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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】作業支援器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/54 20060101AFI20240830BHJP
   A61F 2/56 20060101ALI20240830BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
A61F2/54
A61F2/56
B25J11/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021004941
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2022109553
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】390013321
【氏名又は名称】株式会社ダイドー
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】阪中 翔太
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/094549(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110450139(CN,A)
【文献】米国特許第04252111(US,A)
【文献】実公昭02-006943(JP,Y1)
【文献】特表2020-522395(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0094729(US,A1)
【文献】特表2003-509117(JP,A)
【文献】特表2018-535762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/00;2/02-2/80;3/00-4/00
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者(M)の腰に取着する腰バンド(2)と、
作業者(M)の上腕(4)を受持する上腕受け具(6)を先端に有する上腕サポートアーム(5)と、
上記上腕サポートアーム(5)の基部(5A)を上下揺動自在として枢着する枢支突片(7)を上端(10B)に有すると共に、弾発部材収納空間(13)を形成するパイプ部(11)を備えたサポート縦材(10)と、
上記上腕サポートアーム(5)の基部(5A)と上記枢支突片(7)とを枢着する水平状枢着軸(8)と、
上記サポート縦材(10)の下端(10A)と、上記腰バンド(2)とを、連結する首振り自在連結具(15)と、
上記弾発部材収納空間(13)に収納した弾発部材(12)と、
上記水平状枢着軸(8)廻りに揺動可能として、上記枢支突片(7)に枢着されると共に、上記弾発部材(12)の引張力(F12)を受けるように連繋部材(17)にて、連繋された揺動ボス部材(20)と、
上記揺動ボス部材(20)に付設されて、上記上腕サポートアーム(5)の基部(5A)に形成された係止用小凹部(21)に対して、係止離脱自在に揺動する揺動係止爪片(22)と、
上記揺動係止爪片(22)を係止方向に弾発付勢するスプリング(24)と、
作業者(M)の他方の手にて操作可能であって、上記揺動係止爪片(22)を、上記スプリング(24)の弾発付勢力に抗して離脱させる手動コントロールワイヤ(26)とを、
具備することを特徴とする作業支援器具。
【請求項2】
上記サポート縦材(10)(10)は、作業者の背中の左側縁と右側縁に沿って各々配設された2本から成る請求項1記載の作業支援器具。
【請求項3】
上記首振り自在連結具(15)は、球面頭部(30)と、該球面頭部(30)が嵌着される球面凹窪部(31)を有する嵌合雌部(32)と、を備えた球面軸受(Q)であって、
上記嵌合雌部(32)の周囲起立壁部(40)の断面形状と寸法を、周方向に変化させて、又は、上記周囲起立壁部(40)の平面視形状を、長円形乃至楕円形として、作業者(M)が腰に取着した状態下で、腰バンド(2)から分離する外方向(N)に倒れることを規制するよう構成した請求項1又は2記載の作業支援器具。
【請求項4】
作業者(M)の背面から見て、2本のサポート縦材(10)(10)の間には、構成部材の無い背中丸出し状態とした請求項1,2又は3記載の作業支援器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者の上腕を支持する作業支援器具に関する。
【背景技術】
【0002】
作業者が上を向いて作業工具や高所取付物を、片方又は両方の腕で支持しながら、作業を行う場合、長い時間にわたると、上腕が疲れを感じ、作業能率も低下してくる。
そこで、従来から上腕を支持して、上述の作業能率を向上させるために、種々の支援器具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2018-520011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記作業の内容によっては、上向き作業のみではなく、下方の物を持ち運んだり、床面や低い位置における各種作業が、混在する場合もあり得る。
従来公知の作業支援器具では、上向き作業の他に、このような下向き作業や横向き作業が混在していた場合に、作業者が装着している作業支援器具が(下向き作業・横向き作業を行う上で)邪魔となるという問題があった。
また、下向き作業・横向き作業の際に、作業支援器具を、身体から取外すための手間と時間が(無駄に)費やされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明は、作業者の腰に取着する腰バンドと;作業者の上腕を受持する上腕受け具を先端に有する上腕サポートアームと;上記上腕サポートアームの基部を上下揺動自在として枢着する枢支突片を上端に有すると共に、弾発部材収納空間を形成するパイプ部を備えたサポート縦材と;上記上腕サポートアームの基部と上記枢支突片とを枢着する水平状枢着軸と;上記サポート縦材の下端と、上記腰バンドとを、連結する首振り自在連結具と;上記弾発部材収納空間に収納した弾発部材と;上記水平状枢着軸廻りに揺動可能として、上記枢支突片に枢着されると共に、上記弾発部材の引張力を受けるように連繋部材にて、連繋された揺動ボス部材と;上記揺動ボス部材に付設されて、上記上腕サポートアームの基部に形成された係止用小凹部に対して、係止離脱自在に揺動する揺動係止爪片と;上記揺動係止爪片を係止方向に弾発付勢するスプリングと;作業者の他方の手にて操作可能であって、上記揺動係止爪片を、上記スプリングの弾発付勢力に抗して離脱させる手動コントロールワイヤとを;具備している。
【0006】
また、上記サポート縦材は、作業者の背中の左側縁と右側縁に沿って各々配設された2本から成る。
また、上記首振り自在連結具は、球面頭部と、該球面頭部が嵌着される球面凹窪部を有する嵌合雌部と、を備えた球面軸受であって;上記嵌合雌部の周囲起立壁部の断面形状と寸法を、周方向に変化させて、又は、上記周囲起立壁部の平面視形状を、長円形乃至楕円形として、作業者が腰に取着した状態下で、腰バンドから分離する外方向に倒れることを規制するよう構成したものである。
また、作業者の背面から見て、2本のサポート縦材の間には、構成部材の無い背中丸出し状態となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、上向き作業以外の下向き作業や横向き作業を行う際に、身体に装着したままで、片方の手にて、簡単かつ迅速に、上腕を支持する上方弾発付勢力を零とすることができる。さらに、上向き作業の開始の際は、上腕サポート力(上方弾発付勢力〉を簡単・迅速に復活させることが可能である。また、小休憩時にも、身体に装着したままで、簡単に上腕サポート力(上方弾発付勢力〉をON-OFF切換可能となり、至便である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の一形態を示す正面図である。
図2】側面図である。
図3】背面図である。
図4】斜視図である。
図5】側面図であって、(A)は要部側面図、(B)は使用状態を説明する要部側面図である。
図6】一部断面側面図である。
図7】一部断面で示す要部拡大図である。
図8】作動説明のための側面図であって、(A)は通常使用状態を示す一部断面要部側面図、(B)は手動コントロールワイヤを引張って揺動係止爪片を係止用小凹部から離脱させた直後の状態を示す一部断面要部側面図、(C)は上腕サポートアームが自由に揺動する状態を示す一部断面要部側面図である。
図9】首振り自在連結具の一部断面正面図であって、(A)は左方向へ傾倒した状態を示す一部断面正面図、(B)は中立状態の一部断面正面図、(C)は右方向へ傾倒した状態を示す一部断面正面図である。
図10】首振り自在連結具の一部断面側面図であって、(A)は中立状態の一部断面側面図、(B)は腰バンドから分離する外方向に傾倒した状態を示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1図4に於て、2は作業者M(図5参照)の腰に巻付けて取着される腰バンドである。この腰バンド2は着脱自在なバックル3を有し、作業者Mの前方中央位置にくるように装着される。
【0010】
6は、作業者Mの上腕4を受持する上腕受け具である。この上腕受け具6は、(帯板状の)上腕サポートアーム5の先端に付設されている。
10,10は左右一対のサポート縦材であり、その各下端10Aと、腰バンド2とは、首振り自在連結具15にて、首振り自在───ごま摺り運動自在───に連結されている。
【0011】
また、サポート縦材10の上端10Bには、上腕サポートアーム5の基部5Aを上下揺動自在として枢着する枢支突片7を有する。この枢支突片7は2枚の「くの字状」の板片から成り、上腕サポートアーム5の基部5Aと、枢支突片7の上端とは、水平状枢着軸8にて、枢着されている。
【0012】
そして、サポート縦材10は、パイプ部11を有し、弾発部材12(図6参照)を収納するための弾発部材収納空間13が、このパイプ部11の内部に形成される。
弾発部材12は、図6に於ては、閉環状弾性ゴム紐をもって構成されている場合を示す。これを、コイルスプリング等とすることも好ましい(図示省略)。
【0013】
また、図6に於て、16は、弾発部材12の下端を引掛ける止め具であって、パイプ部11の下端内部に固着されている。
そして、上記水平状枢着軸8廻りに揺動可能として、枢支突片7に、揺動ボス部材20が、枢着される。
即ち、サポート縦材10の上端の枢支突片7には、前記上腕サポートアーム5及び揺動ボス部材20が、共通の水平状枢着軸8廻りに、揺動可能として、枢着されている。
【0014】
しかも、上腕サポートアーム5とボス部材20が、枢着軸8廻りに、一体状に揺動自在と、独立して(別々に)揺動自在に、切換える一体揺動・独立揺動切換手段Zが付加されている。
17は、ワイヤーや紐状体や帯状体等の連繋部材であって、この連繋部材17は、図6に示すように、パイプ部11内の弾発部材12と、ボス部材20とを、連結している。即ち、弾発部材12の弾発的引張力F12を、連繋部材17を介して、ボス部材20に伝達する。
【0015】
ここで、一体揺動・独立揺動切換手段Zについて、以下、説明する。
揺動ボス部材20は、図6図8に示す側面図に於て、水平状枢着軸8から上腕サポートアーム5の先端(前方)へ向かって延伸する前方延伸部20Aと、鈍角をもって後方へ延伸する後方延伸部20Bとを、有している。
【0016】
21は、上腕サポートアーム5の基部5Aの上方部位に形成された係止用小凹部である。この係止用小凹部21に対して、係止離脱自在な揺動係止爪片22がボス部材20の前方延伸部20Aの下面側の凹窪部20Cに収納状として、ピン23にて枢着される。この揺動係止爪片22は、後方下部に、鋭角の係止エッジ22Aを有し、このエッジ22Aが直接に係止用小凹部21に対して係止可能である(図7図8(A)参照)。
このように、揺動ボス部材20の前方延伸部20Aの凹窪部20C内に、水平状ピン23にて係止エッジ22Aが上下揺動可能として、付設されている。
【0017】
また、24は、揺動係止爪片22を、係止用小凹部21に対して係止する方向に常時弾発付勢するスプリングである。
図例では、側面視が略平行四辺形状の爪片22の先端辺を凹状に形成し、ボール25を介して上記スプリング24の弾発付勢力をもって押圧し、(別途、外力が作用しなければ、)係止用小凹部21に係止させる。
【0018】
また、26は、手動コントロールワイヤであり、その先端は、ピン26Pにて、係止爪片22の後端に枢結される。図4図5(A)に於て、この手動コントロールワイヤ26の手動操作用のスイッチ26Sを示し、肩掛けベルト27にこのスイッチ26Sを取付けている。作業者Mは、作業中の上腕(手)とは、別の手にて、このスイッチ26Sを操作できる。
【0019】
通常の作業状態下では、図7図8(A)に示す如く、係止爪片22の係止エッジ22Aは、上腕サポートアーム5の基部5Aの係止用小凹部21に、(スプリング24による弾発付勢力によって)係止状態を維持する。
【0020】
上向き作業が終わって、上方向支援が不必要となった際には、他方の手にてスイッチ26Sを操作すれば、コントロールワイヤ26のインナーワイヤ26Aが、図8(B)の矢印F26の方向に引張られて、係止爪片22が矢印M22の方向に揺動し、係止エッジ22Aが、係止用小凹部21から離脱し、図8(C)に示すように、上腕サポートアーム5は自由に矢印M5 方向へ揺動自在となる。
【0021】
逆に、矢印M5 と反対方向に上腕サポートアーム5を揺動させてゆけば、スプリング24の弾発付勢力によって自動的に、係止エッジ22Aは小凹部21に係止し、図8(A)及び図7の状態に復帰できる。
【0022】
本発明は、前記一体揺動・独立揺動切換手段Zを具備していることによって、図7及び図8(A)の状態では、上腕サポートアーム5とボス部材20が、枢着軸8廻りに、一体状に揺動し、連繋部材17を介して、弾発部材12の弾発付勢力が(確実に)上腕サポートアーム5に伝達される。これに対し、図8(B)(C)の状態では、上腕サポートアーム5とボス部材20が共通の枢着軸8にて枢着されているにかかわらず、独立して(別々に)、揺動自在となって、弾発部材12の弾発付勢力が上腕サポートアーム5に伝達されない。
【0023】
そして、一体揺動・独立揺動切換手段Zの具体的な構成について説明すれば、この一体揺動・独立揺動切換手段Zは、上腕サポートアーム5の基部5Aと枢支突片7とを枢着する水平状枢着軸8と、水平状枢着軸8廻りに揺動可能として、枢支突片7に枢着されると共に、弾発部材12の引張力F12を受けるように連繋部材17にて、連繋された揺動ボス部材20と;揺動ボス部材20に付設されて、上腕サポートアーム5の基部5Aに形成された係止用小凹部21に対して、係止離脱自在に揺動する揺動係止爪片22と;揺動係止爪片22を係止方向に弾発付勢するスプリング24と;作業者Mの他方の手にて操作可能であって、揺動係止爪片22を、スプリング24の弾発付勢力に抗して離脱させる手動コントロールワイヤ26とを、もって構成されている。
【0024】
なお、図7図8に於て、水平状枢着軸8廻りの回転トルクを調整するための回転トルク調整手段50が設けられている。
この回転トルク調整手段50によって上腕サポートアーム5が作業者Mの上腕に付与する支持力を大小調整できる。
【0025】
この回転トルク調整手段50は、ボス部材20の後方延伸部20Bの下方に細長状凹窪部51を形成して、この凹窪部51内に沿って、ネジ杆52を回転可能に収納し、このネジ杆52に非回転状態で螺合するネジ孔付の移動駒53を設け、さらに、この移動駒53には連繋部材17の先端が止着連結されるピン部53Aを有する。ネジ杆52の後端には手動回転用ノブ54が固着されている。
【0026】
ノブ54を右又は左へ回転させることで移動駒53が前方・後方へ移動する。これによって、連繋部材17の先端が止着したピン部53Aがネジ杆52の軸心方向(前後方向)に移動するので、図7に於て、枢着軸8の軸心から、連繋部材17へ下した垂線の長さ(腕の長さ)R12を変化させることができる。
【0027】
上腕サポートアーム5の前端の上腕受け具6を介して、作業者Mの上腕を上向き方向に支援するモーメントは、矢印F12にて示す弾発的引張力と、腕の長さR12との積───即ち、F12×R12───であるので、ノブ54を他方の手にて(右又は左へ)回転させるだけで、作業者Mの上腕への支援力を、容易かつ迅速に大小調整できる。
【0028】
また、図1図4に示すように、サポート縦材10,10は、作業者の背中の左側縁と右側縁に沿って、各々、配設された2本から成る。
そして、図9図10に於て、前記首振り自在連結具15について説明する。この首振り自在連結具15は、球面頭部30と、この球面頭部30が嵌着される球面凹窪部31を有する嵌合雌部32とを、備えた球面軸受Qをもって構成する。
球面頭部30には一体に(小径の)軸部33が上方へ突設され、この軸部33の上端には円形状取付板部34が一体に形成されている。
【0029】
サポート縦材10の一部を構成するパイプ部11の下端に、取付板部34が内嵌され、(溶接等にて)固着される。
つまり、球面頭部30と軸部33と取付板部34から成る雄部材35が、サポート縦材10の下端10Aに固着されている。
【0030】
そして、図2図3、及び、図10に示すように、腰バンド2に固着具36にて、球面凹窪部31を有する受け具37が固着されている。この受け具37には、球面凹窪部31の下方略半分が形成されているが、リング状乃至一部切欠のあるリング状の押さえ環体38が受け具37に(図示省略の固着具や凹凸結合等にて)施蓋状に固着される、
この押さえ環体38の内周面には、球面凹窪部31の上部を形成する球面部を有する(図9図10参照)。つまり、前記嵌合雌部32は、受け具37及び押さえ環体38等をもって、構成される。
【0031】
そして、図9図10に示した如く、この嵌合雌部32の周囲起立壁部40は、押さえ環体38をもって、形成していると共に、周囲起立壁部40の断面形状を、周方向に(均一ではなくて)変化させている。
【0032】
具体的には、図5に示す装着状態で作業者Mの身体に対して、サポート縦材10が(接近したり分離することなく)身体と一体間隔を保ちつつ、図9(A)(B)(C)のように、揺動する場合は、十分に大きな角度αをもって、前後へ揺動できる断面形状に、周囲起立壁部40を形成する。即ち、図9(A)(B)(C)のように、その断面形状は上下寸法が小さく、背が低い。
【0033】
これに対し、図10(B)に示すように、腰バンド2から分離する外方向Nに倒れる場合は、小さな角度βの揺動で停止するよう、図10(B)に示す如く、周囲起立壁部40の断面形状は、上下寸法が大きく、背が高い。
即ち、図9のように、作業者Mの身体に沿って一定間隔で、サポート縦材10が揺動する際は、十分に大きい角度αをもって、前又は後に、自由に揺動できる。
【0034】
これに対し、作業者Mが腰に取着した使用状態下で、腰バンド2から分離する外方向Nに倒れる場合は、小さな角度βの揺動をもって、それ以上は外方向Nに倒れないように、規制する。
なお、図10(B)とは逆方向に、(即ち、作業者Mの身体に近づく方向に、)サポート縦材10が倒れる場合は、作業者Mの身体に当たるため、起立壁部40は省略している場合を、図10に示す。なお、図10に於て、外方向Nへの規制のための背の高い起立壁部40を、側内方の位置に形成するも、自由である(図示省略)。
【0035】
図1図4にもどって、他の構成についての追加説明をすれば、首掛け当て片41、及び、左右一対の肩掛けベルト27,27が、付設される。作業者が首の後部に首掛け当て片41を当てて、両肩に肩掛けベルト27,27を掛けると共に、腰バンド2を締めれば、左右のサポート縦材10,10は、安定した姿勢と装着位置が自ら決まり、簡単に装着して、作業を開始できる。
【0036】
図3に於て、作業者Mについては図示省略したが、この図3図5(B)とを合わせてみると、作業者Mの後方(背面)から見て、2本のサポート縦材10,10の間には、作業支援器具の構成部材が全く無い(作業者Mの)背中丸出し状態となる。つまり、図3に於て、2点鎖線をもって示した背中対応領域Yは、左右のサポート縦材10,10と首掛け当て片41と腰バンド2にて囲まれた中央領域に存在し、邪魔物が無く、背中丸出し(露出)状態となる。
【0037】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、例えば、弾発部材12としては、金属製コイルスプリングとしたり、ガススプリングや渦巻バネや板バネ等を、使用するも自由である。また、球面軸受Qにおける嵌合雌部32の周囲起立壁部40の平面視形状を、長円形乃至楕円形として、雄部材35(軸部33)が、腰バンド2から分離する外方向Nに過大に倒れることを規制するも、好ましい。
【0038】
本発明は、以上詳述したように、作業者Mの腰に取着する腰バンド2と;作業者Mの上腕4を受持する上腕受け具6を先端に有する上腕サポートアーム5と;上記上腕サポートアーム5の基部5Aを上下揺動自在として枢着する枢支突片7を上端10Bに有すると共に、弾発部材収納空間13を形成するパイプ部11を備えたサポート縦材10と;上記上腕サポートアーム5の基部5Aと上記枢支突片7とを枢着する水平状枢着軸8と;上記サポート縦材10の下端10Aと、上記腰バンド2とを、連結する首振り自在連結具15と;上記弾発部材収納空間13に収納した弾発部材12と;上記水平状枢着軸8廻りに揺動可能として、上記枢支突片7に枢着されると共に、上記弾発部材12の引張力F12を受けるように連繋部材17にて、連繋された揺動ボス部材20と;上記揺動ボス部材20に付設されて、上記上腕サポートアーム5の基部5Aに形成された係止用小凹部21に対して、係止離脱自在に揺動する揺動係止爪片22と;上記揺動係止爪片22を係止方向に弾発付勢するスプリング24と;作業者Mの他方の手にて操作可能であって、上記揺動係止爪片22を、上記スプリング24の弾発付勢力に抗して離脱させる手動コントロールワイヤ26とを;具備する構成であるので、アシストの必要な上向き作業とアシスト不要の作業(下向き作業等)が混在している場合に好適であって、他方の手にて、容易かつ迅速に、アシスト力付与状態と(アシスト力が作用しない)自由状態とに、切換えることができる。
即ち、アシスト不要作業にあって、逆にアシスト力が付与されると、作業の邪魔となってしまうが、このような問題を、解決できる。
【0039】
また、上記サポート縦材10,10は、作業者の背中の左側縁と右側縁に沿って各々配設された2本から成るので、左上腕と右上腕をバランス良く使って作業し易いと共に、左右一方のみの作業では、不要な方の上腕のアシスト力を無くして、快適に作業を進めることが可能となる。また、左右2本であるため、左右の釣合が良好で、作業者Mが装着する際、逆に、脱ぐ際に、スムーズに、作業支援器具の着脱を行い得る。
【0040】
また、上記首振り自在連結具15は、球面頭部30と、該球面頭部30が嵌着される球面凹窪部31を有する嵌合雌部32と、を備えた球面軸受Qであって;上記嵌合雌部32の周囲起立壁部40の断面形状と寸法を、周方向に変化させて、又は、上記周囲起立壁部40の平面視形状を、長円形乃至楕円形として、作業者Mが腰に取着した状態下で、腰バンド2から分離する外方向Nに倒れることを規制するよう構成したので、作業支援器具を装着する際、及び、アシストされつつ作業中に、サポート縦材10と、(その上端に付設の)上腕サポートアーム5が、作業者の意志に反する方向に過大に振れる(倒れる)ことを、防止できる。これによって、迅速かつ容易に、作業支援器具を装着し、また、上向き作業を安全かつ容易に行うことができる。
【0041】
また、作業者Mの背面から見て、2本のサポート縦材10,10の間には、構成部材の無い背中丸出し状態となるので、フルハーネス型安全帯(のD環)を背中の中央部位に、確実に取付けることができる。また、腰袋の取付けも容易で腰袋からの作業工具の取出しも容易となる。また、空調服の使用に当たっても、背中面に空調小型ファンが干渉せずに配設できるので、安全・快適に使用できる。
【符号の説明】
【0042】
2 腰バンド
4 上腕
5 上腕サポートアーム
5A 基部
6 上腕受け具
7 枢支突片
8 水平状枢着軸
10 サポート縦材
10A 下端
10B 上端
11 パイプ部
12 弾発部材
13 弾発部材収納空間
15 首振り自在連結具
17 連繋部材
20 揺動ボス部材
21 係止用小凹部
22 揺動係止爪片
24 スプリング
26 手動コントロールワイヤ
30 球面頭部
31 球面凹窪部
32 嵌合雌部
40 周囲起立壁部
12 引張力
M 作業者
N 外方向
Q 球面軸受
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10