以下であるとさらに好ましく、Nb換算で3.5質量%以上14.0質量%以下であると特に好ましい。
【0026】
本発明のニオブ酸リチウム分散液中のアンモニアとニオブとのモル比、NH/Nbは、0以上20以下であると好ましく、0以上10以下であるとより好ましく、0以上5以下であるとさらに好ましい。
【0027】
ここで、NH/NbにおけるNHは本発明のニオブ酸リチウム分散液中のアンモニア(mol)を示す。一方、NH/NbにおけるNbは、本発明のニオブ酸リチウム分散液中のNb(mol)を示す。
【0028】
本発明のニオブ酸リチウム分散液中のリチウム及びアンモニアとニオブとのモル比、(Li+NH)/Nbは、0.5以上20以下であると好ましく、0.5以上10以下であるとより好ましく、0.5以上5以下であるとさらに好ましい。
【0029】
ここで、(Li+NH)/NbにおけるLiは本発明のニオブ酸リチウム分散液中のLi(mol)を示し、NHは本発明のニオブ酸リチウム分散液中のアンモニア(mol)を示す。一方、(Li+NH)/NbにおけるNbは、本発明のニオブ酸リチウム分散液中のNb(mol)を示す。
【0030】
本発明のニオブ酸リチウム分散液中のリチウムとアンモニアとのモル比、Li/NHは、0.001以上であると好ましく、0.01以上であるとより好ましく、0.1以上であるとさらに好ましく、1以上であると特に好ましい。なお、アンモニアは、本発明のニオブ酸リチウム分散液の生成後に濃度調節の際、アンモニア成分を揮発させることが可能であるため、アンモニアの含有量を低減させることができ、Li/NHの上限値は、どのような値であってもよい。
【0031】
ここで、Li/NHにおけるLiは本発明のニオブ酸リチウム分散液中のLi(mol)を示す。一方、Li/NHにおけるNHは本発明のニオブ酸リチウム分散液中のアンモニア(mol)を示す。
【0032】
また、本発明のニオブ酸リチウム分散液は、前記ニオブ酸リチウム分散液のpHが9以上であることを特徴とする。
本発明のニオブ酸リチウム分散液のpHが9以上であると、当該分散液中に含まれるポリ酸イオンが安定する点で好ましい。また、本発明のニオブ酸リチウム混合液のpHが10以上であるとより好ましく、10.5以上であるとさらに好ましい。また、本発明のニオブ酸リチウム分散液のpHが11以上であってもよく、12以上であってもよい。また、本明細書において、特段の説明がない限り、「pH」は、生成された直後に液温25℃に調整した本発明のニオブ酸リチウム分散液の「初期pH」、及び室温25℃に設定した恒温器内で、本発明のニオブ酸リチウム分散液が生成された日から1カ月静置した後のニオブ酸リチウム分散液の「経時pH」の両方を含むものである。また、本発明のニオブ酸リチウム分散液の「pH」は、「初期pH」と「経時pH」との経時変動幅が小さければ、本発明のニオブ酸リチウム分散液が生成された日から1カ月以上静置した後の金属酸リチウム混合液のpHは、「経時pH」との経時変動幅も小さいと推察される。
【0033】
ここで、本発明の金属酸リチウム混合液のpHの測定は、本発明の金属酸リチウム混合液にpHメータ(HORIBA製:ガラス電極式水素イオン濃度指示器 D-51)の電極(HORIBA製:スタンダード ToupH 電極 9615S-10D)を浸漬し、液温が25℃に安定したことを確認した後、実施する。
【0034】
また、本発明のニオブ酸リチウム分散液は、添加物として、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Zr、Hf、Ta、Mo、Sn、Ba、La、Y、Wなどの化合物を含有してもよい。ここで、化合物とは、例えば酸化物、金属酸アルカリ金属塩、金属酸アルカリ土類金属塩、塩化物、金属酸アルコキシド、ポリオキソメタレート等が挙げられる。また、本発明のニオブ酸リチウム分散液における添加物の含有量は、添加物である各元素の総含有mol数をXとしたとき、ニオブのモル数(Nb)に対する添加物である各元素の総モル数(X)のモル比X/Nbは、0.0002~0.8が好ましい。また、当該モル比X/Nbは、0.001~0.5であってもよく、0.001~0.4であってもよく、0.001~0.01であってもよい。さらに、本発明の本発明のニオブ酸リチウム分散液は、均一な分散液であることから、これらの化合物が懸濁状態であっても、均一性の向上、反応性(反応率)の向上が見込まれるからである。また、これらの化合物が本発明の本発明のニオブ酸リチウム分散液に溶解し、均一な分散液となれば、複合化元素が最も反応性が良好な状態にすることができる。
【0035】
さらに、本発明のニオブ酸リチウム分散液は、その作用効果を阻害しない範囲で、ニオブ酸リチウムに由来する成分、及びアンモニアに由来する成分以外の成分(「他成分」という。)を含有してもよい。他成分としては、例えばNa、Mg、Al、Si、K、Ca、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Zr、Hf、Ta、Mo、Sn、Ba、La、Y、Wなどが挙げられる。但し、これらに限定するものではない。本発明のニオブ酸リチウム分散液を100質量%としたとき、他成分の含有量は、5質量%以下であるのが好ましく、4質量%以下であるのがより好ましく、3質量%以下であるとさらに好ましい。なお、本発明のニオブ酸リチウム分散液は、意図したものではなく、不可避不純物を含むことが想定される。不可避不純物の含有量は0.01質量%以下であるのが好ましい。
【0036】
本発明のニオブ酸リチウム粉末は、上述した本発明のニオブ酸リチウム分散液中のニオブ酸リチウムを含有することを特徴とする。
本発明のニオブ酸リチウム粉末は、本発明のニオブ酸リチウム分散液を乾燥、例えば真空乾燥などによって得られる乾燥粉末と、得られた乾燥粉末を焼成することにより得られる焼成粉末とを包含する。また、本発明のニオブ酸リチウム粉末は、本発明のニオブ酸リチウム分散液を乾燥、例えば真空乾燥や、焼成することによって生じる、結晶構造等の物性の異なるニオブ酸リチウム化合物粉末も包含し、アモルファス構造であってもよく、単結晶構造であってもよく、多結晶構造であってもよい。なお、本発明のニオブ酸リチウム粉末の製造方法は、後述する。
【0037】
本発明のニオブ酸リチウム膜は、上述した本発明のニオブ酸リチウム分散液中のニオブ酸リチウムを含有することを特徴とする。
本発明のニオブ酸リチウム膜は、本発明のニオブ酸リチウム分散液を基材の表面に塗布した後、乾燥、例えば真空乾燥などによって得られる乾燥膜と、得られた乾燥膜を焼成することにより得られる焼成膜とを包含する。また、本発明のニオブ酸リチウム膜は、本発明のニオブ酸リチウム分散液を乾燥、例えば真空乾燥や、焼成することによって生じる、結晶構造等の物性の異なるニオブ酸リチウム膜も包含し、アモルファス構造であってもよく、単結晶構造であってもよく、多結晶構造であってもよい。なお、本発明のニオブ酸リチウム膜の製造方法は、後述する。
【0038】
本発明のコーティング剤は、上述した本発明のニオブ酸リチウム分散液、又は上述した本発明のニオブ酸リチウム粉末の少なくとも1種を含有することを特徴とする。
本発明のコーティング剤は、水への分散性が高く、水に対する溶解性が良好で、且つ保存安定性に優れた本発明のニオブ酸リチウム分散液、又は本発明のニオブ酸リチウム粉末の少なくとも1種を含有しており、例えば、リチウムイオン二次電池用正極活物質の表面に塗布することにより、均一な塗膜を形成することが可能である。
【0039】
また、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、前記ニオブ酸リチウム分散液に含まれるニオブ酸リチウムでその表面が被覆されていることを特徴とする。
本発明のニオブ酸リチウム分散液によるリチウムイオン二次電池用正極活物質の粒子表面の被覆状態を走査電子顕微鏡にて観察する被覆観察を行うことにより、当該正極活物質の表面がニオブ酸リチウムにより被覆されていることを確認することができる。また、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の表面を被覆するニオブ酸リチウムの被覆量は、当該リチウムイオン二次電池用正極活物質を適量のフッ化水素酸に溶解し、ICP発光分析(アジレント・テクノロジー社製:AG-5110)を用いて、JIS K0116:2014に準拠し、当該正極活物質の粒子表面を被覆するニオブ酸リチウムのニオブ質量分率含有量を測定することによって算出することができる。具体的には、(ニオブ質量/表面が被覆された正極活物質)×100にて、算出される。本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の表面を被覆するニオブ酸リチウム塩の被覆量は、質量分率含有量として表すことができる。当該質量分率含有量は、0.001%以上5%以下が好ましい。当該質量分率含有量は、0.01%~3%であってもよく、0.1%~1%であってもよい。
【0040】
また、本発明のリチウムイオン二次電池は、前記正極活物質が被覆した正極を有することを特徴とする。
本発明のニオブ酸リチウム分散液により被覆された正極活物質は、上述したようにリチウムイオン二次電池用正極の表面を被覆するものとして、好適であるから、本発明のニオブ酸リチウム分散液により被覆された正極活物質を正極の表面に被覆させることにより、リチウムイオン二次電池としての性能向上が図れる。
【0041】
上述した本発明のニオブ酸リチウム分散液の製造方法について、以下説明する。
【0042】
本発明のニオブ酸リチウム分散液の製造方法は、ニオブを含有する酸性ニオブ溶液を生成する工程と、前記酸性ニオブ溶液をアンモニア水に添加する逆中和法によりニオブを含有する沈殿スラリーを得る工程と、得られた前記ニオブを含有する沈殿スラリーと水酸化リチウム及び純水とを混合した混合物を撹拌しながら20℃~100℃で保持し、ニオブ酸リチウム分散液を得る工程と、を有する。
【0043】
先ず、ニオブを含有する酸性ニオブ溶液を生成する工程において、酸性ニオブ溶液は、ニオブがフッ化水素酸を含む酸性溶液に溶解した溶解液を溶媒抽出することにより得られたフッ化物イオンを含有する酸性ニオブ溶液をいう。なお、本明細書で言及するニオブは、特段の説明がない限り、ニオブ酸化合物を含むものである。
【0044】
ここで、フッ化物イオンを含有する酸性ニオブ溶液、例えばフッ化ニオブ水溶液は、水(例えば純水)を加えてニオブをNb換算で1~100g/L含有するように調整すると好ましい。この際、ニオブ含有量がNb換算で1g/L以上であると、水に溶けやすいニオブ酸化合物水和物となることから好ましく、生産性を考えた場合、10g/L以上がより好ましく、20g/L以上であるとさらに好ましい。他方、ニオブ含有量がNb換算で100g/L以下であれば、水に溶けやすいニオブ酸化合物水和物になることから好ましく、より確実に水に溶けやすいニオブ酸化合物水和物を合成するには、90g/L以下であるとより好ましく、80g/L以下であるとさらに好ましく、70g/L以下であると特に好ましい。なお、フッ化ニオブ水溶液のpHは、ニオブ乃至ニオブ酸化物を完全溶解させる観点から、2以下であると好ましく、1以下であるとより好ましい。
【0045】
次に、前記酸性ニオブ溶液をアンモニア水に添加する逆中和法によりニオブを含有する沈殿スラリーを得る工程(以下、逆中和工程という。)では、フッ化物イオンを含有する酸性ニオブ溶液を所定含有量のアンモニア水中に添加、すなわち逆中和法により、ニオブを含有する沈殿スラリーを得るのが好ましい。
【0046】
逆中和に用いるアンモニア水のアンモニア含有量は10質量%~30質量%であると好ましい。当該アンモニア含有量が10質量%であると、ニオブが溶け残りにくくなり、ニオブ乃至ニオブ酸を水に完全に溶解させることができる。他方、当該アンモニア含有量が30質量%以下であると、アンモニアの飽和水溶液付近であるから好ましい。
【0047】
かかる観点から、アンモニア水のアンモニア含有量は10質量%以上であると好ましく、15質量%以上であるとより好ましく、20質量%以上であるとさらに好ましく、25質量%であると特に好ましい。他方、当該アンモニア含有量は30質量%以下であると好ましく、29質量%以下であるとより好ましく、28質量%以下であるとさらに好ましい。
【0048】
逆中和工程の際、アンモニア水に添加するフッ化ニオブ水溶液の添加量は、NH/Nbのモル比が95以上500以下とするのが好ましく、100以上450以下とするのがより好ましく、110以上400以下とするのがさらに好ましい。また、アンモニア水に添加するフッ化ニオブ水溶液の添加量は、アミンや薄いアンモニア水に溶けるニオブ酸化合物が生成する観点から、NH/HFのモル比が3.0以上とするのが好ましく、4.0以上とするとより好ましく、5.0以上とするとさらに好ましい。他方、コスト低減の観点から、NH/HFのモル比が100以下とするのが好ましく、50以上とするとより好ましく、40以上とするとさらに好ましい。
【0049】
逆中和工程において、フッ化ニオブ水溶液のアンモニア水への添加に係る時間は、1分以内であると好ましく、30秒以内であるとより好ましく、10秒以内であるとさらに好ましい。すなわち、時間をかけて徐々にフッ化ニオブ水溶液を添加するのではなく、例えば一気に投入するなど、出来るだけ短い時間でアンモニア水へ投入し、中和反応させると好適である。また、逆中和工程では、アルカリ性のアンモニア水へ、酸性のフッ化ニオブ水溶液を添加することから、高いpHを保持したまま中和反応させることができる。なお、フッ化ニオブ水溶液及びアンモニア水は、常温のまま用いることができる。
【0050】
また、本発明のニオブ酸リチウム分散液の製造方法は、逆中和法により得られたニオブを含有する沈殿スラリーからフッ化物イオンを除去し、フッ化物イオンが除去されたニオブ含有沈殿物を得る工程を有する。逆中和法により得られたニオブを含有する沈殿スラリーには、不純物として、フッ化アンモニウムなどのフッ素化合物が存在するため、これらを除去することが好ましい。
【0051】
フッ素化合物の除去方法は任意であるが、例えばアンモニア水や純水を用いた逆浸透ろ過、限外ろ過、精密ろ過などの膜を用いたろ過による方法や、遠心分離、その他の公知の方法を採用することができる。なお、ニオブを含有する沈殿スラリーからフッ化物イオンを除去する際、温度調節は特に必要なく、常温で実施してもよい。
【0052】
具体的には、逆中和法により得られたニオブを含有する沈殿スラリーを、遠心分離機を用いてデカンテーションし、遊離したフッ化物イオン量が100mg/L以下になるまで洗浄を繰り返すことにより、フッ化物イオンが除去されたニオブ含有沈殿物が得らえる。
【0053】
フッ化物イオンの除去に用いられる洗浄液はアンモニア水であると好適である。具体的には、5.0質量%以下のアンモニア水が好ましく、4.0質量%以下のアンモニア水がより好ましく、3.0質量%以下のアンモニア水がさらに好ましく、2.5質量%のアンモニア水が特に好ましい。5.0質量%以下のアンモニア水であると、アンモニウムイオンを含むアンモニアがフッ化物イオンに対して適切であり不要なコストの増加を回避することができる。
【0054】
このようにして、得られたフッ化物イオンが除去されたニオブ含有沈殿物を純水などで希釈することにより、フッ化物イオンが除去された、ニオブを含有する沈殿スラリーが得られる。なお、当該ニオブを含有する沈殿スラリーのニオブ含有量は、当該スラリーの一部を採取し、110℃で24時間乾燥させた後、1,000℃で4時間焼成し、Nbを生成する。このように生成したNbの重量を測定し、その重量から当該スラリーのニオブ含有量を算出することができる。
【0055】
そして、フッ化物イオンが除去された、前記ニオブを含有する沈殿スラリーと水酸化リチウム一水和物とを混合した混合物を撹拌しながら20℃~100℃で保持することにより、本発明のニオブ酸リチウム分散液が得られる。
【0056】
具体的には、最終的な混合物のニオブ含有量がNb換算で0.1~30質量%、且つリチウムとニオブのモル比Li/Nbが0.8以上2.0以下となるように、得られた前記ニオブを含有する沈殿スラリーを、水酸化リチウム一水和物と混合することにより、半透明白色スラリーが得られる。当該半透明白色スラリーを撹拌しながら、液温を50℃~100℃(例えば、70℃)に1時間~24時間保持することにより、本発明の無色透明なニオブ酸リチウム分散液が得られる。さらに、得られた本発明のニオブ酸リチウム分散液に含まれるアンモニア成分を除去するために、以下の濃度調節工程を行ってもよい。濃度調節工程では、例えば60℃~90℃で蒸発分の溶媒(純水等)を加えながら、1時間~100時間加熱撹拌した後、室温まで冷却する。または、60℃~90℃で1時間~100時間加熱撹拌した後、室温まで冷却する。その後、蒸発した溶媒(純水等)を補給するため、溶媒(純水等)を添加する。当該溶媒の添加量は、アンモニア成分を除去した後のニオブ酸リチウム分散液のニオブ含有量が、アンモニア成分を除去する前のニオブ酸化合物分散液のニオブ含有量と一致するように調節する。
【0057】
また、前記ニオブを含有する沈殿スラリーと水酸化リチウム一水和物とを混合した混合物に、純水や、アルカリ性水溶液、例えばアンモニア水を添加して、混合してもよい。当該混合物に、添加されるアンモニア水のアンモニア含有量は、任意の含有量であればよい。例えば、0.1質量%以上30質量%以下であればよく、10質量%以上25質量%以下であればよい。
【0058】
上述した製造方法により、得られた本発明のニオブ酸リチウム分散液のpHが9以上であると、当該ニオブ酸リチウム分散液が安定する点で好ましい。さらに、本発明のニオブ酸リチウム分散液のpHが10以上であるとより好ましく、10.5以上であるとさらに好ましい。また、本発明のニオブ酸リチウム分散液のpHは11以上であってもよく、12以上であってもよい。
【0059】
次に、本発明のニオブ酸リチウム分散液中のニオブ酸リチウムを含有するニオブ酸リチウム粉末の製造方法について、以下説明する。
【0060】
ニオブ酸リチウム粉末の内、ニオブ酸リチウムの乾燥粉末の製造方法は、上述した本発明のニオブ酸リチウム分散液の製造方法により得られたニオブ酸リチウム分散液を静置炉内に載置し、加熱温度約60℃~200℃で1時間~72時間に亘って、乾燥、例えば真空乾燥などをすることにより、本発明のニオブ酸リチウム分散液の水分が蒸発し、本発明のニオブ酸リチウム分散液に含まれるニオブ酸リチウムの結晶粒子を含有するニオブ酸リチウムの乾燥粉末が得られる。
【0061】
一方、ニオブ酸リチウムの焼成粉末の製造方法は、上述したように本発明のニオブ酸リチウム分散液を乾燥、例えば真空乾燥し、得られたニオブ酸リチウムの乾燥粉末を静置炉内に載置し、大気下で、焼成温度が300℃以上1,200℃以下で、焼成時間が1時間以上72時間以下で焼成することにより、ニオブ酸リチウムの焼成粉末が得られる。
【0062】
なお、上述したニオブ酸リチウムの乾燥粉末、及び焼成粉末を粉砕したものをニオブ酸リチウム粉末として用いてもよい。また、粉砕されるか否かに拘らず、上述したニオブ酸リチウムの乾燥粉末、及び焼成粉末を篩などによって分級して得られた篩下(微粒側)をニオブ酸リチウム粉末として用いてもよい。篩上(粗粒側)は再度粉砕し、分級して用いてもよい。なお、ナイロン、またはフッ素樹脂によりコーティングした鉄球等が粉砕メディアとして投入された振動篩を使用して粉砕と分級とを兼ねることも可能である。このように分級と粉砕とを兼ねることにより、大き過ぎるニオブ酸リチウム粉末が存在しても除去が可能である。具体的には、篩を用いて分級する場合、目開きが150μm~1,000μmのものを用いると好ましい。150μm~1,000μmであると、篩上の割合が多くなりすぎることがなく再粉砕を繰り返すことがなく、また篩下に再粉砕が必要なニオブ酸リチウム粉末が分級されることがない。
【0063】
このようにして得られたニオブ酸リチウム粉末を、分散媒として水や、有機溶媒と混合し、ビーズ等のメディアを用いて湿式粉砕することにより、ニオブ酸リチウム粉末分散液を得ることができる。ここで、分散媒として用いられる有機溶媒は、例えばアルコール類、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、エーテル類、及びそれらの混合溶媒が挙げられる。さらに、ニオブ酸リチウム粉末分散液を用いた、ニオブ酸リチウム膜の成膜性を向上させるために、樹脂成分等のバインダーを添加してもよい。バインダーとして用いられる樹脂成分は、例えばアクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、グリコール系樹脂、セルロース系樹脂、及びそれらの混合樹脂、共重合樹脂が挙げられる。
【0064】
さらに、本発明のニオブ酸リチウム分散液中のニオブ酸リチウムを含有するニオブ酸リチウム膜の製造方法について、以下説明する。
【0065】
ニオブ酸リチウム膜の内、ニオブ酸リチウム乾燥膜の製造方法は、ニオブ酸リチウム分散液を、基材の表面に塗布する塗布工程と、前記基材の表面に塗布された前記ニオブ酸リチウム分散液を乾燥し、乾燥膜を得る膜乾燥工程とを有する。
【0066】
具体的には、上述した本発明のニオブ酸リチウム分散液の製造方法により得られたニオブ酸リチウム分散液を、必要に応じて、例えば1μm孔径のフィルタで濾過しながらシリンジを用いて基材の表面上に滴下し、スピンコート(1,500rpm、30秒)により、塗布する。次に、110℃で30分間乾燥させることにより、基材の表面上にニオブ酸リチウム乾燥膜を形成させる。
【0067】
ニオブ酸リチウム膜の内、ニオブ酸リチウム焼成膜の製造方法は、ニオブ酸リチウム分散液を、基材の表面に塗布する塗布工程と、前記基材の表面に塗布された前記ニオブ酸リチウム分散液を大気下、又は真空下で乾燥し、乾燥膜を得る膜乾燥工程と、当該乾燥膜を大気下で、焼成温度が300℃以上1,200℃以下で、焼成時間が1時間以上12時間以下で焼成し、焼成膜を得る膜焼成工程と、を有する。
【0068】
具体的には、上述したようにニオブ酸リチウム分散液を、基材の表面に塗布し、乾燥させることにより得られたニオブ酸リチウム乾燥膜が形成された基材を、静置炉内に載置し、大気下、焼成温度が300℃以上1,200℃以下で、焼成時間が1時間以上12時間以下で焼成することにより、基材の表面上にニオブ酸リチウム焼成膜を形成させる。
【0069】
さらに、上述した本発明のニオブ酸リチウム分散液が被覆したリチウムイオン二次電池用正極活物質を製造する方法について、以下説明する。
【0070】
ニオブ酸リチウム分散液が被覆したリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法は、ニオブ酸リチウム分散液と、正極活物質と、水酸化リチウム水溶液とを混合して、ニオブ酸リチウムを含有する電池用正極活物質スラリーを生成する工程と、前記ニオブ酸リチウムを含有する電池用正極活物質スラリーを乾燥する工程と、を有することを特徴とする。
【0071】
先ず、本発明のニオブ酸リチウム分散液を純水で希釈したニオブ酸リチウム分散液中に、電池用正極活物質、例えばLiMn(メルク社製:スピネル型、粒径<0.5μm)を添加することにより、ニオブ酸リチウムを含有するスラリーが得られる。そして、ニオブ酸リチウムを含有するスラリーを撹拌しながら、水酸化リチウム水溶液を滴下し、10分間90℃に保持することにより、ニオブ酸リチウムを含有する電池用正極活物質スラリーが生成される。
【0072】
電池用正極活物質等として、上述したLiMnの他、LiCoO、LiNiO、LiFeO、LiMnO、LiFePO、LiCoPO、LiNiPO、LiMnPO、LiNi0.5Mn1.5、LiMn1/3Co1/3Ni1/3、LiCo0.2Ni0.4Mn0.4、モリブデン酸リチウム、LiMnO、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiMnO等を用いることができる。
【0073】
次に、ニオブ酸リチウムを含有する電池用正極活物質スラリーを、炉内温度を110℃で保持し、15時間に亘って大気乾燥炉内で乾燥させることにより、ニオブ酸リチウムにより被覆されたリチウムイオン二次電池用正極活物質を製造することができる。
【0074】
なお、上述したリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法では、電池用正極活物質を添加したが、適宜用途に合わせて変更してもよい。例えば、分散剤、pH調整剤、着色剤、増粘剤、湿潤剤、バインダー樹脂等を添加してもよい。
【0075】
なお、本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特に断らない限り、「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」旨の意も包含する。また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現する場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【発明の効果】
【0076】
本発明のニオブ酸リチウム分散液は、極性溶媒、とりわけ水への分散性が高く、水に対する溶解性も良好で、且つ保存安定性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1】実施例1~13、及び比較例1、2、4のニオブ酸リチウム分散液、また比較例3のニオブ酸リチウムゾルの測定結果の一覧表である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0078】
以下、本発明に係る実施形態のニオブ酸リチウム分散液について、以下の実施例によりさらに説明する。但し、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
【0079】
(実施例1)
五酸化ニオブ100gを55%フッ化水素酸水溶液200gに溶解させ、イオン交換水を830mL添加することによって、ニオブをNb25換算で100g/L含有する(Nb25=8.84質量%)フッ化ニオブ水溶液を得た。このフッ化ニオブ水溶液200mLを、アンモニア水(NH3含有量25質量%)1Lに、1分間未満の時間で添加して(NH3/Nb25モル比=177.9、NH3/HFモル比=12.2)、反応液(pH11)を得た。この反応液はニオブ酸化合物水和物のスラリー、言い換えればニオブ含有沈殿物のスラリーであった。
【0080】
次に、この反応液を、遠心分離機を用いてデカンテーションし、遊離したフッ化物イオン量が100mg/L以下になるまで洗浄して、当該フッ化物イオンを除去したニオブ含有沈殿を得た。この際、洗浄液にはアンモニア水を用いた。
【0081】
さらに、当該フッ化物イオンを除去したニオブ含有沈殿を純水で希釈しスラリーを得た。このスラリーの一部を110℃で24時間乾燥後、1,000℃で4時間焼成することでNb25を生成し、その重量からスラリーに含まれるNb含有量を算出した。
【0082】
そして、純水で希釈したニオブ含有沈殿のスラリーを、最終的な混合物のニオブ含有量がNb換算で1質量%、且つLi/Nbのモル比が1となるように、水酸化リチウム一水和物と純水とを混合することにより、半透明色なスラリー混合物を得た。この半透明色なスラリー混合物をウォーターバスで液温が50℃~100℃、例えば70℃となるように加熱し、蒸発分の純水を加えつつ、撹拌しながら1時間保持した後、実施例1に係る無色透明なニオブ酸リチウム分散液を得た。実施例1に係るニオブ酸リチウム分散液200.0gにおいて、当該ニオブ酸リチウム分散液中のNb換算のニオブ含有量は1質量%(2.0g)であり、アンモニア含有量は0.45質量%(0.9g)であった。そして、実施例1に係るニオブ酸リチウム分散液に含まれるニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とニオブ(Nb)とのモル比Li/Nbは1.0であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比NH/Nbは3.5であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)及びアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比(Li+NH)/Nbは4.5であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とアンモニア(NH)とのモル比Li/NHは0.3であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液の過酸化水素(H)とニオブ(Nb)とのモル比H/Nbは0.0であった。
【0083】
さらに、実施例1に係るニオブ酸リチウム分散液の初期pHは11であり、経時pHは11であった。
【0084】
(実施例2)
実施例2では、半透明色なスラリー混合物のニオブ含有量がNb換算で5質量%とした以外は、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例2に係る無色透明なニオブ酸リチウム分散液を得た。実施例2に係るニオブ酸リチウム分散液200.0gにおいて、当該ニオブ酸リチウム分散液中のNb換算のニオブ含有量は5質量%(10.0g)であり、アンモニア含有量は1.31質量%(2.62g)であった。そして、実施例2に係るニオブ酸リチウム分散液に含まれるニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とニオブ(Nb)とのモル比Li/Nbは1.0であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比NH/Nbは2.0であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)及びアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比(Li+NH)/Nbは3.0であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とアンモニア(NH)とのモル比Li/NHは0.5であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液の過酸化水素(H)とニオブ(Nb)とのモル比H/Nbは0.0であった。
【0085】
さらに、実施例2に係るニオブ酸リチウム分散液の初期pHは11であり、経時pHは11であった。
【0086】
(実施例3)
実施例3では、半透明色なスラリー混合物のニオブ含有量がNb換算で10質量%とした以外は、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例3に係る無色透明なニオブ酸リチウム分散液を得た。実施例3に係るニオブ酸リチウム分散液200.0gにおいて、当該ニオブ酸リチウム分散液中のNb換算のニオブ含有量は10質量%(20.0g)であり、アンモニア含有量は2.50質量%(5.0g)であった。そして、実施例3に係るニオブ酸リチウム分散液に含まれるニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とニオブ(Nb)とのモル比Li/Nbは1.0であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比NH/Nbは2.0であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)及びアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比(Li+NH)/Nbは3.0であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とアンモニア(NH)とのモル比Li/NHは0.5であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液の過酸化水素(H)とニオブ(Nb)とのモル比H/Nbは0.0であった。
【0087】
さらに、実施例3に係るニオブ酸リチウム分散液の初期pHは11であり、経時pHは11であった。
【0088】
(実施例4)
実施例4では、半透明色なスラリー混合物のニオブ含有量がNb換算で20質量%とした以外は、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例4に係る無色透明なニオブ酸リチウム分散液を得た。実施例4に係るニオブ酸リチウム分散液200.0gにおいて、当該ニオブ酸リチウム分散液中のNb換算のニオブ含有量は20質量%(40.0g)であり、アンモニア含有量は6.70質量%(13.4g)であった。そして、実施例4に係るニオブ酸リチウム分散液に含まれるニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とニオブ(Nb)とのモル比Li/Nbは1.0であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比NH/Nbは2.6であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)及びアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比(Li+NH)/Nbは3.6であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とアンモニア(NH)とのモル比Li/NHは0.4であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液の過酸化水素(H)とニオブ(Nb)とのモル比H/Nbは0.0であった。
【0089】
さらに、実施例4に係るニオブ酸リチウム分散液の初期pHは11であり、経時pHは11であった。
【0090】
(実施例5)
実施例5では、半透明色なスラリー混合物のニオブ含有量がNb換算で10質量%とし、且つLi/Nbのモル比が2とした以外は、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例5に係る無色透明なニオブ酸リチウム分散液を得た。実施例5に係るニオブ酸リチウム分散液200.0gにおいて、当該ニオブ酸リチウム分散液中のNb換算のニオブ含有量は10質量%(20.0g)であり、アンモニア含有量は1.80質量%(3.6g)であった。そして、実施例5に係るニオブ酸リチウム分散液に含まれるニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とニオブ(Nb)とのモル比Li/Nbは2.0であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比NH/Nbは1.4であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)及びアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比(Li+NH)/Nbは3.4であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とアンモニア(NH)とのモル比Li/NHは1.4であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液の過酸化水素(H)とニオブ(Nb)とのモル比H/Nbは0.0であった。
【0091】
さらに、実施例5に係るニオブ酸リチウム分散液の初期pHは11であり、経時pHは11であった。
【0092】
(実施例6)
実施例6では、半透明色なスラリー混合物のニオブ含有量がNb換算で10質量%とし、且つLi/Nbのモル比が0.9とした以外は、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例6に係る無色透明なニオブ酸リチウム分散液を得た。実施例6に係るニオブ酸リチウム分散液200.0gにおいて、当該ニオブ酸リチウム分散液中のNb換算のニオブ含有量は10質量%(20.0g)であり、アンモニア含有量は2.20質量%(4.4g)であった。そして、実施例6に係るニオブ酸リチウム分散液に含まれるニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とニオブ(Nb)とのモル比Li/Nbは0.9であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比NH/Nbは1.7であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)及びアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比(Li+NH)/Nbは2.6であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とアンモニア(NH)とのモル比Li/NHは0.5であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液の過酸化水素(H)とニオブ(Nb)とのモル比H/Nbは0.0であった。
【0093】
さらに、実施例6に係るニオブ酸リチウム分散液の初期pHは11であり、経時pHは11であった。
【0094】
(実施例7)
実施例7では、実施例1で得られた半透明色なスラリー混合物をウォーターバスで70℃に加熱し、蒸発分の純水を加えつつ、撹拌しながら2時間保持した後、室温まで冷却した。そして、無色透明なスラリー混合物のニオブ含有量がNb換算で5質量%となるように濃度調節が行われた、実施例7に係る無色透明なニオブ酸リチウム分散液を得た。実施例7に係るニオブ酸リチウム分散液200.0gにおいて、当該ニオブ酸リチウム分散液中のNb換算のニオブ含有量は5質量%(10.0g)であり、アンモニア含有量は0.20質量%(0.4g)であった。そして、実施例7に係るニオブ酸リチウム分散液に含まれるニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とニオブ(Nb)とのモル比Li/Nbは1.0であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比NH/Nbは0.3であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)及びアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比(Li+NH)/Nbは1.3であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とアンモニア(NH)とのモル比Li/NHは3.2であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液の過酸化水素(H)とニオブ(Nb)とのモル比H/Nbは0.0であった。
【0095】
さらに、実施例7に係るニオブ酸リチウム分散液の初期pHは11であり、経時pHは11であった。
【0096】
(実施例8)
実施例8では、実施例1で得られた半透明色なスラリー混合物をウォーターバスで70℃に加熱し、蒸発分の純水を加えつつ、撹拌しながら6時間保持した後、室温まで冷却した。そして、無色透明なスラリー混合物のニオブ含有量がNb換算で5質量%となるように濃度調節が行われた、実施例8に係る無色透明なニオブ酸リチウム分散液を得た。実施例8に係るニオブ酸リチウム分散液200.0gにおいて、当該ニオブ酸リチウム分散液中のNb換算のニオブ含有量は5質量%(10.0g)であり、アンモニア含有量は0.006質量%(0.012g)であった。そして、実施例8に係るニオブ酸リチウム分散液に含まれるニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とニオブ(Nb)とのモル比Li/Nbは1.0であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比NH/Nbは0.0であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)及びアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比(Li+NH)/Nbは1.0であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液の過酸化水素(H)とニオブ(Nb)とのモル比H/Nbは0.0であった。
【0097】
さらに、実施例8に係るニオブ酸リチウム分散液の初期pHは11であり、経時pHは11であった。
【0098】
(実施例9)
実施例9では、実施例1で得られた半透明色なスラリー混合物をウォーターバスで70℃に加熱し、蒸発分の純水を加えつつ、撹拌しながら25時間保持した後、室温まで冷却した。そして、無色透明なスラリー混合物のニオブ含有量がNb換算で5質量%となるように濃度調節が行われた、実施例9に係る無色透明なニオブ酸リチウム分散液を得た。実施例9に係るニオブ酸リチウム分散液200.0gにおいて、当該ニオブ酸リチウム分散液中のNb換算のニオブ含有量は5質量%(10.0g)であり、アンモニア含有量は0.001質量%(0.002g)であった。そして、実施例9に係るニオブ酸リチウム分散液に含まれるニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とニオブ(Nb)とのモル比Li/Nbは1.0であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比NH/Nbは0.0であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)及びアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比(Li+NH)/Nbは1.0であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液の過酸化水素(H)とニオブ(Nb)とのモル比H/Nbは0.0であった。
【0099】
さらに、実施例9に係るニオブ酸リチウム分散液の初期pHは11であり、経時pHは11であった。
【0100】
(実施例10)
実施例10では、半透明色なスラリー混合物のニオブ含有量がNb換算で5質量%、且つNH含有量が5.5質量%となるように、実施例1に係るニオブ含有沈殿のスラリーと、水酸化リチウム一水和物及び純水を混合する際、当該純水の一部をアンモニア水(NH含有量25質量%)に置き換えたこと以外は、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例10に係る無色透明なニオブ酸リチウム分散液を得た。実施例10に係るニオブ酸リチウム分散液200.0gにおいて、当該ニオブ酸リチウム分散液中のNb換算のニオブ含有量は5質量%(10.0g)であり、アンモニア含有量は5.50質量%(11.0g)であった。そして、実施例10に係るニオブ酸リチウム分散液に含まれるニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とニオブ(Nb)とのモル比Li/Nbは1.0であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比NH/Nbは8.6であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)及びアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比(Li+NH)/Nbは9.6であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とアンモニア(NH)とのモル比Li/NHは0.1であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液の過酸化水素(H)とニオブ(Nb)とのモル比H/Nbは0.0であった。
【0101】
さらに、実施例10に係るニオブ酸リチウム分散液の初期pHは11であり、経時pHは11であった。
【0102】
(実施例11)
実施例11では、半透明色なスラリー混合物のニオブ含有量がNb換算で5質量%、且つNH含有量が10質量%となるように、実施例1に係るニオブ含有沈殿のスラリーと、水酸化リチウム一水和物及び純水を混合する際、当該純水の一部をアンモニア水(NH含有量25質量%)に置き換えたこと以外は、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例11に係る無色透明なニオブ酸リチウム分散液を得た。実施例11に係るニオブ酸リチウム分散液200.0gにおいて、当該ニオブ酸リチウム分散液中のNb換算のニオブ含有量は5質量%(10.0g)であり、アンモニア含有量は10.00質量%(20.0g)であった。そして、実施例11に係るニオブ酸リチウム分散液に含まれるニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とニオブ(Nb)とのモル比Li/Nbは1.0であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比NH/Nbは15.6であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)及びアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比(Li+NH)/Nbは16.6であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とアンモニア(NH)とのモル比Li/NHは0.1であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液の過酸化水素(H)とニオブ(Nb)とのモル比H/Nbは0.0であった。
【0103】
さらに、実施例11に係るニオブ酸リチウム分散液の初期pHは11であり、経時pHは11であった。
【0104】
(実施例12)
実施例12では、実施例1で得られた半透明色なスラリー混合物をウォーターバスで70℃に加熱し、蒸発分の純水を加えつつ、撹拌しながら6時間保持した後、室温まで冷却した。そして、無色透明なスラリー混合物のニオブ含有量がNb換算で10質量%となるように濃度調節が行われた、実施例12に係る無色透明なニオブ酸リチウム分散液を得た。実施例12に係るニオブ酸リチウム分散液200.0gにおいて、当該ニオブ酸リチウム分散液中のNb換算のニオブ含有量は10質量%(20.0g)であり、アンモニア含有量は0.03質量%(0.06g)であった。そして、実施例12に係るニオブ酸リチウム分散液に含まれるニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とニオブ(Nb)とのモル比Li/Nbは1.0であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比NH/Nbは0.0であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)及びアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比(Li+NH)/Nbは1.0であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液の過酸化水素(H)とニオブ(Nb)とのモル比H/Nbは0.0であった。
【0105】
さらに、実施例12に係るニオブ酸リチウム分散液の初期pHは11であり、経時pHは11であった。
【0106】
(実施例13)
実施例13では、半透明色なスラリー混合物のニオブ含有量がNb換算で10質量%、且つNH含有量が8.2質量%となるように、実施例1に係るニオブ含有沈殿のスラリーと、水酸化リチウム一水和物及び純水を混合する際、当該純水の一部をアンモニア水(NH含有量25質量%)に置き換えたこと以外は、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例13に係る無色透明なニオブ酸リチウム分散液を得た。実施例13に係るニオブ酸リチウム分散液200.0gにおいて、当該ニオブ酸リチウム分散液中のNb換算のニオブ含有量は10質量%(20.0g)であり、アンモニア含有量は8.20質量%(16.4g)であった。そして、実施例13に係るニオブ酸リチウム分散液に含まれるニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とニオブ(Nb)とのモル比Li/Nbは1.0であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比NH/Nbは6.4であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)及びアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比(Li+NH)/Nbは7.4であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とアンモニア(NH)とのモル比Li/NHは0.2であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液の過酸化水素(H)とニオブ(Nb)とのモル比H/Nbは0.0であった。
【0107】
さらに、実施例13に係るニオブ酸リチウム分散液の初期pHは11であり、経時pHは11であった。
【0108】
(比較例1)
比較例1では、実施例1に係る無色透明なニオブ酸リチウム分散液に、35%過酸化水素水をH/Nbのモル比が1となるように加え、比較例1に係るニオブ酸リチウム分散液を得た。比較例1に係るニオブ酸リチウム分散液200.0gにおいて、当該ニオブ酸リチウム分散液中のNb換算のニオブ含有量は5質量%(10.0g)であり、アンモニア含有量は0.001質量%未満であった。そして、比較例1に係るニオブ酸リチウム分散液に含まれるニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とニオブ(Nb)とのモル比Li/Nbは1.0であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比NH/Nbは0.0であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)及びアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比(Li+NH)/Nbは1.0であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液の過酸化水素(H)とニオブ(Nb)とのモル比H/Nbは1.0であった。
【0109】
さらに、比較例1に係るニオブ酸リチウム分散液の初期pHは8であり、経時pHは8であった。
【0110】
(比較例2)
比較例2では、ニオブ酸リチウム粉体0.5g(株式会社高純度化学研究所製)と、純水9.5gとを混合し、25℃で、30分間撹拌することにより、比較例2に係るニオブ酸リチウム分散液を得た。比較例2に係るニオブ酸リチウム分散液200.0gにおいて、当該ニオブ酸リチウム分散液中のNb換算のニオブ含有量は5質量%(10.0g)であり、アンモニア含有量は0.001質量%未満であった。そして、比較例2に係るニオブ酸リチウム分散液に含まれるニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とニオブ(Nb)とのモル比Li/Nbは1.0であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比NH/Nbは0.0であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)及びアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比(Li+NH)/Nbは1.0であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液の過酸化水素(H)とニオブ(Nb)とのモル比H/Nbは0.0であった。
【0111】
さらに、比較例2に係るニオブ酸リチウム分散液の初期pHは8であり、経時pHは8であった。
【0112】
(比較例3)
比較例3では、上述したフッ化ニオブ水溶液を、1%水酸化リチウム水溶液500mLに対して、ゆっくりと添加し、Nb含有量が5質量%、Li/Nbのモル比が1である微粒子分散液を得た。そして、この微粒子分散液に対して、限外ろ過装置を用いて、遊離したフッ化物イオン量が100mg/Lになるまでろ過洗浄し、比較例3に係るニオブ酸リチウムゾルを得た。比較例3に係るニオブ酸リチウムゾル200.0gにおいて、当該ニオブ酸リチウムゾル中のNb換算のニオブ含有量は5質量%(10.0g)であり、アンモニア含有量は0.001質量%未満であった。そして、比較例3に係るニオブ酸リチウムゾルに含まれるニオブ酸リチウムゾルのリチウム(Li)とニオブ(Nb)とのモル比Li/Nbは1.0であった。また、当該ニオブ酸リチウムゾルのアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比NH/Nbは0.0であった。さらに、当該ニオブ酸リチウムゾルのリチウム(Li)及びアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比(Li+NH)/Nbは1.0であった。また、当該ニオブ酸リチウムゾルの過酸化水素(H)とニオブ(Nb)とのモル比H/Nbは0.0であった。
【0113】
さらに、比較例3に係るニオブ酸リチウムゾルの初期pHは8であり、経時pHは8であった。
【0114】
(比較例4)
比較例4では、実施例1で得られた半透明色なスラリー混合物をウォーターバスで70℃に加熱し、蒸発分の純水を加えつつ、撹拌しながら73時間保持した後、室温まで冷却した。そして、スラリー混合物のニオブ含有量がNb換算で5質量%となるように濃度調節が行われた、比較例4に係るニオブ酸リチウム分散液を得た。比較例4に係るニオブ酸リチウム分散液200.0gにおいて、当該ニオブ酸リチウム分散液中のNb換算のニオブ含有量は5質量%(10.0g)であり、アンモニア含有量は0.001質量%未満であった。そして、比較例4に係るニオブ酸リチウム分散液に含まれるニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)とニオブ(Nb)とのモル比Li/Nbは1.0であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液のアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比NH/Nbは0.0であった。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液のリチウム(Li)及びアンモニア(NH)とニオブ(Nb)とのモル比(Li+NH)/Nbは1.0であった。また、当該ニオブ酸リチウム分散液の過酸化水素(H)とニオブ(Nb)とのモル比H/Nbは0.0であった。
【0115】
さらに、比較例4に係るニオブ酸リチウム分散液の初期pHは8であり、経時pHは8であった。
【0116】
そして、実施例1~13、及び比較例1、2、4において得られたニオブ酸リチウム分散液、また比較例3のニオブ酸リチウムゾルについて、次のような物性を測定した。以下、測定した物性値、及びその物性値の測定方法を示すとともに、物性値を表1に示し、測定結果を図1に示す。
【0117】
〈元素分析〉
必要に応じて試料を希塩酸で適度に希釈し、ICP発光分析(アジレント・テクノロジー社製:AG-5110)を用いて、JIS K0116:2014に準拠し、Nb換算のNb質量分率と、Li換算のLi質量分率とを測定した。
【0118】
〈アンモニア定量分析〉
水酸化ナトリウム溶液(30g/100ml)25mlを試料溶液1~5mlに加え、この混合液を沸騰させて蒸留し、その蒸留液(約200ml)を純水20mlと硫酸0.5mlとを入れた容器に流出させることによりアンモニアを分離した。次に、分離したアンモニアを250mlのメスフラスコに転移し純水で250mlに定容した。さらに、250mlに定容した溶液を100mlのメスフラスコに10ml分取し、分取した溶液に、水酸化ナトリウム溶液(30g/100mL)1mlを加え、純水で100mlに定容した。このようにして得られた溶液をイオンメータ(本体:HORIBA F-53、電極:HORIBA 500 2A)を用いて定量分析することにより、溶液中に含まれるアンモニア含有量(質量%)を測定した。
【0119】
〈過酸化水素定性分析〉
過酸化水素が添加されてない標準液と、H換算で1質量%となるように過酸化水素が添加された標準液との紫外可視吸光スペクトルをそれぞれ測定し、吸光度の変化率の最も大きな波長を「λ」とした。次に、過酸化水素含有量が不明な試料について、波長λにおける吸光度を同様に測定し、過酸化水素含有量が不明な試料の波長λにおける吸光度と過酸化水素が添加されてない標準液の波長λにおける吸光度との比が1%以下である場合、当該試料に過酸化水素は添加されていないと判断した。
【0120】
紫外可視吸光スペクトルの測定条件は、次のようであればよい。
・装置:UH4150形分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製)
・測定モード:波長スキャン
・データモード:%T(透過)
・測定波長範囲:200nm~2000nm
・スキャンスピード:600nm/min
・サンプリング間隔:2nm
【0121】
〈光透過度測定〉
実施例1~13、及び比較例1、2、4のニオブ酸リチウム分散液、また比較例3のニオブ酸リチウムゾル3mlを、光路長5mmの合成石英セルに入れ、実施例1~13、及び比較例1、2、4のニオブ酸リチウム分散液、また比較例3のニオブ酸リチウムゾルの光透過度を、上述した光透過率測定条件に従って、分光光度計にて測定した。また、室温25℃で1カ月静置した、実施例1~13、及び比較例1、2、4のニオブ酸リチウム分散液、また比較例3のニオブ酸リチウムゾル3mlを、光路長5mmの合成石英セルに入れ、同様に光透過度を測定した。そして、波長400nm、600nm、750nmの光透過度が75%以上であれば「○○(VERY GOOD)」と評価し、波長400nm、600nm、750nmの光透過度が65%以上75%未満であれば「○(GOOD)」と評価し、波長400nmの光透過度が65%未満であれば「×(BAD)」と評価した。なお、図1中の「初期光透過度」とは、生成された直後に測定された波長400nm、600nm、750nmの光透過度を示す。また、図1中の「経時光透過度」とは、室温25℃で1カ月静置した後で測定された波長400nm、600nm、750nmの光透過度を示す。
【0122】
〈pH測定〉
実施例1~13、及び比較例1、2、4のニオブ酸リチウム分散液、また比較例3のニオブ酸リチウムゾルにpHメータ(HORIBA製:ガラス電極式水素イオン濃度指示器 D-51)の電極(HORIBA製:スタンダード ToupH 電極 9615S-10D)、液温が25℃に安定したことを確認した後、pHを測定した。なお、図1中の「初期pH」とは、生成された直後に測定されたpHを示す。また、図1中の「経時pH」とは、室温25℃で1カ月静置した後で測定されたpHを示す。
【0123】
〈成膜性試験〉
集電板の代替品であるガラス基板の表面に形成した塗膜の外観評価を光学顕微鏡で観察することによって行った。実施例1~13、及び比較例1、2、4のニオブ酸リチウム分散液、また比較例3のニオブ酸リチウムゾルを2μm孔径のフィルタで濾過しながらシリンジを用いて、アセトンにより脱脂洗浄した後、乾燥を行った50mm×50mmのガラス基板に滴下し、スピンコート(1,500rpm、15秒)により、塗布した。そして、塗布した箇所を、自然乾燥することにより、ガラス基板上に塗膜を形成した。形成した塗膜の中央15mm×15mmの範囲において、光学顕微鏡(倍率:40倍)で当該ガラス基板を観察し、気泡、塗工ムラ、ひび割れが、一つも観察されなかったものは成膜性に優れているとして「○(GOOD)」と評価し、一つでも観察されたものを成膜性に優れていないとして「×(BAD)」と評価した。
【0124】
〈安全性試験〉
実施例1~13、及び比較例1、2、4のニオブ酸リチウム分散液、また比較例3のニオブ酸リチウムゾルを正極活物質に添加した際における発泡の有無を目視観察し、評価した。実施例1~13、及び比較例1、2、4のニオブ酸リチウム分散液、また比較例3のニオブ酸リチウムゾル50mLを、試験容器中の正極活物質であるマンガン酸リチウム5gに全量をまとめて混合した際における発泡の有無を目視観察した。発泡が一つも観察されなかったものは安全性を有するとして「○(GOOD)」と評価し、発泡が一つでも観察されたものは安全性を有しないとして「×(BAD)」と評価した。
【0125】
〈正極活物質の生成方法〉
実施例1~13、及び比較例1、2、4のニオブ酸リチウム分散液、また比較例3のニオブ酸リチウムゾルにより被覆された正極活物質について、被覆観察を行うとともに、被覆量を測定した。被覆観察、及び被覆量測定を行った正極活物質は、以下のような生成手順により生成した。
【0126】
室温25℃で1カ月静置した後のニオブ酸リチウム分散液を、ニオブ含有量がNbに換算して2.3質量%になるように純水で希釈した。また、1カ月静置した後のニオブ酸リチウム分散液中のニオブ含有量がNbに換算して2.3質量%未満である場合、希釈を行わなかった。希釈したニオブ酸リチウム分散液中に、正極活物質(マンガン酸リチウム)をニオブ/マンガン酸リチウムの重量比が2/100となるように加えることにより、ニオブ酸リチウムを含有する正極活物質スラリーを得た。次に、得られたニオブ酸リチウムを含有する正極活物質スラリーを撹拌しながら、水酸化リチウム分散液0.4mol/Lを、最終的なLi/Nbのモル比が2となるように滴下し、液温を90℃に保持した状態で、10分間撹拌した。そして、得られたニオブ酸リチウムを含有する正極活物質スラリーを、大気乾燥炉内で、110℃で15時間に亘り乾燥させることにより、ニオブ酸リチウムにより被覆された正極活物質を得た。
【0127】
〈被覆観察〉
ニオブ酸リチウムにより被覆された正極活物質の粒子表面の被覆状態を走査電子顕微鏡(SEM)で観察することにより評価した。走査電子顕微鏡(SEM)を用い、加速電圧1kVの条件下で、倍率50,000倍のSEM像(20μm×20μm)を5画面観察し、当該正極活物質の粒子表面の被覆状態を観察した。上述した観察条件下で、粒子の表面1μm四方に被覆できていない箇所が1カ所も観察されなったものを「○(GOOD)」とし、1カ所でも観察されたものを「×(BAD)」と評価した。
【0128】
〈被覆量の測定〉
ニオブ酸リチウムにより被覆された正極活物質に対して、適量のフッ酸を添加することにより、正極活物質の表面を被覆するニオブ酸リチウムが溶解した溶解液を得た。そして、当該溶解液に対して、ICP発光分析(アジレント・テクノロジー社製:AG-5110)を用いて、JIS K0116:2014に準拠し、正極活物質の表面を被覆するニオブ酸リチウムが溶解した溶解液中のニオブ質量分率含有量を測定して算出した。
【0129】
【表1】
【0130】
表1、図1に示す通り、実施例1~13に係るニオブ酸リチウム分散液は、リチウムとニオブのモル比Li/Nbが0.8以上2.0以下であり、また当該分散液中の波長400nm~760nm領域の光透過度の最大値が65%以上であると、成膜性試験、及び安全性試験の結果全てにおいて、良好な結果が得られた。一方で、比較例1に係るニオブ酸リチウム分散液は、成膜性試験、及び安全性試験において不良な結果となったが、これは過酸化水素が含まれていることの影響と推測される。また、比較例に係るニオブ酸リチウム分散液は、当該分散液中の波長400nm~760nm領域の光透過度の最大値が65%未満であり、成膜性試験において不良な結果となった。
【0131】
実施例1~13に係るニオブ酸リチウム分散液は、当該分散液中に過酸化水素が含まれていないが、1カ月経過した後であっても、ニオブ酸リチウムの経時光透過度(波長400nm、600nm、750nm)は初期光透過度(400nm、600nm、750nm)と比して大きな差は見られず、経時安定性に優れるものであった。
【0132】
実施例1~13に係るニオブ酸リチウム分散液は、当該分散液中のニオブ含有量がNb換算で0.1質量%以上30質量%であると、長期保管時の安定性が良好であった。
【0133】
実施例1~13に係るニオブ酸リチウム分散液により被覆された正極活物質は、その粒子表面の被覆状態をSEM観察した結果、当該ニオブ酸リチウムにより完全に被覆された状態であることを確認することができた。また、それらの正極活物質の表面を被覆するニオブ酸リチウムのニオブ質量分率含有量は1.0質量%以上であった。一方、比較例1に係るニオブ酸リチウム分散液により被覆された正極活物質の表面を被覆するニオブ酸リチウムのニオブ質量分率含有量は1.0質量%であったが、その粒子表面の被覆状態をSEM観察した結果、被覆されていない箇所が観察された。
【0134】
本明細書開示の発明は、各発明や実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明に係るニオブ酸リチウム分散液は、極性溶媒、とりわけ水への分散性が高く、水に対する溶解性も良好で、且つ保存安定性も優れていることから、リチウムイオン二次電池の正極活物質を被覆するものとして好適である。また、本発明に係るニオブ酸リチウム分散液は、保存安定性に優れており、経時変化によって、沈殿物が生じることによる不良品の発生率を抑えられることから、廃棄物を減らすことができ、廃棄物の処分におけるエネルギーコストも削減することが可能となる。さらに、本発明に係るニオブ酸リチウム分散液は、成膜性の形成も良好であるため、被覆されたリチウムイオン二次電池の正極活物質においても同様に廃棄物を減らすことができ、また不良品の発生率を抑えることができる。これらの点により、天然資源の持続可能な管理及び効率的な利点、並びに脱炭素(カーボンニュートラル)化を達成することにつながる。
【要約】
本発明のニオブ酸リチウム分散液は、リチウムとニオブのモル比Li/Nbが0.8以上2.0以下であるニオブ酸リチウムと、アンモニアとを含むニオブ酸リチウム分散液であって、波長400nm~760nm領域の光透過度の最大値が65%以上である。
図1