(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】情報生成システム、情報生成装置、情報生成方法、および情報生成プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/01 20060101AFI20240830BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20240830BHJP
G08G 1/13 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
G08G1/01 A
G08G1/09 F
G08G1/13
(21)【出願番号】P 2020089329
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩岡 浩一郎
【審査官】佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-140292(JP,A)
【文献】特開2011-070299(JP,A)
【文献】特開2017-058301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象地点の交通状況に関する情報を生成する情報生成システムであって、
前記対象地点を通行した車両に搭載された車載装置からプローブ情報を収集する路側装置と、
前記対象地点の周辺の交差点に配置された信号機を制御する信号制御装置と、
前記対象地点の下流側交差点の信号機に関する直近の赤色点灯時間に基づいて、前記プローブ情報から取得した旅行時間を補正する旅行時間補正を実行し、その旅行時間補正により取得した補正済みの旅行時間に基づいて、前記対象地点の平均速度を算出し、その平均速度に基づいて、前記対象地点の交通状況に関する情報を生成する情報生成装置と、
を具備し、
前記情報生成装置は、前記旅行時間補正において、前記対象地点とその下流側交差点の信号機との間の距離に応じた係数を前記赤色点灯時間に乗じて補正時間を取得して、前記補正時間を前記旅行時間から減算
し、
前記係数は、前記対象地点が前記下流側交差点の前記信号機から離れるのに応じて、前記補正時間が短くなるように設定されたことを特徴とする情報生成システム。
【請求項2】
前記情報生成装置は、
前記対象地点とその下流側交差点の信号機との離間距離が所定範囲内である場合に、前記旅行時間補正を実行することを特徴とする請求項1に記載の情報生成システム。
【請求項3】
対象地点の交通状況に関する情報を生成する情報生成装置であって、
前記対象地点を通行した車両の走行履歴を表すプローブ情報、および交差点に設置された信号機の赤色点灯時間に関する情報を記憶する記憶部と、
前記対象地点の下流側交差点の信号機に関する直近の前記赤色点灯時間に基づいて、前記プローブ情報から取得した旅行時間を補正する旅行時間補正を実行し、その旅行時間補正により取得した補正済みの旅行時間に基づいて、前記対象地点の平均速度を算出し、その平均速度に基づいて、前記対象地点の交通状況に関する情報を生成する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、前記旅行時間補正において、前記対象地点とその下流側交差点の信号機との間の距離に応じた係数を前記赤色点灯時間に乗じて補正時間を取得して、前記補正時間を前記旅行時間から減算
し、
前記係数は、前記対象地点が前記下流側交差点の前記信号機から離れるのに応じて、前記補正時間が短くなるように設定されたことを特徴とする情報生成装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記対象地点とその下流側交差点の信号機との離間距離が所定範囲内である場合に、前記旅行時間補正を実行することを特徴とする請求項3に記載の情報生成装置。
【請求項5】
コンピュータにおいて、対象地点の交通状況に関する情報を生成する情報生成方法であって、
前記対象地点の下流側交差点の信号機に関する直近の赤色点灯時間に基づいて、前記対象地点を通行した車両の走行履歴を表すプローブ情報から取得した旅行時間を補正する旅行時間補正を実行し、
その旅行時間補正により取得した補正済みの旅行時間に基づいて、前記対象地点の平均速度を算出し、
その平均速度に基づいて、前記対象地点の交通状況に関する情報を生成し、
前記旅行時間補正では、前記対象地点とその下流側交差点の信号機との間の距離に応じた係数を前記赤色点灯時間に乗じて補正時間を取得して、前記補正時間を前記旅行時間から減算
し、
前記係数は、前記対象地点が前記下流側交差点の前記信号機から離れるのに応じて、前記補正時間が短くなるように設定されたことを特徴とする情報生成方法。
【請求項6】
前記対象地点とその下流側交差点の信号機との離間距離が所定範囲内である場合に、前記旅行時間補正を実行することを特徴とする請求項5に記載の情報生成方法。
【請求項7】
請求項5に記載の情報生成方法をコンピュータに実行させるための情報生成プログラム。
【請求項8】
前記対象地点とその下流側交差点の信号機との離間距離が所定範囲内である場合に、前記旅行時間補正を実行することを特徴とする請求項7に記載の情報生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両感知器で収集される情報の代替となる交通状況に関する情報を生成する情報生成システム、情報生成装置、情報生成方法、および情報生成プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
交通管理システムでは、交通渋滞の緩和、交通事故の減少および交通公害の抑制などを目的として、交通流の配分および誘導を適切に行うための交通管理が行われており、具体的には、対象とする道路網の交通状況を把握して、その交通状況を表す交通情報、例えば渋滞や旅行時間などに関する情報を、道路に設置された交通情報板に表示して、車両の運転者に提供する交通情報提供や、対象とする道路網の交通状況に基づいて、交差点に設置された信号制御機を制御する交通信号制御が行われている。
【0003】
このような交通情報提供や交通信号制御は、道路に設置された車両感知器を用いて収集された情報(交通量および占有率)に基づいて行われる。このため、適切な交通情報を車両の運転者に提供し、また、信号制御機を適切に制御するには、道路網にある程度の密度で車両感知器を設置する必要がある。このため、これまでに整備された車両感知器が膨大な数に達し、車両感知器の運用維持に莫大な費用を要する状況となっており、国および都道府県における近年の厳しい財政状況のもとで、深刻な問題となりつつある。そこで、車両感知器の設置数を削減して、車両感知器の設置数が少ない状態でも、実用上十分な精度で交通管理を行うことができる技術が望まれる。
【0004】
このような車両感知器の設置数の削減を図る要望に関連する技術として、従来、車両(プローブカー)から収集されたプローブ情報に基づいて、車両の平均速度を求め、速度-密度モデルを用いて速度から密度を推計して、計算式を用いて密度と平均速度とから交通量を推計する技術が知られている(特許文献1参照)。この技術を用いると、対象地点の交通量を取得することができ、さらに、よく知られた手法により密度から占有率を導き出すこともできるため、対象地点に車両感知器が設置されていなくても、車両感知器と同等の情報(交通量および占有率)を収集することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、従来の技術のように、プローブ情報に基づいて車両の平均速度を求める際には、プローブ情報に含まれる対象リンクの旅行時間と対象リンクの長さとに基づいて平均速度を算出する。ここで、対象リンクの旅行時間は、上流側交差点から対象リンクに進入してから下流側交差点を通過するまでに要した時間(走行所要時間)であり、対象リンクの旅行時間には、下流側交差点の信号機の赤色点灯により車両が停止していた時間も含まれる。したがって、旅行時間から算出された平均速度には大きな誤差が含まれ、精度の高い情報を生成することができないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、車両感知器で収集される情報の代替となる交通状況に関する情報を、プローブ情報から高い精度で生成することができる情報生成システム、情報生成装置、情報生成方法、および情報生成プログラムを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の情報生成システムは、対象地点の交通状況に関する情報を生成する情報生成システムであって、前記対象地点を通行した車両に搭載された車載装置からプローブ情報を収集する路側装置と、前記対象地点の周辺の交差点に配置された信号機を制御する信号制御装置と、前記対象地点の下流側交差点の信号機に関する直近の赤色点灯時間に基づいて、前記プローブ情報から取得した旅行時間を補正する旅行時間補正を実行し、その旅行時間補正により取得した補正済みの旅行時間に基づいて、前記対象地点の平均速度を算出し、その平均速度に基づいて、前記対象地点の交通状況に関する情報を生成する情報生成装置と、を具備し、前記情報生成装置は、前記旅行時間補正において、前記対象地点とその下流側交差点の信号機との間の距離に応じた係数を前記赤色点灯時間に乗じて補正時間を取得して、前記補正時間を前記旅行時間から減算し、前記係数は、前記対象地点が前記下流側交差点の前記信号機から離れるのに応じて、前記補正時間が短くなるように設定された構成とする。
【0009】
また、本発明の情報生成装置は、対象地点の交通状況に関する情報を生成する情報生成装置であって、前記対象地点を通行した車両の走行履歴を表すプローブ情報、および交差点に設置された信号機の赤色点灯時間に関する情報を記憶する記憶部と、前記対象地点の下流側交差点の信号機に関する直近の前記赤色点灯時間に基づいて、前記プローブ情報から取得した旅行時間を補正する旅行時間補正を実行し、その旅行時間補正により取得した補正済みの旅行時間に基づいて、前記対象地点の平均速度を算出し、その平均速度に基づいて、前記対象地点の交通状況に関する情報を生成する制御部と、を具備し、前記制御部は、前記旅行時間補正において、前記対象地点とその下流側交差点の信号機との間の距離に応じた係数を前記赤色点灯時間に乗じて補正時間を取得して、前記補正時間を前記旅行時間から減算し、前記係数は、前記対象地点が前記下流側交差点の前記信号機から離れるのに応じて、前記補正時間が短くなるように設定された構成とする。
【0010】
また、本発明の情報生成方法は、コンピュータにおいて、対象地点の交通状況に関する情報を生成する情報生成方法であって、前記対象地点の下流側交差点の信号機に関する直近の赤色点灯時間に基づいて、前記対象地点を通行した車両の走行履歴を表すプローブ情報から取得した旅行時間を補正する旅行時間補正を実行し、その旅行時間補正により取得した補正済みの旅行時間に基づいて、前記対象地点の平均速度を算出し、その平均速度に基づいて、前記対象地点の交通状況に関する情報を生成し、前記旅行時間補正では、前記対象地点とその下流側交差点の信号機との間の距離に応じた係数を前記赤色点灯時間に乗じて補正時間を取得して、前記補正時間を前記旅行時間から減算し、前記係数は、前記対象地点が前記下流側交差点の前記信号機から離れるのに応じて、前記補正時間が短くなるように設定された構成とする。
【0011】
また、本発明の情報生成プログラムは、前記の情報生成方法をコンピュータに実行させるためのものとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プローブ情報から取得した旅行時間を、対象地点の下流側交差点の信号機の赤色点灯時間に基づいて補正した上で、平均速度を求める。これにより、車両感知器で収集される情報の代替となる対象地点の交通状況に関する情報(推計車両感知器情報)を高い精度で生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る交通管理システムの全体構成図
【
図2】標準的な車両感知器2の配置状況と、車両感知器2の代わりに設定される対象地点を示す説明図
【
図3】交通管理装置1で行われる旅行時間補正の概要を示す説明図
【
図5】速度-密度モデルおよび密度-交通量モデルを示す説明図
【
図6】旅行時間補正部31、および平均速度算出部32で行われる処理の手順を示すフロー図
【
図7】密度推計部33、交通量推計部34、および占有率推計部35で行われる処理の手順を示すフロー図
【
図8】推計占有率および実測占有率の一例を示す説明図
【
図9】推計占有率および実測占有率の一例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、対象地点の交通状況に関する情報を生成する情報生成システムであって、前記対象地点を通行した車両に搭載された車載装置からプローブ情報を収集する路側装置と、前記対象地点の周辺の交差点に配置された信号機を制御する信号制御装置と、前記対象地点の下流側交差点の信号機に関する直近の赤色点灯時間に基づいて、前記プローブ情報から取得した旅行時間を補正する旅行時間補正を実行し、その旅行時間補正により取得した補正済みの旅行時間に基づいて、前記対象地点の平均速度を算出し、その平均速度に基づいて、前記対象地点の交通状況に関する情報を生成する情報生成装置と、を具備し、前記情報生成装置は、前記旅行時間補正において、前記対象地点とその下流側交差点の信号機との間の距離に応じた係数を前記赤色点灯時間に乗じて補正時間を取得して、前記補正時間を前記旅行時間から減算し、前記係数は、前記対象地点が前記下流側交差点の前記信号機から離れるのに応じて、前記補正時間が短くなるように設定された構成とする。
【0015】
これによると、プローブ情報から取得した旅行時間を、対象地点の下流側交差点の信号機の赤色点灯時間に基づいて補正した上で、平均速度を求める。これにより、車両感知器で収集される情報の代替となる対象地点の交通状況に関する情報(推計車両感知器情報)を高い精度で生成することができる。
【0016】
また、第2の発明は、前記情報生成装置は、前記対象地点とその下流側交差点の信号機との離間距離が所定範囲内である場合に、前記旅行時間補正を実行する構成とする。
【0017】
これによると、対象地点が下流側交差点の信号機に近い場合に平均速度の誤差が顕著になるため、旅行時間補正を行うことで、生成される交通状況に関する情報(推計車両感知器情報)の精度を高めることができる。
【0018】
また、第3の発明は、対象地点の交通状況に関する情報を生成する情報生成装置であって、前記対象地点を通行した車両の走行履歴を表すプローブ情報、および交差点に設置された信号機の赤色点灯時間に関する情報を記憶する記憶部と、前記対象地点の下流側交差点の信号機に関する直近の前記赤色点灯時間に基づいて、前記プローブ情報から取得した旅行時間を補正する旅行時間補正を実行し、その旅行時間補正により取得した補正済みの旅行時間に基づいて、前記対象地点の平均速度を算出し、その平均速度に基づいて、前記対象地点の交通状況に関する情報を生成する制御部と、を具備し、前記制御部は、前記旅行時間補正において、前記対象地点とその下流側交差点の信号機との間の距離に応じた係数を前記赤色点灯時間に乗じて補正時間を取得して、前記補正時間を前記旅行時間から減算し、前記係数は、前記対象地点が前記下流側交差点の前記信号機から離れるのに応じて、前記補正時間が短くなるように設定された構成とする。
【0019】
これによると、第1の発明と同様に、車両感知器で収集される情報の代替となる交通状況に関する情報を、プローブ情報から高い精度で生成することができる。
【0020】
また、第4の発明は、前記制御部は、前記対象地点とその下流側交差点の信号機との離間距離が所定範囲内である場合に、前記旅行時間補正を実行する構成とする。
【0021】
これによると、第2の発明と同様に、生成される交通状況に関する情報(推計車両感知器情報)の精度を高めることができる。
【0022】
また、第5の発明は、コンピュータにおいて、対象地点の交通状況に関する情報を生成する情報生成方法であって、前記対象地点の下流側交差点の信号機に関する直近の赤色点灯時間に基づいて、前記対象地点を通行した車両の走行履歴を表すプローブ情報から取得した旅行時間を補正する旅行時間補正を実行し、その旅行時間補正により取得した補正済みの旅行時間に基づいて、前記対象地点の平均速度を算出し、その平均速度に基づいて、前記対象地点の交通状況に関する情報を生成し、前記旅行時間補正では、前記対象地点とその下流側交差点の信号機との間の距離に応じた係数を前記赤色点灯時間に乗じて補正時間を取得して、前記補正時間を前記旅行時間から減算し、前記係数は、前記対象地点が前記下流側交差点の前記信号機から離れるのに応じて、前記補正時間が短くなるように設定された構成とする。
【0023】
これによると、第1の発明と同様に、車両感知器で収集される情報の代替となる交通状況に関する情報を、プローブ情報から高い精度で生成することができる。
【0024】
また、第6の発明は、前記対象地点とその下流側交差点の信号機との離間距離が所定範囲内である場合に、前記旅行時間補正を実行する構成とする。
【0025】
これによると、第2の発明と同様に、生成される交通状況に関する情報(推計車両感知器情報)の精度を高めることができる。
【0026】
また、第7の発明は、前記の情報生成方法をコンピュータに実行させるための情報生成プログラムである。
【0027】
これによると、第1の発明と同様に、車両感知器で収集される情報の代替となる交通状況に関する情報を、プローブ情報から高い精度で生成することができる。
【0028】
また、第8の発明は、前記対象地点とその下流側交差点の信号機との離間距離が所定範囲内である場合に、前記旅行時間補正を実行する構成とする。
【0029】
これによると、第2の発明と同様に、生成される交通状況に関する情報(推計車両感知器情報)の精度を高めることができる。
【0030】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0031】
図1は、本実施形態に係る交通管理システムの全体構成図である。
【0032】
この交通管理システムは、対象エリアの交通信号の制御を行うと共に、対象エリアの交通情報を生成して運転者に提示するものであり、交通管理装置1(情報生成装置、制御装置、コンピュータ)と、車両感知器2と、路側装置3と、信号制御機4と、交通情報表示装置5(交通情報板、カーナビなど)と、を備えている。
【0033】
交通管理装置1は、交通管制センター内中央装置である。この交通管理装置1は、車両感知器2から収集した車両感知器情報に基づいて、信号制御情報を生成して、その信号制御情報を信号制御機4に送信する。また、交通管理装置1は、車両感知器情報などに基づいて、車両の運転者などに提供するための交通情報を生成して、その交通情報を交通情報表示装置5に配信する。
【0034】
車両感知器2は、道路に設置され、道路上の車両を感知して、道路の交通状況(車両の通行状況)を表す車両感知器情報を生成する。この車両感知器情報は、車両感知器2から交通管理装置1に送信される。
【0035】
路側装置3は、道路に設置され、車両(プローブ車両)に搭載された車載装置からプローブ情報などの情報を収集する。この路側装置3は、光ビーコンやITSスポットや電波ビーコンなどである。
【0036】
信号制御機4は、交通管理装置1から送信される信号制御情報に基づいて信号機6(信号灯器)の動作を制御する。
【0037】
交通情報表示装置5は、交通管理装置1から提供される交通情報を運転者に提示する。この交通情報表示装置5は、道路に設置される情報板装置や、車両に搭載されるカーナビゲーション装置などである。なお、情報板装置の場合には、適宜な通信路を介して交通管理装置1から交通情報が提供される。また、カーナビゲーション装置の場合には、路側装置3からのダウンリンク情報として交通情報が車載装置に提供される。
【0038】
次に、車両感知器2で収集される情報(車両感知器情報)の代替となる交通状況に関する情報(推定車両感知器情報)について説明する。
図2は、標準的な車両感知器2の配置状況と、車両感知器2の代わりに設定される対象地点を示す説明図である。
【0039】
図2(A)に示すように、道路には、所要の間隔をおいて車両感知器2が設置されている。各車両感知器2では、交通量および占有率が測定され、その交通量および占有率が車両感知器情報として車両感知器2から交通管理装置1に送信される。ここで、交通量は、単位時間(例えば5分)ごとに車両感知器2の位置を通過した車両の台数である。また、占有率(時間占有率)は、単位時間内に車両感知器2の位置に車両が存在していた時間の割合である。
【0040】
図2に示す例では、信号機6が設置された下流側交差点からの距離(離間距離)、具体的には、該当する車線の停止線からの距離がそれぞれ150m、300m、500mとなる位置に車両感知器2が設置されている。
【0041】
一方、本実施形態では、
図2(B)に示すように、既設の車両感知器2が撤去された地点や、車両感知器2が必要と判断されるものの車両感知器2が設置されていない地点を、対象地点に設定する。そして、その対象地点に車両感知器2が設置されている場合に収集し得る交通状況に関する情報を、推計車両感知器情報として、プローブ時間から推計する。具体的には、プローブ時間に含まれる対象リンク(対象地点を含むリンク)の旅行時間から、対象地点の交通量および占有率を推計して、対象地点の推計交通量および推計占有率を取得する。
【0042】
詳細には、対象リンクの旅行時間と対象リンクの長さとに基づいて、対象地点の平均速度を算出する。次に、速度と密度との関係を表す速度-密度モデル(
図5(A)参照)を用いて、対象地点の平均速度から、対象地点の密度を推計する。次に、密度と交通量との関係を表す密度-交通量モデル(
図5(B)参照)を用いて、対象地点の推計密度から、対象地点の交通量を推計する。また、所定の計算式を用いて、対象地点の推計密度および平均車長から、対象地点の占有率を推計する。
【0043】
次に、交通管理装置1で行われる旅行時間補正について説明する。
図3は、交通管理装置1で行われる旅行時間補正の概要を示す説明図である。
【0044】
本実施形態では、プローブ時間に含まれる対象リンク(対象地点を含むリンク)の旅行時間から、対象地点の交通量および占有率を推計して、推計車両感知器情報として、対象地点の推計交通量および推計占有率を取得する。
【0045】
一方、対象リンクの旅行時間は、対象リンクの上流側交差点から対象リンクに進入してから、対象リンクの下流側交差点を通過するまでに要した時間(走行所要時間)であり、対象リンクの旅行時間には、下流側交差点の信号機6の赤色点灯により車両が停止していた時間も含まれる。したがって、旅行時間から算出された平均速度には大きな誤差が含まれ、精度の高い交通情報を生成することができない。また、対象リンクの下流側交差点が信号交差点ではない場合でも、その対象リンクの下流にある対象リンクの下流側交差点が信号交差点であり、かつ、その信号交差点から対象リンクが一定距離内に存在する場合は、その信号交差点の赤時間の影響を対象リンクの旅行時間も受けてしまう。
【0046】
そこで、本実施形態では、下流側交差点の信号機6に関する直近の赤色点灯時間に基づいて、対象リンク(対象地点を含むリンク)の旅行時間を補正する。具体的には、対象リンクの旅行時間から、下流側交差点の信号機6の赤色点灯時間を減算する。ここで、赤色点灯時間(赤色信号時間)とは、信号制御の1サイクルにおいて、赤色信号により対象リンクの車両に対して交差点の通行を禁止する時間である。
【0047】
また、本実施形態では、対象地点が下流側交差点の信号機6に近い場合、旅行時間補正を行う。具体的には、対象地点とその下流側交差点の信号機6との間の距離(離間距離)を取得して、その離間距離が所定のしきい値以下(所定範囲内)となる場合に旅行時間補正を行い、離間距離がしきい値を越える場合には旅行時間補正を行わない。
【0048】
図3に示す例では、第1の対象地点では、離間距離D1がしきい値Ds(例えば500m)以下となるため、旅行時間補正を行う。また、第2の対象地点では、第1の対象地点と同様に、離間距離D2がしきい値Ds以下となるため、旅行時間補正を行う。一方、第3の対象地点では、離間距離D3がしきい値Dsを越えるため、旅行時間補正を行わない。
【0049】
なお、路側装置3においてアップリンク情報として車載装置から収集されるプローブ情報は、各車両において、道路を走行中に所定タイミングで収集した位置や走行速度などの情報(走行履歴情報)であるが、プライバシー保護の観点から、路側装置3により収集された元のプローブ情報がリンク単位で集計(平均化)され、集計済みのプローブ情報が交通管理装置1に格納される。
【0050】
なお、本実施形態では、プローブ情報が、路側装置3においてアップリンク情報として車載装置から収集されるものとしたが、各路側装置3において、車載装置から車両ID(車両識別情報)を収集し、交通管理装置1において、各路側装置3で収集した車両IDに基づいて、各車両のプローブ情報を生成するようにしてもよい。
【0051】
また、スマートフォンから収集した情報に基づいてプローブ情報を生成するようにしてもよい。この場合、移動速度を算出して、その移動速度に基づいて、スマートフォンのユーザが乗車していることを検知して、スマートフォンの位置情報を車両の位置情報とみなしてプローブ情報を生成すればよい。
【0052】
ところで、本実施形態では、旅行時間補正において、旅行時間から赤色点灯時間を減算する処理が行われるが、対象地点とその下流側交差点の信号機6との間の距離(離間距離)に応じた赤色点灯時間の影響の度合いを加味した補正を行うようにしてもよい。具体的には、例えば、離間距離に応じた係数を赤色点灯時間に乗じて補正時間を取得して、旅行時間から補正時間を減算する。なお、係数は、対象地点やその周辺で収集された現在や過去の交通状況に関する情報などに基づいて決定すればよい。また、係数は、対象地点が下流側交差点の信号機6から離れるのに応じて、補正時間が短くなるように設定すればよい。
【0053】
また、下流側交差点での車両の進行方向に基づいた処理を行うようにしてもよい。例えば、右折レーンのみが混雑している場合、右折を行う車両と、直進および左折を行う車両とでは走行状況が異なり、リンクの途中にある対象地点の車両の走行状況は、直進および左折を行う車両の走行状況に類似したものとなる。そこで、プローブ情報に基づいて直進および左折の車両のみの旅行時間を抽出することで、直進および左折の車両のみを対象にして平均速度を算出するようにしてもよい。
【0054】
次に、交通管理装置1の概略構成について説明する。
図4は、交通管理装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0055】
交通管理装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を備えている。
【0056】
通信部11は、車両感知器2、路側装置3、信号制御機4、および交通情報表示装置5と通信を行う。具体的には、車両感知器2から送信される車両感知器情報を受信する。また、路側装置3から送信されるプローブ情報などを受信する。また、制御部13で生成した信号制御情報などを信号制御機4に送信する。また、信号制御機4から送信される信号実行結果情報を受信する。また、制御部13で生成した交通情報(区間旅行時間、渋滞情報など)を交通情報表示装置5に送信する。
【0057】
記憶部12は、車両感知器情報(交通量、占有率)、推計車両感知器情報(推計交通量、推計占有率)、プローブ情報、信号制御情報、信号実行結果情報、および交通情報(旅行時間情報、渋滞情報)などを記憶する。また、記憶部12は、車線数、リンク容量、規制速度などの路線情報や、各リンクの長さ、ジャム密度、平均車長などの各種パラメータを記憶する。また、記憶部12は、制御部13を構成するプロセッサで実行されるプログラムを記憶する。
【0058】
ここで、車両感知器情報は、車両感知器2で収集された交通状況を表す情報であり、具体的には、交通量や占有率(時間占有率)などである。
【0059】
推計車両感知器情報は、プローブ情報に基づいて制御部13で生成される。本実施形態では、推計車両感知器情報として、推計交通量および推計占有率が取得される。
【0060】
プローブ情報は、各リンクに関する旅行時間(走行所要時間)などである。
【0061】
信号制御情報は、信号制御機4において信号機6(信号灯器)の動作を制御するために用いられるものであり、信号機6における交通信号の表示タイミングを決定する要素となる情報(信号制御パラメータ)、具体的には、サイクル長、スプリット、およびオフセットである。この信号制御情報は、車両感知器情報および推計車両感知器情報に基づいて制御部13で生成される。
【0062】
信号実行結果情報は、信号制御情報に基づいて信号制御機4で実行された信号制御の結果に関する情報である。この信号実行結果情報は、信号制御機4から交通管理装置1に適宜なタイミングで送信される。本実施形態では、直近の信号実行結果情報に含まれる赤色点灯時間が旅行時間補正に利用される。
【0063】
交通情報は、旅行時間情報や渋滞情報などである。旅行時間情報は、区間旅行時間、すなわち、予め設定された2地点(起点および終点)で規定される対象区間を走行するのに要した所要時間や、その元になるリンク単位の旅行時間などである。渋滞情報は、対象区間の渋滞情報や、その元になるリンク単位の渋滞情報(例えばリンク渋滞長)などである。この交通情報は、車両感知器情報および推計車両感知器情報に基づいて制御部13で生成される。
【0064】
制御部13は、信号制御情報生成部21と、交通情報生成部22と、推計車両感知器情報生成部23と、を備えている。この制御部13は、プロセッサで構成され、制御部13の各部は、記憶部12に記憶されたプログラムをプロセッサで実行することで実現される。
【0065】
信号制御情報生成部21は、車両感知器情報(交通量および占有率)に基づいて、信号制御情報として、信号制御パラメータ(サイクル長、スプリット、およびオフセット)を決定する。
【0066】
交通情報生成部22は、車両感知器情報(交通量および占有率)に基づいて、交通情報として、区間旅行時間や渋滞情報を生成する。具体的には、リンクごとの旅行時間を統合して区間旅行時間を算出する。また、リンク渋滞長を統合して所定区間の渋滞情報を生成する。
【0067】
ここで、信号制御情報生成部21および交通情報生成部22では、車両感知器2が設置されている地点については、車両感知器2から収集した車両感知器情報が用いられる。一方、車両感知器2が設置されていない地点については、車両感知器情報の代替となる対象地点の交通状況に関する情報として、推計車両感知器情報生成部23で取得した推定車両感知器情報が用いられる。
【0068】
推計車両感知器情報生成部23は、旅行時間補正部31と、平均速度算出部32と、密度推計部33と、交通量推計部34と、占有率推計部35と、を備えている。
【0069】
旅行時間補正部31は、プローブ情報に含まれる対象リンク(対象地点を含むリンク)の旅行時間と、下流側交差点の信号機6に関する直近の赤色点灯時間とを取得して、赤色点灯時間に基づいて旅行時間を補正する。具体的には、対象リンクの旅行時間から赤色点灯時間を減算する。なお、直近の赤色点灯時間は、信号制御機4から送信される信号実行結果情報から取得すればよいが、信号制御機4に送信した信号制御情報から取得するようにしてもよい。
【0070】
特に本実施形態では、対象地点とその下流側交差点の信号機6との間の距離が所定のしきい値以下(所定範囲内)となるか否かに応じて、対象地点が旅行時間補正を必要とする地点か否かの判定が、対象地点ごとに予め行われ、対象地点ごとの旅行時間補正の要否に関する情報が記憶部12に格納される。旅行時間補正部31は、対象地点ごとの旅行時間補正の要否に関する情報に基づいて、対象地点が旅行時間補正を必要とする地点である場合に旅行時間補正を行う。
【0071】
平均速度算出部32は、対象リンク(対象地点を含むリンク)の旅行時間と、対象リンクの長さとに基づいて、対象地点の平均速度を算出する。このとき、対象地点が旅行時間補正を必要とする地点である場合には、旅行時間補正部31で補正された旅行時間から平均速度が算出され、対象地点が旅行時間補正を必要としない地点である場合には、補正されていない旅行時間から平均速度が算出される。
【0072】
密度推計部33は、速度-密度モデル(
図5(A)参照)を用いて、平均速度算出部32で取得した対象地点の平均速度から、対象地点の密度を推計する。
【0073】
交通量推計部34は、密度-交通量モデル(
図5(B)参照)を用いて、密度推計部33で取得した対象地点の推計密度から、対象地点の交通量を推計する。
【0074】
占有率推計部35は、密度推計部33で取得した対象地点の推計密度と平均車長とに基づいて、対象地点の占有率を推計する。具体的には、以下の式1のように、平均車長Lおよび推計密度Kpから推計占有率Opを算出する。
Op=100×L×Kp (式1)
【0075】
次に、密度推計部33で用いられる速度-密度モデル、および交通量推計部34で用いられる密度-交通量モデルについて説明する。
図5は、速度-密度モデルおよび密度-交通量モデルを示す説明図である。
【0076】
密度推計部33は、
図5(A)に示す速度-密度モデルを用いて、平均速度算出部32で取得した対象地点の平均速度(プローブ速度)Vpから、対象地点の密度を推計して、対象地点の推計密度Kpを取得する。速度-密度モデルは、速度と密度との関係を表す。この速度-密度モデルでは、密度が高くなるのに応じて、車両の速度が自由流速度から次第に遅くなる。ジャム密度は、車両の速度が0になる状態を表す。
【0077】
この速度-密度モデルは、自由流速度Vf、およびジャム密度Kjにより規定される。これらのパラメータはリンクごとに予め設定され、対象リンク(対象地点を含むリンク)に関するパラメータを用いて、対象リンクに関する速度-密度モデルが設定される。なお、自由流速度Vf、およびジャム密度Kjは、車線数、規制速度などの路線情報に基づいて設定される。
【0078】
交通量推計部34は、
図5(B)に示す密度-交通量モデルを用いて、密度推計部33で取得した対象地点の推計密度Kpから交通量を推計して、対象地点の推計交通量Qpを取得する。密度-交通量モデルは、密度と交通量との関係を表す。この密度-交通量モデルでは、臨界密度Kcより密度が低い領域は、渋滞が発生していない状態である。この領域では、密度が高くなるのに応じて交通量が多くなる。一方、臨界密度Kcより密度が高い領域は、渋滞が発生している状態である。この領域では、密度が高くなるのに応じて交通量が少なくなる。
【0079】
この密度-交通量モデルは、リンク容量Qc(リンクの交通容量)、自由流速度Vf、およびジャム密度Kjにより規定される。これらのパラメータはリンクごとに予め設定され、対象リンク(対象地点を含むリンク)に関するパラメータを用いて、対象リンクに関する密度-交通量モデルが設定される。なお、リンク容量Qc(リンクの交通容量)、自由流速度Vf、およびジャム密度Kjは、車線数、規制速度などの路線情報に基づいて設定される。
【0080】
次に、旅行時間補正部31、および平均速度算出部32で行われる処理の手順について説明する。
図6は、旅行時間補正部31、および平均速度算出部32で行われる処理の手順を示すフロー図である。
【0081】
図6(A)に示すように、旅行時間補正部31は、まず、対象地点に関して旅行時間補正の要否を判定する(ST101)。この判定は、予め記憶部12に格納された対象地点ごとの旅行時間補正の要否に関する情報に基づいて行われる。
【0082】
ここで、対象地点が旅行時間補正を必要とする地点である場合には(ST101でYes)、プローブ情報に含まれる対象リンク(対象地点を含むリンク)の旅行時間を記憶部12から読み出す(ST102)。また、対象地点の下流側交差点の信号機6に関する信号実行結果情報に含まれる直近の赤色点灯時間を記憶部12から読み出す(ST103)。そして、赤色点灯時間に基づいて旅行時間を補正する(ST104)。次に、取得した補正済みの旅行時間を記憶部12に格納する(ST105)。
【0083】
一方、対象地点が旅行時間補正を必要としない地点である場合には(ST101でNo)、特に処理は行われない。
【0084】
図6(B)に示すように、平均速度算出部32は、まず、対象リンク(対象地点を含むリンク)の旅行時間を記憶部12から読み出す(ST201)。このとき、対象地点が旅行時間補正を必要とする地点であるか否かに応じて、旅行時間補正部31で補正済みの旅行時間または補正なしの旅行時間を取得する。また、対象リンクの長さを記憶部12から読み出す(ST202)。そして、対象リンクの長さと、補正済みの旅行時間または補正なしの旅行時間とに基づいて、対象地点の平均速度を算出する(ST203)。次に、取得した平均速度を記憶部12に格納する(ST204)。
【0085】
次に、密度推計部33、交通量推計部34、および占有率推計部35で行われる処理の手順について説明する。
図7は、密度推計部33、交通量推計部34、および占有率推計部35で行われる処理の手順を示すフロー図である。
【0086】
図7(A)に示すように、密度推計部33は、まず、対象リンク(対象地点を含むリンク)に関する密度-速度モデルを記憶部12から読み出す(ST301)。また、対象地点の平均速度を記憶部12から読み出す(ST302)。そして、密度-速度モデルを用いて、対象地点の平均速度から対象地点の密度を推計する(ST303)。次に、取得した推計密度を記憶部12に格納する(ST304)。
【0087】
図7(B)に示すように、交通量推計部34は、まず、対象リンク(対象地点を含むリンク)に関する密度-交通量モデルを記憶部12から読み出す(ST401)。また、推計密度を記憶部12から読み出す(ST402)。そして、交通量-密度モデルを用いて、推計密度から交通量を推計する(ST403)。次に、取得した推計交通量を記憶部12に格納する(ST404)。
【0088】
図7(C)に示すように、占有率推計部35は、まず、推計密度を記憶部12から読み出す(ST501)。また、平均車長を記憶部12から読み出す(ST502)。そして、推計密度および平均車長に基づいて占有率を推計する(ST503)。次に、取得した推計占有率を記憶部12に格納する(ST504)。
【0089】
次に、本実施形態の効果について説明する。
図8、
図9は、推計占有率および実測占有率の一例を示す説明図である。
【0090】
図8は、対象地点が下流側交差点の信号機6に近い場合、具体的には、対象地点と下流側交差点の信号機6との間の距離(離間距離)が150mとなる場合の例である。また、
図8(A)に示す例は、旅行時間補正が実施されていない場合であり、
図8(B)に示す例は、旅行時間補正が実施された場合である。
【0091】
図8(A)に示すように、旅行時間補正が実施されていない場合には、実測占有率と推計占有率との間に大きな乖離が存在する。一方、
図8(B)に示すように、旅行時間補正が実施された場合には、実測占有率と推計占有率との間に大きな乖離はない。これにより、旅行時間補正の効果を確認することができる。なお、
図8(A)に示すように、旅行時間補正が実施されていない場合には、推計占有率が実測占有率より高くなっており、これは、旅行時間に含まれる赤色点灯時間の影響により、平均速度が実際より遅くなっているためと想定される。
【0092】
一方、
図9は、対象地点が下流側交差点の信号機6から十分離れている場合、具体的には、対象地点と下流側交差点の信号機6との間の距離(離間距離)が500mとなる場合の例である。この例では、旅行時間補正が実施されていないが、実測占有率と推計占有率との間に大きな乖離はない。したがって、このような場合には旅行時間補正は不要である。
【0093】
そこで、本実施形態では、離間距離が所定のしきい値以下となる場合に、旅行時間補正を実施し、離間距離がしきい値を越える場合には、旅行時間補正を実施しない。なお、旅行時間補正の要否を判定するしきい値は、対象地点の過去の交通状況などに基づいて適宜に設定すればよい。
【0094】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用できる。また、上記の実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明に係る情報生成システム、情報生成装置、情報生成方法、および情報生成プログラムは、車両感知器で収集される情報の代替となる交通状況に関する情報を、プローブ情報から高い精度で生成することができる効果を有し、車両感知器で収集される情報の代替となる対象地点の交通状況に関する情報を生成する情報生成システム、情報生成装置、情報生成方法、および情報生成プログラムなどとして有用である。
【符号の説明】
【0096】
1 交通管理装置(情報生成装置、制御装置、コンピュータ)
2 車両感知器
3 路側装置
4 信号制御機
5 交通情報表示装置
6 信号機
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
21 信号制御情報生成部
22 交通情報生成部
23 推計車両感知器情報生成部
31 旅行時間補正部
32 平均速度算出部
33 密度推計部
34 交通量推計部
35 占有率推計部