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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】接合構造
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/02 20060101AFI20240830BHJP
   B23K 9/23 20060101ALI20240830BHJP
   B23K 9/007 20060101ALI20240830BHJP
   B23K 9/173 20060101ALN20240830BHJP
【FI】
B23K9/02 M
B23K9/23 H
B23K9/007
B23K9/173 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021543737
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2020032641
(87)【国際公開番号】W WO2021044972
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2019162386
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 潤司
(72)【発明者】
【氏名】中川 龍幸
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/170213(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/030272(WO,A1)
【文献】特開2018-34164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/02
B23K 9/23
B23K 9/007
B23K 9/173
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材で構成された第1の部材と、該第1の部材に対して溶接が困難な材料で構成された第2の部材と、該第1の部材に溶接された溶加材で構成された第3の部材とが互いに接合された接合構造であって、
前記第2の部材には、前記第1の部材に向かって貫通する貫通部が形成され、
前記第3の部材は、前記貫通部を介して前記第1の部材に溶接され、
前記第1の部材及び前記第2の部材の重ね合わせ面の少なくとも一方には、前記貫通部とは別空間に形成され、該貫通部を囲むように全周にわたって窪んだ窪み部が設けられ、
前記窪み部は、前記第1の部材と前記第3の部材が溶接される溶接箇所である溶接部とは別空間に形成され、該溶接部を囲むように全周にわたって窪んでおり、
前記窪み部には、前記第1の部材及び前記第2の部材の重ね合わせ面の隙間を塞ぐシール材が設けられている接合構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記窪み部の少なくとも一部は、前記第1の部材及び前記第2の部材の重ね合わせ方向と交差する方向に開口している接合構造。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記窪み部の少なくとも一部は、前記第1の部材及び前記第2の部材の重ね合わせ方向に開口している接合構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のうち何れか1つにおいて、
前記第1の部材及び前記第2の部材の少なくとも一方には、前記窪み部に連通する開口としての連通部が設けられ、
前記連通部は、前記溶接部とは別空間に形成されている接合構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のうち何れか1つにおいて、
前記窪み部は、前記第2の部材に比べて板厚が薄い前記第1の部材側に、立体形状に塑性変形されて形成されている接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1の金属材と、第1の金属材に対して溶接が困難な異種材とを重ね合わせた状態にし、異種材の貫通部を介して溶加材(溶接ワイヤ)をアーク溶接するようにした接合構造が開示されている。
【0003】
このとき、溶融した溶加材によって、異種材の貫通部の上面側の外周部に覆い被さるようにつば部分を形成する。これにより、第1の金属材に対する溶加材の凝固収縮によるつば部分と第1の金属材との圧縮固定力によって、異種材と第1の金属材とを固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/030272号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の発明では、第1の金属材と第2の金属材との重ね合わせ面の隙間を通って、外部から水分が侵入するおそれがある。そして、侵入した水分によって、第1の金属材と第2の金属材とが重なり合う部分で電食が発生してしまい、接合強度が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、金属材と異種材とが重なり合う部分で電食が発生するのを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の態様は、金属材で構成された第1の部材と、該第1の部材に対して溶接が困難な材料で構成された第2の部材と、該第1の部材に溶接された溶加材で構成された第3の部材とが互いに接合された接合構造を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の態様は、前記第2の部材には、前記第1の部材に向かって貫通する貫通部が形成され、
前記第3の部材は、前記貫通部を介して前記第1の部材に溶接され、
前記第1の部材及び前記第2の部材の重ね合わせ面の少なくとも一方には、前記貫通部とは別空間に形成され、該貫通部を囲むように全周にわたって窪んだ窪み部が設けられ、
前記窪み部は、前記第1の部材と前記第3の部材が溶接される溶接箇所である溶接部とは別空間に形成され、該溶接部を囲むように全周にわたって窪んでおり、
前記窪み部には、前記第1の部材及び前記第2の部材の重ね合わせ面の隙間を塞ぐシール材が設けられている。
【0009】
第1の態様では、第1の部材及び第2の部材の重ね合わせ面の少なくとも一方には、窪み部が設けられている。窪み部は、第2の部材の貫通部を囲むように全周にわたって窪んでいる。窪み部には、シール材が設けられている。
【0010】
このように、第1の部材及び第2の部材の重ね合わせ面の隙間をシール材で塞ぐことで、第1の部材及び第2の部材の重ね合わせ部分に、外部から水分が侵入するのを抑えることができる。
【0011】
これにより、第1の部材と第3の部材が溶接される溶接箇所である溶接部の周囲において、第1の部材と第2の部材とが重なり合う部分で電食が発生するのを抑え、接合強度を確保することができる。
【0012】
第2の態様は、第1の態様において、
前記窪み部の少なくとも一部は、前記第1の部材及び前記第2の部材の重ね合わせ方向と交差する方向に開口している。
【0013】
第2の態様では、第1の部材及び第2の部材の重ね合わせ方向と交差する方向に窪み部が開口している。例えば、第2の部材の側面の一部を切り欠くことで、窪み部を開口させるようにする。
【0014】
これにより、溶接時の熱によって変形したシール材や、シール材の一部が蒸発することで生じたガスを、窪み部から開口に向かって逃がすことができる。
【0015】
第3の態様は、第1又は第2の態様において、
前記窪み部の少なくとも一部は、前記第1の部材及び前記第2の部材の重ね合わせ方向に開口している。
【0016】
第3の態様では、第1の部材及び第2の部材の重ね合わせ方向に窪み部が開口している。例えば、第2の部材に窪み部を設けるとともに、第1の部材の端縁部を平面視で窪み部に重なり合うようにずらして配置することで、窪み部を開口させるようにする。
【0017】
これにより、溶接時の熱によって変形したシール材や、シール材の一部が蒸発することで生じたガスを、窪み部から開口に向かって逃がすことができる。
【0018】
第4の態様は、第1乃至第3の態様のうち何れか1つにおいて、
前記第1の部材及び前記第2の部材の少なくとも一方には、前記窪み部に連通する開口としての連通部が設けられ、
前記連通部は、前記溶接部とは別空間に形成されている。
【0019】
第4の態様では、第1の部材及び第2の部材の少なくとも一方には、連通部が設けられている。連通部は、窪み部に連通している。
【0020】
これにより、溶接時の熱によって変形したシール材や、シール材の一部が蒸発することで生じたガスを、連通部から逃がすことができる。
【0021】
第5の態様は、第1乃至第4の態様のうち何れか1つにおいて、
前記窪み部は、前記第2の部材に比べて板厚が薄い前記第1の部材側に、立体形状に塑性変形されて形成されている。
【0022】
これにより、第2の部材に比べて板厚が薄い第1の部材側の強度を向上させている。
【発明の効果】
【0023】
本開示の態様によれば、金属材と異種材とが重なり合う部分で電食が発生するのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本実施形態1に係る接合構造を説明するための側面断面図である。
図2図2は、図1のA-A矢視断面図である。
図3図3は、本実施形態2に係る接合構造を説明するための側面断面図である。
図4図4は、図3のB-B矢視断面図である。
図5図5は、本実施形態3に係る接合構造を説明するための側面断面図である。
図6図6は、本実施形態4に係る接合構造を説明するための側面断面図である。
図7図7は、本実施形態5に係る接合構造を説明するための側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0026】
《実施形態1》
図1は、金属材で構成された第1の部材10と、第1の部材10に対して溶接が困難な材料で構成された第2の部材20と、溶加材で構成された第3の部材30とを互いに接合するための接合構造を示している。
【0027】
第1の部材10は、金属材で構成された板状の部材である。
【0028】
第2の部材20は、第1の部材10に対して溶接が困難な材料で構成された板状の部材である。第2の部材20は、第1の部材10の上側に重ね合わされている。第2の部材20は、第1の部材10に向かって貫通する円形状の貫通部21を有する。
【0029】
なお、本実施形態では、貫通部21を円形状の貫通孔として説明するが、楕円状や長孔状の貫通孔であってもよい。
【0030】
第2の部材20には、窪み部41が設けられている。窪み部41は、第2の部材20における第1の部材10との重ね合わせ面に設けられている。窪み部41は、貫通部21とは別空間に形成され、貫通部21を囲むように全周にわたって窪んでいる。
【0031】
また、窪み部41は、第1の部材10と第3の部材30が溶接される溶接箇所である溶接部とは別空間に形成され、溶接部を囲むように全周にわたって窪んでいる。
【0032】
窪み部41には、シール材40が設けられている。シール材40は、第1の部材10及び第2の部材20の重ね合わせ面の隙間を塞いでいる。シール材40は、例えば、窪み部41に塗布された樹脂材や接着剤である。なお、シール材40としてOリングやガスケット等を用いて、窪み部41に嵌め込むようにしてもよい。
【0033】
窪み部41は、第1の部材10及び第2の部材20の重ね合わせ方向と交差する方向と、第1の部材10及び第2の部材20の重ね合わせ方向とにそれぞれ開口している。
【0034】
図2に示す例では、窪み部41は、平面視で矩形枠状に形成されている。第2の部材20における上側、下側、左側の三辺は、第2の部材20の側面の一部が切り欠かれている。これにより、窪み部41は、第1の部材10及び第2の部材20の重ね合わせ方向と交差する方向(図2の上方向、下方向、左方向)に開口している。
【0035】
第1の部材10の右側の端縁部は、平面視で窪み部41の一部に重なり合うようにずらして配置されている。これにより、図1で右側の窪み部41は、第1の部材10及び第2の部材20の重ね合わせ方向(図1の下方向)に開口している。
【0036】
第3の部材30は、第1の部材10と同種系の金属材である溶加材で構成されている。ここで、同種系の金属材とは、互いに溶接可能な金属であり、同じ材質同士だけではなく、鉄系金属材同士、非鉄系金属材同士などの溶接接合性がよい金属材のことである。言い換えると、同種系の金属材とは、溶接の相性がよい同種系の材料のことである。
【0037】
具体的には、溶接時における第1の部材10と第3の部材30との組み合わせとしては、以下のものが挙げられる。例えば、鉄系金属材の組合せとしては、軟鋼と軟鋼、ステンレスとステンレス、軟鋼とハイテン(高張力鋼)、ハイテンとハイテン等がある。また、非鉄系金属材としては、アルミとアルミ、アルミとアルミ合金、アルミ合金とアルミ合金等がある。
【0038】
また、異種材としての第2の部材20は、同種系の金属材としての第1の部材10及び第3の部材30とは、異なる材質の材料であり、第1の部材10及び第3の部材30に対して溶接が困難な材質である。
【0039】
例えば、同種系の金属材としての第1の部材10及び第3の部材30を鉄系金属材にした場合、異種材としての第2の部材20は、銅材やアルミ材等の非鉄系金属材である。また、例えばCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics,炭素繊維強化プラスチック)、PET(PolyEthlen Terephthalate,ポリエチレンテレフタレート)、エンジニアリング・プラスチック (Engineering plastic)等といった樹脂材も金属材に対する異種材として挙げられる。
【0040】
なお、以下の説明では、第1の部材10として軟鋼材、第2の部材20としてアルミ材、溶加材である第3の部材30として軟鋼材を用いた場合について説明する。
【0041】
アーク溶接機1は、ノズル2と、チップ3とを備えている。ノズル2は、溶接対象物の溶接箇所にシールドガス等を供給する。チップ3は、第3の部材30に対して溶接電流を供給する。
【0042】
アーク溶接機1は、第2の部材20の貫通部21内に第3の部材30を送給しながら溶接電流を供給することで、第3の部材30と第1の部材10との間にアーク5を発生させる。アーク溶接により溶融した第3の部材30は、第1の部材10に溶融結合されるとともに、貫通部21内に積層されていく。そして、溶融した第3の部材30は、貫通部21内を埋め尽くした後、貫通部21の上面側の周縁部に流れ出し、フランジ状に広がる。
【0043】
溶融した第3の部材30がビードとなる過程で、第3の部材30には、第2の部材20の貫通部21の周縁部を押さえるフランジ部31が設けられる。フランジ部31は、第2の部材20における第1の部材10とは反対側の面(図1では上面)において、貫通部21よりも径方向外方に張り出している。
【0044】
シール材40は、溶接時の熱によって変形する。また、シール材40の一部は、溶接時の熱によって蒸発してガスとなる。ここで、上述したように、窪み部41は、第1の部材10及び第2の部材20の重ね合わせ方向と交差する方向と、第1の部材10及び第2の部材20の重ね合わせ方向とにそれぞれ開口している。そのため、窪み部41内で変形して流動するシール材40や、窪み部41内で生じたガスを、窪み部41から開口に向かって逃がすことができる。また、少なくとも板厚方向の開口に向かってガスを逃がすことができる。
【0045】
その後、第1の部材10に対して第3の部材30が凝固収縮することで、フランジ部31と第1の部材10との間に、異種材である第2の部材20が圧縮固定される。
【0046】
なお、窪み部41は、第1の部材10と第3の部材30が溶接される溶接箇所である溶接部とは別空間に形成される。第1の部材10に窪み部41として形成されたシール材40用の縦方向注入経路と、貫通部21を囲むように全周にわたって窪んでいる横方向連通経路とに、シール材40が注入される。シール材40によって、第1の部材10及び第2の部材20の重ね合わせ面の隙間を塞ぎ、シール性を向上させる。この状態で、第1の部材10と第3の部材30とを溶接することにより、外周側からの水分の侵入を防止することができる。
【0047】
以上のように、本実施形態に係る接合構造によれば、第1の部材10及び第2の部材20の重ね合わせ面の隙間をシール材40で塞ぐことで、第1の部材10及び第2の部材20の重ね合わせ部分に、外部から水分が侵入するのを抑えることができる。
【0048】
これにより、第1の部材と第3の部材が溶接される溶接箇所である溶接部の周囲において、第1の部材と第2の部材とが重なり合う部分で電食が発生するのを抑え、接合強度を確保することができる。
【0049】
《実施形態2》
以下、前記実施形態1と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0050】
図3に示すように、第2の部材20には、窪み部41が設けられている。窪み部41は、第2の部材20における第1の部材10との重ね合わせ面に設けられている。窪み部41は、貫通部21とは別空間に形成され、貫通部21を囲むように全周にわたって窪んでいる。また、窪み部41は、第1の部材10と第3の部材30が溶接される溶接箇所である溶接部とは別空間に形成され、溶接部を囲むように全周にわたって窪んでいる。
【0051】
窪み部41には、シール材40が設けられている。シール材40は、第1の部材10及び第2の部材20の重ね合わせ面の隙間を塞いでいる。
【0052】
図4に示す例では、窪み部41は、平面視で矩形枠状に形成されている。窪み部41は、第2の部材20の側面の一部が切り欠かれることで、第1の部材10及び第2の部材20の重ね合わせ方向と交差する方向(図4の上方向、下方向、左方向)に開口している。
【0053】
第1の部材10は、図3で右側の窪み部41の下方開口を塞ぐように配置されている。第1の部材10及び第2の部材20には、開口部である連通部42が設けられている。連通部42は、図3で右側の窪み部41に連通している。
【0054】
連通部42は、第1の部材10と第3の部材30が溶接される溶接箇所である溶接部とは別空間に形成されている。
【0055】
図4にも示すように、連通部42は、円形状の連通孔で形成されている。第1の部材10及び第2の部材20に1つずつ設けられている。なお、連通部42は、平面視で窪み部41に沿って間隔をあけて複数設けるようにしてもよい。
【0056】
ここで、アーク溶接機1によって、第1の部材10に対して第3の部材30を溶接すると、溶接時の熱でシール材40が変形する。また、シール材40の一部は、溶接時の熱によって蒸発してガスとなる。
【0057】
図3に示す例では、窪み部41は、第2の部材20の側面の一部が切り欠かれることで、第1の部材10及び第2の部材20の重ね合わせ方向と交差する方向(図3で左方向)に開口している。また、窪み部41は、連通部42によって、第1の部材10及び第2の部材20の板厚方向である重ね合わせ方向(図3で上下方向)に開口している。連通部42は、第1の部材10と第3の部材30が溶接される溶接箇所である溶接部とは別空間に形成される。
【0058】
これにより、窪み部41内で変形して流動するシール材40や、窪み部41内で生じたガスを、窪み部41から開口に向かって逃がすとともに、少なくとも板厚方向である重ね合わせ方向の開口としての連通部42からも逃がすことができる。
【0059】
《実施形態3》
図5に示すように、第1の部材10には、窪み部41が設けられている。窪み部41は、第1の部材10における第2の部材20との重ね合わせ面に設けられている。窪み部41は、第2の部材20に比べて板厚が薄い第1の部材10をプレス成形することによって、立体形状に塑性変形されて形成されている。窪み部41は、下方に向かって段差状に窪んでいる。窪み部41は、貫通部21とは別空間に形成され、貫通部21を囲むように全周にわたって窪んでいる。
【0060】
窪み部41には、シール材40が設けられている。シール材40は、第1の部材10及び第2の部材20の重ね合わせ面の隙間を塞いでいる。
【0061】
窪み部41は、第1の部材10及び第2の部材20の重ね合わせ方向と交差する方向と、第1の部材10及び第2の部材20の重ね合わせ方向とにそれぞれ開口している。
【0062】
図5で右側の窪み部41は、第1の部材10及び第2の部材20の重ね合わせ方向と交差する方向(図5の右方向)に開口している。
【0063】
第2の部材20の左側の端縁部は、平面視で窪み部41の一部に重なり合うようにずらして配置されている。これにより、図5で左側の窪み部41は、第1の部材10及び第2の部材20の重ね合わせ方向(図5の上方向)に開口している。
【0064】
これにより、第2の部材20に比べて板厚が薄い第1の部材10側に、プレス成形により立体形状に塑性変形された窪み部41を形成することで、第2の部材20に比べて板厚が薄い第1の部材10側の強度を向上させている。
【0065】
また、窪み部41は、第1の部材10と第3の部材30が溶接される溶接箇所である溶接部とは別空間に形成される。第1の部材10に窪み部41として形成されたシール材40用の縦方向注入経路と、貫通部21を囲むように全周にわたって窪んでいる横方向連通経路とに、シール材40が注入される。シール材40によって、第1の部材10及び第2の部材20の重ね合わせ面の隙間を塞ぎ、シール性を向上させる。この状態で、第1の部材10と第3の部材30とを溶接することにより、外周側からの水分の侵入を防止することができる。
【0066】
また、溶接時の熱によって、窪み部41内でシール材40変形したりガスが発生した場合でも、流動するシール材40やガスを窪み部41から開口に向かって逃がすことができる。また、少なくとも板厚方向の開口に向かってガスを逃がすことができる。
【0067】
《実施形態4》
図6に示すように、第1の部材10には、窪み部41が設けられている。窪み部41は、第1の部材10における第2の部材20との重ね合わせ面に設けられている。窪み部41は、第2の部材20に比べて板厚が薄い第1の部材10をプレス成形することによって、立体形状に塑性変形されて形成されている。窪み部41は、下方に向かって段差状に窪んでいる。窪み部41は、貫通部21とは別空間に形成され、貫通部21を囲むように全周にわたって窪んでいる。
【0068】
第2の部材20は、窪み部41の上方開口を塞ぐように配置されている。第2の部材20には、開口としての連通部42が設けられている。連通部42は、第1の部材10と第3の部材30が溶接される溶接箇所である溶接部とは別空間に設けられている。連通部42は、窪み部41に連通している。図6に示す例では、左右の窪み部41に連通する位置に連通部42を設けるようにしているが、連通部42の数や位置は、任意に設定すればよい。
【0069】
これにより、第2の部材20に比べて板厚が薄い第1の部材10側に、プレス成形により立体形状に塑性変形された窪み部41を形成することにより、第2の部材20に比べて板厚が薄い第1の部材10側の強度を向上させている。
【0070】
また、窪み部41は、第1の部材10と第3の部材30が溶接される溶接箇所である溶接部とは別空間に形成される。第1の部材10に窪み部41として形成されたシール材40用の縦方向注入経路と、貫通部21を囲むように全周にわたって窪んでいる横方向連通経路とに、シール材40が注入される。シール材40によって、第1の部材10及び第2の部材20の重ね合わせ面の隙間を塞ぎ、シール性を向上させる。この状態で、第1の部材10と第3の部材30とを溶接することにより、外周側からの水分の侵入を防止することができる。
【0071】
また、溶接時の熱によって、窪み部41内でシール材40が変形したりガスが発生した場合でも、流動するシール材40やガスを少なくとも板厚方向の開口である連通部42から逃がすことができる。
【0072】
《実施形態5》
図7に示すように、第1の部材10には、窪み部41が設けられている。窪み部41は、第1の部材10における第2の部材20との重ね合わせ面に設けられている。窪み部41は、第2の部材20に比べて板厚が薄い第1の部材10をプレス成形することによって、立体形状に塑性変形されて形成されている。窪み部41は、下方に向かって段差状に窪んでいる。窪み部41は、貫通部21とは別空間に形成され、貫通部21を囲むように全周にわたって窪んでいる。また、窪み部41は、第1の部材10と第3の部材30が溶接される溶接箇所である溶接部とは別空間に形成され、溶接部を囲むように全周にわたって窪んでいる。第2の部材20は、窪み部41の上方開口を塞ぐように配置されている。
【0073】
第1の部材10には、開口としての連通部42が設けられている。連通部42は、第1の部材10と第3の部材30が溶接される溶接箇所である溶接部とは別空間に設けられている。連通部42は、窪み部41に連通している。図7に示す例では、左右の窪み部41に連通する位置に連通部42を設けるようにしているが、連通部42の数や位置は、任意に設定すればよい。
【0074】
これにより、第2の部材20に比べて板厚が薄い第1の部材10側に、プレス成形により立体形状に塑性変形された窪み部41を形成することにより、第2の部材20に比べて板厚が薄い第1の部材10側の強度を向上させている。
【0075】
また、窪み部41は、第1の部材10と第3の部材30が溶接される溶接箇所である溶接部とは別空間に形成される。第1の部材10に窪み部41として形成されたシール材40用の縦方向注入経路と、貫通部21を囲むように全周にわたって窪んでいる横方向連通経路とに、シール材40が注入される。シール材40によって、第1の部材10及び第2の部材20の重ね合わせ面の隙間を塞ぎ、シール性を向上させる。この状態で、第1の部材10と第3の部材30とを溶接することにより、外周側からの水分の侵入を防止することができる。
【0076】
また、溶接時の熱によって、窪み部41内でシール材40が変形したりガスが発生した場合でも、流動するシール材40やガスを少なくとも板厚方向の開口である連通部42から逃がすことができる。
【0077】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0078】
本実施形態では、第1の部材10の窪み部41に対してアーク溶接を行うようにしたが、例えば、溶加材としてのフィラーワイヤを用いて、レーザ溶接を行う、いわゆるレーザフィラー溶接を行うようにしてもよい。
【0079】
また、本実施形態では、第1の部材10又は第2の部材20に窪み部41を設けるようにしたが、第1の部材10及び第2の部材20のそれぞれに窪み部41を設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上説明したように、本発明は、金属材と異種材とが重なり合う部分で電食が発生するのを抑えることができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0081】
10 第1の部材
20 第2の部材
21 貫通部
30 第3の部材
40 シール材
41 窪み部
42 連通部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7