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特許7546270検査支援装置、検査支援方法および検査支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】検査支援装置、検査支援方法および検査支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/045 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
A61B1/045 618
A61B1/045 622
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020158885
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052467
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】517380422
【氏名又は名称】株式会社AIメディカルサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】井元 裕也
(72)【発明者】
【氏名】渕田 信一
【審査官】後藤 昌夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/059098(WO,A1)
【文献】特開2006-246110(JP,A)
【文献】国際公開第2013/080245(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/088688(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/071678(WO,A1)
【文献】岩岡 直樹 Naoki Iwaoka,大腸NBI内視鏡画像のポリープ領域分割のための計算コストと認識率の評価 Trade-off Analysis for Polyp Segmentation of NBI Images,SSII2011 第17回 画像センシングシンポジウム講演論文集 [CD-ROM] 17th Symposium on Sensing via Image Information,日本,画像センシング技術研究会
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の体内に挿通されるカメラユニットを備える内視鏡システムに接続して利用される検査支援装置であって、
前記内視鏡システムが外部装置へ提供する、前記カメラユニットで撮像された撮像画像を表す画像領域とその他の領域とを含む表示画像に対応する画像信号を逐次取得する取得部と、
前記画像信号から逐次生成されるフレーム画像に対して前後するフレーム画像間の差分を検出する検出部と、
前記検出部が検出した差分の差分量が基準量以上となる変化領域に基づいて、前記画像領域を確定する確定部と
を備える検査支援装置。
【請求項2】
前記確定部は、前記変化領域に内接する矩形として前記画像領域を決定する請求項1に記載の検査支援装置。
【請求項3】
前記フレーム画像から前記確定部が確定した前記画像領域が切り出されて生成された診断画像を学習済みモデルへ入力することにより前記体内の診断を行う診断部を備え、
前記確定部は、前記学習済みモデルへ入力する画像に要求されるアスペクト比に基づいて前記画像領域を確定する請求項1または2に記載の検査支援装置。
【請求項4】
前記確定部は、前記フレーム画像を表示する表示モニタに、前記画像領域の候補となる領域候補が視認できるように指標を重畳させ、使用者から承諾の指示を受け付けた場合に前記領域候補を前記画像領域として確定する請求項1から3のいずれか1項に記載の検査支援装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記確定部が前記画像領域を確定した後もフレーム画像間の差分の検出を継続し、
前記確定部は、前記変化領域に基づいて前記画像領域を更新する請求項1から4のいずれか1項に記載の検査支援装置。
【請求項6】
前記確定部は、被検者の口腔に前記カメラユニットが挿入されたことが検知された後は前記画像領域の更新を停止する請求項5に記載の検査支援装置。
【請求項7】
被検者の体内に挿通されるカメラユニットを備える内視鏡システムに接続して利用される検査支援装置を用いた検査支援方法であって、
前記内視鏡システムが外部装置へ提供する、前記カメラユニットで撮像された撮像画像を表す画像領域とその他の領域とを含む表示画像に対応する画像信号を逐次取得する取得ステップと、
前記画像信号から逐次生成されるフレーム画像に対して前後するフレーム画像間の差分を検出する検出ステップと、
前記検出ステップで検出された差分の差分量が基準量以上となる変化領域に基づいて、前記画像領域を確定する確定ステップと
を有する検査支援方法。
【請求項8】
被検者の体内に挿通されるカメラユニットを備える内視鏡システムに接続して利用される検査支援装置を制御する検査支援プログラムであって、
前記内視鏡システムが外部装置へ提供する、前記カメラユニットで撮像された撮像画像を表す画像領域とその他の領域とを含む表示画像に対応する画像信号を逐次取得する取得ステップと、
前記画像信号から逐次生成されるフレーム画像に対して前後するフレーム画像間の差分を検出する検出ステップと、
前記検出ステップで検出された差分の差分量が基準量以上となる変化領域に基づいて、前記画像領域を確定する確定ステップと
をコンピュータに実行させる検査支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査支援装置、検査支援方法および検査支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡により被検者の例えば胃内部を撮像してその画像をモニタに表示する内視鏡システムが知られている。最近では、内視鏡システムで撮像された画像を分析して、その結果を医師へ知らせる検査支援装置も普及しつつある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-42156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内視鏡システムが撮像した被検者の体内画像を検査支援装置が事後的に取り込んで分析するシステムは、即時性に乏しい。被検者を診断する医師は、内視鏡システムによる体内の撮像に連動して即時に分析結果を知りたい。そこで、検査支援装置を内視鏡システムに接続して、内視鏡システムが撮像した体内画像をほぼリアルタイムで検査支援装置に分析させる利用態様が考えられる。この場合、検査支援装置は、内視鏡システムが外部装置へ提供する画像信号を受信することができる。しかし、このような画像信号は、例えば内視鏡システムがその処理結果などを自身が備えるシステムモニタへ表示するための表示信号であり、体内画像の画像信号の他にも検査情報の表示信号なども含む場合が多い。したがって、検査支援装置が体内画像を分析するためには、内視鏡システムが提供する画像信号の画像領域から体内画像の画像領域を適切に切り出すことが必要である。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、内視鏡システムから送られてくる画像信号から内視鏡システムで撮像された撮像画像を表す画像領域を適切に切り出して画像分析の利用に供する検査支援装置等を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様における検査支援装置は、被検者の体内に挿通されるカメラユニットを備える内視鏡システムに接続して利用される検査支援装置であって、内視鏡システムが外部装置へ提供する画像信号を逐次取得する取得部と、画像信号から逐次生成されるフレーム画像に対して前後するフレーム画像間の差分を検出する検出部と、検出部が検出した差分の差分量が基準量以上となる変化領域に基づいて、カメラユニットで撮像された撮像画像を表す画像領域を確定する確定部とを備える。
【0007】
本発明の第2の態様における検査支援方法は、被検者の体内に挿通されるカメラユニットを備える内視鏡システムに接続して利用される検査支援装置を用いた検査支援方法であって、内視鏡システムが外部装置へ提供する画像信号を逐次取得する取得ステップと、画像信号から逐次生成されるフレーム画像に対して前後するフレーム画像間の差分を検出する検出ステップと、検出ステップで検出された差分の差分量が基準量以上となる変化領域に基づいて、カメラユニットで撮像された撮像画像を表す画像領域を確定する確定ステップとを有する。
【0008】
本発明の第3の態様における検査支援プログラムは、被検者の体内に挿通されるカメラユニットを備える内視鏡システムに接続して利用される検査支援装置を制御する検査支援プログラムであって、内視鏡システムが外部装置へ提供する画像信号を逐次取得する取得ステップと、画像信号から逐次生成されるフレーム画像に対して前後するフレーム画像間の差分を検出する検出ステップと、検出ステップで検出された差分の差分量が基準量以上となる変化領域に基づいて、カメラユニットで撮像された撮像画像を表す画像領域を確定する確定ステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、内視鏡システムから送られてくる画像信号から内視鏡システムで撮像された撮像画像を表す画像領域を適切に切り出して画像分析の利用に供する検査支援装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】内視鏡システムと本実施形態に係る検査支援装置を用いた内視鏡検査の様子を示す図である。
図2】検査支援装置のハードウェア構成図である。
図3】検査実行時において受信した表示信号から表示画面を生成するまでの処理を説明する図である。
図4】検出部の処理を説明する図である。
図5】確定部の処理を説明する図である。
図6】医師の承諾を受け付ける承諾画面の例を示す図である。
図7】他の例の変化領域に対する画像領域の確定処理を説明する図である。
図8】学習済みモデルを用いた分析処理の手順を説明する図である。
図9】演算処理部の処理手順を説明するフロー図である。
図10】他の例における演算処理部の処理手順を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、内視鏡システム200と本実施形態に係る検査支援装置100を用いた内視鏡検査の様子を示す図である。内視鏡システム200と検査支援装置100は、共に診察スペースに設置されている。本実施形態においては、被検者の体内のうち胃を検査する場合を想定する。内視鏡システム200は、カメラユニット210を備え、カメラユニット210は、図示するように、横たわる被検者の口腔から胃へ挿通され、胃の内部を撮像した画像の画像信号をシステム本体へ送信する。カメラユニット210の胃内への挿通や撮像操作は、医師によって行われる。
【0013】
内視鏡システム200は、例えば液晶パネルによって構成されるシステムモニタ220を備え、カメラユニット210から送られてきた画像信号を処理して視認可能な撮像画像221としてシステムモニタ220に表示する。また、内視鏡システム200は、被検者情報やカメラユニット210のカメラ情報などを含む検査情報222をシステムモニタ220に表示する。
【0014】
検査支援装置100は、接続ケーブル250によって内視鏡システム200に接続されている。内視鏡システム200は、システムモニタ220へ送信する表示信号を、接続ケーブル250を介して検査支援装置100へも送信する。すなわち、本実施形態における表示信号は、内視鏡システム200が外部装置へ提供する画像信号の一例である。検査支援装置100は、例えば液晶パネルによって構成される表示モニタ120を備え、内視鏡システム200から送られてきた表示信号から撮像画像221に対応する画像信号を抽出して視認可能な撮像画像121として表示モニタ120に表示する。また、検査支援装置100は、撮像画像121の画像データを生成し、これを分析して診断補助情報122を出力し、表示モニタ120に表示する。検査支援装置100は、内視鏡システム200から表示信号を受け取り次第、あるいは医師によるカメラユニット210の操作を推定したタイミングに同期して撮像画像121や診断補助情報122の表示を実行する。すなわち、医師は検査の進行に同期して逐次的に撮像画像121や診断補助情報122を確認することができる。
【0015】
既存の内視鏡システム200に検査支援装置100を接続して利用する場合には、検査支援装置100にとって都合の良い専用信号を受け取るのではなく、表示信号のような、内視鏡システム200が外部装置へ提供する汎用の画像信号を利用することになる。汎用の画像信号には、カメラユニット210が撮像した撮像画像に対応する画像信号が含まれているものの、その他にも検査に付随する情報やGUIに対応する画像信号も含まれている。カメラユニット210が撮像した撮像画像を検査支援装置100で分析するためには、内視鏡システム200から受け取った画像信号の画像領域から撮像画像の画像領域を適切に切り出して、撮像画像の画像データを再生成する必要がある。そこで、本実施形態における検査支援装置100は、内視鏡システム200から受け取る画像信号の画像領域に対してカメラユニット210が撮像した撮像画像の画像領域を適切に確定させる。当該画像領域が一旦確定されれば、検査支援装置100は、その後に受け取る画像信号から画像分析のための画像データを高速かつ安定的に逐次生成することができる。以下に、検査支援装置100の構成、処理手順、変形例等について順次説明する。
【0016】
図2は、検査支援装置100のハードウェア構成図である。検査支援装置100は、主に、演算処理部110、表示モニタ120、入出力インタフェース130、入力デバイス140、記憶部150によって構成される。演算処理部110は、検査支援装置100の制御とプログラムの実行処理を行うプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)である。プロセッサは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理チップと連携する構成であってもよい。演算処理部110は、記憶部150に記憶された検査支援プログラムを読み出して、検査の支援に関する様々な処理を実行する。
【0017】
表示モニタ120は、上述のように、例えば液晶パネルを備えるモニタであり、撮像画像121や診断補助情報122を視認可能に表示する。入出力インタフェース130は、接続ケーブル250を接続するためのコネクタを含む、外部機器との間で情報を授受するための接続インタフェースである。入出力インタフェース130は、例えばLANユニットを含み、検査支援プログラムや後述する分析用ニューラルネットワーク151の更新データを外部機器から取り込んで演算処理部110へ引き渡す。
【0018】
入力デバイス140は、例えばキーボードやマウス、表示モニタ120に重畳されたタッチパネルであり、医師や補助者は、これらを操作して検査支援装置100の設定を変更したり、検査に必要な情報を入力したりする。
【0019】
記憶部150は、不揮発性の記憶媒体であり、例えばHDD(Hard Disk Drive)によって構成されている。記憶部150は、検査支援装置100の制御や処理を実行するプログラムの他にも、制御や演算に用いられる様々なパラメータ値、関数、表示要素データ、ルックアップテーブル等を記憶し得る。記憶部150は、特に、分析用ニューラルネットワーク151を記憶している。分析用ニューラルネットワーク151は、カメラユニット210が撮像した画像データを入力すると、その画像内に病変が存在する確率を算出する学習済みモデルである。なお、記憶部150は、複数のハードウェアで構成されていても良く、例えば、プログラムを記憶する記憶媒体と分析用ニューラルネットワーク151を記憶する記憶媒体が別々のハードウェアで構成されてもよい。
【0020】
演算処理部110は、検査支援プログラムが指示する処理に応じて様々な演算を実行する機能演算部としての役割も担う。演算処理部110は、取得部111、検出部112、確定部113、診断補助部114、表示制御部115として機能し得る。取得部111は、内視鏡システム200から送られてくる表示信号を逐次取得して各々をフレーム画像に展開し、検出部112へ引き渡す。検出部112は、取得部111によって逐次生成されるフレーム画像を受け取って、前後するフレーム画像間の差分を検出する。確定部113は、検出部112が検出した差分の差分量によって表現される差分画像において、当該差分量が基準量以上となる変化領域を探索することにより、カメラユニット210で撮像された撮像画像を表す画像領域を確定する。診断補助部114は、記憶部150から読み出した分析用ニューラルネットワーク151へ胃の検査の実行中に生成された撮像画像121を入力し、病変が存在する確率を算出させて、診断補助情報を生成する。表示制御部115は、表示モニタ120へ表示する表示画面の表示信号を生成し表示モニタ120へ送信することにより、表示モニタ120の表示を制御する。
【0021】
図3は、検査実行時において受信した表示信号から表示モニタ120の表示画面を生成するまでの処理を説明する図である。内視鏡システム200から送られてくる表示信号を取得部111が取得して展開するフレーム画像である信号再生画像225は、内視鏡システム200のシステムモニタ220で表示されている表示画像と同様である。信号再生画像225は、上述のように、撮像画像221と検査情報222を含む。検査情報222は、ここではテキスト情報を想定しているが、コンピュータグラフィックス等のテキスト情報以外の情報を含んでいてもよい。
【0022】
信号再生画像225の画像領域のいずれの領域が撮像画像を表す画像領域であるかが、後述するように検査開始前に確定されていると、取得部111は、その確定された画像領域を切り出して撮像画像121とする。撮像画像121は、実質的にはカメラユニット210が撮像した撮像画像を検査支援装置100で再現した画像と言える。取得部111は、このように再現した撮像画像121の撮像画像データを診断補助部114と表示制御部115へ引き渡す。
【0023】
診断補助部114は、受け取った撮像画像データを分析用ニューラルネットワーク151へ入力し、画像内に病変が存在する推定確率を算出させ、その結果を表示制御部115へ引き渡す。表示制御部115は、取得部111から受け取った撮像画像データと、診断補助部114から受け取った推定確率を含む診断補助情報とを、予め設定された表示態様に従って展開、配列して表示モニタ120へ表示する。具体的には、例えば図3下図に示すように、撮像画像121は縮小して左側へ寄せて配置し、診断補助情報122は推定確率を示す数値情報122a、タイトルテキスト122b、円グラフ状のグラフィックス122cに要素化して右側へ寄せて配置する。なお、この表示態様は一例であり、それぞれの表示要素が検査の実行中に必ずしも表示されているとは限らない。
【0024】
次に、信号再生画像225の画像領域から撮像画像を表す画像領域を確定するまでの処理について説明する。図4は、検出部112の処理を説明する図である。内視鏡システム200のカメラユニット210による撮像は、例えば60fpsで実行される。内視鏡システム200はこれに応じて表示信号を逐次生成している。したがって、取得部111は、逐次取得する表示信号から、例えば60fpmのフレーム画像を生成する。
【0025】
図4の上段は、検出部112が取得部111から順次受け取ったフレーム画像を左から右へ時系列で並べたものである。具体的には、ある時点で連続して受け取った3つのフレーム画像であるフレーム画像fn、フレーム画像fn+1、フレーム画像fn+2を模式的に表している。
【0026】
検出部112は、前後する2つのフレーム画像(ここでは、フレーム画像fnとフレーム画像fn+1の組み合わせと、フレーム画像fn+1とフレーム画像fn+2の組み合わせ)で差分を検出する。具体的には、それぞれのフレーム画像をグレースケール化して、対応する画素ごとに画素値の差を差分量として算出して差分画像226を生成する。図4の下段は、このように生成された差分画像226を並べたものである。具体的には、フレーム画像fnとフレーム画像fn+1から生成された差分画像dn、フレーム画像fn+1とフレーム画像fn+2から生成された差分画像dn+1を模式的に表している。なお、ここでは連続するフレーム画像のうち隣り合うフレーム画像から差分画像を生成するが、差分画像は連続するフレーム画像から生成しなくてもよく、例えば連続するフレーム画像から10フレームごとに抜き出して差分画像を生成してもよい。
【0027】
フレーム画像として逐次生成される信号再生画像225は、上述のように撮像画像221と検査情報222を含む。このうち、撮像画像221は、カメラユニット210の出力レートに合わせて更新されるので、カメラユニット210が動かない対象を固定された状態で撮像し続けていない限り、フレームごとに刻々と変化する。したがって、差分画像226のうち撮像画像221に対応する領域に属するそれぞれの対応画素は比較的大きな差分量を示し、これらの対応画素を包囲する領域は変化領域221’として顕在化する。
【0028】
一方で、検査情報222は、フレームごとに刻々と変化する性質のものではなく、例えば表示されるテキストが書き換えられる場合でも、その頻度はフレームレートに対して相当低い。したがって、差分画像226のうち検査情報222に対応する領域に属するそれぞれの対応画素は、ほとんどの場合において0または小さな差分量を示し、こられの対応画素を含む領域は不変化領域222’と評価し得る。検出部112は、フレーム画像間の差分量で表された差分画像226を確定部113へ引き渡す。確定部113は、受け取った差分画像226から変化領域221’を定め、当該変化領域221’に基づいて撮像画像を表す画像領域を確定する。
【0029】
図5は、確定部113の処理を説明する図である。図5の上段は、図4の下段と同様に、生成された差分画像226を生成順に並べたものである。確定部113は、まず、受け取った差分画像226から変化領域221’を定める。具体的には、差分画像226を構成する各画素の差分量が基準量以上であるか否かにより振り分け、基準量以上と判定された画素を包含する一纏まりの領域を変化領域221’とする。ここで、基準量は、撮像画像221に対応する領域が適切に抽出されるように試行錯誤によって予め調整された値が設定されている。また、変化領域221’は、基準量未満の変化量である画素が離散的に含まれていてもよいものとする。例えば、10画素×10画素の範囲に基準量以上の画素が80個以上存在すれば、その範囲については纏めて変化領域221’に含めるものとする。
【0030】
確定部113は、このように変化領域221’を定めたら、次に、この変化領域221’に内包される矩形領域Rを各差分画像226において決定する。図示するように差分画像dnに対して決定された矩形領域Rnは、左上座標が(xan,yan)であり、右下座標が(xbn,ybn)である。同様に、差分画像dn+1に対して決定された矩形領域Rn+1は、左上座標が(xan+1,yan+1)であり、右下座標が(xbn+1,ybn+1)である。
【0031】
確定部113は、連続して生成される規定数分の差分画像(例えば8つの差分画像)のそれぞれにおいて決定される矩形領域Rに対して、左上座標の平均座標(xa,ya)と右下座標の平均座標(xb,yb)を算出して、信号再生画像225の画像領域に対する画像領域候補を確定する。なお、確定部113は、このように算出された画像領域候補を、予め定められたアスペクト比や大きさになるように更に調整してもよい。例えば、分析用ニューラルネットワーク151へ入力可能な画像のアスペクト比が決められているのであれば、当該アスペクト比に合わせて画像領域候補の矩形形状を調整するとよい。
【0032】
確定部113は、このように算出された画像領域候補をそのままカメラユニット210で撮像された撮像画像を表す画像領域として確定することもできるが、ここでは利用者である医師による確認、承諾を経て当該画像領域として確定させる。図6は、医師の承諾を受け付ける承諾画面の例を示す図である。
【0033】
承諾画面は、信号再生画像225を縮小して表示する信号再生画像125、解析範囲の承諾を求めるテキスト情報である問合せテキスト127、操作ボタンを表す受付アイコン128、検査実行前の準備段階であることを示す補助情報122’を含む。信号再生画像125には、確定された画像領域候補が視認できるように領域枠指標126が重畳表示されている。
【0034】
医師は、この領域枠指標126が正しく撮像画像を表す画像領域を囲んでいるかを確認し、問題が無ければ受付アイコン128をタップする。確定部113は、入力デバイス140のひとつであるタッチパネルを介して当該タップを認識したら、この画像領域候補をカメラユニット210で撮像された撮像画像を表す画像領域として確定する。
【0035】
検査支援装置100は、逐次受け取る画像信号から生成される信号再生画像225の画像領域のうちいずれの領域が撮像画像を表す画像領域であるかを、胃内の検査を実行する前に確定する。これにより、胃内の検査を実行する段階においては、信号再生画像225の画像領域から確定された固定領域を切り出せば撮像画像121の画像データを生成することができるので、診断補助部114による分析の高速化と安定化に貢献する。
【0036】
なお、変化領域221’に対する画像領域の定め方には、様々なバリエーションが存在し得る。図7は、他の例の変化領域221’に対する画像領域の確定処理を説明する図である。図7(a)は、確定部113が変化領域221’を円形として認識した場合における矩形領域Rの定め方を示す図である。確定部113は、矩形領域Rを変化領域221’の円に内接するように定める。このとき、矩形領域Rは、画像領域に対して設定されているアスペクト比に合致するように調整される。
【0037】
図7(b)は、確定部113が変化領域221’を多角形として認識した場合における矩形領域Rの定め方を示す図である。確定部113は、矩形領域Rを変化領域221’の多角形に内接するように定める。このときも、矩形領域Rは、画像領域に対して設定されているアスペクト比に合致するように調整される。いずれの場合も、上述のように、連続して生成される規定数分の差分画像のそれぞれにおいて決定される矩形領域Rに対して座標の平均化処理を行って画像領域候補または画像領域を確定するとよい。
【0038】
次に、診断補助部114による分析処理について説明する。図8は、学習済みモデルである分析用ニューラルネットワーク151を用いた分析処理の手順を説明する図である。分析用ニューラルネットワーク151は、病変部位を含む画像と含まない画像とを、その正解と共に大量に与えられる教師あり学習によって予め作成されたものである。このように作成された分析用ニューラルネットワーク151は、記憶部150に格納され、診断補助部114により適宜読み出されて利用に供される。
【0039】
内視鏡システム200は、被検者の胃内に挿通されたカメラユニット210から、上述のように例えば60fpsで撮像画像を受け取るが、医師がレリーズ信号を発生させた場合には、静止画像を撮像画像として受け取る。この場合に検査支援装置100が内視鏡システム200から受信する表示信号は、表示信号としては60fpsのフレーム信号であるものの、ここから切り出されて生成される撮像画像121は、一定期間フリーズした疑似静止画像となる。
【0040】
取得部111は、図3を用いて説明したように、撮像画像121を疑似静止画像と検知して撮像画像データを生成したら、当該撮像画像データを診断対象画像データとして診断補助部114へ引き渡す。診断補助部114は、受け取った撮像画像データを展開した撮像画像121を分析用ニューラルネットワーク151へ入力し、推定確率を算出させる。
【0041】
次に、検査支援装置100を用いた検査支援方法の処理手順について説明する。図9は、演算処理部110によって実行される処理手順を説明するフロー図である。フローは、例えば、内視鏡システム200および検査支援装置100が起動された時点から開始される。
【0042】
取得部111は、ステップS101で、内視鏡システム200から送られてくる表示信号を順次取得し、信号再生画像225に展開してそれぞれをフレーム画像として検出部112へ引き渡す。検出部112は、ステップS102で、図4を用いて説明したように前後するフレーム画像から差分画像226を生成して確定部113へ引き渡す。確定部113は、ステップS103で、図5を用いて説明したように各フレーム画像に対して変化領域221’を定め、当該変化領域221’に対して矩形領域Rを決定する。
【0043】
確定部113は、ステップS104へ進み、連続して生成される差分画像から規定数分の矩形領域Rの座標情報が獲得できたか否かを判断する。獲得できていないと判断したら、ステップS101へ戻る。獲得できたと判断したら、ステップS105へ進む。
【0044】
ステップS105へ進んだら、確定部113は、獲得した規定数分の矩形領域Rの座標情報から画像領域候補を確定し、当該画像領域候補の座標情報を表示制御部115へ引き渡す。表示制御部115は、ステップS106で、図6で示した承諾画面を表示モニタ120へ表示する。確定部113は、ステップS107で、承諾指示を受け付けたか否かを確認する。受け付けたことを確認したら、ステップS108へ進む。一定時間の間に受け付けたことを確認できなければ、ステップS110へ進む。
【0045】
確定部113は、ステップS108へ進んだら、画像信号から生成される信号再生画像225の画像領域のうちいずれの領域が撮像画像を表す画像領域であるかを、承諾を受けた画像領域候補に即して確定する。画像領域を確定したら、ステップS109へ進み、演算処理部110は、検査が開始されるまで待機する。
【0046】
ステップS107からステップS110へ進んだ場合には、演算処理部110は、検査が開始されたか否かを判断する。検査が開始されていないと判断したらステップS101へ戻り、新たな画像領域候補を策定するところからやり直す。なお、新たな画像領域候補を策定するのではなく、例えばタッチパネルに対するドラッグ操作を受け付けて医師に領域枠指標126を移動させることにより画像領域を確定してもよい。
【0047】
ステップS110で検査が開始されたと判断したら、ステップS111へ進み、確定部113は、医師の承諾を得ることなく、ステップS105で確定した画像領域候補を、撮像画像を表す画像領域として確定する。換言すれば、医師は、承諾画面に対して承諾操作を行わなくても、検査を開始してしまえば画像領域候補を画像領域として確定させることができる。なお、演算処理部110は、例えば、画像領域候補が示す画像が口腔内の画像に変化したと確認された時点で検査が開始されたと判断する。
【0048】
撮像画像を表す画像領域が確定され、検査が開始されたら、取得部111は、ステップS112で、取得した表示信号から展開したフレーム画像から、確定された画像領域に従って撮像画像121を切り出し、診断補助部114へ当該撮像画像121を引き渡す。診断補助部114は、ステップS113で、上述のように推定確率を算出し、表示制御部115へ引き渡す。表示制御部115は、ステップS114で、図3の下図で示したような表示態様に従って、検査情報を表示モニタ120へ表示する。演算処理部110は、ステップS115で、検査終了の指示を受け付けるまで、ステップS112からステップS114を繰り返す。検査終了の指示を受け付けたら、一連の処理を終了する。
【0049】
図10は、他の例における演算処理部110によって実行される処理手順を説明するフロー図である。図10に示す処理手順は、医師に承諾を求めない点、および検査が開始されるまでは確定した画像領域を更新する点で図9の処理手順と異なる。図9とほぼ同様の処理については、図9のステップ番号と同じステップ番号を付すことによりその説明を省略する。
【0050】
確定部113は、ステップS104で、連続して生成される差分画像から規定数分の矩形領域Rの座標情報が獲得できたと判断したら、ステップS205へ進む。ステップS205へ進むと、確定部113は、獲得した規定数分の矩形領域Rの座標情報から画像領域を確定する。演算処理部110は、ステップS206で、検査が開始されたか否かを判断する。検査が開始されていないと判断したらステップS101へ戻る。ステップS101へ戻ると、再びステップS101からステップS104を実行し、ステップS205へ進んだ場合には、すでに確定されている画像領域を新たに演算された画像領域に更新する。
【0051】
演算処理部110は、ステップS206で、検査が開始されたと判断したら、ステップS112へ進む。具体的には、例えば、確定されている画像領域が示す画像が口腔内の画像に変化したと確認された場合に、カメラユニット210が被検者の口腔に挿入されて検査が開始されたと判断して、画像領域の更新を停止し、ステップS112へ進む。以降の処理は、図9の処理と同様である。なお、一旦画像領域が確定された後にステップS101以降の処理を進めている途中であって、割り込み処理により検査が開始されたと判断された場合には、ステップS112へジャンプしてもよい。
【0052】
以上説明した本実施形態においては、図4を用いて説明したように、それぞれのフレーム画像をグレースケール化して、対応する画素ごとに画素値の差を差分量として算出して差分画像226を生成したが、差分量の評価手法や差分画像の生成手法はこれに限らない。例えば、差分画像を構成する各画素において差分が生じたか(差分量が1以上)生じていないか(差分量が0)によりその画素を2つに区分し、連続する所定数の差分画像(例えば8つの差分画像)において互いに対応するそれぞれの画素で基準数(例えば2つ)以上の差分画像で差分が生じていると区分されていれば、当該画素を変化領域に含まれる画素と評価してもよい。この場合は、基準量として、差分が生じたか生じていないかを区分するときの第1基準量と、連続する所定数の差分画像のうちいくつの差分画像で差分が生じているかを振り分けるための第2基準量が設定される。また、例えば、フレーム画像間で算出される画素ごとの移動ベクトルを算出し、その移動ベクトルの大きさを差分量としてもよい。この場合は、基準量も実情に即して調整された基準ベクトルの大きさとして設定される。
【0053】
また、以上説明した本実施形態においては、内視鏡システム200と検査支援装置100が接続ケーブル250を介して接続される場合を想定したが、有線接続でなく無線接続であっても構わない。また、内視鏡システム200は表示信号を外部に出力し、検査支援装置100はこの表示信号を利用する実施形態を説明したが、内視鏡システム200が外部装置に提供する画像信号がカメラユニット210で撮像された撮像画像の画像信号を包含するのであれば、出力信号の形式は問わない。
【0054】
また、以上説明した本実施形態においては、検査対象が胃の例を説明したが、内視鏡システム200は、胃内検査に特化したものでなくてもよく、他の部位を検査するものであってもよい。例えば十二指腸を検査する内視鏡システム200に接続する検査支援装置100は、十二指腸の撮像画像に病変部位が存在する確率を算出して表示する装置である。この場合、分析用ニューラルネットワーク151は、検査対象となる部位に応じたものが予め用意される。また、以上説明した本実施形態においては、内視鏡システム200が備えるカメラユニット210が軟性内視鏡であることを想定して説明したが、カメラユニット210が硬性内視鏡であっても、検査支援装置100の構成や処理手順に違いは何ら生じない。
【符号の説明】
【0055】
100…検査支援装置、110…演算処理部、111…取得部、112…検出部、113…確定部、114…診断補助部、115…表示制御部、120…表示モニタ、121…撮像画像、122…診断補助情報、122’…補助情報、122a…数値情報、122b…タイトルテキスト、122c…グラフィックス、125…信号再生画像、126…領域枠指標、127…問合せテキスト、128…受付アイコン、130…入出力インタフェース、140…入力デバイス、150…記憶部、151…分析用ニューラルネットワーク、200…内視鏡システム、210…カメラユニット、220…システムモニタ、221…撮像画像、221’…変化領域、222…検査情報、222’…不変化領域、225…信号再生画像、226…差分画像、250…接続ケーブル
図1
図2
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図6
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図8
図9
図10