(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】除草剤組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 37/02 20060101AFI20240830BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20240830BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20240830BHJP
A01P 13/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
A01N37/02
A01N25/00 101
A01N25/02
A01P13/00
(21)【出願番号】P 2020200536
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000112853
【氏名又は名称】フマキラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕城
【審査官】▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】特表平05-502216(JP,A)
【文献】特開2018-062498(JP,A)
【文献】特許第3855203(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N,A01P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
除草活性成分のペラルゴン酸と、
モノアルキル型カチオン性界面活性剤とジアルキル型カチオン性界面活性剤の中から選ばれた任意の1種又は2種以上のカチオン性界面活性剤と、
水と
、
一価または多価アルコールとを含有し、
前記ペラルゴン酸の濃度範囲は1.5質量%以上6.0質量%以下であり、
前記水中に、前記ペラルゴン酸と前記カチオン性界面活性剤とによる混合ベシクルが形成されていることを特徴とする除草剤組成物。
【請求項2】
請求項
1に記載の除草剤組成物において、
前記カチオン性界面活性剤の濃度範囲は1.8質量%以上18.0質量%以下であることを特徴とする除草剤組成物。
【請求項3】
請求項
2に記載の除草剤組成物において、
前記カチオン性界面活性剤の濃度範囲は2.5質量%以上16.0質量%以下であることを特徴とする除草剤組成物。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1つに記載の除草剤組成物において、
前記ペラルゴン酸の濃度をa、前記カチオン性界面活性剤の濃度をbとした時、濃度比R=b/aが0.83以上6.00以下であることを特徴とする除草剤組成物。
【請求項5】
請求項
4に記載の除草剤組成物において、
前記濃度比R=b/aが1.00以上であることを特徴とする除草剤組成物。
【請求項6】
請求項
1に記載の除草剤組成物において、
前記アルコールは、炭素数が2以上6以下で、ヒドロキシ基の数が1以上6以下であることを特徴とする除草剤組成物。
【請求項7】
請求項
6に記載の除草剤組成物において、
前記アルコールの濃度範囲は、2.0質量%以上6.0質量%以下であることを特徴とする除草剤組成物。
【請求項8】
請求項
7に記載の除草剤組成物において、
前記アルコールの濃度範囲は、2.5質量%以上5.0質量%以下であることを特徴とする除草剤組成物。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか1つに記載の除草剤組成物において、
pHが2.5以上5.0以下であることを特徴とする除草剤組成物。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれか1つに記載の除草剤組成物において、
半透明液体であることを特徴とする除草剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除草剤組成物に関し、特にペラルゴン酸を含有させる技術分野に属する。より具体的には、除草活性成分のペラルゴン酸と1種又は2種以上のカチオン性界面活性剤とが混合ベシクルを形成することによって経日安定性が優れ、速効性を有する除草剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素数が6から12の脂肪酸、特に炭素数が9のペラルゴン酸(一般名 Pelargonic acid、IUPAC名 Nonanoic acid)は、安全かつ速効的な除草活性を有する化合物であり、世界中で広く使用されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
またペラルゴン酸は食品添加物としても使われているところ、安全なイメージの除草活性成分として着目されており、ペラルゴン酸を用いた除草剤のニーズが高まっている。
【0004】
ペラルゴン酸は水に対する溶解度が32ppm(30℃)と疎水的な物質であり、ペラルゴン酸を用いた除草剤の開発においてはペラルゴン酸の可溶化ないし乳化の技術が必要となる。
【0005】
例えば特許文献1には、主溶剤を水とし、陰イオン界面活性剤および非イオン界面活性剤を併用することによってベラルゴン酸を酸として水中に安定に存在させる製剤技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、界面活性剤として第四アンモニウム塩を使用してペラルゴン酸をエマルジョン化する技術が開示されている。
【0007】
一方、特許文献3,4には、ペラルゴン酸を有機塩基によって中和することにより水溶解性を向上させた製剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-190832号公報
【文献】特表平5-502216号公報
【文献】特開2013-216643号公報
【文献】特開2014-91739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のとおり、従来の技術としては、ペラルゴン酸の水中における存在形態が酸であり界面活性剤によって乳化ないし可溶化した製剤(特許文献1,2)と、ペラルゴン酸を塩基性物質により中和することにより水溶解性を向上させた製剤とが知られている(特許文献3,4)。ペラルゴン酸が酸として存在している前者は、後者に対してより速効的な除草効果を示すことが知られており、消費者が除草効果を実感しやすいという点からより望ましい。
【0010】
ところで、市販されている汎用除草剤は、散布容器に入った状態で販売されることが多い。このような除草剤は、一般家庭においては容器に入れられたまま屋外や倉庫に放置されることが多く、低温や高温条件にさらされる可能性が高い。このような過酷な保存環境下において、界面活性剤によって乳化・可溶化した従来のペラルゴン酸除草剤は、ペラルゴン酸が分離してしまうことがあった。
【0011】
そこで、このような過酷な保存環境下においても均一溶解・分散状態を安定して維持できるペラルゴン酸除草剤組成物が求められている。なお、保存持の安定性を向上させるべく界面活性剤を増量することも考えられるが、界面活性剤の増加に伴う価格の上昇と同時に、製品粘度が上昇して散布効率の低下や散布ムラの発生などの問題が生じるため、現実的ではない。このように、従来の乳化・可溶化方法で製造された従来のペラルゴン酸除草剤は、いまだ安定性が不十分であり改良の余地があった。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、経日安定性が優れ、高い速効性を持った除草剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本願発明者は、カルボニル基を有するペラルゴン酸と、特定の第4級アミン基を有するカチオン性界面活性剤が水中で相互作用し、自己会合体の混合ベシクルを形成できる濃度範囲を見出した。そしてこのように混合ベシクルが形成されることにより、ペラルゴン酸を水中に均一溶解・分散し、長期安定化が可能であることを見出して本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、混合ベシクルは、水中で疎水性と親水性の両方を持つ両親媒性分子が球状、棒状、層状などをなすように隙間なく並んだ自己会合体であり、自己会合体の層が複数層になるため、ペラルゴン酸が均一に含まれていることで、水中で高濃度ペラルゴン酸を長期安定化させることができる。
【0015】
本開示に係る除草剤組成物は、除草活性成分のペラルゴン酸と、モノアルキル型カチオン性界面活性剤とジアルキル型カチオン性界面活性剤の中から選ばれた任意の1種又は2種以上のカチオン性界面活性剤と、水とを含有している。そして、水中において前記ペラルゴン酸とカチオン性界面活性剤が相互作用して混合ベシクルが形成されることにより、当該ペラルゴン酸が水中に均一に溶解・分散していることを特徴としている。
【0016】
ところで、ペラルゴン酸を除草活性成分として含有した除草剤においては、これを散布したときに、ペラルゴン酸が雑草表面に付着しなければ十分な除草効果が得られないと考えられる。これに対し、本発明に係る混合ベシクル化されたペラルゴン酸はカチオン性界面活性剤と相互作用することにより自己会合体内に含まれているところ、これを雑草に散布した際に当該ペラルゴン酸が雑草表面に付着し得るか否かについてこれまで検討されたことは無かった。本願発明者らの検討により、混合ベシクル化されたペラルゴン酸除草剤組成物によって高い除草効果が初めて確認された。
【0017】
つまり、モノアルキル型カチオン性界面活性剤である複数の界面活性剤と、ジアルキル型カチオン性界面活性剤である複数の界面活性剤とによって構成された群の中から任意の1種又は任意の2種以上のカチオン性界面活性剤を含んでいることで、水中においてペラルゴン酸が混合ベシクルの自己会合体として均一分散・溶解しており、散布時においては混合ベシクルを構成していたペラルゴン酸が雑草表面に付着する。これにより、低温や高温条件下で放置されても、経日安定性に優れ、高い除草効果が得られる。
【0018】
前記ペラルゴン酸の濃度範囲は1.5質量%以上7.0質量%以下とすることができる。また、前記ペラルゴン酸の濃度範囲は2.0質量%以上6.0質量%以下とすることもできる。
【0019】
前記カチオン性界面活性剤の濃度範囲は1.8質量%以上18.0質量%以下とすることができる。また、前記カチオン性界面活性剤の濃度範囲は2.5質量%以上16.0質量%以下とすることもできる。
【0020】
前記ペラルゴン酸に対する前記カチオン性界面活性剤の濃度比は、0.83以上6.00以下とすることができる。また、前記ペラルゴン酸に対する前記カチオン性界面活性剤の濃度比は、1.00以上とすることもできる。
【0021】
前記除草剤組成物は、一価または多価アルコールを含有していてもよい。この構成によれば、混合ベシクルが形成され易くなる。前記アルコールは、炭素数が2以上6以下で、ヒドロキシ基の数が1以上6以下とすることができる。前記アルコールの濃度範囲は、2.0質量%以上6.0質量%以下とすることができる。また、前記アルコールの濃度範囲は、2.5質量%以上5.0質量%以下とすることもできる。
【0022】
前記除草剤組成物のpHは、2.5以上5.0以下とすることができる。また、前記除草剤組成物は、混合ベシクルを有する半透明液体とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、特定のカチオン性界面活性剤とペラルゴン酸が水中で混合ベシクルを形成し、高濃度ペラルゴン酸を水中に均一分散・溶解することにより、経日安定性が優れ、高い速効性を持った除草剤を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
本発明の実施形態に係る除草剤組成物は、除草活性成分のペラルゴン酸と、特定のカチオン性界面活性剤と、水と、特定のアルコールとを含有した液状除草剤である。除草剤は、例えば各種容器に収容して保管することができる。除草剤を容器に収容することで、除草に用いられる製品が構成される。除草剤は、保管時に収容されている容器から雑草へ直接かけて使用することができる他、保管時に収容されている容器とは別の容器に移し替えて雑草へかけることもできる。除草剤を収容する容器には、多数の開口を備えたシャワーノズルが設けられていてもよい。また、除草剤を収容する容器には、ポンプ機構を備えた噴霧器が設けられていてもよい。また、除草剤を収容する容器は、バルブおよびノズルを備えたエアゾール容器であっても良く、この場合、本発明に係る除草剤組成物は噴射剤とともにエアゾール容器に充填される。
【0026】
(除草活性成分のペラルゴン酸)
本発明の除草活性成分のペラルゴン酸は、単独で用いられるか、又は他の脂肪酸を含む混合物の主要成分(例えば90%以上)として用いられる。他の脂肪酸を含む場合、除草活性成分は、ペラルゴン酸を含む炭素数8~12の炭化水素鎖を有するカルボキル脂肪酸の1種又は混合物とすることができる。
【0027】
ペラルゴン酸は、水中でカチオン性界面活性剤と相互作用することにより、混合ベシクルを形成して存在している。すなわち、混合ベシクルは、水中で疎水性と親水性の両方を持つ両親媒性分子が球殻状または袋状をなすように隙間なく並んだ自己集合体であり、自己会合体の層が複数相になるために、ペラルゴン酸が均一に含まれていることで、水中でペラルゴン酸を長期安定化させることができる。
【0028】
除草剤組成物中のペラルゴン酸の濃度範囲の下限は、1.5質量%以上であり、2.0質量%以上がより好ましい。ペラルゴン酸の濃度範囲の上限は、7.0質量%以下であり、6.0質量%以下がより好ましい。ペラルゴン酸の濃度範囲が上記上限を超えると、混合ベシクルが形成されにくくなり、形成された混合ベシクルが壊れやすくなる。また、ペラルゴン酸の濃度範囲が上記下限を下回ると、除草効果が不十分になる。
【0029】
(カチオン性界面活性剤)
上記混合ベシクルを水中で形成するためには、上記特定のカチオン性界面活性剤が必要になる。特定のカチオン性界面活性剤は、モノアルキル型カチオン性界面活性剤に分類される複数の界面活性剤と、ジアルキル型カチオン性界面活性剤に分類される複数の界面活性剤とで構成される界面活性剤の群の中から選ばれた任意の1種又は任意の2種以上のカチオン性界面活性剤である。特定のカチオン性界面活性剤としては、モノアルキル型カチオン性界面活性剤のみであってもよいし、ジアルキル型カチオン性界面活性剤のみであってもよい。また、特定のカチオン性界面活性剤としては、モノアルキル型カチオン性界面活性剤と、ジアルキル型カチオン性界面活性剤とを含有していてもよく、この場合、モノアルキル型カチオン性界面活性剤を1種、ジアルキル型カチオン性界面活性剤を2種以上含有していてもよいし、モノアルキル型カチオン性界面活性剤を2種以上、ジアルキル型カチオン性界面活性剤を1種含有していてもよい。
【0030】
モノアルキル型カチオン性界面活性剤としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ミリスチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(C12-C16)トリメチルアンモニウム、塩化アルキル(C16-C18)トリメチルアンモニウム、などを挙げることができる。
【0031】
ジアルキル型カチオン性界面活性剤としては、塩化ジオクチルジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジラウリルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(C12-C18)ジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(C16-18)ジメチルアンモニウム、などを挙げることができる。
【0032】
上記特定のカチオン性界面活性剤の濃度範囲の下限は、1.8質量%以上であり、2.5質量%以上がより好ましい。カチオン性界面活性剤の濃度範囲の上限は、18.0質量%以下であり、16.0質量%以下がより好ましい。特定のカチオン性界面活性剤の濃度範囲が上記範囲を外れると、混合ベシクルが形成されにくくなる。
【0033】
(一価又は多価アルコール)
上記混合ベシクルの形成をより確実なものにするためには、除草剤組成物が特定のアルコールを含有しているのが好ましい。特定のアルコールは、一価または多価アルコールであり、炭素数が2以上6以下で、ヒドロキシ基の数が1以上6以下のアルコールが好ましい。このようなアルコールとしては、例えばエチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1,3ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトールなどを挙げることができる。
【0034】
上記アルコールを用いることで、混合ベシクルの形成がより確実になる。アルコールの濃度範囲の下限は、0.01質量%以上であり、2.0質量%以上が好ましく、2.5質量%以上がより好ましい。アルコールの濃度範囲の上限は、6.0質量%以下であり、5.0質量%以下がより好ましい。アルコールの濃度範囲が上記範囲を外れると、混合ベシクルが形成されにくくなったり、形成された混合ベシクルが壊れやすくなる。
【0035】
(ペラルゴン酸とカチオン性界面活性剤の濃度比R=b/a)
また、ペラルゴン酸の濃度をa、上記特定のカチオン性界面活性剤の濃度をbとした時のペラルゴン酸に対する特定のカチオン性界面活性剤の濃度比Rは以下の式1で表すことができる。
【0036】
R=b/a 式1
【0037】
Rの下限は0.83以上であり、1.00以上がより好ましい。また、Rの上限は、6.00以下であり、5.00以下がより好ましい。Rの値が上記範囲を外れると、混合ベシクルが形成されにくくなる。
【0038】
(他の成分)
水は精製水、イオン交換水を用いることができる。また、除草剤は、防腐剤を含有していてもよい。防腐剤としては、例えばイソチアゾリノン誘導体などを挙げることができるが、これに限られるものではない。
【0039】
また、除草剤は、害虫駆除成分を含有していてもよい。害虫駆除成分は、ピレスロイド系殺虫剤、ネオニコチノイド系殺虫剤、ジアミド系殺虫剤などを挙げることができるが、これに限られるものではない。ピレスロイド系殺虫剤として、トランスフルトリン、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、テトラメトリン、プラレトリン、フェノトリン、トラロメトリン、シフルトリン、レスメトリン、ペルメトリン、エンペントリン、シフェノトリン、イミプロトリン、フェンプロパトリン、フェンバレレート、エトフェンプロックス、シラフルオフェンなどを挙げることができる。ネオニコチノイド系殺虫剤として、イミダクロプリド、ニテンピラム、アセタミプリド、チアメトキサム、クロチアニジン、ジノテフランなどを挙げることができる。ジアミド系殺虫剤としては、フルベンジアミド、クロラントラニリプロール、シアントラニリプロールなどが挙げられる。これらのうち、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0040】
(除草剤組成物の製造方法)
除草剤組成物の製造方法の一例について説明する。まず、70℃まで加熱した精製水を用意する。この精製水に、上記特定のカチオン性界面活性剤、ペラルゴン酸、アルコールを溶解させる。害虫駆除成分を含有する場合には、害虫駆除成分も溶解させる。その後、室温まで冷却した後、防腐剤を加える。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は実施例に限定して解釈されるものではない。
【0042】
【0043】
表1は、本発明の実施例1~16に係る除草剤の組成を示している。実施例1~16のペラルゴン酸の濃度は、1.50質量%以上7.00質量%以下である。モノアルキル型カチオン性界面活性剤の濃度は、0.90質量%以上9.00質量%以下である。ジアルキル型カチオン性界面活性剤の濃度は、0.90質量%以上15.00質量%以下である。アルコールの濃度は、3.00質量%である。防腐剤の濃度は、0.02質量%である。残余(バランス)は精製水である。
【0044】
除草剤有効成分の濃度aに対するカチオン性界面活性剤の濃度bの濃度比Rの範囲は、0.83以上6.00以下に設定している。
【0045】
(外観の評価)
実施例の除草剤組成物サンプルを作成後、100mlガラス瓶に入れ、室温(RT)で外観を目視評価した。なお、後述の比較例についても同様に評価した。
【0046】
透明ゲル:透明な液体又はゲル
半透明 :半透明な液体
白濁 :白濁した液体
【0047】
(混合ベシクルの確認評価)
実施例の除草剤組成物サンプルを作成後、100mlガラス瓶に入れ、室温(RT)にて、直交する偏光板(クロスニコル)を有するボックスに入れる。偏光板ボックスの外からサンプル瓶に対して光を当て、偏光板越しにサンプル瓶を通過した光の様子を目視観察することで混合ベシクル形成の有無を評価した。なお、後述の比較例についても同様に評価した。
【0048】
○:混合ベシクルあり
×:混合ベシクルなし
【0049】
表1に示すように、実施例1~16の全てで混合ベシクルが形成されていた。
【0050】
(安定性評価)
次に、安定性試験を行った結果について説明する。安定性試験は、実施例の除草剤組成物サンプルを100mlガラス瓶に入れ、室温(RT)、5℃、50℃の恒温室でそれぞれ1ヵ月保存した。1ヵ月保存後の除草剤組成物の状態(外観)を目視評価し、以下の基準で安定性を評価した。なお、後述の比較例についても同様に評価した。
【0051】
〇:分離なし(均一1相)。
△:上層、下層で一部分離している。
×:2相に完全に分離している。
【0052】
表1に示すように、実施例1~16は、「RT」、「5℃」及び「50℃」の全てで「○」であった。すなわち、混合ベシクルが殆ど壊れることなく、存在し続けていたので、5℃~50℃という極めて広い温度範囲で、しかも1ヶ月という極めて長い期間保管しても、分離や性状の変化が起こりにくいことが分かる。尚、防腐剤が含まれていなくても同様な結果となる。
【0053】
次に、比較例1~5について説明する。
【0054】
【0055】
比較例1は、アルコールが含まれていない例である。この比較例1では、「外観(製造直後)」が白濁しており、また、製造直後では混合ベシクルが形成されていなかった。つまり、製造直後に混合ベシクルが形成されなかったとともに、「RT」、「5℃」及び「50℃」の全てで「×」、即ち不安定な組成物であった。
【0056】
比較例2は、除草剤有効成分の濃度aに対するカチオン性界面活性剤の濃度bの濃度比Rが0.33の例である。この比較例2では、「外観(製造直後)」の項目で白濁しており、また、製造直後では混合ベシクルが形成されていなかった。また、「RT」及び「5℃」では、安定であったが、「50℃」では分離が生じた。つまり、比較的低い温度環境下では安定であったが、高温環境下では不安定であった。
【0057】
比較例3は、「外観(製造直後)」の項目で透明ゲルを形成しており、また、製造直後では混合ベシクルが形成されていなかった。また、「RT」及び「5℃」では、安定であったが、「50℃」では分離が生じた。つまり、比較的低い温度環境下では安定であったが、高温環境下では不安定であった。
【0058】
比較例4は、「外観(製造直後)」の項目で白濁しており、また、製造直後では混合ベシクルが形成されていなかった。また、「5℃」では、安定であったが、「RT」及び「50℃」では不安定だった。
【0059】
比較例5は、「外観(製造直後)」の項目で透明ゲルを形成しており、また、製造直後では混合ベシクルが形成されていなかった。また、「RT」及び「5℃」では安定だったが、「50℃」では不安定だった。
【0060】
次に、実施例17~25について説明する。
【0061】
【0062】
実施例17~25のペラルゴン酸の濃度は、3.00質量%以上6.00質量%以下である。モノアルキル型カチオン性界面活性剤の濃度は、1.50質量%以上3.00質量%以下である。ジアルキル型カチオン性界面活性剤の濃度は、1.50質量%以上3.00質量%以下である。アルコールの濃度は、3.00質量%以上5.00質量%以下である。防腐剤の濃度は、0.02質量%である。除草剤有効成分の濃度aに対するカチオン性界面活性剤の濃度bの濃度比Rの範囲は、1.00に設定している。
【0063】
また、実施例17~25では害虫駆除成分(殺虫剤成分)を含有している。トランスフルトリンまたはトラロメトリンの濃度は、0.01質量%以上0.10質量%以下である。
【0064】
表3の「外観(製造直後)」の欄に記載しているように、実施例17~25の全てで混合ベシクルが形成されていた。
【0065】
次に、比較例6~11について説明する。
【0066】
【0067】
比較例6~8は、カチオン性界面活性剤の濃度が1.00質量%である。比較例6~8では、「外観(製造直後)」の項目で白濁しており、また、製造直後では混合ベシクルが形成されていなかった。また、「RT」、「5℃」及び「50℃」の全てで分離が生じた。
【0068】
比較例9~11は、カチオン性界面活性剤の濃度が15.00質量%である。比較例9では、「外観(製造直後)」の項目で白濁しており、また、製造直後では混合ベシクルが形成されていなかった。また、「RT」、「5℃」及び「50℃」の全てで分離が生じた。また、比較例10、11の場合、「5℃」では、安定であったが、「RT」及び「50℃」では分離が生じた。
【0069】
以上の結果より、混合ベシクルを形成した組成物では、低温から高温まで安定である一方、混合ベシクルを形成しない組成物では、いずれかの温度域において不安定であることがわかる。
【0070】
(除草試験)
次に、除草試験について説明する。表5に比較例12の処方を示す。
【0071】
【0072】
比較例12は、ペラルゴン酸とトリエタノールアミンとを含有している例である。
【0073】
除草試験方法は次の通りである。まず、試験用の雑草として、カタバミ、メヒシバ、エノコログサを用意した。各雑草をポットに移植し、吐出量が1mlのハンドスプレーを用いて実施例及び比較例の除草剤を各雑草に満遍なく散布した。その後、ポットを人工気象器内(温度25℃、湿度60%)内に収容し、雑草の様子をカメラのインターバル撮影機能を利用して記録した。結果を表6に示す。表6中の実施例は、実施例18の処方とした。
【0074】
【0075】
実施例18では、比較例12に比べてカタバミ、メヒシバ、エノコログサの全てについて、枯れ始めるまでの時間が大幅に短い。また、枯れるまでの時間も実施例18の方が大幅に短い。特に、比較例12ではメヒシバを完全に枯らすことができなかったが、実施例18ではメヒシバを完全に枯らすことができた。尚、実施例18以外の他の実施例の処方でも多少の時間の長短はあるが、同様な除草効果を得ることができる。
【0076】
(実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態に係る除草剤は、ペラルゴン酸と、モノアルキル型カチオン性界面活性剤とジアルキル型カチオン性界面活性剤の中から選ばれた任意の1種又は2種以上のカチオン性界面活性剤とを含有しており、ペラルゴン酸が混合ベシクルを形成して水中に存在しているので、経日安定性が優れ、高い速効性を持った除草剤とすることができる。
【0077】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上説明したように、本発明に係る除草剤は、各種雑草に対して使用することができる。