(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】金属酸リチウム混合液およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 35/00 20060101AFI20240829BHJP
C01G 39/00 20060101ALI20240829BHJP
C01G 41/00 20060101ALI20240829BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C01G35/00 C
C01G39/00 Z
C01G41/00 B
H01M4/36 C
(21)【出願番号】P 2024522335
(86)(22)【出願日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 JP2023038263
【審査請求日】2024-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2022171730
(32)【優先日】2022-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094536
【氏名又は名称】高橋 隆二
(74)【代理人】
【識別番号】100129805
【氏名又は名称】上野 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100189315
【氏名又は名称】杉原 誉胤
(72)【発明者】
【氏名】三浦 高史
(72)【発明者】
【氏名】関(佐藤) 理子
(72)【発明者】
【氏名】元野 隆二
(72)【発明者】
【氏名】原 周平
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103509521(CN,A)
【文献】国際公開第2012/056834(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/004590(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/201127(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 35/00 - 35/02
C01G 39/00 - 39/00
C01G 41/00
H01M 4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステンからなる群より選択される2種以上の金属酸リチウム分散液を含有する金属酸リチウム混合液であって、
前記金属酸リチウム混合液に含まれる、前記金属酸リチウム混合液1Lあたりのリチウムのモル数をLiと、前記金属酸リチウム混合液1Lあたりの2種以上の金属の総モル数をMとし、モル比Li/Mが0.1以上10以下であり、且つ動的光散乱法による前記金属酸リチウム混合液中の粒子の粒子径(D50)が100nm以下であることを特徴とする金属酸リチウム混合液。
【請求項2】
ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステンからなる群より選択される2種以上の金属酸リチウム分散液を含有する金属酸リチウム混合液であって、
前記金属酸リチウム混合液に含まれる、前記金属酸リチウム混合液1Lあたりのリチウムのモル数をLiと、前記金属酸リチウム混合液1Lあたりの2種以上の金属の総モル数をMとし、モル比Li/Mが0.1以上10以下であり、且つ波長400nm~760nm領域の光透過度の最大値が65%以上であることを特徴とする金属酸リチウム混合液。
【請求項3】
アンモニアをさらに含有することを特徴とする請求項1、又は2に記載の金属酸リチウム混合液。
【請求項4】
過酸化水素およびまたは有機窒素化合物をさらに含有することを特徴とする請求項1、又は2に記載の金属酸リチウム混合液。
【請求項5】
前記有機窒素化合物が、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、又はそれらの混合物である脂肪族アミン、または水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、又は水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)である4級アンモニウム化合物であることを特徴とする請求項4に記載の金属酸リチウム混合液。
【請求項6】
前記金属酸リチウム混合液の溶媒が水であることを特徴とする請求項1、又は2に記載の金属酸リチウム混合液。
【請求項7】
選択された金属酸リチウム分散液の金属元素含有量は、
前記金属酸リチウム混合液を100質量%としたとき、
ニオブ含有量はNb換算で20質量%以下であり、
タンタル含有量はTa換算で12質量%以下であり、
モリブデン含有量はMo換算で23質量%以下であり、
タングステン含有量はW換算で22質量%以下である、
ことを特徴とする請求項1、又は2に記載の金属酸リチウム混合液。
【請求項8】
前記金属酸リチウム混合液中のニオブ、タンタル、モリブデン、及びタングステンの総含有量が、前記金属酸リチウム混合液を100質量%としたとき、メタル換算で0.001質量%以上50質量%以下であることを特徴とする請求項1、又は2に記載の金属酸リチウム混合液。
【請求項9】
前記金属酸リチウム混合液のpHが8以上であることを特徴とする請求項1、又は2に記載の金属酸リチウム混合液。
【請求項10】
請求項1、又は2に記載の金属酸リチウム混合液中の金属酸リチウム塩を含有することを特徴とする金属酸リチウム膜。
【請求項11】
リチウムイオン二次電池用正極の被覆用であることを特徴とする請求項1、又は2に記載の金属酸リチウム混合液。
【請求項12】
請求項1、又は2に記載の前記金属酸リチウム混合液に含まれる金属酸リチウム塩でその表面が被覆されていることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【請求項13】
請求項12に記載された前記正極活物質が被覆した正極を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【請求項14】
請求項1、又は2に記載の前記金属酸リチウム混合液に含まれる金属酸リチウム粒子を含有することを特徴とする金属酸リチウム粉末。
【請求項15】
ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステンからなる群より選択される2種以上の金属酸リチウム分散液を混合する工程を有することを特徴とする金属酸リチウム混合液の製造方法。
【請求項16】
前記金属酸リチウム分散液は、ニオブ、タンタル、タングステンからなる群より選択された金属を含有する酸性水溶液を、アルカリ性水溶液に添加することにより、前記金属を含有する沈殿物スラリーを生成し、前記沈殿物スラリーと、水酸化リチウムと、純水とを混合することにより、生成された金属酸リチウム分散液であることを特徴とする請求項15に記載の金属酸リチウム混合液の製造方法。
【請求項17】
請求項1、又は2に記載の前記金属酸リチウム混合液を基材に塗布し、乾燥し、およびまたは、焼成することを特徴とする金属酸リチウム膜の製造方法。
【請求項18】
請求項15、又は16に記載の金属酸リチウム混合液の製造方法により生成された金属酸リチウム混合液を基材に塗布し、乾燥し、およびまたは、焼成することを特徴とする金属酸リチウム膜の製造方法。
【請求項19】
請求項1、又は2に記載の前記金属酸リチウム混合液を乾燥し、およびまたは、焼成することを特徴とする金属酸リチウム粉末の製造方法。
【請求項20】
請求項15、又は16に記載の金属酸リチウム混合液の製造方法により生成された金属酸リチウム混合液を乾燥し、およびまたは、焼成することを特徴とする金属酸リチウム粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸リチウム混合液およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムと、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン等の金属元素とを複合化させた金属酸リチウムは、非線形光学材料、圧電素子、電池材料などに利用されている。例えば、特許文献1には、全固体リチウムイオン電池に生じる電池抵抗を低下させることが可能な複合活物質粒子が開示されている。その複合活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆するリチウムイオン伝導性酸化物として、ニオブ酸リチウムや、タンタル酸リチウムが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金属酸リチウムの種類によっては、極性溶媒、とりわけ水への分散性や、溶解性が悪く、例えば、タンタル酸リチウムは、ニオブ酸リチウムと比して、水への分散性や、溶解性が悪く、また経時変化によって、沈殿物が生じやすい特性を有していた。具体的には、特許文献1に開示されたニオブ酸リチウムの製造方法を用いて、製造したタンタル酸リチウムは、水への分散性が低く、水に対する溶解性が不良で、且つ保存安定性に優れたものではなかった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて、極性溶媒、とりわけ水への分散性が高く、水に対する溶解性が良好で、且つ保存安定性に優れた金属酸リチウム混合液およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明の金属酸リチウム混合液は、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステンからなる群より選択される2種以上の金属酸リチウム分散液を含有する金属酸リチウム混合液であって、前記金属酸リチウム混合液に含まれる、前記金属酸リチウム混合液1Lあたりのリチウムのモル数をLi(mol/L)と、前記金属酸リチウム混合液1Lあたりの2種以上の金属の総モル数をM(mol/L)とし、モル比Li/Mが0.1以上10以下であり、且つ動的光散乱法による前記金属酸リチウム混合液中の粒子の粒子径(D50)が100nm以下であることを特徴とする。
本発明の金属酸リチウム混合液は、ニオブ酸リチウム分散液、タンタル酸リチウム分散液、モリブデン酸リチウム分散液、及びタングステン酸リチウム分散液から選択された2種以上の金属酸リチウム分散液が混合した金属酸リチウム混合液であればよく、3種、又は4種の金属酸リチウム分散液を混合した金属酸リチウム混合液である。また、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステンからなる群より選択される2種以上の金属酸リチウム分散液の内、少なくとも1種は、ニオブ酸リチウム分散液、又はタンタル酸リチウム分散液であるとよい。
【0007】
本明細書で言及するニオブ、タンタル、モリブデン、及びタングステンは、特段の説明がない限り、ニオブ酸化合物、タンタル酸化合物、モリブデン酸化合物、及びタングステン酸化合物を含むものである。
【0008】
本発明の金属酸リチウム混合液に含まれる、前記金属酸リチウム混合液1Lあたりのリチウムのモル数をLi(mol/L)と、前記金属酸リチウム混合液1Lあたりの2種以上の金属の総モル数をM(mol/L)とし、モル比Li/Mが0.1以上10以下であると、水への分散性、溶解性、及び混合液の安定性が向上する。また、当該モル比Li/Mが0.2以上6以下であるとより好ましく、0.25以上5以下であるとさらに好ましく、0.4以上4以下であると特に好ましく、0.5以上2以下であるとまた特に好ましい。
【0009】
ここで、本発明の金属酸リチウム混合液1Lあたりの2種以上の金属の総モル数「M」(mol/L)は、以下のように求めることができる。
【0010】
本発明の金属酸リチウム混合液が、ニオブ酸リチウム分散液とタンタル酸リチウム分散液との2種の金属酸リチウム分散液を混合して生成されたものである場合、当該金属酸リチウム混合液1Lあたりのニオブのモル数を「M1」(mol/L)とし、当該金属酸リチウム混合液1Lあたりのタンタルのモル数を「M2」(mol/L)とすると、当該金属酸リチウム混合液(1L)に含まれる金属の総モル数「M」(mol/L)は、「M=M1+M2」(mol/L)である。なお、2種の金属酸リチウム分散液として選択される金属酸リチウム分散液は、ニオブ酸リチウム分散液及びタンタル酸リチウム分散液に限定されない。
【0011】
また、本発明の金属酸リチウム混合液が、ニオブ酸リチウム分散液、タンタル酸リチウム分散液、及びモリブデン酸リチウム分散液の3種の金属酸リチウム分散液を混合して生成されたものである場合、当該金属酸リチウム混合液1Lあたりのモリブデンのモル数を「M3」(mol/L)とすると、当該金属酸リチウム混合液(1L)に含まれる金属の総モル数「M」(mol/L)は、「M=M1+M2+M3」(mol/L)である。なお、3種の金属酸リチウム分散液として選択される金属酸リチウム分散液は、ニオブ酸リチウム分散液、タンタル酸リチウム分散液、及びモリブデン酸リチウム分散液に限定されない。
【0012】
さらに、本発明の金属酸リチウム混合液が、ニオブ酸リチウム分散液、タンタル酸リチウム分散液、モリブデン酸リチウム分散液、及びタングステン酸リチウム分散液の4種の金属酸リチウム分散液を混合して生成されたものである場合、当該金属酸リチウム混合液1Lあたりのタングステンのモル数を「M4」(mol/L)とすると、当該金属酸リチウム混合液(1L)に含まれる金属の総モル数「M」(mol/L)は、「M=M1+M2+M3+M4」(mol/L)である。
【0013】
また、本発明の金属酸リチウム混合液中の金属酸リチウムは、金属酸とリチウムとがイオン結合した状態のイオンとして当該混合液中に存在するものと推測する。本発明の金属酸リチウム混合液には、陰イオンとして水酸化物イオンは存在する一方、フッ化物イオンおよび塩化物イオンなどのハロゲン化物イオンはほとんど存在せず、リチウムは陽イオンとして存在すると考えられる。そして、例えば、ニオブはNbO3
-のような陰イオンか、複数のニオブ原子と酸素原子とが結合したポリオキソメタレート(ポリ酸)イオンとして存在していると考えらえる。また、タンタルはTaO3
-のような陰イオンか、複数のタンタル原子と酸素原子とが結合したポリオキソメタレート(ポリ酸)イオンとして存在していると考えらえる。さらに、モリブデンはMoO4
2-のような陰イオンか、複数のモリブデン原子と酸素原子とが結合したポリオキソメタレート(ポリ酸)イオンとして存在していると考えらえる。さらに、タングステンは(W2O7)2-や、(W12O10)8-のような陰イオンか、複数のタングステン原子と酸素原子とが結合したポリオキソメタレート(ポリ酸)イオンとして存在していると考えらえる。
【0014】
本発明の金属酸リチウム混合液は、動的光散乱法による前記金属酸リチウム混合液中の粒子の粒子径(D50)が100nm以下であると、分散性が高く、経時変化が少なく安定し、他の物質との反応や複合化に際する反応性、成膜時における膜均一性の観点から好ましい。本発明の金属酸リチウム混合液中の粒子としては、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、モリブデン酸リチウム、タングステン酸リチウム、リチウムイオン、ニオブイオン、タンタルイオン、モリブデンイオン、タングステンイオン、ニオブ酸イオン、タンタル酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン等が挙げられる。また、当該粒子径(D50)は、より小粒径であると好ましく、80nm以下であるとより好ましく、50nm以下であるとさらに好ましく、30nm以下であると特に好ましく、20nm以下であるとまた特に好ましく、10nm以下であるとさらに特に好ましく、5nm以下であるとより特に好ましい。また、本明細書において、特段の説明がない限り、「粒子径(D50)」は、生成された直後に液温25℃に調整した本発明の金属酸リチウム混合液中の粒子の「初期粒子径D50」、及び室温25℃に設定した恒温器内で、本発明の金属酸リチウム混合液が生成された日から1カ月静置した後の金属酸リチウム混合液中の粒子の「経時粒子径D50」の両方を含むものである。また、本発明の金属酸リチウム混合液中の粒子の「粒子径(D50)」は、「初期粒子径D50」と「経時粒子径D50」との経時変動幅が小さければ、本発明の金属酸リチウム混合液が生成された日から1カ月以上静置した後の金属酸リチウム混合液中の粒子の粒子径(D50)は、「経時粒子径D50」との経時変動幅も小さいと推察される。このように、本発明の金属酸リチウム混合液中の粒子の粒子径(D50)が、動的光散乱法を用いて測定した結果、当該粒子径(D50)が100nm以下である状態の液を、本発明の「金属酸リチウム混合液」とする。
【0015】
ここで、動的光散乱法とは、懸濁溶液などの溶液にレーザ光などの光を照射することにより、ブラウン運動する粒子群からの光散乱強度を測定し、その強度の時間的変動から粒子径と分布を求める方法である。具体的には、粒度分布の評価方法は、ゼータ電位・粒径・分子量測定システム(大塚電子株式会社製:ELSZ-2000)を用いて、JIS Z 8828:2019「粒子径解析-動的光散乱法」に準拠して実施する。また、測定直前に測定対象である溶液中の埃等を除去するため、1μm孔径のフィルタで当該溶液を濾過し、超音波洗浄機(アズワン社製:VS-100III)にて、28kHz、3分間の超音波処理を実施する。なお、粒子径(D50)は、積算分布曲線の50%積算値を示す粒子径であるメジアン径(D50)をいう。
【0016】
また、本発明の金属酸リチウム混合液は、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステンからなる群より選択される2種以上の金属酸リチウム分散液を含有する金属酸リチウム混合液であって、前記金属酸リチウム混合液に含まれる、前記金属酸リチウム混合液1Lあたりのリチウムのモル数をLiと、前記金属酸リチウム混合液1Lあたりの2種以上の金属の総モル数をMとし、モル比Li/Mが0.1以上10以下であり、且つ波長400nm~760nm領域の光透過度の最大値が65%以上であることを特徴とする。
ここで、本発明の金属酸リチウム混合液中のニオブ、タンタル、モリブデン、タングステンからなる群より選択される2種以上の金属酸リチウム分散液、及びモル比Li/Mについては、上述した通りであるから、詳細な説明は省略する。
【0017】
本発明の金属酸リチウム混合液は、波長400nm~760nm領域の光透過度の最大値が65%以上であると、分散度が高く液中成分の均一性が優れる点で好ましい。当該波長400nm~760nm領域の光透過度の最大値が、75%以上であるとより好ましく、80%以上であるとさらに好ましく、85%以上であると特に好ましく、90%以上であるとまた特に好ましく、95以上であるとより特に好ましい。当該波長400nm~760nm領域の光透過度の最大値が100%であってもよい。
【0018】
また、本発明の金属酸リチウム混合液は、波長400nm、600nm、750nmの何れか1つ以上の波長における光透過度が65%以上であると好ましく、70%以上であるとより好ましく、80%以上であるとさらに好ましく、90%以上であると特に好ましく、100%であると最も好ましい。当該波長400nm、600nm、750nmの何れか1つ以上の波長における光透過度が70%以上であってもよく、72%以上であってもよく、74%以上であってもよく、76%以上であってもよく、78%以上であってもよく、80%以上であってもよく、90%以上であってもよく、95%以上であってもよく、97%以上であってもよく、98%以上であってもよく、99%以上であってもよく、100%以上であってもよい。
【0019】
さらに、本発明の金属酸リチウム混合液は、波長400nm~760nm領域の光透過度が65%以上であると好ましく、70%以上であるとより好ましく、80%以上であるとさらに好ましく、90%以上であると特に好ましく、100%であると最も好ましい。当該波長400nm~760nm領域の光透過度が70%以上であってもよく、72%以上であってもよく、74%以上であってもよく、76%以上であってもよく、78%以上であってもよく、80%以上であってもよく、90%以上であってもよく、95%以上であってもよく、97%以上であってもよく、98%以上であってもよく、99%以上であってもよく、100%以上であってもよい。
【0020】
なお、測定誤差等により、上述した光透過度の測定値が100%を超える場合があるが、理論上限値は100%であるため、当該測定値が100%超の場合、100%とみなす。また、本明細書において、特段の説明がない限り、「光透過度」は、生成された直後に液温25℃に調整した本発明の金属酸リチウム混合液の「初期光透過度」、及び室温25℃に設定した恒温器内で、本発明の金属酸リチウム混合液が生成された日から1カ月静置した後の金属酸リチウム混合液の「経時光透過度」の両方を含むものである。また、本発明の金属酸リチウム混合液の「光透過度」は、「初期光透過度」と「経時光透過度」との経時変動幅が小さければ、本発明の金属酸リチウム混合液が生成された日から1カ月以上静置した後の金属酸リチウム混合液の光透過度は、「経時光透過度」との経時変動幅も小さいと推察される。
【0021】
ここで、上述した光透過度は、本発明の金属酸リチウム混合液について、以下の透過度測定条件に従って、分光光度計を用いて測定する。
【0022】
=光透過度測定条件=
・測定装置:紫外可視近赤外分光光度計UH4150形(株式会社日立ハイテクサイエンス製)
・測定モード:波長スキャン
・データモード:%T(透過)
・測定波長範囲:200nm~2000nm
・スキャンスピード:600nm/min
・サンプリング間隔:2nm
【0023】
なお、本発明における「分散液」及び「混合液」とは、溶質が溶媒中に単分子の状態で分散又は混合しているものに限られず、複数の分子が分子間の相互作用により引き合った集合体、例えば(1)多量体分子、(2)溶媒和分子、(3)分子クラスター、(4)コロイド粒子などが溶媒に分散しているものも含まれる。
【0024】
また、本発明の金属酸リチウム混合液は、アンモニアをさらに含有することを特徴とする。
後述する本発明の金属酸リチウム混合液の製造方法で詳しく説明するが、当該製造工程において、酸性の金属酸溶液をアンモニア水に添加する逆中和法を経て、生成された2種以上の金属酸リチウム分散液を混合することにより、本発明の金属酸リチウム混合液が生成されることから、リチウムイオンと置換されたアンモニウムイオンを含むアンモニアが陽イオンとして当該混合液中に存在すると考えられる。
【0025】
当該混合液中に存在するアンモニア含有量の測定方法は、当該混合液に水酸化ナトリウムを加えてアンモニアを蒸留分離し、イオンメータによりアンモニア含有量を定量する方法、ガス化した試料中のN2分を熱伝導度計で定量する方法、ケルダール法、ガスクロマトグラフィー(GC)、イオンクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー・質量分析(GC-MS)などが挙げられる。特に、イオンメータによる定量する方法が好ましい。
【0026】
本発明の金属酸リチウム混合液に含まれるアンモニウムイオンを含むアンモニアのアンモニア含有量は、0.001質量%以上25質量%以下であると好ましく、0.003質量%以上15質量%以下であるとより好ましい。当該アンモニア含有量は、0.1質量%以上10質量%以下であってもよく、0.5質量%以上10質量%以下であってもよく、1質量%以上8質量%以下であってもよい。
【0027】
また、本発明の金属酸リチウム混合液は、過酸化水素およびまたは有機窒素化合物をさらに含有することを特徴とする。
【0028】
本発明の金属酸リチウム混合液がタンタル酸リチウム分散液を含むものである場合、後述するタンタル酸リチウム分散液の製造方法において、過酸化水素水をフッ化タンタル水溶液に添加して、混合することにより、タンタル化合物水溶液を生成することができることから、本発明の金属酸リチウム混合液は、過酸化水素を含有してもよい。一方、本発明の金属酸リチウム混合液がニオブ酸リチウム分散液を含むものである場合、過酸化水素が含まれていると、可溶化したニオブ酸の一部が不安定なペルオキソ錯体を形成するおそれがある。例えば、本発明の金属酸リチウム混合液がタンタル酸リチウム分散液とニオブ酸リチウム分散液とを含むものである場合、本発明の金属酸リチウム混合液中の過酸化水素水含有量は小さい方が好ましい。
【0029】
本発明の金属酸リチウム混合液中の過酸化水素の検出方法は、例えば標準添加法を用いて、過酸化水素の標準液との吸光度の相対強度を測定することにより、当該混合液中の過酸化水素の含有量を確認することができる。具体的には、既知含有量、例えば1質量%過酸化水素を含む標準液と、過酸化水素が無添加の標準液とにおけるそれぞれの紫外可視吸収スペクトルから、ペルオキソ錯体形成に伴う吸光度の変化が観測される波長領域を見出し、その波長領域における過酸化水素が無添加の標準液と過酸化水素含有量が不明な試料との吸光度の差が1%未満であれば、過酸化水素含有量が不明な試料に過酸化水素が実質的に含まれていないことを確認することができる。当該溶液中に過酸化水素が含まれている場合、過酸化水素は金属のポリ酸と反応し、ペルオキソ錯体を形成することから、上述したように過酸化水素が無添加の標準液の吸光度の差を確認することにより、当該混合液中に過酸化水素が含まれていないことを確認できる。また、上述した標準添加法以外にも、例えば市販の過酸化水素測定キットを用いて、当該混合液に過酸化水素と呈色反応する試薬を加え、その発色を測定する方法や、当該混合液に過酸化水素と蛍光反応する試薬を加え、その発光を測定することによって、当該混合液中の過酸化水素を定性分析及び定量分析を行ってもよい。
【0030】
本発明の金属酸リチウム混合液中の有機窒素化合物は、金属酸とイオン結合した状態のイオンとして当該混合液中に存在するものと推測する。
【0031】
ここで、有機窒素化合物としては、脂肪族アミン、芳香族アミン、アミノアルコール、アミノ酸、ポリアミン、4級アンモニウム、グアニジン化合物、アゾール化合物が挙げられる。
【0032】
脂肪族アミンとしては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエチルアミン、n-プロピルアミン、ジn-プロピルアミン、トリn-プロピルアミン、iso-プロピルアミン、ジiso-プロピルアミン、トリiso-プロピルアミン、n-ブチルアミン、ジn-ブチルアミン、トリn-ブチルアミン、iso-ブチルアミン、ジiso-ブチルアミン、トリiso-ブチルアミンおよびtert-ブチルアミン、n-ペンタアミン、n-ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ピペリジンなどが挙げられる。
【0033】
芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、フェニレンジアミン、ジアミノトルエンなどが挙げられる。さらに、アミノアルコールとしては、例えば、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、ペンタノールアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、トリメタノールアミン、メチルメタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルプロパノールアミン、メチルブタノールアミン、エチルメタノールアミン、エチルエタノールアミン、エチルプロパノールアミン、ジメチルメタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジメチルプロパノールアミン、メチルジメタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジエチルメタノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノトリス(ヒドロキシメチル)メタンおよびアミノフェノールなどが挙げられる。また、アミノ酸としては、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、EDTAなどが挙げられる。さらに、ポリアミンとしては、例えば、ポリアミン、ポリエーテルアミンなどが挙げられる。
【0034】
4級アンモニウムとしては、例えば、アルキルイミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジウム、テトラアルキルアンモニウムなどが挙げられる。ここで、アルキルイミダゾリウムの具体例としては、1-メチル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム、1-メチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-プロピル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムなどが挙げられる。また、ピリジニウム、ピロリジウムの具体例としては、N-ブチル-ピリジニウム、N-エチル-3-メチル-ピリジニウム、N-ブチル-3-メチル-ピリジニウム、N-ヘキシル-4-(ジメチルアミノ)-ピリジニウム、N-メチル-1-メチルピロリジニウム、N-ブチル-1-メチルピロリジニウムなどが挙げられる。さらに、テトラアルキルアンモニウムの具体例としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、エチル-ジメチル-プロピルアンモニウムが挙げられる。なお、上述したカチオンと塩を形成するアニオンとしては、OH-、Cl-、Br-、I-、BF4
-、HSO4
-などが挙げられる。
【0035】
グアニジン化合物としては、グアニジン、ジフェニルグアニジン、ジトリルグアニジンなどが挙げられる。また、アゾール化合物としては、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物などが挙げられる。ここで、イミダゾール化合物の具体例としては、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどが挙げられる。また、トリアゾール化合物の具体例としては、1,2,4-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール-3-カルボン酸メチル、1,2,3-ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0036】
ここで、有機窒素化合物は、脂肪族アミンであると、揮発性が高く、低毒性でもあるから好ましい。具体的には、炭素数1以上4以下の脂肪族アミンであるとより好ましく、炭素数1以上2以下の脂肪族アミンであると特に好ましい。例えば、メチルアミン、ジメチルアミンなどが挙げられる。
【0037】
また、有機窒素化合物は、4級アンモニウムであると、溶解性が高いだけでなく、高い結晶化抑制や、高いゾル化抑制を有する点で好ましい。例えば、テトラアルキルアンモニウム塩が好ましく、水酸化テトラアルキルアンモニウム塩がより好ましく、水酸化テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムが特に好ましく、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)がまた特に好ましい。
【0038】
さらに、有機窒素化合物は、脂肪族アミン、芳香族アミン、アミノアルコール、アミノ酸、ポリアミン、4級アンモニウム、グアニジン化合物、アゾール化合物から選択された1種ではなく、2種以上を混合したものであってもよい。例えば、脂肪族アミンと4級アンモニウムとの2種を混合したものであれば、毒性が上がらないように添加量を抑えつつ、溶解度をあげることができる点で好ましい。
【0039】
具体的には、メチルアミン及び水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、ジメチルアミン及び水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、メチルアミン及びジメチルアミンのように2種の有機窒素化合物を混合したものや、メチルアミン、ジメチルアミン及び水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)のように3種の有機窒素化合物を混合したものが挙げられる。
【0040】
なお、本発明のタンタル酸化合物分散液中に存在する有機窒素化合物含有量の測定方法は、ガスクロマトグラフィー(GC)、液体クロマトグラフィー(LC)、質量分析(MS)、ガスクロマトグラフィー・質量分析(GC-MS)、液体クロマトグラフィー・質量分析(LC-MS)などが挙げられる。特に、液体クロマトグラフィー(LC)、液体クロマトグラフィー・質量分析(LC-MS)による測定が好ましい。
【0041】
上述した通り、本発明の金属酸リチウム混合液に含まれる有機窒素化合物が、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、又はそれらの混合物である脂肪族アミン、または水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、又は水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)である4級アンモニウム化合物であると好ましい。
【0042】
また、本発明の金属酸リチウム混合液は、前記金属酸リチウム混合液の溶媒が水であることを特徴とする。
本発明の金属酸リチウム混合液は、極性溶媒、とりわけ水への分散性が高く、水に対する溶解性が良好であるため、溶媒として純水を用いることができる。溶媒としては、有機溶媒を用いてもよい。有機溶媒としては、アルコール溶媒、ケトン溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、芳香族炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素類溶媒等が挙げられ、これら有機溶媒と純水とを混合した溶媒であってもよい。また、アルコール溶媒としては、炭素数5以下のアルコール(メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール)や、アセトンや、高沸点溶媒などが挙げられる。上述した溶媒と水は相溶することが好ましい。また、本発明の金属酸リチウム混合液は、安定性を阻害しない範囲で、任意の割合で1種以上の溶媒を含むことができる。
【0043】
高沸点溶媒として、多価アルコール系溶媒や、グリコール系溶媒が挙げられる。多価アルコール系溶媒とは、グリセリン(沸点:290℃)、1,6-ヘキサンジオール(沸点:250℃)、1,7-ヘプタンジオール(沸点:259℃)などが挙げられる。また、グリコール系溶媒とは、エチレングリコール(沸点:197.3℃)、プロピレングリコール(沸点:188.2℃)、ジエチレングリコール(沸点:244.3℃)、トリエチレングリコール(沸点:287.4℃)、オリゴエチレングリコール(沸点:287℃~460℃)、ポリエチレングリコール(PEG)(沸点:460℃以上)、ポリエチレングリコール(PEG)-ポリプロピレングリコール(PPG)コポリマー(沸点:460℃以上)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(沸点:260℃)、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル(沸点:260℃以上)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(沸点:321℃以上)、その他アニオン性フッ素系界面活性剤(沸点:180℃以上)、両性フッ素系界面活性剤(沸点:180℃以上)、ノニオン性フッ素系界面活性剤(沸点:180℃以上)、アミンオキシド(沸点:180℃以上)などが挙げられる。上述した沸点は、1気圧における沸点である。
【0044】
さらに、上述した本発明の金属酸リチウム混合液の溶媒は、樹脂成分等のバインダーを含むものであってもよい。本発明の金属酸リチウム混合液の溶媒が、樹脂成分等のバインダーを含むものであると、本発明の金属酸リチウム混合液を用いて、形成された金属酸リチウム膜の成膜性を向上させることができる。ここで、バインダーとして用いられる樹脂成分は、例えばアクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、グリコール系樹脂、セルロース系樹脂、及びそれらの混合樹脂、共重合樹脂が挙げられる。
【0045】
また、本発明の金属酸リチウム混合液は、選択された金属酸リチウム分散液の金属元素含有量は、前記金属酸リチウム混合液を100質量%としたとき、ニオブ含有量はNb換算で20質量%以下であり、タンタル含有量はTa換算で12質量%以下であり、モリブデン含有量はMo換算で23質量%以下であり、タングステン含有量はW換算で22質量%以下であることを特徴とする。
【0046】
選択された前記金属酸リチウム分散液がニオブ酸リチウム分散液の場合、ニオブ含有量が、Nb換算で20質量%以下であると、当該金属酸リチウム混合液の実用性及び安定性を両立する点で好ましい。また、当該ニオブ含有量は、Nb換算で、0.001質量%20質量%以下であるとより好ましく、0.01質量%以上15質量%以下であるとさらに好ましく、0.1質量%以上10質量%以下であると特に好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であるとより特に好ましく、1質量%以上5質量%以下であるとさらに特に好ましい。また、本発明の金属酸リチウム混合液中のニオブ含有量が、Nb換算で3質量%以上20質量%以下であってもよい。
【0047】
選択された前記金属酸リチウム分散液がタンタル酸リチウム分散液の場合、タンタル含有量が、Ta換算で12質量%以下であると、溶媒、とりわけ水への分散性及び溶解性が向上する点で好ましい。また、当該タンタル含有量は、Ta換算で、0.001質量%以上12質量%以下であるとより好ましく、0.01質量%以上10質量%以下であるとさらに好ましく、0.1質量%以上8質量%以下であると特に好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であるとより特に好ましく、1質量%以上5質量%以下であるとさらに特に好ましい。また、本発明の金属酸リチウム混合液中のタンタル含有量が、Ta換算で1質量%以上12質量%以下であってもよい。
【0048】
選択された前記金属酸リチウム分散液がモリブデン酸リチウム分散液の場合、モリブデン含有量が、Mo換算で22質量%以下であると、溶媒、とりわけ水への分散性及び溶解性が向上する点で好ましい。また、当該モリブデン含有量は、Mo換算で、0.001質量%以上22質量%以下であるとより好ましく、0.01質量%以上20質量%以下であるとさらに好ましく、0.01質量%以上15質量%以下であると特に好ましく、0.1質量%以上10質量%以下であるとより特に好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であるとさらに特に好ましく、1質量%以上5質量%以下であるとまた特に好ましい。
【0049】
選択された前記金属酸リチウム分散液がタングステン酸リチウム分散液の場合、タングステン含有量が、W換算で23質量%以下であると、溶媒、とりわけ水への分散性及び溶解性が向上する点で好ましい。また、当該タングステン含有量は、W換算で、0.001質量%以上23質量%以下であるとより好ましく、0.01質量%以上20質量%以下であるとさらに好ましく、0.01質量%以上15質量%以下であると特に好ましく、0.1質量%以上10質量%以下であるとより特に好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であるとさらに特に好ましく、1質量%以上5質量%以下であるとまた特に好ましい。
【0050】
ここで、本発明の金属酸リチウム混合液中のニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、及びリチウム含有量は、当該混合液を必要に応じて希塩酸で適度に希釈し、ICP発光分析(アジレント・テクノロジー社製:AG-5110)を用いて、JIS K0116:2014に準拠し、Nb換算のNb質量分率、Ta換算のTa質量分率、Mo換算のMo質量分率、W換算のW質量分率、及びLi換算のLi質量分率を測定して算出する。本発明の金属酸リチウム混合液中のニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、及びリチウムの質量分率を特定することにより、本発明の金属酸リチウム混合液に含まれる金属酸リチウム混合液リチウムのリチウム(Li)と、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)からなる群より選択される2種以上の金属の総質量分率(H)を特定することができる。
【0051】
本発明の金属酸リチウム混合液中のニオブ及びタンタルと、ニオブ、タンタル、モリブデン、及びタングステンとのモル比Nb+Ta/Nb+Ta+Mo+Wは、0.001~0.999であると好ましい。当該モル比Nb+Ta/Nb+Ta+Mo+Wは、0.01~0.999であるとより好ましく、0.1~0.999であるとさらに好ましく、0.25~0.999であると特に好ましく、0.5~0.999であるとより特に好ましく、0.75~0.999であるとさらに特に好ましく、0.8~0.999であるとまた特に好ましく、0.9~0.999であると殊更好ましい。
【0052】
また、本発明の金属酸リチウム混合液は、前記金属酸リチウム混合液中のニオブ、タンタル、モリブデン、及びタングステンの総含有量が、前記金属酸リチウム混合液を100質量%としたとき、メタル換算で0.001質量%以上50質量%以下である。
本発明の金属酸リチウム混合液は、上述したICP発光分析(アジレント・テクノロジー社製:AG-5110)を用いて算出されたニオブ含有量、タンタル含有量、モリブデン含有量、及びタングステン含有量の総含有量が、前記金属酸リチウム混合液を100質量%としたとき、メタル換算、すなわちNb換算、Ta換算、Mo換算、及びW換算で0.001質量%以上50質量%以下であると、良好な金属酸リチウム膜を形成できる点で好ましい。また、当該総含有量が、前記金属酸リチウム混合液を100質量%としたとき、メタル換算で0.1質量%以上であるとより好ましく、1質量%以上であるとさらに好ましく、3質量%以上であると特に好ましい。一方、当該総含有量は、前記金属酸リチウム混合液を100質量%としたとき、40質量%以下であるとより好ましく、30質量%以下であるとさらに好ましく、20質量%以下であると特に好ましい。
【0053】
また、本発明の金属酸リチウム混合液は、前記金属酸リチウム混合液のpHが8以上であることを特徴とする。
本発明の金属酸リチウム混合液のpHが8以上であると、当該混合液中に含まれるポリ酸イオンが安定する点で好ましい。また、本発明の金属酸リチウム混合液のpHが9以上であるとより好ましく、10以上であるとさらに好ましく、10.5以上であると特に好ましい。また、本発明の金属酸リチウム混合液のpHが11以上14以下であってもよく、12以上14以下であってもよく、13以上14以下であってもよい。なお、本発明の金属酸リチウム混合液中に有機酸が含まれるとpHを低下させる点においても、有機酸が含まれないことが好ましい。また、本明細書において、特段の説明がない限り、「pH」は、生成された直後に液温25℃に調整した本発明の金属酸リチウム混合液の「初期pH」、及び室温25℃に設定した恒温器内で、本発明の金属酸リチウム混合液が生成された日から1カ月静置した後の金属酸リチウム混合液の「経時pH」の両方を含むものである。また、本発明の金属酸リチウム混合液の「pH」は、「初期pH」と「経時pH」との経時変動幅が小さければ、本発明の金属酸リチウム混合液が生成された日から1カ月以上静置した後の金属酸リチウム混合液のpHは、「経時pH」との経時変動幅も小さいと推察される。
【0054】
ここで、本発明の金属酸リチウム混合液のpHの測定は、本発明の金属酸リチウム混合液にpHメータ(HORIBA製:ガラス電極式水素イオン濃度指示器 D-51)の電極(HORIBA製:スタンダード ToupH 電極 9615S-10D)を浸漬し、液温が25℃に安定したことを確認した後、実施する。
【0055】
また、本発明の金属酸リチウム混合液は、添加物として、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sn、Sr、Zr、Hf、Ba、La、Yなどの化合物を含有してもよい。ここで、化合物とは、例えば酸化物、金属酸アルカリ金属塩、金属酸アルカリ土類金属塩、塩化物、金属酸アルコキシド、ポリオキソメタレート等が挙げられる。また、本発明の金属酸リチウム混合液における添加物の含有量は、添加物である各元素の総含有mol数をXとしたとき、ニオブ、タンタル、タンタル、及びタングステンの総モル数(M)に対する添加物である各元素の総モル数(X)のモル比X/Mは、0.0002~0.8が好ましい。また、当該モル比X/Mは、0.01~0.5であってもよく、0.1~0.4であってもよく、0.2~0.3であってもよい。さらに、本発明の金属酸リチウム混合液は、均一な溶液であることから、これらの化合物が懸濁状態であっても、均一性の向上、反応性(反応率)の向上が見込まれるからである。また、これらの化合物が本発明の金属酸リチウム混合液に溶解し、均一な溶液となれば、複合化元素が最も反応性が良好な状態にすることができる。
【0056】
さらに、本発明の金属酸リチウム混合液は、その作用効果を阻害しない範囲で、ニオブ乃至ニオブ酸、タンタル乃至タンタル酸、モリブデン乃至モリブデン酸、タングステン乃至タングステン酸に由来する成分や、アンモニア、過酸化水素、及び有機窒素化合物に由来する成分以外の成分(「他成分」という。)を含有してもよい。他成分としては、例えばNa、Mg、Al、Si、K、Ca、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sn、Sr、Zr、Hf、Ba、La、Yなどが挙げられる。但し、これらに限定するものではない。本発明の金属酸リチウム混合液を100質量%としたとき、他成分の含有量は、5質量%以下であるのが好ましく、4質量%以下であるのがより好ましく、3質量%以下であるとさらに好ましい。なお、本発明の金属酸リチウム混合液は、意図したものではなく、不可避不純物を含むことが想定される。不可避不純物の含有量は0.01質量%以下であるのが好ましい。
【0057】
本発明の金属酸リチウム膜は、上述した本発明の金属酸リチウム混合液中の金属酸リチウム塩を含有することを特徴とする。
本発明の金属酸リチウム膜は、本発明の金属酸リチウム混合液を基材の表面に塗布した後、真空乾燥して得られる乾燥膜と、得られた乾燥膜を焼成することにより得られる焼成膜とを包含する。また、本発明の金属酸リチウム膜は、本発明の金属酸リチウム混合液を真空乾燥や、焼成することによって生じる、結晶構造等の物性の異なる金属酸リチウム膜も包含する。なお、本発明の金属酸リチウム膜の製造方法は、後述する。
【0058】
上述した本発明の金属酸リチウム混合液は、リチウムイオン二次電池用正極の被覆用であることを特徴とする。
本発明の金属酸リチウム混合液は、室温(25℃)で1カ月静置した後の当該混合液の状態を目視観察する経時安定性試験、及び動的光散乱法により当該混合液中の粒子の経時粒子径(D50)を測定した結果に加えて、リチウムイオン二次電池用正極の集電板の代替品としたガラス基板上に塗布し、その塗膜の状態を光学顕微鏡にて観察する成膜性試験の結果より、本発明の金属酸リチウム混合液は、リチウムイオン二次電池用正極、或いは正極材を被覆するものとして好適である。
【0059】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、上述した本発明の金属酸リチウム混合液に含まれる金属酸リチウム塩でその表面が被覆されていることを特徴とする。
本発明の金属酸リチウム混合液によるリチウムイオン二次電池用正極活物質の粒子表面の被覆状態を走査電子顕微鏡にて観察する被覆観察を行うことにより、当該正極活物質の表面が金属酸リチウム塩により被覆されていることを確認することができる。また、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の表面を被覆する金属酸リチウム塩の被覆量は、当該リチウムイオン二次電池用正極活物質を適量のフッ化水素酸に溶解し、ICP発光分析(アジレント・テクノロジー社製:AG-5110)を用いて、JIS K0116:2014に準拠し、当該正極活物質の粒子表面を被覆する金属酸リチウム塩のニオブ、タンタル、モリブデン、及びタングステン質量分率含有量を測定することによって算出することができる。具体的には、(ニオブ、タンタル、モリブデン、及びタングステン質量の総和/表面が被覆された正極活物質)×100にて、算出される。本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の表面を被覆する金属酸リチウム塩の被覆量は、質量分率含有量として表すことができる。当該質量分率含有量は、0.001%以上5%以下が好ましい。当該質量分率含有量は、0.01%~3%であってもよく、0.1%~1%であってもよい。
【0060】
本発明のリチウムイオン二次電池は、上述した本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質が被覆した正極を有することを特徴とする。
本発明の金属酸リチウム混合液により被覆された正極活物質は、上述したようにリチウムイオン二次電池用正極の表面を被覆するものとして、好適であるから、本発明の金属酸リチウム混合液により被覆された正極活物質を正極の表面に被覆させることにより、リチウムイオン二次電池としての性能向上が図れる。
【0061】
本発明の金属酸リチウム粉末は、上述した本発明の金属酸リチウム混合液に含まれる金属酸リチウム粒子を含有することを特徴とする。
本発明の金属酸リチウム粉末は、本発明の金属酸リチウム混合液を真空乾燥して得られる乾燥粉末と、得られた乾燥粉末を焼成することにより得られる焼成粉末を包含する。また、本発明の金属酸リチウム粉末は、本発明の金属酸リチウム混合液を真空乾燥や、焼成することによって生じる、結晶構造等の物性の異なる金属酸リチウム粉末も包含する。なお、本発明の金属酸リチウム粉末の製造方法は、後述する。
【0062】
上述した本発明の金属酸リチウム混合液の製造方法について、以下説明する。
【0063】
本発明の金属酸リチウム混合液の製造方法は、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステンからなる群より選択される2種以上の金属酸リチウム分散液を混合する工程を有することを特徴とする。
後述する各金属酸リチウム分散液の製造方法により、生成されたニオブ、タンタル、モリブデン、タングステンからなる群より選択される2種以上の金属酸リチウム分散液を所定の割合となるように秤量し、それらを混合し、5分間撹拌することにより、本発明の金属酸リチウム混合液が得られる。
【0064】
また、本発明の金属酸リチウム混合液の製造方法は、前記金属酸リチウム分散液は、ニオブ、タンタル、タングステンからなる群より選択された金属を含有する酸性水溶液を、アルカリ性水溶液に添加することにより、前記金属を含有する沈殿物スラリーを生成し、前記沈殿物スラリーと、水酸化リチウムと、純水とを混合することにより、生成された金属酸リチウム分散液であることを特徴とする。
【0065】
ここで、本発明の金属酸リチウム混合液の製造方法で用いられる各金属酸リチウム分散液の内、ニオブ酸リチウム分散液の製造方法について、以下説明する。
【0066】
ニオブ酸リチウム分散液の製造方法は、ニオブを含有する酸性ニオブ溶液を生成する工程と、前記酸性ニオブ溶液をアンモニア水に添加する逆中和法によりニオブを含有する沈殿スラリーを得る工程と、得られた前記ニオブを含有する沈殿スラリーと水酸化リチウム及び純水とを混合した混合物を撹拌しながら20℃~100℃で保持し、ニオブ酸リチウム分散液を得る工程と、を有する。
【0067】
ニオブを含有する酸性ニオブ溶液を生成する工程において、酸性ニオブ溶液は、ニオブがフッ化水素酸を含む酸性溶液に溶解した溶解液を溶媒抽出することにより得られたフッ化物イオンを含有する酸性ニオブ溶液をいう。
【0068】
ここで、フッ化物イオンを含有する酸性ニオブ溶液、例えばフッ化ニオブ水溶液は、水(例えば純水)を加えてニオブをNb2O5換算で1~100g/L含有するように調整すると好ましい。この際、ニオブ濃度がNb2O5換算で1g/L以上であると、水に溶けやすいニオブ酸化合物水和物となることから好ましく、生産性を考えた場合、10g/L以上がより好ましく、20g/L以上であるとさらに好ましい。他方、ニオブ濃度がNb2O5換算で100g/L以下であれば、水に溶けやすいニオブ酸化合物水和物になることから好ましく、より確実に水に溶けやすいニオブ酸化合物水和物を合成するには、90g/L以下であるとより好ましく、80g/L以下であるとさらに好ましく、70g/L以下であると特に好ましい。なお、フッ化ニオブ水溶液のpHは、ニオブ乃至ニオブ酸化物を完全溶解させる観点から、2以下であると好ましく、1以下であるとより好ましい。
【0069】
次に、前記酸性ニオブ溶液をアンモニア水に添加する逆中和法によりニオブを含有する沈殿スラリーを得る工程(以下、逆中和工程という。)では、フッ化物イオンを含有する酸性ニオブ溶液を所定含有量のアンモニア水中に添加、すなわち逆中和法により、ニオブを含有する沈殿スラリーを得るのが好ましい。
【0070】
逆中和に用いるアンモニア水のアンモニア含有量は10質量%~30質量%であると好ましい。当該アンモニア含有量が10質量%であると、ニオブが溶け残りにくくなり、ニオブ乃至ニオブ酸を水に完全に溶解させることができる。他方、当該アンモニア含有量が30質量%以下であると、アンモニアの飽和水溶液付近であるから好ましい。
【0071】
かかる観点から、アンモニア水のアンモニア含有量は10質量%以上であると好ましく、15質量%以上であるとより好ましく、20質量%以上であるとさらに好ましく、25質量%であると特に好ましい。他方、当該アンモニア含有量は30質量%以下であると好ましく、29質量%以下であるとより好ましく、28質量%以下であるとさらに好ましい。
【0072】
逆中和工程の際、アンモニア水に添加するフッ化ニオブ水溶液の添加量は、NH3/Nb2O5のモル比が95以上500以下とするのが好ましく、100以上450以下とするのがより好ましく、110以上400以下とするのがさらに好ましい。また、アンモニア水に添加するフッ化ニオブ水溶液の添加量は、アミンや薄いアンモニア水に溶けるニオブ酸化合物が生成する観点から、NH3/HFのモル比が3.0以上とするのが好ましく、4.0以上とするとより好ましく、5.0以上とするとさらに好ましい。他方、コスト低減の観点から、NH3/HFのモル比が100以下とするのが好ましく、50以上とするとより好ましく、40以上とするとさらに好ましい。
【0073】
逆中和工程において、フッ化ニオブ水溶液のアンモニア水への添加に係る時間は、1分以内であると好ましく、30秒以内であるとより好ましく、10秒以内であるとさらに好ましい。すなわち、時間をかけて徐々にフッ化ニオブ水溶液を添加するのではなく、例えば一気に投入するなど、出来るだけ短い時間でアンモニア水へ投入し、中和反応させると好適である。また、逆中和工程では、アルカリ性のアンモニア水へ、酸性のフッ化ニオブ水溶液を添加することから、高いpHを保持したまま中和反応させることができる。なお、フッ化ニオブ水溶液及びアンモニア水は、常温のまま用いることができる。
【0074】
また、ニオブ酸リチウム分散液の製造方法は、逆中和法により得られたニオブを含有する沈殿スラリーからフッ化物イオンを除去し、フッ化物イオンが除去されたニオブ含有沈殿物を得る工程を有する。逆中和法により得られたニオブを含有する沈殿スラリーには、不純物として、フッ化アンモニウムなどのフッ素化合物が存在するため、これらを除去することが好ましい。
【0075】
フッ素化合物の除去方法は任意であるが、例えばアンモニア水や純水を用いた逆浸透ろ過、限外ろ過、精密ろ過などの膜を用いたろ過による方法や、遠心分離、その他の公知の方法を採用することができる。なお、ニオブを含有する沈殿スラリーからフッ化物イオンを除去する際、温度調節は特に必要なく、常温で実施してもよい。
【0076】
具体的には、逆中和法により得られたニオブを含有する沈殿スラリーを、遠心分離機を用いてデカンテーションし、遊離したフッ化物イオン量が100mg/L以下になるまで洗浄を繰り返すことにより、フッ化物イオンが除去されたニオブ含有沈殿物が得らえる。
【0077】
フッ化物イオンの除去に用いられる洗浄液はアンモニア水であると好適である。具体的には、5.0質量%以下のアンモニア水が好ましく、4.0質量%以下のアンモニア水がより好ましく、3.0質量%以下のアンモニア水がさらに好ましく、2.5質量%のアンモニア水が特に好ましい。5.0質量%以下のアンモニア水であると、アンモニウムイオンを含むアンモニアがフッ化物イオンに対して適切であり不要なコストの増加を回避することができる。
【0078】
このようにして、得られたフッ化物イオンが除去されたニオブ含有沈殿物を純水などで希釈することにより、フッ化物イオンが除去された、ニオブを含有する沈殿スラリーが得られる。なお、当該ニオブを含有する沈殿スラリーのニオブ含有量は、当該スラリーの一部を採取し、110℃で24時間乾燥させた後、1,000℃で4時間焼成し、Nb2O5を生成する。このように生成したNb2O5の重量を測定し、その重量から当該スラリーのニオブ含有量を算出することができる。
【0079】
そして、フッ化物イオンが除去された、前記ニオブを含有する沈殿スラリーと水酸化リチウム一水和物とを混合した混合物を撹拌しながら50℃~100℃で保持することにより、ニオブ酸リチウム分散液が得られる。
【0080】
具体的には、最終的な混合物のニオブ含有量がNb換算で0.001質量%以上20質量%以下、且つリチウムとニオブのモル比Li/Nbが0.8以上2.0以下となるように、得られた前記ニオブを含有する沈殿スラリーを、水酸化リチウム一水和物と混合することにより、半透明白色スラリーが得られる。当該半透明白色スラリーを撹拌しながら、液温を50℃~100℃(例えば、70℃)に1時間~24時間保持することにより、無色透明なニオブ酸リチウム分散液が得られる。さらに、得られたニオブ酸リチウム分散液を室温まで放冷してもよい。また、得られたニオブ酸リチウム分散液に含まれるアンモニア成分を除去するために、以下の濃度調節工程を行ってもよい。濃度調節工程では、例えば60℃~90℃で蒸発分の溶媒(純水等)を加えながら、1時間~100時間加熱撹拌した後、室温まで冷却する。または、60℃~90℃で1時間~100時間加熱撹拌した後、室温まで冷却する。その後、蒸発した溶媒(純水等)を補給するため、溶媒(純水等)を添加する。当該溶媒の添加量は、アンモニア成分を除去した後のニオブ酸リチウム分散液のニオブ含有量が、アンモニア成分を除去する前のニオブ酸リチウム分散液のニオブ含有量と一致するように調節する。
【0081】
また、前記ニオブを含有する沈殿スラリーと水酸化リチウム一水和物とを混合した混合物に、純水や、アルカリ性水溶液、例えばアンモニア水を添加して、混合してもよい。当該混合物に、添加されるアンモニア水のアンモニア含有量は、任意の含有量であればよい。例えば、0.1質量%以上30質量%以下であればよく、10質量%以上25質量%以下であればよい。
【0082】
上述した製造方法により、得られたニオブ酸リチウム分散液のpHが9以上であると、安定する点で好ましい。さらに、当該ニオブ酸リチウム分散液のpHが10以上であるとより好ましく、10.5以上であるとさらに好ましく、11以上であると特に好ましい。
【0083】
また、本発明の金属酸リチウム混合液の製造方法で用いられる各金属酸リチウム分散液の内、タンタル酸リチウム分散液の製造方法について、以下説明する。
【0084】
タンタル酸リチウム分散液の製造方法は、過酸化水素を、フッ化タンタル水溶液に添加し、タンタル化合物水溶液を生成する反応工程と、前記タンタル化合物水溶液を、アルカリ性水溶液に添加し、タンタル含有沈殿物を生成する逆中和工程と、生成されたタンタル酸含有沈殿物とリチウムの水酸化物及び純水とを混合した混合物を撹拌しながら20℃~100℃で保持し、タンタル酸リチウム分散液を得る工程と、を有する。
【0085】
先ず、フッ化タンタル水溶液は、タンタル、タンタル酸化物又は水酸化タンタルを、フッ化水素酸水溶液などのフッ酸(HF)と反応させてフッ化タンタル(H2TaF7)とし、これを水に溶解して作製することができる。
【0086】
ここで、フッ化物イオンを含有する酸性タンタル溶液、例えばフッ化タンタル水溶液は、水(例えば純水)を加えてタンタルをTa2O5換算で1~100g/L含有するように調整すると好ましい。この際、タンタル濃度がTa2O5換算で1g/L以上であると、水に溶けやすいタンタル酸化合物水和物となることから好ましく、生産性を考えた場合、10g/L以上がより好ましく、20g/L以上であるとさらに好ましい。他方、タンタル濃度がTa2O5換算で100g/L以下であれば、水に溶けやすいタンタル酸化合物水和物になることから好ましく、より確実に水に溶けやすいタンタル酸化合物水和物を合成するには、90g/L以下であるとより好ましく、80g/L以下であるとさらに好ましく、70g/L以下であると特に好ましい。なお、フッ化タンタル水溶液のpHは、タンタル乃至タンタル酸化物を完全溶解させる観点から、2以下であると好ましく、1以下であるとより好ましい。
【0087】
次に、過酸化水素を、フッ化タンタル水溶液に添加し、タンタル化合物水溶液を生成する反応工程では、過酸化水素水をフッ化タンタル水溶液に添加して、混合することにより、タンタル化合物水溶液が得られる。なお、得られたタンタル化合物水溶液の少なくとも一部は、ペルオキソ錯体を形成していると推測する。
【0088】
ここで、フッ化タンタル水溶液に添加される過酸化水素水の過酸化水素含有量は、0.5質量%~35質量%であると好ましい。また、過酸化水素は、過酸化水素とタンタルとのモル比H2O2/Taが0.6以上1.5以下となるように添加すると好ましく、過酸化水素が混合中に分解する可能性があることから、0.7以上1.2以下であるとより好ましい。
【0089】
得られたタンタル化合物水溶液を、アルカリ性水溶液に添加し、タンタル酸含有沈殿物を生成する逆中和工程では、タンタル化合物水溶液を、アルカリ性水溶液、例えばアンモニア水に添加、すなわち逆中和法により、タンタルを含有する沈殿スラリーが得られる。そして、得られたタンタルを含有する沈殿スラリーからフッ化物イオンを除去することにより、フッ化物イオンが除去されたタンタル含有沈殿物が得られる。
【0090】
逆中和に用いるアンモニア水のアンモニア含有量は10質量%~30質量%であると好ましい。当該アンモニア含有量が10質量%であると、タンタルが溶け残りにくくなり、タンタル乃至タンタル酸を水に完全に溶解させることができる。他方、当該アンモニア含有量が30質量%以下であると、アンモニアの飽和水溶液付近であるから好ましい。
【0091】
かかる観点から、アンモニア水のアンモニア含有量は10質量%以上であると好ましく、15質量%以上であるとより好ましく、20質量%以上であるとさらに好ましく、25質量%以上であると特に好ましい。他方、当該アンモニア含有量は30質量%以下であると好ましく、29質量%以下であるとより好ましく、28質量%以下であるとさらに好ましい。
【0092】
逆中和工程の際、アンモニア水に添加するフッ化タンタル水溶液の添加量は、NH3/Taのモル比が95以上500以下とするのが好ましく、100以上450以下とするのがより好ましく、110以上400以下とするのがさらに好ましい。また、アンモニア水に添加するフッ化タンタル水溶液の添加量は、アミンや薄いアンモニア水に溶けるタンタル酸化合物が生成する観点から、NH3/HFのモル比が3.0以上とするのが好ましく、4.0以上とするとより好ましく、5.0以上とするとさらに好ましい。他方、コスト低減の観点から、NH3/HFのモル比が100以下とするのが好ましく、50以下とするとより好ましく、40以下とするとさらに好ましい。
【0093】
逆中和工程において、フッ化タンタル水溶液のアンモニア水への添加に係る時間は、10分以内であると好ましく、8分以内であるとより好ましく、5分以内であるとさらに好ましい。すなわち、時間をかけて徐々にフッ化タンタル水溶液を添加するのではなく、例えば一気に投入するなど、出来るだけ短い時間でアンモニア水へ投入し、中和反応させると好適である。また、逆中和工程では、アルカリ性のアンモニア水へ、酸性のフッ化タンタル水溶液を添加することから、高いpHを保持したまま中和反応させることができる。なお、フッ化タンタル水溶液及びアンモニア水は、常温のまま用いることができる。
【0094】
そして、逆中和工程では、逆中和法により得られたタンタルを含有する沈殿スラリーからフッ化物イオンを除去することにより、フッ化物イオンが除去されたタンタル含有沈殿物を得ることができる。逆中和法により得られたタンタルを含有する沈殿スラリーには、不純物として、フッ化アンモニウムなどのフッ素化合物が存在するため、これらを除去することが好ましい。
【0095】
フッ素化合物の除去方法は任意であるが、例えばアンモニア水や純水を用いた逆浸透ろ過、限外ろ過、精密ろ過などの膜を用いたろ過による方法や、遠心分離、その他の公知の方法を採用することができる。なお、タンタルを含有する沈殿スラリーからフッ化物イオンを除去する際、温度調節は特に必要なく、常温で実施することが可能である。
【0096】
具体的には、逆中和法により得られたタンタルを含有する沈殿スラリーを、遠心分離機を用いてデカンテーションし、遊離したフッ化物イオン量が100mg/L以下になるまで洗浄を繰り返すことにより、フッ化物イオンが除去されたタンタル含有沈殿物が得られる。なお、当該洗浄を繰り返すことにより、反応工程で、添加された過酸化水素も除去される。
【0097】
フッ化物イオンの除去に用いられる洗浄液はアンモニア水であると好適である。具体的には、1質量%以上35質量%以下のアンモニア水が好ましい。このようなアンモニア水であると、アンモニウムイオンを含むアンモニアがフッ化物イオンに対して適切であり不要なコストの増加を回避することができる。
【0098】
上述した反応工程、及び逆中和工程を経て、生成されたフッ化物イオンが除去されたタンタル含有沈殿物を純水などで希釈することにより、フッ化物イオンが除去された、タンタル含有沈殿スラリーが得られる。そして、フッ化物イオンが除去された、タンタル含有沈殿スラリーと、リチウムの水酸化物である水酸化リチウム一水和物と、純水とを混合した混合物を撹拌しながら5℃~100℃で、0.1時間~72時間保持することにより、タンタル酸リチウム分散液が得られる。
【0099】
具体的には、最終的な混合物のタンタル含有量がTa換算で0.001質量%以上12質量%以下、且つリチウムとタンタルのモル比Li/Taが0.8以上1.5以下となるように、得られたタンタル含有沈殿スラリーと、水酸化リチウム一水和物と、純水と混合し、撹拌することにより、タンタル酸リチウム分散液が得られる。また、得られたタンタル酸リチウム分散液に含まれるアンモニア成分を除去するために、以下の濃度調節工程を行ってもよい。濃度調節工程では、例えば60℃~90℃で蒸発分の溶媒(純水等)を加えながら、1時間~100時間加熱撹拌した後、室温まで冷却する。または、60℃~90℃で1時間~100時間加熱撹拌した後、室温まで冷却する。その後、蒸発した溶媒(純水等)を補給するため、溶媒(純水等)を添加する。当該溶媒の添加量は、アンモニア成分を除去した後のタンタル酸リチウム分散液のタンタル含有量が、アンモニア成分を除去する前のタンタル酸リチウム分散液のタンタル含有量と一致するように調節する。
【0100】
本発明の金属酸リチウム混合液の製造方法で用いられる各金属酸リチウム分散液の内、タングステン酸リチウム分散液の製造方法について、以下説明する。
【0101】
タングステン酸リチウム分散液の製造方法は、パラタングステン酸アンモニウムと、リチウムの水酸化物及び純水とを混合した混合物を撹拌しながら20℃~100℃で保持し、タングステン酸リチウム分散液を得る工程を有する。
【0102】
パラタングステン酸アンモニウムと、リチウムの水酸化物である水酸化リチウム一水和物と、純水とを混合した混合物を撹拌しながら15℃~100℃で、5分間~1時間保持することにより、タングステン酸リチウム分散液が得られる。また、得られたタングステン酸リチウム分散液に含まれるアンモニア成分を除去するために、以下の濃度調節工程を行ってもよい。濃度調節工程では、例えば60℃~90℃で蒸発分の溶媒(純水等)を加えながら、1時間~100時間加熱撹拌した後、室温まで冷却する。または、60℃~90℃で1時間~100時間加熱撹拌した後、室温まで冷却する。その後、蒸発した溶媒(純水等)を補給するため、溶媒(純水等)を添加する。当該溶媒の添加量は、アンモニア成分を除去した後のタングステン酸リチウム分散液のタングステン含有量が、アンモニア成分を除去する前のタングステン酸リチウム分散液のタングステン含有量と一致するように調節する。
【0103】
また、タングステン酸リチウム分散液の製造方法の別例として、タングステンをWO3換算で、1~100g/L含有する酸性タングステン水溶液を、10~30質量%アンモニア水溶液に添加し、タングステン含有沈殿を生成する工程と、前記タングステン含有沈殿をスラリー状としたタングステン含有沈殿スラリーに、有機窒素化合物を添加し、タングステン酸分散液を生成する工程と、前記タングステン酸分散液に、水酸化リチウム及び純水を添加し、タングステン酸リチウム分散液を生成する工程と、を有する製造方法が挙げられる。
【0104】
具体的には、タングステンをWO3換算で、1~100g/L含有する酸性タングステン水溶液を、10~30質量%アンモニア水溶液に添加し、タングステン含有沈殿を生成する工程において、酸性タングステン水溶液は、タングステンが硫酸を含む酸性水溶液に溶解した溶解液を溶媒抽出することにより得られた硫酸タングステン水溶液をいう。
【0105】
ここで、硫酸タングステン水溶液は、水(例えば純水)を加えてタングステンをWO3換算で1~100g/L含有するように調整すると好ましい。この際、タングステン濃度がWO3換算で1g/L以上であると、水に溶けやすいタングステン酸化合物水和物となることから好ましく、生産性を考えた場合、10g/L以上がより好ましく、20g/L以上であるとさらに好ましい。他方、タングステン濃度がWO3換算で100g/L以下であれば、水に溶けやすいタングステン酸化合物水和物になることから好ましく、より確実に水に溶けやすいタングステン酸化合物水和物を合成するには、90g/L以下であるとより好ましく、80g/L以下であるとさらに好ましく、70g/L以下であると特に好ましい。なお、硫酸タングステン水溶液のpHは、タングステン乃至タングステン酸化物を完全溶解させる観点から、2以下であると好ましく、1以下であるとより好ましい。
【0106】
硫酸タングステン水溶液をアンモニア水溶液に添加する際、いわゆる逆中和法では、硫酸タングステン水溶液を10質量%~30質量%のアンモニア水溶液中に添加し、すなわち逆中和法により、タングステン酸化合物水和物のスラリー、いわゆるタングステン含有沈殿物のスラリーを得るのが好ましい。
【0107】
逆中和に用いるアンモニア水溶液のアンモニア含有量は10質量%~30質量%であると好ましい。当該アンモニア含有量が10質量%であると、タングステンが溶け残りにくくなり、タングステン乃至タングステン酸化物を水に完全に溶解させることができる。他方、当該アンモニア含有量が30質量%以下であると、アンモニアの飽和水溶液付近であるから好ましい。
【0108】
かかる観点から、アンモニア水溶液のアンモニア含有量は10質量%以上であると好ましく、15質量%以上であるとより好ましく、20質量%以上であるとさらに好ましく、25質量%であると特に好ましい。他方、当該アンモニア含有量は30質量%以下であると好ましく、29質量%以下であるとより好ましく、28質量%以下であるとさらに好ましい。
【0109】
逆中和の際、アンモニア水に添加する硫酸タングステン水溶液の添加量は、NH3/WO3のモル比が0.1以上300以下とするのが好ましく、5以上200以下とするのがより好ましい。また、アンモニア水に添加する硫酸タングステン水溶液は、アミンや薄いアンモニア水に溶けるタングステン酸化合物が生成する観点から、NH3/SO4
2-のモル比が3.0以上とするのが好ましく、10.0以上とするとより好ましく、20.0以上とするとさらに好ましい。他方、コスト低減の観点から、NH3/SO4
2-のモル比が200以下とするのが好ましく、150以下とするとより好ましく、100以下とするとさらに好ましい。
【0110】
逆中和において、硫酸タングステン水溶液のアンモニア水への添加に係る時間は、1分以内であると好ましく、30秒以内であるとより好ましく、10秒以内であるとさらに好ましい。すなわち、時間をかけて徐々に硫酸タングステン水溶液を添加するのではなく、例えば一気に投入するなど、出来るだけ短い時間でアンモニア水へ投入し、中和反応させると好適である。また、逆中和では、アルカリ性のアンモニア水へ、酸性の硫酸タングステン水溶液を添加することから、高いpHを保持したまま中和反応させることができる。なお、硫酸タングステン水溶液及びアンモニア水は、常温のまま用いることができる。
【0111】
そして、逆中和法により得られたタングステン含有沈殿物のスラリーから硫黄分を除去し、硫黄分が除去されたタングステン含有沈殿を生成する。逆中和法により得られたタングステン含有沈殿物のスラリーには、不純物として、タングステン乃至タングステン酸化物と反応せず残った硫酸イオン、及び硫酸水素イオンの硫黄分が存在するため、これらを除去することが好ましい。
【0112】
硫黄分の除去方法は任意であるが、例えばアンモニア水や純水を用いた逆浸透ろ過、限外ろ過、精密ろ過などの膜を用いたろ過による方法や、遠心分離、その他の公知の方法を採用することができる。なお、タングステン含有沈殿物のスラリーから硫黄分を除去する際、温度調節は特に必要なく、常温で実施してもよい。
【0113】
具体的には、逆中和法により得られたタングステン含有沈殿物のスラリーを、遠心分離機を用いてデカンテーションし、タングステン含有沈殿物のスラリーの導電率が500μS/cm以下になるまで洗浄を繰り返すことにより、硫黄分が除去されたタングステン含有沈殿物が得られる。当該導電率は、タングステン含有沈殿物のスラリーの液温を25℃に調整し、導電率計(アズワン社製:ASCON2)の測定部を当該沈殿物のスラリーの上澄み液に浸漬され、導電率の値が安定してから、その数値を読み取った。
【0114】
硫黄分の除去に用いられる洗浄液はアンモニア水であると好適である。具体的には、5.0質量%以下のアンモニア水が好ましく、4.0質量%以下のアンモニア水がより好ましく、3.0質量%以下のアンモニア水がさらに好ましく、2.5質量%のアンモニア水が特に好ましい。5.0質量%以下のアンモニア水であると、アンモニウムイオンを含むアンモニアが硫黄分に対して適切であり不要なコストの増加を回避することができる。
【0115】
次に、前記タングステン含有沈殿をスラリー状としたタングステン含有沈殿スラリーに有機窒素化合物を添加し、タングステン酸分散液を生成する工程において、タングステン含有沈殿スラリーは、上述したように硫黄分が除去されたタングステン含有沈殿を純水などで希釈し、スラリー状としたものである。なお、硫黄分が除去された、タングステン含有沈殿スラリーのタングステン含有量は、当該スラリーの一部を採取し、110℃で24時間乾燥させた後、1,000℃で4時間焼成し、WO3を生成する。このように生成したWO3の重量を測定し、その重量から当該スラリーのタングステン含有量を算出することができる。
【0116】
そして、硫黄分が除去されたタングステン含有沈殿スラリーに有機窒素化合物を混合することにより、タングステン酸分散液が得られる。
【0117】
具体的には、最終的な混合物のタングステン含有量がWO3換算で0.1質量%以上40質量%以下となるように、得られたタングステン含有沈殿スラリーを、有機窒素化合物に加え、純水と混合し、当該混合物を撹拌しながら、液温を室温(25℃)に1時間保持することにより、無色透明なタングステン酸分散液が得られる。
【0118】
タングステン含有沈殿スラリーと混合する有機窒素化合物は、脂肪族アミン、およびまたは、4級アンモニウムであると好ましい。
【0119】
ここで、脂肪族アミンは、溶解性の観点から、タングステン含有沈殿スラリー中の脂肪族アミン含有量が40質量%以下になるように混合するのが好ましく、0.1質量%以上30質量%以下であるとより好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であるとさらに好ましく、1質量%以上10質量%以下であると特に好ましい。なお、脂肪族アミンは、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、又はそれらの混合物であるとより好ましい。
【0120】
他方、4級アンモニウムは、溶解性の観点から、タングステン含有沈殿スラリー中の4級アンモニウム含有量が40質量%以下になるように混合するのが好ましく、0.1質量%以上30質量%以下であるとより好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であるとさらに好ましく、1質量%以上10質量%以下であると特に好ましいなお、4級アンモニウムは、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、又は水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)であるとより好ましい。
【0121】
さらに、タングステン含有沈殿スラリーと混合する有機窒素化合物は、脂肪族アミン、または4級アンモニウムの何れかの1種ではなく、2種以上を混合したものでもよい。例えば、メチルアミン及び水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、ジメチルアミン及び水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、メチルアミン及びジメチルアミンのように2種以上の有機窒素化合物を混合したものや、メチルアミン、ジメチルアミン及び水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)のように3種以上の有機窒素化合物を混合したものが挙げられ、用途に合わせて適宜変更してもよい。
【0122】
このようにして生成されたタングステン酸分散液と、水酸化リチウム一水和物と、純水とを、最終的な混合物中のリチウムとタングステンのモル比Li/Wが0.2以上20以下となるように秤量し、それらを混合した混合物を撹拌しながら10℃~100℃で、1分間~3日間保持することにより、タングステン酸リチウム分散液が得られる。
【0123】
具体的には、最終的な混合物のタングステン含有量がW換算で0.001質量%以上23質量%以下、且つリチウムとタングステンのモル比Li/Wが0.001以上5以下となるように、タングステン酸分散液と、水酸化リチウム一水和物と、純水とを混合し、撹拌することにより、タングステン酸リチウム分散液が得られる。また、得られたタングステン酸リチウム分散液に含まれるアンモニア成分を除去するために、以下の濃度調節工程を行ってもよい。濃度調節工程では、例えば60℃~90℃で蒸発分の溶媒(純水等)を加えながら、1時間~100時間加熱撹拌した後、室温まで冷却する。または、60℃~90℃で1時間~100時間加熱撹拌した後、室温まで冷却する。その後、蒸発した溶媒(純水等)を補給するため、溶媒(純水等)を添加する。当該溶媒の添加量は、アンモニア成分を除去した後のタングステン酸リチウム分散液のタングステン含有量が、アンモニア成分を除去する前のタングステン酸リチウム分散液のタングステン含有量と一致するように調節する。
【0124】
さらに、本発明の金属酸リチウム混合液の製造方法で用いられる各金属酸リチウム分散液の内、モリブデン酸リチウム分散液は、市販されているモリブデン酸リチウムを純水に溶解したものを用いることができる。
【0125】
具体的には、最終的な混合物のモリブデン含有量がMo換算で0.001質量%以上22質量%以下、且つリチウムとモリブデンのモル比Li/Moが0.001以上5以下となるように、モリブデン酸リチウムと純水と混合し、当該混合物を撹拌しながら、液温を25℃に1時間保持することにより、モリブデン酸リチウム分散液が得られる。また、モリブデン酸リチウムと純水と混合する際、水酸化リチウムを加えてもよい。さらに、得られたモリブデン酸リチウム分散液に含まれるアンモニア成分を除去するために、以下の濃度調節工程を行ってもよい。濃度調節工程では、例えば60℃~90℃で蒸発分の溶媒(純水等)を加えながら、1時間~100時間加熱撹拌した後、室温まで冷却する。または、60℃~90℃で1時間~100時間加熱撹拌した後、室温まで冷却する。その後、蒸発した溶媒(純水等)を補給するため、溶媒(純水等)を添加する。当該溶媒の添加量は、アンモニア成分を除去した後のモリブデン酸リチウム分散液のモリブデン含有量が、アンモニア成分を除去する前のモリブデン酸リチウム分散液のモリブデン含有量と一致するように調節する。
【0126】
上述した製造方法により生成された、ニオブ酸リチウム分散液、タンタル酸リチウム分散液、モリブデン酸リチウム分散液、及びタングステン酸リチウム分散液の内、2種以上の金属酸リチウム分散液を所定の割合となるように秤量し、それらを混合し、15℃~100℃で、1分間~1時間撹拌することにより、本発明の金属酸リチウム混合液が得られる。
【0127】
本発明の金属酸リチウム膜の製造方法は、上述した本発明の金属酸リチウム混合液を基材に塗布し、乾燥し、およびまたは、焼成することを特徴とする。
本発明の金属酸リチウム膜の製造方法で用いられる本発明の金属酸リチウム混合液は、上述した本発明の金属酸リチウム混合液の製造方法により生成されるものであってもよい。
【0128】
金属酸リチウム膜の内、金属酸リチウム乾燥膜の製造方法は、金属酸リチウム混合液を、基材の表面に塗布する塗布工程と、前記基材の表面に塗布された前記金属酸リチウム混合液を乾燥し、乾燥膜を得る膜乾燥工程とを有する。
【0129】
具体的には、上述した本発明の金属酸リチウム混合液の製造方法により得られた金属酸リチウム混合液を、必要に応じて、例えば0.22μm孔径のフィルタで濾過しながらシリンジを用いて基材の表面上に滴下し、スピンコート(700rpm、10秒、その後1500rpm、15秒)により、塗布する。次に、110℃で30分間乾燥させることにより、基材の表面上に金属酸リチウム乾燥膜を形成させる。
【0130】
金属酸リチウム膜の内、金属酸リチウム焼成膜の製造方法は、金属酸リチウム混合液を、基材の表面に塗布する塗布工程と、前記基材の表面に塗布された前記金属酸リチウム混合液を乾燥し、乾燥膜を得る膜乾燥工程と、当該乾燥膜を大気下で、焼成温度が300℃以上1,200℃以下で、焼成時間が1時間以上12時間以下で焼成し、焼成膜を得る膜焼成工程とを有する。
【0131】
具体的には、上述したように金属酸リチウム混合液を、基材の表面に塗布し、乾燥させることにより得られた金属酸リチウム乾燥膜が形成された基材を、静置炉内に載置し、大気下、焼成温度が300℃以上1,200℃以下で、焼成時間が1時間以上12時間以下で焼成することにより、基材の表面上に金属酸リチウム焼成膜を形成させる。
【0132】
本発明の金属酸リチウム粉末の製造方法は、上述した本発明の金属酸リチウム混合液を乾燥し、およびまたは、焼成することを特徴とする。
本発明の金属酸リチウム粉末の製造方法で用いられる本発明の金属酸リチウム混合液は、上述した本発明の金属酸リチウム混合液の製造方法により生成されるものであってもよい。
【0133】
金属酸リチウム粉末の内、金属酸リチウム乾燥粉末の製造方法は、上述した本発明の金属酸リチウム混合液の製造方法により得られた金属酸リチウム混合液を静置炉内に載置し、加熱温度約60℃~200℃で1時間~72時間に亘って、真空乾燥することにより、本発明の金属酸リチウム混合液の水分が蒸発し、本発明の金属酸リチウム混合液に含まれる金属酸リチウム塩の結晶粒子を含有する金属酸リチウム乾燥粉末が得られる。
【0134】
一方、金属酸リチウム焼成粉末の製造方法は、上述したように本発明の金属酸リチウム混合液を真空乾燥し、得られた金属酸リチウム乾燥粉末を静置炉内に載置し、大気下で、焼成温度が300℃以上1,200℃以下で、焼成時間が1時間以上72時間以下で焼成することにより、金属酸リチウム焼成粉末が得られる。
【0135】
なお、上述した金属酸リチウム乾燥粉末、及び焼成粉末を粉砕したものを金属酸リチウム粉末として用いてもよい。また、粉砕されるか否かに拘らず、上述した金属酸リチウム乾燥粉末、及び焼成粉末を篩などによって分級して得られた篩下(微粒側)を金属酸リチウム粉末として用いてもよい。篩上(粗粒側)は再度粉砕し、分級して用いてもよい。なお、ナイロン、またはフッ素樹脂によりコーティングした鉄球等が粉砕メディアとして投入された振動篩を使用して粉砕と分級とを兼ねることも可能である。このように分級と粉砕とを兼ねることにより、大き過ぎる金属酸リチウム粉末が存在しても除去が可能である。具体的には、篩を用いて分級する場合、目開きが150μm-1,000μmのものを用いると好ましい。150μm-1,000μmであると、篩上の割合が多くなりすぎることがなく再粉砕を繰り返すことがなく、また篩下に再粉砕が必要な金属酸リチウム粉末が分級されることがない。
【0136】
このようにして得られた金属酸リチウム粉末を、分散媒として水や、有機溶媒と混合し、ビーズ等のメディアを用いて湿式粉砕することにより、金属酸リチウム粉末分散液を得ることができる。ここで、分散媒として用いられる有機溶媒は、例えばアルコール類、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、エーテル類、及びそれらの混合溶媒が挙げられる。さらに、金属酸リチウム粉末分散液を用いた、金属酸リチウム膜の成膜性を向上させるために、樹脂成分等のバインダーを添加してもよい。バインダーとして用いられる樹脂成分は、例えばアクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、グリコール系樹脂、セルロース系樹脂、及びそれらの混合樹脂、共重合樹脂が挙げられる。
【0137】
さらに、上述した本発明の金属酸リチウム混合液が被覆したリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法について、以下説明する。
【0138】
本発明の金属酸リチウム混合液が被覆したリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法は、本発明の金属酸リチウム混合液と、正極活物質と、必要に応じて水酸化リチウム水溶液とを混合して、金属酸リチウムを含有する電池用正極活物質スラリーを生成する工程と、前記金属酸リチウムを含有する電池用正極活物質スラリーを乾燥する工程と、を有する。
【0139】
先ず、本発明の金属酸リチウム混合液を純水で希釈した金属酸リチウム混合液中に、電池用正極活物質、例えばLiMn2O4(メルク社製:スピネル型、粒径<0.5μm)を添加することにより、金属酸リチウムを含有するスラリーが得られる。そして、金属酸リチウムを含有するスラリーを撹拌しながら、水酸化リチウム水溶液を滴下し、10分間90℃に保持することにより、金属酸リチウムを含有する電池用正極活物質スラリーが生成される。
【0140】
電池用正極活物質として、上述したLiMn2O4の他、LiCoO2、LiNiO2、LiFeO2、Li2MnO3、LiFePO4、LiCoPO4、LiNiPO4、LiMnPO4、LiNi0.5Mn1.5O4、LiMn1/3Co1/3Ni1/3O2、LiCo0.2Ni0.4Mn0.4O2、モリブデン酸リチウム、LiMnO4、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、LiMnO2等を用いることができる。
【0141】
次に、金属酸リチウムを含有する電池用正極活物質スラリーを、炉内温度を110℃で保持し、15時間に亘って大気乾燥炉内で乾燥させることにより、金属酸リチウムにより被覆されたリチウムイオン二次電池用正極活物質を製造することができる。
【0142】
上述した金属酸リチウム混合液が被覆したリチウムイオン二次電池用正極活物質では、本発明の金属酸リチウム混合液を用いたが、本発明の金属酸リチウム混合液を乾燥させた乾燥粉末や、本発明の金属酸リチウム混合液を乾燥し、焼成した焼成粉末を分散媒に分散させたものを用いてもよい。
【0143】
なお、上述したリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法では、電池用正極活物質を添加したが、適宜用途に合わせて変更してもよい。例えば、分散剤、pH調整剤、着色剤、増粘剤、湿潤剤、バインダー樹脂等を添加してもよい。
【0144】
このように本発明の金属酸リチウム混合液がリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子表面を被覆していることにより、二次電池の正極活物質粒子のリチウムイオン二次電池の正極と電解質との間で生じる界面抵抗を低減させることができる。
【0145】
なお、本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特に断らない限り、「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」旨の意も包含する。また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現する場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【発明の効果】
【0146】
本発明の金属酸リチウム混合液は、極性溶媒、とりわけ水への分散性が高く、水に対する溶解性も良好で、且つ保存安定性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【
図1】本発明の実施例1~15、及び比較例1、2に係る金属酸リチウム混合液の物性値の一覧表である。
【
図2】本発明の実施例1~15、及び比較例1、2に係る金属酸リチウム混合液の測定結果の一覧表である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0148】
以下、本発明に係る実施形態の金属酸リチウム混合液について、以下の実施例によりさらに説明する。但し、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
【0149】
以下の実施例に用いられるニオブ酸リチウム分散液、タンタル酸リチウム分散液、モリブデン酸リチウム分散液、及びタングステン酸リチウム分散液は、上述した各金属酸リチウム分散液の製造方法により生成されたものである。
【0150】
上述した各金属酸リチウム分散液の製造方法により生成された各金属酸リチウム分散液の物性は、以下の通りである。
【0151】
ニオブ酸リチウム分散液中のニオブ含有量は、Nb換算で0.60mol/Lであり、リチウム含有量は0.62mol/Lであり、密度は1069g/Lであった。タンタル酸リチウム分散液中のタンタル含有量は、Ta換算で0.24mol/Lであり、リチウム含有量は0.23mol/Lであり、密度は1048g/Lであった。モリブデン酸リチウム分散液中のモリブデン含有量は、Mo換算で0.29mol/Lであり、リチウム含有量は0.58mol/Lであり、密度は1035g/Lであった。タングステン酸リチウム分散液中のタングステン含有量は、W換算で0.22mol/Lであり、リチウム含有量は0.43mol/Lであり、密度は1042g/Lであった。
【0152】
(実施例1)
ニオブ酸リチウム分散液中のニオブのモル数と、タンタル酸リチウム分散液中のタンタルのモル数との比が、0.9:0.1となるように、ニオブ酸リチウム分散液6.39gと、タンタル酸リチウム分散液1.72gとを秤量し、ポリプロピレン容器に入れた。そして、最終的な混合液中のニオブ及びタンタルの総含有量が0.133mol/Lとなるように、このポリプロピレン容器内へ純水22.38gを添加して、混合し、5分間撹拌することにより、実施例1に係る金属酸リチウム混合液を得た。
【0153】
実施例1に係る金属酸リチウム混合液30.49gにおいて、当該金属酸リチウム混合液中のNb換算のニオブ含有量は1.097質量%(0.334g、0.120mol/L)であり、Ta換算のタンタル含有量は0.237質量%(0.072g、0.013mol/L)であり、ニオブ及びタンタルの総含有量はメタル換算で1.334質量%(0.407g、0.133mol/L)であった。また、当該金属酸リチウム混合液中のLi換算のリチウム含有量は0.091質量%(0.091g、0.133mol/L)であった。そして、実施例1に係る金属酸リチウム混合液に含まれる金属酸リチウム混合液のニオブ(Nb)とニオブ及びタンタルの総含有量(M)とのモル数比Nb/Mは0.9であった。また、当該金属酸リチウム混合液のタンタル(Ta)とニオブ及びタンタルの総含有量(M)とのモル数比Ta/Mは0.1であった。さらに、当該金属酸リチウム混合液のリチウム(Li)とニオブ及びタンタルの総含有量(M)とのモル比Li/Mは1.0であった。
【0154】
さらに、実施例1に係る金属酸リチウム混合液の初期pHは11.6であり、経時pHは11.5であった。
【0155】
(実施例2)
実施例2では、ニオブ酸リチウム分散液中のニオブのモル数と、タンタル酸リチウム分散液中のタンタルのモル数との比が、0.5:0.5となるように、ニオブ酸リチウム分散液3.55gと、タンタル酸リチウム分散液8.58gとを秤量し、ポリプロピレン容器に入れた。そして、最終的な混合液中のニオブ及びタンタルの総含有量が0.133mol/Lとなるように、このポリプロピレン容器内へ純水18.5gを添加したこと以外は、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例2に係る金属酸リチウム混合液を得た。
【0156】
実施例2に係る金属酸リチウム混合液30.63gにおいて、当該金属酸リチウム混合液中のNb換算のニオブ含有量は0.607質量%(0.186g、0.067mol/L)であり、Ta換算のタンタル含有量は1.182質量%(0.362g、0.067mol/L)であり、ニオブ及びタンタルの総含有量はメタル換算で1.788質量%(0.548g、0.133mol/L)であった。また、当該金属酸リチウム混合液中のLi換算のリチウム含有量は0.091質量%(0.091g、0.133mol/L)であった。そして、実施例2に係る金属酸リチウム混合液に含まれる金属酸リチウム混合液のニオブ(Nb)とニオブ及びタンタルの総含有量(M)とのモル数比Nb/Mは0.5であった。また、当該金属酸リチウム混合液のタンタル(Ta)とニオブ及びタンタルの総含有量(M)とのモル数比Ta/Mは0.5であった。さらに、当該金属酸リチウム混合液のリチウム(Li)とニオブ及びタンタルの総含有量(M)とのモル比Li/Mは1.0であった。
【0157】
さらに、実施例2に係る金属酸リチウム混合液の初期pHは12.1であり、経時pHは12.2であった。
【0158】
(実施例3)
実施例3では、ニオブ酸リチウム分散液中のニオブのモル数と、タンタル酸リチウム分散液中のタンタルのモル数との比が、0.1:0.9となるように、ニオブ酸リチウム分散液0.71gと、タンタル酸リチウム分散液15.44gとを秤量し、ポリプロピレン容器に入れた。そして、最終的な混合液中のニオブ及びタンタルの総含有量が0.133mol/Lとなるように、このポリプロピレン容器内へ純水14.61gを添加したこと以外は、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例3に係る金属酸リチウム混合液を得た。
【0159】
実施例3に係る金属酸リチウム混合液30.76gにおいて、当該金属酸リチウム混合液中のNb換算のニオブ含有量は0.121質量%(0.037g、0.013mol/L)であり、Ta換算のタンタル含有量は2.118質量%(0.651g、0.120mol/L)であり、ニオブ及びタンタルの総含有量はメタル換算で2.239質量%(0.689g、0.133mol/L)であった。また、当該金属酸リチウム混合液中のLi換算のリチウム含有量は0.090質量%(0.028g、0.133mol/L)であった。そして、実施例3に係る金属酸リチウム混合液に含まれる金属酸リチウム混合液のニオブ(Nb)とニオブ及びタンタルの総含有量(M)とのモル数比Nb/Mは0.1であった。また、当該金属酸リチウム混合液のタンタル(Ta)とニオブ及びタンタルの総含有量(M)とのモル数比Ta/Mは0.9であった。さらに、当該金属酸リチウム混合液のリチウム(Li)とニオブ及びタンタルの総含有量(M)とのモル比Li/Mは1.0であった。
【0160】
さらに、実施例3に係る金属酸リチウム混合液の初期pHは12.3であり、経時pHは12.3であった。
【0161】
(実施例4)
実施例4では、ニオブ酸リチウム分散液中のニオブのモル数と、モリブデン酸リチウム分散液中のモリブデンのモル数との比が、0.9:0.1となるように、ニオブ酸リチウム分散液6.39gと、モリブデン酸リチウム分散液1.42gとを秤量し、ポリプロピレン容器に入れた。そして、最終的な混合液中のニオブ及びモリブデンの総含有量が0.133mol/Lとなるように、このポリプロピレン容器内へ純水22.65gを添加したこと以外は、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例4に係る金属酸リチウム混合液を得た。
【0162】
実施例4に係る金属酸リチウム混合液30.46gにおいて、当該金属酸リチウム混合液中のNb換算のニオブ含有量は1.098質量%(0.334g、0.120mol/L)であり、Mo換算のモリブデン含有量は0.126質量%(0.038g、0.013mol/L)であり、ニオブ及びモリブデンの総含有量はメタル換算で1.224質量%(0.373g、0.133mol/L)であった。また、当該金属酸リチウム混合液中のLi換算のリチウム含有量は0.100質量%(0.031g、0.147mol/L)であった。そして、実施例4に係る金属酸リチウム混合液に含まれる金属酸リチウム混合液のニオブ(Nb)とニオブ及びモリブデンの総含有量(M)とのモル数比Nb/Mは0.9であった。また、当該金属酸リチウム混合液のモリブデン(Mo)とニオブ及びモリブデンの総含有量(M)とのモル数比Mo/Mは0.1であった。さらに、当該金属酸リチウム混合液のリチウム(Li)とニオブ及びモリブデンの総含有量(M)とのモル比Li/Mは1.10であった。
【0163】
さらに、実施例4に係る金属酸リチウム混合液の初期pHは11.2であり、経時pHは11.3であった。
【0164】
(実施例5)
実施例5では、ニオブ酸リチウム分散液中のニオブのモル数と、タングステン酸リチウム分散液中のタングステンのモル数との比が、0.9:0.1となるように、ニオブ酸リチウム分散液6.39gと、タングステン酸リチウム分散液1.87gとを秤量し、ポリプロピレン容器に入れた。そして、最終的な混合液中のニオブ及びタングステンの総含有量が0.133mol/Lとなるように、このポリプロピレン容器内へ純水22.23gを添加したこと以外は、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例5に係る金属酸リチウム混合液を得た。
【0165】
実施例5に係る金属酸リチウム混合液30.49gにおいて、当該金属酸リチウム混合液中のNb換算のニオブ含有量は1.097質量%(0.334g、0.120mol/L)であり、W換算のタングステン含有量は0.241質量%(0.074g、0.013mol/L)であり、ニオブ及びタングステンの総含有量はメタル換算で1.338質量%(0.408g、0.133mol/L)であった。また、当該金属酸リチウム混合液中のLi換算のリチウム含有量は0.100質量%(0.031g、0.147mol/L)であった。そして、実施例5に係る金属酸リチウム混合液に含まれる金属酸リチウム混合液のニオブ(Nb)とニオブ及びタングステンの総含有量(M)とのモル数比Nb/Mは0.9であった。また、当該金属酸リチウム混合液のタングステン(W)とニオブ及びタングステンの総含有量(M)とのモル数比W/Mは0.1であった。さらに、当該金属酸リチウム混合液のリチウム(Li)とニオブ及びタングステンの総含有量(M)とのモル比Li/Mは1.10であった。
【0166】
さらに、実施例5に係る金属酸リチウム混合液の初期pHは11.3であり、経時pHは11.2であった。
【0167】
(実施例6)
実施例6では、タンタル酸リチウム分散液中のタンタルのモル数と、モリブデン酸リチウム分散液中のモリブデンのモル数との比が、0.9:0.1となるように、タンタル酸リチウム分散液15.44gと、モリブデン酸リチウム分散液1.42gとを秤量し、ポリプロピレン容器に入れた。そして、最終的な混合液中のタンタル及びモリブデンの総含有量が0.133mol/Lとなるように、このポリプロピレン容器内へ純水13.9gを添加したこと以外は、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例6に係る金属酸リチウム混合液を得た。
【0168】
実施例6に係る金属酸リチウム混合液30.76gにおいて、当該金属酸リチウム混合液中のTa換算のタンタル含有量は2.118質量%(0.651g、0.120mol/L)であり、Mo換算のモリブデン含有量は0.125質量%(0.038g、0.013mol/L)であり、タンタル及びモリブデンの総含有量はメタル換算で2.242質量%(0.690g、0.133mol/L)であった。また、当該金属酸リチウム混合液中のLi換算のリチウム含有量は0.099質量%(0.031g、0.147mol/L)であった。そして、実施例6に係る金属酸リチウム混合液に含まれる金属酸リチウム混合液のタンタル(Ta)とタンタル及びモリブデンの総含有量(M)とのモル数比Ta/Mは0.9であった。また、当該金属酸リチウム混合液のモリブデン(Mo)とタンタル及びモリブデンの総含有量(M)とのモル数比Mo/Mは0.1であった。さらに、当該金属酸リチウム混合液のリチウム(Li)とタンタル及びモリブデンの総含有量(M)とのモル比Li/Mは1.10であった。
【0169】
さらに、実施例6に係る金属酸リチウム混合液の初期pHは12.0であり、経時pHは12.0であった。
【0170】
(実施例7)
実施例7では、タンタル酸リチウム分散液中のタンタルのモル数と、タングステン酸リチウム分散液中のタングステンのモル数との比が、0.9:0.1となるように、タンタル酸リチウム分散液15.44gと、タングステン酸リチウム分散液1.87gとを秤量し、ポリプロピレン容器に入れた。そして、最終的な混合液中のタンタル及びタングステンの総含有量が0.133mol/Lとなるように、このポリプロピレン容器内へ純水13.48gを添加したこと以外は、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例7に係る金属酸リチウム混合液を得た。
【0171】
実施例7に係る金属酸リチウム混合液30.79gにおいて、当該金属酸リチウム混合液中のTa換算のタンタル含有量は2.116質量%(0.651g、0.120mol/L)であり、W換算のタングステン含有量は0.239質量%(0.074g、0.013mol/L)であり、タンタル及びタングステンの総含有量はメタル換算で2.355質量%(0.725g、0.133mol/L)であった。また、当該金属酸リチウム混合液中のLi換算のリチウム含有量は0.099質量%(0.031g、0.147mol/L)であった。そして、実施例7に係る金属酸リチウム混合液に含まれる金属酸リチウム混合液のタンタル(Ta)とタンタル及びタングステンの総含有量(M)とのモル数比Ta/Mは0.9であった。また、当該金属酸リチウム混合液のタングステン(W)とタンタル及びタングステンの総含有量(M)とのモル数比W/Mは0.1であった。さらに、当該金属酸リチウム混合液のリチウム(Li)とタンタル及びタングステンの総含有量(M)とのモル比Li/Mは1.10であった。
【0172】
さらに、実施例7に係る金属酸リチウム混合液の初期pHは12.0であり、経時pHは12.0であった。
【0173】
(実施例8)
実施例8では、ニオブ酸リチウム分散液中のニオブのモル数と、タンタル酸リチウム分散液中のタンタルのモル数と、モリブデン酸リチウム分散液中のモリブデンのモル数のとの比が、0.5:0.4:0.1となるように、ニオブ酸リチウム分散液3.55gと、タンタル酸リチウム分散液6.86gと、モリブデン酸リチウム分散液1.42gとを秤量し、ポリプロピレン容器に入れた。そして、最終的な混合液中のニオブ、タンタル、及びモリブデンの総含有量が0.133mol/Lとなるように、このポリプロピレン容器内へ純水18.76gを添加したこと以外は、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例8に係る金属酸リチウム混合液を得た。
【0174】
実施例8に係る金属酸リチウム混合液30.60gにおいて、当該金属酸リチウム混合液中のNb換算のニオブ含有量は0.607質量%(0.186g、0.067mol/L)であり、Ta換算のタンタル含有量は0.946質量%(0.290g、0.053mol/L)であり、Mo換算のモリブデン含有量は0.125質量%(0.038g、0.013mol/L)であり、ニオブ、タンタル、及びモリブデンの総含有量はメタル換算で1.679質量%(0.514g、0.133mol/L)であった。また、当該金属酸リチウム混合液中のLi換算のリチウム含有量は0.100質量%(0.031g、0.147mol/L)であった。そして、実施例8に係る金属酸リチウム混合液に含まれる金属酸リチウム混合液のニオブ(Nb)とニオブ、タンタル、及びモリブデンの総含有量(M)とのモル数比Nb/Mは0.5であった。また、当該金属酸リチウム混合液のタンタル(Ta)とニオブ、タンタル、及びモリブデンの総含有量(M)とのモル数比Ta/Mは0.4であった。さらに、当該金属酸リチウム混合液のモリブデン(Mo)とニオブ、タンタル、及びモリブデンの総含有量(M)とのモル数比Mo/Mは0.1であった。さらに、当該金属酸リチウム混合液のリチウム(Li)とニオブ、タンタル、及びモリブデンの総含有量(M)とのモル比Li/Mは1.10であった。
【0175】
さらに、実施例8に係る金属酸リチウム混合液の初期pHは11.7であり、経時pHは11.8であった。
【0176】
(実施例9)
実施例9では、ニオブ酸リチウム分散液中のニオブのモル数と、タンタル酸リチウム分散液中のタンタルのモル数と、タングステン酸リチウム分散液中のタングステンのモル数との比が、0.5:0.4:0.1となるように、ニオブ酸リチウム分散液3.55g、タンタル酸リチウム分散液6.86gと、タングステン酸リチウム分散液1.87gとを秤量し、ポリプロピレン容器に入れた。そして、最終的な混合液中のニオブ、タンタル、及びタングステンの総含有量が0.133mol/Lとなるように、このポリプロピレン容器内へ純水18.34gを添加したこと以外は、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例9に係る金属酸リチウム混合液を得た。
【0177】
実施例9に係る金属酸リチウム混合液30.62gにおいて、当該金属酸リチウム混合液中のNb換算のニオブ含有量は0.607質量%(0.186g、0.067mol/L)であり、Ta換算のタンタル含有量は0.945質量%(0.290g、0.053mol/L)であり、W換算のタングステン含有量は0.240質量%(0.074g、0.013mol/L)であり、ニオブ、タンタル、及びタングステンの総含有量はメタル換算で1.792質量%(0.549g、0.133mol/L)であった。また、当該金属酸リチウム混合液中のLi換算のリチウム含有量は0.100質量%(0.031g、0.147mol/L)であった。そして、実施例9に係る金属酸リチウム混合液に含まれる金属酸リチウム混合液のニオブ(Nb)とニオブ、タンタル、及びタングステンの総含有量(M)とのモル数比Nb/Mは0.5であった。また、当該金属酸リチウム混合液のタンタル(Ta)とニオブ、タンタル、及びタングステンの総含有量(M)とのモル数比Ta/Mは0.4であった。さらに、当該金属酸リチウム混合液のタングステン(W)とニオブ、タンタル、及びタングステンの総含有量(M)とのモル数比W/Mは0.1であった。さらに、当該金属酸リチウム混合液のリチウム(Li)とニオブ、タンタル、及びタングステンの総含有量(M)とのモル比Li/Mは1.10であった。
【0178】
さらに、実施例9に係る金属酸リチウム混合液の初期pHは11.6であり、経時pHは11.5であった。
【0179】
(実施例10)
実施例10では、ニオブ酸リチウム分散液中のニオブのモル数と、タンタル酸リチウム分散液中のタンタルのモル数と、モリブデン酸リチウム分散液中のモリブデンのモル数と、タングステン酸リチウム分散液中のタングステンのモル数との比が、0.4:0.4:0.1:0.1となるように、ニオブ酸リチウム分散液2.84g(0.4mol)、タンタル酸リチウム分散液6.86g(0.4mol)と、モリブデン酸リチウム分散液1.42g(0.1mol)と、タングステン酸リチウム分散液1.87g(0.1mol)とを秤量し、ポリプロピレン容器に入れた。そして、最終的な混合液中のニオブ、タンタル、モリブデン、及びタングステンの総含有量が0.133mol/Lとなるように、このポリプロピレン容器内へ純水17.63gを添加したこと以外は、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例10に係る金属酸リチウム混合液を得た。
【0180】
実施例10に係る金属酸リチウム混合液30.62gにおいて、当該金属酸リチウム混合液中のNb換算のニオブ含有量は0.485質量%(0.149g、0.053mol/L)であり、Ta換算のタンタル含有量は0.945質量%(0.290g、0.053mol/L)であり、Mo換算のモリブデン含有量は0.125質量%(0.038g、0.013mol/L)であり、W換算のタングステン含有量は0.240質量%(0.074g、0.013mol/L)であり、ニオブ、タンタル、モリブデン、及びタングステンの総含有量はメタル換算で1.796質量%(0.550g、0.133mol/L)であった。また、当該金属酸リチウム混合液中のLi換算のリチウム含有量は0.109質量%(0.033g、0.160mol/L)であった。そして、実施例10に係る金属酸リチウム混合液に含まれる金属酸リチウム混合液のニオブ(Nb)とニオブ、タンタル、モリブデン、及びタングステンの総含有量(M)とのモル数比Nb/Mは0.4であった。また、当該金属酸リチウム混合液のタンタル(Ta)とニオブ、タンタル、モリブデン、及びタングステンの総含有量(M)とのモル数比Ta/Mは0.4であった。さらに、当該金属酸リチウム混合液のモリブデン(Mo)とニオブ、タンタル、モリブデン、及びタングステンの総含有量(M)とのモル数比Mo/Mは0.1であった。また、当該金属酸リチウム混合液のタングステン(W)とニオブ、タンタル、モリブデン、及びタングステンの総含有量(M)とのモル数比W/Mは0.1であった。さらに、当該金属酸リチウム混合液のリチウム(Li)とニオブ、タンタル、モリブデン、及びタングステンの総含有量(M)とのモル比Li/Mは1.20であった。
【0181】
さらに、実施例10に係る金属酸リチウム混合液の初期pHは11.6であり、経時pHは11.6であった。
【0182】
(実施例11)
実施例11では、ニオブ酸リチウム分散液中のニオブのモル数と、タンタル酸リチウム分散液中のタンタルのモル数との比が、0.5:0.5となるように、ニオブ酸リチウム分散液0.36gと、タンタル酸リチウム分散液0.86gとを秤量し、ポリプロピレン容器に入れた。そして、最終的な混合液中のニオブ及びタンタルの総含有量が0.013mol/Lとなるように、このポリプロピレン容器内へ純水28.85gを添加したこと以外は、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例11に係る金属酸リチウム混合液を得た。
【0183】
実施例11に係る金属酸リチウム混合液30.06gにおいて、当該金属酸リチウム混合液中のNb換算のニオブ含有量は0.062質量%(0.019g、0.007mol/L)であり、Ta換算のタンタル含有量は0.120質量%(0.036g、0.007mol/L)であり、ニオブ及びタンタルの総含有量はメタル換算で0.182質量%(0.055g、0.013mol/L)であった。また、当該金属酸リチウム混合液中のLi換算のリチウム含有量は0.009質量%(0.003g、0.013mol/L)であった。そして、実施例11に係る金属酸リチウム混合液に含まれる金属酸リチウム混合液のニオブ(Nb)とニオブ及びタンタルの総含有量(M)とのモル数比Nb/Mは0.5であった。また、当該金属酸リチウム混合液のタンタル(Ta)とニオブ及びタンタルの総含有量(M)とのモル数比Ta/Mは0.5であった。さらに、当該金属酸リチウム混合液のリチウム(Li)とニオブ及びタンタルの総含有量(M)とのモル比Li/Mは1.0であった。
【0184】
さらに、実施例11に係る金属酸リチウム混合液の初期pHは11.1であり、経時pHは11.0であった。
【0185】
(実施例12)
実施例12では、ニオブ酸リチウム分散液中のニオブのモル数と、モリブデン酸リチウム分散液中のモリブデンのモル数との比が、0.5:0.5となるように、ニオブ酸リチウム分散液3.55gと、モリブデン酸リチウム分散液7.09gとを秤量し、ポリプロピレン容器に入れた。そして、最終的な混合液中のニオブ及びモリブデンの総含有量が0.133mol/Lとなるように、このポリプロピレン容器内へ純水19.82gを添加したこと以外は、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例12に係る金属酸リチウム混合液を得た。
【0186】
実施例12に係る金属酸リチウム混合液30.47gにおいて、当該金属酸リチウム混合液中のNb換算のニオブ含有量は0.610質量%(0.186g、0.067mol/L)であり、Mo換算のモリブデン含有量は0.630質量%(0.192g、0.067mol/L)であり、ニオブ及びモリブデンの総含有量はメタル換算で1.240質量%(0.378g、0.133mol/L)であった。また、当該金属酸リチウム混合液中のLi換算のリチウム含有量は0.137質量%(0.042g、0.200mol/L)であった。そして、実施例12に係る金属酸リチウム混合液に含まれる金属酸リチウム混合液のニオブ(Nb)とニオブ及びモリブデンの総含有量(M)とのモル数比Nb/Mは0.5であった。また、当該金属酸リチウム混合液のモリブデン(Mo)とニオブ及びモリブデンの総含有量(M)とのモル数比Mo/Mは0.5であった。さらに、当該金属酸リチウム混合液のリチウム(Li)とニオブ及びモリブデンの総含有量(M)とのモル比Li/Mは1.50であった。
【0187】
さらに、実施例12に係る金属酸リチウム混合液の初期pHは10.5であり、経時pHは10.5であった。
【0188】
(実施例13)
実施例13では、タンタル酸リチウム分散液中のタンタルのモル数と、モリブデン酸リチウム分散液中のモリブデンのモル数との比が、0.5:0.5となるように、タンタル酸リチウム分散液8.58gと、モリブデン酸リチウム分散液7.09gとを秤量し、ポリプロピレン容器に入れた。そして、最終的な混合液中のタンタル及びモリブデンの総含有量が0.133mol/Lとなるように、このポリプロピレン容器内へ純水14.96gを添加したこと以外は、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例13に係る金属酸リチウム混合液を得た。
【0189】
実施例13に係る金属酸リチウム混合液30.64gにおいて、当該金属酸リチウム混合液中のTa換算のタンタル含有量は1.181質量%(0.362g、0.067mol/L)であり、Mo換算のモリブデン含有量は0.626質量%(0.192g、0.067mol/L)であり、タンタル及びモリブデンの総含有量はメタル換算で1.808質量%(0.378g、0.133mol/L)であった。また、当該金属酸リチウム混合液中のLi換算のリチウム含有量は0.137質量%(0.042g、0.200mol/L)であった。そして、実施例13に係る金属酸リチウム混合液に含まれる金属酸リチウム混合液のタンタル(Ta)とタンタル及びモリブデンの総含有量(M)とのモル数比Ta/Mは0.5であった。また、当該金属酸リチウム混合液のモリブデン(Mo)とタンタル及びモリブデンの総含有量(M)とのモル数比Mo/Mは0.5であった。さらに、当該金属酸リチウム混合液のリチウム(Li)とタンタル及びモリブデンの総含有量(M)とのモル比Li/Mは1.50であった。
【0190】
さらに、実施例13に係る金属酸リチウム混合液の初期pHは11.2であり、経時pHは11.2であった。
【0191】
(実施例14)
実施例14では、ニオブ酸リチウム分散液中のニオブのモル数と、モリブデン酸リチウム分散液中のモリブデンのモル数との比が、0.1:0.9となるように、ニオブ酸リチウム分散液0.71gと、モリブデン酸リチウム分散液12.77gとを秤量し、ポリプロピレン容器に入れた。そして、最終的な混合液中のニオブ及びモリブデンの総含有量が0.133mol/Lとなるように、このポリプロピレン容器内へ純水17.00gを添加したこと以外は、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例14に係る金属酸リチウム混合液を得た。
【0192】
実施例14に係る金属酸リチウム混合液30.48gにおいて、当該金属酸リチウム混合液中のNb換算のニオブ含有量は0.122質量%(0.037g、0.013mol/L)であり、Mo換算のモリブデン含有量は1.133質量%(0.345g、0.120mol/L)であり、ニオブ及びモリブデンの総含有量はメタル換算で1.255質量%(0.383g、0.133mol/L)であった。また、当該金属酸リチウム混合液中のLi換算のリチウム含有量は0.173質量%(0.053g、0.253mol/L)であった。そして、実施例14に係る金属酸リチウム混合液に含まれる金属酸リチウム混合液のニオブ(Nb)とニオブ及びモリブデンの総含有量(M)とのモル数比Nb/Mは0.1であった。また、当該金属酸リチウム混合液のモリブデン(Mo)とニオブ及びモリブデンの総含有量(M)とのモル数比Mo/Mは0.9であった。さらに、当該金属酸リチウム混合液のリチウム(Li)とニオブ及びモリブデンの総含有量(M)とのモル比Li/Mは1.90であった。
【0193】
さらに、実施例14に係る金属酸リチウム混合液の初期pHは9.8であり、経時pHは9.6であった。
【0194】
(実施例15)
実施例15では、タンタル酸リチウム分散液中のタンタルのモル数と、モリブデン酸リチウム分散液中のモリブデンのモル数との比が、0.1:0.9となるように、タンタル酸リチウム分散液1.72gと、モリブデン酸リチウム分散液12.77gとを秤量し、ポリプロピレン容器に入れた。そして、最終的な混合液中のタンタル及びモリブデンの総含有量が0.133mol/Lとなるように、このポリプロピレン容器内へ純水16.03gを添加したこと以外は、実施例1と同様な製造方法を実施し、実施例15に係る金属酸リチウム混合液を得た。
【0195】
実施例15に係る金属酸リチウム混合液30.51gにおいて、当該金属酸リチウム混合液中のTa換算のタンタル含有量は0.237質量%(0.072g、0.013mol/L)であり、Mo換算のモリブデン含有量は1.132質量%(0.345g、0.120mol/L)であり、タンタル及びモリブデンの総含有量はメタル換算で1.369質量%(0.418g、0.133mol/L)であった。また、当該金属酸リチウム混合液中のLi換算のリチウム含有量は0.173質量%(0.053g、0.253mol/L)であった。そして、実施例15に係る金属酸リチウム混合液に含まれる金属酸リチウム混合液のタンタル(Ta)とタンタル及びモリブデンの総含有量(M)とのモル数比Ta/Mは0.1であった。また、当該金属酸リチウム混合液のモリブデン(Mo)とタンタル及びモリブデンの総含有量(M)とのモル数比Mo/Mは0.9であった。さらに、当該金属酸リチウム混合液のリチウム(Li)とタンタル及びモリブデンの総含有量(M)とのモル比Li/Mは1.90であった。
【0196】
さらに、実施例15に係る金属酸リチウム混合液の初期pHは10.4であり、経時pHは10.3であった。
【0197】
(比較例1)
比較例1では、ニオブ酸リチウム粉体中のニオブのモル数と、タンタル酸リチウム粉体中のタンタルのモル数との比が、0.5:0.5となるように、ニオブ酸リチウム粉体0.3g(株式会社高純度化学研究所製)と、タンタル酸リチウム粉体0.47g(株式会社高純度化学研究所製)とを秤量し、ポリプロピレン容器に入れた。そして、最終的な混合液中のニオブ及びタンタルの総含有量が0.133mol/Lとなるように、このポリプロピレン容器内へ純水29.9gを添加したこと以外は、実施例1と同様な製造方法を実施し、比較例1に係る金属酸リチウム混合液を得た。なお、ニオブ酸リチウム粉体及びタンタル酸リチウム粉体は、溶解せず、目視にてこれらの粉体が確認できる状態の金属酸リチウム混合液であった。
【0198】
比較例1に係る金属酸リチウム混合液30.67gにおいて、当該金属酸リチウム混合液中のNb換算のニオブ含有量は0.606質量%(0.186g、0.067mol/L)であり、Ta換算のタンタル含有量は1.180質量%(0.362g、0.067mol/L)であり、ニオブ及びタンタルの総含有量はメタル換算で1.786質量%(0.548g、0.133mol/L)であった。また、当該金属酸リチウム混合液中のLi換算のリチウム含有量は0.091質量%(0.028g、0.133mol/L)であった。そして、比較例1に係る金属酸リチウム混合液に含まれる金属酸リチウム混合液のニオブ(Nb)とニオブ及びタンタルの総含有量(M)とのモル数比Nb/Mは0.5であった。また、当該金属酸リチウム混合液のタンタル(Ta)とニオブ及びタンタルの総含有量(M)とのモル数比Ta/Mは0.5であった。さらに、当該金属酸リチウム混合液のリチウム(Li)とニオブ及びタンタルの総含有量(M)とのモル比Li/Mは1.0であった。
【0199】
さらに、比較例1に係る金属酸リチウム混合液の初期pHは10.0であり、経時pHは10.0であった。
【0200】
(比較例2)
比較例2では、ニオブ酸リチウム分散液中のニオブのモル数と、タンタル酸リチウム分散液中のタンタルのモル数との比が、0.5:0.5となるように、ニオブ酸リチウム分散液3.55gと、タンタル酸リチウム粉末0.47g(株式会社高純度化学研究所製)とを秤量し、ポリプロピレン容器に入れた。そして、最終的な混合液中のニオブ及びタンタルの総含有量が0.133mol/Lとなるように、このポリプロピレン容器内へ純水26.45gを添加したこと以外は、実施例1と同様な製造方法を実施し、比較例2に係る金属酸リチウム混合液を得た。
【0201】
比較例2に係る金属酸リチウム混合液30.47gにおいて、当該金属酸リチウム混合液中のNb換算のニオブ含有量は0.610質量%(0.186g、0.067mol/L)であり、Ta換算のタンタル含有量は1.188質量%(0.362g、0.067mol/L)であり、ニオブ及びタンタルの総含有量はメタル換算で1.797質量%(0.548g、0.133mol/L)であった。また、当該金属酸リチウム混合液中のLi換算のリチウム含有量は0.091質量%(0.028g、0.133mol/L)であった。そして、比較例2に係る金属酸リチウム混合液に含まれる金属酸リチウム混合液のニオブ(Nb)とニオブ及びタンタルの総含有量(M)とのモル数比Nb/Mは0.5であった。また、当該金属酸リチウム混合液のタンタル(Ta)とニオブ及びタンタルの総含有量(M)とのモル数比Ta/Mは0.5であった。さらに、当該金属酸リチウム混合液のリチウム(Li)とニオブ及びタンタルの総含有量(M)とのモル比Li/Mは1.0であった。
【0202】
さらに、比較例2に係る金属酸リチウム混合液の初期pHは11.0であり、経時pHは11.0であった。
【0203】
そして、実施例1~15、及び比較例1~2の金属酸リチウム混合液について、次のような物性を測定した。以下、測定した物性値、及びその物性値の測定方法を示すとともに、実施例1~15、及び比較例1~2の金属酸リチウム混合液の測定結果を
図1、
図2に示す。
【0204】
〈元素分析〉
必要に応じて試料を希塩酸で適度に希釈し、ICP発光分析(アジレント・テクノロジー社製:AG-5110)を用いて、JIS K0116:2014に準拠し、Nb換算のNb質量分率、Ta換算のTa質量分率、Mo換算のMo質量分率、W換算のW質量分率、又はLi換算のLi質量分率を測定した。
【0205】
〈pH測定〉
実施例1~15、及び比較例1~2に係る金属酸リチウム混合液にpHメータ(HORIBA製:ガラス電極式水素イオン濃度指示器 D-51)の電極(HORIBA製:スタンダード ToupH 電極 9615S-10D)、液温が25℃に安定したことを確認した後、pHを測定した。
図2中の「初期pH」とは、生成された直後に測定されたpHを示す。
図2中の「経時pH」とは、室温25℃で1カ月静置した後で測定されたpHを示す。
【0206】
〈光透過度測定〉
実施例1~15、及び比較例1~2に係る金属酸リチウム混合液3mlを、光路長5mmの合成石英セルに入れ、実施例1~15、及び比較例1~2に係る金属酸リチウム混合液の光透過度を、上述した光透過率測定条件に従って、分光光度計にて測定した。光透過度の測定は、生成された直後の金属酸リチウム混合液と、室温25℃下で1カ月静置した後の金属酸リチウム混合液とに対して、行った。そして、波長400nm、600nm、750nmの光透過度が75%以上であれば「○○(VERY GOOD)」と評価し、波長400nm、600nm、750nmの光透過度が65%以上75%未満であれば「○(GOOD)」と評価し、波長400nmの光透過度が65%未満であれば「×(BAD)」と評価した。
図2中の「初期光透過度」とは、生成された直後に測定された波長400nm、600nm、750nmの光透過度を示す。また、
図2中の「経時光透過度」とは、生成された日から室温25℃で1カ月静置した後で測定された波長400nm、600nm、750nmの光透過度を示す。
【0207】
〈動的光散乱法〉
粒度分布の評価は、ゼータ電位・粒径・分子量測定システム(大塚電子株式会社製:ELSZ-2000)を用いて、JIS Z 8828:2019に準じた動的光散乱法により行った。また、測定直前に測定対象である混合液中の埃等を除去するため、1μm孔経のフィルタで当該混合液を濾過して、フィルタリングを行った。さらに、超音波洗浄機(アズワン社製:VS-100III)にて、28kHz、3分間の超音波処理を実施し、超音波を用いた分散処理を行った。そして、当該混合液を撹拌させた後、当該混合液を分取し、測定セルに入れて測定を行った。さらに、D50は体積分率にして50%に至る粒子径を示す。
図2の「初期粒子径D50(nm)」とは、生成された直後の金属酸リチウム混合液中の粒子の粒子径(D50)をいう。また、
図2の「経時粒子径D50(nm)」とは、室温25℃下で1カ月静置した後の金属酸リチウム分散液中の粒子の粒子径(D50)をいう。
【0208】
そして、測定した「初期粒子径D50(nm)」及び「経時粒子径D50(nm)」を、評価基準「〇〇(VERY GOOD)」、「〇(GOOD)」、又は「×(BAD)」により評価した。評価基準「〇〇(VERY GOOD」は、「D50<20nm」を満たすものを示す。評価基準「〇(GOOD)」は、「20nm≦D50≦100nm」を満たすものを示す。評価基準「×(BAD)」は、「100nm<D50」を満たすものを示す。なお、上述したフィルタリングは、「初期粒子径D50(nm)」の測定時に行ったが、「経時粒子径D50(nm)」の測定時は行わず、超音波処理のみを実施した。
【0209】
〈経時安定性試験〉
実施例1~15、及び比較例1~2に係る金属酸リチウム混合液を室温25℃で1カ月静置した後、白色沈殿やゲル化の有無を目視観察することにより行った。白色沈殿やゲル化が一つも観察されなかったものは経時安定性を有するとして「○」と評価し、白色沈殿やゲル化が一つでも観察されたものは経時安定性を有しないとして「×」と評価した。ここで、ゲル化の判定は、各タンタル酸化合物分散液をプラスチック容器に入れ、当該容器を逆さまにした際、速やかに落下しない分散液をゲル化していると判定した。また、1カ月静置後の実施例1~15、及び比較例1~2に係る金属酸リチウム混合液中の粒子の経時粒子径D50を、上述した動的光散乱法を用いて測定した。
【0210】
〈成膜性試験〉
集電板の代替品であるガラス基板の表面に形成した塗膜の外観評価を光学顕微鏡で観察することによって行った。実施例1~15、及び比較例1~2に係る金属酸リチウム混合液を0.22μm孔径のフィルタで濾過しながらシリンジを用いて、中性洗剤により脱脂洗浄した後、乾燥を行った25mm×25mmのガラス基板に滴下し、スピンコート(700rpm、10秒、その後1500rpm、15秒)により、塗布した。そして、110℃で、30秒乾燥することにより、ガラス基板上に塗膜を形成した。形成した塗膜の中央10mm×10mmの範囲において、光学顕微鏡(倍率:40倍)で当該ガラス基板を観察し、気泡、塗工ムラ、ひび割れが、一つも観察されなかったものは成膜性に優れているとして「○(GOOD)」と評価し、一つでも観察されたものを成膜性に優れていないとして「×(BAD)」と評価した。
【0211】
図1、
図2に示す通り、実施例1~15に係る金属酸リチウム混合液は、金属酸リチウム混合液に含まれる、リチウムのモル数をLiと、2種以上の金属の総モル数をMとし、モル比Li/Mが0.1以上10以下であり、且つ動的光散乱法による前記金属酸リチウム混合液中の粒子の粒子径(D50)が100nm以下であると、水への分散性が高く、溶解性も優れるものであった。
【0212】
実施例1~15に係る金属酸リチウム混合液は、選択された前記金属酸リチウム分散液が、ニオブ酸リチウム分散液の場合、ニオブ含有量がNb換算で0.001質量%以上20質量%以下であり、タンタル酸リチウム分散液の場合、タンタル含有量がTa換算で0.001質量%以上12質量%以下であり、モリブデン酸リチウム分散液の場合、モリブデン含有量がMo換算で0.001質量%以上22質量%以下であり、タングステン酸リチウム分散液の場合、タングステン含有量がW換算で0.001質量%以上23質量%以下であると、当該金属酸リチウム混合液の実用性及び安定性を両立する点で好ましく、また極性溶媒、とりわけ水への分散性及び溶解性が向上する点で好ましかった。
【0213】
実施例1~15に係る金属酸リチウム混合液は、金属酸リチウム混合液中のニオブ、タンタル、モリブデン、及びタングステンの総含有量が、メタル換算で0.001質量%以上50質量%以下であると、分散性の高い分散液であった。
【0214】
実施例1~15に係る金属酸リチウム混合液のpHが8以上であると、経時安定性に優れていた。
【0215】
実施例1~15に係る金属酸リチウム混合液は、1カ月経過した後であっても金属酸リチウム混合液中の粒子の経時粒子径D50は初期粒子径D50と比して大きな差は見られず、経時安定性に優れるものであった。
【0216】
実施例1~15に係る金属酸リチウム混合液から形成した金属酸リチウム膜は、各金属酸リチウム混合液から形成した塗膜を光学顕微鏡で観察した結果、当該塗膜中に粗粒子が存在せず、且つ気泡、塗工ムラ、ひび割れが一つも観察されず、成膜性に優れるものであった。
【0217】
本明細書開示の発明は、各発明や実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明に係る金属酸リチウム混合液は、極性溶媒、とりわけ水への分散性が高く、水に対する溶解性も良好で、且つ保存安定性も優れていることから、リチウムイオン二次電池の正極活物質を被覆するものとして好適である。また、本発明に係る金属酸リチウム混合液は、保存安定性に優れており、経時変化によって、沈殿物が生じることによる不良品の発生率を抑えられることから、廃棄物を減らすことができ、廃棄物の処分におけるエネルギーコストも削減することが可能となる。さらに、本発明に係る金属酸リチウム混合液は、成膜性の形成も良好であるため、被覆されたリチウムイオン二次電池の正極活物質においても同様に廃棄物を減らすことができ、また不良品の発生率を抑えることができる。これらの点により、天然資源の持続可能な管理及び効率的な利点、並びに脱炭素(カーボンニュートラル)化を達成することにつながる。
【要約】
本発明の金属酸リチウム混合液は、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステンからなる群より選択される2種以上の金属酸リチウム分散液を含有する金属酸リチウム混合液であって、金属酸リチウム混合液に含まれる、前記金属酸リチウム混合液1Lあたりのリチウムのモル数をLiと、前記金属酸リチウム混合液1Lあたりの2種以上の金属の総モル数をMとし、モル比Li/Mが0.1以上10以下であり、且つ動的光散乱法による前記金属酸リチウム混合液中の粒子の粒子径(D50)が100nm以下である。