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特許7546201制御方法、プログラム、及び分散電源システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】制御方法、プログラム、及び分散電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20240830BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240830BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20240830BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20240830BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 130
H02J3/38 110
H02J3/46
H02J7/35 K
H02J13/00 301A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020067045
(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公開番号】P2021164373
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大槻 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】小田 政志
【審査官】山口 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-161939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/32
H02J 3/38
H02J 3/46
H02J 7/35
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電源から電力供給を受ける需要家の施設に設けられ、前記施設に存在する負荷に対して電力を供給可能な蓄電システムの容量に対して、前記系統電源の電力品質を安定化するための系統安定化制御に利用可能な調整用容量を設定する設定処理と、
前記蓄電システムの容量のうち前記調整用容量の充電分を前記系統電源に放電する放電処理、及び、前記系統電源から前記調整用容量に充電する充電処理の少なくとも一方を含む前記系統安定化制御を実行する系統安定化処理と、を含み、
前記設定処理では、前記蓄電システムの充放電能力に関連する関連事象に基づいて前記調整用容量を更新する、
制御方法。
【請求項2】
前記関連事象の発生を抑制する抑制処理を更に含む、
請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
系統電源から電力供給を受ける需要家の施設に設けられ、前記施設に存在する負荷に対して電力を供給可能な蓄電システムの容量に対して、前記系統電源の電力品質を安定化するための系統安定化制御に利用可能な調整用容量を設定する設定処理と、
前記蓄電システムの容量のうち前記調整用容量の充電分を前記系統電源に放電する放電処理、及び、前記系統電源から前記調整用容量に充電する充電処理の少なくとも一方を含む前記系統安定化制御を実行する系統安定化処理と、
前記蓄電システムの充放電能力に関連する関連事象の発生を抑制する抑制処理と、を含む、
制御方法。
【請求項4】
系統電源から電力供給を受ける需要家の施設に設けられ、前記施設に存在する負荷に対して電力を供給可能な蓄電システムの容量に対して、前記系統電源の電力品質を安定化するための系統安定化制御に利用可能な調整用容量を設定する設定処理と、
前記蓄電システムの容量のうち前記調整用容量の充電分を前記系統電源に放電する放電処理、及び、前記系統電源から前記調整用容量に充電する充電処理の少なくとも一方を含む前記系統安定化制御を実行する系統安定化処理と、を含み、
前記蓄電システムは、前記蓄電システムが備える蓄電池の蓄電池電圧が設定電圧に上昇するまでの間は前記蓄電池をCC充電方式で充電し、前記蓄電池の前記蓄電池電圧が前記設定電圧に到達すると前記蓄電池をCV充電方式で充電し、
前記設定処理では、前記CC充電方式での最大の充電率から前記調整用容量を引いた充電率に基づいて、前記需要家で利用可能な容量を更に設定する、
制御方法。
【請求項5】
前記設定処理では、前記系統電源への放電に利用する場合と、前記系統電源からの充電に利用する場合のそれぞれで前記調整用容量を設定する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項6】
前記系統安定化処理では、前記系統電源での需給バランス、前記系統電源の系統電圧の電圧値、及び前記系統電圧の周波数のうちの少なくとも1つに基づいて、前記系統安定化制御を実行する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項7】
前記設定処理では、前記調整用容量を前記蓄電システムの放電下限に基づいて設定する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項8】
前記調整用容量を前記蓄電システムのユーザに提示する提示処理を更に含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項9】
前記提示処理では、前記蓄電システムの残量に関する残量情報を提示する、
請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
コンピュータシステムに、
請求項1~9のいずれか1項に記載の制御方法を実行させるための、
プログラム。
【請求項11】
系統電源から電力供給を受ける需要家の施設に設けられ、前記施設に存在する負荷に対して電力を供給可能な蓄電システムの容量に対して、前記系統電源の電力品質を安定化するための系統安定化制御に利用可能な調整用容量を設定する設定部と、
前記蓄電システムの容量のうち前記調整用容量の充電分を前記系統電源に放電する放電処理、及び、前記系統電源から前記調整用容量に充電する充電処理の少なくとも一方を含む前記系統安定化制御を実行する系統安定化処理部と、を含み、
前記設定部は、前記蓄電システムの充放電能力に関連する関連事象に基づいて前記調整用容量を更新する、
分散電源システム。
【請求項12】
系統電源から電力供給を受ける需要家の施設に設けられ、前記施設に存在する負荷に対して電力を供給可能な蓄電システムの容量に対して、前記系統電源の電力品質を安定化するための系統安定化制御に利用可能な調整用容量を設定する設定部と、
前記蓄電システムの容量のうち前記調整用容量の充電分を前記系統電源に放電する放電処理、及び、前記系統電源から前記調整用容量に充電する充電処理の少なくとも一方を含む前記系統安定化制御を実行する系統安定化処理部と、
前記蓄電システムの充放電能力に関連する関連事象の発生を抑制する事象抑制部と、を含む、
分散電源システム。
【請求項13】
系統電源から電力供給を受ける需要家の施設に設けられ、前記施設に存在する負荷に対して電力を供給可能な蓄電システムの容量に対して、前記系統電源の電力品質を安定化するための系統安定化制御に利用可能な調整用容量を設定する設定部と、
前記蓄電システムの容量のうち前記調整用容量の充電分を前記系統電源に放電する放電処理、及び、前記系統電源から前記調整用容量に充電する充電処理の少なくとも一方を含む前記系統安定化制御を実行する系統安定化処理部と、を含み、
前記蓄電システムは、前記蓄電システムが備える蓄電池の蓄電池電圧が設定電圧に上昇するまでの間は前記蓄電池をCC充電方式で充電し、前記蓄電池の前記蓄電池電圧が前記設定電圧に到達すると前記蓄電池をCV充電方式で充電し、
前記設定部は、前記CC充電方式での最大の充電率から前記調整用容量を引いた充電率に基づいて、前記需要家で利用可能な容量を更に設定する、
分散電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御方法、プログラム、及び分散電源システムに関する。より詳細には、本開示は、分散電源を制御するための制御方法、プログラム、及び分散電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、発電装置及び蓄電装置(蓄電システム)に接続された電力制御装置を開示する。電力制御装置は出力制御情報受信部及び制御部を備える。出力制御情報受信部は、外部から、発電装置の出力を制限する出力制御情報を受信する。制御部は、出力制御情報を受信した場合に、発電装置から電力系統に出力される電力供給量が閾値以下となるように蓄電装置の蓄電量を増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-192209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の電力制御装置では、外部から出力制御情報を受信した場合に、蓄電装置に充電可能な容量が不足している場合、発電装置から電力系統に出力される電力供給量を閾値以下に抑制する制御を実行できない可能性がある。
【0005】
本開示の目的は、蓄電システムの容量を利用した系統安定化制御を実行不能な事態を回避できる制御方法、プログラム、及び分散電源システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の制御方法は、設定処理と、系統安定化処理と、を含む。前記設定処理では、蓄電システムの容量に対して、調整用容量を設定する。前記蓄電システムは、系統電源から電力供給を受ける需要家の施設に設けられ、前記施設に存在する負荷に対して電力を供給可能である。前記調整用容量は、前記系統電源の電力品質を安定化するための系統安定化制御に利用可能な容量である。前記系統安定化処理は、放電処理、及び、充電処理の少なくとも一方を含む。前記放電処理は、前記蓄電システムの容量のうち前記調整用容量の充電分を前記系統電源に放電する処理であり、前記充電処理は、前記系統電源から前記調整用容量に充電する処理である。前記設定処理では、前記蓄電システムの充放電能力に関連する関連事象に基づいて前記調整用容量を更新する。
本開示の一態様の制御方法は、設定処理と、系統安定化処理と、抑制処理と、を含む。前記設定処理では、蓄電システムの容量に対して、調整用容量を設定する。前記蓄電システムは、系統電源から電力供給を受ける需要家の施設に設けられ、前記施設に存在する負荷に対して電力を供給可能である。前記調整用容量は、前記系統電源の電力品質を安定化するための系統安定化制御に利用可能な容量である。前記系統安定化処理は、放電処理、及び、充電処理の少なくとも一方を含む。前記放電処理は、前記蓄電システムの容量のうち前記調整用容量の充電分を前記系統電源に放電する処理であり、前記充電処理は、前記系統電源から前記調整用容量に充電する処理である。前記抑制処理では、前記蓄電システムの充放電能力に関連する関連事象の発生を抑制する。
本開示の一態様の制御方法は、設定処理と、系統安定化処理と、を含む。前記設定処理では、蓄電システムの容量に対して、調整用容量を設定する。前記蓄電システムは、系統電源から電力供給を受ける需要家の施設に設けられ、前記施設に存在する負荷に対して電力を供給可能である。前記調整用容量は、前記系統電源の電力品質を安定化するための系統安定化制御に利用可能な容量である。前記系統安定化処理は、放電処理、及び、充電処理の少なくとも一方を含む。前記放電処理は、前記蓄電システムの容量のうち前記調整用容量の充電分を前記系統電源に放電する処理であり、前記充電処理は、前記系統電源から前記調整用容量に充電する処理である。前記蓄電システムは、前記蓄電システムが備える蓄電池の蓄電池電圧が設定電圧に上昇するまでの間は前記蓄電池をCC充電方式で充電し、前記蓄電池の前記蓄電池電圧が前記設定電圧に到達すると前記蓄電池をCV充電方式で充電する。前記設定処理では、前記CC充電方式での最大の充電率から前記調整用容量を引いた充電率に基づいて、前記需要家で利用可能な容量を更に設定する。
【0007】
本開示の一態様のプログラムは、コンピュータシステムに、前記制御方法を実行させるためのプログラムである。
【0008】
本開示の一態様の分散電源システムは、設定部と、系統安定化処理部と、を含む。前記設定部は、蓄電システムの容量に対して、調整用容量を設定する。前記蓄電システムは、系統電源から電力供給を受ける需要家の施設に設けられ、前記施設に存在する負荷に対して電力を供給可能である。前記調整用容量は、前記系統電源の電力品質を安定化するための系統安定化制御に利用可能な容量である。前記系統安定化処理部は、放電処理、及び、充電処理の少なくとも一方を含む系統安定化制御を実行する。前記放電処理は、前記蓄電システムの容量のうち前記調整用容量の充電分を前記系統電源に放電する処理であり、前記充電処理は、前記系統電源から前記調整用容量に充電する処理である。前記設定部は、前記蓄電システムの充放電能力に関連する関連事象に基づいて前記調整用容量を更新する。
本開示の一態様の分散電源システムは、設定部と、系統安定化処理部と、事象抑制部と、を含む。前記設定部は、蓄電システムの容量に対して、調整用容量を設定する。前記蓄電システムは、系統電源から電力供給を受ける需要家の施設に設けられ、前記施設に存在する負荷に対して電力を供給可能である。前記調整用容量は、前記系統電源の電力品質を安定化するための系統安定化制御に利用可能な容量である。前記系統安定化処理部は、放電処理、及び、充電処理の少なくとも一方を含む系統安定化制御を実行する。前記放電処理は、前記蓄電システムの容量のうち前記調整用容量の充電分を前記系統電源に放電する処理であり、前記充電処理は、前記系統電源から前記調整用容量に充電する処理である。前記事象抑制部は、前記蓄電システムの充放電能力に関連する関連事象の発生を抑制する。
本開示の一態様の分散電源システムは、設定部と、系統安定化処理部と、を含む。前記設定部は、蓄電システムの容量に対して、調整用容量を設定する。前記蓄電システムは、系統電源から電力供給を受ける需要家の施設に設けられ、前記施設に存在する負荷に対して電力を供給可能である。前記調整用容量は、前記系統電源の電力品質を安定化するための系統安定化制御に利用可能な容量である。前記系統安定化処理部は、放電処理、及び、充電処理の少なくとも一方を含む系統安定化制御を実行する。前記放電処理は、前記蓄電システムの容量のうち前記調整用容量の充電分を前記系統電源に放電する処理であり、前記充電処理は、前記系統電源から前記調整用容量に充電する処理である。前記蓄電システムは、前記蓄電システムが備える蓄電池の蓄電池電圧が設定電圧に上昇するまでの間は前記蓄電池をCC充電方式で充電し、前記蓄電池の前記蓄電池電圧が前記設定電圧に到達すると前記蓄電池をCV充電方式で充電する。前記設定部は、前記CC充電方式での最大の充電率から前記調整用容量を引いた充電率に基づいて、前記需要家で利用可能な容量を更に設定する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、蓄電システムの容量を利用した系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る分散電源システムを含む全体システムの概略的なシステム構成図である。
図2図2は、同上の分散電源システムの制御方法を説明するフローチャートである。
図3図3は、同上の分散電源システムの制御方法を説明する説明図である。
図4図4は、同上の分散電源システムが備える蓄電システムの容量の内訳を説明する説明図である。
図5図5は、同上の分散電源システムが提示部に提示する情報の一例を示す図である。
図6図6は、同上の分散電源システムが提示部に提示する情報の一例を示す図である。
図7図7は、同上の分散電源システムが提示部に提示する情報の一例を示す図である。
図8図8は、同上の分散電源システムが備える蓄電システムの充電方式の説明図である。
図9図9は、同上の分散電源システムが備える蓄電システムの充電方式の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
(1)概要
以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0012】
本実施形態の分散電源システム1は、図1に示すように、設定部13と、系統安定化処理部11と、を備える。設定部13は、蓄電システム30の容量に対して、系統電源100の電力品質を安定化するための系統安定化制御に利用可能な調整用容量を設定する。蓄電システム30は、系統電源100から電力供給を受ける需要家の施設F1に設けられ、施設F1に存在する負荷L1に対して電力を供給可能である。系統安定化処理部11は、放電処理及び充電処理の少なくとも一方を含む系統安定化制御を実行する。放電処理は、蓄電システム30の容量のうち調整用容量の充電分を系統電源100に放電する処理であり、充電処理は、系統電源100から調整用容量に充電する処理である。
【0013】
また、本実施形態の分散電源システム1が行う制御方法は、設定処理と、系統安定化処理と、を含む。設定処理では、蓄電システム30の容量に対して、系統電源100の電力品質を安定化するための系統安定化制御に利用可能な調整用容量を設定する。系統安定化処理では、放電処理及び充電処理の少なくとも一方を含む系統安定化制御を実行する。放電処理は、蓄電システム30の容量のうち調整用容量の充電分を系統電源100に放電する処理であり、充電処理は、系統電源100から調整用容量に充電する処理である。
【0014】
本実施形態の分散電源システム1は、系統電源100から電力供給を受ける需要家の施設であって、例えば、戸建の住宅のような施設F1(図1参照)に適用される。なお、分散電源システム1が適用される施設F1は、戸建の住宅に限定されず、集合住宅(マンション)であってもよい。更に、施設F1は、住宅に限らず、非住宅、例えば、オフィスビル、劇場、映画館、公会堂、遊技場、複合施設、飲食店、百貨店、学校、ホテル、旅館、病院、老人ホーム、幼稚園、図書館、博物館、美術館、地下街、駅、空港等であってもよい。施設F1に存在する負荷L1は、系統電源100又は分散電源40から供給される電力で動作する電気機器である。系統安定化制御は、蓄電システム30の調整用容量の充電分を系統電源100に放電する放電処理と、系統電源100から蓄電システム30の調整用容量に充電する充電処理とを含んでいる。例えば、系統電源100の給電能力が電力需要を下回ることによって系統電源100の電圧が低下する場合、分散電源システム1は、系統安定化制御として放電処理を行うことによって、系統電源100の需給バランスを改善し、電力品質の安定化を図る。また、系統電源100の給電能力が電力需要を上回ることによって系統電源100の電圧が上昇する場合、分散電源システム1は、系統安定化制御として充電処理を行うことによって、系統電源100の需給バランスを改善し、電力品質の安定化を図る。なお、系統安定化制御は、負荷L1で消費される有効電力の過不足を調整する制御を含み得る。また、系統安定化制御は、系統電源100の系統電圧の高低を調整するための有効電力入出力調整と、系統電圧の周波数の高低を調整するための有効電力入出力調整と、系統電圧の高低を調整するための無効電力入出力調整との少なくとも1つを含み得る。
【0015】
本実施形態の分散電源システム1では、設定部13が、蓄電システム30の容量に対して、系統電源100の電力品質を安定化するための系統安定化制御に利用可能な調整用容量を設定している。蓄電システム30の容量に対して調整用容量が設定されるので、系統安定化処理部11が系統安定化制御を行う場合に、放電又は充電に必要な容量が不足する可能性を低減でき、蓄電システム30の容量を利用した系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0016】
(2)詳細
(2.1)構成
以下、本実施形態に係る分散電源システム1を含む全体システムについて図面を参照して詳しく説明する。
【0017】
本実施形態では、施設F1に、分散電源システム1と、負荷L1と、受信端末60と、表示部70と、が設けられている。
【0018】
負荷L1は、施設F1内で使用される1又は複数の電気機器を含む。1又は複数の電気機器は、系統電源100及び分散電源システム1のいずれかから電力供給を受けて動作する。
【0019】
受信端末60は、インターネット等のネットワークNT1を介して外部サーバ110と通信する通信機能を有している。外部サーバ110は、施設F1に電力を供給する電力事業者が運営するサーバ装置である。外部サーバ110は系統電源100の需給バランスを常時監視している。外部サーバ110は、系統電源100の供給電力と電力需要との差が所定の閾値を超えると、系統安定化のための制御指令をネットワークNT1経由で需要家の施設F1の受信端末60に出力する。ここで、系統電源100の供給電力が電力需要に比べて不足している場合、外部サーバ110は、例えば所定電力値の逆潮電力を系統電源100に逆潮流させる制御指令を受信端末60に出力する。一方、系統電源100の供給電力が電力需要に比べて過剰である場合、外部サーバ110は、例えば施設F1が系統電源100から受け取る電力を所定電力値だけ増やすように指示する制御指令を受信端末60に出力する。
【0020】
表示部70は、施設F1を使用するユーザが視認可能な場所に設置されたディスプレイ装置を含む。表示部70は、分散電源システム1から入力される提示情報を表示する。
【0021】
次に、分散電源システム1について説明する。
【0022】
分散電源システム1は、コントローラ10と、分散電源40と、インバータ50と、を備える。本実施形態では、施設F1に、分散電源40として、太陽光発電システム20と、蓄電システム30と、が設けられている。つまり、本実施形態では、分散電源40が蓄電システム30を少なくとも含んでいる。蓄電システム30は、再生可能エネルギを利用した太陽光発電システム20等の発電システムに比べて出力が安定しており、空き容量に充電を行うことも可能であるので、系統電源100の安定化のためには蓄電システム30の容量が利用される。また、本実施形態では、分散電源40が、蓄電システム30とは別の電源を含んでおり、具体的には分散電源40が、再生可能エネルギである太陽光を受けて発電を行う太陽光発電システム20を含んでいる。なお、分散電源40は、太陽光以外の風力、水力、波力、潮力、又は地熱等の再生可能エネルギを利用して発電を行う発電システムを含んでもよいし、化石燃料を利用して発電を行う燃料電池等の発電システムを含んでもよい。なお、分散電源システム1には、分散電源40として太陽光発電システム20と蓄電システム30とが設けられているが、太陽光発電システム20の出力電力は日射量等の変化に応じて変動する可能性がある。したがって、分散電源システム1では、系統電源100を安定化するための系統安定化制御に蓄電システム30の出力電力を利用する。
【0023】
太陽光発電システム20は、太陽電池21と、太陽電池21の出力電圧を電圧変換するPV(Photovoltaics)用コンバータ22(電力変換装置)とを備える。
【0024】
太陽電池21は、シリコン系又は化合物半導体系の複数の太陽電池セルを備え、複数の太陽電池セルは直列又は並列に接続されている。
【0025】
PV用コンバータ22は、太陽電池21の出力電圧を所定の電圧値の直流電圧に変換してインバータ50に出力する。PV用コンバータ22は、例えば最大電力点追従(MPPT:Maximum Power Point Tracking)方式で電力変換を行う機能を有している。最大電力点追従方式は、気象条件等の変化に応じて変動する最適動作点に追従しながら電力変換を行う機能である。
【0026】
蓄電システム30は、蓄電池31と、蓄電池用コンバータ32とを備える。
【0027】
蓄電池31は、例えばリチウムイオン電池等の二次電池であるが、蓄電池31はリチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池等の他の二次電池でもよい。
【0028】
蓄電池用コンバータ32は、蓄電池31の充電及び放電を行う機能を有している。蓄電池31の充電時は、蓄電池用コンバータ32は、インバータ50から供給される直流電流の電流値又は直流電圧の電圧値を調整して蓄電池31を充電する。蓄電池31の充電を開始してから蓄電池31の充電電圧が最大電圧に上昇するまでの間、蓄電池用コンバータ32は、蓄電池31に一定の電流を流して蓄電池31を充電するCC(Constant Current)充電を行う。そして、蓄電池31の充電電圧が最大電圧に達すると、蓄電池用コンバータ32は、蓄電池31の充電電圧を最大電圧とするように、蓄電池31に一定値の電圧を印加して蓄電池31を充電するCV(Constant Voltage)充電を行う。また、蓄電池31の放電時は、蓄電池用コンバータ32は、蓄電池31の出力電圧を所定の電圧値の直流電圧に変換して、インバータ50に出力する。
【0029】
インバータ50は、直流と交流とを変換する変換機能を有している。インバータ50は、PV用コンバータ22又は蓄電池用コンバータ32から入力される直流電圧を交流電圧に変換して、負荷L1又は系統電源100に出力する。インバータ50から出力された交流電圧が系統電源100に出力されることによって、施設F1から系統電源100に電力が逆潮流される。また、インバータ50は、系統電源100から入力される交流電圧を直流電圧に変換して蓄電池用コンバータ32に出力し、蓄電池用コンバータ32に蓄電池31を充電させる。また、インバータ50は、PV用コンバータ22から入力される直流電圧を蓄電池用コンバータ32に出力し、蓄電池用コンバータ32に蓄電池31を充電させることもできる。
【0030】
コントローラ10は、分散電源40が備える太陽光発電システム20及び蓄電システム30と、インバータ50との動作を制御する。
【0031】
コントローラ10は、例えば、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを有している。そして、プロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムがコントローラ10として機能する。本実施形態のコントローラ10は、上述した系統安定化処理部11及び設定部13の機能を備え、更に、事象抑制部14、及び提示部15の機能を備えている。
【0032】
設定部13は、蓄電システム30(すなわち蓄電池31)の容量に対して、系統安定化制御に利用可能な調整用容量を設定する。さらに言えば、設定部13は、系統電源100への放電に利用する場合と、系統電源100からの充電に利用する場合のそれぞれで調整用容量を設定する。また、設定部13は関連事象に基づいて調整容量を更新している。関連事象は、蓄電システム30の充放電能力に関連する事象である。この種の関連事象としては、蓄電システム30の周囲温度又は蓄電池用コンバータ32の回路部品の温度の変化状態等が含まれる。周囲温度が使用温度範囲の上限を上回る場合、蓄電池用コンバータ32を構成する部品の温度上昇等によって蓄電システム30の出力電力が低下する場合がある。また、周囲温度が蓄電システム30の使用温度範囲の下限を下回る場合、蓄電池31のセルの温度が低下することによって、蓄電システム30の出力電力が低下する場合がある。このように、周囲温度が使用温度範囲の上限を上回る場合、又は、使用温度範囲の下限を下回る場合、蓄電システム30の出力電力が低下する可能性がある。したがって、設定部13は、周囲温度が使用温度範囲の下限を下回る、又は、使用温度範囲の上限を上回る場合の調整用容量の第1調整値を、周囲温度が使用温度範囲内である場合の調整用容量の第2調整値に比べて、小さい値に設定する。このように、設定部13が、系統安定化制御に利用可能な調整用容量を、蓄電システム30の周囲温度又は蓄電池用コンバータ32の回路部品の温度に応じて変化させることで、調整用容量を最適な値に設定できる。なお、設定部13が蓄電システム30の容量に対して調整用容量を設定する処理については「(2.2)動作説明」においてより詳細に説明する。
【0033】
系統安定化処理部11は、施設F1に設けられた受信端末60から系統安定化の制御指令が入力されると、蓄電システム30の調整用容量を利用して系統安定化制御を行う。系統安定化制御は、上述のように、蓄電システム30から系統電源100に電力を供給(逆潮流)する放電処理と、系統電源100から受け取った電力で蓄電システム30を充電する充電処理とを含む。
【0034】
ここで、系統安定化処理部11は、系統電源100での需給バランスに基づいて、系統安定化制御を実行する。例えば、系統電源100の供給能力が電力需要に比べて不足する場合、系統安定化処理部11は、系統電源100の需給バランスを均衡させるために放電処理を実行し、蓄電システム30から放電させた電力を系統電源100に出力させる。すなわち、系統安定化処理部11は、蓄電池用コンバータ32を制御して、蓄電池31から調整用容量に蓄積されたエネルギを放電させ、蓄電池31の出力電圧の電圧値を変換してインバータ50に出力する。インバータ50は、蓄電池用コンバータ32から入力された直流電圧を交流電圧に変換して系統電源100に供給する。なお、系統電源100での需給バランスに基づいて系統安定化制御を実行するとは、将来の需給バランスを予測した結果ではなく、実際の需給バランスの実測値に基づいて系統安定化制御を実行することをいう。
【0035】
なお、系統安定化処理部11は、系統電源100での需給バランスに基づいて系統安定化制御を実行しているが、需給バランス、系統電圧の電圧値、及び系統電圧の周波数のうちの少なくとも1つに基づいて、系統安定化制御を実行してもよい。系統安定化処理部11は、需給バランス、系統電圧の電圧値、及び系統電圧の周波数のうちの少なくとも1つを監視し、分散電源40からの有効電力又は無効電力を制御することで、系統安定化制御を行えばよい。なお、系統安定化処理部11が、分散電源40から系統電源100に出力される有効電力を増やすと、系統電圧の電圧値が高くなり、系統電圧の周波数が高くなる。系統安定化処理部11が、分散電源40から系統電源100に出力される有効電力を減らすと、系統電圧の電圧値が低くなり、系統電圧の周波数が低くなる。また、分散電源40から見て進み位相の無効電力を系統電源100に注入すると、系統電圧の電圧値が低くなり、分散電源40から見て遅れ位相の無効電力を系統電源100に注入すると、系統電圧の電圧値が高くなる。したがって、系統安定化処理部11は、需給バランス、系統電圧の電圧値、及び系統電圧の周波数のうちの少なくとも一つの実績値に基づいて、分散電源40から系統電源100に出力される有効電力又は無効電力を制御することで、系統安定化制御を行うことができる。
【0036】
また、系統電源100の供給能力が電力需要に比べて過剰である場合、系統安定化処理部11は、系統電源100の需給バランスを均衡させるために充電処理を実行し、系統電源100からの電力で蓄電システム30の蓄電池31を充電する。すなわち、系統安定化処理部11は、インバータ50に、系統電源100から入力される交流電圧を直流電圧に変換させて、蓄電池用コンバータ32に出力させる。蓄電池用コンバータ32は、蓄電池31に一定の電流を流すCC充電方式で蓄電池31を最大電圧まで充電した後、蓄電池31を一定の電圧で充電するCV充電方式で蓄電池31を充電する。このように、系統安定化処理部11は、CC充電方式とCV充電方式とを組み合わせることによって蓄電池31を所定の電圧値まで充電する。
【0037】
事象抑制部14は、上記の関連事象の発生を抑制する抑制処理を行う。上述のように、蓄電システム30の充放電能力に関連する関連事象は、蓄電システム30の周囲温度の変化、及び、蓄電池用コンバータ32の回路部品の温度等を含む。施設F1に蓄電システム30の周囲温度を制御可能な空調システムが配置されている場合、事象抑制部14は、空調システムを制御して、分散電源40の周囲温度を使用温度範囲内に制御する事象抑制処理を行う。空調システムが分散電源40の周囲温度を使用温度範囲内に制御することによって関連事象の発生が抑制されるので、関連事象の発生に伴う蓄電システム30の充放電能力の変動(低下)が抑制される。
【0038】
提示部15は、蓄電システム30の残量に関する残量情報を表示部70に表示させることによって、残量情報をユーザに提示する提示処理を行う。また、本実施形態の提示部15は、分散電源40からの出力電力の出力状況を表示部70に更に表示させることによって、分散電源40からの出力電力の出力状況をユーザに提示する。提示部15は、例えばモニタ装置である表示部70に、蓄電システム30の残量情報、及び分散電源40からの出力電力の出力状況を示す情報を表示させることで、これらの情報をユーザに対して視覚的に提示する。なお、提示部15は、例えばスピーカから、蓄電システム30の残量情報、及び分散電源40からの出力電力の出力状況を示す情報等を音声で出力させることによって、ユーザに対して残量情報及び出力状況を示す情報を音で提示してもよい。また、提示部15は、ユーザに対して残量情報及び出力状況を示す情報を音と表示との両方で提示してもよい。
【0039】
(2.2)動作説明
本実施形態の分散電源システム1の動作を図2図9等に基づいて説明する。なお、図2に示すフローチャートは、分散電源システム1の電力制御方法の一例に過ぎず、処理の順序が適宜変更されてもよいし、処理が適宜追加又は省略されてもよい。
【0040】
分散電源システム1が動作を開始すると、コントローラ10の設定部13が、受信端末60が外部サーバ110から受信した制御指令に基づいて、蓄電システム30の容量に対して、系統安定化制御に利用可能な調整用容量を設定する(ST1)。
【0041】
図3は、分散電源システム1が備えるインバータ50の入出力範囲PW1と、太陽光発電システム20の出力範囲PW2と、蓄電システム30の入出力範囲PW3の一例を示している。インバータ50の入出力範囲PW1は、例えば、負荷L1又は系統電源100への放電時(出力時)の最大値が5500W、蓄電システム30の充電時(入力時)の最大値が1500Wとなっている。太陽光発電システム20の出力範囲PW2は、例えば0~5500Wである。つまり、太陽光発電システム20の出力範囲PW2の最大値は、放電時におけるインバータ50の出力電力の放電時の最大値に等しい値となっている。蓄電システム30の入出力範囲PW3は蓄電池31の容量によって決定され、蓄電システム30からの放電電力の最大値は2000Wであり、蓄電システム30が充電する場合の充電電力の最大値は1500Wとなっている。
【0042】
ここにおいて、設定部13は、外部サーバ110からの制御指令に基づいて、蓄電システム30の容量に対して、系統電源100への放電に利用する場合の調整用容量と、系統電源100からの充電に利用する場合の調整用容量とをそれぞれ設定している。図4は、蓄電システム30が備える蓄電池31の容量の内訳を模式的に示す図である。設定部13は、系統安定化制御を行っていない場合での、充電量の上限を設定する充電上限値LV3と、充電量の下限を設定する充電下限値LV2とをそれぞれ設定している。ここで、蓄電システム30の放電下限をLV1、容量の最大値をLV4とすると,容量の最大値LV4から充電上限値LV3を引いた容量が、系統電源100からの充電に利用する場合の調整用容量(第2容量C2)となる。また、充電下限値LV2から放電下限LV1を引いた容量が、系統電源100への放電に利用する場合の調整用容量(第1容量C1)となる。すなわち、設定部13は、蓄電システム30の調整用容量を蓄電システム30の放電下限LV1に基づいて設定しており、放電下限LV1を超えて放電される可能性を低減できる。また、蓄電システム30の容量において、充電上限値LV3と充電下限値LV2との間の第3容量C3が、施設F1での電力の需給に関わる需要家制御に利用可能な容量となる。また、蓄電システム30の容量において、放電下限LV1以下の部分を第4容量C4という。
【0043】
設定部13が蓄電システム30の容量に対して第1~第4容量C1~C4を設定することによって、蓄電システム30の入出力範囲PW3の一部が、系統安定化制御に利用可能な入出力範囲PW4に設定され、残りが需要家側で利用可能な入出力範囲PW5に設定される。また、系統安定化制御に利用可能な入出力範囲PW4は、放電時の第1範囲(出力範囲)PW41と、充電時の第2範囲(入力範囲)PW42とに分けられる。蓄電システム30は、系統安定化制御において系統電源100に放電する場合には第1範囲PW41の電力を放電可能であり、系統電源100から充電する場合には第2範囲PW42の電力を充電可能である。なお、図3では、系統安定化用に利用可能な第1範囲PW41の電力のうち、外部サーバ110からの制御指令によって指示された電力PW40を、他の部分と異なるハッチングで表記している。また、需要家側で利用可能な入出力範囲PW5の電力のうち、外部サーバ110からの制御指令によって指示された電力PW51を、他の部分と異なるハッチングで表記している。
【0044】
設定部13が蓄電システム30の容量に対して調整用容量を設定すると、提示部15が、調整用容量を蓄電システム30のユーザに提示する提示処理を行う(ST2)。提示部15は、調整用容量の設定内容尾示す情報を表示部70に表示させることによって、蓄電システム30のユーザに調整用容量を提示する。図5は提示部15が表示部70に表示する情報の一例であり、表示部70の画面701には、蓄電システム30が備える蓄電池31を表すアイコンM10と、第1~第4容量C1~C4をそれぞれ表す長方形状のアイコンM11~M14とが表示されている。表示部70には、蓄電システム30の容量に対して調整用容量がどのように設定されているのかが表示されるので、蓄電システム30のユーザは、表示部70の表示に基づいて調整用容量がどの程度の大きさに設定されているのかを容易に把握できる。
【0045】
また、提示部15は、アイコンM11~M14のうち、充電されている容量部分にドットをつけて表示している。このように、提示部15は、蓄電システム30の全容量のうち、充電されている容量部分(つまり充電の残量)を、充電されていない容量部分と区別して表示することによって、蓄電システム30の残量に関する残量情報を提示している。なお、図5中の引き出し線及び符号は説明のために表記しているにすぎず、表示部70の画面701には表示されない。
【0046】
また、蓄電システム30が備える蓄電池31の蓄電量の表示は、図5に示す表示態様に限定されず、適宜変更が可能である。例えば、図6に示すように、表示部70の画面701に、蓄電システム30の全容量のうち系統安定化制御用に割り当てた容量と需要家制御用に割り当てた容量とを別個の蓄電池とみなすアイコンM20、M30を表示してもよい。
【0047】
アイコンM20は、系統安定化制御に利用される蓄電システム30の容量に対応している。アイコンM20の上側には「系統安定化制御用蓄電池」のタイトルTL1が表示され、アイコンM20の下側には系統安定化制御に利用可能な最大の電力量(例えば1.5kWh)が数字で表示されている。アイコンM20には、所定単位の容量をそれぞれ表す長方形状のアイコン21が表示されており、充電されている容量部分はドットをつけて表示されている。
【0048】
また、アイコンM30は、需要家制御に利用される蓄電システム30の容量に対応している。アイコンM30の上側には「需要家制御用蓄電池」のタイトルTL2が表示され、アイコンM30の下側には需要家制御に利用可能な最大の電力量(例えば4.0kWh)が数字で表示されている。アイコンM30には、所定単位の容量をそれぞれ表す長方形状のアイコンM31,M32が表示されており、アイコンM31は放電下限以下の容量、最低限充電されている容量を示している。また、アイコンM31,M32のうち充電されている容量部分はドットをつけて表示されている。
【0049】
ここで、アイコンM20,M30の上下方向の寸法は、系統安定化制御及び需要家制御に利用される容量の大きさに対応している。なお、図6中の引き出し線及び符号は説明のために表記しているにすぎず、表示部70の画面701には表示されない。
【0050】
次に、コントローラ10の系統安定化処理部11は、受信端末60が系統安定化制御の制御指令を受信しているか否かを判断し(ST3)、制御指令を受信していない場合(ST3:No)は処理を終了する。
【0051】
一方、受信端末60が制御指令を受信している場合(ST3:Yes)、系統安定化処理部11は、蓄電システム30の調整用容量を利用した系統安定化制御を実行する(ST4)。
【0052】
ここで、外部サーバ110からの制御指令が系統電源100への放電を指示する指令であれば、系統安定化処理部11は、蓄電システム30から系統電源100に電力を逆潮流する系統安定化制御を行う。系統安定化処理部11は、蓄電池用コンバータ32を制御して蓄電システム30の第1容量C1に蓄積されたエネルギを放電させ、インバータ50によって交流電力に変換させた後、第1範囲PW41分の直流電力を系統電源100へと出力させる。これにより、施設F1から系統電源100に出力(逆潮流)される電力が増加し、系統電源100の需給バランスが改善される。
【0053】
一方、外部サーバ110からの制御指令が系統電源100からの充電を指示する指令であれば、系統安定化処理部11は、系統電源100から受電して蓄電システム30を充電する系統安定化制御を行う。系統安定化処理部11は、インバータ50によって系統電源100からの交流電力を直流電力に変換させた後、蓄電池用コンバータ32を制御して蓄電システム30の第2容量C2を充電する。これにより、系統電源100から施設F1に入力される電力が増加し、系統電源100の需給バランスが改善される。
【0054】
分散電源システム1が系統安定化制御を行うと、提示部15が、分散電源40からの出力電力の出力状況を示す情報を、蓄電システム30のユーザに提示する提示処理を行う(ST5)。提示部15は、例えば太陽光発電システム20及び蓄電システム30の出力電力の出力状況を示す情報を、表示部70に表示させることによって、蓄電システム30のユーザに情報を提示する。図7は提示部15が表示部70に表示する情報の一例であり、表示部70の画面701には、太陽光発電システム20を表すアイコンM1と、蓄電システム30を表すアイコンM2と、系統電源100を表すアイコンM3とが表示される。また、画面701には、太陽光発電システム20の出力状況と、蓄電システム30の出力状況と、系統電源100への出力状況とが、電力の出力方向を示す矢印と、出力電力の大きさを示す数値とで表示されている。分散電源システム1は、図7に示すような出力状況を示す情報を表示部70に表示させているので、施設F1のユーザに対して、分散電源40からの出力電力の出力状況を報知することができる。
【0055】
分散電源システム1は、ステップST1~ST5までの処理を所定の時間間隔で繰り返し実行しており、外部サーバ110からの制御指令を受けて系統安定化制御を実行することができる。外部サーバ110は、系統電源100での実際の需給バランスに基づいて系統安定化のための制御指令を受信端末60に出力しているので、系統安定化制御が不要な場合にも系統安定化処理部11が系統安定化制御を実行する可能性を低減できる。したがって、系統安定化処理部11は、時間とともに変化する需給バランスを改善するために蓄電システム30の出力電力又は入力電力をより細かく調整することができる。
【0056】
ところで、本実施形態において、分散電源システム1の設定部13は、蓄電システム30の容量に対して、系統安定化制御に利用可能な調整用容量の大きさを、蓄電システム30の充放電能力に関連する関連事象に基づいて更新してもよい。この関連事象は、蓄電システム30と、蓄電システム30が配置された施設F1との少なくともいずれか一方において発生する事象である。この種の関連事象は、例えば、蓄電システム30の周囲温度の温度変化、及び、蓄電システム30が備える蓄電池用コンバータ32の回路部品の温度変化等を含み得る。コントローラ10は、蓄電システム30の周囲温度を検知する温度センサから周囲温度の検出値を適宜のタイミングでモニタしており、周囲温度が蓄電システム30の使用温度範囲の範囲外になると、設定部13は、系統安定化制御を行うための調整用容量を小さくするように、調整用容量の設定を更新する。周囲温度が蓄電システム30の使用温度範囲の範囲外になると、蓄電システム30の充放電能力が低下する可能性があるが、放電時及び充電時の調整用容量をより小さい値に設定することで、蓄電システム30に対して系統安定化制御を確実に行わせることができる。
【0057】
すなわち、蓄電システム30の充放電能力に関連する関連事象が発生した場合には、設定部13が、当該関連事象に基づいて調整用容量の値を更新しているので、調整用容量に応じた放電量又は充電量での系統安定化制御を実行できない事態を回避できる。
【0058】
また、蓄電システム30又は施設F1において上記の関連事象が発生すると、蓄電システム30の充放電能力が変動する可能性があるため、事象抑制部14は、関連事象の発生を抑制する抑制処理を行ってもよい。例えば、上記の関連事象が蓄電システム30の周囲温度の温度変化を含む場合、周囲温度が蓄電システム30の使用温度範囲の範囲外になると、事象抑制部14は、周囲温度を蓄電システム30の使用温度範囲の範囲内に調整する処理を行う。周囲温度が蓄電システム30の使用温度範囲よりも高くなると、事象抑制部14は、蓄電システム30に設けられたファンを動作させたり、施設F1に設けられた空調システムを動作させたりすることによって、周囲温度を使用温度範囲内に調整する。また、周囲温度が蓄電システム30の使用温度範囲よりも低くなると、事象抑制部14は、蓄電システム30に設けられたヒータを動作させたり、施設F1に設けられた空調システムを動作させたりすることによって、周囲温度を使用温度範囲内に調整する。このように、事象抑制部14が、特定制御に利用される調整分の大きさに影響を与えるような事象を抑制するための制御を行うので、特定制御に利用される調整分の大きさが変化するのを抑制できる。
【0059】
なお、系統安定化処理部11は、外部サーバ110から受信端末60を介して制御指令を受け取った場合に、系統安定化制御と需要家制御とで経済的に有利な方を優先的に行ってもよい。例えば、系統安定化処理部11は、系統安定化のために系統電源100に逆潮流する場合の電力の単価と、系統安定化制御を行わず需要家の施設F1で自家消費する場合の電力の単価とを比較し、需要家によって有利な方を優先的に行えばよい。
【0060】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、分散電源システム1と同様の機能は、分散電源システム1の制御方法、コンピュータプログラム、又はプログラムを記録した非一時的な記録媒体等で具現化されてもよい。一態様に係る分散電源システム1の制御方法は、上記の設定処理と、系統安定化処理と、を含む。一態様に係る(コンピュータ)プログラムは、コンピュータシステムに、設定処理と、系統安定化処理と、を実行させるためのプログラムである。
【0061】
以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0062】
本開示における分散電源システム1は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における分散電源システム1としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0063】
また、分散電源システム1における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは分散電源システム1に必須の構成ではなく、分散電源システム1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、分散電源システム1の少なくとも一部の機能、例えば、分散電源システム1の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0064】
上記の実施形態において、蓄電池用コンバータ32はCC充電方式とCV充電方式とを組み合わせて蓄電池31を充電している。蓄電池31が満充電に近づくと、蓄電池用コンバータ32はCV充電方式で蓄電池31を充電するため、充電電力容量が外部サーバ110からの制御指令で指定された値よりも小さくなる可能性がある。これを回避するため、設定部13は、CC充電方式での最大の充電率SOCから、制御指令で指示された調整用容量を差し引いた充電率SOCを、需要家制御の最大値として設定する。
【0065】
図8及び図9は、蓄電池用コンバータ32が蓄電池31を充電する場合の蓄電池電圧V1、蓄電池31に流す充電電流I1、蓄電池31の充電率SOC(States Of Charge)の時間変化を示すグラフである。図8は低温時における蓄電池電圧V1、充電電流I1、及び充電率SOCの時間変化を示すグラフであり、図9は高温時における蓄電池電圧V1、充電電流I1、及び充電率SOCの時間変化を示すグラフである。蓄電池用コンバータ32は、蓄電池電圧V1が最大電圧Vmaxに上昇するまでの間は充電電流I1が一定のCC充電を行い、蓄電池電圧V1が最大電圧Vmaxに到達した後は蓄電池電圧V1を一定の電圧とするCV充電を行う。蓄電池用コンバータ32がCV充電を開始すると、蓄電池電圧V1を一定の電圧に維持するために充電電流I1が絞られる。
【0066】
ここで、蓄電池31の温度が高くなるにつれて、蓄電池31の内部抵抗が低下するので、高温時には低温時に比べてCC充電方式での最大の充電率SOCが高くなり、CV充電方式が開始するときの充電率SOCが高くなる。この場合、需要家制御の最大値が大きくなり、それに伴って系統安定化制御に利用可能な調整用容量が低下する。
【0067】
設定部13が、蓄電池31の容量において需要家制御に利用可能な容量を増やしたい場合、系統安定化制御のために出力が抑制される太陽光発電システム20の出力電力で蓄電池31に内蔵されたヒータ又はヒートポンプを動作させることで、蓄電池31の温度を上昇させる。これにより、CV充電方式が開始するときの充電率SOCが高くなり、蓄電池31の容量において需要家制御に利用可能な容量を増やすことができる。
【0068】
また、蓄電池31の温度が高くなりすぎると、需要家制御に利用可能な容量が増えすぎてしまう。したがって、設定部13は、系統安定化制御に利用可能な容量と、需要家制御に利用可能な容量との比率が所望の比率となるように、太陽光発電システム20の出力電力で蓄電池31に内蔵されたファン又はヒートポンプを動作させて、蓄電池31の温度を低下させる。これにより、CV充電方式が開始するときの充電率SOCが低くなり、蓄電池31の容量において系統安定化制御に利用可能な容量を増やすことができる。
【0069】
このように、設定部13は、蓄電システム30での充電方式に応じて調整用容量を設定しており、系統安定化制御に利用可能な調整用容量を所望の容量に設定することができる。
【0070】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様の制御方法は、設定処理と、系統安定化処理と、を含む。設定処理では、蓄電システム(30)の容量に対して、調整用容量を設定する。蓄電システム(30)は、系統電源(100)から電力供給を受ける需要家の施設(F1)に設けられ、施設(F1)に存在する負荷(L1)に対して電力を供給可能である。調整用容量は、系統電源(100)の電力品質を安定化するための系統安定化制御に利用可能な容量である。系統安定化処理は、放電処理、及び、充電処理の少なくとも一方を含む。放電処理は、蓄電システム(30)の容量のうち調整用容量の充電分を系統電源(100)に放電する処理であり、充電処理は、系統電源(100)から調整用容量に充電する処理である。
【0071】
この態様によれば、蓄電システム(30)の容量を利用した系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0072】
第2の態様の制御方法では、第1の態様において、設定処理では、系統電源(100)への放電に利用する場合と、系統電源(100)からの充電に利用する場合のそれぞれで調整用容量を設定する。
【0073】
この態様によれば、蓄電システム(30)の容量を利用した系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0074】
第3の態様の制御方法では、第1又は2の態様において、系統安定化処理では、系統電源(100)での実際の需給バランス、系統電源(100)の系統電圧の電圧値、及び系統電圧の周波数のうちの少なくとも1つに基づいて、系統安定化制御を実行する。
【0075】
この態様によれば、蓄電システム(30)の容量を利用した系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0076】
第4の態様の制御方法では、第1~3のいずれかの態様において、設定処理では、蓄電システム(30)の充放電能力に関連する関連事象に基づいて調整用容量を更新する。
【0077】
この態様によれば、蓄電システム(30)の容量を利用した系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0078】
第5の態様の制御方法では、第4の態様において、関連事象の発生を抑制する抑制処理を更に含む。
【0079】
この態様によれば、蓄電システム(30)の容量を利用した系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0080】
第6の態様の制御方法では、第1~5のいずれかの態様において、設定処理では、蓄電システム(30)での充電方式に応じて調整用容量を設定する。
【0081】
この態様によれば、蓄電システム(30)の容量を利用した系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0082】
第7の態様の制御方法では、第1~6のいずれかの態様において、設定処理では、調整用容量を蓄電システム(30)の放電下限に基づいて設定する。
【0083】
この態様によれば、蓄電システム(30)の容量を利用した系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0084】
第8の態様の制御方法では、第1~7のいずれかの態様において、調整用容量を蓄電システム(30)のユーザに提示する提示処理を更に含む。
【0085】
この態様によれば、蓄電システム(30)の容量を利用した系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0086】
第9の態様の制御方法では、第8の態様において、提示処理では、蓄電システム(30)の残量に関する残量情報を提示する。
【0087】
この態様によれば、蓄電システム(30)の容量を利用した系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0088】
第10の態様のプログラムは、コンピュータシステムに、第1~9のいずれかの態様の制御方法を実行させるためのプログラムである。
【0089】
この態様によれば、蓄電システム(30)の容量を利用した系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0090】
第11の態様の分散電源システム(1)は、設定部(13)と、系統安定化処理部(11)と、を含む。設定部(13)は、蓄電システム(30)の容量に対して、調整用容量を設定する。蓄電システム(30)は、系統電源(100)から電力供給を受ける需要家の施設(F1)に設けられ、施設(F1)に存在する負荷(L1)に対して電力を供給可能である。調整用容量は、系統電源(100)の電力品質を安定化するための系統安定化制御に利用可能な容量である。系統安定化処理部(11)は、放電処理、及び、充電処理の少なくとも一方を含む系統安定化制御を実行する。放電処理は、蓄電システム(30)の容量のうち調整用容量の充電分を系統電源(100)に放電する処理であり、充電処理は、系統電源(100)から調整用容量に充電する処理である。
【0091】
この態様によれば、蓄電システム(30)の容量を利用した系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0092】
上記態様に限らず、上記の実施形態に係る分散電源システム(1)の種々の構成(変形例を含む)は、分散電源システム(1)の制御方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化可能である。
【0093】
第2~第9の態様に係る構成については、分散電源システム(1)の制御方法に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 分散電源システム
11 系統安定化処理部
13 設定部
30 蓄電システム
100 系統電源
F1 施設
L1 負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9