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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】送風ノズル
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/06 20060101AFI20240830BHJP
   F24F 13/062 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
F24F13/06 A
F24F13/062
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020126189
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023329
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】勝又 慎介
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-014730(JP,U)
【文献】実開昭52-000837(JP,U)
【文献】実開平06-046246(JP,U)
【文献】特開昭60-155002(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0715319(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-0953199(KR,B1)
【文献】特開2004-361049(JP,A)
【文献】実開昭62-130341(JP,U)
【文献】特開2016-097692(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104964410(CN,A)
【文献】特開2003-306032(JP,A)
【文献】中国実用新案第208059221(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第106403049(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/06
F24F 13/062
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
空調機から搬送される空調空気を前記筐体内に供給する供給口と、
前記供給口から供給される前記空調空気を前記筐体外に吹き出す外気連通口と、
前記外気連通口に取り付けられ、前記外気連通口から吹き出される前記空調空気を複数の吹出気流として分流する分流機構と、
を備え、
前記筐体は、筒形部および拡大部を含み、
前記拡大部は、前記外気連通口に向かうにつれて内部の開口面積が増加する筒状であり、
前記供給口から供給された前記空調空気は、前記筒形部の内部および前記拡大部の内部をこの順に流通したのち、前記外気連通口から前記分流機構へ流れ、
前記分流機構は、前記外気連通口と対向して配置される分流部と、前記吹出気流を吹き出す複数の吹出口と、互いに隣接する前記吹出口との間を分離する分離部であって、前記外気連通口の外縁から前記外気連通口の中心軸に向かって延伸し、前記分流部の外縁と連結する前記分離部と、を有して構成され
複数の前記吹出口は、複数の前記吹出口の合計開口面積が前記外気連通口の開口面積よりも大きくなるように形成されていることを特徴とする送風ノズル。
【請求項2】
前記分離部は、複数の前記吹出口の開口面積を調整するための開口調整部を有していることを特徴とする請求項1に記載の送風ノズル。
【請求項3】
前記開口調整部は、前記外気連通口の前記中心軸を軸として回動することにより前記開口面積を調整するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の送風ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風ノズルに関し、特に冷暖房などの目的で空気を目的場所に搬送するための送風ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場、倉庫、競技場、業務用の厨房などの大空間において使用される送風ノズルとして、空調空気を目的場所に向かってスポット的に到達させることが可能なパンカールーバーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、従来の送風ノズル101について、図11を参照して説明する。
【0004】
従来の送風ノズル101は、半球体形状の本体102と、本体102の一方に拡径口103を有し、且つ、他方に送風口104を有してなる漏斗形の送風案内機構105と、送風案内機構105の送風口104と連通する短筒状の送風筒106と、を有して構成される。そして、従来の送風ノズル101では、空調空気は、送風案内機構105を介して送風筒106から所定方向に向けてスポット的な吹出気流107となって吹き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-200785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の送風ノズル101では、送風筒106から吹き出された吹出気流107は拡散せずに局所的に流れるゆえに、吹出気流107と、この吹出気流107の周辺の静止している空間内の空気が誘引されることによって生じる誘引気流108とが合わさった混合気流109もまた局所的に流れることになる。このため、混合気流109は、所定距離離れた目的場所にいる被対象者の身体の一部にしか当たらないので、被対象者の快適性を十分に向上させることができず、ひいては被対象者の生産性を十分に高めることができなかった。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、空調空気を目的場所に搬送する際、簡易的な構成で吹出気流の吹き出し範囲を広げることが可能な送風ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、この目的を達成するために、本発明に係る送風ノズルは、筐体と、空調機から搬送される空調空気を筐体内に供給する供給口と、供給口から供給される空調空気を筐体外に吹き出す外気連通口と、外気連通口に取り付けられ、外気連通口から吹き出される空調空気を複数の吹出気流として分流する分流機構と、を備える。そして、分流機構は、外気連通口と対向して配置される分流部と、吹出気流を吹き出す複数の吹出口と、互いに隣接する吹出口との間を分離する分離部であって、外気連通口の外縁から外気連通口の中心軸に向かって延伸し、分流部の外縁と連結する分離部と、を有して構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、空調空気を目的場所に搬送する際、簡易的な構成で吹出気流の吹き出し範囲を広げることが可能な送風ノズルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る送風ノズルの構成を示す前方斜視図である。
図2図2は、送風ノズルの構成を示す後方斜視図である。
図3図3は、送風ノズルの構成を示す断面図である。
図4図4は、送風ノズルの構成を示す正面図である。
図5図5は、送風ノズルの構成部品である吹出口調整板の構成を示す前方斜視図である。
図6図6(a)は、吹出口調整板を第一位置とした状態での送風ノズルの側面図であり、図6(b)は、吹出口調整板を第二位置とした状態での送風ノズルの側面図である。
図7図7は、送風ノズルの内部を流通する気流の流れを示す断面図である。
図8図8は、送風ノズルから吹出気流を吹き出すことにより生じる各気流の流れを示す模式図である。
図9図9は、送風ノズルの吹出口調整部を第一位置とした状態での各気流の流れを示す模式図である。
図10図10は、送風ノズルの吹出口調整部を第二位置とした状態での各気流の流れを示す模式図である。
図11図11は、従来の送風ノズルでの気流の流れを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る送風ノズルは、筐体と、空調機から搬送される空調空気を筐体内に供給する供給口と、供給口から供給される空調空気を筐体外に吹き出す外気連通口と、外気連通口に取り付けられ、外気連通口から吹き出される空調空気を複数の吹出気流として分流する分流機構と、を備える。そして、分流機構は、外気連通口と対向して配置される分流部と、吹出気流を吹き出す複数の吹出口と、互いに隣接する吹出口との間を分離する分離部であって、外気連通口の外縁から外気連通口の中心軸に向かって延伸し、分流部の外縁と連結する分離部と、を有して構成される。
【0012】
こうした構成によれば、外気連通口から吹き出される空調空気に対して、分流部によって筐体の外周方向(遠心方向)の速度成分が付加され、空調空気は、筐体の外周側領域に向けて複数の吹出口のそれぞれから吹出気流として分流されて吹き出される。この際、吹出気流の周辺の静止空気が吹出気流によって誘引され、分離部の外周側領域、つまり隣接する吹出気流の間を誘引気流として流れる。これにより、吹出気流は、分流された吹出気流同士が合流しにくくなるとともに、誘引気流と合わさって混合気流として流れるようになるので、分流機構を設けない従来の送風ノズルと比べて、送風ノズルの吹出気流の吹き出し範囲を広げることになる。この結果、送風ノズルから吹き出される混合気流を、所定距離離れた目的場所にいる被対象者の身体全体に当てることができるので、被対象者の快適性を向上させることができ、ひいては被対象者の生産性を高めることができる。つまり、空調空気を目的場所に搬送する際、分流機構という簡易的な構成で吹出気流の吹き出し範囲を広げることが可能な送風ノズルとすることができる。
【0013】
また、本発明に係る送風ノズルでは、複数の吹出口は、複数の吹出口の合計開口面積が外気連通口の開口面積よりも大きくなるように形成されていることが好ましい。このようにすることで、空調機から搬送される空気の風量が同一であれば、吹出気流の吹出口における風速は、外気連通口における風速よりも小さくなる。空気という流体の粘性の性質により、吹出気流の風速が小さいほど、吹出気流に対する誘引気流の風量が少なくなるため、分流機構を設けない従来の送風ノズルと比べて、外気環境との温度差が大きい混合気流を搬送することが可能となる。例えば、高温環境中に低温の吹出気流を吹き出す場合には、吹出気流と比較して温度の高い誘引気流の流量を抑制することになり、その結果、空間環境と比較して温度の低い混合気流を搬送することができる。
【0014】
また、本発明に係る送風ノズルでは、分離部は、複数の吹出口の開口面積を調整するための開口調整部を有して構成してもよい。こうした構成によれば、分離部の外周側領域の面積、つまり隣接する吹出気流の間を流れる誘引気流の風量が調整されるので、複数の吹出口の開口面積に応じた吹出気流の吹き出し範囲とすることが可能となる。
【0015】
また、本発明に係る送風ノズルでは、開口調整部は、外気連通口の中心軸を軸として回動することにより開口面積を調整するように構成されていることが好ましい。このようにすることで、開口面積を容易に調整することができる。
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、全図面を通して、同一の部位については同一の符号を付して説明を省略している。さらに、本発明に直接には関係しない各部の詳細については重複を避けるために、図面ごとの説明は省略している。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
(実施の形態1)
まず、図1図5を参照して、本発明の実施の形態1に係る送風ノズル1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る送風ノズル1の構成を示す前方斜視図である。図2は、送風ノズル1の構成を示す後方斜視図である。図3は、送風ノズル1の構成を示す断面図である。図4は、送風ノズル1の構成を示す正面図である。図5は、送風ノズル1の構成部品である吹出口調整部6の構成を示す前方斜視図である。
【0019】
本発明の実施の形態1に係る送風ノズル1は、大空間において、空調機から搬送される空調空気を目的場所の被対象者に向かってスポット的に到達させるためのノズルである。
【0020】
送風ノズル1は、図1及び図2に示すように、ノズルの主要部分である筐体2と、筐体2の先端に取り付けられた分流機構とを有して構成される。
【0021】
筐体2は、中空の球体部7と、中空円筒形の直線部8と、中空円筒状にテーパーが設けられている拡大部9とがこの順番でそれぞれの端面の肉厚部にて接合されて構成されている。そして、球体部7の端面(直線部8が接合されていない側の端面)には、円形形状の供給口10が形成される。この供給口10には、空調機から延設して配管される空調ダクト(図示せず)が接続される。そして、供給口10は、空調機から搬送される空調空気を筐体2内に供給する。
【0022】
また、拡大部9の端面(直線部8が接合されていない側の端面)には、円形形状の外気連通口11が形成されている。この外気連通口11には、その外縁に分流機構が取り付けられている。そして、外気連通口11は、筐体2内に供給された空調空気を分流機構内に吹き出す。ここで、拡大部9は、送風ノズル1の圧力損失を増加させることなく、外気連通口11から吹き出す空調空気を外周側方向(遠心方向)に偏向させる部材である。
【0023】
なお、筐体2は、外気連通口11の中心軸51を、拡大部9、直線部8、球体部7、供給口10の共通中心軸として配置されている。
【0024】
分流機構は、外気連通口11に取り付けられ、外気連通口11から吹き出される空調空気を複数の吹出気流20(図7参照)として分流する取付部材である。
【0025】
より詳細には、分流機構は、外気連通口11と対向して配置される分流部3と、吹出気流20を吹き出す複数の吹出口19と、互いに隣接する吹出口19との間を分離する分離部5と、を有して構成される。
【0026】
分流部3は、筐体2(外気連通口11)から所定距離離れて設置される円錐形状の部材である。分流部3の底面13は、外気連通口11の開口面積よりも小さく、且つ、外気連通口11の中心軸51上において外気連通口11と対向して配置されている。また、詳細は後述するが、分流部3の底面13には、図3に示すように、吹出口調整部6を構成する円形部17が嵌め込まれている。なお、請求項では、円形部17を含めた分流部3を、「分流部」としている。
【0027】
分離部5は、ピラー4とステイ18とを有して構成され、外気連通口11の外縁側から外気連通口11の中心軸51に向かって延伸し、分流部3の外縁側と連結する。こうした構成により、分離部5は、互いに隣接する吹出口19との間を分離する。
【0028】
ピラー4は、図2及び図4に示すように、拡大部9の外気連通口11から分流部3の底面13に向けて分流機構の内周側に傾けた状態で配置されている。言い換えると、ピラー4は、外気連通口11の外縁から外気連通口11の中心軸51に向かって延伸し、分流部3の外縁と連結されている。そして、ピラー4は、図3に示すように、ピラー4の外縁の延長線が分流部3の母線15と略一致するように形成されている。そして、ピラー4は、図4に示すように、中心軸51の全周360°において90°のピッチで4個形成され、それぞれ10°の領域を占めて形成されている。つまり、ピラー4は、こうした4本のピラー4によって分流部3を把持している。
【0029】
ステイ18は、吹出口調整部6の一部として構成され、複数の吹出口19の開口面積を調整する。詳細は後述する。
【0030】
複数の吹出口19のそれぞれは、図1及び図4に示すように、分流部3の外縁と、分離部5と、外気連通口11の外縁とによって構成される開口である。本実施の形態では、分流機構には、同一形状で、同じ開口面積を有する吹出口19が4つ形成されている。そして、吹出口19は、分流部3を筐体2(外気連通口11)から所定距離離れた位置に設けることにより、4つの吹出口19の合計開口面積が外気連通口11の開口面積(厳密には、後述する吹出口調整部6を構成する環状部16の開口面積)よりも大きく形成されている。
【0031】
次に、吹出口調整部6について説明する。なお、吹出口調整部6は、請求項の「開口調整部」に相当する。
【0032】
吹出口調整部6は、分流機構の内部に設けられ、図5に示すように、環状部16と、環状部16から所定距離離れて配置される円形部17と、環状部16と円形部17とを連結する4本のステイ18とを有して構成される。
【0033】
環状部16は、外気連通口11に対応する開口を有しており、その外周側面の全周に凸部16aが形成されている。そして、環状部16の凸部16aは、拡大部9の内周側面の全周に設けられた第一凹部12と勘合されている。
【0034】
円形部17は、円形形状を有しており、分流部3に設けられた円形形状の第二凹部14に嵌め込まれている。
【0035】
ステイ18は、図3に示すように、環状部16から円形部17に向けて分流機構の内周側に傾けた状態で配置されている。言い換えると、ステイ18は、環状部16の外縁から外気連通口11の中心軸51(図2参照)に向かって延伸し、円形部17の外縁と連結されている。そして、ステイ18は、ピラー4と同様、中心軸51の全周360°において90°のピッチで4個形成され、それぞれ10°の領域を占めて形成されている。つまり、ステイ18は、こうした4本のステイ18によって円形部17を把持していると言える。
【0036】
そして、吹出口調整部6は、中心軸51を共通中心軸として配置され、回動させることが可能となっている。具体的には、吹出口調整部6は、回動してステイ18が移動した際、ピラー4との相対位置関係によって4つの吹出口19の開口面積を変化させる。
【0037】
次に、図6を参照して、吹出口調整部6の回動による吹出口19の開口面積の変化について説明する。図6(a)は、吹出口調整部6を第一位置とした状態での送風ノズル1の側面図であり、図6(b)は、吹出口調整部6を第二位置とした状態での送風ノズル1の側面図である。
【0038】
図6(a)に示すように、吹出口調整部6を第一位置とした状態では、一つの分離部5は、ステイ18の右側エッジとピラー4の左側エッジとが重なり、中心軸51の全周360°のうち20°の領域を占有するような配置となる。つまり、一つの吹出口19は、中心軸51の全周360°のうち70°の領域を開口する。
【0039】
一方、図6(b)に示すように、吹出口調整部6を第二位置とした状態では、一つの分離部5は、ステイ18とピラー4とが完全に重なり、中心軸51の全周360°のうち10°の領域を占有するような配置となる。つまり、一つの吹出口19は、中心軸51の全周360°のうち80°の領域を開口する。
【0040】
以上のように、本実施の形態では、吹出口調整部6は、第一位置と第二位置との間で回動可能に構成されており、一つの分離部5による占有領域(遮蔽面積)は、中心軸51の全周360°のうち20°~10°の範囲となる。つまり、一つの吹出口19の開口面積は、中心軸51の全周360°のうち70~80°の範囲で変化させることができる。
【0041】
上述した吹出口19の開口面積の調節によって、送風ノズル1から創出される気流の質を調節することが可能になるが、これに関しては後述する。
【0042】
次に、送風ノズル1の作動原理について説明する。
【0043】
まずは、図7を参照して、吹出口19から空調空気が吹き出される前までの作動原理について説明する。図7は、送風ノズル1の内部を流通する気流の流れを示す断面図である。
【0044】
図7に示すように、送風ノズル1では、空調機が稼働することで、空調ダクトを通して筐体2の供給口10から筐体2内に空調空気が送り込まれる。そして、供給口10から送り込まれた空調空気は、球体部7の内部、直線部8の内部、拡大部9の内部の順に流通したのち、外気連通口11から分流機構へと流れる。このうち、外気連通口11の外周側(内壁面側)を流れる空調空気は、送風ノズル1の圧力損失を増加させることなく、拡大部9の内壁面に沿って外周側方向(遠心方向)に偏向されて流れる。また、外気連通口11の内周側(中心軸51側)を流れる空調空気は、分流部3に嵌め込まれた円形部17によって筐体2の外周側方向(遠心方向)の速度成分が付加され、外周側方向に偏向して流れる。これらの結果、空調空気は、吹出口19から外周側方向(遠心方向)に吹出気流20として吹き出されることになる。
【0045】
一方、隣接する吹出口19を分離する分離部5(ピラー4及びステイ18により構成される分離部5)は、分流機構の内周側領域と外周側領域との隔壁(遮蔽物)となるため、分離部5の外周側領域には空調空気が流れていかない。つまり、本実施の形態では、空調空気は、4つの吹出口19のそれぞれから、4つの吹出気流20として分流されて吹き出されることになる。
【0046】
次に、図8図10を参照して、吹出口19から空調空気が吹き出された後の作動原理について説明する。図8は、送風ノズル1から吹出気流20を吹き出すことにより生じる各気流の流れを示す模式図である。図9は、送風ノズル1の吹出口調整部6を第一位置とした状態での各気流の流れを示す模式図である。図10は、送風ノズル1の吹出口調整部6を第二位置とした状態での各気流の流れを示す模式図である。
【0047】
空気という流体の性質上、一定の風速を有して流れている気流の周辺の静止している空気は、その気流に誘引されて流れることになる。そして、誘引されているのにも関わらず、何らかの影響により、誘引される空気量が少なくなる領域は、大気圧よりも圧力が低い負圧になることが知られており、この現象は誘引される空気量が少なくなるほど、大気圧との圧力差が大きくなり負圧の程度が強くなることが知られている。
【0048】
送風ノズル1では、図8に示すように、吹出口19から吹出気流20が吹き出されることにより、この吹出気流20の周辺の静止している空気(外気)が誘引気流21として流れることになる。
【0049】
こうした誘引気流21のうち、送風ノズル1の外周表面近傍で流れる第一誘引気流22は、互いに隣接する吹出気流20の間、つまり分離部5(ピラー4及びステイ18)の外周側領域を流れた後に、分流部3の後段領域(下流領域)となる各吹出気流20の内周側領域23に流れることになる。
【0050】
そして、この際、第一誘引気流22の風量の大小によって、各吹出気流20の内周側領域23の負圧の程度が変化する。つまり、第一誘引気流22の風量が多い場合には、各吹出気流20の内周側領域23の負圧の程度は低くなり、第一誘引気流22の風量が少ない場合には、各吹出気流20の内周側領域23の負圧の程度は強くなる。
【0051】
より詳細には、図9に示すように、吹出口調整部6を第一位置とした状態では、1個あたりの吹出口19の面積が70°となり、隣接する吹出気流20との間の間隔が広くなるため、分離部5の外周側領域を流れる第一誘引気流22の風量が多くなる。このため、吹出気流20の内周側領域23の負圧の程度が弱くなり、4つの吹出気流20同士は合流しにくくなる。そして、筐体2の外周側に向けて吹き出された吹出気流20は、第一誘引気流22を含む誘引気流21とともに混合気流24として流れていく。この結果、送風ノズル1の吹出気流20の吹き出し範囲は、分流機構を設けない従来の送風ノズルと比べて広がることになる。つまり、吹出口調整部6を第一位置とした状態では、送風ノズル1から吹き出される混合気流24を、所定距離離れた目的場所にいる被対象者の身体全体に当てることができる。
【0052】
また、図10に示すように、吹出口調整部6を第二位置とした状態では、1個あたりの吹出口19の面積が80°となり、隣接する吹出気流20との間の間隔が狭くなるため、分離部5の外周側領域を流れる第一誘引気流22の風量が少なくなる。このため、吹出気流20の内周側領域23の負圧の程度が強くなり、4つの吹出気流20同士が合流しやすくなる。そして、筐体2の外周側に向けて吹き出された吹出気流20は、内周側領域23に引き寄せられ、第一誘引気流22を含む誘引気流21とともに混合気流24として流れていく。この結果、送風ノズル1の吹出気流20の吹き出し範囲は、分流機構を設けない従来の送風ノズルと同じように狭まることになる。つまり、吹出口調整部6を第二位置とした状態では、送風ノズル1から吹き出される混合気流24を、所定距離離れた目的場所にいる被対象者に局所的に当てることができる。
【0053】
以上のように、本実施の形態では、吹出口調整部6は、第一位置と第二位置との間で回動可能に構成されており、所定距離離れた目的場所にいる被対象者に向けた混合気流24の送風範囲を所望の用途に合わせた使い方によって調整することが可能となっている。
【0054】
以上、本実施の形態に係る送風ノズル1によれば、以下の効果を享受することができる。
【0055】
(1)送風ノズル1は、筐体2と、空調機から搬送される空調空気を筐体2内に供給する供給口10と、供給口10から供給される空調空気を筐体2外に吹き出す外気連通口11と、外気連通口11に取り付けられ、外気連通口11から吹き出される空調空気を複数の吹出気流20として分流する分流機構と、を備える。そして、分流機構を、外気連通口11と対向して配置される分流部3(円形部17を含む)と、吹出気流20を吹き出す複数の吹出口19と、互いに隣接する吹出口19との間を分離する分離部5であって、外気連通口11の外縁から外気連通口11の中心軸51に向かって延伸し、分流部3の外縁と連結する分離部5と、を有して構成した。
【0056】
これにより、外気連通口11から吹き出される空調空気に対して、分流部3によって筐体2の外周方向(遠心方向)の速度成分が付加され、空調空気は、筐体2の外周側領域に向けて複数の吹出口19のそれぞれから吹出気流20として分流されて吹き出される。この際、吹出気流20の周辺の静止空気が吹出気流20によって誘引され、分離部5の外周側領域、つまり隣接する吹出気流20の間を誘引気流21として流れる。これにより、吹出気流20は、分流された吹出気流20同士が合流しにくくなるとともに、誘引気流21と合わさって混合気流24として流れるようになるので、分流機構を設けない従来の送風ノズルと比べて、送風ノズル1の吹出気流20の吹き出し範囲を広げることになる。この結果、送風ノズル1から吹き出される混合気流24を、所定距離離れた目的場所にいる被対象者の身体全体に当てることができるので、被対象者の快適性を向上させることができ、ひいては被対象者の生産性を高めることができる。つまり、空調空気を目的場所に搬送する際、分流機構という簡易的な構成で吹出気流20の吹き出し範囲を広げることが可能な送風ノズル1とすることができる。
【0057】
(2)送風ノズルで1では、複数の吹出口19を、複数の吹出口19の合計開口面積が外気連通口11の開口面積よりも大きくなるように形成した。これにより、空調機から搬送される空気の風量が同一であれば、吹出気流20の吹出口19における風速は、外気連通口11における風速よりも小さくなる。空気という流体の粘性の性質により、吹出気流20の風速が小さいほど、吹出気流20に対する誘引気流21の風量が少なくなるため、分流機構を設けない従来の送風ノズルと比べて、外気環境との温度差が大きい混合気流24を搬送することが可能となる。例えば、高温環境中に低温の吹出気流20を吹き出す場合には、吹出気流20と比較して温度の高い誘引気流21の流量を抑制することになり、その結果、空間環境と比較して温度の低い混合気流24を搬送することができる。
【0058】
(3)送風ノズル1では、分離部5を、複数の吹出口19の開口面積を調整するための吹出口調整部6を有して構成した。これにより、分離部5の外周側領域の面積、つまり隣接する吹出気流20の間を流れる誘引気流21の風量が調整されるので、複数の吹出口19の開口面積に応じた吹出気流20の吹き出し範囲とすることが可能となる。
【0059】
(4)送風ノズル1では、吹出口調整部6を、外気連通口11の中心軸51を軸として回動することにより開口面積を調整するように構成した。これにより、吹出口調整部6を第一位置とした状態と吹出口調整部6を第二位置とした状態との間で開口面積を容易に調整することができる。
【0060】
(5)送風ノズル1では、円錐形状の分流部3を、ピラー4の外縁の延長線が分流部3の母線15と略一致するように形成した。これにより、ピラー4の外周側領域から分流部3の外周側領域に沿って第一誘引気流22が流れやすくなり、第一誘引気流22を、分流部3の下流領域(後流領域)となる内周側領域23に流れるようにすることができる。この結果、分流部3の下流領域での第一誘引気流22の剥離(拡散)を抑制できる。
【0061】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0062】
本実施の形態に係る送風ノズル1は、筐体2に対して分流機構を取り付けて固定する構成であるが、筐体2に対して分流機構を脱着可能に構成してもよい。これにより、従来の送風ノズルに対して後付けすることにより、上記した効果を享受することができる。
【0063】
また、本実施の形態に係る送風ノズル1では、筐体2に拡大部9を設けたが、これに限られない。例えば、送風ノズル1の筐体2として、球体部7と直線部8とにより構成したものを用いてもよい。これにより、送風ノズル1の設計自由度が向上する。
【0064】
また、本実施の形態に係る送風ノズル1では、吹出口調整部6を設けたが、これに限られない。例えば、吹出口調整部6を設けなくてもよい。但し、吹出口調整部6を設けない場合には、分離部5となるピラー4の占有領域を、例えば、20°に設計変更を施すことによって、同様の効果を享受することができる。
【0065】
また、本実施の形態に係る送風ノズル1では、ピラー4の占有領域を10°、ステイ18の占有領域を10°とする分離部5を設け、1個あたりの吹出口19の占有領域を80°としたが、特にこれらの数値に限定するものではない。但し、吹出口19の個数が4個の条件下においては、1個のピラー4と1個のステイ18を合わせて30°程度の占有領域を上限として設定することが好ましい。これは、1個の分離部5での占有領域を30°以上に設定すると、混合気流24の拡散程度が非常に強くなり、混合気流24の風速が非常に小さくなって被対象者が混合気流24を感じることが困難になってしまうからである。
【0066】
また、本実施の形態に係る送風ノズル1では、吹出口調整部6を手動で回動することにより、吹出口19の開口面積の調整を具現化しているが、これに限られない。例えば、リモコンなどにより遠隔操作によって、吹出口調整部6をステッピングモータで回動できる構成にしてもよい。これにより、被対象者(利用者)の利便性がより高めることができる。
【0067】
また、本実施の形態に係る送風ノズル1では、4つの吹出口19を設けたが、吹出口19の個数は、2つ以上であればよく、特に限定するものではない。但し、隣接する吹出口19の間隔(分離部5の占有面積)が同一の条件下においては、吹出口19の個数を少なくするほど、吹出気流20の風速および誘引気流21の風速を制御しやすくなり、混合気流24の吹き出し範囲での風速分布および風温分布の均一性を高めることできる。
【0068】
また、本実施の形態に係る送風ノズル1では、各部材(拡大部9、直線部8、球体部7、供給口10)を外気連通口11の中心軸51を共通中心軸として配置したが、これに限られない。例えば、空調空気の流れの軸方向視点で少なくともそれぞれの一部が重なるように配置してもよい。これによって、空調空気が分流部3によって偏向して流れるようになることで、吹出気流20を送風ノズル1の外周側領域に吹き出させることが可能になり、上述した効果を享受することが可能になる。
【0069】
また、本実施の形態に係る送風ノズル1では、円錐形状の分流部3を用いたが、特に形状を限定するものではない。但し、円錐形状とすることで、ピラー4及びステイ18の外周側領域を流れる第一誘引気流22が、分流部3に沿って内周側領域23に流すことが可能になる。これにより、内周側領域23で第一誘引気流22の剥離の発生を抑制することが可能になり、効率的に混合気流24を搬送することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る送風ノズルは、空調空気を目的場所に搬送する際、簡易的な構成で吹出気流の吹き出し範囲を広げることができるので、目的場所の被対象者の快適性あるいは生産性を十分に高めることを可能にするものである。
【符号の説明】
【0071】
1 送風ノズル
2 筐体
3 分流部
4 ピラー
5 分離部
6 吹出口調整部
7 球体部
8 直線部
9 拡大部
10 供給口
11 外気連通口
12 第一凹部
13 底面
14 第二凹部
15 母線
16 環状部
16a 凸部
17 円形部
18 ステイ
19 吹出口
20 吹出気流
21 誘引気流
22 第一誘引気流
23 内周側領域
24 混合気流
51 中心軸
101 送風ノズル
102 本体
103 拡径口
104 送風口
105 送風案内機構
106 送風筒
107 吹出気流
108 誘引気流
109 混合気流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11