IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-正極活物質及びマグネシウム二次電池 図1
  • 特許-正極活物質及びマグネシウム二次電池 図2
  • 特許-正極活物質及びマグネシウム二次電池 図3
  • 特許-正極活物質及びマグネシウム二次電池 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】正極活物質及びマグネシウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/58 20100101AFI20240830BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20240830BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M10/054
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022501607
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(86)【国際出願番号】 JP2020027535
(87)【国際公開番号】W WO2021166280
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2020028339
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】鄭 豪
(72)【発明者】
【氏名】大戸 貴司
(72)【発明者】
【氏名】濱村 朋史
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-209427(JP,A)
【文献】特表2013-533577(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109037623(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103872375(CN,A)
【文献】Alexandra Emly,Mg Intercalation in Layered and Spinel Host Crystal Structures for Mg Batteries,Inorganic Chemistry,米国,American Chemical Society,2015年04月23日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 10/054
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ta、及びWからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、Mgとを有する複合硫化物を含み、
空間群Fm-3mに属する結晶構造を有する、正極活物質。
【請求項2】
前記複合硫化物はMgxy2の組成式で表され、
前記組成式において、Mgはマグネシウム、Mは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ta、及びWからなる群より選ばれる前記少なくとも1種の元素であり、かつ、0.8<x<1.3及び0.8<y<1.3の条件が満たされる、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記少なくとも1種の元素は、Ti、Cr、及びNiからなる群より選ばれる、請求項1又は2に記載の正極活物質。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の正極活物質を含む正極と、
電解質と、
負極と、を備える、
マグネシウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、正極活物質及びマグネシウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マグネシウム二次電池に関する研究が注目を浴びている。
【0003】
特許文献1には、硫黄を活物質として含む正極と、マグネシウムを活物質とする負極と、マグネシウム塩を含む非水電解質とを備えた非水電解質電池が開示されている。
【0004】
非特許文献1には、スピネル型の結晶構造を有する硫黄化合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-265675号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Energy & Environmental Science,(英),2016,Vol.9,p.3201-3209
【発明の概要】
【0007】
本開示は、マグネシウム二次電池のための新規の正極活物質及びそれを用いたマグネシウム二次電池を提供する。
【0008】
本開示の一態様は、
Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ta、及びWからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、Mgとを有する複合硫化物を含み、
空間群Fm-3mに属する結晶構造を有する、正極活物質を提供する。
【0009】
本開示の一態様によれば、マグネシウム二次電池のための新規の正極活物質及びそれを用いたマグネシウム二次電池が提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例に係る複合硫化物及びMgSの粉末X線回折の結果を示す図である。
図2図2は、マグネシウム二次電池の構成例を模式的に示す断面図である。
図3図3は、実施例に係る評価用セルの概略構成を示す模式図である。
図4図4は、比較例に係る生成物の粉末X線回折の結果、MgSの粉末X線回折の結果、及びCoSのシミュレーションの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本開示の基礎となった知見>
以下、本開示の正極活物質を得るに至った経緯が説明される。
【0012】
現在、二次電池としてリチウムイオン二次電池が汎用されている。近年、電気自動車(EV)が急速に普及しており、リチウムイオン二次電池より大きな容量を有する二次電池が盛んに研究されている。マグネシウム二次電池は、マグネシウムの二電子反応を利用できるので、高容量な二次電池として期待されている。
【0013】
マグネシウム二次電池の正極活物質として、酸化バナジウムなどの遷移金属酸化物が知られている。しかし、マグネシウムイオンと酸素との相互作用は強いので、酸化バナジウムを用いた正極活物質では、マグネシウムイオンが拡散するための活性化障壁が大きい。つまり、マグネシウムイオンが活物質内を移動しにくく、活物質における電極反応が進みにくい。その結果、遷移金属酸化物を正極活物質に用いたマグネシウム二次電池は、充放電しにくい。
【0014】
一方、非特許文献1には、マグネシウムイオンの拡散のための化合物として、硫化物が挙げられている。硫化物は、酸化物に比べて低い活性化障壁を有しうる。そのため、マグネシウム二次電池の正極に硫化物を使用することが期待されている。
【0015】
本発明者らは、マグネシウムイオンと遷移金属元素とを有する岩塩型の複合硫化物に着目した。チタン、ニッケルなどの遷移金属(M)と、マグネシウムとが、モル比にて1:1で固溶したMgMS2は、遷移金属の二電子反応を利用できる。そのため、岩塩型の複合硫化物によれば、高い理論容量を有する正極活物質が期待できる。MgTiS2の理論容量は、393.4mAh/gである。MgNiS2の理論容量は、364.4mAh/gである。一方、酸化バナジウムの理論容量は、294.8mAh/gである。岩塩型の複合硫化物を含む正極活物質を用いたマグネシウム二次電池の理論容量は、酸化物を含む正極活物質を用いたマグネシウム二次電池の理論容量より大きい。しかし、岩塩型の複合硫化物を含む正極活物質を用いたマグネシウム二次電池が可逆的に充放電するという知見は、これまでは明らかにされていなかった。本発明者らは、鋭意研究の結果、マグネシウムと遷移金属とが固溶した岩塩型の複合硫化物によって、マグネシウム二次電池が充放電可能であることを見出し、本開示を完成するに至った。
【0016】
<本開示に係る一態様の概要>
本開示の第1態様に係る正極活物質は、
Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ta、及びWからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、Mgとを有する複合硫化物を含み、
空間群Fm-3mに属する結晶構造を有する。
【0017】
第1態様によれば、充放電可能な新規のマグネシウム二次電池を提供できる。
【0018】
本開示の第2態様において、例えば、複合硫化物はMgxy2の組成式で表され、前記組成式において、Mgはマグネシウム、Mは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ta、及びWからなる群より選ばれる前記少なくとも1種の元素であり、かつ、0.8<x<1.3及び0.8<y<1.3の条件が満たされてもよい。
【0019】
第2態様によれば、充放電可能な新規のマグネシウム二次電池を提供できる。
【0020】
本開示の第3態様において、例えば、第1又は第2態様に係る正極活物質では、前記少なくとも1種の元素は、Ti、Cr、及びNiからなる群より選ばれてもよい。このような構成によれば、高い理論容量を有する複合硫化物を提供できる。
【0021】
本開示の第4態様に係るマグネシウムイオン二次電池は、
第1から第3態様のいずれか1つに係る正極活物質を含む正極と、
電解質と、
負極と、
を備えている。
【0022】
第4態様によれば、充放電可能な新規のマグネシウム二次電池を提供できる。
【0023】
<本開示の実施形態>
以下、本開示の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は一例であり、本開示は以下の実施形態に限定されない。
【0024】
[実施形態1]
正極活物質の一例は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ta、及びWからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、Mgとを有する複合硫化物を含む。正極活物質は、空間群Fm-3mに属する結晶構造を有する。このような正極活物質によれば、充放電可能な新規のマグネシウム二次電池を提供できる。上記の複合硫化物中において、アニオンである硫黄と、カチオンであるマグネシウム間の相互作用は、酸化物中における酸素とマグネシウム間の相互作用と比較して弱いと予想される。これにより、複合硫化物中ではマグネシウムの移動が容易になり、高い理論容量をもつ、充放電可能な新規マグネシウム二次電池を提供できる。なお、アニオンを硫黄とすることでマグネシウムの移動が容易になる効果は、マグネシウムと硫黄間の相互作用に起因するもので、複合硫化物中の遷移金属の種類によらず期待できると考えられる。
【0025】
複合硫化物は、空間群Fm-3mに属する結晶構造を有する。空間群Fm-3mに属する結晶構造は、例えば、岩塩型の結晶構造である。
【0026】
正極活物質に含まれる元素は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、及びCuからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であってもよい。これらの元素は、第4周期に属する。このような構成によれば、複合硫化物の理論容量がより高くなることが期待される。
【0027】
正極活物質に含まれる元素は、Ti、Cr、及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であってもよい。このような構成によれば、複合硫化物の理論容量がより高くなることが期待される。
【0028】
正極活物質の別の一例は、下記の組成式(1)により表される複合硫化物を含む。組成式(1)において、Mgはマグネシウム、Mは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ta、及びWからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む。xは、0.8<x<1.3の条件を満たす。yは、0.8<y<1.3の条件を満たす。このような正極活物質によれば、充放電可能な新規のマグネシウム二次電池を提供できる。
【0029】
Mgxy2 ・・・組成式(1)
【0030】
組成式(1)において、xは、0.85以上であってもよく、0.9以上であってもよい。また、xは、1.27以下であってもよく、1.25以下であってもよい。このような構成によれば、複合硫化物の理論容量が高くなることが期待される。
【0031】
組成式(1)において、yは、0.85以上であってもよく、0.9以上であってもよい。また、yは、1.27以下であってもよく、1.25以下であってもよい。このような構成によれば、複合硫化物の理論容量が高くなることが期待される。
【0032】
組成式(1)において、Mは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、及びCuからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であってもよい。これらの元素は、第4周期に属する。このような構成によれば、複合硫化物の理論容量が高くなることが期待される。
【0033】
組成式(1)において、Mは、Ti、Cr、及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であってもよい。このような構成によれば、複合硫化物の理論容量がより高くなることが期待される。
【0034】
複合硫化物は、例えば、次の方法によって作製されうる。まず、マグネシウムを含む原料、遷移金属を含む原料、及び硫黄を含む原料を用意し、これらを秤量する。例えば、マグネシウムを含む原料、遷移金属を含む原料、及び硫黄を含む原料を、マグネシウムと遷移金属とが1:1のモル比になるように秤量する。秤量した原料を、例えば、乾式法又は湿式法で混合する。次に、遊星型ボールミルなどの混合装置の内部で原料をメカノケミカル法に従って反応させる。このようにして、複合硫化物を作製できる。
【0035】
マグネシウムを含む原料として、マグネシウム及びマグネシウム硫化物が挙げられる。マグネシウム硫化物として、硫化マグネシウムが挙げられる。遷移金属を含む原料として、遷移金属及び遷移金属硫化物が挙げられる。硫黄を含む原料として、マグネシウム硫化物、遷移金属硫化物、及び硫黄が挙げられる。
【0036】
得られた複合硫化物の組成は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法によって決定できる。得られた複合硫化物の結晶構造は、例えば、粉末X線回折(XRD)分析によって決定できる。
【0037】
正極活物質は、上記の複合硫化物を主成分として含んでいてもよい。「主成分として含む」とは、正極活物質が上記の複合硫化物を50体積パーセントより多く含んでいることを意味する。
【0038】
複合硫化物の形状は、特定の形状に限定されない。その形状は、例えば、粒子状である。複合硫化物が粒子状である場合、複合硫化物の平均粒子径は、特定の値に限定されない。その平均粒子径は、0.1μm以上50μm以下であってもよい。本開示において、複合硫化物の平均粒子径は、レーザー回折散乱法によって体積基準で測定された粒度分布から求められる、体積累積50%に相当する粒径(d50)を意味する。
【0039】
[実施形態2]
本実施形態に係る正極活物質は、マグネシウム二次電池に利用されうる。マグネシウム二次電池は、正極と、負極と、電解質と、を備える。正極は、実施形態1で説明された正極活物質を含む。電解質は、マグネシウムイオン伝導性を有する。
【0040】
図2は、マグネシウム二次電池10の構成例を模式的に示す断面図である。
【0041】
マグネシウム二次電池10は、正極21、負極22、セパレータ14、ケース11、封口板15、及びガスケット18を備えている。セパレータ14は、正極21と負極22との間に配置されている。正極21、負極22、及びセパレータ14には、非水電解液が含浸されており、これらがケース11の中に収められている。ケース11は、ガスケット18及び封口板15によって閉じられている。
【0042】
ケース11は、正極21、負極22、及びセパレータ14を収容できればよい。そのため、ケース11の形状及び材質は、特定の態様には限定されない。したがって、ケース11は、図2に示すものに限定されず、公知の電池のケースを適宜選択して用いることができる。
【0043】
マグネシウム二次電池10の構造は、円筒型、角型、ボタン型、コイン型、又は扁平型であってもよい。
【0044】
正極21は、正極集電体12と、正極集電体12の上に配置された正極活物質層13と、を含む。正極活物質層13は、正極集電体12とセパレータ14との間に配置されている。
【0045】
正極活物質層13は、実施形態1で説明された正極活物質を含有する。このような構成によれば、高い可逆容量、高い反応電位、及び高いエネルギー密度を有するマグネシウム二次電池用正極を提供できる。
【0046】
正極活物質層13は、必要に応じて、導電助剤、イオン伝導体及び/又はバインダをさらに含んでいてもよい。
【0047】
導電助剤として、炭素材料、金属、無機化合物、及び導電性高分子が挙げられる。炭素材料として、黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、フラーレン、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、及び炭素繊維が挙げられる。黒鉛として、天然黒鉛及び人造黒鉛が挙げられる。天然黒鉛として、塊状黒鉛及び鱗片状黒鉛が挙げられる。金属として、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、及び金が挙げられる。無機化合物として、タングステンカーバイド、炭化チタン、炭化タンタル、炭化モリブデン、ホウ化チタン、及びチッ化チタンが挙げられる。導電性高分子として、ポリアニリン、ポリピロール、及びポリチオフェンが挙げられる。これらの材料は単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。
【0048】
イオン伝導体として、ゲル電解質、有機固体電解質、及び無機固体電解質が挙げられる。ゲル電解質として、ポリメチルメタクリレート及びポリメタクリル酸メチルが挙げられる。有機固体電解質として、ポリエチレンオキシドが挙げられる。無機固体電解質として、MgSc2Se4が挙げられる。
【0049】
バインダは、電極を構成する材料の結着性を向上させるために用いられる。バインダとして、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリイミドが挙げられる。
【0050】
正極活物質層13は、例えば、次の方法によって形成される。まず、正極活物質と導電助剤とバインダとの混合物が得られるように、これらの材料が混合される。次に、この混合物に適切な溶剤が加えられ、ペースト状の正極合剤が得られる。次に、この正極合剤が正極集電体12の表面に塗布され、乾燥される。これによって、正極集電体12の上に正極活物質層13が形成される。なお、正極活物質層13は、電極密度を高めるために、圧縮されてもよい。
【0051】
正極活物質層13の膜厚は、特定の値に限定されない。その膜厚は、例えば、1μm以上、100μm以下である。
【0052】
正極集電体12の材料は、例えば、単体の金属又は合金である。より具体的には、正極集電体12の材料は、銅、クロム、ニッケル、チタン、白金、金、アルミニウム、タングステン、鉄、及びモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1つの材料を含む単体の金属又は合金であってもよい。正極集電体12の材料は、ステンレス鋼であってもよい。
【0053】
正極集電体12は、多孔質のシート又は無孔のシートであってもよい。正極集電体12は、多孔質のフィルム又は無孔のフィルムであってもよい。シート又はフィルムとして、金属箔及びメッシュが用いられうる。二次電池の抵抗値を低減させる観点、触媒効果を付与する観点、又は正極活物質層13と正極集電体12との結合力を向上させる観点から、正極集電体12の表面に導電性補助材料が塗布されていてもよい。導電性補助材料として、カーボンなどの炭素材料が挙げられる。
【0054】
正極集電体12は、板状又は箔状であってもよい。正極集電体12は、積層膜であってもよい。
【0055】
ケース11が正極集電体を兼ねている場合、正極集電体12は省略されてもよい。
【0056】
負極22は、例えば、負極活物質を含有する負極活物質層17と、負極集電体16とを含む。負極活物質層17は、負極集電体16とセパレータ14との間に配置されている。
【0057】
負極活物質層17は、マグネシウムイオンを吸蔵及び放出し得る負極活物質を含有する。負極活物質として、炭素材料が挙げられる。炭素材料として、黒鉛、非黒鉛系炭素、及び黒鉛層間化合物が挙げられる。非黒鉛系炭素として、ハードカーボン及びコークスが挙げられる。
【0058】
負極活物質層17は、必要に応じて、導電助剤、イオン伝導体及び/又はバインダをさらに含んでいてもよい。導電助剤、イオン伝導体、及びバインダは、例えば、正極に関する説明で示した、導電助剤、イオン伝導体、及びバインダを適宜利用できる。
【0059】
負極活物質層17の膜厚は、特定の値に限定されない。その膜厚は、例えば、1μm以上、50μm以下である。
【0060】
負極活物質層17は、マグネシウムを析出及び溶解させ得る負極活物質を含有していてもよい。この場合、負極活物質として、マグネシウム金属及びマグネシウム合金が挙げられる。マグネシウム合金は、例えば、アルミニウム、シリコン、ガリウム、亜鉛、錫、マンガン、ビスマス、及びアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属と、マグネシウムとの合金である。
【0061】
負極集電体16の材料は、例えば、正極に関する説明で示した、正極集電体12と同様の材料を適宜利用できる。負極集電体16は板状又は箔状であってもよい。
【0062】
封口板15が負極集電体を兼ねている場合、負極集電体16は省略されてもよい。
【0063】
負極集電体16が、その表面上にマグネシウムを析出及び溶解させ得る材料で構成される場合、負極活物質層17は省略されてもよい。すなわち、負極22は、マグネシウムを析出及び溶解させ得る負極集電体16のみから構成されていてもよい。この場合、負極集電体16は、ステンレス鋼、ニッケル、銅、又は鉄であってもよい。
【0064】
セパレータ14の材料として、微多孔性薄膜、織布、及び不織布が挙げられる。セパレータ14の材料は、ポリプロピレン及びポリエチレンなどのポリオレフィンであってもよい。セパレータ14の厚さは、例えば、10μm以上300μm以下である。セパレータ14は、1種の材料で構成された単層膜であってもよく、2種以上の材料で構成された複合膜、又は、多層膜であってもよい。セパレータ14の空孔率は、例えば、30%以上70%以下である。
【0065】
電解質は、マグネシウムイオン伝導性を有する材料でありうる。
【0066】
電解質は、例えば、非水電解液である。非水電解液は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解したマグネシウム塩とを含む。
【0067】
マグネシウム塩として、MgBr2、MgI2,MgCl2、Mg(AsF62、Mg(ClO42、Mg(PF62、Mg(BF42、Mg(CF3SO32、Mg[N(CF3SO222、Mg(SbF62、Mg(SiF62、Mg[C(CF3SO232、Mg[N(FSO222、Mg[N(C25SO222、MgB10Cl10、MgB12Cl12、Mg[B(C6542、Mg[B(C6542、Mg[N(SO2CF2CF322、Mg[BF3252、Mg[PF3(CF2CF332、及びMg[B(OCH(CF3242が挙げられる。マグネシウム塩として、上記の物質のうち1種類だけが用いられてもよいし、2種類以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0068】
非水溶媒として、一般に二次電池の非水溶媒として用いられる非水溶媒が用いられうる。非水溶媒として、環状炭酸エステル類、鎖状炭酸エステル類、環状カルボン酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、ピロ炭酸エステル、リン酸エステル、ホウ酸エステル、硫酸エステル、亜硫酸エステル、環状スルホン、鎖状スルホン、ニトリル、スルトン、環状エーテル類、鎖状エーテル類、ニトリル類、及びアミド類が挙げられる。
【0069】
環状炭酸エステル類として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート、4,4,4-トリフルオロエチレンカーボネート、フルオロメチルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、4-フルオロプロピレンカーボネート、及び5-フルオロプロピレンカーボネートが挙げられる。環状炭酸エステル類として、上記の化合物の水素基の一部又は全部がフッ素化されている化合物を用いることも可能である。フッ素化された化合物として、トリフルオロプロピレンカーボネート及びフルオロエチルカーボネートが挙げられる。
【0070】
鎖状炭酸エステル類として、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、及びメチルイソプロピルカーボネートが挙げられる。鎖状炭酸エステル類として、上記の化合物の水素基の一部又は全部がフッ素化されている化合物を用いることも可能である。
【0071】
環状カルボン酸エステルとして、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、α-アセトラクトン、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0072】
鎖状カルボン酸エステルとして、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、ブチルプロピオネート、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0073】
ピロ炭酸エステルとして、ジエチルピロカーボネート、ジメチルピロカーボネート、ジ-tert-ブチルジカーボネート、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0074】
リン酸エステルとして、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、ヘキサメチルホスフォルアミド、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0075】
ホウ酸エステルとして、トリメチルボレート、トリエチルボレート、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0076】
硫酸エステルとして、トリメチルサルフェート、トリエチルサルフェート、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0077】
亜硫酸エステルとして、エチレンサルファイト及びその誘導体が挙げられる。
【0078】
環状スルホンとして、スルホラン及びその誘導体が挙げられる。鎖状スルホンとして、アルキルスルホン及びその誘導体が挙げられる。ニトリルとして、アセトニトリル、バレロニトリル、プロピオニトリル、トリメチルアセトニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、及びその誘導体が挙げられる。スルトンとして、1,3-プロパンスルトン及びその誘導体が挙げられる。
【0079】
環状エーテル類として、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1、3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、1,4-ジオキサン、1,3,5-トリオキサン、フラン、2-メチルフラン、1,8-シネオール、及びクラウンエーテルが挙げられる。
【0080】
鎖状エーテル類として、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、o-ジメトキシベンゼン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、1,1-ジメトキシメタン、1,1-ジエトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、及びテトラエチレングリコールジメチルなどが挙げられる。
【0081】
ニトリル類として、アセトニトリルが挙げられる。
【0082】
アミド類として、ジメチルホルムアミドが挙げられる。
【0083】
非水溶媒は、グライムを含んでいてもよい。グライムは、マグネシウムイオンに対して二座配位しうる。グライムを使用することによって、非水溶媒へのマグネシウムイミド塩の溶解性を向上させることができる。グライムとして、1,2-ジメトキシエタン(DME)、ジグライム、トリグライム、及びテトラグライムが挙げられる。
【0084】
溶媒として、上記の物質のうち1種類だけが用いられてもよいし、2種類以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0085】
電解質は、ゲル電解質又は固体電解質であってもよい。
【0086】
固体電解質として、Mg2-1.5xAlxSiO4、Mg2-1.5y-0.5zAly-zZnzSiO4、MgZr4(PO46、MgM1PO4、Mg1-aM2aM3(M4O43、及びMg(BH4)(NH2)が挙げられる。xは、0.1≦x≦1の条件を満たす。yは、0.5≦y≦1の条件を満たす。zは、0.5≦z≦0.9の条件を満たす。y-zは、y-z≧0の条件を満たす。y+zは、y+z≦1の条件を満たす。M1は、Zr、Nb、及びHfからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素である。M2は、Ca、Sr、Ba、及びRaからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素である。M3は、Zr及びHfからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素である。M4は、W及びMoからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素である。aは、0≦a<1の条件を満たす。
【実施例
【0087】
以下、実施例により本開示をさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例は一例であり、本開示は以下の実施例に限定されない。
【0088】
(実施例1)
[複合硫化物の作製]
メノウ乳鉢に、MgSを1.24g、Tiを1.05g、Sを0.71g秤量して入れ、これらを、露点-50℃以下のAr雰囲気のグローブボックス内でメノウ乳鉢を用いて粉砕混合し、混合物を得た。得られた混合物を、上記グローブボックス内で、Fritsch社製の遊星型ボールミル容器PL-7に封入した。メディアとしてΦ5mmのジルコニア製ボールを遊星型ボールミル容器に入れ、800revolutions per minute(rpm)で30時間その混合物をさらに混合することによって、実施例1に係る複合硫化物を作製した。なお、1時間ごとに10分間、遊星型ボールミル容器を静置させた。
【0089】
実施例1に係る複合硫化物に対して、粉末X線回折測定及びICP発光分光分析を実施した。粉末X線回折測定の結果を図1に示す。ICP発光分光分析によって得られた実施例1に係る複合硫化物の組成を表1に示す。
【0090】
[正極の作製]
実施例1に係る複合硫化物と、導電助剤としてアセチレンブラックと、バインダとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とを、8:1:1の質量比で秤量し、これらを、メノウ乳鉢を用いてよく混合して混合物を得た。この混合物をシート状に成形することによって、実施例1に係る正極合剤シートを得た。得られた正極合剤シートを5mm×8mmの長方形に打ち抜いた。打ち抜いた正極合剤シートを5mm×30mmのAlメッシュの先端に配置して、圧着した。このようにして、実施例1に係る正極を作製した。
【0091】
[評価用セルの作製]
図3は、実施例に係る評価用セルの概略構成を示す模式図である。
【0092】
評価用セル30は、正極31、参照電極34、負極35、及び非水電解液36を備えている。非水電解液36は、ガラス製ビーカー37に貯留されている。ガラス製ビーカー37は、アルミブロック38によって囲まれている。正極31は、アルミメッシュ32と、正極合剤33とを含む。正極合剤33は、アルミメッシュ32の先端に配置されている。正極31と負極35とは、非水電解液36に浸されている。
【0093】
マグネシウムリボンを5mm×40mmの大きさに切断し、マグネシウム箔を得た。マグネシウム箔の表面を削って酸化皮膜を除去し、ヘキサンにて表面を洗浄した。これにより、参照電極34及び負極35を作製した。
【0094】
ガラス製ビーカー37に非水電解液36を2.5mL貯留した。非水電解液36は、非水溶媒として、1,2-ジメトキシエタン(DME)を使用した。DMEに、DMEが配位されている有機ホウ素アート錯体塩であるMg[B(OCH(CF3242・3DMEを0.3mol/Lの濃度で溶解させることによって、非水電解液36を調製した。
【0095】
正極31、参照電極34、及び負極35を非水電解液36に浸し、図3に示す構成を有する評価用セル30を作製した。電解液の調製及び評価用セルの作製は、露点-60℃以下及び体積基準の酸素濃度5ppm以下のAr雰囲気のグローブボックス内で実施した。
【0096】
(実施例2)
[複合硫化物の作製]
メノウ乳鉢に、MgSを1.20g、Crを1.11g、Sを0.69g秤量して入れたことを除き、実施例1と同様にして、実施例2に係る複合硫化物を作製した。
【0097】
[正極の作製]
実施例2に係る複合硫化物を使用したことを除き、実施例1と同様にして、実施例2に係る正極を作製した。
【0098】
[評価用セルの作製]
実施例2に係る正極を使用したことを除き、実施例1と同様にして、実施例2に係る評価用セルを作製した。
【0099】
(実施例3)
[複合硫化物の作製]
メノウ乳鉢に、MgSを1.53g、NiSを2.47g秤量して入れたことと、得られた混合物を遊星型ボールミル容器で20時間混合したこととを除き、実施例1と同様にして、実施例3に係る複合硫化物を作製した。
【0100】
[正極の作製]
実施例3に係る複合硫化物を使用したことを除き、実施例1と同様にして、実施例3に係る正極を作製した。
【0101】
[評価用セルの作製]
実施例3に係る正極を使用したことを除き、実施例1と同様にして、実施例3に係る評価用セルを作製した。
【0102】
(比較例1)
[複合硫化物の作製]
メノウ乳鉢に、MgSを1.15g、Coを1.20g、Sを0.65g秤量して入れたことを除き、実施例1と同様にして、比較例1に係る生成物を作製した。
【0103】
[充放電試験]
実施例1から3に係る評価用セルの充放電試験を、以下の条件で実施した。
【0104】
評価用セルを60℃のホットプレートに設置した。
【0105】
MgTiS2の理論容量を393mAh/gと仮定した。この理論容量に対して0.01Cレートとなる電流値で、実施例1に係る評価用セルを定電流充電した。このとき、正極活物質の単位重量1gあたりの定電流は、3.93mAh/gであった。充電容量が理論容量の25%に達したとき、充電を終了した。その後、評価用セルを5時間静置させた。
【0106】
次に、0.01Cレートとなる電流値で評価用セルを放電した。参照電極に対する正極の電位が0.1Vに達したとき、放電を終了した。これにより、実施例1に係る評価用セルの充電容量及び放電容量を測定した。結果を表1に示す。
【0107】
MgCrS2の理論容量を382mAh/gと仮定したことを除き、実施例1と同様にして、実施例2に係る評価用セルを充放電させ、充電容量及び放電容量を測定した。結果を表1に示す。
【0108】
MgNiS2の理論容量を364mAh/gと仮定したことを除き、実施例1と同様にして、実施例3に係る評価用セルを充放電させ、充電容量及び放電容量を測定した。結果を表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
[考察]
図1は、実施例1から3に係る複合硫化物の粉末X線回折の結果を示す図である。図1には、複合硫化物の作製に使用されたMgSの粉末X線回折の結果も示す。MgSは、空間群Fm-3mに属する結晶構造を有する。実施例1から3に係る複合硫化物のXRD測定の結果から、実施例1から3に係る複合硫化物は、空間群Fm-3mに属する結晶構造を有していた。
【0111】
図4は、比較例1に係る生成物の粉末X線回折の結果を示す図である。図4には、複合硫化物の作製に使用されたMgSの粉末X線回折の結果も示す。加えて、図4には、CoSの粉末X線回折のパターンも示す。CoSの粉末X線回折のパターンは、International Crystal Structure Database(ICSD)のNo.29305のデータを用いた、空間群P63/mmcに属する結晶構造を有するCoSのシミュレーションのスペクトルである。
【0112】
実施例1から3では、Ti、Cr、又はNiと、Mgとを含む複合硫化物が得られた。これらの複合硫化物は、空間群Fm-3mに属する結晶構造を有していた。これらの複合硫化物は、複合硫化物の作製に用いられたMgSの結晶構造を保持した状態で、MgSを構成しているMgの一部がTi、Cr、又はNiに置換された固溶体であると考えられる。Ti、Cr、又はNiに限らず、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ta、及びWからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を用いれば、上記と同様に、Mgの一部がこれらの少なくとも1種の元素に置換された固溶体になると考えられる。これに対し、比較例1に係る生成物では、その生成物のXRDスペクトルから、MgSとCoSとに相分離していた。比較例1では、MgCoSの固溶体は得られなかった。
【0113】
実施例1から3に係る複合硫化物を使用したセルは、大きい充電容量及び放電容量を有していた。本開示の複合硫化物によれば、高容量のマグネシウム二次電池が提供されうる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本開示の正極活物質は、マグネシウム二次電池に利用されうる。
【符号の説明】
【0115】
10 マグネシウム二次電池
11 ケース
12 正極集電体
13 正極活物質層
14 セパレータ
15 封口板
16 負極集電体
17 負極活物質層
18 ガスケット
21 正極
22 負極
30 評価用セル
31 正極
32 アルミメッシュ
33 正極合剤
34 参照極
35 負極
36 非水電解液
37 ビーカー
38 アルミブロック
図1
図2
図3
図4