(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】光源装置及び検査装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20240830BHJP
G01N 21/84 20060101ALI20240830BHJP
G01N 21/892 20060101ALI20240830BHJP
F21V 9/32 20180101ALI20240830BHJP
F21V 9/38 20180101ALI20240830BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240830BHJP
【FI】
F21S2/00 311
G01N21/84 E
G01N21/892 A
F21V9/32
F21V9/38
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2020179072
(22)【出願日】2020-10-26
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 岳志
(72)【発明者】
【氏名】林 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】茂手木 省吾
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-087974(JP,A)
【文献】特開2011-215077(JP,A)
【文献】特開2016-142525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
G01N 21/84
G01N 21/892
F21V 9/32
F21V 9/38
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査に用いられる光源装置であって、
430nm以上495nm以下の波長帯域にピーク波長を有する第1の光を発する光源と、
互いに発光波長が異なる複数
種類の波長変換体を含む光学部材と、を備え、
前記複数種類の波長変換体は、
前記第1の光の一部を吸収し、前記第1の光とは波長が異なる近赤外光を発する近赤外蛍光体と、
前記第1の光の一部を吸収し、前記第1の光とは波長が異なる可視光を発する可視光蛍光体と、を含み、
前記近赤外蛍光体は、Cr
3+
賦活蛍光体であり、
前記光学部材は、
前記第1の光が入射する入射面と、
前記入射面から入射した前記第1の光の他の一部と前記
近赤外光と前記可視光とを含む出射光を出射する出射面と、
前記近赤外蛍光体のみを含む近赤外蛍光体層と、
前記可視光蛍光体を含む可視光蛍光体層と、を有し、
前記出射光は、450nm以上800nm未満の波長帯域に亘ってピーク強度の5%以上の強度を有し、
前記近赤外蛍光体層及び前記可視光蛍光体層は、前記光源側からこの順で重ねて配置されており、
前記出射面は、前記
可視光の発光面である、
光源装置。
【請求項2】
前記出射面における前記出射光の強度分布は、任意の方向に沿って一定又は滑らかに変化している、
請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記光学部材は、前記入射面及び前記出射面が互いに背向する板材であり、
前記光学部材の厚みに対する前記出射面の最大長さの比は、20以上である、
請求項1又は2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記出射光のエネルギーは、1W以上である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記
近赤外蛍光体は、700nm以上の波長帯域にピーク波長を有する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項6】
前記複数
種類の波長変換体は、互いに発光波長が異なる3種類以上の蛍光体を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項7】
検査対象物に向けて前記出射光を出射する、請求項1~6のいずれか1項に記載の光源装置と、
前記検査対象物からの前記出射光の反射光を受光し、受光した前記反射光の強度に応じた電気信号を出力する受光装置と、を備える、
検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物の外観検査を行う場合に、対象物に向けて光を照射する照明装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検査用途の光源装置としては、光が照射される検査対象物の品質を劣化させないことが求められている。また、できるだけ多くの種類の検査対象物の検査が可能なように、高い汎用性が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、検査対象物の品質の劣化を抑制することができ、汎用性が高い光源装置及び検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る光源装置は、検査に用いられる光源装置であって、第1の光を発する光源と、前記第1の光の一部を吸収し、前記第1の光とは波長が異なる第2の光を発する複数の波長変換体を含む光学部材と、を備え、前記光学部材は、前記第1の光が入射する入射面と、前記入射面から入射した前記第1の光の他の一部と前記第2の光とを含む出射光を出射する出射面と、を有し、前記出射光は、450nm以上800nm未満の波長帯域に亘ってピーク強度の5%以上の強度を有し、前記出射面は、前記第2の光の発光面である。
【0007】
本発明の一態様に係る検査装置は、検査対象物に向けて前記出射光を出射する、上記一態様に係る光源装置と、前記検査対象物からの前記出射光の反射光を受光し、受光した前記反射光の強度に応じた電気信号を出力する受光装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、検査対象物の品質の劣化を抑制することができ、汎用性が高い光源装置及び検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る光源装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る光源装置の光学部材の断面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る光源装置の出射光のスペクトルを示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る光源装置の光学部材に含まれる複数の蛍光体の蛍光スペクトルを示す図である。
【
図5A】
図5Aは、参考例1に係る光源装置の光学部材の出射面の輝度分布の一例を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、参考例2に係る光源装置の光学部材の出射面の輝度分布の別の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る光源装置を備える検査装置の構成と検査対象物とを示す図である。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る検査装置によって得られた特定波長の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本発明の実施の形態に係る光源装置及び発光装置について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0012】
また、本明細書において、垂直などの要素間の関係性を示す用語、及び、円形又は長方形などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0013】
また、本明細書において、「ピーク波長」とは、所定の波長帯域内において発光強度が最大になるときの波長である。また、ピーク波長における強度を「ピーク強度」と記載する。ピーク強度は、全波長帯域における最大の強度でなくてもよい。つまり、所定の波長帯域内のピーク強度よりも強度が高いピークが、当該所定の波長帯域以外の帯域に存在していてもよい。
【0014】
また、本明細書において、「第1」、「第2」などの序数詞は、特に断りの無い限り、構成要素の数または順序を意味するものではなく、同種の構成要素の混同を避け、区別する目的で用いられている。
【0015】
(実施の形態)
[構成]
まず、実施の形態に係る光源装置の構成について、
図1を用いて説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態に係る光源装置1の斜視図である。光源装置1は、検査に用いられる光源装置である。検査は、例えば、検査対象物の外観不良の検査、又は、検査対象物に混入する異物の検査などである。検査対象物は、食品、薬剤又は工業製品などである。
【0017】
図1に示されるように、光源装置1は、基台10と、光源20と、光学部材30と、を備える。
【0018】
基台10は、光源20を支持する部材である。基台10は、例えば、金属などの放熱性が高い材料を用いて形成された平板状の部材であるが、基台10の形状及び材料などは特に限定されない。
【0019】
光源20は、第1の光L1(
図2を参照)を発する。光源20は、LED(Light Emitting Diode)素子である。本実施の形態では、第1の光L1は、430nm以上495nm以下の波長帯域にピーク波長を有する青色光である。例えば、光源20は、ピーク波長が459nmの青色LED素子である。第1の光L1のエネルギーは、1W以上であるが、これに限らない。第1の光L1のエネルギーは、10W以上であってもよく、20W以上であってもよい。また、第1の光L1のエネルギーは、0.2W以上であってもよく、0.5W以上であってもよい。一例として、第1の光L1のエネルギーは24.7Wであり、放射照度は、6.25W/cm
2である。
【0020】
光学部材30は、複数の波長変換体を含む部材である。複数の波長変換体は、第1の光L1の一部を吸収し、第1の光L1とは波長が異なる第2の光L2(
図2を参照)を発する。複数の波長変換体は、例えば、粒子状物質である。光学部材30は、複数の波長変換体が凝集した集合体(例えば、セラミック焼結体)である。
【0021】
あるいは、光学部材30は、板状の樹脂基材(図示せず)を有し、当該樹脂基材内に複数の波長変換体が混合されて分散していてもよい。また、光学部材30は、透明の板材を有し、当該板材の表面に塗布された透明樹脂内に複数の波長変換体が混合されて分散していてもよい。
【0022】
図2は、本実施の形態に係る光源装置1の光学部材30の断面図である。
図2に示されるように、光学部材30は、第1の光L1が入射する入射面30aと、出射光Lを出射する出射面30bと、を有する。出射面30bは、第2の光L2の発光面である。本実施の形態では、出射面30bにおける出射光Lの強度分布(具体的には、輝度分布)は、任意の方向に沿って一定又は滑らかに変化している。なお、「滑らかに変化」とは、輝度の変化が連続的であることを意味し、一方向に沿った輝度の変化の割合が一定値又は所定の範囲内であることを意味する。
【0023】
光学部材30は、入射面30a及び出射面30bが互いに背向する板材である。
図1に示されるように、光学部材30は、出射面30bが円形の平板であるが、これに限らない。出射面30bの形状は、正方形又は長方形であってもよく、六角形又は八角形などの多角形であってもよい。
【0024】
光学部材30の厚みTは、例えば1mm以下である。また、光学部材30の出射面30bの最大長さWは、例えば5mm以上30mm以下である。なお、最大長さWは、円形である出射面30bの直径である。本実施の形態では、光学部材30の厚みTに対する出射面30bの最大長さWの比(W/T)は、20以上である。なお、W/Tは、10以上であってもよい。また、W/Tは、100以上であってもよい。
【0025】
出射光Lは、第1の光L1の一部と第2の光L2とを含んでいる。出射光Lのエネルギーは、1W以上であるが、これに限らない。出射光Lのエネルギーは、10W以上であってもよく、20W以上であってもよい。一例として、出射光Lのエネルギーは11.4Wであり、放射照度は、2.75W/cm2である。
【0026】
図3は、本実施の形態に係る光源装置1の出射光Lのスペクトルを示す図である。
図4は、本実施の形態に係る光源装置1の光学部材30に含まれる複数の蛍光体の蛍光スペクトルを示す図である。
図3及び
図4において、横軸は波長を表し、縦軸は発光強度の相対値を表している。
【0027】
図3に示されるように、出射光Lは、450nm以上800nm未満の波長帯域に亘ってピーク強度の所定割合以上の強度を有する。所定割合は、例えば5%であるが、3%であってもよく、10%であってもよく、20%であってもよい。つまり、出射光Lは、450nm以上800nm未満の波長帯域全体で、一定以上の強度を有するブロードな光である。出射光Lは、430nm以下の波長帯域、及び、900nm以上の波長帯域において、ピーク強度の所定割合未満の強度を有する。ここでの所定割合も、例えば5%であるが、3%であってもよく、10%であってもよく、20%であってもよい。
【0028】
出射光Lは、約460nm、約540nm及び約730nmの各々にピークを有する。約460nmに存在する第1のピークは、光源20から発せられた第1の光L1に基づくピークである。約540nmに存在する第2のピーク及び約730nmに存在する第3のピークはそれぞれ、複数の波長変換体が発する第2の光L2に基づくピークである。
【0029】
本実施の形態では、
図2に示されるように、複数の波長変換体は、互いに発光波長が異なる3種類以上の蛍光体を含む。
図2に示されるように、複数の波長変換体は、蛍光体31~33を含む。第1の光L1は、蛍光体31~33の各々に対する励起光として機能する。
【0030】
蛍光体31は、第1の光L1の一部を吸収し、第1の光L1とは波長が異なる第2の光L21を発する。第2の光L21のピーク波長は、第1の光L1のピーク波長よりも長波長である。具体的には、
図4に示されるように、第2の光L21は、505nm以上525nm未満の波長帯域にピーク波長を有する緑色光である。第2の光L21は、500nm以上600nm以下の波長帯域に亘って、ピーク強度の所定割合以上の強度を有する。所定割合は、例えば5%であるが、3%であってもよく、10%であってもよく、20%であってもよい。つまり、第2の光L21は、第1の光L1よりも半値幅が大きくブロードな光である。例えば、蛍光体31は、励起波長が455nmでピーク波長が512nmのLu
3Al
5O
12:Ce
3+蛍光体(LuAG:Ce
3+)である。なお、蛍光体31は、LuAG:Ce
3+と同等の蛍光スペクトルを有する蛍光体であればよく、LuAG:Ce
3+の代わりに、又は、LuAG:Ce
3+に加えて他の緑色蛍光体が用いられてもよい。他の緑色蛍光体としては、Ca
3Sc
2Si
3O
12:Ce
3+、及び、Ca(Sc,Lu)
2O
4:Ce
3+などを利用することができる。
【0031】
なお、第2の光L21は、600nm以上660nm未満の波長帯域にピーク波長を有する赤色光であってもよい。第2の光L21が赤色光である場合、第2の光L21は、580nm以上700nm以下の波長帯域に亘って、ピーク強度の所定割合以上の強度を有する。所定割合は、例えば5%であるが、3%であってもよく、10%であってもよく、20%であってもよい。つまり、第2の光L21は、第1の光L1よりも半値幅が大きくブロードな光である。第2の光L21が赤色光である場合、例えば、蛍光体31は、励起波長が455nmでピーク波長が625nmの(Sr,Ca)AlSiN3:Eu2+蛍光体(SCASN:Eu2+)である。なお、蛍光体31は、SCASN:Eu2+と同等の蛍光スペクトルを有する蛍光体であればよく、SCASN:Eu2+の代わりに、又は、SCASN:Eu2+に加えて他の赤色蛍光体が用いられてもよい。
【0032】
蛍光体32は、第1の光L1の他の一部を吸収し、第1の光L1とは波長が異なる第2の光L22を発する。第2の光L22のピーク波長は、第1の光L1及び第2の光L21の各々のピーク波長よりも長波長である。具体的には、
図4に示されるように、第2の光L22は、525nm以上600nm以下の波長帯域にピーク波長を有する黄色光である。第2の光L22は、500nm以上600nm以下の波長帯域に亘って、ピーク強度の所定割合以上の強度を有する。所定割合は、例えば5%であるが、3%であってもよく、10%であってもよく、20%であってもよい。つまり、第2の光L22は、第1の光L1よりも半値幅が大きくブロードな光である。例えば、蛍光体32は、励起波長が455nmでピーク波長が545nmのY
3Al
5O
12:Ce
3+蛍光体(YAG:Ce
3+)である。なお、蛍光体32は、YAG:Ce
3+と同等の蛍光スペクトルを有する蛍光体であればよく、YAG:Ce
3+の代わりに、又は、YAG:Ce
3+に加えて他の黄色蛍光体が用いられてもよい。
【0033】
蛍光体33は、第1の光L1の他の一部を吸収し、第1の光L1とは波長が異なる第2の光L23を発する。第2の光L23のピーク波長は、第1の光L1、第2の光L21及び第2の光L22の各々のピーク波長よりも長波長である。具体的には、
図4に示されるように、第2の光L23は、700nm以上の波長帯域にピーク波長を有する近赤外光である。第2の光L23は、700nm以上800nm以下の波長帯域に亘って、ピーク強度の所定割合以上の強度を有する。所定割合は、例えば5%であるが、3%であってもよく、10%であってもよく、20%であってもよい。つまり、第2の光L23は、第1の光L1よりも半値幅が大きくブロードな光である。例えば、蛍光体33は、励起波長が455nmでピーク波長が765nmの(Gd
0.8La
0.2)
3(Ga
0.47Sc
0.50Cr
0.03)
2Ga
5O
12蛍光体(GGG)である。なお、蛍光体33は、GGGと同等の蛍光スペクトルを有する蛍光体であればよく、GGGの代わりに、又は、GGGに加えて他の近赤外蛍光体が用いられてもよい。
【0034】
なお、光学部材30が含む蛍光体の種類は、1種類のみであってもよく、2種類であってもよく、4種類以上であってもよい。各蛍光体の混合比は、特に限定されず、出射光Lが450nm以上800nm未満の波長帯域におけるブロードな光であればよい。光学部材30は、1種類以上の可視光蛍光体を含み、近赤外蛍光体を含まなくてもよい。
【0035】
[実施例]
続いて、上述した光源装置1の光学部材30の具体的な実施例について説明する。
【0036】
実施例で使用する光学部材30には、蛍光体33の一例として近赤外光の波長帯域に蛍光ピークを有する蛍光体(近赤外蛍光体)を使用し、蛍光体31及び32の一例として、可視光の波長帯域に蛍光ピークを有する蛍光体(可視光蛍光体)を使用した。近赤外蛍光体は自作し、可視光蛍光体は外部から入手した。可視光蛍光体の化学組成、及び、入手先は、以下に示す通りである。
【0037】
Lu3Al5O12:Ce3+、根本特殊化学株式会社
CaAlSiN3:Eu2+、三菱ケミカル株式会社
【0038】
まず、固相反応を利用する調製手法によって、実施例で使用する近赤外蛍光体を合成した。実施例で使用する近赤外蛍光体は、(Gd0.95La0.05)3(Ga0.97Cr0.03)2Ga3O12の組成式で表される酸化物蛍光体である。また、実施例で使用する近赤外蛍光体は、Cr3+賦活蛍光体である。なお、実施例で使用する近赤外蛍光体は、以下の化合物粉末を原料として使用した。
【0039】
酸化ガドリニウム(Gd2O3):純度3N、和光純薬工業株式会社
酸化ランタン(La2O3):純度3N、和光純薬工業株式会社
酸化ガリウム(Ga2O3):純度4N、和光純薬工業株式会社
酸化クロム(Cr2O3):純度3N、株式会社高純度化学研究所
【0040】
化学量論的組成の化合物(Gd0.95La0.05)3(Ga0.97Cr0.03)2Ga3O12となるように、上記原料を秤量した。次に、秤量した原料を、乳鉢と乳棒とを用いて手混合した。このようにして、混合原料を得た。
【0041】
混合原料を、アルミナ製のるつぼに投入し、電気炉を用いて焼成した。焼成温度は、1600℃とした。また、焼成雰囲気は、大気中とした。
【0042】
焼成後の焼成物を、乳鉢と乳棒とを用いて軽く手解砕した。このようにして、実施例で使用する近赤外蛍光体を得た。なお、実施例で使用する近赤外蛍光体は、粒子状の蛍光体である。
【0043】
上記手順で得た近赤外蛍光体を、シリコーン樹脂に分散させた。近赤外蛍光体のシリコーン樹脂に対する体積比率は、30%とした。その後、近赤外蛍光体をシリコーン樹脂に分散させたペーストを、ディスペンサを用いて、光源20の一例である青色LED素子の上に塗布した。その後、乾燥機を用いて、150℃の温度で熱処理し、上記ペーストを硬化させた。このようにして、近赤外蛍光体を塗布したLED素子を得た。
【0044】
次に、実施例で使用する可視光蛍光体を、シリコーン樹脂に分散させた。具体的には、Lu3Al5O12:Ce3+蛍光体、及び、CaAlSiN3:Eu2+蛍光体を、シリコーン樹脂に分散させた。Lu3Al5O12:Ce3+蛍光体、及び、CaAlSiN3:Eu2+蛍光体のシリコーン樹脂に対する体積比率はそれぞれ、4%、及び、6%とした。その後、可視光蛍光体をシリコーン樹脂に分散させたペーストを、ディスペンサを用いて、LED素子の上に塗布された近赤外蛍光体の上に重ねて塗布した。その後、乾燥機を用いて、150℃の温度で熱処理し、上記ペーストを硬化させた。このようにして、青色LED素子、近赤外蛍光体層、及び、可視光蛍光体層から成る光源装置1を得た。
【0045】
なお、近赤外蛍光体層、及び、可視光蛍光体層の厚みはそれぞれ、240μm、及び、60μmであった。すなわち、近赤外蛍光体層、及び、可視光蛍光体層から成る光学部材30の厚みTは、300μmであった。
【0046】
また、近赤外蛍光体層、及び、可視光蛍光体層から成る光学部材30は、厚み方向に対して垂直となる出射光Lの出射面30bを有し、出射面30bの平面視形状は長方形形状であった。そして、出射面30bの最大長さWは、7000μmであった。すなわち、光学部材30の厚みTに対する出射面30bの最大長さWの比(W/T)は、約23であった。
【0047】
次に、光源装置1が放つ出射光Lのスペクトルを、積分球とマルチチャンネル分光測光装置とを用いて評価した。
図3に、実施例に係る光源装置1が放つ出力光のスペクトルを示す。
図3に示すように、実施例に係る光源装置1が放つ出射光Lは、450nm以上800nm未満の波長帯域において、最大蛍光強度に対する最低蛍光強度の比が、0.05以上であった。すなわち、実施例に係る光源装置1が放つ出射光Lは、450nm以上800nm未満の波長帯域全体に亘って光成分を有していた。
【0048】
実施例に係る光源装置1の出射面30bにおける出射光Lの強度分布を、
図5A及び
図5Bを用いて説明する。
図5A及び
図5Bはそれぞれ、参考例1及び2に係る光源装置の出射面の輝度分布を示す図である。
図5A及び
図5Bでは、網掛けの濃さと輝度とを対応付けて表しており、濃い領域程、輝度が高いことを表している。
【0049】
参考例1に係る光源装置は、実施例と同様の手順で作製した、青色LED素子、及び、近赤外蛍光体層から成る光源装置である。つまり、参考例1に係る光源装置は、実施例に係る光源装置1から可視光蛍光体層を除いた構成を有する。参考例2に係る光源装置は、青色LED素子、及び、可視光蛍光体層から成る光源装置である。つまり、参考例2に係る光源装置は、実施例に係る光源装置1から近赤外蛍光体層を除いた構成を有する。
【0050】
図5Aに示されるように、参考例1に係る光源装置の出射面における出射光の輝度は、全ての領域で、14.95cd/cm
2以上であった。すなわち、参考例1に係る光源装置の出射面では、全ての領域で光強度を有しており、参考例1に係る光源装置の出射面における出射光の強度分布(輝度分布)は、連続的であった。つまり、参考例1に係る光源装置の出射面における強度分布は、任意の方向に沿って一定又は滑らかに変化していた。
【0051】
図5Bに示されるように、参考例2に係る光源装置の出射面における出射光の輝度は、全ての領域で、306.4cd/cm
2以上であった。すなわち、参考例2に係る光源装置の出射面では、全ての領域で光強度を有しており、参考例2に係る光源装置の出射面における出射光の強度分布(輝度分布)は、連続的であった。つまり、参考例2に係る光源装置の出射面における強度分布は、任意の方向に沿って一定又は滑らかに変化していた。
【0052】
以上の結果から、実施例に係る光源装置1のように、青色LED素子、近赤外蛍光体層、及び、可視光蛍光体層から成る場合においても、出射面30bにおける出射光の強度分布が、連続的であることは自明である。つまり、光源装置1の出射面30bの強度分布は、任意の方向に沿って一定又は滑らかに変化している。
【0053】
[検査装置]
続いて、本実施の形態に係る光源装置1を利用した検査について説明する。
【0054】
図6は、本実施の形態に係る光源装置1を備える検査装置100の構成と検査対象物101を示す図である。検査対象物101は、例えば、黒色の紙であるが、海苔又はひじきなどの食品であってもよい。検査対象物101には、異物102が混入している。異物102、例えば、毛髪などである。肉眼では、異物102を見つけ出すことが困難である。本実施の形態に係る検査装置100は、検査として、検査対象物101内の異物102の有無を判定する。
【0055】
図6に示されるように、検査装置100は、光源装置1と、受光装置110と、信号処理回路120と、を備える。
【0056】
光源装置1は、検査対象物101に向けて出射光Lを出射する。
【0057】
受光装置110は、検査対象物101からの出射光Lの反射光Lrを受光し、受光した反射光Lrの強度に応じた電気信号を出力する。受光装置110は、例えば、ハイパースペクトルカメラである。受光装置110は、反射光Lrの分光スペクトルを画素毎に得ることができる。
【0058】
信号処理回路120は、受光装置110から出力される電気信号を処理することで、検査対象物101の異物102を検出する。例えば、信号処理回路120は、画素毎に特定の波長成分の強度を抽出することにより、
図7に示される特定波長の画像を得ることができる。
【0059】
図7は、本実施の形態に係る検査装置100によって得られた特定波長の画像121を示す図である。画像121は、異物102が強調されている。これは、異物102と検査対象物101との光の反射特性の差異に基づくものである。例えば、特定波長では、異物102の反射率が検査対象物101の反射率より高い。このため、特定波長の画像121では、異物102と検査対象物101とが、各々別の色で表示される。これにより、異物102を検出することができる。
【0060】
なお、受光装置110は、ハイパースペクトルカメラでなくてもよく、例えば、特定の波長成分を通過させるフィルタと、フィルタを通過した光を受光するイメージセンサと、を含んでもよい。受光装置110は、通過帯域が互いに異なる複数のフィルタを備えてもよい。複数のフィルタは、検査対象物101又は異物102の反射特性に応じて、切り替え可能であってもよい。
【0061】
[効果など]
以上のように、本実施の形態に係る光源装置1は、検査に用いられる光源装置であって、第1の光L1を発する光源20と、第1の光L1の一部を吸収し、第1の光L1とは波長が異なる第2の光L2を発する複数の波長変換体を含む光学部材30と、を備える。光学部材30は、第1の光L1が入射する入射面30aと、入射面30aから入射した第1の光L1の他の一部と第2の光L2とを含む出射光を出射する出射面30bと、を有する。出射光Lは、450nm以上800nm未満の波長帯域に亘ってピーク強度の5%以上の強度を有する。出射面30bは、第2の光L2の発光面である。
【0062】
これにより、ブロードな出射光Lを利用することにより、特定波長の反射光を抽出することが可能になる。このため、特定の検査対象物及び/又は特定の異物の検査だけでなく、様々な検査対象物に対して様々な異物の検査を行うことができる。つまり、汎用性の高い光源装置1を実現することができる。
【0063】
また、例えば、ブロードな光を照射する光源としては、ハロゲンランプなどが知られている。しかしながら、ハロゲンランプを用いた場合、ハロゲンランプが発生する熱によって検査対象物の品質が低下する。これに対して、本実施の形態に係る光源装置1によれば、出射光Lとして、光源20からの第1の光L1と光学部材30に含まれる波長変換体からの第2の光L2を利用することにより、検査対象物の品質の劣化を抑制することができる。
【0064】
このように、検査対象物の品質の劣化を抑制することができ、汎用性が高い光源装置1を実現することができる。
【0065】
また、例えば、出射面30bにおける出射光Lの強度分布は、任意の方向に沿って一定又は滑らかに変化している。
【0066】
これにより、出射光Lの強度むらを抑制することができるので、検査対象物による反射光を受光することにより生成される画像のむらも抑制することができる。これにより、精度が高い検査を支援することができる。
【0067】
また、例えば、光学部材30は、入射面30a及び出射面30bが互いに背向する板材である。光学部材30の厚みTに対する出射面30bの最大長さWの比は、20以上である。
【0068】
これにより、広範囲に出射光Lを出射する低背な光源装置1を実現することができる。
【0069】
また、例えば、出射光Lのエネルギーは、1W以上である。
【0070】
これにより、検査に十分な強さの出射光Lを検査対象物に照射することができる。また、光源装置1と検査対象物との距離を空けることができるので、光源装置1で生じる熱が検査対象物に伝わるのを抑制することができる。よって、検査対象物の品質の劣化を抑制することができる。
【0071】
また、例えば、複数の波長変換体は、700nm以上の波長帯域にピーク波長を有する蛍光体を含む。
【0072】
これにより、出射光Lに強い近赤外光を含ませることができる。よって、肉眼では難しい検査を行うことができる。また、蛍光体は半永久的に利用可能であり、光源装置1の寿命を長くすることができる。このため、光源装置1のメンテナンス頻度を低減することができる。
【0073】
また、例えば、複数の波長変換体は、互いに発光波長が異なる3種類以上の蛍光体を含む。
【0074】
これにより、蛍光体の種類及び量などによって出射光Lの分光スペクトルを適切に調整することができる。このため、光源装置1は、検査対象物の種類などに応じて、適切なスペクトルを有する出射光Lを出射することができる。
【0075】
また、例えば、光源20としてLED素子を利用することにより、レーザ素子を用いる場合に比べて、光源装置1の低コスト化も実現することができる。
【0076】
また、本実施の形態に係る検査装置100は、検査対象物に向けて出射光Lを出射する光源装置1と、検査対象物からの出射光Lの反射光Lrを受光し、受光した反射光Lrの強度に応じた電気信号を出力する受光装置110と、を備える。
【0077】
これにより、検査装置100は、光源装置1がブロードな出射光Lを照射するので、検査対象物と異物との組み合わせに応じて適切な波長を選択することで、様々な種類の検査対象物における様々な異物の検査を行うことができる。したがって、汎用性の高い検査装置100を実現することができる。
【0078】
(その他)
以上、本発明に係る光源装置及び検査装置について、上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0079】
例えば、出射面における出射光の強度分布は、連続的でなくてもよい。出射面における出射光の強度分布は、一方向に沿って離散的に強度が変化していてもよい。
【0080】
また、例えば、光学部材の形状は、平板でなくてもよく、湾曲した板材であってもよい。光学部材は、ロッド状又はブロック状であってもよい。また、例えば、光学部材は、光源の発光面に直接接触して設けられていてもよく、光源とは離間して配置されていてもよい。
【0081】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
1 光源装置
20 光源
30 光学部材
30b 出射面
31、32、33 蛍光体
100 検査装置
101 検査対象物
102 異物
110 受光装置
120 信号処理回路
L 出射光
L1 第1の光
L2、L21、L22、L23 第2の光
Lr 反射光