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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】吊り工具及び吊り方法
(51)【国際特許分類】
   B66D 1/54 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
B66D1/54 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021006053
(22)【出願日】2021-01-18
(65)【公開番号】P2022110565
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2023-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】520307713
【氏名又は名称】関西電力送配電株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591083772
【氏名又は名称】株式会社永木精機
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】岡田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】鎌中 祥行
(72)【発明者】
【氏名】野内 秀男
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-065838(JP,A)
【文献】特開2013-067498(JP,A)
【文献】実開平02-147489(JP,U)
【文献】特開平09-315781(JP,A)
【文献】特開2003-312992(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0014949(US,A1)
【文献】米国特許第05507471(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00-3/20;
9/00-11/26;
17/00-17/26
B66D 1/00-5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変成器を吊る吊り工具であって、
断面形状が長方形であり、長手方向の端部に前記変成器を引っ掛けることが可能な第1ベルトと、
断面形状が長方形であり、長手方向の端部に前記変成器を引っ掛けることが可能な第2ベルトと、
前記第1ベルトが通過する第1開口が吊り工具の幅方向一側に形成され、前記第2ベルトが通過する第2開口が吊り工具の幅方向他側に形成されるベルトハウジングと、
を備え、
前記第1ベルトが巻き取られるときに、前記第1ベルトは、1周前に巻かれた前記第1ベルトの外周に重なるように案内され、
前記第2ベルトが巻き取られるときに、前記第2ベルトは、1周前に巻かれた前記第2ベルトの外周に重なるように案内され
前記第1ベルトと前記第2ベルトは同軸で同一方向に巻き取られ、
前記第1ベルトが巻き取られる部分の径と、前記第2ベルトが巻き取られる部分の径と、が等しいことを特徴とする吊り工具。
【請求項2】
請求項1に記載の吊り工具であって、
前記第1ベルト及び前記第2ベルトを巻き取るための駆動力を伝達する、ウォームギアを用いた減速機を備え、
前記減速機の入力軸に、電動回転装置の出力軸を連結可能であることを特徴とする吊り工具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吊り工具であって、
前記吊り工具の幅方向中央部に、前記ベルトハウジングを他の部材に着脱可能に固定するための固定部が配置され、
前記他の部材の上面に接触して転動可能な転動ローラを備えることを特徴とする吊り工具。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の吊り工具であって、
前記第1開口はスリット状に細長く形成され、前記第1開口の長手方向が前記吊り工具の幅方向に沿っており、
前記第2開口はスリット状に細長く形成され、前記第2開口の長手方向が前記吊り工具の幅方向に沿っており、
前記第1開口及び前記第2開口のうち少なくとも何れかは、互いに平行に配置される2つのローラの間の隙間であることを特徴とする吊り工具。
【請求項5】
吊り工具によって変成器を吊る吊り方法であって、
断面形状が長方形である第1ベルトが、吊り工具の幅方向一側に形成される第1開口を通過している状態で、当該第1ベルトの長手方向端部に前記変成器を引っ掛ける第1工程と、
断面形状が長方形である第2ベルトが、吊り工具の幅方向他側に形成される第2開口を通過している状態で、当該第2ベルトの長手方向端部に前記変成器を引っ掛ける第2工程と、
前記第1ベルトと前記第2ベルトを同時に巻き取る第3工程と、
を含み、
前記第3工程で前記第1ベルトが巻き取られるときに、前記第1ベルトは、1周前に巻かれた前記第1ベルトの外周に重なるように案内され、
前記第3工程で前記第2ベルトが巻き取られるときに、前記第2ベルトは、1周前に巻かれた前記第2ベルトの外周に重なるように案内され
前記第1ベルトと前記第2ベルトは同軸で同一方向に巻き取られ、
前記第1ベルトが巻き取られる部分の径と、前記第2ベルトが巻き取られる部分の径と、が等しいことを特徴とする吊り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変成器を吊るための吊り工具及び吊り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、VCTをキュービクルに収納する場合に用いられる重量物吊下器を開示する。この吊下器は、同一直径の一対のドラムから導出した2本のワイヤを使用し、重量物を吊上げ及び吊下ろすことができる。一対のドラムの回転軸は水平かつ平行に離間している。一対のドラムの回転軸には、直径及び歯数が同一の従動ギヤが離間して固定される。従動ギヤには、回転軸と平行で、入力軸から伝達された外力によって回転する駆動軸に固定された駆動ギヤが噛合される。駆動軸と入力軸との間に、セルフロック機能を有するウォームギヤ伝動機構が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-67498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の構成は、ワイヤをドラムに巻き取ることによってVCTを吊り上げる。ドラムにワイヤが綺麗に巻き取られるとは限らないため、2本のワイヤの巻上げに不均衡が生じる可能性がある。また、巻取りの途中において、ドラムの外周でワイヤが他のワイヤへの乗上げを解消する等、ワイヤの挙動が不安定になるおそれもある。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、安定して均衡を保ちながら変成器を吊り上げることが可能な吊り工具及び吊り方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の吊り工具が提供される。即ち、この吊り工具は、変成器を吊る。前記吊り工具は、第1ベルトと、第2ベルトと、ベルトハウジングと、を備える。前記第1ベルトは、断面形状が長方形であり、長手方向の端部に前記変成器を引っ掛けることが可能である。前記第2ベルトは、断面形状が長方形であり、長手方向の端部に前記変成器を引っ掛けることが可能である。前記ベルトハウジングにおいて、前記第1ベルトが通過する第1開口が吊り工具の幅方向一側に形成され、前記第2ベルトが通過する第2開口が吊り工具の幅方向他側に形成される。前記第1ベルトが巻き取られるときに、前記第1ベルトは、1周前に巻かれた前記第1ベルトの外周に重なるように案内される。前記第2ベルトが巻き取られるときに、前記第2ベルトは、1周前に巻かれた前記第2ベルトの外周に重なるように案内される。前記第1ベルトと前記第2ベルトは同軸で同一方向に巻き取られる。前記第1ベルトが巻き取られる部分の径と、前記第2ベルトが巻き取られる部分の径と、が等しい。
【0008】
これにより、第1ベルト及び第2ベルトを、乱れることなくロール状に巻き取ることができる。従って、第1ベルトと第2ベルトとで下端部の高さを安定して揃えながら、変成器を上方へ引き上げることができる。この結果、吊上げの過程等で変成器の姿勢を安定させることができる。第1ベルト及び第2ベルトとして薄いものを用いることで、各ベルトがロール状に巻かれる部分のためのスペースを小型化することができる。
【0009】
前記の吊り工具においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この吊り工具は、前記第1ベルト及び前記第2ベルトを巻き取るための駆動力を伝達する、ウォームギアを用いた減速機を備える。前記減速機の入力軸に、電動回転装置の出力軸を連結可能である。
【0010】
これにより、減速機の入力軸に力が加わらない場合でも、第1ベルト及び第2ベルトの巻取りが解除されるのを、ウォームギアのセルフロック効果によって防止することができる。減速機はウォームギアによって減速比が大きくなっているが、電動回転装置を用いて減速機の入力軸を高速で回転させることで、変成器の吊り作業を効率的に行うことができる。
【0011】
前記の吊り工具においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記吊り工具の幅方向中央部に、前記ベルトハウジングを他の部材に着脱可能に固定するための固定部が配置される。前記吊り工具は、前記他の部材の上面に接触して転動可能な転動ローラを備える。
【0012】
これにより、固定部での固定を解除した場合に、転動ローラの転がりを利用して、吊り工具を他の部材の上で容易に移動させることができる。従って、吊り工具の位置の変更が容易である。
【0013】
前記の吊り工具においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第1開口はスリット状に細長く形成され、前記第1開口の長手方向が前記吊り工具の幅方向に沿っている。前記第2開口はスリット状に細長く形成され、前記第2開口の長手方向が前記吊り工具の幅方向に沿っている。前記第1開口及び前記第2開口のうち少なくとも何れかは、互いに平行に配置される2つのローラの間の隙間である。
【0014】
これにより、第1ベルト及び第2ベルトの厚み方向を、開口のスリット形状によって適切に揃えることができる。第1ベルト及び第2ベルトのうち開口から下方へ引き出された部分の向きを、吊り工具の幅方向に垂直かつ地面に垂直な平面内で、容易に変更することができる。第1ベルト又は第2ベルトが、開口をスムーズに通過することができる。
【0015】
本発明の第2の観点によれば、以下の吊り方法が提供される。即ち、吊り工具によって変成器を吊る。吊り方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、を含む。前記第1工程では、断面形状が長方形である第1ベルトが、吊り工具の幅方向一側に形成される第1開口を通過している状態で、当該第1ベルトの長手方向端部に前記変成器を引っ掛ける。前記第2工程では、断面形状が長方形である第2ベルトが、吊り工具の幅方向他側に形成される第2開口を通過している状態で、当該第2ベルトの長手方向端部に前記変成器を引っ掛ける。前記第3工程では、前記第1ベルトと前記第2ベルトを同時に巻き取る。前記第3工程で前記第1ベルトが巻き取られるときに、前記第1ベルトは、1周前に巻かれた前記第1ベルトの外周に重なるように案内される。前記第3工程で前記第2ベルトが巻き取られるときに、前記第2ベルトは、1周前に巻かれた前記第2ベルトの外周に重なるように案内される。前記第1ベルトと前記第2ベルトは同軸で同一方向に巻き取られる。前記第1ベルトが巻き取られる部分の径と、前記第2ベルトが巻き取られる部分の径と、が等しい。
【0016】
これにより、第1ベルト及び第2ベルトを、乱れることなくロール状に巻き取ることができる。従って、第1ベルトと第2ベルトとで下端部の高さを安定して揃えながら、変性器を上方へ引き上げることができる。この結果、吊上げの過程等で変成器の姿勢を安定させることができる。第1ベルト及び第2ベルトとして薄いものを用いることで、各ベルトがロール状に巻かれる部分のためのスペースを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る吊り工具の全体的な構成を示す斜視図。
図2】キュービクル内に設置されたVCTを示す斜視図。
図3】吊り工具を図1とは異なる視点で見た斜視図。
図4】第1開口の構成を詳細に示す拡大斜視図。
図5】VCTを吊り上げる直前の状態を示す斜視図。
図6】リングプレートの周辺の構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る吊り工具1の全体的な構成を示す斜視図である。図2は、キュービクル81内に設置されたVCT71を示す斜視図である。図3は、吊り工具1を図1とは異なる視点で見た斜視図である。
【0019】
図1に示す吊り工具1は、図2に示すVCT71をキュービクル81内に収容して取り付けるために用いられる。VCTは、電力需給用計器用変成器の略称である。図2には、キュービクル81内にVCT71が取り付けられた様子が示されている。
【0020】
キュービクル81には、各種の受電設備が収容される。キュービクル81の内部では、発電所等から供給される高い電圧(例えば、6600V)の電気が、より低い電圧(例えば、100V又は200V)となるように変圧される。
【0021】
キュービクル81は、金属製の筐体82を備える。筐体82は直方体状に形成されている。筐体82のうち、地面に対して垂直な面の1つに、大きな開口83が形成されている。筐体82の内部空間は、開口83を通じて外部に開放される。この開口83を介して、VCT71が筐体82の内部に搬入/搬出される。
【0022】
筐体82には、扉84が回転可能に支持されている。図2においては、筐体82の内部を分かり易く示すため、扉84は透視的に鎖線で描かれている。扉84は、開口83を開閉することができる。扉84を開けることで、開口83を露出させることができる。
【0023】
以下では、キュービクル81において、上述の開口83が形成される側を前と呼び、反対側を後と呼ぶ。平面視で、キュービクル81の前後方向に垂直となる方向を左右方向と呼ぶ。VCT71において、キュービクル81内に収容された状態で開口83に近い側を前と呼び、反対側を後と呼ぶ。平面視で、VCT71の前後方向に垂直となる方向を左右方向と呼ぶ。
【0024】
キュービクル81の内部空間の上方には、VCT71を吊り下げて支持するための吊下ビーム85が設けられている。吊下ビーム85は直線状に細長く形成されている。吊下ビーム85は、前後方向に向けて水平に配置されている。吊下ビーム85と、開口83の上縁部と、の間には、上下方向の隙間が形成されている。吊下ビーム85は、例えば溝形鋼により構成することができるが、これに限定されない。
【0025】
筐体82の前側上部と後側上部には、それぞれ支持ビーム86が固定されている。それぞれの支持ビーム86は直線状に細長く形成されている。支持ビーム86は、左右方向に向けて水平に配置されている。吊下ビーム85の前端部と後端部が、支持ビーム86に連結される。
【0026】
VCT71は、計器のために電力を変成する装置である。VCT71の構成は公知なので詳細な説明を省略するが、VCT71は、計器用変流器と計器用変圧器を1つのハウジングに収容した構成となっている。VCT71は、使用電力量の計測のために用いられる。得られた電力量に基づいて、電気料金が計算される。
【0027】
VCT71の前面と後面のそれぞれには、取付ボス72が2つずつ設けられる。取付ボス72のそれぞれは、VCT71のハウジングから前後方向に突出するように形成される。この取付ボス72には、吊り部材73を固定することができる。吊り部材73は、支持プレート、ボルト及びナットを利用した公知の構成である。キュービクル81の内部で、VCT71は、吊下ビーム85に対して吊り部材73を用いて支持される。
【0028】
VCT71をキュービクル81内に搬入する場合、又は、VCT71をキュービクル81から搬出する場合に、図1に示す吊り工具1によってVCT71が吊り下げられる。この吊下げのために、VCT71の左右両側には、それぞれフック74が設けられている。それぞれのフック74は、左右外向きに突出するように配置されている。フック74の先端は、下向き又は斜め下向きとなっている。
【0029】
次に、吊り工具1について詳細に説明する。図1に示す吊り工具1は、前述のキュービクル81の内部において、吊下ビーム85の上側に跨るように装着される。
【0030】
吊り工具1は、ベルトハウジング5と、第1ベルト6と、第2ベルト7と、巻取ドラム31と、減速機32と、を備える。
【0031】
ベルトハウジング5は、概ね水平な方向に細長く構成されている。以下、ベルトハウジング5が延びる方向を、吊り工具1の幅方向と呼ぶことがある。吊り工具1を吊下ビーム85に取り付けた状態で、吊り工具1の幅方向は、キュービクル81及びVCT71の左右方向に対応する。
【0032】
ベルトハウジング5には、第1ベルト6及び第2ベルト7が収容されている。第1ベルト6は、吊り工具1の幅方向一端部から、下に向かって延びている。第2ベルト7は、吊り工具1の幅方向他端部から、下に向かって延びている。
【0033】
第1ベルト6及び第2ベルト7は、何れも平ベルトとして構成されている。言い換えれば、第1ベルト6及び第2ベルト7を長手方向に垂直な平面で切った断面形状は、長辺と短辺とを有する長方形である。第1ベルト6及び第2ベルト7は、良好な可撓性を有する。第1ベルト6及び第2ベルト7は、例えば合成繊維からなるベルトとすると、吊り工具1の軽量化のために有利である。ただし、第1ベルト6及び第2ベルト7の材料は任意である。第1ベルト6と第2ベルト7とで、幅、厚み及び材料が同じであることが好ましい。
【0034】
第1ベルト6及び第2ベルト7のそれぞれの下端部には、リングプレート(引掛部材)41が設けられている。それぞれのリングプレート41は、上下方向の回転軸を有するスイベル金具(回転部材)42を介して、第1ベルト6又は第2ベルト7の下端部に連結されている。
【0035】
リングプレート41には、貫通状の吊り孔43が形成されている。この吊り孔43には、VCT71に設けられているフック74を引っ掛けることができる。
【0036】
ベルトハウジング5は、第1板11と、第2板12と、第3板13と、第1天板18と、第2天板19と、を備える。
【0037】
第1板11、第2板12及び第1天板18は、吊り工具1の幅方向に細長く形成されている。第2板12は、第1板11との間で水平方向の適宜の間隔を形成するように配置されている。この間隔は、第1ベルト6のベルト幅よりも少し大きい。第1板11と第2板12とに挟まれた内部空間を、図3に示すように第1ベルト6が通過している。図3においては、第1ベルト6及び第2ベルト7を分かり易く示すために、ベルトハウジング5及び減速機32等が鎖線で透視的に示されている。
【0038】
第1板11の上端部及び第2板12の上端部には、第1天板18が固定されている。第1天板18は、第1板11と第2板12とを互いに連結する。
【0039】
第1板11と第2板12とに挟まれた内部空間は、吊り工具1の幅方向一端部において、下方を向く第1開口16を形成している。第1ベルト6は、この第1開口16を上下方向に通過する。
【0040】
第3板13は、吊り工具1の幅方向で、第1開口16から遠い側に配置されている。第3板13は、第2板12との間で水平方向の適宜の間隔を形成するように配置されている。この間隔は、第2ベルト7のベルト幅よりも少し大きい。第2板12と第3板13とに挟まれた内部空間を、図3に示すように第2ベルト7が通過している。
【0041】
第1板11の上端部、第2板12の上端部及び第3板13の上端部には、第2天板19が固定されている。第2天板19は、第1板11、第2板12、及び第3板13を互いに連結する。
【0042】
第2板12と第3板13とに挟まれた内部空間は、吊り工具1の幅方向で第1開口16から遠い側の端部において、下方を向く第2開口17を形成している。第2ベルト7は、この第2開口17を上下方向に通過する。
【0043】
ベルトハウジング5の長手方向中央の下部には、クランプ部(固定部)21が配置されている。クランプ部21は、下方が開放された逆向きU字状に形成されている。クランプ部21の内部空間には、前述の吊下ビーム85を差し込むことができる。クランプ部21に吊下ビーム85を差し込んだ状態で、ベルトハウジング5は吊下ビーム85に対して平面視で垂直である。
【0044】
クランプ部21は、側板22と、天板23と、を備える。側板22は、互いに対向するように1対で配置されている。それぞれの側板22の上端部には、天板23が固定されている。天板23は、1対の側板22を互いに連結する。
【0045】
クランプ部21は、図3に示すように、互いに対向して配置される2対のネジ式クランプ25を備える。ネジ式クランプ25は、ネジ送りのためのネジ軸を備える。ネジ軸は、ベルトハウジング5の長手方向と平行に配置されている。ネジ軸は、側板22を貫通するように配置される。ネジ軸において、クランプ部21の内部空間に位置する端部には、ネジ軸よりも大径に形成されたパッド26が取り付けられている。ネジ軸において、パッド26と反対側の端部には、ノブ27が固定されている。4つのネジ式クランプ25が備えるノブ27を掴んで回転させることで、吊下ビーム85を、吊り工具1の幅方向で挟み込むようにして固定することができる。
【0046】
クランプ部21の内部空間には、図3に示すように、2つの転動ローラ29が回転可能に支持されている。転動ローラ29は、ベルトハウジング5の長手方向と平行に配置されている。転動ローラ29は、ネジ式クランプ25よりも高い位置に配置されている。吊り工具1を吊下ビーム85に跨るように載せたとき、転動ローラ29は、吊下ビーム85の上面に接触する。ネジ式クランプ25のクランプを解除した状態では、転動ローラ29が吊下ビーム85の上面を転がることで、吊り工具1を吊下ビーム85の長手方向に沿って容易に移動させることができる。
【0047】
巻取ドラム31は、第1板11、第2板12及び第3板13を貫くように配置されている。巻取ドラム31は円柱状に形成されている。巻取ドラム31の軸は、平面視で、吊り工具1の幅方向(言い換えれば、ベルトハウジング5の長手方向)と垂直な方向を向いている。図3に示すように、巻取ドラム31は、減速機32が備える出力軸35に固定されている。巻取ドラム31は、回転することで、その外周面に第1ベルト6及び第2ベルト7を同時に巻き取ることができる。第1ベルト6が巻かれる部分と、第2ベルト7が巻かれる部分とで、巻取ドラム31の径は等しい。
【0048】
以下、巻取ドラム31の回転軸を巻取軸と呼ぶことがある。巻取軸の位置は、ベルトハウジング5の長手方向中央よりも、第1開口16から遠い側に偏っている。また、詳細は後述するが、巻取ドラム31から第1開口16まで第1ベルト6が導かれる経路は、クランプ部21の上方を迂回するように適宜屈曲される。従って、巻取ドラム31から第2開口17に至るまでに第2ベルト7が通る経路長よりも、巻取ドラム31から第1開口16に至るまでに第1ベルト6が通る経路長の方が長い。この経路長の差を考慮して、第1ベルト6は、第2ベルト7よりも長くなっている。従って、図1等に示すように、第1ベルト6の下端と第2ベルト7の下端とで高さが同一となっている。
【0049】
第1ベルト6及び第2ベルト7の巻取軸は、吊り工具1の幅方向中央に配置されるクランプ部21に対して、吊り工具1の幅方向一側に偏って配置されている。これにより、巻取ドラム31等とクランプ部21との干渉を回避できるので、吊り工具1の上下方向でのコンパクト化を実現できる。
【0050】
第1板11と第2板12の間には、第1ガイドローラ51と、第2ガイドローラ52と、が配置されている。第1ガイドローラ51及び第2ガイドローラ52は、巻取軸と平行な軸を中心として回転可能に支持されている。第1ガイドローラ51及び第2ガイドローラ52は、巻取ドラム31から第1開口16に至る第1ベルト6の経路の屈曲部分に配置される。第1ガイドローラ51及び第2ガイドローラ52により、第1ベルト6がクランプ部21の上方を通過するように案内することができる。
【0051】
巻取ドラム31の近傍において、第1ベルト6は、第1板11と第2板12とが対面する方向に、ベルト幅の方向が沿うように向けられる。第1板11と第2板12の間隔は、第1ベルト6のベルト幅の1倍以上2倍未満、例えば1.3倍程度となっている。従って、巻取ドラム31の回転に伴って第1ベルト6が巻取ドラム31に巻き取られるときに、第1ベルト6は常に、1周前に巻かれた第1ベルト6の外周に重なるように案内される。この案内は、第1板11及び第2板12が第1ベルト6の幅方向端部に接触することにより実現される。
【0052】
上記と同様に、巻取ドラム31の回転に伴って第2ベルト7が巻取ドラム31に巻き取られるときも、第2ベルト7は常に、1周前に巻かれた第2ベルト7の外周に重なるように、第2板12と第3板13により案内される。この案内は、第2板12及び第3板13が第2ベルト7の幅方向端部に接触することにより実現される。
【0053】
従って、第1ベルト6及び第2ベルト7は、巻取ドラム31の外周面に、ロール状に整然と巻かれることになる。以下、第1ベルト6がロール状に重なって巻かれた部分を第1ベルトロール6rと呼び、第2ベルト7がロール状に重なって巻かれた部分を第2ベルトロール7rと呼ぶことがある。巻取りが進むにつれて、第1ベルトロール6r及び第2ベルトロール7rは径を増加させていく。第1ベルト6及び第2ベルト7が巻取ドラム31の外周に巻かれる挙動が安定しているので、ロール部分の径の増加も安定的である。従って、第1ベルト6及び第2ベルト7の間で引上げの不均衡が生じることを抑制できる。
【0054】
第1ベルト6及び第2ベルト7の巻取軸は、平面視で、吊り工具1の幅方向と垂直な方向に向けられている。従って、第1ベルトロール6r及び第2ベルトロール7rを前後方向でコンパクトな空間に配置することができる。この結果、吊り工具1を特に前後方向でコンパクトに構成することができる。
【0055】
減速機32は、ハウジング33と、入力軸34と、出力軸35と、を備える。ハウジング33は、第1板11の厚み方向で、第2板12及び第3板13とは反対側の面に固定されている。
【0056】
減速機32の入力軸34は、ハウジング33から、吊り工具1の幅方向外側へ突出している。出力軸35は、図3に示すように、ハウジング33から、巻取軸に沿う向きで第1板11を厚み方向に貫通するように突出している。
【0057】
入力軸34には、バッテリーにより駆動される電動回転装置(例えば、電動工具としての電動ドライバー)の出力軸を、図示しないフレキシブルシャフトを介して連結することができる。電動回転装置の回転を入力軸34に伝達することで、巻取ドラム31を回転させることができる。ただし、入力軸34を駆動する方法は上記に限定されない。
【0058】
図示しないが、ハウジング33の内部には、ウォームギアからなる減速機構が配置されている。入力軸34を回転させると、この回転が減速機構によって減速されて出力軸35に伝達される。
【0059】
次に、図4を参照して、第1開口16について詳細に説明する。
【0060】
吊り工具1の幅方向一端の下部において、第1板11と第2板12の間には、1対の開口ローラ(ローラ)55が回転可能に支持されている。それぞれの開口ローラ55は、その軸方向が、吊り工具1の幅方向(言い換えれば、ベルトハウジング5の長手方向)と平行となるように配置されている。2つの開口ローラ55の間に、前述の第1開口16が形成されている。第1開口16は、スリット状に形成されている。このスリットの幅は、第1ベルト6の厚みよりも少し大きい。
【0061】
第1開口16のスリットの長手方向は、吊り工具1の幅方向に沿うように向けられている。これにより、第1ベルト6のベルト幅方向が吊り工具1の幅方向と平行となる状態で、第1ベルト6を第1開口16から下方へ引き出すことができる。
【0062】
平面視で、第2ガイドローラ52の軸方向は、吊り工具1の幅方向に垂直である。一方、第1開口16のスリットの長手方向は、吊り工具1の幅方向に平行である。従って、第2ガイドローラ52と第1開口16との間で、第1ベルト6は90°捻られる。
【0063】
第1開口16は、回転可能な2つの開口ローラ55の間に形成されている。従って、上記のように第1ベルト6が捻られるにもかかわらず、開口ローラ55が適宜回転することによって、第1ベルト6が第1開口16を円滑に走行することができる。
【0064】
第1開口16のスリットの長手方向における寸法は、第1ベルト6のベルト幅に対して十分に大きい。従って、第1ベルト6が第1開口16を通過して引き出される向きを、吊り工具1の幅方向に平行かつ地面に垂直な平面内で、図1の矢印Aのように柔軟に変更することができる。また、第1ベルト6が開口ローラ55の外周面に沿うように撓むことで、第1ベルト6が下方へ引き出される向きを、吊り工具1の幅方向に垂直かつ地面に垂直な平面内で、図1の矢印Bのように変更することも容易である。
【0065】
このように、本実施形態の構成によれば、第1ベルト6が吊り工具1から引き出される向きを実質的に無指向的に変更することができる。従って、フック74と吊り工具1との位置関係の変化に対して柔軟に対応しながら、VCT71を吊ることができる。
【0066】
図4に示すように、第1板11と第2板12との間には、第1支持板56と、第2支持板57と、が配置されている。2つの開口ローラ55は、第1支持板56及び第2支持板57によって、回転可能に支持されている。第2支持板57は、第1板11及び第2板12に対して着脱可能に構成されている。第2支持板57を取り外すことで、開口ローラ55を容易に交換することができる。
【0067】
詳細な説明は省略するが、第2ベルト7に関しても同様に、2つの開口ローラ55の間にスリット状の第2開口17が形成されている。第2開口17の構成は第1開口16と実質的に同一である。第2ベルトロール7rと第2開口17との間で、第2ベルト7は90°捻られる。従って、第2ベルト7が吊り工具1が引き出される向きについても、実質的に無指向的に変更することができる。
【0068】
次に、それぞれのリングプレート41に取り付けられる外れ止め機構61について説明する。
【0069】
図1等に示すように、リングプレート41の厚み方向一側の面には、1対のブラケット62が固定される。ブラケット62の先端同士を繋ぐように、支軸63が設けられている。ブラケット62には、吸着部材64が取り付けられる。吸着部材64は、支軸63を中心として回転可能である。
【0070】
吸着部材64は、先端が曲げられたJ字状の細長いプレートである。吸着部材64の上端部が、支軸63を介して支持されている。吸着部材64の先端には、第1磁石66が固定されている。第1磁石66は、VCT71が備える金属製のハウジングのうち、フック74の下方の部分に吸着することができる。
【0071】
吸着部材64の長手方向中途部には、第2磁石67が固定されている。吸着部材64を上方へ回転させた姿勢とすることで、第2磁石67は、リングプレート41の上側に位置する金属製のスイベル金具42に吸着することができる。
【0072】
次に、吊り工具1を用いてVCT71をキュービクル81の内部に搬入する作業について、図5を参照して説明する。
【0073】
最初に、作業者は、吊下ビーム85に吊り工具1を装着し、クランプ部21を締め付けることで固定する。このとき、吊り工具1は、吊下ビーム85の前端側に配置される。また、第1ベルト6及び第2ベルト7は、吊り工具1から十分に下方に引き出された状態となっている。
【0074】
吊り工具1は上下方向にコンパクトに構成されているため、支持ビーム86及び吊下ビーム85の上方の空間に、吊り工具1を容易に差し込んで設置することができる。
【0075】
次に、作業者は、VCT71を、キュービクル81の開口83の手前側に載置する。
【0076】
続いて、作業者は、第1ベルト6及び第2ベルト7の下端に位置するリングプレート41のそれぞれを、VCT71の左右のフック74に引っ掛ける。この状態では、図5に示すように、第1ベルト6及び第2ベルト7は、上方となるに従って筐体82の内部空間に入り込むように傾斜している。
【0077】
フック74がリングプレート41の吊り孔43に対して差し込まれる方向は、リングプレート41からブラケット62が突出する方向と一致するように、作業者はリングプレート41の向きを予め調整しておく。フック74がリングプレート41に引っ掛けられるとき、吸着部材64は図6の鎖線に示すように上方に跳ね上げられ、第2磁石67がスイベル金具42に吸着した状態となっている。従って、フック74をリングプレート41に引っ掛けるときに吸着部材64が邪魔にならない状態を維持することができ、作業性が良好である。
【0078】
フック74をリングプレート41に対して引っ掛けた後、作業者は吸着部材64を下方へ回転させる。これにより、第1磁石66がVCT71のハウジングに吸着する。この状態では、リングプレート41の左右外側への移動が、吸着部材64によって阻止される。この結果、リングプレート41がフック74から意図せず外れてしまうことを防止できる。
【0079】
この状態で、作業者は、吊り工具1の入力軸34を適宜の方法で駆動し、第1ベルト6及び第2ベルト7を引き上げる。VCT71は第1ベルト6及び第2ベルト7によって図5のように斜め上方に引っ張られるが、VCT71の位置及び姿勢が不安定にならないように、作業者は補助を適宜行う。
【0080】
吊り工具1は前後方向にコンパクトに構成されているので、キュービクル81の吊下ビーム85に対して、吊り工具1をより前端側に寄せて配置することができる。この結果、図5で示す第1ベルト6及び第2ベルト7が垂直に近い向きとなるので、VCT71の姿勢等が不安定になりにくい。
【0081】
十分な高さまでVCT71が吊り上げられると、作業者は、吊り工具1のクランプ部21を緩める。次に、作業者は、図5の白抜き矢印で示すように、吊り工具1を吊下ビーム85の長手方向に沿って後方へ押し込む。これにより、VCT71を、筐体82内の所望の位置まで移動させることができる。吊り工具1とともにVCT71を移動させた後、作業者は吊り工具1のクランプ部21を再び締め付ける。
【0082】
作業者は、吊り部材73を用いて、VCT71を吊下ビーム85に対して固定する。次に、作業者は、吸着部材64を上方に回転させて外れ止めを解除し、この状態で、フック74からリングプレート41を外す。更に、作業者は、吊下ビーム85から吊り工具1を取り外す。以上により、図2のように、キュービクル81内にVCT71を設置した状態とすることができる。
【0083】
以上に説明したように、本実施形態の吊り工具1は、VCT71を吊る。吊り工具1は、第1ベルト6と、第2ベルト7と、ベルトハウジング5と、を備える。第1ベルト6は、断面形状が長方形であり、長手方向の端部にVCT71を引っ掛けることが可能である。第2ベルト7は、断面形状が長方形であり、長手方向の端部にVCT71を引っ掛けることが可能である。ベルトハウジング5において、第1ベルト6が通過する第1開口16が吊り工具1の幅方向一側に形成され、第2ベルト7が通過する第2開口17が吊り工具1の幅方向他側に形成される。第1ベルト6が巻き取られるときに、第1ベルト6は、1周前に巻かれた第1ベルト6の外周に重なるように案内される。第2ベルト7が巻き取られるときに、第2ベルト7は、1周前に巻かれた第2ベルト7の外周に重なるように案内される。
【0084】
これにより、第1ベルト6及び第2ベルト7を、乱れることなくロール状に巻き取ることができる。従って、第1ベルト6と第2ベルト7とで下端部の高さを安定して揃えながら、VCT71を上方へ引き上げることができる。この結果、吊上げの過程等でVCT71の姿勢を安定させることができる。第1ベルト6及び第2ベルト7として薄いものを用いることで、第1ベルトロール6r及び第2ベルトロール7rのためのスペースを小型化することができる。
【0085】
本実施形態の吊り工具1は、ウォームギアを用いた減速機32を備える。減速機32は、第1ベルト6及び第2ベルト7を巻き取るための駆動力を伝達する。減速機32の入力軸34に、電動回転装置の出力軸を連結可能である。
【0086】
これにより、減速機32の入力軸34に力が加わらない場合でも、巻取ドラム31が意に反して巻取り解除方向に回転するのを、ウォームギアのセルフロック効果によって防止することができる。減速機32はウォームギアによって減速比が大きくなっているが、電動回転装置を用いて入力軸34を高速で回転させることで、VCT71の吊り作業を効率的に行うことができる。
【0087】
本実施形態の吊り工具1において、第1ベルト6及び第2ベルト7の巻取軸は同軸である。
【0088】
これにより、吊り工具1の簡素な構成を実現することができる。
【0089】
本実施形態の吊り工具1において、平面視で、第1ベルト6及び第2ベルト7の巻取軸は、吊り工具1の幅方向と垂直な方向に向けられている。
【0090】
これにより、吊り工具1の小型化が容易になる。
【0091】
本実施形態の吊り工具1の幅方向中央部には、ベルトハウジング5をキュービクル81の吊下ビーム85に対して着脱可能に固定するためのクランプ部21が配置される。吊り工具1は、吊下ビーム85の上面に接触して転動可能な転動ローラ29を備える。
【0092】
これにより、クランプ部21での固定を解除した場合に、転動ローラ29の転がりを利用して、吊り工具1を吊下ビーム85の上で容易に移動させることができる。従って、吊り工具1の位置の変更が容易である。
【0093】
本実施形態の吊り工具1において、第1ベルト6の巻取軸は、クランプ部21よりも吊り工具1の幅方向で偏った位置に配置される。第2ベルト7の巻取軸は、クランプ部21よりも吊り工具1の幅方向で偏った位置に配置される。
【0094】
これにより、吊り工具1の特に上下方向での小型化が容易になる。
【0095】
本実施形態の吊り工具1において、第1開口16はスリット状に細長く形成され、第1開口16の長手方向が吊り工具1の幅方向に沿っている。第2開口17はスリット状に細長く形成され、第2開口17の長手方向が吊り工具1の幅方向に沿っている。第1開口16及び第2開口17は、互いに平行に配置される2つの開口ローラ55の間の隙間である。
【0096】
これにより、第1ベルト6及び第2ベルト7の厚み方向を、開口のスリット形状によって適切に揃えることができる。第1ベルト6及び第2ベルト7のうち開口から下方へ引き出された部分の向きを、吊り工具1の幅方向に垂直かつ地面に垂直な平面内で、容易に変更することができる。また、第1ベルト6が第1開口16をスムーズに通過することができる。第2ベルト7が第2開口17をスムーズに通過することができる。
【0097】
本実施形態の吊り工具1において、第1ベルトロール6rと、第1開口16と、の間で、第1ベルト6が90°捻られる。第2ベルトロール7rと、第2開口17と、の間で、第2ベルト7が90°捻られる。
【0098】
これにより、第1ベルト6及び第2ベルト7が捻り部分を有しているので、経路の柔軟なレイアウトが可能になる。
【0099】
本実施形態の吊り工具1において、第1ベルト6及び第2ベルト7の下端には、スイベル金具42が設けられる。第1ベルト6を下に垂らした状態で、第1ベルト6のスイベル金具42はリングプレート41を、第1ベルト6に対して、上下方向の軸まわりに回転可能に支持する。第2ベルト7のスイベル金具42も同様である。
【0100】
これにより、リングプレート41の向きを変更できるので、フック74をリングプレート41に引っ掛け易くなる。また、第1ベルト6及び第2ベルト7に捻れが生じていても、フック74をリングプレート41に引っ掛けた状態で、その捻れを解消することができる。
【0101】
本実施形態の吊り工具1において、VCT71を引っ掛ける部分の外れ止めを行う外れ止め機構61が、第1ベルト6及び第2ベルト7のそれぞれに設けられる。それぞれの外れ止め機構61は、第1磁石66を備える。
【0102】
これにより、VCT71の落下を、第1磁石66の吸着作用を用いて確実に防止できる。
【0103】
本実施形態では、以下に示す方法で、吊り工具1によってVCT71を吊る。第1工程では、断面形状が長方形である第1ベルト6が、吊り工具1の幅方向一側に形成される第1開口16を通過している状態で、第1ベルト6の長手方向端部にVCT71を引っ掛ける。第2工程では、断面形状が長方形である第2ベルト7が、吊り工具1の幅方向他側に形成される第2開口17を通過している状態で、第2ベルト7の長手方向端部にVCT71を引っ掛ける。第3工程では、第1ベルト6と第2ベルト7を同時に巻き取る。第3工程で第1ベルト6が巻き取られるときに、第1ベルト6は、1周前に巻かれた第1ベルト6の外周に重なるように案内される。第3工程で第2ベルト7が巻き取られるときに、第2ベルト7は、1周前に巻かれた第2ベルト7の外周に重なるように案内される。
【0104】
これにより、第1ベルト6及び第2ベルト7を、乱れることなくロール状に巻き取ることができる。従って、第1ベルト6と第2ベルト7とで下端部の高さを安定して揃えながら、VCT71を上方へ引き上げることができる。この結果、吊上げの過程等でVCT71の姿勢を安定させることができる。第1ベルト6及び第2ベルト7として薄いものを用いることで、第1ベルトロール6r及び第2ベルトロール7rのためのスペースを小型化することができる。
【0105】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0106】
第1ベルト6が巻取ドラム31に巻き取られるとき、第1板11及び第2板12とは異なる部材で案内されるように構成することができる。第2ベルト7が巻取ドラム31に巻き取られるとき、第2板12及び第3板13とは異なる部材で案内されるように構成することができる。例えば、巻取ドラム31に1対のフランジ部を形成し、このフランジ部が第1ベルト6又は第2ベルト7を案内するように構成することができる。
【0107】
第1ベルト6と第2ベルト7とが、互いに別の部材に巻き取られても良い。第1ベルト6と第2ベルト7とで、巻取軸が同軸でなくても良い。第1ベルト6及び第2ベルト7のうち少なくとも一方において、巻取軸が吊り工具1の幅方向に平行であっても良い。
【0108】
第1ベルト6と第2ベルト7の巻取軸が、クランプ部21の真上に配置されても良い。
【0109】
第1開口16及び第2開口17のうち少なくとも何れかにおいて、その長手方向が、吊り工具1の幅方向に垂直であっても良い。第1開口16及び第2開口17のうち少なくとも何れかが、スリット状に形成されなくても良い。
【0110】
第1開口16及び第2開口17に設けられている開口ローラ55を省略することができる。
【0111】
第1ベルト6及び第2ベルト7が捻り部分を形成しないように構成することもできる。
【0112】
スイベル金具42は、省略することもできる。
【0113】
図1に示すように、吊り工具1の幅方向中央を示す目印M1が表示されていることが好ましい。目印M1によって、吊下ビーム85の中心と吊り工具1の中心を一致させる調整が容易になる。この目印M1は、例えば第1板11及び天板23に塗装を行うことで実現することができる。塗装に限定されず、例えば、第1板11に溝を形成することで目印M1とすることもできる。目印M1は省略することもできる。
【0114】
ベルトハウジング5を構成する第1板11、第2板12、第3板13、第1天板18、及び第2天板19等には、複数の貫通孔が形成されている。これにより、吊り工具1の軽量化を図ることができる。また、ベルトハウジング5に収容される第1ベルト6及び第2ベルト7を、外部から貫通孔を介して視認することができる。ただし、この貫通孔は省略することもできる。
【0115】
減速機32において入力軸34がハウジング33から突出する方向は任意であり、例えば前後方向となるように変更することもできる。
【0116】
減速機32の入力軸34に対して、電動ドライバー等の出力軸に代えて、電動モータの出力軸を直接連結可能に構成することもできる。
【0117】
外れ止め機構61は、省略することもできる。
【符号の説明】
【0118】
1 吊り工具
6 第1ベルト
7 第2ベルト
16 第1開口
17 第2開口
21 クランプ部(固定部)
29 ローラ
42 スイベル金具(回転部材)
71 VCT(変成器)
81 キュービクル
図1
図2
図3
図4
図5
図6