(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】フィルター付きピペットを有する吐出装置の使用方法と吐出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/10 20060101AFI20240830BHJP
B01L 3/02 20060101ALI20240830BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
G01N1/10 B
B01L3/02 D
B01D15/00 L
(21)【出願番号】P 2020119029
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】503366841
【氏名又は名称】株式会社アイカムス・ラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100183575
【氏名又は名称】老田 政憲
(73)【特許権者】
【識別番号】523007203
【氏名又は名称】株式会社The IT Lab
(74)【代理人】
【識別番号】100183575
【氏名又は名称】老田 政憲
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(73)【特許権者】
【識別番号】501155803
【氏名又は名称】株式会社 京都モノテック
(74)【代理人】
【識別番号】100183575
【氏名又は名称】老田 政憲
(72)【発明者】
【氏名】河野 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】上山 忠孝
(72)【発明者】
【氏名】田口 好弘
(72)【発明者】
【氏名】水口 博義
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0124551(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0370956(US,A1)
【文献】特開2014-176393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/10
B01L 3/02
B01D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中の目的物質を分離するための方法であり、
前記液体をフィルター付きピペットに吸引し、吐出する吸着工程と、
洗浄液を前記フィルター付きピペットに吸引し、吐出する洗浄工程と、
溶離液を前記フィルター付きピペットに吸引し、吐出する溶出工程と、を含み、
前記吸着工程では、空気を予備吸引し、前記液体を吸引し、前記液体を吐出するフィルター付きピペットを有する吐出装置の使用方法
であり、
前記吸着工程で空気を予備吸引する際の吸引速度は、前記液体を吸引する際の吸引速度よりも大きいフィルター付きピペットを有する吐出装置の使用方法。
【請求項2】
液体中の目的物質を分離するための方法であり、
前記液体をフィルター付きピペットに吸引し、吐出する吸着工程と、
洗浄液を前記フィルター付きピペットに吸引し、吐出する洗浄工程と、
溶離液を前記フィルター付きピペットに吸引し、吐出する溶出工程と、を含み、
前記吸着工程では、空気を予備吸引し、前記液体を吸引し、前記液体を吐出するフィルター付きピペットを有する吐出装置の使用方法
であり、
前記予備吸引は、第1予備吸引と前記第1予備吸引より、吸引量と吸引速度が小さい第2予備吸引とを含むフィルター付きピペットを有する吐出装置の使用方法。
【請求項3】
液体中の目的物質を分離するための方法であり、
前記液体をフィルター付きピペットに吸引し、吐出する吸着工程と、
洗浄液を前記フィルター付きピペットに吸引し、吐出する洗浄工程と、
溶離液を前記フィルター付きピペットに吸引し、吐出する溶出工程と、を含み、
前記吸着工程では、空気を予備吸引し、前記液体を吸引し、前記液体を吐出するフィルター付きピペットを有する吐出装置の使用方法
であり、
前記フィルターはモノリスであり、前記吸着工程では、前記吐出の後、前記吐出より早い吐出速度で、前記予備吸引の速度以下で空気を吐出する押切り工程を有するフィルター付きピペットを有する吐出装置の使用方法。
【請求項4】
前記吸着工程では、空気を予備吸引し、空気を吐出せずに続けて前記液体を吸引し、前記液体を吐出する請求項1
~3のいずれか1項に記載のフィルター付きピペットを有する吐出装置の使用方法。
【請求項5】
前記洗浄工程では、空気を予備吸引し、洗浄液を吸引し、前記洗浄液を吐出する請求項1~
4のいずれか1項に記載のフィルター付きピペットを有する吐出装置の使用方法。
【請求項6】
前記溶出工程では、空気を予備吸引し、溶出液を吸引し、前記溶出液を吐出する請求項1~
5のいずれか1項に記載のフィルター付きピペットを有する吐出装置の使用方法。
【請求項7】
液体処理装置と、
前記液体処理装置の先端に配置させるピペットと、を含み、
前記ピペットは、前記フィルターを内部に有し、
前記液体処理装置は、吸着工程、洗浄工程、溶出工程の動作パラメーターがプログラム可能な制御回路を備え、請求項1~6のいずれか1項に記載のフィルター付きピペットを有する吐出装置の使用方法を実施する吐出装置。
【請求項8】
前記動作パラメーターが外部機器から入力可能な無線通信手段を備える請求項7に記載の吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルター付きピペットを有する吐出装置の使用方法と吐出装置に関するものである。特に、フィルター付きピペットを有する吐出装置において、液体を吸引、吐出する方法と吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルター付きピペットを用いて、核酸などを分離することが行われている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-091568号公報
【文献】特開2015-533480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のフィルター付きピペットで液体を吐出する時、フィルターが壁になって、フィルターより先の部分の液体が吐出されにくい。
よって、本願の課題は、フィルター付きピペットで液体を吐出する時、フィルターより先の液体を吐出しやすいフィルター付きピペットを有する吐出装置の使用方法と吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、液体中の目的物質を分離するための方法であり、上記液体をフィルター付きピペットに吸引し、吐出する吸着工程と、洗浄液を上記フィルター付きピペットに吸引し、吐出する洗浄する洗浄工程と、溶離液を上記フィルター付きピペットに吸引し、吐出する洗浄する溶出工程と、を含み、上記吸着工程では、空気を予備吸引し、上記液体を吸引し、上記液体を吐出する、フィルター付きピペットを有する吐出装置の使用方法を用いる。
また、液体処理装置と、上記液体処理装置の先端に配置させるピペットと、を含み、
上記ピペットは、上記フィルターを内部に有し、上記液体処理装置は、吸着工程、洗浄工程、溶出工程の動作パラメーターがプログラム可能な制御回路を備える吐出装置を用いる。
【発明の効果】
【0006】
本発明のフィルター付きピペットを有する吐出装置の使用方法と吐出装置は、液体を吐出する時、フィルターより先の液体を吐出しやすいフィルター付きピペットを有する吐出装置の使用方法と吐出装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】(a)実施の形態1のピペット10を装着する液体処理装置20の斜視図、(b)実施の形態1のピペット10の斜視図、(c)実施の形態1の液体を入れる容器21の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施の形態1)
<構造>
図1に、実施の形態1のピペット10の断面図を示す。ピペット10は、先が絞っている円筒形状の樹脂容器であり、保持部10aと、液体保管部10bと液体吸引部10cとフィルター11とを有する。
保持部10aは、ピペット10が液体処理装置20(
図2(a))で保持される部分である。他のピペット10の部分より、水平断面積が大きく、厚みが厚い。
【0009】
液体保管部10bは、液体吸引部10cから吸引した液体を一時保管する部分である。円錐台形状で中が空洞である。
液体吸引部10cは、液体を吸引する部分である。円錐台形状で内部が空洞である。液体保管部10bより、水平断面積が小さい。
フィルター11は、ピペット10の容器に密着して固定されている。フィルター11の側面とピペット10の内面とに隙間がない。例えば、ピペット10を温め、膨張している時にフィルター11を入れ込むとそうなる。
【0010】
フィルター11は、均一な多孔度を有するガラスフリットまたは焼結ガラスフリットである。他の実施形態においては、フィルター11は、相異なる多孔度を有する2つの区分を有するガラスフリットまたは焼結ガラスフリットであって、より大きな孔径を有する区分がより小さな孔径を有する区分よりもピペット入口に近く排置されることを特徴とする。これらすべての実施形態において、ガラスフリットは、その抗体に対する親和性を改善するためにポリヌクレオチドまたは抗体といった何らかの追加的材料によってコーティングされたり、あるいはこれが包埋されたりすることはない。
【0011】
多孔質体で、吸引する液体中のある成分と合体する。フィルター11として、モノリス吸着剤、または、モノリス吸着材料を用いることができる。モノリス吸着剤は、硬質、自立型のほぼモノリス状の構造を含みうる、単一片状の連続的相互連結小孔構造を有する多孔質三次元吸着材料を意味する。モノリスは、たとえば、前駆体を所望の形態の型に入れて注型、焼結または重合することにより作製される。モノリス吸着剤、または、モノリス吸着材料は、その中で最終生成物が個々の吸着剤粒子を含む、ベッド構造に充填されるかまたは多孔質マトリクスに包埋される個々の吸着剤粒子の集合体と鑑別されるよう意図されている。モノリス吸着剤、または、モノリス吸着材料は、ろ紙または吸着剤でコーティングされたろ紙などの吸着繊維または吸着剤でコーティングされた繊維の集合体とも識別されるよう意図されている。
【0012】
一部の実施形態においては、フィルター11は2つまたはそれ以上のサブフィルターを有してもよい。複数のフィルター11をピペット10の長手方向に並べて、配置できる。
1つの実施形態においては、フィルター11は約1mmと約20mmの間の厚さを有する。他の実施形態においては、フィルター11は約2mmと約10mmの間の厚さを有し、他の実施形態においては、フィルター11は約2mmと約6mmの間の厚さを有する。さらに他の実施形態においては、フィルター11は約4mmの厚さを有する。
【0013】
<液体処理装置20>
図2(a)に、このピペット10を装着する液体処理装置20の斜視図を示す。
図2(b)にピペット10の斜視図を示す。
図2(c)に液体を入れる容器21の斜視図を示す。
液体処理装置20の接続部20cの先端にピペット10を装着する。そして、容器21中の液体にピペット10の液体吸引部10cを付け、液体を吸引する。
なお、液体処理装置20にピペット10を配置した装置を吐出装置とする。
液体処理装置20は、制御部20bにICなど制御部材を有し、プログラムを実行できる。
プログラムは、以下で説明する吸着工程、洗浄工程、溶出工程の動作パラメーターによるプログラムである。制御部20bはこのプログラムに従い吐出装置を制御する。
なお、動作パラメーターは外部機器から入力可能である。吐出装置は、無線通信手段を備えることができる。
吐出装置は、液体の吸引をするため、空気を吸い込むことができる。また、液体を吐出するために、空気を吐出することもできる。液体の出し入れと無関係に空気の吸引、吐出もできる。プログラムで自動制御できる。制御部20bには、スイッチ、ポタンなどがあり、制御の開始、終了ができる。
【0014】
<方法>
以下で、一例として、細胞、細菌またはウイルスといった元の宿主(液体)から目的の核酸(目的物質)を遊離させる溶解手順を説明する。細胞またはウイルス構造の溶解は、化学的(例:NaOHまたはチオシアン酸グアニジン)、機械的(例:ガラスビーズまたは超音波処理)、または物理的(例:凍結-解凍サイクル)に遂行することができる。組織サンプルについては、溶解手順の前に酵素消化手順を採用しうる。溶解したサンプルは、その後核酸の分離のために本願のモノリスのフィルター11に装填される。
【0015】
1:吸着工程
初めに、サンプル材料(液体)を、サンプル(液体)中の核酸(目的物)がフィルター11上に保持されるように、液体をピペット10の液体吸引部10cから液体を吸い込む。フィルター11を液体が通過し、液体保管部10bへ一時保持される。その液体を再度、フィルター11を通過させ、液体吸引部10cを通って、外部へ吐出する。
1回フィルター11を往復させたが、複数回してもよい。液体はフィルター11を通過して第1の方向に流れた後、対応するフィルター11を横切って第1の方向と反対の方向に流れ、少なくとも2回フィルター11を通過する。
【0016】
核酸は、適切な結合液を用いてフィルター11と結合させうる。結合の目的物質(例:HMW DNA、LMW DNAまたはその両者)に応じて、1つまたはそれ以上のカオトロピック剤および/またはそのカオトロピック塩の濃度を調節することによって適切な結合条件を達成することができる。典型的なカオトロピック剤は、尿素、チオ尿素、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、イソチオシアン酸グアニジン、塩酸グアニジン、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムおよび過塩素酸ナトリウムなどのカオトロピック塩;ブタノール、エタノール、プロパノールおよびイソプロパノールなどの脂肪族アルコール;フェノールおよびその他のフェノール化合物;アルギニン、および塩化マグネシウムを含むが、これに限定されない。典型的なカオトロピック塩はチオシアン酸グアニジン、塩化グアニジン、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、尿素およびチオ尿素を含む。
【0017】
一部の実施形態においては、結合液は、吸着工程においてHMWおよびLMW、DNAの両者の選択されたフィルター11との結合を促進するために利用され、イソプロパノールなどの脂肪族アルコールが約17%から約25%、好ましくは約20%から約24%(至適=22.5%)の間の範囲で提供され、かつイソチオシアン酸グアニジンおよび/または塩酸グアニジンなどのカオトロピック塩が約0.5Mから約4.0M、好ましくは約1.0Mから約2.5M(至適=1.8M)の間の範囲で提供されることを特徴とする。
【0018】
HMW DNAの選択されたフィルター11との選択的結合を促進するために、イソプロパノールなどの脂肪族アルコールは約0%から約10%、好ましくは約4%から約6%(至適=4.7%)の間の範囲で提供されかつイソチオシアン酸グアニジンおよび/または塩酸グアニジンなどのカオトロピック塩は約1.0Mから約4.0M、好ましくは約3.0Mから約4.0Mの間の範囲で提供されうる。
【0019】
回収されたLMW DNAの選択されたフィルター11との結合(および濃縮)を促進するために、イソプロパノールなどの脂肪族アルコールは約10%から約25%、好ましくは約15%から約20%(至適=17.7%)の間の範囲で提供されかつイソチオシアン酸グアニジンおよび/または塩酸グアニジンなどのカオトロピック塩は約1.0Mから約5.0M、好ましくは約2.0Mから約4.0M(至適=3.3M)の間の範囲で提供されうる。
【0020】
2:洗浄工程
次の洗浄工程では、フィルター11を洗浄液で洗浄してフィルター11と特異的に結合しない材料を除去する。吸着工程のそれと同様、洗浄液は、フィルター11を少なくとも1回往復させる。複数回でもよい。
洗浄工程は、核酸抽出物または分画中に存在する外来性の未結合材料を除去する。洗浄液の例は、グアニジン、酢酸ナトリウム、およびエタノールを含有する液、トリスおよびエタノール、アセトン、エタノール、アセトンとエタノールの混合物を含有するバッファー、およびフィルターを乾燥するために容易に蒸発する他の溶媒を含むが、これに限定されない。
【0021】
なお、上記洗浄液などが残ると、目的物質の収率がよくないので、洗浄工程の最終の押切り(表2)をしっかりする。他の工程より容量を大きくしている。
【0022】
3:溶出工程
溶出工程は、フィルター11に結合した核酸が溶離液(溶離液)によってフィルター11から溶離される。溶離液(溶離液)はフィルター11を経て少なくとも1回往復させる。複数回でもよい。
【0023】
核酸は、適切な溶離液(溶離液)を用いてフィルター11から溶離させうる。適切な溶離条件は溶離液(溶離液)を添加することにより達成することが可能であり、溶離液(溶離液)の例は1mM NaOH、10mMのTrisHCl、または好ましくはpHが6.5を上回る任意の低塩液または水を含むが、これに限定されない。
【0024】
一つの実施形態においては、本願に記載の方法は1)大きな体積のサンプルからある範囲のDNAフラグメント長の分離;および2)一定のサイズ範囲内のDNAフラグメントの選択的分離を可能にする。
【0025】
ピペット10内にモノリス結合マトリクスのフィルター11を包埋することにより、困難な種類のサンプルから核酸を精製するために必要とされる抽出プロセスおよび機器の使用が大きく簡素化される。結合マトリクスの幾何学的配置および多孔度は、全体積が0.1から50mLの範囲のピペットチップ内部で核酸結合のための大きな表面積を提供しながら、流動抵抗または目詰まりを最小化するよう個別に調節される。
したがってマトリクスは、低圧を用いてサンプルをその中を通して移動させることができるので、微小流動に適している。サンプル(液体)吸引および分注時(液体吐出)の二方向流動は、至適な核酸回収および溶離のためのサンプル(液体)抽出とマトリクス結合の間の滞留時間の延長を可能とし、かつ単一のフィルター11内で目詰まりすることなく比較的大きなサンプル(液体)体積を処理することを可能とする。
【0026】
ピペット10は、サンプル数(液体数)が少ないかまたはリソースが限られている環境において有用な手持ちピペット10から、多数のサンプル(液体)を同時に処理することのできる大量液状物操作システムまでの、液状物(液体)を吸い上げる任意のデバイスに対して汎用的である。
【0027】
<吸引吐出の詳細工程>
以下で、液体を吸引、吐出する場合の詳細工程を説明する。
1例として、フィリター11の水平方向断面積が、0.13mm2であり、液体吸引部10cの先端の開口面積は、0.0013mm2である。下記に示す数値は、上記寸法前後なら影響がない。
【0028】
<吸着工程>
表1で吸着工程を説明する。
予備吸引1、予備吸引2、吸引、吐出、押切りの工程を続けてする。
予備吸引1、2は、1つの工程としてもよい。
予備吸引1では、吸引容量は、100~800uLがよい。吸引速度は、100~600uL/secが好ましい。
予備吸引2では、吸引容積は、50~200uL、吸引速度は、3~30uL/secが好ましい。
【0029】
吸引では、吸引容積100ー500uL、吸引速度は、2~50uL/secが好ましい。
吐出では、吐出量100~800uL、吐出速度が、2~50uL/secが好ましい。
押切りでは、吐出量100~500uL、吐出速度が、100-500uL/secが好ましい。
【0030】
予備吸引1は、予備吸引2より吸引容積が大きく、吸引速度が大きい、吸引速度は、10倍以上、吸引容積は、3倍以上が好ましい。
吸引、吐出は、予備吸引2より吸引容積が大きく、吸引速度は同等であり、吸引容積は、2倍以上が好ましい。
【0031】
押切りでは、予備吸引1の吸引速度、吸引量と同様の吐出速度、吐出量とする。
予備吸引1は、あらかじめいくらか空気を吸引しておいて、吐出で吸引量より多い量の設定を可能とできる。結果、フィルター11より下の部分の液を押し出すことができる。
この場合は液体の吸引量が200μlなので、吐出は液体を200μl吐出しさらに空気を200μl吐出する。
【0032】
予備吸引2は、予備吸引1でフィルター11より上の部分が減圧状態になるため、これをなくすためである。
押切は、フィルター11内に残っている液をできるだけ少なくし、次の吸引・吐出操作の際に上記の効果を可能とするためにする。
なお、押切り時のスピードについてはこれ以上上げるとかえって水滴が残るため、下記のスピードが好ましい。
【0033】
表1で、フィルター11に滞留している液体とは、目的物質と結合する物質を含む液体である。この場合、カオトロピック塩を含む溶媒で、あらかじめ、フィルター11を湿らせておく。なお、ピペット10は、使い捨てである。初期状態としては、吸着工程の前に、上記液体でフィルター11を湿らせた状態である。
【表1】
【0034】
<洗浄工程>
表2で洗浄工程を説明する。容器21は別の容器21であり、洗浄液を中に有する。
吸着工程と同様である。予備吸引1、予備吸引2、吸引、吐出、押切りの工程を続けてする。
予備吸引1、2は、1つの工程としてもよい。
ただし、予備吸引1は、吸着工程より洗浄工程の方がより容量が大きい。
【表2】
【0035】
<溶出工程>
表3で溶出工程を説明する。容器21は別の容器21であり、溶出液を中に有する。
吸着工程、洗浄工程と同様である。予備吸引1、予備吸引2、吸引、吐出、押切りの工程を続けてする。
予備吸引1、2は、1つの工程としてもよい。
ただし、予備吸引1は、吸着工程より溶出工程の方がより容量が大きい。
溶出工程だけ、吸引1,2と2つにしている。これは、液体吸引部10cの部分に液体が残る。その液が溶出の役に立たないので、その部分もフィルター11内に入れるために吸引2を行っている。
【表3】
なお、
図2の液体処理装置20で、プログラムを作成すれば、上記工程は自動でできる。例えば、ポタンを押すことで、各工程が進むとできる。液体処理装置20は、別のタイプでもよい。
【0036】
<効果>
実施の形態の方法によると、
(1)液体を吸引時、液体の吸引量を一定にできる。時間的遅れなく、液体を吸引できる。
(2)液体の吐出時、フィルター11が壁にならず、液体が吐出できる。フィルター11より下部の液体吸引部10cの液体も吐出できる。
(3)プログラムを組んですれば自動でできる。
(全体として)
対象の液体は、細胞、細菌またはウイルスを含む液体だけでなく、生命分野、工業分野の各種液体を含む。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本願発明のフィルター付きピペットを有する吐出装置の使用方法は、細胞、細菌またはウイルスといった元の宿主(液体)に対してだけでなく、各種液体中の目的物質を取り出すために利用できる。
【符号の説明】
【0038】
10 ピペット
10a 保持部
10b 液体保管部
10c 液体吸引部
11 フィルター
20 液体処理装置
20a 保持部
20b 制御部
20c 接続部
21 容器