(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】シール用構造物及びシール機能付き構造物
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20240830BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20240830BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240830BHJP
F16J 15/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
F16J15/10 A
B29C64/393
B33Y80/00
F16J15/00 B
F16J15/10 C
(21)【出願番号】P 2021027969
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】小谷 友規
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-071012(JP,A)
【文献】実開平05-038465(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0238048(US,A1)
【文献】特開2018-040471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
F16J 15/00
B29C 64/393
B33Y 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に圧縮されることでシール材として機能するシール用構造物であって、
前記第1方向に複数の樹脂層が積層されることで前記複数の樹脂層が周期的に繰り返された周期構造を有し、且つ、方向によって異なる弾性を持つ異方弾性構造体からなるシール本体を備え、
前記シール本体の前記第1方向における弾性は、前記シール本体の前記第1方向に直交する第2方向における弾性よりも大きい、
シール用構造物。
【請求項2】
前記異方弾性構造体は、前記周期構造として一次元周期構造を持つ多層体、前記周期構造として二次元周期構造を持つ二次元周期構造体、又は、前記周期構造として三次元周期構造を持つ三次元周期構造体の中から選択される少なくとも一つを含む、
請求項1に記載のシール用構造物。
【請求項3】
前記異方弾性構造体は、弾性率が異なる複数種類の材料によって構成される、
請求項1又は2に記載のシール用構造物。
【請求項4】
第1方向に圧縮されることでシール材として機能するシール用構造物であって、
周期構造を有し、且つ、方向によって異なる弾性を持つ異方弾性構造体からなるシール本体を備え、
前記シール本体の前記第1方向における弾性は、前記シール本体の前記第1方向に直交する第2方向における弾性よりも大きく、
前記シール用構造物は、Oリングである、
シール用構造物。
【請求項5】
前記シール用構造物は、パッキンである、
請求項1~3のいずれか1項に記載のシール用構造物。
【請求項6】
前記シール用構造物は、ガスケットである、
請求項1~3のいずれか1項に記載のシール用構造物。
【請求項7】
前記シール本体は、3Dプリンタを用いて作製された樹脂構造体である、
請求項1~6のいずれか1項に記載のシール用構造物。
【請求項8】
本体と、
前記本体に設けられ、請求項1~7のいずれか1項に記載のシール用構造物と、を備える、
シール機能付き構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール用構造物及びこれを備えるシール機能付き構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、電気製品又は住宅製品等の種々の製品には、止水又は気密封止等を目的としてシール用構造物が用いられている。シール用構造物は、例えば、2つの部材間の隙間をシールすることで止水又は気密封止する。
【0003】
このようなシール用構造物としては、例えば、ポリウレタン発泡体、又は、独立気泡系あるいは連続気泡系のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体等のゴム発泡体からなるシール材が広く用いられている。このようなシール材は、圧縮されることで2つの部材間をシールする。
【0004】
しかしながら、ゴム発泡体によって構成された従来のシール材は、圧縮されたときの反発力(圧縮応力)が高い。このため、シール材によってシールされる部分の面積が大きい場合又はシール材を組み付ける部材の強度が低い場合、さらにはシール材を固定する個所が少ない場合等においては、そのシール材の高い反発力のために、シール材の組み付けが不良となり、位置ずれ等が生じ、結果としてシール性能が低下することがある。
【0005】
そこで、反発力が低いシール材を用いることで、シール材の組み付け不良を抑制して位置ずれを防止する技術が提案されている(特許文献1)。また、シール材であるOリングにインナーリングとアウターリングとを組み合わせることでOリングの位置ずれを防止する技術も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-160685号公報
【文献】特開平9-257131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、反発力が小さいゴム発泡体は素材自体が疎であるため、特許文献1のように、シール用構造物として反発力が小さいゴム発泡体からなるシール材を用いると、シール材本来のシール性能がかえって低下することがある。また、特許文献2のように、シール材であるOリングに複数のリングを組み合わせると、シール用構造物全体として部品点数が多くなって工数及びコストが増加する。
【0008】
このように、圧縮されることで2つの部材間をシールする従来のシール用構造物については、圧縮されたときに生じる反発力によって組み付け不良が発生して位置ずれが生じ、シール性能が低下するおそれがある。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、高いシール性能を有するシール用構造物及びこれを備えるシール機能付き構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るシール用構造物の一態様は、第1方向に圧縮されることでシール材として機能するシール用構造物であって、周期構造を有し、且つ、方向によって異なる弾性を持つ異方弾性構造体からなるシール本体を備え、前記シール本体の前記第1方向における弾性は、前記シール本体の前記第1方向に直交する第2方向における弾性よりも大きい。
【0011】
また本発明に係るシール機能付き構造物の一態様は、本体と、前記本体に設けられた上記のシール用構造物と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高いシール性能を有するシール用構造物及びシール機能付き構造物を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、3Dプリンタで造形された第1試験片と第2試験片の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、耐衝撃性を評価する際に第1試験片と第2試験片と第3試験片とに与える衝撃の方向を示す図である。
【
図3】
図3は、熱物性を評価する際に第1試験片と第2試験片と第3試験片とに与える引っ張り応力の方向を示す図である。
【
図4】
図4は、3Dプリンタで作製した樹脂構造体における弾性率の方向異方性と温度依存性とを示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1に係るシール用構造物の斜視図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1に係るシール用構造物の構成を示す図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1に係るシール用構造物のシール本体の持つ弾性の異方性を説明するための図である。
【
図8】
図8は、従来のシール用構造物を用いて2つの部材をシールするときの様子を説明するための図である。
【
図9】
図9は、実施の形態1に係るシール用構造物を用いて2つの部材をシールするときの様子を説明するための図である。
【
図10A】
図10Aは、実施の形態2に係るシール機能付き構造物を上方から見たときの斜視図である。
【
図10B】
図10Bは、実施の形態2に係るシール機能付き構造物を下方から見たときの斜視図である。
【
図12】
図12は、変形例2に係るシール用構造物の斜視図である。
【
図13】
図13は、シール用構造物におけるシール本体の異方弾性構造体の第1変形例を示す図である。
【
図14】
図14は、シール用構造物におけるシール本体の異方弾性構造体の第2変形例を示す図である。
【
図15】
図15は、シール用構造物におけるシール本体の異方弾性構造体の第3変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(本発明の一態様を得るに至った経緯)
本発明の実施の形態を説明することに先立ち、本発明の一態様を得るに至った経緯について説明する。
【0015】
近年、3Dプリンタを用いて立体構造物を作製することが行われている。3Dプリンタは、3次元造形機の一種であり、コンピュータ上で作成した3Dデータを設計図として、その設計図どおりの立体構造物を造形する立体造形装置である。
【0016】
3Dプリンタにより立体構造物を造形する技術には、用いる材料の特性等に応じて様々な造形方式がある。例えば、3Dプリンタを用いた造形方式として、液槽光重合法、材料噴射法又は材料押出法等が知られている。この場合、液槽光重合法及び材料噴射法では、光硬化性樹脂が用いられ、材料押出法では、熱可塑性樹脂が用いられる。
【0017】
樹脂を造形材料とする3Dプリンタ(3D樹脂プリンタ)は、樹脂を1層ずつ積層させながら造形していく。例えば、液槽光重合法及び材料噴射法を用いた3Dプリンタでは、インクである造形材料として紫外線硬化性樹脂を用いて、1層ずつインクを吐出しながら紫外線を照射して硬化し、これを繰り返して樹脂層を積層していくことで所定形状の立体構造物を造形する。つまり、3D樹脂プリンタで造形された立体構造物は、複数の樹脂層が周期的に繰り返された周期構造を有するものであって、樹脂層の層間の界面が接着剤で接着されることなく一体となった一体物である。
【0018】
ここで、本願発明者らは、3D樹脂プリンタで造形された立体構造物の物性に着目し、樹脂を造形原料とする3Dプリンタで造形した立体構造物を実際に作製して実験し、種々の検討を行った。
【0019】
その結果、本願発明者らは、樹脂を造形原料とする3Dプリンタで造形した立体構造物については、樹脂の積層方向(造形方向)とこれとは異なる方向とで、機械的強度及び熱物性が異なることを見出した。つまり、3Dプリンタで造形した樹脂製の立体構造物については、機械的強度及び熱物性に造形方向依存性を有することを見出した。以下に、本願発明者らが行った実験とその評価結果について説明する。
【0020】
まず、樹脂材料からなる試験片として、材料噴射法を用いた3Dプリンタによって直方体の立体構造物を造形した。造形材料としては、アクリル系の紫外線硬化性樹脂を用いた。
【0021】
この場合、同じ形状の試験片を、樹脂の積層方向(造形方向)を異ならせて2種類作製した。具体的には、
図1に示すように、直方体の長手方向に直交する方向を樹脂の積層方向として作製した第1試験片TSと、直方体の長手方向を樹脂の積層方向として作製した第2試験片HSとを作製した。つまり、第1試験片TSは、樹脂層が横積みされたものであり、第2試験片HSは、樹脂層が縦積みされたものである。なお、第1試験片TSと第2試験片HSとは、同じ形状である。
【0022】
また、図示しないが、樹脂材料からなる第3試験片RDとして、第1試験片TS及び第2試験片HSと同じ形状の直方体を3Dプリンタではなく注型成形機によって作製した。第3試験片RDも、アクリル系の紫外線硬化性樹脂を用いて作製した。なお、第3試験片RDは、注型成形法によって作製されているので、第1試験片TS及び第2試験片HSとは異なり、樹脂の積層方向が存在しない。
【0023】
さらに、第1試験片TSと第2試験片HSと第3試験片RDとについては、それぞれ、水銀ランプ(エネルギー大)により紫外線を照射して作製したものと、UV-LED(エネルギー小)により紫外線を照射して作製したものとを準備した。
【0024】
なお、
図1において、各直方体に示される線は、樹脂層の積層方向が分かるように樹脂層の境界線を便宜上示したものであり、実際に見える線ではなく、また、境界線の数も正確に示されたものではない。
【0025】
そして、これらの試験片に対して、耐衝撃性と熱物性(耐熱性)とを評価するために、以下のように測定を行った。
【0026】
まず、耐衝撃性を評価するために、
図2に示すように、第1試験片TS(横積み)、第2試験片HS(縦積み)及び第3試験片RD(注型)に対して、直方体の長手方向に直交する方向から衝撃を与えて、耐衝撃性としてアイゾット衝撃強度(kJ/m
2)を測定した。なお、
図2の矢印は、衝撃方向を示している。つまり、第1試験片TSにおける衝撃方向は、樹脂の積層方向と平行な方向である。また、第2試験片HSにおける衝撃方向は、樹脂の積層方向に直交する方向と平行な方向である。
【0027】
この測定の結果、第3試験片RDについては、水銀ランプを用いた場合もUV-LEDを用いた場合も、アイゾット衝撃強度(以下、「衝撃強度」)は同等であったが、3Dプリンタで作製した第1試験片TS及び第2試験片HSについては、水銀ランプを用いた場合とUV-LEDを用いた場合とで衝撃強度が異なるともに、第1試験片TSと第2試験片HSとの間でも衝撃強度が異なることが分かった。
【0028】
具体的には、水銀ランプを用いた場合については、第1試験片TS及び第2試験片HSは、第3試験片RDよりも衝撃強度が低くなることが分かった。つまり、3Dプリンタで作製すると、耐衝撃性が低下することが分かった。特に、第1試験片TSは、第3試験片RDに対して衝撃強度はあまり低下しなかったものの、第2試験片HSは、第3試験片RDに対して衝撃強度が著しく低下し、耐衝撃性が大幅に低下することが分かった。
【0029】
また、UV-LEDを用いた場合については、3Dプリンタで作製した第1試験片TS及び第2試験片HSは、第3試験片RDに対して、衝撃強度が低下せず、同等又はそれ以上の耐衝撃性を有することが分かった。なお、第1試験片TSは、第2試験片HSよりも高い衝撃強度を有し、第2試験片HSと比べて耐衝撃性に優れていることも分かった。
【0030】
次に、熱物性(耐熱性)を評価するために、
図3に示すように、第1試験片TS(横積み)、第2試験片HS(縦積み)及び第3試験片RD(注型)に対して、直方体の長手方向に引っ張り応力を与えて、温度(℃)と弾性率E(Pa)とを測定した。なお、
図3の矢印は、引っ張り応力の方向を示している。つまり、第1試験片TSに与える引っ張り応力の方向は、樹脂の積層方向と直交する方向と平行な方向であり、第2試験片HSに与える引っ張り応力の方向は、樹脂の積層方向と平行な方向である。
【0031】
この測定の結果、第3試験片RDについては、水銀ランプを用いた場合もUV-LEDを用いた場合も、同程度の耐熱性を有していたが、3Dプリンタで作製した第1試験片TS及び第2試験片HSについては、水銀ランプを用いた場合とUV-LEDを用いた場合とで熱物性が異なるとともに、第1試験片TSと第2試験片HSとの間でも熱物性が異なることが分かった。
【0032】
具体的には、水銀ランプを用いた場合については、3Dプリンタで作製した第1試験片TS及び第2試験片HSは、第3試験片RDに対して、弾性率が低く、耐熱性が低下することが分かった。特に、第1試験片TSについては、温度の上昇とともに弾性率が低下する遷移領域である50℃~100℃の範囲では、第3試験片RDに対して弾性率が低下するものの、温度が上昇しても弾性率が変化しない一定領域である0℃~50℃の範囲及び100℃以上の範囲では、第3試験片RDに対して弾性率はあまり低下しないことも分かった。一方、第2試験片HSについては、どの温度範囲(例えば0℃~150℃)でも、第3試験片RDに対して弾性率が低く、さらに、第1試験片TSに対しても弾性率が低くなることが分かった。
【0033】
このように、3Dプリンタで作製すると弾性率が低くなり、さらに、第1試験片TSと第2試験片HSとの間では弾性率が異なることが分かった。つまり、3Dプリンタで作製した第1試験片TSと第2試験片HSとについては、樹脂の積層方向(造形方向)に対して、弾性の異方性を有することが分かった。具体的には、
図4に示すように、第2試験片HS(縦積み)の弾性率E’が第1試験片TS(横積み)の弾性率よりも低くなることが分かった。つまり、第2試験片HSの弾性が第1試験片TSの弾性よりも大きくなることが分かった。このように、3Dプリンタで造形した構造物については、樹脂の積層方向(造形方向)の弾性が大きくなる(つまり変形しやすくなる)ことが分かった。
【0034】
また、UV-LEDを用いた場合については、3Dプリンタで作製した第1試験片TS及び第2試験片HSは、遷移領域である50℃~100℃の範囲では、第3試験片RDに対して弾性率が低下するものの、一定領域である0℃~50℃の範囲及び100℃以上の範囲では、第3試験片RDと同等の弾性率を有することが分かった。なお、第1試験片TSと第2試験片HSとは弾性率カーブがほぼ一致し、0℃~100℃のどの範囲においても、第1試験片TSの弾性率と第2試験片HSの弾性率とは同等であった。
【0035】
つまり、UV-LEDを用いた場合、0℃~50℃と100℃以上の範囲については、第1試験片TSと第2試験片HSと第3試験片RDとは、同等の弾性率を有していて、あまり弾性に異方性がないことも分かった。
【0036】
このように、3Dプリンタで造形した第1試験片TS及び第2試験片HSが、水銀ランプを用いた場合とUV-LEDを用いた場合とで、注型成形で造形した第3試験片RDに対して弾性の低下の度合いが異なるのは、水銀ランプで紫外線を照射した場合にはUV-LEDで紫外線を照射した場合と比べてエネルギーが大きいために樹脂層の層ごとに樹脂硬化が十分に進むことになり、積層界面の結合が少なくなったからであると考えられる。逆に、UV-LEDで紫外線を照射した場合には、エネルギーが小さいために、酸素阻害により各樹脂層が未硬化成分を含んだままの状態で順次積層されていくことになり、樹脂層の界面が連続相となって異方性が縮小し、この結果、注型成形で造形したものと同じ物性になったからであると考えられる。
【0037】
以上の実験結果から、本願発明者らは、3Dプリンタにより複数の樹脂層が周期的に繰り返された周期構造を有する立体構造物を造形した場合には、造形された立体構造物は、層の層間の界面が接着剤で接着されることなく一体となった一体物でありながら、樹脂の積層方向(造形方向)とこの積層方向に直交する方向とで弾性率が異なる(つまり弾性特性が異なる)と特質を有する構造物になる、という知見を得た。すなわち、樹脂を用いて3Dプリンタにより造形された立体構造物は、樹脂の積層方向とこの積層方向に直交する方向とで異方弾性が存在するという知見を得た。
【0038】
そして、本願発明者らは、この知見をもとにして検討した結果、3Dプリンタにより造形された樹脂構造物をシール材に適用することで、高いシール性能を有するシール用構造物を見出した。
【0039】
以下、この知見をもとに着想された本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、並びに、工程(ステップ)及び工程の順序等は、一例であって本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0040】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0041】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1に係るシール用構造物1の構成について、
図5及び
図6を用いて説明する。
図5は、実施の形態1に係るシール用構造物1の斜視図である。
図6は、同シール用構造物1の構成を示す図である。
図6において、(a)は、同シール用構造物1の平面図であり、(b)は、(a)のVIB-VIB線における同シール用構造物1の断面図である。
【0042】
本実施の形態に係るシール用構造物1は、圧縮されることでシール材として機能する。具体的には、シール用構造物1は、圧縮されることで弾性変形して2つの部材間をシールする。例えば、シール用構造物1は、2つの部材に挟まれることで圧縮されて、液体又は気体が漏れたり侵入したりすることを抑制する。つまり、シール用構造物1は、止水又は気密封止等を行う。
【0043】
シール用構造物1は、リング状のシール本体10を備える。本実施の形態において、シール用構造物1は、Oリングである。したがって、シール本体10は、円環状である。具体的には、
図6の(a)に示すように、シール本体10の平面視形状は、真円の円形リング状である。また、
図6の(b)に示すように、シール本体10の断面形状は、真円の円形である。
【0044】
本実施の形態において、シール用構造物1は、シール本体10のみによって構成されている。したがって、シール用構造物1は、シール本体10そのものである。なお、シール用構造物1は、シール本体10以外の別の部材を備えていてもよい。
【0045】
シール本体10は、弾性を有する弾性部材である。例えば、シール本体10は、ゴム弾性を有するエラストマーである。したがって、シール本体10は、圧縮応力を受けると弾性変形し、圧縮応力が開放されると弾性復元力によって元の形に戻る性質を有する。本実施の形態において、シール本体10は、方向によって異なる弾性を持つ異方弾性構造体である。なお、シール本体10は、エラストマーでなくてもよい。
【0046】
また、シール本体10は、周期構造を有する。本実施の形態において、シール本体10は、周期構造として一次元周期構造を持つ多層体からなる一次元周期構造体である。したがって、シール本体10は、一方向のみに周期的に繰り返された繰り返し構造を有する。また、シール本体10は、1種類の材料によって構成される。
【0047】
本実施の形態において、シール本体10は、3D樹脂プリンタによって形成された樹脂構造体であり、複数の樹脂層が積層されることで複数の樹脂層が周期的に繰り返された周期構造を有する。3D樹脂プリンタによって形成された一次元周期構造体は、樹脂層の層間の界面が接着剤で接着されることなく一体となった一体物である。また、シール本体10は、周方向において接着部分(連結部分)を有することなく一体に形成されている。つまり、シール本体10は、紐状の長尺部材の両端部同士をつなぎ合わせることなく形成されている。
【0048】
3Dプリンタで作製されるシール本体10は、例えば、アクリル樹脂からなる紫外線硬化性樹脂によって構成されるが、シール本体10の樹脂材料は、これに限るものではない。つまり、シール本体10は、アクリル樹脂以外の樹脂によって構成されていてもよいし、紫外線硬化樹脂以外の光硬化性樹脂によって構成されていてもよい。
【0049】
そして、シール本体10を3D樹脂プリンタによって作製することで、上述したように、樹脂の積層方向とこの積層方向に直交する方向とで異なる弾性を持つシール本体10を得ることができる。つまり、シール本体10の各々は、樹脂の積層方向とこの積層方向に直交する方向とで異なる弾性を持つような3D樹脂プリンタの条件で作製されている。
【0050】
ここで、実施の形態1に係るシール用構造物1における弾性の異方性について、
図7を用いて説明する。
図7は、実施の形態1に係るシール用構造物1のシール本体10の持つ弾性の異方性を説明するための図である。
図7は、シール用構造物1のシール本体10の断面を示している。
【0051】
図7に示すように、シール用構造物1をシール材として用いる際に圧縮される方向を第1方向(
図7ではY方向)とし、第1方向に直交する方向を第2方向(
図7ではX方向)とすると、シール本体10の第1方向(Y方向)における弾性は、シール本体10の第2方向(X方向)における弾性よりも大きくなっている。つまり、シール本体10は、圧縮される方向(圧縮方向)の弾性が圧縮方向に直交する方向の弾性よりも大きい。具体的には、シール本体10は、圧縮方向の弾性率Eが圧縮方向に直交する方向の弾性率Eよりも小さくなっている。これにより、シール本体10は、圧縮方向には変形しやすく、圧縮方向に直交する方向には変形しにくい構造になっている。
【0052】
なお、
図6及び
図7において、シール本体10の断面のハッチングの線は、樹脂層の積層方向が分かるように樹脂層の境界線を便宜上示したものであり、実際に見える線ではなく、また、境界線の数も正確に示されたものではない。
【0053】
次に、本実施の形態に係るシール用構造物1の効果について、
図8及び
図9を用いて、従来のシール用構造物1Xと比較して説明する。
図8は、従来のシール用構造物1Xを用いて2つの部材をシールするときの様子を説明するための図である。
図9は、実施の形態1に係るシール用構造物1を用いて2つの部材をシールするときの様子を説明するための図である。
【0054】
従来のシール用構造物1Xは、上記実施の形態1のシール用構造物1と同じ形状を有するOリングであるが、上記実施の形態1のシール用構造物1とは素材が異なり、等方の弾性を持つ性質を有する。つまり、従来のシール用構造物1Xは、弾性に異方性がなく、断面の全方位において弾性率が同じである。
【0055】
図8に示すように、従来のシール用構造物1Xを用いて第1の部材101と第2の部材102とをシールする場合、シール用構造物1Xを第1の部材101の溝部101aに配置し、シール用構造物1Xの溝部101aから突出した部分を第2の部材102で押し付けて、第1の部材101と第2の部材102とをネジ等の連結部材で固定する。
【0056】
このとき、シール用構造物1Xは、第1の部材101と第2の部材102とに押さえ付けられて圧縮し、押しつぶされて大きく変形して弾性変形することになる。この場合、圧縮されたシール構造体1Xには反発力が生じる。反発力は、反発力=弾性率×変形量、であらわされる。
【0057】
このとき、従来のシール構造体1Xは、等方の弾性を持つ(つまり全方位の弾性率が同等である)ので、従来のシール用構造物1Xには、圧縮される方向(圧縮方向)に強い反発力が生じる。この結果、シール用構造物1Xの組み付けが不良となり、位置ずれが生じることがある。このように、シール用構造物1Xの位置がずれると、シール性能が低下する。
【0058】
これに対して、
図9に示すように、本実施の形態に係るシール用構造物1を用いて第1の部材101と第2の部材102とをシールする場合は、
図8と同様に、シール用構造物1を第1の部材101の溝部101aに配置し、シール用構造物1の溝部101aから突出した部分を第2の部材102で押し付けて、第1の部材101と第2の部材102とをネジ等の連結部材で固定する。
【0059】
このとき、本実施の形態に係るシール用構造物1は、シール本体10の圧縮方向の弾性がシール本体10の圧縮方向に直交する方向の弾性よりも大きくなっているので、圧縮方向には変形しやすく、圧縮方向に直交する方向には変形しにくい。このため、シール用構造物1は、第1の部材101と第2の部材102とに押さえ付けられたときに、圧縮して押しつぶされて弾性変形したとしても、圧縮される方向(圧縮方向)の反発力が強くならない。この結果、シール用構造物1自身の反発力によってシール用構造物1の組み付けが不良になることを抑制できるので、シール用構造物1の位置ずれが生じることを抑制できる。これにより、シール用構造物1の位置がずれてシール性能が低下することを抑制することができる。このように、本実施の形態に係るシール用構造物1によれば、高いシール性能を有するシール材として利用することができる。
【0060】
また、本実施の形態に係るシール用構造物1において、シール本体10を構成する異方弾性構造体は、周期構造として一次元周期構造を持つ多層体である。
【0061】
このような一次元周期構造である異方弾性構造体は、3Dプリンタで簡単に作製することができる。つまり、本実施の形態において、シール本体10は、3Dプリンタを用いて作製された樹脂構造体である。このように、樹脂の積層方向とこれに直交する方向とで異方弾性を有する異方弾性構造体であるシール本体10は、3D樹脂プリンタによって容易に作製することができる。
【0062】
また、本実施の形態に係るシール用構造物1は、Oリングである。
【0063】
これにより、汎用性の高いシール材として有利なシール用構造物1を実現することができる。
【0064】
なお、本実施の形態では、第1の部材101は溝部101aを有しており、シール用構造物1が溝部101a内に配置されたが、これに限らない。具体的には、シール用構造物1がシールすることができるものであれば、2つの部材の形状は、任意である。例えば、第1の部材101は、溝部101aを有していなくてもよい。また、本実施の形態におけるシール用構造物1は、効果の一つとして、2つの部材で圧縮されたときの反発力による位置ずれを抑制できるという効果を奏するので、シール用構造物1は、シール用構造物1の側方部分の両側が規制されることなく設置されるとよい。つまり、シール用構造物1を挟む2つの部材は、シール用構造物1の側方部分に接しない構造になっている方がシール用構造物1の効果が発揮される。
【0065】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係るシール機能付き構造物2について、
図10A及び
図10Bを用いて説明する。
図10Aは、実施の形態2に係るシール機能付き構造物2を上方から見たときの斜視図である。
図10Bは、同シール機能付き構造物2を下方から見たときの斜視図である。
【0066】
図10A及び
図10Bに示すように、シール機能付き構造物2は、本体20と、本体20に設けられたシール用構造物1とを備える。シール用構造物1は、上記実施の形態1と同様に、Oリングである。
【0067】
本体20は、シール用構造物1が取り付けられる部材である。なお、本体20は、シール用構造物1を支持する支持体であってもよい。
【0068】
図10A及び
図10Bに示すように、本実施の形態に係るシール機能付き構造物2は、排水口ユニットである。したがって、本体20は、排水口を構成する封水筒である。封水筒である本体20は、円筒部21と、フランジ部22とを有する。シール用構造物1は、フランジ部22の裏側に取り付けられている。したがって、排水口ユニットであるシール機能付き構造物2を設置する場合、シール機能付き構造物2が設置される箇所に配置された部材とフランジ部22との間にシール用構造物1が挟まれるように配置されたシール機能付き構造物2は、シール用構造物1が押し付けられて圧縮された状態で設置される。
【0069】
このとき、シール用構造物1は、上記実施の形態1のように、圧縮方向には変形しやすく、圧縮方向に直交する方向には変形しにくい性質を有するので、シール用構造物1が圧縮されたとしてもシール用構造物1の位置ずれが生じることを抑制できる。これにより、高いシール性能が維持されるようにシール機能付き構造物2を設置することができる。
【0070】
また、本実施の形態において、シール機能付き構造物2において、シール用構造物1と本体20とは一体である。このようなシール機能付き構造物2は、3Dプリンタで作製することができる。3Dプリンタによって作製されたシール用構造物1と本体20とは、同一樹脂材料により一体に形成された樹脂構造体である。
【0071】
この場合、シール用構造物1のシール本体10は、上記実施の形態1と同様に、方向によって異なる弾性を持つ異方弾性構造体である。したがって、本体20も、シール用構造物1と同様に、方向によって異なる弾性を持つ異方弾性構造体である。具体的には、本体20は、シール用構造物1が圧縮される圧縮方向と同じ方向の弾性が、シール用構造物1が圧縮される圧縮方向に直交する方向と同じ方向の弾性よりも大きくなっている。
【0072】
なお、本実施の形態において、シール機能付き構造物2は、排水口ユニットであったが、これに限らない。シール機能付き構造物2は、シール機能を有する他の構造物であってもよい。
【0073】
また、本実施の形態において、本体20とシール用構造物1とは一体の樹脂構造体であったが、これに限らない。つまり、本体20は、シール用構造物1と一体に構成されていたが、これに限らない。例えば、本体20は、樹脂製の部材ではなく、金属製の部材であってもよい。この場合、シール用構造物1のみが3Dプリンタで作製される。
【0074】
ただし、本実施の形態のように、シール用構造物1と本体20とは、3Dプリンタで一体に作製する方がよい。
【0075】
例えば、3Dプリンタによってシール用構造物1だけではなく本体20も直接造形することで、異物の混入を防ぎ、本体20の形状に沿ったシール用構造物1を作製することができる。
【0076】
また、3Dプリンタを用いることで、形状に制限がなく、弾性に異方性を持つシール用構造物1及び本体20を容易に作製することができる。つまり、シール用構造物1及び本体20の設計及び製造が容易になる。
【0077】
しかも、シール用構造物1と本体20とが一体品となることで、シール用構造物1が圧縮されたときにシール用構造物1に位置ずれが発生することを一層抑制できる。
【0078】
また、金属製の本体20と樹脂製のシール用構造物1とが組み合わされたシール機能付き構造物2については、金属製の本体20は耐久品であることから、シール用構造物1が本体20よりも先に劣化することになりシール用構造物1のみを交換する必要があるが、シール用構造物1と本体20とが一体の樹脂構造物であるシール機能付き構造物2については、シール用構造物1と本体20とを一体の消耗材として扱うことができる。
【0079】
このように、シール用構造物1と本体20とは、3Dプリンタで一体に作製する方がよい。
【0080】
(変形例)
以上、本発明について実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記実施の形態1、2に限定されるものではない。
【0081】
例えば、上記実施の形態1、2において、シール用構造物1は、Oリングであったが、これに限らない。
【0082】
具体的には、
図11A及び
図11Bに示される変形例1のように、シール用構造物1Aは、円環状のシール本体10Aを有するパッキンであってもよい。シール用構造物1Aにおけるシール本体10Aは、上記実施の形態1と同様に、周期構造を有し、且つ、方向によって異なる弾性を持つ異方弾性構造体からなる。また、パッキンであるシール用構造物1Aにおいても、シール本体10Aの圧縮方向における弾性は、シール本体10Aの圧縮方向に直交する方向における弾性よりも大きくなっている。
【0083】
また、上記実施の形態1のシール用構造物1及び変形例1のシール用構造物1Aは、リング状であったが、これに限らない。例えば、
図12に示される変形例2のように、シール用構造物1Bは、平板状のシール本体10Bを有するガスケットであってもよい。シール用構造物1Bにおけるシール本体10Bは、上記実施の形態1と同様に、周期構造を有し、且つ、方向によって異なる弾性を持つ異方弾性構造体からなる。また、ガスケットであるシール用構造物1Bにおいても、シール本体10Bの圧縮方向における弾性は、シール本体10Bの圧縮方向に直交する方向における弾性よりも大きい。
【0084】
なお、弾性異方性を有する異方弾性構造体からなるシール本体を備えるシール用構造物としては、直線状又は曲線状の紐状であってもよい。
【0085】
また、上記実施の形態1、2において、シール用構造物1のシール本体10を構成する異方弾性構造体は、3Dプリンタによって作製されていたが、これに限るものではない。シール本体10を構成する異方弾性構造体は、3Dプリンタ以外の装置で作製されてもよい。
【0086】
また、上記実施の形態1、2において、シール用構造物1のシール本体10を構成する異方弾性構造体は、周期構造として一次元周期構造を持つ多層体であり、且つ、1種類の材料によって構成されていたが、これに限らない。
【0087】
例えば、
図13に示すように、シール本体10Cを構成する異方弾性構造体は、周期構造として一次元周期構造を持つ多層体であり、且つ、複数種類の材料によって構成されていてもよい。
【0088】
図13におけるシール本体10Cは、弾性率が異なる複数種類の材料によって構成された異方弾性構造体である。具体的には、シール本体10Cは、弾性率が高い第1の材料である高弾性率材料によって構成された第1の層10aと、弾性率が低い第2の材料である低弾性率材料によって構成された第2の層10bとが交互に繰り返して積層された周期構造である。一例として、第1の層10aを構成する高弾性率材料は、ポリカーボネート樹脂であり、第2の層10bを構成する低弾性率材料は、熱可塑性ポリウレタン樹脂である。
【0089】
このように、弾性率が異なる(つまり弾性が異なる)材料を組み合わせることで、異方弾性構造体における弾性の異方性の設計が容易になり、用途に応じて弾性の異方性を容易に制御することができる。
【0090】
また、シール本体10を複数の材料によって構成する場合、シール本体10の全体において、高弾性率材料と低弾性率材料とが混在した一次元周期構造体からなる異方弾性構造体であってもよい。
【0091】
例えば、
図14に示されるシール本体10Dのように、高弾性率材料の割合が高い第1の層10xと低弾性率材料の割合が多い第2の層10yとが交互に繰り返して積層された異方弾性構造体であってもよい。第1の層10x及び第2の層10yは、いずれも高弾性率材料と低弾性率材料とを含有するが、第1の層10xは、高弾性率材料の含有率が高い高弾性率材料リッチ層であり、第2の層10yは、低弾性率材料の含有率が高い低弾性率材料リッチ層である。また、第1の層10xと第2の層10yとの境界は、高弾性率材料と低弾性率材料との含有率がグラデーション状に徐々に変化する連続相になっている。つまり、シール本体10Dは、層境界に連続相を有する異方弾性構造体である。
【0092】
また、このような連続相を有するシール本体は、1種類の材料によって構成されていてもよい。この場合、1種類の材料によって構成された連続相を有する凸部は、積層方向に弾性率が変化しないメイン層が複数繰り返して積層された構造であって、メイン層とメイン層との間にメイン層の弾性率とは異なる平均弾性率を有する連続相が介在する異方弾性構造体であってもよい。つまり、シール本体は、メイン層と連続相とが交互に複数積層された異方弾性構造体であってもよい。
【0093】
また、上記実施の形態1、2において、シール用構造物1のシール本体10を構成する異方弾性構造体は、周期構造として一次元周期構造を持つ一次元周期構造体であったが、これに限らない。
【0094】
具体的には、シール用構造物のシール本体を構成する異方弾性構造体は、周期構造として二次元周期構造を持つ二次元周期構造体であってもよい。
【0095】
このような二次元周期構造体としては、例えば、
図15に示されるシール本体10Eのように、シール本体10Eを構成する異方弾性構造体は、高弾性率材料からなる第1の構造体10mと低弾性率材料からなる第2の構造体10nとが井桁状に嵌め合わされた二次元周期構造体であってもよい。一例として、第1の構造体10mを構成する高弾性率材料は、ポリカーボネート樹脂であり、第2の構造体10nを構成する低弾性率材料は、熱可塑性ポリウレタン樹脂である。このような構造の二次元周期構造体は、3Dプリンタで作製することができるが、材料押し出し成型法等でも作製することができる。
【0096】
また、図示しないが、シール本体を構成する異方弾性構造体は、周期構造として三次元周期構造を持つ三次元周期構造体であってもよい。このような三次元周期構造体も3Dプリンタで作製することができる。
【0097】
なお、その他、各実施の形態及び変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態及び変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0098】
1、1A、1B シール用構造物
2 シール機能付き構造物
10、10A、10B、10C、10D、10E シール本体
20 本体