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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】路盤の品質管理方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/02 20060101AFI20240830BHJP
   E02D 3/02 20060101ALI20240830BHJP
   E01C 3/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
E02D1/02
E02D3/02
E01C3/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2024050075
(22)【出願日】2024-03-26
【審査請求日】2024-04-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522486287
【氏名又は名称】株式会社甲斐組
(73)【特許権者】
【識別番号】508112564
【氏名又は名称】エターナルプレザーブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】成島 誠一
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-098607(JP,A)
【文献】特開2021-011771(JP,A)
【文献】特開2016-033287(JP,A)
【文献】特開2016-156146(JP,A)
【文献】特開2022-068018(JP,A)
【文献】特開2003-193416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/02
E02D 3/02
E01C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略ハニカム状の路盤補強材に充填物を充填し、転圧して形成した路盤に対して支持力測定器を用いて衝撃加速度値を測定する衝撃加速度値測定工程と、前記衝撃加速度値測定工程で測定した前記衝撃加速度値がしきい値を満たしているか判定する判定工程と、前記判定工程で測定した前記衝撃加速度値がしきい値を満たしていない場合には、前記路盤に対して前記衝撃加速度値がしきい値を満たすまで転圧を行う再転圧工程とを含み、
前記支持力測定器は、三脚状の脚部と、加速度計を内蔵したランマーとを備え、前記ランマーを地盤に落下させ、その衝突で得られる衝撃加速度値を測定する路盤の品質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路盤の品質を容易に管理することができる路盤の品質管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、路床の上部に形成される路盤の強度を施工現場でリアルタイムに測定する方法としては、主にラジオアイソトープを用いた測定方法(RI測定法)が一般的であり、特許文献1や非特許文献1においてもこのような方法で路盤の強度を測定し、路盤の品質を管理する方法が記載されている。
【0003】
なお、「RI測定法」とは、RI測定器を地表面に設置し、放射線を利用して地中の元素を分析することで地盤の密度や含有量(いわゆる地盤締固度)を計測することをいう。このRI測定法は短時間で行うことができ、測定者による測定差異がほとんどないという利点がある。
【0004】
しかしながら、測定者にとって、RI測定法は、危険な放射性物質を測定に使うため、RI測定器等の管理が厳格で扱いづらく、短時間で行うことができるとはいうものの、地盤の締固め密度を容易に測定することができなかった。
【0005】
また、施工現場での実務においては、原位置で即時的かつ容易に行うことができる測定法がないため、転圧回数のみで管理をされていることが一般的であった。転圧回数は、転圧機械を運転するオペレータに依存し、基盤が軟弱な場所では、所定の転圧回数で地盤を締固めても締固め密度90%以下となってしまうことがあった。これは、特に基盤反力が小さい場所において発生し、このような地盤において締固め密度90%以上とするためには、より多くの転圧回数が必要となるため、転圧回数での地盤の強度管理を確実に行うことは困難であった。
【0006】
ところで、非特許文献1にも記載されている砂置換法による測定法はあるものの、時間がかかるとともに、構造自体を破壊して測定するので手間がかかるという欠点があった。
【0007】
ところで、この他にも路盤の強度を測定し、品質を管理する方法としては「運動場又は道路の路盤造成あるいは建物の敷地造成等において、締固め度及び強度等を測定するため、適数箇所において一定条件下で適数個の金属棒の打込み貫入量を測定する貫入試験を行い、さらにこれらの金属棒を電極とする両極間の電気抵抗値を測定する電気抵抗測定試験を継続して行い、これらの数値を別に実験室における試験結果による検定曲線の許容数値と比較対照してその数値範囲内であれば合格とすることを特徴とする路盤締固めの管理方法」が知られている(特許文献2)。
【0008】
しかしながら、このような路盤締固めの管理方法では、複数の金属棒を貫入してその貫入深さを測定するとともに、その後さらに金属棒を電極とする両極間の電気抵抗値を測定する電気抵抗測定試験を行わなければならず、手間がかかり容易に行うことができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2005-127100号公報
【文献】特開昭63-103117号公報
【文献】財団法人土木研究センター著 「ジオテキスタイルを用いた軟弱路床上舗装の設計・施工マニュアル-路床/路盤分離材としての利用-」 平成21年11月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、路盤を破壊することなく、施工現場で容易かつ即時的に路盤の強度を測定し、路盤の品質を管理することができる路盤の品質管理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の路盤の品質管理方法は、略ハニカム状の路盤補強材に充填物を充填し、転圧して形成した路盤に対して支持力測定器を用いて衝撃加速度値を測定する衝撃加速度値測定工程と、前記衝撃加速度値測定工程で測定した前記衝撃加速度値がしきい値を満たしているか判定する判定工程と、前記判定工程で測定した前記衝撃加速度値がしきい値を満たしていない場合には、前記路盤に対して前記衝撃加速度値がしきい値を満たすまで転圧を行う再転圧工程とを含み、前記支持力測定器は、三脚状の脚部と、加速度計を内蔵したランマーとを備え、前記ランマーを地盤に落下させ、その衝突で得られる衝撃加速度値を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載された各発明においては、現場で路盤を破壊することなく非破壊で衝撃加速度値を測定するのみで健全な品質管理ができる。
(2)支持力測定器を用いて衝撃加速度値を測定することで、現場で締固め密度が所定の密度以上であるか判定することができる。
(3)また、どのような場所であっても試験を行うことができ、原位置に於いて数秒で測定できるので、締固め密度が閾値より低い場合は、再度転圧締固めし不良個所をなくすことができる。
(4)路盤補強材を用いて路盤を形成した場合の締固め密度を数値で定量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1乃至図5は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図1】第1実施形態の路盤の品質管理方法の工程を示すフローチャート。
図2】路盤補強材敷設工程の説明図。
図3】路盤形成工程の説明図。
図4】衝撃加速度値測定工程の説明図。
図5】衝撃加速度値と締固め密度及び含水比の関係を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【0015】
図1乃至図5に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は道路、林道、駐車場等の舗装を行う際に路床2の上部に形成される路盤3の品質を管理する路盤の品質管理方法である。
【0016】
この路盤の品質管理方法1は、図1に示すように、略ハニカム状の路盤補強材4に充填物5を充填し、転圧して形成した路盤3に対して支持力測定器6を用いて衝撃加速度値を測定する衝撃加速度値測定工程7と、前記衝撃加速度値測定工程7で測定した前記衝撃加速度値がしきい値を満たしているか判定する判定工程8と、前記判定工程8で測定した前記衝撃加速度値がしきい値を満たしていない場合には、前記路盤3に対して前記衝撃加速度値がしきい値を満たすまで転圧を行う再転圧工程9とで構成されている。
【0017】
なお、実施形態の支持力測定器6は、例えばいわゆるキャスポルと称される簡易支持力測定器で、三脚状の脚部6aと、加速度計を内蔵したランマー6bと、このランマー6bに接続されたハンドル6cと、ランマー6bの加速度計で測定した加速度を出力するコネクタ及び表示器(図示せず)から構成されている。衝撃加速度値を測定する場合には、図6に示すように、ハンドル6cを上方へ所定の高さまで持ち上げ、その後ランマー6bを自由落下させてランマー6b内蔵の加速度計で衝撃加速度を測定する。
【0018】
また、路盤補強材4の立体的形状は、菱形、四角形、矩形等の多数の枠部が水平方向に隙間なく連続するもので、本発明においてはこれらの形状を略ハニカム状という。また、略ハニカム状とは、ジオセルのような弧状部分を含むような立体図形や、その他立体図形を隙間なく並べたものを言うものである。また、1つのセルと他のセルが必ずしも同一の形状でなくてもよい。
【0019】
路盤3については、例えば、一例として以下のような路盤補強材敷設工程10及び路盤形成工程11を利用して形成するとよい。
【0020】
路盤補強材敷設工程10では、図2に示すように、路床2の上面に、いわゆるジオセルと言われる略ハニカム状の路盤補強材4を敷設する。この路盤補強材4は、高密度ポリエチレン等の高強度樹脂製の帯状のシート材料を垂直に並べ、超音波等により千鳥状に接着して多数の収納部4a(セル)を有するハニカム状の路盤補強材4としたものである。この路盤補強材4は、一般に用いられているジオセルが利用され、その寸法も施工場所によって適宜選択して用いることができる。
【0021】
路盤形成工程11では、図3に示すように、前記路盤補強材4の収納部4a(セル)に土砂等の充填物5を充填し、路盤3を形成する工程である。この路盤補強材4に充填される充填物5としては、土、砂、小石(砕石)、高比重砕石等を用いることができる。なお、本実施形態においては、カーボンニュートラルの観点から母材を再生砕石(RC-40)を用いて敷均し転圧締固めしている。その他に想定される充填物としては、具体的にはクラッシャーランC材、粒度調整砕石M材等も用いることができる。なお、これらの充填物5を用いることが好適であるが、本発明の充填物5が再生砕石(RC-40)、クラッシャーランC材、粒度調整砕石M材のみに限定されるものではない。
【0022】
このように形成した路盤3に対して本発明の品質管理方法1を行う。具体的には衝撃加速度値測定工程7を行い、次に、この衝撃加速度値測定工程7で測定した衝撃加速度値がしきい値を満たしているかを判定する判定工程8を行う。
【0023】
衝撃加速度値測定工程7では、図4に示すように、形成した路盤3に対して100m2程度対して1回、支持力測定器6を用いて衝撃加速度値を測定する。具体的には、加速度計を内蔵したランマーを地盤に落下させ、その衝突で得られる衝撃加速度値を測定する。
【0024】
判定工程8では、衝撃加速度値測定工程7で測定した衝撃加速度値がしきい値を満たしているかを判定する。このしきい値は、路盤補強材4を用いた場合、締固め密度が90%以上であれば路盤補強材4の補強支持力改善効果が得られることから、締固め密度が90%以上となる衝撃加速度値をしきい値としている。
【0025】
なお、衝撃加速度値測定工程7で得られた結果をコンピューター等に出力し、しきい値を記憶したコンピュータープログラム等によって判定の合否を自動的に判定する判定工程8としてもよい。
【0026】
図5には、締固め度締固め密度=90%、締固め密度=92.5%及び締固め密度=95%の場合の路盤の含水比と衝撃加速度値の関係を示す。
【0027】
この図5に示すように、衝撃加速度値(Ia値、インパクト値)は、締固め度締固め密度=90%の場合、衝撃加速度値max=17.6、締固め密度=92.5%の場合、衝撃加速度値max=20.0、締固め密度=95%の場合、衝撃加速度値max=22.5を示した。そのため、衝撃加速度値が17.6以上となれば締固め密度が90%以上となるため、本実施形態においては、衝撃加速度値18以上をしきい値としている。すなわち、本実施形態の判定工程8では衝撃加速度値18以上となった場合には、しきい値を満たしていると判定し、衝撃加速度値18未満となった場合には、しきい値を満たしていないと判定する。
【0028】
ここで、実施工では、転圧時の含水比が締固めに大きく影響することが懸念されるため、含水比の施工時における管理値を設ける必要が考えられる。図5に示すように、締固め密度95%以上である場合、衝撃加速度値が17.6以上となる含水比の下限が8.5%で上限が14.1%であるので、路盤3の含水比を8.5~14.1%となるように管理することが望ましい。なお、実施工においては含水比調整が困難であることが考えられ、施工フローチャートに配慮する必要があった。そこで、含水比14%以下の材料を用いることとし、施工後の衝撃加速度値がしきい値(衝撃加速度値18)以下の場合には、当該箇所に適宜散水を施し、含水比を高めた後に再度転圧を行い規格値以上であることを確認することで、含水比管理とすることができる。
【0029】
このような判定工程8を行い、衝撃加速度値がしきい値を満たしている場合には、次工程(アスファルト乳剤塗布工程15等)に進み、前記判定工程8で測定した前記衝撃加速度値がしきい値を満たしていない場合には、前記路盤3に対して前記衝撃加速度値がしきい値を満たすまで転圧を行う再転圧工程9を行う。再転圧工程9の際には、前述したように散水を施してから転圧してもよい。
【0030】
路盤3の衝撃加速度値がしきい値を満たしている場合には、アスファルト乳剤塗布工程や砕石敷設工程等を行い路面の舗装を完成させる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は路面の舗装の品質管理を行う産業で利用される。
【符号の説明】
【0032】
1:品質管理方法、 2:路床、
3:路盤、 4:路盤補強材、
5:充填物、 6:支持力測定器、
7:衝撃加速度値測定工程、 8:判定工程、
9:再転圧工程、 10: 路盤補強材敷設工程、
11:路盤形成工程。
【要約】
【課題】 路盤を破壊することなく、施工現場で容易かつ即時的に路盤の強度を測定し、路盤の品質を管理することができる路盤の品質管理方法及び舗装方法を提供すること。
【解決手段】略ハニカム状の路盤補強材に充填物を充填し、転圧して形成した路盤に対して支持力測定器を用いて衝撃加速度値を測定する衝撃加速度値測定工程と、前記衝撃加速度値測定工程で測定した前記衝撃加速度値がしきい値を満たしているか判定する判定工程と、前記判定工程で測定した前記衝撃加速度値がしきい値を満たしていない場合には、前記路盤に対して前記衝撃加速度値がしきい値を満たすまで転圧を行う再転圧工程とを含むことを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5